(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】産業用ロボットの制御装置
(51)【国際特許分類】
B25J 19/06 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
B25J19/06
(21)【出願番号】P 2020186501
(22)【出願日】2020-11-09
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】向井 公久
【審査官】國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-113274(JP,A)
【文献】特開平10-071592(JP,A)
【文献】特開2004-109056(JP,A)
【文献】特開2001-282301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
H02P 1/00 - 31/00
H02H 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源に直列接続された複数種類の安全装置と接続可能に構成された産業用ロボットの制御装置であって、
前記安全装置は、配線路の電気的な遮断と、前記遮断からの復帰とを手動で切替可能なものであり、
前記複数種類の安全装置の各々の出力側端子に接続され、前記電源からの電力供給を受けている第一状態と前記電源からの電力供給が停止されている第二状態のどちらであるかを検出する検出回路と、
前記検出回路の出力に基づいて通知を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、複数の前記検出回路が前記第二状態を示す検出結果を出力している場合には、当該複数の検出回路の各々が前記出力側端子に接続された前記安全装置の各々の確認を促す通知を
一度に行う産業用ロボットの制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の産業用ロボットの制御装置であって、
前記制御部は、前記電源から最も遠い位置に配置された1つの前記検出回路のみが前記第二状態を示す検出結果を出力している場合には、当該検出回路が前記出力側端子に接続された前記安全装置の確認を促す通知を行う産業用ロボットの制御装置。
産業用ロボットの制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の産業用ロボットの制御装置であって、
前記複数種類の安全装置は、前記産業用ロボットを囲う安全柵に設けられる第一安全装置と、前記安全柵及び教示操作端末とは異なる場所に設けられる第二安全装置と、を含み、
前記第二安全装置は、前記第一安全装置よりも前記電源側に配置される産業用ロボットの制御装置。
【請求項4】
請求項3記載の産業用ロボットの制御装置であって、
前記複数種類の安全装置は、教示操作端末に設けられる第三安全装置を更に含み、
前記第三安全装置は、前記第二安全装置よりも前記電源側に配置される産業用ロボットの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、その作動によりロボットを停止させるための安全装置を複数備える産業用ロボットが記載されている。この産業用ロボットは、前記安全装置を直列接続し、前記複数の安全装置の内ある安全装置が作動したことを周辺機器に出力するか否かを、前記周辺機器に出力を行うためのリレー接点を動作させるためのリレーコイルの一端を前記複数の安全装置の接続点の何れかに自在に接続することで選択可能としている。前記リレーコイルの一端を接続した接続点の一方側にあるいずれかの安全装置が作動した場合には作動したことを前記周辺機器に出力し、前記接続点の他方側にあるいずれかの安全装置が作動した場合には作動したことを前記周辺機器に出力しないようにしている。
【0003】
特許文献2には、ロボットを制御するロボット制御装置が記載されている。このロボット制御装置は、ロボットの各々の関節軸を駆動するモータの負荷を検出する負荷検出部と、ロボットの各々の関節軸における軸速度を検出する速度検出部と、ロボットが非常停止したときに、当該非常停止の発生原因を特定する停止原因特定部と、非常停止の発生原因とモータの負荷または軸速度とを互いに関連付けて記録する記録部と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-001012号公報
【文献】特開2017-100200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の産業用ロボットは、安全装置の作動を検出するためのリレーコイルの接続先を必要に応じて変更することができる。しかし、リレーコイルの接続先の変更が頻繁に発生することになり、生産現場での作業効率の低下につながる。特許文献2は、ロボットの内部における非常停止の発生原因を特定するものであり、ロボットに接続される安全装置の作動状態を検出するものではない。
【0006】
本発明の目的は、産業用ロボットを停止させるための安全装置のうちのどの安全装置が作動しているのかを効率的に確認可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)
電源に直列接続された複数種類の安全装置と接続可能に構成された産業用ロボットの制御装置であって、
前記安全装置は、配線路の電気的な遮断と、前記遮断からの復帰とを手動で切替可能なものであり、
前記複数種類の安全装置の各々の出力側端子に接続され、前記電源からの電力供給を受けている第一状態と前記電源からの電力供給が停止されている第二状態のどちらであるかを検出する検出回路と、
前記検出回路の出力に基づいて通知を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、複数の前記検出回路が前記第二状態を示す検出結果を出力している場合には、当該複数の検出回路の各々が前記出力側端子に接続された前記安全装置の各々の確認を促す通知を一度に行う産業用ロボットの制御装置。
【0008】
(1)によれば、安全装置毎に検出回路が設けられるため、検出回路の出力に基づいて、どの安全装置の作動状態を優先的に確認すべきかを判断することが可能になる。このような判断にしたがってユーザに通知を行うことで、ロボットの動作復帰までの作業を効率的に行うことができる。
また、例えば3つある検出回路のうちの2つの検出回路の出力のみが第二状態を示す場合には、この2つの検出回路が出力側端子に接続された安全装置の確認を促す通知のみが行われる。このため、この3つの検出回路に対応する全ての安全装置の確認をユーザが行う必要はなく、安全確認等の作業効率を高めることができる。
【0009】
(2)
(1)記載の産業用ロボットの制御装置であって、
前記制御部は、前記電源から最も遠い位置に配置された1つの前記検出回路のみが前記第二状態を示す検出結果を出力している場合には、当該検出回路が前記出力側端子に接続された前記安全装置の確認を促す通知を行う産業用ロボットの制御装置。
【0010】
(2)によれば、1つの検出回路の出力のみが第二状態を示す場合、つまり、複数の安全装置のうちの電源から最も遠い位置に配置された装置だけが作動(配線路を遮断)している場合には、この装置の確認を促す通知が行われる。このため、全ての安全装置の確認をユーザが行う必要はなく、安全確認等の作業効率を高めることができる。
【0015】
(3)
(1)又は(2)記載の産業用ロボットの制御装置であって、
前記複数種類の安全装置は、前記産業用ロボットを囲う安全柵に設けられる第一安全装置と、前記安全柵及び教示操作端末とは異なる場所に設けられる第二安全装置と、を含み、
前記第二安全装置は、前記第一安全装置よりも前記電源側に配置される産業用ロボットの制御装置。
【0016】
(3)によれば、ユーザによる復帰操作が忘れられがちな第二安全装置が、復帰操作が忘れられにくい第一安全装置よりも電源側に配置されている。このため、例えば、第一安全装置と第二安全装置の両方が作動している場合でも、第二安全装置の確認を優先的に行うようユーザに促すことができる。これにより、第二安全装置を確実に復帰させた状態でロボットを起動でき、ロボット起動までの時間を短縮できる。
【0017】
(4)
(3)記載の産業用ロボットの制御装置であって、
前記複数種類の安全装置は、教示操作端末に設けられる第三安全装置を更に含み、
前記第三安全装置は、前記第二安全装置よりも前記電源側に配置される産業用ロボットの制御装置。
【0018】
(4)によれば、使用頻度の低い教示操作端末に設けられる第三安全装置が最も電源側に配置される。第三安全装置に接続される検出回路の出力は第一状態を示すことが多くなる。使用頻度の低い第三安全装置が例えば最も電源から遠い位置に配置されていると、最も電源側に配置された安全装置が非通電状態となった場合に、第三安全装置の状態確認も必要になる場合がある。しかし、(4)のように、第三安全装置が第一安全装置及び第二安全装置よりも電源側に配置されることで、このような非効率な状態を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、産業用ロボットを停止させるための安全装置のうちのどの安全装置が作動しているのかを効率的に確認可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】ロボットシステムに含まれる産業用ロボットの概略構成を示す図である。
【
図2】ロボットシステムに含まれるロボット制御装置と教示操作端末の概略構成を示す図である。
【
図3】
図1の産業用ロボットを含む生産ライン(ロボットシステム)のレイアウトの一例を示す平面模式図である。
【
図4】
図3に示すロボットシステムの電気的構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の制御装置の一実施形態であるロボット制御装置200を含むロボットシステムについて、図面を参照しながら説明する。
【0022】
[ロボットシステムの構成]
図1は、ロボットシステムに含まれる産業用ロボット100の概略構成を示す図である。
図2は、
図1の産業用ロボット100に接続されるロボット制御装置200と、ロボット制御装置200に接続される教示操作端末400の概略構成を示す図である。
図2における“FR”は教示操作端末400の正面図を示し、“BK”は教示操作端末400の背面図を示している。
図3は、
図1の産業用ロボット100を含む生産ライン(ロボットシステム)のレイアウトの一例を示す平面模式図である。
【0023】
図3に示すロボットシステムは、産業用ロボット100と、ロボット制御装置200と、上位装置300と、教示操作端末(ティーチングペンダント)400と、安全柵500と、液晶ディスプレイの製造装置550と、から構成されている。ロボットシステムにおける各種の装置及び器具類は、有線又は無線によって電気的に接続されたり、シリアルケーブルを用いて電気的に接続されたりしている。
【0024】
産業用ロボット100は、ワークとして液晶ディスプレイ用ガラス基板10(以下、「ガラス基板10」とする。)を搬送するための搬送用ロボットである。産業用ロボット100は、基台11と、回転ユニット12と、コラム13と、スライダ14(アーム15を支持する支持部材)と、2本のアーム15と、から構成されている。また、アーム15は、その先端にハンド16を備えている。ハンド16は、フォーク部16aとハンド基端部16bを有しており、フォーク部16aの上にガラス基板10を載せて搬送するものである。
【0025】
回転ユニット12は、コラム13が設立されるベース部材であり、基台11に回転可能に配置されている。回転ユニット12がZ軸周りに回転することによって、アーム15及びハンド16を旋回させて、ハンド16の向きを変えることができるようになっている。また、回転ユニット12は、図示しない水平移動機構により、図中のY軸方向へ基台11上を移動可能となっている。さらに、スライダ14は、コラム13の側面で上下にスライド移動可能(図中のZ軸方向へ移動可能)となるように構成されている。
【0026】
2本のアーム15は、図示しない回転駆動源により、ハンド16を、ガラス基板10の取り出し・供給方向に移動させる。この際、アーム15は、その機構上、ハンド16が一方向を向いて、アーム15を伸ばしきった伸張位置と、折り畳んだ状態の縮み位置との間を直線移動するように、伸縮動作を行う。すなわち、本実施形態では、図中のX方向でハンド16が往復移動することになる。そして、伸張位置に位置する製造装置550(
図2参照)に対してガラス基板10を収納し、または縮み位置へガラス基板10を搬出するように動作する。
【0027】
上述のように、産業用ロボット100は、ガラス基板10を搬送するための搬送用ロボットであり、特に大型のガラス基板10をワークとして搬送することに適した大型のロボットである。ガラス基板10は、例えば、1辺が約3mの略正方形状で、相当の重量を有するものである。従って、非常停止する場合には、スライダ14の落下やアーム15の飛び出しなど危険動作の可能性がある。つまり、
図2の作業領域Rに作業者が立ち入る場合は非常に危険であり、こういった危険動作を確実に制動する必要がある。
【0028】
なお、
図3に示した産業用ロボット100は、
図1に示した産業用ロボット100よりも一層大型のガラス基板10を搬送するものであって、ガラス基板10のサイズに応じてフォーク部16aを6つとしている。また、
図3に示した産業用ロボット100の回転ユニット12は、コラム13の設立される位置とは回転直径の反対側にバランサー17を有し、回転時の重量を均衡させている。
【0029】
このような産業用ロボット100は、安全柵500と液晶ディスプレイの製造装置550に囲まれた場所(作業領域R)に設置されている。
【0030】
ロボット制御装置200は、産業用ロボット100とシリアルケーブル等の有線によって電気的に接続されている。ロボット制御装置200は、サーボモータ(図示しない)によって図中のX軸,Y軸,Z軸及びθ軸の各軸方向へ移動駆動される産業用ロボット100をサーボ制御している。ロボット制御装置200は、
図3の例では安全柵500内に配置されているが、安全柵500の外側に配置されていてもよく、そのレイアウトはロボットシステムの必要により適宜変更可能である。
【0031】
上位装置300は、数レーンからなるラインの中央制御部として機能するものである。より具体的に、上位装置300は、産業用ロボット100および製造装置550などの周辺装置を含む生産ライン(ロボットシステム)全体を制御する外部制御盤として構成される。上位装置300は、ロボット制御装置200と電気的に接続されて、安全柵500の外側に配置されている。また、上位装置300は、製造装置550などの周辺装置と電気的に接続される。上位装置300には、非常停止スイッチ等の産業用ロボット100を非常停止させるための非常停止デバイスが設けられる場合がある。
【0032】
教示操作端末400は、産業用ロボット100に位置情報を教示するためのものであり、ロボット制御装置200にシリアルケーブル等の有線によって接続されている。教示操作端末400は、産業用ロボット100の自動運転モード(Remoteモード)と教示モード(Teachモード)とを切り替える信号を発するモード切替スイッチ420と、教示モードにおける教示の際に、産業用ロボット100のサーボモータの駆動電流を有効にする信号を発するサーボオンスイッチ421と、非常停止命令に対応する非常停止信号を発する非常停止スイッチ410と、イネーブルスイッチ430と、を備えている。非常停止スイッチ410とイネーブルスイッチ430は、それぞれ、産業用ロボット100を非常停止させるための非常停止デバイスである。教示操作端末400において非常停止スイッチ410とイネーブルスイッチ430のいずれかは省略してもよい。以下では、教示操作端末400に設けられた1つ又は複数の非常停止デバイスのことを総称して第三安全装置SF3と記載する。
【0033】
図2に示すように、教示操作端末400には、表面中央に出力部としてLCDディスプレイ405が設けられている。非常停止スイッチ410は、LCDディスプレイ405の右上方に設けられている。また、モード切替スイッチ420およびサーボオンスイッチ421は、LCDディスプレイ405の上方のスイッチ群に設けられている。また、このスイッチ群には、その他の作動モードを切替える各種切替スイッチが含まれている。また、LCDディスプレイ405の右方には、複数のキー(スイッチ)が設けられている。これらは、教示のために産業用ロボット100を現在位置から所定の目標位置へ移動させるためのスイッチである。具体的には複数のキーは、X軸,Y軸,Z軸及びθ軸の各軸方向へ移動させる、X軸ジョグ送り動作キー、Y軸ジョグ送り動作キー、Z軸ジョグ送り動作キー等である。
【0034】
イネーブルスイッチ430は、教示操作端末400の背面側方に設けられている。イネーブルスイッチ430の近傍には、作業者が把持するための把持部435が設けられている(
図2参照)。イネーブルスイッチ430は、作業者が軽く握るとONし、作業者が離したり強く握ったりするとOFFになる、危険回避のためのスイッチである。イネーブルスイッチ430は、作業者が把持部435を把持して操作するときに、同時に押すことができるように、把持部435と一体または近接して設けられていることが望ましい。イネーブルスイッチ430は、教示操作端末400の握り部裏面などに取り付けられていてもよく、デッドマンスイッチとも呼ばれるものである。
【0035】
なお、上述した各動作キーおよび動作モード切替スイッチ等の配置は一例であって、
図2に示すものと異なる配置態様・操作態様(例えばレバースイッチ式など)になっていてもよい。
【0036】
安全柵500は、産業用ロボット100の動作範囲内に作業者が不用意に入らないようにし、作業者の安全を確保するために設けられている。より具体的には、
図3に示すように、周辺装置として3台の液晶ディスプレイの製造装置550が、安全柵500の四方のうち三方の一部を開口した位置に、産業用ロボット100を囲むように設置される。そして、安全柵500と製造装置550とによって、産業用ロボット100の作業領域Rが形成されている。なお、製造装置550に替えて、他の製造ラインと接続するためのコンベア装置またはその接続装置や複数のガラス基板10を積層載置し収納する基板カセット装置を配置してもよい。
【0037】
安全柵500には開閉扉510が設けられており、開閉扉510の開閉状態を検知するインターロック装置511が取り付けられている。インターロック装置511は、産業用ロボット100を非常停止させるための非常停止デバイスである。ロボットシステムでは、自動運転モード(Remoteモード)において作業者が安全柵500の開閉扉510を開けた場合、インターロック装置511が作動して産業用ロボット100が非常停止するようになっている。安全柵500には開閉扉510が複数設けられる場合もある。この場合には、各開閉扉510にインターロック装置511が取り付けられる。以下では、安全柵500に設けられた1つ又は複数のインターロック装置511のことを総称して第一安全装置SF1と記載する。
【0038】
ロボットシステムには、さらに、危険事態やシステムの不具合時に、産業用ロボット100を非常停止させる非常停止信号を発する非常停止デバイスとしての非常停止機器600が、安全柵500及び教示操作端末400とは異なる場所に設けられている。
図3の例では、製造装置550に非常停止機器600が取り付けられている。非常停止機器600は、例えば、上位装置300に取り付けられてもよい。非常停止機器600は、例えば非常停止ボタンおよびこれに対応する二重化スイッチ等により構成されている。非常停止機器600は、ロボットシステムに1つのみ設けられる場合や複数設けられる場合がある。以下では、ロボットシステムに含まれる1つ又は複数の非常停止機器600のことを総称して第二安全装置SF2と記載する。以上のように、本形態のロボットシステムは、教示操作端末400に設けられた第三安全装置SF3と、安全柵500に設けられた第一安全装置SF1と、安全柵500及び教示操作端末400とは異なる場所に設けられた第二安全装置SF2と、の3種類の安全装置を備えている。
【0039】
[ロボットシステムの電気的構成]
図4は、
図3に示すロボットシステムの電気的構成の一例を示す模式図である。
図4では、第三安全装置SF3が非常停止スイッチ410のみによって構成され、第二安全装置SF2が1つの非常停止機器600のみによって構成され、第一安全装置SF1が1つのインターロック装置511のみによって構成されている場合の例を示している。
【0040】
図4に示すように、第一安全装置SF1、第二安全装置SF2、及び第三安全装置SF3は、それぞれ、b接点式のスイッチにて構成されており、電源VCCに直列接続されている。第一安全装置SF1、第二安全装置SF2、及び第三安全装置SF3は、それぞれ、産業用ロボット100の非常停止のための作動(非常停止スイッチ410や非常停止機器600であればボタン操作、インターロック装置511であれば開閉扉510の開操作)がユーザにより行われると、入力側端子と出力側端子との電気的な接続を遮断(スイッチ開)して非導通状態となる。また、第一安全装置SF1、第二安全装置SF2、及び第三安全装置SF3は、それぞれ、ユーザにより復帰操作(非常停止スイッチ410や非常停止機器600であればボタン操作、インターロック装置511であれば開閉扉510の閉操作)が行われると、入力側端子と出力側端子との電気的な接続を復帰(スイッチ閉)して導通状態となる。このように、第一安全装置SF1、第二安全装置SF2、及び第三安全装置SF3は、それぞれ、配線路の電気的な遮断(非導通状態)と、この遮断からの復帰(導通状態)とを手動で切替可能なものとなっている。
【0041】
電源VCCには第三安全装置SF3の入力側端子T1が接続されている。第三安全装置SF3の出力側端子T2には、第二安全装置SF2の入力側端子T3が接続されている。第二安全装置SF2の出力側端子T4には、第一安全装置SF1の入力側端子T5が接続されている。第一安全装置SF1の出力側端子T6はロボット制御装置200に接続されている。第三安全装置SF3は、3種類の安全装置のうちの最も電源VCC側に配置された安全装置である。第一安全装置SF1は、3種類の安全装置のうちの最も電源VCC側と反対側(電源VCCから最も遠い位置、最もロボット制御装置200側)に配置された安全装置である。
【0042】
ロボット制御装置200は、産業用ロボット100の駆動制御及び産業用ロボット100の非常停止制御等を行う制御部201を備える。制御部201は、中央制御装置CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random access memory)等の記憶装置と、を備える。制御部201は、この記憶装置に収納された産業用ロボット100の作動プログラムおよび作動のためのパラメータに基づく各種座標系における直線動作、回転動作、各軸動作に関する命令によって、産業用ロボット100を駆動制御する。なお、教示操作端末400からの信号入力は、産業用ロボット100の作動プログラムおよび作動のためのパラメータを変更修正するためのものである。
【0043】
ロボット制御装置200は、更に、第三安全装置SF3と第二安全装置SF2との接続ノードN1に接続された検出回路202と、第二安全装置SF2と第一安全装置SF1との接続ノードN2に接続された検出回路203と、第一安全装置SF1と接地端子との接続ノードN3に接続された検出回路204と、を備える。検出回路202、検出回路203、及び検出回路204は、それぞれ、電源VCCからの電力供給を受けている第一状態では検出信号を出力せず、電源VCCからの電力供給が停止されている第二状態では検出信号を出力するリレー回路によって構成されている。すなわち、検出回路202、検出回路203、及び検出回路204は、それぞれ、第一状態と第二状態のどちらであるかを検出する回路である。
【0044】
なお、第三安全装置SF3にイネーブルスイッチ430が更に含まれる場合には、電源VCCと接続ノードN1の間に、イネーブルスイッチ430と非常停止スイッチ410の直列回路が接続された構成となる。このように第三安全装置SF3が複数の非常停止デバイスを含む場合には、直列接続されたこの複数の非常停止デバイスのうちの最も接続ノードN1側に接続された非常停止デバイスの出力側端子が、第三安全装置SF3の出力側端子を構成する。
図3の例では、非常停止スイッチ410の出力側端子T2が、第三安全装置SF3の出力側端子を構成している。以下では、第三安全装置SF3に含まれる少なくとも1つの非常停止デバイスが非導通状態である場合に、第三安全装置SF3が非導通状態であると定義する。また、第三安全装置SF3に含まれるすべての非常停止デバイスが導通状態である場合に、第三安全装置SF3が導通状態であると定義する。
【0045】
第二安全装置SF2に複数の非常停止機器600が含まれる場合には、接続ノードN1と接続ノードN2の間に、この複数の非常停止機器600の直列回路が接続された構成となる。このように第二安全装置SF2が複数の非常停止デバイスを含む場合には、直列接続されたこの複数の非常停止デバイスのうちの最も接続ノードN2側に接続された非常停止デバイスの出力側端子が、第二安全装置SF2の出力側端子を構成する。
図3の例では、非常停止機器600の出力側端子T4が、第二安全装置SF2の出力側端子を構成している。以下では、第二安全装置SF2に含まれる少なくとも1つの非常停止デバイスが非導通状態である場合に、第二安全装置SF2が非導通状態であると定義する。また、第二安全装置SF2に含まれるすべての非常停止デバイスが導通状態である場合に、第二安全装置SF2が導通状態であると定義する。
【0046】
第一安全装置SF1に複数のインターロック装置511が含まれる場合には、接続ノードN2と接続ノードN3の間に、この複数のインターロック装置511の直列回路が接続された構成となる。このように第一安全装置SF1が複数の非常停止デバイスを含む場合には、直列接続されたこの複数の非常停止デバイスのうちの最も接続ノードN3側に接続された非常停止デバイスの出力側端子が、第一安全装置SF1の出力側端子を構成する。
図3の例では、インターロック装置511の出力側端子T6が、第一安全装置SF1の出力側端子を構成している。以下では、第一安全装置SF1に含まれる少なくとも1つの非常停止デバイスが非導通状態である場合に、第一安全装置SF1が非導通状態であると定義する。また、第一安全装置SF1に含まれるすべての非常停止デバイスが導通状態である場合に、第一安全装置SF1が導通状態であると定義する。
【0047】
産業用ロボット100を作動させるときには、第一安全装置SF1、第二安全装置SF2、及び第三安全装置SF3がいずれも導通状態になるよう各安全装置が操作される。そして、産業用ロボット100の作動中に、第三安全装置SF3が非導通状態になると、電源VCCと接続ノードN1の間の配線路が遮断される。これにより、検出回路202、検出回路203、及び検出回路204は、いずれも電源VCCからの電力供給が停止された第二状態となり、制御部201には、検出回路202、検出回路203、及び検出回路204の各々から検出信号が入力される。
【0048】
産業用ロボット100の作動中に、第二安全装置SF2が作動して非導通状態になると、接続ノードN1と接続ノードN2の間の配線路が遮断される。これにより、検出回路203及び検出回路204は、いずれも電源VCCからの電力供給が停止された第二状態となり、制御部201には、検出回路203及び検出回路204の各々から検出信号が入力される。
【0049】
産業用ロボット100の作動中に、第一安全装置SF1が作動して非導通状態になると、接続ノードN2と接続ノードN3の間の配線路が遮断される。これにより、検出回路204のみが、電源VCCからの電力供給が停止された第二状態となり、制御部201には、検出回路204のみから検出信号が入力される。
【0050】
制御部201は、検出回路202、検出回路203、及び検出回路204の少なくとも1つから検出信号が入力されると、産業用ロボット100を非常停止させる制御を行う。更に、制御部201は、検出回路202、検出回路203、及び検出回路204の出力に基づいて、第一安全装置SF1、第二安全装置SF2、及び第三安全装置SF3のうちのどの安全装置の確認を行うべきかを示す通知を行うよう制御する。通知の方法としては、例えば、上位装置300に制御信号を送信して、上位装置300のディスプレイにメッセージを表示させたり、上位装置300に安全装置毎に設けられたランプのうち該当の安全装置のランプを点灯させたりする方法を採用すればよい。ロボット制御装置200にディスプレイやランプが設けられている場合には、これらを利用して通知を行ってもよい。
【0051】
[通知方法の具体例]
以下、通知方法の具体例について説明するが、これに限定されるものではない。まず、検出回路の出力状態のパターンについて、以下に列挙する。
(パターンA)
パターンAは、検出回路202、検出回路203、及び検出回路204のうち、1つのみから検出信号が出力されているパターンである。このパターンは、最もロボット制御装置200側に位置する第一安全装置SF1のみが作動して非導通状態になった場合に、生じる。
(パターンB)
パターンBは、検出回路202、検出回路203、及び検出回路204のうち、検出回路203と検出回路204の2つから検出信号が出力されているパターンである。このパターンは、第二安全装置SF2のみが作動して非導通状態になった場合、第一安全装置SF1及び第二安全装置SF2のみが作動して非導通状態になった場合に、生じる。
(パターンC)
パターンCは、検出回路202、検出回路203、及び検出回路204の全てから検出信号が出力されているパターンである。このパターンは、第三安全装置SF3のみが作動して非導通状態になった場合、第三安全装置SF3及び第二安全装置SF2のみが作動して非導通状態になった場合、第三安全装置SF3及び第一安全装置SF1のみが作動して非導通状態になった場合、第一安全装置SF1、第二安全装置SF2、及び第三安全装置SF3が全て作動して非導通状態になった場合に、生じる。
【0052】
(第一通知制御)
制御部201は、パターンAの場合には、検出信号を出力している検出回路204が出力側端子に接続された第一安全装置SF1の確認を促す通知を行うよう制御する。この通知を受けたユーザは、第一安全装置SF1のみが作動している状況と判断し、安全を確認した後、第一安全装置SF1が導通状態となるよう操作する。これにより、検出回路202、検出回路203、及び検出回路204のいずれからも検出信号が出力されない状態になると、制御部201は、産業用ロボット100の作動を再開させる。
【0053】
(第二通知制御)
制御部201は、パターンBの場合には、検出信号を出力している検出回路203及び検出回路204のうち、検出回路203が出力側端子に接続された第二安全装置SF2の確認を促す通知を行うよう制御する。この通知を受けたユーザは、第二安全装置SF2が作動している状況と判断し、安全を確認した後、第二安全装置SF2が導通状態となるよう操作する。この操作の結果、検出回路202、検出回路203、及び検出回路204のいずれからも検出信号が出力されない状態になると、制御部201は、産業用ロボット100の作動を再開させる。
一方、この操作の結果、検出回路の出力状態がパターンAとなる場合(つまり、第一安全装置SF1及び第二安全装置SF2が作動してパターンBとなっていた場合)には、制御部201は、続けて、第一安全装置SF1の確認を促す通知を行うよう制御する。この通知を受けたユーザは、第一安全装置SF1が作動している状況と判断し、安全を確認した後、第一安全装置SF1が導通状態となるよう操作する。これにより、検出回路202、検出回路203、及び検出回路204のいずれからも検出信号が出力されない状態になると、制御部201は、産業用ロボット100の作動を再開させる。
【0054】
(第二通知制御の変形例)
制御部201は、パターンBの場合には、検出信号を出力している検出回路203及び検出回路204の各々が出力側端子に接続された第二安全装置SF2及び第一安全装置SF1の両方の確認を促す通知を行うよう制御する。この通知を受けたユーザは、第一安全装置SF1と第二安全装置SF2が作動している状況と判断し、安全を確認した後、第一安全装置SF1と第二安全装置SF2が導通状態となるよう操作する。この操作の結果、検出回路202、検出回路203、及び検出回路204のいずれからも検出信号が出力されない状態になると、制御部201は、産業用ロボット100の作動を再開させる。
パターンBは、第二安全装置SF2のみが作動している状況と、第二安全装置SF2と第一安全装置SF1の2種が作動している状況とを区別できない。そのため、パターンBの場合には、本変形例の通知制御を採用することで、第二通知制御のように2段階に分けて通知を行うよりも、産業用ロボット100の作動再開を効率よく行うことができる場合がある。一方、第二安全装置SF2のみが作動している状況においては、上記第二通知制御を採用することで、ユーザは第一安全装置SF1の確認を省略でき、効率的な作業が可能になる。
【0055】
(第三通知制御)
制御部201は、パターンCの場合には、検出信号を出力している検出回路202、検出回路203、及び検出回路204のうち、検出回路202が出力側端子に接続された第三安全装置SF3の確認を促す通知を行うよう制御する。
【0056】
(第三通知制御の変形例)
制御部201は、パターンCの場合には、第一安全装置SF1、第二安全装置SF2、及び第三安全装置SF3の確認を促す通知を行うよう制御する。
【0057】
[実施形態の効果]
以上のロボットシステムによれば、3種類の安全装置毎に検出回路が設けられるため、検出回路202、203、204の出力に基づいて、どの安全装置の作動状態を優先的に確認すべきかを判断することが可能になる。このような判断にしたがってユーザに通知を行うことで、産業用ロボット100の動作復帰までの作業を効率的に行うことができる。
【0058】
[その他の実施の形態]
本形態のロボットシステムは3種類の安全装置を含むものとしたが、第一安全装置SF1、第二安全装置SF2、及び第三安全装置SF3のうち、第三安全装置SF3は必須ではなく省略可能である。これは、教示操作端末400を導入しないユーザも存在するためである。
【0059】
第一安全装置SF1、第二安全装置SF2、及び第三安全装置SF3の配列は、
図4に示したように、ロボットシステムにおいて使用頻度の低い教示操作端末400に設けられる第三安全装置SF3が最も電源VCC側に配置され、復帰操作を最も忘れにくいインターロック装置511を含む第一安全装置SF1が最もロボット制御装置200側に配置され、その間に、第二安全装置SF2が配置される構成とするのが好ましい。しかし、この配列はこれに限定されるものではなく、ユーザの意図に応じて変更可能である。例えば、第一安全装置SF1と第二安全装置SF2の位置を逆にしてもよい。
【0060】
本形態のロボットシステムは、3種類の安全装置を含むものとしたが、ユーザが準備した、安全装置以外のb接点式のスイッチからなるデバイスを更に追加することも可能である。この場合には、例えば、このデバイスを、電源VCCと第三安全装置SF3の間に接続したり、第三安全装置SF3と第二安全装置SF2の間に接続したりすればよい。そして、この場合には、ロボット制御装置200に、このデバイスの出力側端子に接続される検出回路を追加で設ければよい。これにより、安全装置以外のデバイスの動作状況の確認も可能になる。
【0061】
本形態では、2個のハンド16と2本のアーム15とが上下方向に重なるように配置されている。すなわち、本形態の産業用ロボット100は、ダブルアームタイプのロボットである。なお、産業用ロボット100は、1個のハンド16と1本のアーム15とを備えるシングルアームタイプのロボットであっても良い。さらに、本実施の形態では、ワークとしてガラス基板を搬送するダブルアーム型ロボットを例示したが、半導体ウエハ等を搬送するロボットであっても良い。また、本発明はガラス基板を搬送するロボットのシステムに限定されるものではなく、他の形式用途のロボットやその他の産業機器にも適用することができる。例えば半導体基板を搬送するロボットのシステムにも適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
100 産業用ロボット
200 ロボット制御装置
201 制御部
202、203、204 検出回路
300 上位装置
400 教示操作端末
410 非常停止スイッチ
500 安全柵
511 インターロック装置
600 非常停止機器
SF1 第一安全装置
SF2 第二安全装置
SF3 第三安全装置
VCC 電源