(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】溶融金属浴の一連の温度値を決定するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
G01J 5/00 20220101AFI20250213BHJP
G01J 5/0821 20220101ALI20250213BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20250213BHJP
G01N 25/02 20060101ALN20250213BHJP
【FI】
G01J5/00 101D
G01J5/0821
F27D21/00 G
G01N25/02 B
(21)【出願番号】P 2023532581
(86)(22)【出願日】2021-12-01
(86)【国際出願番号】 EP2021083734
(87)【国際公開番号】W WO2022117629
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-05-29
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598083577
【氏名又は名称】ヘレーウス エレクトロ-ナイト インターナシヨナル エヌ ヴイ
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Electro-Nite International N.V.
【住所又は居所原語表記】Centrum Zuid 1105, B-3530 Houthalen,Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ヴリエルベルゲ、ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ネイエンズ、ギド
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-530257(JP,A)
【文献】特開平10-185698(JP,A)
【文献】特開2014-219395(JP,A)
【文献】特開2018-151371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 21/00
G01J 5/00 - G01J 5/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学コアワイヤと検出器とを備える装置を用いて溶融金属浴の一連の少なくとも2つの温度値T
mes(n)及びT
mes(n+1)を決定するための方法であって、
(a)前記溶融金属浴の経時的な温度推移を記述するモデルF(t)を供給する工程と、
(b)臨界温度値T
criを定義する工程と、
(c)時点t(n)で前記溶融金属浴の測定温度値T
mes(n)を測定する工程と、
(d)前記モデルF(t)、前記臨界温度値T
cri、及び前記測定温度値T
mes(n)に基づいて、フィッティングされた加熱速度R
heat(n)を決定する工程であって、R
heat(n)は、
R
heat(n)=ΔT
heat(n)/Δt
として定義される、工程であって、
ΔT
heat(n)は温度変化を表し、Δtは時間の長さを表し、R
heat(n)は、時間の長さΔt内で予想される温度変化ΔT
heat(n)を表
し、
前記フィッティングされた加熱速度R
heat
(n)は、前記臨界温度値T
cri
に達するまでの前記測定温度値T
mes
(n)から平均して予想される加熱速度である、工程と、
(e)前記臨界温度値T
criと前記測定温度値T
mes(n)との温度差ΔT(n)と、前記フィッティングされた加熱速度R
heat(n)とに基づいて、時点t
cal(n+1)を計算する工程であって、
ΔT(n)=T
cri-T
mes(n)及び
t
cal(n+1)=t(n)+(ΔT(n)/R
heat(n))である、
工程と、
(f)前記時点t
cal(n+1)で前記溶融金属浴の測定温度値T
mes(n+1)を測定する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記方法は、
(g)前記モデルF(t)、前記臨界温度値T
cri、及び前記測定温度値T
mes(n+1)に基づいて、フィッティングされた加熱速度R
heat(n+1)を決定する工程であって、R
heat(n+1)は、
R
heat(n+1)=ΔT
heat(n+1)/Δtとして定義される、工程と、
(h)前記臨界温度値T
criと前記測定温度値T
mes(n)との前記温度差ΔT(n)と、前記フィッティングされた加熱速度R
heat(n)とに基づいて、時点t
cal(n+2)を計算する工程であって、
ΔT(n+1)=T
cri-T
mes(n+1)及び
t
cal(n+2)=t(n+1)+(ΔT(n+1)/R
heat(n+1))である、
工程と、
(i)前記時点t
cal(n+2)で前記溶融金属浴の測定温度値T
mes(n+2)を測定する工程と、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィッティングされた加熱速度R
heat(n+1)は、前記フィッティングされた加熱速度R
heat(n)よりも大きい、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記モデルF(t)は、前記溶融金属浴の前記経時的な温度推移の最高温度を記述する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記溶融金属浴の前記経時的な温度推移を記述する前記モデルF(t)の一次導関数は線形関数である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記溶融金属浴の前記経時的な温度推移を記述する前記モデルF(t)は前の測定に基づく、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記溶融金属浴の前記経時的な温度推移を記述する前記モデルF(t)は動作パラメータに基づく、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記フィッティングされた加熱速度R
heat(n)は、前記モデルF(t)の線形フィッティングに基づいて決定される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記フィッティングされた加熱速度R
heat(n)は、時点t
cri及び前記時点t(n)についての前記モデルF(t)の一次導関数に基づいて決定され、
前記時点t
criは、臨界温度値T
criに関連し、前記モデルF(t)を適用することにより決定される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記溶融金属浴の前記経時的な温度推移を記述する前記モデルF(t)は、
(i)溶融金属浴の特性を溶融金属浴の前記経時的な温度推移に関する記録データに関連付けるデータセットを提供する工程と、
(ii)前記溶融金属浴の特性を提供する工程と、
(iii)前記溶融金属浴の特性を前記溶融金属浴の前記提供された特性に対応させて関連付ける前記提供されたデータセットから、前記溶融金属浴の前記経時的な温度推移を記述するモデルF(t)を受信する工程と、
を含む方法によって導出される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
測定温度値T
mesが、測定プロファイルMPの適用によって決定される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記測定プロファイルMPは、
(i)前記光学コアワイヤを、その前端が前記溶融金属浴の表面の上方にある状態で提供する工程と、
(ii)少なくとも1つの送り速度v
fedで、t0からt2までの時間にわたって、前記光学コアワイヤの前記前端を前記溶融金属浴に向かって、かつ前記溶融金属浴の前記表面の下方に送る工程であって、前記光学コアワイヤの前記前端は、t1からt2までの時間にわたって前記溶融金属浴の前記表面の下方にある、工程と、
(iii)t1からt2までの測定時間内に温度情報を取得する工程と、
(iv)前記光学コアワイヤを速度v
retで前記溶融金属浴の上方の位置まで後退させる工程と、
のうちの少なくとも1つを定義する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記測定プロファイルMPは、t1からt2までの静止時間内の更なる工程を定義し、そのt1からt2までの間、前記光学コアワイヤの前記前端の前記送りは一時停止されるか、又は前記光学コアワイヤの前記前端は低速で送られる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程(ii)において前記光学コアワイヤの前記前端を送ることは、少なくとも2つの送り速度v
fed1及びv
fed2によって定義される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
装置とモジュールとを備える溶融金属浴の一連の少なくとも2つの温度値T
mes(n)及びT
mes(n+1)を決定するためのシステムであって、前記モジュールは前記装置と相互作用するように適合され、前記装置は光学コアワイヤ及び検出器を含み、
前記モジュールは、記憶ユニット、処理ユニット、及び制御ユニットを含み、
前記記憶ユニットは、
(a1)前記溶融金属浴の経時的な温度推移を記述するモデルF(t)を供給するための記憶要素と、
(a2)臨界温度値T
criを定義するための記憶要素と、
を含み、
前記処理ユニットは、
(b1)モデルF(t)、臨界温度値T
cri、及び測定温度値T
mesに基づいて、フィッティングされた加熱速度R
heatを決定するための処理要素であって、R
heatは、
R
heat=ΔT
heat/Δt
として定義され、
ΔT
heat(n)は温度変化を表し、Δtは時間の長さを表し、R
heat(n)は、時間の長さΔt内で予想される温度変化ΔT
heat(n)を表
し、
前記フィッティングされた加熱速度R
heat
(n)は、前記臨界温度値T
cri
に達するまでの前記測定温度値T
mes
(n)から平均して予想される加熱速度である、処理要素と、
(b2)臨界温度値T
criと測定温度値T
mesとの温度差ΔTと、
前記フィッティングされた加熱速度R
heatとに基づいて、時点t
calを計算するための処理要素であって、
ΔT=T
cri-T
mes及び
t
cal=t+(ΔT/R
heat)である、
処理要素と、
を含み、
前記制御ユニットは、
(c1)前記溶融金属浴の温度値T
mesを測定するための制御要素を含む、
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属浴の一連の少なくとも2つの温度値を決定するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
冶金容器内の溶融金属浴の温度は、金属製造プロセス中の重要なパラメータであり、得られる製品の品質を決定する。溶融金属浴、特に電気アーク炉(EAF)の融解環境における鉄又は鋼の温度を測定するための可能な手段は、金属管によって囲まれた光ファイバを溶融金属中に浸漬する工程を含む。金属管によって囲まれた光ファイバは、しばしば、光学コアワイヤとも呼ばれる。
【0003】
金属溶融物の加熱はエネルギー集約的プロセスであるので、溶融金属の過熱、すなわち、溶融物の最適な処理を可能にする臨界温度を超える加熱を回避することが望ましい。
【0004】
溶融金属浴の温度を測定するために、光学コアワイヤを冶金容器内に送ることができる。光学コアワイヤの前端は溶融金属浴内に浸漬され、その途中で最初に高温雰囲気に遭遇し、続いてスラグ層に遭遇し、次に溶融金属浴に遭遇する。光学コアワイヤの一部分が溶融金属浴の表面の下方に浸漬されると、光ファイバは、溶融金属から受け取った熱放射を検出器、例えばパイロメータに伝達することができる。溶融金属浴の温度を求めるために、適切な計器を検出器と関連付けることができる。この測定中、光学コアワイヤの浸漬された部分は、溶融金属浴によって部分的に又は完全に消耗され得る。温度測定が終了すると、光学コアワイヤの先端を溶融金属浴から後退させることができる。後退された光学コアワイヤの先端は、次の温度測定のための新しい前端となる。
【0005】
このような装置は、一連の浸漬サイクルの形態のオンデマンド温度測定及び半連続温度測定に適している。操作者は、冶金容器に近接した過酷な環境に直接介入することなく、温度測定値を取得することができる。
【0006】
正確な測定値を提供するためには、測定値が取得されている間、光ファイバの浸漬された前端付近で黒体状態が確保されなければならない。ファイバは、金属浴表面の下方の十分な深さまで、かつ液体金属浴の温度を代表する容器内の位置に浸漬されなければならない。一方、深い浸漬は、光学コアワイヤにかかる浮力を増加させ、測定シーケンス中の光学コアワイヤの消耗を増加させる。
【0007】
いくつかの先行技術文献は、温度測定のデータ品質を改善するための金属被覆光ファイバの送り方法を開示している。
【0008】
例えば、米国特許出願公開第2018180484号明細書は、追加の機器を必要とせずに複数回の測定サイクルに適した方法を開示している。しかしながら、開示された方法は、融解プロセスの終了時に到達されるべき最終状態、すなわち、融解プロセスが終了する最終温度を考慮していない。金属製造プロセスにおいて絶えず変化する条件、特に溶融金属の温度上昇も考慮されていない。これにより、不必要に多くの測定や、プロセス中の不適切な時点での測定が行われる可能性がある。
【0009】
米国特許出願公開第2014130636号明細書は、電気アーク炉内の融解プロセスを制御する方法を開示している。プロセスの状態を決定するためにプロセスパラメータが取得され、プロセスは、パラメータの所定の値に従って、取得されたパラメータに基づいて適合される。プロセス自体の最適化が開示されているが、付随する測定値の適用の最適化については言及されていない。
【0010】
従来技術に鑑みて、金属製造プロセスの付随する状況を考慮する測定方法及びシステム、並びにこれらの方法及びシステムを使用する効率的な方法が必要とされている。
【0011】
したがって、本発明の目的は、上述の問題の少なくとも1つを解決する溶融金属浴の一連の少なくとも2つの温度値を決定するための改善された方法を提供することである。特に、本発明による方法の目的は、金属製造プロセスを、最小限の回数の温度測定で最終終了温度値に達するまで行うことを可能にする方法を提供することである。より具体的には、溶融金属浴の過熱を回避することを可能にする方法を提供することが目的である。詳細には、目的の一つは、一連の測定中の光学コアワイヤの消耗を最小限に抑えることを可能にする方法を提供することである。
【0012】
本発明の更なる目的は、溶融金属浴の一連の少なくとも2つの温度値を決定するための改善されたシステムを提供することである。
【0013】
これらの目的は、独立請求項において定義される主題によって達成される。
【0014】
本発明は、光学コアワイヤと検出器とを備える装置を用いて溶融金属浴の一連の少なくとも2つの温度値Tmes(n)及びTmes(n+1)を決定するための方法であって、
(a)溶融金属浴の経時的な温度推移を記述するモデルF(t)を供給する工程と、
(b)臨界温度値Tcriを定義する工程と、
(c)時点t(n)で溶融金属浴の測定温度値Tmes(n)を測定する工程と、
(d)モデルF(t)、臨界温度値Tcri、及び測定温度値Tmes(n)に基づいて、フィッティングされた加熱速度Rheat(n)を決定する工程であって、Rheat(n)は、
Rheat(n)=ΔTheat(n)/Δt
として定義される、工程と、
(e)臨界温度値Tcriと測定温度値Tmes(n)との温度差ΔT(n)と、フィッティングされた加熱速度Rheat(n)とに基づいて、時点tcal(n+1)を計算する工程であって、
ΔT(n)=Tcri-Tmes(n)及び
tcal(n+1)=t(n)+(ΔT(n)/Rheat(n))である、
工程と、
(f)時点tcal(n+1)で溶融金属浴の測定温度値Tmes(n+1)を測定する工程と、
を含む、方法を提供する。
【0015】
更に、本発明は、溶融金属浴の一連の少なくとも2つの温度値Tmes(n)及びTmes(n+1)を決定するためのシステムであって、システムは、装置及びモジュールを備え、モジュールは、装置と相互作用するように適合され、装置は、光学コアワイヤ及び検出器を含み、モジュールは、記憶ユニット、処理ユニット、及び制御ユニットを含み、
記憶ユニットは、
(a1)溶融金属浴の経時的な温度推移を記述するモデルF(t)を供給するための記憶要素と、
(a2)臨界温度値Tcriを定義するための記憶要素と、
を含み、
処理ユニットは、
(b1)モデルF(t)、臨界温度値Tcri、及び測定温度値Tmesに基づいて、フィッティングされた加熱速度Rheatを決定するための処理要素であって、Rheatは、
Rheat=ΔTheat/Δt
として定義される、処理要素と、
(b2)臨界温度値Tcriと測定温度値Tmesとの温度差ΔTと、フィッティングされた加熱速度Rheatとに基づいて、時点tcalを計算するための処理要素であって、
ΔT=Tcri-Tmes及び
tcal=t+(ΔT/Rheat)である、
処理要素と、
を含み、
制御ユニットは、
(c1)溶融金属浴の温度値Tmesを測定するための制御要素を含む、
システムを提供する。
【0016】
より好ましい実施形態は、従属請求項に定義されている。好ましい実施形態は、個別に実現されても任意の可能な組み合わせで実現されてもよい。
【0017】
本発明による方法は、溶融金属浴の温度が測定間で変化する複数回の繰り返し測定であって、溶融金属浴が最終終了温度に達する複数回の繰り返し測定に特に適していることが証明されている。典型的には、溶融金属の温度は、加熱の継続に起因して測定間で上昇し、過熱、すなわち到達すべき最終終了温度を超える加熱は回避されるべきである。加えて、本方法は、熱を最終終了温度に導くためのいくつかの測定値の効率的な適用を支援する、すなわち、プロセスの終了時にこの目標温度に確実に達するようにすることが証明されている。換言すれば、プロセスの終了処理時点での加熱不足も回避することができる。更に、本発明の方法は、測定のタイミング及び回数の最適化を可能にすることにより、光学コアワイヤの最適な最小限の消耗をもたらす。本明細書で使用される「消耗」という用語は、例えば、溶融金属浴による、及び溶融金属浴への、光学コアワイヤの融解及び溶解、光学コアワイヤ全体又はその異なる部分の分解又は燃焼などの光学コアワイヤの損壊を指す。
【0018】
本発明は、一連の少なくとも2つの温度値Tmes(n)及びTmes(n+1)を決定するための方法を提供する。一連の温度値は、本明細書では、少なくとも1回繰り返される決定を説明するために使用される。一連の温度値は、少なくとも温度値Tmes(n)及びTmes(n+1)を含む。Tmes(n)及びTmes(n+1)以外に、更なる温度値を決定してもよい。
【0019】
本出願を通して、温度又は温度値に関する変数は、大文字のTで言及され、一方、一般的な時点、時間の長さ又は時間に関する変数は、小文字のtで言及される。
【0020】
一般的な変数を定義する際には、指定された添え字、すなわち(n)又は(n+1)などを有さない変数が使用される。特定の文脈でこの変数を指す際には、指定された添え字を有する変数が使用される。例えば、Tmesは、測定温度値Tmesの一般的な定義を指し、Tmes(n)は、特定の測定温度値を指す。
【0021】
本発明によれば、温度値Tmesは、温度を測定することによって決定することができる。温度測定は、例えば、単一点測定であってもよいし、複数点測定及び可能な関連データ処理であってもよい。
【0022】
測定温度値Tmes(n)は、特定の時点t(n)での測定によって取得された温度値として理解される。したがって、温度値Tmes(n+1)は、特定の時点t(n+1)で取得された温度値である。
【0023】
本明細書で使用される場合、「溶融金属浴」という用語は、容器内の溶融物を説明する。当業者に知られている「溶融金属浴」の代替用語は、「金属溶融物」である。溶融金属浴の溶融金属は特に限定されない。好ましい実施形態によれば、溶融金属は溶鋼である。溶融金属浴という用語は、例えばそれぞれの金属の非溶融部分を含む任意の固体部分又は気体部分の存在を除外しない。溶融金属浴はスラグ層で覆われていてもよい。
【0024】
金属溶融物の温度は異なり、通常、金属の組成及び融解プロセスの段階に依存する。好ましい実施形態によれば、溶融金属浴の温度は1500~1800℃の範囲内であり、より好ましくは1500~1700℃の範囲内である。
【0025】
溶融金属浴は、光学コアワイヤを送るのに適した入り口を含む容器内に収容されてもよい。そのような入り口は、容器を覆う側壁パネル又は屋根に配置されてもよい。
【0026】
本発明によれば、少なくとも2つの温度値Tmes(n)及びTmes(n+1)は、光学コアワイヤを備える装置を用いて決定される。好ましくは、光学コアワイヤは、金属管によって側方から取り囲まれた光ファイバである。好ましくは、光ファイバは、柔軟で透明なファイバである。光ファイバは、ファイバの2つの端部の間で、特にIR波長範囲内の光を伝送する手段として使用されることが最も多い。好ましくは、光ファイバは、ガラス又はプラスチック、より好ましくは石英ガラスから形成される。好ましくは、光ファイバは、グレーデッドインデックスファイバ及びシングルモードステップインデックスファイバからなる群から選択される。
【0027】
光ファイバを取り囲む金属管は、光ファイバを完全に取り囲んでもよいが、ケーシングが光ファイバを完全に取り囲まないように少なくとも部分的に開いてもよい。
【0028】
好ましくは、光ファイバを取り囲む金属管の金属は、鉄又は鋼、好ましくはステンレス鋼である。
【0029】
好ましい実施形態では、光学コアワイヤの線密度は、25~80g/mの範囲内、より好ましくは35~70g/mの範囲内である。線密度は、単位長さ当たりの質量によって定義される。
【0030】
好ましくは、光学コアワイヤは、少なくとも1つの追加の金属管によって側方から取り囲まれており、すなわち、少なくとも2つの金属管が光ファイバを側方から取り囲んでいる。より好ましくは、光学コアワイヤは、少なくとも1つの追加の金属管の中心に配置される。
【0031】
好ましくは、少なくとも1つの追加の金属管は、光学コアワイヤと接触していない。より好ましくは、これらの少なくとも2つの金属管の間の空隙は、気体材料もしくは固体材料又はそれらの組み合わせからなる群から選択される材料で少なくとも部分的に充填される。固体材料は、好ましくは、無機材料、天然ポリマー、合成ポリマー及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。気体材料は、好ましくはガス又はガスの混合物である。より好ましくは、ガスは空気又は不活性ガスである。
【0032】
好ましい実施形態によれば、光学コアワイヤは、少なくとも1つの金属管内に配置された複数の分離要素を備え、これらの分離要素は、分離要素間に少なくとも1つの区画を形成する。ここで、「区画」という用語は、管内の異なる分離要素間の容積に関する。「分離要素」という用語は、管内に配置された、管内の容積を細分する部分に関する。好ましくは、分離要素は、管の内側に配置される円板状要素であり、円板状要素は開口部を備え、開口部を通って光学コアワイヤが延在し、開口部は光学コアワイヤを少なくとも部分的に支持することができる。分離要素の材料は、シリコーン、好ましくは二成分シリコーン、ゴム、革、コルク、金属及びそれらの組み合わせからなる群から選択されることが好ましい。
【0033】
光学コアワイヤは、任意選択的に、少なくとも1つの追加の層によって取り囲まれている。この少なくとも1つの追加の層を、上述の少なくとも1つの追加の金属管と置き換えてもよいし、置き換えなくてもよい。好ましい実施形態では、この少なくとも1つの追加の層は複数の部分を含み、より好ましくは、層はファイバを含む。
【0034】
更に好ましい実施形態では、少なくとも1つの追加の層の材料は、織布構造、網構造、織物構造又は編物構造の形態を有する。
【0035】
好ましくは、少なくとも1つの追加の層は、非金属材料、最も好ましくは有機材料を含む。
【0036】
光学コアワイヤは、上述の構成の任意の組み合わせを含み得ることを理解されたい。例えば、光学コアワイヤが追加の層及び第2の金属管によって側方から取り囲まれていることが有利であってもよい。
【0037】
本発明による方法を適用するために使用される装置は、検出器を更に含む。検出器は、光学コアワイヤの一端に結合され、光ファイバによって伝送される、特にIR波長範囲内の光信号を受信する。好ましくは、本発明の文脈における検出器は、パイロメータである。
【0038】
光学コアワイヤは、浸漬端及び反対端を有する。光学コアワイヤの前端は、光学コアワイヤの浸漬端の先端である。好ましくは、本発明による方法が適用されると、光学コアワイヤは浸漬端から反対端に向かう方向に消耗され、各測定シーケンスの後、光学コアワイヤの別の部分が浸漬端になる。すなわち、各測定シーケンスの後に、前端が新たに生成される。反対端は検出器に接続され、測定中に消耗されない。
【0039】
本発明による方法の工程(a)では、溶融金属浴の経時的な温度推移を記述するモデルF(t)が供給される。
【0040】
溶融金属浴の経時的な温度推移を記述するモデルF(t)は、時間と温度との関係を定義するモデルであり、すなわち、特定の時点における温度を予測するように適合されている。典型的な融解プロセスでは、時間は電気エネルギー入力に直接関連する。
【0041】
モデルF(t)は溶融金属浴の経時的な温度推移を記述するので、その一次導関数F’(t)は温度の経時変化として解釈することができる。換言すれば、上昇する温度推移の場合、モデルF(t)の一次導関数F’(t)は、好ましくは、溶融金属浴の経時的な加熱速度Rを表し、
R=F’(t)=ΔT/Δt
(式中、ΔTは温度変化を表し、Δtは時間の長さを表す)
として表すことができる。
【0042】
好ましくは、モデルF(t)は、溶融金属浴の経時的な温度推移の最高温度を記述し、すなわち、各温度値についての最大加熱速度Rが推定される。換言すれば、溶融金属浴の温度は、この所与の温度ではこの最大加熱速度よりも速く上昇しない。
【0043】
例示的な実施形態では、溶融金属浴の経時的な温度推移を記述するモデルF(t)の一次導関数F’(t)は、線形関数である。
【0044】
好ましくは、溶融金属浴の経時的な温度推移を記述するモデルF(t)は、時間と溶融金属浴の温度との関係を定義する数式、特性曲線、又は他の情報を含む。これは、溶融金属浴の物理的特性、冶金設備の特性、及び対応するモデルパラメータを記述する関係を含むことができる。好ましくは、溶融金属浴の物理的特性がモデルF(t)で考慮される。
【0045】
好ましくは、モデルF(t)は、数学的方法、分析方法、実験方法及びこれらの組み合わせの群から選択される方法によって導出される。
【0046】
好ましくは、溶融金属浴の経時的な温度推移を記述するモデルF(t)は、記録された測定値、すなわち前の融解プロセスで取得されたデータに基づく。
【0047】
好ましい実施形態では、推定又は測定された温度値は、溶融金属浴の経時的な温度推移を記述するモデルF(t)の唯一の入力パラメータであってもよい。更なる例では、更なる入力パラメータを利用することができる。好ましくは、そのような更なる入力パラメータは動作パラメータであってもよい。この文脈における動作パラメータは、例えば電気エネルギー入力などの融解プロセスを定義するパラメータである。
【0048】
好ましい実施形態では、溶融金属浴の経時的な温度推移を記述するモデルF(t)は、
(i)溶融金属浴の特性を溶融金属浴の経時的な温度推移に関するモデルF(t)の記録データに関連付けるデータセットを提供する工程と、
(ii)溶融金属浴の特性を提供する工程と、
(iii)溶融金属浴の特性を溶融金属浴の提供された特性に対応させて関連付ける提供されたデータセットから、溶融金属浴の経時的な温度推移を記述するモデルF(t)を受信する工程と、
を含む方法によって導出される。
【0049】
好ましくは、データセットは、ある種類のデータの1つの特定の値が別の種類のデータの特定の値に割り当てられるデータ対を含む。より好ましくは、データセットは、ある種類のデータの1つの特定の値がモデルやいくつかの工程のシーケンスなどに割り当てられるデータ対を含んでもよい。
【0050】
本発明による方法の工程(b)では、臨界温度値Tcriが定義される。
【0051】
「臨界温度値Tcri」は、固定温度値として理解されるべきである。好ましくは、臨界温度値Tcriは、それを超える温度値の更なる決定が必要とされない、溶融金属浴の所定の温度である。そのような臨界温度は、例えば、融解プロセスの終了処理がそこで開始される溶融金属浴の目標温度であってもよい。この温度は、金属製造プロセスの最後の工程であるタッピングが、溶融金属浴がこの温度に達したときに開始されるので、目標タッピング温度としても知られている。
【0052】
本発明による方法の工程(c)では、溶融金属浴の測定温度値Tmes(n)が、時点t(n)で測定される。
【0053】
温度値Tmes(n)を測定することにより、時刻t(n)での溶融金属浴の温度値Tmes(n)が決定される。
【0054】
温度値Tmesを測定するために、特にIR波長範囲内で溶融金属浴によって放出され、光学コアワイヤによって検出器に搬送される放射線が記録される。放射線の強度及び/又はスペクトル情報は、検出器に接続された処理ユニットによって処理されてもよい。光学コアワイヤの前端は、好ましくは、温度が取得される時点で溶融金属浴の表面の下方に浸漬される。
【0055】
好ましくは、測定温度値Tmesの決定は、単一のデータ点の測定又は2つ以上のデータ点の測定、すなわち、一連のデータ点の測定を含み得る。
【0056】
好ましくは、測定温度値Tmesは、一連のデータ点の平均値である。より好ましくは、決定された温度値は、一連のデータ点を処理するアルゴリズムの適用に基づいて導出される。
【0057】
好ましくは、測定温度値Tmesは、測定プロファイルMPの適用によって決定される。
【0058】
好ましくは、測定温度値Tmes(n)は、測定プロファイルMP(n)の適用によって決定される。
【0059】
測定プロファイルMPは、目的の値を取得するために実施される一連の工程として理解されるべきである。本発明の文脈では、目的の値は、溶融金属浴の温度である。
【0060】
好ましい実施形態では、測定プロファイルMPは、
(i)溶融金属浴の表面の上方に光学コアワイヤの前端を提供する工程と、
(ii)少なくとも1つの送り速度vfedで、t0からt2までの時間にわたって、光学コアワイヤの前端を溶融金属浴に向かって、かつ溶融金属浴の表面の下方に送る工程であって、光学コアワイヤの前端は、t1からt2までの時間にわたって溶融金属浴の表面の下方にある、工程と、
(iii)t1からt2までの測定時間内に温度情報を取得する工程と、
(iv)光学コアワイヤの前端を速度vretで溶融金属浴の上方の位置まで後退させる工程と、
のうちの少なくとも1つを定義する。
【0061】
換言すれば、測定プロファイルMPは、少なくとも工程(i)及び/又は(ii)及び/又は(iii)及び/又は(iv)を定義することが好ましい。好ましくは、測定プロファイルMPは、工程(i)、(ii)、(iii)及び(iv)を定義する。
【0062】
t1及びt2はt0よりも遅く、t2はt1よりも遅いことを理解されたい。t1は、前端が溶融金属浴に入る時点、すなわち、前端が溶融金属浴の表面の下方に浸漬される時点である。t2は、その後に前端が溶融金属浴の表面の上方の位置に向かって後退する時点である。
【0063】
好ましくは、工程(i)、(ii)及び(iv)は連続した順序で実施される。
【0064】
好ましくは、工程(iii)は、少なくとも部分的に工程(ii)中に実施される。
【0065】
当業者であれば、「前端を供給すること」及び「前端を送ること」は、光学コアワイヤを供給すること及び送ること、すなわち、前端を有する光学コアワイヤを供給すること、及び光学コアワイヤをその前端と共に移動させることを必然的に含むことを理解するであろう。
【0066】
送り速度vfedは、前端を溶融金属浴の表面に向かって、及びその下方に送る間の平均速度を指すことを理解されたい。
【0067】
溶融金属浴の表面は、容器の周囲に面する表面であってもよく、又は、スラグ層が存在する場合には、スラグ層に面する表面であってもよい。
【0068】
好ましい実施形態では、測定プロファイルMPの工程(ii)における送りは、少なくとも2つの送り速度vfed1及びvfed2を含む。なお、送り速度vfed1及びvfed2は、光学コアワイヤの前端が送られる平均速度を指すことを理解されたい。
【0069】
好ましくは、測定プロファイルMPの工程(ii)における送りは、t0からt1までの間に前端が送られる送り速度vfed1と、t1からt2までの間に前端が送られる第2の送り速度vfed2とを含む。
【0070】
好ましい実施形態によれば、測定プロファイルMPは、t1からt2までの静止時間内の更なる工程を定義し、その間、光学コアワイヤの前端の送りは一時停止されるか、又は光学コアワイヤの前端は低速で送られる。本明細書で使用される「前端の送りを一時停止させる」とは、前端を能動的に動かさないことを意味する。送りの一時停止又は低速での送りのいずれの代替形態においても、溶融金属浴の表面に向かう前端の位置の移動が消耗に起因してもたらされる。それにもかかわらず、前端は依然として溶融金属浴の表面の下方に浸漬されている。
【0071】
低速は、好ましくは0,2m/秒未満、より好ましくは0,1m/秒未満である。
【0072】
本発明による方法の工程(d)では、モデルF(t)、臨界温度値Tcri、及び測定温度値Tmes(n)に基づいて、フィッティングされた加熱速度Rheat(n)が決定され、Rheat(n)は、
Rheat(n)=ΔTheat(n)/Δt
として定義される。
【0073】
フィッティングされた加熱速度Rheat(n)は、臨界温度に達するまでの温度値Tmes(n)から平均して予想される加熱速度として理解することができる。換言すれば、Rheat(n)は、時間の長さΔt内で予想される温度変化ΔTheat(n)として理解されるべきである。
【0074】
モデルF(t)は、臨界温度値Tcriに関連付けられた時点tcriを決定することができるように適用されてもよいことを理解されたい。
【0075】
好ましい実施形態によれば、フィッティングされた加熱速度Rheat(n)は、モデルF(t)の線形フィッティングに基づいて決定される。より好ましくは、フィッティングされた加熱速度Rheat(n)は、時点tcriと時点t(n)との間のモデルF(t)の線形フィッティングに基づいて決定される。
【0076】
好ましくは、フィッティングされた加熱速度Rheat(n)は、時点tcri及び時点t(n)についてのモデルF(t)の一次導関数に基づいて決定される。より好ましくは、フィッティングされた加熱速度Rheat(n)は、時点tcri及び時点t(n)についてのモデルF(t)の一次導関数の平均によって決定される。
【0077】
好ましい実施形態によれば、フィッティングされた加熱速度Rheat(n)は、溶融金属浴の加熱速度のモデルR(T)に基づいて決定され、このモデルは、時点tcri、時点t(n)、及び測定温度値Tmes(n)についてのモデルF(t)の一次導関数に基づく。
【0078】
本発明による方法の工程(e)では、臨界温度値Tcriと測定温度値Tmes(n)との温度差ΔT(n)と、フィッティングされた加熱速度Rheat(n)とに基づいて、時点tcal(n+1)が計算され、
ΔT(n)=Tcri-Tmes(n)
及び
tcal(n+1)=t(n)+(ΔT(n)/Rheat(n))
である。
【0079】
工程(e)は、溶融金属浴の温度推移が工程(d)で決定されたフィッティングされた加熱速度Rheat(n)に従う場合に臨界温度値Tcriに達するであろう将来の時点tcal(n+1)の予測をもたらす。
【0080】
好ましくは、フィッティングされた加熱速度Rheat(n)は、溶融金属浴の実際の加熱速度よりも大きい。したがって、将来の時点tcal(n+1)においては、溶融金属浴の温度は臨界温度TCriよりも低くなる。
【0081】
本発明による方法の工程(f)では、溶融金属浴の測定温度値Tmes(n+1)が、時点t(n+1)で測定される。
【0082】
温度値Tmes(n+1)を測定することにより、時刻t(n+1)での溶融金属浴の温度値Tmes(n+1)が決定される。
【0083】
好ましくは、測定温度値Tmes(n+1)は、測定プロファイルMP(n+1)の適用によって決定される。
【0084】
好ましくは、測定プロファイルMP(n+1)の送り速度vfedが大きいほど、測定温度値Tmes(n)は高くなる。
【0085】
好ましくは、測定プロファイルMP(n+1)のt1からt2までの時間の長さが短いほど、測定温度値Tmes(n)は高くなる。
【0086】
好ましくは、工程(c)~(f)は連続した順序で実施される。
【0087】
好ましくは、工程(a)は、工程(c)の前、より好ましくは工程(d)の前、最も好ましくは工程(e)の前に実施される。
【0088】
好ましくは、本方法は、以下の順序:
(a)-(b)-(c)-(d)-(e)-(f)、
(b)-(a)-(c)-(d)-(e)-(f)、
(b)-(c)-(a)-(d)-(e)-(f)、又は
(b)-(c)-(d)-(a)-(e)-(f)
のうちの1つで実行される。
【0089】
好ましくは、工程(b)は、工程(a)の前、より好ましくは工程(c)の前、最も好ましくは工程(d)の前に実施される。
【0090】
好ましくは、本方法は、以下の順序:
(b)-(a)-(c)-(d)-(e)-(f)、
(a)-(b)-(c)-(d)-(e)-(f)、又は
(a)-(c)-(b)-(d)-(e)-(f)
のうちの1つで実行される。
【0091】
好ましくは、本方法は複数回実施される。より好ましくは、本方法は、溶融金属浴が臨界温度値Tcriに達するまで複数回実施される。
【0092】
好ましくは、本方法は、以下の工程(g)~(i):
(g)モデルF(t)、臨界温度値Tcri、及び測定温度値Tmes(n+1)に基づいて、フィッティングされた加熱速度Rheat(n+1)を決定する工程であって、Rheat(n+1)は、
Rheat(n+1)=ΔTheat(n+1)/Δtとして定義される、工程と、
(h)臨界温度値Tcriと温度値Tmes(n)との温度差ΔT(n)と、フィッティングされた加熱速度Rheat(n)とに基づいて、時点tcal(n+2)を計算する工程であって、
ΔT(n+1)=Tcri-Tmes(n+1)及び
tcal(n+2)=t(n+1)+(ΔT(n+1)/Rheat(n+1))である、
工程と、
(i)時点tcal(n+2)で溶融金属浴の測定温度値Tmes(n+2)を測定する工程と、
を含む。
【0093】
好ましくは、フィッティングされた加熱速度Rheat(n+1)は、フィッティングされた加熱速度Rheat(n)よりも大きく、すなわち、温度差ΔTheat(n+1)は温度差ΔTheat(n)よりも大きい。
【0094】
好ましくは、工程(g)~(i)は連続した順序で実施される。
【0095】
好ましくは、工程(g)~(i)は、工程(a)~(f)の後に実施される。
【0096】
好ましくは、本方法は、以下の順序:
(a)-(b)-(c)-(d)-(e)-(f)-(g)-(h)-(i)、
(b)-(a)-(c)-(d)-(e)-(f) (g)-(h)-(i)、
(b)-(c)-(a)-(d)-(e)-(f) (g)-(h)-(i)、又は
(b)-(c)-(d)-(a)-(e)-(f) (g)-(h)-(i)
のうちの1つで実行される。
【0097】
本発明は更に、溶融金属浴の一連の少なくとも2つの温度値Tmes(n)及びTmes(n+1)を決定するためのシステムであって、装置及びモジュールを備え、モジュールは装置と相互作用するように適合されているシステムを提供する。
【0098】
好ましくは、システムは、本発明による方法であって、
(a)溶融金属浴の経時的な温度推移を記述するモデルF(t)を供給する工程と、
(b)臨界温度値Tcriを定義する工程と、
(c)時点t(n)で溶融金属浴の測定温度値Tmes(n)を測定する工程と、
(d)モデルF(t)、臨界温度値Tcri、及び測定温度値Tmes(n)に基づいて、フィッティングされた加熱速度Rheat(n)を決定する工程であって、Rheat(n)は、
Rheat(n)=ΔTheat(n)/Δt
として定義される、工程と、
(e)臨界温度値Tcriと温度値Tmes(n)との温度差ΔT(n)と、フィッティングされた加熱速度Rheat(n)とに基づいて、時点tcal(n+1)を計算する工程であって、
ΔT(n)=Tcri-Tmes(n)及び
tcal(n+1)=t(n)+(ΔT(n)/Rheat(n))である、
工程と、
(f)時点tcal(n+1)で溶融金属浴の測定温度値Tmes(n+1)を測定する工程と、
を含む方法を実行するように構成されている。
【0099】
本発明の方法に関する好ましい実施形態については、上記の好ましい実施形態を参照されたい。
【0100】
本発明によるシステムは、装置を備え、装置は、光学コアワイヤ及び検出器を含む。光学コアワイヤ及び検出器に関する好ましい実施形態については、上述の好ましい実施形態を参照されたい。
【0101】
本発明によるシステムは、モジュールを含み、モジュールは、記憶ユニット、処理ユニット、及び制御ユニットを含む。
【0102】
好ましくは、記憶ユニット、処理ユニット、及び制御ユニットは、互いに相互作用するように構成されている。
【0103】
本発明によれば、モジュールの記憶ユニットは
(a1)溶融金属浴の経時的な温度推移を記述するモデルF(t)を供給するための記憶要素と、
(a2)臨界温度値Tcriを定義するための記憶要素と、
を含む。
【0104】
本発明によれば、モジュールの処理ユニットは
(b1)モデルF(t)、臨界温度値Tcri、及び測定温度値Tmesに基づいて、フィッティングされた加熱速度Rheatを決定するための処理要素であって、Rheatは、
Rheat=ΔTheat/Δt
として定義される、処理要素と、
(b2)臨界温度値Tcriと測定温度値Tmesとの温度差ΔTと、フィッティングされた加熱速度Rheatとに基づいて、時点tcalを計算するための処理要素であって、
ΔT=Tcri-Tmes及び
tcal=t+(ΔT/Rheat)である、
処理要素と、
を含む。
【0105】
好ましい実施形態では、処理ユニットは、記憶ユニットに記憶された情報を処理するように構成されている。
【0106】
本発明によれば、モジュールの制御ユニットは
(c1)溶融金属浴の温度値Tmesを測定するための制御要素を含む。
【0107】
好ましい実施形態では、制御ユニットは、装置を制御するように構成されている。
【0108】
好ましい実施形態では、システムは送り手段を備える。本発明の文脈では、送り手段は、溶融金属浴内への光学コアワイヤの送りを可能にする手段として理解され得る。このような手段は、フィーダ、送り制御装置、ストレートナー及びガイド管からなる群から選択することができる。
【0109】
好ましい実施形態によれば、システムは、光学コアワイヤの長さに対応するコイルを更に備える。
【図面の簡単な説明】
【0110】
本発明の根底にある概念は、図面に示された実施形態に関してより詳細に後述される。しかしながら、本発明は、示される正確な構成及び手段に限定されないことが理解されるべきである。ここで、
【0111】
【
図1】光学コアワイヤの様々な設計の概略断面図である。
【
図2】温度が決定される溶融金属浴7を有する例示的な設備6の概略図である。
【
図3】代表的な測定プロファイルの適用中の光学コアワイヤの前端の浸漬を示す位置-時間グラフである。
【
図4】別の代表的な測定プロファイルの適用中の光学コアワイヤの前端の浸漬を示す位置-時間グラフである。
【
図5】本発明の一実施形態によるシステムの概略図である。
【
図6】本発明の一実施形態によるモジュールの概略図である。
【
図7】本発明の例示的な一実施形態による方法を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0112】
図1は、本発明の例示的な実施形態による光学コアワイヤの様々な設計の概略断面図である。
図1Aは、金属管3’によって取り囲まれた光ファイバ2’を含む光学コアワイヤ1’を示す。
【0113】
図1Bは、金属管3’’によって取り囲まれた光ファイバ2’’を含む光学コアワイヤ1’’を示す。第2の金属管4’’が、金属管3’’を更に取り囲んでいる。2つの金属管の間の空隙5”は固体材料で充填されていない。すなわち、空隙はガス又はガス混合物を含んでもよい。
【0114】
図1Cは、金属管3’’’及び第2の金属管4’’’によって取り囲まれた光ファイバ2’’’を含む光学コアワイヤ1’’’を示す。2つの金属管の間の空隙5’’’は、充填材料、例えば有機材料又はEガラスからのファイバで充填されている。
【0115】
図2は、温度が決定される溶融金属浴7を有する例示的な設備6の概略図である。
【0116】
設備6は、コイル8上に少なくとも部分的に設置されて、測定を行うためにコイル8から少なくとも部分的に巻き出される光学コアワイヤ1を備える。光学コアワイヤ9の一端は、検出器10に接続されており、検出器10は、光学コアワイヤ1及び検出器10で取得されたデータを処理するためにコンピュータシステム(図示せず)に接続されることができる。溶融金属浴7は、電気アーク炉、取鍋、タンディッシュ、又は溶融金属処理のための当業者に知られている任意の容器であってよい容器11内に収容されている。光学コアワイヤ1は、フィーダ12によってガイド管13を通して、入り口14を有する容器11内に導入される。図示の構成は一例として使用されており、それぞれの入り口を有する屋根は本発明の前提条件ではない。
【0117】
図示の構成は、前端15が溶融金属浴MBSの表面の下方に浸漬された状態の光学コアワイヤ1の例示的な測定位置を示している。本実施形態では、溶融金属浴MBSの表面に対する光学コアワイヤ1の浸漬角度は90°である。しかしながら、この角度は、冶金設備の構造の詳細に応じて可変である。
【0118】
コイル8から容器の入り口14まで延在する光学コアワイヤ1の一部の温度は低いと考えることができ、室温から100℃までの範囲の温度であり得る。入り口14を溶融金属浴7の方向に通過すると、最初に最高1700℃又はそれ以上の高温雰囲気に遭遇し、次にスラグ層17に遭遇し、次に溶融金属浴7に遭遇する。容器への入り口14には、ガイド管13内への金属及びスラグの侵入を防止するために吹き込みランス18を設けることができる。
【0119】
温度測定値を取得するために、光学コアワイヤ1は、その前端が浸漬端15にある状態で、溶融金属浴7に向かって必要な浸漬深さまで送られる。信頼できる温度測定値を取得するために、溶融金属浴中のほぼ一定の浸漬深さで測定することが望ましくてもよい。適切な送りシステム12は、光学コアワイヤ1の送り速度を正確に制御する。
【0120】
測定シーケンスの後、溶融金属浴に浸漬された光学コアワイヤの部分19は溶融され、したがって、消耗される。この部分の長さはLCで示されている。測定が行われた後、高温雰囲気内に位置し、スラグ層を通って延びている光学コアワイヤの部分20は、コイル8の方向に送り戻され、次の測定のために再使用されてもよい。
【0121】
溶融金属浴7の温度は重要なプロセスパラメータであるので、金属製造プロセス中のその推移の詳細な知識が望まれ、プロセスは一連の測定を伴う。典型的なEAFプロセスでは、溶融金属の温度は、より高い温度よりもより低い温度でより低速で上昇する。
【0122】
低い温度範囲では、溶融金属浴は依然として未溶融部分を含むが、高い温度範囲では、金属浴に含まれる溶融金属は均質である。したがって、エネルギー入力の全てが材料の加熱に向けられ、固体部分の融解によって消費されることがない。
【0123】
温度測定値は、通常、ほとんどの鋼の場合、典型的には1500℃の温度値を超える平坦浴に達した後に取得される。この温度での加熱速度は、典型的には10℃/分程度である。典型的な目標タッピング温度の温度範囲内、典型的には1650℃では、加熱速度は、エネルギー入力に応じて80℃/分まで上昇することができる。
【0124】
図3は、代表的な測定プロファイルの適用中の光学コアワイヤの前端の浸漬を示す位置-時間グラフである。x軸は時間を示し、y軸は前端の位置を示す。溶融金属浴MB
Sの表面の位置が方向付けのために示されている。測定の開始に先立って、すなわち、t0の前に、前端が開始点に配置される。これは、冶金容器の内側であってもよく、入り口、すなわち、光学コアワイヤが容器に入る点の近くに近接していてもよい。光学コアワイヤは、t0からt2までの時間にわたって、溶融金属浴に向かって及び溶融金属浴内に送り速度で送られる。この時間の長さは、典型的には数秒の範囲内である。光学コアワイヤの前端は、時点t1で溶融金属浴に入り、すなわち、t1は、前端が溶融金属浴の表面の下方に浸漬される時点である。図示のグラフでは、単一の送り速度が適用されているが、送りは、送り速度の異なるいくつかの段階を含んでもよい。送りを行わない段階、すなわち、一時停止段階を、別の好ましい実施形態を表す
図4に示すグラフに示されているように、測定の実施中に含めることができる。温度測定値は、t1からt2までの測定時間中に取得される。信頼できる測定値を取得するためには、前端を溶融金属浴の表面の下方に浸漬しなければならない。送りの初期段階で取得された温度値は、溶融金属浴のバルク温度を表さないことが多い。t2の後に、光学コアワイヤを溶融金属浴から後退させて、表面の上方の位置に戻す。理想的には、溶融金属浴L
Cの表面下に浸漬された光学コアワイヤの部分は、t2までに、消耗される。
【0125】
光学コアワイヤの浸漬部分が溶融金属浴の表面まで完全に消耗されるのに必要な時間は、溶融金属の温度及び光学コアワイヤの特性に依存する。上述の融解又は消耗挙動に影響を及ぼす光学コアワイヤの特性は、その設計及びそれを構成する材料を含む。例えば、より厚い壁厚を有する金属管は、より薄い壁厚を有する同じ材料の金属管よりも遅く融解する。いずれの場合も、測定は常に、光学コアワイヤの特定の部分の消耗に関連する。したがって、測定回数を最小限に抑えることにより、光学コアワイヤの消耗量が最小限に抑えられる。
【0126】
図5は、本発明の方法を実行するように構成された、本発明の一実施形態によるシステム30の概略図である。したがって、システム30は、溶融金属浴の経時的な温度推移を記述するモデルを供給するように構成されている。システム30は、臨界温度、例えば、溶融金属浴の目標温度を定義するように更に構成されている。更に、システム30は、臨界温度の入力と、測定温度と、溶融金属浴の時間依存性の温度推移を記述するモデルとに基づいて、加熱速度を決定するように構成されている。システム30は、第1の時点と、決定された加熱速度と、温度差とに基づいて、時点を計算するように更に適合されている。更に、システム30は、温度値を測定するように構成されている。
【0127】
システムは装置40を備え、装置は、光学コアワイヤ及び検出器を含む。更に、システムはモジュール50を備える。
図6は、モジュール50の概略図をより詳細に示す。モジュール50は、記憶ユニット60、処理ユニット70、及び制御ユニット80を備える。
【0128】
以下では、本発明による例示的な条件が与えられる。
【実施例】
【0129】
光学コアワイヤを含む装置を、
図2による代表的な電気アーク炉(EAF)設備に設置した。光学コアワイヤは、コア径が50μmのグレーデッドインデックスファイバと、外径が1,3mmのステンレス鋼管とを備えていた。この金属管付きファイバを、外径6mm、肉厚0,3mmのステンレス管に埋め込んだ。
【0130】
EAFにスクラップを装填し、融解プロセスを開始した。1650℃(T
Cri)のタッピング温度を目標とした。
図7は、適用されたプロセスパラメータを有する特定の冶金設備の予想される経時的な温度推移を示す。基礎となるモデルは、以前のプロセスからの記録された温度の最大予想上昇に基づく。EAFの消費された蓄積電力に基づいて、第1の測定が開始され、温度値1520℃(
図7のt(n)で指定された時点でのT
mes(n))が求められた。測定温度から臨界温度までの130℃の温度差ΔT(n)と、予想される温度推移に従ってタッピング温度に達するまでの4分の予想時間(t
CriまでのΔt(n))とに基づいて、32,5℃/分の平均加熱速度R
heat(n)が予想された。したがって、次の測定の時点t(n+1)を、最初の測定の4分後に設定した。
【0131】
第2の測定では、温度値1600℃(
図7のt(n+1)で指定された時点でのT
mes(n+1))が求められた。50℃の温度差及び、目標タッピング温度への予想到達時点である第2の測定の43秒後に従って、第3の測定をこの第2の測定の43秒後に設定した。すなわち、予想加熱速度は70℃/分であった。
【符号の説明】
【0132】
1、1‘、1‘‘、1‘‘‘ 光学コアワイヤ
2‘、2‘‘、2‘‘‘ 光ファイバ
3‘、3‘‘、3‘‘‘ 金属管
4‘‘、4‘‘‘ 第2金属管
5‘‘、5‘‘‘ 金属管間の空隙
6 設備
7 溶融金属浴
8 コイル
9 反対端(検出器に接続されたコアワイヤの端)
10 検出器
11 容器;冶金容器
12 フィーダ
13 ガイド管
14 入り口
15 光学コアワイヤの前端
MBS 溶融金属浴の表面
17 スラグ層
18 吹き込みランス
19 溶融金属浴に浸漬されたコアワイヤの部分
LC 溶融金属浴に浸漬された光学コアワイヤの長さ
20 高温雰囲気及びスラグにさらされたコアワイヤの部分
30 システム
40 装置
50 モジュール
60 記憶ユニット
70 処理ユニット
80 制御ユニット