(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】水晶振動素子および水晶振動子
(51)【国際特許分類】
H03H 9/19 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
H03H9/19 F
(21)【出願番号】P 2022557053
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(86)【国際出願番号】 JP2021037940
(87)【国際公開番号】W WO2022080426
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-02-13
(31)【優先権主張番号】P 2020172341
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】西村 俊雄
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-127743(JP,A)
【文献】特開2003-273682(JP,A)
【文献】特開2010-074840(JP,A)
【文献】特開平11-068501(JP,A)
【文献】特開2015-089093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007-3/10
H03H9/00-9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基軸及び当該第1基軸と交差する第2基軸によって規定される主面を有する水晶片と、
前記水晶片の主面に設けられた励振電極部とを備え、
前記水晶片は、前記励振電極部に電圧が印加された場合に、前記主面と交差する方向を厚み方向としたとき、前記厚み方向と前記第1基軸とによって規定される面において振動する厚み滑り振動を行い、
前記励振電極部は、平板部と、前記水晶片の前記主面に沿う方向における電極端部に位置し、前記平板部よりも膜厚が大きい膜厚部を有し、
前記膜厚部は、前記主面における前記第1基軸の軸線方向の端部に位置し、前記第2基軸の軸線方向に延びる前記平板部から突出した凸部としての第1凸部と、
前記主面における前記第2基軸の軸線方向の端部に位置し、前記第1基軸の軸線方向に延びる前記平板部から突出した凸部としての第2凸部と、
を有し、
前記第1凸部の断面積をSfxとし、前記第2凸部の断面積をSfzとし、前記水晶片の厚みをTとし、前記平板部の厚みをTeとするとき、
0<Sfx
/T
2
≦0.84×(Te/T)+0.07
かつ、
0<Sfz
/T
2
≦0.29×(Te/T)+0.07
との条件を満た
し、
前記第1凸部および前記第2凸部の材質は、アルミニウムである、
水晶振動素子。
【請求項2】
前記第1凸部の突出方向と交差する方向における前記第1凸部の幅は、前記第2凸部の突出方向と交差する方向における前記第2凸部の幅よりも大きい、
請求項
1に記載の水晶振動素子。
【請求項3】
前記第1凸部の突出量は、前記第2凸部の突出量よりも大きい、
請求項1
又は2に記載の水晶振動素子。
【請求項4】
前記第1基軸と前記水晶片の厚み方向とによって規定される面に沿う方向に切断した前記第1凸部の断面積は、前記第2基軸と前記水晶片の厚み方向とによって規定される面に沿う方向に切断した前記第2凸部の断面積よりも大きい、
請求項1から
3のいずれか1項に記載の水晶振動素子。
【請求項5】
第1基軸及び当該第1基軸と交差する第2基軸によって規定される主面を有する水晶片と、
前記水晶片の前記主面に設けられた励振電極部と、
を備え、
前記水晶片は、前記励振電極部に電圧が印加された場合に前記主面と交差する方向を厚み方向としたとき、前記厚み方向と前記第1基軸とによって規定される面において振動する厚み滑り振動を行い、
前記励振電極部は、平板部と、前記水晶片の前記主面に沿う方向における電極端部に位置し、前記平板部よりも膜厚が大きい膜厚部を有し、
前記膜厚部は、
前記平板部から突出した凸部を有し、
前記凸部は、前記第2基軸の軸線方向に延びる凸部のみを含み、
前記凸部は、前記主面における前記第1基軸の軸線方向の端部に位置し、
前記凸部の断面積をSfxとし、前記水晶片の厚みをTとし、前記平板部の厚みをTeとするとき、
0<Sfx
/T
2
≦0.84×(Te/T)+0.07
との条件を満た
し、
前記凸部の材質は、アルミニウムである、
水晶振動素子。
【請求項6】
第1基軸及び当該第1基軸と交差する第2基軸によって規定される主面を有する水晶片と、
前記水晶片の前記主面に設けられた励振電極部と、
を備え、
前記水晶片は、前記励振電極部に電圧が印加された場合に前記主面と交差する方向を厚み方向としたとき、前記厚み方向と前記第1基軸とによって規定される面において振動する厚み滑り振動を行い、
前記励振電極部は、平板部と、前記水晶片の前記主面に沿う方向における電極端部に位置し、前記平板部よりも膜厚が大きい膜厚部を有し、
前記膜厚部は、
前記平板部から突出した凸部を有し、
前記凸部は、前記第1基軸の軸線方向に延びる凸部のみを含み、
前記凸部は、前記主面における前記第2基軸の軸線方向の端部に位置し、
前記凸部の断面積をSfzとし、前記水晶片の厚みをTとし、前記平板部の厚みをTeとするとき、
0<Sfz
/T
2
≦0.29×(Te/T)+0.07
との条件を満た
し、
前記凸部の材質は、アルミニウムである、
水晶振動素子。
【請求項7】
前記水晶片の結晶軸である互いに交差する第1軸、第2軸、第3軸のうち、第3軸を第1軸の周りに所定角度だけ傾斜させた軸を第3傾斜軸としたとき、第1軸を第1基軸に対応させるとともに第3傾斜軸を第2基軸に対応させる、
請求項1から
6のいずれか1項に記載の水晶振動素子。
【請求項8】
前記水晶片の結晶軸である互いに交差する第1軸、第2軸、第3軸のうち、第1軸を第3軸の周りに所定角度だけ傾斜させた軸を第1傾斜軸とし、第3軸を第1傾斜軸の周りに所定角度だけ傾斜させた軸を第3傾斜軸としたとき、第1傾斜軸を第1基軸に対応させるとともに第3傾斜軸を第2基軸に対応させる、
請求項1から
7のいずれか1項に記載の水晶振動素子。
【請求項9】
前記凸部は、前記励振電極部における前記平板部と同一の材料により構成される、
請求項1から
8のいずれか1項に記載の水晶振動素子。
【請求項10】
前記凸部は、前記励振電極部における前記平板部と異なる材料により構成される、
請求項1から
9のいずれか1項に記載の水晶振動素子。
【請求項11】
請求項1から
10のいずれか1項に記載の水晶振動素子と、
前記水晶振動素子が搭載されたベース部材と、
前記ベース部材に接合されて前記水晶振動素子を封止する蓋部材と
を備える、水晶振動子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動素子および水晶振動子に関する。
【背景技術】
【0002】
発振装置や帯域フィルタなどに用いられる基準信号の信号源に、厚み滑り振動を主振動とする水晶振動子が広く用いられている。例えば、特許文献1には、励振電極の逆メサ形状のメサ厚み比を変化させつつ、振動変位の形状を平坦にすることで主振動以外の周波数で起こる振動であるスプリアス発振を低減する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術においては、スプリアス発振をより一層低減することが望まれていた。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、スプリアス発振をより一層低減することができる水晶振動素子および水晶振動子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る水晶振動素子は、第1基軸及び当該第1基軸と交差する第2基軸によって規定される主面を有する水晶片と、水晶片の主面に設けられた励振電極部とを備え、水晶片は、励振電極部に電圧が印加された場合に主面と交差する方向を厚み方向としたとき、厚み方向と第1基軸とによって規定される面において振動する厚み滑り振動を行い、励振電極部は、平板部と、前記水晶片の主面の電極端部に位置し、平板部よりも膜厚が大きい膜厚部を有し、膜厚部は、主面における第1基軸の軸線方向の端部に位置し、第2基軸の軸線方向に延びる平板部から突出した凸部としての第1凸部と、主面における第2基軸の軸線方向の端部に位置し、第1基軸の軸線方向に延びる平板部から突出した凸部としての第2凸部と、を有し、前記第1基軸と前記水晶片の厚み方向とによって規定される面に沿う方向に切断した第1凸部の断面積は、第2基軸と前記水晶片の厚み方向とによって規定される面に沿う方向に切断した第2凸部の断面積よりも大きい。
【0007】
本発明の一側面に係る水晶振動素子は、第1基軸及び第1基軸と交差する第2基軸によって規定される主面を有する水晶片と、水晶片の主面に設けられた励振電極部と、を備え、水晶片は、励振電極部に電圧が印加された場合に主面と交差する方向を厚み方向としたとき、前記厚み方向と前記第1基軸とによって規定される面において振動する厚み滑り振動を行い、励振電極部は、平板部と、水晶片の主面に沿う方向における電極端部に位置し、平板部よりも膜厚が大きい膜厚部を有し、膜厚部は、主面における第1基軸の軸線方向の端部に位置し、第2基軸の軸線方向に延びる凸部としての第1凸部を有する。
【0008】
本発明の一側面に係る水晶振動素子は、第1基軸及び第1基軸と交差する第2基軸によって規定される主面を有する水晶片と、水晶片の主面に設けられた励振電極部と、を備え、水晶片は、励振電極部に電圧が印加された場合に主面と交差する方向を厚み方向としたとき、前記厚み方向と前記第1基軸とによって規定される面において振動する厚み滑り振動を行い、励振電極部は、平板部と、水晶片の主面に沿う方向における電極端部に位置し、平板部よりも膜厚が大きい膜厚部を有し、膜厚部は、主面における第2基軸の軸線方向の端部に位置し、第1基軸の軸線方向に延びる凸部としての第2凸部を有する。
【0009】
本発明の一側面に係る水晶振動子は、上記構成の水晶振動素子と、水晶振動素子が搭載されたベース部材と、ベース部材に接合されて水晶振動素子を封止する蓋部材とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スプリアス発振をより一層低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す断面図である。
【
図3】水晶片の第1基軸及び第2基軸によって規定される主面の一例を説明するための図である。
【
図4】(a)、(b)は、水晶片の第1基軸及び第2基軸によって規定される主面の一例を説明するための図である。
【
図5】第1実施形態に係る水晶振動素子の平面図である。
【
図6】第1実施形態に係る水晶振動素子の断面図である。
【
図7】第1実施形態に係る水晶振動素子の電気機械結合定数を示すグラフである。
【
図8】第1実施形態に係る水晶振動素子の振動特性を示すグラフである。
【
図9】第1実施形態に係る水晶振動素子の振動特性を示すグラフである。
【
図10】第2実施形態に係る水晶振動素子の平面図である。
【
図11】第2実施形態に係る水晶振動素子の断面図である。
【
図12】第2実施形態に係る水晶振動素子の電気機械結合定数を示すグラフである。
【
図13】第2実施形態に係る水晶振動素子の振動特性を示すグラフである。
【
図14】第3実施形態に係る水晶振動素子の平面図である。
【
図15】第3実施形態に係る水晶振動素子の断面図である。
【
図16】第3実施形態に係る水晶振動素子の電気機械結合定数を示すグラフである。
【
図17】第3実施形態に係る水晶振動素子の振動特性を示すグラフである。
【
図18】第4実施形態に係る水晶振動素子の電気機械結合定数を示すグラフである。
【
図19】第4実施形態に係る水晶振動素子の振動特性を示すグラフである。
【
図20】第4実施形態に係る水晶振動素子の振動特性を示すグラフである。
【
図21】第5実施形態に係る水晶振動素子の電気機械結合定数を示すグラフである。
【
図22】第5実施形態に係る水晶振動素子の振動特性を示すグラフである。
【
図23】第6実施形態に係る水晶振動素子の電気機械結合定数を示すグラフである。
【
図24】第6実施形態に係る水晶振動素子の振動特性を示すグラフである。
【
図25】第6実施形態に係る水晶振動素子の振動特性を示すグラフである。
【
図26】第6実施形態に係る水晶振動素子の振動特性を示すグラフである。
【
図27】第6実施形態に係る水晶振動素子の振動特性を示すグラフである。
【
図28】第6実施形態に係る水晶振動素子の振動特性を示すグラフである。
【
図29】第6実施形態に係る水晶振動素子の振動特性を示すグラフである。
【
図30】第6実施形態に係る水晶振動素子の振動特性を示すグラフである。
【
図31】第6実施形態に係る水晶振動素子の振動特性を示すグラフである。
【
図32】第6実施形態に係る水晶振動素子の振動特性を示すグラフである。
【
図33】第6実施形態に係る水晶振動素子の振動特性を示すグラフである。
【
図34】第6実施形態に係る水晶振動素子の振動特性を示すグラフである。
【
図35】第6実施形態に係る水晶振動素子の振動特性を示すグラフである。
【
図36】第6実施形態に係る水晶振動素子の振動特性を示すグラフである。
【
図37】第7実施形態に係る水晶振動素子の振動特性を示すグラフである。
【
図38】第7実施形態に係る水晶振動素子の振動特性を示すグラフである。
【
図39】第7実施形態に係る水晶振動素子の振動特性を示すグラフである。
【
図40】第7実施形態に係る水晶振動素子の振動特性を示すグラフである。
【
図41】第7実施形態に係る水晶振動素子の振動特性を示すグラフである。
【
図42】第7実施形態に係る水晶振動素子の振動特性を示すグラフである。
【
図43】第7実施形態に係る水晶振動素子の振動特性を示すグラフである。
【
図44】水晶振動素子の機能を説明するためのグラフである。
【
図45】水晶振動素子の機能を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
図1~
図6を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る水晶振動子1の構成について説明する。
【0013】
各々の図面には、各々の図面相互の関係を明確にし、各部材の位置関係を理解する助けとするために、便宜上、X軸、Y´軸及びZ´軸からなる直交座標系を付すことがある。X軸、Y´軸及びZ´軸は各図面において互いに対応している。X軸、Y´軸及びZ´軸は、それぞれ、後述の水晶片11の結晶軸(Crystallographic Axes)に対応している。X軸が電気軸(極性軸)、Y軸が機械軸、Z軸が光学軸に対応している。Y´軸及びZ´軸は、それぞれ、Y軸及びZ軸をX軸の周りにY軸からZ軸の方向に35度15分±1分30秒回転させた軸である。X軸は、第1軸の一例であり、Y軸は、第2軸の一例であり、Z軸は、第3軸の一例である。
【0014】
図1及び
図2に示すように、水晶振動子1は、水晶振動素子10と、ベース部材30と、蓋部材40と、接合部材50と、を備えている。水晶振動素子10は、ベース部材30と蓋部材40との間に設けられている。
【0015】
水晶振動素子10は、薄片状の水晶片11と、第1励振電極14aと、第2励振電極14bと、第1引出電極15aと、第2引出電極15bと、第1接続電極16aと、第2接続電極16bとを備えている。水晶片11は、人工水晶(Synthetic Quartz Crystal)の結晶体を切断及び研磨加工して得られる水晶基板(例えば、水晶ウェハ)をエッチング加工することで形成される。水晶片11は、第1励振電極14a及び第2励振電極14bに電圧が印加された場合に水晶片11の主面と交差する方向を厚み方向としたとき、厚み方向と水晶片11の第1基軸とによって規定される面において振動する厚み滑り振動を行う。
【0016】
図3及び
図4は、水晶片11の第1基軸及び第2基軸によって規定される主面の一例を説明するための図である。なお、
図3及び
図4は、水晶片11の主振動が厚み滑り振動である場合の水晶片11のカット角の一例を示すものであり、水晶片11の主振動が厚み滑り振動であれば、本発明をその他のカット角に適用してもよい。
【0017】
図3に示す例では、水晶片11の結晶軸である互いに交差するX軸、Y軸、Z軸のうち、Z軸をX軸の周りに所定角度θだけ傾斜させた軸をZ´軸(第3傾斜軸)としたとき、X軸を第1基軸に対応させるとともにZ´軸を第2基軸に対応させる。この場合、第1基軸は、例えば、X軸をZ´軸の周りに僅かに傾斜させた軸を含む。また、第2基軸は、Z軸をX軸の周りに所定角度から僅かにずれた角度で傾斜させた軸を含む。同図に示す例では、水晶片11のカット角は、例えば、ATカット、BTカット、CTカットを含む。
【0018】
ATカット型の水晶片11は、例えば、Z軸をX軸の周りに約35度傾斜させたZ´軸とX軸とによって特定される面と平行な面が主面となる。なお、ATカット型の水晶片11は、例えば、Z軸をX軸の周りに約35度から僅かにずれた角度で傾斜させたZ´軸と、X軸をZ軸の周りに僅かに傾斜させたX´軸とによって特定される面と平行な面を主面としてもよい。ATカット型の水晶片11を用いた水晶振動素子10は、広い温度範囲で高い周波数安定性を有する。BTカット型の水晶片11は、例えば、Z軸をX軸の周りに約-49度傾斜させたZ´軸とX軸とによって特定される面と平行な面が主面となる。CTカット型の水晶片11は、例えば、Z軸をX軸の周りに約38度傾斜させたZ´軸とX軸とによって特定される面と平行な面が主面となる。
【0019】
図4に示す例では、水晶片の結晶軸である互いに交差するX軸、Y軸、Z軸のうち、X軸をZ軸の周りに所定角度φだけ傾斜させた軸をX´軸(第1傾斜軸)とし(
図4(a)参照)、Z軸をX´軸の周りに所定角度θだけ傾斜させた軸をZ´軸(第3傾斜軸)としたとき(
図4(b)参照)、X´軸を第1基軸に対応させるとともにZ´軸を第2基軸に対応させる。この場合、第1基軸は、例えば、X軸をZ軸の周りに所定角度φから僅かにずれた角度で傾斜させた軸を含む。また、第2基軸は、Z軸をX´軸の周りに所定角度から僅かにずれた角度で傾斜させた軸を含む。同図に示す例では、水晶片11のカット角は、例えば、SCカットを含む。SCカット型の水晶片11は、例えば、X軸をZ軸の周りに約22度傾斜させたX´軸と、Z軸をX´軸の周りに約34度傾斜させたZ´軸とによって特定される面と平行な面が主面となる。
【0020】
図1及び
図2に戻り、ATカット型の水晶片11は、X軸方向に平行な長辺が延在する長辺方向と、Z´軸方向に平行な短辺が延在する短辺方向と、Y´軸方向に平行な厚さが延在する厚さ方向を有する板状である。水晶片11の第1主面11A及び第2主面11Bは、矩形状をなしている。
【0021】
水晶振動素子10は、励振電極部14を備える。励振電極部14は、例えば、第1励振電極14aと、第2励振電極14bとを含む。第1励振電極14aは、水晶片11の第1主面11Aに設けられている。第2励振電極14bは、水晶片11の第2主面11Bに設けられている。第1励振電極14a及び第2励振電極14bは、水晶片11を挟んで互いに対向している。第1励振電極14a及び第2励振電極14bは、矩形状をなしており、平面視において互いに重なり合うように配置されている。
【0022】
第1励振電極14a及び第2励振電極14bは、水晶片11の第1主面11Aに沿う方向における電極端部に位置し、平板部14Bよりも膜厚が大きい膜厚部14Cを有する。
【0023】
水晶振動素子10は、第1引出電極15aと、第2引出電極15bとを有する。第1引出電極15aは、水晶片11の第1主面11Aに設けられている。第1引出電極15aは、第1励振電極14aと第1接続電極16aとを電気的に接続している。第2引出電極15bは、水晶片11の第2主面11Bに設けられている。第2引出電極15bは、第2励振電極14bと第2接続電極16bとを電気的に接続している。
【0024】
第1接続電極16aは、第1引出電極15aにおける-X軸方向側の端部から+Z´軸方向に延び、水晶片11の+Z´軸方向側の端面で折り返されて、水晶片11の第2主面11Bを-Z´軸方向側に延びている。第1励振電極14aとベース部材30とは、第1引出電極15a及び第1接続電極16aを介して電気的に接続されている。第2接続電極16bは、第2引出電極15bにおける-X軸方向側の端部から-Z´軸方向に延び、水晶片11の-Z軸方向側の端面で折り返されて、水晶片11の第2主面11Bを+Z´軸方向側に延びている。第2励振電極14bとベース部材30とは、第2引出電極15b及び第2接続電極16bを介して電気的に接続されている。
【0025】
ベース部材30は、例えば絶縁性セラミック(アルミナ)などの焼結材である。ベース部材30の上面31Aには、水晶振動素子10が搭載されている。ベース部材30の下面31Bには、図示しない外部の回路基板が実装されている。
【0026】
ベース部材30は、第1電極パッド33aと、第2電極パッド33bと、第1外部電極35aと、第2外部電極35bと、第3外部電極35cと、第4外部電極35dと、第1導電性保持部材36aと、第2導電性保持部材36bとを備えている。
【0027】
第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bは、ベース部材30の上面に設けられ、水晶振動素子10に対して電気的に接続されている。
【0028】
第1外部電極35a及び第2外部電極35bは、ベース部材30の下面31Bに設けられ、図示しない外部の基板と水晶振動子1とを電気的に接続する。第3外部電極35c及び第4外部電極35dは、ベース部材30の下面31Bに設けられ、電気信号等が入力されないダミー電極である。第1電極パッド33aは、ベース部材30をY´軸方向に沿って貫通する第1貫通電極34aを介して、第1外部電極35aに電気的に接続されている。第2電極パッド33bは、ベース部材30をY´軸方向に沿って貫通する第2貫通電極34bを介して、第2外部電極35bに電気的に接続されている。
【0029】
第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bは、例えば、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂等を含む導電性接着剤の硬化物であり、第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bの主成分はシリコーン樹脂である。第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bは導電性粒子を含んでおり、当該導電性粒子としては例えば銀(Ag)を含む金属粒子が用いられる。
【0030】
第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bは、水晶振動素子10とベース部材30とを電気的に接続している。第1導電性保持部材36aは、第1電極パッド33aと第1接続電極16aとを接合している。第2導電性保持部材36bは、第2電極パッド33bと第2接続電極16bとを接合している。第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bは、水晶振動素子10が励振可能となるように、ベース部材30から間隔を空けて水晶振動素子10を保持している。
【0031】
蓋部材40は、ベース部材30に接合され、ベース部材30との間に内部空間49を形成している。内部空間49には、水晶振動素子10が収容されている。蓋部材40の材質は特に限定されるものではないが、例えば金属などの導電材料により構成されている。蓋部材40が導電材料により構成されることで、内部空間49への電磁波の出入りが低減される。
【0032】
接合部材50は、蓋部材40の側壁部の先端と、ベース部材30の上面31Aとを接合し、内部空間49を封止している。接合部材50は、ガスバリア性の高いことが望ましく、透湿性の低いことがさらに望ましい。接合部材50は、例えば、エポキシ樹脂を主成分とする接着剤の硬化物である。接合部材50を構成する樹脂系接着剤は、例えば、ビニル化合物、アクリル化合物、ウレタン化合物、シリコーン化合物などを含んでもよい。
【0033】
次に、本実施形態に係る水晶振動素子10の励振電極部14の構成について、特に、励振電極部14の膜厚部14Cの構成に着目して説明する。なお、以下の説明では、明細書の説明理解の便宜上、第1励振電極14aの膜厚部14Cについて特に説明するが、第2励振電極14bの膜厚部も同様の構成を有する。
【0034】
図5及び
図6に示すように、第1励振電極14aは、例えば、平板部14Bと、膜厚部14Cとを有する。平板部14Bは、例えば、矩形状をなしており、水晶片11の第1主面に設けられている。膜厚部14Cは、平板部14Bの上面から突出した第1凸部14Caと第2凸部14Cbとを含む。第1凸部14Ca及び第2凸部14Cbは、例えば、第1励振電極14aにおける平板部14Bと同一の材料により構成されている。第1凸部14Ca及び第2凸部14Cbは、第1励振電極14aにおける平板部14Bと異なる材料により構成されてもよい。この場合、第1凸部14Ca及び第2凸部14Cbは、例えば、絶縁材料により構成されている。第1凸部14Caは、水晶片11の第1主面11AにおけるX軸方向の端部に位置し、Z´軸方向に延びる。第1凸部14Caは、例えば、水晶片11の第1主面11AにおけるX軸方向の両側の端部に位置し、水晶片11の第1主面11AにおけるZ´軸方向の一端から他端まで延びている。第2凸部14Cbは、水晶片11の第2主面11BにおけるZ´軸方向の端部に位置し、X軸方向に延びている。第2凸部14Cbは、例えば、水晶片11の第2主面11BにおけるZ´軸方向の両側の端部に位置し、水晶片11の第2主面11BにおけるX軸方向の一端から他端まで延びている。第1凸部14Caの幅Wxは、第2凸部14Cbの幅Wzよりも大きい。
【0035】
次に、
図7~
図9を参照して、本実施形態に係る水晶振動子1の機能を説明する。
図7及び
図8は、本実施形態に係る水晶振動子1のシミュレーションモデルを用いて予測した水晶振動素子10の振動特性を示したものである。水晶振動子1のシミュレーションモデルにおいては、励振電極部14の材質としてアルミニウムが設定されている。また、水晶振動子1のシミュレーションモデルにおいては、水晶片11は、励振電極部14に電圧が印加された場合に、主面と交差する方向を厚み方向としたとき、厚み方向と第1基軸とによって規定される面において振動する厚み滑り振動を行う。
図7は、本実施形態に係る水晶振動素子10の電気機械結合定数を示すグラフである。電気機械結合定数は、電気的エネルギーと機械的エネルギーとの変換能力を表す係数であり、この係数の値が大きいほど、電気的エネルギーと機械的エネルギーとの変換能力が高いことを示す。
図8は、本実施形態に係る水晶振動素子10の振動特性を示すグラフである。水晶振動素子10の振動特性は、厚み滑り振動時における水晶振動素子10の振動形状を示している。
図9は、本実施形態に係る水晶振動素子10の振動特性を、水晶振動素子10に関する各種パラメータを変更しつつ示したグラフである。
【0036】
図7に示す例では、第2凸部14Cbの幅Wzを「3.4」に固定し、第1凸部14Caの幅Wxを変化させた場合の水晶振動子1の電気機械結合定数の変化の推移を示している。同図に示す例では、縦軸が電気機械結合定数を表し、横軸が水晶片11の厚みTに対する第1凸部14Caの幅Wxの比率を表している。この例では、励振電極部14に第1凸部14Ca及び第2凸部14Cbを設けなかった場合に相当する比較例において、電気機械結合定数の値が「6.8」となっている。これに対し、励振電極部14に第1凸部14Ca及び第2凸部14Cbを設けた場合に相当する実施例において、水晶片11の厚みTに対する第1凸部14Caの幅Wxの比率を、「0.0」、「3.4」、「4.6」、「5.0」と段階的に増大させた場合、比率が「0」の場合において、電気機械結合定数の値が「7.5」となっており、比率が大きくなるにつれて、電気機械結合定数の値が増大する傾向にある。そして、比率が「4.6」である場合に電気機械結合定数の値が最大値「7.9」となる。
【0037】
すなわち、励振電極部14に第1凸部14Caまたは第2凸部14Cbを設けた場合、質量負荷効果によって励振電極部14を伝播する音速が部分的に低下する。そのため、水晶片11の厚み滑り振動時において、励振電極部14の第1凸部14Caまたは第2凸部14Cbの振動の波長が、励振電極部14の平板部14Bの振動の波長に比して、相対的に短くなる。そして、励振電極部14の第1凸部14Caまたは第2凸部14Cbに生じる歪みが、励振電極部14の平板部14Bに生じる歪みに比して、相対的に大きくなる。その結果、水晶片11の厚み滑り振動時において、励振電極部14の第1凸部14Caまたは第2凸部14Cbに歪みが集中し、励振電極部14の平板部14Bにおける歪みが緩和されて変位量が均一となるため、水晶振動素子10の電気機械結合定数が増大する。
【0038】
なお、
図7に示す例において、水晶振動素子10は、第1凸部14Caの幅Wxが第2凸部14Cbの幅Wzよりも大きい、という条件を満たしている。すなわち、水晶片11の厚み滑り振動時には、水晶片11はX軸方向に変位するため、励振電極部14に生じる歪みは、X軸方向の歪みの方が、Z´軸方向の歪みよりも大きい。そのため、X軸方向の歪みを緩和するための第1凸部14Caの幅Wxの最適値は、Z´軸方向の歪みを緩和するための第2凸部14Cbの幅Wzの最適値よりも大きい。
【0039】
図8に示す例では、
図7に示す例において、電気機械結合定数の値が最大値「7.9」となるように、水晶片11の厚みTに対する第1凸部14Caの幅Wxの比率を設定した場合の水晶振動素子10の振動特性を示している。
図8は、水晶振動素子10におけるZ軸方向の位置ごとの変位量を示した図である。
図8に示す例では、水晶振動素子10に第1凸部14Ca及び第2凸部14Cbを設けなかった場合に相当する比較例と、上記の条件にて水晶片11に第1凸部14Ca及び第2凸部14Cbを設けた場合に相当する実施例とを重ねて示している。
図8に示す例からも明らかなように、実施例の水晶振動素子10は、比較例の水晶振動素子10と比較して、厚み滑り振動時における振動形状が平坦となっており、主振動以外の周波数で起こる振動であるスプリアス発振が好適に低減される。
【0040】
図9(a)~
図9(c)に示す例では、
図9(d)に示す水晶振動素子10に関する各種パラメータとして、水晶片11の厚みT、励振電極部14の平板部14Bの厚みTe、励振電極部14の膜厚部14Cの厚みTfを変更した場合を例に挙げて説明する。厚みTfは、励振電極部14の平板部14Bからの膜厚部14Cの突出量に相当する。
図9(a)は、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の平板部14Bの厚みTeの比率が「0.05」であり、かつ、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の膜厚部14Cの厚みTfの比率が「0.02」である場合のグラフである。
図9(b)は、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の平板部14Bの厚みTeの比率が「0.10」であり、かつ、水晶片11の厚みTに対する水晶片11の膜厚部14Cの厚みTfの比率が「0.03」である場合のグラフである。
図9(c)は、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の平板部14Bの厚みTeの比率が「0.20」であり、かつ、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の膜厚部14Cの厚みの比率が「0.06」である場合のグラフである。これらの例の何れにおいても、電気機械結合定数が最大となる第1凸部14Caの幅Wxに関する条件と、電気機械結合定数が最大となる第2凸部14Cbの幅Wzに関する条件とを比較した場合に、第1凸部14Caの幅Wxが第2凸部14Cbの幅Wzよりも大きい。
【0041】
本実施形態に係る水晶振動素子10は、結晶軸であるX軸、Y軸、Z軸のうち、Y軸及びZ軸をX軸の周りに所定角度だけ傾斜させた軸をY´軸及びZ´軸とし、X軸とZ´軸とによって特定される面と平行な面である第1主面11A及び第2主面11Bを有する水晶片11と、水晶片11の第1主面11A及び第2主面11Bに設けられた励振電極部14とを備え、水晶片11は、励振電極部14に電圧が印加された場合に主面と交差する方向を厚み方向としたとき、厚み方向と第1基軸とによって規定される面において振動する厚み滑り振動を行い、励振電極部14は、水晶片11の第1主面11A及び第2主面11Bに沿う方向における電極端部に位置し、平板部14Bよりも膜厚が大きい膜厚部14Cを有し、膜厚部14Cは、第1主面11A及び第2主面11BにおけるX軸の軸線方向の端部に位置し、Z´軸の軸線方向に延びる第1凸部14Caと、第1主面11A及び第2主面11BにおけるZ´軸の軸線方向の端部に位置し、X軸の軸線方向に延びる第2凸部14Cbと、を有し、第1凸部14Caの幅Wxは、第2凸部14Cbの幅Wzよりも大きい。水晶振動素子10は、第1凸部14Caの幅Wxが第2凸部14Cbの幅Wzよりも大きい場合には、第1凸部14Caの幅Wxが第2凸部14Cbの幅Wz以下である場合と比較して、水晶片11の厚み滑り振動時において、励振電極部14の第1凸部14Caまたは第2凸部14Cbに歪みが集中し、励振電極部14の平板部14Bにおける歪みが緩和されて変位量が均一となる。そのため、水晶振動素子10における圧電効果の効率に相当する電気機械結合定数の値が大きくなるため、主振動以外の周波数で起こる振動であるスプリアス発振を低減することができる。
【0042】
<第2実施形態>
第2実施形態では第1実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0043】
図10及び
図11に示すように、第1励振電極14aは、例えば、平板部14Bと、膜厚部14Cとを有する。平板部14Bは、例えば、矩形状をなしており、水晶片11の第1主面11Aに設けられている。膜厚部14Cは、平板部14Bの上面から突出しており、例えば、第1凸部14Caを含む。第1凸部14Caは、水晶片11の第1主面11AにおけるX軸方向の端部に位置し、Z´軸方向に延びる。第1凸部14Caは、例えば、水晶片11の第1主面11AにおけるX軸方向の両側の端部に位置し、水晶片11の第1主面11AにおけるZ´軸方向の一端から他端まで延びている。
【0044】
次に、
図12及び
図13を参照して、本実施形態に係る水晶振動子1の機能を説明する。
図12及び
図13は、本実施形態に係る水晶振動子1のシミュレーションモデルを用いて予測した水晶振動素子10の振動特性を示したものである。水晶振動子1のシミュレーションモデルにおいては、励振電極部14の材質としてアルミニウムが設定されている。また、水晶振動子1のシミュレーションモデルにおいては、水晶片11は、励振電極部14に電圧が印加された場合に、主面と交差する方向を厚み方向としたとき、厚み方向と第1基軸とによって規定される面において振動する厚み滑り振動を行う。
図12は、本実施形態に係る水晶振動子1の電気機械結合定数を示すグラフである。
図13は、本実施形態に係る水晶振動子1の振動特性を示すグラフである。水晶振動子1の振動特性は、厚み滑り振動時における水晶振動子1の振動形状を示している。
【0045】
図12に示す例では、第1凸部14Caの幅Wxを変化させた場合の水晶振動子1の電気機械結合定数の変化の推移を示している。同図に示す例では、縦軸が電気機械結合定数を表し、横軸が水晶片11の厚みTに対する第1凸部14Caの幅Wxの比率を表している。この例では、水晶片11に第1凸部14Caを設けなかった場合に相当する比較例において、電気機械結合定数の値が「6.8」となっている。これに対し、水晶片11に第1凸部14Caを設けた場合に相当する実施例において、水晶片11の厚みTに対する第1凸部14Caの幅Wxの比率を「3.8」、「4.2」、「5.0」、「7.0」と段階的に増大させた場合において、比率が「4.2」である場合に電気機械結合定数の値が最大値「7.3」となる。
【0046】
すなわち、励振電極部14に第1凸部14Caを設けた場合、質量負荷効果によって励振電極部14を伝播する音速が部分的に低下する。そのため、水晶片11の厚み滑り振動時において、励振電極部14の第1凸部14Caの振動の波長が、励振電極部14の平板部14Bの振動の波長に比して、相対的に短くなる。そして、励振電極部14の第1凸部14Caに生じる歪みが、励振電極部14の平板部14Bに生じる歪みに比して、相対的に大きくなる。その結果、水晶片11の厚み滑り振動時において、励振電極部14の第1凸部14Caに歪みが集中し、励振電極部14の平板部14Bにおける歪みが緩和されて変位量が均一となるため、水晶振動素子10の電気機械結合定数が増大する。
【0047】
図13に示す例では、
図12に示す例において、電気機械結合定数の値が最大値「7.3」となるように、水晶片11の厚みTに対する第1凸部14Caの幅Wxの比率を設定した場合の水晶振動素子10の振動特性を示している。
図13は、水晶振動素子10におけるX軸方向の位置ごとの変位量を示した図である。
図13に示す例では、水晶片11に第1凸部14Caを設けなかった場合に相当する比較例と、上記の条件にて水晶片11に第1凸部14Caを設けた場合に相当する実施例とを重ねて示している。
図8に示す例からも明らかなように、実施例の水晶振動素子10は、比較例の水晶振動素子10と比較して、厚み滑り振動時における振動形状が平坦となっており、主振動以外の周波数で起こる振動であるスプリアス発振が好適に低減される。
【0048】
本実施形態に係る水晶振動素子10は、結晶軸であるX軸、Y軸、Z軸のうち、Y軸及びZ軸をX軸の周りに所定角度だけ傾斜させた軸をY´軸及びZ´軸とし、X軸とZ´軸とによって特定される面と平行な面である第1主面11A及び第2主面11Bを有する水晶片11と、水晶片11の第1主面11A及び第2主面11Bに設けられた励振電極部14と、を備え、水晶片11は、励振電極部14に電圧が印加された場合に主面と交差する方向を厚み方向としたとき、厚み方向と第1基軸とによって規定される面において振動する厚み滑り振動を行い、励振電極部14は、水晶片11の第1主面11A及び第2主面11Bに沿う方向における電極端部に位置し、平板部14Bよりも膜厚が大きい膜厚部14Cを有し、膜厚部14Cは、第1主面11A及び第2主面11BにおけるX軸の軸線方向の端部に位置し、Z´軸の軸線方向に延びる第1凸部14Caを有する。水晶振動素子10は、第1凸部14Caを有する場合には、第1凸部14Caを有さない場合と比較して、水晶片11の厚み滑り振動時において、励振電極部14の第1凸部14Caに歪みが集中し、励振電極部14の平板部14Bにおける歪みが緩和されて変位量が均一となる。そのため、水晶振動素子10における圧電効果の効率に相当する電気機械結合定数の値が大きくなるため、主振動以外の周波数で起こる振動であるスプリアス発振を低減することができる。
【0049】
<第3実施形態>
第3実施形態では第1実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0050】
図14及び
図15に示すように、第1励振電極14aは、例えば、平板部14Bと、膜厚部14Cとを有する。平板部14Bは、例えば、矩形状をなしており、水晶片11の第1主面11Aに設けられている。膜厚部14Cは、平板部14Bの上面から突出しており、例えば、第2凸部14Cbを含む。第2凸部14Cbは、水晶片11の第2主面11BにおけるZ´軸方向の端部に位置し、X軸方向に延びている。第2凸部14Cbは、例えば、水晶片11の第2主面11BにおけるZ´軸方向の両側の端部に位置し、水晶片11の第2主面11BにおけるX軸方向の一端から他端まで延びている。
【0051】
次に、
図16及び
図17を参照して、本実施形態に係る水晶振動素子10の機能を説明する。
図16及び
図17は、本実施形態に係る水晶振動子1のシミュレーションモデルを用いて予測した水晶振動素子10の振動特性を示したものである。水晶振動子1のシミュレーションモデルにおいては、励振電極部14の材質としてアルミニウムが設定されている。また、水晶振動子1のシミュレーションモデルにおいては、水晶片11は、励振電極部14に電圧が印加された場合に、主面と交差する方向を厚み方向としたとき、厚み方向と第1基軸とによって規定される面において振動する厚み滑り振動を行う。
図16は、本実施形態に係る水晶振動素子10の電気機械結合定数を示すグラフである。
図17は、本実施形態に係る水晶振動素子10の振動特性を示すグラフである。水晶振動素子10の振動特性は、厚み滑り振動時における水晶振動素子10の振動形状を示している。
【0052】
図16に示す例では、第2凸部14Cbの幅Wzを変化させた場合の水晶振動素子10の電気機械結合定数の変化の推移を示している。同図に示す例では、縦軸が電気機械結合定数を表し、横軸が水晶片11の厚みTに対する第2凸部14Cbの幅Wzの比率を表している。この例では、水晶片11に第2凸部14Cbを設けなかった場合に相当する比較例において、電気機械結合定数の値が「6.8」となっている。これに対し、水晶片11に第2凸部14Cbを設けた場合に相当する実施例において、水晶片11の厚みTに対する第2凸部14Cbの幅Wzの比率を「2.8」、「3.4」、「4.0」、「7.0」と段階的に増大させた場合において、比率が「3.4」である場合に電気機械結合定数の値が最大値「7.4」となる。
【0053】
すなわち、励振電極部14に第2凸部14Cbを設けた場合、質量負荷効果によって励振電極部14を伝播する音速が部分的に低下する。そのため、水晶片11の厚み滑り振動時において、励振電極部14の第2凸部14Cbの振動の波長が、励振電極部14の平板部14Bの振動の波長に比して、相対的に短くなる。そして、励振電極部14の第2凸部14Cbに生じる歪みが、励振電極部14の平板部14Bに生じる歪みに比して、相対的に大きくなる。その結果、水晶片11の厚み滑り振動時において、励振電極部14の第2凸部14Cbに歪みが集中し、励振電極部14の平板部14Bにおける歪みが緩和されて変位量が均一となるため、水晶振動素子10の電気機械結合定数が増大する。
【0054】
図17に示す例では、
図16に示す例において、電気機械結合定数の値が最大値「7.4」となるように、水晶片11の厚みTに対する第2凸部14Cbの幅Wzの比率を設定した場合の水晶振動素子10の振動特性を示している。
図15は、水晶振動素子10におけるZ軸方向の位置ごとの変位量を示した図である。
図17に示す例では、水晶片11に第2凸部14Cbを設けなかった場合に相当する比較例と、上記の条件にて水晶片11に第2凸部14Cbを設けた場合に相当する実施例とを重ねて示している。
図17に示す例からも明らかなように、実施例の水晶振動素子10は、比較例の水晶振動素子10と比較して、厚み滑り振動時における振動形状が平坦となっており、主振動以外の周波数で起こる振動であるスプリアス発振が好適に低減される。
【0055】
本実施形態に係る水晶振動素子10は、結晶軸であるX軸、Y軸、Z軸のうち、Y軸及びZ軸をX軸の周りに所定角度だけ傾斜させた軸をY´軸及びZ´軸とし、X軸とZ´軸とによって特定される面と平行な面である第1主面11A及び第2主面11Bを有する水晶片11と、水晶片11の第1主面11A及び第2主面11Bに設けられた励振電極部14と、を備え、水晶片11は、励振電極部14に電圧が印加された場合に主面と交差する方向を厚み方向としたとき、厚み方向と第1基軸とによって規定される面において振動する厚み滑り振動を行い、励振電極部14は、水晶片11の第1主面11A及び第2主面11Bに沿う方向における電極端部に位置し、平板部14Bよりも膜厚が大きい膜厚部14Cを有し、膜厚部14Cは、水晶片11の第2主面11BにおけるZ´軸方向の端部に位置し、X軸方向に延びる第2凸部14Cbを有する。水晶振動素子10は、第2凸部14Cbを有する場合には、第2凸部14Cbを有さない場合と比較して、水晶片11の厚み滑り振動時において、励振電極部14の第2凸部14Cbに歪みが集中し、励振電極部14の平板部14Bにおける歪みが緩和されて均一となる。そのため、水晶振動素子10における圧電効果の効率に相当する電気機械結合定数の値が大きくなるため、主振動以外の周波数で起こる振動であるスプリアス発振を低減することができる。
【0056】
<第4実施形態>
第4実施形態では第1実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0057】
図18~
図20を参照して、本実施形態に係る水晶振動子1の機能を説明する。
図18~
図20は、本実施形態に係る水晶振動子1のシミュレーションモデルを用いて予測した水晶振動素子10の振動特性を示したものである。水晶振動子1のシミュレーションモデルにおいては、励振電極部14の材質としてアルミニウムが設定されている。また、水晶振動子1のシミュレーションモデルにおいては、水晶片11は、励振電極部14に電圧が印加された場合に、主面と交差する方向を厚み方向としたとき、厚み方向と第1基軸とによって規定される面において振動する厚み滑り振動を行う。
図18は、本実施形態に係る水晶振動素子10の電気機械結合定数を示すグラフである。電気機械結合定数は、電気的エネルギーと機械的エネルギーとの変換能力を表す係数であり、この係数の値が大きいほど、電気的エネルギーと機械的エネルギーとの変換能力が高いことを示す。
図19及び
図20は、本実施形態に係る水晶振動素子10の振動特性を示すグラフである。水晶振動素子10の振動特性は、厚み滑り振動時における水晶振動素子10の振動形状を示している。
【0058】
図18に示す例では、第1凸部14Caの幅Wx及び第2凸部14Cbの幅Wzを「4.5」に固定し、水晶片11の厚みTに対する第2凸部14Cbの突出量Tfzの比率を「0.013」に固定し、水晶片11の厚みTに対する第1凸部14Caの突出量Tfxの比率を変化させた場合の水晶振動子1の電気機械結合定数の変化の推移を示している。同図に示す例では、縦軸が電気機械結合定数を表し、横軸が水晶片11の厚みTに対する第1凸部14Caの突出量Tfxの比率を表している。この例では、励振電極部14に第1凸部14Ca及び第2凸部14Cbを設けなかった場合に相当する比較例において、電気機械結合定数の値が「6.8」となっている。これに対し、励振電極部14に第1凸部14Ca及び第2凸部14Cbを設けた場合に相当する実施例において、水晶片11の厚みTに対する第1凸部14Caの突出量Tfxの比率を、「0.0」、「0.010」、「0.018」、「0.025」、「0.035」と段階的に増大させた場合、比率が「0」の場合において、電気機械結合定数の値が「7.5」となっており、比率が大きくなるにつれて、電気機械結合定数の値が増大する傾向にある。そして、比率が「0.018」である場合に電気機械結合定数の値が最大値「8.0」となる。
【0059】
すなわち、励振電極部14に第1凸部14Caまたは第2凸部14Cbを設けた場合、質量負荷効果によって励振電極部14を伝播する音速が部分的に低下する。そのため、水晶片11の厚み滑り振動時において、励振電極部14の第1凸部14Caまたは第2凸部14Cbの振動の波長が、励振電極部14の平板部14Bの振動の波長に比して、相対的に短くなる。そして、励振電極部14の第1凸部14Caまたは第2凸部14Cbに生じる歪みが、励振電極部14の平板部14Bに生じる歪みに比して、相対的に大きくなる。その結果、水晶片11の厚み滑り振動時において、励振電極部14の第1凸部14Caまたは第2凸部14Cbに歪みが集中し、励振電極部14の平板部14Bにおける歪みが緩和されて変位量が均一となるため、水晶振動素子10の電気機械結合定数が増大する。
【0060】
なお、
図18に示す例において、水晶振動素子10は、第1凸部14Caの幅Wxと第2凸部14Cbの幅Wzとが同一である前提の下で、第1凸部14Caの突出量Tfxが第2凸部14Cbの突出量Tfzよりも大きい、という条件を満たしている。すなわち、水晶片11の厚み滑り振動時には、水晶片11はX軸方向に変位するため、励振電極部14に生じる歪みは、X軸方向の歪みの方が、Z´軸方向の歪みよりも大きい。そのため、X軸方向の歪みを緩和するための第1凸部14Caの突出量Tfxの最適値は、Z´軸方向の歪みを緩和するための第2凸部14Cbの突出量Tfzの最適値よりも大きい。
【0061】
図19及び
図20に示す例では、
図18に示す例において、電気機械結合定数の値が最大値「8.0」となるように、水晶片11の厚みTに対する第1凸部14Caの突出量Tfxの比率を設定した場合の水晶振動素子10の振動特性を示している。
図19は、水晶振動素子10におけるX軸方向の位置ごとの変位量を示した図である。
図20は、水晶振動素子10におけるZ軸方向の位置ごとの変位量を示した図である。
図19及び
図20に示す例では、水晶振動素子10に第1凸部14Ca及び第2凸部14Cbを設けなかった場合に相当する比較例と、上記の条件にて水晶片11に第1凸部14Ca及び第2凸部14Cbを設けた場合に相当する実施例とを重ねて示している。
図19及び
図20に示す例からも明らかなように、実施例の水晶振動素子10は、比較例の水晶振動素子10と比較して、厚み滑り振動時における振動形状が平坦となっており、主振動以外の周波数で起こる振動であるスプリアス発振が好適に低減される。
【0062】
<第5実施形態>
第5実施形態では第1実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0063】
図21及び
図22を参照して、本実施形態に係る水晶振動子1の機能を説明する。
図21及び
図22は、本実施形態に係る水晶振動子1のシミュレーションモデルを用いて予測した水晶振動素子10の振動特性を示したものである。水晶振動子1のシミュレーションモデルにおいては、励振電極部14の材質としてアルミニウムが設定されている。また、水晶振動子1のシミュレーションモデルにおいては、水晶片11は、励振電極部14に電圧が印加された場合に、主面と交差する方向を厚み方向としたとき、厚み方向と第1基軸とによって規定される面において振動する厚み滑り振動を行う。
図21は、本実施形態に係る水晶振動子1の電気機械結合定数を示すグラフである。
図22は、本実施形態に係る水晶振動子1の振動特性を示すグラフである。水晶振動子1の振動特性は、厚み滑り振動時における水晶振動子1の振動形状を示している。
【0064】
図21に示す例では、水晶片11の厚みTに対する第1凸部14Caの突出量Tfxの比率を変化させた場合の水晶振動子1の電気機械結合定数の変化の推移を示している。同図に示す例では、縦軸が電気機械結合定数を表し、横軸が水晶片11の厚みTに対する第1凸部14Caの突出量Tfxの比率を表している。この例では、水晶片11に第1凸部14Caを設けなかった場合に相当する比較例において、電気機械結合定数の値が「6.8」となっている。これに対し、水晶片11に第1凸部14Caを設けた場合に相当する実施例において、水晶片11の厚みTに対する第1凸部14Caの突出量Tfxの比率を「0.010」、「0.018」、「0.025」、「0.035」と段階的に増大させた場合において、比率が「0.018」である場合に電気機械結合定数の値が最大値「7.5」となる。
【0065】
すなわち、励振電極部14に第1凸部14Caを設けた場合、質量負荷効果によって励振電極部14を伝播する音速が部分的に低下する。そのため、水晶片11の厚み滑り振動時において、励振電極部14の第1凸部14Caの振動の波長が、励振電極部14の平板部14Bの振動の波長に比して、相対的に短くなる。そして、励振電極部14の第1凸部14Caに生じる歪みが、励振電極部14の平板部14Bに生じる歪みに比して、相対的に大きくなる。その結果、水晶片11の厚み滑り振動時において、励振電極部14の第1凸部14Caに歪みが集中し、励振電極部14の平板部14Bにおける歪みが緩和されて変位量が均一となるため、水晶振動素子10の電気機械結合定数が増大する。
【0066】
図22に示す例では、
図21に示す例において、電気機械結合定数の値が最大値「7.5」となるように、水晶片11の厚みTに対する第1凸部14Caの突出量Tfxの比率を設定した場合の水晶振動素子10の振動特性を示している。
図22は、水晶振動素子10におけるX軸方向の位置ごとの変位量を示した図である。
図22に示す例では、水晶片11に第1凸部14Caを設けなかった場合に相当する比較例と、上記の条件にて水晶片11に第1凸部14Caを設けた場合に相当する実施例とを重ねて示している。
図22に示す例からも明らかなように、実施例の水晶振動素子10は、比較例の水晶振動素子10と比較して、厚み滑り振動時における振動形状が平坦となっており、主振動以外の周波数で起こる振動であるスプリアス発振が好適に低減される。
【0067】
<第6実施形態>
第6実施形態では第1実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0068】
図23及び
図24を参照して、本実施形態に係る水晶振動素子10の機能を説明する。
図23及び
図24は、本実施形態に係る水晶振動子1のシミュレーションモデルを用いて予測した水晶振動素子10の振動特性を示したものである。水晶振動子1のシミュレーションモデルにおいては、励振電極部14の材質としてアルミニウムが設定されている。また、水晶振動子1のシミュレーションモデルにおいては、水晶片11は、励振電極部14に電圧が印加された場合に、主面と交差する方向を厚み方向としたとき、厚み方向と第1基軸とによって規定される面において振動する厚み滑り振動を行う。
図23は、本実施形態に係る水晶振動素子10の電気機械結合定数を示すグラフである。
図24は、本実施形態に係る水晶振動素子10の振動特性を示すグラフである。水晶振動素子10の振動特性は、厚み滑り振動時における水晶振動素子10の振動形状を示している。
【0069】
図23に示す例では、水晶片11の厚みTに対する第2凸部14Cbの突出量Tfzの比率を変化させた場合の水晶振動素子10の電気機械結合定数の変化の推移を示している。同図に示す例では、縦軸が電気機械結合定数を表し、横軸が水晶片11の厚みTに対する第2凸部14Cbの突出量Tfzの比率を表している。この例では、水晶片11に第2凸部14Cbを設けなかった場合に相当する比較例において、電気機械結合定数の値が「7.5」となっている。これに対し、水晶片11に第2凸部14Cbを設けた場合に相当する実施例において、水晶片11の厚みTに対する第2凸部14Cbの突出量Tfzの比率を「0.01」、「0.013」、「0.020」、[0.025」と段階的に増大させた場合において、比率が「0.013」である場合に電気機械結合定数の値が最大値「7.5」となる。
【0070】
すなわち、励振電極部14に第2凸部14Cbを設けた場合、質量負荷効果によって励振電極部14を伝播する音速が部分的に低下する。そのため、水晶片11の厚み滑り振動時において、励振電極部14の第2凸部14Cbの振動の波長が、励振電極部14の平板部14Bの振動の波長に比して、相対的に短くなる。そして、励振電極部14の第2凸部14Cbに生じる歪みが、励振電極部14の平板部14Bに生じる歪みに比して、相対的に大きくなる。その結果、水晶片11の厚み滑り振動時において、励振電極部14の第2凸部14Cbに歪みが集中し、励振電極部14の平板部14Bにおける歪みが緩和されて変位量が均一となるため、水晶振動素子10の電気機械結合定数が増大する。
【0071】
図24に示す例では、
図23に示す例において、電気機械結合定数の値が最大値「7.5」となるように、水晶片11の厚みTに対する第2凸部14Cbの突出量Tfzの比率を設定した場合の水晶振動素子10の振動特性を示している。
図24は、水晶振動素子10におけるZ軸方向の位置ごとの変位量を示した図である。
図24に示す例では、水晶片11に第2凸部14Cbを設けなかった場合に相当する比較例と、上記の条件にて水晶片11に第2凸部14Cbを設けた場合に相当する実施例とを重ねて示している。
図24に示す例からも明らかなように、実施例の水晶振動素子10は、比較例の水晶振動素子10と比較して、厚み滑り振動時における振動形状が平坦となっており、主振動以外の周波数で起こる振動であるスプリアス発振が好適に低減される。
【0072】
図25(a)~
図25(c)に示す例では、水晶振動素子10に関する各種パラメータとして、水晶片11の厚みT、励振電極部14の平板部14Bの厚みTe、励振電極部14の膜厚部14Cの厚みTfを変更した場合を例に挙げて説明する。厚みTfは、励振電極部14の平板部14Bからの膜厚部14Cの突出量に相当する。
図25(a)は、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の平板部14Bの厚みTeの比率が「0.05」であり、かつ、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の第2凸部14Cbの突出量Tfzの比率が「0.013」である場合のグラフである。
図25(b)は、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の平板部14Bの厚みTeの比率が「0.10」であり、かつ、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の第2凸部14Cbの突出量Tfzの比率が「0.016」である場合のグラフである。
図25(c)は、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の平板部14Bの厚みTeの比率が「0.20」であり、かつ、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の第2凸部14Cbの突出量Tfzの比率が「0.021」である場合のグラフである。これらの例の何れにおいても、電気機械結合定数が最大となる第1凸部14Caの突出量Tfxに関する条件と、電気機械結合定数が最大となる第2凸部14Cbの突出量Tfzに関する条件とを比較した場合に、第1凸部14Caの突出量Tfxが第2凸部14Cbの突出量Tfzよりも大きい。
【0073】
図26(a)~(c)に示す例では、水晶振動素子10に関する各種パラメータとして、水晶片11の厚みT、励振電極部14の平板部14Bの厚みTe、励振電極部14の膜厚部14Cの厚みTfを変更した場合を例に挙げて説明する。
図26(a)は、励振電極部14の平板部14Bの厚みTeが「0.05μm」である場合のグラフである。
図26(b)は、励振電極部14の平板部14Bの厚みTeが「0.10μm」である場合のグラフである。
図26(c)は、励振電極部14の平板部14Bの厚みTeが「0.20μm」である場合のグラフである。これらの例の何れにおいても、電気機械結合定数が最大となる第1凸部14Caの幅Wxに関する条件と、電気機械結合定数が最大となる第2凸部14Cbの幅Wzに関する条件とを比較した場合、励振電極部14の膜厚部14Cの厚みTfが共通の条件である場合には、第1凸部14Caの幅Wxが第2凸部1414Cbの幅Wzよりも大きい。また、励振電極部14の膜厚部14Cの厚みTfが大きくなるほど、電気機械結合定数が最大となる第1凸部14Caの幅Wx及び第2凸部14Cbの幅Wbが小さくなる。
【0074】
図27に示す例では、水晶振動素子10に関する各種パラメータとして、水晶片11の厚みT、励振電極部14の平板部14Bの厚みTe、励振電極部14の膜厚部14Cの厚みTfを変更した場合を例に挙げて説明する。
図27に示すグラフにおいて、縦軸は、励振電極部14の平板部14Bの断面積に対する励振電極部14の平板部14B及び膜厚部14Cの断面積の合計値の比率を示し、横軸は、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の平板部14Bの厚みTeの比率を示す。このグラフでは、第1凸部14Ca及び第2凸部14Cbの何れにおいても、励振電極部14の平板部14Bの断面積に対する励振電極部14の平板部14B及び膜厚部14Cの断面積の合計値の比率が、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の膜厚部14Cの厚みTfの比率が大きくなるにつれて、小さくなる。
【0075】
図28に示す例では、第1凸部14Caの幅Wxまたは第2凸部14Cbの幅Wzを固定し、水晶片11の厚みTに対する第1凸部14Caの突出量Tfxの比率、または、第2凸部14Cbの突出量Tfzの比率を変化させた場合の水晶振動子1の電気機械結合定数の変化の推移を示している。同図に示す例では、縦軸が電気機械結合定数を表し、横軸が水晶片11の厚みTに対する第1凸部14Caの突出量Tfxの比率を表している。この例では、励振電極部14に第1凸部14Caまたは第2凸部14Cbを設けなかった場合に相当する(Tf/T=0)となる点において、電気機械結合定数の値が「6.8」となっている。これに対し、励振電極部14に第1凸部14Caを設けた場合には、(Tf/T=0.013)となる点において、電気機械結合定数の値が最大値「7.5」となっている。この例では、(Tf/T=0.013)となる点が水晶片11の厚みTに対する第1凸部14Caの突出量Tfxの比率の最適値に相当する。また、励振電極部14に第1凸部14Caを設けた場合には、(Tf/T=0.018)となる点において、励振電極部14に第1凸部14Caまたは第2凸部14Cbを設けなかった場合に相当する電気機械結合定数の値「6.8」と一致する。この例では、(Tf/T=0.018)となる点が水晶片11の厚みTに対する第1凸部14Caの突出量Tfxの比率の最大値に相当する。また、励振電極部14に第2凸部14Cbを設けた場合には、(Tf/T=0.020)となる点において、電気機械結合定数の値が最大値「7.3」となっている。この例では、(Tf/T=0.020)となる点が水晶片11の厚みTに対する第2凸部14Cbの突出量Tfzの比率の最適値に相当する。また、励振電極部14に第2凸部14Cbを設けた場合には、(Tf/T=0.028)となる点において、励振電極部14に第1凸部14Caまたは第2凸部14Cbを設けなかった場合に相当する電気機械結合定数の値「6.8」と一致する。この例では、(Tf/T=0.028)となる点が水晶振動素子10の振動特性が所定条件を満たす水晶片11の厚みTに対する第2凸部14Cbの突出量Tfzの比率の最大値に相当する。所定条件は、例えば、水晶振動子1の電気機械結合定数が、水晶振動子1に第1凸部14Ca及び第2凸部14Cbを設けない場合と同等以上であり、電気機械結合定数の増大効果が得られる場合に成立する。
【0076】
図29に示す例では、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の平板部14Bの厚みTeの比率を変化させた場合の電気機械結合定数の増大効果が得られなくなるTfx/Tの最大値の変化の推移を示している。この例では、励振電極部14の第1凸部14Caの幅Wxが「3.5(μm)」、「4.5(μm)」、「6.0(μm)」の場合のグラフが示されている。このグラフでは、いずれの場合においても、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の平板部14Bの厚みTeの比率が大きくなるほど、電気機械結合定数の増大効果が得られなくなるTfx/Tの最大値が大きくなる。また、電気機械結合定数の増大効果が得られなくなるTfx/Tの最大値は、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の平板部14Bの厚みTeの比率を変数としたとき、一次関数「A×(Te/T)+B」で表される。
【0077】
図30に示す例では、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の平板部14Bの厚みTeの比率を変化させた場合の電気機械結合定数の増大効果が得られなくなるTfz/Tの最大値の変化の推移を示している。この例では、励振電極部14の第2凸部14Cbの幅Wzが「3.5(μm)」、「4.5(μm)」、「6.0(μm)」の場合のグラフが示されている。このグラフでは、いずれの場合においても、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の平板部14Bの厚みTeの比率が大きくなるほど、電気機械結合定数の増大効果が得られなくなるTfz/Tの最大値が大きくなる。また、電気機械結合定数の増大効果が得られなくなるTfz/Tの最大値は、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の平板部14Bの厚みTeの比率を変数としたとき、一次関数「A×(Te/T)+B」で表される。
【0078】
図31に示す例では、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の第1凸部14Caの幅Wxの比率または第2凸部14Cbの幅Wzの比率を変化させた場合の、上述した一次関数の係数Aの変化の推移を示している。この例では、いずれの場合においても、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の第1凸部14Caの幅Wxの比率または第2凸部14Cbの幅Wzの比率が大きくなるほど、一次関数の係数Aが小さくなる。
【0079】
図32に示す例では、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の第1凸部14Caの幅Wxの比率または第2凸部14Cbの幅Wzの比率を変化させた場合の、上述した一次関数の係数Bの変化の推移を示している。この例では、いずれの場合においても、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の第1凸部14Caの幅Wxの比率または第2凸部14Cbの幅Wzの比率が大きくなるほど、一次関数の係数Bが小さくなる。
【0080】
図33に示す例では、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の平板部14Bの厚みTeの比率を変化させた場合の電気機械結合定数が最大になるTfx/Tの最適値の変化の推移を示している。この例では、励振電極部14の第1凸部14Caの幅Wxが「3.5(μm)」、「4.5(μm)」、「6.0(μm)」の場合のグラフが示されている。このグラフでは、いずれの場合においても、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の平板部14Bの厚みTeの比率が大きくなるほど、電気機械結合定数が最大になるTfx/Tの最適値が大きくなる。また、電気機械結合定数が最大になるTfx/Tの最適値は、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の平板部14Bの厚みTeの比率を変数としたとき、一次関数「A×(Te/T)+B」で表される。
【0081】
図34に示す例では、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の平板部14Bの厚みTeの比率を変化させた場合の電気機械結合定数が最大になるTfz/Tの最適値の変化の推移を示している。この例では、励振電極部14の第2凸部14Cbの幅Wzが「3.5(μm)」、「4.5(μm)」、「6.0(μm)」の場合のグラフが示されている。このグラフでは、いずれの場合においても、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の平板部14Bの厚みTeの比率が大きくなるほど、電気機械結合定数が最大になるTfz/Tの最適値が大きくなる。また、電気機械結合定数が最大になるTfz/Tの最適値は、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の平板部14Bの厚みTeの比率を変数としたとき、一次関数「A×(Te/T)+B」で表される。
【0082】
図35に示す例では、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の第1凸部14Caの幅Wxの比率または第2凸部14Cbの幅Wzの比率を変化させた場合の、上述した一次関数の係数Aの変化の推移を示している。この例では、いずれの場合においても、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の第1凸部14Caまたは第2凸部14Cbの比率が大きくなるほど、一次関数の係数Aが小さくなる。
【0083】
図36に示す例では、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の第1凸部14Caの幅Wxの比率または第2凸部14Cbの幅Wzの比率を変化させた場合の、上述した一次関数の係数Bの変化の推移を示している。この例では、いずれの場合においても、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の第1凸部14Caまたは第2凸部14Cbの比率が大きくなるほど、一次関数の係数Bが小さくなる。
【0084】
<第7実施形態>
第7実施形態では第1実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0085】
図37に示す例では、第1凸部14Caの突出方向に沿うように切断した第1凸部14Caの断面積を変化させた場合の電気機械結合定数の変化の推移を示している。この例では、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の平板部14Bの厚みTfの比率が「0.015」、「0.020」、「0.025」、「0.030」の場合のグラフが示されている。このグラフでは、いずれの場合においても、電気機械結合定数の増大効果が得られなくなる第1凸部の断面積の最大値は概ね一定値となっている。
【0086】
図38に示す例では、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の第1凸部14Caの断面積Sfx(第1基軸と水晶片11の厚み方向とによって規定される面に沿う方向に切断した第1凸部14Caの断面積)の比率または第2凸部14Cbの断面積Sfz(第2基軸と水晶片11の厚み方向とによって規定される面に沿う方向に切断した第2凸部14Cbの断面積)の比率を変化させた場合の電気機械結合定数の増大効果が得られなくなる第1凸部及び第2凸部の断面積の最大値の変化の推移を示している。この例では、いずれの場合においても、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の平板部14Bの厚みTeの比率が大きくなるほど、電気機械結合定数の増大効果が得られなくなる第1凸部及び第2凸部の断面積の最大値が大きくなる。また、電気機械結合定数の増大効果が得られなくなる第1凸部及び第2凸部の断面積の最大値は、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の平板部14Bの厚みTeの比率を変数としたとき、一次関数「A×(Te/T)+B」で表される。
【0087】
図39に示す例では、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の平板部14Bの厚みTeの比率を変化させた場合の電気機械結合定数が最大になるWx/Tの最適値の変化の推移を示している。この例では、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の第1凸部14Caの突出量Tfxの比率が「0.015」、「0.020」、「0.030」の場合のグラフが示されている。このグラフでは、いずれの場合においても、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の平板部14Bの厚みTeの比率が大きくなるほど、電気機械結合定数が最大になるWx/Tの最適値が大きくなる。また、電気機械結合定数が最大になるWx/Tの最適値は、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の平板部14Bの厚みTeの比率を変数としたとき、一次関数「A×(Te/T)+B」で表される。
【0088】
図40に示す例では、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の平板部14Bの厚みTeの比率を変化させた場合の電気機械結合定数が最大になるWz/Tの最適値の変化の推移を示している。この例では、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の第2凸部14Cbの突出量Tfzの比率が「0.015」、「0.020」、「0.030」の場合のグラフが示されている。このグラフでは、いずれの場合においても、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の平板部14Bの厚みTeの比率が大きくなるほど、電気機械結合定数が最大になるWz/Tの最適値が大きくなる。また、電気機械結合定数が最大になるWz/Tの最適値は、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の平板部14Bの厚みTeの比率を変数としたとき、一次関数「A×(Te/T)+B」で表される。
【0089】
図41に示す例では、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の第1凸部14Caの突出量Tfxの比率または第2凸部14Cbの突出量Tfzの比率を変化させた場合の、上述した一次関数の係数Aの変化の推移を示している。この例では、いずれの場合においても、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の第1凸部14Caの突出量Tfxの比率または第2凸部14Cbの突出量Tfzの比率が大きくなるほど、一次関数の係数Aが小さくなる。
【0090】
図42に示す例では、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の第1凸部14Caの突出量Tfxの比率または第2凸部14Cbの突出量Tfzの比率を変化させた場合の、上述した一次関数の係数Bの変化の推移を示している。この例では、いずれの場合においても、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の第1凸部14Caの突出量Tfxの比率または第2凸部14Cbの突出量Tfzの比率が大きくなるほど、一次関数の係数Bが小さくなる。
【0091】
図43(a)~(c)に示す例では、水晶振動素子10に関する各種パラメータとして、水晶片11の厚みT、励振電極部14の平板部14Bの厚みTe、励振電極部14の膜厚部14Cの厚みTfを変更した場合を例に挙げて説明する。厚みTfは、励振電極部14の平板部14Bからの膜厚部14Cの突出量に相当する。
図43(a)は、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の平板部14Bの厚みTeの比率が「0.05」である場合のグラフである。
図43(b)は、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の平板部14Bの厚みTeの比率が「0.10」である場合のグラフである。
図43(c)は、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の平板部14Bの厚みTeの比率が「0.20」である場合のグラフである。これらの例の何れにおいても、電気機械結合定数が最大となる第1凸部14Caの断面積の比率に関する条件と、電気機械結合定数が最大となる第2凸部14Cbの断面積の比率に関する条件とを比較した場合に、第1凸部14Caの断面積が第2凸部14Cbの断面積よりも大きい。
【0092】
図44に示す例では、励振電極部14の第1凸部14Caの断面積Sfxに対する第2凸部14Cbの断面積Sfzの比率を変化させた場合の、水晶振動子1の振動の状態を示すパラメータであるQ値の変化の推移を示している。この例では、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の第1凸部14Caの断面積Sfxの比率が「0.06」、「0.08」、「0.10」、「0.12」の場合のグラフが示されている。このグラフでは、いずれの場合においても、Sfz/Sfxの値が「1.0」を上回ると、Q値が急激に低下している。すなわち、励振電極部14の第2凸部14Cbの断面積Sfzが第1凸部14Caの断面積Sfxよりも大きくなると、Q値が急激に低下している。したがって、励振電極部14の第1凸部14Caの断面積Sfxを第2凸部14Cbの断面積Sfzよりも大きくすることで、水晶振動子1の振動特性を向上させることができる。
【0093】
図45に示す例では、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の第2凸部14Cbの幅Wzの比率を変化させた場合の、水晶振動子1の振動の状態を示すパラメータであるQ値の変化の推移を示している。この例では、水晶片11の厚みTに対する励振電極部14の第1凸部14Caの幅Wxの比率が「1.0」、「2.0」、「3.0」、「4.3」の場合のグラフが示されている。このグラフでは、いずれの場合においても、励振電極部14の第2凸部14Cbの幅Wzが第1凸部14Caの幅Wxよりも大きくなると、Q値が急激に低下している。したがって、励振電極部14の第1凸部14Caの幅Wxを第2凸部14Cbの幅Wzよりも大きくすることで、水晶振動子1の振動特性を向上させることができる。
【0094】
以下に、本発明の実施形態の一部又は全部を付記し、その効果について説明する。なお、本発明は以下の付記に限定されるものではない。
【0095】
本発明の一態様によれば、第1基軸及び第1基軸と交差する第2基軸によって規定される主面を有する水晶片と、水晶片の主面に設けられた励振電極部とを備え、水晶片は、励振電極部に電圧が印加された場合に主面と交差する方向を厚み方向としたとき、厚み方向と第1基軸とによって規定される面において振動する厚み滑り振動を行い、励振電極部は、平板部と、水晶片の主面に沿う方向における電極端部に位置し、平板部よりも膜厚が大きい膜厚部を有し、膜厚部は、主面における第1基軸の軸線方向の端部に位置し、第2基軸の軸線方向に延びる平板部から突出した凸部としての第1凸部と、主面における第2基軸の軸線方向の端部に位置し、第1基軸の軸線方向に延びる平板部から突出した凸部としての第2凸部と、を有し、第1基軸と水晶片の厚み方向とによって規定される面に沿う方向に切断した第1凸部の断面積は、第2基軸と水晶片の厚み方向とによって規定される面に沿う方向に切断した第2凸部の断面積よりも大きい、水晶振動素子が提供される。
【0096】
本発明の一態様によれば、第1凸部および第2凸部の材質は、アルミニウムであり、水晶片の厚みに対する平板部の厚みの比が大きいほど、水晶振動素子の振動特性が所定条件を満たす第1凸部および第2凸部の断面積の最大値が大きくなる、水晶振動素子が提供される。
【0097】
本発明の一態様によれば、水晶振動素子の振動特性が所定条件を満たす第1凸部および第2凸部の断面積の最大値は、水晶片の厚みに対する平板部の厚みの比を変数とする一次関数で表される、水晶振動素子が提供される。
【0098】
本発明の一態様によれば、第1凸部の突出方向と交差する方向における第1凸部の幅は、第2凸部の突出方向と交差する方向における第2凸部の幅よりも大きい、水晶振動素子が提供される。
【0099】
本発明の一態様によれば、第1凸部および第2凸部の材質は、アルミニウムであり、水晶片の厚みに対する平板部の厚みの比が大きいほど、水晶振動素子の振動特性が所定条件を満たす第1凸部および第2凸部の幅の最大値は大きくなる、水晶振動素子が提供される。
【0100】
本発明の一態様によれば、水晶振動素子の振動特性が所定条件を満たす第1凸部および第2凸部の幅の最大値は、水晶片の厚みに対する平板部の厚みの比を変数とする一次関数で表される、水晶振動素子が提供される。
【0101】
本発明の一態様によれば、第1凸部の突出量は、第2凸部の突出量よりも大きい、水晶振動素子が提供される。
【0102】
本発明の一態様によれば、第1基軸及び第1基軸と交差する第2基軸によって規定される主面を有する水晶片と、水晶片の主面に設けられた励振電極部と、を備え、水晶片は、励振電極部に電圧が印加された場合に主面と交差する方向を厚み方向としたとき、厚み方向と第1基軸とによって規定される面において振動する厚み滑り振動を行い、励振電極部は、平板部と、水晶片の主面に沿う方向における電極端部に位置し、平板部よりも膜厚が大きい膜厚部を有し、膜厚部は、主面における第1基軸の軸線方向の端部に位置し、第2基軸の軸線方向に延びる凸部としての第1凸部を有する、水晶振動素子が提供される。
【0103】
本発明の一態様によれば、第1基軸及び第1基軸と交差する第2基軸によって規定される主面を有する水晶片と、水晶片の主面に設けられた励振電極部と、を備え、水晶片は、励振電極部に電圧が印加された場合に主面と交差する方向を厚み方向としたとき、厚み方向と第1基軸とによって規定される面において振動する厚み滑り振動を行い、励振電極部は、平板部と、水晶片の主面に沿う方向における電極端部に位置し、平板部よりも膜厚が大きい膜厚部を有し、膜厚部は、主面における第2基軸の軸線方向の端部に位置し、第1基軸の軸線方向に延びる凸部としての第2凸部を有する、水晶振動素子が提供される。
【0104】
一態様として、水晶片の結晶軸である互いに交差する第1軸、第2軸、第3軸のうち、第3軸を第1軸の周りに所定角度だけ傾斜させた軸を第3傾斜軸としたとき、第1軸を第1基軸に対応させるとともに第3傾斜軸を第2基軸に対応させる、水晶振動素子が提供される。
【0105】
一態様として、水晶片の結晶軸である互いに交差する第1軸、第2軸、第3軸のうち、第1軸を第3軸の周りに所定角度だけ傾斜させた軸を第1傾斜軸とし、第3軸を第1傾斜軸の周りに所定角度だけ傾斜させた軸を第3傾斜軸としたとき、第1傾斜軸を第1基軸に対応させるとともに第3傾斜軸を第2基軸に対応させる、水晶振動素子が提供される。
【0106】
一態様として、凸部は、励振電極部における平板部と同一の材料により構成される、水晶振動素子が提供される。
【0107】
一態様として、凸部は、励振電極部における平板部と異なる材料により構成される、水晶振動素子が提供される。
【0108】
一態様として、凸部は、絶縁材料により構成される、水晶振動素子が提供される。
【0109】
以上説明したように、本発明の一態様によれば、スプリアス発振をより一層低減することができる。
【0110】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。即ち、各実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、各実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0111】
1…水晶振動子
10…水晶振動素子
11…水晶片
14a,14b…励振電極
15a,15b…引出電極
16a,16b…接続電極
30…ベース部材
33a、33b…電極パッド
34a、34b…貫通電極
35a~35d…外部電極
36a、36b…導電性保持部材
40…蓋部材
50…接合部材。