(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】バスバーおよび組電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/512 20210101AFI20250214BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20250214BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20250214BHJP
H01M 50/503 20210101ALI20250214BHJP
H01M 50/505 20210101ALI20250214BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20250214BHJP
H01R 4/58 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
H01M50/512
H01M50/204 401H
H01M50/209
H01M50/503
H01M50/505
H01M50/55 101
H01R4/58 C
(21)【出願番号】P 2020053128
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179578
【氏名又は名称】野村 和弘
(72)【発明者】
【氏名】吉川 孝哉
(72)【発明者】
【氏名】中村 佳浩
(72)【発明者】
【氏名】佐々 司光
(72)【発明者】
【氏名】間 寛幸
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-114540(JP,A)
【文献】国際公開第2019/049671(WO,A1)
【文献】再公表特許第2014/068947(JP,A1)
【文献】特開2013-084570(JP,A)
【文献】特開2009-245730(JP,A)
【文献】特開2019-021403(JP,A)
【文献】特開2017-016856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20
H01M 50/50
H01R 4/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一平面上に正極端子と負極端子とを有する角形の電池が、第一の方向に沿って複数配列されており、前記正極端子と前記負極端子とがそれぞれ千鳥配列された組電池において、複数の前記電池の同極の端子を互いに接続するバスバーであって、
複数の前記同極の端子にそれぞれ接続される複数の端子接続部と、
複数の前記端子接続部にそれぞれ連なり、前記第一の方向に延びて互いに平行に形成された一対の本体部と、
前記一対の本体部を互いに導通させる導通部と、
を備え、
前記バスバーは、熱容量を増大させる熱容量増大部をさらに備え、
前記熱容量増大部は、前記本体部又は前記端子接続部と同じ板厚であり、前記本体部又は前記端子接続部から延伸して形成されてい
る前記バスバーと、
前記複数の電池と、を備える組電池において、
前記バスバーは、複数の前記電池の前記正極端子を互いに接続し、
前記熱容量増大部は、第四熱容量増大部を有し、
前記第四熱容量増大部は、前記複数の端子接続部のうち前記バスバーの通電経路において最も下流側に位置する下流端子接続部の一部として形成され、
前記下流端子接続部の前記第一の方向に沿った寸法は、前記下流端子接続部が連なる前記本体部の短手方向に沿った寸法よりも大きいことを特徴とする、
組電池。
【請求項2】
請求項1に記載の
組電池において、
前記熱容量増大部は、前記バスバーの通電経路に垂直な断面における断面積が、前記バスバーのうち前記熱容量増大部を除く他の部分の前記断面における断面積よりも大きいことを特徴とする、
組電池。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の
組電池において、
前記熱容量増大部は、第一熱容量増大部を有し、
前記第一熱容量増大部は、前記導通部と並列に形成され、前記一対の本体部を互いに連結することを特徴とする、
組電池。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の
組電池において、
前記熱容量増大部は、第二熱容量増大部を有し、
前記第二熱容量増大部は、前記一対の本体部のうちの少なくとも一方の本体部の前記第一の方向の端部において、前記端部に最も近い前記端子接続部が前記本体部に連なる位置から前記第一の方向に延伸して形成されていることを特徴とする、
組電池。
【請求項5】
請求項4に記載の
組電池において、
前記熱容量増大部は、第三熱容量増大部をさらに有し、
前記第三熱容量増大部は、前記導通部と並列に形成され、前記一対の本体部のうちの他方の本体部と前記第二熱容量増大部とを互いに連結することを特徴とする、
組電池。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の
組電池において、
前記熱容量増大部は、前記熱容量増大部を除く他の部分と同一の材料により形成されていることを特徴とする、
組電池。
【請求項7】
同一平面上に正極端子と負極端子とを有する角形の電池が、第一の方向に沿って複数配列されており、前記正極端子と前記負極端子とがそれぞれ千鳥配列された組電池において、複数の前記電池の同極の端子を互いに接続するバスバーであって、
複数の前記同極の端子にそれぞれ接続される複数の端子接続部と、
複数の前記端子接続部にそれぞれ連なり、前記第一の方向に延びて互いに平行に形成された一対の本体部と、
前記一対の本体部を互いに導通させる導通部と、
を備え、
前記バスバーは、熱容量を増大させる熱容量増大部をさらに備え、
前記熱容量増大部は、前記本体部又は前記端子接続部と同じ板厚であり、前記本体部又は前記端子接続部から延伸して形成されている前記バスバーと、
前記複数の電池と、を備える組電池において、
前記バスバーは、複数の前記電池の前記負極端子を互いに接続し、
前記熱容量増大部は、第四熱容量増大部を有し、
前記第四熱容量増大部は、前記複数の端子接続部のうち前記バスバーの通電経路において最も上流側に位置する上流端子接続部の一部として形成され、
前記上流端子接続部の前記第一の方向に沿った寸法は、前記上流端子接続部が連なる前記本体部の短手方向に沿った寸法よりも大きいことを特徴とする、
組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組電池に用いられるバスバーおよび組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、二次電池の高出力化を図ることを目的として、複数の電池を並列または直列に接続した組電池が用いられている。特許文献1には、このような組電池において、複数の電池を並列に接続するバスバーの構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、バスバーは、自身が有する電気抵抗によって通電の際に発熱し温度が上昇する。電気自動車等の電源に用いられる組電池のように、大電流が流れるバスバーにおいては、発熱量が特に大きいので、バスバーの過度な温度上昇が懸念される。したがって、特許文献1の技術によれば、バスバー自身の劣化はもちろん、接続される電池の劣化や、ひいては電池からの発火等の事故を引き起こすおそれがある。このため、バスバーの温度上昇を抑制可能な技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することができる。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、バスバーが提供される。このバスバーは、同一平面上に正極端子と負極端子とを有する角形の電池が、第一の方向に沿って複数配列されており、前記正極端子と前記負極端子とがそれぞれ千鳥配列された組電池において、複数の前記電池の同極の端子を互いに接続するバスバーであって、複数の前記同極の端子にそれぞれ接続される複数の端子接続部と、複数の前記端子接続部にそれぞれ連なり、前記第一の方向に延びて互いに平行に形成された一対の本体部と、前記一対の本体部を互いに導通させる導通部と、を備え、前記バスバーは、熱容量を増大させる熱容量増大部をさらに備えることを特徴とする。この形態のバスバーは、熱容量を増大させる熱容量増大部をさらに備えるので、バスバーの熱容量が増大する。また、バスバーの表面積が増大することによって放熱性の向上も相乗的に作用する。これにより、熱容量増大部を備えない従来構成と比較して、同程度の電流を通電させた際の発熱量を低減させることができ、バスバーの温度上昇を緩やかにしたり、その最高温度を低下させたりすることができる。したがって、通電の際にバスバーの温度が過度に上昇することを抑制できる。
【0007】
(2)上記形態のバスバーにおいて、前記熱容量増大部は、前記バスバーの通電経路に垂直な断面における断面積が、前記バスバーのうち前記熱容量増大部を除く他の部分の前記断面における断面積よりも大きくてもよい。この形態のバスバーによれば、バスバーの通電経路に垂直な断面において、熱容量増大部の断面積が、バスバーのうち熱容量増大部を除く他の部分の断面積よりも大きいので、バスバーの熱容量が増大する。したがって、通電の際のバスバーの温度上昇を抑制できる。
【0008】
(3)上記形態のバスバーにおいて、前記熱容量増大部は、第一熱容量増大部を有し、前記第一熱容量増大部は、前記導通部と並列に形成され、前記一対の本体部を互いに連結してもよい。この形態のバスバーによれば、熱容量増大部が、導通部と並列に形成されて一対の本体部を互いに連結する第一熱容量増大部を有するので、バスバーの機械的強度を増大できる結果、バスバーの耐振動性を向上できる。
【0009】
(4)上記形態のバスバーにおいて、前記熱容量増大部は、第二熱容量増大部を有し、前記第二熱容量増大部は、前記一対の本体部のうちの少なくとも一方の本体部の前記第一の方向の端部において、前記端部に最も近い前記端子接続部が前記本体部に連なる位置から前記第一の方向に延伸して形成されていてもよい。この形態のバスバーによれば、熱容量増大部が、一対の本体部のうちの少なくとも一方の本体部の第一の方向の端部において第一の方向に延伸して形成された第二熱容量増大部を有するので、バスバーの熱容量が増大する。したがって、通電の際のバスバーの温度上昇を抑制できる。
【0010】
(5)上記形態のバスバーにおいて、前記熱容量増大部は、第三熱容量増大部をさらに有し、前記第三熱容量増大部は、前記導通部と並列に形成され、前記一対の本体部のうちの他方の本体部と前記第二熱容量増大部とを互いに連結してもよい。この形態のバスバーによれば、熱容量増大部が、導通部と並列に形成されて一対の本体部のうちの他方の本体部と第二熱容量増大部とを互いに連結する第三熱容量増大部をさらに有するので、熱容量をさらに増大できる。したがって、通電の際のバスバーの温度上昇をさらに抑制できる。
【0011】
(6)上記形態のバスバーにおいて、前記熱容量増大部は、前記熱容量増大部を除く他の部分と同一の材料により形成されていてもよい。この形態のバスバーによれば、熱容量増大部が、熱容量増大部を除く他の部分と同一の材料により形成されているので、バスバーの通電経路を増やすことができる結果、バスバーの電流密度を低下させることができる。したがって、通電の際のバスバーの温度上昇をより抑制できる。
【0012】
(7)本開示の他の形態によれば、組電池が提供される。この組電池は、上記形態のバスバーと、前記複数の電池と、を備えることを特徴とする。この形態の組電池によれば、熱容量を増大させる熱容量増大部を有するバスバーを備えるので、バスバーの熱容量が増大する。したがって、通電の際のバスバーの温度上昇を抑制できる。
【0013】
(8)上記形態の組電池において、前記バスバーは、複数の前記電池の前記正極端子を互いに接続し、前記熱容量増大部は、第四熱容量増大部を有し、前記第四熱容量増大部は、前記複数の端子接続部のうち前記バスバーの通電経路において最も下流側に位置する下流端子接続部の一部として形成され、前記下流端子接続部の前記第一の方向に沿った寸法は、前記下流端子接続部が連なる前記本体部の短手方向に沿った寸法よりも大きくてもよい。この形態の組電池によれば、複数の電池の正極端子を互いに接続するバスバーにおいて、第四熱容量増大部が、複数の端子接続部のうちバスバーの通電経路において最も下流側に位置する下流端子接続部の一部として形成されている。したがって、通電の際のバスバーの温度上昇を効果的に抑制できる。
【0014】
(9)上記形態の組電池において、前記バスバーは、複数の前記電池の前記負極端子を互いに接続し、前記熱容量増大部は、第四熱容量増大部を有し、前記第四熱容量増大部は、前記複数の端子接続部のうち前記バスバーの通電経路において最も上流側に位置する上流端子接続部の一部として形成され、前記上流端子接続部の前記第一の方向に沿った寸法は、前記上流端子接続部が連なる前記本体部の短手方向に沿った寸法よりも大きくてもよい。この形態の組電池によれば、複数の電池の負極端子を互いに接続するバスバーにおいて、第四熱容量増大部が、複数の端子接続部のうちバスバーの通電経路において最も上流側に位置する上流端子接続部の一部として形成されている。したがって、通電の際のバスバーの温度上昇を効果的に抑制できる。
【0015】
なお、本開示は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、組電池が搭載された二次電池装置、バスバーの製造方法、組電池の製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図7】第2実施形態のバスバーの詳細構成を示す斜視図。
【
図8】第3実施形態のバスバーの詳細構成を示す斜視図。
【
図9】第3実施形態のバスバーの詳細構成を示す上面図。
【
図10】第4実施形態のバスバーの詳細構成を示す斜視図。
【
図11】第4実施形態のバスバーの詳細構成を示す上面図。
【
図12】第5実施形態のバスバーの詳細構成を示す斜視図。
【
図13】第5実施形態のバスバーの詳細構成を示す上面図。
【
図14】最高温度のシミュレーションを示す説明図。
【
図15】試料1の温度分布のシミュレーションを示す説明図。
【
図16】試料2の温度分布のシミュレーションを示す説明図。
【
図17】試料3の温度分布のシミュレーションを示す説明図。
【
図18】試料4の温度分布のシミュレーションを示す説明図。
【
図19】試料2の電流密度分布のシミュレーションを示す説明図。
【
図20】下流端子接続部の周辺における電流密度分布のシミュレーションを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
A.第1実施形態:
図1は、本開示の一実施形態としてのバスバー20を備える組電池100の概略構成を示す斜視図である。
図2は、組電池100の概略構成を示す上面図である。組電池100は、後述するように複数並んでモジュール化され、図示しない二次電池装置の一部を構成している。本実施形態において、かかる二次電池装置は、図示しない電気自動車に搭載されているが、電気自動車に限らず、電気を動力源とする任意の移動体や定置型の電源として搭載されてもよい。組電池100は、複数の角形の電池10と、2つのバスバー20と、を備える。なお、
図1および
図2では、組電池100とともに、後述する2つの導電部材90を図示している。
【0018】
図3は、電池10の概略構成を示す斜視図である。本実施形態の電池10は、リチウムイオン電池を含んで構成されているが、リチウムイオン電池に限らず、ニッケル水素電池等、任意の種類の二次電池を含んで構成されていてもよい。電池10は、電池本体部12と、2つの負極端子14と、2つの正極端子16と、を有する。すなわち、本実施形態における電池10は、1つの負極端子14と1つの正極端子16とを有する単位電池を2つ連接させたものである。
【0019】
電池本体部12は、扁平な略直方体の外観形状を有する。負極端子14および正極端子16は、それぞれ電池本体部12の上面13において上方向に向かって突出して形成されている。つまり、負極端子14および正極端子16は、同一平面上に配置されている。負極端子14および正極端子16には、それぞれ図示しない雌ネジが形成されている。以降の説明では、電池本体部12の上面13に平行な平面において、電池10の短手方向を第一の方向D1とも呼び、電池10の長手方向、すなわち第一の方向D1と直交する方向を第二の方向D2とも呼ぶ。電池10を構成する2つの単位電池は、負極端子14および正極端子16の第二の方向D2における配列を入れ替えて連接されている。よって、電池10には、負極端子14と正極端子16とが第二の方向D2に沿って並んで形成されるとともに、負極端子14と正極端子16とが第一の方向D1に沿って並んで形成されている。電池本体部12の上面13には、さらに、第二の方向D2に沿って並んで形成された負極端子14と正極端子16との間に、測定用端子18がそれぞれ形成されている。各測定用端子18は、中間電位を測定する際に用いられる。
【0020】
図1および
図2に示すように、本実施形態の組電池100は、3つの電池10が第一の方向D1に沿って配列されており、負極端子14と正極端子16とがそれぞれ千鳥配列されている。このため、組電池100では、第一の方向D1に沿って負極端子14と正極端子16とが交互に並んでいる。千鳥配列について詳述すると、第二の方向D2の一端側(
図2の下方側)では、第一の方向D1の最も一端側(
図2の左側)に正極端子16が配置され、第一の方向D1の他端側(
図2の右側)に向かって正極端子16と負極端子14とが交互に配置されている。一方で、第二の方向D2の他端側(
図2の上方側)では、第一の方向D1の最も一端側(
図2の左側)に負極端子14が配置され、第一の方向D1の他端側(
図2の右側)に向かって正極端子16と負極端子14とが交互に配置されている。なお、組電池100が備える電池10の数は、3つに限らず2つや4つ等、任意の数であってもよい。組電池100は、第一の方向D1に沿って複数配列されることにより、モジュール化されている。なお、
図1および
図2では、図示の便宜上、1つの組電池100のみを示している。
【0021】
導電部材90は、第一の方向D1を長手方向とする平面視略長方形の板状の外観形状を有し、第一の方向D1に互いに隣り合う組電池100を電気的に直列に接続する。より具体的には、導電部材90は、或る組電池100の負極端子14と、かかる組電池100に隣り合う組電池100の正極端子16とを互いに接続する。導電部材90には、それぞれ板厚方向に貫通する2つの貫通孔92が第一の方向D1に沿って並んで形成されている。各貫通孔92は、後述するように、導電部材90と負極端子14および正極端子16との接続に用いられる。
【0022】
2つのバスバー20は、それぞれ、略板状の外観形状を有し、組電池100が備える3つの電池10を電気的に並列に接続する。2つのバスバー20のうちの一方は、複数の電池10の負極端子14同士を互いに接続し、2つのバスバー20のうちの他方は、複数の電池10の正極端子16同士を互いに接続する。すなわち、各バスバー20は、複数の電池10の同極の端子を互いに接続する。後述するように、各バスバー20は、複数の電池10の負極端子14または正極端子16の上に組付けられる。電池10の負極端子14を互いに接続するバスバー20(以下、負極用バスバー24とも呼ぶ)と、正極端子16を互いに接続するバスバー20(以下、正極用バスバー26とも呼ぶ)とは、同一の構成を有し、板厚方向に互いに反転した状態で互いに対向して組付けられる。以下の説明では、バスバー20が正極用バスバー26である場合について、代表して説明する。
【0023】
図4は、バスバー20の詳細構成を示す斜視図である。
図5は、バスバー20の詳細構成を示す上面図である。
図6は、
図5のA矢視図である。バスバー20は、複数の端子接続部40と、一対の本体部50と、導通部60と、熱容量増大部70と、を有する。
【0024】
複数の端子接続部40は、電池10の正極端子16にそれぞれ接続される。上述のように、本実施形態の組電池100が備える電池10の数が3であり、各電池10が正極端子16を2つずつ有するため、本実施形態のバスバー20は、端子接続部40を6つ有している。換言すると、本実施形態のバスバー20において、第一の方向D1に沿って並ぶ端子接続部40の数は3であり、バスバー20は3つの電池10を接続する。各端子接続部40は、第一の方向D1と第二の方向D2とに沿った平面、すなわち電池10の上面13と平行な面に沿って形成されている。
【0025】
一対の本体部50は、第一の方向D1に延びて互いに平行に形成されている。以下の説明では、一対の本体部50のうちの一方を、第一本体部51とも呼び、一対の本体部50のうちの他方を、第二本体部52とも呼ぶ。すなわち、第一本体部51と第二本体部52とは、第一の方向D1に沿って並ぶ3つの端子接続部40にそれぞれ連なっている。換言すると、第一本体部51と第二本体部52とは、それぞれ、第一の方向D1に沿って並ぶ3つの端子接続部40のうち、最も離れた端子接続部40同士を接続する直線状に形成されている。本実施形態において、第一本体部51および第二本体部52における第一の方向D1に沿った寸法は、互いに等しい。
【0026】
端子接続部40は、一対の本体部50のいずれか一方から、第二の方向D2に沿って一対の本体部50の他方から離れる方向へとそれぞれ突出して形成されている。より具体的には、第一本体部51に連なる3つの端子接続部40は、第二の方向D2に沿って第二本体部52から離れる方向へとそれぞれ突出して形成され、第二本体部52に連なる3つの端子接続部40は、第二の方向D2に沿って第一本体部51から離れる方向へとそれぞれ突出して形成されている。各端子接続部40には、板厚方向に貫通する貫通孔42が形成されている。各貫通孔42は、後述するように、バスバー20と正極端子16との接続に用いられる。以下の説明では、バスバー20が有する複数の端子接続部40のうち、正極用バスバー26としてのバスバー20の通電経路において最も下流側に位置する端子接続部40を、下流端子接続部44とも呼ぶ。
【0027】
負極用バスバー24においては、電流の流れる向きが逆になる。このため、負極用バスバー24では、正極用バスバー26において下流端子接続部44として機能していた端子接続部40が、バスバー20の通電経路において最も上流側に位置する上流端子接続部45として機能する。正極用バスバー26の下流端子接続部44と負極用バスバー24の上流端子接続部45とが、導電部材90によって互いに接続されることにより、第一の方向D1に隣り合う組電池100は、電気的に直列に接続される。
【0028】
以下の説明では、下流端子接続部44に対して点対称の位置にある端子接続部40を、対称端子接続部48とも呼ぶ。本実施形態において、「点対称の位置」とは、第一の方向D1および第二の方向D2に沿った平面において、バスバー20の重心を中心点とする点対称の位置を意味している。
【0029】
一対の本体部50は、端子接続部40の形成面と平行な面に沿って形成されている。一対の本体部50と各端子接続部40とは、屈折部46を介して連なっている。屈折部46は、第一の方向D1と第二の方向D2とにそれぞれ略直交する方向に沿って形成されている。本実施形態において、屈折部46の第一の方向D1に沿った寸法は、端子接続部40の第一の方向D1に沿った寸法と略等しい。
【0030】
導通部60は、一対の本体部50を互いに導通させる。導通部60は、一対の本体部50と同一平面上において、第二の方向D2に沿って形成されている。
【0031】
熱容量増大部70は、バスバー20の熱容量を増大させる機能を有する。本実施形態の熱容量増大部70は、一対の本体部50と同一平面上において、導通部60と並列に形成されて一対の本体部50を互いに連結している。また、本実施形態の熱容量増大部70は、導通部60と平行に形成されている。熱容量増大部70は、バスバー20の体積を増加させることによって熱容量を増大させることにより、通電の際のバスバー20の温度上昇を抑制する。また、熱容量増大部は、バスバー20の表面積を増加させることにより、通電の際のバスバー20の放熱を促進し、バスバー20の温度上昇を抑制する。ここで、一対の本体部50は、これらを接続する架橋部が少なくとも1つ存在すれば導通する。よって、架橋部が2つ以上存在する場合は、n本の架橋部のうち(nー1)本が熱容量増大部70に該当する。
【0032】
本実施形態のバスバー20および導電部材90は、銅板を材料として、打ち抜き加工と曲げ加工とによって成形されている。このため、熱容量増大部70は、バスバー20のうち熱容量増大部70を除く他の部分と同一の材料によって一体に成形されている。したがって、本実施形態の熱容量増大部70は、導通部60と同様に、一対の本体部50を互いに導通させる。このため、熱容量増大部70は、導通部としての機能を兼用する。したがって、熱容量増大部70は、バスバー20の通電経路を増加させるので、通電の際のバスバー20の一対の本体部50間を通る電流を分散し、導通部60および熱容量増大部70における電流密度を低下させる。本実施形態において、熱容量増大部70の第一の方向D1に沿った寸法は、導通部60の第一の方向D1に沿った寸法および本体部50の第二の方向D2に沿った寸法とそれぞれ略同じである。また、本実施形態のバスバー20は、略一定の厚みに形成されている。
【0033】
図1および
図2に示す負極用バスバー24と正極用バスバー26とは、上述のように同一の構成を有し、板厚方向に互いに反転した状態で互いに対向して組付けられる。負極用バスバー24の端子接続部40と、正極用バスバー26の端子接続部40とは、同一平面上に位置して組付けられる。このため、負極用バスバー24の本体部50は、端子接続部40よりも下方向に位置し、正極用バスバー26の本体部50は、端子接続部40よりも上方向に位置している。このような構成により、負極用バスバー24と正極用バスバー26とは、互いに接触せずに絶縁されている。また、上面視したときに、各本体部50の少なくとも一部が重ね合わされている。
【0034】
組電池100を組み立てる際には、3つの電池10が有する負極端子14の上に負極用バスバー24が載せられ、正極端子16の上に正極用バスバー26が載せられる。そして、正極用バスバー26の通電経路において最も下流側に位置する下流端子接続部44の上と、負極用バスバー24の通電経路において最も上流側に位置する上流端子接続部45の上とにまたがって、導電部材90が載せられる。このとき、各バスバー20と導電部材90とは、各バスバー20に形成された貫通孔42および導電部材90に形成された貫通孔92とが、それぞれ負極端子14および正極端子16に形成された雌ネジと対応する位置に載せられる。その後、図示しないボルトが貫通孔42、92に挿入され、かかるボルトの雄ネジと各端子14、16の雌ネジとが螺合されて締結されることにより、各バスバー20と導電部材90とが各端子14、16に固定されて電気的に接続される。なお、各バスバー20と導電部材90とは、ボルトによる締結に限らず、溶接等の任意の方法によって各端子14、16と電気的に接続されてもよい。
【0035】
本実施形態では、上下方向から見て、負極用バスバー24の導通部60と正極用バスバー26の熱容量増大部70とが互いに重ね合わされ、負極用バスバー24の熱容量増大部70と正極用バスバー26の導通部60とが互いに重ね合わされて組付けられている。各導通部60と各熱容量増大部70とはいずれも、第一の方向D1において、第一の方向D1に沿って互いに隣り合う負極端子14と正極端子16との間に位置している。なお、各導通部60と各熱容量増大部70とは、第一の方向D1において、第一の方向D1に沿って互いに隣り合う負極端子14と正極端子16との間に位置していなくてもよい。また、各本体部50は、第二の方向D2において、各電池10に形成された端子14、16と測定用端子18との間に位置している。
【0036】
本実施形態において、熱容量増大部70は、本開示における熱容量増大部および第一熱容量増大部に相当する。
【0037】
以上説明した第1実施形態のバスバー20によれば、熱容量を増大させる熱容量増大部70を備えるので、バスバー20の熱容量が増大する。また、バスバー20の表面積が増大することによって放熱性の向上も相乗的に作用する。これにより、熱容量増大部70を備えない従来構成と比較して、同程度の電流を通電させた際の発熱量を低減させることができ、バスバー20の温度上昇を緩やかにしたり、その最高温度を低下させたりすることができる。したがって、通電の際にバスバー20の温度が上昇することを抑制できる。ひいては、バスバー20の温度上昇に起因するバスバー20や電池10の劣化を抑制できる。
【0038】
また、熱容量増大部70は、導通部60と並列に形成されて一対の本体部50を互いに連結しているので、バスバー20の機械的強度を増大できる結果、耐振動性を向上できる。
【0039】
また、熱容量増大部70は、導電性材料により形成されて一対の本体部50を互いに連結しているので、バスバー20の通電経路を増やすことができる結果、バスバー20の電流密度を低下させることができる。このため、通電の際の温度上昇をより抑制できる。
【0040】
また、一対の本体部50と各端子接続部40とは、第二の方向D2と第一の方向D1とにそれぞれ略直交する方向に沿って形成された屈折部46を介して連なっている。このため、負極用バスバー24と正極用バスバー26とが板厚方向に反転させて電池10に組付けられた際に、負極用バスバー24と正極用バスバー26とが互いに接触することを抑制できるので、短絡の発生を抑制できる。
【0041】
また、一対の本体部50は、それぞれ3つの端子接続部40に連なっている。すなわち、バスバー20には第一の方向D1に沿って3つの端子接続部40が並んで形成されており、バスバー20は3つの電池10を並列接続する。このため、本実施形態のバスバー20は、2つの電池10を並列接続するバスバー、すなわち一対の本体部50がそれぞれ2つの端子接続部40に連なっている構成と比較して、大電流が流れて温度上昇しやすい傾向にある。しかしながら、本実施形態のバスバー20によれば、熱容量増大部70を備えるので、通電の際の電気抵抗によってバスバー20の温度が過度に上昇することを抑制できる。
【0042】
B.第2実施形態:
図7は、第2実施形態のバスバー20aの詳細構成を示す斜視図である。第2実施形態のバスバー20aは、熱容量増大部70に代えて、熱容量増大部70aを有する点において、第1実施形態のバスバー20と異なる。その他の構成は第1実施形態のバスバー20と同じであるので、同一の構成には同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。
【0043】
熱容量増大部70aは、第1実施形態の熱容量増大部70と比較して、厚肉に形成されている。このため、バスバー20aの通電経路に垂直な断面において、より具体的には、熱容量増大部70aの延伸方向に垂直な断面において、熱容量増大部70aの断面積は、導通部60の断面積および本体部50の断面積よりも大きい。すなわち、熱容量増大部70aは、バスバー20aの通電経路に垂直な断面における断面積が、バスバー20aのうち熱容量増大部70aを除く他の部分の断面積よりも大きい。なお、熱容量増大部70aは、第1実施形態の熱容量増大部70aと比較して、厚肉に形成されることに代えて、または厚肉に形成されることに加えて、第一の方向D1に沿った寸法が大きく形成されていてもよい。
【0044】
以上説明した第2実施形態のバスバー20aによれば、第1実施形態と同様な効果を奏する。加えて、熱容量増大部70aは、バスバー20aの通電経路に垂直な断面における断面積が、バスバー20aのうち熱容量増大部70aを除く他の部分の断面積よりも大きいので、熱容量をさらに増大させることができる結果、通電の際のバスバー20aの温度上昇をさらに抑制できる。
【0045】
C.第3実施形態:
図8は、第3実施形態のバスバー20bの詳細構成を示す斜視図である。
図9は、第3実施形態のバスバー20bの詳細構成を示す上面図である。第3実施形態のバスバー20bは、熱容量増大部70に加えて、2つの熱容量増大部70bをさらに有する点において、第1実施形態のバスバー20と異なる。その他の構成は第1実施形態のバスバー20と同じであるので、同一の構成には同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。なお、以下の説明では、第1実施形態の熱容量増大部70を、第一熱容量増大部71とも呼ぶ。説明の便宜上、本実施形態のバスバー20bは、正極用バスバー26とする。しかしながら、負極用バスバー24とすることも当然可能である。負極用バスバー24とする場合は、電流の流れる向きが逆になるので、下流端子接続部44は上流端子接続部45として機能する。
【0046】
2つの熱容量増大部70bは、バスバー20bにおいて、第一の方向D1の両端部にそれぞれ形成されている。各熱容量増大部70bは、第二熱容量増大部72bと、第三熱容量増大部73bとをそれぞれ有する。
【0047】
第二熱容量増大部72bは、それぞれ、一対の本体部50の第一の方向D1の端部において、かかる端部に最も近い端子接続部40が本体部50に連なる位置から第一の方向D1に延伸して形成されている。第一本体部51に連なる第二熱容量増大部72bは、第一の方向D1において、第二本体部52の端部の位置まで延伸して形成されている。第二本体部52に連なる第二熱容量増大部72bは、第一の方向D1において、第一本体部51の端部の位置まで延伸して形成されている。このため、第二の方向D2から見て、第一本体部51と、第二本体部52に連なる第二熱容量増大部72bとは、互いに重なっており、第二本体部52と、第一本体部51に連なる第二熱容量増大部72bとは、互いに重なっている。本実施形態において、第一本体部51に連なる第二熱容量増大部72bと第二本体部52に連なる第二熱容量増大部72bとにおける第一の方向D1に沿った寸法は、互いに等しい。
【0048】
第三熱容量増大部73bは、一対の本体部50の第一の方向D1の端部のうち、第二熱容量増大部72bが形成されている側とは反対側の端部において、それぞれ、導通部60と並列に形成されている。第三熱容量増大部73bのうちの一方は、第一本体部51と、第二本体部52に連なる第二熱容量増大部72bの端部とを連結し、第三熱容量増大部73bのうちの他方は、第二本体部52と、第一本体部51に連なる第二熱容量増大部72bの端部とを連結している。すなわち、第三熱容量増大部73bは、一対の本体部50のうちの一方に形成された第二熱容量増大部72bと、一対の本体部50のうちの他方の本体部50とを互いに連結している。本実施形態において、第二熱容量増大部72bと第三熱容量増大部73bとは、R形状を介して互いに連結されている。
【0049】
本実施形態において、正極用バスバー26としてのバスバー20bの通電経路において最も下流側に位置する下流端子接続部44と、第三熱容量増大部73bとは、第一の方向D1において、互いに重なっている。すなわち、下流端子接続部44と第三熱容量増大部73bとは、第二の方向D2に沿って同一直線上に形成されている。
【0050】
本実施形態において、本体部50の第二の方向D2に沿った寸法L1と、導通部60の第一の方向D1に沿った寸法L2と、第一熱容量増大部71の第一の方向D1に沿った寸法L3と、第二熱容量増大部72bの第二の方向D2に沿った寸法L4と、第三熱容量増大部73bの第一の方向D1に沿った寸法L5とは、いずれも略同じである。また、本実施形態の熱容量増大部70bは、導電性材料により形成されているので、導通部としての機能を兼用する。
【0051】
本実施形態において、バスバー20bは点対称な形状である。バスバー20bにおいて、下流端子接続部44に接続する第三熱容量部73bおよび第二熱容量部72bと、対称端子接続部48に接続する第三熱容量部73bおよび第二熱容量部72bとは、点対称の位置にある。なお、本実施形態において、「点対称の位置」とは、第一の方向D1および第二の方向D2に沿った平面において、バスバー20bの重心を中心点とする点対称の位置を意味している。
【0052】
以上説明した第3実施形態のバスバー20bによれば、第1実施形態と同様な効果を奏する。加えて、第二熱容量増大部72bおよび第三熱容量増大部73bを有する熱容量増大部70bを備えるので、熱容量をさらに増大させることができる。したがって、通電の際のバスバー20bの温度上昇をさらに抑制できる。
【0053】
また、第二熱容量増大部72bおよび第三熱容量増大部73bは、いずれも導電性材料により形成されているので、導通部としての機能を兼用する。このため、バスバー20bの通電経路をさらに増やすことができるので、バスバー20bの電流密度をさらに減少させることができる。したがって、通電の際のバスバー20bの温度上昇をさらに抑制できる。
【0054】
また、下流端子接続部44と第三熱容量増大部73bとは、第二の方向D2に沿って同一直線上に形成されている。このため、本体部50と第三熱容量増大部73bとが第一の方向D1において下流端子接続部44から離間した位置で接続する構成に比べて、本体部50を通って下流端子接続部44へと流れ込む電流と、第三熱容量増大部73bを通って下流端子接続部44へと流れ込む電流との、足し合わされた電流が流れる距離を短くできる。このように、大電流が流れる距離を短くできるので、通電の際の発熱量を抑制できる。
【0055】
また、下流端子接続部44、下流端子接続部44に接続する第三熱容量部73bおよび第二熱容量部72bと、対称端子接続部48、対称端子接続部48に接続する第三熱容量部73bおよび第二熱容量部72bとは、点対称の位置にある。ここで、負極用バスバー24と正極用バスバー26とは、板厚方向に反転させて使用される。このため、バスバー20bは、表裏の向きを反転させるだけで負極用バスバー24とすることができる。負極用バスバー24において、下流端子接続部44は、バスバー20bの通電経路において最も上流側に位置する上流端子接続部45として機能する。したがって、負極用バスバー24と正極用バスバー26とを同一の構成としつつ、負極用バスバー24においては、バスバー20bの通電経路の上流側において大電流が流れる距離を短くでき、正極用バスバー26においては、バスバー20bの通電経路の下流側において大電流が流れる距離を短くできる。
【0056】
D.第4実施形態:
図10は、第4実施形態のバスバー20cの詳細構成を示す斜視図である。
図11は、第4実施形態のバスバー20cの詳細構成を示す上面図である。第4実施形態のバスバー20cは、第四熱容量増大部74cをさらに有する点において、第3実施形態のバスバー20bと異なる。その他の構成は第3実施形態のバスバー20bと同じであるので、同一の構成には同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。説明の便宜上、本実施形態のバスバー20cは、正極用バスバー26とする。しかしながら、負極用バスバー24とすることも当然可能である。負極用バスバー24とする場合は、電流の流れる向きが逆になるので、下流端子接続部44は上流端子接続部45として機能する。
【0057】
第四熱容量増大部74cは、複数の端子接続部40のうち、バスバー20cの通電経路において最も下流側に位置する下流端子接続部44と、かかる下流端子接続部44に対して点対称の位置にある対称端子接続部48とにおいて、下流端子接続部44の一部として、または対称端子接続部48の一部としてそれぞれ形成されている。これにより、下流端子接続部44の第一の方向D1に沿った長さは、下流端子接続部44が連なる本体部50の短手方向の長さよりも長い。さらに、対称端子接続部48の第一の方向D1に沿った長さは、対称端子接続部48が連なる本体部50の短手方向の長さよりも長い。なお、本実施形態において、「点対称の位置」とは、第一の方向D1および第二の方向D2に沿った平面において、バスバー20cの重心を中心点とする点対称の位置を意味している。また、
図10および
図11では、説明の便宜上、第四熱容量増大部74cの形成位置をハッチングで示している。
【0058】
正極用バスバー26において、通電の際にバスバー20cを流れる電流は、各端子接続部40から一対の本体部50および導通部60を介して下流端子接続部44へと流れ込む。本実施形態において、かかる電流は、導通部60に加えて、第一熱容量増大部71、第二熱容量増大部72bおよび第三熱容量増大部73bを介して、下流端子接続部44へと流れ込む。このため、正極用バスバー26としてのバスバー20cは、通電の際に下流側に向かうにつれて温度が上昇しやすく、下流端子接続部44において最も温度が上昇しやすい傾向にある。しかしながら、本実施形態のバスバー20cは、熱容量を増大させる第四熱容量増大部74cが下流端子接続部44の一部として形成されているので、バスバー20cの温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0059】
第四熱容量増大部74cは、下流端子接続部44および対称端子接続部48において、いずれも第一の方向D1に隣り合う端子接続部40に近づく側に形成されている。第四熱容量増大部74cが形成されていることにより、下流端子接続部44および対称端子接続部48の第一の方向D1に沿った寸法は、いずれも、下流端子接続部44および対称端子接続部48を除く他の端子接続部40の第一の方向D1に沿った寸法よりも大きい。また、下流端子接続部44および対称端子接続部48の第一の方向D1に沿った寸法は、いずれも本体部50の第二の方向D2(短手方向)に沿った寸法よりも大きい。
【0060】
本実施形態のバスバー20cを備える組電池100には、組電池100を直列接続するための導電部材90に代えて、
図11において破線で示すように、第一の方向D1において第四熱容量増大部74cを含む下流端子接続部44の全体を覆う導電部材90cが接続されてもよい。導電部材90cは、第1実施形態の組電池100に接続される導電部材90と比較して、第一の方向D1に沿った寸法が大きい。第一の方向D1において第四熱容量増大部74cを含む下流端子接続部44の全体を覆う導電部材90cが接続されることにより、下流端子接続部44と導電部材90cとの接触面積をより増大させることができる。このため、バスバー20cの電流をより分散させることができるので、バスバー20cの温度上昇をより抑制できる。
【0061】
以上説明した第4実施形態のバスバー20cによれば、第3実施形態と同様な効果を奏する。加えて、熱容量を増大させる第四熱容量増大部74cが、複数の端子接続部40のうちバスバー20cの通電経路において最も下流側に位置する下流端子接続部44に形成されているので、バスバー20cの温度上昇を効果的に抑制できる。
【0062】
また、第四熱容量増大部74cは、下流端子接続部44と、下流端子接続部44に対して点対称の位置にある対称端子接続部48とにそれぞれ形成されている。ここで、負極用バスバー24と正極用バスバー26とは板厚方向に反転させて使用される。このため、バスバー20cは、表裏の向きを反転させるだけで負極用バスバー24とすることができる。負極用バスバー24において、下流端子接続部44は、バスバー20cの通電経路において最も上流側に位置する上流端子接続部45として機能する。したがって、負極用バスバー24と正極用バスバー26とを同一の構成としつつ、負極用バスバー24においてはバスバー20cの通電経路において最も上流側に第四熱容量増大部74cを位置させることができ、正極用バスバー26においては、バスバー20cの通電経路において最も下流側に第四熱容量増大部74cを位置させることができる。換言すると、バスバー20cの通電経路において最も上流側と最も下流側とに第四熱容量増大部74cが形成されたバスバー20cを、負極用バスバー24と正極用バスバー26として兼用して使用できる。
【0063】
また、第一の方向D1において第四熱容量増大部74cを含む下流端子接続部44の全体を覆う導電部材90cが接続される態様によれば、バスバー20cの電流をより分散させることができるので、バスバー20cの温度上昇をより抑制できる。
【0064】
E.第5実施形態:
図12は、第5実施形態のバスバー20dの詳細構成を示す斜視図である。
図13は、第5実施形態のバスバー20dの詳細構成を示す上面図である。第5実施形態のバスバー20dは、2つの熱容量増大部70bに代えて、2つの熱容量増大部70dを有する点において、第3実施形態のバスバー20bと異なる。その他の構成は第3実施形態のバスバー20bと同じであるので、同一の構成には同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。また、バスバー20dが正極用バスバー26である場合について、代表して説明する。
【0065】
2つの熱容量増大部70dは、第二熱容量増大部72dと、第三熱容量増大部73dとをそれぞれ有する。
【0066】
第二熱容量増大部72dは、それぞれ、一対の本体部50の第一の方向D1の端部において、第一の方向D1に延伸して形成されている。第5実施形態における第二熱容量増大部72dの第一の方向D1に沿った寸法は、第3実施形態における第二熱容量増大部72bの第一の方向D1に沿った寸法よりも小さい。
【0067】
第三熱容量増大部73dは、一対の本体部50の第一の方向D1の端部のうち、第二熱容量増大部72dが形成されている側とは反対側の端部の近傍において、それぞれ、導通部60と並列に形成されている。第三熱容量増大部73dのうちの一方は、第一本体部51と、第二本体部52に連なる第二熱容量増大部72dの端部とを連結し、第三熱容量増大部73dのうちの他方は、第二本体部52と、第一本体部51に連なる第二熱容量増大部72dの端部とを連結している。本実施形態において、第二熱容量増大部72dと第三熱容量増大部73dとは、R形状を介して互いに連結されている。
【0068】
本実施形態において、正極用バスバー26としてのバスバー20dの通電経路において最も下流側に位置する下流端子接続部44と、第三熱容量増大部73dとは、第二の方向D2から見て一部において互いに重なっている。
【0069】
以上説明した第5実施形態のバスバー20dによれば、第3実施形態と同様な効果を奏する。加えて、第二熱容量増大部72dの第一の方向D1に沿った寸法が比較的小さく形成されているので、バスバー20dの通電経路が過度に長くなることを抑制できる結果、バスバー20dの温度上昇をさらに抑制できる。
【0070】
F.実験:
F-1.実験1
第1、3~5実施形態のバスバー20、20b~20dについて、最高温度および温度分布のシミュレーション実験を行なった。シミュレーションは、バスバー20、20b~20dを組付けた組電池100に対し、20℃の無風状態の大気下の環境において、各電池10から出力される電流の総計が200[A]となる境界条件の下で行なった。なお、最高温度とは、バスバー20、20b~20dのそれぞれにおいて、電流を流していない状態を基準とした温度変化の最高値を意味している。また、シミュレーションに用いたバスバー20、20b~20dは、いずれも正極用バスバー26である。
【0071】
<試料>
試料1:第1実施形態のバスバー20
試料2:第3実施形態のバスバー20b
試料3、5:第4実施形態のバスバー20c
試料4:第5実施形態のバスバー20d
【0072】
試料5は、導電部材90に代えて、導電部材90cを組み付けた試料である。なお、試料1~4では、いずれも第1実施形態と同様の導電部材90が組付けられている。
【0073】
<最高温度のシミュレーション結果>
図14は、最高温度のシミュレーションを示す説明図である。
図14において、縦軸は、電流を流していない状態を基準とした温度変化(ΔT(℃))を示している。
図14では、試料2~5において、放熱向上に起因して抑制された分の温度と、発熱抑制に起因して抑制された分の温度とを、それぞれ試料1を基準として示している。なお、試料の放熱性は、試料の表面積と相関がある。
【0074】
例えば試料1と試料2とを比較すると、試料1は20.2℃の温度変化が見積もられたが、試料2は11.3℃の温度変化が見積もられた。試料1と比較して、試料2は表面積が増えることによる放熱性の向上により4.0℃の温度変化が抑制され、発熱量の抑制により4.9℃の温度変化が抑制された。このように、試料2は、試料1と比較して温度上昇がより抑制されている。同様に、試料3~5も、試料1と比較して温度上昇がより抑制されている。この理由としては、試料2~5が、試料1が有する熱容量増大部70(第一熱容量増大部70)に加えて他の熱容量増大部70b~70dをさらに有することが挙げられる。また、第四熱容量増大部74cを有する試料3、5は、第四熱容量増大部74cを有さない試料2、4と比較して、温度上昇がさらに抑制されている。この理由としては、通電の際に最も温度が上昇しやすい下流端子接続部44に第四熱容量増大部74cが形成されていることが挙げられる。また、試料3と試料5との比較から、下流端子接続部44と導電部材90cとの接触面積を増大させることにより、温度上昇をより抑制できることがわかる。
【0075】
<温度分布のシミュレーション結果>
図15~
図18は、それぞれ試料1~4の温度分布のシミュレーションを示す説明図である。
図15~
図18では、温度の違いをハッチングで示している。
図15~
図18に示す結果から、いずれの試料においても、通電経路の下流側に向かうにつれて温度が上昇する傾向にあることがわかる。また、試料2~4では、いずれも試料1と比較して温度上昇が抑制されている。
【0076】
F-2.実験2
実験1と同様の試料2、3、5について、電流密度分布のシミュレーション実験を行なった。シミュレーションは、バスバー20b、20cを組付けた組電池100に対し、20℃の無風状態の大気下の環境において、各電池10から出力される電流の総計が200[A]となる境界条件の下で行なった。
【0077】
<電流密度分布のシミュレーション結果>
図19は、試料2の電流密度分布のシミュレーションを示す説明図である。
図19では、電流密度の違いをハッチングで示している。
図19では、試料2を表裏の2方向から見たときの電流密度をそれぞれ示している。
図19において、表側から見たバスバー20bとは、
図1に示す組電池100を上方側から見たバスバー20bを示しており、裏側から見たバスバー20bとは、
図1に示す組電池100の電池10側から見たバスバー20bを示している。
図19に示す結果から、通電経路の下流側に向かうにつれて本体部50の電流密度が増大する傾向にあることがわかる。また、本体部50と下流端子接続部44とを接続する屈折部46の周辺において、電流密度が特に増大する傾向にあることがわかる。
【0078】
図20は、下流端子接続部44の周辺における電流密度分布のシミュレーションを示す説明図である。
図20では、電流密度の違いをハッチングで示している。
図20では、試料2、3、5に対するシミュレーションにおいて、下流端子接続部44の周辺を拡大して示している。試料3、5は、試料2と比較して、下流端子接続部44に第四熱容量増大部74cが形成されている。このため、試料3、5では、本体部50を通って下流端子接続部44または第四熱容量増大部74cへと流れ込む電流と、第三熱容量増大部73bを通って下流端子接続部44または第四熱容量増大部74cへと流れ込む電流とが足し合わされることが抑制されている。また、試料3、5では、電流が足し合わされた場合においても、かかる電流が流れる距離が短いため、電流密度の増加が抑制されている。また、試料5は、試料3と比較して、第四熱容量増大部74cの電流密度が減少している。この理由としては、第四熱容量増大部74cと導電部材90cとの接触面積がより大きいので、バスバー20cの電流をより分散できることが挙げられる。
【0079】
G.他の実施形態:
G-1.他の実施形態1:
上記実施形態において、導電部材90、90cおよびバスバー20、20a~20dは、銅により形成されていたが、銅に限らず、アルミニウムや銀等の任意の導電材料により形成されていてもよい。また、熱容量増大部70、70a~70dは、バスバー20、20a~20dのうち熱容量増大部70、70a~70dを除く他の部分と同一の材料により形成されていてもよく、異なる導電材料により形成されていてもよく、非導電材料により形成されていてもよい。例えば、バスバー20、20a~20dのうち熱容量増大部70、70a~70dを除く他の部分が銅により形成されて、熱容量増大部70、70a~70dがアルミニウムや、セラミック、樹脂等により形成されていてもよい。かかる構成によっても、バスバー20、20a~20dの熱容量を増大させることができるので、通電の際のバスバー20、20a~20dの温度上昇を抑制できる。
【0080】
G-2.他の実施形態2:
上記各実施形態におけるバスバー20、20a~20dの構成は、あくまで一例であり、種々変更可能である。例えば、第2実施形態のバスバー20aにおいて、熱容量増大部70aが導通部としての機能を兼用することにより、導通部60が省略される態様であってもよい。すなわち、一対の本体部50を接続する架橋部が1つであったとしても、架橋部が、一対の本体部50を構成する第一本体部51や第二本体部52よりも大きな断面積を有していれば、架橋部が熱量量増大部70aに相当する。かかる態様において、熱容量増大部70aは、本開示における熱容量増大部および導通部に相当する。また、例えば、第4実施形態のバスバー20cにおいて、対称端子接続部48に形成されていた第四熱容量増大部74cが省略されていてもよい。また、例えば、第3、5実施形態のバスバー20b、20dにおいて、2つの熱容量増大部70b、70dのうちのいずれか一方が省略されていてもよく、第三熱容量増大部73b、73dが省略されていてもよい。すなわち一般には、第二熱容量増大部72dは、一対の本体部50のうちの少なくとも一方の本体部50の第一の方向D1の端部において、第一の方向D1に延伸して形成されていてもよい。また、例えば、第5実施形態のバスバー20dに、第4実施形態と同様な第四熱容量増大部74cがさらに形成されていてもよい。このような構成によっても、上記各実施形態と同様な効果を奏する。
【0081】
G-3.他の実施形態3:
上記実施形態において、バスバー20、20a、20dは、バスバー20b、20c、と同様に点対称な形状であることが好ましい。バスバー20、20a~20dは、点対称な形状であることにより、反転させるだけで正極用バスバー26としても負極用バスバー24としても使用できる。また、バスバー20、20a~20dは、点対称な形状でなくてもよく、端子接続部40が偶数個形成され、対となる端子接続部40同士が点対称の位置に配置されていてもよい。
【0082】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0083】
10…電池、12…電池本体部、13…上面、14…負極端子、16…正極端子、18…測定用端子、20、20a~20d…バスバー、24…負極用バスバー、26…正極用バスバー、40…端子接続部、42…貫通孔、44…下流端子接続部、45…上流端子接続部、46…屈折部、48…対称端子接続部、50…本体部、51…第一本体部、52…第二本体部、60…導通部、70、70a、70b、70d…熱容量増大部、71…第一熱容量増大部、72b、72d…第二熱容量増大部、73b、73d…第三熱容量増大部、74c…第四熱容量増大部、90、90c…導電部材、92…貫通孔、100…組電池、D1…第一の方向、D2…第二の方向、L1~L5…寸法