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特許7634377車両検知装置、車両検知方法、及び判定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】車両検知装置、車両検知方法、及び判定装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/015 20060101AFI20250214BHJP
   G08G 1/04 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
G08G1/015 A
G08G1/04 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021012654
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2022116477
(43)【公開日】2022-08-10
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【弁理士】
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【弁理士】
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【弁理士】
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(72)【発明者】
【氏名】菅原 将人
【審査官】西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-139510(JP,A)
【文献】特開2020-139783(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136660(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス光を投光する投光部と、
前記投光部と対向して配置され、前記投光部からの前記パルス光を受光して受光信号を生成する受光部と、
前記受光信号の信号電圧と基準電圧とを比較する比較部と、
1回の前記パルス光の受光により生成される前記受光信号の信号電圧が前記基準電圧よりも大きくなる時間の長さを測定する測定部と、
前記時間の長さに基づいて、前記投光部と前記受光部との間の物体の有無を判定する判定部と、
を備える、車両検知装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記時間の長さに基づいて、前記車両検知装置の設置又は保守の良否をさらに判定する、
請求項1に記載の車両検知装置。
【請求項3】
前記判定部は、
前記時間の長さが第1閾値以下である場合、前記投光部と前記受光部との間に物体が有ると判定し、
前記時間の長さが前記第1閾値超過、第2閾値以下である場合、前記投光部と前記受光部との間に物体は無いが、前記車両検知装置の設置又は保守が不良であると判定し、
前記時間の長さが前記第2閾値超過である場合、前記投光部と前記受光部との間に物体が無く、且つ前記車両検知装置の設置又は保守が良好であると判定する、
請求項2に記載の車両検知装置。
【請求項4】
前記測定部は、前記投光部が前記パルス光を投光するタイミングに基づいて設定される測定ウィンドウにおいて、前記時間の長さを測定する、
請求項1ないし3の何れかに記載の車両検知装置。
【請求項5】
前記投光部は、上下方向に配列する複数の発光素子を含み、
前記受光部は、上下方向に配列する複数の受光素子を含み、
複数の前記受光素子のそれぞれについて前記比較部が設けられる、
請求項1ないし4の何れかに記載の車両検知装置。
【請求項6】
前記判定部は、複数の前記受光素子について測定された複数の前記時間の長さのうち、最も長い前記時間の長さとの差が閾値以上となる前記時間の長さが所定数以上ある場合、又は一部の前記時間の長さが残りの前記時間の長さに比べて短い場合に、前記投光部と前記受光部との間の物体が有ると判定する、
請求項5に記載の車両検知装置。
【請求項7】
前記判定部は、複数の前記受光素子のうちの下側にある一部の受光素子について測定された前記時間の長さに基づいて、前記投光部と前記受光部との間の物体の有無を判定する、
請求項5または6に記載の車両検知装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記時間の長さと、当該時間の長さが測定される以前に測定された前記時間の長さとの差が閾値以上になった場合に、前記投光部と前記受光部との間の物体が有ると判定する、
請求項1ないし7の何れかに記載の車両検知装置。
【請求項9】
学習済みモデルを用いて、複数の前記受光素子について測定された複数の前記時間の長さの時系列データから、前記投光部と前記受光部との間を通過する車両の種類を識別する識別部をさらに備える、
請求項5に記載の車両検知装置。
【請求項10】
前記車両の速度を検出する検出部をさらに備え、
前記識別部は、前記車両の速度に応じて正規化された前記時系列データから、前記車両の種類を識別する、
請求項9に記載の車両検知装置。
【請求項11】
投光部によりパルス光を投光し、
前記投光部と対向して配置された受光部により、前記投光部からの前記パルス光を受光して受光信号を生成し、
前記受光信号の信号電圧と基準電圧とを比較し、
1回の前記パルス光の受光により生成される前記受光信号の信号電圧が前記基準電圧よりも大きくなる時間の長さを測定し、
前記時間の長さに基づいて、前記投光部と前記受光部との間の物体の有無を判定する、
車両検知方法。
【請求項12】
投光部からのパルス光を受光する受光部により生成された受光信号の信号電圧と基準電圧とを比較する比較部の出力信号を受信する受信部と、
前記出力信号に基づいて、1回の前記パルス光の受光により生成される前記受光信号の信号電圧が前記基準電圧よりも大きくなる時間の長さを測定する測定部と、
前記時間の長さに基づいて、前記投光部と前記受光部との間の物体の有無を判定する判定部と、
を備える判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両検知装置、車両検知方法、及び判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車線の幅方向の一方に配置され、高さ方向に複数配列された投光部と、車線を挟んで幅方向で投光部に対向し、各々の投光部と対をなして高さ方向に複数配列された受光部とを備え、投光部が投光する検知光と検知光を受光する受光部とを結ぶ光軸が遮光されたか否かを示す受光信号に基づいて、車線に車両が存在するか否かを検知する車両検知装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-185436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような車両検知装置では、雨天時等に、投光部から投光された光が路面で反射して受光部に入射することがあり、誤検知のおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、誤検知を抑制することが可能な車両検知装置、車両検知方法、及び判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の態様の車両検知装置は、パルス光を投光する投光部と、前記投光部と対向して配置され、前記投光部からの前記パルス光を受光して受光信号を生成する受光部と、前記受光信号の信号電圧と基準電圧とを比較する比較部と、前記受光信号の信号電圧が前記基準電圧よりも大きい時間を測定する測定部と、前記時間の長さに基づいて、前記投光部と前記受光部との間の物体の有無を判定する判定部と、を備える。
【0007】
また、本発明の他の態様の車両検知方法は、投光部によりパルス光を投光し、前記投光部と対向して配置された受光部により、前記投光部からの前記パルス光を受光して受光信号を生成し、前記受光信号の信号電圧と基準電圧とを比較し、前記受光信号の信号電圧が前記基準電圧よりも大きい時間を測定し、前記時間の長さに基づいて、前記投光部と前記受光部との間の物体の有無を判定する。
【0008】
また、本発明の他の態様の判定装置は、投光部からのパルス光を受光する受光部により生成された受光信号の信号電圧と基準電圧とを比較する比較部の出力信号を受信する受信部と、前記出力信号に基づいて、前記受光信号の信号電圧が前記基準電圧よりも大きい時間を測定する測定部と、前記時間の長さに基づいて、前記投光部と前記受光部との間の物体の有無を判定する判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、誤検知を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る車両検知装置の例を示す図である。
図2】車両検知装置による物体検知の例を示す図である。
図3】受光部及び比較部の例を示す回路図である。
図4】判定装置の例を示すブロック図である。
図5】判定部による判定の例を示す図である。
図6】時間測定の例を示す図である。
図7】物体検知の例を説明する図である。
図8】検出時間の例を示す図である。
図9】検出時間の例を示す図である。
図10】検出時間の例を示す図である。
図11】検出時間の例を示す図である。
図12】参考例を示す回路図である。
図13】判定装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1及び図2は、実施形態に係る車両検知装置1の例を示す図である。車両検知装置1は、投光部2及び受光部3を備えており、投光部2から投光された光を受光部3が受光する。光は、例えば赤外光である。
【0013】
本実施形態では、車両検知装置1は透過型多光軸光電センサであり、投光部2及び受光部3は上下方向に配列する複数の光軸を形成する。投光部2は、上下方向に配列する複数の発光素子21備えており、受光部3は、上下方向に配列する複数の受光素子31を備えている。
【0014】
投光部2及び受光部3は、車両VHが走行する道路RDを挟むように、対向して配置される。投光部2から受光部3に向かう光が車両VH等の物体によって遮られた場合に、物体が検知される。
【0015】
図2に示すように、車両検知装置1の下部では、投光部2から投光された光の一部が路面で反射して受光部3に入光することがある。その場合、投光部2と受光部3との間に物体Bが存在していても、物体Bを検知できないおそれがある。
【0016】
また、車両検知装置1の検知分解能は、対となる発光素子21と受光素子31の数に依存するため、牽引棒のような車両VHに対して小さな物体まで検知しようとすると、発光素子21と受光素子31をそのピッチを狭めて多数並べる必要がある。
【0017】
そこで、本実施形態では、以下に説明するように、受光信号の信号電圧が基準電圧よりも大きい時間の長さを測定し、測定された時間の長さを判定に用いることで、それらの課題を解決している。
【0018】
図3は、受光部3及び比較部4の例を示す回路図である。同図では、各要素の信号波形の例も示している。同図に示す構成は、受光部3に含まれる複数の受光素子31のそれぞれに設けられる。
【0019】
本実施形態では、投光部2は、所定の時間幅を持つパルス光を投光する。受光素子31は、投光部2から投光されたパルス光を受光して受光信号を生成する。受光信号は、パルス光に対応した矩形波となる。
【0020】
受光信号は、微分回路32及び増幅濾波回路33を通じて比較部(例えば、比較回路)4に入力される。増幅濾波回路33は、複数のアンプを含んでおり、受光信号を増幅するとともに、所定の周波数帯の成分を抽出する。
【0021】
比較部4は、受光信号の信号電圧と基準電圧RFとを比較する。比較部4は、受光信号の信号電圧が基準電圧RFより大きいときにハイレベル電圧を出力し、受光信号の信号電圧が基準電圧RFより小さいときにローレベル電圧を出力する。
【0022】
受光信号の信号電圧が基準電圧RFより大きい時間(以下、検出時間tdetという)の長さは、パルス光の強度に対応する。すなわち、パルス光の強度が高いほど検出時間tdetが長くなり、パルス光の強度が低いほど検出時間tdetが短くなる。
【0023】
このため、パルス光が受光素子31に直接入光する場合には、検出時間tdetが比較的長くなる。一方、パルス光が受光素子31に直接入光せず、路面で反射した反射光のみが受光素子31に入光する場合には、検出時間tdetが比較的短くなる。
【0024】
図4は、判定装置5の機能構成例を示すブロック図である。判定装置5は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)である。これに限らず、判定装置5は、他のPLD(Programmable Logic Device)であってもよいし、CPU等を含むコンピュータであってもよい。
【0025】
判定装置5は、受信部51、測定部52、及び判定部53を機能部として備えている。受信部51は、比較部4の出力信号を受信する。測定部52は、比較部4の出力信号に基づいて、受光信号の信号電圧が基準電圧RFより大きい時間(検出時間tdet)の長さを測定する。
【0026】
判定部53は、検出時間tdetの長さに基づいて、投光部2と受光部3との間の物体Bの有無を判定する。また、判定部53は、検出時間tdetの長さに基づいて、投光部2及受光部3の設置又は保守の良否をさらに判定する。
【0027】
図5は、判定部53による判定の例を示す図である。閾値t1,t2,t3は、t1>t2>t3の関係にある。判定部53は、検出時間tdetの長さが閾値t3(第1閾値の例)以下である場合に、投光部2と受光部3との間に物体Bが有ると判定する。
【0028】
また、判定部53は、検出時間tdetの長さが閾値t1(第2閾値の例)超過である場合に、投光部2と受光部3との間に物体Bが無く、且つ投光部2及び受光部3の設置又は保守が良好である(すなわち、不良無し)と判定する
【0029】
また、判定部53は、検出時間tdetの長さが閾値t3超過、閾値t1以下である場合に、投光部2及び受光部3の設置又は保守が不良であると判定する。詳しくは、判定部53は、検出時間tdetの長さが閾値t3超過、閾値t2以下である場合に保守不良であると判定し、検出時間tdetの長さが閾値t2超過、閾値t1以下である場合に設置不良であると判定する。
【0030】
設置不良は、例えば設置時に投光部2及び受光部3の光軸ずれ等の理由で、十分に光が入光しない場合である。保守不良は、例えば経年使用による投光部2及び受光部3のレンズ汚れ等の理由で、十分に光が入光しない場合である。
【0031】
このように、パルス光の強度を表す検出時間tdetの長さに基づく判定を行うことで、パルス光が受光素子31に直接入光する状態と、パルス光が受光素子31に直接入光せず、路面で反射した反射光のみが受光素子31に入光する状態とを判別でき、誤検知を抑制することが可能となる。また、物体の有無だけでなく、設置又は保守の良否を判定することも可能となる。
【0032】
なお、上記図2に示したように、路面で反射した反射光が入光するのは、受光部3に設けられた複数の受光素子31のうちの下側にある一部の受光素子31だけであるので、それら一部の受光素子31については、検出時間tdetの長さに基づいて物体の有無を判定し、残りの受光素子31については、従来と同様に受光の有無によって物体の有無を判定してもよい。
【0033】
図6は、検出時間tdetを測定するための測定ウィンドウtWINの例を示す図である。測定部52は、投光部2によるパルス光の投光タイミングに応じて、検出時間tdetを測定してもよい。すなわち、測定部52は、投光タイミングを基準に所定の測定ウィンドウtWINを設け、その期間に検出時間tdetを測定する。これにより、外乱等の影響を受け難くすることが可能となる。
【0034】
図7は、車両検知装置1において牽引棒Pのような車両よりも小さな物体を検知する例を示す図である。本実施形態によれば、以下に説明するように、発光素子21及び受光素子31の数を従来より減らしてピッチを広げたとしても、検知分解能を維持することが可能となる。
【0035】
同図に示すように、発光素子21から投光される光は一定の広がりを持つため、例えば2番目の発光素子21bから投光される光L2は、対となる2番目の受光素子31bだけでなく、その上下にある受光素子31a,31cでも受光される。同様に、3番目の発光素子21cから投光される光L3は、対となる3番目の受光素子31cだけでなく、その上下にある受光素子31b,31dでも受光される。
【0036】
ここで、投光部2と受光部3との間に牽引棒Pが位置する状態を考えたとき、光L2が牽引棒Pで遮蔽されることでできる影は、2,3番目の受光素子31b,31cの間に位置するため、光L2に関して受光素子31b,31cの受光量は変化しない。一方、光L3が牽引棒Pで遮蔽されることでできる影は、2番目の受光素子31b上に位置するため、光L3に関して受光素子31bの受光量は変化する。
【0037】
上述したように、本実施形態によれば、検出時間tdetの長さによって受光量の強弱を判別できるため、同図の例では、2番目の受光素子31bにおける受光量の変化によって牽引棒Pの検知が可能である。このように、発光素子21及び受光素子31の数を従来より減らしてピッチを広げても、検出時間tdetの長さによって受光量の強弱を判別することで、検知分解能を維持することが可能となる。
【0038】
図8は、検出時間tdetを比較して物体検知を行う例を説明する図である。上記図7に示すように発光素子21及び受光素子31が上下方向に配列する場合において、判定部53は、複数の受光素子31で測定された複数の検出時間tdetの長さの差に基づいて、投光部2と受光部3との間の物体の有無を判定してもよい。
【0039】
同図は、1~3番目の受光素子31a~31cで測定された検出時間tdet1~tdet3を示している。投光部2と受光部3との間に物体が無い場合には、検出時間tdet1~tdet3の長さはほぼ等しいが、投光部2と受光部3との間に物体が有る場合には、検出時間tdet1~tdet3の一部の長さが他よりも短くなる。
【0040】
例えば、判定部53は、同図に示すように、最も長い検出時間tdet3との差が閾値以上となる検出時間tdet1,tdet2が2つ以上ある場合に、投光部2と受光部3との間に物体があると判定する。
【0041】
また、例えば図9に示すように、受光素子31a,31bの検出時間tdet1,tdet2に比べて受光素子31cの検出時間tdet3が短いのであれば、発光素子21bと受光素子31cとの間に物体があると推定できる。
【0042】
図10及び図11は、検出時間tdetの変動に基づいて物体検知を行う他の例を説明する図である。判定部53は、測定された検出時間tdetの長さと、それ以前に測定された検出時間tdetの長さとの差に基づいて、投光部2と受光部3との間の物体の有無を判定してもよい。
【0043】
図10は、投光部2と受光部3との間に物体が無いときに測定された検出時間tdet(n-1)と、投光部2と受光部3との間に物体が有るときに測定された検出時間tdet(n)とを示している。検出時間tdet(n)は、検出時間tdet(n-1)よりも短くなる。
【0044】
例えば、判定部53は、測定された検出時間tdet(n)の長さと、当該検出時間tdet(n)の長さが測定される以前に測定された検出時間tdet(n-1)の長さとの差が閾値以上となった場合に、投光部2と受光部3との間に物体があると判定する。
【0045】
なお、上記実施形態では、判定装置5はFPGA等又はコンピュータで構成されるが、これには以下のようなメリットがある。
【0046】
従来方式では、受光信号の信号電圧が閾値Vth以上であるか否かを判定するが、閾値Vthは固定値である。この場合、投光部と受光部の距離が最も長い条件に合わせて閾値Vthを決定する必要があるが、そうすると、それよりも投光部と受光部の距離が短い条件では、閾値Vthは最適な閾値とは言えなくなる。
【0047】
これに対し、本実施形態では、FPGA等又はコンピュータを用いるため、検出時間tdetに適用する閾値tthを自由に変更することが可能である。例えば、投光部2と受光部3を設置したときに測定された検出時間tdetを初期値tdet0とし、初期値tdet0に0.8等の所定値を乗じた値を閾値tthとすることで、適切な閾値を設定できる。
【0048】
また、従来方式では、全ての受光信号の信号電圧が閾値Vth以上となることを確認しながら投光部と受光部が設置されるが、その場合、最適な設置となっているとは限らない。又は、オシロスコープで受光信号の波形が最も大きくなるように確認しながら投光部と受光部が設置されるが、その場合、オシロスコープが必要となって設置が手間である。
【0049】
これに対し、本実施形態では、FPGA等又はコンピュータを用いて検出時間tdetの長さを測定するため、投光部2と受光部3を検出時間tdetの長さが最大となる最適な設置に調整することが容易である。また、PC等を利用して検出時間tdetの長さを確認することができるので、オシロスコープを用いる場合よりも確認が容易である。
【0050】
図12は、参考例を示す回路図である。同図に示すように、基準電圧RF1~RF3が互いに異なる複数の比較部41~43を設けて、受光信号の信号電圧の強度を判定してもよい。図中の基準電圧RF1~RF3は、RF1>RF2>RF3の関係にある。
【0051】
例えば、上記図5に示した判定例と同様に、判定部53は、比較部41~43の全てがハイレベル電圧を出力する場合には、投光部2と受光部3との間に物体Bが無く、且つ投光部2及び受光部3の設置又は保守が良好であると判定する。
【0052】
また、判定部53は、比較部41がローレベル電圧を出力し、比較部42,43がハイレベル電圧を出力する場合には、保守不良であると判定する。また、判定部53は、比較部41,42がローレベル電圧を出力し、比較部43がハイレベル電圧を出力する場合には、設置不良であると判定する。
【0053】
また、判定部53は、比較部41~43の全てがローレベル電圧を出力する場合には、投光部2と受光部3との間に物体Bが有ると判定する。このように複数の比較部41~43で受光信号の信号電圧の強度を測定することによっても、誤検知を抑制し、設置又は保守の良否も判定することが可能となる。
【0054】
[変形例]
以下に説明する変形例に係る判定装置5は、CPU等を含むコンピュータで構成され、学習済みモデルを用いて、検出時間tdetの長さの時系列データから、投光部2と受光部3との間を通過する車両VHの種類を識別する。
【0055】
図13は、変形例に係る判定装置5の機能構成例を示すブロック図である。変形例に係る判定装置5は、受信部51、測定部52、及び判定部53に加えて、正規化部54、車種識別部55、モデル保持部56をさらに備えている。
【0056】
受信部51、測定部52、判定部53、正規化部54、及び車種識別部55は、判定装置5のCPUがプログラムに従って情報処理を実行することによって実現される。モデル保持部56は、判定装置5のメモリに構築される。
【0057】
正規化部54は、車両VHの速度を検出する車速検出部6に接続されており、車速検出部6から車速データを取得する。車速検出部6は、投光部2と受光部3の近くに設けられ、道路RDを走行する車両VHの速度を検出する。
【0058】
測定部52は、複数の受光素子31(図2等参照)についてそれぞれ測定された複数の検出時間tdetの長さの時系列データを、正規化部54及び車種識別部55に提供する。時系列データは、投光部2がパルス光を投光する毎に測定される検出時間tdetの時間的変化を表す。
【0059】
正規化部54は、車速検出部6から取得された車速データに応じて、測定部52から取得された時系列データを正規化する。具体的には、正規化部54は、時系列データの時間軸を車速で除算する。
【0060】
車種識別部55は、モデル保持部56に記憶された学習済みモデルを用いて、正規化部54から取得された正規化された時系列データから、投光部2と受光部3との間を通過する車両VHの車種を識別する。車種は、例えば軽自動車、普通車、中型車などである。
【0061】
モデル保持部56に記憶された学習済みモデルは、例えば、学習用の時系列データを入力データとし、車種を教師データとして、機械学習により予め生成される。
【0062】
学習用の時系列データは、上述した検出時間tdetの長さの時系列データと同様に測定され、正規化された時系列データである。
【0063】
教師データとしての車種は、例えば道路に埋設された踏板の検知データから算出されるタイヤ幅等に応じて判定される車種である。判定された車種を学習用の時系列データに関連付けることで、学習用データセットが作成される。
【0064】
学習済みモデルは、例えば畳み込みニューラルネットワークであり、畳み込み層、プーリング層、全結合層、及び出力層を含んでいる。特には、ニューロンを多段に組み合わせたディープニューラルネットワークが好適である。
【0065】
学習は、学習用の時系列データを入力データとしてモデルに入力し、計算を行い、車種を出力データとして出力するとともに、出力データとしての車種と教師データとしての車種との差分を算出し、差分が減少するようにモデルのパラメータを調整することで実現される。また、学習の合間に、テスト用のデータセットを用いて、モデルの妥当性が評価される。
【0066】
以上に説明した変形例によれば、道路RDに踏板を設けずとも、検出時間tdetの長さの時系列データから、投光部2と受光部3との間を通過する車両VHの種類を識別することが可能となる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が当業者にとって可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0068】
1 車両検知装置、2 投光部、21 発光素子、3 受光部、31 受光素子、32 微分回路、33 増幅濾波回路、4 比較部、5 判定装置、51 受信部、52 測定部、53 判定部、54 正規化部、55 車種識別部、56 モデル保持部

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