(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】ポリイソシアネート組成物、重合性組成物、樹脂、成形体、光学素子およびレンズ
(51)【国際特許分類】
C08G 18/79 20060101AFI20250213BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20250213BHJP
C08G 18/75 20060101ALI20250213BHJP
C08G 18/38 20060101ALI20250213BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
C08G18/79
C08G18/76 014
C08G18/75 080
C08G18/38 076
G02B1/04
(21)【出願番号】P 2023530099
(86)(22)【出願日】2022-06-22
(86)【国際出願番号】 JP2022024940
(87)【国際公開番号】W WO2022270550
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2021103651
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高口 勝之
(72)【発明者】
【氏名】川口 勝
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/070539(WO,A1)
【文献】特開2017-211547(JP,A)
【文献】国際公開第2017/179575(WO,A1)
【文献】特開2017-214488(JP,A)
【文献】特開2020-139085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
G02B 1/00- 1/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学材料の製造に用いられるポリイソシアネート組成物であって、
イソシアナトメチル基を有するポリイソシアネートと、
1-ナイロン型
重合体と
を含有し、
前記ポリイソシアネートは、キシリレンジイソシアネート、または、ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンであり、
前記ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基の質量に対して、前記ポリイソシアネート組成物中のアミド結合の質量の割合は、8000ppm以下である、ポリイソシアネート組成物。
【請求項2】
光学材料の製造に用いられるポリイソシアネート組成物であって、
イソシアナトメチル基を有するポリイソシアネートと、
赤外吸収スペクトルにおいて、1700cm
-1以上1710cm
-1以下の範囲にピークトップを有する吸収ピークを有する特定の化合物と
を含有し、
前記ポリイソシアネートは、キシリレンジイソシアネート、または、ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンであり、
前記ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基の質量に対して、前記吸収ピークの前記ピークトップにおける吸光度から計算される前記ポリイソシアネート組成物中のアミド結合の質量の割合は、8000ppm以下である、ポリイソシアネート組成物。
【請求項3】
前記ポリイソシアネート組成物中の前記アミド結合の質量の割合は、50ppm以上である、請求項1または2に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項4】
請求項1または2に記載の
ポリイソシアネート組成物と、
活性水素基含有成分と
を含有する、重合性組成物。
【請求項5】
前記活性水
素基含有成分が、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、3-メルカプトメチル-1,5-ジメルカプト-2,4-ジチアペンタン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、および、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)からなる群から選択される少なくとも1種のポリチオールを含む、請求
項4に記載の重合性組成物。
【請求項6】
請求
項4に記載の重合性組成物の硬化物である、樹脂。
【請求項7】
請求
項6に記載の樹脂からなる、成形体。
【請求項8】
請求
項7に記載の成形体である、光学素子。
【請求項9】
請求
項8に記載の光学素子である、レンズ。
【請求項10】
光学材料の製造のための請求項1または2に記載のポリイソシアネート組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソシアネート組成物、重合性組成物、樹脂、成形体、光学素子およびレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種産業製品に用いられる樹脂の原料として、ポリイソシアネート組成物が知られている。
【0003】
ポリイソシアネート組成物として、例えば、キシリレンジイソシアネートと、ジクロロメチルベンジルイソシアネートとを含み、ジクロロメチルベンジルイソシアネートの含有割合が、0.6ppm以上60ppm以下である、キシリレンジイソシアネート組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のポリイソシアネート組成物から製造される樹脂について、目的および用途に応じて、透明性の向上が要求される場合がある。
【0006】
本発明は、樹脂の透明性の向上を図ることができるポリイソシアネート組成物、重合性組成物、樹脂、成形体、光学素子およびレンズを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、ポリイソシアネート組成物であって、イソシアナトメチル基を有するポリイソシアネートと、1-ナイロン型重合体とを含有し、前記ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基の質量に対して、前記ポリイソシアネート組成物中のアミド結合の質量の割合が、8000ppm以下である、ポリイソシアネート組成物を含む。
【0008】
本発明[2]は、ポリイソシアネート組成物であって、イソシアナトメチル基を有するポリイソシアネートと、赤外吸収スペクトルにおいて、1700cm-1以上1710cm-1以下の範囲にピークトップを有する吸収ピークを有する特定の化合物とを含有し、前記ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基の質量に対して、前記吸収ピークの前記ピークトップにおける吸光度から計算される前記ポリイソシアネート組成物中のアミド結合の質量の割合が、8000ppm以下である、ポリイソシアネート組成物を含む。
【0009】
本発明[3]は、前記割合が、50ppm以上である、上記[1]または[2]のポリイソシアネート組成物を含む。
【0010】
本発明[4]は、前記ポリイソシアネートが、キシリレンジイソシアネート、または、ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンである、上記[1]~[3]のいずれか1つのポリイソシアネート組成物を含む。
本発明[5]は、上記[1]から[4]のいずれか1つのポリイソシアネート組成物と、活性水素基含有成分とを含有する、重合性組成物を含む。
【0011】
本発明[6]は、前記活性水素基含有成分が、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、3-メルカプトメチル-1,5-ジメルカプト-2,4-ジチアペンタン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、および、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)からなる群から選択される少なくとも1種のポリチオールを含む、上記[5]に記載の重合性組成物を含む。
【0012】
本発明[7]は、上記[5]または[6]に記載の重合性組成物の硬化物である、樹脂を含む。
【0013】
本発明[8]は、上記[7]に記載の樹脂からなる、成形体を含む。
【0014】
本発明[9]は、上記[8]に記載の成形体である、光学素子を含む。
【0015】
本発明[10]は、上記[9]に記載の光学素子である、レンズを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明のポリイソシアネート組成物は、特定の化合物を特定の割合で含有する。そのため、上記したポリイソシアネート組成物から製造される樹脂は、透明性に優れる。
【0017】
本発明の重合性組成物は、上記したポリイソシアネート組成物を含む。そのため、上記した重合性組成物から製造される樹脂は、透明性に優れる。
【0018】
本発明の樹脂は、上記した重合性組成物の硬化物である。そのため、樹脂は、透明性に優れる。
【0019】
本発明の成形体は、上記した樹脂からなる。そのため、成形体は、透明性に優れる。
【0020】
本発明の光学素子は、上記した成形体である。そのため、光学素子は、透明性に優れる。
【0021】
本発明のレンズは、上記した光学素子である。そのため、レンズは、透明性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
1.ポリイソシアネート組成物
ポリイソシアネート組成物は、主成分として、イソシアナトメチル基を有するポリイソシアネートを含有する。
イソシアナトメチル基を有するポリイソシアネートとして、例えば、下記化学式(1)で示されるジイソシアネートが挙げられる。
化学式(1):
【化1】
上記化学式(1)において、nは、0または1である。
上記化学式(1)において、Rは、直鎖または分岐の脂肪族基、環式脂肪族基、芳香族基を示す。
直鎖または分岐の脂肪族基として、例えば、直鎖アルキレン基が挙げられる。直鎖アルキレン基として、例えば、プロピレン基、ブチレン基が挙げられる。
上記化学式(1)において、Rが直鎖または分岐の脂肪族基である場合、ポリイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネートである。
脂肪族ジイソシアネートとして、例えば、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、および、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が挙げられる。
ペンタメチレンジイソシアネートは、上記化学式(1)において、nが1であり、Rがプロピレン基であるポリイソシアネートである。ヘキサメチレンジイソシアネートは、上記化学式(1)において、nが1であり、Rがブチレン基であるポリイソシアネートである。
環式脂肪族基として、例えば、シクロヘキシレン基、トリメチルシクロヘキシレン基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチレン基が挙げられる。
上記化学式(1)において、Rが環式脂肪族基である場合、ポリイソシアネートは、脂環族ジイソシアネートである。
脂環族ジイソシアネートとして、例えば、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(BIC)、イソフォロンジイソシアネート(IPDI、別名:3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート)、および、ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン(BIBH)が挙げられる。
ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、上記化学式(1)において、nが1であり、Rがシクロヘキシレン基であるポリイソシアネートである。イソフォロンジイソシアネートは、上記化学式(1)において、nが0であり、Rがトリメチルシクロヘキシレン基であるポリイソシアネートである。ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタンは、上記化学式(1)において、nが1であり、Rがビシクロ[2.2.1]ヘプチレン基であるポリイソシアネートである。
芳香族基として、例えば、フェニレン基が挙げられる。
上記化学式(1)において、Rが芳香族基である場合、ポリイソシアネートは、芳香脂肪族ジイソシアネートである。
芳香脂肪族ジイソシアネートとして、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)が挙げられる。
キシリレンジイソシアネートは、上記化学式(1)において、nが1であり、Rがフェニレン基であるポリイソシアネートである。
ポリイソシアネートとして、好ましくは、脂環族ジイソシアネート、および、芳香脂肪族ジイソシアネートが挙げられ、より好ましくは、BIBH、および、XDIが挙げられる。
【0023】
BIBHとして、例えば、2,5-BIBH、および、2,6-BIBHが挙げられる。主成分としてBIBHを含有するポリイソシアネート組成物を、BIBH組成物と定義する。
このようなBIBHは、BIBH組成物に1種または2種類以上含有されてもよい。 XDIとして、例えば、1,2-XDI(o-XDI)、1,3-XDI(m-XDI)、および、1,4-XDI(p-XDI)が挙げられる。主成分としてXDIを含有するポリイソシアネート組成物を、XDI組成物と定義する。
【0024】
このようなXDIは、XDI組成物に1種または2種類以上含有されてもよい。
【0025】
XDIとして、好ましくは、1,3-XDI(m-XDI)が挙げられる。
【0026】
ポリイソシアネートの含有割合(純度)は、ポリイソシアネート組成物の総質量に対して、例えば、98.00質量%以上、好ましくは、99.00質量%以上、より好ましくは、99.30質量%以上、さらに好ましくは、99.60質量%以上、また、例えば、99.95質量%以下である。つまり、ポリイソシアネート組成物は、ほぼ、ポリイソシアネートのみからなる。ポリイソシアネートの含有割合は、国際公開第2018/190290号の[0377]段落に記載の方法により測定できる。
【0027】
ポリイソシアネート組成物は、副成分として、特定の化合物を含有する。
【0028】
特定の化合物は、赤外吸収スペクトルにおいて、アミド結合中のカルボニル基に起因する特定の吸収ピークを有する。特定の吸収ピークは、1700cm-1以上1710cm-1以下の範囲にピークトップを有する。
【0029】
なお、ポリイソシアネート組成物は、特定の化合物以外の他の副成分を含有してもよい。
【0030】
ポリイソシアネート組成物がXDI組成物である場合、他の副成分として、例えば、国際公開第2018/190290号の段落[0028]~[0030]に記載されるジクロロメチルベンジルジイソシアネート(DCI)、および、国際公開第2018/190290号の段落[0039]~[0041]に記載されるモノクロロメチルベンジルイソシアネート(CBI)が挙げられる。
【0031】
DCIの含有割合は、XDI組成物の総質量に対して、例えば、0.1ppm以上、好ましくは、0.3ppm以上、より好ましくは、0.6ppm以上、より好ましくは、1.0ppm以上であり、例えば、60ppm以下、好ましくは、50ppm以下、より好ましくは、30ppm以下、より好ましくは、20ppm以下である。
【0032】
DCIの含有割合が上記範囲内であれば、XDI組成物から製造される樹脂の黄変および/または白濁を抑制できる。
【0033】
CBIの含有割合は、XDI組成物の総質量に対して、例えば、0.2ppm以上、好ましくは、6ppm以上、より好ましくは、100ppm以上、例えば、5000ppm以下、好ましくは、4000ppm以下、より好ましくは、3000ppm以下、とりわけ好ましくは、1600ppm以下、特に好ましくは、1000ppm以下である。
【0034】
また、CBIの含有割合は、DCIの含有割合に対して、例えば、2倍以上、好ましくは、10倍以上、より好ましくは、20倍以上、例えば、800倍以下、好ましくは、300倍以下、より好ましくは、50倍以下である。
【0035】
CBIの含有割合が上記の範囲であれば、XDI組成物から製造される樹脂の黄変を確実に抑制できる。とりわけ、CBIの含有割合が上記上限以下であれば、XDI組成物から製造される樹脂の黄変を確実に抑制できるとともに、樹脂の製造時のウレタン化反応を円滑に進行させることができ、樹脂の機械特性の向上を確実に図ることができる。
【0036】
DCIの含有割合、および、CBIの含有割合は、国際公開第2018/190290号の実施例に記載の方法により測定できる。
【0037】
特定の化合物として、例えば、1-ナイロン型重合体が挙げられる。
【0038】
「1-ナイロン型重合体」は、「Journal of the American Chemical Society Vol.82(1960)」の866ページに掲載されている「The Homopolymerization of Monoisocyanates」に記載されているように、イソシアネート単量体同士が重合した重合体であって、イソシアネート基同士の反応に由来するアミド結合を有する。1-ナイロン型重合体は、アミド結合が連続する直鎖状の主鎖を有する。1-ナイロン型重合体は、イソシアヌレートを含まない。
【0039】
1-ナイロン型重合体として、例えば、ポリイソシアネートの単独重合体が挙げられる。ポリイソシアネートの単独重合体として、下記化学式(2)に示す重合体、および、下記化学式(3)に示す重合体が挙げられる。
【0040】
化学式(2):
【0041】
【0042】
上記化学式(2)において、mは、2以上の整数である。上記化学式(2)において、Rおよびnは、上記化学式(1)のRおよびnと同じである。
【0043】
化学式(3):
【0044】
【0045】
上記化学式(3)において、mおよびpは、2以上の整数である。pは、mと異なる数字であってもよい。上記化学式(3)において、Rおよびnは、上記化学式(1)のRおよびnと同じである。
【0046】
また、ポリイソシアネート組成物がXDI組成物であり、XDI組成物が後述する製造方法によって製造され、副成分としてCBIおよびDCIを含有する場合、1-ナイロン型重合体は、上記したXDIの単独重合体であってもよく、XDIに由来する構造単位(下記化学式(4)参照)、CBIに由来する構造単位(下記化学式(5)参照)、および、DCIに由来する構造単位(下記化学式(6)参照)のうちの少なくとも2種を有する共重合体であってもよい。
【0047】
化学式(4):
【0048】
【0049】
化学式(5):
【0050】
【0051】
化学式(6):
【0052】
【0053】
ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基の質量(A)に対する、XDI組成物中のアミド結合の質量(B)の割合(B/A)は、例えば、50ppm以上、好ましくは、100ppm以上、より好ましくは、150ppm以上、より好ましくは、200ppm以上、より好ましくは、500ppm以上、より好ましくは、1000ppm以上、より好ましくは、1500ppm以上である。
【0054】
具体的には、割合(B/A)は、後述する実施例にも記載するように、次の式で表される。
【0055】
式:割合(B/A)=質量(B)/質量(A)×1000000
質量(A)は、ポリイソシアネート組成物の全部がポリイソシアネートであると仮定した場合の、ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基の質量である。質量(A)は、サンプリングしたポリイソシアネートの質量と、ポリイソシアネートの分子量と、イソシアネート基の分子量とから計算される。質量(A)は、後述する実施例に記載の計算方法により、計算される。
【0056】
質量(B)は、上記した特定の吸収ピークのピークトップにおける吸光度から計算される。質量(B)は、後述する実施例に記載の計算方法により、計算される。後述する実施例において、質量(B)は、吸収ピークのピークトップにおける吸光度に吸光係数(トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレートの吸光係数)を乗じることにより、計算される。つまり、質量(B)は、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレートの吸光係数による換算値である。
【0057】
割合(B/A)が上記下限値以上であると、後述する硬化物のヘイズ値を低下させることができる。そのため、硬化物の透明性の向上を図ることができる。
【0058】
ヘイズ値は、後述する実施例に記載の方法により、測定できる。
【0059】
割合(B/A)は、8000ppm以下、好ましくは、7500ppm以下、より好ましくは、5000ppm以下、より好ましくは、4000ppm以下である。
【0060】
割合(B/A)が上記上限値以下であると、硬化物のヘイズ値、および、硬化物の失透度を低下させることができる。そのため、硬化物の透明性の向上を図ることができる。
【0061】
失透度は、後述する実施例に記載の方法により、測定できる。
【0062】
2.ポリイソシアネート組成物の製造方法
次に、ポリイソシアネート組成物の製造方法について説明する。
【0063】
ポリイソシアネート組成物の製造方法は、反応マス(精製前組成物)を製造する工程と、反応マスを精製する工程と、必要により、空気を混合して、ポリイソシアネート、および、特定の化合物の含有割合を、上記の範囲となるように、調節する工程とを含む。
【0064】
ポリイソシアネート組成物がXDI組成物である場合、反応マスは、例えば、国際公開第2018/190290号の[0054]~[0110]段落に記載の製造方法によって、製造される。詳しくは、反応マスを製造するには、例えば、キシリレンジアミンと塩化水素とを混合して、キシリレンジアミン塩酸塩を造塩した後、塩酸塩と塩化カルボニル(ホスゲン)とを反応させる(アミン塩酸塩のホスゲン化法)。
【0065】
以下において、キシリレンジアミンをXDAとする。XDAとして、例えば、1,2-XDA(o-XDA)、1,3-XDA(m-XDA)、および、1,4-XDA(p-XDA)が挙げられ、好ましくは、1,3-XDA(m-XDA)が挙げられる。
【0066】
XDA塩酸塩を造塩する造塩工程では、例えば、XDAと塩化水素とを、不活性溶媒存在下で混合して、XDA塩酸塩を製造(造塩)する。
【0067】
不活性溶媒として、例えば、国際公開第2018/190290号の[0059]段落に記載の不活性溶媒が挙げられる。不活性溶媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。不活性溶媒のなかでは、好ましくは、ハロゲン化芳香族炭化水素類が挙げられ、より好ましくは、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼンが挙げられる。
【0068】
そして、XDAが不活性溶媒に溶解されたアミン溶液に、塩化水素ガスを供給する。その後、塩化水素ガスおよびアミン溶液を撹拌混合する。
【0069】
XDAおよび不活性溶媒の質量の総和に対する、XDAの質量割合(全アミン濃度)は、例えば、3質量%以上、好ましくは、5質量%以上、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下、より好ましくは、15質量%以下である。
【0070】
塩化水素の供給割合は、XDA1モルに対して、例えば、2モル以上、また、例えば、10モル以下、好ましくは、6モル以下、より好ましくは、4モル以下である。
【0071】
造塩工程における造塩温度は、例えば、30℃以上、好ましくは、50℃以上、また、例えば、160℃以下、好ましくは、150℃以下である。造塩工程における造塩圧力(ゲージ圧)は、例えば、大気圧(0MPaG)以上、好ましくは、0.01MPaG以上、また、例えば、1.0MPaG以下、好ましくは、0.5MPaG以下である。
【0072】
これにより、XDAと塩化水素とからXDA塩酸塩が生成し(塩酸塩化反応)、XDA塩酸塩を含むスラリーが製造される。
【0073】
次いで、XDA塩酸塩を含むスラリーに塩化カルボニルを供給して、XDA塩酸塩と塩化カルボニルとを反応させる(イソシアネート化反応、ホスゲン化)。
【0074】
塩化カルボニルの供給割合は、XDA塩酸塩1モルに対して、例えば、4モル以上、好ましくは、5モル以上、より好ましくは、6モル以上、また、例えば、50モル以下、好ましくは、40モル以下、より好ましくは、30モル以下である。
【0075】
イソシアネート化工程の反応時間は、例えば、4時間以上、好ましくは、6時間以上、また、例えば、25時間以下、好ましくは、20時間以下、より好ましくは、15時間以下である。
【0076】
イソシアネート化工程における反応温度は、例えば、90℃以上、好ましくは、100℃以上、より好ましくは、110℃以上、また、例えば、190℃以下、好ましくは、180℃以下、より好ましくは、160℃以下である。
【0077】
イソシアネート化工程における反応圧力(ゲージ圧)としては、例えば、大気圧(0MPaG)を超過し、好ましくは、0.0005MPaG以上、より好ましくは、0.001MPaG以上、さらに好ましくは、0.003MPaG以上、とりわけ好ましくは、0.01MPaG(10kPaG)以上、特に好ましくは、0.02MPaG(20kPaG)以上、最も好ましくは、0.03MPaG(30kPaG)以上、また、例えば、0.6MPaG以下、好ましくは、0.4MPaG以下、より好ましくは、0.2MPaG以下である。
【0078】
イソシアネート化工程は、好ましくは、連続式により実施される。つまり、撹拌槽において生成したスラリー(XDA塩酸塩)を、撹拌槽から撹拌槽とは別の反応槽に連続的に送液して、反応槽においてXDA塩酸塩と塩化カルボニルとを反応させながら、反応槽から反応液(反応マス)を連続的に取り出す。
【0079】
これによって、XDA塩酸塩と塩化カルボニルとが反応して、主成分としてXDIが生成する。
【0080】
次いで、必要により、反応液(反応混合物)に対して、脱ガス工程、脱溶媒工程および脱タール工程を実施する。脱ガス工程では、反応液(反応混合物)から、余剰な塩化カルボニルや副生する塩化水素などのガスを、公知の脱ガス塔により除去する。脱溶媒工程では、反応液から公知の蒸留塔により不活性溶媒を留去する。脱タール工程では、反応液から公知の脱タール器によりタール成分を除去する。
【0081】
以上によって、XDIを含有する反応マスが製造される。
【0082】
反応マスにおけるXDIの含有割合は、例えば、80.0質量%以上、好ましくは、90.0質量%以上、より好ましくは、95.0質量%以上、また、例えば、99.0質量%以下、好ましくは、98.5質量%以下、より好ましくは、98.0質量%以下である。
なお、ポリイソシアネート組成物がBIBH組成物である場合も、XDI組成物と同様に、塩酸塩法により製造できる。具体的には、ポリイソシアネート組成物がBIBH組成物である場合、反応マスは、例えば、国際公開第2007/010996号の[0072]段落に記載の製造方法によって、製造される。
【0083】
次いで、反応マスを精製する。
【0084】
反応マスの精製方法として、例えば、蒸留が挙げられる。反応マスを蒸留により精製するには、例えば、反応マスから低沸物(低沸点成分)を蒸留により留去した後、脱低沸後の反応マスである脱低沸マスを精留する。
【0085】
脱低沸工程では、例えば、反応マスを脱低沸塔により蒸留して、低沸物を留去する。
【0086】
脱低沸塔として、例えば、棚段塔および充填塔が挙げられ、好ましくは、充填塔が挙げられる。脱低沸塔の理論段数は、例えば、3段以上、好ましくは、5段以上、より好ましくは、7段以上、また、例えば、40段以下、好ましくは、20段以下、より好ましくは、15段以下である。
【0087】
脱低沸塔の塔底温度は、例えば、130℃以上、好ましくは、140℃以上、より好ましくは、150℃以上、また、例えば、200℃以下、好ましくは、190℃以下、より好ましくは、180℃以下である。
【0088】
脱低沸塔の塔頂温度は、例えば、90℃以上、好ましくは、100℃以上、より好ましくは、110℃以上、また、例えば、160℃以下、好ましくは、150℃以下、より好ましくは、140℃以下である。
【0089】
脱低沸塔の塔頂圧力は、例えば、0.05kPa以上、好ましくは、0.1kPa以上、より好ましくは、0.2kPa以上、また、例えば、3.0kPa以下、好ましくは、2.0kPa以下、より好ましくは、1.0kPa以下である。
【0090】
脱低沸塔の塔頂還流比は、例えば、1以上、好ましくは、5以上、より好ましくは、10以上、また、例えば、80以下、好ましくは、60以下、より好ましくは、50以下である。
【0091】
脱低沸塔の滞留時間は、例えば、0.1時間以上、好ましくは、0.2時間以上、より好ましくは、0.3時間以上、また、例えば、10時間以下、好ましくは、5時間以下、より好ましくは、3時間以下である。
【0092】
これより、低沸物を留去させて、脱低沸マスを缶出液として得る。
【0093】
次いで、精留工程では、例えば、脱低沸マスを精留塔により蒸留して留分を取り出す。
【0094】
精留塔として、例えば、棚段塔および充填塔が挙げられ、好ましくは、充填塔が挙げられる。精留塔の理論段数は、例えば、1段以上、また、例えば、20段以下、好ましくは、10段以下、より好ましくは、5段以下である。
【0095】
精留塔の塔底温度は、例えば、120℃以上、好ましくは、130℃以上、より好ましくは、140℃以上、また、例えば、190℃以下、好ましくは、180℃以下、より好ましくは、170℃以下である。
【0096】
精留塔の塔頂温度は、例えば、90℃以上、好ましくは、110℃以上、より好ましくは、130℃以上、また、例えば、180℃以下、好ましくは、170℃以下、より好ましくは、160℃以下である。
【0097】
精留塔の塔頂圧力は、例えば、0.05kPa以上、好ましくは、0.1kPa以上、より好ましくは、0.2kPa以上、また、例えば、3.0kPa以下、好ましくは、2.0kPa以下、より好ましくは、1.0kPa以下である。
【0098】
精留塔の塔頂還流比は、例えば、0.1以上、好ましくは、0.2以上、より好ましくは、0.3以上、また、例えば、50以下、好ましくは、20以下、より好ましくは、10以下である。
【0099】
精留塔の滞留時間は、例えば、0.2時間以上、好ましくは、0.5時間以上、より好ましくは、1.0時間以上、また、例えば、20時間以下、好ましくは、10時間以下である。
【0100】
以上によって、ポリイソシアネート組成物が留分として取り出される。
【0101】
次に、必要により、取り出されたポリイソシアネート組成物に空気を混合して、ポリイソシアネート、および、特定の化合物の含有割合を、上記の範囲となるように、調節する。ポリイソシアネート組成物を濾過することにより、ポリイソシアネート組成物中の特定の化合物を減少させて、特定の化合物の含有割合を、上記の範囲となるように調節できる場合もある。
【0102】
空気は、好ましくは、乾燥空気である。
【0103】
空気の相対湿度は、例えば、95%以下、好ましくは、85%以下である。空気の相対湿度の下限は、限定されない。空気の相対湿度は、例えば、15%以上である。
【0104】
空気の温度は、例えば、5℃以上、好ましくは、10℃以上であり、例えば、30℃以下、好ましくは、25℃以下である。
【0105】
XDI組成物に空気を混合する方法としては、例えば、空気を、ガラス製の空気吹込み管を通して、XDI組成物中に吹き込む方法などが挙げられる。
【0106】
<作用効果>
本発明のポリイソシアネート組成物は、特定の化合物を特定の割合で含有する。
【0107】
詳しくは、特定の化合物は、1-ナイロン型重合体であり、赤外吸収スペクトルにおいて、1700cm-1以上1710cm-1以下の範囲にピークトップを有する吸収ピークを有する。
【0108】
そして、ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基の質量に対して、ポリイソシアネート組成物中のアミド結合の質量の割合は、8000ppm以下である。
【0109】
そのため、上記したポリイソシアネート組成物から製造される樹脂は、透明性に優れる。
【0110】
3.重合性組成物
上記したポリイソシアネート組成物は、樹脂の原料として利用され、とりわけ光学材料の原料として好適に利用される。言い換えれば、ポリイソシアネート組成物は、好ましくは、イソシアネート成分として、重合性組成物に含まれる。
【0111】
重合性組成物は、イソシアネート成分と、活性水素基含有成分とを含む。
【0112】
イソシアネート成分は、ポリイソシアネート組成物を含有し、好ましくは、ポリイソシアネート組成物からなる。
【0113】
活性水素基含有成分として、例えば、ポリオール成分、ポリチオール成分、および、ポリアミン成分が挙げられる。
【0114】
活性水素基含有成分は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0115】
活性水素基含有成分のなかでは、例えば光学特性の観点から好ましくは、ポリチオール成分が挙げられる。
【0116】
ポリチオール成分として、例えば、脂肪族ポリチオール化合物、芳香族ポリチオール化合物、および、複素環ポリチオール化合物が挙げられる。
【0117】
脂肪族ポリチオール化合物として、例えば、メタンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,2,3-プロパントリチオール、1,2-シクロヘキサンジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2-メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3-メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)エタン、1,2-ビス(3-メルカプトプロピルチオ)エタン、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2-メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3-メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3-ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプト-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプトメチル-2,5-ジメチル-1,4-ジチアン、及びこれらのチオグリコール酸およびメルカプトプロピオン酸のエステル、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピネート)、チオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン、3-メルカプトメチル-1,5-ジメルカプト-2,4-ジチアペンタン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、および、トリス(メルカプトエチルチオ)メタンが挙げられる。
【0118】
芳香族ポリチオール化合物として、例えば、1,2-ジメルカプトベンゼン、1,3-ジメルカプトベンゼン、1,4-ジメルカプトベンゼン、1,2-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5-トリメルカプトベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、2,5-トルエンジチオール、3,4-トルエンジチオール、1,5-ナフタレンジチオール、および、2,6-ナフタレンジチオールが挙げられる。
【0119】
複素環ポリチオール化合物として、例えば、2-メチルアミノ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、3,4-チオフェンジチオール、および、ビスムチオールが挙げられる。
【0120】
このようなポリチオール成分は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0121】
また、ポリチオール成分として、好ましくは、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、3-メルカプトメチル-1,5-ジメルカプト-2,4-ジチアペンタン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)およびジエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0122】
3.樹脂
上記したイソシアネート成分と、上記した活性水素基含有成分とを反応させることにより、樹脂が製造される。言い換えれば、樹脂は、重合性組成物の硬化物である。樹脂は、透明性に優れているため、光学材料として好適である。
【0123】
詳しくは、樹脂のヘイズ値は、例えば、0.70以下、好ましくは、0.60以下、より好ましくは、0.50以下、より好ましくは、0.40以下、より好ましくは、0.35以下である。ヘイズ値が上記した上限値以下であると、樹脂は、透明性に優れている。
【0124】
なお、樹脂のヘイズ値の下限値は、限定されない。樹脂のヘイズ値は、例えば、0.10以上である。
【0125】
また、樹脂の失透度は、例えば、30以下、好ましくは、25以下、より好ましくは、22以下、より好ましくは、21以下である。失透度が上記した上限値以下であると、樹脂は、透明性に優れている。
【0126】
なお、樹脂の失透度の下限値は、限定されない。樹脂の失透度は、例えば、10以上である。
【0127】
樹脂は、好ましくは、公知の成形方法によって成形される。つまり、成形体は、樹脂からなる。成形体は、光学部品として好適である。樹脂の成形体として、例えば、光学素子が挙げられる。
【0128】
光学素子として、例えば、レンズ、シートおよびフィルムが挙げられ、好ましくは、レンズが挙げられる。
【0129】
レンズは、例えば、上記したポリイソシアネート組成物と、上記したポリチオール成分との反応により製造される。レンズの製造では、例えば、注型法を採用することができる。
【0130】
レンズとして、例えば、透明レンズ、サングラスレンズ、偏光レンズ、眼鏡レンズ、カメラレンズ、ピックアップレンズ、および、コンタクトレンズが挙げられる。
【0131】
<作用効果>
上記した樹脂、成形体、光学素子およびレンズは、上記した重合性組成物の硬化物を含む。そのため、樹脂、成形体、光学素子およびレンズは、透明性に優れる。
【0132】
なお、上記したポリイソシアネート組成物は、コーティング(例えば、塗料および接着剤)の原料として利用することもできる。この場合、ポリイソシアネート組成物は、必要に応じて公知の方法で変性体化されて、イソシアネート成分として、コーティング用重合性組成物に含まれる。
【0133】
キシリレンジイソシアネート変性体組成物(以下、ポリイソシアネート変性体組成物とする。)は、上記したポリイソシアネート組成物を変性することにより製造され、下記(a)~(i)の官能基を少なくとも1種含有する。
(a)イソシアヌレート基、
(b)アロファネート基、
(c)ビウレット基、
(d)ウレタン基、
(e)ウレア基、
(f)イミノオキサジアジンジオン基、
(g)ウレトジオン基、
(h)ウレトンイミン基、
(i)カルボジイミド基。
【0134】
より具体的には、上記(a)の官能基(イソシアヌレート基)を含有するポリイソシアネート変性体組成物は、ポリイソシアネートのトリマーを含有しており、例えば、ポリイソシアネートモノマー組成物に公知のイソシアヌレート化触媒を添加して反応させ、ポリイソシアネートをイソシアヌレート化(例えば三量化)することにより、得ることができる。
【0135】
上記(b)の官能基(アロファネート基)を含有するポリイソシアネート変性体組成物は、ポリイソシアネートのアロファネート変性体を含有しており、例えば、ポリイソシアネートモノマー組成物と、1価アルコールまたは2価アルコールとを反応させた後、公知のアロファネート化触媒を添加してさらに反応させることにより、得ることができる。
【0136】
上記(c)の官能基(ビウレット基)を含有するポリイソシアネート変性体組成物は、ポリイソシアネートのビウレット変性体を含有しており、例えば、ポリイソシアネートモノマー組成物と、水または第二級アミンとを反応させた後、公知のビウレット化触媒を添加してさらに反応させることにより、得ることができる。
【0137】
上記(d)の官能基(ウレタン基)を含有するポリイソシアネート変性体組成物は、ポリイソシアネートのポリオール変性体を含有しており、例えば、ポリイソシアネートモノマー組成物と、低分子量ポリオール(例えば、トリメチロールプロパン)との反応により、得ることができる。
【0138】
上記(e)の官能基(ウレア基)を含有するポリイソシアネート変性体組成物は、ポリイソシアネートのポリアミン変性体を含有しており、例えば、ポリイソシアネートモノマー組成物と、ポリアミンとの反応により、得ることができる。
【0139】
上記(f)の官能基(イミノオキサジアジンジオン基)を含有するポリイソシアネート変性体組成物は、ポリイソシアネートのイミノオキサジアジンジオン変性体(非対称性トリマー)を含有しており、例えば、ポリイソシアネート組成物を公知のイミノオキサジアジンジオン化触媒の存在下において反応させ、ポリイソシアネートをイミノオキサジアジンジオン化(例えば三量化)することにより、得ることができる。
【0140】
上記(g)の官能基(ウレトジオン基)を含有するポリイソシアネート変性体組成物は、ポリイソシアネートのウレトジオン変性体を含有しており、例えば、ポリイソシアネート組成物を90℃~200℃程度で加熱する方法、あるいは公知のウレトジオン化触媒の存在下において反応させ、ポリイソシアネートをウレトジオン化(例えば、二量化)することにより、得ることができる。
【0141】
上記(h)の官能基(ウレトンイミン基)を含有するポリイソシアネート変性体組成物は、ポリイソシアネートのウレトンイミン変性体を含有しており、例えば、ポリイソシアネート組成物を公知のカルボジイミド化触媒の存在下において反応させ、カルボジイミド基を形成した後、そのカルボジイミド基にポリイソシアネートを付加させることにより、得ることができる。
【0142】
上記(i)の官能基(カルボジイミド基)を含有するポリイソシアネート変性体組成物は、ポリイソシアネートのカルボジイミド変性体を含有しており、例えば、ポリイソシアネート組成物を公知のカルボジイミド化触媒の存在下において反応させることにより、得ることができる。
【0143】
なお、ポリイソシアネート変性体組成物は、上記(a)~(i)の官能基を少なくとも1種含有していればよく、2種以上含有することもできる。また、ポリイソシアネート変性体組成物は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0144】
コーティング用重合性組成物は、例えば、二液硬化型樹脂原料であって、硬化剤としてのA剤と、主剤としてのB剤とを含む。
【0145】
A剤は、例えば、上記したポリイソシアネート変性体組成物を含む。B剤は、例えば、ポリオール成分を含む。
【0146】
このようなコーティング用重合性組成物から形成されるコーティングも、透明性に優れる。
【実施例】
【0147】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。
【0148】
1.XDI組成物の製造
国際公開第2018-190290号公報に記載の方法により、XDI組成物を製造した。
【0149】
次に、得られたXDI組成物に所定量の空気を混合し、「XDI組成物中のイソシアネート基の質量に対する、XDI組成物中のアミド結合の割合」を、表1に示す割合に調節した。
【0150】
詳しくは、無水塩化カルシウム管を通すことによって乾燥させた乾燥空気を、25℃の雰囲気下において、ガラス製の吹込み管を通して、ガラス製容器に充填されたXDI組成物中に吹き込むことにより、XDI組成物に所定量の空気を混合した。
【0151】
これにより、実施例1~7および比較例1のXDI組成物を得た。
【0152】
なお、表1中において、「XDI組成物中のイソシアネート基の質量に対する、XDI組成物中のアミド結合の質量の割合」を、「1-ナイロン/NCO」と記載する。
2.BIBH組成物の製造
国際公開第2007-010996号公報の実施例4に記載の方法により、BIBH組成物を製造した。
次に、得られたBIBH組成物に所定量の空気を混合し、「BIBH組成物中のイソシアネート基の質量に対する、BIBH組成物中のアミド結合の割合」を、表2に示す割合に調節した。
詳しくは、無水塩化カルシウム管を通すことによって乾燥させた乾燥空気を、25℃の雰囲気下において、ガラス製の吹込み管を通して、ガラス製容器に充填されたBIBH組成物中に吹き込むことにより、BIBH組成物に所定量の空気を混合した。
これにより、実施例8~14および比較例2、3のBIBH組成物を得た。
なお、表2中において、「BIBH組成物中のイソシアネート基の質量に対する、BIBH組成物中のアミド結合の質量の割合」を、「1-ナイロン/NCO」と記載する。
【0153】
2.プラスチックレンズの製造
(1)XDI組成物を用いたプラスチックレンズの製造
表1に示す「1-ナイロン/NCO」のXDI組成物50.8質量部に、硬化触媒としてジメチル錫ジクロライド0.01質量部と、ゼレックUN(商品名Stepan社製品;酸性リン酸エステル)0.10質量部と、バイオソーブ583(堺化学社製;紫外線吸収剤)1.5質量部とを、20℃で混合し、溶解させて、混合液1を得た。
【0154】
次に、混合液1に、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、及び5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンを主成分とするポリチオール組成物49.2質量部を均一に混合して、混合液2を得た。
【0155】
混合液2を、600Paで1時間脱泡し、その後、1μmテフロン(登録商標)フィルターにて濾過した。
【0156】
次に、濾過した混合液2を、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。
【0157】
次に、混合液2が注入されたモールド型をオーブンへ投入し、25℃から120℃まで昇温し、120℃で24時間重合した。
【0158】
重合終了後、オーブンからモールド型を取り出し、モールド型から重合物を離型して、得られた重合物を120℃で1時間アニールした。
【0159】
以上により、実施例1~7および比較例1の硬化物を得た。
(2)BIBH組成物を用いたプラスチックレンズの製造
表2に示す「1-ナイロン/NCO」のBIBH組成物50.6質量部に、硬化触媒としてジメチル錫ジクロライド0.02質量部と、ゼレックUN(商品名Stepan社製品;酸性リン酸エステル)0.10質量部とを、20℃で混合し、溶解させて、混合液1を得た。
次に、混合液1に、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンを主成分とするポリチオール組成物25.5質量部と、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)を主成分とするポリチオール組成物23.9質量部とを加え、20℃で攪拌混合し、透明な均一溶液である混合液2を得た。
混合液2を、600Paで1時間脱泡した。
次に、混合液2を、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。
次に、混合液2が注入されたモールド型をオーブンへ投入し、25℃から120℃まで昇温し、120℃で24時間重合した。
重合終了後、オーブンからモールド型を取り出し、モールド型から重合物を離型して、得られた重合物を120℃で1時間アニールした。
以上により、実施例8~14および比較例2、3の硬化物を得た。
【0160】
3.測定方法
(1)1-ナイロン/NCO
トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレート(東京化成社製)を用いて、検量線を作製した。
【0161】
トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレートは、XDIまたはBIBHの1-ナイロン型重合体中のカルボニル基の吸収ピーク(1700cm-1~1710cm-1)に近い、カルボニル基の吸収ピーク(1694cm-1)を有する。そのため、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレートを用いて作成した検量線を、XDIまたはBIBHの1-ナイロン型重合体を定量するための検量線として使用した。
【0162】
各実施例および各比較例について、所定量(mg)のXDI組成物またはBIBH組成物をサンプリングし、クロロホルムで希釈して、フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光社製、61000型)で、厚さ2.0mmのNaClセルを用いて、赤外吸収スペクトルを測定した。
【0163】
各実施例および各比較例の全ての赤外吸収スペクトルにおいて、1700cm-1以上1710cm-1以下の範囲にピークトップを有する吸収ピークが現れた。
【0164】
その吸収ピークのピークトップにおける吸光度に上記の検量線の傾き(すなわち、吸光係数)を乗じて、XDI組成物またはBIBH組成物中のアミド結合の質量(B)を計算した。つまり、質量(B)は、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレートの吸光係数による換算値である。
【0165】
また、下記式(1)から、1-ナイロン/NCO(ppm)を計算した。
【0166】
式(1):
1-ナイロン/NCO(ppm)=XDI組成物またはBIBH組成物中のアミド結合の質量(B)/XDI組成物またはBIBH組成物中のイソシアネート基の質量(A)×1000000
なお、XDI組成物中のイソシアネート基の質量(A)は、下記式(2)によって求められる。BIBH組成物中のイソシアネート基の質量(A)は、下記式(3)によって求められる。
【0167】
式(2):
XDI組成物中のイソシアネート基の質量(A)=サンプリングしたXDI組成物の量(mg)×(42×2/188.2)
なお、上記式(2)中の「42」は、イソシアネート基の分子量であり、「188.2」は、XDIの分子量である。
式(3):
BIBH組成物中のイソシアネート基の質量(A)=サンプリングしたBIBH組成物の量(mg)×(42×2/206.25)
なお、上記式(3)中の「42」は、イソシアネート基の分子量であり、「206.25」は、BIBHの分子量である。
【0168】
結果を表1および表2に示す。
【0169】
(2)ヘイズ値
実施例1~7および比較例1の硬化物を、2.5mm厚の平板状に成形し、実施例8~14および比較例2、3の硬化物を、2.0mm厚の平板状に成形して、日本電色工業株式会社製のヘイズメーター(型番:NDH 2000)を使用して、ヘイズ値を測定した。ヘイズ値が小さい程、レンズの透明性が優れている。結果を表1および表2に示す。
【0170】
(3)失透度
実施例1~7および比較例1の硬化物を、円板状(厚さ9mm、直径75mm)のプラスチックレンズに成形した。
【0171】
次に、レンズに光源(ハヤシレピック社製Luminar Ace LA-150A)からの光を透過させた。
【0172】
円板レンズを透過した光の画像を画像処理装置(宇部情報システム社製)に取り込み、取り込んだ画像を濃淡処理した。
【0173】
処理後の画像の濃淡の度合いを画素毎に数値化し、各画素の濃淡の度合いの数値の平均値を計算した。得られた平均値が、レンズの失透度である。失透度が小さい程、レンズの透明性が優れている。結果を表1に示す。
(4)イエロー・インデックスの値(Y.I.値)
実施例8~14および比較例2、3の硬化物を、円板状(厚さ9mm、直径75mm)のプラスチックレンズ(光学素子)に成形した。
得られたプラスチックレンズの透過のY.I.値を、分光測色計CM-5(コニカミノルタ社製)を用いて、測定した。
なお、Y.I.値が小さいほど、プラスチックレンズの色相が良く、Y.I.値が大きいほど、色相が不良となる。結果を表2に示す。
【0174】
【表1】
【表2】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記請求の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明のポリイソシアネート組成物、重合性組成物、樹脂および成形体は、レンズ、シートおよびフィルムなどの光学素子に利用される。