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特許7634342気密端子、及びそれを備えるタンクバルブ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】気密端子、及びそれを備えるタンクバルブ装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 9/16 20060101AFI20250214BHJP
   F16J 13/12 20060101ALI20250214BHJP
   F16K 31/06 20060101ALN20250214BHJP
【FI】
H01R9/16 101
F16J13/12 Z
F16K31/06 305B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020002520
(22)【出願日】2020-01-10
(65)【公開番号】P2021111509
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-07-19
【審判番号】
【審判請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135220
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 祥二
(72)【発明者】
【氏名】岡本 将佳
(72)【発明者】
【氏名】徳田 道彦
(72)【発明者】
【氏名】二宮 誠
(72)【発明者】
【氏名】藤本 佳照
【合議体】
【審判長】平城 俊雅
【審判官】内田 博之
【審判官】横山 幸弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/005090(WO,A1)
【文献】実開昭55-31202(JP,U)
【文献】実開昭58-159176(JP,U)
【文献】特開2019-204602(JP,A)
【文献】特開2016-5401(JP,A)
【文献】特開2014-118104(JP,A)
【文献】特開2010-196620(JP,A)
【文献】特開2010-269561(JP,A)
【文献】特開2015-152165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 9/16 , F16J 13/12 , F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着面を有し、低圧領域及び高圧領域に夫々繋がる孔部に取り付けられ、大径部を有する合成樹脂製の基体と、
前記基体に挿通されている少なくとも1つの電極と、
前記大径部より前記高圧領域側に位置するように前記基体の装着面に外装されるシール部材と、を備え、
前記大径部は、その外周面にパーティングラインを有し
前記装着面には、パーティングラインが形成されていない、気密端子。
【請求項2】
前記基体は、前記大径部の前記低圧領域側に当接面を有し、前記孔部に形成される座面に前記当接面を着座させ、
前記当接面は、前記座面の最縮径部との間に隙間を空けている、請求項1に記載の気密端子。
【請求項3】
前記基体より高い強度を有し且つ絶縁性を有する補強部材を更に備え、
前記基体は、その低圧領域側の部分に前記補強部材が取り付けられ、前記補強部材を介して前記孔部の座面に着座している、請求項1又は2に記載の気密端子。
【請求項4】
低圧領域及び高圧領域に夫々繋がる孔部に嵌め込まれる合成樹脂製の基体と、
前記基体に挿通される少なくとも1つの電極と、を備え、
前記基体は、基部と、前記基部の前記低圧領域側に形成されるシート面とを有し、
前記基部は、パーティングラインを有し、
前記シート面は、パーティングラインが形成せれておらず、前記孔部に形成される座面に押し付けられて前記低圧領域に対して前記高圧領域の気密を維持している、気密端子。
【請求項5】
前記基体を付勢して前記シート面を前記座面に押し付ける付勢部材を更に備える、請求項4に記載の気密端子。
【請求項6】
前記基体は、その前記高圧領域側に変形部を有し、前記シート面を前記座面に着座させるべく前記変形部が変形するまで押さえ付けられている、請求項4又は5に記載の気密端子。
【請求項7】
絶縁性を有する合成樹脂から成る絶縁体を更に備え、
前記電極は、少なくとも前記基体から突出している部分を有し、
前記基体は、前記電極の周りに一体成形され、
前記絶縁体は、前記電極の突出している部分に嵌め合わされている、請求項1乃至6の何れか1つに記載の気密端子。
【請求項8】
圧力容器に設けられるタンクバルブ装置であって、
請求項1乃至7の何れか1つに記載の気密端子と、
前記圧力容器に取り付けられるケーシングと、
前記高圧領域側である前記圧力容器内に位置するように、前記ケーシングに取り付けられる電装品とを備える、タンクバルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低圧領域及び高圧領域に夫々繋がる孔部に取り付けられる気密端子、及びそれを備えるタンクバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧水素タンク等の圧力容器では、その口部にタンクバルブ装置が設けられており、タンクバルブ装置の電磁弁によって圧力容器内の高圧ガスの排出が制御されている。この電磁弁には、例えば特許文献1のような気密端子が用いられており、気密端子によって圧力容器外の機器(具体的には、制御装置)と圧力容器内の電磁弁のコイル等とが電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-152165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の気密端子は、例えばガラス気密端子である。ガラス気密端子は、金属から成る筒状の金属外環と、金属外環に挿通される電極ピンを有している。また、ガラス気密端子には、電極ピンと金属外環との間の絶縁性を確保するために、それらの間に絶縁ガラス層が設けられている。絶縁ガラス層が設けられるため、ガラス気密端子では、金属外環の内孔を小さくすることができない。それ故、気密端子の小型化を図ることが難しい。
【0005】
そこで本発明は、小型化を図ることができる気密端子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の気密端子は、低圧領域及び高圧領域に夫々繋がる孔部に取り付けられ、大径部を有する合成樹脂製の基体と、前記基体に挿通されている少なくとも1つの電極と、前記大径部より前記高圧領域側に位置するように前記基体に外装されるシール部材と、を備え、前記大径部は、その外周面にパーティングラインを有しているものである。
【0007】
本発明に従えば、従来のガラス気密端子のように、金属外環及びガラス絶縁層を必要としないので、気密端子の小型化を図ることができる。また、パーティングラインを大径部に設けているため、パーティングラインによって、シール部材と基体との間に隙間が形成されることを抑制できる。そのため、高圧領域の気密性が低下することを抑制できる。即ち、気密端子に関して小型化を図りつつ高圧領域の気密性を確保することができる。
【0008】
本発明の気密端子は、低圧領域及び高圧領域に夫々繋がる孔部に嵌め込まれる合成樹脂製の基体と、前記基体に挿通される少なくとも1つの電極と、を備え、前記基体は、基部と、前記基部の前記低圧領域側に形成されるシート面とを有し、前記シート面は、前記孔部に形成される座面に押し付けられて前記低圧領域に対して前記高圧領域の気密を維持し、前記基部は、パーティングラインを有しているものである。
【0009】
本発明に従えば、金属外環を必要としないので、気密端子の小型化を図ることができる。また、構成部品の点数を低減による製造コストを低減、更には気密端子1の軽量化を図ることができる。またパーティングラインによってシート面と座面との間に隙間が形成され、高圧領域の気密性が低下することを抑制できる。即ち、気密端子に関して小型化を図りつつ高圧領域の気密性を確保することができる。
【0010】
本発明のタンクバルブ装置は、圧力容器に設けられるものであって、前述する気密端子と、前記圧力容器に取り付けられるケーシングと、前記高圧領域側である前記圧力容器内に位置するように、前記ケーシングに取り付けられる電装品とを備えるものである。
【0011】
本発明に従えば、高圧領域の気密を確保しつつ、圧力容器内部に電磁弁などの電装品を配置することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態の気密端子を示す斜視図である。
図2図1の気密端子が取り付けられる状態を示す断面図である。
図3】第2実施形態の気密端子を示す断面図である。
図4】第3実施形態の気密端子を拡大して示す拡大断面図である。
図5】第4実施形態の気密端子を拡大して示す拡大断面図である。
図6】第5実施形態の気密端子を拡大して示す拡大断面図である。
図7】第6実施形態の気密端子を拡大して示す拡大断面図である。
図8】気密端子を備えるタンクバルブ装置を示す断面図である。
図9図8のタンクバルブ装置の一部分を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る第1乃至第6実施形態の気密端子1,1A~1E及びそれを備えるタンクバルブ装置2について前述する図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明する気密端子1,1A~1E及びタンクバルブ装置2は、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。なお、本発明は、実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0015】
<第1実施形態>
図1に示す気密端子1は、タンクバルブ装置等の機器やクリーンルーム等の設備のように中が高圧領域となっているものにおいて、その外側の低圧領域に対して高圧領域の気密を維持しつつ、各領域に夫々設けられた機器を電気的に接続するためのものである。このような機能を有する気密端子1は、図1に示すように基体11と、少なくとも1つの電極(本実施形態では、一対の電極)12と、シール部材13と、バックアップリング14とを有している。
【0016】
基体11は、PEEK、PPS、PI、及びPAI等の合成樹脂製である。基体11は、大略円柱状に形成されている。なお、基体11は、必ずしも合成樹脂のみから成る必要はない。基体11は、絶縁性が確保できるのであれば、部分的に合成樹脂以外のものによって構成されてもよい。基体11には、電極12が嵌挿されており、それらの両端部分が基体11から突き出ている。また、基体11は、その軸線方向中間部分に大径部11aを有しており、大径部11aは、径方向に突き出て基体11において最も大径に形成されている。また、基体11は、大径部11aの先端側に当接面11bを有している。当接面11bは、大径部11aから先端側に向かって先細りのテーパ状になっている。また、基体11には、大径部11aより一端側にある装着面11cにシール部材13が外装されている。シール部材13は、合成ゴム等から成る環状の部材、例えばOリングである。また、基体11の残余部には、バックアップリング14が外装されている。バックアップリング14は、シール部材13と大径部11aとの間に位置してシール部材13を支えている。
【0017】
このように構成される気密端子1は、図2に示すような孔部10、例えば後述するタンクバルブ装置2のケーシング21(図8参照)やクリーンルームの壁等に形成される孔部10に嵌め込むように設けられている。孔部10は、大径部分10aと小径部分10bとを有しており、大径部分10aは、小径部分10bより大径に形成されている。また、大径部分10aと小径部分10bとの間は、大径部分10a側から小径部分10b側に向かって縮径するように形成されており、そこがテーパ状の座面10cを成している。このような形状を有する孔部10において、大径部分10aは、高圧領域H(例えばタンク内やクリーンルーム内)に繋がっており、また小径部分10bは、低圧領域L(例えば大気)に繋がっている。それ故、大径部分10aは、小径部分10bより高圧になっており、孔部10に気密端子1を取り付けて大径部分10aの高圧ガスが小径部分10bに漏れないようにしている。即ち、気密端子1は、低圧領域Lに対して高圧領域Hの気密を維持している。
【0018】
更に詳細に説明すると、気密端子1は、大径部分10aに基体11を挿入させ、基体11に外装されるシール部材13を孔部10の内壁に当接させる。このようにして、シール部材13が、低圧領域Lに対して高圧領域Hの気密性を確保している。また、気密端子1では、シール部材13が、高圧領域H側に配置されている。詳細には、シール部材13が、大径部11aよりも高圧領域H側に配置される。そのため、高圧領域Hのガスによってシール部材13が押し潰されるようになっている。これにより、シール部材13を孔部10の内壁に密着させることができる、気密性を向上させることができる。なお、バックアップリング14は、シール部材13よりも低圧領域L側に配置されている。これにより、バックアップリング14が、シール部材を安定的に支えている。
【0019】
また、気密端子1は、当接面11bを座面10cに当接させており、高圧領域Hのガスによって当接面11bが座面10cに押圧されている。それ故、当接面11bが以下のように形成されている。即ち、当接面11bのテーパ角αが孔部10の座面10cのテーパ角βより大きく形成されている。また、当接面11bは、大径部11aと繋がる部分がR面取りされている。それ故、当接面11bは、R面取りされているR部分を座面10cに当接させている。これにより、小径部分10bと繋がる部分、即ち座面10cにおいて最も縮径した部分(以下、「最縮径部」という)10dと当接面11bとの間に隙間10gを形成し、それを離すことができる。最縮径部10dは、隅取りがされているものの、当接面11bが当接するとそこに応力集中が生じやすい部分である。それ故、最縮径部10dから当接面11bを離すことによって前述するような応力集中の発生を抑制することができる。また、気密端子1は、以下のようにして孔部10内に固定されている。
【0020】
即ち、気密端子1は、その一端部11dを孔部10の大径部分10aから突き出させ、その一端部11dが規制部材15に挿通されている。気密端子1の一部には、断面が非円形形状の非円形部が形成されている。また、基体11の一端部11dの断面は、円において周方向互いに離れた位置(本実施形態では180度離れた位置)に切り欠いて平面11f,11fを形成させた大略オーバル形状になっており、平面11f,11fを掴んで気密端子1の回転位置を変えることができる。なお、基体11の一端部11dは、必ずしもオーバル形状である必要はなく断面矩形状であってもよく、掴んで回転することができる形状であればよい。また、基体11の一端部11dは、そこに段部11gが形成され、段部11gが規制部材15に当たることで、その高圧側への移動が規制されている。
【0021】
また、取付孔部15aには、高圧側コネクタ16が挿入されている。高圧側コネクタ16は、高圧領域Hに配置される電装品(図示せず)と電気的に接続されている。また、高圧側コネクタ16は、例えば雌型コネクタであり、そこに形成される一対に挿通孔16a,16aに一端部12aが嵌め合わされている。また、電極12の他端部12bは、小径部分10bに突出しており、小径部分10bには、低圧側コネクタ17が挿入されている。低圧側コネクタ17は、低圧領域Lに配置される外部機器(図示せず)と電気的接続されている。低圧側コネクタ17もまた、例えば雌型コネクタであり、そこに形成される挿通孔17aに他端部12bが嵌め合わされている。それ故、2つのコネクタ16,17を気密端子1に夫々嵌め合わせて接続することによって電装品と外部機器が電気的に接続することができる。
【0022】
このように構成されている気密端子1は、合成樹脂から成る基体11に電極12を挿通することによって構成されているので、従来の気密端子のように金属外環及びガラス絶縁層を必要としないので、気密端子1の小型化を図ることができる。また、気密端子1では、金属外環及びガラス絶縁層を必要としないので、構成部品の点数を低減することができ、それによって製造コストの低減及び気密端子1の軽量化を図ることができる。
【0023】
また、基体11は、射出成形等の金型成形によって成形されるので、複雑な形状であっても気密端子1を大量且つ安価に製造することができる。なお、気密端子1を成形する金型は、金型からの気密端子1の取り出しを考慮して複数の金型部品を組み合わせるようにして構成される。それ故、基体11を金型成形した場合、金型部品の合わせ目にパーティングラインが形成される。気密端子1では、この合わせ目の位置を調整して装着面11c以外の部位(本実施形態において、大径部11a)にパーティングライン11eが形成されており、装着面11cにパーティングラインが形成されていない。本実施形態に係る気密端子1では、基体11の大径部11aの外周面において周方向全周にわたって延びる円環状のパーティングライン11eが形成されるようにしている。例えば、パーティングラインが装着面11cに形成される場合、装着面11cとシール部材13との間に隙間が形成され、その隙間から高圧のガスが流出する。そうすると、高圧領域Hの気密性が低下する。気密端子1では、前述するようにパーティングライン11eが装着面11c以外の部位に形成されているので、装着面11cとシール部材13との間からガスが流出せず、高圧領域Hの気密性を確保することができる。即ち、気密端子1は、小型化を図りつつ高圧領域Hの気密性を確保することができる。
【0024】
なお、前述するようにパーティングライン11eより高圧領域H側の箇所にシールしている場合、パーティングライン11eがない平滑領域(例えば、装着面11c)より低圧領域L側にパーティングライン11eが位置する。また、大径部11aも平滑領域より低圧領域L側に位置し、基体11において平滑領域より高圧領域Hは、同径又は先細りになっている。これにより、金型抜きを可能にしている。また、パーティングラインは、必ずしも大径部11aの外周面だけに形成されている必要はなく、基体11において大径部11aから一端にかけて(即ち、大径部11aを挟んで装着面11cの反対側に)軸線に平行なパーティングラインが形成されてもよい。
【0025】
また、基体11を成形する金型は、金型の通路から金型の樹脂気密端子の製品形状部(空洞部)に繋がるゲート部が基体11の装着面11cより低圧側に位置するように形成されている。これにより、ゲート跡が剥がれた場合に低圧側に導くことができ、剥がれたゲート跡が装着面11cとシール部材13との間に入り込むことを抑制することができ、高圧領域Hの気密性を確保することができる。
【0026】
更に、気密端子1では、電極12と基体11が一体成形される。電極12には、表面粗面化や金属・樹脂間の接合膜形成などの表面処理が施されている。そのうえでで、電極12は基体11と異材接合されている。表面処理は、電極12のうち、少なくとも基体11が設けられる軸線方向中間部分に施せばよい。表面処理の例としては、化学的処理や、レーザ照射による物理的処理などがある。このように表面処理によって電極12と基体11とを強固に接合することができる。そのため、電極12と基体11との接合性及び気密性を向上することができる。
【0027】
<第2実施形態>
第2実施形態の気密端子1Aは、第1実施形態の気密端子1と構成が類似している。従って、第2実施形態の気密端子1Aの構成については、第1実施形態の気密端子1と異なる点について主に説明し、同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。なお、以下で説明する第3及び第4実施形態の気密端子1B,1Cについても同様である。
【0028】
第2実施形態の気密端子1Aは、図3に示すような基体11及び一対の電極12A,12Aと、シール部材13(図2参照)と、バックアップリング14(図2参照)とを有している。電極12Aは、長尺に形成されている。即ち、電極12Aは、その高圧領域H側に突き出ている一端部12aに比べて低圧領域L側に突き出ている他端側部分12cが長尺に形成されている。そして、その他端側部分に絶縁体18が被せられている。
【0029】
絶縁体18は、絶縁材料、例えばPBT、ABS、PP、PA、及びPPS等の合成樹脂から成る。絶縁体18は、大略円柱状に形成されている。また、絶縁体18は、挿通孔18aを有している。本実施形態では、一対の挿通孔18aが形成されている。挿通孔18aに電極12Aの他端側部分を夫々嵌め合わせるようにしてその他端側部分に絶縁体18が被せられる。また、絶縁体18は、電極12Aの他端側部分より短く形成されており、電極12Aの他端側部分の先端部が絶縁体18から突き出ている。そして、この突き出ている部分が低圧側コネクタ17に嵌挿される。
【0030】
また、絶縁体18には、基体11側の端面である一端面に少なくとも1つ突起片18b(本実施形態では、一対の突起片18b,18b)が形成されている。突起片18bは、周方向に間隔(本実施形態において180度の間隔)をあけて配置され、基端面から基体11側に突出している。また、基体11の他端部には、切欠き11hが突起片18bに対応させて形成されており(図1も参照)、一対の突起片18bが切欠き11hに入ることによって絶縁体18が基体11に対してその軸線周りに相対回転することを防ぐことができる。即ち、相対回転により一対の電極12Aの他端側部分が捩じれることがない。なお、切欠き11hは、必ずしも基体11に形成されている必要はなく、絶縁体18側に形成されてもよい。その場合、突起片18bは、基体側に形成される。その他、回転を防止できる構造であればどのような構造であってもよい。
【0031】
更に、挿通孔18aは、電極12Aの外径と略同じ内径にて形成されている。そのため、電極12Aが絶縁体18に嵌め合わせできるようになっている。これにより、絶縁体18が一対の電極12Aに対してその軸線方向に動くことを抑制することができる。詳細には、挿通孔18aは、一端側の部分が他端側に向かって拡径するようにテーパ状に形成されており、電極12Aが挿入しやすくなっている。また挿通孔18aは、他端側の開口部分を除いた残余部分の一部又は全体が電極12Aの外径と略同じ内径にて形成されている。
【0032】
このように構成される気密端子1Aでは、絶縁体18を用いることによって低圧領域L側により長く突出した電極12Aを採用することができる。これにより、遠くの位置まで電極12Aの先端を延ばすことができ、電極12Aに接続される導線を短くしたりなくしたりすることができる。また、気密端子1Aでは、基体11と絶縁体18を別体で構成することによって、それらを一体的に形成する場合に比べて絶縁体18の成形が容易である。それ故、気密端子1Aの歩留まりを向上させることができる。
【0033】
その他、第2実施形態の気密端子1Aは、第1実施形態の気密端子1と同様の作用効果を奏する。
【0034】
<第3実施形態>
第3実施形態の気密端子1Bは、図4に示すように、基体11Bと、一対の電極12と、シール部材13と、バックアップリング14と、補強部材19を有している。基体11Bは、大略円柱状に形成され、その低圧領域側にある先端部分が平坦に形成されている。基体11Bの先端部分には、補強部材19が異材接合されている。即ち、補強部材19は、絶縁性を有し且つ基体11Bの材料である合成樹脂より強度を有する材料、例えばセラミック材料を含んで構成されており、基体11Bの先端部分を補強している。それ故、基体11Bの先端部分は、補強部材19を介して開口端部10eに当接し、基体11Bが高圧領域Hのガスに押されて座面10cの方に押し付けられた際に基体11Bの先端部に過度に荷重が作用することを抑制できる。これにより、大径部分10aと小径部分10bとの間を段状に形成して座面10cを平坦にすることが可能となり、そうすることで孔部10の形成を容易にすることができる。
【0035】
その他、第3実施形態の気密端子1Bは、第1実施形態の気密端子1と同様の作用効果を奏する。
【0036】
<第4実施形態>
第4実施形態の気密端子1Cは、図5に示すように、基体11Cと、一対の電極12,12とを有している。基体11Cは、大略円柱状の基部11kと、シート面11iとを有し、基部11kの低圧領域L側の部分にシート面11iが形成されている。シート面11iは、当接面11bと同様にテーパ状に形成されており、その一端側の部分を座面10cに着座させている。このようにシート面11iが座面10cに着座することで高圧領域Hがシールされる。なお、シート面11iの形状は、必ずしも前述するような形状に限定されず、部分球面状に形成されてもよい。
【0037】
このように構成される気密端子1Cでは、高圧領域Hのガスによって基体11Cが座面10cに押し付けられ、それによって高圧領域H側から低圧領域L側へのガスの漏れが抑制される。これにより、低圧領域Lに対して高圧領域Hの気密を維持することができる。また、気密端子1Cでは、シール部材13及びバックアップリング14を用いなくても高圧領域Hの気密を維持できるので、部品点数の増加を抑制し製造コストを低減することができる。なお、気密端子1Cはシール部材13及びバックアップリング14を有してもよく、その場合には2か所にて高圧領域Hをシールすることができる。
【0038】
また、気密端子1Cも、第1実施形態の気密端子1と同様に金型成形によって製造され、金型部品の合わせ目の位置を調整してパーティングライン11eの形成位置が調整されている。具体的には、気密端子1Cでは、シート面11i以外の部分にパーティングライン11eが形成されており、シート面11iにパーティングラインが形成されていない。本実施形態に係る気密端子1Cでは、大径部11aの外周面において周方向全周にわたって延びる円環状のパーティングライン11eが形成される。それ故、パーティングライン11eによってシート面11iと座面10cとの間に隙間が形成されることがなく、高圧領域Hの気密が維持されている。
【0039】
なお、前述するようにパーティングライン11eより低圧領域L側の箇所にてシールしている場合、パーティングライン11eがない平滑領域(例えば、シート面11i)より高圧領域H側にパーティングライン11eが位置する。また、大径部11aも平滑領域より高圧領域H側に位置し、基体11において平滑領域より低圧領域Lは、同径又は先細りになっている。これにより、金型抜きを可能にしている。また、パーティングラインは、基部11kに円環状のみ形成されている必要はなく、円環状の部分から基体11の他端にかけて(即ち、大径部11aを挟んでシート面11iの反対側に)軸線に平行な直線状の部分が形成されてもよい。
【0040】
その他、第4実施形態の気密端子1Cは、第1実施形態の気密端子1と同様の作用効果を奏する。
【0041】
<第5実施形態>
第5実施形態の気密端子1Dは、第4実施形態の気密端子1Cと構成が類似している。従って、第5実施形態の気密端子1Dの構成については、第4実施形態の気密端子1Cと異なる点について主に説明し、同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。以下で説明する第6実施形態の気密端子1Eについても同様である。
【0042】
第5実施形態の気密端子1Dは、図6に示すように基体11Dと、一対の電極12,12と、ばね部材20とを有している。基体11Dは、第1実施形態の基体11と同様の形状を有しており、当接面11bがシート面11iを成している。即ち、シート面11iが座面10cに着座することで高圧領域Hがシールされる。また、付勢部材の一例であるばね部材20は、基体11Dを座面10cに向かって付勢するものであり、例えば圧縮コイルばねである。ばね部材20は、気密端子1Dの基体11Dの大径部11aと規制部材15との間に形成される環状空間に収容されている。このように配置されているばね部材20は、高圧領域Hの圧力が低下して低圧領域Lとの差圧が小さくなった場合であってもシート面11iを座面10cに押し付けることができ、基体11Dに不所望な荷重が作用しても高圧領域Hのシールを維持することができる。
【0043】
その他、第5実施形態の気密端子1Dは、第4実施形態の気密端子1Cと同様の作用効果を奏する。
【0044】
<第6実施形態>
第6実施形態の気密端子1Eは、図7に示すように、基体11Eと、一対の電極12,12とを有している。基体11Eは、図7の領域Xの拡大図で示すようにその基端部に変形部11jを有している。変形部11jは、基体11Eの基端部から突出しており、例えば一対の電極12,12の周りを外囲するような環状に形成されている。変形部11jは、本実施形態においてその周方向に垂直な切断面で切断した断面が大略三角形状に形成されている。このように形成される変形部11jは、大径部分10aからその先端部を突き出させており、その先端部を変形させるように規制部材15が基体11Eを座面10cに押し付けている(図9の領域Yの拡大図に示す変形部11jの黒塗り部分参照)。これにより、基体11Eを座面10cにより強く押し付けることができ、シール性を更に向上させることができる。
【0045】
その他、第6実施形態の気密端子1Eは、第4実施形態の気密端子1Cと同様の作用効果を奏する。
【0046】
<実施例>
以下では、気密端子1,1A~1Eが適用される実施形態の一例、即ち図8に示すようなタンクバルブ装置2について説明する。なお、タンクバルブ装置2の構成については、前述する各実施形態の構成に対応する構成である場合、対応する構成と同一の符号を付し、その詳しい説明は省略する。
【0047】
タンクバルブ装置2は、圧力容器、例えば高圧タンク容器3に設けられ、その中に貯留されるガス、例えば水素及びLNG等のガスの排出等を制御する。タンクバルブ装置2は、電磁弁4及び減圧弁(図示せず)等の複数の弁によって構成されており、複数の弁を取り付けるべくバルブブロック2aを有している。バルブブロック2aは、その一部分を高圧タンク容器3の口部3aに差し込むように螺合されており、その差し込まれた部分(以下では、説明の便宜上「ケーシング」という)21に電磁弁4が取り付けられている。
【0048】
[電磁弁]
電磁弁4は、ケーシング21に形成される弁通路21aを開閉して高圧タンク容器3内のガスの排出を制御する。即ち、電磁弁4は、ケーシング21の他に、ガイド部材22と、主弁体23と、シートピストン24と、電磁駆動装置25とを備えており、それらがケーシング21の弁室21bにその軸線L1に並ぶように収容されている。ガイド部材22は、弁口21cを囲むように配置され、またガイド部材22には主弁体23が挿通されている。主弁体23は、その先端部を弁座21dに着座させて弁通路21aを閉じている。また、主弁体23にはパイロット通路23aが形成されており、それがシートピストン24によって開閉される。シートピストン24は、電磁駆動装置25によって駆動することができ、電磁駆動装置25は、以下のように構成されている。電磁駆動装置25は、プランジャ31、固定磁極32、及びソレノイド33を有している。プランジャ31の先端側には、シートピストン24が挿通され且つ係合している。また、プランジャ31の基端側には、固定磁極32が対向するように設けられており、それらを囲むようにソレノイド33が配置されている。
【0049】
このように構成される電磁弁4では、ソレノイド33が高圧タンク容器3外にある外部機器、例えば制御装置(図示せず)と電気的に接続され、制御装置からの駆動信号によって駆動する。それ故、ソレノイド33は、それと外部機器とを電気的に接続すべくソレノイド側コネクタ26を有している。ソレノイド側コネクタ26は、前述する高圧側コネクタ16に相当し、挿通孔16aに電極12の各々を嵌め合わして気密端子1を接続することができる。
【0050】
更に詳細に説明すると、ソレノイド側コネクタ26は、例えばソレノイド33のボビン33aに固定され、そこからガイド部材22の方に突き出ている。ガイド部材22は、前述する規制部材15に相当し、そこにはソレノイド側コネクタ26を挿入する取付孔部15aが形成されている。そして、取付孔部15aの基端側からソレノイド側コネクタ26が挿通されている。また、ケーシング21には、取付孔部15aに対応する位置に貫通孔部30が形成されている。
【0051】
貫通孔部30は、前述する孔部10に相当し、そこに気密端子1が嵌め込まれている。即ち、基体11の一端部11dが貫通孔部30から取付孔部15aへと突き出ており、基体11がガイド部材22とケーシング21とによって挟持されて貫通孔部30に固定される。また、基体11から突き出た電極12の一端部12aは、ソレノイド側コネクタ26の挿通孔16aに嵌め合わされる。これにより、ソレノイド33と気密端子1とが電気的に接続される。
【0052】
また、孔部10の小径部分10bには、低圧側コネクタ17に相当する機器側コネクタ27が挿入されている。機器側コネクタ27は、導線(図示せず)及び外部端子35を介して外部機器に接続されており、電極12の他端部12bを機器側コネクタ27の挿通孔17aに挿通させることによって、外部機器と気密端子1とを電気的に接続することができる。
【0053】
このように構成されるタンクバルブ装置2では、図9に示すように貫通孔部30の大径部分10aが高圧領域Hとなっている。即ち、大径部分10aは、種々の隙間等を介して弁室21bと繋がっており、高圧タンク容器3内と同圧となっている。他方、貫通孔部30の小径部分10bは、低圧領域Lとなっている。本実施形態では、小径部分10bは、高圧タンク容器3外と繋がっている。このような低圧領域Lと高圧領域Hとに繋がる貫通孔部30に前述するような気密端子1を取り付けることによって、高圧領域Hから低圧領域Lへのガスの流出を抑制し、低圧領域Lに対して高圧領域Hの気密を維持することができる。また、気密端子1に関して小型化及び軽量化を図ることができるので、タンクバルブ装置2の小型化及び軽量化を図ることができる。
【0054】
また、タンクバルブ装置2では、貫通孔部30は、弁通路21aに径方向に隣接するように形成されており、気密端子1及び各コネクタ16,17が軸線方向から見てソレノイド33の外縁より内側に位置させることができる。これにより、電磁弁4の外径を小さくすることができる。また、ソレノイド側コネクタ26及び気密端子1が主弁体23の半径方向外方に配置されているので、電磁弁4が軸線方向に長くなることを抑制できる。更に、ケーシング21に取り付けられた気密端子1をガイド部材22に挿入するだけで組み立てることができるので、電磁弁4の組み立てが容易である。
【0055】
<その他の実施形態>
第2実施形態の気密端子1Aでは、他端側部分の部分を覆う絶縁体18が基体11と別部材によって構成されているが、他端側部分の部分を覆うべく基体11において大径部11aより先端側の部分を長尺に形成してもよい。また、第3実施形態の気密端子1Bでは、基体11Bの先端面及び座面10cが平坦に形成されているが、それらがテーパ状に形成されてもよい。更に第1乃至第6実施形態の気密端子1,1A~1Eにおいて、それらに備わる電極12,12Aは2本であるが、2本に限定されず1本でもよく、また3本以上で当てもよい。何れの本数の場合であっても、基体11が合成樹脂によってのみ構成されるので、従来のような金属外環を有する気密端子より、電極同士の間隔を保ちつつ(即ち、電極同士の絶縁性を確保しつつ)小さい径にて気密端子1,1A~1Eを製造することができる。また、本実施形態のタンクバルブ装置2の電装品としてソレノイド33が例示されているが、電装品はソレノイド33に限定されず、センサ、電気モータ、及び圧電素子等であってもよく、信号又は電力を伝送可能なものであればよい。また、気密端子1Dの基体11Dに変形部11jが形成されるようにしてもよい。
【0056】
更に、当接面11b及び座面10cは、必ずしも両方がテーパ状である必要はない。即ち、何れか一方が部分球面状に形成されてもよい。そうすることによって、最縮径部10dから当接面11bを離すことができる。また、当接面11b及び座面10cの両方が部分球面状に形成されてもよい。この場合、例えば当接面11bの曲率半径を座面10cの曲率半径より大きくすることで、最縮径部10dから当接面11bを離すことができる。
【符号の説明】
【0057】
1,1A~1E 気密端子
2,2A~2E タンクバルブ装置
3 高圧タンク容器
10 孔部
10c 座面
10d 最縮径部
11,11B,11C,11E 基体
11a 大径部
11b シート面
11e パーティングライン
11h シート面
11j 変形部
11k 基部
12,12A 電極
13 シール部材
18 絶縁体
19 補強部材
20 ばね部材(付勢部材)
21 ケーシング
23 主弁体
25 電磁駆動装置
H 高圧領域
L 低圧領域
α テーパ角
β テーパ角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9