IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三井住友建設株式会社の特許一覧

特許7634322情報処理方法、プログラム、及び情報処理装置
<>
  • 特許-情報処理方法、プログラム、及び情報処理装置 図1
  • 特許-情報処理方法、プログラム、及び情報処理装置 図2
  • 特許-情報処理方法、プログラム、及び情報処理装置 図3
  • 特許-情報処理方法、プログラム、及び情報処理装置 図4
  • 特許-情報処理方法、プログラム、及び情報処理装置 図5
  • 特許-情報処理方法、プログラム、及び情報処理装置 図6
  • 特許-情報処理方法、プログラム、及び情報処理装置 図7
  • 特許-情報処理方法、プログラム、及び情報処理装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】情報処理方法、プログラム、及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/26 20240101AFI20250214BHJP
   G06Q 40/06 20120101ALI20250214BHJP
【FI】
G06Q50/26
G06Q40/06
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022535028
(86)(22)【出願日】2021-06-28
(86)【国際出願番号】 JP2021024305
(87)【国際公開番号】W WO2022009715
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2020117601
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021018394
(32)【優先日】2021-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】春日 昭夫
【審査官】小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-191744(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0034814(US,A1)
【文献】特開2019-215864(JP,A)
【文献】株式会社日本総合研究所,内閣府委託調査 国外におけるPFS(成果連動型民間委託契約方式)事業の事例調査 報告書[オンライン],[検索日 2021.08.24],日本,株式会社日本総合研究所,2020年02月,インターネット<URL: https://www8.cao.go.jp/pfs/jirei/kaigaijirei.pdf>
【文献】幸地正樹,第2回今後の共助による地域づくりのあり方検討会 資料2 ソーシャル・インパクト・ボンド 活用推進方策検,[検索日 2021.08.24],日本,ケイスリー株式会社,2017年09月25日,インターネット:<URL: https://www.mlit.go.jp/common/001203269.pdf>
【文献】uniqx,ICO CROWD JAPAN 第8号 ,ICO CROWD合同会社,2019年04月19日, 70~74 ページ,[ISSN]2434-2211
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
インフラストラクチャの整備を図る防災プロジェクトに関する契約であって、前記インフラストラクチャによる減災成果に基づいて支払いが行われる成果連動型契約の契約情報を第2情報処理装置から取得し、
前記契約情報に基づいて、前記支払いに関する支払条件を設定することであって、前記設定することは、前記契約情報に契約期間及び前記減災成果に相当する金額が含まれる場合、前記契約期間及び前記減災成果に相当する金額に少なくとも基づいて、前記契約期間中に前記インフラストラクチャに被害が発生すれば、前記減災成果に相当する金額に適用される第1係数を設定することを含み、
前記支払条件を含む条件情報を、前記第2情報処理装置に送信し、
記契約情報に基づく資金に関する資金データを前記第1情報処理装置の記憶部から取得し、又は、第3情報処理装置から送信される投資要求に含まれる資金データを取得し、
前記資金データを、前記防災プロジェクトの識別情報に関連付ける、情報処理方法。
【請求項2】
前記第1情報処理装置がさらに、
前記識別情報に基づいて、前記防災プロジェクトの管理先を特定し、
前記管理先に対して、前記資金データを送信する、請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記支払条件を設定することは、
前記契約情報に契約期間及び整備コストが含まれる場合、前記契約期間及び前記整備コストに少なくとも基づいて、前記契約期間中に前記インフラストラクチャに被害が発生しなければ、前記整備コストに適用される第2係数を設定することを含む、請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記第1情報処理装置がさらに、
所定のデータベースから前記被害の発生確率に関する確率データを取得し、
前記支払条件を設定することは、
前記確率データにさらに基づいて前記第1係数又は前記第2係数を設定することを含む、請求項3に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記資金データを取得することは、
前記資金に関する投資情報を前記第3情報処理装置に送信し、
前記第3情報処理装置から、前記投資情報に基づいて設定された投資額を含む投資要求を取得することを含み、
前記資金データを前記識別情報に関連付けることは、
取得された各投資要求に含まれる各投資額に関する資金データを、前記識別情報に関連付けることを含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記インフラストラクチャは、賃料の発生を伴う建造物を含み、
前記防災プロジェクトは、耐震化に関する工事を含み、
前記契約情報は、前記耐震化により増加する賃料に基づく支払条件を含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の情報処理方法。
【請求項7】
第1情報処理装置に、
インフラストラクチャの整備を図る防災プロジェクトに関する契約であって、前記インフラストラクチャによる減災成果に基づいて支払いが行われる成果連動型契約の契約情報を第2情報処理装置から取得し、
前記契約情報に基づいて、前記支払いに関する支払条件を設定することであって、前記設定することは、前記契約情報に契約期間及び前記減災成果に相当する金額が含まれる場合、前記契約期間及び前記減災成果に相当する金額に少なくとも基づいて、前記契約期間中に前記インフラストラクチャに被害が発生すれば、前記減災成果に相当する金額に適用される第1係数を設定することを含み、
前記支払条件を含む条件情報を、前記第2情報処理装置に送信し、
記契約情報に基づく資金に関する資金データを前記第1情報処理装置の記憶部から取得し、又は、第3情報処理装置から送信される投資要求に含まれる資金データを取得し、
前記資金データを、前記防災プロジェクトの識別情報に関連付ける、ことを実行させる、プログラム。
【請求項8】
第1情報処理装置であって、
インフラストラクチャの整備を図る防災プロジェクトに関する契約であって、前記インフラストラクチャによる減災成果に基づいて支払いが行われる成果連動型契約の契約情報を第2情報処理装置から取得する取得部であって、記契約情報に基づく資金に関する資金データを前記第1情報処理装置の記憶部から取得し、又は第3情報処理装置から送信される投資要求に含まれる資金データを取得する取得部と、
前記契約情報に基づいて、前記支払いに関する支払条件を設定する設定部であって、前記契約情報に契約期間及び前記減災成果に相当する金額が含まれる場合、前記契約期間及び前記減災成果に相当する金額に少なくとも基づいて、前記契約期間中に前記インフラストラクチャに被害が発生すれば、前記減災成果に相当する金額に適用される第1係数を設定することを含む、設定部と、
前記支払条件を含む条件情報を、前記第2情報処理装置に送信する送信部と、
前記資金データを、前記防災プロジェクトの識別情報に関連付ける資金管理部と、を備える第1情報処理装置。
【請求項9】
第1情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
インフラストラクチャの整備を図る整備プロジェクトに関する契約であって、所定の契約期間の経過後における前記インフラストラクチャによる経済成果に基づいて支払いが行われる成果連動型契約の契約情報を第2情報処理装置から取得し、
前記契約情報に基づいて、前記支払いに関する支払条件を設定することであって、前記設定することは、前記契約情報に契約期間及び前記経済成果に相当する金額が含まれる場合、前記契約期間及び前記経済成果に相当する金額に少なくとも基づいて、前記契約期間中に前記インフラストラクチャに被害が発生すれば、前記経済成果に相当する金額に適用される第3係数を設定することを含み、
前記支払条件を含む条件情報を、前記第2情報処理装置に送信し、
記契約情報に基づく資金に関する資金データを前記第1情報処理装置の記憶部から取得し、又は、第3情報処理装置から送信される投資要求に含まれる資金データを取得し、
前記資金データを、前記整備プロジェクトの識別情報に関連付ける、情報処理方法。
【請求項10】
前記経済成果は、評価機関により算出される利益であって、前記インフラストラクチャが整備される地域の経済的利益を含む、請求項9に記載の情報処理方法。
【請求項11】
前記契約情報は、前記経済成果が所定基準を満たさない場合の、前記インフラストラクチャの整備コストに基づく支払条件を含む、請求項9又は10に記載の情報処理方法。
【請求項12】
前記契約情報は、前記インフラストラクチャを利用する際の料金を徴収する権利に関する条件を含む、請求項9乃至11のいずれか一項に記載の情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理方法、プログラム、及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発生が予想される災害等への対策として、インフラストラクチャ(以下、「インフラ」とも称する。)を整備し、被害を抑えることの重要性が提唱されている(例えば非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】藤井聡、“南海トラフ巨大地震の巨大な「被害推定」と「対策効果」”、土木学会誌、2020年1月、Vol.105、No.1、P.6-9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、インフラの整備には多大な費用がかかり、その資金を集めることは容易ではない。他方、インフラが整備されると、インフラ整備による経済成果、例えば、災害発生時の減災成果、又は周辺地域の活性化による経済成果等があることが、各種評価機関の試算結果により示されている。また、より良いサービスの提供に対し、より高い支払いが行われる成果連動型契約が知られており、民間の創意工夫の発揮や、成果の見込める新たなサービスの試行、既存サービスの改善、優良な事業者の成長促進などの効果が期待されている。
【0005】
そこで、本発明は、この成果連動型契約に着目し、インフラ整備による経済成果を事業者(例えば資金調達者)又は資金提供者に還元することで、インフラ整備事業における資金調達の新たな仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る情報処理方法は、情報処理装置が実行する情報処理方法であって、インフラストラクチャの整備を図る防災プロジェクトに関する契約であって、インフラストラクチャによる減災成果に基づいて支払いが行われる成果連動型契約の契約情報を取得し、契約情報に基づいて設定される資金に関する資金データを取得し、資金データを、防災プロジェクトの識別情報に関連付ける。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、インフラ整備による経済成果を事業者又は資金提供者に還元する成果連動型契約を用いて、インフラ整備事業における資金調達の新たな仕組みを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る情報処理システムの構成の一例を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る情報処理装置10の構成の一例を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る情報処理装置20の構成の一例を示す図である。
図4】本発明における具体例1の評価データの一例を示す図である。
図5】本発明における具体例1の公開データの一例を示す図である。
図6】本発明における具体例1の係数データの一例を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る資金調達に関する処理の一例を示すシーケンス図である。
図8】本発明の一実施形態に係る支払処理の一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0010】
[実施形態]
<システム>
図1は、本発明の一実施形態に係る情報処理システム1の構成の一例を示す図である。図1に示すとおり、情報処理システム1は、各情報処理装置10、20、30、40、50(以下、「各情報処理装置10~50」とも表記する。)を含み、各情報処理装置10~50は、ネットワークNを介して相互にデータの送受信が可能である。なお、情報処理装置50A、50Bは、それぞれを区別しない場合は情報処理装置50とも表記する。
【0011】
ここで、図1に示す情報処理システム1により実現される、資金調達の新たな仕組みの概要について説明する。例えば、インフラのオーナーが主に利用する情報処理装置10は、インフラ整備事業の整備コスト等を試算し、インフラ整備による経済成果に基づく成果連動型契約に関する契約情報を生成し、保存する。
【0012】
成果連動型契約は、例えば成果連動型民間委託契約(PFS:Pay For Success)があり、オーナーが事業者に事業を委託し、解決すべき課題に対応した成果指標を設定し、支払金をこの成果指標の達成ないし改善状況に連動させる契約を含む。この成果連動型契約の場合、事業を委託された事業者は将来の支払金の分配を見返りとして資金提供者(投資家等)から資金を調達することができ(投資家等に必ずしも配当を支払う必要がなく)、他方、事業を委託するオーナーは、効果が発現した場合に初めて支払いが発生するため、事業を委託する側及び委託される側の両者にとって利点がある。図1に示す情報処理システム1では、この成果連動型契約を適用して、インフラ整備に係る費用に対して、例えば事業者に資金調達をしてもらい、インフラ整備に係る財源を確保する。
【0013】
事業者、例えば、銀行、投資ファンドなどの金融機関、損害保険会社などの保険会社、インフラ整備事業を実行する建築会社等の企業等の民間事業者等が主に利用する情報処理装置20は、インフラ整備事業の内容や成果連動型契約の契約情報に基づいて、自己又は他者(例えば投資家等)から資金を調達するための資金調達処理を実行し、調達された資金に関する資金データを管理する。また、情報処理装置20は、インフラ整備事業の資金を管理する管理先(以下、「インフラ整備事業の管理先」ともいう。)へ、調達された資金に関する資金データを送信する。これにより、インフラ整備事業の財源に、調達された資金が充当される。なお、事業者は、インフラ整備事業の資金を調達する資金調達者にもなりうる。
【0014】
他者から資金が調達される場合、他者が主に利用する情報処理装置50は、事業者により公開されたインフラ整備事業の投資情報に基づき、インフラ整備事業に投資する金額を決定し、この金額を含む投資要求を情報処理装置20に送信する。これにより、事業者は、1又は複数の他者(資金提供者)から資金を調達することができる。
【0015】
インフラ整備事業の管理先により主に利用される情報処理装置30は、インフラ整備事業の財源を管理し、情報処理装置20から送信される資金データに基づいて、インフラ整備事業の財源を更新する。この財源は、適宜インフラ整備事業の実行のために用いられる。
【0016】
インフラを評価する機関が主に利用する情報処理装置40は、整備されたインフラの評価処理を実行し、インフラ整備による経済成果を算出する。情報処理装置40は、評価結果をインフラのオーナーに知らせるため、評価結果に関するレポート(評価データ)を情報処理装置10に送信する。
【0017】
情報処理装置10は、インフラの評価結果、及び成果連動型契約に基づいて、事業者に支払う金額や所定の権利を決定し、決定された金額を支払ったり所定の権利を与えたりするため、報酬処理を実行する。報酬処理の実行により、情報処理装置20は、インフラ整備事業の投資に対する見返り(リターン)の金額(支払金)に関する支払金データや所定の権利に関するデータを受信する。必要に応じて、情報処理装置20は、支払金データに基づいて分配金を決定し、他者(投資家等の資金提供者)に対して、この分配金に関する分配金データを送信する。
【0018】
これにより、インフラ整備による経済成果に含まれる利益を成果連動型契約に基づいて事業者に適宜支払ったり所定の権利を与えたりすることができる仕組みを提供することができ、整備コストが高いインフラ整備事業においても資金調達を容易にすることができる。
【0019】
次に、各情報処理装置10~50やその利用者について説明する。情報処理装置10は、上述した例のとおり、インフラのオーナーにより利用される1又は複数の情報処理装置である。インフラのオーナーは、例えば、インフラを有する国、国の機関、政府、地方公共団体、民間企業、個人等のいずれでもよく、インフラ整備事業を管理する者でもよい。インフラは、例えば、生活や産業などの社会基盤であり、道路、防波堤、上下水道、発電所、電力網、通信網、港湾、空港、橋梁、施設やビルなどの構造物等を含む。
【0020】
インフラのオーナーは、インフラ整備事業に関する成果連動型契約の契約情報を、情報処理装置10に入力し又は情報処理装置10を用いて生成し、保存し、必要に応じて情報処理装置20に送信する。インフラ整備事業に関する成果連動型契約は、例えば、インフラのオーナーと、インフラ整備事業の委託を受ける事業者との間で交わされる契約であり、インフラ整備による経済的利益の少なくとも一部を、所定の条件に基づいて、インフラのオーナーから事業者へ支払うための契約を含む。また、この成果連動型契約は、所定の条件に基づいて、国や政府等から事業者へ所定の権利が与えられるための契約を含んでもよい。
【0021】
情報処理装置20は、例えば、インフラ整備事業の委託を受ける事業者に利用される1又は複数の情報処理装置である。事業者は、例えば、銀行、投資ファンドなどの金融機関、インフラ整備事業を実行する建設会社等の企業等であり、複数の企業等が共同で資金を調達するようにしてもよい。なお、ここでいう資金調達は、この情報システム1を利用する事業者以外の他のユーザから資金を集めることや、事業者の自己資金を充当することを含む。
【0022】
例えば、事業者は、インフラ整備事業に関する成果連動型契約に基づいて、情報処理装置20を用いて資金調達処理を実行し、資金を調達する。情報処理装置20は、調達された資金をインフラ整備事業の財源に充当するため、調達された資金に関する資金データを情報処理装置30に送信する。
【0023】
情報処理装置30は、例えば、インフラ整備事業の財源を管理する管理先により利用される1又は複数の情報処理装置である。管理先は、例えば、このインフラ整備事業の資金を管理する機関や企業等であり、インフラ整備事業の取りまとめを行う企業や団体、又は事業者などを含む。管理先は、この情報処理装置30を利用し、インフラ整備事業のための資金の流れを管理したりする。
【0024】
情報処理装置40は、インフラ整備による経済成果を評価する所定の機関等により利用される1又は複数の情報処理装置である。所定の機関は、例えば、経済成果を公正かつ適切に評価することが可能な第三者機関(評価機関)であり、国や政府等から認定を受けた機関を含む。情報処理装置40は、インフラ整備による経済成果を評価して経済的利益を試算したり、評価項目にしたがってインフラの評価を実行したり、評価結果を保存したり、評価結果を含むレポート(評価データ)を情報処理装置10に送信したりする。
【0025】
情報処理装置50は、例えば、インフラ整備事業に投資する他者が利用する情報処理装置である。他者は、例えば、投資家などであり、インフラ整備事業に賛同して投資する個人や企業等を含む。他者は、情報処理装置20により送信されたインフラ整備事業の投資情報を参照し、投資額を決定する。情報処理装置50は、他者により決定された投資額を含む投資要求を情報処理装置20に送信する。なお、情報処理システム1において、事業者が必要な資金を全て自ら用意する場合は、情報処理装置50は必ずしも必要ではない。
【0026】
上述した各情報処理装置10~50は、例えばパーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistant)、スマートフォン等の携帯端末、タブレット端末、サーバ装置などであり、それぞれ第nの情報処理装置(1≦n≦5)と表記し、それぞれを区別してもよい。
【0027】
<構成>
図2は、本発明の一実施形態に係る情報処理装置10の構成の一例を示す図である。図3は、本発明の一実施形態に係る情報処理装置20の構成の一例を示す図である。以下では、4つの具体例を用いて各装置の処理について説明する。
【0028】
(具体例1)
具体例1では、インフラ整備事業として、インフラ防災事業を例に挙げる。インフラのオーナーは、将来に起こり得る災害に備えてインフラを整備しておくため、インフラ防災事業を外部の事業者に委託してもよい。この際に、事業者となりえる複数の候補者からインフラ防災事業の計画や支払金等について入札をしてもらい、選定された事業者とインフラのオーナーとの間で、成果連動型契約の成果連動型民間委託契約が締結される。
【0029】
次に、災害が発生した場合に、インフラのオーナーは、インフラ防災事業の事業者に、インフラ整備事業に資金を提供したり、資金を調達し、インフラ整備事業を行ったりする見返りとして、インフラによる減災成果に基づいて支払いを行う。災害は、例えば、地震、津波、高潮、台風等を含む。
【0030】
具体例1において、上述した処理の少なくとも一部を実行する情報処理装置10は、1つ又は複数の処理装置(CPU:Central Processing Unit)110、1つ又は複数のネットワーク通信インタフェース120、メモリ130、ユーザインタフェース150及びこれらの構成要素を相互接続するための1つ又は複数の通信バス170を含む。
【0031】
メモリ130は、例えば、DRAM、SRAM、他のランダムアクセス固体記憶装置などの高速ランダムアクセスメモリであり、また、1つ又は複数の磁気ディスク記憶装置、光ディスク記憶装置、フラッシュメモリデバイス、又は他の不揮発性固体記憶装置などの不揮発性メモリでもよく、非一時的な記録媒体でもよい。
【0032】
メモリ130は、情報処理システム1により用いられるデータを記憶する。例えば、メモリ130は、インフラ防災事業に関するデータを記憶する。インフラ防災事業に関するデータは、例えば、インフラ整備の地域ごとに、防災コストや期待される経済成果(減災成果)等を含む評価データや、事業者に公開するインフラ防災事業に関する公開データや、インフラ防災事業の成果連動型契約の契約情報などを含む。契約情報は、公開データの少なくとも一部、例えば契約期間、及び支払条件などを含む。
【0033】
また、メモリ130の他の例として、CPU110から遠隔に設置される1つ又は複数の記憶装置でもよい。ある実施形態において、メモリ130はCPU110により実行されるプログラム、モジュール及びデータ構造、又はそれらのサブセットを格納する。
【0034】
CPU110は、メモリ130に記憶されるプログラムを実行することで、制御部112、取得部113、インフラ管理部114、送信部115を構成する。
【0035】
制御部112は、インフラ防災事業に関する全般的な処理を制御する。取得部113は、各情報処理装置から送信されるデータを取得する。取得部113は、例えば、情報処理装置20から送信される成果連動型契約に基づく支払い条件に関する条件情報を取得したり、情報処理装置40から送信されるインフラ整備による評価結果を含む評価データを取得したりする。
【0036】
インフラ管理部114は、インフラ防災事業に関するデータを管理する。例えば、インフラ管理部114は、取得された各データをメモリ130に格納したり、必要に応じてメモリ130内のデータを読み出したりする。
【0037】
また、インフラ管理部114は、成果連動型契約の所定の条件が満たされる場合に、事業者に支払われる支払金を算出する。成果連動型契約の所定の条件は、災害が発生すること、又は所定期間の契約期間が満了すること等を含む。
【0038】
送信部115は、ネットワーク通信インタフェース120を介して、各データを所定の情報処理装置に送信する。例えば、送信部115は、インフラ防災事業に関する資本を集めるため公開データを情報処理装置20に送信したり、未記入の評価データを情報処理装置40に送信したり、決定された支払金の支払金データを情報処理装置20に送信したりする。
【0039】
次に、インフラ防災事業を請け負う事業者が主に利用する情報処理装置20について説明する。図3に示すとおり、情報処理装置20は、1つ又は複数の処理装置(CPU)210、1つ又は複数のネットワーク通信インタフェース220、メモリ230、ユーザインタフェース250及びこれらの構成要素を相互接続するための1つ又は複数の通信バス270を含む。図3に示す各部は、図2に示す同じ名称の各部と同様の機能を有し、同様の処理を実行する。以下、図3に示す各部のうち、図2に示す各部と異なる点について説明する。
【0040】
メモリ230は、情報処理システム1により用いられるデータを記憶する。例えば、メモリ230は、インフラ防災事業に関する成果連動型契約の契約情報を記憶したり、インフラ整備事業の資金に関するデータを記憶したりする。
【0041】
CPU210は、メモリ230に記憶されるプログラムを実行することで、制御部212、取得部213、資金管理部214、特定部215、送信部216、設定部217を構成する。
【0042】
制御部212は、後述する各部の処理を制御し、インフラ防災事業の資金調達に関する処理を実行する。
【0043】
取得部213は、インフラの整備を図る防災事業(インフラ防災プロジェクト)に関する契約であって、インフラによる減災成果に基づいて支払いが行われる成果連動型契約の契約情報を取得する。契約情報は、例えば、契約期間や支払条件などを含む。減災成果は、例えば以下の4つの例の少なくとも1つを含む。
・インフラの整備により維持され得る(毀損が回避されうる)社会資本・民間資本の経済的価値。例えば、インフラの整備がない場合の直接的な被害額。具体例としては、津波の際に防波堤があることで維持される高速道路(社会資本)やオフィスビル(民間資本)の経済的価値。
・上記の社会資本・民間資本が創出しうる経済的価値。例えば、インフラの整備がない場合の副次的な被害額。具体例としては、上記の例における高速道路の通行料やオフィスビルの賃料等。
・インフラの整備による環境保護(又は環境保全)に関する価値(例えば、CO2排出量の削減)
・その他、インフラの整備による税金の優遇・軽減措置分等。
【0044】
また、取得部213は、成果連動型契約の契約情報に基づいて設定される資金に関する資金データを取得する。例えば、契約情報は、インフラ防災事業にかかる費用を含み、この費用に基づいて調達する資金が設定される。資金は、自己資金や債券等を含む。資金データは、例えば、自己資金に関する資金データや、他者から調達した資金に関する資金データを含む。
【0045】
また、取得部213は、成果連動型契約に含まれる所定の条件が満たされる場合に、情報処理装置10により送信される支払金データを取得してもよい。例えば、取得部213は、成果連動型契約の契約が満了した場合、又は契約期間中に災害が発生した場合に、インフラのオーナーから支払われる支払金に関する支払金データを取得する。
【0046】
資金管理部214は、調達された資金に関する資金データを、インフラ防災事業の識別情報に関連付けてメモリ230に記憶する。インフラ防災事業の識別情報は、インフラ防災事業を示し、他の事業と識別可能にする情報を含む。また、この識別情報は、情報処理装置20により生成されてもよいし、取得された成果連動型契約の契約情報に含まれていてもよい。メモリ230には、この識別情報に関連付けて、インフラ防災事業のために調達された資金に関する資金データやインフラ防災事業の財源の管理先の連絡情報(IPアドレスや担当者等のメールアドレス)などが記憶される。
【0047】
これにより、インフラ防災事業において、減災成果に基づいて支払いが行われる成果連動型契約を用いることで、事業者に対し、事業(投資)に対するリターンを高めるために、よりよいインフラを整備することのインセンティブを与え、また事業者や投資家等の資金拠出に対する意欲を高めることができる。また、投資家への配当が所定期間ごとに行われ、その度に処理が発生する大災害債やレジリエンス債と異なり、成果連動型契約が用いられることによって、効果が発現した際又は支払い条件が満たされた際に初めて支払金データが送信されるため、情報処理装置20の処理効率を向上させることができる。また、成果連動型契約が用いられることによって、インフラのオーナーが利用する情報処理装置10と、事業者が利用する情報処理装置20との間での通信回数を減らすことができ、通信帯域に負荷をかけずに済む。
【0048】
特定部215は、インフラ防災事業の識別情報に基づいて、インフラ防災事業の管理先を特定する。例えば、特定部215は、財源に充当される資金データに関連付けられる識別情報に基づいて、この識別情報と同じ識別情報に関連付けられる管理先の連絡情報を、メモリ230を参照することで特定する。
【0049】
送信部216は、特定された管理先に対して、調達された資金に関する資金データを送信する。例えば、送信部216は、特定された管理先の連絡情報を用いて、資金データを送信する。この場合の資金データは、調達された資金を財源に充当したことを示すデータであり、所定口座への振込完了通知等である。これにより、インフラ防災事業のために調達された資金を、インフラ防災事業の財源に充当することができ、財源の充当が完了したことを管理先へ通知することができる。
【0050】
設定部217は、成果連動型契約の契約情報に基づいて、支払いに関する支払条件を設定する。例えば、設定部217は、契約情報に含まれる減災成果の経済的利益に対し、所定の演算式を用いて支払金を決定するなどの支払条件を設定する。
【0051】
この場合、送信部216は、支払条件を含む条件情報を、成果連動型契約の契約情報の送信元に送信してもよい。例えば、送信部216は、演算式などの支払条件を含む条件情報を、契約情報の送信元である情報処理装置10に送信する。メモリ230には、インフラ防災事業の識別情報や契約情報の識別情報に関連付けて、契約情報の送信元の連絡情報が記憶されてもよい。
【0052】
これにより、事業者側で、インフラのオーナーの支払い条件を設定することができ、事業者が、自らの計画に合わせて、インフラ防災事業の成果連動型契約の諸条件を提示することを可能にする。
【0053】
また、成果連動型契約の契約情報に契約期間及び減災成果に相当する金額が含まれる場合、設定部217は、契約期間及び減災成果に相当する金額に少なくとも基づいて、契約期間中にインフラに被害が発生すれば、減災成果に相当する金額に適用される第1係数(以下、「α」とも表記する。)を設定してもよい。例えば、設定部217は、減災成果に相当する金額が高いほど、又は契約期間が長いほど、第1係数を低く設定してもよい。
【0054】
これにより、成果連動型契約の契約内容に基づいて、災害が発生した場合の支払金を適切に設定することが可能になる。なお、定められた契約期間内(例えば50年程度)に複数回災害が発生した場合は、複数回の支払いが発生してもよい。
【0055】
また、成果連動型契約の契約情報に契約期間及び整備コスト(整備費用)が含まれる場合、設定部217は、契約期間及び整備コストに少なくとも基づいて、契約期間中にインフラに被害が発生しなければ、整備コストに適用される第2係数(以下、「β」とも表記する。)を設定してもよい。例えば、設定部217は、整備コストが高いほど、又は契約期間が長いほど、第2係数を低く設定してもよい。
【0056】
これにより、成果連動型契約の契約内容に基づいて、災害が発生しなかった場合の支払金を適切に設定することが可能になる。
【0057】
取得部213は、所定のデータベースから被害の発生確率に関する確率データを取得してもよい。例えば、取得部213は、災害の発生を研究している機関等のデータベースから、これらの機関が発表している災害の発生確率を示す確率データを取得する。所定のデータベースの参照先等が予め登録されていれば、取得部213は、必要に応じて参照先からデータベースを特定し、確率データを取得してもよい。
【0058】
この場合、設定部217は、取得された確率データにさらに基づいて第1係数又は第2係数を設定してもよい。例えば、設定部217は、確率データと、契約期間と、減災成果に相当する金額と、整備コストとを総合して、予め決められた算出式を用いて、第1係数又は第2係数を設定してもよい。具体例として、災害の発生確率が高く、契約期間が長い場合は、設定部217は、第1係数を小さくし、又は第2係数を小さくし、災害の発生確率が低く、契約期間が長い場合は、設定部217は、第1係数を大きくし、又は第2係数を大きくしたりする。
【0059】
また、設定部217は、設定された第1係数又は第2係数により算出される支払金が、調達された資金以上となるように、第1係数又は第2係数をパラメータとする算出式を設定してもよい。また、設定部217は、過去の事例に基づくシミュレーションを行い、第1係数又は第2係数をパラメータとする算出式から、適切な第1係数又は第2係数を設定してもよい。また、設定部217は、複数の事例の確率データと、契約期間と、減災成果に相当する金額と、整備コストとから適切な第1係数又は第2係数を求める機械学習済みの学習モデルを用いて、適切な第1係数又は第2係数を設定してもよい。
【0060】
これにより、成果連動型契約の契約内容と災害の発生確率に基づいて、災害が発生した場合、又は災害が発生しなかった場合の支払金をより適切に設定することが可能になる。例えば、発生確率が用いられることで、支払金の設定に対する妥当性を向上させることができる。
【0061】
また、取得部213は、調達される資金に関する投資情報を他の情報処理装置50に送信するよう制御し、他の情報処理装置50から、投資情報に基づいて設定された投資額を含む投資要求を取得してもよい。
【0062】
例えば、制御部212は、インフラ防災事業の調達資金が大きい場合、他者からの最低投資額や資金を集める期間などを決定し、決定された事項を含む投資情報をウェブページなどで公開する。この場合、取得部213は、他の情報処理装置50からウェブページへのアクセス要求を取得すると、ウェブページにおける投資情報を他の情報処理装置50に送信する。なお、投資情報の送信は送信部216により行われてもよい。
【0063】
この場合、投資情報を受信した他の情報処理装置50は、投資家等の操作に基づき、投資情報に基づいて設定された投資額を含む投資要求を情報処理装置20に送信してもよい。情報処理装置20の資金管理部214は、他の情報処理装置50から取得された各投資要求に含まれる各投資額に関する資金データを、インフラ防災事業の識別情報に関連付けて記憶してもよい。例えば、資金管理部214は、投資要求ごとに、他者を識別するためのユーザ識別情報と投資額に関する資金データとをメモリ230に記憶するようにしてもよい。
【0064】
これにより、資金を提供する対象者を広げることができ、より資金調達を容易にすることができる。
【0065】
インフラ防災事業を遂行する建設会社等(インフラのオーナーや事業者から委託を受けた者でもよいし、事業者自身であってもよい)は、財源を用いてインフラを新たに構築したり、再構築したりしてインフラを整備する。ここで、災害が契約期間内に発生した場合、所定の機関が、整備されたインフラによって防止された被害額(減災成果)を評価し、インフラの評価結果をインフラのオーナーに報告する。このとき、情報処理装置40は、評価結果を含む評価データを情報処理装置10に送信する。
【0066】
情報処理装置10は、整備されたインフラによって被害が防止されたと評価機関により認められた場合、その成果に応じて、減災成果に相当する金額に第1係数(α)を乗算して支払金を決定する。情報処理装置10は、決定された支払金に基づき、事業者への支払い処理を実行し、支払金に関する支払金データを情報処理装置20に送信する。
【0067】
また、災害が契約期間内に発生しなかった場合、契約期間が満了し、情報処理装置10は、整備コストに第2係数(β)を乗算して支払金を決定する。情報処理装置10は、決定された支払金に基づき、事業者への支払い処理を実行し、支払金に関する支払金データを情報処理装置20に送信する。上述した支払金の算出方法は、第1係数及び第2係数が%を表す数値である場合の一例であり、第1係数及び第2係数の値によっては他の算出方法が用いられてもよい。
【0068】
以上のとおり、本発明の実施形態を、具体例1におけるインフラ防災事業に適用することが可能である。具体例1によれば、成果連動型契約に基づいてインフラ防災事業を請け負う事業者は、見返りとしての支払金を高くするため、よりよいインフラを構築することが見込まれ、インフラのオーナーにとっても、事業者にとっても、メリットがある。
【0069】
(具体例2)
具体例2では、インフラ整備事業として、ビル耐震化事業を例に挙げる。ビルのオーナーは、将来に起こり得る災害に備えてビルの耐震化を行うため、ビル耐震化事業を外部の事業者に委託してもよい。具体例2では、賃料の発生を伴う構造物における耐震化に適用可能であり、ビルは、賃料の発生を伴う構造物の一例である。具体例2では、具体例1と同様に、事業者とインフラのオーナーとの間で、例えば成果連動型契約の成果連動型民間委託契約が締結される。
【0070】
上述したとおり、具体例2においては、インフラは、賃料の発生を伴う建造物を含み、インフラ防災事業は、建造物の耐震化に関する工事を含み、成果連動型契約の契約情報は、耐震化により増加する賃料に基づく支払い条件を含む。具体例2における各情報処理装置のデータの流れや処理は、具体例1におけるデータの流れや処理と同様である。
【0071】
これにより、本発明を建造物の耐震化事業に適用することができ、耐震化による賃料の増加分の少なくとも一部を、事業者が受け取ることができ、さらに、災害が契約期間中に発生した場合、建造物の耐震化により被害が防止されたと認められた場合、減災成果(防止された被害額)に第1係数が乗算され、事業者に支払われる。事業者は、見返りとしての支払金を高くするため、より確実な耐震化工事を遂行することが見込まれる。
【0072】
なお、具体例2では、災害が発生せずに契約期間が満了した場合、支払いは行われなくてもよい。その代わりに、所定期間ごとに、耐震化により増加した賃料の少なくとも一部が事業者に支払われる。
【0073】
具体例2では、例えば、契約期間は20~30年程度であり、各国により定められる耐震基準が更新された場合、新耐震基準を満たさない既存の建造物が対象の一例となる。新耐震基準を満たさない既存の建造物に対して、新基準を満たすための耐震化が行われることで、建造物のオーナーは、固定資産税が減額されるなどのメリットを享受する。
【0074】
(具体例3)
具体例3では、インフラ整備事業における成果連動型契約の成果の契機として、災害の発生を契機とせずに、整備されたインフラにより周辺地域が発展し、インフラのオーナーの経済成果(税収、渋滞緩和等)が増加したと所定の機関により認められた場合を契機とする。この場合の支払金は、例えば、増加した経済成果に相当する金額に第3係数が乗算された金額である。なお、周辺地域とは整備したインフラを含む町や市などの行政区画単位で設定されればよい。また、整備したインフラを含む区画に隣接する区画なども周辺地域に含めてもよい。
【0075】
また、インフラ整備事業を請け負う事業者は、インフラの維持管理を任されてもよく、整備されたインフラ(高速道路や鉄道など)の利用料などの所定の料金を徴収する料金徴収権を付与されてもよい。この場合、情報処理装置10は、整備されたインフラに関する料金の少なくとも一部を算出し、所定の期間ごとに、この料金に関する料金データを情報処理装置20に送信する。
【0076】
上述したように、具体例3における情報処理システム1では、民間資金等活用事業(PPP:Public Private Partnership)と呼ばれる事業にPFSの成果連動型の考えを適用する。ここで、PPPとは、官民連携事業の総称であり、インフラの整備にあたり、民間事業者に提案競争を求め、最も優れた民間事業者を選定し、設計から運営までに加えて、資金調達も自ら行ってもらう発注制度を含む。
【0077】
具体例3において、情報処理装置10の送信部115は、インフラの整備を図る整備プロジェクトに関する契約であって、所定の契約期間の経過後におけるインフラによる経済成果に基づいて支払いが行われる成果連動型契約の契約情報を、情報処理装置20に送信する。
【0078】
事業者が主に利用する情報処理装置20の取得部213は、情報処理装置10により送信された、成果連動型契約の契約情報を取得する。また、取得部213は、この契約情報に基づいて設定される資金に関する資金データを取得する。例えば、契約情報は、インフラ整備事業にかかる費用を含み、この費用に基づいて調達する資金が設定される。資金は、自己資金や債券等を含む。資金データは、例えば、自己資金に関する資金データや、他者から調達した資金に関する資金データを含む。
【0079】
資金管理部214は、取得された資金データを、インフラ整備事業の識別情報に関連付けてメモリ230に記憶する。資金管理部214は、インフラ整備事業の識別情報を用いる点以外は、具体例1における資金管理部214の処理と同様である。
【0080】
これにより、インフラ整備事業において、整備したインフラの周辺地域が発展し、税収などの経済成果に相当する金額が増加した場合に、増加額分の少なくとも一部を支払金として事業者に支払うような成果連動型契約においても、本発明は適用されうる。
【0081】
また、具体例3における経済成果は、所定の評価機関により算出される利益であって、インフラが整備される地域の経済的利益を含む。例えば、上述したとおり、インフラとして道路や鉄道等が整備された場合、経済的利益は、周辺地域の税収の増加を含む。
【0082】
なお、支払金については、例えば、情報処理装置10のインフラ管理部114が、経済的利益に相当する金額に第3係数を乗算して算出する。第3係数は、経済的利益に相当する金額に基づいて所定の算出式により算出されてもよい。
【0083】
これにより、災害の発生などの不確定な事象を成果の発現のタイミングとせずに、インフラの整備による周辺地域の経済的利益の増加額を成果とすることで、成果の発現確率を高めることができ、事業者に対して、成果に基づく支払金の受け取りを容易にすることができる。
【0084】
また、具体例3における契約情報は、経済成果が所定基準を満たさない場合の、インフラの整備コストに基づく支払い条件を含む。例えば、周辺地域の経済的利益に最低額が設定され、情報処理装置10のインフラ管理部114は、この経済的利益が閾値を超えるか否かを判定する。インフラ管理部114は、経済的利益が閾値を超える場合に、経済的利益に第3係数を乗算し、支払金を算出する。また、インフラ管理部114は、経済的利益が閾値以下の場合、インフラの整備コストに第4係数を乗算して支払金を算出する。第4係数は、整備コストに基づいて所定の算出式により算出されてもよい。
【0085】
これにより、周辺地域の経済的利益が想定された利益よりも低い場合に、整備コストを基準にした支払金が事業者に支払われることで、支払金が想定よりも低くなることを防ぐことができ、事業者に対し、この事業に参加するモチベーションを与えることができる。
【0086】
また、具体例3における契約情報は、インフラを利用する際の料金を徴収する権利(料金徴収権)に関する条件を含んでもよい。例えば、インフラが高速道路や鉄道などの場合、これらの利用料金の少なくとも一部を徴収する権利を事業者に付与することが、契約情報に含まれる。
【0087】
これにより、事業者にインフラに関する料金徴収権を付与することを契約情報に含めることで、事業者は、資金調達の見返りに安定的な収入を確保することができ、事業者に対し、この事業に参加するモチベーションを与えることができる。
【0088】
(具体例4)
具体例4では、インフラ整備事業における成果連動型契約の成果として、温室効果ガス、例えば二酸化炭素(CO2)の削減成果が含められる。例えば、事業者は、インフラ整備事業において、CO2排出を削減できる低炭素技術を供与することで、整備されたインフラがCO2の排出を削減できるとする。この場合、インフラのオーナーが、CO2削減量に応じてCO2排出権を取得すれば、このCO2排出権の所定の割合をリターンとして事業者に与える。なお、インフラのオーナーによって所定の割合が設定されればよいが、例えば国や地方公共団体がインフラのオーナーである場合、100%のCO2排出権が事業者に与えられてもよい。
【0089】
低炭素技術の一例として、低炭素型コンクリートの使用、防災のためのインフラ整備(強靭化によるCO2削減可能)、ノンメタル技術の使用(高耐久によるCO2削減可能)などがある。
【0090】
具体例4において、情報処理装置10の送信部115は、インフラの整備を図る整備プロジェクトに関する契約であって、インフラによる整備成果に基づいて支払いが行われる成果連動型契約の契約情報を、情報処理装置20に送信する。整備成果は、例えば、防災による減災成果や、所定の契約期間の経過後におけるインフラによる経済成果などの少なくとも1つを含む。また、整備成果は、後述するように、温室効果ガス、例えばCO2の削減効果を含んでもよい。以下、温室効果ガスとして、二酸化炭素を例に挙げるが、温室効果ガスは、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロンガスのうち、少なくとも1つを含む。
【0091】
事業者が主に利用する情報処理装置20の取得部213は、情報処理装置10により送信された、成果連動型契約の契約情報を取得する。また、取得部213は、この契約情報に基づいて設定される資金に関する資金データを取得する。例えば、契約情報は、上述したように、インフラ整備事業にかかる費用を含み、この費用に基づいて調達する資金が設定される。資金は、自己資金や債券等を含む。資金データは、例えば、自己資金に関する資金データや、他者から調達した資金に関する資金データを含む。
【0092】
資金管理部214は、取得された資金データを、インフラ整備事業の識別情報に関連付けてメモリ230に記憶する。識別情報は、事業ごとに予め設定されていればよい。
【0093】
また、インフラの整備成果にCO2の削減効果が含まれる場合、設定部217は、CO2の削減量に基づくCO2排出権の取得条件に関する条件情報を設定してもよい。条件情報は、例えば、認証機関などにより認証されるCO2排出権に対する所定の割合の情報などを含む。所定の割合は、インフラのオーナーと事前に決められていればよいが事後に決められてもよい。また、設定部217は、認証される条件情報を、インフラ整備事業の識別情報に関連付けてメモリ230に記憶してもよい。
【0094】
この場合、送信部216は、認証される条件情報を、成果連動型契約の契約情報の送信元に送信してもよい。よって、条件情報をインフラのオーナーと共有することができる。
【0095】
これにより、インフラ整備事業において、整備したインフラの整備効果として、CO2削減効果がある場合、CO2削減量に基づくCO2排出権を、整備効果に基づく支払とは別で、又は、代わりに、事業者に与えるような成果連動型契約においても、本発明は適用されうる。なお、具体例4においては、CO2排出権を例にして説明したが、インフラ整備を行うことにより、インフラのオーナーに売買可能な権利が与えられる場合には、具体例4を適用することが可能である。例えば、CO2排出権の所定の割合を、売買可能な権利の全部又は一部に置き換えればよい。
【0096】
(具体例5)
具体例5では、インフラ整備事業における成果連動型契約の成果として、具体例4同様に、温室効果ガスの削減効果が含められるが、災害発生時に、インフラ整備により災害が防止又は財政的負担が回避されたとき、温室効果ガスの削減量に基づく温室効果ガス排出権(例、CO2排出権)を、国が事業者に与える点が異なる。具体例5は、上記の具体例1及び2等において適用可能である。
【0097】
例えば、具体例1において、インフラオーナーを国とし、災害発生時に、CO2排出権を国が事業者に付与するとした場合、情報処理装置10の送信部115は、インフラの整備を図る整備プロジェクトに関する契約であって、インフラによる整備成果に基づいて報酬の付与が行われる成果連動型契約の契約情報を、情報処理装置20に送信する。整備成果は、例えば、防災による減災成果や、所定の契約期間の経過後におけるインフラによる経済成果などの少なくとも1つを含む。また、整備成果は、上述したように、温室効果ガス、例えばCO2の削減効果を含んでもよい。また、温室効果ガスとして、二酸化炭素を例に挙げるが、温室効果ガスは、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロンガスのうち、少なくとも1つを含む。また、報酬の付与は、インフラのオーナーからの金銭の支払い、及び/又は、国又は政府などの機関からのCO2排出権の付与を含む。
【0098】
事業者が主に利用する情報処理装置20の取得部213は、情報処理装置10により送信された、成果連動型契約の契約情報を取得する。また、取得部213は、この契約情報に基づいて設定される資金に関する資金データを取得する。
【0099】
資金管理部214は、取得された資金データを、インフラ整備事業の識別情報に関連付けてメモリ230に記憶する。識別情報は、事業ごとに予め設定されていればよい。
【0100】
また、設定部217は、CO2の削減量に基づくCO2排出権の取得条件に関する条件情報を設定してもよい。条件情報は、例えば、認証機関などにより認証されるCO2排出権に対する所定の割合の情報などを含む。所定の割合は、国と事前に決められていればよいが事後に決められてもよい。また、設定部217は、認証される条件情報を、インフラ整備事業の識別情報に関連付けてメモリ230に記憶してもよい。
【0101】
災害が発生し、インフラ整備により被害が防止されたと所定機関により認められた場合、その成果に応じて認証機関等がインフラ整備により防止された被害額を算出し、その被害額のα%をインフラオーナーが事業者に支払う。被害額は、例えばインフラ整備により被害が防止された資産、経済、又は財政などに基づき算出される。例えば、情報処理装置10は、決定された支払金に基づき、事業者への支払い処理を実行し、支払金に関する支払金データを情報処理装置20に送信する。なお、所定機関と認証機関とは同じ機関であってもよいし、異なる機関であってもよい。
【0102】
次に、国又は政府は、インフラ整備により被害を防止することで排出しなくて済んだCO2削減量に基づくCO2排出権を報酬として事業者に付与する。例えば、CO2排出権は、被害防止により排出しなくて済んだCO2削減量の所定%(例、100%、80%など)のCO2排出権でもよい。この場合、国又は政府が利用する情報処理装置は、決定されたCO2排出権に関する情報を情報処理装置20に送信する。CO2排出権に関する情報を送信する情報処理装置は、インフラオーナーの国により管理される情報処理装置10でもよい。なお、CO2排出権は、第三者に譲渡できないという制約を加えてもよく、一般に代替可能性のないブロックチェーン上で発行されるデジタルトークン(NFT:Non-Fungible Token)などが付与されてもよい。また、CO2排出権は、政府がいつでも時価で引き取ることができるようにするとよい。
【0103】
次に、具体例2において、災害発生時に、CO2排出権を国が事業者に付与するとした場合、情報処理装置10の送信部115は、ビル耐震化を図る整備プロジェクトに関する契約であって、ビル耐震化の成果に基づいて報酬の付与が行われる成果連動型契約の契約情報を、情報処理装置20に送信する。報酬の付与は、ビルオーナーからの賃料増加に基づく金銭の支払い、及び/又は、国又は政府などの機関からのCO2排出権の付与を含む。
【0104】
災害が発生し、ビル耐震化により被害が防止されたと所定機関により認められた場合、その成果に応じて認証機関等がビル耐震化により防止された被害額を算出し、その被害額のα%を事業者に支払う。被害額は、例えばビル耐震化により被害が防止された資産、経済、又は財政などに基づき算出される。例えば、国や政府が利用する情報処理装置は、決定された支払金に基づき、事業者への支払い処理を実行し、支払金に関する支払金データを情報処理装置20に送信する。なお、所定機関と認証機関とは同じ機関であってもよいし、異なる機関であってもよい。
【0105】
次に、国又は政府は、ビル耐震化により被害を防止することで排出しなくて済んだCO2削減量に基づくCO2排出権を報酬として事業者に付与する。この場合、国又は政府が利用する情報処理装置は、決定されたCO2排出権に関する情報を情報処理装置20に送信する。なお、CO2排出権は、第三者に譲渡できないという制約を加えてもよく、また、CO2排出権は、政府がいつでも時価で引き取ることができるようにするとよい。
【0106】
また、具体例2において、災害発生時に、CO2排出権を国が事業者に付与するとした場合、上述した例とは異なる報酬体系にしてもよい。例えば、災害発生前において、ビルオーナーが利用する情報処理装置10は、ビル耐震化により増額された賃料に基づき決定された支払金に基づき、事業者への支払い処理を実行し、支払金に関する支払金データを情報処理装置20に送信する。また、国又は政府は、ビル耐震化による災害回避の経済効果(例えば災害発生時に想定される被害額のα%/契約年数)の金額を、毎年事業者に支払う。例えば、国又は政府が利用する情報処理装置は、決定された金額に基づき、支払い処理を実行し、この金額に関する支払金データを情報処理装置20に送信する。
【0107】
災害が発生し、ビル耐震化により被害が防止されたと所定機関により認められた場合、その成果に応じて認証機関等がビル耐震化により防止された被害額を算出し、その被害額のα%の残額を国又は政府は事業者に支払う。被害額は、例えばビル耐震化により被害が防止された資産、経済、又は財政などに基づき算出される。例えば、国や政府が利用する情報処理装置は、決定された残額に基づき、事業者への支払い処理を実行し、残額に関する残額データを情報処理装置20に送信する。なお、所定機関と認証機関とは同じ機関であってもよいし、異なる機関であってもよい。
【0108】
また、国又は政府は、ビル耐震化により被害を防止することで排出しなくて済んだCO2削減量に基づくCO2排出権を報酬として事業者に付与する。この場合、国又は政府が利用する情報処理装置は、決定されたCO2排出権に関する情報を情報処理装置20に送信する。なお、CO2排出権は、第三者に譲渡できないという制約を加えてもよく、また、CO2排出権は、政府がいつでも時価で引き取ることができるようにするとよい。
【0109】
以上、具体例1~5について説明したが、いずれも成果連動型契約であるため、事業者は、調達した資金を有効に使い、インフラの評価に基づく支払金等を大きくするため、よりよいインフラを構築することが見込まれる。よりよいインフラが構築されれば、インフラのオーナーにとってもインフラによる経済的利益の恩恵を受けることができる。すなわち、成果連動型契約を適用することで、事業者には、インフラの評価を高めて支払金等を大きくするというインセンティブを与え、インフラのオーナーには、インフラ整備事業が着実に実行される可能性を高め、インフラ整備事業の企画を後押しすることができる。
【0110】
<データ例>
図4は、本発明における具体例1の評価データの一例を示す図である。図4に示す例では、情報処理装置10のメモリ130に記憶される評価データである。例えば、評価データは、或るインフラ防災事業における評価データであり、「被害のケース」、「地域」、「事象発生確率」、「被害額」、「防災コスト(整備コスト)」、「期待される防災効果」がそれぞれ関連付けられてメモリ130に記憶される。
【0111】
「被害のケース」は、例えば災害を意味し、地震、津波、高潮、台風、集中豪雨などを含む。上記例では天災を例にしたが、火事などの人災を含めてもよい。「地域」は、例えば行政区画であり、市町村や県単位に区画分けされる。
【0112】
「事象発生確率」は、過去の事例に基づいて、所定の機関が研究等して算出した発生確率である。例えば、30年内に70%の確率で地域Aは、地震が発生することを表す。「被害額」は、「被害のケース」に示す災害が、その地域で発生した場合に想定される被害額を表す。「防災コスト」は、その地域に対して防災インフラを構築するために係る費用を表す。「期待される防災効果」は、防災インフラを構築した場合に、減災されうる評価額を表す。
【0113】
なお、評価データには、インフラ防災事業の識別情報や、実際に災害が発生した場合に、所定の機関により評価される減災成果も関連付けられて記憶されてもよい。また、評価データは、評価機関により設定される項目を含むが、インフラのオーナーにより設定される項目を含んでもよい。
【0114】
図5は、本発明における具体例1の公開データの一例を示す図である。図5に示す例では、情報処理装置10のメモリ130に記憶される公開データである。例えば、公開データは、「被害のケース」、「地域」、「契約期間」、「最小防災コスト」、「二次的利益」がそれぞれ関連付けられてメモリ130に記憶される。なお、情報処理装置20の取得部213が、この公開データを取得した場合には、メモリ230に公開データを格納してもよい。
【0115】
「被害のケース」及び「地域」は、図4に示すものと同様である。「契約期間」は、インフラ整備事業に関する成果連動型契約の契約期間を表す。「二次的利益」は、インフラを整備したことにより得られる二次的利益であり、例えば、道路や鉄道整備による利用料金などである。なお、公開データは、成果連動型契約の契約情報の一部を含む。例えば、契約情報は、契約期間や、上述した支払条件の条件情報、支払金発生の契機となる所定の条件などを含む。
【0116】
図6は、本発明における具体例1の係数データの一例を示す図である。図4に示す例では、情報処理装置20のメモリ230に記憶される係数データである。例えば、係数データは、事業者が設定した支払金に関する係数であり、「α」は、上述した第1係数、「β」は、上述した第2係数を表す。係数データは、契約情報に含まれるデータである。図4~6に示す各データについて、具体例2~5においても基本的なデータの内容は同様であるが、上述した具体例2~5に応じて、評価データ、公開データ又は係数データの一部の内容が異なってもよい。例えば、具体例3においては、係数データとして、第3係数及び第4係数が、インフラ整備事業の識別情報に関連付けられてメモリ230に記憶される。第3係数及び第4係数は、各事業者によって設定される値であり、その設定方法は様々な方法がある。また、具体例4及び5においては、CO2排出権の所定の割合が、インフラ整備事業の識別情報に関連付けられてメモリ230に記憶される。
【0117】
<動作説明>
次に、情報処理システム1の資金調達に関する各動作について説明する。図7は、本発明の一実施形態に係る資金調達に関する処理の一例を示すシーケンス図である。図7に示す処理は、具体例1~5において同様に適用することができる。
【0118】
ステップS102において、情報処理装置10の送信部115は、インフラのオーナー等の操作により、インフラ整備事業に関する契約情報を、情報処理装置20に送信する。契約情報は、公開データであってもよく、インフラのオーナーがインフラ整備事業の事業者を選定するために公開されるデータを含む。
【0119】
ステップS104において、情報処理装置20の資金管理部214は、契約情報に基づいて、支払金に関する条件を設定する。例えば、資金管理部214は、契約情報に含まれる契約期間、整備コスト、二次的利益等に基づいて、第1係数及び/又は第2係数を設定する。係数の設定方法は、所定の算出式に契約期間や整備コスト、二次的利益等を入力し、各係数を算出して設定してもよいし、学習済みモデルを用いて算出して設定するようにしてもよい。
【0120】
ステップS106において、情報処理装置20の送信部216は、設定された係数を含む条件情報を情報処理装置10に送信する。この処理により、事業者は、この事業に対して入札することになる。
【0121】
ステップS108において、インフラのオーナーは、インフラ整備事業を委託する企業等(資金調達者)を決定し、情報処理装置10の送信部115は、入札の結果を情報処理装置20に送信する。
【0122】
ステップS110において、情報処理装置20の資金管理部214は、資金調達処理を実行する。資金調達処理は、自己資金をあてる処理でもよいし、他者から投資を受けて資金を調達する処理でもよい。ステップS112及びS114は、他者から投資を受ける場合の処理であり、自己資金のみで資金調達をする場合は、必ずしも必要な処理ではない。
【0123】
ステップS112において、情報処理装置20の資金管理部214は、インフラ整備事業に必要な整備コストを考慮して投資を受ける額を決定し、送信部216は、投資額を含む投資の条件やリターンの情報を含む投資情報を、他者が利用する情報処理装置50に送信する。
【0124】
ステップS114において、情報処理装置50は、投資情報に基づき投資額を決定し、この投資額を含む投資要求を情報処理装置20に送信する。
【0125】
ステップS116において、情報処理装置20の資金管理部214は、取得した投資額(インフラ整備事業の資金)に関する資金データを、このインフラ整備事業の識別情報に関連付けてメモリ230に記憶する。これにより、資金管理部214は、調達される資金を管理することができる。
【0126】
ステップS118において、情報処理装置20の特定部215は、インフラ整備事業の管理先を特定する。インフラ整備事業の管理先は、メモリ230に契約情報等に関連付けて記憶されている。
【0127】
ステップS120において、情報処理装置20の送信部216は、調達された資金に関する資金データを、管理先に対して送信する。
【0128】
以上の処理により、インフラ整備事業において成果連動型契約を適用した場合に、この成果連動型契約の契約情報に基づいて、リターンである見返りにインセンティブがあり、事業者にとってインフラ整備事業に参加しやすくなる。
【0129】
図8は、本発明の一実施形態に係る支払処理の一例を示すシーケンス図である。図8に示す処理は、具体例1~5において同様に適用されうる。
【0130】
ステップS202において、評価を行う機関が利用する情報処理装置40は、インフラによる経済成果を評価する。経済成果は、見積もりの金額でもよい。
【0131】
ステップS204において、情報処理装置40は、評価結果を含む評価データを、インフラのオーナーが利用する情報処理装置10に送信する。
【0132】
ステップS206において、情報処理装置10のインフラ管理部114は、評価結果に含まれる経済成果に基づいて、成果連動型契約の契約情報を参照して支払金を算出する。例えば、経済成果に相当する金額に第1係数を用いて支払金を算出する。
【0133】
ステップS208において、情報処理装置10のインフラ管理部114は、算出した支払金を、事業者に支払う処理を実行する。例えばインフラ管理部114は、所定の銀行に支払金を振り込む処理を実行したりする。情報処理装置10の送信部115は、支払金に関する支払金データを、情報処理装置20に送信する。支払金データは、例えば、支払金の支払いを完了したことを示すデータである。
【0134】
ステップS210において、情報処理装置20の取得部213は支払金データを取得し、資金管理部214は、支払金データに基づいて、この支払金を管理し、必要に応じて、所定のタイミングで、資金の提供元への支払処理を実行する。
【0135】
以上の処理により、所定のタイミングで、第三者である評価機関がインフラによる経済成果を評価し、インフラのオーナーは、その評価結果に基づいて、インフラ整備事業における資金調達のリターンとなる支払金を決定し、事業者は、支払金を受け取ることが可能になる。
【0136】
また、支払金の設定条件などを成果連動型契約の契約情報に含めることで、評価処理の完了後、支払処理を円滑に行うことができ、システム効率を上げることが可能になる。また、情報処理装置20は、支払金の設定条件を有するため、評価結果を取得すれば支払金が間違っていないかの確認処理を容易に行うことができ、確認処理をやり直したりする必要がなく、確認処理に対する処理効率を上げることが可能になる。なお、リターンとしては、支払金だけではなく、具体例3における料金徴収権や、具体例4及び5における温室効果ガス排出権などの所定の債権などでもよい。
【0137】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。例えば、本発明は、各情報処理装置10~50が実行する処理について、一部の処理を、他の情報処理装置に移行したり、複数の情報処理装置を適宜統合したりしてもよい。
【符号の説明】
【0138】
1…情報処理システム、10~50…情報処理装置、110…CPU、112…制御部、113…取得部、114…インフラ管理部、115…送信部、130…メモリ、210…CPU、230…メモリ、212…制御部、213…取得部、214…資金管理部、215…特定部、216…送信部、217…設定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8