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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】感熱記録用組成物
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/333 20060101AFI20250213BHJP
   B41M 5/337 20060101ALI20250213BHJP
   B41M 5/327 20060101ALI20250213BHJP
   B41M 5/41 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
B41M5/333 220
B41M5/337 212
B41M5/327 215
B41M5/41 200
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021158833
(22)【出願日】2021-09-29
(65)【公開番号】P2023049221
(43)【公開日】2023-04-10
【審査請求日】2024-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】戸田 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】宮永 恭平
(72)【発明者】
【氏名】柴垣 皓輔
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-006181(JP,A)
【文献】国際公開第2017/111032(WO,A1)
【文献】特開2018-062083(JP,A)
【文献】国際公開第2021/171983(WO,A1)
【文献】特開平08-310120(JP,A)
【文献】特開2020-066148(JP,A)
【文献】国際公開第2022/024971(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/196512(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/209702(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0077178(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/333
B41M 5/337
B41M 5/327
B41M 5/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発色剤、顕色剤及び増感剤を含む感熱記録用組成物であって、該顕色剤が下記式(1)
【化1】
(式(1)中、R乃至Rは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基又はアリールアミノ基を表す。)
で表される化合物を含有し、且つ増感剤が1,2-ビス(トシルオキシ)エタンを含有する感熱記録用組成物。
【請求項2】
、R、R及びRが水素原子である請求項1に記載の感熱記録用組成物。
【請求項3】
がメチル基である請求項2に記載の感熱記録用組成物。
【請求項4】
式(1)で表される化合物が、下記式(2)
【化2】
で表される化合物である請求項3に記載の感熱記録用組成物。
【請求項5】
増感剤の含有量が、顕色剤の含有量の10乃至250質量%である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の感熱記録用組成物。
【請求項6】
発色剤が、トリアリールメタン化合物、フルオラン化合物、アザフタリド化合物及びフルオレン化合物からなる群より選択される化合物を含有する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の感熱記録用組成物。
【請求項7】
発色剤が、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-p-トルイジノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(o,p-ジメチルアニリノ)フルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(シクロヘキシル-N-メチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-N-n-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(m-メチルアニリノ)フルオラン、3-N-n-ジブチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-(N-エチル-N-テトラヒドロフルフリルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-エトキシプロピルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソブチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン及び3-ジペンチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオランからなる群より選択されるフルオラン化合物を含有する請求項6に記載の感熱記録用組成物。
【請求項8】
支持体上に、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の感熱記録用組成物からなる感熱記録層を有する感熱記録材料。
【請求項9】
支持体が、上質紙、合成紙又はプラスチックフィルムである請求項8に記載の感熱記録材料。
【請求項10】
感熱記録層の塗布量が、1乃至20g/mである請求項8又は9に記載の感熱記録材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱応答性と保存安定性に優れた感熱記録材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
感熱記録材料は、一般に通常無色ないし淡色のロイコ染料とフェノール性化合物等の顕色性化合物をそれぞれ微粒子状に分散化した後に両者を混合し、これに結合剤、増感剤、充填剤、滑剤等の添加剤を添加して得られた塗工液を、紙、フィルム、合成紙等に塗布して用いられる。前記で得られた塗布物に、サーマルヘッドを内蔵したサーマルプリンター等を用いて加熱を施すことにより、ロイコ染料と顕色性化合物の一方または両者が溶融、接触して起こる化学反応によって発色記録(印字)が得られる。
感熱記録法は他の記録法と比較して、(1)記録時に騒音が出ない、(2)現像、定着の必要がない、(3)メンテナンスフリーである、(4)機械が比較的安価である等の利点を有することから、ファクシミリ分野、コンピューターのアウトプット、電卓などのプリンター分野、医療計測用のレコーダー分野、自動券売機分野、感熱記録型ラベル分野等に広く用いられている。
【0003】
近年、感熱記録材料の用途は、小売店やスーパーマーケット等のPOSシステム化や交通機関の自動システム化に伴うラベル類、乗車券及び回数券等の分野で増加している。これらの用途においては、水やアルコール等に対する記録像(印字、画像、パターン)の耐性が必須条件となっている。また、生産性を向上させるため高速記録に対する要求が一段と高まっており、高速記録に十分対応できる、熱応答性に優れた感熱記録材料の開発が強く望まれている。熱応答性を高めるためには、一般的に融点が低く、融解熱の小さい顕色性化合物が必要となるが、このような顕色性化合物を用いた場合、製造時、使用時あるいは保管時における感熱記録材料の未印字部(地肌)が黒ずむ、いわゆる地肌かぶりと呼ばれる現象が起こり易くなることから、地肌の安定性の向上が望まれている。
【0004】
一般にフェノール性水酸基を有する顕色性化合物は顕色能が高く、中でもビスフェノール系化合物は、発色濃度の高さから数多くの報告がなされており、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニルプロパン)(ビスフェノールA)(特許文献1)及び4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノールS)(特許文献2)等が提案されている。しかしながら、これらの化合物は融点が高いために熱応答性に劣るのに加え、印字部が耐水性に劣る欠点を有する。しかもビスフェノールA等のフェノール系化合物は、エンドクリン問題からその使用が問題として指摘されており、フェノール構造を含まない、非フェノール系の顕色性化合物が要望されている。
【0005】
このような要望に対し、特許文献3には、印字部の耐水性に優れ、且つ地肌が熱に対し高い安定性を示す非フェノール系の顕色性化合物として、[3-(3-フェニルウレイド)フェニル]=4-メチルベンゼンスルホナートが開示されている。しかしながら、該化合物は熱応答性が十分とは言えず、高速記録に対応するために更なる熱応答性の向上が望まれている。
【0006】
通常、感熱記録材料の熱応答性の改良を目的として、低融点の増感剤(熱可融性化合物)を添加する手法が採用されており、高温環境下における耐熱保存性を保持するために比較的高融点の増感剤を添加してもよいが、低い印加エネルギー領域では増感剤の融解が起こりにくくなり、印字発色反応が十分に誘発されなくなるため、さらなる熱応答性の向上が課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第3539375号
【文献】特開昭57-11088号公報
【文献】特許第6529197号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前述した従来技術の問題を解決すること、より具体的には、熱応答性に優れ、尚且つ高温環境下における印字部並びに地肌の耐熱保存性に優れた感熱記録材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、発色性化合物、特定構造の顕色性化合物及び特定構造の増感剤化合物を含む感熱記録材料が上記の課題を解決することを新たに見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち本発明は、
[1]発色剤、顕色剤及び増感剤を含む感熱記録用組成物であって、該顕色剤が下記式(1)
【0010】
【化1】
【0011】
(式(1)中、R乃至Rは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基又はアリールアミノ基を表す。)
で表される化合物を含有し、且つ増感剤が1,2-ビス(トシルオキシ)エタンを含有する感熱記録用組成物、
[2]R、R、R及びRが水素原子である前項[1]に記載の感熱記録用組成物、
[3]Rがメチル基である前項[2]に記載の感熱記録用組成物、
[4]式(1)で表される化合物が、下記式(2)
【0012】
【化2】
【0013】
で表される化合物である前項[3]に記載の感熱記録用組成物、
[5]増感剤の含有量が、顕色剤の含有量の10乃至250質量%である前項[1]乃至[4]のいずれか一項に記載の感熱記録用組成物、
[6]発色剤が、トリアリールメタン化合物、フルオラン化合物、アザフタリド化合物及びフルオレン化合物からなる群より選択される化合物を含有する前項[1]乃至[5]のいずれか一項に記載の感熱記録用組成物、
[7]発色剤が、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-p-トルイジノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(o,p-ジメチルアニリノ)フルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(シクロヘキシル-N-メチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-N-n-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(m-メチルアニリノ)フルオラン、3-N-n-ジブチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-(N-エチル-N-テトラヒドロフルフリルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-エトキシプロピルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソブチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン及び3-ジペンチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオランからなる群より選択されるフルオラン化合物を含有する前項[6]に記載の感熱記録用組成物、
[8]支持体上に、前項[1]乃至[7]のいずれか一項に記載の感熱記録用組成物からなる感熱記録層を有する感熱記録材料、
[9]支持体が、上質紙、合成紙又はプラスチックフィルムである前項[8]に記載の感熱記録材料、及び
[10]感熱記録層の塗布量が、1乃至20g/mである前項[8]又は[9]に記載の感熱記録材料、
に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、熱応答性、及び印字部並びに地肌の高温環境下における耐熱保存安定性に優れた感熱記録材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明を実施形態に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。
本発明の感熱記録用組成物は、発色剤、上記一般式(1)で表される化合物を含む顕色剤及び1,2-ビス(トシルオキシ)エタンを含む増感剤を含有する。
【0016】
本発明の感熱記録用組成物に用いられる発色剤は、一般に感圧記録紙や感熱記録紙に用いられる発色性化合物であれば特に制限されない。
発色剤(発色性化合物)の具体例としては、フルオラン化合物、トリアリールメタン化合物、スピロ化合物、ジフェニルメタン化合物、チアジン化合物、ラクタム化合物、フルオレン化合物及びビニルフタリド化合物等が挙げられ、トリアリールメタン化合物、フルオラン化合物、アザフタリド化合物又はフルオレン化合物が好ましく、フルオラン化合物がより好ましい。これらの発色性化合物は単独もしくは混合して用いることができる。
【0017】
発色剤として用いられるフルオラン化合物は、一般に感熱記録紙の発色剤に用いられるフルオラン骨格を有する化合物であれば特に限定されない。
フルオラン化合物の具体例としては、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-メチル-N-シクロヘキシルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソペンチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソブチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-[N-エチル-N-(3-エトキシプロピル)アミノ]-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-ヘキシルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジペンチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-メチル-N-プロピルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-テトラヒドロフリルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(p-フルオロアニリノ)フルオラン、3-[N-エチル-N-(p-トリル)アミノ]-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(p-トルイジノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(o-フルオロアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-7-(o-フルオロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(3,4-ジクロロアニリノ)フルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-エトキシエチルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-オクチルフルオラン、3-[N-エチル-N-(p-トリル)アミノ]-6-メチル-7-フェネチルフルオラン、2-メチル-6-(N-p-トリル-N-エチルアミノ)フルオラン(RED520)、9-(N-エチル-N-イソペンチルアミノ)スピロ[ベンゾ[a]キサンテン-12,3’-フタリド](RED500)、2’-アニリノ-6’-(N-エチル-N-イソペンチルアミノ)-3’-メチルスピロ[フタリド-3,9’-キサンテン](S-205)、2’-アニリノ-6’-(N,N-ジペンタン-1-イルアミノ)-3’-メチル-3H-スピロ[イソベンゾフラン-1,9’-キサンテン]-3-オン(Black305)、2’-アニリノ-6’-(ジブチルアミノ)-3’-メチルスピロ[フタリド-3,9’-キサンテン](Black400)、2’-アニリノ-6’-[N-エチル-N-(4-トリル)アミノ]-3’-メチル-3H-スピロ[イソベンゾフラン-1,9’-キサンテン]-3-オン(ETAC)、6-(ジエチルアミノ)-2-[(3-トリフルオロメチル)アニリノ]キサンテン-9-スピロ-3’-フタリド(Black100)、1-エチル-8-[N-エチル-N-(4-メチルフェニル)アミノ]-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロスピロ[11H-クロメノ[2,3、-g]キノリン-11,3’-フタリド](H-1046)、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-ブロモフルオラン及び3-[4-(ジエチルアミノ)フェニル]-3-(1-エチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン(Blue502)等が挙げられ、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオランが好ましい。
【0018】
発色剤として用いられるトリアリールメタン化合物は、一般に感熱記録紙の発色剤に用いられるトリアリールメタン骨格を有する化合物であれば特に限定されない。
トリアリールメタン化合物の具体例としては、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド(別名:クリスタルバイオレットラクトンまたはCVL)、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)フタリド、3-(p-ジメチルアミノフェニル)-3-(1,2-ジメチルアミノインドール-3-イル)フタリド、3-(p-ジメチルアミノフェニル)-3-(2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3-(p-ジメチルアミノフェニル)-3-(2-フェニルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(1,2-ジメチルインドール-3-イル)-5-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(1,2-ジメチルインドール-3-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(9-エチルカルバゾール-3-イル)-5-ジメチルアミノフタリド、3,3-(2-フェニルインドール-3-イル)-5-ジメチルアミノフタリド、3-p-ジメチルアミノフェニル-3-(1-メチルピロール-2-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド(Blue200)、3-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヘキシルオキシフェニル]-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド(Blue203)、3-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)-3-(1-エチル2-メチル-1H-インドール-3-イル)-4-アザフタリド(Blue220)及び7-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-7-(1-エチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)フロ[3,4-b]ピリジン-5(7H)-オン(Blue63)等が挙げられる。
【0019】
発色剤として用いられるスピロ化合物は、一般に感熱記録紙の発色剤に用いられるスピロ骨格を有する化合物であれば特に限定されない。
スピロ化合物の具体例としては、3-メチルスピロジナフトピラン、3-エチルスピロジナフトピラン、3,3’-ジクロロスピロジナフトピラン、3-ベンジルスピロジナフトピラン、3-プロピルスピロベンゾピラン、3-メチルナフト-(3-メトキシベンゾ)スピロピラン及び1,3,3-トリメチル-6-ニトロ-8’-メトキシスピロ(インドリン-2,2’-ベンゾピラン)等が挙げられる。
【0020】
発色剤として用いられるジフェニルメタン化合物は、一般に感熱記録紙の発色剤に用いられるジフェニルメタン骨格を有する化合物であれば特に限定されない。
ジフェニルメタン化合物の具体例としては、N-ハロフェニル-ロイコオーラミン、4,4-ビス-ジメチルアミノフェニルベンズヒドリルベンジルエーテル及びN-2,4,5-トリクロロフェニルロイコオーラミン等が挙げられる。
【0021】
発色剤として用いられるチアジン化合物は、一般に感熱記録紙の発色剤に用いられるチアジン骨格を有する化合物であれば特に限定されない。
チアジン化合物の具体例としては、ベンゾイルロイコメチレンブルー、p-ニトロベンゾイルロイコメチレンブルー等が挙げられる。
【0022】
発色剤として用いられるラクタム化合物は、一般に感熱記録紙の発色剤に用いられるラクタム骨格を有する化合物であれば特に限定されない。
ラクタム化合物の具体例としては、ローダミンBアニリノラクタム及びローダミンB-p-クロロアニリノラクタム等が挙げられる。
【0023】
発色剤として用いられるフルオレン化合物は、一般に感熱記録紙の発色剤に用いられるフルオレン骨格を有する化合物であれば特に限定されない。
フルオレン化合物の具体例としては、3,6-ビス(ジメチルアミノ)フルオレンスピロ(9,3’)-6’-ジメチルアミノフタリド、3,6-ビス(ジメチルアミノ)フルオレンスピロ(9,3’)-6’-ピロリジノフタリド、3-ジメチルアミノ-6-ジエチルアミノフルオレンスピロ(9,3’)-6’-ピロリジノフタリド等が挙げられる。
【0024】
発色剤としてのビニルフタリド化合物は、一般に感熱記録紙の発色剤に用いられるビニルフタリド骨格を有する化合物であれば特に限定されない。
ビニルフタリド化合物の具体例としては、3-[2,2-ビス(4-ジエチルアミノフェニル)ビニル]-6-ジメチルアミノフタリド(H-3035)及び3,3-ビス[2-(4-ジメチルアミノフェニル)-2-(4-メトキシフェニル)ビニル]-4,5,6,7-テトラクロロフタリド(NIR Black78)等が挙げられる。
【0025】
本発明の感熱記録用組成物は上記式(1)で表される化合物を必須成分とする顕色剤を含有する。
式(1)中、R乃至Rは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基又はアリールアミノ基を表す。
【0026】
式(1)のR乃至Rが表すアルキル基は、直鎖、分岐鎖または環状の何れにも限定されないが、直鎖または分岐鎖が好ましく、直鎖がより好ましい。その炭素数は通常1乃至12であり、1乃至8が好ましく、1乃至6がより好ましく、1乃至4が更に好ましい。
式(1)のR乃至Rが表すアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基並びにn-ドデシル基等の直鎖のアルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、イソヘキシル基並びにイソオクチル基等の分岐鎖のアルキル基;及びシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基並びにシクロヘキシル基等の環状のアルキル基が挙げられる。
【0027】
式(1)のR乃至Rが表すアルコキシ基は、直鎖、分岐鎖または環状の何れにも限定されないが、直鎖または分岐鎖が好ましく、直鎖がより好ましい。その炭素数は通常1乃至12であり、1乃至8が好ましく、1乃至6がより好ましく、1乃至4が更に好ましい。
式(1)のR乃至Rが表すアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ペントキシ基、n-ヘキシロキシ基、n-ヘプトキシ基、n-オクチロキシ基、n-ノニロキシ基並びにn-デシロキシ基等の直鎖のアルコキシ基;イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基、イソアミロキシ基、t-アミロキシ基、イソヘキシロキシ基、t-ヘキシロキシ基、イソヘプトキシ基、t-ヘプトキシ基、イソオクチロキシ基、t-オクチロキシ基、2-エチルヘキシロキシ基、イソノニロキシ基、イソデシロキシ基等の分岐鎖(好ましくは炭素数3乃至10)のアルコキシ基;及びシクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペントキシ基、シクロヘキシロキシ基並びにシクロヘプトキシ基等の環状(好ましくは炭素数3乃至7)のアルコキシ基が挙げられる。
【0028】
式(1)のR乃至Rが表すアリールオキシ基としては、アリール基の炭素数が6乃至12のアリールオキシ基が好ましく、その具体例としては、フェノキシ基、ナフチロキシ基及びビフェニロキシ基等が挙げられる。
【0029】
式(1)のR乃至Rが表すアルキルカルボニルオキシ基中のアルキル基は、直鎖、分岐鎖または環状の何れにも限定されないが、該アルキル基が直鎖又は分岐鎖のアルキルカルボニルオキシ基が好ましく、直鎖のアルキルカルボニルオキシ基がより好ましい。また、アルキルカルボニルオキシ基中のアルキル基の炭素数は1乃至10が好ましい。
式(1)のR乃至Rが表すアルキルカルボニルオキシ基の具体例としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n-プロピルカルボニルオキシ基、n-ブチルカルボニルオキシ基、n-ペンチルカルボニルオキシ基、n-ヘキシルカルボニルオキシ基、n-ヘプチルカルボニルオキシ基、n-オクチルカルボニルオキシ基、n-ノニルカルボニルオキシ基並びにn-デシルカルボニルオキシ基等の直鎖のアルキルカルボニルオキシ基;イソプロピルカルボニルオキシ基、イソブチルカルボニルオキシ基、sec-ブチルカルボニルオキシ基、t-ブチルカルボニルオキシ基、イソアミルカルボニルオキシ基、t-アミルカルボニルオキシ基、イソヘキシルカルボニルオキシ基、t-ヘキシルカルボニルオキシ基、イソヘプチルカルボニルオキシ基、t-ヘプチルカルボニルオキシ基、イソオクチルカルボニルオキシ基、t-オクチルカルボニルオキシ基、2-エチルヘキシルカルボニルオキシ基、イソノニルカルボニルオキシ基並びにイソデシルカルボニルオキシ基等の分岐鎖(好ましくはアルキル部分の炭素数3乃至10)のアルキルカルボニルオキシ基;及びシクロプロピルカルボニルオキシ基、シクロブチルカルボニルオキシ基、シクロペンチルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、シクロヘプチルカルボニルオキシ基等の環状(好ましくはアルキル部分の炭素数3乃至7)のアルキルカルボニルオキシ基が挙げられる。
【0030】
式(1)のR乃至Rが表すアルキルカルボニルアミノ基中のアルキル基は、直鎖、分岐鎖または環状の何れにも限定されないが、該アルキル基が直鎖又は分岐鎖のアルキルカルボニルアミノ基が好ましく、直鎖のアルキルカルボニルアミノ基がより好ましい。また、アルキルカルボニルアミノ基中のアルキル基の炭素数は1乃至10が好ましい。
式(1)のR乃至Rが表すアルキルカルボニルアミノ基の具体例としては、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、n-プロピルカルボニルアミノ基、n-ブチルカルボニルアミノ基、n-ペンチルカルボニルアミノ基、n-ヘキシルカルボニルアミノ基、n-ヘプチルカルボニルアミノ基、n-オクチルカルボニルアミノ基、n-ノニルカルボニルアミノ基並びにn-デシルカルボニルアミノ基等の直鎖のアルキルカルボニルアミノ基;イソプロピルカルボニルアミノ基、イソブチルカルボニルアミノ基、sec-ブチルカルボニルアミノ基、t-ブチルカルボニルアミノ基、イソアミルカルボニルアミノ基、t-アミルカルボニルアミノ基、イソヘキシルカルボニルアミノ基、t-ヘキシルカルボニルアミノ基、イソヘプチルカルボニルアミノ基、t-ヘプチルカルボニルアミノ基、イソオクチルカルボニルアミノ基、t-オクチルカルボニルアミノ基、2-エチルヘキシルカルボニルアミノ基、イソノニルカルボニルアミノ基並びにイソデシルカルボニルアミノ基等の分岐鎖(好ましくはアルキル部分の炭素数3乃至10)のアルキルカルボニルアミノ基;及びシクロプロピルカルボニルアミノ基、シクロブチルカルボニルアミノ基、シクロペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基並びにシクロヘプチルカルボニルアミノ基等の環状(好ましくはアルキル部分の炭素数3乃至7)のアルキルカルボニルアミノ基が挙げられる。
【0031】
式(1)のR乃至Rが表すアリールカルボニルアミノ基としては、アリール基の炭素数が6乃至12のアリールカルボニルアミノ基が好ましく、その具体例としては、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基及びビフェニルカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0032】
式(1)のR乃至Rが表すアルキルスルホニルアミノ基中のアルキル基は、直鎖、分岐鎖又は環状の何れにも限定されないが、該アルキル基が直鎖又は分岐鎖のアルキルスルホニルアミノ基が好ましく、直鎖のアルキルスルホニルアミノ基がより好ましい。また、アルキルスルホニルアミノ基中のアルキル基の炭素数は1乃至10が好ましい。
式(1)のR乃至Rが表すアルキルスルホニルアミノ基の具体例としては、メチルスルホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、n-プロピルスルホニルアミノ基、n-ブチルスルホニルアミノ基、n-ペンチルスルホニルアミノ基、n-ヘキシルスルホニルアミノ基、n-ヘプチルスルホニルアミノ基、n-オクチルスルホニルアミノ基、n-ノニルスルホニルアミノ基並びにn-デシルスルホニルアミノ基等の直鎖のアルキルスルホニルアミノ基;イソプロピルスルホニルアミノ基、イソブチルスルホニルアミノ基、sec-ブチルスルホニルアミノ基、t-ブチルスルホニルアミノ基、イソアミルスルホニルアミノ基、t-アミルスルホニルアミノ基、イソヘキシルスルホニルアミノ基、t-ヘキシルスルホニルアミノ基、イソヘプチルスルホニルアミノ基、t-ヘプチルスルホニルアミノ基、イソオクチルスルホニルアミノ基、t-オクチルスルホニルアミノ基、2-エチルヘキシルスルホニルアミノ基、イソノニルスルホニルアミノ基並びにイソデシルスルホニルアミノ基等の分岐鎖(好ましくはアルキル部分の炭素数3乃至10)のアルキルスルホニルアミノ基;及びシクロプロピルスルホニルアミノ基、シクロブチルスルホニルアミノ基、シクロペンチルスルホニルアミノ基、シクロヘキシルスルホニルアミノ基並びにシクロヘプチルスルホニルアミノ基等の環状(好ましくはアルキル部分の炭素数3乃至7)のアルキルスルホニルアミノ基が挙げられる。
【0033】
式(1)のR乃至Rが表すアリールスルホニルアミノ基としては、アリール基の炭素数が6乃至12のアリールスルホニルアミノ基が好ましく、その具体例としては、フェニルスルホニルアミノ基、トルエンスルホニルアミノ基、ナフチルスルホニルアミノ基及びビフェニルスルホニルアミノ基等が挙げられる。
【0034】
式(1)のR乃至Rが表すモノアルキルアミノ基中のアルキル基は、直鎖、分岐鎖又は環状の何れにも限定されないが、該アルキル基が直鎖又は分岐鎖のモノアルキルアミノ基が好ましく、直鎖のモノアルキルアミノ基がより好ましい。また、モノアルキルアミノ基の炭素数は1乃至10が好ましい。
式(1)のR乃至Rが表すモノアルキルアミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、n-ペンチルアミノ基、n-ヘキシルアミノ基、n-ヘプチルアミノ基、n-オクチルアミノ基、n-ノニルアミノ基並びにn-デシルアミノ基等の直鎖のモノアルキルアミノ基;イソプロピルアミノ基、イソブチルアミノ基、sec-ブチルアミノ基、t-ブチルアミノ基、イソアミルアミノ基、t-アミルアミノ基、イソヘキシルアミノ基、t-ヘキシルアミノ基、イソヘプチルアミノ基、t-ヘプチルアミノ基、イソオクチルアミノ基、t-オクチルアミノ基、2-エチルヘキシルアミノ基、イソノニルアミノ基並びにイソデシルアミノ基等の分岐鎖(好ましくは炭素数3乃至10)のモノアルキルアミノ基;及びシクロプロピルアミノ基、シクロブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基並びにシクロヘプチルアミノ基等の環状(好ましくは炭素数3乃至7)のモノアルキルアミノ基が挙げられる。
【0035】
式(1)のR乃至Rが表すジアルキルアミノ基中のアルキル基は、直鎖、分岐鎖又は環状の何れにも限定されないが、該アルキル基が直鎖又は分岐鎖のジアルキルアミノ基が好ましく、直鎖のジアルキルアミノ基がより好ましい。またモノアルキルアミノ基中のアルキル基の炭素数は1乃至10が好ましい。尚、ジアルキルアミノ基中の2つのアルキル基の炭素数は同じでも異なってもよいが、同じことが好ましい。
式(1)のR乃至Rが表すジアルキルアミノ基の具体例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n-プロピルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、ジ-n-ペンチルアミノ基、ジ-n-ヘキシルアミノ基、ジ-n-ヘプチルアミノ基、ジ-n-オクチルアミノ基、ジ-n-ノニルアミノ基並びにジ-n-デシルアミノ基等の直鎖のアルキル基を有するジアルキルアミノ基;ジイソプロピルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ-sec-ブチルアミノ基、ジ-t-ブチルアミノ基、ジイソアミルアミノ基、ジ-t-アミルアミノ基、ジイソヘキシルアミノ基、ジ-t-ヘキシルアミノ基、ジイソヘプチルアミノ基、ジ-t-ヘプチルアミノ基、ジイソオクチルアミノ基、ジ-t-オクチルアミノ基、ジ-(2-エチルヘキシル)アミノ基、ジイソノニルアミノ基並びにジイソデシルアミノ基等の分岐鎖(好ましくは炭素数3乃至10)のアルキル基を有するジアルキルアミノ基;及びジシクロプロピルアミノ基、ジシクロブチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基並びにジシクロヘプチルアミノ基等の環状(好ましくは炭素数3乃至7)のアルキル基を有するジアルキルアミノ基が挙げられる。
【0036】
式(1)のR乃至Rが表すアリールアミノ基はモノアリールアミノ基又はジアリールアミノ基の何れにも限定されないが、モノアリールアミノ基が好ましく、またアリールアミノ基中のアリール基の炭素数は6乃至12が好ましい。
式(1)のR乃至Rが表すアリールアミノ基の具体例としては、フェニルアミノ(アニリノ)基、ナフチルアミノ基、ビフェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基及びジ(ビフェニル)アミノ等が挙げられる。
【0037】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記一般式(1)におけるR乃至Rはアルキル基又は水素原子であり、炭素数1乃至4の直鎖のアルキル基又は水素原子がさらに好ましく、メチル基又は水素原子が特に好ましい。
【0038】
また、本発明の好ましい実施形態によれば、上記一般式(1)におけるR、R、R、及びRは水素原子であり、Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、またはアリールアミノ基であり、水素原子又はアルキル基がより好ましく、水素原子又は炭素数1乃至8のアルキル基(好ましくは直鎖アルキル基である)がさらに好ましく、水素原子又は炭素数1乃至4のアルキル基(好ましくは直鎖アルキル基である)が特に好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0039】
式(1)中のジフェニル尿素構造の一方のベンゼン環に結合する、下記一般式(3)で表される部分骨格の置換位置は、当該ベンゼン環上のアミノカルボニル基に対してオルト位、メタ位、またはパラ位の何れにも限定されないが、オルト位またはメタ位が好ましく、メタ位がより好ましい。
【0040】
【化3】
【0041】
本発明の好ましい実施形態によれば、顕色性化合物は、R乃至Rが、アルキル基または水素原子であり、一般式(3)で表される部分骨格の置換位置が、当該ベンゼン環上のアミノカルボニル基に対して、オルト位またはメタ位である上記一般式(1)の化合物であり、より好ましくは、R乃至Rが、炭素数1乃至8の直鎖のアルキル基または水素原子であり、一般式(3)で表される部分骨格の置換位置が、当該ベンゼン環上のアミノカルボニル基に対してメタ位である上記一般式(1)の化合物であり、さらに好ましくは、R乃至Rが、炭素数1乃至4の直鎖のアルキル基または水素原子であり、一般式(3)で表される部分骨格の置換位置が、当該ベンゼン環上のアミノカルボニル基に対してメタ位である上記一般式(1)の化合物であり、特に好ましくは、R乃至Rが、メチル基または水素原子であり、一般式(3)で表される部分骨格の置換位置が、当該ベンゼン環上のアミノカルボニル基に対してメタ位である上記一般式(1)の化合物である。
【0042】
また、本発明の他の好ましい実施形態によれば、顕色性化合物は、R、R、R、及びRは、水素原子であり、Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、またはアリールアミノ基であり、一般式(3)で表される部分骨格の置換位置が、当該ベンゼン環上のアミノカルボニル基に対してオルト位、メタ位、またはパラ位である上記一般式(1)の化合物であり、より好ましくは、R、R、R、及びRは、水素原子であり、Rは水素原子またはアルキル基であり、一般式(3)で表される部分骨格の置換位置が、当該ベンゼン環上のアミノカルボニル基に対してオルト位またはメタ位である上記一般式(1)の化合物であり、より好ましくは、R、R、R、及びRは、水素原子であり、Rは炭素数1乃至8の直鎖のアルキル基または水素原子であり、一般式(3)で表される部分骨格の置換位置が、当該ベンゼン環上のアミノカルボニル基に対してメタ位である上記一般式(1)の化合物であり、さらに好ましくは、R、R、R、及びRは、水素原子であり、Rは炭素数1乃至4の直鎖のアルキル基または水素原子であり、一般式(3)で表される部分骨格の置換位置が、当該ベンゼン環上のアミノカルボニル基に対してメタ位である上記一般式(1)の化合物であり、特に好ましくは、R、R、R、及びRは、水素原子であり、Rはメチル基であり、一般式(3)で表される部分骨格の置換位置が、当該ベンゼン環上のアミノカルボニル基に対してメタ位である上記一般式(1)の化合物である。
【0043】
尚、式(1)で表される化合物としては、上記したR、R、R並びにR、R及び式(3)で表される部分骨格の置換位置それぞれの、好ましいやより好ましい等の態様の組合せが好ましい。
即ち、式(1)で表される化合物の好ましい実施形態の一例としては、上記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0044】
式(1)で表される化合物の具体例を以下に記載するが、顕色剤が必須成分として含有する式(1)で表される化合物は、これらに限定されるものではない。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】
【0051】
【表7】
【0052】
本発明の感熱記録用組成物が含有する顕色剤には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、式(1)で表される化合物以外の顕色性化合物を併用してもよい。併用し得る顕色性化合物は特に制限されるものではないが、例えばベンゾトリアゾール誘導体(ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物、以下「誘導体」は同じ意味である)、サッカリン誘導体、スルホンアミド誘導体、マロンアミド誘導体、チオ尿素誘導体、スルホニルウレア誘導体及び芳香族カルボン酸誘導体等が挙げられる。
【0053】
ベンゾトリアゾール誘導体の具体例としては、ベンゾトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、4-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、フェニル-6-ベンゾトリアゾール、フェニル-5-ベンゾトリアゾール、クロロ-5-ベンゾトリアゾール、クロロ-5-メチルベンゾトリアゾール、クロロ-5-イソプロピル-7-メチル-4-ベンゾトリアゾール及びブロモ-5-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0054】
サッカリン誘導体の具体例としては、サッカリン、1-ブロモサッカリン、1-ニトロサッカリン及び1-アミノサッカリン等が挙げられる。
【0055】
スルホンアミド誘導体の具体例としては、メタニルアニリド、N-フェニル-4-アミノベンゼンスルホンアミド、ネオウリロン、N-フェニル-3-ニトロベンゼンスルホンアミド、N-(4-メチル-2-ニトロフェニル)ベンゼンスルホンアミド、N-(2-メトキシフェニル)-p-ルエンスルホンアミド、N-(4-トキシフェニル)-p-トルエンスルホンアミド、N-(2-クロロフェニル)-p-トルエンスルホンアミド、N-(4-メチルフェニル)-4-メチルベンゼンスルホンアミド、N-(2-メチルフェニル)-p-トルエンスルホンアミド、N-フェニルベンゼンスルホンアミド、4-ブロモ-4’-メチルベンゼンスルホンアニリド、N-(4-ブロモフェニル)ベンゼンスルホンアミド、N-(3-ニトロフェニル)ベンゼンスルホンアミド、N-(4-ニトロフェニル)-4-メチルベンゼンスルホンアミド、N-(4-メチルフェニル)ベンゼンスルホンアミド、N-フェニル-p-トルエンスルホンアミド及びN-フェニルベンゼンスルホンアミド等が挙げられる。
【0056】
マロンアミド誘導体の具体例としては、N,N’-ビス(2-ヒドロキシ-5-フェニル)フェニル-マロンアミド、N,N’-ジフェニルマロンアミド、N,N’-ビス(2,4,6-トリブロモフェニル)マロンアミド、N,N’-ビス(2-アミノフェニル)マロンアミド、N,N’-ビス(m-トリフルオロメチルフェニル)マロンアミド、N,N’-ビス(m-トリフルオロメチルフェニル)α、α-ジクロロマロンアミド及びジエチルマロンジアニリド等が挙げられる。
【0057】
チオ尿素誘導体の具体例としては、1,3-ビス(4-メチルフェニル)チオ尿素、1,3-ビスフェニルチオ尿素、1,3-ビス(4-クロロフェニル)チオ尿素、1,3-ビス(4-メトキシフェニル)チオ尿素、N,N′-ビス(3-クロロフェニル)チオ尿素、1,3-ビス(3-メトキシフェニル)チオ尿素、1,3-ビス(3-メチルフェニル)チオ尿素、1,3-ビス(4-ベンジルフェニル)チオ尿素、1,3-ビス(4-ブロモフェニル)チオ尿素、1-フェニル-3-ブチルチオ尿素及び1-フェニル-3-エチルチオ尿素等が挙げられる。
【0058】
スルホニルウレア誘導体の具体例としては、N-(p-トルエンスルホニル)-N’-(3-n-ブチルアミノスルホニルフェニル)尿素、N-(p-トルエンスルホニル)-N’-(4-トリメチルアセトフェニル)尿素、N-(ベンゼンスルホニル)-N’-(3-p-トルエンスルホニルオキシフェニル)尿素、N-(p-トルエンスルホニル)-N’-(3-p-トルエンスルホニルフェニル)尿素、N-(p-トルエンスルホニル)-N’-(3-フェニルスルホニルオキシフェニル)尿素、トルブタミド及びクロルプロパミド等が挙げられる。
【0059】
芳香族カルボン酸誘導体の具体例としては、p-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、p-ヒドロキシ安息香酸エチル、4-ヒドロキシフタル酸ジベンジル、4-ヒドロキシフタル酸ジメチル、5-ヒドロキシイソフタル酸エチル、3,5-ジ-t-ブチルサリチル酸、3,5-ジ-α-メチルベンジルサリチル酸及び芳香族カルボン酸若しくはその多価金属塩等が挙げられる。
【0060】
本発明の感熱記録用組成物が含有する増感剤には、1,2-ビス(トシルオキシ)エタン以外の増感剤を併用してもよい。併用し得る増感剤の具体例としては、動植物性ワックス並びに合成ワックス等のワックス類、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸アニリド、ナフタレン誘導体、芳香族エーテル、芳香族カルボン酸誘導体、芳香族スルホン酸エステル誘導体、炭酸若しくはシュウ酸ジエステル誘導体、ビフェニル誘導体、ターフェニル誘導体、スルホン誘導体、芳香族ケトン誘導体及び芳香族炭化水素化合物等が挙げられる。
【0061】
ワックス類の具体例としては、木ろう、カルナウバろう、シェラック、パラフィン、モンタンろう、酸化パラフィン、ポリエチレンワックス及び酸化ポリエチレン等が、高級脂肪酸の具体例としては、ステアリン酸及びベヘン酸等がそれぞれ挙げられる。高級脂肪酸アミドの具体例としては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、N-メチルステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、メチロールベヘン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド及びエチレンビスステアリン酸アミド等が、高級脂肪酸アニリドの具体例としては、ステアリン酸アニリド及びリノール酸アニリド等が、ナフタレン誘導体の具体例としては、1-ベンジルオキシナフタレン、2-ベンジルオキシナフタレン、1-ヒドロキシナフトエ酸フェニルエステル及び2,6-ジイソプロピルナフタレン等がそれぞれ挙げられる。芳香族エーテルの具体例としては、1,2-ジフェノキシエタン、1,4-ジフェノキシブタン、1,2-ビス(3-メチルフェノキシ)エタン、1,2-ビス(4-メチルフェノキシ)エタン、1,2-ビス(4-メトキシフェノキシ)エタン、1,2-ビス(3,4-ジメチルフェニル)エタン、1-フェノキシ-2-(4-クロロフェノキシ)エタン、1-フェノキシ-2-(4-メトキシフェノキシ)エタン、1,2-ジフェノキシメチルベンゼン及びジフェニルグリコール等が、芳香族カルボン酸誘導体の具体例としては、p-ヒドロキシ安息香酸ベンジルエステル、p-ベンジルオキシ安息香酸ベンジルエステル及びテレフタル酸ジベンジルエステル等がそれぞれ挙げられる。芳香族スルホン酸エステル誘導体の具体例としては、p-トルエンスルホン酸フェニルエステル、フェニルメシチレンスルホナート、4-メチルフェニルメシチレンスルホナート及び4-トリルメシチレンスルホナート等が、炭酸またはシュウ酸ジエステル誘導体の具体例としては、炭酸ジフェニル、シュウ酸ジベンジルエステル、シュウ酸ジ(4-クロロベンジル)エステル及びシュウ酸ジ(4-メチルベンジル)エステル類等が、ビフェニル誘導体の具体例としては、p-ベンジルビフェニル及びp-アリルオキシビフェニル等がそれぞれ挙げられる。ターフェニル誘導体の具体例としては、m-ターフェニル等が、スルホン誘導体の具体例としては、p-トルエンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアニリド、p-トルエンスルホンアニリド及びジフェニルスルホン等が、芳香族ケトン誘導体の具体例としては、4,4’-ジメチルベンゾフェノン及びジベンゾイルメタン等が、芳香族炭化水素化合物の具体例としては、p-アセトトルイジン等がそれぞれ挙げられる。
【0062】
本発明の感熱記録用組成物には、必要に応じて、保存性向上剤、結合剤、充填剤及びその他の添加剤等の任意成分を併用してもよい。これらの任意成分は、感熱記録層中に含有せしめてもよいが、多層構造からなる場合や、感熱記録層の上部及び/または下部に下塗り層(アンダーコート層)や保護層(オーバーコート層)を設けた場合には、これらの各層に含有させることもできる。
【0063】
本発明の感熱記録用組成物に併用し得る保存性向上剤の具体例としては、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(2-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、1-〔α-メチル-α-(4’-ヒドロキシフェニル)エチル〕-4-〔α’,α’-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、トリス(2,6-ジメチル-4-ターシャリーブチル-3-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’-チオビス(3-メチルフェノール)、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’,5,5’-テトラブロモジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’,5,5’-テトラメチルジフェニルスルホン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン等のヒンダードフェノール化合物、1,4-ジグリシジルオキシベンゼン、4,4’-ジグリシジルオキシジフェニルスルホン、4-ベンジルオキシ-4’-(2-メチルグリシジルオキシ)ジフェニルスルホン、テレフタル酸ジグリシジル、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のエポキシ化合物、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェイトのナトリウムまたは多価金属塩、ビス(4-エチレンイミノカルボニルアミノフェニル)メタン、ウレアウレタン化合物(ケミプロ化成株式会社製顕色性化合物UU等)、及び下記式(4)で表されるジフェニルスルホン架橋型化合物もしくはそれらの混合物等が挙げられる。尚、式(4)中のaは0乃至6の整数である。
【0064】
【化4】
【0065】
本発明の感熱記録用組成物に併用し得る結合剤の具体例としては、メチルセルロース、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、セルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール等の各種のけん化度、重合度のポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ソーダ、デンプン及びその誘導体、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等のスルホコハク酸エステル類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルのナトリウム塩、脂肪酸塩、カゼイン、ゼラチン、水溶性イソプレンゴム、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、イソ(またはジイソ)ブチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩等の水溶性のもの或は(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、スチレン/ブタジエン(SB)共重合体、カルボキシル化スチレン/ブタジエン(SB)共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル酸系共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン(NB)共重合体、カルボキシル化アクリロニトリル/ブタジエン(NB)共重合体、コロイダルシリカと(メタ)アクリル樹脂の複合体粒子等の疎水性高分子エマルジョン等が挙げられる。
【0066】
本発明の感熱記録用組成物に併用し得る充填剤の具体例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、ホワイトカーボン、カオリン、焼成カオリン、リトポン、タルク、クレイ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、珪藻土、酸化白土、ベントナイト、合成珪酸アルミニウム、表面処理された炭酸カルシウムやシリカ等の無機顔料;尿素-ホルマリン樹脂、スチレン-メタクリル酸共重合樹脂、ポリスチレン樹脂、生澱粉粒子等の有機顔料等が挙げられる。
【0067】
本発明の感熱記録用組成物に併用し得るその他の添加剤としては、例えばサーマルヘッドの磨耗防止、スティッキング防止等の目的で併用されるステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩、酸化防止あるいは老化防止効果を付与する目的で併用されるフェノール誘導体、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物等の紫外線吸収剤、各種の架橋剤、界面活性剤、消泡剤、等が挙げられる。これらの酸化防止剤または紫外線吸収剤は必要に応じて、マイクロカプセル化されていてもよい。
【0068】
本発明の感熱記録用組成物における各成分の組成比は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、発色剤が通常1乃至50質量%、好ましくは5乃至30質量%;上記一般式(1)で表される化合物を含む顕色剤が通常1乃至70質量%、好ましくは10乃至50質量%;1,2-ビス(トシルオキシ)エタンを含む増感剤が通常1乃至80質量%であり、任意成分である保存性向上剤が30質量%以下、結合剤が90質量%以下、充填剤が80質量%以下、滑剤、界面活性剤、消泡剤及び紫外線吸収剤等のその他の添加剤が例えば30質量%以下である。(質量%は感熱記録材料中に占める各成分の固形分換算質量比)。
【0069】
また、式(1)で表される化合物を含む顕色剤の含有量は、発色剤の含有量の通常10乃至2000質量%、好ましくは50乃至1000質量%、より好ましくは100乃至500質量%であり、1,2-ビス(トシルオキシ)エタンを含む増感剤の含有量は、式(1)で表される化合物を含む顕色剤の含有量の通常10乃至250質量%である(質量部は固形分換算質)。
【0070】
本発明の感熱記録材料は、支持体と、支持体上に設けられた本発明の感熱記録用組成物からなる感熱記録層を必須の構成とする。
支持体の材質及び形状は特に限定されないが、例えば、紙(普通紙、上質紙、コート紙等が使用できる)、合成紙、ラミネート紙、古紙パルプ等の再生紙、フィルム、プラスチックや発泡プラスチック等の合成樹脂からなるフィルム及び不織布等が挙げられる。
支持体上に感熱記録層を設ける方法も特に限定されないが、例えば、水を分散媒体とし、ボールミル、アトライター、サンドミル又は高圧ジェットミル等の分散機で粉砕、分散して得られた本発明の感熱記録用組成物の分散液を支持体上に塗布、乾燥して、乾燥質量が好ましくは1乃至20g/mの感熱記録層を作製することができる。
【0071】
支持体と感熱記録層との間には、必要に応じて下塗り層(アンダーコート層)を設けてもよく、また、感熱記録層上に保護層(オーバーコート層)を設けてもよい。下塗り層及び保護層は、例えば上記した感熱記録層の調製方法と同様の方法で、結合剤やその他の添加剤の分散液を用いて調製すればよい。下塗り層及び保護層の乾燥質量は、好ましくは0.1乃至10g/mである。
【0072】
下塗り層は、記録感度及び記録走行性をより高めるために有機顔料または無機顔料のいずれかから選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0073】
下塗り層に用いられる無機顔料としては、サーマルヘッドへの粕付着とスティッキングを抑制する観点から、吸油量が好ましくは70ml/100g以上、より好ましくは80乃至150ml/100gの吸油性無機顔料が用いられる。ここでいう吸油量は、JIS K 5101の方法に従い、求めることができる。
吸油性無機顔料としては、各種のものが使用できるが、例えば、焼成カオリン、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、無定形シリカ、軽質炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。これらの吸油性無機顔料の一次粒子の平均粒子径は、0.01乃至5μmが好ましく、0.02乃至3μmがより好ましい。吸油性無機顔料の使用割合は、広い範囲から選択できるが、一般に下塗り層の全固形分中2乃至95質量%が好ましく、5乃至90質量%がより好ましい。
【0074】
下塗り層に用いる有機顔料としては、例えば、熱可塑性樹脂を殻とし、内部に気体を含有して既に中空状となっている非発泡性の有機中空粒子(プラスチック中空粒子)、或いは内部に低沸点溶媒の発泡剤を含有して加熱により発泡状態となる熱膨張性粒子を用いることが好ましい。これにより、記録感度を向上することができる。また、有機中空粒子(プラスチック中空粒子)は、支持体上に留まって均一な下塗り層を形成することによりバリア性が向上するため、発色剤が可塑剤や中性紙に含まれるアルカリ填料と接触するのを妨げ、発色能の低下を抑えることができる。
有機中空粒子としては、従来公知のもの、例えば、膜材がアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等からなる中空率が50乃至99%の粒子が例示できる。ここで中空率は、(d/D)×100で求められる値である。該式中、dは有機中空粒子の内径を示し、Dは有機中空粒子の外径を示す。有機中空粒子の平均粒子径は0.5乃至10μmが好ましく、1乃至4μmがより好ましく、1乃至3μmが更に好ましい。平均粒子径を10μm以下とすることにより、下塗り層用塗液をブレード塗布法で塗布する場合に、ストリークやスクラッチ等のトラブルの原因とならず、良好な塗布適性を得ることができる。有機中空粒子の使用割合は、広い範囲から選択できるが、一般に下塗り層の全固形分中に2乃至90質量%が好ましく、5乃至70質量%がより好ましい。
【0075】
吸油性無機顔料を有機中空粒子と併用する場合、吸油性無機顔料と有機中空粒子とは前記の使用割合の範囲で使用し、且つ吸油性無機顔料と有機中空粒子の合計量は、下塗り層の全固形分中に5乃至90質量%が好ましく、10乃至90質量%がより好ましく、10乃至80質量%が更に好ましい。
【0076】
有機中空粒子の含有割合は、広い範囲から選択できるが、一般に下塗り層の全固形分の2乃至90質量%が好ましい。発色性の改良効果とバリア性を高める観点から、下限は5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましい。一方、サーマルヘッドへの粕付着を抑える観点から、上限は80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましく、60質量%以下が特に好ましく、50質量%以下が最も好ましい。
【0077】
下塗り層は、一般に水を媒体として、有機中空粒子、吸油性顔料等の顔料、接着剤、助剤等を混合することにより調製された下塗り層用塗液を、支持体上に塗布及び乾燥することにより形成される。下塗り層用塗液の塗布量は、特に限定するものではないが、乾燥重量で3乃至20g/mが好ましく、5乃至12g/mがより好ましい。
【0078】
下塗り層に用いる接着剤は、感熱記録層及び保護層に使用できるものの中から適宜選択することができる。特に、塗膜強度を向上する観点から酸化澱粉、澱粉-酢酸ビニルグラフト共重合体、ポリビニルアルコール又はスチレン-ブタジエン系ラテックス等が好ましい。接着剤の含有割合は、広い範囲で選択できるが、一般には下塗り層の全固形分の5乃至30質量%が好ましく、10乃至20質量%がより好ましい。
【0079】
本発明の感熱記録材料には、必要に応じて支持体の感熱記録層とは反対側の面に顔料と接着剤を主成分とする裏面層を設けることができる。これにより、保存性を一層高めたり、カール適性やプリンター走行性を高めたりすることができる。また、裏面に粘着剤処理を施して粘着ラベルに加工したり、磁気記録層や印刷用塗被層、更には熱転写記録層やインクジェット記録層を設けたりする等、感熱記録体製造分野における各種の公知技術が必要に応じて付加し得るものである。
【0080】
支持体上に様々な分散液や様々な塗液を塗布する方法は特に限定されないが、例えばバーコーティング、エアナイフコーティング、バリバーブレードコーティング、ピュアブレードコーティング、ロッドブレードコーティング、ショートドウェルコーティング、カーテンコーティング、ダイコーティング等の既知の塗布方法が挙げられる。また、各塗液は1層ずつ塗布及び乾燥して各層を形成してもよく、同一の塗液を2層以上に分けて塗布してもよい。更に2つ以上の層を同時に塗布する同時多層塗布を行ってもよい。
【0081】
下塗り層用塗液の塗布方法は、下塗り層の表面性を向上する観点から、ブレード塗布法が好ましい。これにより、支持体の凹凸を無くして均一な厚みの感熱記録層を形成し、記録感度を高めることができる。また、品質面では下塗り層の表面平滑性がより一層高められるため、感熱記録層用塗液の塗布均一性を高めてカーテン塗布することができ、必要により設ける保護層のバリア性を向上できる。ブレード塗布法は、ベベルタイプやベントタイプに代表されるブレードを使用した塗布法に限らず、ピュアブレードコーティング、ロッドブレード法やビルブレード法等も含まれる。
【0082】
感熱記録層と保護層は、カーテンコーティング等により同時多層塗布して形成することが好ましい。これにより、均一な塗布層を形成して保護層のバリア性を向上でき、しかも生産性を高めることができる。カーテンコーティングとは、塗液を流下して自由落下させ支持体に非接触で塗布する方法であり、スライドカーテン法、カップルカーテン法、ツインカーテン法等の公知のものを採用することができ、特に制限されるものではない。また、特開2006-247611号公報(特許文献4)に記載のように、カーテンヘッドから塗液を下向きに噴出させて斜面上で塗液層を形成させ、斜面の終端部の下向きのカーテンガイド部から塗液のカーテンを形成してウエブ面上に塗液層を移行させることもできる。同時多層塗布では、各塗液を積層した後、塗布し、その後、乾燥させて各層を形成してもよいし、下層を形成する塗液を塗布した後、乾燥することなく下層塗布面が湿潤状態のうちに、下層塗布面上に上層を形成する塗液を塗布し、その後、乾燥させて各層を形成してもよい。
【0083】
記録感度を高めて、画像均一性を向上する観点から、各層を形成し終えた後、または全ての層を形成し終えた後の任意の過程で、スーパーカレンダーやソフトカレンダー等の既知の方法を用いて平滑化処理を行っても良い。
【0084】
本発明の感熱記録材料に情報を記録する方法は目的に応じて適宜選択すればよいが、例えば、サーマルヘッドプリンタ、COレーザー、半導体レーザー等が挙げられる。
【実施例
【0085】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。実施例中「部」は質量部、「%」は質量%を意味する。
尚、実施例における分散液のメディアン粒子径は、レーザー回析/散乱式粒子径分布測定装置 Microtrac MT3300EXII(マイクロトラック・ベル社製)により測定した。
【0086】
実施例1(本発明の感熱記録材料の作製)
(工程1)顕色剤の分散液[A]の調整
下記組成の混合物をアシザワ・ファインテック社製ビーズミル(ラボスターミニLMZ015)により粉砕、分散化して、メディアン粒子径が0.7μmの顕色剤の分散液[A]を調製した。
[A]液
式(2)で表される化合物(特許文献3を参照) 30.0部
スルホン酸変性ポリビニルアルコール(ゴーセネックスL-3266、三菱ケミカル株式会社)の20%水溶液 15.0部
水 55.0部
【0087】
(工程2)発色剤の分散液[B]の調整
下記組成の混合物をアシザワ・ファインテック社製ビーズミル(ラボスターミニLMZ015)により粉砕、分散化して、メディアン粒子径が1.0μmの発色剤の分散液[B]を調製した。
[B]液
3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン(BLACK400、福井山田化学工業株式会社) 30.0部
スルホン酸変性ポリビニルアルコール(ゴーセネックスL-3266、三菱ケミカル株式会社)の20%水溶液 15.0部
水 55.0部
【0088】
(工程3)増感剤の分散液[C]の調整
下記組成の混合物を粉砕、分散化して、メディアン粒子径が1.0μmの増感剤の分散液[C]を調製した。
[C]液
1,2-ビス(トシルオキシ)エタン(東京化成工業株式会社) 30.0部
スルホン酸変性ポリビニルアルコール(ゴーセネックスL-3266、三菱ケミカル株式会社)の20%水溶液 15.0部
水 55.0部
【0089】
(工程4)感熱記録層用組成物の調整
上記で得られた各液及び下記の薬剤を以下の組成で混合して感熱記録層用塗布液を調製した。
[A]液 16.7部
[B]液 10.0部
[C]液 23,3部
67%炭酸カルシウム水分散液 12.0部
48%変性スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス 10.7部
37%ステアリン酸亜鉛水分散液 2.6部
水 34.5部
【0090】
(工程5)本発明の感熱記録材料の作製
坪量50g/mの上質紙上に、乾燥時の発色性化合物の質量が0.5g/mとなる量の工程4で得られた感熱記録層用組成物を塗布、乾燥した後、カレンダー処理をして、本発明の感熱記録材料を作製した。
【0091】
比較例1(比較用の感熱記録材料の作製)
上記で得られた各液及び下記の薬剤を以下の組成で混合して、感熱記録層用塗布液を調整した。前記で得られた感熱記録層用塗布液を用いて、工程5と同じ方法で比較用の感熱記録材料を作製した。
[A]液 16.7部
[B]液 10.0部
67%炭酸カルシウム水分散液 6.8部
48%変性スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス 6.0部
37%ステアリン酸亜鉛水分散液 2.6部
水 54.0部
【0092】
比較例2(比較用の感熱記録材料の作製)
工程3において、1,2-ビス(トシルオキシ)エタンの代わりに1,2-ビス(3-メチルフェノキシ)エタンを用いた以外は実施例1と同様にして、比較用の感熱記録材料を作製した。
【0093】
比較例3(比較用の感熱記録材料の作製)
工程3において、1,2-ビス(トシルオキシ)エタンの代わりにジフェニルスルホンを用いた以外は実施例1と同様にして、比較用の感熱記録材料を作製した。
【0094】
[動的発色感度試験]
実施例1及び比較例1乃至3で作製した各感熱記録材料に、オオクラエンジニアリング株式会社製のサーマルプリンター(TH-M2/PP)を用いて印加エネルギー0.28mJ/dotで印字を行い、印字部の光学濃度(OD値)を反射濃度計(商品名:FD-7、コニカミノルタ株式会社製)を用いて下記の条件で測定した。印字濃度の値が大きい程、熱応答性に優れることを意味する。結果を表8に示した。
・測定条件
測定方法:反射測定
照明条件:C
観察視野:2°
濃度白色基準:絶対値
【0095】
[印字部の耐熱性試験]
実施例1及び比較例1乃至3で作製した各感熱記録材料に、オオクラエンジニアリング株式会社製のサーマルプリンター(TH-M2/PP)を用いて印加エネルギー0.39mJ/dotで印字を行った後、ヤマト科学株式会社製の送風定温恒温器(商品名:DKM-600)を用いて90℃下で1時間保持した。試験前後の印字部の光学濃度(OD値)を反射濃度計(商品名:FD-7、コニカミノルタ株式会社製)を用いて測定し、下記式により試験後の印字部の残存率を算出した。尚、光学濃度は、上記「動的発色感度試験」における光学濃度と同じ条件で測定した。残存率が高い程、印字部の耐熱性が優れていることを意味する。結果を表8に示した。
残存率(%)=(試験後の印字部の光学濃度)/(試験前の印字部の光学濃度)×100
【0096】
[地肌の耐熱性試験]
実施例1及び比較例1乃至3で作製した各感熱記録材料を、ヤマト科学株式会社製の送風定温恒温器(商品名:DKM-600)を用いて90℃下で1時間保持した。試験前後の地肌の白色度を反射濃度計(商品名:FD-7、コニカミノルタ株式会社製)を用いて測定した。尚、光学濃度は、上記「動的発色感度試験」における光学濃度と同じ条件で測定した。試験後の数値が大きい程、地肌の耐熱性が優れていることを意味する。結果を表8に示した。
【0097】
【表8】
【0098】
表8の結果から、本発明の感熱記録用組成物からなる感熱記録層を有する感熱記録材料は、従来公知の増感剤である1,2-ビス(3-メチルフェノキシ)エタンを用いた比較例2及びジフェニルスルホンを用いた比較例3の感熱記録材料と同等の熱応答性(印字濃度)を示し、また、増感剤を含まない比較例1の感熱記録材料よりも熱応答性に優れていることが分かる。さらに、90℃の高温環境下においても、印字部の残存率や地肌かぶりが比較例1乃至3よりも優れており、耐熱保存性に優れていることが分かる。以上の結果から、本発明の感熱記録用組成物からなる感熱記録材料は、熱応答性に優れ、尚且つ高温環境下における印字部並びに地肌の耐熱保存性に優れていることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の感熱記録用組成物を用いることにより、熱応答性、及び印字部並びに地肌の高温環境下における耐熱保存安定性に優れた感熱記録材料を提供することができる。