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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】コネクタ用部材
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2465 20160101AFI20250214BHJP
   H01M 8/247 20160101ALI20250214BHJP
   H01R 13/639 20060101ALI20250214BHJP
   H01R 13/64 20060101ALI20250214BHJP
   H01R 12/67 20110101ALN20250214BHJP
   H01R 12/77 20110101ALN20250214BHJP
【FI】
H01M8/2465
H01M8/247
H01R13/639 Z
H01R13/64
H01R12/67
H01R12/77
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024174112
(22)【出願日】2024-10-03
【審査請求日】2024-12-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522195954
【氏名又は名称】株式会社水素パワー
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神田 崇宏
(72)【発明者】
【氏名】菅田 征二
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-251058(JP,A)
【文献】特開2012-059563(JP,A)
【文献】特開2007-200631(JP,A)
【文献】特開2012-124166(JP,A)
【文献】特開2010-192384(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第115498207(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/24
H01M 8/02
H01M 50/20
H01M 50/50
H01R 12/00
H01R 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池のスタックに並列接続された複数のコネクタに取付けられるコネクタ用部材であって、
前記スタックにおけるセルの積層方向に沿って延びる本体部と、前記本体部に連接された取付部と、を備え、
前記本体部には、前記各コネクタにおけるハウジングの脱離を防止する脱離防止壁と、前記各コネクタの電線が挿通される挿通孔と、が設けられ、
前記取付部は、前記本体部の両端に設けられることで、前記スタックの両端に設けられたエンドプレートに着脱可能に取付けられ、
前記脱離防止壁は、前記挿通孔に前記各電線が挿通された状態で、前記各取付部が前記各エンドプレートに取付けられることで、前記各ハウジングに対して、前記各コネクタの接続方向に沿って隣接して配置される、コネクタ用部材。
【請求項2】
前記本体部は、前記脱離防止壁を形成する第一構成体と、前記挿通孔を形成する第二構成体と、を有し、
第二構成体は、前記第一構成体に連接され、前記各電線が配置される凹部を形成する基部と、前記基部に対して、前記凹部を覆って着脱可能に取付けられることで、前記凹部と共に前記挿通孔を構成する補助部と、を含む、請求項1に記載のコネクタ用部材。
【請求項3】
前記凹部は、前記各電線に対応して複数設けられている、請求項2に記載のコネクタ用部材。
【請求項4】
前記各取付部には、前記各エンドプレートに設けられた位置決めピンが挿通される位置決め孔が設けられている、請求項1に記載のコネクタ用部材。
【請求項5】
前記本体部は、前記一方の取付部に設けられた前記位置決め孔が、前記積層方向に長い長孔として構成されることで、前記各取付部が各エンドプレートに取付けられた状態において、前記各取付部と共に前記スタックの前記積層方向への変位を許容可能に構成されている、請求項4に記載のコネクタ用部材。
【請求項6】
前記各取付部には、前記各エンドプレートに設けられた貫入孔と連通する連通孔が設けられ、
前記一方の取付部に設けられた前記連通孔は、前記積層方向に長い長孔として構成され、
前記一方の連通孔の内部には、この連通孔に挿通される締結部材に嵌装されるスリーブが設けられ、
前記スリーブにおける、前記各コネクタの接続方向に沿った長さは、前記連通孔の前記接続方向に沿った長さよりも長い、請求項5に記載のコネクタ用部材。
【請求項7】
前記連通孔の内周面には、金属カラーが設けられ、
前記金属カラーにおける、前記各コネクタの接続方向に沿った長さは、前記連通孔の前記接続方向に沿った長さよりも長い、請求項6に記載のコネクタ用部材。
【請求項8】
前記各コネクタと前記脱離防止壁との間に介装される緩衝部材を、さらに備える、請求項1に記載のコネクタ用部材。
【請求項9】
前記各電線と前記挿通孔との間に介装される緩衝部材を、さらに備える、請求項1に記載のコネクタ用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池セルの電圧測定用コネクタに取付けられる部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷低減への取組みが世界的に活発になっていることを背景に、燃料電池の優位性が注目されている。
【0003】
燃料電池は、水素と酸素さえあれば発電が可能であり、発電時に水しか排出しないことから、環境への負荷が少ない。
また、燃料電池は、化学反応のみで発電するため騒音が発生しないこと、送電ロスが少ないこと、燃料の入手が容易であること等、多くのメリットが存在する。
【0004】
ところで、燃料電池は、セルと呼ばれる、単体で水素と酸素を反応させて発電を行うことができる略板状の構成体が複数枚積層されることで、全体が概略構成されている。
そして、燃料電池の製造等において、各セルの発電状況に応じた条件制御を行う必要があることから、各セルの電圧をモニタするためのコネクタが用いられている。
【0005】
このコネクタは、例えば耐熱性を担保できるような素材により形成した場合、その材質特性により破損や割れが生じることから、コネクタ自体に、セルからの抜けを防止する構造(ロック機構)を付加することができない。
このような場合において、コネクタとセルとは、コネクタ内部のターミナルによる、セルを構成するセパレータへの挟持力のみで連結され、その接続状態が不安定となる、という問題があった。
【0006】
上記問題に関して、特許文献1には、複数の燃料電池セルに対して、複数のセルモニタ(コネクタ)を容易に取り付けるための、燃料電池ユニットに関する発明が開示されている。
【0007】
この燃料電池ユニットは、第1方向に沿って積層された複数の燃料電池セルを有するセルスタック、セルスタックを収容するスタックケース、及び各燃料電池セルと電気的に接続される電圧検出用の一対の接点を有する複数のセルモニタから構成されている。
そして、複数のセルモニタには、スタックケースに着脱可能に取り付けられ、各セルモニタを一括して固定する固定部材が設けられている。
【0008】
これにより、複数のセルモニタを、簡便かつ確実に取り付けることができ、この取付け状態を安定的に維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2023-176901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、一般的なコネクタに設けられていない、ハウジングから突設された挟持部を利用して、スタックケースへの固定を行うものであり、汎用性に乏しい。
また、特許文献1に記載の発明は、上記挟持部に固定部材を取付けるのみで、スタックケースへの固定を行うものであるから、電線は保護されず、ハウジングとの接続部分等で断線する恐れがある。
【0011】
本発明は上記のような実状に鑑みてなされたものであって、複数のセルとコネクタとの安定的な接続状態を容易に確保して抜けを防止しつつ、電線の保護も行うことが可能な、コネクタ用部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明は、燃料電池のスタックに並列接続された複数のコネクタに取付けられるコネクタ用部材であって、
前記スタックにおけるセルの積層方向に沿って延びる本体部と、前記本体部に連接された取付部と、を備え、
前記本体部には、前記各コネクタにおけるハウジングの脱離を防止する脱離防止壁と、前記各コネクタの電線が挿通される挿通孔と、が設けられ、
前記取付部は、前記本体部の両端に設けられることで、前記スタックの両端に設けられたエンドプレートに着脱可能に取付けられ、
前記脱離防止壁は、前記挿通孔に前記各電線が挿通された状態で、前記各取付部が前記各エンドプレートに取付けられることで、前記各ハウジングに対して、前記各コネクタの接続方向に沿って隣接して配置される。
【0013】
本発明によれば、コネクタへの特別な加工を要せずとも、本コネクタ用部材の燃料電池への取付けでもって、脱離防止壁により各コネクタ(ハウジング)の抜けを防止しつつ、挿通孔により各電線を保護することができる。
また、スタックケースに取付けた場合に比して、本コネクタ用部材と、スタックや各コネクタとの相対位置の寸法精度を確保し易くなり、余計な切削加工が不要となるため、製造性が向上し、コストダウンに資する。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記本体部は、前記脱離防止壁を形成する第一構成体と、前記挿通孔を形成する第二構成体と、を有し、
第二構成体は、前記第一構成体に連接され、前記各電線が配置される凹部を形成する基部と、前記基部に対して、前記凹部を覆って着脱可能に取付けられることで、前記凹部と共に前記挿通孔を構成する補助部と、を含む。
【0015】
このような構成とすることで、凹部に各電線を配置し、これらを被覆するように補助部が取付けられるため、取付け作業が容易となる上、挿通孔の内周面を各電線の外周面に近接或いは当接させる設計とすることができ、各電線の安定的な保護状態が確保される。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記凹部は、前記各電線に対応して複数設けられている。
【0017】
このような構成とすることで、各電線の保護状態がより安定化する。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記各取付部には、前記各エンドプレートに設けられた位置決めピンが挿通される位置決め孔が設けられている。
【0019】
このような構成とすることで、本コネクタ用部材の取付け作業が容易となる上、本コネクタ用部材と各コネクタとの相対位置の寸法精度がより向上する。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記本体部は、前記一方の取付部に設けられた前記位置決め孔が、前記積層方向に長い長孔として構成されることで、前記各取付部が各エンドプレートに取付けられた状態において、前記各取付部と共に前記スタックの前記積層方向への変位を許容可能に構成されている。
【0021】
このような構成とすることで、本コネクタ用部材の燃料電池への取付け後における、スタックの熱膨張による積層方向へ広がりが許容され、各コネクタの安定した接続状態が確保される。
【0022】
本発明の好ましい形態では、前記各取付部には、前記各エンドプレートに設けられた貫入孔と連通する連通孔が設けられ、
一方の前記取付部に設けられた前記連通孔は、前記積層方向に長い長孔として構成され、
前記一方の連通孔の内部には、この連通孔に挿通される締結部材に嵌装されるスリーブが設けられ、
前記スリーブにおける、前記各コネクタの接続方向に沿った長さは、前記連通孔の前記接続方向に沿った長さよりも長い。
【0023】
このような構成とすることで、スリーブにより、締結部材と本コネクタ用部材との間に一定の隙間が確保される。
これにより、本コネクタ用部材の燃料電池への取付け後に、熱膨張によりスタックが積層方向へ広がろうとした場合、締結部材(及びエンドプレート)が、本コネクタ用部材に対して摺動することで、上記積層方向へ広がりが許容される。
【0024】
本発明の好ましい形態では、前記連通孔の内周面には、金属カラーが設けられ、
前記金属カラーにおける、前記各コネクタの接続方向に沿った長さは、前記連通孔の前記接続方向に沿った長さよりも長い。
【0025】
このような構成とすることで、温度変化に伴う取付部の熱クリープ現象によるボルトの緩みを抑制することができる。
即ち、本コネクタ用部材を樹脂で製造した場合、ボルトが直接取付部の表面に接すると、温度変化によって上記熱クリープ現象が生ずる恐れがあるが、上記構成とすることで、連通孔(及び貫入孔)にボルトを貫入させ締結した場合、ボルトが金属カラーと接することとなる。
これにより、温度変化が生じても、ボルトと取付部との間の熱クリープ現象の発生を防ぎ、これに伴うボルトの緩みを抑制することができる。
【0026】
本発明の好ましい形態では、本コネクタ用部材は、前記各コネクタと前記脱離防止壁との間に介装される緩衝部材を、さらに備える。
【0027】
このような構成とすることで、不要な外力による振動・衝撃が加わっても、緩衝部材がこれを吸収し、コネクタの接続状態、電線の保護状態を安定的に維持できる。
【0028】
本発明の好ましい形態では、本コネクタ用部材は、前記各電線と前記挿通孔との間に介装される緩衝部材を、さらに備える。
【0029】
このような構成とすることで、不要な外力による振動・衝撃が加わっても、緩衝部材がこれを吸収し、各コネクタの接続状態、各電線の保護状態を安定的に維持できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、複数のセルとコネクタとの安定的な接続状態を容易に確保して抜けを防止しつつ、電線の保護も行うこと可能な、コネクタ用部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態に係るコネクタ用部材の斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るコネクタ用部材の斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係るコネクタ用部材の組立ての流れを示す図である。
図4】本発明の実施形態に係るコネクタ用部材の組立てた状態を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係るコネクタ用部材の変更例を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係るコネクタ用部材の変更例を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係るコネクタ用部材の変更例を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係るコネクタ用部材の変更例を示す図である。
図9】本発明の実施形態に係るコネクタ用部材の変更例を示す図である。
図10】本発明の実施形態に係るコネクタ用部材の変更例を示す図である。
図11】本発明の実施形態に係るコネクタ用部材の変更例を示す図である。
図12】本発明の実施形態に係るコネクタ用部材の変更例を示す図である。
図13】本発明の実施形態に係るコネクタ用部材の変更例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図1図10を用いて、本発明の実施形態に係るコネクタ用部材について説明する。
なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではない。
また、これらの図において、符号Xは、本実施形態に係るコネクタ用部材を示し、符号Aは、本実施形態に係る燃料電池を示し、符号Bは、本実施形態に係るコネクタを示している。
【0033】
ここで、以下、説明の便宜上、図1等におけるx軸方向を接続方向又は前後方向、y軸方向を積層方向又は左右方向、z軸方向を高さ方向と、それぞれ称することとする。
【0034】
<構成>
以下、図1及び図2を用いて、コネクタ用部材Xの構成について説明する。
なお、燃料電池Aにおける各セルの電圧測定に用いられるコネクタB(図3等参照)は、各セルを挟持するターミナル(図示せず)を収納する樹脂製のハウジングB1と、ハウジングB1の後面から延びる電線B2と、を有している。
また、図1は、前方側から見たコネクタ用部材Xの斜視図、図2は、後方側から見たコネクタ用部材Xの斜視図を示している。
【0035】
図1に示すように、コネクタ用部材Xは、燃料電池A(図3等参照)のスタックS(図3等参照)に並列接続された複数のコネクタBに取付けられるものであって、スタックSにおけるセルの積層方向に沿って延びる本体部1と、本体部1に連接された取付部2と、各ハウジングB1と後述する脱離防止壁Wとの間に介装される緩衝部材3と、を備えている。
【0036】
本体部1は、各ハウジングB1の脱離を防止する脱離防止壁Wを形成する第一構成体11と、各電線B2が挿通される挿通孔H(図4等参照)を形成する第二構成体12と、を有している。
【0037】
第一構成体11は、略直方体形状の構成体であり、その前方側面が脱離防止壁Wとして構成されている。
【0038】
第二構成体12は、第一構成体11に連接され、各電線B2が配置される凹部pを形成する基部12aと、基部12aに対して、凹部pを覆って着脱可能に取付けられることで、凹部pと共に前記挿通孔Hを構成する補助部12bと、を含む。
【0039】
基部12aは、第一構成体11の後側面に連接された構成体であり、この上面に凹部pが形成されている。
凹部pは、下方に丸く湾曲した窪みであり、各電線B2に対応して複数隣接して設けられることで、全体として波形状を呈している。
【0040】
補助部12bは、その下面に、各凹部pに対応した、上方に丸く湾曲した窪みである凹部qが形成され、その両端には基部12aに対する着脱手段Jが形成されている。
【0041】
着脱手段Jは、本実施形態においては、補助部12bの各両端から下方に延び、その下端に爪が設けられた係止爪部である。
そして、各係止爪部が、基部12aの左右側面に当接しつつ、下端の爪が基部12aの下面に係止することで、補助部12bが、基部12aに対して着脱可能に取付けられる。
また、これにより、各凹部pと各凹部qが合致し、複数の略円形状の挿通孔Hが構成される。
【0042】
取付部2は、本体部1の両端に設けられることで、スタックSの両端に設けられたエンドプレートEに着脱可能に取付けられる。
詳述すれば、各取付部2は、各エンドプレートEに設けられた位置決めピンk(図3等参照)が挿通される位置決め孔T1が設けられている第一構成体21と、エンドプレートEに設けられた貫入孔t(図3等参照)と連通する連通孔T2が設けられている第二構成体22と、を有している。
【0043】
第一構成体21は、本体部1の第一構成体11の両端に連接された略直方体状のブロックである。
【0044】
第二構成体22は、取付部2の各第一構成体21の上面に連接された略直方体状のブロックである。
また、各第二構成体22は、その前面が各第一構成体21の前面と一致するように配置されることで、取付部2全体として、側面視で略L字状を呈している。
【0045】
位置決め孔T1及び連通孔T2について、本実施形態においては、左方の取付部2に設けられたこれら各構成は、略円形状の孔として構成され、右方の取付部2に設けられたこれら各構成は、積層方向に長い長孔として構成されている。
なお、長孔として構成されるのは、左方の取付部2に設けられた連通孔T2及び位置決め孔T1であっても良い。本実施形態においては、左方の連通孔T2及び位置決め孔T1が、コネクタ用部材Xを燃料電池A(エンドプレートE)に取付ける際の基準穴となる。
【0046】
緩衝部材3は、脱離防止壁Wと略同一の長さを有する細長状の部材であり、コネクタ用部材Xの組立てにより、脱離防止壁WとハウジングB1との間に挟持される。
なお、緩衝部材3の素材としては、ポリウレタンやポリエチレンを用いたクッション性の高いものが好適に用いられる。
【0047】
<組立て方法>
以下、図3及び図4を用いて、コネクタ用部材Xの組立て方法について説明する。
なお、図3(a)は、組立て方法の全体像を示す全体斜視図、図3(b-1)~(b-3)は、組立て順序を説明するAA´線断面図である。
【0048】
ここで、図3(a)に示すように、各エンドプレートEの後方側面には、各連通孔T2と連通する貫入孔tが予め穿設され、各位置決め孔T1に挿通される位置決めピンkが予め突設されている。
作業者は、これら各構成を利用しつつ、コネクタ用部材Xを組立てる。
【0049】
まず、作業者は、図3(a)又は図3(b-1)の矢印d1に示すように、ハウジングB1をスタックSにセルに挿込み、セルをターミナルで挟持することで、コネクタBをスタックSに対して接続状態とする。
また、作業者は、複数のコネクタBについて、隣接するコネクタB同士を密接配置させて、同様に接続状態とする。
【0050】
次に、作業者は、図3(a)又は図3(b-2)の矢印d2に示すように、取付部2を介して、補助部12bを除くコネクタ用部材Xを燃料電池Aに取付ける。
【0051】
即ち、作業者は、各位置決めピンkを各位置決め孔T1に挿通させることで、各貫入孔tと各連通孔T2と連通させる。
また、作業者は、連通した各貫入孔t及び各連通孔T2に、締結部材(ボルト)vを挿通する。
なお、このとき、作業者は、図3(a)又は図3(b-2)の矢印d3に示すように、脱離防止壁Wと各ハウジングB1の後方側面との間に、緩衝部材3を介在させておく。
【0052】
そして、作業者が各締結部材vを締結することで、図3(b-3)に示すように、緩衝部材3が脱離防止壁Wと各ハウジングB1との間に挟持された状態で、補助部12bを除くコネクタ用部材Xが、燃料電池Aに取付けられる。
また、各電線B2の一端側が、各凹部pに配置される。
【0053】
最後に、作業者は、図3(a)の矢印d4に示すように、着脱手段Jを介して、補助部12bを基部12aに取付ける。
即ち、作業者は、各着脱手段J(係止爪部)の爪を、基部12aの下面に係止させることで、補助部12bが各凹部pを覆うように、基部12aに取付けられる。
このとき、各凹部p、qでもって、各電線B2の一端側を被覆する挿通孔Hが構成される。
【0054】
図4は、上記流れでもって組立てが完了した状態を示す図であり、(a)は、組立てが完了した状態の全体斜視図、(b)は、(a)のBB´線断面図である。
【0055】
ここで、各連通孔T2の内部は、図5に示す構成となされている。
なお、図5は、組立てが完了した状態を示す正面図であり、左上及び右下に、連通孔T2の内部を示すCC´線断面図、DD´線断面図をそれぞれ示している。
【0056】
即ち、各連通孔T2の内周面には、金属カラーMが設けられている。
また、各金属カラーMの外周面には、その周方向に沿って形成された嵌合溝mが形成されており、これが、各連通孔T2の内周面に設けられた嵌合突起(図示せず)と嵌合されることで、各取付部2に対して一体化されている。
【0057】
そして、各金属カラーMの接続方向(前後方向)に沿った長さは、各連通孔T2の接続方向(前後方向)に沿った長さよりも長く構成されている。
これにより、各金属カラーMの各開口端は、各連通孔T2から僅かに突出している。
【0058】
さらに、長孔となされている右方の連通孔T2に挿通される締結部材vには、締結部材vや金属カラーMの損傷を防止するためのスリーブsが嵌装されている。
【0059】
そして、スリーブsにおける、接続方向(前後方向)に沿った長さは、右方の連通孔T2の接続方向(前後方向)に沿った長さよりも長く構成されている。
これにより、スリーブsの各開口端は、右方の連通孔T2から僅かに突出している。
【0060】
上記構成により、右方の締結部材vが強固に締結された場合でも、その頭部の裏面とスリーブsの開口端が当接することで、頭部と取付部2の表面との間に一定の隙間が確保される。
このため、締結部材v(及びエンドプレートE)は、コネクタ用部材Xに対する積層方向に沿った変位が可能となる。
【0061】
<効果>
本実施形態によれば、各ハウジングB1に対して、各コネクタBの接続方向に沿って隣接して配置される脱離防止壁Wにより、各コネクタB(各ハウジングB1)の抜けが防止されつつ、各電線B2を被覆する挿通孔Hにより、各電線B2も保護される。
【0062】
また、各取付部2が、各エンドプレートEに着脱可能に取付けられることで、コネクタ用部材Xと、スタックSや各コネクタBとの相対位置の寸法精度を確保し易くなり、余計な切削加工が不要となるため、製造性が向上し、コストダウンに資する。
【0063】
また、基部12aと、これと着脱可能に取付けられる補助部12bと、により挿通孔Hが構成されることで、取付け作業が容易となる上、挿通孔Hの内周面を各電線B2の外周面に近接或いは当接させる設計とすることができ、各電線B2の安定的な保護状態が確保される。
【0064】
また、凹部q(挿通孔H)が各電線B2に対応して複数設けられていることで、各電線B2の保護状態がより安定化する。
【0065】
また、各取付部2に設けられた連通孔T2及び位置決め孔T1により、コネクタ用部材Xの取付け作業が容易となる上、コネクタ用部材Xと各コネクタBとの相対位置の寸法精度がより向上する。
【0066】
また、右方の取付部2に設けられた連通孔T2及び位置決め孔T1が、積層方向に長い長孔として構成され、この連通孔T2の内部にスリーブsが設けられていることで、締結部材v(及びエンドプレートE)の、コネクタ用部材Xに対する積層方向への変位を可能とし、熱膨張に伴うスタックSの積層方向へ広がりが許容される。
【0067】
また、各開口端が各連通孔T2から僅かに突出して構成された各金属カラーMにより、取付部2の熱クリープ現象による締結部材vの緩みを抑制することができる。
【0068】
また、緩衝部材3により、不要な外力による振動・衝撃が加わっても、緩衝部材3がこれを吸収し、各コネクタBの接続状態、各電線B2の保護状態を安定的に維持できる。
【0069】
<変更例>
なお、上述の実施形態において示した各構成部材の諸形状や寸法等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0070】
例えば、緩衝部材3は必ずしも必須ではなく、脱離防止壁WのハウジングB1に対する隣接配置のみでもって、ハウジングB1の抜けを防止しても良い。
また、補助部12b側に凹部qを設けなくてもよく、凹部pを電線B2が収まる程度の窪みとし、これに平坦な側面を被せることで、挿通孔Hが構成されても良い。
また、挿通孔Hは、複数である必要はなく、各電線B2をまとめて囲うような、積層方向に長い一の長孔として構成されても良い。
【0071】
また、金属カラーMは、上記の通り熱クリープ現象による締結部材vの緩みを抑制するため、特にコネクタ用部材Xが樹脂素材により形成されている場合に好適であるが、コネクタ用部材Xが金属素材等により形成されている場合には、設けられていなくても良い。
【0072】
また、緩衝部材3は、図6に示すような構成としても良い。
【0073】
即ち、緩衝部材3は、各凹部p、各凹部qそれぞれに嵌込まれる一対の長尺部材とすることで、各電線B2と各挿通孔Hとの間の介在し、各電線B2の遊びを無くすように構成されても良い。
なお、コネクタ用部材Xは、緩衝部材3について、図1に示したものか図6に示したものの何れか一方を備えていても良いし、双方を備えていても良い。
【0074】
また、着脱手段Jは、図7図10に示すような構成としても良い。
【0075】
図7に示す着脱手段Jは、基部12aの両端上面に構成されたネジ孔J1と、補助部12bの両端に構成され、各ネジ孔J1と連通する連通孔J2と、各連通孔J2を介して各ネジ孔J1に螺合される締結部材J3と、を有している。
【0076】
これにより、図7(a)から(b)に示すように、補助部12bが、基部12aに取付けられる。
このような構成とすることで、補助部12bが、基部12aに対してより強固に取付けられる。
【0077】
図8に示す着脱手段Jは、基部12aの左端上面に構成されたネジ孔J1と、補助部12bの左端に構成され、ネジ孔J1と連通する連通孔J2と、連通孔J2を介してネジ孔J1に螺合される締結部材J3と、基部12aと補助部12bと右端でヒンジ結合するヒンジ部J4と、を有している。
【0078】
これにより、図8(a)から(b)に示すように、補助部12bの左端が、基部12aの左端に取付けられる。
このような構成とすることで、補助部12bと基部12aとが一体化され、組立て作業の容易性や、コネクタ用部材Xの取扱いの容易性が向上する。
【0079】
図9に示す着脱手段Jは、補助部12bの左端に構成され、基部12aの下面に係止される係合爪部J1と、基部12aと補助部12bと右端でヒンジ結合するヒンジ部J2と、を有している。
【0080】
これにより、図9(a)から(b)に示すように、補助部12bの左端が、基部12aの左端に取付けられる。
このような構成とすることで、締結部材J3を用いる図8の例と比して、組立て作業の容易性がより向上する。
【0081】
図10に示す着脱手段Jは、基部12aの各凹部pの形状に沿うように湾曲形成された、複数の貫通孔J1と、各貫通孔J1に両端が突出するように挿通された複数の結束バンドJ2と、を有している。
この例においては、各結束バンドJ2が、各凹部pと共に挿通孔Hを構成する補助部12bを構成している。
これにより、図10(b)に示すように、各結束バンドJ2により各電線B2が締結される。
このような構成とすることで、コネクタ用部材Xの製造コストを安価としつつ、各電線B2を強固に挿通孔H内部に固定することができる。
【0082】
また、各凹部p、qは、図11に示すような構成としても良い。
【0083】
即ち、図11(a)に示すように、本変更においては、基部12a及び補助部12bそれぞれに、略コ字状の溝が構成され、この各溝に凹部p、qを構成する凹部用ピースnが着脱可能に取付けられる。
【0084】
各凹部用ピースnは、基部12aと補助部12bとで同数取付けられ、積層方向に隣接する凹部用ピースnは当接して、基部12a又は補助部12bに取付けられる。
なお、本変更例において、着脱手段Jは、図7に示した例と同様である。
【0085】
これにより、図11(b)に示すように、基部12aと補助部12bとが連結されると、それぞれに取付けられた凹部用ピースnが当接し、各電線B2が挿通される挿通孔Hが複数構成される。
【0086】
このような構成とすることで、作業者は、使用環境等に応じて各凹部用ピースnを取外し、挿通孔Hを、各電線B2をまとめて囲うような、積層方向に長い一の長孔とすることもできるし、図示したように電線B2毎の円孔とすることもできる。
なお、図11に示すように、挿通孔Hは、その端部が開口端に向かうに伴って拡径するように構成されていても良い。
【0087】
また、一方の取付部2は、図12及び図13に示すような構成としても良い。
【0088】
即ち、一方の取付部2は、図12に示すように、略直方体状の第一構成体21のみで構成されている。
そして、本変更例においては、第一構成体21を囲って取付けられるカバー部材cが設けられている。
【0089】
カバー部材cは、略コ字状のカバー部材本体c1と、カバー部材本体c1の各前端から、エンドプレートEの後面に沿うように延設された延設部c2と、を有している。
【0090】
カバー部材本体c1において、第一構成体21の後面と対向する面には、この後面に当接する窪み部dが設けられている。
各延設部c2には、エンドプレートEに設けられた貫入孔tと連通する連通孔uが設けられている。
【0091】
なお、第一構成体21の前面には、位置決めピンkが挿通される挿通孔(図示せず)が設けられている。
また、本変更例において、着脱手段Jは、図7に示した例と同様である。
【0092】
上記構成となされたコネクタ用部材Xは、図13に示すように、燃料電池Aに取付けられる。
【0093】
特に、作業者は、一方の取付部2について、前面の挿通孔(図示せず)に位置決めピンkを挿通してエンドプレートEに当接した後、カバー部材cで囲うことで、エンドプレートEに取付ける。
即ち、作業者は、各延設部c2を、その各連通孔uとエンドプレートEの各貫入孔tとを連通させつつエンドプレートEに当接させ、各連通孔u及び各貫入孔tに締結部材vを貫入させ、締結する。
【0094】
これにより、一方の取付部2は、カバー部材本体c1の窪み部dに押圧される態様で、エンドプレートEに取付けられる。
このような構成とすることで、熱膨張によりスタックSが積層方向へ広がろうとした場合、窪み部dの第一構成体21への当接状態が保持されつつ、カバー部材c(及びエンドプレートE)が、コネクタ用部材Xに対して摺動する。
【0095】
即ち、本変更例によれば、一方の取付部2に連通孔T2を設けなくとも、コネクタ用部材Xを燃料電池Aに取付けた状態において、エンドプレートEの積層方向への変位を可能とする。
【0096】
出願書類中の「略」は、その後に続く形状に面取りや丸め加工がなされていること、また形状を構成する要素がその形状の目的を阻害しない範囲内で変形や長さ変更されているものを含むことを意味する概念である。
【符号の説明】
【0097】
X コネクタ用部材
1 本体部
11 第一構成体
W 脱離防止壁
H 挿通孔
12 第二構成体
J 着脱手段
2 取付部
21 第一構成体
T1 位置決め孔
22 第二構成体
T2 連通孔
3 緩衝部材
M 金属カラー
A 燃料電池
S スタック
E エンドプレート
B コネクタ
B1 ハウジング
B2 電線
【要約】
【課題】複数のセルとコネクタとの安定的な接続状態を容易に確保して抜けを防止しつつ、電線の保護も行うことが可能なコネクタ用部材を提供する。
【解決手段】燃料電池AのスタックSに並列接続された複数のコネクタBに取付けられるコネクタ用部材Xであって、スタックSにおけるセルの積層方向に沿って延びる本体部1と、本体部1に連接された取付部2と、を備え、本体部1には、各コネクタBにおけるハウジングB1の脱離を防止する脱離防止壁Wと、各コネクタBの電線B2が挿通される挿通孔Hと、が設けられ、取付部2は、本体部1の両端に設けられることで、スタックSの両端に設けられたエンドプレートEに着脱可能に取付けられ、脱離防止壁Wは、挿通孔Hに各電線B2が挿通された状態で、各取付部2が各エンドプレートEに取付けられることで、各ハウジングB1に対して、各コネクタBの接続方向に沿って隣接して配置される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13