IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シチズンファインテックミヨタ株式会社の特許一覧 ▶ シチズンホールディングス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-液晶表示装置 図1
  • 特許-液晶表示装置 図2
  • 特許-液晶表示装置 図3
  • 特許-液晶表示装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/36 20060101AFI20250213BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20250213BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
G09G3/36
G02F1/133 560
G09G3/20 612T
G09G3/20 670D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021124054
(22)【出願日】2021-07-29
(65)【公開番号】P2023019382
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2024-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金森 裕太
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-003319(JP,A)
【文献】特開2011-170327(JP,A)
【文献】特開2004-219938(JP,A)
【文献】国際公開第2013/125492(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/030226(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00 - 3/38
G02F 1/133
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶にリセット電圧を印加するブランキング期間を含む1フレーム期間単位でフィールドシーケンシャル駆動により1つの画像を表示する液晶パネルを有する液晶表示装置であって、
前記液晶表示装置の電源がOFFになる直前の1フレーム期間に含まれる前記ブランキング期間を延長させ
前記ブランキング期間が延長される1フレーム期間は、前記液晶表示装置の電源がOFFになる直前の1フレーム期間のみである、
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記ブランキング期間が延長される1フレーム期間には複数の前記ブランキング期間が含まれ、複数の前記ブランキング期間のそれぞれにおいて前記ブランキング期間を延長させる、ことを特徴とする請求項に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
液晶にリセット電圧を印加するブランキング期間を含む1フレーム期間単位でフィールドシーケンシャル駆動により1つの画像を表示する液晶パネルを有する液晶表示装置であって、
前記液晶表示装置の電源がOFFになる直前の1フレーム期間に含まれる前記ブランキング期間を延長させ、
前記ブランキング期間が延長された1フレーム期間が終了してから前記液晶表示装置の電源がOFFになるまでの間に、前記液晶パネルの画面全体に黒画像を表示させ、
前記ブランキング期間が延長されていない1フレーム期間に含まれる1フィールド期間の長さ以上の時間にわたって前記黒画像を表示させる、
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項4】
液晶にリセット電圧を印加するブランキング期間を含む1フレーム期間単位でフィールドシーケンシャル駆動により1つの画像を表示する液晶パネルを有する液晶表示装置であって、
前記液晶表示装置の電源がOFFになる直前の1フレーム期間に含まれる前記ブランキング期間を延長させ、
前記ブランキング期間が延長された1フレーム期間が終了してから前記液晶表示装置の電源がOFFになるまでの間に、前記液晶パネルの画面全体に黒画像を表示させ、
前記黒画像を表示させる際に前記液晶パネルに印加される電圧の絶対値は、前記ブランキング期間が延長されていない1フレーム期間において前記液晶パネルに印加される電圧の絶対値よりも大きい、
ことを特徴とする液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、薄型化、小型化が可能であり、低消費電力で駆動できること等々の利点があることから、近年ではモバイル機器やプロジェクター、ビューファインダー、HMD、HUD等の小型電子機器の分野で画像表示装置として広く使用されている。
【0003】
フィールドシーケンシャル駆動により画像を表示する液晶表示装置では、赤色(R色)、緑色(G色)及び青色(B色)の3つの光源を順次選択して発光させ、それと同期するように液晶パネルの駆動を制御して、カラー画像を表示する。(例えば、特許文献1参照)
【0004】
フィールドシーケンシャル駆動により画像を表示する液晶表示装置では、例えば、強誘電性液晶を用いた液晶パネル(強誘電性液晶パネル)が使用される。強誘電性液晶パネルは、一定のON電圧が印加された場合、照射された光を透過させ、一定のOFF電圧(例えば、ON電圧と振幅が同じであり且つ極性が逆である電圧)が印加された場合、照射された光を遮断することで画像を表示する。
【0005】
強誘電性液晶パネルは、印加された電圧に応じて光学特性が高速で切り替わるため、フィールドシーケンシャル駆動に適している。
【0006】
図1は、液晶パネルの例を示す断面図である。図1に示す液晶パネルは、透明なガラス基板1と、ITO膜2と、ITO膜2上に形成された有機配向膜3と、シリコン基板4と、画素電極5と、画素電極5上に形成された有機配向膜6及びSiO薄膜7と、ガラス基板1とシリコン基板4との間に充填された液晶8とを備えている。
【0007】
この液晶パネルでは、液晶8に電圧を印加する前の状態において、液晶分子の向きが有機配向膜3と有機配向膜6の配向規制力によって一方向に揃えられている。通常、液晶8に電圧が印加されると、液晶分子の向きは変化(スイッチング)し、液晶8に電圧が印加されなくなると、液晶分子の向きは一方向へ揃えられた状態に戻る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-182157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、配向膜の配向規制力が弱い場合などには、液晶表示装置が電源OFF状態(シャットダウン状態やスリープ状態)になって液晶に電圧が印加されなくなっても、液晶分子の向きが一方向に揃わないことがある(ダブルドメインと呼ばれることがある)。これにより、液晶には電圧が印加されていないにも関わらず、液晶パネルには電源OFF前に表示していた画像が残像(ゴーストともいう)として表示されたまま残ってしまうという問題が発生する。
【0010】
本発明は、残像の発生を抑制することが可能な液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
液晶にリセット電圧を印加するブランキング期間を含む1フレーム期間単位でフィールドシーケンシャル駆動により1つの画像を表示する液晶パネルを有する液晶表示装置であって、
前記液晶表示装置の電源がOFFになる直前の1フレーム期間に含まれる前記ブランキング期間を延長させる、液晶表示装置とする。
【0012】
前記ブランキング期間が延長される1フレーム期間は、前記液晶表示装置の電源がOFFになる直前の1フレーム期間のみである、液晶表示装置であっても良い。
【0013】
前記ブランキング期間が延長される1フレーム期間には複数の前記ブランキング期間が含まれ、複数の前記ブランキング期間のそれぞれにおいて前記ブランキング期間を延長させる、液晶表示装置であっても良い。
【0014】
前記ブランキング期間が延長された1フレーム期間が終了してから前記液晶表示装置の電源がOFFになるまでの間に、前記液晶パネルの画面全体に黒画像を表示させる、液晶表示装置であっても良い。
【0015】
前記ブランキング期間が延長されていない1フレーム期間に含まれる1フィールド期間の長さ以上の時間にわたって前記黒画像を表示させる、液晶表示装置であっても良い。
【0016】
前記黒画像を表示させる際に前記液晶パネルに印加される電圧の絶対値は、前記ブランキング期間が延長されていない1フレーム期間において前記液晶パネルに印加される電圧の絶対値よりも大きい、液晶表示装置であっても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電源OFF前の表示画像が電源OFF後に残像として発生することを抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】液晶パネルの例を示す断面図
図2】本発明の実施例における液晶表示装置のn番目のフレーム期間の駆動波形を示すタイミングチャート
図3】本発明の実施例における液晶表示装置の動作ステップを示すフローチャート
図4】本発明の実施例における液晶表示装置のn+1番目のフレームの駆動波形を示すタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0020】
本発明の実施例における液晶表示装置は、LEDなどの光源と、強誘電性液晶パネルなどの液晶パネルと、光源と液晶パネルを駆動させる駆動回路とを備えている。液晶パネルは、フィールドシーケンシャル方式を用いて駆動され、1フレーム期間単位で1つの画像を表示するように構成されている。カラー画像を表示する場合には、RGBの各色に対応する画像を表示する3つのフィールド期間が設けられ、それら3つのフィールド期間で1つのカラー画像が表示される。具体的には、RGBの各色の光を発する3つの光源を設け、これら3つの光源から発せられた各色の光により液晶パネルを前方又は後方から順次照明する。例えば、R(赤)、G(緑)、B(青)の順にそれぞれの色の光を液晶パネルに照射し、このサイクルを1フレーム期間単位で同様に繰り返す。液晶パネルは、このサイクルに同期して液晶の光変調状態を変化させる。
【0021】
図2は、本発明の実施例における液晶表示装置のn番目のフレーム期間の駆動波形を示すタイミングチャートである。図2に示すフィールドシーケンシャル駆動では、Active期間「R」、Passive期間「r」、Active期間「G」、Passive期間「g」、Active期間「B」、Passive期間「b」の6つのフィールド期間で1フレーム期間が構成されている。
【0022】
図2において、「R」と記された期間は、R色光源の点灯期間に対応するActive期間を表し、「G」と記された期間は、G色光源の点灯期間に対応するActive期間を表し、「B」と記された期間は、B色光源の点灯期間に対応するActive期間を表し、「r」と記された期間は、R色光源の消灯期間に対応するPassive期間を表し、「g」と記された期間は、G色光源の消灯期間に対応するPassive期間を表し、「b」と記された期間は、B色光源の消灯期間に対応するPassive期間を表している。「R」、「G」、「B」の各期間では、液晶パネルに所定の電圧を印加することで画像を表示させる表示駆動が行われ、「r」、「g」、「b」の各期間では、液晶パネルにそれぞれ直前のActive期間で液晶に印加された電圧の反転電圧を印加する非表示駆動(反転駆動)が行われる。
【0023】
「R」、「G」、「B」の各期間の先頭には、全ての光源が消灯された状態で液晶に正(+)のリセット電圧が印加されるブランキング期間「Blanking(+)」が設けられ、「r」、「g」、「b」の各期間の先頭には、全ての光源が消灯された状態で液晶に負(-)のリセット電圧が印加されるブランキング期間「Blanking(-)」が設けられている。各フィールド期間にこのようなブランキング期間を設けることで、各フィールド期間において液晶分子が動き易くなり、画像の焼き付きが防止される。
【0024】
特に、図2に示すフィールドシーケンシャル駆動では、1フレーム期間内において、液晶に正(+)のリセット電圧が印加されるブランキング期間「Blanking(+)」は3個であるのに対し、液晶に負(-)のリセット電圧が印加されるブランキング期間「Blanking(-)」も3個であることから、ブランキング期間同士で液晶に印加される正負のエネルギーバランスが取れているので、画像の焼き付きが発生し難い。
【0025】
図3は、本発明の実施例における液晶表示装置の動作ステップを示すフローチャートである。本発明の実施例では、図3に示す動作ステップ(S1~S6)を踏み、液晶表示装置の電源をOFFにすることで、電源OFF後の残像の発生を抑制する。まず、液晶表示装置の電源がONになると(S1)、液晶表示装置は、外部機器から入力された映像信号に応じて図2に示すようなフィールドシーケンシャル駆動を繰り返して液晶パネルに通常の画像を順次表示させる(S2)。次に、任意のタイミングで外部機器から電源OFF指令信号が入力されると(S3)、液晶表示装置は、その直後のフレーム期間(n+1番目のフレーム期間)において電源OFF直前の最終画像を表示する(S4)。次に、液晶表示装置は、液晶パネルに黒画像を表示させる(S5)。最後に、液晶表示装置の電源がOFFになる(S6)。S4~S6について、より詳しくは以下の通りである。
【0026】
<S4について>
図4は、本発明の実施例における液晶表示装置のn+1番目のフレーム期間の駆動波形を示すタイミングチャートである。n+1番目のフレーム期間では、n番目のフレーム期間と同様のフィールドシーケンシャル駆動が行われるが、相違点として、各ブランキング期間をn番目のフレーム期間のブランキング期間よりも延長して駆動させる。
【0027】
ブランキング期間を延長する長さは、液晶パネルの特性などに応じて適宜選択することができる。ブランキング期間を延長する長さは、n+1番目のフレーム期間内のブランキング期間同士で互いに同じであっても良いし、互いに異なっても良い。但し、この実施例においてブランキング期間同士で正負のエネルギーバランスを取る意味では、延長後のブランキング期間の長さが互いに同じであることが好ましい。何れにしても、ブランキング期間を延長することにより、液晶分子の方向が一方向へ揃い易くなるため、残像の発生が抑制される。
【0028】
ブランキング期間を延長するためには、延長する分だけn+1番目のフレーム期間の全体の長さを延長するか、n+1番目のフレーム期間の全体の長さを変えずにフィールド期間の一部を延長する分に割り当てる必要がある。これらを行うことによってn+1番目のフレーム期間において表示される画像の画質が多少変化する可能性があるが、n+1番目のフレーム期間は、電源がOFFになる直前の最後の1フレーム期間に過ぎないため、画質が多少変化したとしても特に問題とはならない。n+1番目のフレーム期間に加えて、n+1番目のフレーム期間よりも前のフレーム期間(例えばn番目のフレーム期間)においてもブランキング期間を延長することが可能であるが、必要以上に多くのフレーム期間においてブランキング期間を延長してしまうと、全体として画質が大きく変化して使用者に違和感を与えてしまうなどの問題が発生することがあるため、電源OFF直前のn+1番目のフレーム期間においてのみブランキング期間を延長することが好ましい。
【0029】
<S5について>
n+1番目のフレーム期間が終了した直後の一定の期間において、液晶パネルの画面全体に黒画像を表示させる駆動(「Blanking(-)」期間と同様の駆動)を行うことで、液晶分子の方向を確実に一方向へ揃えることができる。黒画像を表示させるための画像データは、例えば、液晶表示装置に内蔵されたメモリから読み出される。黒画像を表示させる期間では、全ての光源が消灯された状態で、例えば、n番目のフレーム期間において液晶に印加された電圧と同じ振幅(絶対値)の負の電圧が、n番目のフレーム期間に含まれる1フィールド期間の長さ以上(例えば1ms以上)の時間にわたって印加される。なお、それよりも大きい振幅(絶対値)の負の電圧がそれよりも長い時間(例えば50ms以上)にわたって印加されても良い。ここでは振幅(絶対値)が大きい電圧を長時間にわたって印加した方が効果的であるが、それには限定されない。
【0030】
<S6について>
上述の黒画像の表示が終了した後、液晶表示装置の電源をOFFにすることで液晶パネルの駆動を停止させる。以上の動作により、液晶分子の向きを一方向へ効率的に揃えることができるため、残像の発生を効果的に抑制することができる。
【0031】
この実施例では、n+1番目のフレーム期間が終了した後に黒画像を表示させる駆動を行っているが、この駆動は必須ではなく、省略することが可能である。但し、残像の発生を効果的に抑制する意味では、この駆動を行うことが好ましい。
【0032】
n+1番目のフレーム期間では、全てのブランキング期間をそれぞれ延長しているが、そうすることは必須ではなく、一部のブランキング期間のみを延長しても良い。但し、残像の発生を効果的に抑制する意味では、全てのブランキング期間をそれぞれ延長することが好ましい。
【0033】
ブランキング期間は、各フィールド期間の先頭ではなく、各フィールド期間の最後に設けられていても良い。
【0034】
本発明は、2~5倍速などの倍速モードのフィールドシーケンシャル駆動を用いた液晶表示装置にも適用することができる。
【0035】
本発明は、白黒画像のみを表示する液晶表示装置にも適用することができる。
【0036】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、その他種々の形態を取り得る。
【符号の説明】
【0037】
1 ガラス基板
2 ITO膜
3 有機配向膜
4 シリコン基板
5 画素電極
6 有機配向膜
7 SiO薄膜
8 液晶
図1
図2
図3
図4