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特許7634200レーザ発色加工装置、レーザ発色加工法及び金属発色材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】レーザ発色加工装置、レーザ発色加工法及び金属発色材料
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20250214BHJP
【FI】
B23K26/00 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021021582
(22)【出願日】2021-02-15
(65)【公開番号】P2022124049
(43)【公開日】2022-08-25
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】713005864
【氏名又は名称】有限会社志津刃物製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】319001145
【氏名又は名称】株式会社シズテック
(73)【特許権者】
【識別番号】391016842
【氏名又は名称】岐阜県
(74)【代理人】
【識別番号】100181250
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 信介
(72)【発明者】
【氏名】堀部 喜学
(72)【発明者】
【氏名】大竹 嘉幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 等幸
(72)【発明者】
【氏名】松原 早苗
【審査官】齋藤 健児
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-073091(JP,A)
【文献】特開2020-151762(JP,A)
【文献】特開平06-142952(JP,A)
【文献】特開2005-200730(JP,A)
【文献】特開2002-234300(JP,A)
【文献】特開平07-061198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00ー26/70
B44C 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ照射部から照射するレーザ光により金属材料の表面に発色可能な画像を描画するレーザ発色加工装置であって、
描画対象となる金属材料に対して、所定の色を発色させる際に、前記所定の色のRGB値と、該RGB値に対して所定の色を発色させるための前記レーザ照射部から照射するレーザ光の照射条件とを対応付けて格納する照射データ生成部と、
前記金属材料の表面に描く描画画像を入力する画像入力部と、
前記画像入力部で入力された描画画像を、形成されるRGBの酸化膜の面積比に基づいて発色する複数の画素で構成するように画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部において生成する画像を構成する各画素内において、RGBが占める領域とは別に白色又は黒色の領域を加え、前記各画素内において形成される前記RGBの酸化膜の領域と、同じ画素内において形成される前記白色又は黒色の酸化膜の領域の面積比に基づいて明度を付加する明度付加部と、
前記画像生成部と前記明度付加部とにより各画素に割り当てたRGB及び白色又は黒色の領域の面積比に基づいて、前記照射データ生成部から前記各画素のレーザ光の照射条件を抽出して前記レーザ照射部に出力する照射条件出力部と、
により前記金属材料の表面を発色させることを特徴とするレーザ発色加工装置。
【請求項2】
レーザ照射部から照射するレーザ光により金属材料の表面に発色可能な画像を描画するレーザ発色加工法であって、
描画対象となる金属材料に対して、所定の色を発色させる際に、前記所定の色のRGB値と、該RGB値に対して所定の色を発色させるための前記レーザ照射部から照射するレーザ光の照射条件とを対応付けて照射データ生成部に格納する照射データ生成工程と、
前記金属材料の表面に描く描画画像を入力する画像入力工程と、
前記画像入力工程で入力された描画画像を、形成されるRGBの酸化膜の面積比に基づいて発色する複数の画素で構成するように画像を生成する画像生成工程と、
前記画像生成工程において生成する画像を構成する各画素内において、RGBが占める領域とは別に白色又は黒色の領域を加え、前記各画素内において形成される前記RGBの酸化膜の領域と、同じ画素内において形成される前記白色又は黒色の酸化膜の領域の面積比に基づいて明度を付加する明度付加工程と、
前記画像生成工程と前記明度付加工程とにより各画素に割り当てたRGB及び白色又は黒色の領域の面積比に基づいて、前記照射データ生成部から前記各画素のレーザ光の照射条件を抽出して前記レーザ照射部に出力する照射条件出力工程と、
により前記金属材料の表面を発色させることを特徴とするレーザ発色加工法。
【請求項3】
金属材料と、
前記金属材料の表面に描画したい画像を構成する画素において
レーザ光の照射により形成される酸化膜であって、RGB値に基づいた面積比で形成されたRGB領域と
レーザ光の照射により形成される酸化膜であって、前記RGB領域が形成される画素と同一画素内で前記RGB領域とは別の白色又は黒色の領域の面積比で形成される白黒領域と
前記RGB領域及び前記白黒領域の酸化膜に入射する入射光と、前記入射光が前記酸化膜を透過して前記金属材料の表面で反射する反射光との薄膜干渉により発色させる酸化膜層と、
を備えたことを特徴とする金属発色材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザを用いて加工した発色とともに明度が設定可能な構造を有する金属発色材料及びレーザを用いた金属材料への発色加工法及び発色加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被加工材料の表面にカラーマーキングを行う方法として、被加工材料の表面に金属コロイドを混入した液体を塗布し、塗布した液体あるいは塗布後乾燥した液体にレーザ光線を照射し、金属コロイドを凝集させ、カラーマーキングを行うレーザカラーマーキング方法があった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところが、上記従来のレーザカラーマーキング方法では、被加工材料の表面に金属コロイドを塗布する必要があり、加工工程が複雑であるという課題があった。また、レーザの照射強度によっては、金属コロイドの塗布層にクラックが生じるなど、金属コロイドの塗装膜の厚さに対するレーザ照射条件の設定が難しいなどの課題があった。
【0004】
この課題を解決するために、描画対象となる金属材料に対して、所定の色の第1RGB値と、その第1RGB値に対して所定の色を発色させるためのレーザ光の照射条件とを対応付けて照射データ生成部に格納する照射データ生成工程と、金属材料の表面に描く描画画像を入力する画像入力工程と、入力した描画画像の各画素の第2RGB値が、照射データ生成部に格納された第1RGB値に、所定の条件で最も近い値となるように描画画像の各画素のRGB値を第1RGB値に置き換えることにより描画画像の領域分割を行う領域分割工程と、領域分割工程で各画素に割り当てた第1RGB値に基づいて、照射データ生成部から各画素のレーザ光の照射条件を抽出してレーザマーカに出力する照射条件出力工程と、により金属材料の表面を発色させるようにしたレーザ発色加工法や加工装置が開発された(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-094181号公報
【文献】特開2020-151762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2に記載の技術では、加工工法が簡単になり、レーザ照射条件の設定が容易になるなどの利点を有するとともに、異なる厚さの酸化膜を形成した微小なセルを多数組み合わせることにより、非常に多くの色を発色させることができるようになっている。
【0007】
ところが、多色の発色はできるものの、各セルの明度を変化させることができない。つまり、同じ色相の複数のセルを、それぞれ異なる明度とすることができないという課題があった。
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、金属表面に模様などを発色可能とする際に、色と明度を同時に制御可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の適用例として実現することが可能である。なお、本欄における括弧内の参照符号や補足説明等は、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0010】
[適用例1]
適用例1に記載の発明は、
レーザ照射部(10)から照射するレーザ光により金属材料(5)の表面に発色可能な画像を描画するレーザ発色加工装置(1)であって、
描画対象となる金属材料(5)に対して、所定の色を発色させる際に、前記所定の色のRGB値と、該RGB値に対して所定の色を発色させるための前記レーザ照射部(10)から照射するレーザ光の照射条件とを対応付けて格納する照射データ生成部(30)と、
前記金属材料(5)の表面に描く描画画像を入力する画像入力部(20)と、
前記画像入力部(20)で入力された描画画像を、形成されるRGBの酸化膜の面積比に基づいて発色する複数の画素で構成するように画像を生成する画像生成部(30)と、
前記画像生成部(30)において生成する画像を構成する各画素内において、RGBが占める領域とは別に白色又は黒色の領域を加え、前記各画素内において形成される前記RGBの酸化膜の領域と、同じ画素内において形成される前記白色又は黒色の酸化膜の領域の面積比に基づいて明度を付加する明度付加部(30)と、
前記画像生成部(30)と前記明度付加部(30)とにより各画素に割り当てたRGB及び白色又は黒色の領域の面積比に基づいて、前記照射データ生成部(30)から前記各画素のレーザ光の照射条件を抽出して前記レーザ照射部(10)に出力する照射条件出力部(30)と、
により前記金属材料(5)の表面を発色させることを要旨とする。
【0011】
このような、レーザ加工発色加工装置(1)では、金属材料(5)の表面に描画する際に、描画に用いる複数の画素のそれぞれに、RGBで発色加工される際に、画素のRGBで画像が形成される領域以外に、白色又は黒色の領域を設けている。換言すれば、1つの画素をRGBと白色又は黒色で構成している。
【0012】
そして、RGBの領域と白色又は黒色の領域の面積比に基づいて各画素の明度が設定される。ここで、金属材料(5)に描画される画像は各画素が集合したものであるため、画像全体としても明度の設定が可能となる。
【0013】
[適用例2]
適用例2に記載の発明は、
レーザ照射部(10)から照射するレーザ光により金属材料(5)の表面に発色可能な画像を描画するレーザ発色加工法であって、
描画対象となる金属材料(5)に対して、所定の色を発色させる際に、前記所定の色のRGB値と、該RGB値に対して所定の色を発色させるための前記レーザ照射部(10)から照射するレーザ光の照射条件とを対応付けて照射データ生成部(30)に格納する照射データ生成工程と、
前記金属材料(5)の表面に描く描画画像を入力する画像入力工程と、
前記画像入力工程で入力された描画画像を、形成されるRGBの酸化膜の面積比に基づいて発色する複数の画素で構成するように画像を生成する画像生成工程と、
前記画像生成工程において生成する画像を構成する各画素内において、RGBが占める領域とは別に白色又は黒色の領域を加え、前記各画素内において形成される前記RGBの酸化膜の領域と、同じ画素内において形成される前記白色又は黒色の領域の酸化膜の面積比に基づいて明度を付加する明度付加工程と、
前記画像生成工程と前記明度付加工程とにより各画素に割り当てたRGB及び白色又は黒色の領域の面積比に基づいて、前記照射データ生成部(30)から前記各画素のレーザ光の照射条件を抽出して前記レーザ照射部(10)に出力する照射条件出力工程と、
により前記金属材料(5)の表面を発色させることを要旨とする。
【0014】
このような加工方法によれば、適用例1に記載のレーザ発色加工装置(1)と同様の効果を得ることができる。
【0015】
[適用例3]
適用例3に記載の金属発色材料(2)は、
金属材料(5)と、
前記金属材料(5)の表面に描画したい画像を構成する画素においてレーザ光の照射により形成される酸化膜であって、RGB値に基づいた面積比で形成されたRGB領域と、レーザ光の照射により形成される酸化膜であって、前記RGB領域が形成される画素と同一画素内で前記RGB領域とは別の白色又は黒色の領域の面積比で形成される白黒領域と前記RGB領域及び前記白黒領域の酸化膜(6)に入射する入射光と、前記入射光が前記酸化膜(6)を透過して前記金属材料(5)の表面で反射する反射光との薄膜干渉により発色させる酸化膜層(7)と、
を備えたことを要旨とする。
【0016】
このような金属発色材料(2)では、金属材料(5)の表面に酸化膜(6)が形成され、形成された酸化膜(6)への入射光と反射光との薄膜干渉により発色する。その際、金属材料(5)の表面に描画したい画像を構成する画素が、その画素内に形成される、RGB値で形成される領域とその領域以外の白色又は黒色の領域とで構成されている。
【0017】
このように、金属材料(5)の表面に形成される画像の画素内にRGB値で形成される領域と白色又は黒色で形成される領域が存在する。このRGB値で構成される領域以外に白色又は黒色で形成される領域が存在することにより、各画素の明度を与えることができる。
【0018】
また、RGB値で構成される領域以外に白色又は黒色で形成される領域の面積比を変化させることにより各画素の明度を変化させることができ、その結果画像全体として、明度を変化させることができる金属発色材料(2)とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】レーザ発色加工装置の概略の構成を示すブロック図である。
図2】制御部で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図3】レーザ光の連続パルスが8個(パターン8)の場合のカラーサンプルを示す図である。
図4】カラー画像を用いて、金属材料の表面にカラー画像を描画した結果を示す図である。
図5】カラーマーキングデータベースの一例を示す図である。
図6】従来の発色方法と今回の発明に係る発色方法の違いを概念的に説明した図である。
図7】正方形の画素(セル)の色相と明度を変化させた結果を示す図である。
図8】金属発色材料の概略の構成と発色原理を示す図である。
図9】第2実施形態における金属発色材料の酸化膜層の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0021】
[第1実施形態]
(レーザ発色加工装置の構成)
図1に基づき、レーザ発色加工装置1の構成について説明する。図1は、レーザ発色加工装置1の概略の構成を示すブロック図である。
【0022】
図1に示すように、レーザ発色加工装置1は、レーザマーカ10、画像入力部20及び制御部30を備えている。
レーザマーカ10は、後述する制御部30からの制御データに基づいて、レーザ光を照射する装置であり、照射するレーザ光により、金属材料5の表面に熱を発生させ、発生する熱で、金属材料5の表面に酸化膜を成長させて発色させる。本実施形態では、レーザマーカ10としてオムロン社製 MX-Z2000Gを用いている。
【0023】
画像入力部20は、いわゆるスキャナであり、金属材料5の表面に描画する画像などを、紙などに描画されている文字、絵、図形、図面あるいは写真などからデジタルデータとして読み取る装置である。
【0024】
制御部30は、画像入力部20により入力したレーザ光の照射条件に基づき、レーザマーカ10を制御する装置であり、図示しないCPU、ROM、RAM、I/O、外部記憶装置、キーボード、表示装置などを備えている。
【0025】
ここで、図2に基づき、制御部30で実行される制御処理について説明する。図2は、制御部30で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図2に示すように、制御処理では、まずS100において、制御部30の図示しないCPUが、カラーマーキングデータベースの生成と格納を行う。金属材料5の表面に所定の色を発色させるためのレーザ光の照射条件(カラーマーキングデータベース)を格納する。
【0026】
この内容について詳細に説明する。画像データの各画素に対してRGBそれぞれ8bit、つまり、各画素に対しRGBそれぞれ256階調を有するものとし、その値をRGB値と呼ぶ。また、レーザの照射条件は、パターン(連続発振するパルスの個数)、周波数(パルスの周期)、パワー(パルスの高さ)とする。
【0027】
そして、各画素のRGB値とレーザの照射条件とを対応させたリストを、カラーマーキングデータベースと呼ぶ。
本実施形態では、カラーマーキングデータベースを作成するために、レーザマーカ10において、パターンを1~15、周波数を25~825[kHz]で25[kHz]刻み、パワーを最大出力の20~50[%]で1[%]刻みで変化させてカラーサンプルを作成した。
【0028】
図3に、パターン8(連続発振するパルス数が8個)の場合のカラーサンプルを示す。図3において、左下の矩形をパワー20[%]、周波数25[kHz]とし、上方向は、パワーを1[%]ずつ上げ、右方向は周波数を25[kHz]ずつ上げて描画した。
作成したカラーサンプルと、それを測色計により測定した分光スペクトルから、発色した色とレーザの照射条件との対応付けを行った。
【0029】
そして、入力画像のRGB値と、描画するレーザ光の照射条件とを対応付けたリストをカラーマーキングデータベースとして作成し、外部記憶装置に格納する。なお、本実施形態では、カラーマーキングデータベースの数をN個(色番号0,1,2,・・・,n-1,n,・・・N:N=256の場合、色番号n=0~255)とする。
【0030】
なお、レーザ照射条件では発色ができない色に関しては、色空間の近くの発色した複数の色の割合を計算し、各画素の色を生成する。色数を増加させることによる描画画像の鮮やかさの向上と描画時間はトレードオフの関係にあるため、必要に応じた色数のカラーマーキングデータベースの作成を行う。
【0031】
また、発色したい画像に応じて、必要な色数は異なる。そのため、入力された画像を画像処理することで、色分布を求め、その色分布を基に必要な色数を算出し、画像の色、発色の色、レーザの照射条件、セルの構造の関係を対応づけるカラーマーキングデータベースを自動生成する手法を加えることを行う。その実現により、入力画像やレーザの照射条件等に手を加えることなく、所有するレーザマーカ10が可能な最も鮮明なマーキングデータベースを自動作成することができる。
【0032】
続くS105において、描画画像の入力を行う。つまり、金属材料5の表面に描画したい画像を画像入力部20で読み取らせて、デジタルデータとして入力する。
続くS110において、領域分割を行う。つまり、画像入力部20により読み込んだ画像(以下、「入力画像」と呼ぶ)を、カラーマーキングデータベースで指定したN個の領域に分割するとともに、分割した各領域に対して白色の領域の割合を設定する。
【0033】
分割方法としては、入力画像の各画素に対して、そのRGB値と、N色あるカラーマーキングデータベースのRGB値との距離が最も近い色番号nを求める。RGB値の距離は、ユークリッド距離を用いる。このようにして得られた色番号nを画素値とする領域分割画像を生成する。
【0034】
ここで、ユークリッド距離とは、複数のRGB値の各要素(R,G,B)の距離を意味している。より具体的には、第1RGB値(R1,G1,B1)と第2RGB値(R2,G2,B2)がある場合、そのユークリッド距離は(R2-R1)+(G2-G1)+(B2-B1)の平方根となる。
【0035】
領域分割画像に対して、色番号n毎に、輪郭抽出を行い、輪郭を形成する連続する画素の座標値を領域データとして所定のデータ形式(本実施形態ではDXF形式)で図示しないRAM又は外部記憶装置に格納する。座標値は画像の左下を原点として、右方向をX軸、上方向をY軸とする。
【0036】
そして、描画する幅サイズを、拡大・縮小を行った座標値をRAM又は外部記憶装置に格納する。
続く、S115においては、レーザマーカ10に対してレーザ光照射条件の出力を行う。つまり、S110において得られた各色の領域データ及び白色の領域データに対して、カラーマーキングデータベースに従って、レーザの照射条件を設定し、白色を含む全色を重ねあわせたものをレーザ照射条件としてレーザマーカ10に出力する。
【0037】
(試験結果)
図4図6に基づき、レーザ発色加工装置1を用いて実際に金属材料5の表面に描画した結果について説明する。
図4は、カラー画像を用いて、金属材料5の表面にカラー画像を描画した結果を示す図である。
【0038】
図4(a)に示す入力画像に対して、図5に示すカラーパターンに従い領域分割した結果を図4(b)に、また、図4(c)に金属材料5に描画した結果を示す。図4(c)に示すように、カラー画像を得ることができる。なお、図4においては、明度の設定はしていない。
【0039】
(明度の付加の説明)
ここで、図6に基づき、従来技術として、レーザ光により金属材料5にカラー画像を分割して発色させる方法と、画像の明度を設定することができる方法について、対比しつつその違いを説明する。図6は、従来の発色方法と今回の発明に係る発色方法の違いを概念的に説明した図である。図6(a)はRGB値のみを設定する従来の発色方法、図6(c)は、今回の発明に係る発色方法を示す図である。
【0040】
図6(b)に示すように、従来の発色方法では、1つの画素中におけるRGB値、つまり、画素中のRGBの面積比(r:(1-r))を変化させることにより、画素の色を赤から紫を経て青と徐々に変化させることができた。
【0041】
なお、図6(a)、図6(b)において、画素の色は紫色であるため、RGBはR(赤色)を発色させる面積rと、B(青色)を発色させる面積(1-r)の面積比を変化させることによって紫色の色相を変化させている。なお、図6(a)において、各画素の高さは同じであるため、面面積比を横方向の長さr:(1-r)で示している。図6(c)、図6(d)においても同様である。
【0042】
これに対し、今回の発明係る方法では、図6(c)に示すように、1つの画素においてaで示す領域を従来と同じようにRGB値に基づいて発色する領域の面積比を変化させて色相を作り出す(面積比をb:(1-b)で表している)。
【0043】
それとともに、その領域以外の領域に白色の領域(図6(b)の中で(1-a)で示す領域)を形成する。そして、図6(d)に示すように、RGB値に基づいて形成する領域と白色の領域の面積比を変化させる(a:(1-a))ことにより、画素の明度を変化させることができるようになる。
【0044】
これにより、得られた発色結果を図7に示す。図7は、1辺が100μmの正方形の画素(セル)の色相と明度を変化させた結果を示す図であり、図7(a)はマーキング結果を示し、図7(b)は、RGB値を変化させた場合の色相の変化を示す図(図7(a)の中で(b)に該当)である。図7(c)は、RGBのうちR(赤)を形成する領域と白色の領域の面積比を変化させた場合の明度の変化を示した図(図7(a)の中で(c)に該当)であり、図7(d)は、RGBのうちB(青)を形成する領域と白色の領域の面積比を変化させた場合の明度の変化を示した図(図7(a)の中で(d)に該当)である。なお、図7(b)~図7(d)において、横軸は波長[nm]、縦軸は反射率[%]を示している。
【0045】
なお、マーキングは、金属材料5としてSUS304の平板を用い、色相及び明度の変化は測色計で計測した分光データとして示してある。
図7(a)では、横方向に赤と青の2色の面積比を変化させることによって得られた色相変化を示し、縦方向に同じ色相の場合に、白色領域との面積比を変化させることによって得られた明度の変化を示している。
【0046】
図7(a)に示すように、白色の面積が大きくなるほど(縦方向の下向きに行くに従って)、明るくなっていることが分かる。
また、図7(b)では、R:Gの面積比が、0:100を「A」、25:75を「B」、50:50を「C」、75:25を「D」、0:100を「E」で示してある。
図7(b)に示すように、R:Gの面積比によって、発色させたい色相(得られる色の波長に対する反射率)が得られることが分かる。
【0047】
図7(c)では、R領域と白色領域の面積比が、0:100を「F」、25:75を「G」、50:50を「H」、75:25を「I」、0:100を「J」で示してある。
また、図7(d)では、B領域と白色領域の面積比が、0:100を「K」、25:75を「L」、50:50を「M」、75:25を「N」、0:100を「O」で示してある。
【0048】
図7(c)及び図7(d)に示すように、RGB領域と白色領域の面積比を変化させることにより、発色させたい色相において明度を変化させることができることが分かる。
【0049】
(レーザ発色加工装置の特徴)
このような、レーザ加工発色加工装置1では、金属材料5の表面に描画する際に、描画に用いる複数の画素のそれぞれに、RGBで発色加工されるとともに、画素のRGBで画像が形成される領域以外に、白色の領域を設けている。換言すれば、1つの画素をRGBと白色又は黒色で構成している。
【0050】
そして、RGBの領域と白色の領域の面積比に基づいて各画素の明度が設定される。ここで、金属材料5に描画される画像は各画素が集合したものであるため、画像全体としても明度の設定が可能となる。
【0051】
また、各画素において明度を変化させることができるため、画像中で明度の分布を付けることもできる。つまり、画像の全面が同一の色であったとしても、画像中の位置によって明度を変化させて、明度の分布をつけることができる。
【0052】
(金属発色材料)
図8に基づき、金属発色材料2について説明する。図8は、金属発色材料2の概略の構成と発色原理を示す図である。
【0053】
図8に示すように、金属発色材料2は、金属材料5と、金属材料5の表面に形成された酸化膜層7とを備えている。
金属材料5は、描画対象となる材料であり、ステンレスやチタンなどの金属材である。
酸化膜層7は、描画したい画像の画素毎に照射条件を変えて、金属材料5の表面にレーザマーカ10から照射したレーザ光を照射して、金属材料5の表面の画素毎に異なる特性の酸化膜6を形成した金属材料5の表面に形成される層である。
【0054】
金属材料5の表面に形成された酸化膜層7の各画素においては、レーザ光の照射条件(パターン(連続発振するパルスの個数)、周波数(パルスの周期)、パワー(パルスの高さ))に応じて異なった特性(膜厚d:本実施形態では、d=数百[nm])を有する酸化膜6が形成される。
【0055】
そして、図8に示すように、酸化膜6の表面で反射される光(380~780[nm]の可視光)(光路A)と、酸化膜6を通過して金属材料5の表面で反射する光(光路B)とが干渉して発色する。このような干渉が各画素において発生するため、各画素の集合である描画が層において、発色作用が得られることとなる。
【0056】
[第2実施形態]
次に、図9に基づき、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、レーザ発色加工装置1の構成、カラーマーキングデータベースの作成、領域分割及び制御データの出力については第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0057】
(酸化膜層の形成)
第2実施形態における金属発色材料2では、酸化膜層7は、画素に代えて、描画したい画像を複数の領域40(以下、セル40とも呼ぶ)に分割し、分割した複数のセル40を更にサブセル41,42,43に分割する。そして、サブセル41,42ごとに照射条件を変えて、レーザ光を照射することにより、複数のサブセル41,42毎に異なる特性の酸化膜6を形成している。また、サブセル43を白色領域としている。
【0058】
図9に基づき、詳細に説明する。図9は、第2実施形態における金属発色材料2の酸化膜層7の状態を示す図である。
図9(a)に示す入力画像を、色領域に分割する。図9(b)に分割した色領域として赤色領域の図を示す。また、図9(c)に示すように、赤色領域を複数のマトリックス状のセル40に分割する。さらに、図9(d)に示すように、分割した各セル40を矩形状のサブセル41、サブセル42、サブセル43(白色領域)に分け、それぞれに異なる照射条件でレーザ光を照射する。
【0059】
これにより、各サブセル41,42,43に形成される酸化膜6の膜厚が異なるため、各サブセル41,42,43が異なる色(例えば、R、G、白色)を発することになる。
実際には、セル40内に、レーザマーカ10で照射するレーザ光を走査して、サブセル41,42,43、を形成させればよい。
【0060】
このように、各セル40内でレーサ光を走査することにより、サブセル41,42,43を構成し、それぞれのサブセル41,42,43が異なる色を発することにより、セル40の大きさが十分に小さい場合には、各サブセル41,42,43の色が合成され、多くの色を発するとともに、明度を変化させることが可能となる。
【0061】
なお、図9においては、サブセル41,42,43を3つの大きさと面積比率が同じ矩形で形成し、それぞれでR,G,Bを発色させていたが、セル40を構成するサブセルの数、サブセルの配置方法、サブセルの形状、サブセルの大きさ、サブセルの面積比、サブセルに対するレーザの照射条件を自由に設定できる。
【0062】
このようにすることで、色分解能及び明度分解能を向上させることが可能となるとともに、細かい模様を表現できるため、テクスチャ画像に有効なものとなる。
【0063】
[その他の実施形態]
(1)上記実施形態では、明度を付加するための領域を白色で形成していたが、黒色で形成してもよい。
【0064】
(2)上記実施形態では、画像入力部20としてスキャナを用いたが、他の入力装置であってもよい。
(3)上記実施形態では、各画素に対してRGBそれぞれ8bitの256階調を有するものとしたが、制御部30のCPUの性能によっては、それ以外のbit数を有するようにしてもよい。
【0065】
(4)上記実施形態では、レーザマーカとしてレーザ光をパルス的に発生するオムロン社製 MX-Z2000Gを用いていたが、他のタイプ、例えば、単位時間当たりのパルス数で強度を制御していたが、パルス幅で強度を制御するようなタイプなどでもよい。
【0066】
(5)上記実施形態では、カラーマーキングデータベースを作成するために、測色計により測定した分光スペクトルを用いたが、目視による色とレーザ照射条件の対応付けを行って、カラーマーキングデータベースを作成してもよい。
【0067】
像の各画素の色と、N色あるカラーマーキングデータベースの色との色差によってもよい。色差を求める方法として、色をLa*b*値で表し、LAB ΔEを求める方法によればよい。
【0068】
(7)上記実施形態では、レーザ光を照射する際にレーザ光を走査していたが、レーザマーカ10と金属材料5とを金属材料5の表面と平行に、相対的に移動させることによって金属材料5に酸化膜6を形成してもよい。相対的に移動させる場合には、必ずしも直線的に移動させる必要はなく、三角波状や円状などより複雑な動きをさせてもよい。
【0069】
(8)上記実施形態では、明度を変化させる画素を矩形とし、色領域と白(又は黒)領域を縦方向に分割することで説明していたが、色領域の面積と白(又は黒)領域の面積比を変化させればよく、ベイヤパターンなどとしてもよく、画素の形状も、円形など矩形以外の形状であってもよい。
【0070】
(9)上記実施形態では、レーザマーカ10を、周波数及び出力をパラメータとして制御していたが、周波数と出力以外にも、走査スピード、走査回数、焦点距離などをパラメータとしてレーザマーカ10を制御してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1… レーザ発色加工装置 2… 金属発色材料 5… 金属材料 6… 酸化膜 7… 酸化膜層 10… レーザマーカ(レーザ照射部) 20… 画像入力部 30… 制御部(照射データ生成部、画像生成部、明度付加部、照射条件出力部) 40… 領域(セル) 41,42,43… サブセル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9