(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20250214BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
(21)【出願番号】P 2021027837
(22)【出願日】2021-02-24
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小寺 隆志
(72)【発明者】
【氏名】松田 哲
(72)【発明者】
【氏名】飯田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】山下 正治
(72)【発明者】
【氏名】柴田 憲治
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-225144(JP,A)
【文献】特開2006-321471(JP,A)
【文献】特開2009-051491(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0070888(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00 - 6/10
B62D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の転舵輪を転舵させる機能を有する転舵機能部を含む車両に搭載される各種の機能を有する機能部のうちの前記転舵機能部を制御対象とする第1制御部と、
車両に搭載される機能部のうちの前記転舵機能部とは別の機能部
である、車両のステアリングホイールの操舵を可能にする機能を有する操舵機能部を制御対象とする第2制御部と、を有する車両用制御装置であって、
前記第1制御部は、
前記転舵輪を転舵させる結果として得られる実転舵制御量を実際に変化させたい分に対して、前記実転舵制御量の変化を抑えるように前記転舵機能部を動作させるための制御量である目標転舵制御量を補償する補償演算と、前記ステアリングホイールの操舵に連動して回転する前記操舵機能部が有するステアリングシャフトの回転に関わる位置関係が所定の対応関係を満たすように前記目標転舵制御量を換算する換算演算との少なくともいずれかを施す結果、前記転舵輪を転舵させるべく前
記目標転舵制御量を得るとともに、当該目標転舵制御量に基づき前
記実転舵制御量を制御するように構成され、
前記第2制御部は、前記目標転舵制御量、前記目標転舵制御量を得る過程の前記
補償演算及び前記換算演算に関わって得られる中間制御量、及び前記実転舵制御量の少なくともいずれかを用いて演算される転舵情報に基づいて、前記
操舵機能部の動作を制御するように構成され、
前記車両用制御装置は、前記第2制御部が前記
操舵機能部の動作を制御す
るべく
、前記第1制御部を通じて得られる前記目標転舵制御量、前記中間制御量、及び前記実転舵制御量の少なくともいずれかの調整を通じて前記転舵情報を
得るように構成される情報調整部を
さらに有
し、
前記第2制御部は、前記ステアリングホイールに反力を発生させるべく前記操舵機能部の動作を制御する反力制御部を含み、
前記反力制御部は、前記転舵輪に作用する路面からの反力に応じた反力成分として演算上の反力を前記情報調整部で調整して得られる調整後の前記転舵情報に基づき演算するように構成されており、
前記情報調整部は、前記操舵機能部に応じた調整として、前記第1制御部を通じて得られる前記目標転舵制御量、前記中間制御量、及び前記実転舵制御量の少なくともいずれかにおける、前記第1制御部での前記補償演算と前記換算演算との少なくともいずれかの影響具合を調整するように構成されている車両用制御装置。
【請求項2】
車両の転舵輪を転舵させる機能を有する転舵機能部を含む車両に搭載される各種の機能を有する機能部のうちの前記転舵機能部を制御対象とする第1制御部と、
車両に搭載される機能部のうちの前記転舵機能部とは別の機能部である、車両のステアリングホイールの操舵を可能にする機能を有する操舵機能部を制御対象とする第2制御部と、を有する車両用制御装置であって、
前記第1制御部は、前記操舵機能部の状態に関係なく車両が走行する進行方向を変化させるべく前記転舵機能部を動作させるための制御量である目標転舵制御量に方向可変用の制御量を追加する方向追加演算を施す結果、前記転舵輪を転舵させるべく前記目標転舵制御量を得るとともに、当該目標転舵制御量に基づき前記転舵輪を転舵させる結果として得られる実転舵制御量を制御するように構成され、
前記第2制御部は、前記目標転舵制御量、前記目標転舵制御量を得る過程の前記方向追加演算に関わって得られる中間制御量、及び前記実転舵制御量の少なくともいずれかを用いて演算される転舵情報に基づいて、前記操舵機能部の動作を制御するように構成され、
前記車両用制御装置は、前記第2制御部が前記操舵機能部の動作を制御するべく、前記第1制御部を通じて得られる前記目標転舵制御量、前記中間制御量、及び前記実転舵制御量の少なくともいずれかの調整を通じて前記転舵情報を得るように構成される情報調整部をさらに有し、
前記第2制御部は、前記ステアリングホイールを回転させるべく前記操舵機能部の動作を制御するステアリングホイール制御部を含み、
前記ステアリングホイール制御部は、前記操舵機能部を動作させるための制御量として目標操舵制御量を前記情報調整部で調整して得られる調整後の前記転舵情報に基づき演算するとともに、当該目標操舵制御量に基づき前記ステアリングホイールに連動して回転する前記操舵機能部が有するステアリングシャフトを回転させる結果として得られる実操舵制御量を制御するように構成されており、
前記情報調整部は、前記操舵機能部に応じた調整として、前記第1制御部を通じて得られる前記目標転舵制御量、前記中間制御量、及び前記実転舵制御量の少なくともいずれかにおける、前記第1制御部での前記方向追加演算の影響具合を調整するように構成されている車両用制御装置。
【請求項3】
車両の転舵輪を転舵させる機能を有する転舵機能部を含む車両に搭載される各種の機能を有する機能部のうちの前記転舵機能部を制御対象とする第1制御部と、
車両に搭載される機能部のうちの前記転舵機能部とは別の機能部である、車両の安定した旋回走行を行う機能を有する安定走行機能部を制御対象とする第2制御部と、を有する車両用制御装置であって、
前記第1制御部は、車両のステアリングホイールの操舵を可能にする機能を有する操舵機能部の状態に関係なく車両が走行することに関わって現れる特性を変化させるべく前記転舵機能部を動作させるための制御量である目標転舵制御量に特性可変用の制御量を加味する特性可変演算を施す結果、前記転舵輪を転舵させるべく前記目標転舵制御量を得るとともに、当該目標転舵制御量に基づき前記転舵輪を転舵させる結果として得られる実転舵制御量を制御するように構成され、
前記第2制御部は、前記目標転舵制御量、前記目標転舵制御量を得る過程の前記特性可変演算に関わって得られる中間制御量、及び前記実転舵制御量の少なくともいずれかを用いて演算される転舵情報に基づいて、前記安定走行機能部の動作を制御するように構成され、
前記車両用制御装置は、前記第2制御部が前記安定走行機能部の動作を制御するべく、前記第1制御部を通じて得られる前記目標転舵制御量、前記中間制御量、及び前記実転舵制御量の少なくともいずれかの調整を通じて前記転舵情報を得るように構成される情報調整部をさらに有し、
前記第2制御部は、車両の安定した旋回走行を行うべく前記安定走行機能部の動作を制御する安定走行制御部を含み、
前記安定走行制御部は、車両が旋回走行することに関わって現れる旋回特性を変化させるための制御量を前記情報調整部で調整して得られる調整後の前記転舵情報に基づき演算するとともに、当該制御量に基づき前記旋回特性を制御するように構成されており、
前記情報調整部は、前記安定走行機能部に応じた調整として、前記第1制御部を通じて得られる前記目標転舵制御量、前記中間制御量、及び前記実転舵制御量の少なくともいずれかにおける、前記第1制御部での前記特性可変演算の影響具合を調整するように構成されている車両用制御装置。
【請求項4】
車両の転舵輪を転舵させる機能を有する転舵機能部を含む車両に搭載される各種の機能を有する機能部のうちの前記転舵機能部を制御対象とする第1制御部と、
車両に搭載される機能部のうちの前記転舵機能部とは別の機能部である、車両の予想進路の案内を行う機能を有する進路案内機能部を制御対象とする第2制御部と、を有する車両用制御装置であって、
前記第1制御部は、前記転舵輪を転舵させる結果として得られる実転舵制御量を実際に変化させたい分に対して、前記実転舵制御量の変化を抑えるように前記転舵機能部を動作させるための制御量である目標転舵制御量を補償する補償演算を施す結果、前記転舵輪を転舵させるべく前記目標転舵制御量を得るとともに、当該目標転舵制御量に基づき前記実転舵制御量を制御するように構成され、
前記第2制御部は、前記目標転舵制御量、前記目標転舵制御量を得る過程の前記補償演算に関わって得られる中間制御量、及び前記実転舵制御量の少なくともいずれかを用いて演算される転舵情報に基づいて、前記進路案内機能部の動作を制御するように構成され、
前記車両用制御装置は、前記第2制御部が前記進路案内機能部の動作を制御するべく、前記第1制御部を通じて得られる前記目標転舵制御量、前記中間制御量、及び前記実転舵制御量の少なくともいずれかの調整を通じて前記転舵情報を得るように構成される情報調整部をさらに有し、
前記第2制御部は、車両の予想進路を案内するべく前記進路案内機能部の動作を制御する進路案内制御部を含み、
前記進路案内制御部は、車両の予想進路を前記情報調整部で調整して得られる調整後の前記転舵情報に基づき演算するとともに、当該予想進路の案内を制御するように構成されており、
前記情報調整部は、前記進路案内機能部に応じた調整として、前記第1制御部を通じて得られる前記目標転舵制御量、前記中間制御量、及び前記実転舵制御量の少なくともいずれかにおける、前記第1制御部での前記補償演算の影響具合を調整するように構成されている車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、例えば、車両のステアリングホイールの操舵を可能にする機能を有する操舵機能部と、車両の転舵輪を転舵させる機能を有する転舵機能部とが搭載されている。特許文献1には、操舵機能部と、転舵機能部との間の動力伝達路が分離した構造が一例として開示されている。
【0003】
上記特許文献1には、操舵機能部の状態として、ステアリングホイールが操舵される角度である操舵角が検出されることが開示されている。検出された操舵角は、転舵輪を転舵させるべく転舵機能部を動作させるように制御するための制御量の目標となる目標制御量を得るための演算に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の目標制御量は、例えば、反力を発生させるべく操舵機能部を動作させるための制御等、車両に用いられる転舵機能部での機能以外の制御で、転舵機能部の状態を反映させるために使用される場合がある。
【0006】
ここで、上述の目標制御量について言えば、検出された操舵角を基に演算されることになるが、当該演算の過程として転舵機能部の動作を制御する際に都合がよくなる観点で換算や補償等の所定の演算が施される。上記特許文献1であれば、上述の目標制御量は、検出された操舵角に対して、転舵角と操舵角との比である舵角比を可変設定する演算が施されることで得られる。
【0007】
ただし、換算や補償等の所定の演算が施されることで得られる目標制御量は、あくまで転舵機能部の動作を制御する際に都合がよくなる観点で換算や補償等が施される。この場合、転舵機能部での機能以外の制御で使用される際に都合がよくなるとは限らない。これは、換算や補償等の所定の演算が施されることで得られる目標制御量に基づき制御される結果として得られる実制御量が転舵機能部での機能以外の制御で使用される場合においても同様である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する車両用制御装置は、車両の転舵輪を転舵させる機能を有する転舵機能部を含む車両に搭載される各種の機能を有する機能部のうちの前記転舵機能部を制御対象とする第1制御部と、車両に搭載される機能部のうちの前記転舵機能部とは別の機能部を制御対象とする第2制御部と、を有する車両用制御装置であって、前記第1制御部は、前記転舵機能部の動作を制御するのに適合させるべく所定の演算を施す結果、前記転舵輪を転舵させるべく前記転舵機能部を動作させるための制御量として目標転舵制御量を得るとともに、当該目標転舵制御量に基づき前記転舵輪を転舵させる結果として得られる実転舵制御量を制御するように構成され、前記第2制御部は、前記目標転舵制御量、前記目標転舵制御量を得る過程の前記所定の演算に関わって得られる中間制御量、及び前記実転舵制御量の少なくともいずれかを用いて演算される転舵情報に基づいて、前記制御対象とする機能部の動作を制御するように構成され、前記第2制御部が前記制御対象とする機能部の動作を制御するのに適合させるべく前記目標転舵制御量、前記中間制御量、及び前記実転舵制御量の少なくともいずれかの調整を通じて前記転舵情報を調整する情報調整部を有するように構成されている。
【0009】
上記構成によれば、第2制御部では、情報調整部を通じて、第2制御部が制御対象とする機能部の動作を制御するのに適合させるべく調整された転舵情報を使用することができる。つまり、第2制御部では、転舵機能部の状態を反映させるために転舵情報を使用するにしても、使用先の機能部に適合させるように調整された情報として使用することができる。この場合、転舵情報は、目標転舵制御量、中間制御量、及び実転舵制御量の少なくともいずれかを用いて演算されるが、転舵機能部とは別の機能部の動作を制御するのに適合されることになる。したがって、転舵機能部の状態を反映する転舵情報を転舵機能部での機能以外の制御で都合よく使用することができる。
【0010】
具体的には、上記車両用制御装置において、前記転舵機能部とは別の機能部は、車両のステアリングホイールの操舵を可能にする機能を有する操舵機能部と、車両の安定した旋回走行を行う機能を有する安定走行機能部と、車両の予想進路の案内を行う機能を有する進路案内機能部との少なくともいずれかを含んで構成されている。
【0011】
また、上記車両用制御装置において、前記所定の演算は、前記実転舵制御量を実際に変化させたい分に対して、前記実転舵制御量の変化を抑えるように前記目標転舵制御量を補償する補償演算と、前記ステアリングホイールの操舵に連動して回転する前記操舵機能部が有するステアリングシャフトの回転に関わる位置関係が所定の対応関係を満たすように前記目標転舵制御量を換算する換算演算と、前記操舵機能部の状態に関係なく車両が走行する進行方向を変化させるべく前記目標転舵制御量に方向可変用の制御量を追加する方向追加演算と、前記操舵機能部の状態に関係なく車両が走行することに関わって現れる特性を変化させるべく前記目標転舵制御量に特性可変用の制御量を加味する特性可変演算との少なくともいずれかを含んで構成されている。
【0012】
そして、上記車両用制御装置において、前記第2制御部は、前記ステアリングホイールに反力を発生させるべく前記操舵機能部の動作を制御する反力制御部を含み、前記反力制御部は、前記転舵輪に作用する路面からの反力に応じた反力成分として演算上の反力を前記情報調整部で調整して得られる前記転舵情報に基づき演算するように構成されていることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、操舵機能部でのステアリングホイールに反力を発生させる際の制御で転舵情報を都合よく使用することができる。
ここで、例えば、上記車両用制御装置において、前記所定の演算が前記補償演算と前記換算演算との少なくともいずれかを含む場合、前記情報調整部は、前記操舵機能部に応じた調整として、前記第1制御部での前記補償演算と前記換算演算との少なくともいずれかの影響具合を調整するように構成される。
【0014】
上記構成によれば、第1制御部で補償演算と換算演算との少なくともいずれかを含む場合、これら補償演算と換算演算との影響については、操舵機能部にてステアリングホイールに反力を発生させる際の制御で直接そのまま反映させないようにすることが要求される場合でも好適に対応することができる。
【0015】
また、上記車両用制御装置において、前記第2制御部は、前記ステアリングホイールを回転させるべく前記操舵機能部の動作を制御するステアリングホイール制御部を含み、前記ステアリングホイール制御部は、前記操舵機能部を動作させるための制御量として目標操舵制御量を前記情報調整部で調整して得られる前記転舵情報に基づき演算するとともに、当該目標操舵制御量に基づき前記ステアリングホイールに連動して回転する前記操舵機能部が有するステアリングシャフトを回転させる結果として得られる実操舵制御量を制御するように構成されていることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、操舵機能部での目標操舵制御量に基づく実操舵制御量の制御で転舵情報を都合よく使用することができる。
ここで、例えば、上記車両用制御装置において、前記所定の演算が前記方向追加演算を含む場合、前記情報調整部は、前記操舵機能部に応じた調整として、前記第1制御部での前記方向追加演算の影響具合を調整するように構成される。
【0017】
上記構成によれば、第1制御部で方向追加演算を含む場合、当該方向追加演算の影響については、操舵機能部にて目標操舵制御量に基づく実操舵制御量の制御で直接そのまま反映させないようにすることが要求される場合でも好適に対応することができる。
【0018】
また、上記車両用制御装置において、前記第2制御部は、車両の安定した旋回走行を行うべく前記安定走行機能部の動作を制御する安定走行制御部を含み、前記安定走行制御部は、車両が旋回走行することに関わって現れる旋回特性を変化させるための制御量を前記情報調整部で調整して得られる前記転舵情報に基づき演算するとともに、当該制御量に基づき前記旋回特性を制御するように構成されていることが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、安定走行機能部での旋回特性の制御で転舵情報を都合よく使用することができる。
ここで、例えば、上記車両用制御装置において、前記所定の演算が前記特性可変演算を含む場合、前記情報調整部は、前記安定走行機能部に応じた調整として、前記第1制御部での前記特性可変演算の影響具合を調整するように構成される。
【0020】
上記構成によれば、第1制御部で特性可変演算を含む場合、当該特性可変演算の影響については、安定走行機能部にて旋回特性の制御で直接そのまま反映させないようにすることが要求される場合でも好適に対応することができる。
【0021】
また、上記車両用制御装置において、前記第2制御部は、車両の予想進路を案内するべく前記進路案内機能部の動作を制御する進路案内制御部を含み、前記進路案内制御部は、車両の予想進路を前記情報調整部で調整して得られる前記転舵情報に基づき演算するとともに、当該予想進路の案内を制御するように構成されていることが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、進路案内機能部での予想進路の案内の制御で転舵情報を都合よく使用することができる。
ここで、例えば、上記車両用制御装置において、前記所定の演算が前記補償演算を含む場合、前記情報調整部は、前記進路案内機能部に応じた調整として、前記第1制御部での前記補償演算の影響具合を調整するように構成される。
【0023】
上記構成によれば、第1制御部で補償演算を含む場合、当該補償演算の影響については、進路案内機能部にて予想進路の案内の制御で直接そのまま反映させないようにすることが要求される場合でも好適に対応することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の車両用制御装置によれば、転舵機能部の状態を反映する転舵情報を転舵機能部での機能以外の制御で都合よく使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図3】第1実施形態について軸力演算部の機能を示すブロック図。
【
図4】第1実施形態について制御ピニオン角演算部の機能を示すブロック図。
【
図5】第1実施形態について情報調整部の機能を示すブロック図。
【
図6】第2実施形態について情報調整部の機能を示すブロック図。
【
図7】第2実施形態について情報調整部の機能の別形態を示すブロック図。
【
図8】第3実施形態について操舵側制御部の機能を示すブロック図。
【
図9】第3実施形態について操舵側制御部の機能を示すブロック図。
【
図10】第3実施形態について情報調整部の機能を示すブロック図。
【
図11】第4実施形態について情報調整部の機能を示すブロック図。
【
図12】第5実施形態について情報調整部の機能を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1実施形態>
以下、車両用制御装置の第1実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の車両の操舵装置1は、ステアバイワイヤ式の操舵装置である。操舵装置1は、当該操舵装置1の作動を制御する車両用制御装置としての操舵制御装置2を備えている。操舵装置1は、ステアリングホイール3を介して運転者により操舵される操舵機構4と、運転者による操舵機構4の操舵に応じて転舵輪5を転舵させる転舵機構6とを備えている。本実施形態の操舵装置1は、操舵機構4と、転舵機構6との間の動力伝達路が機械的に常時分離した構造を有している。本実施形態において、転舵機構6は、転舵機能部の一例である。また、操舵機構4は、転舵機能部とは別の機能部である操舵機能部の一例である。
【0027】
操舵機構4は、ステアリングホイール3が連結されるステアリングシャフト11と、ステアリングシャフト11を介してステアリングホイール3に対して操舵に抗する力である操舵反力を付与する操舵側アクチュエータ12とを備えている。
【0028】
操舵側アクチュエータ12は、駆動源となる操舵側モータ13と、ウォームアンドホイールからなる減速機14とを備えている。操舵側モータ13は、減速機14を介してステアリングシャフト11に連結されている。
【0029】
転舵機構6は、ピニオンシャフト21と、ピニオンシャフト21に連結された転舵シャフトとしてのラックシャフト22と、ラックシャフト22を軸方向への往復動可能に収容するラックハウジング23と、ピニオンシャフト21及びラックシャフト22からなるラックアンドピニオン機構24とを備えている。ラックシャフト22とピニオンシャフト21とは、ラックハウジング23内に所定の交差角をもって配置されている。ラックアンドピニオン機構24は、ピニオンシャフト21に形成されたピニオン歯21aとラックシャフト22に形成されたラック歯22aとが噛合されることで構成されている。また、ラックシャフト22の両端には、ボールジョイントからなるラックエンド25を介してタイロッド26が連結されており、タイロッド26の先端は、転舵輪5が組み付けられた図示しないナックルに連結されている。
【0030】
ピニオンシャフト21は、ラックシャフト22をラックハウジング23の内部に支持するために設けられている。すなわち、転舵機構6に設けられる図示しない支持機構によって、ラックシャフト22はその軸線方向に沿って移動可能に支持されるとともに、ピニオンシャフト21へ向けて押圧される。これにより、ラックシャフト22はラックハウジング23の内部に支持される。また、ラックシャフト22の回転が規制される。ただし、ピニオンシャフト21を使用せずにラックシャフト22をラックハウジング23に支持する他の支持機構を設けてもよい。この場合、転舵機構6としてピニオンシャフト21を割愛した構成を採用してもよい。
【0031】
また、転舵機構6は、ラックシャフト22に対して転舵輪5を転舵させるべく軸方向へ移動するための動力を付与する転舵側アクチュエータ31を備えている。転舵側アクチュエータ31は、駆動源となる転舵側モータ32と、ベルト機構33と、ボール螺子機構34とを備えている。そして、転舵側アクチュエータ31は、転舵側モータ32の回転をベルト機構33を介してボール螺子機構34に伝達し、ボール螺子機構34にてラックシャフト22の軸方向への往復動に変換することで当該ラックシャフト22に対して動力を付与する。
【0032】
このように構成された操舵装置1では、運転者によるステアリング操舵に応じて転舵側アクチュエータ31からラックシャフト22に対してモータトルクが動力として付与されることで、転舵輪5の転舵角が変更される。このとき、操舵側アクチュエータ12からは、運転者の操舵に抗する操舵反力がステアリングホイール3に対して付与される。つまり、操舵装置1では、操舵側アクチュエータ12から付与されるモータトルクである操舵反力により、ステアリングホイール3の操舵に必要な操舵トルクThが変更される。
【0033】
図1に示すように、操舵側モータ13及び転舵側モータ32には、各モータ13,32の駆動を制御する操舵制御装置2が接続されている。操舵制御装置2は、各種のセンサの検出結果に基づき、各モータ13,32の制御量である電流の供給を制御することによって、各モータ13,32の駆動を制御する。各種のセンサとしては、例えば、車速センサ41、トルクセンサ42、操舵側回転角センサ43、及び転舵側回転角センサ44がある。
【0034】
車速センサ41は、車両の走行速度である車速を示す値である車速値Vを検出する。トルクセンサ42は、運転者のステアリング操舵によりステアリングシャフト11に付与されたトルクを示す値である操舵トルクThを検出する。操舵側回転角センサ43は、操舵側モータ13の回転軸の角度である回転角θaを360°の範囲内で検出する。転舵側回転角センサ44は、転舵側モータ32の回転軸の角度である回転角θbを360°の範囲内で検出する。なお、操舵トルクTh、各回転角θa,θbは、例えば右方向に操舵した場合に正の値、左方向に操舵した場合に負の値として検出する。
【0035】
トルクセンサ42は、ステアリングシャフト11における減速機14よりもステアリングホイール3側の部分に設けられている。操舵側回転角センサ43は、操舵側モータ13に設けられている。操舵側モータ13の回転角θaは、操舵角θsの演算に使用される。操舵側モータ13と、ステアリングシャフト11とは、減速機14を介して連動する。このため、操舵側モータ13の回転角θaと、ステアリングシャフト11の回転角、ひいてはステアリングホイール3の回転角である操舵角θsとの間には相関がある。したがって、操舵側モータ13の回転角θaに基づき操舵角θsを求めることができる。転舵側回転角センサ44は、転舵側モータ32に設けられている。
【0036】
操舵制御装置2には、CAN等の車載ネットワーク45を介して車両用制御装置としての安定走行制御装置46が接続されている。安定走行制御装置46は、操舵制御装置2とは別に車両に設けられている。安定走行制御装置46は、操舵制御装置2を通じて得られる情報を含む各種の情報に基づいて、車両の安定した旋回走行を行うべく車両に搭載されるブレーキ機構BRKの作動や転舵機構6の作動を制御する。例えば、安定走行制御装置46は、車両が旋回走行することに関わって現れる旋回特性として、車両に発生するヨーレートを変化させるようにブレーキ機構BRKの制動量を変更したり、転舵輪5の転舵角の変更を指示したりする。この場合、安定走行制御装置46は、操舵制御装置2を通じて得られる情報を含む各種の情報に基づいて、車両に発生しているヨーレートの推定値を演算し、当該推定値が車両の安定した旋回走行を行う観点で定められるヨーレートの目標値となるように制御を実施するための制御量を演算する。
【0037】
そして、安定走行制御装置46は、転舵輪5の転舵角の変更を指示するための特性可変用の制御量として角度で定義されるアクティブステア制御量θactvを演算する。アクティブステア制御量θactvは、操舵機構4の状態、すなわち運転者によるステアリング操舵に関係なく車両に発生しているヨーレートを変化させるべく転舵輪5の転舵角の変更を指示するための制御量である。こうして得られたアクティブステア制御量θactvは、操舵制御装置2に出力される。本実施形態において、安定走行制御装置46は、安定走行制御部、すなわち第2制御部の一例である。また、ブレーキ機構BRKと、転舵機構6とは、安定走行機能部の一例である。
【0038】
次に、操舵制御装置2の機能について説明する。
操舵制御装置2は、図示しない中央処理装置(CPU)やメモリを備えており、所定の演算周期ごとにメモリに記憶されたプログラムをCPUが実行する。これにより、各種の処理が実行される。
【0039】
図2に、操舵制御装置2が実行する処理の一部を示す。
図2に示す処理は、メモリに記憶されたプログラムをCPUが実行することで実現される処理の一部を、実現される処理の種類毎に記載したものである。
【0040】
操舵制御装置2は、操舵側モータ13に対する給電を制御する操舵側制御部50を備えている。操舵側制御部50は、操舵側電流センサ54を有している。操舵側電流センサ54は、操舵側制御部50と、操舵側モータ13の各相のモータコイルとの間の接続線を流れる操舵側モータ13の各相の電流値から得られる操舵側実電流値Iaを検出する。操舵側電流センサ54は、操舵側モータ13に対応して設けられる図示しないインバータにおいて、スイッチング素子のそれぞれのソース側に接続されたシャント抵抗の電圧降下を電流として取得する。なお、
図2では、説明の便宜上、各相の接続線及び各相の電流センサをそれぞれ1つにまとめて図示している。
【0041】
また、操舵制御装置2は、転舵側モータ32に対する給電を制御する転舵側制御部60を備えている。転舵側制御部60は、転舵側電流センサ65を有している。転舵側電流センサ65は、転舵側制御部60と、転舵側モータ32の各相のモータコイルとの間の接続線を流れる転舵側モータ32の各相の電流値から得られる転舵側実電流値Ibを検出する。転舵側電流センサ65は、転舵側モータ32に対応して設けられる図示しないインバータにおいて、スイッチング素子のそれぞれのソース側に接続されたシャント抵抗の電圧降下を電流として取得する。なお、
図2では、説明の便宜上、各相の接続線及び各相の電流センサをそれぞれ1つにまとめて図示している。本実施形態において、転舵側制御部60は、第1制御部の一例である。
【0042】
次に、操舵側制御部50の機能について説明する。
操舵側制御部50には、操舵トルクTh、車速値V、回転角θa、後述の転舵側実電流値Ib、後述の制御ピニオン角θp*、及び後述の転舵変換角θp_sが入力される。操舵側制御部50は、操舵トルクTh、車速値V、回転角θa、転舵側実電流値Ib、制御ピニオン角θp*、及び転舵変換角θp_sに基づいて、操舵側モータ13に対する給電を制御する。なお、ピニオン角θpは、転舵側モータ32の回転角θbに基づき演算される。また、転舵変換角θp_sは、回転角θbに基づき演算される。
【0043】
操舵側制御部50は、操舵角演算部51と、目標反力トルク演算部52と、通電制御部53とを有している。
操舵角演算部51には、回転角θaが入力される。操舵角演算部51は、回転角θaを、例えば、車両が直進しているときのステアリングホイール3の位置であるステアリング中立位置からの操舵側モータ13の回転数をカウントすることにより、360°を超える範囲を含む積算角に換算する。操舵角演算部51は、換算して得られた積算角に減速機14の回転速度比に基づく換算係数を乗算することで、操舵角θsを演算する。こうして得られた操舵角θsは、目標反力トルク演算部52、及び転舵側制御部60に出力される。
【0044】
目標反力トルク演算部52には、操舵トルクTh、車速値V、転舵側実電流値Ib、後述の制御ピニオン角θp*、後述の転舵変換角θp_s、及び操舵角θsが入力される。目標反力トルク演算部52は、操舵トルクTh、車速値V、転舵側実電流値Ib、制御ピニオン角θp*、転舵変換角θp_s、及び操舵角θsに基づいて、操舵反力の目標となる目標制御量としての目標反力トルク指令値Ts*を演算する。
【0045】
具体的には、目標反力トルク演算部52は、操舵力演算部55と、軸力演算部56とを有している。
操舵力演算部55には、操舵トルクTh、及び車速値Vが入力される。操舵力演算部55は、操舵トルクTh、及び車速値Vに基づいて、操舵力Tb*を演算する。操舵力Tb*は、運転者の操舵方向と同一方向に作用する。操舵力演算部55は、操舵トルクThの絶対値が大きいほど、また車速値Vが遅いほど、より大きな絶対値の操舵力Tb*を演算する。操舵力Tb*は、トルクの次元(N・m)の値として演算される。こうして得られた操舵力Tb*は減算器57に出力される。
【0046】
軸力演算部56には、車速値V、操舵角θs、転舵側実電流値Ib、後述の制御ピニオン角θp*、及び後述の転舵変換角θp_sが入力される。
具体的には、
図3に示すように、軸力演算部56は、配分軸力演算部56aと、偏差補償軸力演算部56bとを有している。
【0047】
配分軸力演算部56aには、車速値V、転舵側実電流値Ib、及び後述の制御ピニオン角θp*が入力される。配分軸力演算部56aは、車速値V、転舵側実電流値Ib、及び制御ピニオン角θp*に基づいて、ラックシャフト22に作用する軸力に応じた配分軸力Fdを演算する。配分軸力Fdは、転舵輪5を通じてラックシャフト22に作用する軸力が好適に反映されるように、角度軸力Fr及び電流軸力Fiをそれぞれの配分比率で配分して得られるラックシャフト22に作用する軸力を推定した演算上の軸力に相当する。
【0048】
そして、配分軸力演算部56aは、角度軸力演算部56aaと、電流軸力演算部56abと、配分比演算部56acとを有している。角度軸力演算部56aaには、車速値V、及び制御ピニオン角θp*が入力される。角度軸力演算部56aaは、車速値V、及び制御ピニオン角θp*に基づいて、角度軸力Frを演算する。角度軸力Frは、任意に設定する車両のモデルにより規定される軸力の理想値である。角度軸力Frは、路面情報が反映されない軸力を示す反力成分として演算される。路面情報とは、車両の横方向への挙動に影響を与えない微小な凹凸や車両の横方向への挙動に影響を与える段差等の情報である。例えば、角度軸力演算部56aaは、制御ピニオン角θp*の絶対値が大きくなるほど、角度軸力Frの絶対値が大きくなるように演算する。また、角度軸力演算部56aaは、車速値Vが速くなるにつれて角度軸力Frの絶対値が大きくなるように演算する。角度軸力Frは、トルクの次元(N・m)の値として演算される。こうして得られた角度軸力Frは、乗算器56adに出力される。
【0049】
また、電流軸力演算部56abには、転舵側実電流値Ibが入力される。電流軸力演算部56abは、転舵側実電流値Ibに基づいて、電流軸力Fiを演算する。電流軸力Fiは、転舵輪5を転舵させるべく動作するラックシャフト22に実際に作用する軸力、すなわちラックシャフト22に実際に伝達される軸力の推定値である。電流軸力Fiは、上記路面情報が反映される軸力を示す反力成分として演算される。例えば、電流軸力演算部56abは、転舵側モータ32によってラックシャフト22に加えられるトルクと、転舵輪5を通じてラックシャフト22に加えられる力に応じたトルクとが釣り合うとして、転舵側実電流値Ibの絶対値が大きくなるほど、電流軸力Fiの絶対値が大きくなるように演算する。電流軸力Fiは、トルクの次元(N・m)の値として演算される。こうして得られた電流軸力Fiは、乗算器56aeに出力される。
【0050】
また、配分比演算部56acには、車速値Vが入力される。配分比演算部56acは、車速値Vに基づいて、配分ゲインDiを演算する。配分ゲインDiは、軸力Fを得る際の電流軸力Fiの配分比率である。例えば、配分比演算部56acは、車速値Vと、配分ゲインDiとの関係を定めた配分ゲインマップを備えている。そして、配分比演算部56acは、車速値Vを入力として、配分ゲインDiをマップ演算する。こうして得られた配分ゲインDiは、電流軸力Fiに乗算して乗算器56aeを通じて得られる最終的な電流軸力Fimとして加算器56afに出力される。また、減算器56agにて、記憶部56ahに記憶された「1」から配分ゲインDiが差し引かれることで配分ゲインDrが演算される。こうして得られた配分ゲインDrは、乗算器56adに出力される。配分ゲインDrは、軸力Fを得る際の角度軸力Frの配分比率である。つまり、配分ゲインDrは、配分ゲインDiとの和が「1(100%)」となるように値が演算される。配分比率は、角度軸力Fr及び電流軸力Fiのいずれかしか軸力Fに配分しないゼロ値の概念を含む。なお、記憶部56ahは、図示しないメモリの所定の記憶領域のことである。
【0051】
こうして得られた配分ゲインDrは、角度軸力Frに乗算して乗算器56adを通じて得られる最終的な角度軸力Frmとして加算器56afに出力される。加算器56afにて、角度軸力Frmと、電流軸力Fimとが加算されることで配分軸力Fdが演算される。こうして得られた配分軸力Fdは、加算器56cに出力される。
【0052】
偏差補償軸力演算部56bには、操舵角θs、及び転舵変換角θp_sが入力される。偏差補償軸力演算部56bは、操舵角θs、及び転舵変換角θp_sに基づいて、偏差補償軸力Fvを演算する。偏差補償軸力Fvは、ステアリングホイール3の操舵状態と、転舵輪5の転舵状態との間の舵角比を考慮した関係にずれが生じる状況になる場合に当該状況を運転者に伝える機能を有する。ステアリングホイール3の操舵状態と、転舵輪5の転舵状態との間の舵角比を考慮した関係にずれが生じる場合としては以下の状況が挙げられる。例えば、転舵輪5が縁石等の障害物に当たって、転舵輪5を当該障害物側の一方向へ転舵させることができないにもかかわらず、操舵機構4と転舵機構6との間の動力伝達路が分離されているために、転舵輪5の停止位置に対応するステアリングホイール3の停止位置を超えて当該一方向へ操舵される状況が挙げられる。他にも、過熱保護のために転舵側モータ32の作動が制限される結果、ピニオン角θpが制御ピニオン角θp*に追従し難くなるために、操舵角θsと転舵輪5の転舵角との間の相関が崩れる状況が挙げられる。偏差補償軸力Fvは、転舵輪5が縁石等の障害物に当たった場合に、ステアリングホイール3の更なる操舵を規制するため、当該操舵に対して抗する力に相当する反力成分である。また、偏差補償軸力Fvは、過熱保護のため転舵側モータ32の作動が制限される場合に、ピニオン角θpの制御ピニオン角θp*への追従性を確保するためにステアリングホイール3の操舵を規制するべく、当該操舵に対して抗する力に相当する反力成分である。
【0053】
偏差補償軸力演算部56bは、操舵角θsから転舵変換角θp_sを差し引いて得られる偏差Δθfを入力として、偏差補償軸力Fvをマップ演算する。マップ演算は、例えば、偏差Δθfの絶対値が所定の閾値以上に達すると、偏差Δθfの絶対値が所定の閾値未満の場合と比べて、偏差Δθfに対する偏差補償軸力Fvの勾配が大きくなるように設定されている。偏差補償軸力Fvは、トルクの次元(N・m)の値として演算される。こうして得られた偏差補償軸力Fvは、加算器56cに出力される。
【0054】
加算器56cにて、配分軸力Fdと、偏差補償軸力Fvとが加算されることで軸力Fが演算される。軸力Fは、トルクの次元(N・m)の値として演算される。軸力Fは、運転者の操舵方向とは反対方向に作用する。こうして得られた軸力Fは、減算器57に出力される。減算器57にて、操舵力Tb*から軸力Fが差し引かれることで、目標反力トルク指令値Ts*が演算される。こうして得られた目標反力トルク指令値Ts*は、通電制御部53に出力される。本実施形態において、軸力演算部56、すなわち操舵側制御部50は、反力制御部、すなわち第2制御部の一例である。
【0055】
通電制御部53には、目標反力トルク指令値Ts*、回転角θa、及び操舵側実電流値Iaが入力される。通電制御部53は、目標反力トルク指令値Ts*に基づき操舵側モータ13に対する電流指令値Ia*を演算する。そして、通電制御部53は、電流指令値Ia*と、操舵側電流センサ54を通じて検出される操舵側実電流値Iaを回転角θaに基づき変換して得られるdq座標上の電流値との偏差を求め、当該偏差を無くすように操舵側モータ13に対する給電を制御する。これにより、操舵側モータ13は目標反力トルク指令値Ts*に応じたトルクを発生する。すなわち、運転者に対して路面反力に応じた適度な手応え感を与えることが可能である。
【0056】
次に、転舵側制御部60の機能について説明する。
図2に示すように、転舵側制御部60には、車速値V、回転角θb、操舵角θs、及びアクティブステア制御量θactvが入力される。転舵側制御部60は、車速値V、回転角θb、操舵角θs、及びアクティブステア制御量θactvに基づいて、転舵側モータ32に対する給電を制御する。
【0057】
転舵側制御部60は、ピニオン角演算部61と、制御ピニオン角演算部62と、ピニオン角フィードバック制御部(図中「ピニオン角F/B制御部」)63と、通電制御部64と、角度変換部66と、状態判断部67とを有している。
【0058】
ピニオン角演算部61には、回転角θbが入力される。ピニオン角演算部61は、回転角θbを、例えば、車両が直進しているときのラックシャフト22の位置であるラック中立位置からの転舵側モータ32の回転数をカウントすることにより、360°を超える範囲を含む積算角に換算する。ピニオン角演算部61は、換算して得られた積算角に、ベルト機構33の回転速度比と、ボール螺子機構34のリードと、ラックアンドピニオン機構24の回転速度比に基づく換算係数を乗算することで、ピニオンシャフト21の実際の回転角であるピニオン角θpを演算する。転舵側モータ32と、ピニオンシャフト21とは、ベルト機構33と、ボール螺子機構34と、ラックアンドピニオン機構24を介して連動する。このため、転舵側モータ32の回転角θbと、ピニオン角θpとの間には相関関係がある。この相関関係を利用して転舵側モータ32の回転角θbからピニオン角θpを求めることができる。また、ピニオンシャフト21は、ラックシャフト22に噛合されている。このため、ピニオン角θpとラックシャフト22の移動量との間にも相関関係がある。すなわち、ピニオン角θpは、転舵輪5の転舵角である転舵機構6の状態を反映する値である。こうして得られたピニオン角θpは、ピニオン角フィードバック制御部63及び角度変換部66に出力される。
【0059】
制御ピニオン角演算部62には、車速値V、操舵角θs、アクティブステア制御量θactv、及び後述のオフセット要求FLG(A)が入力される。制御ピニオン角演算部62は、車速値V、操舵角θs、アクティブステア制御量θactv、及びオフセット要求FLG(A)に基づいて、転舵輪5を転舵させる結果として得られる実転舵制御量であるピニオン角θpの目標となる目標制御量である目標転舵制御量としての制御ピニオン角θp*を演算する。こうして得られた制御ピニオン角θp*は、ピニオン角フィードバック制御部63に出力される。
【0060】
また、制御ピニオン角演算部62は、最終的に制御ピニオン角θp*を得る過程で、段階的に施すことになる所定の演算の毎に得られる各種の中間的な中間制御量θinfを演算する機能を有している。制御ピニオン角θp*には、所定の演算として、例えば、ピニオン角θpを基準とする状態変数となるようにスケール変換するための演算が施される。各種の中間制御量θinfについては、後で詳しく説明する。制御ピニオン角θp*を得る過程で得られた各種の中間制御量θinfは、角度変換部66に出力される。
【0061】
ピニオン角フィードバック制御部63には、制御ピニオン角θp*、及びピニオン角θpが入力される。ピニオン角フィードバック制御部63は、ピニオン角θpを制御ピニオン角θp*に追従させるべくピニオン角θpのフィードバック制御を通じて転舵力の目標となる目標制御量としての転舵力指令値Tp*を演算する。こうして得られた転舵力指令値Tp*は、通電制御部64に出力される。
【0062】
通電制御部64には、転舵力指令値Tp*、回転角θb、及び転舵側実電流値Ibが入力される。通電制御部64は、転舵力指令値Tp*に基づき転舵側モータ32に対する電流指令値Ib*を演算する。そして、通電制御部64は、電流指令値Ib*と、転舵側電流センサ65を通じて検出される転舵側実電流値Ibを回転角θbに基づき変換して得られるdq座標上の電流値との偏差を求め、当該偏差を無くすように転舵側モータ32に対する給電を制御する。これにより、転舵側モータ32は転舵力指令値Tp*に応じた角度だけ回転する。
【0063】
角度変換部66には、車速値V、ピニオン角θp、アクティブステア制御量θactv、及び中間制御量θinfが入力される。角度変換部66は、車速値V、ピニオン角θp、アクティブステア制御量θactv、及び中間制御量θinfに基づいて、転舵変換角θp_sを演算する。転舵変換角θp_sには、所定の演算として、例えば、操舵角θsを基準とする状態変数となるようにスケール変換するための演算が施される。こうして得られた転舵変換角θp_sは、操舵側制御部50、すなわち軸力演算部56に出力される。
【0064】
状態判断部67には、車両の各種の状態を判断するための情報として、車両から得られる各種の車両情報が入力される。各種の状態は、例えば、各回転角センサ43,44の異常の有無や、車両の走行状態や、転舵側モータ32の過熱保護の状態等を含む。各種の車両情報は、例えば、各回転角θa,θbや、車速値Vや、イグニッションスイッチ等の車両の起動スイッチのオンオフの状態や、転舵側実電流値Ib等を含む。状態判断部67は、各種の車両情報に基づいて、オフセット要求FLG(A)を生成する。オフセット要求FLG(A)は、車両の各種の状態を示す情報である。例えば、オフセット要求FLG(A)は、第1要求フラグr1と、第2要求フラグr2との2種類が用意されている。なお、オフセット要求FLG(A)は、車両の仕様等に応じて3種類以上が用意されていてもよい。また、オフセット要求FLG(A)を生成する機能は、転舵側制御部60が有する機能に限らず、操舵側制御部50が有する機能であってもよいし、安定走行制御装置46等、操舵制御装置2とは異なる外部の制御装置が有する機能として実現してもよい。こうして得られたオフセット要求FLG(A)は、制御ピニオン角演算部62に出力される。
【0065】
ここで、制御ピニオン角演算部62と、角度変換部66との機能について詳しく説明する。
図4に示すように、制御ピニオン角演算部62は、第1変換演算部71と、第2変換演算部72と、外部指令値加算演算部73と、オフセット角演算部74と、徐変処理演算部75と、追従補償処理演算部76と、出力補償処理演算部77と、残留電流低減処理演算部78とを有している。
【0066】
第1変換演算部71には、操舵角θsが入力される。第1変換演算部71は、操舵角θsに調整量Δθaを加算することによって、中間制御量θinfの一つとして第1変換後角度θp1*を演算する。第1変換演算部71は、操舵角θsに対する第1変換後角度θp1*の比率である静的な特性を定義する舵角比を考慮してピニオン角θpを基準とする状態変数となるようにスケール変換するための調整量Δθaを、車速値Vに応じて変化させる。例えば、車速値Vが低い場合に高い場合よりも、操舵角θsの変化に対する第1変換後角度θp1*の変化を大きくするように、調整量Δθaを変化させる。つまり、第1変換後角度θp1*には、操舵角θsとの間で、位置関係が所定の対応関係を満たすようにするための換算演算が施される。こうして得られた第1変換後角度θp1*は、第2変換演算部72に出力される。
【0067】
第2変換演算部72には、第1変換後角度θp1*が入力される。第2変換演算部72は、第1変換後角度θp1*をフィルタ処理するための伝達関数を定めたフィルタを備えている。そして、第2変換演算部72は、第1変換後角度θp1*を入力として、中間制御量θinfの一つとして第2変換後角度θp2*を得るようにフィルタ処理する。フィルタは、例えば、車速値Vに応じた動的な特性を定義する伝達関数を有する。つまり、第2変換後角度θp2*では、操舵角θsとの間で、車速値Vに応じた動的な観点で、所望の特性が得られるようにするための換算演算が施される。こうして得られた第2変換後角度θp2*は、外部指令値加算演算部73に出力される。
【0068】
外部指令値加算演算部73には、第2変換後角度θp2*、及びアクティブステア制御量θactvが入力される。外部指令値加算演算部73は、第2変換後角度θp2*に対してアクティブステア制御量θactvを加味するようにして、中間制御量θinfの一つとして第3変換後角度θp3*を演算する。外部指令値加算演算部73は、例えば、第2変換後角度θp2*に対してアクティブステア制御量θactvを加算又は減算する。つまり、第3変換後角度θp3*には、アクティブステア制御量θactvの加味を通じて、運転者によるステアリング操舵に関係なく車両に発生しているヨーレートを変化させるようにするための特性可変演算が施される。こうして得られた第3変換後角度θp3*は、徐変処理演算部75に出力される。本実施形態において、アクティブステア制御量θactvは、特性可変演算に加味するために安定走行制御装置46を通じて得られる中間制御量の一例である。つまり、アクティブステア制御量θactvは、制御ピニオン角θp*を得る過程で、外部指令値加算演算部73での所定の演算に用いられる制御量である。そして、外部指令値加算演算部73は、安定走行制御装置46からアクティブステア制御量θactvを得る。
【0069】
オフセット角演算部74には、オフセット要求FLG(A)が入力される。オフセット角演算部74は、オフセット要求FLG(A)が示す車両の各種の状態に応じて中間制御量θinfの一つとしてオフセット角θo1を演算する。オフセット角θo1は、制御ピニオン角θp*を演算する過程で得られる当該制御ピニオン角θp*の補償量の基礎となる制御量である。こうして得られたオフセット角θo1は、徐変処理演算部75及び角度変換部66に出力される。
【0070】
オフセット角θo1は、最新の周期と、一周期前である過去の周期との間で制御ピニオン角θp*に差があったとしても、こうした差が実際の制御に用いることになる今回の周期での制御ピニオン角θp*の変化として現れることを抑える機能を有する。これは、操舵機構4、すなわち運転者の意図を反映するステアリング操舵に応じて転舵輪5を実際に転舵させることに対して、運転者が意図しない転舵輪5の動きとして現れることを抑えること、すなわち運転者の違和感を抑えることを目的としている。オフセット角θo1は、車両の各種の状態や当該状態の変化に起因して現れる最新と過去との周期の間での制御ピニオン角θp*の差として、最新の周期での制御ピニオン角θp*と、過去の周期の制御ピニオン角θp*及び中間制御量θinfのいずれか一つとの差から得られる。例えば、オフセット角θo1は、オフセット要求FLG(A)として、第1要求フラグr1が入力される場合に最新の周期での制御ピニオン角θp*と、過去の周期の制御ピニオン角θp*との差から得られる。また、オフセット角θo1は、オフセット要求FLG(A)として、第2要求フラグr2が入力される場合に最新の周期での制御ピニオン角θp*と、過去の周期の中間制御量θinfのいずれかとの差から得られる。
【0071】
徐変処理演算部75には、第3変換後角度θp3*、オフセット角θo1、及び後述の最終オフセット残量θo3が入力される。徐変処理演算部75は、第3変換後角度θp3*に対してオフセット角θo1及び最終オフセット残量θo3を加味するようにして、中間制御量θinfの一つとして第1オフセット補償後角度θp4*を演算する。また、徐変処理演算部75は、オフセット角θo1及び最終オフセット残量θo3を加味する際も当該オフセット角θo1及び最終オフセット残量θo3を一気にではなく、運転者の違和感を抑える観点で徐々に加味する。徐変処理演算部75は、例えば、第3変換後角度θp3*に対してオフセット角θo1及び最終オフセット残量θo3を加算する。この場合、徐変処理演算部75は、第3変換後角度θp3*に対して加算するオフセット角θo1及び最終オフセット残量θo3について、上限及び下限を設定するなかでこれらを超えない範囲の値を実際に加算する。また、徐変処理演算部75は、第3変換後角度θp3*に対して加算するオフセット角θo1及び最終オフセット残量θo3について、上限及び下限を設定するなかで超える範囲の値を残量として中間制御量θinfの一つとしてオフセット残量θo2を演算する。第3変換後角度θp3*に対して実際に加算する値は、例えば、経過時間や、操舵角θsや、操舵角θsを微分して得られた操舵角速度や、中間制御量θinfのいずれかや、中間制御量θinfのいずれかの変化量等の少なくともいずれかに基づいて演算される。つまり、第1オフセット補償後角度θp4*には、オフセット角θo1の加味を通じて、操舵機構4、すなわち運転者の意図を反映するステアリング操舵に応じて転舵輪5を実際に転舵させることに対して、車両の各種の状態に応じて意図しない転舵輪5の動きとして現れることを抑えるようにするための補償演算が施される。これは、第1オフセット補償後角度θp4*に対して最終オフセット残量θo3を加味することについても同様である。こうして得られた第1オフセット補償後角度θp4*と、オフセット残量θo2とは、追従補償処理演算部76に出力される。
【0072】
追従補償処理演算部76には、第1オフセット補償後角度θp4*、及びオフセット残量θo2が入力される。追従補償処理演算部76は、第1オフセット補償後角度θp4*に対して転舵機構6の状態である転舵側モータ32の出力限界を超える分に対応する超過量θovを加味するようにして、中間制御量θinfの一つとして第2オフセット補償後角度θp5*を演算する。また、追従補償処理演算部76は、オフセット残量θo2に対して超過量θovを加味するようにして、中間制御量θinfの一つとして最終オフセット残量θo3を演算する。追従補償処理演算部76は、例えば、第1オフセット補償後角度θp4*に対して超過量θovを加算する。この場合、追従補償処理演算部76は、オフセット残量θo2に対して超過量θovを加算する。超過量θovは、転舵側モータ32のモータトルクとの関係である周知のN-T特性から得られる転舵側モータ32の角速度の限界値について、当該限界値を実際の角速度が超えない範囲となるように制限するための値として演算される。つまり、第2オフセット補償後角度θp5*には、超過量θovの加味を通じて、操舵機構4、すなわち運転者の意図を反映するステアリング操舵に応じて転舵輪5を実際に転舵させることに対して、車両の各種の状態に応じて無理な転舵輪5の動きを抑えるようにするための補償演算が施される。こうして得られた第2オフセット補償後角度θp5*は、出力補償処理演算部77及び角度変換部66に出力される。また、最終オフセット残量θo3は、徐変処理演算部75及び角度変換部66に出力される。
【0073】
出力補償処理演算部77には、第2オフセット補償後角度θp5*が入力される。出力補償処理演算部77は、第2オフセット補償後角度θp5*に対して上限及び下限を設定するなかでこれらを超えない範囲の値となるように、中間制御量θinfの一つとして出力補償後角度θp6*を演算する。第2オフセット補償後角度θp5*に対して設定する上限及び下限は、例えば、車速値Vに応じて変化する。つまり、出力補償後角度θp6*には、上限及び下限の設定を通じて、操舵機構4、すなわち運転者の意図を反映するステアリング操舵に応じて転舵輪5を実際に転舵させることに対して、車両の各種の状態に応じて無理な転舵輪5の動きを抑えるようにするための補償演算が施される。こうして得られた出力補償後角度θp6*は、残留電流低減処理演算部78及び角度変換部66に出力される。
【0074】
残留電流低減処理演算部78には、出力補償後角度θp6*が入力される。残留電流低減処理演算部78は、出力補償後角度θp6*に対して転舵側モータ32で定常的に生じる残留電流に対応する残留電流量θriを加味するようにして、中間制御量θinfの一つとして残留電流低減処理後角度θp7*を演算する。残留電流低減処理演算部78は、例えば、出力補償後角度θp6*に対して残留電流量θriを反映させないように減算して除去する。この場合、残留電流低減処理演算部78は、所定のタイミングで、減算して除去していた残留電流量θriを反映させるように徐々に加算する。残留電流量θriは、例えば、車両が走行していない停車を含む低車速の際に転舵側モータ32にて定常的に生じる電流として、転舵側実電流値Ib又は電流指令値Ib*に基づき得られる。また、所定のタイミングは、残留電流量θriを反映させるようにしても運転者の違和感を抑える観点で、例えば、車両が旋回走行している場合のことである。つまり、残留電流低減処理後角度θp7*には、残留電流量θriの加味を通じて、操舵機構4、すなわち運転者の意図を反映するステアリング操舵に応じて転舵輪5を実際に転舵させることに対して、車両の各種の状態に応じて意図しない転舵輪5の動きを抑えるようにするための補償演算が施される。こうして得られた残留電流低減処理後角度θp7*は、制御ピニオン角θp*としてピニオン角フィードバック制御部63及び軸力演算部56に出力される。また、残留電流低減処理後角度θp7*は、角度変換部66に出力される。
【0075】
図4に示すように、角度変換部66は、情報調整部81と、逆変換演算部82とを有している。
情報調整部81には、ピニオン角θp、アクティブステア制御量θactv、オフセット要求FLG(A)、及び中間制御量θinfが入力される。情報調整部81に入力される中間制御量θinfは、最終オフセット残量θo3、第2オフセット補償後角度θp5*、出力補償後角度θp6*、及び残留電流低減処理後角度θp7*である。
【0076】
具体的には、
図5に示すように、情報調整部81は、ピニオン角θpに対して、アクティブステア制御量θactv、最終オフセット残量θo3、第2オフセット補償後角度θp5*、出力補償後角度θp6*、及び残留電流低減処理後角度θp7*を加味するようにして、調整後ピニオン角θp´を演算する。調整後ピニオン角θp´は、制御ピニオン角演算部62での換算演算や、特性可変演算や、補償演算の影響が調整された制御量である。
【0077】
例えば、残留電流低減処理後角度θp7*、及び出力補償後角度θp6*は、減算器91を通じて、残留電流低減処理後角度θp7*から出力補償後角度θp6*を差し引いて得られる第1差分Δθ1´として、第1乗算器92に出力される。第1差分Δθ1´は、残留電流低減処理演算部78での補償演算を通じて加味された制御量分に相当する。
【0078】
この場合、第1乗算器92は、第1差分Δθ1´に対して第1ゲインK1を乗算して得られる第1情報調整量Δθ1を演算する。第1ゲインK1は、調整後ピニオン角θp´に基づき得られる転舵変換角θp_sの使用先である軸力演算部56、すなわち偏差補償軸力演算部56bが偏差補償軸力Fvを演算するのに適合させる観点で設定されている。これは、偏差補償軸力Fvを演算するのに残留電流低減処理演算部78での補償演算を通じて加味された制御量分の影響具合をどの程度にするかに基づいて、例えば、影響具合を減らすべく1未満の値や、影響具合を増やすべく1以上の値等、適宜設定される。こうして得られた第1情報調整量Δθ1は、加減算器96に出力される。
【0079】
例えば、出力補償後角度θp6*、及び第2オフセット補償後角度θp5*は、減算器93を通じて、出力補償後角度θp6*から第2オフセット補償後角度θp5*を差し引いて得られる第2差分Δθ2´として、第2乗算器94に出力される。第2差分Δθ2´は、出力補償処理演算部77での補償演算を通じて加味された制御量分に相当する。
【0080】
この場合、第2乗算器94は、第2差分Δθ2´に対して第2ゲインK2を乗算して得られる第2情報調整量Δθ2を演算する。第2ゲインK2は、第1ゲインK1と同様の観点で設定されている。つまり、第2ゲインK2は、出力補償処理演算部77での補償演算を通じて加味された制御量分について、例えば、影響具合を減らすべく1未満の値や、影響具合を増やすべく1以上の値等、適宜設定される。こうして得られた第2情報調整量Δθ2は、加減算器96に出力される。
【0081】
例えば、最終オフセット残量θo3は、第3乗算器95を通じて、第3ゲインK3を乗算して得られる第3情報調整量Δθ3として演算される。この場合、第3乗算器95は、オフセット角演算部74を通じてオフセット要求FLG(A)に基づき演算されたオフセット角θo1の種類に応じて第3ゲインK3となるように、当該オフセット要求FLG(A)に応じて第3ゲインK3を切り替えて変化させる。第3ゲインK3は、各ゲインK1,K2と同様の観点で設定されている。つまり、第3ゲインK3は、最終オフセット残量θo3について、例えば、第1要求フラグr1である場合には影響具合を減らすべく1未満の値や、第2要求フラグr2である場合には影響具合を増やすべく1以上の値等、適宜設定される。例えば、第3ゲインK3は、各要求フラグr1,r2の間で値が変更される場合、時間に対する徐変処理を実行する。こうして得られた第3情報調整量Δθ3は、加減算器96に出力される。
【0082】
例えば、加減算器96にて、ピニオン角θpを基礎として、当該ピニオン角θpに対して、第1情報調整量Δθ1、及び第2情報調整量Δθ2が加算されるとともに、第3情報調整量Δθ3、及びアクティブステア制御量θactvが減算されることで調整後ピニオン角θp´が演算される。加減算器96にて、アクティブステア制御量θactvが減算されるのは、運転者によるステアリング操舵に関係ない転舵輪5の動き、すなわち特性可変演算の影響が偏差補償軸力Fvに与えられることの回避を目的としている。こうして得られた調整後ピニオン角θp´は、逆変換演算部82に出力される。
【0083】
逆変換演算部82には、車速値V、及び調整後ピニオン角θp´が入力される。逆変換演算部82は、調整後ピニオン角θp´に対して操舵角θsを基準とする状態変数となるように、車速値Vに応じたスケール逆変換を施すことによって、転舵変換角θp_sを演算する。つまり、転舵変換角θp_sには、スケール逆変換として、第1変換演算部71がスケール変換で定義する演算規則に対して入力及び出力の関係を逆とした静的な特性を定義する演算規則となるようにスケール変換するための逆換算演算が施される。こうして得られた転舵変換角θp_sは、操舵側制御部50の軸力演算部56に出力される。本実施形態において、転舵変換角θp_sは、転舵情報の一例である。
【0084】
以下、本実施形態の作用を説明する。
図3に示すように、操舵機構4の動作の制御のうち、操舵側制御部50での偏差補償軸力Fvの演算では、転舵機構6の状態を反映させるために転舵側アクチュエータ31を制御するなかで得られるピニオン角θpを基にした転舵変換角θp_sを使用する。ここで、ピニオン角θpは、転舵機構6の動作を制御するのに適合させるべく、換算演算や、特性可変演算や、補償演算が施された制御ピニオン角θp*を用いたフィードバック制御の結果が反映されて得られる。
【0085】
一方、
図5に示すように、角度変換部66での転舵変換角θp_sの演算では、ピニオン角θpをそのまま使用するのではなく、情報調整部81を通じて、換算演算や、特性可変演算や、補償演算の影響具合を調整するようにしている。
【0086】
特に、調整後ピニオン角θp´の演算では、第1情報調整量Δθ1を加味することで、運転者によるステアリング保舵時に、残留電流低減処理演算部78での補償演算を通じて加味された制御量分に起因した偏差補償軸力Fvの発生具合を調整することができる。また、調整後ピニオン角θp´の演算では、第2情報調整量Δθ2を加味することで、出力補償処理演算部77での補償演算を通じて加味された制御量分に起因した偏差補償軸力Fvの発生具合を調整することができる。また、調整後ピニオン角θp´の演算では、第3情報調整量Δθ3を加味することで、オフセット角演算部74、徐変処理演算部75、及び追従補償処理演算部76での補償演算を通じて加味された制御量分に起因した偏差補償軸力Fvの発生具合を調整することができる。
【0087】
つまり、操舵機構4の動作の制御では、転舵変換角θp_sを使用するにしても、偏差補償軸力演算部56bに適合させるように調整された情報として使用することができる。
以下、本実施形態の効果を説明する。
【0088】
(1-1)本実施形態によれば、転舵変換角θp_sは、転舵機構6の動作を制御するのに適合されるなかで得られるピニオン角θpを用いて演算されるが、換算演算や、特性可変演算や、補償演算の影響具合を考慮して、操舵機構4の動作を制御するのに適合されることになる。したがって、転舵変換角θp_sを転舵機構6での機能以外の制御で都合よく使用することができる。
【0089】
(1-2)本実施形態では、ピニオン角θpの結果を導くことになる制御ピニオン角θp*に対して、転舵機構6の動作を制御するのに適合させるべく、換算演算や、特性可変演算や、補償演算を施すようにしている。これに対して、情報調整部81では、操舵機構4に応じた調整として、制御ピニオン角演算部62での換算演算や、特性可変演算や、補償演算の影響具合を調整するようにしている。
【0090】
これにより、制御ピニオン角演算部62での換算演算や、特性可変演算や、補償演算の影響については、偏差補償軸力Fvの演算で直接そのまま反映させないようにすることが要求される場合でも好適に対応することができる。
【0091】
<第2実施形態>
以下、車両用制御装置の第2実施形態について説明する。なお、既に説明した実施形態と同一構成等は、同一の符号を付す等して、その重複する説明を省略する。
【0092】
図1中に二点鎖線で示すように、操舵制御装置2には、CAN等の車載ネットワーク45を介して車両用制御装置としての運転支援制御装置47が接続されている。運転支援制御装置47は、操舵制御装置2とは別に車両に設けられている。運転支援制御装置47は、車両の快適性をより向上させるための様々な運転支援を発揮するべく転舵機構6、すなわち操舵装置1の動作を制御するものである。運転支援制御装置47は、その時々の車両の状態に基づき最適な制御方法を求める。運転支援制御装置47は、求められる制御方法に応じて転舵機構6、すなわち操舵装置1の作動を制御する。例えば、運転支援制御装置47は、車両の車線逸脱の防止や緊急回避を支援したり、車両が停車中に運転を代替したりするように転舵輪5の転舵角の変更を指示する。
【0093】
そして、運転支援制御装置47は、転舵輪5の転舵角の変更を指示するための方向可変用の制御量として角度で定義される運転支援制御量θadasを演算する。運転支援制御装置47には、車両の状態を把握するための、図示しないが、例えば、車速センサ41及び車線認識用のカメラを含む各種の検出装置が接続されている。運転支援制御装置47では、上記検出装置を通じて検出された車両の状態に基づいて、実現する運転支援についての運転支援制御量θadasが演算される。運転支援制御量θadasは、操舵機構4の状態、すなわち運転者によるステアリング操舵に関係なく車両が走行する進行方向を変化させるべく転舵輪5の転舵角の変更を指示するための制御量である。
【0094】
また、運転支援制御量θadasは、いずれの運転支援を実現するのかについての情報も併せ持つものである。運転支援制御装置47は、スイッチ操作等の運転者による要求に基づいて、運転支援要求FLG(B)を生成する。運転支援要求FLG(B)は、いずれの運転支援を実現するのかを示す情報である。例えば、運転支援要求FLG(B)は、車両の車線逸脱や緊急回避を支援する運転支援の実現を示す第3要求フラグr3と、車両が停車中に駐車の運転を代替する運転支援の実現を示す第4要求フラグr4との2種類が用意されている。また、運転支援要求FLG(B)は、運転支援を実現しない場合に各要求フラグr3,r4のいずれも生成されない。なお、運転支援要求FLG(B)は、車両の仕様等に応じて3種類以上が用意されていてもよいし、運転支援を実現しないことを示すフラグが用意されていてもよい。また、運転支援要求FLG(B)を生成する機能は、運転支援制御装置47が有する機能に限らず、操舵側制御部50や、転舵側制御部60が有する機能であってもよいし、安定走行制御装置46等、運転支援制御装置47とは異なる外部の制御装置が有する機能として実現してもよい。こうして得られた運転支援制御量θadas、及び運転支援要求FLG(B)は、操舵制御装置2に出力される。
【0095】
具体的には、
図2及び
図4中に二点鎖線で示すように、運転支援制御量θadas、及び運転支援要求FLG(B)は、転舵側制御部60の制御ピニオン角演算部62、すなわち外部指令値加算演算部73に入力される。
【0096】
そして、外部指令値加算演算部73は、第2変換後角度θp2*に対してアクティブステア制御量θactvとともに運転支援制御量θadasを加味するようにして、中間制御量θinfの一つとして第3変換後角度θp3*を演算する。外部指令値加算演算部73は、例えば、第2変換後角度θp2*に対してアクティブステア制御量θactvとともに運転支援制御量θadasを加算又は減算する。つまり、第3変換後角度θp3*には、運転支援制御量θadasの加味を通じて、運転者によるステアリング操舵に関係なく車両が走行する進行方向を変化させるようにするための方向追加演算が施される。こうして得られた第3変換後角度θp3*は、徐変処理演算部75に出力される。本実施形態において、運転支援制御量θadasは、方向追加演算に加味するために運転支援制御装置47を通じて得られる中間制御量の一例である。つまり、運転支援制御量θadasは、制御ピニオン角θp*を得る過程で、外部指令値加算演算部73での所定の演算に用いられる制御量である。そして、外部指令値加算演算部73は、運転支援制御装置47から運転支援制御量θadasを得る。
【0097】
また、
図4中に二点鎖線で示すように、運転支援制御量θadasは、本実施形態の情報調整部100に入力される。
具体的には、
図6に示すように、情報調整部100には、第1変換後角度θp1*、アクティブステア制御量θactv、及び運転支援制御量θadasが入力される。情報調整部100は、第1変換後角度θp1*に対して、アクティブステア制御量θactv、及び運転支援制御量θadasを加味するようにして、調整後ピニオン角θp´を演算する。
【0098】
本実施形態の調整後ピニオン角θp´は、
図3中の角度軸力演算部56aaについて、制御ピニオン角θp*の代わりに入力される。つまり、本実施形態の角度軸力演算部56aaは、調整後ピニオン角θp´、及び車速値Vに基づいて、角度軸力Frを演算する。
【0099】
そして、情報調整部100について、例えば、アクティブステア制御量θactvは、第4乗算器101を通じて、第4ゲインK4を乗算して得られる第4情報調整量Δθ4として演算される。第4ゲインK4は、調整後ピニオン角θp´の使用先である軸力演算部56、すなわち角度軸力演算部56aaが角度軸力Frを演算するのに適合させる観点で設定されている。これは、角度軸力Frを演算するのにアクティブステア制御量θactvの影響具合をどの程度にするかに基づいて、例えば、影響具合を減らすべく1未満の値や、影響具合を増やすべく1以上の値等、適宜設定される。こうして得られた第4情報調整量Δθ4は、加減算器103に出力される。
【0100】
また、例えば、運転支援制御量θadasは、第5乗算器102を通じて、第5ゲインK5を乗算して得られる第5情報調整量Δθ5として演算される。第5ゲインK5は、第4ゲインK4と同様の観点で設定されている。つまり、第5ゲインK5は、運転支援制御量θadasについて、例えば、影響具合を減らすべく1未満の値や、影響具合を増やすべく1以上の値等、適宜設定される。こうして得られた第5情報調整量Δθ5は、加減算器103に出力される。
【0101】
また、例えば、加減算器103にて、第1変換後角度θp1*を基礎として、当該第1変換後角度θp1*に対して、第4情報調整量Δθ4が加算されるとともに、第5情報調整量Δθ5が減算されることで調整後ピニオン角θp´が演算される。加減算器103にて、各角度θp2*~θp7*を加味しないで第1変換後角度θp1*を基礎とするのは、換算演算や、補償演算の影響が角度軸力Frに与えられることの回避を目的としている。こうして得られた調整後ピニオン角θp´は、操舵側制御部50、すなわち角度軸力演算部56aaに出力される。本実施形態において、調整後ピニオン角θp´は、転舵情報の一例である。
【0102】
なお、本実施形態について、逆変換演算部82に入力される情報は、本実施形態の情報調整部100で調整された調整後ピニオン角θp´でもよい。また、逆変換演算部82に入力される情報は、上記第1実施形態の情報調整部81で調整された調整後ピニオン角θp´でもよい。また、逆変換演算部82に入力される情報は、各情報調整部81,100で未調整の制御ピニオン角θp*、すなわち残留電流低減処理後角度θp7*でもよい。
【0103】
以下、本実施形態の作用を説明する。
図3に示すように、上記第1実施形態での角度軸力Frの演算では、転舵機構6の状態を反映させるために転舵側アクチュエータ31を制御するなかで得られる制御ピニオン角θp*を使用する。
【0104】
一方、
図6に示すように、本実施形態での角度軸力Frの演算では、制御ピニオン角θp*ではなく、当該制御ピニオン角θp*の基になる第1変換後角度θp1*に対して、情報調整部100を通じて、換算演算や、特性可変演算や、方向追加演算や、補償演算の影響具合を調整して得られた調整後ピニオン角θp´を使用するようにしている。
【0105】
特に、調整後ピニオン角θp´の演算では、第1変換後角度θp1*を基礎とすることで、第2変換演算部72での換算演算を通じて加味された制御量分に起因した伝達関数により定義される動的な特性の角度軸力Frへの影響具合を調整することができる。また、調整後ピニオン角θp´の演算では、第4情報調整量Δθ4を加味することで、アクティブステア制御量θactvに起因したカウンタステアを促すようにする等、当該カウンタステアの発生具合を調整することができる。
【0106】
つまり、操舵機構4の動作の制御では、調整後ピニオン角θp´を使用するにしても、角度軸力演算部56aaに適合させるように調整された情報として使用することができる。
【0107】
以下、本実施形態の効果を説明する。
(2-1)本実施形態によれば、調整後ピニオン角θp´は、転舵機構6の動作を制御するのに適合されるなかで得られる第1変換後角度θp1*を基礎とすることで、換算演算や、特性可変演算や、方向追加演算や、補償演算の影響具合を考慮して、操舵機構4の動作を制御するのに適合されることになる。したがって、調整後ピニオン角θp´を転舵機構6での機能以外の制御で都合よく使用することができる。
【0108】
(2-2)本実施形態では、転舵機構6の動作を制御するのに適合させるべく、第1変換後角度θp1*を加味するなかで、換算演算や、特性可変演算や、方向追加演算や、補償演算を施すことで制御ピニオン角θp*を得るようにしている。これに対して、情報調整部100では、操舵機構4に応じた調整として、制御ピニオン角演算部62での換算演算や、特性可変演算や、方向追加演算や、補償演算の影響具合を調整するようにしている。
【0109】
この場合、第1変換後角度θp1*を基礎として調整後ピニオン角θp´を得ることで、換算演算や、特性可変演算や、方向追加演算や、補償演算の影響については、角度軸力Frの演算で直接そのまま反映させないようにすることが要求される場合でも好適に対応することができる。
【0110】
(2-3)本実施形態では、調整後ピニオン角θp´について、第1変換後角度θp1*を基礎とする代わりに、制御ピニオン角θp*、すなわち残留電流低減処理後角度θp7*を基礎とするように別形態として構成することもできる。
【0111】
具体的には、
図7に示すように、本別形態の情報調整部110には、アクティブステア制御量θactv、運転支援制御量θadas、及び中間制御量θinfが入力される。情報調整部81に入力される中間制御量θinfは、最終オフセット残量θo3、第1変換後角度θp1*、第2変換後角度θp2*、第2オフセット補償後角度θp5*、出力補償後角度θp6*、及び残留電流低減処理後角度θp7*である。
【0112】
例えば、残留電流低減処理後角度θp7*、及び出力補償後角度θp6*は、減算器111を通じて、上記第1差分Δθ1´に対応する第6差分Δθ6´として、第6乗算器112に出力される。この場合、第6乗算器112は、第6差分Δθ6´に対して第6ゲインK6を乗算して得られる第6情報調整量Δθ6を演算する。第6ゲインK6は、各ゲインK4,K5と同様の観点で設定されている。つまり、第6ゲインK6は、残留電流低減処理演算部78での補償演算を通じて加味された制御量分について、例えば、影響具合を減らすべく1未満の値や、影響具合を増やすべく1以上の値等、適宜設定される。こうして得られた第6情報調整量Δθ6は、加減算器120に出力される。
【0113】
例えば、出力補償後角度θp6*、及び第2オフセット補償後角度θp5*は、減算器113を通じて、上記第2差分Δθ2´に対応する第7差分Δθ7´として、第7乗算器114に出力される。この場合、第7乗算器114は、第7差分Δθ7´に対して第7ゲインK7を乗算して得られる第7情報調整量Δθ7を演算する。第7ゲインK7は、各ゲインK4~K6と同様の観点で設定されている。つまり、第7ゲインK7は、出力補償処理演算部77での補償演算を通じて加味された制御量分について、例えば、影響具合を減らすべく1未満の値や、影響具合を増やすべく1以上の値等、適宜設定される。こうして得られた第7情報調整量Δθ7は、加減算器120に出力される。
【0114】
例えば、最終オフセット残量θo3は、第8乗算器115を通じて、第8ゲインK8を乗算して得られる第8情報調整量Δθ8として演算される。第8ゲインK8は、各ゲインK4~K7と同様の観点で設定されている。つまり、第8ゲインK8は、最終オフセット残量θo3について、例えば、影響具合を減らすべく1未満の値や、影響具合を増やすべく1以上の値等、適宜設定される。こうして得られた第8情報調整量Δθ8は、加減算器120に出力される。
【0115】
例えば、アクティブステア制御量θactvは、第9乗算器116を通じて、第9ゲインK9を乗算して得られる第9情報調整量Δθ9として演算される。第9ゲインK9は、各ゲインK4~K8と同様の観点で設定されている。つまり、第9ゲインK9は、アクティブステア制御量θactvについて、例えば、影響具合を減らすべく1未満の値や、影響具合を増やすべく1以上の値等、適宜設定される。こうして得られた第9情報調整量Δθ9は、加減算器120に出力される。
【0116】
例えば、運転支援制御量θadasは、第10乗算器117を通じて、第10ゲインK10を乗算して得られる第10情報調整量Δθ10として演算される。第10ゲインK10は、各ゲインK4~K9と同様の観点で設定されている。つまり、第10ゲインK10は、運転支援制御量θadasについて、例えば、影響具合を減らすべく1未満の値や、影響具合を増やすべく1以上の値等、適宜設定される。こうして得られた第10情報調整量Δθ10は、加減算器120に出力される。
【0117】
例えば、第2変換後角度θp2*、及び第1変換後角度θp1*は、減算器118を通じて、第2変換後角度θp2*から第1変換後角度θp1*を差し引いて得られる第11差分Δθ11´として、第11乗算器119に出力される。第11差分Δθ11´は、第2変換演算部72での換算演算を通じて加味された制御量分に相当する。
【0118】
この場合、第11乗算器119は、第11差分Δθ11´に対して第11ゲインK11を乗算して得られる第11情報調整量Δθ11を演算する。第11ゲインK11は、各ゲインK4~K10と同様の観点で設定されている。つまり、第11ゲインK11は、第2変換演算部72での換算演算を通じて加味された制御量分について、例えば、影響具合を減らすべく1未満の値や、影響具合を増やすべく1以上の値等、適宜設定される。こうして得られた第11情報調整量Δθ11は、加減算器120に出力される。
【0119】
例えば、加減算器120にて、残留電流低減処理後角度θp7*を基礎として、当該残留電流低減処理後角度θp7*に対して、第9情報調整量Δθ9が加算されるとともに、各情報調整量Δθ6~Δθ8,Δθ10,Δθ11が減算されることで調整後ピニオン角θp´が演算される。こうして得られた調整後ピニオン角θp´は、操舵側制御部50、すなわち角度軸力演算部56aaに出力される。
【0120】
<第3実施形態>
以下、車両用制御装置の第3実施形態について説明する。なお、既に説明した実施形態と同一構成等は、同一の符号を付す等して、その重複する説明を省略する。
【0121】
本実施形態において、操舵力演算部55は、操舵力Tb*を補償するための各種補償量を演算する機能を有する。各種補償量は、例えば、戻り補償量と、ヒステリシス補償量と、ダンピング補償量と、慣性補償量とを含んでいる。戻り補償量は、ラック中立位置に対応するステアリングシャフト11の操舵中立位置に戻すステアリングホイール3の戻り動作を補償するためのものである。ヒステリシス補償量は、ステアリングホイール3の動作時の摩擦によるヒステリシス特性を最適化するように補償するためのものである。ダンピング補償量は、ステアリングホイール3に生じる微振動を低減するように補償するためのものである。慣性補償量は、ステアリングホイール3の操舵し始め時の引っ掛かり感や操舵終わり時の流れ感を抑制するように補償するためのものである。各種補償量は、操舵力Tb*に基づき実現されるステアリングホイール3の動作が所望の特性を示すように補償するための補償量である。
【0122】
具体的には、
図8に示すように、操舵力演算部55には、操舵トルクTh、車速値V、操舵角θs、及び転舵変換角θp_sが入力される。
例えば、操舵力演算部55は、操舵角θsと転舵変換角θp_sとの差に基づいて目標操舵角速度ωs*を演算する。操舵力演算部55は、目標操舵角速度ωs*に対して操舵角θsを微分して得られる操舵角速度ωsを追従するように、操舵角速度ωsについてのフィードバック制御を通じて戻り補償量Td1*を演算する。この場合、戻り補償量Td1*は、操舵トルクTh、及び車速値Vに応じて変化する。
【0123】
例えば、操舵力演算部55は、操舵角θs、及び転舵変換角θp_sに基づいてヒステリシス補償量Td2*を演算する。この場合、ヒステリシス補償量Td2*は、車速値Vに応じて変化する。
【0124】
例えば、操舵力演算部55は、上記操舵角速度ωsと、転舵変換角θp_sを微分して得られる転舵角速度ωpとに基づいてダンピング補償量Td3*を演算する。この場合、ダンピング補償量Td3*は、車速値Vに応じて変化する。
【0125】
例えば、操舵力演算部55は、上記操舵角速度ωsを微分して得られる操舵角加速度αsと、上記転舵角速度ωpを微分して得られる転舵角加速度αpとに基づいて、慣性補償量Td4*を演算する。この場合、慣性補償量Td4*は、車速値Vに応じて変化する。
【0126】
そして、操舵力演算部55は、操舵力Tb*を演算する際、戻り補償量Td1*、ヒステリシス補償量Td2*、ダンピング補償量Td3*、及び慣性補償量Td4*を加減算等を通じて加味する。
【0127】
また、本実施形態では、上記第2実施形態に対して、運転支援制御量θadasより変化された車両が走行する進行方向に対してステアリングホイール3の状態が追従するように、操舵側制御部50が操舵角θsを変更するように制御する機能を有する点を具体的に規定している。
【0128】
具体的には、
図9に示すように、操舵側制御部50は、操舵角フィードバック制御部(図中「操舵角F/B制御部」)58を有している。
操舵角フィードバック制御部58には、操舵角θs、転舵変換角θp_sが入力される。操舵角フィードバック制御部58は、ステアリングホイール3を回転させる結果として得られる実操舵制御量である操舵角θsを、当該操舵角θsの目標となる目標制御量である目標操舵制御量としての転舵変換角θp_sに追従させるべく操舵角θsについてのフィードバック制御を通じて操舵角度制御量Ta*を演算する。操舵角度制御量Ta*は、トルクの次元(N・m)の値として演算される。こうして得られた操舵角度制御量Ta*は加算器59に出力される。本実施形態において、操舵角フィードバック制御部58、すなわち操舵側制御部50は、ステアリングホイール制御部、すなわち第2制御部の一例である。本実施形態において、転舵変換角θp_sは、転舵情報の一例である。
【0129】
加算器59にて、目標反力トルク演算部52を通じて得られた目標反力トルク指令値Ts*と、操舵角度制御量Ta*とが加算されることで最終的な目標反力トルク指令値Tsa*が演算される。こうして得られた目標反力トルク指令値Tsa*は、通電制御部53に出力される。
【0130】
また、
図4中に二点鎖線で示すように、運転支援要求FLG(B)は、運転支援制御量θadasとともに本実施形態の情報調整部130に入力される。
具体的には、
図10に示すように、情報調整部130には、運転支援制御量θadas、及び運転支援要求FLG(B)が入力される。情報調整部130は、運転支援制御量θadasを調整するようにして、調整後ピニオン角θp´を演算する。
【0131】
そして、情報調整部130について、例えば、運転支援制御量θadasは、第12乗算器131を通じて、第12ゲインK12を乗算して得られる調整後ピニオン角θp´として演算される。第12ゲインK12は、調整後ピニオン角θp´に基づき得られる転舵変換角θp_sの使用先である操舵力演算部55、すなわち各種補償量や、操舵角フィードバック制御部58、すなわち操舵角度制御量Ta*を演算するのに適合させる観点で設定されている。つまり、第12ゲインK12は、運転支援制御量θadasについて、例えば、第4要求フラグr4である場合には影響具合を減らすべく1未満の値や、第3要求フラグr3である場合や、運転支援を実現しない場合には影響具合を増やすべく1以上の値等、適宜設定される。例えば、第12ゲインK12は、各要求フラグr3,r4の間で値が変更される場合、時間に対する徐変処理を実行する。こうして得られた調整後ピニオン角θp´は、逆変換演算部82に出力される。
【0132】
情報調整部130にて、各角度θp1*~θp7*や、アクティブステア制御量θactvを加味しないで運転支援制御量θadasを基礎とするのは、換算演算や、補償演算や、特性可変演算の影響が各種補償量や、操舵角度制御量Ta*に与えられることの回避を目的としている。
【0133】
なお、本実施形態について、軸力演算部56に入力される転舵変換角θp_sは、本実施形態の情報調整部130で調整された調整後ピニオン角θp´を基にした転舵変換角θp_sでもよい。また、軸力演算部56に入力される転舵変換角θp_sは、上記第1実施形態、又は第2実施形態の各情報調整部81,100で調整された調整後ピニオン角θp´を基にした転舵変換角θp_sでもよい。また、軸力演算部56に入力される転舵変換角θp_sは、各情報調整部81,100,130で未調整の制御ピニオン角θp*、すなわち残留電流低減処理後角度θp7*を基にした転舵変換角θp_sでもよい。
【0134】
以下、本実施形態の作用を説明する。
調整後ピニオン角θp´の演算では、運転支援制御量θadasを基礎とすることで、運転支援制御量θadasに起因した操舵角θsの変化への影響具合を調整することができる。例えば、車両の車線逸脱や緊急回避を支援する運転支援を実現する場合や、運転支援を実現しない場合には、調整後ピニオン角θp´の影響具合を増やしてステアリングホイール3の操舵状態と、転舵輪5の転舵状態との間の舵角比を考慮した関係を満たすようにできる。また、車両が停車中に駐車の運転を代替する運転支援を実現する場合には、調整後ピニオン角θp´の影響具合を減らしてステアリングホイール3が操舵中立位置に保持されるようにできる。
【0135】
つまり、操舵機構4の動作の制御では、転舵変換角θp_sを使用するにしても、操舵力演算部55や操舵角フィードバック制御部58に適合させるように調整された情報として使用することができる。
【0136】
以下、本実施形態の効果を説明する。
(3-1)本実施形態によれば、調整後ピニオン角θp´は、運転支援制御量θadasを基礎することで、換算演算や、特性可変演算や、方向追加演算や、補償演算の影響具合を考慮して、操舵機構4の動作を制御するのに適合されることになる。したがって、転舵変換角θp_sを転舵機構6での機能以外の制御で都合よく使用することができる。
【0137】
(3-2)本実施形態では、転舵機構6の動作を制御するのに適合させるべく、運転支援制御量θadasを加味するなかで、換算演算や、特性可変演算や、方向追加演算や、補償演算を施すことで制御ピニオン角θp*を得るようにしている。これに対して、情報調整部130では、操舵機構4に応じた調整として、制御ピニオン角演算部62での換算演算や、特性可変演算や、方向追加演算や、補償演算の影響具合を調整するようにしている。
【0138】
この場合、運転支援制御量θadasを基礎として調整後ピニオン角θp´を得ることで、換算演算や、特性可変演算や、方向追加演算や、補償演算の影響については、各種補償量や、操舵角度制御量Ta*の演算で直接そのまま反映させないようにすることが要求される場合でも好適に対応することができる。
【0139】
<第4実施形態>
以下、車両用制御装置の第4実施形態について説明する。なお、既に説明した実施形態と同一構成等は、同一の符号を付す等して、その重複する説明を省略する。
【0140】
本実施形態では、上記第1実施形態に対して、安定走行制御装置46が操舵制御装置2を通じて得られる情報として、調整後ピニオン角θp´を用いる点を具体的に規定するようにしている。
【0141】
そして、
図4中に二点鎖線で示すように、安定走行制御装置46には、本実施形態の情報調整部140を通じて得られる調整後ピニオン角θp´が車載ネットワーク45を介して入力される。情報調整部140は、第2オフセット補償後角度θp5*に対して、アクティブステア制御量θactvを加味するようにして、調整後ピニオン角θp´を演算する。本実施形態において、調整後ピニオン角θp´は、転舵情報の一例である。
【0142】
具体的には、
図11に示すように、情報調整部140には、第2オフセット補償後角度θp5*、及びアクティブステア制御量θactvが入力される。情報調整部140は、第2オフセット補償後角度θp5*を調整するようにして、調整後ピニオン角θp´を演算する。
【0143】
情報調整部140について、例えば、第2オフセット補償後角度θp5*は、減算器141を通じて、アクティブステア制御量θactvを差し引いて得られる調整後ピニオン角θp´として演算される。減算器141にて、各角度θp6*,θp7*を加味しないで第2オフセット補償後角度θp5*を基礎とするのは、補償演算のなかでも特に出力補償処理演算部77及び残留電流低減処理演算部78での補償演算の影響が安定走行制御装置46の制御に与えられることの回避を目的としている。また、減算器141にて、アクティブステア制御量θactvが減算されるのは、運転者によるステアリング操舵に関係ない転舵輪5の動き、すなわち特性可変演算の影響が安定走行制御装置46の制御に与えられることの回避を目的としている。
【0144】
なお、本実施形態について、逆変換演算部82に入力される情報は、本実施形態の情報調整部140で調整された調整後ピニオン角θp´でもよい。また、逆変換演算部82に入力される情報は、上記第1実施形態、第2実施形態、又は第3実施形態の各情報調整部81,100,130で調整された調整後ピニオン角θp´でもよい。また、逆変換演算部82に入力される情報は、各情報調整部81,100,130,140で未調整の制御ピニオン角θp*、すなわち残留電流低減処理後角度θp7*でもよい。
【0145】
以下、本実施形態の作用を説明する。
調整後ピニオン角θp´の演算では、第2オフセット補償後角度θp5*を基礎とすることで、出力補償処理演算部77及び残留電流低減処理演算部78での補償演算や、アクティブステア制御量θactvに起因した安定走行制御装置46の制御への影響具合を調整することができる。例えば、安定走行制御装置46での制御では、出力補償処理演算部77及び残留電流低減処理演算部78での補償演算や、アクティブステア制御量θactvを不要としてこれらの影響を取り除くようにしたりできる。
【0146】
つまり、安定走行制御装置46では、調整後ピニオン角θp´を使用するにしても、車両の安定した旋回走行を行う制御に適合させるように調整された情報として使用することができる。
【0147】
以下、本実施形態の効果を説明する。
(4-1)本実施形態によれば、調整後ピニオン角θp´は、転舵機構6の動作を制御するのに適合されるなかで得られる第2オフセット補償後角度θp5*を基礎とすることで、換算演算や、特性可変演算や、補償演算の影響具合を考慮して、安定走行制御装置46の制御に適合されることになる。したがって、調整後ピニオン角θp´を転舵機構6での機能以外の制御で都合よく使用することができる。
【0148】
(4-2)本実施形態では、転舵機構6の動作を制御するのに適合させるべく、第2オフセット補償後角度θp5*を加味するなかで、換算演算や、特性可変演算や、補償演算を施すことで制御ピニオン角θp*を得るようにしている。これに対して、情報調整部140では、安定走行制御装置46に応じた調整として、制御ピニオン角演算部62での換算演算や、特性可変演算や、補償演算の影響具合を調整するようにしている。
【0149】
この場合、第2オフセット補償後角度θp5*を基礎として調整後ピニオン角θp´を得ることで、換算演算や、特性可変演算や、補償演算の影響については、安定走行制御装置46の制御で直接そのまま反映させないようにすることが要求される場合でも好適に対応することができる。
【0150】
<第5実施形態>
以下、車両用制御装置の第5実施形態について説明する。なお、既に説明した実施形態と同一構成等は、同一の符号を付す等して、その重複する説明を省略する。
【0151】
図1中に二点鎖線で示すように、操舵制御装置2には、CAN等の車載ネットワーク45を介して車両用制御装置としての進路案内制御装置48が接続されている。進路案内制御装置48は、操舵制御装置2とは別に車両に設けられている。進路案内制御装置48は、操舵制御装置2を通じて得られる情報を含む各種の情報に基づいて、車両の予想進路の案内を行うべく車室内に設けられるバックガイドモニターBGMの表示内容を制御する。例えば、進路案内制御装置48は、駐車時等の車両の後退を補助するべく、車両後部に搭載されるカメラにより撮影される映像とともに車両の予想進路を示す予想軌跡線を表示させるようにバックガイドモニターBGMの表示内容を制御する。この場合、進路案内制御装置48は、操舵制御装置2を通じて得られる調整後ピニオン角θp´に基づいて、上記予想軌跡線を演算する。本実施形態において、進路案内制御装置48は、進路案内制御部、すなわち第2制御部の一例である。また、バックガイドモニターBGMは、進路案内機能部の一例である。また、調整後ピニオン角θp´は、転舵情報の一例である。
【0152】
そして、
図4中に二点鎖線で示すように、進路案内制御装置48には、本実施形態の情報調整部150を通じて得られる調整後ピニオン角θp´が車載ネットワーク45を介して入力される。情報調整部140は、ピニオン角θpに対して、最終オフセット残量θo3、第2オフセット補償後角度θp5*、出力補償後角度θp6*、及び残留電流低減処理後角度θp7*を加味するようにして、調整後ピニオン角θp´を演算する。
【0153】
具体的には、
図12に示すように、情報調整部150には、ピニオン角θp、オフセット要求FLG(A)、最終オフセット残量θo3、第2オフセット補償後角度θp5*、出力補償後角度θp6*、及び残留電流低減処理後角度θp7*が入力される。
【0154】
例えば、残留電流低減処理後角度θp7*、及び出力補償後角度θp6*は、減算器151を通じて、上記第1差分Δθ1´に対応する第13差分Δθ13´として、第13乗算器152に出力される。この場合、第13乗算器152は、第13差分Δθ13´に対して第13ゲインK13を乗算して得られる第13情報調整量Δθ13を演算する。第13ゲインK13は、調整後ピニオン角θp´の使用先である進路案内制御装置48が予想軌跡線を演算するのに適合させる観点で設定されている。つまり、第13ゲインK13は、残留電流低減処理演算部78での補償演算を通じて加味された制御量分について、例えば、影響具合を減らすべく1未満の値や、影響具合を増やすべく1以上の値等、適宜設定される。こうして得られた第13情報調整量Δθ13は、加減算器156に出力される。
【0155】
例えば、出力補償後角度θp6*、及び第2オフセット補償後角度θp5*は、減算器153を通じて、上記第2差分Δθ2´に対応する第14差分Δθ14´として、第14乗算器154に出力される。この場合、第14乗算器154は、第14差分Δθ14´に対して第14ゲインK14を乗算して得られる第14情報調整量Δθ14を演算する。第14ゲインK14は、第13ゲインK13と同様の観点で設定されている。つまり、第14ゲインK14は、出力補償処理演算部77での補償演算を通じて加味された制御量分について、例えば、影響具合を減らすべく1未満の値や、影響具合を増やすべく1以上の値等、適宜設定される。こうして得られた第14情報調整量Δθ14は、加減算器156に出力される。
【0156】
例えば、最終オフセット残量θo3は、第15乗算器155を通じて、第15ゲインK15を乗算して得られる、第3情報調整量Δθ3に対応する第15情報調整量Δθ15として演算される。第15ゲインK15は、各ゲインK13,K14と同様の観点で設定されている。つまり、第15ゲインK15は、最終オフセット残量θo3について、例えば、第1要求フラグr1である場合には影響具合を減らすべく1未満の値や、第2要求フラグr2である場合には影響具合を増やすべく1以上の値等、適宜設定される。例えば、第15ゲインK15は、各要求フラグr1,r2の間で値が変更される場合、時間に対する徐変処理を実行する。こうして得られた第15情報調整量Δθ15は、加減算器156に出力される。
【0157】
例えば、加減算器156にて、ピニオン角θpを基礎として、当該ピニオン角θpに対して、第13情報調整量Δθ13、及び第14情報調整量Δθ14が加算されるとともに、第15情報調整量Δθ15が減算されることで調整後ピニオン角θp´が演算される。
【0158】
なお、本実施形態について、逆変換演算部82に入力される情報は、本実施形態の情報調整部150で調整された調整後ピニオン角θp´でもよい。また、逆変換演算部82に入力される情報は、上記第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態、又は第4実施形態の各情報調整部81,100,130,140で調整された調整後ピニオン角θp´でもよい。また、逆変換演算部82に入力される情報は、各情報調整部81,100,130,140,150で未調整の制御ピニオン角θp*、すなわち残留電流低減処理後角度θp7*でもよい。
【0159】
以下、本実施形態の作用を説明する。
調整後ピニオン角θp´の演算では、第13情報調整量Δθ13と、第14情報調整量Δθ14とを加味することで、出力補償処理演算部77及び残留電流低減処理演算部78での補償演算を通じて加味された制御量分に起因した予想軌跡線の演算への影響具合を調整することができる。例えば、予想軌跡線の演算では、出力補償処理演算部77及び残留電流低減処理演算部78での補償演算を通じて加味された制御量分を不要として、車両の停車中での予想軌跡線の変化を抑えたり、運転者によるステアリング保舵時の車両の加減速に応じた予想軌跡線の変化を抑えたりすることができる。
【0160】
つまり、進路案内制御装置48では、調整後ピニオン角θp´を使用するにしても、予想軌跡線の演算に適合させるように調整された情報として使用することができる。
以下、本実施形態の効果を説明する。
【0161】
(5-1)本実施形態によれば、調整後ピニオン角θp´は、転舵機構6の動作を制御するのに適合されるなかで得られるピニオン角θpを用いて演算されるが、換算演算や、特性可変演算や、補償演算の影響具合を考慮して、進路案内制御装置48の制御に適合されることになる。したがって、調整後ピニオン角θp´を転舵機構6での機能以外の制御で都合よく使用することができる。
【0162】
(5-2)本実施形態では、ピニオン角θpの結果を導くことになる制御ピニオン角θp*に対して、転舵機構6の動作を制御するのに適合させるべく、換算演算や、特性可変演算や、補償演算を施すようにしている。これに対して、情報調整部150では、進路案内制御装置48に応じた調整として、制御ピニオン角演算部62での換算演算や、特性可変演算や、補償演算の影響具合を調整するようにしている。
【0163】
これにより、制御ピニオン角演算部62での換算演算や、特性可変演算や、補償演算の影響については、進路案内制御装置48の制御で直接そのまま反映させないようにすることが要求される場合でも好適に対応することができる。
【0164】
上記各実施形態は次のように変更してもよい。また、以下の他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
・上記第1実施形態において、情報調整部81では、調整後ピニオン角θp´を演算するための各情報調整量Δθ1~Δθ3に関わる加減算、乗算等の具体的な演算方法は目的に応じて適宜変更できる。また、情報調整部81では、ピニオン角θpに代えて、残留電流低減処理後角度θp7*、すなわち制御ピニオン角θp*や、その他の中間制御量θinfを基礎としてもよい。また、情報調整部81では、その他の各実施形態の各情報調整量Δθ4,Δθ5,Δθ8,Δθ11,Δθ12を加味するようにしたり、各情報調整量Δθ1~Δθ3の少なくともいずれかを加味しないようにしたりしてもよい。なお、各情報調整量Δθ5,Δθ12を加味する場合には、上記第2実施形態等と同様、運転支援制御装置47の構成を追加するようにすればよい。
【0165】
・上記第1実施形態において、安定走行制御装置46は、アクティブステア制御量θactvとしてトルクの次元を有する制御量を生成してもよい。この場合、トルクの次元を有するアクティブステア制御量θactvは、角度の次元を有する値に変換された後、外部指令値加算演算部73にて加味されるようにすればよい。
【0166】
・上記第1実施形態において、操舵制御装置2には、アクティブステア制御量θactvが入力されなくてもよい。この場合、転舵側制御部60では、外部指令値加算演算部73を削除することができる。
【0167】
・上記第1実施形態において、制御ピニオン角演算部62では、第1変換演算部71と、第2変換演算部72と、外部指令値加算演算部73と、オフセット角演算部74と、徐変処理演算部75と、追従補償処理演算部76と、出力補償処理演算部77と、残留電流低減処理演算部78との少なくともいずれかの機能を有していればよい。この場合、情報調整部81では、制御ピニオン角演算部62が有する機能に起因した偏差補償軸力Fvの発生具合を調整すればよい。例えば、第1変換演算部71と、第2変換演算部72とを削除する場合には、舵角比が固定されることになる。この場合、逆変換演算部82を削除することができる。これは、上記第2~第5実施形態についても同様である。つまり、上記第2実施形態の各情報調整部100,110では、制御ピニオン角演算部62が有する機能に起因した角度軸力Frの発生具合を調整すればよい。また、上記第3実施形態の情報調整部130では、制御ピニオン角演算部62が有する機能に起因した操舵角θsの変化への影響具合を調整すればよい。また、上記第4実施形態の情報調整部140では、制御ピニオン角演算部62が有する機能に起因した安定走行制御装置46の制御への影響具合を調整すればよい。また、上記第5実施形態の情報調整部150では、制御ピニオン角演算部62が有する機能に起因した予想軌跡線の演算への影響具合を調整すればよい。
【0168】
・上記第1実施形態において、偏差補償軸力演算部56bは、偏差補償軸力Fvを演算する際、操舵角θs、及び転舵変換角θp_sを少なくとも用いていればよく、車速値V等の他の要素を組み合わせて用いるようにしてもよい。なお、偏差補償軸力Fvの演算では、転舵変換角θp_sの代わりに、調整後ピニオン角θp´を用いるようにしてもよい。
【0169】
・上記第2実施形態において、情報調整部100では、調整後ピニオン角θp´を演算するための各情報調整量Δθ4,Δθ5に関わる加減算、乗算等の具体的な演算方法は目的に応じて適宜変更できる。また、情報調整部100では、その他の各実施形態の各情報調整量Δθ1~Δθ3,Δθ8,Δθ11,Δθ12を加味するようにしたり、各情報調整量Δθ4,Δθ5の少なくともいずれかを加味しないようにしたりしてもよい。また、上記第2実施形態の別形態において、情報調整部110では、各情報調整量Δθ4,Δθ5を加味するようにしたり、各情報調整量Δθ6~Δθ11の少なくともいずれかを加味しないようにしたりしてもよい。
【0170】
・上記第2実施形態において、運転支援制御装置47は、運転支援制御量θadasとしてトルクの次元を有する制御量を生成してもよい。この場合、トルクの次元を有する運転支援制御量θadasは、角度の次元を有する値に変換された後、外部指令値加算演算部73にて加味されるようにすればよい。
【0171】
・上記第2実施形態において、操舵制御装置2には、アクティブステア制御量θactv、及び運転支援制御量θadasの少なくともいずれかが入力されていればよい。また、上記第2実施形態の別形態において、操舵制御装置2には、アクティブステア制御量θactv、及び運転支援制御量θadasのいずれも入力されなくてもよい。
【0172】
・上記第2実施形態において、角度軸力演算部56aaは、角度軸力Frを演算する際、調整後ピニオン角θp´を少なくとも用いていればよく、車速値Vを用いなくてもよいし、他の要素を組み合わせて用いるようにしてもよい。なお、角度軸力Frの演算では、調整後ピニオン角θp´の代わりに、調整後ピニオン角θp´を基に得られる転舵変換角θp_sを用いるようにしてもよい。
【0173】
・上記第3実施形態において、情報調整部130では、調整後ピニオン角θp´を演算するための第12情報調整量Δθ12に関わる加減算、乗算等の具体的な演算方法は目的に応じて適宜変更できる。また、情報調整部130では、ピニオン角θpや、制御ピニオン角θp*や、その他の中間制御量θinfを基礎としてもよい。この場合、情報調整部130では、その他の各実施形態の各情報調整量Δθ1~Δθ5,Δθ8,Δθ11を加味するようにしたり、第12情報調整量Δθ12を加味しないようにしたりしてもよい。
【0174】
・上記第3実施形態では、上記第2実施形態の情報調整部100を追加するようにして、運転支援を実現する場合であるか否かに応じて各情報調整部100,130を切り替えて調整後ピニオン角θp´を演算するようにしてもよい。この場合、運転支援を実現しない場合に情報調整部100を通じて調整後ピニオン角θp´を演算するように切り替えるとともに、運転支援を実現する場合に情報調整部130を通じて調整後ピニオン角θp´を演算するように切り替えるようにすればよい。
【0175】
・上記第3実施形態において、操舵側制御部50では、転舵変換角θp_sに基づいて、操舵角θsを推定する、所謂、オブザーバ機能を有するようにしてもよい。例えば、操舵角フィードバック制御部58では、転舵変換角θp_sと操舵角θsを推定して得られる推定操舵角との差に基づいて、操舵角度制御量Ta*を演算するようにしてもよい。この場合、調整後ピニオン角θp´の演算では、上記第1実施形態と同様、第1情報調整量Δθ1や、第2情報調整量Δθ2や、第3情報調整量Δθ3を加味するようにすればよい。
【0176】
・上記第3実施形態において、操舵制御装置2には、運転支援制御量θadasが少なくとも入力されていればよい。
・上記第3実施形態において、操舵力演算部55は、各種補償量を演算する際、操舵角θs、及び転舵変換角θp_sを少なくとも用いていればよく、操舵トルクThや、車速値Vを用いなくてもよいし、他の要素を組み合わせて用いるようにしてもよい。なお、各種補償量の演算では、転舵変換角θp_sの代わりに、調整後ピニオン角θp´を用いるようにしてもよい。
【0177】
・上記第4実施形態において、情報調整部140では、調整後ピニオン角θp´を演算するためのアクティブステア制御量θactvに関わる加減算、乗算等の具体的な演算方法は目的に応じて適宜変更できる。また、情報調整部140では、第2オフセット補償後角度θp5*の代わりに、その他の中間制御量θinfや、ピニオン角θpや、制御ピニオン角θp*を基礎としてもよい。この場合、情報調整部140では、その他の各実施形態の各情報調整量Δθ1~Δθ3,Δθ4,Δθ5,Δθ8,Δθ11,Δθ12を加味するようにしたり、アクティブステア制御量θactvを加味しないようにしたりしてもよい。なお、各情報調整量Δθ5,Δθ12を加味する場合には、上記第2実施形態等と同様、運転支援制御装置47の構成を追加するようにすればよい。
【0178】
・上記第4実施形態において、操舵制御装置2には、アクティブステア制御量θactvが少なくとも入力されていればよい。
・上記第4実施形態において、安定走行制御装置46は、アクティブステア制御量θactvを演算する際、調整後ピニオン角θp´を少なくとも用いていればよく、車速値V等の他の要素を組み合わせて用いるようにしてもよい。なお、アクティブステア制御量θactvの演算では、調整後ピニオン角θp´の代わりに、調整後ピニオン角θp´を基に得られる転舵変換角θp_sを用いるようにしてもよい。
【0179】
・上記第5実施形態において、情報調整部150では、調整後ピニオン角θp´を演算するための各情報調整量Δθ13~Δθ15に関わる加減算、乗算等の具体的な演算方法は目的に応じて適宜変更できる。また、情報調整部150では、ピニオン角θpに代えて、残留電流低減処理後角度θp7*、すなわち制御ピニオン角θp*や、その他の中間制御量θinfを基礎としてもよい。また、情報調整部150では、その他の各実施形態の各情報調整量Δθ4,Δθ5,Δθ8,Δθ11,Δθ12を加味するようにしたり、各情報調整量Δθ13~Δθ15の少なくともいずれかを加味しないようにしたりしてもよい。なお、各情報調整量Δθ5,Δθ12を加味する場合には、上記第2実施形態等と同様、運転支援制御装置47の構成を追加するようにすればよい。
【0180】
・上記第5実施形態において、操舵制御装置2には、アクティブステア制御量θactv、及び運転支援制御量θadasの少なくともいずれかが入力されなくてもよい。
・上記第5実施形態において、進路案内制御装置48は、予想軌跡線を演算する際、調整後ピニオン角θp´を少なくとも用いていればよく、車速値V等の他の要素を組み合わせて用いるようにしてもよい。なお、予想軌跡線の演算では、調整後ピニオン角θp´の代わりに、調整後ピニオン角θp´を基に得られる転舵変換角θp_sを用いるようにしてもよい。
【0181】
・上記各実施形態において、各情報調整部81,100,110,130,140,150は、調整後ピニオン角θp´や、調整後ピニオン角θp´を基に得られる転舵変換角θp_sの使用先の機能として実現してもよい。つまり、上記第1実施形態では、角度変換部66、すなわち情報調整部81を操舵側制御部50の機能として実現してもよい。また、上記第2実施形態では、角度変換部66のうちの各情報調整部100,110を操舵側制御部50の機能として実現してもよい。また、上記第3実施形態では、角度変換部66、すなわち情報調整部130を操舵側制御部50の機能として実現してもよい。また、上記第4実施形態では、情報調整部140を安定走行制御装置46の機能として実現してもよい。また、上記第5実施形態では、情報調整部150を進路案内制御装置48の機能として実現してもよい。
【0182】
・上記各実施形態において、軸力演算部56は、配分軸力演算部56aや、偏差補償軸力演算部56b以外に、例えば、ステアリングホイール3の操舵限界、すなわち転舵輪5の転舵限界に達する状況になる場合に当該状況を運転者に伝えるためのエンド軸力を演算する機能を有していてもよい。この場合、軸力演算部56は、偏差補償軸力Fvと、エンド軸力とのうちの絶対値が最も大きい軸力を選択し、当該選択した軸力を加算器56cに出力すればよい。
【0183】
・上記各実施形態において、電流軸力演算部56abは、電流軸力Fiを演算する際、転舵側実電流値Ibを少なくとも用いていればよく、車速値V等の他の要素を組み合わせて用いるようにしてもよい。なお、電流軸力演算部56abは、転舵側実電流値Ibの代わりに、転舵側実電流値Ibを回転角θbに基づき変換して得られるdq座標上の電流値との偏差を無くすようにするために得られる電流指令値Ib*を用いるようにしてもよい。
【0184】
・上記各実施形態において、配分比演算部56acは、配分ゲインDiを演算する際、車速値Vに代えて又は加えて、ピニオン角θpや、制御ピニオン角θp*や、操舵角θsや、これらを微分して得られる角速度等の他の要素を用いるようにしてもよい。
【0185】
・上記各実施形態において、軸力演算部56では、偏差補償軸力演算部56b、及び角度軸力演算部56aaを少なくとも有していればよい。この場合、電流軸力演算部56abや、配分比演算部56acは、削除してもよい。
【0186】
・上記各実施形態において、操舵力演算部55では、操舵力Tb*を演算する際、ステアリングホイール3の動作に関わる状態変数を少なくとも用いていればよく、車速値Vを用いなくてもよいし、他の要素を組み合わせて用いるようにしてもよい。ステアリングホイール3の動作に関わる状態変数としては、上記各実施形態で例示した操舵トルクThを用いていなくてもよい。
【0187】
・上記各実施形態において、操舵側制御部50では、操舵トルクThや軸力Fに基づき演算される目標操舵トルクに操舵トルクThを追従させるトルクフィードバック制御の実行により演算される値を操舵力Tb*として目標反力トルク指令値Ts*を演算してもよい。
【0188】
・上記各実施形態において、第1変換演算部71では、車速値Vに加えて、例えば、車両のヨーレートセンサで検出されるヨーレートに応じてスケール変換してもよい。これは、逆変換演算部82についても同様である。
【0189】
・上記各実施形態において、操舵角演算部51では、操舵トルクThに応じたステアリングシャフト11の捩れ分を考慮し、当該捩れ分を回転角θaに対して加減算等を通じて加味することで操舵角θsを演算してもよい。
【0190】
・上記各実施形態において、操舵角θsは、ステアリングシャフト11の回転角度を検出するべく当該ステアリングシャフト11に設けられるステアリングセンサの検出結果を用いてもよい。
【0191】
・上記各実施形態において、転舵側モータ32は、例えば、ラックシャフト22の同軸上に配置するものや、ラックシャフト22にラックアンドピニオン機構を構成するピニオンシャフトに対してウォームアンドホイールを介して接続されるものを採用してもよい。
【0192】
・上記各実施形態において、操舵制御装置2は、1)コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、2)各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路、あるいは、3)それらの組み合わせ、を含む処理回路によって構成することができる。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリすなわち非一時的なコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。これは、安定走行制御装置46や、運転支援制御装置47や、進路案内制御装置48についても同様である。
【0193】
・上記各実施形態は、操舵装置1を、操舵機構4と転舵機構6との間が機械的に常時分離したリンクレスの構造としたが、これに限らず、クラッチにより操舵機構4と転舵機構6との間が機械的に分離可能な構造としてもよい。また、操舵装置1は、運転者によるステアリング操舵を補助するための力であるアシスト力を付与する電動パワーステアリング装置としてもよい。この場合、ステアリングホイール3は、ステアリングシャフト11を介してピニオンシャフト21が機械的に接続される。また、操舵装置1は、転舵機構6について、左右の転舵輪5を独立して転舵させることができる独立転舵可能な構造としてもよい。独立転舵可能な構造の転舵機構では、左右の転舵輪5を独立して転舵させる利点を生かして、左右の転舵輪5についてトー角をトーイン、又はトーアウトに補正することができたりする。この場合、上記各実施形態の各情報調整部81,100,110,130,140では、左右の転舵輪5について補正されたトー角の影響具合を調整するように、調整後ピニオン角θp´を演算することもできる。例えば、上記第1実施形態では、左右の転舵輪について補正されたトー角の影響については、偏差補償軸力Fvの演算で直接そのまま反映させないようにすることが要求される場合でも好適に対応することができる。これは、上記第2~第5実施形態についても同様である。
【0194】
・上記各実施形態では、調整後ピニオン角θp´や、転舵変換角θp_sの使用先として、4輪操舵装置や、後輪操舵装置や、上記各実施形態で例示した以外の車両の他の装置等が実現する機能に対して適用してもよい。
【符号の説明】
【0195】
1…操舵装置
2…操舵制御装置(車両用制御装置)
3…ステアリングホイール
4…操舵機構(操舵機能部)
5…転舵輪
6…転舵機構(転舵機能部、安定走行機能部)
46…安定走行制御装置(車両用制御装置、第2制御部)
47…運転支援制御装置(車両用制御装置)
48…進路案内制御装置(車両用制御装置、第2制御部)
50…操舵側制御部(第2制御部、反力制御部、ステアリングホイール制御部)
56…軸力演算部(第2制御部、反力制御部)
58…操舵角フィードバック制御部(第2制御部、ステアリングホイール制御部)
60…転舵側制御部(第1制御部)
71…第1変換演算部(換算演算)
72…第2変換演算部(換算演算)
73…外部指令値加算演算部(特性可変演算、方向追加演算)
74…オフセット角演算部(補償演算)
75…徐変処理演算部(補償演算)
76…追従補償処理演算部(補償演算)
77…出力補償処理演算部(補償演算)
78…残留電流低減処理演算部(補償演算)
81,100,110,130,140,150…情報調整部
BRK…ブレーキ機構(安定走行機能部)
BGM…バックガイドモニター(進路案内機能部)