(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】4-1BBに結合する抗体およびその用途
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20250213BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20250213BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250213BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20250213BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20250213BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20250213BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20250213BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20250213BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20250213BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20250213BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250213BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
A61K39/395 T
A61K45/00
A61P31/00
A61P37/06
C07K16/46
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/63 Z
(21)【出願番号】P 2022522002
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(86)【国際出願番号】 CN2020119388
(87)【国際公開番号】W WO2021068841
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2023-04-27
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522145605
【氏名又は名称】ナンチン リーズ バイオラブス カンパニー,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100197169
【氏名又は名称】柴田 潤二
(72)【発明者】
【氏名】シアオチアン カン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン シアオ
(72)【発明者】
【氏名】スン チエンミン
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/025545(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/056821(WO,A1)
【文献】特表2019-504831(JP,A)
【文献】特表2018-520650(JP,A)
【文献】国際公開第2018/045110(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00-46
C12N 15/00-15/90
C12N 5/10
C12N 1/00-38
A61K 39/395
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つの重鎖可変領域CDR1領域、CDR2領域およびCDR3領域と、3つの軽鎖可変領域CDR1領域、CDR2領域およびCDR3領域と、を含み、
前記重鎖可変領域CDR1領域、CDR2領域およびCDR3領域は、それぞれ配列番号1、2および3に示される配列からなり、前記軽鎖可変領域CDR1領域、CDR2領域およびCDR3領域は、それぞれ配列番号4、5および6に示される配列からなる、
4-1BBに結合する抗体またはその抗原結合部分。
【請求項2】
前記重鎖可変領域を含み、
前記重鎖可変領域は、配列番号
25または77に対して、少なくとも
90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む又はからなる、
請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項3】
前記軽鎖可変領域を含み、
前記軽鎖可変領域は、配列番号
26(X1=SまたはG)または78に対して、少なくとも
90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ配列を含む又はからなる、
請求項1又は2に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項4】
(1)配列番号25に示されるアミノ酸配列を含む又はからなる重鎖可変領域と、配列番号26に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
又は、
(
2)配列番号77に示されるアミノ酸配列を含む又はからなる重鎖可変領域と、配列番号78に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域
を含む、
請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項5】
前記重鎖可変領域に連結された、配列番号33、34または75のアミノ酸配列を有する重鎖定常領域、および/または、前記軽鎖可変領域に連結された、配列番号35または63のアミノ酸配列を有する軽鎖定常領域を含む、請求項1又は4に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項6】
4-1BBシグナル伝達を活性化し、モノクローナル抗体である、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項7】
マウス、ヒト、キメラまたはヒト化抗体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項8】
IgG1、IgG2またはIgG4アイソタイプである、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項9】
抗原結合部分は、(i)Fab断片、(ii)F(ab’)
2断片、(iii)Fd断片、(iv)Fv断片、(v)dAb断片、(vi)ナノボディ、(vii)一本鎖Fv(scFv)から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項10】
第1の抗原結合領域および第2の結合領域を含み、
前記第1の結合領域は4-1BBに結合し
、
前記第1の結合領域は、請求項1に記載の前記重鎖CDR1領域、CDR2領域、CDR3領域、および、前記軽鎖CDR1領域、CDR2領域、CDR3領域;または、請求項2に記載の前記重鎖可変領域、および請求項3に記載の前記軽鎖可変領域;または請求項4に記載の前記重鎖可変領域および前記軽鎖可変領域
を含む、二重特異性抗体。
【請求項11】
前記第2の結合領域が、PD-L1、PD1またはCTLA-4に結合する、請求項10に記載の二重特異性抗体。
【請求項12】
(1)リンカーを介してまたはリンカーを介せずに、N末端またはC末端で請求項1~9のいずれか一項に記載の前記抗体の前記抗原結合部分に連結された第2の抗原に対する抗体の重鎖であり、前記抗原結合部分がscFvである、鎖1と、
(2)前記第2の抗原に対する抗体の軽鎖である、鎖2と、
を含む、二重特異性抗体。
【請求項13】
前記リンカーが、アミノ酸配列(Gly4Ser)n又は(GlySer4)nを含み、前記nが、1~7の正の整数である、請求項
12に記載の二重特異性抗体。
【請求項14】
2つの鎖1および2つの鎖2からなる、請求項
12又は
13に記載の二重特異性抗体。
【請求項15】
前記第2の抗原は、PD-L1、PD1またはCTLA-4から選択される、請求項
12~
14のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項16】
前記第2の抗原はPD-L1であり、前記PD-L1に対する抗体は重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、
前記重鎖可変領域は、3つの重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を含み、前記CDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ配列番号40、41および42に示される配列からなり、
前記軽鎖可変領域は、3つの軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を含み、前記CDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ配列番号43、44および45に示される配列からなる、
請求項
15に記載の二重特異性抗体。
【請求項17】
抗4-1BB抗体の前記scFvは、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、
前記重鎖可変領域は、3つの重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を含み、前記CDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ配列番号1、2および3に示される配列からなり、
前記軽鎖可変領域は、3つの軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を含み、前記CDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ配列番号4、5および6に示される配列からなる、
請求項
12~
16のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項18】
前記二重特異性抗体の鎖1は、配列番号48または50に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなり、
前記二重特異性抗体の鎖2は、配列番号49に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる、
請求項
12~
17のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項19】
請求項1~9のいずれか一項に記載の前記抗体またはその抗原結合部分、または、請求項10~
18のいずれか一項に記載の前記二重特異性抗体またはその鎖をコードするポリヌクレオチド。
【請求項20】
請求項
19に記載の前記ポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項21】
請求項
19に記載の前記ポリヌクレオチドと一体化したゲノムを有するか、または、請求項
20に記載の前記ベクターを含むか、または、請求項
19に記載の前記ポリヌクレオチドを含む、宿主細胞。
【請求項22】
請求項1~9のいずれか一項に記載の前記抗体またはその抗原結合部分、または請求項10~
18のいずれか一項に記載の前記二重特異性抗体、および薬学的に受容可能な担体を含む、医薬組成物。
【請求項23】
請求項1~9のいずれか一項に記載の前記抗体またはその抗原結合部分、または、請求項10~
18のいずれか一項に記載の前記二重特異性抗体と、1つ以上の追加の治療剤
と、を含む組み合わせ品。
【請求項24】
前記追加の治療剤が、化学療法剤、細胞毒性剤、ワクチン、他の抗体、抗感染剤、低分子薬剤、または免疫調節剤から選択される、請求項23に記載の組み合わせ品。
【請求項25】
前記他の抗体が、免疫チェックポイント分子に対する抗体から選択される、請求項24に記載の組み合わせ品。
【請求項26】
前記免疫チェックポイント分子が、PD-L1またはPD-1から選択される、請求項25に記載の組み合わせ品。
【請求項27】
被験体の癌を治療するための、もしくは被験体の感染症を治療するための、もしくは被験体の自己免疫疾患を治療するための、請求項
22に記載の医薬組成物、又は請求項
23~26のいずれか一項に記載の組み合わせ品。
【請求項28】
前記被験体は、
治療モダリティおよび/または他の治療剤によって
治療され得、前記治療モダリティは、手術および/または放射線療法を含み、および/または、前記他の治療剤は、化学療法剤、他の抗体、細胞毒性剤、ワクチン、抗感染剤、低分子薬剤、または免疫調節剤からなる群より選択される、請求項
27に記載の医薬組成物又は組み合わせ品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月11日に出願された米国仮出願第62/913,744号の優先権を主張し、その内容全体は参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本開示は、一般に、機能性をもってヒト4-1BBに特異的に結合する、分離されたモノクローナル抗体、特にヒトモノクローナル抗体、またはその抗原結合部分に関する。本開示は、抗体またはその抗原結合部分をコードする核酸分子、発現ベクター、宿主細胞、および、抗体またはその抗原結合部分を発現させるための方法をも提供する。本開示は、二重特異性分子をさらに提供する。また、本開示は、抗体またはその抗原結合部分を含む医薬組成物、および、抗体またはその抗原結合部分を用いる治療方法をさらに提供する。
【背景技術】
【0003】
4-1BBは、CD137またはTNFRSF9とも呼ばれ、腫瘍壊死因子受容体ファミリーのメンバーである。これは、TCRによって誘導されるT細胞の活性化を調節するT細胞表面上の共刺激分子として最もよく特徴付けられる。活性化された抗原提示細胞上で発現されるその主要な天然リガンドである4-1BBLにより結合すると、4-1BBは、抗アポトーシス分子をアップレギュレートし、サイトカイン産生およびエフェクター機能を促進する。4-1BBは、樹状細胞、活性化単球、NK細胞、好中球、好酸球、および肥満細胞にも見られ、4-1BBシグナル伝達は、IFN-γ分泌を刺激し、NK細胞の増殖およびDC活性化を促進すると報告されている(Cariad Chester et al.,(2018)Blood 131(1):49-57)。
【0004】
一方、4-1BBの発現は、癌患者の腫瘍細胞および血清で観察される。主に腫瘍微小血管系およびアテローム性動脈硬化症領域内の炎症部位における血管壁に沿った4-1BB発現は、それが白血球遊走を媒介する可能性があることを示唆している(Drenkard D et al.,(2007)FASEB J.21(2):456-463)。さらに、T制御性細胞(Treg)上で4-1BBを結紮すると、Tregの増殖が誘導されることがある(Zhang P et al.,(2007)Scand J Immunol.66(4):435-440)。
【0005】
4-1BBの複雑な機能を調べるために、Melero等は、1997年に免疫原性の低いAg104A肉腫および免疫原性の高いP815肥満細胞腫に対するアゴニスティック抗4-1BB抗体の効果を試験し、4-1BBアゴニストの抗腫瘍活性を明らかにした(Melero I et al.,(1997)Nature Med.3(6):682-685)。その後、生後12か月の4-1BBL-/-マウスの約60%がB細胞リンパ腫を発症し、4-1BBL-/-マウスのNK細胞数および活性が低下したことが報告された(Middendorp S et al.,(2009)Blood 114(11):2280-2289;Vinay D.S.et al.,(2004)J.Immunol.173(6):4218-4229)。B16.F10黒色腫細胞の注射は、4-1BB-/-マウスではより多くの死を引き起こしたが、4-1BB+/+マウスでは引き起こさなかった(Ju S.A et al.,(2005)Immunol.Cell Biol.83(4):344-351)。これらの発見により、4-1BBは、強力な免疫系賦活剤および免疫療法の標的候補として浮上した。研究によると、4-1BBアゴニストは、腫瘍、ウイルス感染症、自己免疫疾患の治療、および移植片の生存率の向上に使用できることが示されている(Seo S.K et al.,(2004)Nature Med.10(10):1088-1094;Sun Y et al.,(2002)J.Immunol.168(3):1457-1465;Agarwal A et al.,(2008)Curr.Opin.Organ.Transplant 13(4):366-372)。
【0006】
特に、4-1BBの効果は、他の病態よりも癌において非常に詳細に研究されている。4-1BBシグナル伝達は、細胞傷害性Tリンパ球において確立されたアネルギーを破壊し、逆転させることが判明した。例えば、B16.SIY黒色腫モデルでは、抗4-1BB mAbの投与により、IL-2分泌能を失ったCD8+TILの機能が回復した(Cariad Chester et al.,(2018)supra)。抗4-1BB mAbの抗腫瘍効果のほとんどは、CD8+T細胞によって示されるが、NK、NKT細胞、樹状細胞、およびCD4+T細胞は、腫瘍治療にも重要で必要であることが証明されている(Dass S.V et al.,(2014)BMB Rep.47(3):122-129)。さらに、抗4-1BB投与後のICAM-1やCXAM-1などの一部の接着分子のアップレギュレーションにより、T細胞の腫瘍部位への遊走が増加することが見出された(Palazon A et al.,(2011)Cancer Res.71(3):801-811)。さらに重要なことに、抗4-1BB療法の有効性は、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、黒色腫、卵巣癌、扁平上皮肺癌など、他の固形腫瘍およびリンパ腫の予備的モデルでも実証されている(Cariad Chester et al.,(2018)supra)。
【0007】
ウレルマブは、BMSによって開発された完全ヒトIgG4モノクローナル抗体であり、臨床試験に参加した最初の抗4-1BB治療薬であった。これは、4-1BB発現免疫細胞に特異的に結合して活性化し、第1相および第2相の単剤療法試験で有望な有効性を示したが、用量依存的な様式で肝毒性を示した。耐量でのウレルマブの単剤療法および併用療法は、有望な免疫刺激薬力学効果を示したものの、抗腫瘍効果には限定的であった。Pfizerのヒト化IgG2モノクローナル抗体であるウトミルマブは、優れた安全性プロファイルを示しているが、ウレルマブと比較して弱い4-1BBアゴニストである。現在では、リツキシマブ、ペムブロリズマブ、キイトルーダ、アベルマブ、および他の抗腫瘍抗体と組み合わせて、様々な癌の治療に用いる臨床試験が行われている(Cariad Chester et al.,(2018)supra)。
【0008】
さらに、抗4-1BBと他の抗体(抗PD-1抗体など)との併用療法も臨床試験中である。例えば、PD-1/PD-L1経路を遮断するPD-L1と4-1BBの両方を同時に標的とし、PD-L1発現腫瘍細胞によるPD-L1の架橋時に4-1BBを介して共刺激シグナルを与える二重特異性抗体が必要である。しかしながら、米国特許US2017/0198050A1に記載されている二重特異性抗体は、標的細胞と架橋することなく4-1BBシグナル伝達を活性化または誘導し、高い濃度で4-1BBによって引き起こされる潜在的な毒性の懸念を提起した。
【0009】
したがって、安全性プロファイルとアゴニズムとの間の最適なバランスを有する新しい抗4-1BB抗体を開発することが、当技術分野において依然として強く必要とされている。また、そのような抗4-1BB抗体は、4-1BBおよび他の抗原、例えば、PD-L1に結合できる二重特異性抗体を含む、新たな二重特異性抗体を構築するのにも役立つであろう。4-1BBに特異的に結合できる一方で、より高い親和性でPD-L1などの他の抗原に結合できるこのような二重特異性抗体も、4-1BB抗体の領域での開発の目的である。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、4-1BB(例えば、ヒト4-1BB)に特異的に結合する、分離されたモノクローナルアゴニスト抗体、例えば、ヒト、マウス、キメラまたはヒト化モノクローナル抗体、またはその抗原結合部分を提供する。一実施形態において、本発明の抗体は、安全性プロファイルとアゴニズムとの間に最適なバランスを提供する。
【0011】
本開示の抗体またはその抗原結合部分は、4-1BBタンパク質の検出、および腫瘍、感染症および自己免疫疾患などの4-1BB関連疾患の治療を含む、様々な用途に使用することができる。
【0012】
したがって、一態様において、本開示は、CDR1領域、CDR2領域およびCDR3領域を含む重鎖可変領域を有する、4-1BBに結合する分離されたモノクローナル抗体(例えば、ヒト抗体)またはその抗原結合部分に関するもので、ここで、前記CDR1領域、CDR2領域およびCDR3領域は、(1)それぞれ配列番号1、2および3、(2)それぞれ配列番号7、8および9、(3)それぞれ配列番号13、14および15、または(4)それぞれ配列番号19、20および21に対して、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0013】
一態様において、本開示の、分離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分は、配列番号25、27、29、31、または77に対して、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み、ここで、前記抗体またはその抗原結合断片は、4-1BBに結合する。
【0014】
一態様において、4-1BBに結合する、本開示の、分離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分は、CDR1領域、CDR2領域およびCDR3領域を含む軽鎖可変領域を含み、ここで、前記CDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域は、(1)それぞれ配列番号4、5および6、(2)それぞれ配列番号10、11および12、(3)それぞれ配列番号16、17および18、または(4)それぞれ配列番号22、23および24に対して、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0015】
一態様において、本開示の、分離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分は、配列番号26(X1=SまたはG)、28、30、32または78に対して、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、ここで、前記抗体またはその抗原結合断片は、4-1BBに結合する。
【0016】
一態様において、本開示の、分離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分は、それぞれがCDR1領域、CDR2領域およびCDR3領域を含む重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、ここで、前記重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3、ならびに前記軽鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3は、(1)それぞれ配列番号1、2、3、4、5および6、(2)それぞれ配列番号7、8、9、10、11および12、(3)それぞれ配列番号13、14、15、16、17および18、または(4)それぞれ配列番号19、20、21、22、23および24に対して、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、ここで、前記抗体またはその抗原結合断片は、4-1BBに結合する。
【0017】
一実施形態において、本開示の、分離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域および前記軽鎖可変領域は、(1)それぞれ配列番号25および26(X1=S)、(2)それぞれ配列番号25および26(X1=G)、(3)それぞれ配列番号27および28、(4)それぞれ配列番号29および30、(5)それぞれ配列番号31および32、または(6)それぞれ配列番号77および78に対して、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、ここで、前記抗体またはその抗原結合断片は、4-1BBに結合する。
【0018】
一実施形態において、本開示の、分離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分は、重鎖および軽鎖を含み、前記重鎖は、重鎖可変領域および重鎖定常領域を含み、前記軽鎖は、軽鎖可変領域および軽鎖定常領域を含み、ここで、前記重鎖定常領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4定常領域であり得、前記軽鎖定常領域は、ヒトラムダまたはカッパ定常領域であり得、前記重鎖可変領域および前記軽鎖可変領域は、上記のアミノ酸配列を含み、ここで、前記抗体またはその抗原結合断片は、4-1BBに結合する。さらなる実施形態において、前記重鎖定常領域は、配列番号33で示されるアミノ酸配列を含む。さらなる実施形態において、前記軽鎖定常領域は、配列番号35または63に示されるアミノ酸配列を含む。前記重鎖定常領域は、ヒトIgG定常領域に由来する定常領域、例えば、配列番号75で示されるアミノ酸配列を有する変異S228Pを有するIgG4定常領域、または配列番号34で示されるアミノ酸配列を有する変異L234A、L235A、D265A、P329A(EUナンバリング)を有するIgG1定常領域などの、他の適切な定常領域であり得る。前記軽鎖定常領域は、ヒトカッパまたはラムダ定常領域に由来する他の適切な定常領域であり得る。
【0019】
本開示の抗体は、幾つかの実施形態において、ジスルフィド結合によって接続された2つの重鎖および2つの軽鎖を含むかまたはそれらからなり、ここで、各重鎖は、前記重鎖定常領域、重鎖可変領域または前記CDR配列を含み、各軽鎖は、前記軽鎖定常領域、軽鎖可変領域または前記CDR配列を含み、ここで、前記重鎖可変領域のC末端は、前記重鎖定常領域のN末端に連結され、前記軽鎖可変領域のC末端は、前記軽鎖定常領域のN末端に連結される。本開示の抗体は、全長抗体、例えば、IgG1、IgG2またはIgG4アイソタイプであり得る。本開示の抗体は、カッパまたはラムダ定常領域を含んでいてもよい。本開示の他の実施形態に係る抗体またはその抗原結合部分は、一本鎖可変断片(scFv)抗体、またはFabまたはFab’2断片などの抗体断片であってもよい。
【0020】
本開示の例示的な抗体またはその抗原結合部分は、4-1BB、特にヒト4-1BBに特異的に結合し、4-1BBシグナル伝達を活性化するアゴニスト抗4-1BB抗体である。
【0021】
本開示はまた、前記抗体またはその抗原結合部分とは異なる結合特異性を有する第2の機能的部分(例えば、第2の抗体)に連結された、本開示の抗体またはその抗原結合部分を含む、二重特異性分子を提供する。前記二重特異性分子は、4-1BBおよびPD-1、PD-L1またはCTLA-4などの別の分子に結合してもよく、好ましくは、前記分子はPD-L1である。
【0022】
一態様において、本開示の抗体は、二重特異性抗体を指す。したがって、本開示はまた、4-1BB(例えば、ヒト4-1BB)に特異的に結合する第1の結合領域と、癌、感染症または自己免疫疾患に関連する第2の抗原に特異的に結合する第2の結合領域とを含む二重特異性抗体を提供する。一実施形態において、第2の抗原は、(ヒト)PD-1、PD-L1またはCTLA-4から選択される。より好ましくは、第2の抗原は(ヒト)PD-L1である。一実施形態において、4-1BBに特異的に結合する第1の結合領域は、上記のような重鎖可変領域および/または上記のような軽鎖可変領域を含む。一実施形態において、第1の結合領域は、上述したような重鎖可変領域のCDR1領域、CDR2領域およびCDR3領域、および/または上述したような軽鎖可変領域のCDR1領域、CDR2領域およびCDR3領域を含む。一実施形態において、第1の結合領域は、(ヒト)4-1BBに特異的に結合し、かつ高親和性で第2の抗原に特異的に結合する。
【0023】
一実施形態において、上記の二重特異性抗体は、T細胞を全身的に刺激することを避けつつ、PD-L1発現を有する腫瘍微小環境でのみ活性を有するように、ヒト4-1BBに特異的に結合する第1の結合領域と、ヒトPD-L1に高い親和性で特異的に結合する第2の結合領域とを含む。
【0024】
本開示の抗体またはその抗原結合部分または二重特異性分子、および薬学的に許容される担体を含む組成物もまた提供される。一実施形態において、前記組成物は医薬組成物である。
【0025】
本開示は、本開示の抗体またはその抗原結合部分または抗体の鎖をコードする核酸分子、ならびに、該核酸を含む発現ベクター、および、該発現ベクターを含むか、または前記抗体またはその抗原結合部分をコードするポリヌクレオチドと統合されているそのゲノムを有する、宿主細胞をまた含む。発現ベクターを含む宿主細胞を用いて抗4-1BB抗体を調製するための方法もまた提供され、この方法は、(i)宿主細胞において抗体を発現させるステップ、および(ii)宿主細胞またはその細胞培養物から抗体を分離するステップを含む。
【0026】
さらに別の態様において、本開示は、被験体における癌疾患を治療する方法を提供し、前記方法は、それを必要とする被験体に本開示の抗体またはその抗原結合部分を投与することを含む。幾つかの実施形態において、前記方法は、本開示の組成物、または二重特異性分子、または任意選択的に被験体において組成物または二重特異性分子を発現し得る核酸分子を投与することを含む。前記二重特異性分子は、4-1BB、および、PD-1、PD-L1またはCTLA-4、好ましくはPD-L1などの別のタンパク質に結合できる。幾つかの実施形態において、少なくとも1つの追加の抗体を、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、および/または抗CTLA-4抗体などの、本開示の抗体またはその抗原結合部分と共に投与し得る。幾つかの実施形態において、少なくとも1つの追加の抗癌剤を、本開示の抗体またはその抗原結合部分と共に投与し得る。前記癌は、固形癌または非固形癌、例えば、結腸癌、結腸直腸癌(大腸癌)、または直腸癌などの消化管(胃腸管)の癌であり得る。
【0027】
別の態様において、本開示は、被験体における感染症を治療するための方法を開示し、前記方法は、それを必要とする被験体に、本開示の抗体、その抗原結合部分、特定の分子、または医薬組成物を、必要に応じて追加の抗ウイルス剤、抗菌剤または抗真菌剤とともに投与することを含む。
【0028】
別の態様において、本開示は、自己免疫疾患を治療するための方法を開示し、前記方法は、それを必要とする被験体に、本開示の抗体、その抗原結合部分、特定の分子、または医薬組成物を投与することを含む。前記自己免疫疾患は、喘息または関節リウマチである可能性がある。必要に応じて、追加の抗喘息剤または抗関節リウマチ剤を投与してもよい。
【0029】
本開示の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および例から明らかになるであろうが、限定的であると解釈されるべきではない。本出願を通じて引用されたすべての参考文献、GenBankエントリ、特許および公開された特許出願の内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1A】ELISAアッセイにおいて、ヒト4-1BBへの抗41BB抗体41BB-2-IgG2(A)、41BB-9-IgG2(B)、41BB-13-IgG2(C)、および41BB-27-IgG2(D)の結合能力を示す図である。
【0031】
【
図2A】ELISAアッセイにおいて、ヒトCD40、ヒトHVEM、ヒトOX40、ヒトCD27、ヒトGITRおよびRhesus 4-1BBへの抗4-1BB抗体41BB-2-IgG2、41BB-9-IgG2、41BB-13-IgG2(A)および41BB-27-IgG2(B)の結合能力を示す図である。
【0032】
【
図3A】架橋の有無にかかわらず、4-1BBシグナル伝達における抗4-1BB抗体41BB-2-IgG2、41BB-9-IgG2、41BB-13-IgG2および41BB-27-IgG2のアゴニスト活性を示す図である。
【0033】
【
図4A】架橋剤の有無にかかわらず、4-1BBシグナル伝達における抗4-1BB抗体41BB-2-IgG1、41BB-9-IgG1、41BB-13-IgG1および41BB-27-IgG4のアゴニスト活性を示す図である。
【0034】
【
図5A】二重特異性抗体P4B-3(A)およびP4B-2(B)の構造を示す図である。
【0035】
【
図6】ELISAアッセイにおけるヒトPD-L1への二重特異性抗体の結合を示す図である。
【0036】
【
図7】ELISAアッセイにおけるヒト4-1BBへの二重特異性抗体の結合を示す図である。
【0037】
【
図8】標的細胞CHO-K1-PDL1細胞を用いた4-1BBレポーター遺伝子アッセイにおいて、PD-L1結合依存性4-1BB刺激を誘導する二重特異性抗体(P4B-3およびNM21-PRO1186)の能力を示す図である。
【0038】
【
図9A】標的細胞A375/PD-L1の有無にかかわらず、4-1BBレポーター遺伝子アッセイにおいて、4-1BB刺激を誘導する二重特異性抗体(P4B-3およびINBRX-105-1)の能力を示す図である。
【0039】
【
図10】P4B-3がヒトPBMCを活性化してIL-2を放出することを示す図である。
【0040】
【0041】
【
図12】腫瘍微小環境(Tumor microenvironment、TME)におけるmCD3のmCD8+T細胞のパーセンテージを示す図である。
【0042】
【
図13】TMEにおけるmCD4のmTregsパーセンテージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本開示をより容易に理解するために、特定の用語を最初に定義する。追加の定義は、詳細な説明全体で記載されている。
【0044】
用語「4-1BB」とは、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバー9を指す。用語「4-1BB」は、変異体、アイソフォーム、ホモログ、オルソログ、およびパラログを含む。例えば、ヒト4-1BBタンパク質に特異的な抗体は、特定のケースにおいて、サルなどのヒト以外の種からの4-1BBタンパク質と交差反応し得る。他の実施形態において、ヒト4-1BBタンパク質に特異的な抗体は、ヒト4-1BBタンパク質に対して完全に特異的であり得、他の種または他のタイプに対して交差反応性を示さないか、または、特定の他の種からの4-1BBと交差反応し得るが、他のすべての種からのものではない。
【0045】
用語「ヒト4-1BB」とは、GenBank受託番号NP_001552.2を有するヒト4-1BBのアミノ酸配列などの、ヒト由来のアミノ酸配列を有する4-1BBタンパク質を指す。一実施形態において、ヒト4-1BBは、配列番号39で示されるアミノ酸配列を含む。用語「サルまたはRhesus4-1BB」および「マウス4-1BB」とは、それぞれサルおよびマウスの4-1BB配列を指し、例えば、それぞれGenBank受託番号NP_001253057.1およびNP_033430.1を有するアミノ酸配列を有するものを指す。
【0046】
本明細書において、用語「抗体」は、全抗体及びそのいずれかの抗原結合断片(即ち、「抗原結合部分」)又は一本鎖を含む。さらに、本明細書で使用されている用語「抗体」はまた、二重特異性抗体または三重特異性抗体などの複数の特異的抗体を含む。全抗体は、ジスルフィド結合によって互いに結合された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(ここで、VHと略される)及び重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、CH1、CH2及びCH3の3つのドメインから構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(ここで、VLと略される)及び軽鎖定常領域(ここで、CLと略される)から構成される。軽鎖定常領域は、CLの1つのドメインから構成される。VH及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存的な領域が散在する領域にさらに細分化することができる。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端までFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配置される3つのCDR及び4つのFRで構成される。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、宿主組織又は因子(免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分(C1q)を含む)への免疫グロブリンの結合を媒介できる。
【0047】
本明細書で使用されている抗体の「抗原結合部分」(又は単に「抗体部分」)との用語とは、抗原(例えば、4-1BBタンパク質)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片によって達成できることが示されている。抗体の「抗原結合部分」との用語に含まれる結合断片の例には、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインから構成される一価断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域においてジスルフィド橋により結合された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片、(iii)VH及びCH1ドメインから構成されるFd断片、(iv)単一アームのVL及びVHドメインから構成されるFv断片、(v)VHドメインから構成されるdAb断片(Wardet al.,(1989)Nature 341:544-546)、(vi)分離された相補性決定領域(CDR)、並びに(vii)単一の可変ドメイン及び2つの定常ドメインを含む重鎖可変領域であるナノボディを含む。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVL及びVHは、別々の遺伝子によってコードされるが、組換え法により、それらを単一タンパク質鎖にすることができる合成リンカーを用いて結合することができる。前記単一タンパク質鎖において、VL及びVHがペアになって一価分子(一本鎖Fv(scFv)として知られている。例えば、Bird et al.(1988)Science 242:423-426;及びHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883を参照)を形成する。このような一本鎖抗体も抗体の「抗原結合部分」との用語に含まれることが意図されている。これらの断片は、当業者に知られている従来の技術を使用して得られ、断片は、インタクト抗体と同じ方法で有用性についてスクリーニングされる。
【0048】
用語「二重特異性」とは、抗体が少なくとも2つの別個の抗原決定基に特異的に結合できることを意味する。典型的には、二重特異性抗体は、2つの抗原結合領域を含み、そのそれぞれが異なる抗原決定基に特異的である。特定の実施形態において、二重特異性抗体は、2つの抗原決定基、特に2つの別個の細胞上に発現した2つの抗原決定基に、同時に結合することができる。本明細書において使用する用語「抗原決定基」は、「抗原」および「エピトープ」と同義であり、ポリペプチド高分子上の部位(例えば、一続きの連続するアミノ酸のストレッチ、またはアミノ酸が連続していない異なる領域から構成されるコンフォメーション構成)であって、そこに抗原結合部分が結合して抗原結合部分-抗原複合体を形成する部位を指す。有用な抗原決定基を、例えば、腫瘍細胞の表面に、ウイルス感染細胞の表面に、他の疾患細胞の表面に、免疫細胞の表面に、遊離した状態で血清中に、および/または細胞外マトリックス(extracellular matrix、ECM)中に、見いだすことができる。
【0049】
本明細書において使用する用語「抗原結合領域」とは、抗原決定基に特異的に結合するポリペプチド分子を指す。一実施形態において、抗原結合領域は、それが付着している実体(例えば、第2の抗原結合領域)を標的部位、例えば、抗原決定基を有する特定のタイプの腫瘍細胞に方向付けることができる。別の実施形態において、抗原結合領域(例えば、第1の抗原結合領域)は、その標的抗原、例えば、T細胞受容体抗原を介してシグナル伝達を活性化することができる。抗原結合領域には、本明細書において定義される抗体またはその抗原結合断片が含まれる。特定の抗原結合領域には、抗体重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域を含む抗体の抗原結合断片が含まれる。特定の実施形態において、抗原結合領域は、本明細書において定義され、当技術分野において公知の抗体定常領域を含んでもよい。
【0050】
「特異的結合」とは、結合が抗原に対して選択的であり、望ましくない相互作用または非特異的な相互作用と区別できることを意味する。抗原結合領域が特定の抗原決定基に結合する能力は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)または当業者がよく知っている他の技法、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)法(BIAcore機器で分析される)によって測定することができる。
【0051】
特に指示のない限り、本明細書において使用する用語「結合親和性」とは、結合ベアのメンバー(例えば、モノクローナル抗体と抗原、抗原結合領域と抗原、または受容体とそのリガンド)間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。親和性は、本明細書に記載の方法を含む、当技術分野において公知の十分に確立された方法によって測定することができる。
【0052】
本明細書で使用されている「分離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すことを意図している(例えば、4-1BBタンパク質に特異的に結合する分離された抗体は、4-1BBタンパク質以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかし、ヒト4-1BBタンパク質に特異的に結合する分離された抗体は、他の抗原(例えば、他の種に由来する4-1BBタンパク質)に対して交差反応性を有してもよい。さらに、分離された抗体は、他の細胞物質及び/及び化学物質を実質的に含まない。
【0053】
本明細書において使用する用語「ヒト抗体」は、フレームワークおよびCDR領域の両方がヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことを意図している。さらに、抗体が定常領域を含む場合、該定常領域もヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する。本開示のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基を含み得る(例えば、インビトロのランダムもしくは部位特異的変異誘発によって、またはインビボの体細胞変異によって導入される変異)。しかしながら、本明細書において使用する用語「ヒト抗体」は、別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植されている抗体を含むことを意図していない。
【0054】
用語「アゴニスティックな4-1BB抗体」または「アゴニスティックな抗4-1BB抗体」とは、4-1BBに結合し、4-1BBシグナル伝達を活性化または誘導して、T細胞などの免疫細胞の活性化および/または増殖を促進する抗4-1BB抗体を指す。
【0055】
用語「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えば、IgM又はIgG1)を指す。
【0056】
用語「抗原を認識する抗体」及び「抗原に特異的な抗体」は、本明細書では用語「抗原に特異的に結合する抗体」と互換的に使用される。
【0057】
本明細書において使用する「ヒト4-1BBに特異的に結合する」抗体は、ヒト4-1BBタンパク質(および場合により、1つ以上の非ヒト種由来の4-1BBタンパク質)に結合するが、非4-1BBタンパク質には実質的に結合しない抗体を指すことを意図している。前記抗体は、KDが1.0×10-6M以下、好ましくは5.0×10-7M以下、より好ましくは1.0×10-7M以下でヒト4-1BBタンパク質に結合することが望ましい。
【0058】
本明細書において使用する用語、タンパク質または細胞に「実質的に結合しない」とは、該タンパク質または細胞に特異的に結合しないか、または高い親和性で結合しないこと、すなわち、KDが1.0×10-6M以上、より好ましくは1.0×10-5M以上、より好ましくは1.0×10-4M以上、さらに好ましくは1.0×10-3M以上、さらにより好ましくは1.0×10-2M以上で該タンパク質または細胞に結合することを意味する。
【0059】
IgG抗体またはその抗原結合領域に対する「高親和性で第2の抗原(PD-L1)に特異的に結合する」という用語は、KDが1.0×10-8M以下、より好ましくは5.0×10-9M以下、さらにより好ましくは1.0×10-9M以下である抗体または抗原結合領域を指す。
【0060】
本明細書において、用語「Kassoc」又は「Ka」は、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度を指すことを意図している。また、用語「Kdis」又は「Kd」は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指すことを意図している。用語「KD」は、解離定数であり、Kaに対するKdの比(即ち、Kd/Ka)から得られanモル濃度(M)で示される。抗体のKD値は、当技術分野で十分に確立された方法を使用して決定することができる。好ましくは、抗体のKDの決定は、表面プラズモン共鳴、より好ましくは、バイオセンサーシステム(例えば、BiacoreTMシステム)を使用して行われる。
【0061】
用語「EC50」は、最大有効濃度の半分として知られており、特定の曝露時間後にベースラインと最大値との中間の反応を誘発する抗体の濃度を指す。
【0062】
用語「IC50」とは、最大阻害濃度の半分として知られており、抗体の非存在下と比較して、特定の生物学的または生化学的機能を50%阻害する抗体の濃度を指す。
【0063】
用語「被験体」には、ヒト及び非ヒト動物が含まれる。用語「非ヒト動物」には、すべての脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ニワトリ、両生類、爬虫類のような哺乳類及び非哺乳類が含まれる。非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマのような哺乳類動物が好ましい。
【0064】
用語「治療有効量」とは、疾患や病態(癌など)に関連する症状を予防または改善するのに十分な、且つ/または、疾患や病態の重症度を軽減するのに十分な本開示の抗体の量を意味する。治療有効量は、実際の有効量が当業者に容易に識別される治療対象病態に関連して理解される。
【0065】
本明細書に記載の用語「治療薬(治療剤)」とは、化学療法剤、細胞毒性剤、ワクチン、他の抗体(例えば、免疫チェックポイント分子に対する抗体)、抗感染剤、免疫調節剤、小分子薬剤を含む、腫瘍(癌など)または感染症または自己免疫疾患の予防または治療に有効な物質を含む。
【0066】
用語「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化合物を含む。
【0067】
用語「抗感染剤」は、ウイルス、細菌、真菌、または原生動物、例えば寄生虫などの、微生物の増殖を特異的に阻害または排除する分子を含み、宿主に致死的ではない、投与濃度および投与間隔で使用される。
【0068】
本明細書において使用する用語「抗感染剤」は、抗生物質、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、および抗原虫剤を含む。一特定の態様において、抗感染剤は、投与濃度および投与間隔において宿主に対して非毒性である。
【0069】
免疫調節剤には、免疫チェックポイント分子阻害剤および共刺激分子活性化剤が含まれる。
【0070】
用語「小分子薬剤」とは、生物学的プロセスを調節できる低分子量有機化合物を指す。「小分子」とは、分子量が通常2kD未満、好ましくは1kD未満、より好ましくは約500ダルトン以下の分子と定義される。小分子には、無機分子、有機分子、無機成分を含む有機分子、放射性原子を含む分子、合成分子、ペプチド模倣物、および抗体模倣物が含まれるが、これらに限定されない。
【0071】
用語「癌」および「癌性」とは、典型的に調節されていない細胞成長(細胞増殖)によって特徴付けられる哺乳動物における生理学的疾患を指すかまたは説明する。
【0072】
用語「腫瘍」とは、悪性か良性かに関係なく、すべての腫瘍性細胞の成長および増殖、ならびにすべての前癌性および癌性の細胞および組織を指す。用語「癌」、「癌性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」、および「腫瘍」とは、本明細書において言及される場合、互いに排他的ではない。
【0073】
用語「感染症」とは、例えば、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、または寄生虫感染症などの原生動物を含む、病原体によって引き起こされる疾患を指す。
【0074】
用語「腫瘍免疫回避」とは、免疫認識およびクリアランスを回避する腫瘍を指す。したがって、治療の概念として、腫瘍免疫は「治療」され、回避が弱まると、腫瘍は免疫系によって認識され攻撃される。腫瘍認識の例として、腫瘍結合、腫瘍縮小、および腫瘍クリアランスが挙げられる。
【0075】
本開示の様々な態様については、以下のサブセクションでさらに詳細に説明する。
【0076】
ヒト4-1BBに対する結合親和性を有する抗4-1BB抗体。
【0077】
本開示の例示的な抗体またはその抗原結合部分は、ヒト4-1BBに特異的に結合する。本開示の例示的な抗体またはその抗原結合部分は、T細胞などの免疫細胞の活性化および/または増殖を促進するために4-1BBシグナル伝達を活性化または誘導するアゴニスティック抗体である。
【0078】
一態様において、本発明は、3つの重鎖可変領域CDR(CDR1、CDR2およびCDR3)を含む、抗4-1BB抗体またはその抗原結合断片に関する。
別の態様において、本発明は、3つの軽鎖可変領域CDR(CDR1、CDR2およびCDR3)を含む、抗4-1BB抗体またはその抗原結合断片に関する。
さらなる態様において、本発明は、3つの重鎖可変領域CDR(CDR1、CDR2およびCDR3)と、3つの軽鎖可変領域CDR(CDR1、CDR2およびCDR3)とを含む、抗4-1BB抗体またはその抗原結合断片に関する。
【0079】
別の態様において、本発明は、重鎖可変領域を含む、抗4-1BB抗体またはその抗原結合断片に関する。
別の態様において、本発明は、軽鎖可変領域を含む、抗4-1BB抗体またはその抗原結合断片に関する。
さらなる態様において、本発明は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、抗4-1BB抗体またはその抗原結合断片に関する。
一実施形態において、重鎖可変領域は、3つの重鎖可変領域CDR(CDR1、CDR2およびCDR3)を含む。
別の実施形態において、軽鎖可変領域は、3つの軽鎖可変領域CDR(CDR1、CDR2およびCDR3)を含む。
【0080】
一実施形態において、3つの重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3は、
(i) 配列番号25、27、29、31または77に示される配列を含むかまたはそれらからなる重鎖可変領域VHに由来するCDR1、CDR2およびCDR3、または
(ii) (i)の3つのCDRと比較して合計で1つ以上5つ以下のアミノ酸修飾(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)をさらに含む、(i)のCDR1、CDR2およびCDR3である。
一実施形態において、3つの軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3は、
(i) 配列番号26、28、30、32、または78に示される配列を含むかまたはそれらからなる軽鎖可変領域VLに由来するCDR1、CDR2およびCDR3、または
(ii) (i)の3つのCDRと比較して合計で1つ以上5つ以下のアミノ酸修飾(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)をさらに含む、(i)のCDR1、CDR2およびCDR3である。
一実施形態において、本発明は、配列番号25、27、29、31または77に示される配列からなる重鎖可変領域VHに由来する3つの重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3と、配列番号26、28、30、32または78に示される配列からなる軽鎖可変領域VLに由来する3つの軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3とを含む、抗4-1BB抗体またはその抗原結合断片に関する。
別の実施形態において、本発明は、以下を含む抗4-1BB抗体またはその抗原結合断片に関する:
(1) 配列番号25または77に示される配列からなる重鎖可変領域に由来する3つのCDR(CDR1、CDR2およびCDR3)、および、配列番号26または78に示される配列からなる軽鎖可変領域に由来する3つのCDR(CDR1、CDR2およびCDR3);
(2) 配列番号27に示される配列からなる重鎖可変領域に由来する3つのCDR(CDR1、CDR2およびCDR3)、および、配列番号28に示される配列からなる軽鎖可変領域に由来する3つのCDR(CDR1、CDR2およびCDR3);
(3) 配列番号29に示される配列からなる重鎖可変領域に由来する3つのCDR(CDR1、CDR2およびCDR3)、および、配列番号30に示される配列からなる軽鎖可変領域に由来する3つのCDR(CDR1、CDR2およびCDR3);
(4) 配列番号31に示される配列からなる重鎖可変領域に由来する3つのCDR(CDR1、CDR2およびCDR3)、および、配列番号32に示される配列からなる軽鎖可変領域に由来する3つのCDR(CDR1、CDR2およびCDR3)。
【0081】
一実施形態において、VH CDR1は、配列番号1、7、13または19からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるか、または、VH CDR1は、配列番号1、7、13または19からなる群より選択されるアミノ酸配列と比較して、1つ、2つまたは3つの修飾(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。
一実施形態において、VH CDR2は、配列番号2、8、14または20からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるか、または、VH CDR2は、配列番号2、8、14または20からなる群より選択されるアミノ酸配列と比較して、1つ、2つまたは3つの修飾(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。
一実施形態において、VH CDR3は、配列番号3、9、15または21からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるか、または、VH CDR3は、配列番号3、9、15または21からなる群より選択されるアミノ酸配列と比較して、1つ、2つまたは3つ修飾(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。
一実施形態において、VLのCDR1は、配列番号4、10、16または22からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるか、または、VLのCDR1は、配列番号4、10、16または22からなる群より選択されるアミノ酸配列と比較して、1つ、2つまたは3つの修飾(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。
一実施形態において、VLのCDR2は、配列番号5、11、17または23からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるか、または、VLのCDR2は、配列番号5、11、17または23からなる群より選択されるアミノ酸配列と比較して、1つ、2つまたは3つの修飾(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。
一実施形態において、VLのCDR3は、配列番号6、12、18または24からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるか、または、VLのCDR3は、配列番号6、12、18または24からなる群より選択されるアミノ酸配列と比較して、た1つ、2つまたは3つの修飾(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。
【0082】
一実施形態において、3つの重鎖可変領域VH CDR1、CDR2およびCDR3は、
(i) それぞれ配列番号1、2および3に示される配列からなるCDR1、CDR2およびCDR3、または
(ii) それぞれ配列番号7、8および9に示される配列からなるCDR1、CDR2およびCDR3、または
(iii) それぞれ配列番号13、14および15に示される配列からなるCDR1、CDR2およびCDR3、または
(iv) それぞれ配列番号19、20および21に示される配列からなるCDR1、CDR2およびCDR3、または
(v) (i)から(iv)のいずれかの3つのCDRと比較して合計で1つ以上5つ以下のアミノ酸修飾(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)をさらに含む、(i)から(iv)のいずれかのCDR1、CDR2およびCDR3である。
一実施形態において、3つの軽鎖可変領域VLのCDR1、CDR2およびCDR3は、
(i) それぞれ配列番号4、5および6に示される配列からなるCDR1、CDR2およびCDR3、または
(ii) それぞれ配列番号10、11および12に示される配列からなるCDR1、CDR2およびCDR3、または
(iii) それぞれ配列番号16、17および18に示される配列からなるCDR1、CDR2およびCDR3、または
(iv) それぞれ配列番号22、23および24に示される配列からなるCDR1、CDR2およびCDR3、または
(v) (i)から(iv)のいずれかの3つのCDRと比較して合計で1つ以上5つ以下のアミノ酸修飾(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)をさらに含む、(i)から(iv)のいずれかのCDR1、CDR2およびCDR3である。
別の実施形態において、本発明は、以下を含む抗4-1BB抗体またはその抗原結合断片に関する:
(i) それぞれ配列番号1、2および3に示される配列からなるVH CDR1、CDR2およびCDR3、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に示される配列からなるVLのCDR1、CDR2およびCDR3;
(ii) それぞれ配列番号7、8および9に示される配列からなるVH CDR1、CDR2およびCDR3、ならびにそれぞれ配列番号10、11および12に示される配列からなるVL CDR1、CDR2およびCDR3;
(iii) それぞれ配列番号13、14および15に示される配列からなるVH CDR1、CDR2およびCDR3、ならびにそれぞれ配列番号16、17および18に示される配列からなるVL CDR1、CDR2およびCDR3;または
(iv) それぞれ配列番号19、20および21に示される配列からなるVH CDR1、CDR2およびCDR3、ならびにそれぞれ配列番号22、23および24に示される配列からなるVL CDR1、CDR2およびCDR3。
【0083】
一実施形態において、重鎖可変領域は、
(i)配列番号25、27、29、31または77からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるか;または
(ii)配列番号25、27、29、31または77からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるか:または
(iii)配列番号25、27、29、31または77からなる群より選択されるアミノ酸配列と比較して、1つ以上(好ましくは10以下、より好ましくは5以下)のアミノ酸修飾(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的置換)を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなり、好ましくは、前記アミノ酸修飾はCDR領域では起こらず、より好ましくは、前記アミノ酸修飾はFR領域、例えば、FR1、FR2、FR3またはFR4領域で起こる。
別の実施形態において、軽鎖可変領域は
(i)配列番号26、28、30、32または78からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるか;または
(ii)配列番号26、28、30、32または78からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるか;または
(iii)配列番号26、28、30、32または78からなる群より選択されるアミノ酸配列と比較して、1つ以上(好ましくは10以下、より好ましくは5以下)のアミノ酸修飾(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的置換)を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなり、好ましくは、前記アミノ酸修飾はCDR領域では起こらず、より好ましくは、前記アミノ酸修飾はFR領域、例えば、FR1領域、FR2領域、FR3領域またはFR4領域で起こる。
一実施形態において、抗体の精製を改善するために可変領域を改変することができる。例えば、重鎖可変領域の末端において、アミノ酸をSからGに変異させて高純度に調製できる抗体を得ることができる。
別の実施形態において、可変領域を改変して、抗体または抗原結合部分(例えば、scFv)の安定性を向上させることができる。例えば、変異は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域との間にジスルフィドを形成するように行うことができる。例えば、重鎖可変領域の変異はG44C(Euナンバリング)であり、および/または軽鎖可変領域の変異はT104C(Euナンバリング)である。
別の実施形態において、本発明は、以下を含む抗4-1BB抗体またはその抗原結合断片に関する:
配列番号25、27、29、31または77に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる重鎖可変領域、および/または
配列番号26、28、30、32または78に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる軽鎖可変領域。
別の実施形態において、本発明は、以下を含む抗4-1BB抗体またはその抗原結合断片に関する:
(1) 配列番号25に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる重鎖可変領域、および配列番号26に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(2) 配列番号27に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる重鎖可変領域、および配列番号28に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(3) 配列番号29に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる重鎖可変領域、および配列番号30に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;
(4) 配列番号31に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる重鎖可変領域、および配列番号32に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域;または
(5) 配列番号77に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる重鎖可変領域、および配列番号78に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域。
【0084】
さらなる態様において、抗4-1BB抗体またはその抗原結合断片は、重鎖定常領域、および/または軽鎖定常領域をさらに含む。
【0085】
一実施形態において、重鎖定常領域は、ヒトIgG定常領域、例えば、IgG1定常領域、IgG2定常領域、IgG3定常領域またはIgG4定常領域、好ましくは、IgG1定常領域、IgG2定常領域またはIgG4定常領域であるかまたはそれに由来する。
別の実施形態において、重鎖定常領域は、
(i)配列番号33、34または75に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるか;または
(ii)配列番号33、34または75に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるか;または
(iii)配列番号33、34または75に示されるアミノ酸配列と比較して、1つ以上(好ましくは10以下、より好ましくは5以下)のアミノ酸修飾(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的置換)を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。
一実施形態において、軽鎖定常領域は、カッパまたはラムダ軽鎖定常領域、例えば、ヒトカッパまたはラムダ軽鎖定常領域、例えば、ヒトラムダ軽鎖定常領域であるかまたはそれに由来する。
別の実施形態において、軽鎖定常領域は、
(i)配列番号35または63に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるか;または
(ii)配列番号35または63に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるか;または
(iii)配列番号35または63に示されるアミノ酸配列と比較して、1つ以上(好ましくは10以下、より好ましくは5以下)のアミノ酸修飾(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的置換)を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。
【0086】
一実施形態において、抗体の定常領域を変異させて、抗体の産生および精製を改善することができる。例えば、IgG4定常領域はS228P(EUナンバリング)の変異を有することができる。IgG1定常領域は、L234A、L235A、D265A、P329A(Euナンバリング)の変異を有することができる。
【0087】
一実施形態において、本開示の抗体の抗原結合断片は、scFv断片である。特に、scFv断片は、リンカーによって連結された軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含む。一実施形態において、リンカーは、グリシンおよび/またはセリン残基を単独でまたは組み合わせて有するリンカーなどの柔軟なリンカーである。一実施形態において、リンカーは、アミノ酸配列(Gly4Ser)nまたは(GlySer4)nを含み、ここで、nは1以上の正の整数であり、例えば、nは1~7の正の整数であり、例えば、nは2、3、4、5、6である。一実施形態において、nは1、2、3または4である。特定の実施形態において、リンカーは、配列番号36、配列番号51、配列番号52に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。
【0088】
本開示の好ましい抗体はモノクローナル抗体である。
【0089】
モノクローナル抗4-1BB抗体
【0090】
本開示の抗体は、以下および以下の実施例に記載されるように構造的および化学的に特徴付けられるモノクローナル抗体であってもよい。抗体のCDR領域または重鎖/軽鎖可変領域のアミノ酸配列番号を以下の表1にまとめる。抗体の重鎖定常領域は、例えば、配列番号33、34または75に示されるアミノ酸配列を有するヒトIgG1重鎖定常領域、ヒトIgG2重鎖定常領域またはヒトIgG4重鎖定常領域であり、抗体の軽鎖定常領域は、例えば、配列番号35または63に示されるアミノ酸配列を有するヒトラムダ定常領域であってもよい。抗体は、ジスルフィド結合によって連結された2つの重鎖および2つの軽鎖を含むかそれらからなり、重鎖可変領域のC末端は、重鎖定常領域のN末端に連結されており、軽鎖可変領域のC末端は、軽鎖定常領域のN末端に連結されている。
【表1】
【0091】
表1の重鎖可変領域CDRおよび軽鎖可変領域CDRは、Kabatナンバリングシステムによって定義されている。しかしながら、当分野で周知されているように、CDR領域はまた、重鎖/軽鎖可変領域配列に基づいて、Chothia、およびIMGT、AbM、またはContactナンバリングシステム/方法などの他のシステムによって決定することもできる。異なるナンバリングシステムで得られる抗体の可変領域のCDRの境界は異なることがあることに留意すべきである。すなわち、異なるナンバリングシステムによって定義される抗体の可変領域のCDR配列は異なる。よって、抗体が本発明により定義される特定のCDR配列によって定義される場合、その抗体の範囲はまた、可変領域配列がその特定のCDR配列を含んでなるが、異なるプロトコル(例えば、異なるナンバリングシステム規則またはそれらの組み合わせ)の適用のために本発明によって定義された特定のCDR境界とは異なるCDR境界が主張される抗体も包含する。
【0092】
ヒト4-1BBに結合する他の抗4-1BB抗体のVHおよびVL配列(またはCDR配列)は、本開示の抗4-1BB抗体のVHおよびVL配列(またはCDR配列)と「混合および適合」することができる。好ましくは、VH鎖およびVL鎖(またはそのような鎖内のCDR)が混合され適合される場合、特定のVH/VLペアリングからのVH配列を、構造的に類似したVH配列に置き換える。同様に、好ましくは、特定のVH/VLペアリングからのVL配列を、構造的に類似したVL配列に置き換える。したがって、一実施形態において、本開示の抗体またはその抗原結合部分は、
(a)上記の表1に列挙されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および
(b)上記の表1に列挙されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または別の抗4-1BB抗体のVLを含み、
ここで、前記抗体はヒト4-1BBに特異的に結合する。
【0093】
別の実施形態において、本開示の抗体またはその抗原結合部分は、
(a)上記の表1に列挙される重鎖可変領域のCDR1領域、CDR2領域およびCDR3領域;および
(b)上記の表1に列挙される軽鎖可変領域のCDR1領域、CDR2領域およびCDR3領域、または別の抗4-1BB抗体のCDRを含み、
ここで、前記抗体はヒト4-1BBに特異的に結合する。
【0094】
さらに別の実施形態において、抗体またはその抗原結合部分は、ヒト4-1BBに結合する他の抗体のCDR、例えば、異なる抗4-1BB抗体の、重鎖可変領域のCDR1および/またはCDR3、および/または軽鎖可変領域のCDR1、CDR2および/またはCDR3と組み合わされている、抗4-1BB抗体の重鎖可変領域CDR2を含む。
【0095】
さらに、当分野で周知されているように、CDR3ドメインは、CDR1および/またはCDR2ドメインとは独立して単独で、同族抗原に対する抗体の結合特異性を決定でき、共通のCDR3配列に基づく同じ結合特異性を有する複数の抗体が予測可能に生成される。例えば、Klimka et al.,British J.of Cancer 83(2):252-260(2000);Beiboer et al.,J.Mol.Biol.296:833-849(2000);Rader et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95:8910-8915(1998);Barbas et al.,J.Am.Chem.Soc.116:2161-2162(1994);Barbas et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92:2529-2533 (1995);Ditzel et al.,J.Immunol.157:739-749(1996);Berezov et al.,BIAjournal 8:Scientific Review 8(2001);Igarashi et al.,J.Biochem(Tokyo)117:452-7(1995);Bourgeois et al.,J.Virol 72:807-10(1998);Levi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:4374-8(1993);Polymenis and Stoller,J.Immunol.152:5218-5329(1994)and Xu and Davis,Immunity 13:37-45(2000)を参照されたい。また、米国特許第6,951,646;6,914,128号;第6,090,382号;第6,818,216号;第6,156,313号;第6,827,925号;第5,833,943号;第5,762,905号および第5,760,185号も参照されたい。これらの参考文献のそれぞれは、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0096】
したがって、別の実施形態において、本開示の抗体は、抗4-1BB抗体の重鎖可変領域のCDR2、ならびに、抗4-1BB抗体の重鎖および/もしくは軽鎖可変領域の少なくともCDR3、またはヒト4-1BBに特異的に結合し得る別の抗4-1BB抗体の重鎖および/もしくは軽鎖可変領域のCDR3を含む。これらの抗体は、好ましくは、本発明の抗4-1BB抗体と(a)4-1BBとの結合について競合する、(b)機能的特性を保持している、(c)同一のエピトープに結合する、および/または(d)類似の結合親和性を有する。さらに別の実施形態において、抗体はさらに、抗4-1BB抗体の軽鎖可変領域のCDR2、またはヒト4-1BBに特異的に結合し得る別の抗4-1BB抗体の軽鎖可変領域のCDR2を含み得る。別の実施形態において、本発明の抗体は、抗4-1BB抗体の重鎖および/もしくは軽鎖可変領域のCDR1、またはヒト4-1BBに特異的に結合し得る別の抗4-1BB抗体の重鎖および/もしくは軽鎖可変領域のCDR1を含み得る。
【0097】
本開示の好ましい抗体は二重特異性抗体である。
【0098】
二重特異性分子
【0099】
他の態様において、本開示は、少なくとも1つの他の機能分子に連結された本開示の1つ以上の抗体または抗体結合断片を含む二重特異性分子を特徴とする。前記他の機能分子は、例えば、少なくとも2つの異なる結合部位または標的分子に結合する二重特異性分子を産生する他のペプチドまたはタンパク質(例えば、受容体のための別の抗体およびリガンド)である。したがって、本明細書で使用される「二重特異性分子」には、3つ以上の特異性を有する分子が含まれる。
【0100】
一実施形態において、二重特異性分子は、抗4-1BB結合特異性に加えて、第2の特異性を有する。第2の特異性は、PD-1、PD-L1またはCTLA-4に対するものであり得る。
【0101】
一実施形態において、二重特異性分子は、抗4-1BB結合特異性および抗PD-L1結合特異性に加えて、第3の特異性を有する。第3の特異性は、癌治療のためのPD-1またはCTLA-4に対するものであり得る。
【0102】
二重特異性分子は、多くの異なる形式およびサイズを有する。サイズスペクトルにおいて、二重特異性分子は、同一の特異性を持つ2つの結合アームを有する代わりに、それぞれ異なる特異性を持つ2つの結合アームを有する以外、従来の抗体形式を保持する。もう1つの極端な例では、二重特異性分子は、ペプチド鎖、いわゆるBs(scFv)2構築物によって連結された2つの一本鎖抗体断片(scFv’s)からなる。中間サイズの二重特異性分子には、ペプチジルリンカーによって連結された2つの異なるF(ab)断片が含まれる。これらおよび他の形式の二重特異性分子は、遺伝子工学、体細胞交雑、および化学的方法によって調製することができる。例えば、Kufer et al,cited supra,Cao and Suresh,Bioconjugate Chemistry,9(6),635-644(1998),and van Spriel et al.,Immunology Today,21(8),391-397(2000)を参照されたい。これらの参考文献は本明細書に組み込まれる。
【0103】
一実施形態において、本発明の二重特異性分子は、4-1BBに特異的に結合する第1の結合領域、および、癌、感染症または自己免疫疾患に関連する第2の抗原に特異的に結合する第2の結合領域を含む二重特異性抗体である。二重特異性抗体は、いくつかの構造形式を有することができる(c.f.,Aran F.Labrijn et al.,Bispecific antibodies:a mechanistic review of the pipeline,Nature Reviews Drug Discovery,volume 18,pages 585-608(2019))。例えば、二重特異性抗体は、IgG様の抗体、すなわち全長の二重特異性抗体である場合もあれば、全長の抗体構築物ではない非IgG様の二重特異性抗体である場合もある。
【0104】
特に、第2の抗原は、PD-1、PD-L1またはCTLA-4、例えば、ヒトPD-1、PD-L1またはCTLA-4から選択される。より好ましくは、第2の抗原は、PD-L1、例えば、ヒトPD-L1である。一実施形態において、ヒトPD-L1は、配列番号61で示されるアミノ酸配列、または、配列番号61に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、ヒトPD-L1は、配列番号62で示される核酸配列、または、配列番号62に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する核酸配列を含む核酸分子によってコードされる。
【0105】
一実施形態において、第1の結合領域は、上記の抗4-1BB抗体または抗体結合断片について開示されたVHおよび/またはVLを含む。別の実施形態において、第1の結合領域は、重鎖可変領域CDR1、CDR2および/またはCDR3、および/または軽鎖可変領域CDR1、CDR2および/またはCDR3を含み、これらは、上記のような抗4-1BB抗体または抗体結合断片について開示される。さらなる実施形態において、第1の結合領域は、定常領域、例えば、重鎖定常領域または軽鎖定常領域をさらに含み、これらは、上記のような抗4-1BB抗体または抗体結合断片について開示される。一実施形態において、第1の結合領域は、本明細書で上記に開示される抗4-1BB抗体のscFvを含む。
【0106】
別の実施形態において、第2の結合領域は、当技術分野における抗PD-L1、または抗PD-1または抗CTLA-4抗体または抗体結合断片について開示されたVHおよび/またはVLを含む。別の実施形態において、第2の結合領域は、重鎖可変領域CDR1、CDR2および/またはCDR3、および/または軽鎖可変領域CDR1、CDR2および/またはCDR3を含み、これらは、当技術分野における抗PD-L1、または抗PD1または抗CTLA-4抗体または抗体結合断片について開示されている。一実施形態において、第2の結合領域は、定常領域、例えば、重鎖定常領域および/または軽鎖定常領域、例えば、本開示に開示されるこれらをさらに含む。
【0107】
特定の実施形態において、第2の結合領域は、ヒトPD-L1に結合することができ、当技術分野における抗PD-L1抗体または抗体結合断片について開示されたVHおよび/またはVLを含む。別の実施形態において、第2の結合領域は、重鎖可変領域CDR1、CDR2および/またはCDR3、および/または軽鎖可変領域CDR1、CDR2および/またはCDR3を含み、これらは、当技術分野における抗PD-L1抗体または抗体結合断片について開示されている。一実施形態において、第2の結合領域は、定常領域、例えば、重鎖定常領域および/または軽鎖定常領域をさらに含む。
【0108】
二重特異性抗体の構築のために、二重特異性抗体のVHおよび/またはVLは、それらが由来するモノクローナル抗体のVHおよび/またはVLと1もしくは数個のアミノ酸が異なる可能性があることが知られている。例えば、由来したVHおよびVLは、scFvをより安定させるために1つ以上の変異を有することができる。一実施形態において、VHおよび/またはVLは、抗体またはその抗原結合部分をより安定にするために、互いにジスルフィド結合を形成するための変異を有することができる。例えば、VHはG44C(EUナンバリング)を有し、VLはT104C(EUナンバリング)を有することができる。
【0109】
特定の実施形態において、二重特異性抗体は、以下の鎖を含む:
(1)鎖1:リンカーを介してまたはリンカーを介さずに、N末端またはC末端で本開示の抗4-1BB抗体のscFv断片に連結された第2の抗原に対する抗体の重鎖:および
(2)鎖2:第2の抗原に対する抗体の軽鎖。
特定の実施形態において、二重特異性抗体は、ジスルフィド結合によって連結された2本鎖1および2本鎖2を含む。さらに特定の実施形態において、二重特異性抗体の構造が
図5Aまたは
図5Bに示される。
特に、第2の抗原に対する抗体の重鎖は、当技術分野における抗PD-L1、または抗PD-1または抗CTLA-4抗体または抗体結合断片について開示されたV
Hを含む。別の実施形態において、第2の抗原に対する抗体の重鎖は、重鎖可変領域CDR1、CDR2および/またはCDR3を含み、これらは、当技術分野における抗PD-L1、または抗PD-1または抗CTLA-4について開示されている。特に、第2の抗原に対する抗体の軽鎖は、当技術分野における抗PD-L1、または抗PD-1または抗CTLA-4抗体または抗体結合断片について開示されたV
Lを含む。別の実施形態において、第2の抗原に対する抗体の軽鎖は、軽鎖可変領域CDR1、CDR2および/またはCDR3を含み、これらは、当技術分野における抗PD-L1、または抗PD-1または抗CTLA-4について開示されている。
一実施形態において、第2の抗原はPD-L1であり、第2の抗原に対する抗体は抗PD-L1抗体である。
特定の実施形態において、抗PD-L1抗体の重鎖は、抗PD-L1抗体について開示された重鎖可変領域V
Hを含む。特定の実施形態において、V
Hは、抗PD-L1抗体について開示された重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を含む。特定の実施形態において、重鎖は、抗PD-L1抗体について開示された重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を含む。特に、重鎖は定常領域をさらに含む。
特定の実施形態において、抗PD-L1抗体の軽鎖は、抗PD-L1抗体について開示された軽鎖可変領域V
Lを含む。特定の実施形態において、V
Lは、抗PD-L1抗体について開示された軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を含む。特定の実施形態において、軽鎖は、抗PD-L1抗体について開示された軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を含む。特に、重鎖は定常領域をさらに含む。
【0110】
特定の実施形態において、本開示の抗4-1BB抗体のscFv断片は、本明細書の上記の抗4-1BB抗体または抗体結合断片について開示されたVHおよび/またはVLを含む。別の実施形態において、scFvは、重鎖可変領域CDR1、CDR2および/またはCDR3、および/または軽鎖可変領域CDR1、CDR2および/またはCDR3を含み、これらは、本明細書の上記の抗4-1BB抗体または抗体結合断片について開示されている。
特に、抗4-1BB抗体のscFv断片は、配列番号25または77に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる重鎖可変領域と、配列番号26または78に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域とを含む。
特に、抗4-1BB抗体のscFv断片は、配列番号77に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる重鎖可変領域と、配列番号78に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域とを含む。
特に、抗4-1BB抗体のscFv断片は、それぞれ配列番号1、2および3に示される配列からなるVH CDR1、CDR2およびCDR3と、それぞれ配列番号4、5および6に示される配列からなるVL CDR1、CDR2およびCDR3とを含む。
特に、VHとVLとを連結したリンカーは、グリシンおよび/またはセリン残基を単独でまたは組み合わせて有するリンカーなどの柔軟なリンカーである。一実施形態において、リンカーは、アミノ酸配列(Gly4Ser)nまたは(GlySer4)nを含み、ここで、nは1以上の正の整数であり、例えば、nは1~7の正の整数であり、例えば、nは2、3、4、5、6である。一実施形態において、nは1、2、3または4である。特定の実施形態において、リンカーは、配列番号36、配列番号51、配列番号52に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。
【0111】
特定の実施形態において、抗PD-L1抗体について開示された重鎖可変領域VHは、
(i)配列番号46からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるか;または、
(ii)配列番号46からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるか;または
(iii)配列番号46からなる群より選択されるアミノ酸配列と比較して、1つ以上(好ましくは10以下、より好ましくは5以下)のアミノ酸修飾(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的置換)を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなり、好ましくは、前記アミノ酸修飾はCDR領域では起こらず、より好ましくは、前記アミノ酸修飾はFR領域、例えば、FR1、FR2、FR3またはFR4領域で起こる。
特定の実施形態において、抗PD-L1抗体について開示された重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3は、
(i)配列番号46に示される配列を含むかまたはそれらからなる重鎖可変領域に由来するCDR1、CDR2およびCDR3、または
(ii)(i)の3つのCDRと比較して合計で1つ以上5つ以下のアミノ酸修飾(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)をさらに含む、(i)のCDR1、CDR2およびCDR3である。
特定の実施形態において、抗PD-L1抗体について開示されたVH CDR1は、配列番号40からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるか、または、VH CDR1は、配列番号40からなる群より選択されるアミノ酸配列と比較して、1つ、2つまたは3つの修飾(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。
特定の実施形態において、抗PD-L1抗体について開示されたVH CDR2は、配列番号41からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるか、または、VH CDR2は、配列番号41からなる群より選択されるアミノ酸配列と比較して、1つ、2つまたは3つの修飾(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。
特定の実施形態において、抗PD-L1抗体について開示されたVH CDR3は、配列番号42からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるか、または、VH CDR3は、配列番号42からなる群より選択されるアミノ酸配列と比較して、1つ、2つまたは3つの修飾(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。
一実施形態において、抗PD-L1抗体について開示された3つの重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3は、
(i) それぞれ配列番号40、41および42に示される配列からなるCDR1、CDR2およびCDR3、または
(ii) (i)の3つのCDRと比較して合計で1つ以上5つ以下のアミノ酸修飾(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)をさらに含む、(i)のCDR1、CDR2およびCDR3である。
一実施形態において、重鎖定常領域は、ヒトIgG定常領域、例えば、IgG1定常領域、IgG2定常領域、IgG3定常領域またはIgG4定常領域、好ましくはIgG1定常領域、IgG2定常領域またはIgG4定常領域であるかまたはそれに由来する。
別の実施形態において、重鎖定常領域は、
(i)配列番号33、34または75に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるか;または
(ii)配列番号33、34または75に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるか;または
(iii)配列番号33、34または75に示されるアミノ酸配列と比較して、1つ以上(好ましくは10以下、より好ましくは5以下)のアミノ酸修飾(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的置換)を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。
特定の実施形態において、抗PD-L1抗体について開示された軽鎖可変領域VLは、
(i)配列番号47からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるか;または
(ii)配列番号47からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるか;または
(iii)配列番号47からなる群より選択されるアミノ酸配列と比較して、1つ以上(好ましくは10以下、より好ましくは5以下)のアミノ酸修飾(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的置換)を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなり、好ましくは、前記アミノ酸修飾はCDR領域で起こらず、より好ましくは、前記アミノ酸変化はFR領域、例えばFR1領域、FR2領域、FR3領域またはFR4領域で起こる。
特定の実施形態において、抗PD-L1抗体について開示されている3つの重鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3は、
(i)配列番号47に示される配列を含むかまたはそれらからなる軽鎖可変領域に由来するCDR1、CDR2およびCDR3、または
(ii)(i)の3つのCDRと比較して合計で1つ以上5つ以下のアミノ酸修飾(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)をさらに含む、(i)のCDR1、CDR2およびCDR3である。
特定の実施形態において、抗PD-L1抗体について開示されたVL CDR1は、配列番号43からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるか、または、VL CDR1は、配列番号43からなる群より選択されるアミノ酸配列と比較して、1つ、2つまたは3つの修飾(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。
特定の実施形態において、抗PD-L1抗体について開示されたVL CDR2は、配列番号44からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるか、または、VL CDR2は、配列番号44からなる群より選択されるアミノ酸配列と比較して、1つ、2つまたは3つの修飾(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。
特定の実施形態において、抗PD-L1抗体について開示されたVL CDR3は、配列番号45からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるか、または、VL CDR3は、配列番号45からなる群より選択されるアミノ酸配列と比較して、1つ、2つまたは3つの修飾(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。
一実施形態において、抗PD-L1抗体について開示された3つの軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3は、
(i) それぞれ配列番号43、44および45に示される配列からなるCDR1、CDR2およびCDR3、または
(ii) (i)の3つのCDRと比較して合計で1つ以上5つ以下のアミノ酸修飾(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)をさらに含む、(i)のCDR1、CDR2およびCDR3である。
一実施形態において、軽鎖定常領域は、カッパまたはラムダ軽鎖定常領域、例えば、ヒトカッパまたはラムダ軽鎖定常領域、好ましくは、ヒトカッパ軽鎖定常領域であるかまたはそれに由来する。
別の実施形態において、軽鎖定常領域は、
(i)配列番号35または63に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるか;または
(ii)配列番号35または63に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるか;または
(iii)配列番号35または63に示されるアミノ酸配列と比較して、1つ以上(好ましくは10以下、より好ましくは5以下)のアミノ酸修飾(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的置換)を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。
特定の実施形態において、抗PD-L1抗体は、CN109021107Aに開示されている抗体である。
【0112】
一実施形態において、本発明の二重特異性抗体におけるリンカーは、グリシンおよび/またはセリン残基を単独でまたは組み合わせて有するリンカーなどの柔軟なリンカーである。一実施形態において、リンカーは、アミノ酸配列(Gly4Ser)nまたは(GlySer4)nを含み、ここで、nは、1以上の正の整数であり、例えば、nは、1から7までの正の整数であり、 nは2、3、4、5、6である。一実施形態において、nは1、2、3、または4、好ましくは1または3である。一実施形態において、nは1、2、3、または4、好ましくは1または3である。特定の実施形態において、二重特異性抗体のリンカーは、配列番号36、51または52に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。好ましい実施形態において、二重特異性抗体のリンカーは、配列番号52に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなり、ここで、n=1または3である。
【0113】
一実施形態において、二重特異性抗体の鎖1は、
(i)少なくとも85%、86%、87%、88%、89%90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる配列番号48または50に示されるアミノ酸配列との%、98%または99%の同一性;または
(ii)配列番号48または50に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるか;または
(iii)配列番号48または50に示されるアミノ酸配列と比較して、1つ以上(好ましくは20以下、より好ましくは10または5以下)のアミノ酸修飾(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的置換)を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。
【0114】
一実施形態において、二重特異性抗体の鎖2は、
(i)配列番号49に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるか;または
(ii)配列番号49に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなるか;または
(iii)配列番号49に示されるアミノ酸配列と比較して、1つ以上(好ましくは20以下、より好ましくは10以下または5以下)のアミノ酸修飾(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくは保存的置換)を有するアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。
【0115】
<保存的修飾>
【0116】
別の実施形態において、本開示の抗体は、1つ以上の保存的修飾によって本開示の抗4-1BB抗体のものとは異なる、CDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列の重鎖および/または軽鎖可変領域配列を含む。当分野で理解されているように、抗原結合機能が維持されたままで特定の保存的配列修飾を行うことができる。例えば、Brummell et al.(1993)Biochem 32:1180-8、de Wildt et al.(1997)Prot.Eng.10:835-41、Komissarov et al.(1997)J.Biol.Chem.272:26864-26870、Hall et al.(1992)J.Immunol.149:1605-12、Kelley and O’Connell(1993)Biochem.32:6862-35、Adib-Conquy et al.(1998)Int.Immunol.10:341-6及びBeers et al.(2000)Clin.Can.Res.6:2835-43を参照されたい。
【0117】
したがって、一実施形態において、抗体は、CDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む重鎖可変領域、および/またはCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含み、ここで
(a)重鎖可変領域のCDR1配列は、上記の表1に列挙される配列、および/またはその保存的修飾を含み;および/または
(b)重鎖可変領域のCDR2配列は、上記の表1に列挙される配列、および/またはその保存的修飾を含み;および/または
(c)重鎖可変領域のCDR3配列は、上記の表1に列挙される配列、およびその保存的修飾を含み;および/または
(d)軽鎖可変領域のCDR1配列および/またはCDR2配列および/またはCDR3配列は、上記の表1に列挙される配列;および/またはその保存的修飾を含み;および
(e)抗体は、ヒト4-1BBに特異的に結合する。
【0118】
別の実施形態において、本開示の抗体は、1つ以上の保存的修飾によって本開示の抗4-1BB抗体のものとは異なる、重鎖および/または軽鎖可変領域配列を含み、好ましくは、修飾はCDRで起こらず、好ましくは、修飾はFRで起こる。
【0119】
別の実施形態において、本開示の抗体は、1つ以上の保存的修飾によって本開示の抗4-1BB抗体のものとは異なる、重鎖および/または軽鎖配列を含み、好ましくは、修飾はCDRで起こらず、好ましくは、修飾はFRで起こるかまたは定常領域で起こる。
【0120】
幾つかの実施形態において、修飾は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体の構築のために、重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域のFRに組み込まれる。例えば、修飾を、重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域に組み込んで、互いにジスルフィド結合を形成し、二重特異性抗体に構築可能なscFvの安定性を向上させることができる。
【0121】
幾つかの実施形態において、修飾は、置換、付加および/または欠失である。
【0122】
幾つかの実施形態において、置換は保存的置換である。保存的置換とは、アミノ酸の同類の他のアミノ酸への置換、例えば、酸性アミノ酸の他の酸性アミノ酸への置換、塩基性アミノ酸の他の塩基性アミノ酸への置換、または中性アミノ酸の他の中性アミノ酸への置換を指す。次の表に、置換の例を示す:
【化1】
【0123】
本開示の抗体は、ヒト4-1BBに特異的に結合するなど、上述した以下の機能的特性のうちの1つ以上を有する。
【0124】
様々な実施形態において、抗体は、例えば、マウス、ヒト、ヒト化またはキメラ抗体であり得る。
【0125】
本明細書において、用語「保存的配列修飾」は、アミノ酸配列を含む抗体の結合特性を顕著に影響及び変化を与えないアミノ酸修飾を指すことを意図している。このような保存的修飾は、アミノ酸の置換、挿入、欠失を含む。修飾は、部位特異的変異導入及びPCR媒介変異導入などの当分野で知られている標準的な技術により本発明の抗体に導入することができる。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。このようにして、本発明の抗体のCDR領域における1つ以上のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基で置換することができ、変更された抗体は、本明細書に記載の機能的アッセイを使用して、保持機能(即ち、上記の機能)について試験することができる。
【0126】
<改造抗体及び修飾体>
【0127】
本開示の抗体は、本開示の抗4-1BB抗体のVH/VL配列の1つ以上を有する抗体を、修飾抗体を改造するための出発材料として用いて、調製することができる。抗体は、一方及び両方の可変領域(即ち、VH及び/又はVL)、例えば、1つ以上のCDR領域及び/又は1つ以上のフレームワーク領域内の1つ以上の残基を修飾することにより改造され得る。追加及び代替として、抗体は、例えば、抗体のエフェクター機能を変更するために、定常領域内の残基を修飾することにより改造され得る。
【0128】
特定の実施形態において、CDR移植を採用して抗体の可変領域を改造することができる。抗体は、主に6つの重鎖及び軽鎖の相補性決定領域(CDR)にあるアミノ酸残基を介して標的抗原と相互作用する。このため、CDR内のアミノ酸配列は、CDR外の配列よりも個々の抗体間で多様である。CDR配列はほとんどの抗体-抗原相互作用の原因であるため、異なる特性を有する異なる抗体に由来のフレームワーク配列上に移植された特定の天然型抗体に由来のCDR配列を含む発現ベクターを構築することにより、特定の天然型抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることが可能である(例えば、Riechmann et al.(1998)Nature 332:323-327、Jones et al.(1986)Nature 321:522-525、Queen et al.(1989)Proc.Natl.Acad.U.S.A.86:10029-10033、米国特許第5,225,539、5,530,101、5,585,089、5,693,762及び6,180,370)。
【0129】
したがって、本開示の別の実施形態は、上記のような本発明の配列を含むCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む重鎖可変領域、および/または上記のような本発明の配列を含むCDR1配列、CDR2配列およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含む、分離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分に関する。これらの抗体は本開示のモノクローナル抗体のVH CDR配列およびVL CDR配列を含むが、これらの抗体は、異なるフレームワーク配列を含んでいてもよい。
【0130】
このようなフレームワーク配列は、公共DNAデータベース又は生殖細胞系列抗体遺伝子配列を含む公開された参考文献から得られる。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子のための生殖細胞系列DNA配列は、「VBase」ヒト生殖細胞系列配列データベース(インターネット上で利用可能:www.mrc-cpe.cam.ac.uk/vbase)、及びKabat et al.(1991),cited supra、Tomlinson et al.(1992) J.Mol.Biol.227:776-798、Cox et al.(1994) Eur.J.Immunol.24:827-836から見出される。それぞれの内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。他の例として、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子のための生殖細胞系列DNA配列は、Genbankデータベースから見出される。例えば、以下のHCo7 HuMAbマウスで見出される重鎖生殖細胞系列配列は、付随のGenbankアクセッション番号1-69(NG-0010109、NT--024637&BC070333)、3-33(NG--0010109&NT--024637)及び3-7(NG--0010109&NT--024637)で入手可能である。他の例として、以下のHCo12 HuMAbマウスで見出される重鎖生殖細胞系列配列は、付随のGenbankアクセッション番号1-69(NG-0010109、NT--024637&BC070333)、5-51(NG--0010109&NT--024637)、4-34(NG--0010109&NT--024637)、3-30.3(CAJ556644)&3-23(AJ406678)で入手可能である。
【0131】
抗体タンパク質配列は、当業者に周知であるGapped BLASTと呼ばれる配列類似性検索方法の1つを使用して、コンパイルされたタンパク質配列データベースと比較される(Altschul et al.(1997),supra)。
【0132】
本発明の抗体で使用するための好ましいフレームワーク配列は、本発明の抗体で使用されるフレームワーク配列と構造的に類似するもの。VHCDR1、CDR2及びCDR3配列は、フレームワーク配列が由来する生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子に見出される配列と同一の配列を有するフレームワーク領域に移植され得る。或いは、CDR配列は、生殖細胞系列配列と比較して1つ以上の変異を含むフレームワーク領域に移植され得る。例えば、特定の例では、フレームワーク領域内の残基を変異させて抗体の抗原結合能力を維持及び強化することが有益であることが発見された(例えば、米国特許第5,530,101、5,585,089、5,693,762及び6,180,370)。
【0133】
他の可変領域修飾のタイプは、内VH及び/又はVLCDR1、CDR2及び/又はCDR3領域のアミノ酸残基を変異させることで目的抗体の1つ以上の結合特性(例えば、親和性)を向上させることである。部位特異的変異導入又はPCR媒介変異導入を実施して変異を導入することができ、抗体結合又は他の目的機能特性に対する影響は、本明細書に記載され、実施例に提供されているインビトロ又はインビボアッセイで評価することができる。好ましくは、保存的修飾(当分野で知られている)が導入されるのが好ましい。変異は、アミノ酸の置換、挿入又は欠失であり得るが、好ましくは置換である。さらに、典型的には、CDR領域内の1つ、2つ、3つ、4つ及び5つ以下の残基が変更される。
【0134】
したがって、別の実施形態において、本開示は、(a)本開示の配列、または、1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む、VH CDR1領域、(b)本開示の配列、または、1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む、VH CDR2領域、(c)本開示の配列、または、1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む、VH CDR3領域、(d)本開示の配列、または、1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む、VL CDR1領域、(e)本開示の配列、または、1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む、VL CDR2領域、および(f)本開示の配列、または、1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つのアミノ酸の置換、欠失もしくは付加を有するアミノ酸配列を含む、VL CDR3領域を含む、重鎖可変領域を含む、分離された抗4-1BBモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供する。
【0135】
本発明の改造抗体は、例えば、抗体の特性を改善するためのVH及び/又はVLにおけるフレームワーク残基に対する修飾を含む。典型的には、このようなフレームワーク修飾は、抗体の免疫原性を低下させるために行われる。例えば、1つのアプローチは、1つ以上のフレームワーク残基を対応する生殖細胞系列配列に「逆変異」させることである。より具体的には、体細胞変異を受けた抗体は、抗体が由来する生殖細胞系列配列と異なるフレームワーク残基を含み得る.このような残基は、前記抗体フレームワーク配列を前記抗体が由来する生殖細胞系列配列と比較することにより同定することができる。
【0136】
他のフレームワーク修飾のタイプは、フレームワーク領域、又は1つ以上のCDR領域における1つ以上の残基をT細胞エピトープが除去されるように変異させることにより、抗体の潜在的な免疫原性を低下させることを含む。このアプローチは「脱免疫化」とも呼ばれ、米国特許公開第20030153043号に詳しく記載されている。
【0137】
フレームワーク又はCDR領域内になされる修飾に加えて又はその代わりに、本発明の抗体は、本発明の抗体は、典型的には、抗体の1つ以上の機能特性、例えば、血清半減期、補体固定、Fc受容体結合、及び/及び抗原依存性細胞毒性を変えるために、Fc領域内の修飾を含むように改造されてもよい。さらに、本発明の抗体は、化学的に修飾されてもよく(例えば、1つ以上の化学的部分が抗体に取り付けられてもよく)、そのグリコシル化を変更するように修飾されてもよく、又は1つ以上の抗体の機能特性を変更するように修飾されてもよい。
【0138】
一実施形態において、ヒンジ領域におけるシステイン残基の数が変更(例えば、増加又は減少)されるようにCH1のヒンジ領域を修飾する。このアプローチは米国特許第5,677,425号に詳しく記載されている。CH1のヒンジ領域のシステイン残基の数は、例えば、軽鎖及び重鎖のアセンブリを促進するために、及び抗体の安定性を増加若しくは減少させるために変更される。
【0139】
他の実施形態において、抗体のFcヒンジ領域を変異させることにより、生物学的半減期を短縮させる。より具体的には、Fcヒンジ断片のCH2-CH3ドメイン界面領域に1つ以上のアミノ酸変異を導入することにより、抗体は、天然のFcヒンジドメインSpA結合と比較して、ブドウ球菌プロテインA(SpA)結合が低下する。このアプローチは米国特許第6,165,745号に詳しく記載されている。
【0140】
さらに別の実施形態において、抗体のグリコシル化が修飾される。例えば、非グリコシル化抗体が作製される(即ち、抗体はグリコシル化を欠いている)。グリコシル化を変更することにより、例えば、抗原に対する抗体の親和性を高めることができる。このような炭水化物の修飾は、例えば、抗体配列における1つ以上のグリコシル化部位を変更することにより達成され得る。例えば、1つ以上のアミノ酸置換を導入することにより、1つ以上の可変領域フレームワークのグリコシル化部位を除去することで、その部位のグリコシル化を除去することができる。このようなグリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を高めることができる。例えば、米国特許第5,714,350号及び第6,350,861号を参照されたい。
【0141】
追加及び代替として、フコシル残基の量が減少した低フコシル化抗体及び二分GlcNac構造が増加した抗体などのグリコシル化のタイプが変更された抗体を作製することができる。このような変更されたグリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を高めることが実証されている。このような炭水化物の修飾は、例えば、抗体をグリコシル化機構が変更された宿主細胞で発現させることにより達成され得る。グリコシル化機構が変更された細胞は、当分野で記載されており、本発明の組換え抗体を発現することによりグリコシル化が変更された抗体を産生する宿主細胞として使用することができる。例えば、細胞株Ms704、Ms705及びMs709は、フコシルトランスフェラーゼ遺伝子FUT8(α(1,6)-フコシルトランスフェラーゼ)を欠いているため、Ms704、Ms705及びMs709細胞株で発現する抗体の炭水化物がフコースを欠いている。Ms704、Ms705及びMs709 FUT8-/-細胞株は、2つの置換ベクターを使用して、CHO/DG44細胞におけるFUT8遺伝子の標的破壊によって作製された(米国特許公開第20040110704及びYamane-Ohnuki et al.(2004)Biotechnol Bioeng 87:614-22を参照)。他の例として、EP1,176,195には、機能的に破壊されたFUT8遺伝子(フコシルトランスフェラーゼをコードする)を持つ細胞株が記載されている。このような細胞株で発現される抗体は、α-1,6結合関連酵素を減少及び除去することにより低フコシル化を示す。EP1,176,195には、抗体のFc領域に結合するか又は酵素活性を持たないN-アセチルグルコサミンにフコースを加える酵素活性が低い細胞株、例えば、ラット骨髄腫細胞株YB2/0(ATCC CRL 1662)がさらに記載されている。PCT公開WO03/035835には、フコースをAsn(297)結合炭水化物に結合する能力が低下し、その宿主細胞で発現される抗体の低フコシル化ももたらすバリアントCHO細胞株であるLec13細胞が記載されている(Shields et al.(2002)J.Biol.Chem.277:26733-26740を参照)。PCT公開WO 06/089231に記載されているように、修飾されたグリコシル化プロファイルを有する抗体は鶏の卵でも産生され得る。或いは、修飾されたグリコシル化プロファイルを有する抗体は、レムナなどの植物細胞で産生され得る。植物系で抗体を産生する方法は、2006年8月11日に出願されたAlston&Bird LLP代理人整理番号040989/314911に対応する米国特許出願に開示されています。PCT公開WO99/54342には、糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、β(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するように改造された細胞株が記載されている。この改造された細胞株で発現された抗体は、増加した二分GlcNac構造を示し、これにより、抗体のADCC活性が増加する(Umana et al.(1999)Nat.Biotech.17:176-180を参照)。或いは、フコシダーゼ酵素により抗体のフコース残基を切り離すことができる。例えば、α-L-フコシダーゼは、抗体からフコシル残基を除去する(Tarentino et al.(1975)Biochem.14:5516-23)。
【0142】
本発明の抗体の他の修飾はペグ化である。抗体をペグ化することにより、例えば抗体の生物学的(例えば血清)半減期を延長することができる。抗体をペグ化するために、1つ以上のPEG基が抗体及び抗体断片に結合する条件下で、抗体及びその断片を、典型的に、PEGの反応性エステル及びアルデヒド誘導体などのポリエチレングリコール(PEG)と反応させる。好ましくは、ペグ化は、反応性PEG分子(及び類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応及びアルキル化反応を介して行われる。本明細書で使用される「ポリエチレングリコール」という用語は、モノ(C1-C10)アルコキシ-若しくはアリールオキシ-ポリエチレングリコール及びポリエチレングリコール-マレイミドなど、他のタンパク質を誘導体化するために使用されるPEGの任意の形態を包含することを意図している。特定の実施形態において、ペグ化される抗体は非グリコシル化抗体である。タンパク質のペグ化方法は当分野で知られており、本発明の抗体に適用することができる。例えば、EPO154316及びEP0401384を参照されたい。
【0143】
<抗体の物理的性質>
【0144】
本発明の抗体は、それらの異なるクラスを検出及び/及び区別するために、それらの様々な物理的特性によって特徴付けられ得る。
【0145】
例えば、抗体は、軽鎖又は重鎖可変領域のいずれかに1つ以上のグリコシル化部位を含み得る。このようなグリコシル化部位は、抗原結合の変化により、抗体の免疫原性の増加、及び抗体のpKの変化をもたらす可能性がある(Marshall et al(1972)Annu Rev Biochem 41:673-702、Gala and Morrison(2004)J Immunol 172:5489-94、Wallick et al(1988)J Exp Med 168:1099-109、Spiro(2002)Glycobiology 12:43R-56R、Parekh et al(1985)Nature 316:452-7、Mimura et al.(2000)Mol Immunol 37:697-706)。グリコシル化は、N-X-S/T配列を含むモチーフで起こることが知られている。いくつかの例では、可変領域グリコシル化を含まない抗PD-1抗体を有することが好ましい。これは、可変領域にグリコシル化モチーフを含まない抗体を選択するか、又はグリコシル化領域内の残基を変異させることにより達成できる。
【0146】
好ましい実施形態において、抗体にはアスパラギン異性部位が含まれない。アスパラギンの脱アミド化はN-G及びD-G配列で起こり、ポリペプチド鎖にキンクを導入し、その安定性を低下させるイソアスパラギン酸残基の生成をもたらす可能性がある(イソアスパラギン酸効果)。
【0147】
各抗体には固有の等電点(pI)があり、一般的に6~9.5のpH範囲にある。IgG1抗体のpIは典型的には7~9.5のpH範囲内にあり、IgG4抗体のpIは典型的には6~8のpH範囲内にある。正常範囲外のpIを持つ抗体は、インビボ条件下でいくらかの展開及び不安定性を有する可能性があると推測されている。したがって、正常範囲にあるpI値を含む抗4-1BB抗体を有することが好ましい。これは、pIが正常範囲の抗体を選択するか、又は帯電した表面残基を変異させることにより達成できる。
【0148】
<本発明の抗体をコードする核酸分子>
【0149】
他の態様において、本発明は、本発明の抗体の重鎖及び/又は軽鎖可変領域又はCDRをコードする核酸分子を提供する。核酸は、細胞全体、細胞溶解物に存在し、又は部分的に精製された形若しくは実質的に純粋な形で存在し得る。核酸は、標準技術により他の細胞成分及び他の汚染物質、例えば他の細胞核酸及びタンパク質から精製されると、「分離」されるか、又は「実質的に純粋に」なる。本発明の核酸は、例えばDNA及びRNAであり得、イントロン配列を含んでも含まなくてもよい。好ましい実施形態において、核酸はcDNA分子である。
【0150】
本発明の核酸は、標準的な分子生物学技術を使用して得ることができる。ハイブリドーマ(例えば、以下にさらに説明するように、ヒト免疫グロブリン遺伝子を保有するトランスジェニックマウスから調製されたハイブリドーマ)によって発現される抗体の場合、ハイブリドーマによって作られた抗体の軽鎖及び重鎖をコードするcDNAは、標準的なPCR増幅及びcDNAクローニング技術によって得られる。免疫グロブリン遺伝子ライブラリーから得られた抗体の場合(例えば、ファージディスプレイ技術を使用する)、このような抗体をコードする核酸は、遺伝子ライブラリーから回収することができる。
【0151】
本発明の好ましい核酸分子は、4-1BBモノクローナル抗体のVH配列およびVL配列またはCDRをコードする核酸分子を含む。本発明の好ましい核酸分子は、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)のVH配列およびVL配列またはその各鎖をコードする核酸分子をさらに含む。VHおよびVLセグメントをコードするDNA断片が得られると、これらのDNA断片は、標準的な組換えDNA技術によってさらに操作することにより、例えば、可変領域遺伝子を全長抗体鎖遺伝子、Fab断片遺伝子またはscFv遺伝子、または多重特異性(二重特異性)抗体鎖遺伝子に変換することができる。これらの操作では、VLまたはVHをコードするDNA断片は、抗体定常領域や柔軟なリンカーなどの、別のタンパク質をコードする別のDNA断片に機能的に連結される。本明細書で使用される用語「機能的に連結される」は、2つのDNA断片によってコードされるアミノ酸配列がインフレームに保持されるように2つのDNA断片が連結されることを意味する。
【0152】
一実施形態において、本発明の例示的な核酸は、配列番号25~32、48、50、77および78のいずれかより選択されるアミノ酸配列をコードする核酸、または、配列番号25~32、48、50、77および78のいずれかより選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸を含む。
【0153】
別の実施形態において、本発明の核酸は、配列番号65、66、73、74、79または80のいずれかより選択されるヌクレオチド配列、または、配列番号65、66、73、74、79または80のいずれかより選択されるヌクレオチド配列に対して、少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0154】
VH領域をコードする分離されたDNAは、VHをコードするDNAを重鎖定常領域(CH1、CH2およびCH3)をコードする別のDNA分子に機能的に連結することにより、全長重鎖遺伝子に変換され得る。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は、当技術分野で知られており、これらの領域を包含するDNA断片は、標準的なPCR増幅により得られる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgD定常領域であり得るが、最も好ましくは、IgG1、IgG2またはIgG4定常領域、または、変異を有する定常領域、例えば、配列番号33、34または75に示される配列、または、その配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する配列を含むかまたはそれらからなる定常領域であり得る。Fab断片重鎖遺伝子の場合、VHコードDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする他のDNA分子に機能的に連結することができる。
【0155】
VL領域をコードする分離されたDNAは、VLコードDNAを軽鎖定常領域CLをコードする他のDNA分子に機能的に連結することにより、全長軽鎖遺伝子(およびFab軽鎖遺伝子)に変換することができる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は、当技術分野で知られており、これらの領域を包含するDNA断片は、標準的なPCR増幅により得られる。好ましい実施形態において、軽鎖定常領域は、カッパまたはラムダ定常領域、例えば、配列番号35または63に示される配列、または、その配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する配列を含むかまたはそれらからなる軽鎖定常領域であり得る。
【0156】
scFv遺伝子を作製するために、VH及びVLコードDNA断片を柔軟なリンカー、例えば、アミノ酸配列(Gly4-Ser)3をコードする他の断片に機能的に連結することにより、VH及びVL配列は、柔軟なリンカーを介してVL及びVH領域が結合された連続した一本鎖タンパク質として発現され得る(例えば、Bird et al.(1988)Science 242:423-426、Huston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883、McCafferty et al.,(1990)Nature 348:552-554)。
【0157】
本開示の抗体の調製
【0158】
本発明は、本発明の抗体を調製するためのプロセスを提供し、前記プロセスは、抗体の発現を可能にする条件下で本発明の宿主細胞を培養するステップと、培養から得られた抗体構築物を回収するステップとを含む。
【0159】
本発明のモノクローナル抗体(mAb)は、よく知られている体細胞ハイブリダイゼーション技術(Kohler and Milstein(1975)Nature 256:495)を使用して調製することができる。モノクローナル抗体を調製するための他の実施形態には、Bリンパ球のウイルス及び発がん性形質転換及びファージディスプレイ技術が含まれる。キメラ抗体及びヒト化抗体も当分野で周知である。例えば、米国特許第4,816,567、5,225,539、5,530,101、5,585,089、5,693,762及び6,180,370号を参照されたい。それらの内容は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0160】
本開示の二重特異性抗体は、二重特異性抗体のフォーマットに従って、二重特異性抗体のための周知のプラットフォームを用いて構築することができる。二重特異性抗体を生成する、当技術分野において公知のいくつかの方法があり、例えば、米国特許第4,816,567号および米国公開第2013/0078249号に記載されているように、それは参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0161】
<本発明のモノクローナル抗体を産生するトランスフェクトーマの調製>
【0162】
本発明の抗体は、例えば、組換えDNA技術と当分野で周知である遺伝子トランスフェクション方法との組み合わせにより宿主細胞トランスフェクトーマ内で産生することができる(例えば、Morrison,S.(1985)Science 229:1202)。一実施形態において、標準的な分子生物学技術によって得られた部分及び全長軽鎖及び重鎖をコードするDNAは、遺伝子が転写及び翻訳調節配列に機能的に連結されるように1つ以上の発現ベクターに挿入される。本明細書において、用語「機能的に連結される」とは、ベクター内の転写及び翻訳調制御列が抗体遺伝子の転写及び翻訳を調節する意図された機能を果たすように抗体遺伝子がベクターに連結されることを意味する。
【0163】
用語「調節配列」は、プロモーター、エンハンサー及び抗体鎖遺伝子の転写及び翻訳を制御する他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことを意図している。このような調節配列は、例えば、Goeddel(Gene Expression Technology.Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990))に記載されている。哺乳動物宿主細胞発現のための好ましい調節配列には、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を指示するウイルス要素(例えば、サイトメガロウイルス由来のプロモーター及び/及びエンハンサー(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP)及びポリオーマ)が含まれる。或いは、ユビキチンプロモーターやβ-グロビンプロモーターなどの非ウイルス性調節配列を使用してもよい。さらに、調節要素は、異なる由来源からの配列から構成され、例えば、SRαプロモーターシステムは、SV40初期プロモーターとヒトT細胞白血病ウイルス1型の長い末端反復配列に由来する配列を含む(Takebe et al.(1988)Mol.Cell.Biol.8:466-472)。発現ベクター及び発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合するように選択される。
【0164】
抗体軽鎖遺伝子及び抗体重鎖遺伝子は、同じ又は別々の発現ベクターに挿入することができる。好ましい実施形態において、可変領域を使用して、VHセグメントがベクター内のCHセグメントに機能的に連結され、VLセグメントがベクター内のCLセグメントに機能的に連結されるように、可変領域を目的のアイソタイプの重鎖定常領域及び軽鎖定常領域を既にコードしている発現ベクターに挿入することにより、任意の抗体アイソタイプの全長抗体遺伝子を作製する。追加及び代替として、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームで連結されるように、ベクターにクローニングされ得る。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド及び異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質からのシグナルペプチド)であり得る。
【0165】
本発明の組換え発現ベクターは、前記抗体鎖遺伝子及び調節配列に加えて、宿主細胞内のベクターの複製を調節する配列(例えば複製起点)及び選択マーカー遺伝子などの追加の配列を持ってもよい。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を促進する(例えば、米国特許第4,399,216、4,634,665及び5,179,017号)。例えば、典型的には、選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞に、G418、ハイグロマイシン又はメトトレキサートなどの薬剤に対する耐性を付与する。好ましい選択マーカー遺伝子は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅を伴うdhfr宿主細胞で使用)及びNeo遺伝子(G418選択用)を含む。
【0166】
軽鎖及び重鎖の発現のために、標準的な技術により発現ベクターをコードする重鎖及び軽鎖を宿主細胞にトランスフェクトする。用語「トランスフェクション」のさまざまな形態は、外因性DNAを原核生物及び真核生物の宿主細胞に導入するために一般的に使用される多種多様な技術(例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクションなど)を包含することを意図している。原核及び真核宿主細胞のいずれかで本発明の抗体を発現させることは理論的には可能であるが、真核細胞、最も好ましくは哺乳動物宿主細胞での抗体の発現が最も好ましい。これは、このような真核細胞、特に哺乳類細胞は、原核細胞よりも免疫学的活性を有する適切に折りたたまれた抗体を組み立てて分泌する可能性が高いためである。
【0167】
本発明の組換え抗体を発現するための好ましい哺乳動物宿主細胞は、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO細胞)(DHFR選択マーカー(例えば、R.J.Kaufman and P.A.Sharp(1982)J.Mol.Biol.159:601-621)と共に使用されるdhfr-CHO細胞(Urlaub and Chasin,(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216-4220)を含む)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞及びSP2を含む。特に、NSO骨髄腫細胞と共に使用するための別の好ましい発現系は、WO87/04462、WO89/01036及びEP338,841に開示されているGS遺伝子発現系である。組換え発現ベクターをコードする抗体遺伝子が哺乳動物宿主細胞に導入された場合、抗体は、宿主細胞での抗体の発現、又は好ましくは宿主細胞が成長する培地への抗体の分泌を可能にするのに十分な期間、宿主細胞を培養することにより産生される。標準的なタンパク質精製法により培地から抗体を回収することができる。
【0168】
<医薬組成物>
【0169】
別の態様において、本開示は、薬学的に許容される担体と共に製剤化された本開示の1つ以上の抗体(またはその抗原結合部分、または二重特異性分子)を含む医薬組成物を提供する。この抗体(またはその抗原結合部分、または二重特異性分子)は、組成物が複数の抗体(またはその抗原結合部分、または二重特異性分子)を含む場合、個別に投与され得る。この組成物は、抗癌薬、抗菌薬もしくは抗喘息薬、例えば、化学療法剤、細胞毒性剤、ワクチン、その他の抗体(例えば、PD-1などの免疫チェックポイント分子に対する抗体)、抗感染剤、小分子薬剤、または免疫調節剤のような、他の抗体または薬物などの治療薬などの1つ以上の追加の薬学的有効成分を任意に含有してもよい。
【0170】
本明細書に記載の用語「治療薬」は、化学療法剤、細胞毒性剤、ワクチン、その他の抗体(例えば、免疫チェックポイント分子に対する抗体)、抗感染剤、免疫調節剤、または小分子薬剤を含む、腫瘍(癌など)の予防または治療に有効な物質を包含する。
【0171】
医薬組成物は、任意の数の賦形剤を含み得る。使用できる賦形剤には、担体、界面活性剤、増粘剤及び乳化剤、固体バインダー、分散及び懸濁助剤、可溶化剤、着色剤、香味剤、コーティング剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味料、保存料、等張剤、及びそれらの組み合わせが含まれる。適切な賦形剤の選択と使用は、Gennaro,ed.,Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Ed.(Lippincott Williams&Wilkins 2003)に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0172】
好ましくは、前記医薬組成物は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄及び表皮投与(例えば、注射及び注入による)に適している。投与経路に応じて、活性化合物は、酸の作用及びそれを不活性化する可能性のある他の自然条件から保護するために材料でコーティングすることができる。本明細書で使用される「非経口投与」という用語は、通常は注射による、経腸及び局所投与以外の投与様式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、胸骨内注射及び注入を含むがこれらに限定されない。或いは、本発明の抗体は、局所、表皮及び粘膜投与経路などの非腸管外経路を介して、例えば鼻腔内、経口、膣内、直腸内、舌下及び局所的に投与することができる。
【0173】
医薬組成物は、滅菌水溶液及び分散液の形態であり得る。それらはまた、マイクロエマルジョン、リポソーム、及び高薬物濃度に適した他の秩序構造に製剤化することができます。
【0174】
担体材料と組み合わせて単一剤形を生成することができる有効成分の量は、治療される被験体及び特定の投与経路に応じて異なり、一般的に、治療効果を奏する組成物の量である。一般的には、有効成分と薬学的に許容される担体の合計100%に対して、有効成分の量は、約0.01%から約99%、好ましくは約0.1%から約70%、最も好ましくは約1%から約30%である。
【0175】
投与計画は、最適な望ましい反応(例えば、治療反応)を提供するために調整される。例えば、単回ボーラスで投与してもよく、治療状況の緊急性によって経時的に分割された用量で投与してもよいか、又は用量を比例的に減少及び増加させてもよい。投与の容易さ及び投与量の均一性の観点から、投与単位形態で非経口組成物を製剤化することが特に有利である。本明細書で使用される用量単位形態は、治療される被験体の単位用量として適した物理的に別個の単位を指す。各単位は、必要な医薬品担体に関連して所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性化合物を含む。あるいは、抗体を徐放性製剤として投与してもよく、この場合、投与頻度を減少させる必要がある。
【0176】
抗体の投与については、投与量は宿主体重の約0.0001-100mg/kg、より一般的には0.01-5mg/kgの範囲である。例えば、投与量は、0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重、10mg/kg体重又は1-10mg/kgであり得る。例示的な治療計画は、週に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1か月に1回、3か月に1回及び3~6か月に1回の投与を伴う。本発明の抗4-1BB抗体の好ましい投与計画には、1mg/kg体重及び3mg/kg体重での静脈内投与が含まれ、各薬剤は、投薬計画(i)4週間に1回で6回後、3か月に1回、(ii)3週間に1回及び(iii)3mg/kg体重で1回後、1mg/kg体重で3週間に1回のうちの1種により同時に与えられる。いくつの方法では、投与量は、血漿抗体濃度が約1~1000μg/ml、いくつの方法では約25~300μg/mlとなるように調整される。
【0177】
本発明の抗4-1BB抗体の「治療有効用量」は、好ましくは、疾患症状の重症度の低下、疾患の症状のない期間の頻度と時間の増加、又は疾患の苦痛による障害若しくは障害の予防をもたらす。例えば、腫瘍を有する被験体の治療のために、「治療有効用量」は、治療されていない被験体と比較して腫瘍の成長を、好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも60%、よりさらに好ましくは少なくとも約80%阻害する。治療的化合物の治療的有効量は、被験体の腫瘍サイズを減少させるか、又は症状を改善することができる。被験体は、典型的にはヒト、他の哺乳動物であり得る。
【0178】
医薬組成物は、インプラント、経皮パッチ、及びマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤であり得る。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、colLAGen、ポリオルトエステル、ポリ乳酸などの生分解性の生体適合性ポリマーを使用できる。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照されたい。
【0179】
治療用組成物は、(1)無針皮下注射装置(例えば、米国特許第5,399,163、5,383,851、5,312,335、5,064,413、4,941,880、4,790,824及び4,596,556号)、(2)微量注入ポンプ(米国特許第4,487,603号)、(3)経皮デバイス(米国特許第4,486,194号)、(4)点滴装置(米国特許第4,447,233及び4,447,224号)、及び(5)浸透デバイス(米国特許第4,439,196及び4,475,196号)などの医療機器により投与することができる。これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0180】
特定の実施形態において、本発明のヒトモノクローナル抗体は、生体内での適切な分布が確保されるように製剤化することができる。例えば、本発明の治療用抗体が血液脳関門を通過することを確保するために、リポソームに製剤化することができ、特定の細胞及び器官への選択的輸送を促進する標的化部分をさらに含んでもよい。例えば、米国特許第4,522,811、5,374,548、5,416,016及び5,399,331号、V.V.Ranade(1989)J.Clin.Pharmacol.29:685、Umezawa et al.,(1988)Biochem.Biophys.Res.Commun.153:1038、Bloeman et al.(1995)FEBS Lett.357:140、M.Owais et al.(1995)Antimicrob.Agents Chemother.39:180、Briscoe et al.(1995)Am.J.Physiol.1233:134、Schreier et al.(1994)J.Biol.Chem.269:9090、Keinanen and Laukkanen(1994)FEBS Lett.346:123、並びにKillion and Fidler(1994)Immunomethods 4:273を参照されたい。
【0181】
組み合わせ品(コンビネーション製品)
【0182】
別の態様において、本開示は、本開示の1つ以上の抗体(またはその抗原結合部分、または二重特異性分子)と、抗癌薬、抗菌薬もしくは抗喘息薬、例えば、化学療法剤、細胞毒性剤、ワクチン、その他の抗体(例えばPD-1などの免疫チェックポイント分子に対する抗体)、抗感染剤、小分子薬剤、または免疫調節剤のような、他の抗体または薬物などの1つ以上の追加の治療薬と、を含む組み合わせ品を提供する。
【0183】
「組み合わせ品」とは、2つ以上の治療薬を同時に単独で投与したり、時間間隔内で別々に投与したりできる、組み合わせて投与するための、投与単位形態の固定もしくは非固定の組み合わせ、またはパーツキットであり、特にこれらの時間間隔内で組み合わせパートナーがコラボレーション、例えば相乗効果を発揮できる場合に使用される。用語「固定組み合わせ」とは、本発明の抗体および組み合わせパートナー(例えば、免疫抑制剤または抗炎症剤のような免疫調節剤などの他の治療薬)が、単一の実体または用量の形で同時に患者に投与されることを意味する。用語「非固定組み合わせ」とは、本発明の抗体および組み合わせパートナー(例えば、免疫抑制剤または抗炎症剤のような免疫調節剤などの他の治療薬)が、同時に、一緒に、または別個の実体として連続的に患者に投与されることを意味し、そして、そのような投与が患者に対して治療的に有効なレベルの2つの化合物を提供する場合には、特定の時間制限はない。後者は、3つ以上の治療薬の投与などのカクテル療法にも適用される。好ましい実施形態において、薬物の組み合わせは非固定組み合わせである。
【0184】
用途および方法
【0185】
本発明の抗体またはその抗原結合部分、または二重特異性分子を含む組成物は、例えば、癌、感染症、および自己免疫疾患の治療を含む、インビトロおよびインビボでの多くの有用性を有する。抗体は、これらの疾患を軽減するために、例えばインビボでヒト被験者に投与することができる。
【0186】
一態様において、本発明は、被験体における免疫応答を調節する方法を提供する。
別の態様において、本発明は、T細胞を活性化するか、またはT細胞媒介性の抗腫瘍活性を誘導する方法を提供する。一実施形態において、T細胞はCD8+T細胞である。別の態様において、本発明は、Treg細胞、例えば、CD4+T細胞を減少させる方法を提供する。
一実施形態において、T細胞の活性化は、T細胞のサイトカイン分泌、例えば、T細胞のIL-12分泌を刺激することを含む。
一実施形態において、本発明は、4-1BBシグナル伝達経路を活性化する方法を提供する。
【0187】
幾つかの実施形態において、上記の方法は、本発明の抗体または抗原結合断片、医薬組成物または製剤、組み合わせ品または核酸を投与することを含む。
【0188】
一態様において、本発明の抗体は、上記のように、4-1BBおよびPD-L1に結合する二重特異性抗体である。
一実施形態において、本発明は、本開示の4-1BBおよびPD-L1に結合する二重特異性抗体、またはそれらを含む医薬組成物もしくは組み合わせ品を投与することを含む、被験体の癌を治療する方法を提供する。
【0189】
幾つかの実施形態において、癌は腫瘍免疫回避である。
【0190】
幾つかの実施形態において、癌は、固形癌および非固形癌ならびに転移性病変を含む。一実施形態において、固形癌の例として悪性腫瘍が挙げられる。一実施形態において、固形癌の例として悪性腫瘍が挙げられる。癌は、早期癌、中期癌、または進行癌もしくは転移性癌のいずれもありうる。幾つかの実施形態において、癌は、T細胞機能不全を伴う癌など、T細胞活性化を必要とする癌である。
【0191】
幾つかの実施形態において、癌は、例えば、正常な被験体または正常な細胞におけるレベルと比較して、PD-L1タンパク質発現レベルの増加またはPD-L1をコードする核酸レベルの増加を示す。
【0192】
好ましくは、前記癌は、結腸直腸癌(大腸癌)、直腸癌または結腸癌などの消化管(胃腸管)の癌の癌である。
【0193】
幾つかの実施形態において、癌の治療には、以下のようなベネフィットが得られる。
(i) PD-L1核酸またはタンパク質レベルを阻害する。
(ii) PD-L1のPD-1などの受容体への結合を遮断する。
(iii) 4-1BBシグナル伝達経路を活性化する。
(iv) T細胞の活性化、例えば、CD8+T細胞の増殖を増加させ、またはTreg細胞、例えば、CD4+T細胞を減少させる。
(v) 上記のうちのいずれか1つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0194】
別の態様において、本開示は、本開示の抗4-1BB抗体またはその抗原結合部分、もしくは二重特異性分子を、被験体の癌、感染症または自己免疫疾患を軽減するのに有効な追加の抗体などの1つ以上の治療薬と併用投与する併用療法の方法を提供する。一実施形態において、本開示は、被験体に、抗4-1BB抗体(またはその抗原結合部分、または二重特異性抗体)と、1つ以上の治療薬、例えば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、および/または抗CTLA-4抗体などの追加の抗体とを投与することを含む、被験体の癌疾患を治療する方法を提供する。特定の実施形態において、被験体はヒトである。
【0195】
4-1BBシグナル伝達の活性化は、標準的な疾患治療とさらに組み合わせて行うことができる。例えば、4-1BBシグナル伝達の活性化は、上記の抗体または化学的抗癌剤の投与と組み合わせて行うことができる。
【0196】
したがって、併用療法(組み合わせ療法)は、本開示の抗4-1BB抗体またはその抗原結合部分、もしくは二重特異性分子を、医薬組成物およびその組み合わせ品、ならびに他の療法のものと併用投与する組合せを含む。他の療法のものとしては、例えば、治療モダリティおよび/または他の治療薬が挙げられ、好ましくは、治療モダリティは、手術および/または放射線療法を含み、および/または他の治療薬は、化学療法剤、他の抗体、細胞毒性剤、ワクチン、抗感染剤、小分子薬剤または免疫調節剤からなる群より選択される。
【0197】
本明細書で論じられる治療薬の組み合わせは、薬学的に許容される担体中の単一の組成物として同時に、または薬学的に許容される担体中の各薬剤との別個の組成物として同時に投与され得る。別の実施形態において、複数の治療薬の組み合わせを順次投与することができる。
【0198】
さらに、併用療法の複数回投与を順次行う場合、各投与時点で順次投与の順序を逆にしたり、同じ順序に保ったりすることができ、順次投与は、同時投与と組み合わせることも、それらの任意の組み合わせでも可能である。
【実施例】
【0199】
本開示は、以下の実施例によりさらに説明されるが、これらの実施例はさらなる限定と解釈されるべきではない。本出願を通して引用されたすべての図およびすべての参考文献、GenBank配列、特許および公開された特許出願の内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
実施例
実施例1:ファージパニング、スクリーニングおよび親和性成熟(affinity maturation)
【0200】
ファージライブラリー
【0201】
抗体一本鎖ファージディスプレイライブラリーを、軽鎖可変領域(VL)のレパートリーおよび重鎖可変領域(VH)のレパートリーをクローニングすることによって作成した。重鎖レパートリーおよび軽鎖レパートリーを、主に末梢血から採取したヒトリンパ球からのPCR増幅によって作成した。VLレパートリーおよびVHレパートリーを混合し、オーバーラッププライマーを用いるPCRにかけた。抗体の最終フォーマットは、VH断片およびVL断片を有する一本鎖Fv(scFv)に、可撓性のリンカーペプチド(GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号36))が連結したものであった。
【0202】
ヒト4-1BBに対するファージライブラリーパニング
【0203】
特異的scFv断片を表示するファージ粒子の選択を、Immuno 96 MicroWellTMプレート(Nunc、Denmark)で行った。まず、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の50μg/mLの4-1BB組換えタンパク質(Sinobiological、カタログ番号10041-H08H)を、プレートに一晩、4℃でコーティングした。PBS(2% MPBS)中の2%(w/v)ミルクパウダーでブロックした後、約1011個のファージ粒子を含むライブラリーを添加し、プレートを2時間、室温(RT、25~28℃)でインキュベートした。プレートを、0.1% Tween 20を含むPBS(PBST)で10~20回洗浄し、その後、PBSで10~20回洗浄することにより、結合していないファージを除去した。結合したファージを、50μlの1μg/μlトリプシンと10分間インキュベートした後、pH2.0の50μlの50mMグリシン-HClと10分間インキュベートすることで溶出し、すぐにpH7.5の50μlの200mMのNa2HPO4で中和した。4ラウンドのパニングを行った。
【0204】
ファージスクリーニング
【0205】
第3ラウンドおよび第4ラウンドのパニングから、ファージをピックアップし、ヒト4-1BB結合について試験した。具体的には、ヒト4-1BB(Sinobiological社、カタログ番号10041-H08H)を0.1μg/mLで96ウェルプレートにコーティングし、単一クローンファージファージをプレートに添加した。次いで、結合していないファージを洗い流し、結合したファージを抗M13二次抗体(Abcam、カタログ番号ab50370)によって検出した。
【0206】
ELISA陽性クローンをシーケンシングし、そこから、クローン41BB-2、41BB-9、41BB-13、および41BB-27を含む28つのユニークな配列を同定した。例示的な抗4-1BB抗体の重鎖/軽鎖可変領域のアミノ酸配列ID番号およびそのCDR(カバット番号付けによる定義)を、表2に示した。これらの重鎖/軽鎖可変領域配列を用いて、ヒトIgG2(配列番号33)またはIgG1(配列番号34)またはIgG4重鎖定常領域(配列番号75)およびヒト軽鎖ラムダ定常領域(配列番号35)を有する全抗体41BB-2、41BB-9、41BB-13および41BB-27を調製した。ここで、重鎖可変領域のC末端は、重鎖定常領域のN末端に連結されており、軽鎖可変領域のC末端は、軽鎖定常領域のN末端に連結されていた。また、抗体41BB-2の軽鎖可変領域には、配列番号26、X1=Sのアミノ酸配列が含まれていた。
【0207】
また、41BB-2抗体の軽鎖可変領域は、最終部位にSからGへの変異を有し、IgG1重鎖定常領域(配列番号34)に接続されている。得られた変性41BB-2は、IgG1重鎖定常領域を有する41BB-2よりも高純度で調製できた(データは示されていない)。
【表2】
【0208】
上記の配列を有する抗体を、当技術分野で知られている一般的な方法で調製および精製する。具体的には、抗体の重鎖および軽鎖をコードするヌクレオチド配列を発現ベクターpcDNA3.1(Invitrogen)に挿入した。ベクターを、ExpiCHOTM発現系(ThermoFisher)を製造元の指示に従って使用して、CHO-S細胞にコトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞をExpiCHOTM発現培地において12日間培養した後、培養上清を採取し、製造元の指示に従ってプロテインAアフィニティークロマトグラフィー(GE healthcare)での精製に送った。
実施例2:例示的な抗4-1BB抗体のヒト4-1BBへの結合
【0209】
ELISAアッセイを行って、ヒト4-1BBへの抗体の相対的結合能力を決定した。
【0210】
炭酸塩バッファーpH9.6中のヒト4-1BB(Sinobiological、カタログ番号10041-H08H)を、4℃、25ng/ウェルで一晩インキュベートすることにより96ウェルプレートに固定化した。次いで、プレートを、PBS中の1%BSAと37℃で1時間インキュベートすることによりブロックした。ブロッキング後、プレートをPBST(0.05%Tween20を含むPBS)で3回洗浄した。段階希釈した抗4-1BB抗体およびウレルマブブコントロール(Urelumab control:配列番号37および38で示される重鎖および軽鎖アミノ酸配列を使用してWO2005035584に従って調製)を、それぞれ結合バッファー(0.05%Tween20および0.5%BSAを含むPBS)中で調製し、プレート内で固定化タンパク質と37℃で1時間インキュベートした。結合後、プレートをPBSTで3回洗浄し、結合バッファー中に1/20000希釈したペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgG F(ab’)2抗体(Jackson Immuno Research、カタログ番号109-035-097)とともに37℃で1時間インキュベートし、再度洗浄し、TMB(ThermoFisher、カタログ番号34028)で15分間発色させた後、1MのH2SO4で停止させた。各プレートウェルには、各ステップで50μLの溶液を含有していた。
【0211】
50nm~620nmでの吸光度を測定した。ヒト4-1BBに結合している抗体についてのEC
50値および結合曲線を
図1A~
図1Dに示し、これは、抗4-1BB抗体の41BB-2-IgG2、41BB-9-IgG2、41BB-13-IgG2、および41BB-27-IgG2が、ウレルマブブコントロールよりも高い結合能力でヒト4-1BBに特異的に結合したことを示唆している。
実施例3:例示的な抗4-1BB抗体とRhesus 4-1BBとの交差反応があるが、ヒトCD40、ヒトHVEM、ヒトOX40、ヒトCD27またはヒトGITRとの交差反応はない
【0212】
ELISAアッセイを行って、組換えヒトCD40、ヒトHVEM、ヒトOX40、ヒトCD27、ヒトGITRまたはRhesus 4-1BBに対する例示的な抗4-1BB抗体の結合活性を決定した。
【0213】
炭酸バッファーpH9.6中のヒトCD40(Sinobiological、カタログ番号10774-H08H)、ヒトHVEM(Sinobiological、カタログ番号10334-H03H)、ヒトOX40(Sinobiological、カタログ番号10481-H08H)、ヒトCD27(Sinobiological、カタログ番号10039-H31H)、ヒトGITR(Sinobiological、カタログ番号13643-H08H)およびRhesus 4-1BB(Sinobiological、カタログ番号90847-K08H)を、それぞれ4℃、25ng/ウェルで一晩インキュベートすることにより96ウェルプレートに固定化した。次いで、プレートを、PBS中の1%BSAと37℃で1時間インキュベートすることによりブロックした。その後、プレートをPBST(0.05%Tween20を含むPBS)で3回洗浄した。抗4-1BB抗体およびウレルマブを、それぞれ500ng/mLの結合バッファー(0.05%Tween20および0.5%BSAを含むPBS)中で調製し、固定化タンパク質と37℃で1時間インキュベートした。結合後、プレートをPBSTで3回洗浄し、結合バッファー中に1/20000希釈したペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgGF(ab’)2抗体(Jackson Immuno Research、カタログ番号109-035-097)とともに37℃で1時間インキュベートし、再度洗浄し、TMB(ThermoFisher カタログ番号34028)で15分間発色させた後、1MのH2SO4で停止させた。各プレートウェルには、各ステップで50μLの溶液を含有していた。
【0214】
450nm~620nmでの吸光度を測定し、
図2A~2Bに示した。抗4-1BB抗体の41BB-2-IgG2、41BB-9-IgG2、41BB-13-IgG2、および41BB-27-IgG2は、ヒトCD40、ヒトHVEM、ヒトOX40、ヒトCDGITR、またはヒトGITRに結合しなかったが、Rhesus 4-1BBと交差反応したことがわかる。ウレルマブはこれらのタンパク質のいずれにも結合しなかった。
実施例4:例示的な抗4-1BB抗体の細胞表面4-1BBへの結合およびNFκBレポーター遺伝子発光シグナルの誘導
【0215】
ヒト4-1BBシグナル伝達に対する例示的な抗4-1BB抗体のアゴニスト効果を、HEK293-NFκB-Luc-ヒト4-1BBレポーター遺伝子アッセイで評価した。
【0216】
実施例1では、全抗体41BB-2-IgG2、41BB-9-IgG2、41BB-13-IgG2、41BB-27-IgG2、41BB-9-IgG1、41BB-13-IgG1、41BB-27-IgG4、41BB-2-IgG1を調製および精製した。
【0217】
41BB-2-IgG2、41BB-9-IgG2、41BB-13-IgG2、41BB-27-IgG2の全抗体を以下のように評価した。
【0218】
簡潔に述べると、HEK293細胞株(ATCC、カタログ番号CRL-1573)を、37℃、5%CO2の加湿インキュベーター内で10%FBSを含有するDMEM培地で維持した。ヒト4-1BB(配列番号39で示されるNP_001552.2のアミノ酸)およびpGL4.32[luc2P/NF-κB-RE/Hygro](Promega、カタログ番号E849A)をコードする核酸配列を、リポフェクタミンTM2000トランスフェクション試薬(Invitrogen、カタログ番号11668019)を使用して、HEK293細胞にコトランスフェクトし、ヒト4-1BBおよびNF-κB-Lucを安定的に発現するクローンを、限界希釈によって得た。10%FBSを含有するDMEM培地において得られたHEK293-NFκB-Luc-4-1BB細胞を、1日目に96ウェルプレート(50000細胞/ウェル)に播種し、CO
2インキュベーターで一晩培養した。2日目に、96ウェルプレート上の培地を廃棄し、次いで、2倍濃度のヤギ抗ヒトIgG(Jackson Immuno Research、カタログ番号109-005-098)で前処理したかどうかにかかわらず、1%FBSを含有するDMEMで抗4-1BB抗体またはウレルマブを段階希釈し、プレートに添加し、HEK293-NFκB-Luc-4-1BB細胞と共培養した。該プレートを、37℃、5%CO
2のインキュベーターで6時間インキュベートした。次に、60μLのOne-GloTM試薬(Promega、カタログ番号E6130)をアッセイプレートのウェルに添加し、発光を、発光プレートリーダー(Tecan F200 Pro)を使用して測定した。EC
50値を決定し、抗4-1BB抗体の代表的な曲線を
図3A~
図3Gに示した。
【0219】
ヤギ抗ヒトIgGは、抗4-1BB抗体のFc部分と反応して、2つ以上の抗4-1BB抗体を架橋させた。抗体二量体またはポリマーの形成は、4-1BBシグナル伝達に対するより良いアゴニスト効果に寄与することができる。
【0220】
結果は、41BB-2-IgG2、41BB-9-IgG2、41BB-13-IgG2および41BB-27-IgG2が、いずれも細胞表面に発現した4-1BBに結合し、それに応じて、それらが架橋されているかどうかにかかわらず、4-1BBシグナル伝達を活性化し、NFκBレポーター遺伝子の発光発現を誘導できることを示した。しかしながら、架橋がない場合、本発明の4-1BB抗体は、ヒト4-1BBシグナル伝達に対して非常に低いアゴニスト効果を有するものの、架橋を有する場合は、より高いアゴニスト効果を有する。4つの4-1BBクローンのアゴニスト効果は、Fc架橋に依存している。
【0221】
全抗体41BB-9-IgG1、41BB-13-IgG1、41BB-27-IgG4、41BB-2-IgG1を、以下のように検証した。
【0222】
簡潔に述べると、HEK293細胞株(ATCC、カタログ番号CRL-1573)を、37℃、5%CO
2の加湿インキュベーター内で10%FBSを含有するDMEM培地で維持した。pIRESpuro3プラスミドおよびpGL4.32[luc2P /NF-κB-RE/Hygro](Promega、カタログ番号E849A)におけるヒト4-1BB(配列番号39で示されるNP_001552.2のアミノ酸)をコードする核酸配列を、リポフェクタミンTM2000トランスフェクション試薬(Invitrogen、カタログ番号11668019)を使用して、HEK293細胞にコトランスフェクトし、ヒト4-1BBおよびNF-κB-Lucを安定的に発現するクローンを、ピューロマイシン(Gibco、カタログ番号A1113802)およびハイグロマイシンでスクリーニングした後、限定希釈によって得た。10%FBSを含有するDMEM培地において得られたHEK293-NFκB-Luc-ヒト4-1BB細胞を、384ウェルプレート(40μLで20000細胞/ウェル)に播種した。次に、2倍希釈系列で希釈したヤギ抗ヒトIgG(Jackson Immuno Research、カタログ番号109-005-098)で前処理したかどうかにかかわらず、10%FBSを含有するDMEMで10μL/ウェルの抗4-1BB抗体の41BB-9-IgG1、41BB-13-IgG1、41BB-27-IgG4、41BB-2-IgG1、またはウレルマブ(3倍希釈系列で50μg/mLから開始)を段階希釈し、プレートに添加した。該プレートを、37℃、5%CO
2のインキュベーターで6時間インキュベートした。インキュベーション後、30μLのOne-GloTM試薬(Promega、カタログ番号E6130)をアッセイプレートのウェルに添加し、発光を、発光プレートリーダー(Tecan F200 Pro)を使用して測定した。その結果を、
図4Aおよび
図4Bに示した。
【0223】
ヤギ抗ヒトIgGは、抗4-1BB抗体のFc部分と反応して、2つ以上の抗4-1BB抗体を架橋させた。
【0224】
結果は、架橋剤を有する場合、41BB-27-IgG4以外の41BB-2-IgG1、41BB-9-IgG1、41BB-13-IgG1は、ヒト4-1BBシグナル伝達を活性化し、ウレルマブに比べて非常に高いNFκBレポーター遺伝子シグナルを誘導することを示した。一方、架橋剤がない場合、4つの4-1BB抗体は、ウレルマブに比べて非常に低いNFκBレポーター遺伝子シグナルを誘導した。4つの4-1BBクローンのアゴニスト効果は、Fc架橋に依存している。
実施例5:二重特異性抗体の発現および精製
【0225】
2つの二重特異性抗体、P4B-2およびP4B-3を構築した。それらの構造を
図5B(P4B-2)および
図5A(P4B-3)に示した。
具体的には、二重特異性P4B-2を以下のように構築し、4-1BB抗体の2つのscFvsを、全PD-L1抗体の2つの重鎖のN末端にそれぞれ連結し、
4-1BB抗体からのV
H(抗4-1BBのV
H)-リンカー-4-1BB抗体からのV
L(抗4-1BBのV
L)-PD-L1抗体からのリンカー-V
H(抗PD-L1のV
H)-重鎖定常領域である、
N末端からC末端までからなる重鎖と、
PD-L1抗体からの軽鎖(抗PDL1の軽鎖、すなわち、抗PD-L1軽鎖定常領域のV
L)と、を含む二重特異性抗体を構築する。
二重特異性P4B-3を以下のように構築し、4-1BB抗体の2つのscFvを、全PD-L1抗体の2つの重鎖のC末端にそれぞれ連結し、
PD-L1抗体からのV
H(抗PD-L1のV
H)-重鎖定常領域-リンカー-4-1BB抗体からのV
H(抗4-1BB V
H)-リンカー-4-1BB抗体からのV
L(抗4-1BBのV
L)である、N末端からC末端までからなる重鎖と、
PD-L1抗体からの軽鎖(抗PDL1の軽鎖、すなわち抗PD-L1軽鎖定常領域のV
L)と、を含む二重特異性抗体を構築する。
【0226】
二重特異性抗体およびコントロールをコードするヌクレオチドを、遺伝子合成(Genscript)により生成し、発現ベクターpcDNA3.1(Invitrogen)にクローン化した。それぞれ、軽鎖可変領域をコードする核酸を、軽鎖定常領域をコードする核酸を含む発現ベクターpcDNA3.1(Invitrogen)に挿入して、抗体の軽鎖を発現するベクターを構築し、重鎖可変領域をコードする核酸を、重鎖定常領域をコードする核酸を含む発現ベクターpcDNA3.1(Invitrogen)に挿入して、抗体の重鎖を発現するベクターを構築する。得られたベクターを、製造元の指示に従ってExpiCHOTM発現システム(ThermoFisher、カタログ番号A29133)を使用して、モル比1:1でCHO-S細胞にコトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞をExpiCHOTM発現培地で12日間培養した後、培養上清を採取し、製造元の指示に従ってプロテインAアフィニティークロマトグラフィー(GEヘルスケア)で精製した。
【0227】
異なる領域のアミノ酸配列および核酸配列を表3に示す。
【表3】
実施例6:ヒトPD-L1および4-1BBタンパク質に結合する抗体
【0228】
ヒトPD-L1、Hisタグタンパク質(ACRO、カタログ番号PD1-H5229)を、炭酸バッファー(pH9.6)で、4℃で一晩インキュベートすることにより96ウェルプレート(Hangzhou Xinyou、カタログ番号100096H)に固定化した。次いで、プレートを、PBS中の1%BSAと37℃で1時間インキュベートすることによりブロックした。ブロッキング後、プレートをPBST(0.05%Tween20を含むPBS)で3回洗浄した。2nMから0.003nMまで段階希釈したP4B-2、P4B-3およびネガティブコントロールIgG(重鎖:配列番号82;軽鎖:配列番号83)を、希釈バッファー(0.05%Tween20および0.5%BSAを含むPBS)で調製し、上記の固定化タンパク質と37℃で1時間インキュベートした後、プレートをPBSTで3回洗浄し、希釈バッファー中に1/20000特異的に希釈したペルオキシダーゼAffinipureヤギ抗ヒトIgG、Fcγ断片(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号109-035-098)とともに37℃で1時間インキュベートし、次いで、PBSTで再度洗浄した。TMB(Thermo、カタログ番号34028)をプレートに加えて、反応を開始した。15分後、1MのH
2SO
4で反応を停止させた。450nm~620nmでの吸光度を測定した。抗体のヒトPD-L1への結合に対するEC
50および代表的な結合曲線を、
図6に示した。
【0229】
結果は、2つの抗体P4B-2とP4B-3が両方とも、それぞれ0.02395nMと0.02887nMのEC50でヒトPD-L1タンパク質に結合できることを示した。
【0230】
ヒト4-1BB、ヒトFcタグタンパク質(配列番号81、Hu4-1BB-hFc)を、炭酸バッファー(pH9.6)で、4℃で一晩インキュベートすることにより、96ウェルプレート(Hangzhou Xinyou、カタログ番号100096H)に固定化した。次いで、プレートを、PBS中の1%BSAと37℃で1時間インキュベートすることによりブロックした。ブロッキング後、プレートをPBST(0.05%Tween20を含むPBS)で3回洗浄した。6.65nMから0.009nMまで段階希釈したP4B-2、P4B-3およびネガティブコントロールIgG(重鎖:配列番号82;軽鎖:配列番号83)を、希釈バッファー(0.05%Tween20および0.5%BSAを含むPBS)で調製し、固定化タンパク質Hu4-1BB-hFcと37℃で1時間インキュベートした。その後、プレートをPBSTで3回洗浄し、希釈バッファー中に1/10000特異的に希釈したペルオキシダーゼAffinipureヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)
2断片(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号109-035-097)とともに37℃で1時間インキュベートし、次いで、PBSTで再度洗浄した。TMB(Thermo、カタログ番号34028)をプレートに加えて、反応を開始した。10分後、1MのH
2SO
4で反応を停止させた。450nm~620nmでの吸光度を測定した。クローンのヒト4-1BBへの結合に対するEC
50および代表的な結合曲線を、
図7に示した。
【0231】
結果は、2つの抗体P4B-2とP4B-3が両方とも、それぞれ0.1126nMと0.07234nMのEC50でヒト4-1BBタンパク質に結合できることを示した
【0232】
したがって、2つの二重特異性抗体P4B2およびP4B3は、EC50が低く、ヒトPD-L1およびヒト4-1BBタンパク質の両方に結合できる。
実施例7:結合親和性
PD-L1タンパク質への結合親和性
【0233】
ヒトPD-L1タンパク質(ACRO、カタログ番号PD1-H5229)およびカニクイザルPD-L1タンパク質(Sino Biological、カタログ番号90251-C08H)に対するP4B-3抗体の動態結合活性を、ForteBio Octet RED96(Fortebio)によって測定した。
【0234】
P4B-3抗体を、事前に平衡化された抗ヒトIgG Fcキャプチャー(AHC)バイオセンサー(Fortebio、カタログ番号18-5060)にコーティングした。ヒトPD-L1(ACRO、カタログ番号PD1-H5229)およびカニクイザルPD-L1(Sino Biological、カタログ番号90251-C08H)タンパク質を分析物として使用し、抗体により捕捉した。データセットは、Octetソフトウェアを使用して1:1結合モデルに適合した。
【0235】
表4は、ヒトおよびカニクイザルPD-L1タンパク質に対する本発明のP4B-3の二重特異性抗体の親和性を要約したものである。
【表4】
【0236】
結果は、抗体P4B-3が、それぞれ0.29nMと0.061nMのKDでヒトPD-L1とカニクイザルPD-L1の両方に特異的に結合することを示唆した。
4-1BBタンパク質への結合親和性
【0237】
ヒト4-1BBタンパク質(Sino Biological、カタログ番号10041-H08H)に対するP4B-3抗体の動態結合活性を、ForteBio Octet RED96(Fortebio)によって測定した。
【0238】
抗4-1BB抗体を、事前に平衡化された抗ヒトIgG Fcキャプチャー(AHC)バイオセンサー(Fortebio、カタログ番号18-5060)にコーティングした。ヒト4-1BB(Sino Biological、カタログ番号10041-H08H)を分析物として使用し、抗体により捕捉した。データセットは、Octetソフトウェアを使用して1:1結合モデルに適合した。
【0239】
表5はヒト4-1BBタンパク質に対する抗ヒト4-1BB抗体の親和性をまとめたものである。
【表5】
【0240】
結果は、抗体P4B-3が、1.46E-7MのEC50でヒト4-1BBタンパク質に結合できることを示唆した。
実施例8:HEK293-4-1BB/NFκB系におけるP4B-3の4-1BBレポーター遺伝子アッセイ
【0241】
P4B-3二重特異性抗体の活性化を、PD-L1依存性4-1BBレポーター遺伝子システムで評価した。HEK293-NFκB-Luc-ヒト4-1BB細胞株、A375-PD-L1標的細胞株およびCHO-K1-PDL-1細胞株は、Leadsbiolabs社によって開発された。
【0242】
HEK293-NFκB-Luc-ヒト4-1BB細胞株は、段落[00222]、実施例4に記載の手順に従って得られる。
【0243】
A375(Cell Bank、Type Culture Collection、Chinese Academy of Sciences、カタログ番号SCSP-533)親細胞株を、リポフェクタミンTM2000トランスフェクション試薬(Invitrogen、カタログ番号11668019)を用いて、ヒトPD-L1遺伝子(配列番号62;配列番号61のアミノ酸配列をコードする)でトランスフェクトした。A375-PD-L1細胞を得るためにピューロマイシン(Gibco、カタログ番号A1113802)でスクリーニングした後、安定な単一細胞クローン高発現ヒトPD-L1を選択した。
【0244】
CHO-K1(ATCC カタログ番号CCL-61)親細胞株を、リポフェクタミンTM2000トランスフェクション試薬(Invitrogen、カタログ番号11668019)を用いて、ヒトPD-L1遺伝子(配列番号62:配列番号61のアミノ酸配列をコードする)でトランスフェクトした。CHO-K1-PDL1細胞を得るためにピューロマイシン(Gibco、カタログ番号A1113802)でスクリーニングした後、安定な単一細胞クローン高発現ヒトPD-L1を選択した。
【0245】
ルシフェラーゼの発現は、4-1BBの活性と直接相関している。
【0246】
HEK293-NFκB-Luc-ヒト4-1BB細胞とA375-PD-L1細胞を採取し、それぞれアッセイバッファー(10nM,4希釈から始まるDMEM+1%FBS)で適切な細胞密度に希釈し、HEK293-4-1BB/NFκΒ細胞の密度が40000細胞/60μL、A375-PD-L1細胞の密度が20000細胞/60μLとなるように、2つの細胞を混合した。60μL/ウェルの混合物を96ウェルプレート(Corning、カタログ番号3917)に添加した。標的細胞非依存性刺激を試験する平行アッセイでは、HEK293-NFκΒ-Luc-ヒト4-1BB細胞のみを別の96ウェルプレート(Corning、カタログ番号3917)に加えた。
【0247】
その後、得られたプレートに、60μL/ウェルの段階希釈された試験サンプルP4B-3およびINBRX-105-1(PD-L1×4-1BB二重特異性抗体、配列番号84、US20170198050A1)(200nMから開始、5倍希釈系列、9濃度)を加えた。37℃のインキュベーターで6時間インキュベートした後、60μL/ウェルのOne-Glo(Promega、カタログ番号E6130)試薬をプレートに添加した。相対発光単位をルミノメーター(Tecan、カタログ番号F200)で測定した。
【0248】
図9A~
図9Bは、PD-L1なしで4-1BB刺激を誘発する、PD-L1×4-1BBの二重特異性抗体(P4B-3およびINBRX-105-1)の能力を示している。P4B-3はPD-L1なしで4-1BBシグナル経路を刺激できなかったが、INBRX-105-1コントロールは高いアッセイ濃度でシグナル経路を刺激できた(
図9B)。
【0249】
HEK293-NFκB-Luc-ヒト4-1BB細胞とCHO-K1-PD-L1細胞を採取し、それぞれアッセイバッファー(DMEM+1%FBS)を用いて適切な細胞密度に希釈し、これら2つの細胞を混合した。この場合、HEK293-NFκB-Luc-ヒト4-1BB細胞の密度は40000細胞/60μLであり、CHO-K1-PD-L1細胞の密度は20000細胞/60μLであった。60μL/ウェルの混合物を96ウェルプレート(Corning、カタログ番号3917)に添加した。
【0250】
その後、得られたプレートに、60μL/ウェルの段階希釈された試験サンプルP4B-3およびNM21-PRO1186(PD-L1×4-1BB二重特異性抗体、WO2019072868A1)(200nMから開始、5倍希釈系列、9濃度)を加えた。37℃のインキュベーターで6時間インキュベーションした後、60μL/ウェルのOne-Glo(Promega、カタログ番号E6130)試薬を添加した。相対発光単位をルミノメーター(Tecan、カタログ番号F200)で測定した。
【0251】
図8は、PD-L1-結合依存性の4-1BB刺激を誘発する、PD-L1×4-1BBの二重特異性抗体(P4B-3およびNM21-PRO1186)の能力を示している。その結果、P4B-3とNM21-PRO1186の両方がPD-L1の存在下で4-1BBシグナル経路を刺激でき、すなわち、PD-L1への結合に依存することを示した。それらのアゴニスト活性は比較可能である。これらの結果は、HEK293-NFκΒ-Luc-ヒト4-1BBレポーター遺伝子におけるP4B-3の活性化能力は、PD-L1への結合に厳密に依存することを示した。
実施例9:インビトロヒトPBMC細胞の活性化
【0252】
健康なドナーからヒト末梢血単核細胞を採取した。SepMate 50チューブ(StemCell Technologies)中に、Lymphoprep密度勾配試薬(StemCell Tenchnologies)を含む単核細胞を分離した。どちらの細胞も後で使用するために液体窒素で凍結された。
【0253】
96ウェルプレート(Corning、カタログ番号3799)を、4℃で0.2μg/mLの機能グレードの抗CD3(eBioscience、カタログ番号16-0037-85)で一晩コーティングした。翌日、コーティングされたプレートをDPBSバッファー(Hyclone、SH30256.01)で2回洗浄した。
【0254】
PBMC細胞(Donor712023)を37℃の水浴で急速に解凍し、細胞懸濁液を温かい完全培地(90%RPMI 1640(Gibco、カタログ番号22400)+10%FBS(Gibco、カタログ番号10099-141))を含むチューブに移した。その後、細胞を300gで5分間遠心分離した。上清を廃棄し、PBMC細胞を完全培地(90%RPMI 1640+10%FBS)で再懸濁し、1×106細胞/mLに調整した。
【0255】
標的細胞Raji/PD-L1を以下のように調製した。Raji親細胞株(Cell Bank、
Type Culture Collection、Chinese Academy of Sciences、カタログ番号TCHu44)は、レンチウイルスシステム(GeneCopoeiaTM、カタログ番号LT001)にパッケージされたヒトPD-L1遺伝子(配列番号62;配列番号61のアミノ酸配列をコードする)に感染した。Raji/PD-L1細胞を得るために、ピューロマイシン(Gibco、カタログ番号A1113802)でスクリーニングした後、安定な単一細胞クローン高発現ヒトPD-Lを選択した。
【0256】
インキュベーション後、標的細胞Raji/PD-L1を300gで5分間の遠心分離により採取した。上清を捨て、標的細胞を完全培地(90%RPMI 1640+10%FBS)において1×106細胞/mLまで穏やかに懸濁した。実施例1で調製した抗体P4B-3、抗PD-L1(CN109021107AからのHUL02)、41BB-2-IgG1、抗PD-L1+41BB-2(比率1:1)、およびヒトIgG陰性コントロール(重鎖配列番号82、軽鎖配列番号83)を段階希釈して、試験サンプル溶液(最終濃度0.05nM、0.5nM、5nM、および50nM)を調製した。
【0257】
次に、コーティングされた96ウェルアッセイプレートに50,000細胞/ウェルのRaji/PD-L1を添加し、各テストサンプル溶液の50μL/ウェルを添加した後、100,000細胞/ウェルのPBMCを完全培地に添加した。37℃、5%CO
2で72時間インキュベーションした後、細胞上清を採取し、培養上清中のヒトインターロイキン-2(IL-2)レベルを、ELISAキット(R&D、カタログ番号DY202)を使用して製造元の指示に従って定量した。その結果を
図10に示した。
【0258】
結果は、P4B-3がPBMC細胞を用量依存的に刺激し、抗PD-L1単独、抗4-1BB(41BB-2-IgG1mut)単独、または抗PD-L1と抗4-1BBの併用よりも高いレベルのIL-2を放出することを示した。
実施例10:MC38-hPD-L1を有するhuPD-L1/hu4-1BB KIマウスモデルにおけるP4B-3の抗腫瘍効果
【0259】
6~7週齢のBALB/c-huPD-L1/hu4-1BBダブルノックインマウス(Biocytogen)を5×105MC38-huPD-L1細胞(Biocytogen)で皮下移植し、0日目に平均腫瘍体積が約87mm3(長さ×幅2/2)に達した時点で4群にランダム化した。
【0260】
0日目、3日目、6日目、9日目、12日目、15日目には、マウスにP4B-3、抗PD-L1抗体(CN109021107AのHUL02)、41BB-2-IgG1、およびビヒクル(PBS)をそれぞれ腹腔内投与した。研究期間中、週2回のキャリパー測定により腫瘍体積をモニタリングした。
【0261】
ビヒクル群と比較して、P4B-3は非常に有意な腫瘍抑制効果(P<0.001)を示し、腫瘍体積のTGI(腫瘍増殖阻害)=81.8%であり、抗PD-L1群(TGItv=70.5%)および抗4-1BB群(TGItv=46.1%)よりも高かった。P4B-3の平均腫瘍重量もビヒクル群よりも有意に低かった(P<0.05)。
【0262】
最終的に、TIL(腫瘍浸潤リンパ球)を腫瘍から分離し、さまざまな細胞マーカー抗体(Brilliant Violet 510TM抗-マウスCD45(Biolegend,カタログ番号103138)、PerCP/Cy5.5 抗-マウスTCR β chain(Biolegend,カタログ番号109228)、Brilliant Violet 421TM抗-マウスCD4(Biolegend,カタログ番号100438)、Brilliant Violet 711TM抗-マウスCD8a(Biolegend,カタログ番号100748)、PE抗マウス/ラットFoxp3、eBioscience(Thermo,カタログ番号12-5773-82))で染色し、次いで、FACSにより検出した。
【0263】
ビヒクル群および抗PD-L1群と比較して、P4B-3群のCD3+T細胞におけるCD8+T細胞の比率は有意に高かった(P<0.05)が、CD3+細胞のTreg細胞の比率は有意に低かった(P<0.05)。
【0264】
結果は、
図11、
図12および
図13に示した。これらの結果は、MC38-huPD-L1細胞を有するBALB/c-huPD-L1/hu4-1BB KIマウスモデルにおいて、P4B-3が強力な抗腫瘍効果を示したことを示した。さらに、P4B-3は、CD8+比を上昇させ、腫瘍微小環境におけるTreg比を低下させることもできた。
【表6】
実施例11:ラットにおけるP4B-3の薬物動態試験
【0265】
ラットにおけるP4B-3の薬物動態プロファイルを評価した。試験における動物のケアと使用を含む手順は、PhamaLagancyによってレビューされ承認された。3匹の雄SDラット(Shanghai Sippr-BK laboratory animal Co.Ltd.)を用いた。
【0266】
この試験では、P4B-3をラットに10mg/kgの単回投与で静脈内注射した。血液サンプルは、0~336時間(0~14日)の様々な時点で、特に0日目0分、10分、30分、1時間、4時間、8時間、1日目、2日目、4日目、7日目、10日目、14日目に採血を行い、すべてのサンプルを処理して血漿を採取し、血漿を-70~-86℃で凍結保存して分析した。血漿中に存在するP4B-3の濃度は、PD-L1および4-1BB抗原捕捉アッセイによって決定された。薬物動態パラメータを表7に示した。
【0267】
4-1BB抗原捕捉アッセイ:ヒト4-1BB、ヒトFcタグタンパク質(Hu4-1BB-huFc、配列番号81)を、0.5μg/mLの96ウェルプレート(Costar、カタログ番号42592)上に、4℃で一晩、炭酸バッファー(pH9.6)中でインキュベートすることにより固定化した。その後、PBS(Hyclone、カタログ番号SH30256.01)中の1%BSA(Sangon Biotech、カタログ番号A500023-0025)と37℃で1時間インキュベートすることにより、プレートをブロックした。ブロッキング後、プレートをPBST(0.05%Tween20を含むPBS)で3回洗浄した。P4B-3を血清希釈バッファー(0.05%Tween20と、2%v/vラット血清を有する0.5%BSAとを含むPBS)中に0.1μg/mLで希釈し、3倍段階希釈6回、計7濃度の抗体溶液を標準曲線とした。同時に、高、中、低品質管理としてそれぞれ80ng/mL、8ng/mLおよび0.8ng/mLのP4B3を血清希釈バッファーで希釈した。すべてのラット血清サンプルを、投与前の混合ラット血清と希釈バッファー(0.05%Tween20および0.5%BSAを含むPBS)で希釈し、最終濃度を80~0.8ng/mLの範囲に保ち、サンプル希釈中に2%v/vのラット血清を含めた。標準曲線、品質管理およびサンプルをプレートに加え、37℃で1時間インキュベートした。その後、プレートをPBSTで3回洗浄し、希釈バッファー中に1/10000特異的に希釈したペルオキシダーゼアフィニピュアヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)2断片(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号109-035-097)とともに37℃で1時間インキュベートし、次いで、PBSTで再度洗浄した。50μL/ウェルのTMB(Thermo、カタログ番号34028)をプレートに加え、15分後、1MのH2SO4で反応を停止させた。450nm~620nmでの吸光度を測定した。
【0268】
PD-L1抗原捕捉アッセイ:ヒトPD-L1、Hisタグタンパク質(huPD-L1-his、ACRO、カタログ番号10084-H08H)を、0.5μg/mLの96ウェルプレート(Costar、カタログ番号42592)上に、4℃で一晩、炭酸バッファー(pH9.6)中でインキュベートすることにより固定化した。次いで、プレートを、PBS中の1%BSAと37℃で1時間インキュベートすることによりブロックした。ブロッキング後、プレートをPBST(0.05%Tween20を含むPBS)で3回洗浄した。P4B-3を血清希釈バッファー(0.05%Tween20と、2%v/vラット血清を有する0.5%BSAとを含むPBS)中に0.1μg/mLで希釈し、3倍段階希釈6回、計7濃度の抗体溶液を標準曲線とした。同時に、高、中、低品質管理としてそれぞれ80ng/mL、8ng/mLおよび0.8ng/mLのP4B3を血清希釈バッファーで希釈した。すべてのラット血清サンプルを、投与前の混合ラット血清と希釈バッファー(0.05%Tween20および0.5%BSAを含むPBS)で希釈し、最終濃度を80~0.8ng/mLの範囲に保ち、サンプル希釈中に2%v/vのラット血清を含めた。標準曲線、品質管理およびサンプルをプレートに加え、37℃で1時間インキュベートした。その後、プレートをPBSTで3回洗浄し、希釈バッファー中に1/20000特異的に希釈したペルオキシダーゼアフィニピュアヤギ抗ヒトIgG、Fc断片(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号109-035-098)とともに37℃で1時間インキュベートし、次いで、PBSTで再度洗浄した。50μL/ウェルのTMB(Thermo、カタログ番号34028)をプレートに加え、15分後、1MのH
2SO
4で反応を停止させた。450nm~620nmでの吸光度を測定した。
【表7】
【0269】
P4B-3の薬物動態はラットで良好に行われ、医薬品分野で使用できることを示している。
【0270】
本開示は、1つ以上の実施形態に関連して上記で説明されてきたが、本開示はそれらの実施形態に限定されず、説明は、添付の特許請求項の精神と範囲内に含まれる、すべての選択肢、修正および均等物をカバーすることを意図していることを理解すべきであろう。本明細書で引用されているすべての参照文献は、参照によりその全体がさらに組み込まれる。
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
【表8-4】
【表8-5】
【配列表】