(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】容器入り道路用補修材及び道路補修方法
(51)【国際特許分類】
E01C 23/00 20060101AFI20250214BHJP
B65D 81/32 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
E01C23/00 A
B65D81/32 D
(21)【出願番号】P 2024090332
(22)【出願日】2024-06-03
【審査請求日】2024-06-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509253273
【氏名又は名称】山王株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520012390
【氏名又は名称】トライム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136928
【氏名又は名称】高宮 章
(72)【発明者】
【氏名】金子 昌明
(72)【発明者】
【氏名】和田 修幸
(72)【発明者】
【氏名】池田 奈月
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-014741(JP,A)
【文献】特開2022-088910(JP,A)
【文献】特開2019-081607(JP,A)
【文献】特開2020-045713(JP,A)
【文献】特開2018-204190(JP,A)
【文献】特開2020-159005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 23/00
B65D 81/32
C04B 28/00-28/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤と硬化剤との2液が混合することにより硬化する
ポリウレア樹脂からなる道路用補修材であり、
開口可能に封止された吐出部を有する
低密度ポリエチレン層を含む可撓性の外袋と、
該外袋内に収容され該外袋の外側からの圧力によって破袋する
低密度ポリエチレン層を含む可撓性の内袋と、を備えた容器の外袋内に液状の主剤又は硬化剤のいずれか一方が封入され、かつ内袋内に液状の硬化剤又は主剤の他方が封入されたことを特徴とする容器入り道路用補修材。
【請求項2】
外袋は、外層側から内層側に向けて、透明蒸着ポリエチレンテレフタレート、ドライラミネート、ナイロン、ドライラミネート、低密度ポリエチレン、の順に層構造で構成されるとともに、
内袋は、外層側から内層側に向けて、低密度ポリエチレン、ドライラミネート、重合性ビニルモノマーで化学的に改質したポリオレフィン系ポリマーアロイ接着剤を使用したポリエチレンフィルム、の順に層構造で構成されたことを特徴とする請求項1記載の容器入り道路用補修材。
【請求項3】
主剤と硬化剤との2液が混合することにより硬化するポリウレア樹脂又はエポキシ樹脂からなる道路用補修材を用いた道路補修方法であり、
開口可能に封止された吐出部を有する低密度ポリエチレン層を含む可撓性の外袋と、該外袋内に収容され該外袋の外側からの圧力によって破袋する低密度ポリエチレン層を含む可撓性の内袋と、を備えた容器の外袋内に液状の主剤又は硬化剤のいずれか一方が封入され、かつ内袋内に液状の硬化剤又は主剤の他方が封入されて構成された容器入り道路用補修材を用意し、
道路のひび割れを補修する際に、
外袋の外側からの圧力によって内袋を破袋させ内袋内の液状物を外袋内に流出させて主剤と硬化剤を混合し、
外袋の吐出部から主剤と硬化剤の混合液を道路のひび割れ内に注入し、
該注入した混合液を常温で硬化させて道路のひび割れを補修することを特徴とする道路補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路のひび割れの補修の際に利用される容器入り道路用補修材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の道路はアスファルト舗装やコンクリート舗装がなされていることが多いが、経年劣化や疲労、地震、重量車体の通過等により、ひび割れ(クラック)が発生する場合がある。道路のひび割れを放置しておくと、車両の損傷や事故の原因となったり、さらなるひび割れの拡大を招くおそれもあることから、安全や道路保全のために補修材を用いて補修されている。
【0003】
道路のひび割れを補修するための補修材は、例えば、2液混合型の補修材が知られている(例えば、特許文献1参照)。2液混合型の補修材は、主剤と硬化剤を現場で混合したものを、注入器等を介して道路のひび割れ内に注入した後、常温で所定時間硬化させるものであった。この2液混合型の補修材は、特殊な加熱機械・器具等を必要とせず、比較的取り扱いが容易で短時間で施工できる点で種々の現場で利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、2液混合型の補修材では、主剤と硬化剤をそれぞれ別々の容器に入れておき、それらの2種類の容器を現場へ持ち運び、どちらか一方の容器へ又は他の混合用の容器に2液を入れて混合し、注入器に移し替えて注入する必要があった。したがって、2種類の容器を保管・管理し、かつ現場へ搬送する必要があるとともに、多くの工数がかかり手間や時間がかかるうえ、混合量の調整が必要であったり、移し替え等の際に液体が毀れてしまったりするおそれがある等の問題があった。
【0006】
上記課題に対し、本発明は、簡便かつ短時間で道路のひび割れを補修することができ、持ち運びや保管も便利で使い勝手が良い容器入り道路用補修材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、主剤と硬化剤との2液が混合することにより硬化するポリウレア樹脂からなる道路用補修材であり、開口可能に封止された吐出部を有する低密度ポリエチレン層を含む可撓性の外袋と、該外袋内に収容され該外袋の外側からの圧力によって破袋する低密度ポリエチレン層を含む可撓性の内袋と、を備えた容器の外袋内に液状の主剤又は硬化剤のいずれか一方が封入され、かつ内袋内に液状の硬化剤又は主剤の他方が封入された容器入り道路用補修材から高税される。
【0008】
また、外袋は、外層側から内層側に向けて、透明蒸着ポリエチレンテレフタレート、ドライラミネート、ナイロン、ドライラミネート、低密度ポリエチレン、の順に層構造で構成されるとともに、内袋は、外層側から内層側に向けて、低密度ポリエチレン、ドライラミネート、重合性ビニルモノマーで化学的に改質したポリオレフィン系ポリマーアロイ接着剤を使用したポリエチレンフィルム、の順に層構造で構成されたこととしてもよい。
【0009】
さらに本発明は、主剤と硬化剤との2液が混合することにより硬化するポリウレア樹脂又はエポキシ樹脂からなる道路用補修材を用いた道路補修方法であり、開口可能に封止された吐出部を有する低密度ポリエチレン層を含む外袋と、該外袋内に収容され該外袋の外側からの圧力によって破袋する低密度ポリエチレン層を含む内袋と、を備えた容器の外袋内に液状の主剤又は硬化剤のいずれか一方が封入され、かつ内袋内に液状の硬化剤又は主剤の他方が封入されて構成された容器入り道路用補修材を用意し、道路のひび割れを補修する際に、外袋の外側からの圧力によって内袋を破袋させ内袋内の液状物を外袋内に流出させて主剤と硬化剤を混合し、外袋の吐出部から主剤と硬化剤の混合液を道路のひび割れ内に注入し、該注入した混合液を常温で硬化させて道路のひび割れを補修する道路補修方法から構成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の容器入り道路用補修材によれば、主剤と硬化剤との2液が混合することにより硬化する道路用補修材であり、開口可能に封止された吐出部を有する外袋と、該外袋内に収容され該外袋の外側からの圧力によって破袋する内袋と、を備えた容器の外袋内に液状の主剤又は硬化剤のいずれか一方が封入され、かつ内袋内に液状の硬化剤又は主剤の他方が封入された構成であるから、現場に簡単に持ち運びでき、容器の外袋の外側から圧力を加えて内袋を破袋させて、外袋内の主剤と内袋内の硬化剤を簡単に混合させることができ、その後、吐出部から混合材を吐出して、道路のひび割れに注入することができる。これにより、2液をそれぞれ別々の容器に入れたものに比較して、道路のひび割れの補修工事を簡便かつ短時間にスムーズに行うことができ、施工効率を向上できると同時に、廃棄物を減らすことができ環境負荷も少ない容器入り補修材を提供することができる。
【0011】
また、外袋は、底マチが設けられた自立型袋からなる構成とすることにより、例えば、保管、搬送の際や、補修工事施工中等に補修材入りの容器を自立させたりして置くことができ、使い勝手を向上できる。
【0012】
また、内袋は、周縁部の一部が外袋に溶着されるとともに、その他の周縁部には該外袋との溶着部と比較して弱い溶着力となる破袋用シール部が設けられた構成とすることにより、主剤と硬化剤を混合しやすいとともに、混合させた混合材を吐出部から吐出させて施工等を行いやすい。
【0013】
また、外袋及び内袋は、透明素材からなり、外袋に封入される主剤に、着色料が混合される構成とすることにより、アスファルト等の道路の色に対応する色の補修材で補修できるとともに、外袋側の液状体が着色されているので、混合状態をある程度把握しやすく、使い勝手がよい。
【0014】
また、外袋の吐出部は、該吐出部を封止するキャップと、吐出ノズルと、を着脱交換可能に設けられた構成とすることにより、混合する際と注入する際とで未混合の主剤が吐出ノズルに入るのを防止でき、確実に適切に収容した容量の主剤と硬化剤を混合して注入することができる。
【0015】
また、外袋の吐出部は、閉鎖された吐出ノズルを有し、一部を開封して吐出するように設けられた構成とすることにより、混合後に付け替えを行うことなくスムーズに注入することができ、使い勝手がよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る容器入り道路用補修材の正面面説明図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る容器入り道路用補修材のA-A線断面説明図である。
【
図3】
図1の容器入り道路用補修材の主剤と硬化剤を混合する際の作用説明図である。
【
図4】
図1の容器入り道路用補修材の作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下添付図面を参照しつつ本発明の容器入り道路用補修材の実施形態について説明する。本発明に係る容器入り道路用補修材は、道路のひび割れを補修する補修材であり、容器に入れられた状態で使用できる容器入り道路用補修材である。
【0018】
図1ないし
図4は、本発明の容器入り道路用補修材の一実施形態を示している。
図1、
図2は、本実施形態に係る容器入り道路用補修材10は、外袋12と内袋14とを備えた容器16の該外袋12に主剤18が封入され、かつ該内袋14に硬化剤20が封入されて構成される。
【0019】
補修材は、主剤18と硬化剤20とを混合することにより、常温で硬化する2液混合の常温硬化型補修材である。本実施形態では、補修材は、例えば、耐久性、耐摩耗性、耐水性、耐熱性、耐薬品性、ひび割れ追従性に優れたポリウレア樹脂からなる。よって、補修材の主剤18としては、例えば、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタンと、着色料としてのカーボンブラックと、2-エチルヘキサン酸等を混合した液状のポリアミン系の主剤からなる。硬化剤20としては、例えば、フタル酸ジイソノニルと、1,1’メチレンビス(イソシアナトベンゼン)等を混合した液状のポリイソシアネート系の硬化剤からなる。主剤18と、硬化剤20と、は重量比で1:1の割合で混合されるように容器16の外袋12と内袋14にそれぞれ分けた状態で設定される。
【0020】
上記のような主剤18と硬化剤20との混合材は、硬化前は低粘度であるので道路のひび割れ内にスムーズに注入することができると同時に、常温下で1~数時間程度の比較的短時間で硬化してポリウレア樹脂の補修材となる。なお、道路用補修材は、ポリウレア樹脂に限らず、エポキシ樹脂等その他任意の補修材でもよく、それらの補修材を構成する主剤、硬化剤を選択してもよい。
【0021】
容器16は、外袋12と内袋14を有する二重袋構造であり、主剤18と硬化剤20を分けた状態で1つの袋状容器に収容することができる収容袋である。本実施形態では、外袋12内であって内袋14の外側に補修材の主剤18が封止され、内袋14内に補修材の硬化剤20が封止される。なお、外袋12に硬化剤20を収容し、内袋14に主剤18を収容することとしてもよい。
【0022】
本実施形態では、外袋12は、例えば、ポリエチレン等の合成樹脂製の可撓性フィルムの周囲を溶着等により閉鎖して袋状にしたものからなり、透明で内部が見える透明袋からなる。
外袋12は、低密度ポリエチレン層を含むとよい。さらに、外袋12は、外層側から内層側に向けて、透明蒸着ポリエチレンテレフタレート、ドライラミネート、ナイロン、ドライラミネート、低密度ポリエチレン、の順に層構造で構成されるとよい。外袋12には、袋底となる側に底マチ22が設けられており、外袋12は、底マチ22を介して床や地面上において自立する自立型袋からなる。よって、外袋12は、底マチ22と対向する上端側に吐出部24が設けられている。吐出部24は、外袋12の内側と外側を連通し、外袋12内部の液状物の吐出手段である。
図4に示すように、吐出部24には、例えば、キャップ26及び吐出ノズル28が着脱交換可能に装着される。本実施形態では、吐出部24とキャップ26又は吐出ノズル28の着脱構成は、例えば、吐出部24の外周に雄ねじ部が形成され、キャップ26と吐出ノズル28の内側に雌ねじ部が形成されており、互いに螺合することで着脱交換できるようになっている。
【0023】
本実施形態では、使用前及び容器内での主剤と硬化剤との混合作業時には、吐出部24にはキャップ26を装着させておく。これにより、主剤と硬化剤を混合する際に、未混合状態の主剤又は硬化剤が吐出ノズル28内に残るのを良好に防止できる。主剤と硬化剤とを混合した後、該混合液を道路のひび割れ内に注入する際には、キャップ26を取り外し、先端が開口した吐出ノズル28に交換して装着して、注入作業を行える。
【0024】
なお、吐出ノズル28は、先端が封止されたものを吐出部24にあらかじめ装着して構成することとしてもよい。この場合、使用前及び容器内の主剤と硬化剤を混合する際には吐出ノズル28の先端を閉鎖した状態としておき、主剤と硬化剤を混合した後の混合液を注入する作業を行う際に、吐出ノズル28の先端をカット等して開口して、混合液を吐出するように設けてもよい。
【0025】
内袋14は、例えば、ポリエチレン等の合成樹脂製の可撓性フィルムからなり、透明で内部が見える透明袋からなる。内袋14は、低密度ポリエチレン層を含むとよい。さらに、外層側から内層側に向けて、低密度ポリエチレン、ドライラミネート、重合性ビニルモノマーで化学的に改質したポリオレフィン系ポリマーアロイ接着剤を使用したポリエチレンフィルム、の順に層構造で構成されるとよい。本実施形態では、内袋14は、例えば、可撓性フィルムの周囲が溶着されて袋状に形成されるが、底側の溶着部分が、外袋12の底マチ側の溶着部分30に固定されている。内袋14の上端側の溶着部分又は底側を除く3方側部分の溶着部分は比較的破れやすいような低接着状態と形成されている。すなわち、内袋の上周縁部には該外袋との溶着部分30と比較して弱い溶着力となる破袋用シール部32となっている。よって、内袋14は、内部に硬化剤20が封入された状態で外から圧力がかかると、該硬化剤20の外向きへの圧力により、該低接着状態の溶着部分が破れて硬化剤20が内袋14の外側へ流出し、外袋12内の主剤と混合される。
【0026】
本実施形態の容器入り道路用補修材10を使用する場合
及び道路補修方法について説明する。容器入り道路用補修材10は、使用前は、2重袋状の一つの容器に主剤と硬化剤が分かれた状態で入っているので、従来のように2種類の容器を管理や搬送する必要がなく、保管・管理及び搬送面で便利である。道路のひび割れが生じている現場で使用する際には、作業者は、
図3に示すように、外袋12の外側から手で強く圧力をかけて該外袋12内に収容されている内袋14の破袋用シール部32が破れて破袋させる。内袋14が外袋12内で破袋されると、該内袋14内に封入されていた硬化剤が外袋12内に流出し、主剤と硬化剤が混合される。さらに作業者が手でもみほぐしたり
振ったりしながら外袋12内で主剤と硬化剤を全体的に十分に混合する。その後、
図4に示すように、吐出部24からキャップ26を取り外して吐出ノズル28を装着する。吐出ノズル28の先端をカットして開口させ、外袋12の吐出ノズル28の先端から、主剤と硬化剤の混合液を道路のひび割れ内に注入していく。その後、常温下で1~数時間程度養生し、混合液が硬化して補修材としてひび割れが補修される。このように、一つの容器内で使用時に混合して注入できることから、従来のように主剤や硬化剤の2種類の容器を用意したり液体を別容器等に移し替えたりする必要がないので、こぼれたり、取り扱いを慎重にする必要もなく、簡便な操作で、かつ短時間で道路のひび割れを補修施工することができる。また、施工後も袋状の一つの容器だけが残るので、コンパクトな状態で持ち帰ることができ、廃棄処理も簡単に行うことができる。
【0027】
以上説明した本発明の容器入り道路用補修材は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【符号の説明】
【0028】
10 容器入り道路用補修材
12 外袋
14 内袋
16 容器
18 主剤
20 硬化剤
22 底マチ
24 吐出部
26 キャップ
28 吐出ノズル
32 破袋用シール部
【要約】
【課題】簡便かつ短時間で道路のひび割れを補修することができ、持ち運びや保管も便利で使い勝手が良い容器入り道路用補修材を提供する。
【解決手段】主剤と硬化剤との2液が混合することにより硬化する道路用補修材であり、開口可能に封止された吐出部24を有する外袋12と、該外袋12内に収容され該外袋12の外側からの圧力によって破袋する内袋14と、を備えた容器16の外袋12内に液状の主剤18又は硬化剤20のいずれか一方が封入され、かつ内袋14内に液状の硬化剤20又は主剤18の他方が封入される。
【選択図】
図1