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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】面発光型半導体発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/18 20210101AFI20250213BHJP
   H01S 5/11 20210101ALI20250213BHJP
【FI】
H01S5/18
H01S5/11
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021143912
(22)【出願日】2021-09-03
(65)【公開番号】P2023037267
(43)【公開日】2023-03-15
【審査請求日】2024-02-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、防衛装備庁 安全保障技術研究推進制度、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】橋本 玲
(72)【発明者】
【氏名】大野 博司
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 真司
(72)【発明者】
【氏名】角野 努
(72)【発明者】
【氏名】金子 桂
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-231773(JP,A)
【文献】特開2018-206921(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0199064(US,A1)
【文献】特開2016-122711(JP,A)
【文献】特開平10-256602(JP,A)
【文献】特開2009-212500(JP,A)
【文献】特開2013-038248(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110707528(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0106240(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110574247(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0338624(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101939856(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0037839(US,A1)
【文献】LIANG, Y. et al.,Room temperature surface emission on large-area photonic crystal quantum cascade lasers,Applied Physics Letters,米国,2019年01月23日,Vol.114,p.031102-1 - p.031102-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
H10H 20/00-20/858
IEEE Xplore
Scitation
APS Journals
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電形の半導体基板と、
前記半導体基板上に設けられた前記第1導電形の第1半導体層と、
前記第1半導体層上に設けられた活性層と、
前記活性層上に設けられ、前記活性層の上面に沿って並ぶ複数の凸部を含むフォトニック結晶層と、
前記フォトニック結晶層上に設けられた前記第1導電形の第2半導体層と、
前記第2半導体層上に設けられた第1電極と、
前記半導体基板の前記第1半導体層とは反対側の裏面上に設けられた第2電極であって、前記裏面に面接触する平面コンタクト部と、前記活性層から放射された光が前記半導体基板から外部に放出される前記裏面中の面発光領域に延在する細線コンタクト部と、を含み、前記細線コンタクト部の前記面発光領域における配置は、非回転対称であり、線対称でもなく、点対称でもない、第2電極と、
を備えた面発光型半導体発光装置。
【請求項2】
前記平面コンタクト部は、前記面発光領域を囲む請求項1記載の面発光型半導体発光装置。
【請求項3】
前記細線コンタクト部は、前記平面コンタクト部につながる一方の端と、前記面発光領域中に位置する他方の端と、を有する請求項1または2に記載の面発光型半導体発光装置。
【請求項4】
前記第2電極は、前記一方の端から前記他方の端までの長さがそれぞれ異なる複数の前記細線コンタクト部を含む請求項3記載の面発光型半導体発光装置。
【請求項5】
前記第2電極は、前記半導体基板の前記裏面に沿った第1方向に延びる第1細線コンタクト部と、前記半導体基板の前記裏面に沿って、前記第1方向に直交する第2方向に延びる第2細線コンタクト部と、を含む請求項1~4のいずれか1つに記載の面発光型半導体発光装置。
【請求項6】
前記細線コンタクト部は、2つの方向に分岐した部分を含む請求項1~5のいずれか1つに記載の面発光型半導体発光装置。
【請求項7】
前記細線コンタクト部は、直線状に延在する請求項1~6のいずれか1つに記載の面発光型半導体発光装置。
【請求項8】
前記細線コンタクト部は、前記半導体基板の前記裏面に沿って曲線状に延在する部分を含む請求項1~7のいずれか1つに記載の面発光型半導体発光装置。
【請求項9】
前記活性層は、前記半導体基板の前記裏面に沿った方向に延在するリッジ構造を有し、
前記第2電極の前記細線コンタクト部は、前記リッジ構造の延在方向に延びる請求項1記載の面発光型半導体発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、面発光型半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
面発光型半導体発光装置には、光出力特性の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-93022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、光出力特性を向上させた面発光型半導体発光装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る面発光型半導体発光装置は、第1導電形の半導体基板と、前記半導体基板上に設けられた前記第1導電形の第1半導体層と、前記第1半導体層上に設けられた活性層と、前記活性層上に設けられ、前記活性層の上面に沿って並ぶ複数の凸部を含むフォトニック結晶層と、前記フォトニック結晶層上に設けられた前記第1導電形の第2半導体層と、前記第2半導体層上に設けられた第1電極と、前記半導体基板の前記第1半導体層とは反対側の裏面上に設けられた第2電極と、を備える。前記第2電極は、前記半導体基板の前記裏面に面接触する平面コンタクト部と、前記活性層から放射された光が前記半導体基板から外部に放出される前記裏面中の面発光領域に延在する細線コンタクト部と、を含み、前記細線コンタクト部の前記面発光領域における配置は、非回転対称である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る面発光型半導体発光装置を示す模式断面図である。
図2】第1実施形態に係る面発光型半導体発光装置を模式的に示す斜視図である。
図3】第1実施形態に係る面発光型半導体発光装置の活性層を示す模式断面図である。
図4】第1実施形態に係る面発光型半導体発光装置の電極を示す模式平面図である。
図5】第1実施形態に係る面発光型半導体発光装置の出力特性を示す模式図である。
図6】第1実施形態の変形例に係る面発光型半導体発光装置の電極を示す模式平面図である。
図7】第1実施形態の別の変形例に係る面発光型半導体発光装置の電極を示す模式平面図である。
図8】第1実施形態のさらなる別の変形例に係る面発光型半導体発光装置の電極を示す模式平面図である。
図9】第2実施形態に係る面発光型半導体発光装置を示す模式断面図である。
図10】第2実施形態に係る面発光型半導体発光装置を模式的示す斜視図である。
図11】第2実施形態に係る面発光型半導体発光装置を示す模式平面図である。
図12】第2実施形態に係る面発光型半導体発光装置の出力特性を示す模式図である。
図13】第2実施形態の変形例に係る面発光型半導体発光装置の出力特性を示す模式図である。
図14】第2実施形態に係る面発光型半導体発光装置の回折レンズを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。図面中の同一部分には、同一番号を付してその詳しい説明は適宜省略し、異なる部分について説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
【0008】
さらに、各図中に示すX軸、Y軸およびZ軸を用いて各部分の配置および構成を説明する。X軸、Y軸、Z軸は、相互に直交し、それぞれX方向、Y方向、Z方向を表す。また、Z方向を上方、その反対方向を下方として説明する場合がある。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、実施形態に係る面発光型半導体発光装置1を示す模式断面図である。半導体発光装置1は、例えば、面発光型QCL(Quantum Cascade Laser)である。
【0010】
図1に示すように、半導体発光装置1は、第1導電形の半導体基板10と、第1導電形の第1半導体層20と、活性層30と、フォトニック結晶層40と、第1導電形の第2半導体層50と、第1電極60と、絶縁膜70と、第2電極80と、を備える。
【0011】
半導体基板10は、例えば、n形InP基板もしくはn形GaAs基板である。半導体基板10としてGaAs基板を用いる場合は、半導体基板10と第1半導体層20との間にバッファ層13が設けられる。バッファ層13は、例えば、n形InGaAs層である。以下、第1導電形をn形として説明するが、これに限定される訳ではない。また、InGaAsは、組成式InGa1-xAs(0<x<1)で表される半導体混晶である。
【0012】
第1半導体層20は、半導体基板10上に設けられる。第1半導体層20は、例えば、n形InP層である。第1半導体層20は、例えば、半導体基板10の第1導電形不純物よりも低濃度の第1導電形不純物を含む。
【0013】
活性層30は、第1半導体層20上に設けられる。活性層30は、例えば、キャリアのサブバンド間遷移を生じさせる量子井戸構造を有する。活性層30は、例えば、シリコンをドープしたn形のIII-V族化合物半導体結晶を含み、電子のサブバンド遷移により発光する。
【0014】
フォトニック結晶層40は、活性層30の上に設けられる。フォトニック結晶層40は、特定の周期構造PCを有し、活性層30から放出される光の伝播方向を制御する。フォトニック結晶層40は、例えば、活性層30の上面に沿って並ぶ複数の凸部を含む。フォトニック結晶層40は、例えば、InGaAsを含む。
【0015】
第2半導体層50は、フォトニック結晶層40上に設けられる。第2半導体層50は、例えば、n形InP層である。第2半導体層50は、例えば、半導体基板10の第1導電形不純物よりも低濃度の第1導電形不純物を含む。
【0016】
第1電極60は、第2半導体層50上に設けられる。第1電極60は、第2半導体層50に、例えば、オーミック接続される。また、第1電極60は、活性層30から放射される光を反射する材料を含む。第1電極60は、活性層30から第1電極60に向かう光を反射し、半導体基板10に向かう方向に伝播させる。第1電極60は、例えば、金(Au)を含む。
【0017】
図1に示すように、半導体発光装置1は、メサ構造の発光領域LERを含む。発光領域LERは、第1半導体層20の一部、活性層30、フォトニック結晶層40、第2半導体層50を含む。絶縁膜70は、メサ構造の側面を覆うように設けられる。絶縁膜70は、第1電極60と発光領域LERとの間に設けられる。絶縁膜70は、例えば、シリコン酸化膜である。
【0018】
第1電極60は、絶縁膜70を介して、メサ構造の側面および第1半導体層20の一部を覆うように形成される。第1電極60は、メサ構造の側面を通って外部に向かう光も反射し、発光領域LERの内部に戻すように設けられる。
【0019】
第2電極80は、半導体基板10の活性層30とは反対側の裏面上に設けられる。第2電極80は、例えば、チタニウム(Ti)層と金(Au)層とを積層した構造を有する。Ti層は、半導体基板10とAu層との間に設けられる。
【0020】
半導体発光装置1では、第1電極60と第2電極80との間に電流を流すことにより、活性層30にキャリア(電子)を注入する。活性層30は、量子井戸におけるキャリアのエネルギー緩和により生じた光、および、フォトニック結晶層40により導波された光による誘導放出によりQCL光を発生させる。QCL光は、半導体基板10の裏面から外部に放射される。QCL光の波長は、例えば、4.5マイクロメートル(μm)である。
【0021】
図2(a)および(b)は、第1実施形態に係る半導体発光装置1を模式的に示す斜視図である。図2(a)は、半導体発光装置1の表面側を示す斜視図である。図2(b)は、半導体発光装置1の裏面側を示す斜視図である。
【0022】
図2(a)に示すように、発光領域LERは、半導体基板10の表面側に設けられる。発光領域LERは、例えば、500μmの横幅を有する直方体である。第1電極60は、発光領域LERおよびその周りの半導体基板10の表面を覆うように設けられる。
【0023】
図2(b)に示すように、QCL光は、半導体基板10の裏面から外部に放射される。第2電極80は、例えば、面コンタクト部80scと、細線コンタクト部80fと、を有する。面コンタクト部80scは、半導体基板10の裏面内の面発光領域SERを囲むように設けられる。細線コンタクト部80fは、面コンタクト部80scから半導体基板10の裏面に沿って面発光領域SER内に延びる。
【0024】
半導体基板10はQCL光を透過するが、光吸収はゼロではない。したがって、半導体基板10のZ方向の厚さを薄くすることにより、QCL光の出力を向上させることができる。しかしながら、半導体基板10を薄くすると、例えば、第2電極80から活性層30に注入される電流のうちの半導体基板10の裏面に沿った方向に流れる成分が、半導体基板10から活性層30に向かう方向に流れる成分よりも多くなる(図1参照)。このため、活性層30の外周部に中央よりも多くの電流が注入されるようになる。その結果、活性層30への電子注入が不均一となり、発光効率が低下する。
【0025】
実施形態に係る半導体発光装置1では、面発光領域SER内に延びる細線コンタクト部80fを設けることにより、活性層30への電子注入を均一化する。
【0026】
図3は、第1実施形態に係る半導体発光装置1の活性層30を示す模式断面図である。活性層30は、例えば、量子井戸層33および障壁層35を、第1半導体層20の上面に直交する方向、例えば、Z方向に交互に積層した量子井戸構造を有する。また、活性層30は、電子注入領域30aと、発光領域30bと、を含む。電子注入領域30aおよび発光領域30bは、Z方向に交互に配置される。量子井戸層33は、例えば、InGaAsを含み、障壁層35は、例えば、AlInAsを含む。ここで、AlInAsは、組成式AlIn1-yAs(0<y<1)で表される半導体混晶である。
【0027】
なお、図3中には、電子注入領域30aおよび発光領域30bの2つのペアが記載されているが、実施形態はこれに限定される訳ではない。活性層30中に設けられる電子注入領域30aおよび発光領域30bのペア数は任意であり、活性層30は、例えば、10以上のペアを含んでも良い。
【0028】
図4は、第1実施形態に係る半導体発光装置1の第2電極80を示す模式平面図である。図4は、半導体基板10の裏面側を表す平面図である。
【0029】
第2電極80は、面コンタクト部80scと、細線コンタクト部80fvと、細線コンタクト部80fhと、を含む。面コンタクト部80scは、面発光領域SERを囲むように設けられる。細線コンタクト部80fvおよび80fhは、それぞれ、面コンタクト部80scから面発光領域SERに延びる。
【0030】
第2電極80の外形は、例えば、1辺の長さLeが2000μmの正方形である。面発光領域SERは、例えば、円形であり、その直径Dserは、例えば、1000μmである。細線コンタクト部80fvおよび80fhは、例えば、10~20μmの幅を有する。細線コンタクト部80fvおよび80fhは、QCL光の出力の低下が無視できる程度となるように設けられる。
【0031】
細線コンタクト部80fvは、細線コンタクト部80fhに直交する方向に延在する。細線コンタクト部80fhは、例えば、X方向に延びる。細線コンタクト部80fvは、例えば、Y方向に延びる。細線コンタクト部80fvおよび80fhの面発光領域SER内における配置は、対称性を有さず、線対称でもなく、点対称でもない。また、細線コンタクト部80fvおよび80fhは、非回転対称となるように配置される。
【0032】
細線コンタクト部80fvおよび80fhは、それぞれ、面コンタクト部80scにつながった一方の端と、面発光領域SER内に位置する他方の端を有する。面発光領域SER内には、複数の細線コンタクト部80fvおよび複数の細線コンタクト部80fhが設けられてよい。細線コンタクト部80fvおよび80fhは、例えば、一方の端から他方の端までの長さが相互に異なるように設けられる。
【0033】
図5(a)~(c)は、第1実施形態に係る半導体発光装置1の出力特性を示す模式図である。図5(a)は、第2電極81と、面発光領域SERから放射されるQCL光のFFP(Far Field Pattern)を表している。図5(b)および(c)は、第2電極82および第2電極80と、それぞれのFFPと、を表している。
【0034】
図5(a)に示す例では、第2電極81は、細線コンタクト部を有しない。第2電極81によるFFPは同心円状であり、パターンの乱れはない。例えば、細線コンタクト部を設けないことにより、活性層30への電流注入が不均一になるとしても、このようにFFPに乱れが生じる訳ではないが、光出力は低下する。したがって、細線コンタクト部を設けることにより光出力の低下を抑制ながら、FFPの乱れも抑制することが望まれる。
【0035】
図5(b)に示す第2電極82は、2つの細線コンタクト部82fhおよび2つの細線コンタクト部82fvを含む。細線コンタクト部82fhは、X方向に延在する。細線コンタクト部82fvは、Y方向に延在する。細線コンタクト部82fhのX方向の長さは、細線コンタクト部82fvのY方向の長さと同じである。2つの細線コンタクト部82fhは、それぞれの端がX方向において向き合うように配置される。また、2つの細線コンタクト部82fvは、それぞれの端がY方向において向き合うように配置される。
【0036】
図5(b)に示すように、細線コンタクト部82fvおよび82fhは、90度の回転対称となるように配置される。これに対応して、第2電極82によるFFPは、細線コンタクト部82fvおよび82fhが設けられた位置に、明確な強度ピークHIPを有する。すなわち、細線コンタクト部82fvおよび82fhを設けることにより、FFPに乱れを生じる。
【0037】
図5(c)に示す第2電極80では、細線コンタクト部80fvおよび80fhは、非回転対称となるように配置される。このため、第2電極80によるFFPに多少の乱れが生じるとしても、明確な強度ピークHIPは生じない。すなわち、細線コンタクト部80fhおよび80fvを非回転対称に配置することにより、FFPの乱れを抑制することができる。
【0038】
図6は、第1実施形態の変形例に係る半導体発光装置1の第2電極83を示す模式平面図である。第2電極83は、90度の回転対称となるように配置された細線コンタクト部83fhおよび83fvに加えて、細線コンタクト部83fheを含む。細線コンタクト部83fheは、例えば、2つの細線コンタクト部83fhのうちの1つからY方向に離間した位置に設けられる。
【0039】
この例では、細線コンタクト部83fh、83fvおよび83fheの配置は、細線コンタクト部83fheの追加により非回転対称となる。これにより、第2電極83によるFFPの乱れを抑制することができる。
【0040】
図7(a)および(b)は、第1実施形態の別の変形例に係る半導体発光装置1の第2電極84および第2電極85を示す模式平面図である。
【0041】
図7(a)に示すように、第2電極84は、面コンタクト部84sc、細線コンタクト部84fh、84fvおよび84fsを含む。細線コンタクト部84fh、84fvおよび84fsは、非回転対称に配置され、面コンタクト部84scにつながるように設けられる。
【0042】
細線コンタクト部84fhは、X方向に延在する。細線コンタクト部84fvは、Y方向に延在する。細線コンタクト部84fsは、X方向およびY方向と交差する方向に延在する。細線コンタクト部84fh、84fvおよび84fsは、例えば、相互に異なる長さを有する。
【0043】
図7(b)に示す例では、第2電極85は、面コンタクト部85sc、細線コンタクト部85fh、85fvおよび85fsを含む。細線コンタクト部85fh、85fvおよび85fsは、非回転対称に配置され、面コンタクト部85scにつながるように設けられる。
【0044】
細線コンタクト部85fhは、X方向に延在する。細線コンタクト部85fvは、Y方向に延在する。細線コンタクト部85fsは、X方向およびY方向と交差する方向に延在する。さらに、1つの細線コンタクト部85fsは、分岐部85fbを含む。このように、各細線コンタクト部は、分岐した部分を含んでも良い。
【0045】
図8(a)~(c)は、第1実施形態のさらなる別の変形例に係る半導体発光装置1の第2電極86~88を示す模式平面図である。
【0046】
図8(a)に示す例では、第2電極86は、面コンタクト部86sc、細線コンタクト部86fh、86fv、86fsおよび86fcを含む。細線コンタクト部86fh、86fv、86fsおよび86fcは、非回転対称に配置され、面コンタクト部86scにつながるように設けられる。
【0047】
細線コンタクト部86fhは、X方向に延在する。細線コンタクト部86fvは、Y方向に延在する。細線コンタクト部86fsは、X方向およびY方向と交差する方向に延在する。細線コンタクト部86fsは、分岐部86fbを含む。細線コンタクト部86fcは、半導体基板10の裏面に沿った曲線形状を有する。このように、各細線コンタクト部の形状は、直線に限定される訳ではなく、曲線を含んでも良い。
【0048】
図8(b)に示す例では、第2電極87は、面コンタクト部87sc、細線コンタクト部87fh、87fv、87fsおよび87fcを含む。細線コンタクト部87fh、87fv、87fsおよび87fcは、非回転対称に配置され、面コンタクト部87scに電気的につながるように設けられる。
【0049】
図8(b)に示すように、細線コンタクト部87fcは、細線コンタクト部87fhおよび細線コンタクト部87fvと組み合わされる。細線コンタクト部87fhは、面コンタクト部87scからX方向に延在する。細線コンタクト部87fhの一方の端は、面コンタクト部87scにつながる。一方、細線コンタクト部87fhの他方の端は、細線コンタクト部87fcにつながる。また、細線コンタクト部87fvは、細線コンタクト部87fcから分岐し、Y方向に延在する。細線コンタクト部87fsは、X方向およびY方向と交差する方向に延在する。このように、各細線コンタクト部は、直線と曲線を組み合わせた形状を有するように設けられてもよい。
【0050】
図8(c)に示す例では、第2電極88は、面コンタクト部88scおよび細線コンタクト部88fcを含む。細線コンタクト部88fcは、面コンタクト部88scにつながるように設けられ、例えば、半導体基板10の裏面に沿った渦巻形状を有する。細線コンタクト部88fcは、例えば、異なる曲率を有する複数の曲線を組み合わせた形状を有する。細線コンタクト部88fcは、面発光領域SERにおいて、非回転対称に設けられる。
【0051】
このように、面発光型半導体発光装置1の第2電極80、82~88は、面発光領域SERに設けられた少なくとも1つの細線コンタクト部を有する。これにより、活性層30における電子注入の均一性を向上させることができる。さらに、面発光領域SERにおける細線コンタクト部の配置を非回転対称とすることにより、QCL光のFFPの乱れを抑制することができる。
【0052】
なお、ここに示した細線コンタクト部は、各実施例に特有なものではなく、相互に組み合わせて実施することも可能である。
【0053】
(第2実施形態)
図9(a)および(b)は、第2実施形態に係る面発光型半導体発光装置2を示す模式断面図である。図9(b)は、図9(a)中に示すA-A線に沿った断面図である。半導体発光装置2は、例えば、リッジ導波路型のQCLである。
【0054】
図9(a)に示すように、半導体発光装置2は、第1導電形の半導体基板110と、第1導電形の第1半導体層120と、活性層130と、フォトニック結晶層140と、第1導電形の第2半導体層150と、第1電極160と、反射層165と、第2電極180と、を備える。
【0055】
半導体基板110は、例えば、n形InP基板である。第1半導体層120は、半導体基板110上に設けられる。第1半導体層120は、例えば、n形InP層である。第1半導体層120は、半導体基板110の第1導電形不純物の濃度よりも低濃度の第1導電形不純物を含む。
【0056】
活性層130は、第1半導体層120上に設けられる。活性層130は、例えば、キャリアのサブバンド間遷移を生じさせる量子井戸構造を有する(図3参照)。活性層130は、例えば、シリコンをドープしたn形のIII-V族化合物半導体結晶を含み、電子のサブバンド遷移により発光する。
【0057】
第2半導体層150は、活性層130上に設けられる。第2半導体層150は、例えば、n形InP層である。第2半導体層150は、半導体基板110の第1導電形不純物の濃度よりも低濃度の第1導電形不純物を含む。
【0058】
フォトニック結晶層140は、半導体発光装置2の出力端LOEにおいて、活性層130と第2半導体層150との間に設けられる。フォトニック結晶層140は、特定の周期構造(図10参照)を有し、活性層130から放出される光の伝播方向を制御する。フォトニック結晶層140は、例えば、InGaAsを含む。
【0059】
第1電極160は、第2半導体層150上に設けられる。第1電極160は、第2半導体層150に、例えば、オーミック接続される。第1電極160は、例えば、金(Au)を含む金属層である。
【0060】
反射層165は、半導体発光装置2の出力端LOEにおいて、第2半導体層150上に設けられる。反射層165は、フォトニック結晶層140を覆うように設けられる。反射層165は、第2半導体層150上において、第1電極160から離間して設けられる。反射層165は、例えば、金(Au)を含む金属層である。
【0061】
第2電極180は、半導体基板110の活性層130とは反外側の裏面上に設けられる。半導体基板110は、活性層130と第2電極180との間に位置する。第2電極180は、例えば、金(Au)およびチタニウム(Ti)を含む金属層である。第2電極180は、半導体基板110に、例えば、オーミック接続される。
【0062】
半導体発光装置2は、半導体基板110の裏面内に面発光領域SERを有する。面発光領域SERは、出力端LOEに設けられ、反射層165に対向する。フォトニック結晶層140は、反射層165と面発光領域SERとの間に位置する。
【0063】
半導体発光装置2は、例えば、リッジ導波路領域RWRと、出力端LOEと、を含む。リッジ導波路領域RWRは、半導体基板110、第1半導体層120、活性層130および第2半導体層150を含む積層構造を有する。出力端LOEは、X方向において、リッジ導波路領域RWRに並び、半導体基板110、第1半導体層120、活性層130、フォトニック結晶層140および第2半導体層150を含む積層構造を有する。
【0064】
図9(b)に示すように、半導体発光装置2は、第1半導体層120上に設けられたリッジ導波路構造を有する。リッジ導波路RWは、第1半導体層120の一部と、活性層130と、第2半導体層150と、を含む。リッジ導波路RWは、第1半導体層120上において、X方向に延びる。
【0065】
第1電極160は、リッジ導波路RWおよび第1半導体層120の表面を覆うように設けられる。第1電極160は、リッジ導波路RWの上面において、第2半導体層150に電気的に接続される。
【0066】
半導体発光装置2は、絶縁膜170をさらに備える。絶縁膜170は、リッジ導波路RWの側面および第1半導体層120の表面を覆うように設けられる。絶縁膜170は、第1電極160とリッジ導波路RWとの間に設けられ、第1半導体層120および活性層130を第1電極160から電気的に絶縁する。絶縁膜170は、例えば、シリコン酸化膜である。
【0067】
図10は、第2実施形態に係る半導体発光装置2の出力端LOEを模式的示す斜視図である。
【0068】
図10に示すように、半導体発光装置2は、面発光領域SERに設けられた複数の細線コンタクト部180fをさらに含む。細線コンタクト部180fは、それぞれ、リッジ導波路RWの延在方向と同じ方向、例えば、X方向に延びる。また、複数の細線コンタクト部180fは、面発光領域SER(すなわち、半導体基板110の裏面)に沿って、Y方向に並ぶ。細線コンタクト部180fは、例えば、第2電極180と同じ材料を含む。
【0069】
半導体発光装置2では、QCL光は、リッジ導波路RWに沿って、その延在方向に伝播し、出力端LOEに入る。出力端LOEでは、フォトニック結晶層140によりQCL光の伝播方向が変えられる。
【0070】
フォトニック結晶層140は、周期構造の屈折率差により2次元回折格子として機能し、QCL光の射出角度を制御する。フォトニック結晶層140は、QCL光が活性層130と第1半導体層120との境界に概ね垂直な方向に放出されるように設けられる。「概ね垂直」とは、例えば、活性層130と第1半導体層120との境界に対するQCL光の伝播方向の角度が81°以上99°以下であることを意味する。
【0071】
フォトニック結晶層140において伝播方向が変えられ、活性層130から半導体基板110の裏面に向かう方向に伝播するQCL光は、面発光領域SERから外部に放出される。一方、活性層130から反射層165に向かう方向に伝播するQCL光は、反射層165において反射され、半導体基板110の裏面に向かう方向に伝播する。その結果、リッジ導波路領域RWRから出力端LOEに入射したQCL光は、面発光領域SERから外部に放出される。
【0072】
さらに、面発光領域SERに設けられた複数の細線コンタクト部180fは、1次元の回折レンズとして機能し、面発光領域SERから放出されるQCL光の伝播方向を制御する。
【0073】
図11(a)~(c)は、第2実施形態に係る半導体発光装置2を示す模式平面図である。図11(a)は、半導体発光装置2の上面を示す平面図である。図11(b)および(c)は、半導体基板110の裏面を示す平面図である。
【0074】
図11(a)に示すように、第1電極160は、リッジ導波路領域RWRに設けられ、リッジ導波路RWを覆う。反射層165は、第1電極160から離間して、出力端LOEに設けられる。第1電極160および反射層165は、リッジ導波路RWの延在方向、例えば、X方向に並ぶ。
【0075】
図11(b)に示すように、第2電極180は、リッジ導波路領域RWRにおいて、半導体基板110の裏面上に設けられる。細線コンタクト部180fは、例えば、第2電極180から面発光領域SERへ延出するように設けられる。細線コンタクト部180fの一方の端は、第2電極180につながり、他方の端は、面発光領域SER内に位置する。
【0076】
図11(c)に示すように、細線コンタクト部180fは、第2電極180から離間して、面発光領域SER内に設けられても良い。
【0077】
図12(a)および(b)は、第2実施形態に係る半導体発光装置2の出力特性を示す模式図である。図12(a)は、細線コンタクト部180fの配置を表す平面図である。図12(b)は、QCL光の伝播経路を表す断面図である。
【0078】
図12(a)に示すように、複数の細線コンタクト部180fは、Y方向において隣り合う細線コンタクト部180fの間隔が配置の中央からY方向および-Y方向にそれぞれ狭くなるように設けられる。
【0079】
図12(b)に示すように、フォトニック結晶層140により伝播方向を変えられたQCL光は、面発光領域SERに向かって伝播し、細線コンタクト部180fの間を通過する。QCL光は、細線コンタクト部180fにより回折され、例えば、面発光領域SER(すなわち、半導体基板110の裏面)から-Z方向に離れた位置fcに集光される。
【0080】
図13(a)および(b)は、第2実施形態の変形例に係る半導体発光装置2の出力特性を示す模式図である。図13(a)は、細線コンタクト部180fの配置を表す平面図である。図13(b)は、QCL光の伝播経路を表す断面図である。
【0081】
図13(a)に示すように、複数の細線コンタクト部180fは、Y方向において隣り合う細線コンタクト部180fの間隔が配置の中央からY方向および-Y方向にそれぞれ狭くなるように設けられる。この例では、隣り合う細線コンタクト部180fの間隔が、図12(a)に示す配置よりも広くなるように設けられる。
【0082】
図13(b)に示すように、QCL光は、面発光領域SERに向かって伝播し、細線コンタクト部180fの間を通過する。細線コンタクト部180fにより回折されたQCL光は、平行光となって外部に放出される。
【0083】
図14は、第2実施形態に係る半導体発光装置2の回折レンズを表す模式図である。例えば、物点から回折レンズ(細線コンタクト部180f)を経て像点まで達する光路長のそれぞれが、互いに、波長の整数倍だけ異なる場合、光は像点に集光される。また、光路長のそれぞれが互いに一致している場合も、光は像点に集光される。
【0084】
例えば、物点が細線コンタクト部180fからZ方向に無限遠方にあるとすれば、細線コンタクト部180fに入射する光は平行光となり、波面は、細線コンタクト部180fの並びの方向(Y方向)に平行となる。この時、細線コンタクト部180fのY方向における配列の中心から各細線コンタクト部180fの外縁までの距離がnfλの平方根に等しい時、光は像点に集光される。ここで、「n」は整数であり、「f」は細線コンタクト部180fの配列の中心から像点までの距離である。「λ」は光の波長である。各細線の線幅は、近隣の細線とぶつからないよう設定される。線幅を調整することにより、集光効率を最適化できる。
【0085】
上記の例では、細線コンタクト部180fの配列が線対称である場合について説明しているが、実施形態は、これに限定される訳ではない。例えば、細線コンタクト部180fは、非回転対称となるように配置されても良い。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0087】
1、2…面発光型半導体発光装置、 10、110…半導体基板、 13…バッファ層、 20、120…第1半導体層、 30、130…活性層、 30a…電子注入領域、 30b…発光領域、 33…量子井戸層、 35…障壁層、 40、140…フォトニック結晶層、 50、150…第2半導体層、 60、160…第1電極、 70、170…絶縁膜、 80~88、180…第2電極、 80sc、84sc、85sc、86sc、87sc、88sc…面コンタクト部、 80f、80fh、80fv、82fh、82fv、83fh、83fhe、84fh、84fs、84fv、85fh、85fs、85fv、86fc、86fh、86fs、86fv、87fc、87fh、87fs、87fv、88fc、180f…細線コンタクト部、 85fb、86fb…分岐部、 165…反射層、 HIP…強度ピーク、 LER…発光領域、 LOE…出力端、 PC…周期構造、 RW…リッジ導波路、 RWR…リッジ導波路領域、 SER…面発光領域
図1
図2
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図10
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