(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】防音カバー
(51)【国際特許分類】
G10K 11/16 20060101AFI20250213BHJP
F16B 5/07 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
G10K11/16 150
F16B5/07 K
(21)【出願番号】P 2021118823
(22)【出願日】2021-07-19
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】保坂 考一
(72)【発明者】
【氏名】中根 一輝
【審査官】渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-160882(JP,A)
【文献】実開昭64-030624(JP,U)
【文献】実開平04-102145(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 2/00- 2/26
F16B 5/00- 5/12
G10K 11/00-13/00
H05K 5/00- 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能な外殻体から延びるように設けられ、係合孔を有する係合部と、
閉じた前記外殻体における前記係合部に対応する位置に設けられ、前記係合孔への挿脱により前記係合部を着脱可能である係合受部と、を備え、
前記係合受部は、前記外殻体へ向けて斜めに延びるように張り出し、前記係合受部に係合した前記係合部を抜け止めする抜止部を有している
ことを特徴とする防音カバー。
【請求項2】
前記抜止部は、前記係合孔に通す際に変位し、
前記抜止部の変位が、前記係合受部の根元側に設けられた掛止部によって規制される請求項1記載の防音カバー。
【請求項3】
前記抜止部は、前記係合受部の根元側に設けられた掛止部と間隔をあけて形成された支持部に連ねて設けられている請求項1または2記載の防音カバー。
【請求項4】
前記抜止部は、前記係合孔に通す際に変位し、
変位した前記抜止部の先端が、前記外殻体と間隔があくように構成されている請求項1~3の何れか一項に記載の防音カバー。
【請求項5】
前記外殻体における前記係合受部の内側に、該外殻体の内側に配置される吸音体を保持する保持部が設けられている請求項1~4の何れか一項に記載の防音カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばコンプレッサやモータなどの機器に取り付け可能な防音カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
機械や装置の振動・騒音対策として、防音カバーを取り付けることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の防音カバーは、樹脂製のカバー体の縁同士を、クリップで挟んで組み合わせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成であると、クリップが脱落するおそれがあり、カバー体が組み付け難いという問題が指摘される。
【0005】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、外殻体を組み付け易い防音カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係る防音カバーは、
開閉可能な外殻体から延びるように設けられ、係合孔を有する係合部と、
閉じた前記外殻体における前記係合部に対応する位置に設けられ、前記係合孔への挿脱により前記係合部を着脱可能である係合受部と、を備え、
前記係合受部は、前記外殻体へ向けて斜めに延びるように張り出し、前記係合受部に係合した前記係合部を抜け止めする抜止部を有していることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る防音カバーによれば、係合部を係合受部に引っ掛け易いので、外殻体を組み付け易い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例に係る防音カバーを閉じた状態で示す斜視図である。
【
図2】実施例の防音カバーを開いた状態で示す斜視図である。
【
図3】実施例の防音カバーを閉じた状態で示す正面図である。
【
図4】係合部を係合受部に取り付けた状態で示す拡大斜視図である。
【
図6】係合部を係合受部に取り付けた状態で示す要部端面図である。
【
図7】係合部を係合受部に取り付ける過程を示す要部端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明に係る防音カバーにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。本発明の防音カバーは、例えば、コンプレッサやモータやその他の音発生源(取付対象物)に取り付け可能であり、より具体的には、車両に搭載されている車載機器などに用いることができる。
【実施例】
【0010】
図1および
図2に示すように、実施例の防音カバー10は、ヒンジ14で開閉可能な外殻体12と、外殻体12の内側に配置された吸音体16を備えている。防音カバー10は、外殻体12を開いて取付対象物に着脱され(
図2参照)、外殻体12を閉じることで、取付対象物を囲うように取り付けられる(
図1参照)。
【0011】
図1および
図3に示すように、外殻体12は、防音カバー10の外殻を構成し、音の透過を遮る遮音体としても機能する。外殻体12は、ヒンジ14を支点として2つの壁部分20,20に分かれて開放可能に構成されている。また、外殻体12は、2つの壁部分20,20の開放端同士を突き合わせて閉じることで、取付対象物を包囲可能な箱状になる。実施例のヒンジ14は、半円筒形状の壁部分20と一体的に形成されたインテグラルヒンジである。
【0012】
図6に示すように、実施例の外殻体12は、壁部分20、ヒンジ14、後述の保持部18、係合部22および係合受部24などの各部が一体成形された高分子化合物の成形品である。外殻体12を構成する高分子化合物としては、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)などの熱可塑性エラストマー(TPE)を含むエラストマー、または、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などの合成樹脂等を用いることができる。なお、防音カバー10に干渉するおそれがある周辺部材の保護などの観点において、外殻体12として、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)などのエラストマーが柔軟性を有することから好ましい。外殻体12は、一方の壁部分20に設けられた係合部22を、他方の壁部分20に設けられた係合受部24に係合して、閉じた状態を保持可能になっている(
図1、
図4および
図6参照)。
【0013】
吸音体16は、ポリウレタンフォームやオレフィン系フォームなどの発泡体の成形品である。吸音体16が、壁部分20のそれぞれに対応して配置されている。外殻体12を閉じた際に、2つの吸音体16,16で取付対象物を囲うようになっている。吸音体16は、外殻体12と別体であり、外殻体12に対して着脱可能である。実施例の吸音体16は、外殻体12に設けられた鉤状の保持部18によって縁部が保持されている(
図5参照)。
【0014】
図2に示すように、係合部22は、壁部分20におけるヒンジ14が設けられた縁部と異なる縁部に設けられている。係合部22は、壁部分20の縁部から延びるように形成された舌片形状である。係合部22は、基端部(外殻体12側または根元という場合がある。)が壁部分20の外面に繋がっており、先端部が壁部分20の端から延出している。係合部22の先端部は、外殻体12を閉じた際に、係合受部24が設けられた壁部分20の外面に重なる。なお、実施例の係合部22は、その厚み方向へ曲げ変形可能な可撓性を有している。係合部22は、その厚み方向へ貫通するように形成された係合孔22aを有している。実施例の係合孔22aは、係合部22の基端部から先端部へ向けて切り欠くように形成されている。
【0015】
図1~
図4に示すように、係合受部24は、外殻体12を閉じた際に係合部22に対応する部位に設けられている。係合受部24は、壁部分20におけるヒンジ14が設けられた縁部と異なる縁部に設けられている。係合受部24は、係合部22の係合孔22aへの挿脱により係合部22を着脱可能である。
図6および
図7に示すように、係合受部24は、係合孔22aに通して、係合孔22aの開口縁に引っ掛け可能な鉤形状に形成されている。より具体的には、係合受部24は、壁部分20の外面から外側へ突出する掛止部26と、係合受部24に係合した係合部22を抜け止めする抜止部28とを備えている。掛止部26は、係合部22を係合受部24に取り付けた際に、係合孔22aの中に配置される部分であり、係合孔22aの横幅に合わせた横幅で形成されている。抜止部28は、係合部22を係合受部24に取り付けた際に、係合部22よりも外側に配置される部分である。抜止部28は、掛止部26よりも、係合受部24が設けられた壁部分20の開口縁と反対側へ延びている。換言すると、抜止部28は、掛止部26よりも係合部22の基端部と反対側へ延びている。抜止部28は、係合受部24が設けられた壁部分20へ向けて斜めに張り出している。係合部22を係合受部24に取り付けた際に、抜止部28が、係合孔22aにおける係合部22の先端側の開口縁よりも、係合部22の先端側へ張り出して、係合部22に重なるように配置される。
【0016】
図4および
図6に示すように、抜止部28は、係合受部24の根元側に設けられた掛止部26と間隔をあけて形成された支持部30に連ねて設けられている。実施例の支持部30は、掛止部26から外側へ突出した後に、係合部22の基端部(係合受部24が設けられた壁部分20の開口縁)と反対側へ折れ曲がって壁部分20と並行するように延びる屈曲形状である。係合受部24における抜止部28の根元には、支持部30によって、係合部22の基端部(係合受部24が設けられた壁部分20の開口縁)と反対側へ開口する凹部24aが形成されている。
【0017】
図7に示すように、抜止部28は、係合部22の係合孔22aに通す際に、変位および/または変形するようになっている。抜止部28の変位および/または変形は、係合受部24の根元側に設けられた掛止部26によって規制されるようになっている。また、変位(変形)した抜止部28の先端が、外殻体12の壁部分20と間隔があくように構成されている。このように、抜止部28は、壁部分20に向けて変位(変形)しても、壁部分20に接触しないように設定される。これに対して、抜止部28は、壁部分20に向けて変位(変形)した際に、掛止部26に当たるように設定されている。また、抜止部28は、掛止部26に当たった際に、その先端(抜止部28の突出端)が壁部分20から係合部22の板厚以上の間隔があくようにしてもよい。
【0018】
図2に示すように、壁部分20における係合受部24の内側に、該壁部分20の内側に配置される吸音体16を保持する保持部18を設けるとよい。
【0019】
防音カバー10は、係合部22が外殻体12に設けられているので、クリップのように組み付け時に落とすおそれがなく、係合部22を係合受部24に適切に取り付けることができ、簡単に外殻体12を閉じ状態に組み付けることができる。そして、車両に搭載されたコンプレッサのような既設の取付対象物であっても、防音カバー10を簡単に取り付けることができる。また、係合部22に形成した係合孔22aに通して、係合部22を係合受部24に引っ掛けるので、係合部22が係合受部24に引っ掛かったか否かが判り易く、係合部22の取り付け不良を回避できる。
【0020】
係合受部24の抜止部28が、外殻体12の壁部分20へ向けて斜めに延びるように張り出しているので、係合受部24の突出端が先細り形状となり(
図6参照)、係合受部24の外側から係合部22の係合孔22aを通し易くすることができる。また、係合部22の係合孔22aに係合受部24を通すとき、抜止部28の傾斜形状によって、抜止部28を壁部分20へ向けて変位(変形)し易くすることができ、抜止部28が外側から内側へ向けて変位(変形)することによっても、係合部22を係合受部24に取り付け易くなる。一方、係合部22を係合受部24に取り付けると、抜止部28によって係合部22の外側への変位を阻むことができ、車両走行時の振動等により係合部22が係合受部24から意図せず外れることを防止できる。また、抜止部28の傾斜形状によれば、抜止部28が内側から外側へ向けて変位(変形)し難くなるので、係合部22が係合受部24から外れ難くなる。
【0021】
防音カバー10は、治具や道具を用いることなく係合部22を係合受部24に取り付け可能で、係合部22を係合受部24に取り付け易いので、片手であっても取り付け作業を行うことが可能となる。これにより、防音対象物に対する防音カバー10の取り付け性が向上する。また、例えば車両内の限られたスペースにおいても、防音カバー10を簡単に取り付けることができ、メンテナンス性を向上できる。
【0022】
係合部22を係合受部24に取り付ける際に、ある程度変位(変形)した抜止部28を、係合受部24の根元側に設けた掛止部26によって規制することで、係合孔22aの開口縁に干渉している抜止部28の乗り越えを助けることができる。これにより、抜止部28を係合孔22aにより簡単に通すことが可能となる。
【0023】
抜止部28を、係合受部24の根元側に設けられた掛止部26と間隔をあけて形成された支持部30に連ねて設けることで、掛止部26との間の凹部24aを利用して変形する支持部30によって、抜止部28を、より小さい力で、より大きく変位(変形)させることができる。また、係合部22を係合受部24に取り付けた後、仮に係合部22が掛止部26から外れたとしても、係合部22が凹部24aに入り込むので、係合部22が係合受部24から非常に外れ難い。
【0024】
係合部22を係合受部24に取り付ける際に抜止部28が変位(変形)しても、抜止部28の先端(抜止部28の突出端)が外殻体12の壁部分20から離れているので、抜止部28を乗り越えさせて、係合部22を抜止部28と壁部分20との間に、より簡単に配置することができる。
【0025】
係合部22を引っ張りつつ、係合孔22aに係合受部24を通して、係合受部24に係合部22を引っ掛ける。この際、係合受部24が係合部22(係合孔22a)以外の部分で押さえられることがある。特に外殻体12がエラストマーの成形体であると、外殻体12における係合受部24の周辺が撓み易く、係合受部24に係合部22を引っ掛け難くなる。ここで、保持部18が係合受部24の内側に配置されていると、外殻体12における係合受部24の周辺が撓み難くなり、係合部22を係合受部24に引っ掛け易くなる。これにより、取付対象物に対する防音カバー10の取り付け作業を行い易くすることができる。
【0026】
(変更例)
前述した事項に限らず、例えば以下のようにしてもよい。なお、本発明は、実施例およ
び以下の変更例の具体的な記載のみに限定されるものではない。
(1)係合受部において、支持部を省略してもよい。
図8に示すように、掛止部26に連ねて、壁部分20に向けて張り出すように抜止部28を設けてもよい。
(2)防音カバーは、外側全体を外殻体で構成することに限らず、吸音体の一部が外側に露出していてもよい。
(3)外殻体は、2つに開く構成に限らず、3つ以上の壁部分をヒンジで接続した構成であってもよい。
(4)防音カバーは、吸音体を省略して、外殻体だけで構成してもよい。
(5)係合部自体がゴムのように伸びて、係合孔が広がる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0027】
10 防音カバー,12 外殻体,16 吸音体,18 保持部,22 係合部,
22a 係合孔,24 係合受部,26 掛止部,28 抜止部,30 支持部