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特許7633952掘削孔の埋め戻し装置および掘削孔の埋め戻し方法
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  • 特許-掘削孔の埋め戻し装置および掘削孔の埋め戻し方法 図1
  • 特許-掘削孔の埋め戻し装置および掘削孔の埋め戻し方法 図2
  • 特許-掘削孔の埋め戻し装置および掘削孔の埋め戻し方法 図3
  • 特許-掘削孔の埋め戻し装置および掘削孔の埋め戻し方法 図4
  • 特許-掘削孔の埋め戻し装置および掘削孔の埋め戻し方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】掘削孔の埋め戻し装置および掘削孔の埋め戻し方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20250213BHJP
   E02D 31/10 20060101ALI20250213BHJP
   E21B 27/02 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
E02D3/12 101
E02D31/10
E21B27/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022005264
(22)【出願日】2022-01-17
(65)【公開番号】P2023104339
(43)【公開日】2023-07-28
【審査請求日】2024-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】松本 聡碩
(72)【発明者】
【氏名】升元 ―彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 一三
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 昭治
(72)【発明者】
【氏名】石神 大輔
(72)【発明者】
【氏名】栗原 啓丞
(72)【発明者】
【氏名】三好 貴子
(72)【発明者】
【氏名】石橋 正祐紀
(72)【発明者】
【氏名】飛田 南斗
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-036098(JP,A)
【文献】米国特許第05611400(US,A)
【文献】特開2015-007594(JP,A)
【文献】特開2012-132867(JP,A)
【文献】特開2017-106868(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0193101(US,A1)
【文献】米国特許第5957196(US,A)
【文献】米国特許第5718287(US,A)
【文献】米国特許第5544705(US,A)
【文献】特開2022-126233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
E02D 31/10
E21B 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填材として、ベントナイト及び/又はベントナイトを主として含むベントナイト系材料を用いて掘削孔を埋め戻す掘削孔の埋め戻し装置であって、
外管と内管との二重管からなる筒状の容器と、
前記外管の上方の内面に端部が固定されるとともに、前記内管の下方側の開口から上方側の有頂部内面に向けて折り返されて形成された袋状格納部を有する袋材と、
前記外管の下端に配置された開閉自在な蓋と、
前記容器が前記掘削孔内の所定位置まで搬送された際に前記蓋の開放に伴って前記内管の前記外管に対する下方への相対変位を許容して、前記袋状格納部に装填された前記充填材を前記容器の外部に吐出させる充填材吐出機構と、を備える、掘削孔の埋め戻し装置。
【請求項2】
前記袋材は、折り曲げ可能なポリエチレン素材である、請求項1に記載の掘削孔の埋め戻し装置。
【請求項3】
前記内管は、ポリ塩化ビニル製であり且つ下方側の開口周縁部がバリ取りされている、請求項1または請求項2に記載の掘削孔の埋め戻し装置。
【請求項4】
前記充填材吐出機構は、前記所定位置における前記掘削孔内に配置され且つ前記外管のみ下方への移動を規制するストッパを備えている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の掘削孔の埋め戻し装置。
【請求項5】
前記充填材吐出機構は、前記内管の前記外管に対する下方への相対変位を起こさせる動力源を備えている、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の掘削孔の埋め戻し装置。
【請求項6】
前記掘削孔は、放射性廃棄物処分場に設けられたボーリング孔である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の掘削孔の埋め戻し装置。
【請求項7】
充填材として、ベントナイト及び/又はベントナイトを主として含むベントナイト系材料を用いて掘削孔を埋め戻す掘削孔の埋め戻し方法であって、
下端に開閉自在な蓋を有する外管と前記外管の内側に配され下端が開放端である内管との二重管からなる筒状の容器における前記外管の上方の内面に所定の袋材の端部を固定し前記内管の下方側の開口から上方側の有頂部内面に向けて前記袋材を折り返して袋状格納部を形成する袋状格納部形成工程と、
前記袋状格納部形成工程で形成された袋状格納部に前記充填材を装填する装填工程と、
前記蓋で下端が閉止された状態の前記外管と、自己の内部の前記袋状格納部に前記充填材が装填されている状態の前記内管との二重管からなる前記容器を前記掘削孔内の所定位置まで搬送する搬送工程と、
前記搬送工程で前記容器が前記掘削孔内の所定位置に到達した際に、前記蓋の開放に伴って前記内管の前記外管に対する下方への相対変位を許容して、前記袋状格納部に装填された前記充填材を地下水中に吐出させる充填材吐出工程と、
を含む、掘削孔の埋め戻し方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削孔の埋め戻し装置および掘削孔の埋め戻し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高レベル放射性廃棄物の処分場を選定するにあたり、地質構造等を確認するためにボーリング調査が行われている。ボーリング孔は、実際に処分場が稼働した際に放射線の移行経路となりかねないことから、閉塞させる必要がある。
【0003】
ボーリング孔の閉塞に用いる充填材の一つとして、水に触れると膨潤する性質を有するベントナイトを主として含むベントナイト系材料の使用が検討されている。また、施工性の観点から、ベントナイトを小粒径に締め固めたペレットや、板状に締め固めたうえで細かく砕いた解砕物等の使用が検討されている。本明細書において、以下、ベントナイト及び/又はベントナイトを主として含むベントナイト系材料、および、それらを小粒径に締め固めたペレットや、板状に締め固めたうえで細かく砕いた解砕物をベントナイトと総称する。
【0004】
ボーリング孔の閉塞は、通常、ダンプベイラーと呼ばれる装置により行われる。具体的には、ダンプベイラーが備える容器内に収容されたベントナイトをボーリング孔内の閉塞地点まで搬送した後、この容器の吐出口を開いてベントナイトを吐出することにより行われる。
【0005】
ボーリング孔の内部には地下水が浸水しており、ダンプベイラーの容器の吐出口が開くと同時に、ベントナイトに地下水が触れる。すると、ベントナイトが急速に膨潤して吐出口で詰まってしまい、ボーリング孔内にベントナイトを吐出できなくなるおそれがある。これについては、発明者等による実験においても、ベントナイトが水に触れて急速に膨潤が進み、容器の吐出口に詰まりを生じさせることが確認されている。
【0006】
このような詰まりが生じた場合に、ベントナイトを強制的に強い圧力で押し出す機構をダンプベイラーに備えることも検討されている。しかしながら、ダンプベイラーは狭いボーリング孔を通すサイズに設計されるため、元々内容積は限られている。その内部に複雑な機能部を配置すると、ベントナイトを収容する容積が一層逼迫することになる。反対に、ダンプベイラーのサイズを許容限度内で大型にするとボーリング孔の内周壁とダンプベイラーの外周面との間隙が狭められる結果、ボーリング孔内でのダンプベイラーの昇降に支障が生じる。
【0007】
他方、容器の吐出口における詰まりの発生を防ぐために、予め非水溶性の天然樹脂などでベントナイトをコーティングしておく方法も検討されている。しかしながら、この方法では、ボーリング孔内の閉塞対象領域に有機物の不純物であるコーティング材が残留する。残留したコーティング材が微生物分解されるとガスが発生し閉塞が阻害されるおそれがある。
【0008】
ところで、ダンプベイラーに類する容器を用いた流体の搬送技術は従来より種々提案されている。石油や金属の探査に当たって試掘されるボーリング孔で生じる逸泥を防ぐために薬液が使われる。この薬液の搬送にシリンダー筒体を用い、シリンダー筒体を所定位置まで降下させてその引き上げ弁を作動させて封入薬液の放散を行うという提案がある(例えば、特許文献1参照)。また、セメントベーラーと計測器収納容器を兼ねたシリンダー筒体を、完成ボーリング孔内をその底部まで降下させ、その位置でセメントミルクを放散させながら計測器をセメント埋設する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特公平2-9158号公報
【文献】特開2006-112102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記の従来技術ではボーリング孔を閉塞する際にベントナイトが地下水に触れて急速に膨潤が進み、容器の吐出口に詰まりを生じさせるという課題には応えていない。また、ボーリング孔内の閉塞地点に有機質の不純物となるコーティング材が残存することは避けなくてはならない。コーティング材が地中に残存すると、微生物分解によってガスが発生し、発生したガスによりボーリング孔の閉塞が妨げられるおそれがあるからである。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、コーティング材を用いないで充填材を容器から掘削孔内に確実に吐出できる掘削孔の埋め戻し装置および掘削孔の埋め戻し方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1) 上記目的を達成する本発明は、充填材として、ベントナイト及び/又はベントナイトを主として含むベントナイト系材料を用いて掘削孔を埋め戻す掘削孔の埋め戻し装置であって、外管と内管との二重管からなる筒状の容器と、前記外管の上方の内面に端部が固定されるとともに、前記内管の下方側の開口から上方側の有頂部内面に向けて折り返されて形成された袋状格納部を有する袋材と、前記外管の下端に配置された開閉自在な蓋と、前記容器が前記掘削孔内の所定位置まで搬送された際に前記蓋の開放に伴って前記内管の前記外管に対する下方への相対変位を許容して、前記袋状格納部に装填された前記充填材を前記容器の外部に吐出させる充填材吐出機構と、を備える、掘削孔の埋め戻し装置である。
【0013】
(2) また、上記目的を達成する本発明における前記袋材は、折り曲げ可能なポリエチレン素材であってもよい。
【0014】
(3) また、上記目的を達成する本発明における前記内管は、ポリ塩化ビニル製であり且つ下方側の開口周縁部がバリ取りされていてもよい。
【0015】
(4) また、上記目的を達成する本発明における前記充填材吐出機構は、前記所定位置における前記掘削孔内に配置され且つ前記外管のみ下方への移動を規制するストッパを備えていてもよい。
【0016】
(5) また、上記目的を達成する本発明における前記充填材吐出機構は、前記内管の前記外管に対する下方への相対変位を起こさせる動力源を備えていてもよい。
【0017】
(6) また、上記目的を達成する本発明において、前記掘削孔は、放射性廃棄物処分場に設けられたボーリング孔であってもよい。
【0018】
(7) 上記目的を達成する本発明は、充填材として、ベントナイト及び/又はベントナイトを主として含むベントナイト系材料を用いて掘削孔を埋め戻す掘削孔の埋め戻し方法であって、下端に開閉自在な蓋を有する外管と前記外管の内側に配され下端が開放端である内管との二重管からなる筒状の容器における前記外管の上方の内面に所定の袋材の端部を固定し前記内管の下方側の開口から上方側の有頂部内面に向けて前記袋材を折り返して袋状格納部を形成する袋状格納部形成工程と、前記袋状格納部形成工程で形成された袋状格納部に前記充填材を装填する装填工程と、前記蓋で下端が閉止された状態の前記外管と、自己の内部の前記袋状格納部に前記充填材が装填されている状態の前記内管との二重管からなる前記容器を前記掘削孔内の所定位置まで搬送する搬送工程と、前記搬送工程で前記容器が前記掘削孔内の所定位置に到達した際に、前記蓋の開放に伴って前記内管の前記外管に対する下方への相対変位を許容して、前記袋状格納部に装填された前記充填材を地下水中に吐出させる充填材吐出工程と、を含む、掘削孔の埋め戻し方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、コーティング材を用いないで充填材を容器から掘削孔内に確実に吐出できる掘削孔の埋め戻し装置および掘削孔の埋め戻し方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る掘削孔の埋め戻し装置における外管の蓋が閉止した状態を模式的に示す図である。
図2図1の掘削孔の埋め戻し装置における外管の下端と掘削孔側ケーシング内のストッパー部材とが当接した様子を説明する図である。
図3図1の掘削孔の埋め戻し装置が掘削孔内を所定位置まで降下して外管の蓋が開き始める状態を模式的に示す図である。
図4図1の掘削孔の埋め戻し装置が掘削孔内を所定位置まで降下して外管の蓋が開き内管が外管に対して相対変位し充填材が吐出する状態を模式的に示す図である。
図5図1の掘削孔の埋め戻し装置における内管の下端部分を拡大して説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳しく説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る掘削孔の埋め戻し装置1における外管の蓋が閉止した状態を模式的に示す図である。以下、適宜、掘削孔の埋め戻し装置1を埋め戻し装置1と略記する。図2は、埋め戻し装置1における外管の下端と掘削孔側ケーシング内のストッパー部材とが当接した様子を説明する図である。図3は、埋め戻し装置1が掘削孔内を所定位置まで降下して外管の蓋が開き始める状態を模式的に示す図である。図4は、埋め戻し装置1が掘削孔内を所定位置まで降下して外管の蓋が開き内管が外管に対して相対変位し充填材が吐出する状態を模式的に示す図である。図5は、埋め戻し装置1における内管の下端部分を拡大して説明する図である。
【0023】
本発明の実施形態に係る埋め戻し装置1は、地表から鉛直に設けられた掘削孔2を充填材3を用いて埋め戻す装置である。掘削孔2は、例えば、放射性廃棄物処理場に設けられるボーリング孔であり、その深さは約300mに達する場合がある。また、その径は通常20cm以下である。掘削孔2は所定の管長の金属管を順次継ぎ足して深部に到るケーシング4によって崩落が防がれ掘削時の形態が維持される。
【0024】
埋め戻し装置1は、外管5と内管6との二重管からなる筒状の容器7を有する。外管5は、下端側が開口8をなし上端側が閉じた上底部9をなす、例えば、ステンレス製の金属管である。外管5の下端側には、開口8の縁部にヒンジ10が設けられる。外管5の開口8には、ヒンジ10の周りに開口8を閉止する位置と開放する位置との間で回動する開閉自在な蓋11が設けられる。
【0025】
外管5上方の上底部9近傍の内面に、可撓性の袋材12の端部13が固定される。一方、内管6は、その下方が開放された開口14をなし、上端側が閉じた上底部が有頂部15をなしている。内管6は、例えば、ポリ塩化ビニル製の所謂塩ビ管である。外管5の上底部9近傍内面から垂れ下がった袋材12を、内管6上方側の有頂部15の下面に向けて折り返すようにして袋状格納部16が形成される。
【0026】
袋状格納部16に充填材3が装填される。充填材3は、ベントナイト及び/又はベントナイトを主として含むベントナイト系材料である。充填材3は、例えば略アーモンド形のペレット状をなし、大きさの異なるものが大小混合されていてもよい。
【0027】
外管5、内管6および袋材12並びに後述するストッパー部材19は、容器7が掘削孔2のケーシング4内の所定位置まで搬送された際に蓋11の開放に伴って内管6の外管5に対する下方への相対変位を許容して、袋状格納部16に装填された充填材3を地下水中に吐出させる充填材吐出機構17を構成している。
【0028】
容器7は、外管5の上底部9で地上に設置される図示しない昇降装置によってワイヤー18で吊持され、掘削孔2のケーシング4内を昇降移動する。ケーシング4の下端近傍位置の内周に、突片であるストッパー部材19が設けられる。なお、ストッパー部材19を設ける態様は一例に過ぎず、後述するように、ストッパー部材19を設けることなく、その機能をワイヤー18と地上の昇降装置の制御によって賄うこともできる。
【0029】
ストッパー部材19は、ケーシング4の内周壁部から中心に向けて放射方向に突出し、降下してきた外管5の開口8の縁に当接して外管5の下方への移動を規制する。外管5のストッパー部材19への当接に応動する図示しない開閉操作機構によって、図1のごとく閉止していた蓋11が図3のごとく開放される。
【0030】
内管6は外管5からは自己の位置が規制されていない。このため、内管6は、蓋11の開放に伴って図4のごとく自重により外管5に対し下方へ相対変位する。このとき、解放された内管6の開口14から充填材3が自重により下方に吐出する。なお、外管5の下端部位がストッパー部材19に当接すると同時に、ワイヤー18で外管5を上方に向け急激に短距離だけ動かす操作を伴わせれば、充填材3の吐出が促進される。一方、地上の昇降装置によって外管5の深度を管理し、外管5の下端部位がストッパー部材19に当接する深度までワイヤー18が延び出たタイミングでその動きを止め、外管5の下降を停止させるようにしてもよい。この場合は、ストッパー部材19を設ける必要がない。この場合も、外管5の停止後、ワイヤー18で外管5を上方に向け急激に短距離だけ動かす操作を行うことにより、充填材3の吐出を促進させることができる。
【0031】
袋材12は、伸縮性を持たず、所定の破断強度であり、内管6の出口である開口14で無理なく折り曲げ可能な程度の可撓性を有する素材である。この素材には、例えば、ポリエチレンが適合する。一方、内管6の開口14周縁部は、図5のごとく、バリ取りされて角部が丸められている。このため、袋材12は内管6の開口14周縁部に引っ掛かりなく滑らかに摺接して抵抗なく変形できる。
【0032】
外管5の蓋11が開放されると同時に、地下水が内管6の開口14側から充填材3を浸し始め、充填材3の膨潤が始まる。この時点では、充填材3の上方の大部分は袋状格納部16を構成する袋材12に覆われているため、未だ、地下水と接触しない(図3)。このため、内管6が下方へと移動して、開口14近傍で袋状格納部16が次第に下方に捲れ出ていく過程で、開口14側からは後方に当たる上方の充填材3は未だ膨潤を免れている(図4)。従って、内管6内に位置する袋状格納部16の部分内では充填材3の膨潤が始まらず、内管6内で袋材12を介して充填材3の詰まりを生じることがない。
【0033】
この状態から、充填材3が自重で下降し、袋状格納部16も次第に下方に捲れ出ていくに従い、充填材3は袋状格納部16から出た部分から膨潤する。この時点に到れば、充填材3は内管6外に出ており、その膨潤は内管6内での詰まりを生じさせることがない。従って、埋め戻し装置1によれば、袋状格納部16に装填されていた充填材3の全量を、内管6内での詰まりを生じさせずに、掘削孔2内に確実に吐出させることができる。吐出した充填材3は地下水中を降下し、掘削孔2内の閉塞対象領域に対する埋め戻しが進められる。
【0034】
充填材3自体は膨潤抑制のコーティング材を用いていないため、この種のコーティング材の地中への残留で懸念される微生物分解によるガスの発生や、このガスによってボーリング孔の閉塞が阻害されるおそれがない。
【0035】
なお、上述したように、掘削孔2は、例えば、放射性廃棄物処理場に設けられるボーリング孔である。このような場合に本発明の埋め戻し装置1を適用することは、環境問題としての重要な課題に対して一つの有力な解を提供することにつながる。
【0036】
上述したような掘削孔の埋め戻し装置1を構成し、充填材としてベントナイトを用いて掘削孔を埋め戻す掘削孔の埋め戻し方法について次に説明する。この掘削孔の埋め戻し方法は、袋状格納部形成工程と、装填工程と、搬送工程と、充填材吐出工程とを含む。
【0037】
袋状格納部形成工程では、下端に開閉自在な蓋11を有する外管5と外管5の内側に配され下端が開口14である内管6との二重管からなる筒状の容器7における外管5上方の内面に可撓性の袋材12の端部13を固定する。このように端部13を固定した袋材12の底部側を、内管6の開口14から上方側の有頂部15内面に向けて捲り折り返して袋状格納部16を形成する。
【0038】
次いで、装填工程では、袋状格納部形成工程で形成された袋状格納部16に充填材3を装填する。
【0039】
次いで、搬送工程では、蓋11で下端の開口8が閉止された状態の外管5と、自己の内部の袋状格納部16に充填材3が装填されている状態の内管6との二重管からなる容器7を掘削孔2内の所定位置まで搬送する。
【0040】
次いで、充填材吐出工程では、上述の搬送工程で容器7が掘削孔2内の所定位置に到達した際に、蓋11の開放に伴って内管6の外管5に対する下方への相対変位を許容して、袋状格納部16に装填された充填材3を地下水中に吐出させる。
【0041】
この掘削孔の埋め戻し方法によれば、袋状格納部16に装填されていた充填材3の全量を、内管6内での詰まりを生じさせずに、掘削孔2内に確実に吐出させることができる。内管6内で充填材3による詰まりが生じない理由は、埋め戻し装置1に関して上述したとおりである。これにより、掘削孔2内の閉塞対象領域に対する埋め戻しが進められる。また、充填材3自体は膨潤抑制のコーティング材を用いていないものであるため、この種のコーティング材の地中への残留で懸念される微生物分解によるガスの発生や、このガスによってボーリング孔の閉塞が阻害されるおそれがない。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は本発明に含まれる。例えば、上述の埋め戻し装置1における充填材吐出機構17では、容器7が掘削孔2内の所定位置に到達した際に、蓋11の開放に伴って内管6が自重により外管5に対して下方へ相対変位するようにしたが、内管6の外管5に対する下方への相対変位を起こさせる動力源を備えてもよい。この動力源としては、例えば、外管5の上底部9下面と内管6の有頂部15の上面との間の空間が袋材12によって気密状態になることを利用したものであってもよい。即ち、この気密空間に小型の高圧窒素容器を設け、外管5下端のストッパー部材19への当接に伴って高圧窒素容器の密閉が解かれて生じる窒素圧で内管6有頂部15の上面をピストンのごとく押し下げるようにすることも考えられる。
【符号の説明】
【0043】
1 埋め戻し装置
2 掘削孔
3 充填材
4 ケーシング
5 外管
6 内管
7 容器
8 開口
9 上底部
10 ヒンジ
11 蓋
12 袋材
13 端部
14 開口
15 有頂部
16 袋状格納部
17 充填材吐出機構
18 ワイヤー
19 ストッパー部材

図1
図2
図3
図4
図5