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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
   F01P 11/04 20060101AFI20250213BHJP
   F01P 11/06 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
F01P11/04 B
F01P11/06 B
F01P11/04 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022023514
(22)【出願日】2022-02-18
(65)【公開番号】P2023120570
(43)【公開日】2023-08-30
【審査請求日】2024-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187562
【弁理士】
【氏名又は名称】沼田 義成
(72)【発明者】
【氏名】福田 育仕
(72)【発明者】
【氏名】小林 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】西野 正人
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0010616(US,A1)
【文献】実開昭59-127819(JP,U)
【文献】実開昭53-032247(JP,U)
【文献】特開2003-183855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 1/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
犠牲防食被膜処理が施された犠牲防食被膜配管と、
前記犠牲防食被膜配管の両端部の少なくとも一方に接続された金属製配管と、を備え
前記犠牲防食被膜配管は、交換可能であることを特徴とするエンジン。
【請求項2】
前記金属製配管の両端部のうちの前記犠牲防食被膜配管が接続されていない側の端部に接続された流路部品と、
前記流路部品に設けられた犠牲防食材と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記犠牲防食被膜配管、前記金属製配管、及び、前記犠牲防食材を備えた前記流路部品は、前記犠牲防食材を備えた前記流路部品、前記金属製配管、前記犠牲防食被膜配管、前記金属製配管、前記犠牲防食材を備えた前記流路部品の順に接続されていることを特徴とする請求項2に記載のエンジン。
【請求項4】
前記複数の金属製配管が同一形状であることを特徴とする請求項に記載のエンジン。
【請求項5】
前記犠牲防食被膜配管は、接続用配管を介して前記金属製配管に接続され、
前記接続用配管は、前記金属製配管又は前記犠牲防食被膜配管の長手方向に沿ってスライド可能であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のエンジン。
【請求項6】
前記犠牲防食被膜処理は、亜鉛めっき処理であり、
前記金属製配管は、鉄を用いて形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のエンジン。
【請求項7】
前記金属製配管の両端部のうちの前記犠牲防食被膜配管が接続されていない側の端部に接続された流路部品と、
前記流路部品に設けられた犠牲防食材と、を備え、
前記犠牲防食材は、亜鉛又は鉄を用いて形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
海水を用いて舶用エンジンの部品を冷却する場合、海水を流す冷却配管が腐食するおそれがある。そこで、従来、冷却配管の腐食を防ぐ技術が検討されている。例えば、特許文献1には、インタークーラ内に防食亜鉛を配置することが記載されている。特許文献2には、冷却配管の内部に防食被膜を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実公昭60-30420号公報
【文献】特開2019-90362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
防食亜鉛や防食被膜は長期間の使用により劣化するため、定期的に交換する必要がある。しかし、ボルト型の防食亜鉛は表面積が小さいために減肉が早く、頻繁に交換する必要がある。交換の頻度を減らすためには大型の防食亜鉛の使用が考えられるが、そのためには配管の径を大きくする必要があるため、部品のコスト増加や、部品の配置の難易度が増すといった問題がある。一方、防食被膜を形成した冷却配管を用いる場合、防食亜鉛と比べて交換作業が大掛かりになるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記事情を考慮し、配管の防食のためのメンテナンスの負担を軽減することのできるエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係るエンジンは、犠牲防食被膜処理が施された犠牲防食被膜配管と、前記犠牲防食被膜配管の両端部の少なくとも一方に接続された金属製配管と、を備える。
【0007】
前記エンジンは、前記金属製配管の両端部のうちの前記犠牲防食被膜配管が接続されていない側の端部に接続された流路部品と、前記流路部品に設けられた犠牲防食材と、を備えていてもよい。
【0008】
前記犠牲防食被膜配管、前記金属製配管、及び、前記犠牲防食材を備えた前記流路部品は、前記犠牲防食材を備えた前記流路部品、前記金属製配管、前記犠牲防食被膜配管、前記金属製配管、前記犠牲防食材を備えた前記流路部品の順に接続されていてもよい。
【0009】
前記複数の金属製配管が同一形状であってもよい。
【0010】
前記犠牲防食被膜配管は、接続用配管を介して前記金属製配管に接続され、前記接続用配管は、前記金属製配管又は前記犠牲防食被膜配管の長手方向に沿ってスライド可能であってもよい。
【0011】
前記犠牲防食被膜処理は、亜鉛めっき処理であり、前記金属製配管は、鉄を用いて形成されていてもよい。
【0012】
前記エンジンは、前記金属製配管の両端部のうちの前記犠牲防食被膜配管が接続されていない側の端部に接続された流路部品と、前記流路部品に設けられた犠牲防食材と、を備え、前記犠牲防食材は、亜鉛又は鉄を用いて形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、配管の防食のためのメンテナンスの負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るエンジンを示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る給排気の経路を示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る給排気の経路を示す斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係る冷却配管を示す斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係るインタークーラ側蓋を示す斜視図である。
図6】本発明の一実施形態に係る清水クーラ側蓋を示す斜視図である。
図7】本発明の一実施形態に係る冷却配管の主要部を示す斜視図である。
図8】本発明の一実施形態に係る冷却配管の主要部を示す分解図である。
図9】本発明の一実施形態に係る冷却配管の主要部を示す側面図である。
図10】本発明の一実施形態に係る犠牲防食被膜配管の交換手順を示す側面図である。
図11】本発明の一実施形態に係る犠牲防食被膜配管の交換手順を示す側面図である。
図12】本発明の一実施形態の変形例に係る犠牲防食被膜配管を示す側面図である。
図13】本発明の一実施形態の変形例に係る犠牲防食被膜配管を取り外した様子を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態に係るエンジン100について説明する。
【0016】
最初に、エンジン100の全体の構成について説明する。図1は、エンジン100を示す斜視図である。各図において、U、Lo、L、R、Fr、Rrは、それぞれ上、下、左、右、前、後を示す。本実施形態では、シリンダヘッド1がシリンダブロック2の上方に設けられている例を示すが、エンジン100はどのような姿勢で使用されてもよい。また、本実施形態では、本発明の適用対象の一例として、直列6気筒のディーゼルエンジンを示すが、本発明は、複数気筒を備える全てのレジプロエンジンに対して好適である。
【0017】
エンジン100は、シリンダヘッド1、シリンダブロック2、オイルパン5を備える。シリンダヘッド1は、給気路、排気路、給気バルブ、排気バルブ及びインジェクタを含む6組の部品群(図示省略)を前後方向に沿って直列配置したものである。シリンダブロック2は、ピストン及びコネクティングロッドを収容した6つの気筒(図示省略)を前後方向に沿って直列配置した気筒列3と、クランクシャフト(図示省略)を収容したクランクケース4と、を備える。オイルパン5は、潤滑油を貯留する。
【0018】
次に、給排気の経路について説明する。図2、3は、給排気の経路を示す斜視図である。給排気の経路には、ターボチャージャ11、インタークーラ12、給気マニホルド13、シリンダヘッド1、排気マニホルド14が含まれる。
【0019】
ターボチャージャ11は、タービン11Tとコンプレッサ11Cを備える。コンプレッサ11Cは、インタークーラ12に接続されている。給気マニホルド13は、本体部13Bと給気取入口13iと6つの給気通路13Eと、を備える。給気取入口13iは、インタークーラ12に接続されている。6つの給気通路13Eは、シリンダヘッド1の給気路(図示省略)に接続されている。排気マニホルド14は、コレクタ14Cと6つの排気取入口14iと排気放出口14Eとを備える。6つの排気取入口14iは、シリンダヘッド1の排気路(図示省略)に接続されている。排気放出口14Eは、タービン11Tに接続されている。
【0020】
気筒からの排気は、シリンダヘッド1の排気路と排気マニホルド14を経てタービン11Tに供給される。タービン11Tは、排気エネルギーによって回転する。コンプレッサ11Cは、タービン11Tとともに回転することで空気を取り入れ、圧縮する。圧縮された空気は、インタークーラ12に送られる。インタークーラ12は、圧縮空気を冷却して給気マニホルド13に送る。給気マニホルド13は、各気筒へ供給する圧縮空気の密度、給気量、気流を均一化するサージタンクの機能を備え、圧縮空気を給気通路13Eを介してシリンダヘッド1の給気路に供給する。
【0021】
次に、冷却配管18の概要について説明する。図4は、冷却配管18を示す斜視図である。インタークーラ12には、ポンプ17を備えた給水管16が接続されている。インタークーラ12は、ポンプ17で吸い上げた海水を用いて給気を冷却する。インタークーラ12には、冷却配管18を介して清水クーラ15が接続されている。インタークーラ12で給気の冷却に用いられた海水は、冷却配管18を通って清水クーラ15に供給される。清水クーラ15は、エンジン100に設けられたウォータージャケット(図示省略)を循環するクーラントを、インタークーラ12から供給された海水を用いて冷却する。清水クーラ15でクーラントの冷却に用いられた海水は、オイルクーラ(図示省略)で潤滑油の冷却に使用された後、船外へ排出される。
【0022】
次に、冷却配管18について詳細に説明する。図5は、インタークーラ側蓋21を示す斜視図である。図6は、清水クーラ側蓋25を示す斜視図である。図7は、冷却配管18の主要部を示す斜視図である。図8は、冷却配管18の主要部を示す分解図である。図9は、冷却配管18の主要部を示す側面図である。なお、図7では、犠牲防食被膜配管24の前後に接続用配管23と金属製配管22が設けられているが、図8では、犠牲防食被膜配管24とその前側の接続用配管23及び金属製配管22のみが示されている。
【0023】
エンジン100は、犠牲防食被膜処理が施された犠牲防食被膜配管24と、犠牲防食被膜配管24の両端部の少なくとも一方に接続された金属製配管22と、を備える。
【0024】
インタークーラ12(図4、5参照)は、インタークーラハウジング20と、インタークーラハウジング20の左側部に設けられた開口部(図示省略)を塞ぐインタークーラ側蓋21(流路部品の一例)と、を備える。
【0025】
インタークーラハウジング20は、給気取入口20iと給気放出口20Eを備える。給気取入口20iは、インタークーラハウジング20の底部の右側の部分に設けられている。給気放出口20Eは、インタークーラハウジング20の左右方向の中心よりも左側の部分に設けられている。給気放出口20Eは、前方上向きに開口している。
【0026】
インタークーラ側蓋21は、概ね円形、且つ、左方に凹んでいる。インタークーラ側蓋21の内部の空間は、隔壁21Wによって下方の第1副室211と上方の第2副室212に分割されている。第1副室211には、左右方向に貫通した液体取入口21iが設けられている。液体取入口21iには、給水管16が接続されている。第2副室212には、前後方向に貫通した液体放出口21Eが設けられている。液体放出口21Eには、冷却配管18の後端部が接続されている。第1副室211及び第2副室212には、内外に貫通した差込口(図示省略)が設けられている。差込口には、雌ねじが形成されている。差込口には、雄ねじが形成されたボルト状の犠牲防食材30が取り付けられる。犠牲防食材30は、第1副室211及び第2副室212の内面から突出する。犠牲防食材30は、亜鉛又は鉄で形成されている。亜鉛は、純度99.99%以上の高純度亜鉛地金を主原料としたものが用いられる。鉄は、純度99.90%以上の純鉄が用いられる。
【0027】
清水クーラ15(図4、6参照)は、清水クーラハウジング26と、清水クーラハウジング26の左端部に設けられた開口部(図示省略)を塞ぐ清水クーラ側蓋25(流路部品の一例)と、を備える。清水クーラ側蓋25は、概ね円形、且つ、左方に凹んでいる。清水クーラ側蓋25の内部の空間は、隔壁25Wによって上方の第1副室251と下方の第2副室252に分割されている。第1副室251には、前後方向に貫通した液体取入口25iが設けられている。液体取入口25iには、冷却配管18の前端部が接続されている。第1副室251及び第2副室252には、内外に貫通した差込口(図示省略)が設けられている。差込口には、雌ねじが形成されている。差込口には、前述の犠牲防食材30が取り付けられる。犠牲防食材30は、第1副室251及び第2副室252の内面から突出する。
【0028】
冷却配管18(図4、7乃至9参照)は、金属製配管22と、犠牲防食被膜配管24と、を備える。海水は、冷却配管18を通ってインタークーラ12から清水クーラ15へと流れる。金属製配管22、犠牲防食被膜配管24、インタークーラ側蓋21、清水クーラ側蓋25は、後側から、インタークーラ側蓋21、金属製配管22、犠牲防食被膜配管24、金属製配管22、清水クーラ側蓋25の順に配置されている。
【0029】
金属製配管22は、鉄を用いて形成されている。金属製配管22の内周面には犠牲防食被膜が形成されていない。犠牲防食被膜配管24の前後の金属製配管22は同一形状である。具体的には、少なくとも配管両端部の形状および配管長さが共通で冷却水配管として相互互換可能に構成されている。配管表面に形成されたボス形状や配置が相違していても冷却水配管として相互互換可能であれば同一形状に含まれる。金属製配管22は、管部22Pと、管部22Pの前後方向の一端部に設けられたフランジ22Fと、管部22Pの他端部に設けられたスリーブ22Sと、を備える。スリーブ22Sの内径は、管部22Pの内径よりも大きい。インタークーラ12側では、フランジ22Fがインタークーラ側蓋21の液体放出口21Eに、ガスケット又はOリングを介してボルト(いずれも図示省略)を用いて締結されている。清水クーラ15側では、フランジ22Fが清水クーラ側蓋25の液体取入口25iにガスケット又はOリングを介してボルト(いずれも図示省略)を用いて締結されている。
【0030】
金属製配管22の管部22Pのスリーブ22S側の端部付近には、ボルト挿入部22Aが設けられている(図7、8参照)。ボルト挿入部22Aは、管部22Pの外周面から上方及び下方に膨出した部位である。ボルト挿入部22Aには、左右方向に貫通したボルト孔が設けられている。給気マニホルド13の本体部13Bの左側面には、ボルト挿入部22Aのボルト孔に対応する位置に雌ねじが設けられている(図示省略)。金属製配管22を給気マニホルド13にボルトを用いて締結することで、金属製配管22が給気マニホルド13に固定される(図2参照)。
【0031】
犠牲防食被膜配管24は、鉄を用いて形成されている。犠牲防食被膜配管24は、管部24Pと、管部24Pの両端部に設けられたフランジ24Fと、を備える。犠牲防食被膜配管24の内面には、溶融亜鉛めっき、電気亜鉛めっき等の亜鉛めっき処理が施されている。亜鉛は、純度99.99%以上の高純度亜鉛地金を主原料としたものが用いられる。
【0032】
金属製配管22と犠牲防食被膜配管24は、接続用配管23を用いて接続される。接続用配管23は、管部23Pと、管部23Pの前後方向の一端部に設けられたフランジ23Fと、を備える。管部23Pの他端部側の外周面には、Oリング23R(図9参照)が嵌合する周方向に沿った溝23Gが設けられている。接続用配管23の他端部が、金属製配管22のスリーブ22Sに挿入されると、Oリング23Rがスリーブ22Sの内周面に押し当てられることで、海水の漏れが防止される。接続用配管23は、スリーブ22Sの内周面に沿って前後方向にスライド可能である。接続用配管23のフランジ23Fは、犠牲防食被膜配管24のフランジ24Fにガスケット又はOリングを介してボルト(いずれも図示省略)を用いて締結される。
【0033】
犠牲防食被膜配管24は、固定部材24Mによって給気マニホルド13に固定される(図2、7参照)。固定部材24Mは、例えば、金属製のバンドである。この例では、固定部材24Mは、ボルトとナットで結合された2本のバンドで構成されているが、固定部材24Mは1本のバンドで構成されていてもよい。固定部材24Mは、犠牲防食被膜配管24の管部24Pに巻き付けられる。固定部材24Mの長手方向の両端部は、給気マニホルド13の本体部13Bの左側面に沿うように折り曲げられ、左右方向に貫通したボルト孔を備える。給気マニホルド13の本体部13Bの左側面には、固定部材24Mのボルト孔に対応する位置に雌ねじが設けられている(図示省略)。犠牲防食被膜配管24を給気マニホルド13にボルトを用いて締結することで、犠牲防食被膜配管24が給気マニホルド13に固定される。
【0034】
給水管16からインタークーラ側蓋21の液体取入口21iを経て第1副室211に流入した海水は、インタークーラハウジング20内の流路(図示省略)に沿って流れつつ圧縮空気を冷却し、第2副室212から液体放出口21Eを経て冷却配管18に流入する。冷却配管18から清水クーラ側蓋25の液体取入口25iを経て第1副室251に流入した海水は、隔壁25Wを超えて第2副室252に流入し、清水クーラ15内の流路(図示省略)に沿って流れつつクーラントを冷却し、液体放出口26E、オイルクーラ(図示省略)を経て船外へ排出される。
【0035】
次に、犠牲防食被膜配管24の交換手順について説明する(図9乃至11参照)。図10、11は、犠牲防食被膜配管24の交換手順を示す側面図である。なお、図9乃至11では、ボルト挿入部22Aと固定部材24Mの図示は省略されている。
【0036】
図9は、犠牲防食被膜配管24が接続用配管23を介して金属製配管22に接続されている様子を示している。接続用配管23のフランジ23Fは、犠牲防食被膜配管24のフランジ24Fと締結されている。Oリング23Rは、スリーブ22Sの内周面の犠牲防食被膜配管24側の部位に接触している。
【0037】
犠牲防食被膜配管24を交換する場合、最初に、固定部材24Mを取り外し、次に、犠牲防食被膜配管24のフランジ24Fと接続用配管23のフランジ23Fとを締結しているボルトを取り外す。
【0038】
次に、犠牲防食被膜配管24を保持しながら、接続用配管23を金属製配管22側にスライドさせ(図10参照)、犠牲防食被膜配管24を撤去する(図11参照)。Oリング23Rは、スリーブ22Sの内周面の管部22P側の部位に接触している。接続用配管23のフランジ23Fにガスケット又はOリングが固着している場合には、これを除去する。なお、この例では、前後の接続用配管23を金属製配管22側にスライドさせているが、いずれか一方の接続用配管23のみをスライドさせてもよい。
また、接続用配管23を金属製配管22側にスライドさせた後に固定部材24Mを取り外してもよい。この場合、犠牲防食被膜配管24を保持する手間が省ける。
【0039】
次に、交換用の犠牲防食被膜配管24を前後の接続用配管23の間で保持し(図10参照)、前後の接続用配管23を犠牲防食被膜配管24側にスライドさせる。このとき、接続用配管23のフランジ23Fと犠牲防食被膜配管24のフランジ24Fとの間にガスケット又はOリング(いずれも図示省略)を挟み込む。また、犠牲防食被膜配管24が前後の金属製配管22と等距離になるように、接続用配管23の位置を調整することが望ましい。最後に、接続用配管23のフランジ23Fと犠牲防食被膜配管24のFフランジとをボルトで締結し、固定部材24Mを取り付ける。
【0040】
以上説明した本実施形態に係るエンジン100によれば、犠牲防食被膜処理が施された犠牲防食被膜配管24と、犠牲防食被膜配管24の両端部の少なくとも一方に接続された金属製配管22と、を備える。この構成によれば、配管の防食のためのメンテナンスが犠牲防食被膜配管24のみの交換で済み、金属製配管22を交換する必要がない。また、犠牲防食被膜配管24は、防食亜鉛よりも防食効果が長く持続するから、交換頻度を減らすことができる。よって、配管の防食のためのメンテナンスの負担を軽減することができる。また、防食亜鉛を設置するためのスペースが不要だから、配管をコンパクト化することができる。
【0041】
また、本実施形態に係るエンジン100によれば、金属製配管22の両端部のうちの犠牲防食被膜配管24が接続されていない側の端部に接続された流路部品(インタークーラ側蓋21、清水クーラ側蓋25)と、流路部品に設けられた犠牲防食材30と、を備える。この構成によれば、金属製配管22が犠牲防食被膜配管24と犠牲防食材30とに挟まれているため、防食効果が高まる。よって、金属製配管22の交換頻度を減らすことができる。
【0042】
また、本実施形態に係るエンジン100によれば、犠牲防食被膜配管24、金属製配管22、及び、犠牲防食材30を備えた流路部品は、犠牲防食材30を備えた流路部品、金属製配管22、犠牲防食被膜配管24、金属製配管22、犠牲防食材30を備えた流路部品の順に接続されている。この構成によれば、犠牲防食被膜配管24の防食効果が上流側と下流側に及ぶから、防食効果が及ぶ範囲をさらに広げることができる。
【0043】
また、本実施形態に係るエンジン100によれば、複数の金属製配管22が同一形状であるから、部品のコストを低減することができる。
【0044】
また、本実施形態に係るエンジン100によれば、犠牲防食被膜配管24は、接続用配管23を介して金属製配管22に接続され、接続用配管23は、金属製配管22又は犠牲防食被膜配管24の長手方向に沿ってスライド可能であるから、犠牲防食被膜配管24と金属製配管22が直線的な流路を形成している場合であっても、金属製配管22を取り外さずに犠牲防食被膜配管24を交換することができる。
【0045】
また、本実施形態に係るエンジン100によれば、犠牲防食被膜処理は、亜鉛めっき処理であり、金属製配管22は、鉄を用いて形成されているから、低コストな素材を用いて防食を行うことができる。
【0046】
また、本実施形態に係るエンジン100によれば、金属製配管22の両端部のうちの犠牲防食被膜配管24が接続されていない側の端部に接続された流路部品と、流路部品に設けられた犠牲防食材30と、を備え、犠牲防食材30は、亜鉛又は鉄を用いて形成されているから、低コストな素材を用いて防食を行うことができる。
【0047】
上記実施形態が以下のように変形されてもよい。
【0048】
上記実施形態では、金属製配管22を流れる液体の一例として海水が示されたが、液体は、淡水、水道水などでもよい。例えば、陸上に接地された発電用のエンジン100をピットに貯留した淡水や水道水を用いて冷却する構成に本発明が適用されてもよい。また、液体は、水以外でもよく、金属製配管22を腐食させる成分を含むものであれば、いかなる物質でもよい。
【0049】
上記実施形態では、冷却配管18に接続される装置の一例としてインタークーラ12、清水クーラ15、オイルクーラが示されたが、冷却配管18に接続される装置は、液体を用いてエンジン部品を冷却する装置であればいかなる装置でもよい。
【0050】
上記実施形態では、エンジン100の後方にインタークーラ12、前方に清水クーラ15が配置された例が示されたが、エンジン100の後方に清水クーラ15、前方にインタークーラ12が配置されていてもよい。また、上記実施形態では、インタークーラ12から清水クーラ15に海水が供給される例が示されたが、清水クーラ15からインタークーラ12に海水が供給されてもよい。
【0051】
上記実施形態では、犠牲防食被膜配管24、金属製配管22、流路部品が、後側から、流路部品、金属製配管22、犠牲防食被膜配管24、金属製配管22、流路部品の順に配置された例が示されたが、後側から、流路部品、金属製配管22、犠牲防食被膜配管24、流路部品の順に配置されていてもよい。また、後側から、流路部品、犠牲防食被膜配管24、金属製配管22、流路部品の順に配置されていてもよい。要するに、犠牲防食被膜配管24の両端部の少なくとも一方に金属製配管22が接続されていればよい。
【0052】
上記実施形態では、流路部品に犠牲防食材30が設けられている例が示されたが、流路部品に犠牲防食材30が設けられていなくてもよい。
【0053】
上記実施形態では、複数の金属製配管22が同一形状である例が示されたが、複数の金属製配管22が互いに異なる形状であってもよい。
【0054】
上記実施形態では、犠牲防食被膜が溶融亜鉛めっきであり、犠牲防食材30が亜鉛又は鉄である例が示されたが、犠牲防食被膜及び犠牲防食材30は、金属製配管22よりもイオン化傾向が強い物質であればよい。例えば、犠牲防食被膜は、溶融アルミニウムめっきでもよい。また、犠牲防食材30は、アルミニウムを用いて形成されていてもよい。また、金属製配管22は、ステンレス鋼等でもよい。
【0055】
図12は、変形例に係る冷却配管18を示す側面図である。図13は、変形例に係る冷却配管18から犠牲防食被膜配管24を取り外した様子を示す側面図である。この例では、前後の金属製配管22が互いの軸線が交差するように配置されている。犠牲防食被膜配管24は、前後の金属製配管22を滑らかに結ぶように湾曲している。金属製配管22は、犠牲防食被膜配管24のフランジ24Fに結合されるフランジ22Fを備える。この構成によれば、接続用配管23が設けられていなくても、金属製配管22を取り外さずに犠牲防食被膜配管24を交換することができる。
【符号の説明】
【0056】
100 エンジン
21 インタークーラ側蓋(流路部品)
22 金属製配管
23 接続用配管
24 犠牲防食被膜配管
25 清水クーラ側蓋(流路部品)
30 犠牲防食材
図1
図2
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図13