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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】通気口部材
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/04 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
F24F7/04 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021012412
(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公開番号】P2022115697
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2024-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】391040788
【氏名又は名称】三菱電機システムサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】松原 悠斗
(72)【発明者】
【氏名】入江 大樹
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第205499611(CN,U)
【文献】実開昭53-093049(JP,U)
【文献】特開平09-210416(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111872006(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0125361(US,A1)
【文献】実開昭60-002231(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0383514(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0003066(US,A1)
【文献】中国実用新案第204786668(CN,U)
【文献】特開平06-058584(JP,A)
【文献】特開2010-266156(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1449938(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気口部材であって、
外壁を貫通する換気孔の室外側の周縁を取り囲むように、前記換気孔に対して固定される固定枠と、
前記固定枠の左右両端に連結され、前記固定枠から水平方向室外側である前方に延びる一対の側壁であって、略鉛直方向に延びる1以上の折り目に沿って折り畳み可能な一対の側壁と、
その左右両端が、一対の前記側壁それぞれの前端に連結された前壁と、
を備え、前記側壁は、前記固定枠および前記前壁に対して揺動可能に連結されており、
前記通気口部材は、前記側壁が前記折り目に沿って折り畳まれることなく前記固定枠から前方に伸長している完成姿勢と、前記側壁が前記折り目に沿って折り畳まれて前記前壁および前記固定枠と略平行になる収容姿勢と、に変更可能であり、
前記収容姿勢において、一対の前記側壁と前記前壁との連結が維持されており、
さらに、
前記固定枠と、一対の前記側壁と、前記前壁と、で囲まれるカバー空間の上端開口を覆う天壁であって、その前端が前記前壁の上端に前記前壁に対して揺動可能に連結された天壁を備え、
前記収容姿勢において、前記天壁の後端は、前記固定枠から分離している、
ことを特徴とする通気口部材。
【請求項2】
通気口部材であって、
外壁を貫通する換気孔の室外側の周縁を取り囲むように、前記換気孔に対して固定される固定枠と、
前記固定枠の左右両端に連結され、前記固定枠から水平方向室外側である前方に延びる一対の側壁であって、略鉛直方向に延びる1以上の折り目に沿って折り畳み可能な一対の側壁と、
その左右両端が、一対の前記側壁それぞれの前端に連結された前壁と、
を備え、前記側壁は、前記固定枠および前記前壁に対して揺動可能に連結されており、
前記通気口部材は、前記側壁が前記折り目に沿って折り畳まれることなく前記固定枠から前方に伸長している完成姿勢と、前記側壁が前記折り目に沿って折り畳まれて前記前壁および前記固定枠と略平行になる収容姿勢と、に変更可能であり、
さらに、
前記固定枠と、一対の前記側壁と、前記前壁と、で囲まれるカバー空間内に配置された支持枠であって、左右方向に延びる前側横材と、前記前側横材の左右両端から延びる一対の縦材と、を有する支持枠を備え、
前記支持枠の前端は、左右方向に延びる軸回りに揺動可能に前記前壁に連結されており、
前記縦材は、前記完成姿勢において前記前壁に対して角度を成す方向に延び、前記収容姿勢において前記前壁と略平行な方向に延びる、
ことを特徴とする通気口部材。
【請求項3】
請求項に記載の通気口部材であって、
前記側壁の上縁は、前記完成姿勢において、前記前方に進むにつれて下方に進むように、水平方向に対して傾斜しており、
前記縦材の長軸寸法は、前記支持枠と前記前壁との連結点から前記前壁の上端までの距離である第一距離より大きく、
前記縦材は、前記収容姿勢において前記前壁と平行な壁面を有するベースと、前記連結点からみて第一距離より遠位側となる範囲において前記ベースの外縁から前記ベースの厚み方向に立脚する立脚部と、を有する、
ことを特徴とする通気口部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、外壁を貫通する換気孔に連なる流路を構成するために、室外に設けられる通気口部材を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来から、外壁を貫通する換気孔に連なる流路を構成するために、室外に通気口部材を設けることが知られている。通気口部材は、通常、内部が排気の流路となる筒状または箱状である。かかる通気口部材は、比較的嵩張るため、輸送効率が悪いという問題があった。そこで、従来から、通気口部材の輸送効率を向上するために、輸送段階では、平面的に折りたたむことができる通気口部材が提案されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、換気孔の周縁を取り囲む枠状の固定枠と、一対の側壁と、天壁と、前壁と、(特許文献1では、それぞれ、「取付板」、「フード板」、「上フード板」、「前フード板」と称する)を有する通気口部材が開示されている。特許文献1では、固定枠の左右の縁に一対の側壁を、固定枠の上縁に天壁を、天壁の前端に前壁を、それぞれヒンジ連結している。かかる特許文献1では、通気口部材を設置する際には、一対の側壁の間隔が天壁および前壁の左右寸法とほぼ同じになるように、一対の側壁を広げたうえで、天壁および前壁を、一対の側壁の上端に結合する。
【0004】
また、特許文献2には、一対の側壁、天壁、および、前壁(特許文献2では、それぞれ、「側面板」、「上面板」、「前面板」と呼ぶ)が、折り目を介して繋がった通気口部材が開示されている。特許文献2でも、通気口部材を設置する際には、一対の側壁の間隔が所望の間隔になるように、当該一対の側壁を広げて、これを天壁に連結する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平09-210416号公報
【文献】特開平06-58584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
こうした折り畳み可能な通気口部材によれば、輸送時には当該通気口部材を平面状に折り畳めるため、通気口部材の輸送効率を向上できる。しかし、従来の通気口部材では、当該通気口部材を設置する際の作業が煩雑であった。例えば、特許文献2では、通気口部材を、形状記憶合金で構成しており、折り畳まれた通気口部材を完成形状にするためには、通気口部材を加熱する必要があった。
【0007】
また、特許文献1では、側壁14の前端は、拘束されていない自由端であった。そのため、当該側壁14に前壁16や天壁18を取り付ける際、作業者は、二つの側壁14の前端同士の間隔を適切な間隔に維持したまま、前壁16等の取り付け作業を行う必要があった。しかし、二つの側壁14の前端同士の間隔を適切な間隔に維持するためには、作業者は、二つの側壁14を両手で持ち続けなければならず、前壁16を取り付けるためには、別の作業者の助けが必要であった。結果として、特許文献1の通気口部材は、一人で取り付けることが難しく、作業効率が悪かった。つまり、従来、輸送効率を向上しつつ、取付作業を簡易化できる通気口部材はなかった。
【0008】
そこで、本明細書では、輸送効率を向上しつつ取り付け作業を簡易化できる通気口部材を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書で開示する通気口部材は、通気口部材であって、外壁を貫通する換気孔の室外側の周縁を取り囲むように、前記換気孔に対して固定される固定枠と、前記固定枠の左右両端に連結され、前記固定枠から水平方向室外側である前方に延びる一対の側壁であって、略鉛直方向に延びる1以上の折り目に沿って折り畳み可能な一対の側壁と、その左右両端が、一対の前記側壁それぞれの前端に連結された前壁と、を備え、前記側壁は、前記固定枠および前記前壁に対して揺動可能に連結されており、前記通気口部材は、前記側壁が前記折り目に沿って折り畳まれることなく前記固定枠から前方に伸長している完成姿勢と、前記側壁が前記折り目に沿って折り畳まれて前記前壁および前記固定枠と略平行になる収容姿勢と、に変更可能である、ことを特徴とする。
【0010】
この場合、さらに、前記固定枠と、一対の前記側壁と、前記前壁と、で囲まれるカバー空間の上端開口を覆う天壁であって、その前端が前記前壁の上端に前記前壁に対して揺動可能に連結された天壁を備えてもよい。
【0011】
また、さらに、前記固定枠と、一対の前記側壁と、前記前壁と、で囲まれるカバー空間内に配置された支持枠であって、左右方向に延びる前側横材と、前記前側横材の左右両端から延びる一対の縦材と、を有する支持枠を備え、前記支持枠の前端は、左右方向に延びる軸回りに揺動可能に前記前壁に連結されており、前記縦材は、前記完成姿勢において前記前壁に対して角度を成す方向に延び、前記収容姿勢において前記前壁と略平行な方向に延びてもよい。
【0012】
この場合、前記側壁の上縁は、前記完成姿勢において、前記前方に進むにつれて下方に進むように、水平方向に対して傾斜しており、前記縦材の長軸寸法は、前記支持枠と前記前壁との連結点から前記前壁の上端までの距離である第一距離より大きく、前記縦材は、前記収容姿勢において前記前壁と平行な壁面を有するベースと、前記連結点からみて第一距離より遠位側となる範囲において前記ベースの外縁から前記ベースの厚み方向に立脚する立脚部と、を有してもよい。
【0013】
また、本明細書で参考例として開示する通気口部材は、外壁を貫通する換気孔の室外側の周縁を取り囲むように、前記換気孔に対して固定される固定枠と、前記固定枠の左右両端にヒンジ連結された一対の側壁であって、前記固定枠から水平方向室外側である後方に延びる完成姿勢と、前記固定枠と平行になる収容姿勢と、に変更可能な一対の側壁と、前記完成姿勢の一対の前記側壁それぞれの後端辺同士を結ぶ前壁であって、一対の前記側壁に対して着脱可能な前壁と、前記固定枠と、一対の前記側壁と、前記前壁と、で囲まれるカバー空間の上端開口を覆う天壁であって、前記側壁、前記前壁、および、前記固定枠から分離可能な天壁と、を備え、前記天壁は、その前端に、上方に延びる天側突起、または、下方に開口した天側係止溝を有し、前記固定枠は、下方に開口する天側係止溝、または、上方に延びる天側突起を有し、前記天側係止溝に、前記天側突起を差し込むことで、前記天壁の前記固定枠からの離脱が阻害されてもよい。
【0014】
この場合、さらに、前記カバー空間の下端開口を覆う網と、当該網の周縁を囲む網枠と、を有する網部材を備え、前記網枠は、その前端に、下方に開口する底側係止溝、または、下方に延びる底側突起を有し、前記固定枠は、上方に延びる底側突起、または、上方に開口した底側係止溝を有し、前記底側係止溝に前記底側突起を差し込むことで、前記網部材の前記固定枠からの離脱が阻害されてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本明細書で開示する通気口部材によれば、平板状に折り畳むことができるため、通気口部材の輸送効率を向上できる。また、側壁の後端および前端が、固定枠および前壁に連結されており、二つの側壁の前端同士の間隔および後端同士の間隔が常に一定に保たれている。そのため、側壁を展開するだけで、側壁、固定枠、前壁の相対位置関係が、完成時の位置関係になるため、作業者を二つの側壁を手で持ち続ける必要がなく、通気口部材の取り付けの作業効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】通気口部材の断面図である。
図2】通気口部材の斜視図である。
図3】平板状に折り畳んだ収容姿勢の通気口部材の断面図である。
図4】折り畳み途中の通気口部材の斜視図である。
図5】参考例の通気口部材の分解斜視図である。
図6】底側係止溝に底側突起を差し込んだ状態を示す断面図である。
図7】天側係止溝に天側突起を差し込んだ際の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して通気口部材10の構成について説明する。図1は、通気口部材10の断面図であり、図2は、通気口部材10の斜視図である。なお、以下の図面では、理解を容易にするために、各部材の寸法を実際と変えている。特に、各部材の板厚は、実際の板厚より充分に大きく図示している。また、図2では、網部材22の図示を省略するとともに、一つの側壁14を固定枠12および前壁16から取り外した状態で図示している。さらに、以下の説明では、外壁100からみて室外側となる方向を「前方」、室内側となる方向を「後方」と呼ぶ。
【0018】
通気口部材10は、換気孔102に連なる流路を構成するために、外壁100の室外側の壁面に取り付けられており、換気孔102から流出する排気を、室外へ導く。こうした通気口部材10は、換気孔102への雨滴の侵入を防止する機能も有しており、「ウェザーカバー」とも呼ばれる。かかる通気口部材10は、固定枠12と、一対の側壁14と、前壁16と、天壁18と、を備えている。
【0019】
固定枠12は、中央に矩形の通過開口29が形成された略ロ字状の部材である。この固定枠12は、換気孔102の室外側の周縁を取り囲むように、外壁100に室外側面に取り付けられる。
【0020】
側壁14は、固定枠12の左右両端それぞれから前方、すなわち室外側に向かって延びる壁部材である。この側壁14の下縁は、ほぼ水平である一方、側壁14の上縁は、前方に進むにつれ下方に進むように、水平方向に対して傾斜している。ここで、本例の側壁14は、折り畳み可能であり、さらに、側壁14は、固定枠12および前壁16にヒンジ24a,24bで連結されているが、これについては、後述する。
【0021】
前壁16は、一対の側壁14それぞれの前端にヒンジ24bを介して連結される。以下では、この前壁16と一対の側壁14と固定枠12とで囲まれる空間を「カバー空間28」と呼ぶ。天壁18は、カバー空間28の上端開口を覆う壁面である。天壁18の前端は、前壁16の状態に、ヒンジ24dを介して連結されている。
【0022】
カバー空間28の下端には、網部材22が、配置されている。網部材22は、略ロ字状の網枠52と、当該網枠52に張られた網50と、を有する。網枠52の周縁は、側壁14や前壁16にビス止めされる。このビス止めを行うために、網枠52や、側壁14、前壁16等には、締結孔26c~26eが、形成されている。
【0023】
カバー空間28内には、さらに支持枠20が、配置されている。支持枠20は、後に詳説するように、通気口部材10を完成姿勢に保つために設けられている。この支持枠20は、略ロ字状のベース46と、このベース46の外周縁から当該ベース46の厚み方向に立脚する立脚部48と、を有している。以下では、略ロ字状の支持枠20のうち、前端近傍の辺を構成する部分を「前横材40」、前横材40の後方で左右方向に延びる部分を「後横材44」、前横材40および後横材44の左右両端を接続する部分を「縦材42」と呼ぶ。
【0024】
前横材40は、左右方向に延びる揺動軸を持つヒンジ24eを介して前壁16の中間高さ位置に連結されている。この前横材40と前壁16との連結点P1から前壁16の上端までの距離を第一距離L1とした場合、縦材42の長軸方向寸法は、第一距離L1より大きい。また、立脚部48は、支持枠20の前端から見て、第一距離L1より遠位側に離れた範囲にのみ設けられている。また、支持枠20の左右寸法は、カバー空間28の左右内寸とほぼ同じであり、縦材42の外縁は、側壁14に近接している。かかる構成とすることで、支持枠20は、通気口部材10を完成姿勢に保つことができるが、これについても、後述する。
【0025】
ところで、完成状態の通気口部材10は、図1に示すように、その内部が中空であるため、非常に嵩張り、輸送効率が悪かった。そこで、従来から、略平板状に折り畳み可能な通気口部材10が、提案されている。例えば、特許文献1および特許文献2には、折り畳み可能な通気口部材が開示されている。
【0026】
こうした折り畳み可能な通気口部材によれば、その輸送効率を大幅に向上できる。しかし、従来の通気口部材は、外壁に取り付ける際の作業が煩雑であった。すなわち、特許文献2では、通気口部材を形状記憶合金で構成しており、折り畳まれた通気口部材を完成形状にするためには、通気口部材を加熱する必要があり、作業効率が悪かった。
【0027】
また、特許文献1では、側壁の後端は、固定枠にヒンジ連結されているものの、側壁14の前端は、自由に揺動可能な自由端であった。そのため、折り畳まれた通気口部材を完成形状にするためには、一対の側壁の前端同士の間隔を、所望の間隔に保った状態で、当該側壁に天壁や前壁を連結する必要があった。ここで、二つの側壁14の前端の間隔を所望の間隔に保つためには、作業者は、右手で一方の側壁を、左手で他方の側壁14を持つ状態を保つ必要があるが、このように両手で側壁14を持った状態を保った場合、前壁16等を側壁14に連結する作業が行えず、別の作業者の助けが必要となる。もちろん、前壁16を側壁14に連結する際には、一時的に片方の手を側壁14から離すことも考えられるが、この場合、手を離した隙に、側壁14の前端同士の間隔がズレてしまい、再度、側壁14の間隔調整が必要になる場合も多かった。つまり、特許文献1の通気口部材10では、輸送効率は向上できるものの、取り付けの作業効率が悪かった。
【0028】
そこで、本例では、輸送効率を向上しつつ取り付け作業を簡易化するために、側壁14を折り畳み可能にするとともに、その前端および後端を、前壁16および固定枠12にヒンジ連結している。以下、これについて詳説する。
【0029】
図1図2に示すように、本例では、一つの側壁14を、第一側壁片30および第二側壁片32で構成している。第一側壁片30は、側壁14の後側半分を構成し、第二側壁片32は、側壁14の前側半分を構成する。第一側壁片30の前端と、第二側壁片32の後端は、鉛直方向の揺動軸を有するヒンジ24cを介して連結されている。第一側壁片30および第二側壁片32は、いずれも、ヒンジ24cを中心として鉛直軸回りに揺動可能となっている。別の見方をすれば、側壁14の前後方向略中央には、上下方向に延びる折り目33が形成されている。また、側壁14の後端は、固定枠12に、側壁14の前端は前壁16に、それぞれ、鉛直方向の揺動軸を有するヒンジ24a,24bを介して連結されている。そして、かかる構成とすることで、側壁14は、折り目33に沿って、カバー空間28内側に凸となるように折り畳むことができる。
【0030】
また、前壁16の上端と天壁18の後端は、左右方向に延びる揺動軸を有するヒンジ24dを介して連結されている。これにより、天壁18は、水平軸周りに揺動可能となり、前壁16に対する天壁18の角度を自由に変更できる。さらに、本例ではカバー空間28内に、支持枠20を配置しているが、この支持枠20の後端も、左右方向に延びる揺動軸を有するヒンジ24eを介して連結されている。そのため、支持枠20も、水平軸周りに揺動可能となり、前壁16に対する支持枠20の角度を自由に変更できる。
【0031】
次に、こうした通気口部材10の効果について説明する。上述した通り、通気口部材10を構成する固定枠12、側壁14、前壁16、天壁18、および支持枠20は、ヒンジ24を介して連結されている。そのため、輸送時のように、体積低減が求められる場面では、通気口部材10は、平板状に折り畳むことができる。
【0032】
図3は、平板状に折り畳んだ収容姿勢の通気口部材10の断面図である。また、図4は、折り畳み途中の通気口部材10の斜視図である。なお、図4では、一つの側壁14および網部材22の図示を省略している。図3図4に示すように、通気口部材10を折り畳む際には、天壁18の外面(すなわちカバー空間28の外側の面)が前壁16の外面に接触、天壁18が前壁16に対して略平行となるまで、天壁18を、その後端を中心として水平軸周りに揺動させる。また、支持枠20が前壁16の内面(すなわちカバー空間28に面する面)に接触し、支持枠20と前壁16が略平行になるまで、支持枠20を、その後端を中心として水平軸周りに揺動させる。これにより、支持枠20、前壁16、および、天壁18が厚み方向に積層される。
【0033】
支持枠20、前壁16、および、天壁18が厚み方向に積層されれば、続いて、側壁14を、左右方向内側に凸となるように、鉛直方向に延びる折り目33に沿って折り畳む。これにより、第一側壁片30および第二側壁片32が、厚み方向に積層されるとともに、固定枠12が前壁16に近接し、通気口部材10全体が略平板状となる。このように、本例では通気口部材10を構成する複数の部材をヒンジ24a~24eで連結し、さらに側壁14を折り畳み可能とすることで、通気口部材10を平板状の収容姿勢に変更できる。なお、網部材22は、側壁14等と完全に分離した別部材である。そのため、輸送時には、図3に示すように、平板状になった通気口部材10に、別部材である網部材22を重ねればよい。
【0034】
通気口部材10を、外壁100に取り付ける際には、通気口部材10を、図3に示す収容姿勢から、図1に示す完成姿勢に変更する。具体的には、作業者は、まず、固定枠12を外壁100に固定し、固定枠12と外壁100との間をシールする。続いて、固定枠12を前壁16から離間する方向に引っ張り、折り畳まれた側壁14を展開する。ここで、側壁14の前端は前壁16に、後端は固定枠12に、それぞれ連結されている。換言すれば、本例では、二つの側壁14の前端同士の間隔、および、後端同士の間隔は、常に一定に保たれている。そのため、作業者は、側壁14を展開さえすれば、一対の側壁14、固定枠12、前壁16の相対位置関係を完成時の位置関係に保つことができる。
【0035】
側壁14が展開できれば、作業者は、支持枠20を、カバー空間28内で前下がり姿勢になるように、揺動させる。これにより、支持枠20の縦材42が、側壁14の折り目33を横切ることになる。そして、支持枠20が折り目33を横切ることで、折り目に沿った側壁14の屈曲が阻害され、側壁14が展開した状態が維持される。前下がり姿勢となった支持枠20は、第一側壁片30にビス止めされる。第一側壁片30および立脚部48には、このビス止めのための締結孔26a,26bが形成されている。そして、支持枠20が第一側壁片30にビス止めされることで、支持枠20の前下がり姿勢、ひいては、側壁14の展開状態が確実に維持される。
【0036】
この状態になれば、作業者は、続いて、天壁18を水平軸周りに揺動して、当該天壁18でカバー空間28の上端開口を覆う。なお、本例では、天壁18の左右両端に、下方に立脚する一対のリブ34を設けている。一対のリブ34により下方に開口した差し込み溝36が形成される。天壁18でカバー空間28の上端開口を覆う際には、側壁14の上端を、この差し込み溝36に差し込む。これにより、側壁14の上端と天壁18との境界の隙間が埋まり、雨滴のカバー空間28内への侵入が効果的に防止される。また、側壁14の上端を差し込み溝36に差し込むことで、側壁14と天壁18とが相互に拘束されるため、通気口部材10のガタつきを効果的に防止できる。
【0037】
天壁18をカバー空間28の上に被せることができれば、作業者は、当該天壁18を側壁14に固定する。この固定は、ビス等を利用した締結でもよいし、図2に示すような、スナップ錠19を利用した係合でもよい。最後に、作業者は、カバー空間28の下端開口に網部材22を配置し、ビスを用いて、当該網部材22を側壁14や前壁16に固定する。網部材22、側壁14、前壁16には、この締結のための締結孔26c,26d,26eが形成されている。
【0038】
以上の説明から明らかなとおり、本例では、前壁16を固定枠12から離す方向に引っ張り、折り畳まれた側壁14を展開するだけで、前壁16、固定枠12、側壁14の相対的位置関係を完成時の位置関係にできる。そして、作業者は、3以上の箇所を同時に持つ必要がないため、一人の作業者でも、簡易に通気口部材10を取り付けることができる。
【0039】
なお、ここまで説明した構成は一例であり、少なくとも、略鉛直方向に延びる1以上の折り目33に沿って折り畳み可能な一対の側壁14が、固定枠12および前壁16にヒンジ連結されているのであれば、その他の構成は、適宜変更されてもよい。例えば、上述の説明では、ヒンジ24として、揺動対象物(例えば側壁14や前壁16等)と別体である一般的なヒンジを例示したが、ヒンジ24は、揺動対象物と一体であってもよい。例えば、インテグラルヒンジのように、揺動対象物に、線状の薄肉部を形成し、この薄肉部をヒンジ24として利用してもよい。また、上述の説明では、各部をヒンジ連結しているが、連結される二つ部材の一方が、他方に対して揺動可能であれば、ヒンジを利用しない連結手段が用いられてもよい。
【0040】
また、上述の例では、側壁14に設ける折り目33の数を一つとしているが、折り目33は、奇数であれば、その個数は、限定されない。したがって、側壁14に、鉛直方向に延びる折り目を3以上設け、収容姿勢にする際には、当該側壁14を複数の折り目33に沿って蛇腹織りしてもよい。また、上述の例では、支持枠20を設けているが、当該支持枠20は、省略されてもよい。さらに、各部の形状は、適宜、変更されてもよい。
【0041】
次に、参考例として別の通気口部材10の構成について説明する。図5は、参考例の通気口部材10の分解斜視図である。なお、図5では、一つの側壁14と、網50と、の図示を省略している。
【0042】
この通気口部材10は、固定枠12と、一対の側壁14は、ヒンジ連結されているものの、前壁16、天壁18、および、網部材22は、固定枠12および側壁14と、完全に分離している。
【0043】
すなわち、固定枠12は、略矩形の通過開口29が形成された略ロ字状部材であり、固定枠12の左右両端には、一対の側壁14が、ヒンジ24aを介して揺動可能に連結されている。側壁14は、図1の例と異なり、単一の板材で構成されている。したがって、側壁14は、固定枠12に対して揺動することはできるが、側壁14そのものを途中で折り曲げることはできない。
【0044】
前壁16は、完成姿勢において、一対の側壁14それぞれの後端辺同士を結ぶ部材である。また、天壁18は、固定枠12と、一対の側壁14と、前壁16と、で囲まれるカバー空間28の上端開口を覆う部材である。上述した通り、天壁18および前壁16は、いずれも、側壁14および固定枠12と、分離した別部材であり、それぞれ、ビス等を用いて側壁14および固定枠12に固定される。網部材22は、カバー空間28の下端開口に配置されるもので、略ロ字状の網枠52と、当該網枠52に張られた網50と、を有している。
【0045】
かかる通気口部材10は、収容姿勢では、各側壁14は、固定枠12と略平行になる角度まで、ヒンジ24aを中心として水平軸周りに揺動する。これにより、側壁14と固定枠12とが厚み方向に積層され、略平板状になる。なお、このとき、二つの側壁14の干渉を防止するために、一対の側壁14の間隔L2を、側壁14の前後方向寸法より大きくする。輸送時、天壁18、前壁16、および、網部材22は、略平板状の側壁14および固定枠12と、厚み方向に重ねられる。
【0046】
通気口部材10を、外壁100に取り付ける際には、まず、固定枠12を、外壁100に固定し、固定枠12と外壁100との間をシールする。続いて、作業者は、側壁14を、固定枠12に対して略直交する角度まで、ヒンジ24aを中心として揺動させる。ただし、この時点で、側壁14の揺動角度を厳密に調整する必要はなく、側壁14の前端同士の間隔が、網部材22の左右方向寸法より大きくできればよい。
【0047】
一対の側壁14を開けば、続いて、作業者は、固定枠12に網部材22を取り付ける。ここで、この網部材22の取り付けを容易にするために、網枠52の前端には、下方に開口する底側係止溝60が形成されている。底側係止溝60は、通過開口29の下縁である底側突起62が差し込まれる溝である。図6は、底側係止溝60に底側突起62を差し込んだ状態を示す断面図である。図5図6から明らかなとおり、底側係止溝60は、網枠52の後端壁を上方に延長したうえで、後方かつ下側にU字状に折り返すことで形成される。この底側係止溝60に底側突起62を差し込むことで、網部材22が固定枠12に係合され、網部材22の固定枠12からの離脱が阻害される。
【0048】
この状態になれば、作業者は、網部材22を側壁14にビス止めする。このとき、網部材22は、固定枠12に係合されているため、作業者が、網部材22から手を放しても、網部材22は落下しない。そのため、作業者は、網部材22の側壁14へのビス止めを、簡易に行うことができる。
【0049】
網部材22を側壁14に固定できれば、続いて、作業者は、二つの側壁14の前端の間を跨ぐように前壁16を配置し、この前壁16を、側壁14および網部材22にビス止めする。このとき、側壁14の前端同士の間隔は、当該側壁14に固定された網部材22により、一定に保たれている。したがって、作業者は、前壁16の位置だけ調整すればよく、側壁14の揺動角度をこの時点で改めて調整する必要はない。
【0050】
前壁16を側壁14および網部材22に固定できれば、続いて、作業者は、天壁18を側壁14および前壁16の上に被せ、固定する。このとき、天壁18が、前下がりに傾斜した側壁14の上縁に沿って落下することを防止するために、天壁18の前端に天側突起58を、固定枠12の上端に天側係止溝54を、それぞれ設けている。
【0051】
図7は、天側係止溝54に天側突起58を差し込んだ際の断面図である。図5図7に示すように、天壁18の前端は、上方に屈曲しており、これが天側突起58となる。一方、固定枠12の上端は、前方かつ下方に折り返されており、下方に垂れる垂れ壁53が形成されている。この垂れ壁53と固定枠12との隙間が、天側係止溝54となる。また、固定枠12の通過開口29の上縁は、前方に折り曲げられており、略水平方向に延びる載置部56を形成する。この載置部56上面から垂れ壁53の下端までの距離L4は、天側突起58の高さL5より小さい。
【0052】
天壁18を取り付ける際、作業者は、まず、天側突起58を天側係止溝54に差し込む。具体的には、作業者は、図7において二点鎖線で示すように、天壁18の前端を、載置部56に載置した状態で、天側突起58が前下がりに傾斜するように、ひいては、天壁18が前上がりになるように、天壁18を大きく傾斜させて、天側突起58を固定枠12の前端壁に当たる位置まで押し込む。その状態で、天側突起58が鉛直方向と略平行になるように、天壁18を徐々に揺動させていけば、天側突起58が天側係止溝54内に差し込まれる。
【0053】
天側突起58が天側係止溝54に差し込まれれば、作業者は、天壁18を側壁14および前壁16にビス止めする。ここで、天側突起58が天側係止溝54に差し込まれた段階で、天側突起58の上端は、天側係止溝54の下端より高い。そのため、天壁18が斜め下方向に落下しようとしても、天側突起58が天側係止溝54に当接し、当該落下が阻害される。これにより、作業者は、天壁18を手で持ち続ける必要が無く、天壁18のビス止め作業を容易に行うことができる。
【0054】
以上の説明で明らかなとおり、図5図7に例示した参考例の場合、網部材22および天壁18を、固定枠12に係止可能としている。これにより、作業者は、網部材22および天壁18を手で持ち続ける必要がないため、網部材22および天壁18の取付作業、ひいては、通気口部材10の取付作業を簡易化できる。なお、上述の説明では、網部材22に底側係止溝60を、固定枠12に底側突起62を設けているが、これは逆でもよい。すなわち、固定枠12の下端に上方に開口した底側係止溝60を、網部材22の前端に下方に延びる底側突起62を設けてもよい。同様に、天壁18の前端に下方に開口した天側係止溝54を形成し、固定枠12の上端に上方に延びる天側突起58を設けてもよい。また、上述の説明では、網部材22、前壁16、天壁18の順で、側壁14に取り付けているが、網部材22および天壁18のいずれか一方を最初に取り付けるのであれば、その他の順番は、適宜、変更されてもよい。例えば、一対の側壁14を開いた後、天壁18、前壁16、網部材22の順番、あるいは、天壁18、網部材22、前壁16の順番、あるいは、網部材22、天壁18、前壁16の順番で、取り付けてもよい。なお、当然ながら、取り付けの順番に応じて、各部材の形状や締結孔26の位置は、適宜、変更すればよい。
【符号の説明】
【0055】
10 通気口部材、12 固定枠、14 側壁、16 前壁、18 天壁、19 スナップ錠、20 支持枠、22 網部材、24,24a~24e ヒンジ、26,26a~26e 締結孔、28 カバー空間、29 通過開口、30 第一側壁片、32 第二側壁片、33 折り目、34 リブ、36 差し込み溝、40 前横材、42 縦材、44 後横材、46 ベース、48 立脚部、50 網、52 網枠、53 垂れ壁、54 天側係止溝、56 載置部、58 天側突起、60 底側係止溝、62 底側突起、100 外壁、102 換気孔。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7