(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】多層経糸結合製紙業者用の成形布
(51)【国際特許分類】
D03D 1/00 20060101AFI20250213BHJP
D03D 3/04 20060101ALI20250213BHJP
D03D 11/00 20060101ALI20250213BHJP
D21F 7/08 20060101ALI20250213BHJP
D21F 1/10 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
D03D1/00 D
D03D3/04
D03D11/00 Z
D21F7/08 Z
D21F1/10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023185797
(22)【出願日】2023-10-30
(62)【分割の表示】P 2022517479の分割
【原出願日】2020-09-15
【審査請求日】2023-10-31
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512227041
【氏名又は名称】ハイク・ライセンスコ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】グライヒ,レナーテ
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-518726(JP,A)
【文献】特表2021-513013(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158640(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0249265(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21F 1/10
D03D 1/00
D03D 3/04
D03D 11/00
D21F 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一連の繰り返しユニットを含む成形布であって、前記繰り返しユニットの各々は、
結合経糸の第1のセットおよび結合経糸の第2のセットを含む結合経糸のセットであって、前記第1のセットからの結合経糸が、前記第2のセットからの結合経糸と対になっている、結合経糸のセットと、
ばね経糸のセットであって、ばね経糸の各々が、
ばね弾性を有し、結合経糸の第1の対と結合経糸の第2の対との間にある、ばね経糸のセットと、
上緯糸のセットであって、前記上緯糸が、前記結合経糸および前記ばね経糸と織り合わされて、上布層を形成し、前記ばね経糸が、前記上緯糸とのみ織り合わされ、結合経糸の第1の対が、
緯糸方向に、少なくとも2本の上緯糸分、次いで少なくとも4本の上緯糸分、交互に結合経糸の第2の対に
対して経糸方向にオフセットされている、上緯糸のセットと、
下緯糸のセットと、
下経糸のセットであって、前記下経糸が、前記下緯糸と織り合わされて下布層を形成する、下経糸のセットと
を含み、
前記第1のセットおよび前記第2のセットからの前記結合経糸ならびに前記下経糸は、(a)下経糸の各々が、前記下布層に沿って複数のナックルを形成するように、(b)前記第1のセットからの結合経糸の各々が、下緯糸の下で下経糸のそばで織り合わされて二重ナックルを形成するように、かつ(c)前記第2のセットからの結合経糸の各々が、下緯糸の下で下経糸のそばで織り合わされて二重ナックルを形成するように、前記下緯糸と織り合わされている、成形布。
【請求項2】
少なくとも1本の下緯糸が、下経糸と第1の結合経糸とによって形成された第1の二重ナックルと、下経糸と第2の結合経糸とによって形成された第2の二重ナックルとの間にある、請求項1に記載の成形布。
【請求項3】
ばね経糸の各々は、前記ばね経糸が、前記上緯糸と上1/下1/上1/下4/上1/下1/上1/下2の順序で織り合わされたセグメントを含む、請求項1または2に記載の成形布。
【請求項4】
前記第1のセットおよび前記第2のセットからの結合経糸の各々は、結合経糸の各々が、前記上緯糸と上1/下1/上1/下5/上1/下1/上1/下1の順序で織り合わされたセグメントを含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載の成形布。
【請求項5】
前記上布層の繰り返しユニットが、前記第1のセットからの4本の結合経糸、前記第2のセットからの4本の結合経糸、4本のばね経糸、および12本の上緯糸を含み、前記下布層の繰り返しユニットが、4本の下経糸、8本の結合経糸、および8本の下緯糸を含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の成形布。
【請求項6】
前記下布層に沿った二重ナックルの配置が、ジグザグパターンに従う、請求項1~
5のいずれか1項に記載の成形布。
【請求項7】
前記ジグザグパターンが、第1の対角線に形成された二重ナックルの第1のセットと、第2の対角線に形成された二重ナックルの第2のセットとを含み、二重ナックルのセットの各々が、4つの二重ナックルを含み、二重ナックルの前記第2の対角線が、二重ナックルの前記第1の対角線からオフセットされている、請求項
6に記載の成形布。
【請求項8】
対角線の各々が、4つの二重ナックルを含み、二重ナックルの各々が、前記第1のセットまたは前記第2のセットからの下経糸および結合経糸によって形成されている、請求項
7に記載の成形布。
【請求項9】
前記上布層が、少なくとも1本の第1の緯糸経路、少なくとも1本の第2の緯糸経路、および少なくとも1本の第3の緯糸経路を含む一連の緯糸経路の繰り返しユニットを含み、
(a)前記第1の緯糸経路には、上緯糸が、前記結合経糸および前記ばね経糸と上3/下1/上2/下1/上2/下1/上1/下1の順序で織り合わされたセグメントが含まれ、
(b)前記第2の緯糸経路には、上緯糸が、前記結合経糸および前記ばね経糸と上3/下1/上2/下1/上1/下1/上2/下1の順序で織り合わされたセグメントが含まれ、
かつ
(c)前記第3の緯糸経路には、上緯糸が、前記結合経糸および前記ばね経糸と上3/下1/上1/下1/上2/下1/上2/下1の順序で織り合わされたセグメントが含まれている、請求項1~
8のいずれか1項に記載の成形布。
【請求項10】
前記緯糸経路の繰り返しユニットが、前記第1の緯糸経路、前記第2の緯糸経路、前記第1の緯糸経路、前記第3の緯糸経路、前記第2の緯糸経路、および前記第3の緯糸経路のように配置された緯糸経路のセグメントを含む、請求項
9に記載の成形布。
【請求項11】
前記緯糸経路の繰り返しユニットが、目に見える対角線のない上布層を形成する、請求項
9または
10に記載の成形布。
【請求項12】
前記緯糸経路の繰り返しユニットが、前記上布層にペイズリーパターン形状の平織りゾーンを形成する、請求項
9~
11のいずれか1項に記載の成形布。
【請求項13】
連続する緯糸経路の繰り返しユニットが、前記上布層に
鏡面対称のペイズリーパターン形状の平織りゾーンを形成する、請求項
9~
12のいずれか1項に記載の成形布。
【請求項14】
前記上布層に形成された前記
ペイズリーパターン形状のペイズリー平織りゾーンが、前記下布層に形成された二重ナックルのジグザグ線の間に整列されている、請求項
12または
13に記載の成形布。
【請求項15】
前記上布層の3本の経糸の上を通過する前記第1の緯糸経路、前記第2の緯糸経路、および前記第3の緯糸経路の前記セグメントが、前記下布層に形成された
経糸方向の2つの二重ナックルの中央および間に整列している、請求項
9~
13のいずれか1項に記載の成形布。
【請求項16】
対角線の第1の二重ナックルの右側にある前記下緯糸が、隣接する対角線の前記第1の二重ナックルの左側にある同じ下緯糸よりも広い接触領域を形成した非対称形状を有し、前記対角線の第4の二重ナックルの左側にある前記下緯糸が、前記隣接する対角線の前記第4の二重ナックルの右側にある同じ下緯糸よりも広い接触領域を形成した非対称形状を有する、請求項
7~
15のいずれか1項に記載の成形布。
【請求項17】
前記対角線の第2の二重ナックルおよび第3の二重ナックルの左右の前記下緯糸が、実質的に等しい接触領域を有する対称形状を有する、請求項
16に記載の成形布。
【請求項18】
前記第1のセットおよび前記第2のセットからの前記結合経糸ならびに前記ばね経糸は、前記上緯糸と織り合わされて、(a)結合経糸の前記第1のセットが、奇数の上緯糸の上のみを通過するように、(b)結合経糸の前記第2のセットが、偶数の上緯糸の上のみを通過するように、(c)前記対の第1の結合経糸が、前記対の第2の結合経糸から少なくとも3本の上緯糸分、オフセットされ、結合経糸の前記対の経糸経路に重なりを形成するように、かつ(d)ばね経糸の各々が偶数および奇数の上緯糸の上を通過するように、決められたゾーンで平織りパターンを相対的に形成する、請求項1~
17のいずれか1項に記載の成形布。
【請求項19】
前記成形布が、3本の上緯糸対2本の下緯糸の緯糸比(3:2)を有する、請求項1~
18のいずれか1項に記載の成形布。
【請求項20】
一連の繰り返しユニットを含む成形布であって、前記繰り返しユニットの各々は、
結合経糸の第1のセットおよび結合経糸の第2のセットを含む結合経糸のセットであって、前記第1のセットからの結合経糸が、前記第2のセットからの結合経糸と対になっている、結合経糸のセットと、
ばね経糸のセットであって、ばね
経糸の各々が、
ばね弾性を有し、結合経糸の第1の対と結合経糸の第2の対との間にある、ばね経糸のセットと、
上緯糸のセットであって、前記上緯糸が、前記結合経糸および前記ばね経糸と織り合わされて上布層を形成し、前記ばね経糸が、前記上緯糸とのみ織り合わされ、結合経糸の第1の対が、
緯糸方向に、少なくとも4本の上緯糸分、交互に結合経糸の第2の対に
対して経糸方向にオフセットされている、上緯糸のセットと、
下緯糸のセットと、
下経糸のセットであって、前記下経糸が、前記下緯糸と織り合わされて下布層を形成する、下経糸のセットと
を含み、
前記第1のセットおよび前記第2のセットからの前記結合経糸ならびに前記下経糸は、(a)下経糸の各々が、前記下布層に沿って複数のナックルを形成するように、(b)前記第1のセットからの結合経糸の各々が、下緯糸の下で下経糸のそばで織り合わされて二重ナックルを形成するように、かつ(c)前記第2のセットからの結合経糸の各々が、下緯糸の下で下経糸のそばで織り合わされて二重ナックルを形成するように、前記下緯糸と織り合わされている、成形布。
【請求項21】
前記成形布が、2本の緯糸対1本の下緯糸の緯糸比(2:1)を有する、請求項
20に記載の成形布。
【請求項22】
2本の下緯糸が、前記下経糸
と第1の結合経糸によって形成された第1の二重ナックルと、同じ下経糸
と第2の結合経糸によって形成された第2の二重ナックルとの間にある、請求項
20または
21に記載の成形布。
【請求項23】
ばね経糸の各々は、前記ばね経糸が、前記上緯糸と上1/下2/上1/下1/上1/下1/上1/下4/上1/下1/上1/下1の順序で織り合わされたセグメントを含む、請求項
20~
22のいずれか1項に記載の成形布。
【請求項24】
前記第1のセットおよび前記第2のセットからの結合経糸の各々は、結合経糸の各々が、前記上緯糸と上1/下1/上1/下1/上1/下7/上1/下1/上1/下1の順序で織り合わされたセグメントを含む、請求項
19~
23のいずれか1項に記載の成形布。
【請求項25】
前記上布層が、少なくとも1本の第1の緯糸経路、少なくとも1本の第2の緯糸経路、および少なくとも1本の第3の緯糸経路を含む一連の緯糸経路の繰り返しユニットを含み、
(a)前記第1の緯糸経路には、上緯糸が、前記結合経糸および前記ばね経糸と上3/下1/上2/下1/上2/下1/上1/下1の順序で織り合わされたセグメントが含まれ、
(b)前記第2の緯糸経路には、上緯糸が、前記結合経糸および前記ばね経糸と上3/下1/上2/下1/上1/下1/上2/下1の順序で織り合わされたセグメントが含まれ、
かつ
(c)前記第3の緯糸経路には、上緯糸が、前記結合経糸および前記ばね経糸と上3/下1/上1/下1/上2/下1/上2/下1の順序で織り合わされたセグメントが含まれている、請求項
19~
24のいずれか1項に記載の成形布。
【請求項26】
前記緯糸経路の繰り返しユニットが、前記第1の緯糸経路、前記第3の緯糸経路、前記第2の緯糸経路、前記第2の緯糸経路のように配置された緯糸経路のセグメントを含む、請求項
25に記載の成形布。
【請求項27】
前記緯糸経路の繰り返しユニットが、前記上布層にペイズリーパターン形状の平織りゾーンを形成する、請求項
25または
26に記載の成形布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、2019年9月18日に出願された米国特許仮出願第62/901,937号に基づく優先権および利益を主張し、その開示の全ては、引用することにより本明細書の一部を成すものとする。
【0002】
本発明は、主に製紙に関し、特に製紙に使用される布に関する。
【背景技術】
【0003】
従来の長網抄紙機の製紙プロセスにおいては、(紙の「原料(stock)」として知られている)セルロース繊維の水スラリーまたは懸濁液が、2つ以上のロール間を移動する織られたワイヤおよび/または合成材料のエンドレスベルトの上段の上部に供給されている。いわゆる「成形布(forming fabric)」と呼ばれるこのベルトは、その上段の上面に製紙面を提供し、この製紙面は、紙原料のセルロース繊維を水性媒体から分離するためのフィルターとして機能し、これによって湿った紙ウェブを形成する。水性媒体は、重力または布の上段の下面(すなわち、「機械側」)に位置する真空によって、排水穴として知られる成形布のメッシュ開口部を通って排出される。
【0004】
成形セクションを離れた後、紙ウェブは製紙機械のプレスセクションに移され、そこで、典型的に「プレスフェルト(press felt)」と呼ばれる、別の布で覆われた1つまたは複数の対の圧力ロールのニップを通過する。ロールからの圧力によって、ウェブからさらに水分が除去される。水分除去は、プレスフェルトの「バット(batt)」層の存在により強化される。次いで、紙は、さらに水分を除去するために乾燥機セクションに移される。乾燥後、紙は二次加工と包装の準備がなされる。
【0005】
本明細書にて、マシン方向(「MD」)およびクロスマシン方向()(「CMD」)という用語は、それぞれ、製紙機械上の製紙用の布の移動方向に整列した方向と、布の表面に平行で移動方向を横断する方向を指す。同様に、布の糸の垂直関係への方向の呼称(例えば、上方、下方、上部、下部、下位等)は、布の製紙面が布の上部であり、布の機械側の面が布の下部であることを前提とする。
【0006】
通常、製紙業者用の布は、2つの基本的な織り技術のうちの1つによりエンドレスベルトとして製造される。1つ目の技術では、布は、平織りプロセスによって平織りされ、端が接合され、エンドレスベルトを形成する。この形成は、端を解体して再び織る(通常はスプライシングとして知られている。)、またはピンシーム可能なフラップまたは両端の特別な折り返しで縫い、次にこれらをピンシーム可能なループに再び織るなどの、多くのよく知られた接合方法のいずれかによる。現在、多くの自動接合機が広く利用可能であり、特定の布では、接合プロセスの少なくとも一部を自動化するために使用できる。平織りの製紙業者用の布では、経糸(warp yarn)はマシン方向に伸び、緯糸(weft yarn)はクロスマシン方向に伸びる。
【0007】
2つ目の基本的な織り技術では、布は、エンドレス織りプロセスを備えた連続ベルトの形で直接織られる。エンドレス織り工程では、経糸はクロスマシン方向に伸び、緯糸はマシン方向に伸びる。上記した両方の製織方法は、当技術分野で周知であり、本明細書にて、用語「エンドレスベルト(endless belt)」は、いずれかの方法によって製造されたベルトを意味する。しかし、織機の縁での布の形成と品質のために、エンドレス織りプロセスで可能な織りの複雑さは制限される。
【0008】
効果的なシートおよび繊維の支持は、特にウェットウェブが最初に形成される製紙機械の形成セクションにとって、製紙における重要な考慮事項である。また、成形布は、製紙機械上を高速で流れる際に良好な安定性を示す必要があり、好ましくは、製紙機械のプレスセクションに移送される際にウェブに保持される水の量を減らすために、透過性が高いものである。ティッシュペーパーと上質紙の両方の用途(すなわち、高品質の印刷、炭化、タバコ、電気コンデンサー等で使用する紙)では、製紙面は、非常に細かく織られた、または細いワイヤメッシュ構造で構成されている。
【0009】
典型的に、上質紙およびティッシュ用途で使用される細かく織られた布は、少なくともいくつかの比較的小さな直径のマシン方向またはクロスマシン方向の糸を含んでいる。一方で、残念ながらこのような糸はデリケートな傾向があり、布の表面寿命が短い。また、より小径の糸を使用すると、(特に、スキュー抵抗(skew resistance)、狭まり傾向(narrowing propensity)、剛性の点で)布の機械的な安定性に悪影響を与える可能性や、耐用年数と布の性能の両方に悪影響を与える可能性がある。
【0010】
細密な織物に関連したこのような問題に対処するために、紙成形を容易にするために紙成形表面に細メッシュ糸を使用し、機械接触側に粗メッシュ糸を使用して強度および耐久性を提供する多層形成布が開発されている。例えば、2セットのクロスマシン方向糸と織り合わされた1セットのマシン方向糸を使用して、細紙成形面およびより耐久性のある機械側面を有する布を形成する布が構築されている。これらの布は、一般に「二層」布と呼ばれる布のクラスの一部を形成する。同様に、2セットのマシン方向糸および2セットのクロスマシン方向糸を含む布が構築されており、これらは、細メッシュの紙側布層および別個のより粗い機械側布層を形成する。一般に「三層」布と呼ばれるクラスの布の一部であるこれらの布では、2つの布層は通常、別々のステッチング糸によって一緒に結合される。しかしながら、それらはまた、下および上クロスマシン方向およびマシン方向の糸のセットのうちの1つまたは複数からの糸を使用して一緒に結合され得る。二層と三層の布は、単層の布と比較して追加の糸のセットを含むために、これらの布は、通常、同等の単層の布よりも高い「キャリパー(caliper)」を有する(すなわち、それらはより厚い)。例示的な二層布は、ウォードに付与された米国特許第8,196,613号に示され、例示的な三層布は、ウォードに付与された米国特許第7,441,566号およびウォードに付与された米国特許第7,059,357号に示されている。
【発明の概要】
【0011】
一態様にて、本発明は成形布に関する。成形布は、一連の繰り返しユニットを含み、各繰り返しユニットは、結合経糸の第1のセットおよび結合経糸の第2のセットを含む結合経糸のセットであって、第1のセットからの結合経糸は、第2のセットからの結合経糸と対になっている、結合経糸のセットと、ばね経糸のセットであって、各ばね経糸は、結合経糸の第1の対と結合経糸の第2の対との間に配置される、ばね経糸のセットと、奇数および偶数の上緯糸を含む上緯糸のセットであって、上緯糸は、結合経糸およびばね経糸と織り合わされて、上布層を形成し、ばね経糸は上緯糸とのみ織り合わされ、結合経糸の第1の対は、少なくとも2本の上緯糸の分、次に少なくとも4本の上緯糸の分、交互に結合経糸の第2の対にオフセットされる、上緯糸のセットと、下緯糸のセットと、下経糸のセットであって、下経糸は下緯糸と織り合わされて下布層を形成する、下経糸のセットと、を含み、第1のセットおよび第2のセットからの結合経糸ならびにばね経糸は、上緯糸と織り合わされて、(a)結合経糸の第1のセットが、奇数の上緯糸の上のみを通過するように、(b)結合経糸の第2のセットが、偶数の上緯糸の上のみを通過するように、ただし、(c)対の第1の結合経糸が、対の第2の結合経糸から少なくとも3本の上緯糸の分、オフセットされ、結合経糸の対の経糸経路に重なりを形成するように、(d)各ばね経糸が偶数および奇数の上緯糸の上を通過するように、決められたゾーンで平織りパターンを相対的に形成し、第1のセットおよび第2のセットからの結合経糸ならびに下経糸は、下緯糸と織り合わされる。
【0012】
別の一態様にて、本発明は成形布に関する。成形布は、一連の繰り返しユニットを含み、各繰り返しユニットは、結合経糸の第1のセットおよび結合経糸の第2のセットを含む結合経糸のセットであって、第1のセットからの結合経糸は、第2のセットからの結合経糸と対になっている、結合経糸のセットと、ばね経糸のセットであって、各ばね経糸は、結合経糸の第1の対と結合経糸の第2の対との間にある、ばね経糸のセットと、上緯糸のセットであって、上緯糸は、結合経糸およびばね経糸と織り合わされて、上布層を形成し、ばね経糸は上緯糸とのみ織り合わされ、結合経糸の第1の対は、少なくとも2本の上緯糸の分、次に少なくとも4本の上緯糸の分、交互に結合経糸の第2の対にオフセットされる、上緯糸のセットと、下緯糸のセットと、下経糸のセットであって、下経糸は下緯糸と織り合わされて下布層を形成する、下経糸のセットと、を含み、第1のセットおよび第2のセットからの結合経糸ならびに下経糸は、(a)各下経糸が、下布層に沿って複数のナックルを形成するように、(b)第1のセットからの各結合経糸が、下緯糸の下で下経糸のそばで織り合わされて、二重ナックルを形成するように、(c)第2のセットからの各結合経糸は、下緯糸の下で下経糸のそばで織り合わされて、二重ナックルを形成するように、下緯糸と織り合わされる。
【0013】
更なる一態様にて、本発明は成形布に関する。成形布は、一連の繰り返しユニットを含み、各繰り返しユニットは、結合経糸の第1のセットおよび結合経糸の第2のセットを含む結合経糸のセットであって、第1のセットからの結合経糸は、第2のセットからの結合経糸と対になっている、結合経糸のセットと、ばね経糸のセットであって、各ばね経糸は、結合経糸の第1の対と結合経糸の第2の対との間にある、ばね経糸のセットと、上緯糸のセットであって、上緯糸は、結合経糸およびばね経糸と織り合わされて、上布層を形成し、ばね経糸は上緯糸とのみ織り合わされ、結合経糸の第1の対は、少なくとも4本の上緯糸の分、結合経糸の第2の対にオフセットされる、上緯糸のセットと、下緯糸のセットと、下経糸のセットであって、下経糸は下緯糸と織り合わされて下布層を形成する、下経糸のセットと、を含み、第1のセットおよび第2のセットからの結合経糸ならびに下経糸は、(a)各下経糸が、下布層に沿って複数のナックルを形成するように、(b)第1のセットからの各結合経糸が、下緯糸の下で下経糸のそばで織り合わされて、二重ナックルを形成するように、(c)第2のセットからの各結合経糸が、下緯糸の下で下経糸のそばで織り合わされて、二重ナックルを形成するように、下緯糸と織り合わされる。
【0014】
実施形態について記載した本発明の態様は、これに関連して具体的には記載されていないものの、異なる実施形態に組み込めることに留意されたい。すなわち、全ての実施形態および/または任意の実施形態における全ての特徴は、任意の方法および/または組合せによってさらに組合せることができる。出願人は、最初に出願された請求項を変更する権利、および/またはそれに応じて新しい請求項を出願する権利を留保し、当初はそのように特許請求されていなかったものの、他の請求項に依存する、および/または他の請求項の特徴を組み込むために、最初に出願された特許請求の範囲を修正できる権利を含む。本発明のこれらおよび他の目的および/または態様については、本明細書にて以下に詳細に説明する。本発明の更なる特徴、利点および詳細は、図や以下の好ましい実施形態の詳細な説明を読んだ当業者によって理解され、そのような説明は本発明の単なる例示である。
【0015】
特許または出願ファイルは、カラーで実行された少なくとも1つの図面を含む。この特許または特許出願の出版物とカラー図面のコピーは、要求と必要な料金の支払いに応じて当局から提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る製紙成形布の一実施形態について示す上面図である。
【
図2】
図1の布の繰り返しユニットについて示す底面図である。
【
図4A】
図1の布について、第1の結合経糸の例示的な織りパターンを示す断面図である。
【
図4B】
図1の布について、第2の結合経糸の例示的な織りパターンを示す断面図である。
【
図4C】
図1の布について、ばね経糸の例示的な織りパターンを示す断面図である。
【
図4D】
図1の布について、隣接する結合経糸の対の例示的な織りパターンを示す断面図である。
【
図5A】
図1の布について、上緯糸の例示的な織りパターンを示す断面図である。
【
図5B】
図1の布について、上緯糸の例示的な織りパターンを示す断面図である。
【
図5C】
図1の布について、上緯糸の例示的な織りパターンを示す断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態における
図1の布について、下布層に形成された二重ナックルの例示的なジグザグパターンを示す底面図である。
【
図7】本発明の一実施形態における
図1の布について、下緯糸の例示的な浮き(対称/非対称)を示す底面図である。
【
図8】
図1の布について、ペイズリーパターン形状の平織りゾーンと、上布層に形成された周囲のゾーンを示す上面図である。
【
図9】本発明に係る製紙成形布の異なる一実施形態について示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態について示す添付の図面を参照し、本発明について詳細に説明する。しかし、本発明は、多くの異なる形態で具体化でき、本明細書における実施形態に限定されることが解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が完璧かつ完全であり、本発明の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。
【0018】
先ず、本発明について、本発明の例示的な実施形態について示す添付の図面を参照して以下により詳細に説明する。
【0019】
本明細書にて、マシン方向(「MD」)およびクロスマシン方向(「CMD」)という用語は、それぞれ、製紙機械上の成形布の移動方向に整列した方向と、布の表面に平行で移動方向を横断する方向を指す。同様に、布の糸の垂直関係への方向の呼称(例えば、上方、下方、上部、下部、下位等)は、布の製紙面が布の上部であり、布の機械側の面は、布の下部であることを前提とする。
【0020】
別段の定義がない限り、本明細書における全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。また、一般的に使用される辞書で定義されるような用語は、関連技術の文脈での意味と一致する意味を持っていると解釈されるべきであり、また本明細書にて明示的に定義されていない限り、理想化されたまたは過度に形式化された意味では解釈されないものと理解されるべきである。
【0021】
本明細書における用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書にて、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈から明らかにそうでないことが示されない限り、複数形も含むことを意図している。本明細書にて、用語「含む」および/または「含んでいる」は、記載された特徴、整数、ステップ、操作、要素、および/または構成要素の存在を指定するが、1つまたは複数の他の機能、整数、ステップ、操作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではないことを理解されたい。本明細書にて、表現「および/または」は、関連するリストされたアイテムの1つまたは複数のありとあらゆる組合せを含む。
【0022】
また、「下」、「下方」、「より下」、「上」、「より上」、「上部」、「中」、「底部」等のような空間的に相対的な用語を使用でき、本明細書では、説明を容易にするために、図に示すように、ある要素または機能と別の要素または機能との関係を説明する。空間的に相対的な用語は、図に示す向きに加えて、使用中または操作中のデバイスの異なる向きを包含することを意図していることが理解されよう。例えば、図のデバイスが上下反転されている場合、他の要素または機能の「下」または「下位」として記述されている要素は、これら他の要素または機能の「上」に方向付けられる。したがって、「下」との例示的な用語は、上と下の両方の方向を包含できる。デバイスは、他の方法でも方向付けられ(90度回転されまたは他の方向に向けられ)、本明細書で使用される空間的に相対的な記述子が、それに応じて解釈され得る。
【0023】
なお、周知の機能または構造については、簡潔さおよび/または明確さのために詳細に説明されない場合がある。
【0024】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照してより詳細に説明する。図中、場合により2部構成の符号が使用されている。本明細書では、このような2部構成の符号を有する要素は、それらの完全な符号(例えば、経糸105-2)により個別に参照でき、または、それらの符号の一部分(例えば、経糸105)により集合的に参照できる。
【0025】
図を参照すると、
図1~9に、本発明の実施形態における多層の製紙成形布(広く100で示す。)について示す。
図1に、布100の紙側または「上」側100aを示す。
図2に、布100の機械側または「下」側100b(すなわち、製紙機械に面する側)の繰り返しユニットを示す。
図3に、布100の底面100bの複数の繰り返しユニットを示す。また、後述する表1は、
図3、6、7、および8の凡例について提供するものである。
【0026】
布100の紙(上)側は、結合経糸と、ばね経糸と、上緯糸で形成されている。上緯糸とばね経糸は、布100の紙側でのみ織り合わされている。布100の機械(下)側は、結合経糸と、下経糸と、下緯糸で形成されている。上緯糸と下経糸は、布100の機械側でのみ織り合わされている。結合経糸は、紙側と機械側との間で織り合わされ、布の2つの層を一緒に結合し、多層の製紙成形布100を形成している。
【0027】
本発明に係る製紙成形布100は、一連の繰り返しユニットを含むことができる。
図1~3に示すように、いくつかの実施形態にて、各繰り返しユニットは、結合経糸102のセットと、ばね経糸104のセットと、上緯糸106aのセットと、下緯糸106bのセットと、下経糸108のセットを含むことができる。
【0028】
いくつかの実施形態にて、結合経糸102のセットは、結合経糸102aの第1のセットと、結合経糸102bの第2のセットを含む。結合経糸102a、102bは、布100の紙側で並んで延び、布100の機械側で下経糸108(例えば、108-1から108-6)により分離されている。結合経糸102aの第1のセットは、結合経糸102bの第2のセットから経糸方向にオフセットされている。このオフセットは、結合経糸102a、102bの両方のセットの重なりを形成する。第1のセット102aからの結合経糸は、第2のセット102bからの結合経糸と対にされて、結合経糸対103を形成する。
【0029】
いくつかの実施形態にて、各結合経糸対103の結合経糸102a、102bは、上布層100aにおいて互いに隣接して延び、下布層100bにおいて1本の下経糸108によって分離できる。いくつかの実施形態では、結合経糸の第1の対103aは、結合経糸の第2の対103bから、少なくとも2本の上緯糸106a、次いで少なくとも4本の上緯糸106aの分、交互にオフセットされる。ばね経糸104は、結合経糸102a、102bの第1の対103aと、結合経糸102a、102bの第2の対103bとの間に配置される。上緯糸106a(例えば、106a1~12)は、結合経糸102a、102bおよびばね経糸104と織り合わされて、上布層100a(すなわち、布100の紙側)を形成する。繰り返しユニットあたりの上緯糸106aの数は変化し得る。いくつかの実施形態では、例えば、成形布100が3:2の緯糸比を有する場合、上布層100aは、繰り返しユニットあたり12本の上緯糸106a(すなわち、上緯糸106a1~12)を含むことができる。他の実施形態では、例えば、成形布100が2:1の緯糸比を有する場合、上布層100aは、繰り返しユニットあたり16本の上緯糸106a(すなわち、上緯糸106a1~16)を含むことができる。いくつかの実施形態では、結合経糸103aの第1の対は、少なくとも4本の上緯糸106aの分、結合経糸103bの第2の対にオフセットされる。下緯糸106b(例えば、106b1~8)は、下経糸108と織り合わされて、下布層100b(すなわち、布100の機械側)を形成する。
【0030】
いくつかの実施形態にて、第1のセットおよび第2のセットの結合経糸102a、102b、およびばね経糸104は、上緯糸106aと織り合わされて、布100の紙側の決められたゾーン(defined zones)において、平織りの「上1/下1」のパターンを相対的に形成する。いくつかの実施形態では、決められたゾーンの平織りは、(a)結合経糸102aの第1のセットが、「奇数の」上緯糸106a(例えば、106a1、106a3、106a5、106a7、106a9、106a11)の上のみを通過し、(b)結合経糸102bの第2のセットが、「偶数の」上緯糸106a(例えば、106a2、106a4、106a6、106a8、106a10、106a12)の上のみを通過し、(c)結合経糸102a、102bの対103の第1の結合経糸102aが、少なくとも3本の上緯糸106aの分、対103の第2の結合経糸102bからオフセットされるように形成される。このオフセットは、結合経糸102a、102bの対103の経糸経路に重なりを形成する。
【0031】
図4A~4Dに、本発明の実施形態における製紙成形布100の上および下布層100a、100bを形成するのに使用できる例示的な織りパターンの断面図を示す。
図4A~4Dに示すように、経糸(すなわち、結合経糸102a、102b、ばね経糸104、および下経糸108)は、特定の「上/下」の順序(sequence)で緯糸(106a、106b)と織り合わされるセグメントを含むことができる。
【0032】
例えば、
図4A、4Bおよび4Dに示すように、いくつかの実施形態にて、各下経糸108は、下経糸108が、下緯糸106bと下1/上1/下1の順序で織り合わされるセグメントを含むことができる。いくつかの実施形態では、第1のセットおよび第2のセット102a、102bからの各結合経糸は、各結合経糸102a、102bが、上緯糸106aと、上1/下1/上1/下5/上1/下1/上1/下1の順序で織り合わされる(
図4A)(例えば、緯糸比が3:2である布100において)セグメントを含むことができる。いくつかの実施形態では、第1のセットおよび第2のセット102a、102bからの各結合経糸は、各結合経糸102a、102bが、上緯糸106と、上1/下1/上1/下1/上1/下7/上1/下1/上1/下1の順序で織り合わされる(例えば、緯糸比が2:1の布100の場合)セグメントを含むことができる。
図4Cに示されるように、いくつかの実施形態では、各ばね経糸104は、ばね経糸104が、上緯糸106aと、上1/下1/上1/下4/上1/下1/上1/下2の順序で織り合わせる(例えば、緯糸比が3:2の布100の場合)セグメントを含むことができる。また、いくつかの実施形態では、各ばね経糸104は、ばね経糸104が、上緯糸106aと、上1/下2/上1/下1/上1/下1/上1/下4/上1/下1/上1/下1の順序で織り合わされる(例えば、緯糸比が2:1の布100の場合)セグメントを含むことができる。
【0033】
また、
図5A~5Cに示すように、いくつかの実施形態にて、上布層100aは、一連の緯糸経路の繰り返しユニット(a series of weft path repeat units)150を含むことができる。緯糸経路の繰り返しユニット150は、少なくとも1本の第1の緯糸150a(例えば、
図5A)と、少なくとも1本の第2の緯糸150b(例えば、
図5B)と、少なくとも1本の第3の緯糸150c(例えば、
図5C)を含むことができる。
図5A~5Cに、上布層100aに経糸105(すなわち、結合経糸102a、102bおよびばね経糸104を結合する)を有する上緯糸106aの例示的な織りパターンを示す。例えば、
図5Aに示されるように、いくつかの実施形態では、第1の緯糸経路150aは、上緯糸106aが、経糸105(例えば、105-1から105-12)と、上3/下1/上2/下1/上2/下1/上1/下1の順序で織り合わせるセグメントを含むことができる。
図5Bに示すように、いくつかの実施形態では、第2の緯糸経路150bは、上緯糸106aが、
経糸105と、上3/下1/上2/下1/上1/下1/上2/下1の順序で織り合わされているセグメントを含むことができる。また、
図5Cに示すように、いくつかの実施形態では、第3の緯糸経路150cは、上緯糸106aが、
経糸105と、上3/下1/上1/下1/上2/下1/上2/下1の順序で織り合わされているセグメントを含むことができる。
【0034】
ばね経糸104は、上緯糸106aとのみ織り合わされている。いくつかの実施形態にて、各ばね経糸104は、「偶数」および「奇数」の上緯糸106aの上を通過する。いくつかの実施形態では、各ばね経糸104は、ばね経糸104が、結合経糸102a、102bの第1の対103aに向かってスイングして、結合経糸102a、102bの第1の対103aを一緒に押すセグメントを含むことができる。各ばね経糸104は、ばね経糸104が、結合経糸102a、102bの第2の隣接する対103bに向かってスイングして、結合経糸102a、102bの第2の対103bを一緒に押すセグメントを更に含むことができる(例えば、
図1を参照されたい。)。このように、各結合経糸対103a、103bは、左側が1本のばね経糸104によって支持され、右側が異なるばね経糸104によって支持される。
【0035】
左側の1本のばね経糸104および右側の1本のばね経糸104と組合せた結合経糸対103a、103bは、「ペイズリーパターン(paisley pattern)」形状の平織りゾーン160を形成する(例えば、
図8を参照されたい。)。上布層100aに形成されたこれらのペイズリーパターン形状の平織りゾーン160について、以下でさらに詳細に説明する。
【0036】
いくつかの実施形態にて、本発明に係る成形布100は、3本の上緯糸106a対2本の下緯糸106bの緯糸比(すなわち、3:2)を有する(例えば、
図1~8を参照されたい。)。いくつかの実施形態では、本発明に係る成形布100は、2本の上緯糸106a対1本の下緯糸106bの緯糸比(すなわち、2:1)を有する(例えば、
図9を参照されたい。)。
【0037】
図3に示すように、いくつかの実施形態にて、第1のセットおよび第2のセット102a、102bからの結合経糸および下経糸108は、(a)各下経糸108が、下布層100bに沿って複数のナックル122を形成し、(b)第1のセット102aからの各結合経糸が、下緯糸106bの下で下経糸108のそばで織り合わされて、第1の二重ナックル122を形成し、(c)第2のセット102bからの各結合経糸が、第1の結合経糸102aのように隣接していない下緯糸106bの下で織り合わされるか、または下緯糸106bの下で下経糸108のそばで織り合わされて、第2の二重ナックル122を形成するように、下緯糸106bと織り合わされる(例えば、
図6~7も参照されたい。)。本明細書にて、「二重ナックル(double knuckle)」は、2つの隣接する経糸(例えば、結合経糸102a、102bおよび下経糸108)が、同じ下緯糸106bの下で並んで結合する場合を指す。図中では、二重ナックル122またはその位置が白い楕円形で強調して表示されている(例えば、表1も参照されたい。)。
【0038】
いくつかの実施形態にて、少なくとも1本の下緯糸106bは、下経糸108と第1のセット102aからの結合経糸とによって形成された第1の二重ナックル122、同じ下経糸108と第2のセット102bからの結合とによって形成された第2の二重ナックル122を分離する(例えば、緯糸比が3:2の布100の場合)。また、少なくとも1本の下緯糸106bの下の下経糸108のこの短い浮きおよび二重ナックル122の配置は、下緯糸106bの固定という追加の利点を提供でき、これによって、下緯糸106bの動きを軽減または排除するのを助ける。いくつかの実施形態では、これらの2つの二重ナックルは、2本の下緯糸106bによって分離できる。
【0039】
また、
図6を参照すると、いくつかの実施形態にて、第1の二重ナックル122b
1の一部を形成する下経糸108は、第3の二重ナックル122a
3の一部を形成し、第2の二重ナックル122b
2の一部を形成する隣接する下経糸108もまた、第4の二重ナックル122a
4の一部を形成する。マシン方向への二重ナックル122のこの配置(すなわち、互いの後ろに2つの二重ナックル122があり、間に少なくとも1本の下緯糸がある配置)は、4つの二重ナックル122のこの領域(すなわち、
図6に示すような箱入り領域)における曲げ剛性の追加の安定性を提供できる。
【0040】
図6に示すように、いくつかの実施形態にて、下布層100bに沿って形成された二重ナックル122の配置は、一種のジグザグパターンに従う(follow)ことができる。いくつかの実施形態では、ジグザグパターンは、第1の対角線に形成された二重ナックルの第1のセット122a
1~4と、第2の対角線に形成された二重ナックルの第2のセット122b
1~4を含み得、二重ナックルの第2の対角線122bは、二重ナックル122aの第1の対角線からオフセットされている。布100の機械側にジグザグの対角線パターンで二重ナックル122a、122bを配置することにより、本発明に係る布100に対角線方向(すなわち、クロスマシン方向)の安定性を向上できる。さらに、この二重ナックル122a、122bの配置は、布100が製紙機械上をドリフトすることを防ぐのに役立つことができる。
【0041】
また、
図7を参照すると、いくつかの実施形態にて、下緯糸106b-1は、バランスのとれた延在方向のための追加の支持を提供できる。1本の下緯糸106bのみの下での下経糸108の短い浮き(例えば、
図3も参照されたい。)は、下緯糸106b(106b-1および106b-2)を外側に押し出し、下緯糸浮きの非対称形状を形成する(creating)。下緯糸浮きのこの非対称形状は、下糸浮きの片側に移動して、進行側により広い接触領域を形成(create)できる。この下糸浮きの摩耗楕円も非対称となる(
図7中では下糸浮きに三角形でマークされている。)。
【0042】
二重ナックル対角線(double knuckles diagonals)のオフセットの配置により、2つの異なる非対称下緯糸浮き(asymmetrical bottom weft yarn floats)が、二重ナックル対角線の終わり/始まりに隣接して、異なる方向に交互に配置され、それらの非対称性のバランスをとる。下糸浮き106b-1の非対称性は、下緯糸浮きの反対の非対称形状を有する下緯糸106b-2によってバランスがとられるであろう。対角線の中央の二重ナックルの下で織られている他の下緯糸106b-3および106b-4は、経糸とある方法で結合して、対称下緯糸浮き(symmetrical bottom weft yarn float)を形成する(
図7中では下糸浮きに長方形でマークされている。)。他の実施形態では、下緯糸106bは、非対称下緯糸浮きのみを有し、連続して交互に配置できる(緯糸比2:1)。
【0043】
例えば、
図7に示すように、いくつかの実施形態にて、第1の二重ナックル122b
1および122a
1の右側にある下緯糸106bの浮きの一部は、第1の二重ナックル122b
1および122a
1の左側にある同じ下緯糸106bの部分よりも、大きな接触領域を有する。いくつかの実施形態では、第4の二重ナックル122a
4および122b
4の左側の下緯糸106bの部分は、第4の二重ナックル122a
4および122b
4の右側の同じ下緯糸106bの部分よりも、大きな接触領域を有する。いくつかの実施形態では、対角線の第2の二重ナックルおよび第3の二重ナックル122a
2、122a
3、122b
2、122b
3の左右にある下緯糸106bの浮きの部分は、等しい接触領域を有する。このように、
図7に示すように、いくつかの実施形態では、下緯糸106bは、対称浮き(すなわち、「長方形」)を有する2本の下緯糸106bと、それに反対方向に非対称浮き(すなわち、「三角形」)を有する2本の下緯糸106bとが続くように配置される。いくつかの実施形態では、非対称下緯糸浮きの方向を交互に変え、対称下緯糸浮きと混合することは、ドリフトの問題に対処するのに役立つ。
【0044】
図8を参照し、
図1に示すような紙側の複数の繰り返しユニットを示して、異なる緯糸経路の配置の効果について示す(
図5A~C)。いくつかの実施形態では、緯糸経路の繰り返しユニット150は、以下のように配置された(arranged as follows)緯糸経路150a~c(
図5A~C)のセグメントを含むことができる。すなわち、第1の緯糸経路150a、第2の緯糸経路150b、第1の緯糸経路150a、第3の緯糸経路150c、第2の緯糸経路150b、および第3の緯糸経路150cである。また、いくつかの実施形態では、緯糸経路の繰り返しユニット150は、以下のように配置された(arranged as follows)緯糸経路150a~cのセグメントを含むことができる。すなわち、第1の緯糸経路150a、第3の緯糸経路150c、第2の緯糸経路105b、および第2の緯糸経路150bである。緯糸経路の繰り返しユニット150は、布100の緯糸比に応じて変化できる。緯糸経路の繰り返しユニット150は、上布層100a上に特別な構造を形成できる。
【0045】
このような構造の一部は、緯糸経路150a~cで発生する2つの結合紙側経糸102a、102b上の上緯糸106a浮き長さの配置によって形成されている。2本の紙側経糸上の浮きの配置は、ペイズリーパターンの形をした平織りゾーンの間に配置される。この配置により、横方向の安定性が向上し、クロスマシン方向のスキューが補正される。いくつかの実施形態では、ペイズリーパターンのゾーン間の領域は、下布層100b上の二重ナックル122の第1および第2の対角線よりも小さく、第1および第2の対角線に対して反対側にある。いくつかの実施形態では、緯糸経路の繰り返しユニット150は、目に見える(visible)対角線のない上布層100aを形成する。
【0046】
このような構造の別の部分は、第1、第2、および第3の緯糸経路150a~cのセグメントである。これは、第1と第3の二重ナックル(例えば、122b1と122a3)の間、それぞれ第2と第4の二重ナックル(例えば、122b2と122a4)の間、ならびに下布層100b上に形成された二重ナックル122の対角線のドリフトにおいて整列した上布層100aの3本の経糸を通過する。3本(またはそれを超える)の経糸上のより長い上緯糸106a浮きのこのような整列は、従来技術における布に見られる、脱水障害およびマーキングを紙にもたらす場合が多い材料の圧縮を打ち消すために役立つ。
【0047】
いくつかの実施形態にて、1本の経糸を通過する第1、第2、および第3の緯糸経路150a~cのセグメントは、上布層100aにペイズリーパターン形状の平織りゾーン160の中心を形成する。連続する緯糸経路の繰り返しユニット150は、上布層100aに
鏡面対称のペイズリーパターン形状の平織りゾーン160を形成する。
図8に示すように、上布層100aに形成されたペイズリーパターン形状の平織りゾーン160は、下布層100b上の二重ナックル122の対角線(ジグザグパターン)の間に整列される。
【0048】
これらのペイズリーパターン形状のゾーン160における布のステッチの配置、および上布層100aにおけるメッシュサイズの縮小は、繊維支持点上での最適化を可能にする。また、メッシュは、製紙機械の短繊維の支持ゾーンを提供する。さらに、メッシュのサイズを小さくすると、排水路が小さくなり、製紙プロセス中の水性媒体の流量を増やすのに役立つ。本発明に係る成形布100は、布の紙側でより閉じられ、同時に非常に高い流速を有することができる。
【0049】
上記のように、本発明に係る成形布100は、異なる緯糸比を含むことができる。
図9に、2:1の緯糸比(すなわち、2本の上緯糸106a’対1本の下緯糸106b’)を有する本発明の一実施形態における成形布100’を示す。他の緯糸比は、本発明に係る成形布100に組み込むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、成形布100は、1:1、3:1、または5:2の緯糸比を有し得る。
【0050】
以上の記載は、本発明の例示であって限定するものとして解釈されるべきではない。本発明の例示的な実施形態を説明したが、当業者は、本発明の新規の教示および利点から実質的に逸脱することなく、例示的な実施形態において多くの修正が可能であることを容易に理解するであろう。したがって、このような全ての修正は、特許請求の範囲に記載のように、本発明の範囲内であることが意図されている。本発明は、以下の特許請求の範囲によって定義され、請求項と同等のものがそこに含まれる。
【0051】