(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】小口径推進工法における推進方向制御用可変長型誘導アンテナ
(51)【国際特許分類】
E21D 9/093 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
E21D9/093 H
(21)【出願番号】P 2021022845
(22)【出願日】2021-02-16
【審査請求日】2024-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(73)【特許権者】
【識別番号】506343704
【氏名又は名称】株式会社トーメック
(74)【代理人】
【識別番号】100075410
【氏名又は名称】藤沢 則昭
(74)【代理人】
【識別番号】100135541
【氏名又は名称】藤沢 昭太郎
(72)【発明者】
【氏名】三角 久
(72)【発明者】
【氏名】大久保 実
(72)【発明者】
【氏名】内田 みつる
(72)【発明者】
【氏名】植野 進一
(72)【発明者】
【氏名】壁内 輝夫
(72)【発明者】
【氏名】菊地 健太
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-065653(JP,A)
【文献】特開平09-273385(JP,A)
【文献】実開昭55-050180(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/00-9/14
G01B 7/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上の推進計画線上に配置され、地中を推進する推進ヘッドから発信する電磁波を受信する誘導アンテナにおいて、
脚体に支持された水平な固定用フレームに設けた左右のコイルの水平方向の幅を可変とした
構成とし、
前記左右のコイルの水平方向の幅を可変とした構成は、固定用フレームの左右に、先端にコイルを設けたアームを、固定用フレームのフレーム前面に沿って回転自在に設け、各アームは、固定用フレームの両端から略水平に突出した位置から固定用フレームの内側上方まで回転かつ固定自在としたことを特徴とする、小口径推進工法における推進方向制御用可変長型誘導アンテナ。
【請求項2】
前記固定用フレームは上向きの断面コ字型の部材から成り、前記各アームの基端部は固定用フレームの前後板を貫通する軸に夫々取り付けられ、当該各軸を中心とした円弧上に、固定用フレームの前後板に複数対の貫通孔を設け、各アームが固定用フレームから折れ曲がった状態では、これらの複数対の貫通孔の一対に挿入した棒体により各アームはその位置で支持される構成としたことを特徴とする、請求項1に記載の小口径推進工法における推進方向制御用可変長型誘導アンテナ。
【請求項3】
地上の推進計画線上に配置され、地中を推進する推進ヘッドから発信する電磁波を受信する誘導アンテナにおいて、
脚体に支持された水平な固定用フレームに設けた左右のコイルの水平方向の幅を可変とした構成とし、
前記左右のコイルの水平方向の幅を可変とした構成は、前記固定用フレームを上向きのコ字型の部材とし、左右の各コイルは夫々アームに支持され、各アームの下部は前記固定用フレームの中に、当該固定用フレームの長手方向に沿って摺動自在に嵌められ、前記各コイルは固定用フレームの上端縁より突出し、前記固定用フレームの両端では前記各コイルは固定用フレームの両端から外方に突出可能な構成としたことを特徴とする、小口径推進工法における推進方向制御用可変長型誘導アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地中への小口径推進工法において、推進方向制御のための受信アンテナであって、可変長型の誘導アンテナ及び当該アンテナを用いた推進方向制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
小口径推進工法における推進ヘッドの方向制御のための水平方向の位置計測は、
図9及び
図10に示すように、電磁誘導法の原理を利用し、推進ヘッド内の発信器の電磁波を地上の推進基線(推進計画線)上に直角に設置した誘導アンテナの左右の2つのコイルで受信して、電磁波の強弱から2つのコイルのどちらの側に発信源(推進ヘッド)があるのかを推定し、この結果に応じて推進ヘッドの推進方向を修正しながら推進する。従って、推進基線に対する誘導アンテナの向きが極めて重要になると共に、ヘッドの進行方向が2つのコイルの間から外れると測定できなくなる欠点がある。
【0003】
特許文献1のものも上記と同様の方法で推進方向の制御をおこなっているものであり、測定精度を向上させるため改良されたものである。
【0004】
この特許文献1のものは、地中を推進方向変更自在に推進可能な推進体の先端部に設けられてその長手方向に沿った軸芯を有する発信コイルから電磁波を発信し、地上に設けて当該電磁波を受信自在で、かつ、前記推進体の予定到達部までの推進計画線を含む鉛直面を中央に挟む左右2個を配置した一対の受信コイルを固定用フレームの左右に配し、当該固定用フレームは三脚を有する雲台の上に支持され、左右の受信コイルの軸芯が水平面となす俯角が変更自在で、かつ、任意の俯角に対して固定用フレームを固定可能な固定用フレームスタンドから成る推進方向制御用の受信装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1のものを含め従来の装置及び方法では以下の問題点がある。測定精度がアバウトで分かりづらく、結果として精度が悪くなる。誘導アンテナによる位置の測定は、電磁誘導法の原理を利用しているものの、推進計画線からのずれ量を長さで示すものではなく、磁界強度の数値データで表示され、左右コイルのどちら側に発信源(推進ヘッド)があるかを示しているにとどまっている。
【0007】
加えて、左右コイルの磁界強度の差を小さくしても、必ずしもずれ量に比例しておらず、結果として精度が確保できないケースが多い。技術的には計画基線からのずれ量を長さで示すことは可能であるが、電磁誘導法は様々な要因により測定結果に誤差が生じるため、取り扱いの簡素化のため、このような測定結果を磁界強度で表示するようにしている。
【0008】
また、当該測定システムでは推進ヘッド内の発信器が左右のコイルの間から外れると測定不能となる構造となっている。この測定方法は、分かりやすい反面どれだけ外れてしまったか、全く予想できないため、短距離施工では到達位置の精度悪化及び不安定化につながっている。
【0009】
また、家屋側面の壁立ち上げ管路の施工に対応できない。当該誘導アンテナは全幅が1,172mmであるため、家屋側面の壁立ち上げ管路の施工において壁からの最小離隔幅は586mmと大きくなり、家屋側面の壁立ち上げ箇所の手前に推進ヘッドを到達させ、その後は開削して管路を埋めて接続する必要がある。
【0010】
そこで、この発明は上述の課題を解決するため、推進工法の推進方向制御に使用する誘導アンテナの左右のコイルの間隔を可変にして測定精度を上げると共に、前記左右のコイルの間隔を狭くすることにより、狭い空間での使用や家屋等の壁際への管路の到達施工にも使用できる誘導アンテナ及びこれを用いた推進方向制御方法を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、地上の推進計画線上に配置され、地中を推進する推進ヘッドから発信する電磁波を受信する誘導アンテナにおいて、脚体に支持された水平な固定用フレームに設けた左右のコイルの水平方向の幅を可変とした構成とし、前記左右のコイルの水平方向の幅を可変とした構成は、固定用フレームの左右に、先端にコイルを設けたアームを、固定用フレームのフレーム前面に沿って回転自在に設け、各アームは、固定用フレームの両端から略水平に突出した位置から固定用フレームの内側上方まで回転かつ固定自在とした、小口径推進工法における推進方向制御用可変長型誘導アンテナとした。
【0012】
また、請求項2の発明は、前記固定用フレームは上向きの断面コ字型の部材から成り、前記各アームの基端部は固定用フレームの前後板を貫通する軸に夫々取り付けられ、当該各軸を中心とした円弧上に、固定用フレームの前後板に複数対の貫通孔を設け、各アームが固定用フレームから折れ曲がった状態では、これらの複数対の貫通孔の一対に挿入した棒体により各アームはその位置で支持される構成とした、請求項1に記載の小口径推進工法における推進方向制御用可変長型誘導アンテナとした。
【0013】
また、請求項3の発明は、地上の推進計画線上に配置され、地中を推進する推進ヘッドから発信する電磁波を受信する誘導アンテナにおいて、脚体に支持された水平な固定用フレームに設けた左右のコイルの水平方向の幅を可変とした構成とし、
前記左右のコイルの水平方向の幅を可変とした構成は、前記固定用フレームを上向きのコ字型の部材とし、左右の各コイルは夫々アームに支持され、各アームの下部は前記固定用フレームの中に、当該固定用フレームの長手方向に沿って摺動自在に嵌められ、前記各コイルは固定用フレームの上端縁より突出し、前記固定用フレームの両端では前記各コイルは固定用フレームの両端から外方に突出可能な構成とした、小口径推進工法における推進方向制御用可変長型誘導アンテナとした。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、左右のコイルの水平方向の幅を変えることにより受信する電磁波の強度の強い位置を探すことができ、より正確に発信源である推進ヘッドの位置を推定でき、推進方向制御の精度が上がる。また、左右のコイルの水平方向の幅を最大長よりやや短くした幅にして推進ヘッドの位置を検索すれば、その状態で推進ヘッドの位置が外れていれば、左右のコイルの幅を拡げて推進ヘッドに位置をとらえることができる。また一方で、左右のコイルの水平方向の幅を狭くしたままで使用すれば、従来適用できなかった住宅間の狭い空間での施工でも適用できる。
【0018】
さらに、家屋等の側面の壁に近接して管路を立ち上げる場合、左右のコイルを垂直に立ち上げるか内側に傾けてこれらのコイルの間隔を狭め、一方のコイルを壁に接近させることにより家屋等の壁の間際を到達地点として推進ヘッドを立ち上げることができる。
【0019】
また、請求項1及び2の発明によれば、固定用フレームの左右端に、コイルを先端に設けたアームを回転自在に設けた簡単な構造で、左右のコイルの水平方向の幅を可変できる。特に請求項2は、前記アームが固定用フレームに対して折れ曲がった位置で容易に固定できる。
【0020】
また、請求項3の発明によれば、固定用フレーム内に、左右の各コイルの支持体を嵌め、かつ、これらの各支持体が固定用フレームに沿って摺動、回転及び固定自在であるため、簡単な構造で左右のコイルの水平方向の幅を可変できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】この発明の実施の形態例1の可変長型誘導アンテナの正面図である。
【
図2】この発明の実施の形態例1の可変長型誘導アンテナの左右のアームを垂直に立てた上部正面図である。
【
図3】この発明の実施の形態例1の可変長型誘導アンテナの左右のアームを垂直に立てた上部一部縦断面側面図である。
【
図4】この発明の実施の形態例1の可変長型誘導アンテナの左右のアームを斜め内側に傾けた状態の上部正面図である。
【
図5】この発明の実施の形態例1の可変長型誘導アンテナの左右のアームを斜め外側に傾けた状態の上部正面図である。
【
図6】この発明の実施の形態例1の可変長型誘導アンテナを使用した推進方向制御方法を示す側面図である。
【
図7】この発明の実施の形態例2の可変長型誘導アンテナの正面図である。
【
図8】この発明の実施の形態例2の可変長型誘導アンテナの上部一部縦断面図側面である。
【
図9】従来から使用されている小口径推進工法における推進方向制御方法を示す縦断面イメージ図である。
【
図10】従来から使用されている小口径推進工法における推進方向制御方法における推進ヘッドの位置計測イメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施の形態例1)
この発明の実施の形態例1の可変長型誘導アンテナAを
図1~
図5に基づいて説明する。
【0024】
この可変長型誘導アンテナAは、水平な固定用フレーム1が、三脚2aから成る脚体2の上に支持されている。この固定用フレーム1は開口部が上に向いた断面コ字型の部材から構成されている。この固定用フレーム1の左右端部の前後板を貫通する各軸3にアーム4の一端が夫々取り付けられ、各アーム4は軸3を中心に回転自在となっている。
【0025】
これらの各アーム4の先端には電磁波を受信するコイル5が夫々設けられている。また、前記各軸3を中心に固定用フレーム1の前後板には貫通孔6が複数個設けられ、前記各アーム4の相応する位置にも一つの貫通孔(図示省略)が設けられている。これにより複数の貫通孔6の一つとアーム4の貫通孔の位置を合わせ、これらの貫通孔6にボルトを通し、ボルト端をナットで締め付ければ、各アーム4は固定される。なお、貫通孔に通すボルトに代えて、適宜の棒体を嵌めてもよい。さらに、上記の様に各アーム4に貫通孔を設けたが、各アーム4に貫通孔を設けず、固定用フレーム1の前後板の対の貫通孔6に棒体を通し、当該棒体にアーム4の一側を当接させて支持させる構成でも良い。
【0026】
従って、左右の各アーム4は前記固定用フレーム1に対して外方に水平に伸ばし(
図1の状態)、この状態で固定することもできる。また、
図2に示すように、各アーム4を固定用フレーム1に対して直角に曲げて固定することもできる。また、
図4に示すように、左右の各アーム4を前記固定用フレーム1の内側に斜めに傾けて固定すれば、左右のコイル5の間の長さが最も短いものとなる。
【0027】
さらに、
図5に示すように、左右のアーム4を前記固定用フレーム1の左右端部から外方斜め上方に傾けて固定することもできる等種々に位置を変えることにより、各アーム4の先端のアンテナ5の間隔幅が変えられる。
【0028】
次に
図6はこの可変長型誘導アンテナAを用いた推進方向制御方法を示す。
【0029】
発進立坑8内に設置した推進装置9により、先端に電磁波の発信器を具備した推進ヘッド10及び後続の推進管を土中に推進させる。一方、前記発進立坑8から到達立坑11までの推進基線上の地上の中間地点に可変長型誘導アンテナAを設置する。その際、左右のアーム4を固定用フレーム1に対して直角に折り曲げて固定する。
【0030】
これにより、推進ヘッド10が左右のコイル5の外側にずれた場合、左右のアーム4を外方に拡げることにより、推進ヘッド10をとらえることができる。従って、その結果推進ヘッド10の方向を修正できる。この様にして推進ヘッド10の位置ずれの縮小を図る。
【0031】
また、前記中間地点から到達地点、すなわち到達立坑11までの推進では、
図6に示すように左右のアーム4を前記固定用フレーム1の内側に傾けるか、左右のアーム4を直角に折り曲げた状態の可変長型誘導アンテナA´で使用する。これにより推進基線から狭い範囲内で推進ヘッド10を到達立坑11に到達させることができる。
【0032】
この様にして可変長型誘導アンテナAを用いることにより、左右のコイル5の間隔幅を変えたり狭めたりすることにより、受信した電磁波の強弱の差により、推進ヘッド10の位置をより正確に探知することができる。
【0033】
(実施の形態例2)
次にこの発明の実施の形態例2の可変長型誘導アンテナBを
図7及び
図8に基づいて説明する。
【0034】
この可変長型誘導アンテナBは、水平な固定用フレーム13が、三脚14aから成る脚体14の上に支持されている。この固定用フレーム13は開口部が上に向いた断面コ字型の部材から構成されている。この固定用フレーム13の溝13a内に板状のアーム15の下端が摺動自在にはめられており、当該アーム15の上端に電磁波受信用のコイル16が固定されている。そしてこのコイル16は前記固定用フレーム13の上端より上方に位置している。
【0035】
これらのアーム15及びコイル16は、固定用フレームの左右位置に2つ設けられている。また、前記固定用フレーム13の前面板及び背面板には、当該固定用フレーム13の長手方向に長孔17が夫々設けられている。そして、前記各アーム15の一端には、前記各長孔17に相応する位置に孔18が設けられ、これらの長孔17及び孔18にボルト19が貫通され、当該ボルト19の端部に蝶ナット20が螺着されている。
【0036】
これにより、各蝶ナット20を緩めれば、各アーム15は固定用フレーム13の溝13a内を摺動可能となり、蝶ナット20を締め付ければ支持体15は固定される。また、前記固定用フレーム1の前面板の長孔17の縁に沿って目盛21が設けられ、この目盛21は固定用フレーム13の中央点を中心に左右対称に目盛が付いている。
【0037】
また、
図7の点線で示すように、前記左右のコイル16は前記固定用フレーム1の両端では各アーム15を横に倒し、前記固定用フレーム1の側方に左右のコイル16を突出させ、固定することもできる。これにより、左右のコイル16は前記固定用フレーム13の左右幅より大きい間隔幅を得ることができる。
【0038】
この構成により、左右のコイル16の間隔幅を容易に変更でき、これにより受信した電磁波の強い位置を把握でき、推進ヘッド10の位置を的確に探知できる。
【0039】
なお、当該実施の形態例2の可変長型誘導アンテナBでは、長孔17と支持体15の孔18にボルト19を通して蝶ナット20で締め付けて支持体15を固定しているが、各支持体15が溝13aにぴったりと嵌っている構造であれば、これらの長孔17等は不要であり、各支持体15は溝内で摺動且つ固定自在としてもよい。
【0040】
また、前記固定用フレーム13は、断面コ字型の部材でなく、一枚の板体でもよい。その場合、固定用フレーム13の一つの長孔17と各アーム15の孔18にボルト19を通して、ボルト19の端部を蝶ナット20で締め付けてもよい。
【0041】
この発明の可変長型誘導アンテナは上記実施の形態例1及び2の構成に限定されるものではなく、左右のコイルの水平な間隔幅を変更できるならば、他の構成のものも含まれる。
【0042】
また、当該可変長型誘導アンテナA,Bによる推進方向制御方法は、
図6のものに限らず、適宜の方法が適用できる。
【符号の説明】
【0043】
A 可変長型誘導アンテナ
A´ 可変長型誘導アンテナAと同じもの
B 可変長型誘導アンテナ
1 固定用フレーム 2 脚体
2a 三脚 3 軸
4 アーム 5 コイル
6 貫通孔
8 発進立坑 9 推進装置
10 推進ヘッド 11 到達立坑
13 固定用フレーム 13a 溝
14 脚体 14a 三脚
15 アーム 16 コイル
17 長孔 18 孔
19 ボルト 20 蝶ナッド
21 目盛