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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】部材供給用シート
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/67 20060101AFI20250214BHJP
   B32B 3/10 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
H01L21/68 E
B32B3/10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021062854
(22)【出願日】2021-04-01
(65)【公開番号】P2022158153
(43)【公開日】2022-10-17
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】井上 健郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 栄作
(72)【発明者】
【氏名】平井 文太
(72)【発明者】
【氏名】紺谷 友広
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/010197(WO,A1)
【文献】特開2017-092461(JP,A)
【文献】特開2007-194303(JP,A)
【文献】特開2008-303386(JP,A)
【文献】国際公開第2011/089664(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 3/10
H01L 21/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する面を持つ対象物の前記面に配置される2以上の保護カバー部材と、前記2以上の保護カバー部材が表面に配置された基材シートと、を備えた、前記保護カバー部材を供給するための部材供給用シートであって、
前記保護カバー部材は、前記保護カバー部材が前記面に配置されたときに前記開口を覆う形状を有する保護膜と、前記保護膜の周縁部に接合された担体フィルムと、を含む積層体から構成され、
前記基材シートは、基材層と、前記基材層に積層された粘着剤層と、を含み、
前記粘着剤層を介して、前記担体フィルムが前記基材層に貼り合わされており、
前記担体フィルムの表面自由エネルギーは、前記基材シート側の表面において、20mJ/m2以上であり、
前記粘着剤層のタック力は、100mN/mm2以下である、
部材供給用シート。
【請求項2】
前記タック力は、20mN/mm2以上である請求項1に記載の部材供給用シート。
【請求項3】
前記基材シートの前記表面に、前記2以上の前記保護カバー部材が互いに0.05mm以上5.0mm以下の間隔を保持した状態で配列されている請求項1又は2に記載の部材供給用シート。
【請求項4】
前記粘着剤層は、紫外線の照射により硬化した紫外線硬化型粘着剤である請求項1~3のいずれかに記載の部材供給用シート。
【請求項5】
前記保護膜は、厚さ方向の通気性を有する請求項1~4のいずれかに記載の部材供給用シート。
【請求項6】
前記保護膜は、ポリテトラフルオロエチレン膜を含む請求項1~5のいずれかに記載の部材供給用シート。
【請求項7】
前記担体フィルムは、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルスルホン、及びポリフェニレンスルフィドからなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1~6のいずれかに記載の部材供給用シート。
【請求項8】
前記積層体は、前記保護膜に対して前記担体フィルムとは反対側に位置すると共に、前記保護膜を覆うカバーフィルムを更に備える請求項1~7のいずれかに記載の部材供給用シート。
【請求項9】
前記保護カバー部材が、微小電気機械システム(MEMS)を前記対象物とするMEMS用部材である請求項1~8のいずれかに記載の部材供給用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口を有する面を持つ対象物の当該面に配置される保護カバー部材を供給するための部材供給用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、微小電気機械システム(Micro Electro Mechanical Systems;以下、「MEMS」と記載)等の微細な製品の開口に対して保護カバー部材を配置する要請がある。その一環として、上記製品の製造工程における保護カバー部材の配置の効率を向上させるために、突き上げによって半導体素子をピックアップする装置を保護カバー部材のピックアップに応用することが検討されている。当該装置では、保護カバー部材62の配置面63とは反対側から突き上げ(push up)圧子64によって基材シート61を突き上げた状態(このとき、保護カバー部材62は基材シート61に対して部分的に剥離する)で、吸着ノズル57等によって保護カバー部材62をピックアップすることが想定される(図1参照)。
【0003】
特許文献1には、MEMSの開口を保護するためのベント組立て品であって、ePTFEメンブレンベント(通気フィルタ)と、粘着剤により通気フィルタに取り付けられた担体とを備え、担体の下面にUV硬化性ダイシングテープであるライナー(基材シート)を貼り付けたベント組立て品が開示されている。特許文献1に示されるようなMEMSの開口のための保護カバー部材は、通常、分割された後に保護カバー部材となる部材シートと基材シートとを貼り合わせた状態でエンドユーザに供給される。エンドユーザによって、部材シートはダイシングされ、言い換えるとシンギュレーションされて複数の保護カバー部材へと分割される。ダイシングの後、基材シートに対する保護カバー部材の部分的な剥離を容易にするために紫外線(UV光)が照射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2018-501972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの検討によれば、特許文献1が開示する部材の供給方法において、部材用シート93に基材シート91を貼り付けてから(図2の左図参照)、保管などにより長期間が経過すると、部材用シート93の下部と基材シート91の粘着剤92との界面が徐々に馴染んでくる(図2の右図参照)。また、本発明者らは、時間の経過に伴う上述の馴染みが基材シートの粘着剤の粘着力の増加をもたらし、上述のピックアップ装置を用いて基材シートから保護カバー部材をピックアップする際のピックアップ性の不安定化を招くことを見出した。
【0006】
本発明は、保護カバー部材を供給するための部材供給用シートの改良を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
開口を有する面を持つ対象物の前記面に配置される2以上の保護カバー部材と、前記2以上の保護カバー部材が表面に配置された基材シートと、を備えた、前記保護カバー部材を供給するための部材供給用シートであって、
前記保護カバー部材は、前記保護カバー部材が前記面に配置されたときに前記開口を覆う形状を有する保護膜と、前記保護膜の周縁部に接合された担体フィルムと、を含む積層体から構成され、
前記基材シートは、基材層と、前記基材層に積層された粘着剤層と、を含み、
前記粘着剤層を介して、前記担体フィルムが前記基材層に貼り合わされており、
前記担体フィルムの表面自由エネルギーは、前記基材シート側の表面において、20mJ/m2以上であり、
前記粘着剤層のタック力は、100mN/mm2以下である、
部材供給用シート、
を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の部材供給用シートでは、保護カバー部材における担体フィルムの表面自由エネルギーが、基材シート側の表面において、所定の値以上である。また、基材シートにおける粘着剤層のタック力が、所定の値以下である。本発明者らの検討によれば、この部材供給用シートは、粘着剤層のタック力が抑制されている。そのため、突き上げによる上記部分的な剥離及びその後のピックアップにおける保護カバー部材の最終的な剥離が、スムーズかつ確実に進行する。したがって、本発明の部材供給用シートによれば、ピックアップ性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、突き上げピックアップ装置における保護カバー部材のピックアップを説明するための模式図である。
図2図2は、特許文献1が開示する部材について、時間の経過に伴い基材シートの粘着剤の粘着力が増加するメカニズムを示す模式図である。
図3A図3Aは、本発明の部材供給用シートの一例を模式的に示す平面図である。
図3B図3Bは、図3Aの部材供給用シートの領域Iにおける断面B-Bを示す断面図である。
図4図4は、本発明の部材供給用シートによる保護カバー部材の供給の一態様を示す模式図である。
図5A図5Aは、本発明の部材供給用シートによる保護カバー部材の供給の一態様を説明するための模式的な平面図である。
図5B図5Bは、図5Aの断面B-Bを模式的に示す断面図である。
図5C図5Cは、ピックアップ時の態様を模式的に示す断面図である。
図6図6は、本発明の部材供給用シートにより供給される保護カバー部材の一例を模式的に示す断面図である。
図7A図7Aは、本発明の部材供給用シートにより供給される保護カバー部材の一例を模式的に示す断面図である。
図7B図7Bは、本発明の部材供給用シートにより供給される保護カバー部材の一例を模式的に示す断面図である。
図8図8は、本発明の部材供給用シートにより供給される保護カバー部材の一例を模式的に示す平面図である。
図9図9は、本発明の部材供給用シートにより供給される保護カバー部材の一例を模式的に示す断面図である。
図10図10は、本発明の部材供給用シートにより供給される保護カバー部材の一例を模式的に示す断面図である。
図11図11は、本発明の部材供給用シートにより供給される保護カバー部材の一例を模式的に示す断面図である。
図12図12は、本発明の部材供給用シートにより供給される保護カバー部材の一例を模式的に示す断面図である。
図13A図13Aは、実施例で実施した部材供給用シートに対するピックアップ特性の評価試験を説明するための模式的な平面図である。
図13B図13Bは、図13Aの断面B-Bを模式的に示す断面図である。
図13C図13Cは、ピックアップ時の態様を模式的に示す断面図である。
図14図14は、実施例で実施した部材供給用シートに対するピックアップ特性の評価試験を説明するための模式図である。
図15図15は、実施例で実施した部材供給用シートに対する表面自由エネルギーの算出に用いるグラフである。
図16図16は、実施例で実施した部材供給用シートに対するタック力の評価試験を説明するための模式図である。
図17図17は、実施例で実施した部材供給用シートの製造工程の一部示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0011】
本発明の部材供給用シートの一例を図3A及び図3Bに示す。図3Bには、図3Aの部材供給用シート1における領域Iの断面B-Bが示されている。部材供給用シート1は、基材シート2と、基材シート2の表面(配置面)4に配置された2以上の保護カバー部材3とを備える。このように、部材供給用シート1では、基材シート2の表面4に、複数の保護カバー部材3が配列されている。
【0012】
複数の保護カバー部材3は、基材シート2の表面4に互いに間隔Wを保持した状態で縦横に配列されている。間隔Wは、0.05mm以上かつ5.0mm以下、特に0.10mm以上かつ3.0mm以下であってもよい。間隔Wは、ダイシングソーの幅よりも大きくてもよく、言い換えると0.10mm以上、さらに3.0mm以上であってもよい。図3Aの基材シート2は、長方形の形状を有する枚葉状であり、基材シート2の表面4に、表面4に垂直な方向から見て長方形の保護カバー部材3が配列されている。間隔Wは、保護カバー部材3の主面に垂直に見て、保護カバー部材3の長手方向における間隔W1及び保護カバー部材3の短手方向における間隔W2を含む。間隔W1及び間隔W2は、それぞれ、Wについて上記に例示した範囲内にあってもよい。間隔W1及び間隔W2は等しくてもよいし、異なっていてもよい。
【0013】
部材供給用シート1は、保護カバー部材3を供給するためのシートである。保護カバー部材3は、開口を有する面を持つ対象物の当該面(配置面)に配置される部材である。配置面への保護カバー部材3の配置により、例えば、上記開口への及び/又は上記開口からの異物の侵入、換言すれば、上記開口を介した異物の侵入、を防ぎうる。保護カバー部材3は、開口を有する面を持つ対象物の当該面に配置されて、上記開口への異物の侵入を防ぐ部材であってもよい。保護カバー部材3は、保護膜31と保護膜31の周縁部に接合された担体フィルム33とを含む積層体34から構成される。保護膜31は、保護カバー部材3が上記面に配置されたときに上記開口を覆う形状を有する。
【0014】
図3Bの例では、積層体34は保護膜31、粘着剤層32及び担体フィルム33の3層構造を有している。保護膜31と粘着剤層32は互いに接合している。粘着剤層32と担体フィルム33は互いに接合している。基材シート2は、基材層21と、基材層21に積層された粘着剤層22とを含む。部材供給用シート1では、粘着剤層22を介して、担体フィルム33が基材層21に貼り合わされている。
【0015】
積層体34は、保護膜31及び担体フィルム33の2層構造であってもよい。この場合、保護膜31と担体フィルム33とは、超音波溶着などの手法により溶着されていてもよい。
【0016】
保護カバー部材3について、担体フィルム33の表面自由エネルギーは、基材シート2側の表面において、20mJ/m2以上である。担体フィルム33の表面自由エネルギーは、基材シート2側の表面において、30mJ/m2以上、40mJ/m2以上、更には50mJ/m2以上であってもよい。担体フィルム33の表面自由エネルギーの上限は、例えば、65mJ/m2以下である。
【0017】
固体の表面自由エネルギー(すなわち、表面張力)は、次のようにして算出される。
【0018】
表面張力γは、表面張力γ=分散エネルギー成分γd+極性エネルギー成分γpで表される。以下では、液体の表面張力γをγL、固体の表面張力γをγSと示す。
【0019】
表面張力γが既知の2種の液体L(純水,エチレングリコール)について、文献などからγL,γL d,γL pを得る。既知の2種の液体Lの数値を以下の表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
上記2種の液体L(純水,エチレングリコール)について、自動接触角測定装置(英弘精機製,Contact Angle System OCA30)を用いて接触角θを測定する。
【0022】
下記のヤング-デュプレ(Yonng-Dupre)の式と、表1に示した2種の液体Lの数値及び測定された接触角θから、図15に示すグラフが得られる。図15のグラフにおいて、点Aは純水を示し、点Bはエチレングリコールを示す。なお、下記において、WLSは、ヤング-デュプレの式の左辺に相当する。
【0023】
【数1】
【0024】
図15に示すグラフより、切片(γS d0.5及び傾き(γS p0.5を算出する。固体の表面張力γSは、分散エネルギー成分γS d+極性エネルギー成分γS pで表されるため、上記結果から、表面自由エネルギーを算出できる。
【0025】
基材シート2について、粘着剤層22のタック力は、100mN/mm2以下である。粘着剤層22のタック力は、90mN/mm2以下、更には85mN/mm2以下であってもよい。粘着剤層22のタック力の下限は、例えば、20mN/mm2以上である。
【0026】
タック力を求めるための引張試験について、図16を参照しながら説明する。基材シート2の粘着剤層22が外側(図16において上側)となる様に、基材シート2をアクリル両面テープ(日東電工製,No.5000NS)の一方の面と貼合せた後、15mm×15mmの正方形に切り出す。No.5000NSの他方の面は、SUS304製台座に貼り付ける。引張試験機(島津製作所製,オートグラフAGS-X)に直径10mmのSUS304製円柱プローブPをセットする。試験片に対して、25℃で、3mm/分の速度にて5N×15秒間、圧縮接着させる(圧縮モードM1)。その後、25℃で、100mm/分の速度にて引張試験を行い(引張モードM2)、このときの最大荷重を測定することによりタック力を算出できる。
【0027】
部材供給用シート1は、突き上げピックアップ装置に保護カバー部材3を供給するシートとして使用できる。ただし、部材供給用シート1による保護カバー部材3の供給先は、突き上げピックアップ装置に限定されない。例えば、突き上げピックアップ装置以外のピックアップ装置、或いは手やピンセット等により保護カバー部材3をピックアップして使用する工程に、保護カバー部材3を供給することも可能である。突き上げピックアップ装置の例は、チップマウンター及びダイボンダーである。ただし、突き上げピックアップ装置は上記例に限定されない。
【0028】
図4に、突き上げピックアップ装置に対する部材供給用シート1による保護カバー部材3の供給の例を示す。図4に示すように、突き上げピックアップ装置に供給された部材供給用シート1は、保護カバー部材3が配置された位置において、当該装置が備える突き上げ圧子71により、基材シート2の表面4とは反対側から突き上げられる。突き上げによって基材シート2は上方に変形し、保護カバー部材3は基材シート2から部分的に剥離する。剥離面は、保護カバー部材3の担体フィルム33と基材シート2の粘着剤層22との間に位置する。この状態で、吸着ノズル等のピックアップ部72により、保護カバー部材3が基材シート2からピックアップされる。ピックアップされた保護カバー部材3は、例えば、ピックアップ部72により搬送して、開口75を有する面74を持つ対象物73の当該面74に配置できる。保護カバー部材3の配置は、例えば、担体フィルム33が面74に接するように実施できる。
【0029】
具体的なピックアップの態様は、基材シート2の突き上げがピックアップ時に実施される限り、限定されない。ピックアップの具体的な態様の例を図5Aから図5Cに示す。なお、図5Bには、図5Aの断面B-Bが示されている。図5Cには、ピックアップ時の態様が模式的に示されている。図5A及び図5Bの部材供給用シート1は、ダイシングリング(ウェハリング)42に固定された状態で突き上げピックアップ装置に供給される。図5A及び図5Bの部材供給用シート1は、基材シート2の粘着剤層22によってダイシングリング42に固定されている。ただし、部材供給用シート1の固定方法は、上記例に限定されない。部材供給用シート1は、例えば、両面粘着テープによってダイシングリング42に固定されていてもよい。
【0030】
図5Aの例では、基材シート2上に2以上の保護カバー部材3が規則的に配置されている。より具体的には、保護カバー部材3は、基材シート2の表面に垂直に見て、各々の保護カバー部材3の中心が長方格子の交点(格子点)に位置するように配置されている。ただし、規則的に配置された保護カバー部材3の配列は上記例に限定されない。各々の保護カバー部材3の中心が、正方格子、斜方格子、菱形格子等の種々の格子の交点に位置するように規則的に配置されていてもよい。また、保護カバー部材3の配置の態様は、上記例に限定されない。例えば、基材シート2の表面に垂直に見て、保護カバー部材3が千鳥状に配置されていてもよい。なお、保護カバー部材3の中心は、表面に垂直に見たときの当該部材3の形状の重心として定めることができる。
【0031】
図5Cの例では、基材シート2の突き上げは、ダイシングリング42の内径よりも小さな外径を有する別のダイシングリング(エキスパンドリング)46によって、部材供給用シート1を持ち上げた状態で実施されている。突き上げ圧子47による突き上げ量が最大に達した時点で、吸着ノズル48により、保護カバー部材3が基材シート2からピックアップされる。
【0032】
基材シート2に含まれる基材層21を構成する材料は、典型的には、樹脂である。樹脂の例は、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル及びポリウレタンである。ただし、基材層21を構成する材料は、上記例に限定されない。基材層21は、単層であっても、2以上の層の積層構造を有していてもよい。
【0033】
基材層21に積層された粘着剤層22は、紫外線(UV光)の照射により硬化した紫外線硬化型粘着剤(UV硬化型粘着剤)である。言い換えると、粘着剤層22は、基材層21に積層したUV硬化型粘着剤にUV光を照射し、硬化させることにより形成される。粘着剤層22がUV光の照射により硬化したUV硬化型粘着剤であると、時間の経過によるタック力の増加が抑制される。これにより、保護カバー部材3のピックアップ性が向上する。
【0034】
基材シート2は、基材層21と粘着剤層22との積層構造を有するダイシングテープであってもよい。
【0035】
基材シート2の厚さは、例えば、1~200μmである。基材シート2の厚さは、100μm以下であってもよい。
【0036】
図3Aの基材シート2は、長方形の形状を有する枚葉状である。図5Aの基材シート2は、円の形状を有する枚葉状である。枚葉状である基材シート2の形状は上記例に限定されず、正方形及び長方形を含む多角形、円、楕円等であってもよい。基材シート2が枚葉状である場合、部材供給用シート1は枚葉の状態で流通及び使用できる。基材シート2は帯状であってもよく、この場合、部材供給用シート1も帯状となる。帯状の部材供給用シート1は、巻芯に巻回した巻回体として流通できる。
【0037】
保護膜31は、厚さ方向に非通気性であっても、厚さ方向の通気性を有していてもよい。保護膜31が厚さ方向の通気性を有する場合、保護カバー部材3の配置により、例えば、対象物73の開口75を介した異物の侵入を防ぎながら開口75の通気性を確保できる。通気性の確保により、例えば、対象物73の開口75を介した圧力の調整や圧力の変動の緩和が可能となる。圧力の変動を緩和する一例を以下に示す。回路基板に設けられた貫通孔の一方の開口を覆うように半導体素子を配置した状態で、ハンダリフロー等の加熱処理を施すことがある。ここで、他方の開口を覆うように保護カバー部材3を配置することで、加熱処理時における貫通孔を介した素子への異物の侵入を抑制できる。保護膜31が厚さ方向の通気性を有すると、加熱による貫通孔内の圧力上昇が緩和されて、圧力上昇による素子の損傷を防ぐことができる。半導体素子の例は、マイクロフォン、圧力センサ、加速度センサ等のMEMSである。これらの素子は、通気又は通音可能な開口を有しており、当該開口が上記貫通孔に面するように回路基板に配置しうる。保護カバー部材3は、製造後の半導体素子の開口75を覆うように当該素子に配置されてもよい。保護膜31が厚さ方向の通気性を有する場合、配置された保護カバー部材3は、例えば、開口75を介した異物の侵入を防ぎながら当該開口75を介した通気性が確保される通気部材、及び/又は、開口75を介した異物の侵入を防ぎながら当該開口75を介した通音性が確保される通音部材として機能しうる。なお、保護膜31が厚さ方向に非通気性である場合にも、保護膜31の振動による音の伝達が可能であることから、配置後の保護カバー部材3は通音部材として機能しうる。
【0038】
厚さ方向の通気性を有する保護膜31の当該通気度は、JIS L1096に定められた通気性測定B法(ガーレー形法)に準拠して求めた空気透過度(ガーレー通気度)により表示して、例えば100秒/100mL以下である。
【0039】
保護膜31は、防水性及び/又は防塵性を有していてもよい。防水性を有する保護膜31を備える保護カバー部材3は、対象物73への配置後に、例えば防水通気部材及び/又は防水通音部材として機能しうる。防水性を有する保護膜31の耐水圧は、JIS L1092に定められた耐水度試験A法(低水圧法)又はB法(高水圧法)に準拠して求めた値にして、例えば5kPa以上である。
【0040】
保護膜31を構成する材料の例は、金属、樹脂及びこれらの複合材料である。
【0041】
保護膜31を構成しうる樹脂の例は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、シリコーン樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フッ素樹脂である。フッ素樹脂の例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)である。ただし、樹脂は上記例に限定されない。
【0042】
保護膜31を構成しうる金属の例は、ステンレス及びアルミニウムである。
【0043】
保護膜31は、耐熱性材料から構成されてもよい。この場合、保護カバー部材3を構成する他の層の材料によっては、ハンダリフロー等の高温下での処理に対してより確実な対応が可能である。耐熱性材料の例は、金属及び耐熱性樹脂である。耐熱性樹脂は、典型的には、150℃以上の融点を有する。耐熱性樹脂の融点は、160℃以上、200℃以上、250℃以上、260℃以上、更には300℃以上であってもよい。耐熱性樹脂の例は、シリコーン樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド、PEEK及びフッ素樹脂である。フッ素樹脂は、PTFEであってもよい。PTFEは、耐熱性に特に優れている。
【0044】
厚さ方向の通気性を有する保護膜31は、延伸多孔質膜を含んでいてもよい。延伸多孔質膜は、フッ素樹脂の延伸多孔質膜、特にPTFE延伸多孔質膜、であってもよい。PTFE延伸多孔質膜は、通常、PTFE粒子を含むペースト押出物又はキャスト膜を延伸して形成される。PTFE延伸多孔質膜は、PTFEの微細なフィブリルにより構成され、フィブリルに比べてPTFEが凝集した状態にあるノードを有することもある。PTFE延伸多孔質膜によれば、異物の侵入を防ぐ性能及び通気性を高いレベルで両立させることが可能である。保護膜31には、公知の延伸多孔質膜を使用できる。
【0045】
厚さ方向の通気性を有する保護膜31は、双方の主面を接続する複数の貫通孔が形成された穿孔膜を含んでいてもよい。穿孔膜は、非多孔質の基質構造を有する原膜、例えば無孔膜、に複数の貫通孔が設けられた膜であってもよい。穿孔膜は、上記複数の貫通孔以外に、厚さ方向の通気経路を有していなくてもよい。貫通孔は、穿孔膜の厚さ方向に延びていてもよく、厚さ方向に直線状に延びるストレート孔であってもよい。貫通孔の開口の形状は、穿孔膜の主面に垂直に見て、円又は楕円であってもよい。穿孔膜は、例えば、原膜に対するレーザー加工、又は、イオンビーム照射及びこれに続く化学エッチングによる孔開け加工により形成できる。
【0046】
厚さ方向の通気性を有する保護膜31は、不織布、織布、メッシュ、ネットを含んでいてもよい。
【0047】
保護膜31は、上記例に限定されない。
【0048】
図3Bの保護膜31の形状は、その主面に垂直に見て、長方形である。ただし、保護膜31の形状は上記例に限定されず、例えば、その主面に垂直に見て、正方形及び長方形を含む多角形、円、楕円であってもよい。多角形は、正多角形であってもよい。多角形の角は、丸められていてもよい。
【0049】
保護膜31の厚さは、例えば、1~100μmである。
【0050】
保護膜31の面積は、例えば、175mm2以下である。保護膜31の面積が当該範囲にある保護カバー部材3は、例えば、小径の開口を通常有する回路基板やMEMSへの配置に適している。保護膜31の面積の下限は、例えば、0.20mm2以上である。ただし、保護膜31の面積は、保護カバー部材3が配置される対象物の種類によっては、より大きくてもよい。
【0051】
粘着剤層32は、例えば、粘着剤の塗布層である。粘着剤の例は、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤及びゴム系粘着剤である。高温下での保護カバー部材3の使用を考慮する必要がある場合には、耐熱性に優れるアクリル系粘着剤又はシリコーン系粘着剤、特にアクリル系粘着剤、を選択することが好ましい。
【0052】
アクリル系粘着剤は、例えば、特開2005-105212号公報に開示の粘着剤である。シリコーン系粘着剤は、例えば、特開2003-313516号公報に開示の粘着剤(比較例として開示のものを含む)である。
【0053】
粘着剤層32は、単層であっても、2以上の粘着剤層を含む積層構造を有していてもよい。
【0054】
図3Bの粘着剤層32は保護膜31と接合している。ただし、保護膜31と粘着剤層32との間に他の層が配置されていてもよい。
【0055】
粘着剤層32は、両面粘着テープであってもよい(図6参照)。図6の粘着剤層32は、基材32Aと、基材32Aの双方の面に設けられた粘着剤層32Bとを有する基材含有テープである。一対の粘着剤層32Bに含まれる粘着剤は、互いに同一であっても異なっていてもよい。例えば、一方の粘着剤層32Bがアクリル系粘着剤を含み、他方の粘着剤層32Bがシリコーン系粘着剤を含んでいてもよい。両面粘着テープは、基材32Aを含まない基材レステープであってもよい。
【0056】
粘着剤層32は、複数の粘着剤層の組み合わせであってもよい。粘着剤層32は、基材32Aと、基材32Aの片面に設けられた粘着剤層32Bとを有する片面粘着テープと、粘着剤層32Cとが組み合わされた積層構造体であってもよい(図7A及び図7B参照)。図8Aの例では、片面粘着テープの粘着剤層32Bが、担体フィルム33の表面との接合面となる。図7Bの例では、粘着剤層32Cが、担体フィルム33の表面との接合面となる。粘着剤層32Cは、粘着剤の塗布層であっても、両面粘着テープであってもよい。
【0057】
粘着剤層32における担体フィルム33の表面との接合面は、アクリル系粘着剤により構成されていることが好ましい。
【0058】
粘着テープの基材32Aは、例えば、樹脂、金属又はこれらの複合材料のフィルム、不織布又はフォームである。粘着テープの基材32Aは、耐熱性材料から構成されてもよい。この場合、保護カバー部材3を構成する他の層の材料によっては、高温下での使用に対してより確実な対応が可能である。耐熱性材料の具体例は、保護膜31の説明において上述したとおりである。
【0059】
粘着剤層32の厚さは、例えば、10~200μmである。
【0060】
担体フィルム33は非粘着性のフィルムである。担体フィルム33は、例えば、樹脂フィルム、不織布、紙、金属箔、織布、ゴムシート、発泡シート、これらの積層体である。樹脂フィルムは、例えば、ポリイミド(PI)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリエーテルスルホン(PES)、及びポリフェニレンスルフィド(PPS)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0061】
図3Bの担体フィルム33は粘着剤層32と接合している。ただし、担体フィルム33と粘着剤層32との間に他の層が配置されていてもよい。
【0062】
担体フィルム33の厚さは、例えば、10~200μmである。
【0063】
図3Bの粘着剤層32及び担体フィルム33は、保護膜31の主面に垂直に見て、当該主面上の制限された領域に配置されている。図3Bの粘着剤層32及び担体フィルム33の形状は、保護膜31の主面に垂直に見て、保護膜31の周縁部の形状であり、より具体的には、額縁状である(図8参照)。なお、図8は、図3A及び図3Bの保護カバー部材3を担体フィルム33の側から見た平面図である。この場合、粘着剤層32及び担体フィルム33が形成されていない保護膜11の領域Aにおいて、粘着剤層32及び担体フィルム33が形成されている領域に比べて良好な通気及び/又は通音が可能となる。ただし、粘着剤層32及び担体フィルム33の形状は上記例に限定されない。
【0064】
保護膜11の領域Aの面積は、例えば、20mm2以下である。領域Aの面積が当該範囲にある保護カバー部材3は、例えば、小径の開口を通常有する回路基板やMEMSへの配置に適している。領域Aの面積の下限は、例えば、0.008mm2以上である。ただし、領域Aの面積は、保護カバー部材3が配置される対象物73の種類によっては、より大きな範囲であってもよい。
【0065】
保護カバー部材3の積層体34は、保護膜31、粘着剤層32及び担体フィルム33以外の層を備えていてもよい。更なる層を備える保護カバー部材3の例を図9図12に示す。
【0066】
図9の積層体34は、粘着剤層32と共に保護膜31を挟持する位置に配置された粘着剤層35を備える。この場合、粘着剤層35上に更なる層の配置が可能となったり、保護カバー部材3の対象物73への配置時に、粘着剤層35を任意の部材及び/又は表面等に接合させたりすることができる。粘着剤層32ではなく粘着剤層35が対象物73の面74に接するように、保護カバー部材3を配置してもよい。図9の粘着剤層35は保護膜31と接合している。ただし、保護膜31と粘着剤層35との間に他の層が配置されていてもよい。図9の保護カバー部材3は、粘着剤層35を更に備える以外は、図3Bの保護カバー部材3と同じである。
【0067】
粘着剤層35は、粘着剤層32と同様の構成を有しうる。例えば、粘着剤層35は、両面粘着テープであってもよい(図10参照)。図10の粘着剤層35は、基材35Aと、基材35Aの双方の面に設けられた粘着剤層35Bとを有する基材含有テープである。
【0068】
図9及び図10の粘着剤層35の形状は、粘着剤層32の形状と同じである。この場合、粘着剤層35が形成されていない保護膜11の領域Bにおいて、粘着剤層35が形成されている領域に比べて良好な通気及び/又は通音が可能となる。ただし、粘着剤層35の形状は上記例に限定されない。領域Bの面積は、領域Aの面積と同じ範囲をとりうる。領域Bの面積は、領域Aの面積と同じであってもよい。
【0069】
図11の積層体34は、保護膜31に対して粘着剤層32及び担体フィルム33とは反対側に位置すると共に、保護膜31を覆うカバーフィルム36を更に備える。カバーフィルム36は、粘着剤層35上に配置されている。粘着剤層35とカバーフィルム36との間に他の層が配置されていてもよい。カバーフィルム36は、例えば、対象物73に保護カバー部材3が配置されるまでの間、保護膜31を保護する保護フィルムとして機能する。対象物73への配置後にカバーフィルム36を剥離してもよい。カバーフィルム36は、保護膜31の主面に垂直に見て、保護膜31の全体を覆っていても、一部を覆っていてもよい。
【0070】
図11のカバーフィルム36は、保護膜31の主面に垂直に見て、保護膜31の外周よりも外方に突出した部分であるタブ37を有する。タブ37は、カバーフィルム36の剥離に利用可能である。ただし、カバーフィルム36の形状は、上記例に限定されない。
【0071】
カバーフィルム36を構成する材料の例は、金属、樹脂及びこれらの複合材料である。カバーフィルム36を構成しうる材料の具体例は、基材32Aを構成しうる材料の具体例と同じである。
【0072】
カバーフィルム36の厚さは、例えば、200~1000μmである。
【0073】
カバーフィルム36を更に備える保護カバー部材3の別の一例を図12に示す。図12の保護カバー部材3は、粘着剤層32及び粘着剤層35が両面粘着テープである以外は、図11の保護カバー部材3と同じである。
【0074】
図3A及び図3Bの保護カバー部材3の形状は、保護膜31の主面に垂直に見て、長方形である。ただし、保護カバー部材3の形状は、上記例に限定されない。形状は、保護膜31の主面に垂直に見て、正方形及び長方形を含む多角形、円、楕円であってもよい。多角形は、正多角形であってもよい。多角形の角は、丸められていてもよい。
【0075】
保護カバー部材3の面積(保護膜31の主面に垂直に見たときの面積)は、例えば、175mm2以下である。面積が当該範囲にある保護カバー部材3は、例えば、小径の開口を通常有する回路基板やMEMSへの配置に適している。保護カバー部材3の面積の下限は、例えば、0.20mm2以上である。ただし、保護カバー部材3の面積は、配置される対象物の種類によっては、より大きな値であってもよい。なお、保護カバー部材3の面積が小さいほど、ピックアップが難しくなる。このため、保護カバー部材3の面積が上記範囲にある場合に、本発明の効果は特に顕著となる。
【0076】
保護カバー部材3を配置する対象物73は、例えば、MEMS等の半導体素子、回路基板である。換言すれば、保護カバー部材3は、半導体素子、回路基板又はMEMSを対象物73とする半導体素子用、回路基板用又はMEMS用の部材であってもよい。MEMSは、パッケージの表面に通気孔を有する非密閉系の素子であってもよい。非密閉系MEMSの例は、気圧、湿度、ガス、エアフロー等を検出する各種のセンサ及びスピーカーやマイクロフォン等の電気音響変換素子である。また、対象物73は、製造後の半導体素子や回路基板に限られず、製造工程にあるこれらの素子や基板の中間製造物であってもよい。この場合、保護カバー部材3によって、製造工程における中間製造物の保護が可能となる。製造工程の例は、ハンダリフロー工程、ダイシング工程、ボンディング工程、実装工程である。ただし、対象物73は、上記例に限定されない。
【0077】
保護カバー部材3が配置されうる対象物73の面74は、典型的には、対象物73の表面である。面74は、平面であっても曲面であってもよい。また、対象物73の開口75は、凹部の開口であっても、貫通孔の開口であってもよい。
【0078】
部材供給用シート1により、保護カバー部材3が面74に配置された対象物73の製造が可能となる。本開示は、部材供給用シート1を供給して保護カバー部材付き対象物を製造する方法を含む。部材供給用シート1の供給先は、典型的には、突き上げピックアップ装置である。
【0079】
部材供給用シート1は、基材シート2の表面4に保護カバー部材3を配置して製造できる。保護カバー部材3は、例えば、保護膜31、粘着剤層32及び担体フィルム33の積層により製造できる。基材シート2は、例えば、基材層21及び粘着剤層22の積層により製造できる。部材供給用シート1は、例えば、粘着剤層22を介して、担体フィルム33を基材層21に貼り合わせることにより製造できる。
【0080】
部材供給用シート1は、梱包材により梱包された状態でエンドユーザに供給される。部材供給用シート1は、UV光の照射により硬化したUV硬化型粘着剤である粘着剤層22を有し、かつ、保護カバー部材が互いに0.05mm以上かつ5.0mm以下の間隔Wで配列された状態で、梱包材により梱包されていてもよい。
【実施例
【0081】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
【0082】
最初に、基材シートの特性、部材供給用シートにおける保護カバー部材のピックアップ特性及び製品ズレの評価方法を記載する。
【0083】
[表面自由エネルギー]
保護カバー部材における担体フィルムの表面自由エネルギーは、上述の方法により算出した表面張力γから算出した。
【0084】
[タック力]
基材シートにおける粘着剤層のタック力は、上述の方法により算出した。
【0085】
[ピックアップ特性]
部材供給用シートのピックアップ特性は、以下のように評価した。突き上げピックアップ装置(ダイトロン製,ウェーハチップソーターWCS-700C)のマウンター上に、作製した部材供給用シートを配置した。マウンターは、4本の突き上げ圧子を備えていた。突き上げ圧子は、直径0.15mmのニードル状であり、先端の曲率が0.022mm、高さが0.20mmであった。プログラムに従って、基材シート上の個々の保護カバー部材を任意の突き上げ量及び突き上げ速度で突き上げることができる。部材供給用シートは、ダイシングリング42を用いて、次のように配置した(図13A及び図13B参照。なお、図13Bには、図13Aの断面B-Bが示されている)。ダイシングリング42の一方の面に、互いの外周を一致させて、片面粘着シート43を貼り付けた。片面粘着シート43の中央部には、当該シート43の主面に垂直に見て長方形(100mm×60mm)の開口44を設けておいた。次に、評価対象である部材供給用シート1を、開口44を覆うように片面粘着シート43の粘着面45に戴置し、ダイシングリング42に固定した。戴置は、部材供給用シート1及び開口44の長辺が互いに平行となるように、かつ、部材供給用シート1の外周と開口44の外周との距離が、双方の外周の全体にわたって均一となるように実施した。次に、部材供給用シート1を固定したダイシングリング42をマウンター上に配置した。
【0086】
次に、1つの部材供給用シート上に配置された100個の保護カバー部材のうち、ランダムに選択した10個の保護カバー部材を1セットとして、当該セットに含まれる保護カバー部材に対して一つずつ順に、突き上げによるピックアップを試みた。突き上げ量は200μmとした。突き上げ速度は4.0mm/秒とした。突き上げは、上記4本の突き上げ圧子によって、正方形の保護カバー部材3において、点39a,39b,39c,39dを突き上げて実施した。点39a,39b,39c,39dはそれぞれ、保護膜31の対頂点及び基材シート3の対頂点を通る2つの対角線38A,38B上における保護膜31の頂点とこれに対応する基材シート3の頂点との中心点である(図14参照)。また、突き上げは、部材供給用シートを固定したダイシングリング42の内径よりも小さな外径を有する別のダイシングリング(エキスパンドリング)46によって、片面粘着シート43及び部材供給用シート1を2.0mm持ち上げた状態(エキスパンディング高さ2.0mm)で実施した(図13C参照。なお、図13Cには、ピックアップ時の態様が模式的に示されている)。なお、ダイシングリング46には、部材供給用シート1の主面に垂直に見て、保護カバー部材3と重複しないものを選択した。ピックアップには吸着ノズル48を使用し、突き上げ量が最大に達した時点で吸着ノズル48による吸着をスタートさせた。吸着ノズル48の直径は0.5mmであり、吸引圧力は45kPaとした。吸着時間は100m秒とした。1セットに含まれる保護カバー部材の個数A(10個)と、ピックアップできた当該セット中の保護カバー部材の個数Bとの比であるピックアップ率B/Aにより、ピックアップ特性を評価した。ピックアップ率B/Aが9/10以上である場合を合格〇、それ以外を不合格×と判定した。
【0087】
[製品ズレ]
部材供給用シートの製品ズレは、以下のように評価した。10個の保護カバー部材が配置された部材供給用シートについて、複合環境振動試験機(IMV製,VS-5500-220T)を用いて、JIS Z0232に記載の方法に従い、振動試験を行った。周波数範囲は5~200Hz、振動方向はz軸(垂直)方向、加速度は5.8m/s2、振動時間は180分とした。振動試験の後、初期の状態から、基材シートに対して保護カバー部材が、水平方向に0.10mm以上ずれた場合を不合格×、水平方向のずれ幅が0.10mm未満の場合を合格〇と判定した。
【0088】
(製造例1:保護カバー部材Aの作製)
保護膜31として、PTFE多孔質膜(日東電工製,NTF1033,厚さ10μm)を準備した。PTFE多孔質膜の形状は、外形3.0mm×3.0mmの正方形とした。次に、保護膜31の一方の主面に、粘着剤層32として、額縁状の形状を有する耐熱両面粘着テープ(日東電工製,No.585)を貼り合わせた。粘着剤層32の外形は3.0mm×3.0mmの正方形、内形は1.5mm×1.5mmの正方形、幅は全周にわたって一定であった。更に、担体フィルム33として、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン製,カプトン200H,表面自由エネルギー53.3mJ/m2)を耐熱両面粘着テープと同形状になるように準備した。保護膜31、粘着剤層32及び担体フィルム33は、その外周が一致するように貼り合わせた。両面粘着テープの粘着剤層32Bは、両面ともに、アクリル系粘着剤層であった。このようにして、保護膜31の主面から見て正方形である保護カバー部材Aを得た。
【0089】
(製造例2:保護カバー部材B1~B3の作製)
担体フィルム33として、3種の耐熱フィルムを使用した以外は、製造例1と同様にして、保護カバー部材B1~B3を得た。保護カバー部材B1には、担体フィルム33として、フッ化ビニリデンフィルム(クレハエクストロン製,KFCフィルムFT-50Y,表面自由エネルギー34.1mJ/m2)を使用した。保護カバー部材B2には、担体フィルム33として、ポリエーテルスルホンフィルム(住友ベークライト製,スミライトFS-1300,表面自由エネルギー51.5mJ/m2)を使用した。保護カバー部材B3には、担体フィルム33として、ポリフェニレンサルファイドフィルム(東レ製,トレリナ♯50-3030,表面自由エネルギー64.5mJ/m2)を使用した。
【0090】
(製造例3:保護カバー部材Cの作製)
担体フィルム33として、ポリテトラフルオロエチレンフィルム(日東電工製,ニトフロンNo.900UL,表面自由エネルギー18.0mJ/m2)を使用した以外は、製造例1と同様にして、保護カバー部材Cを得た。
【0091】
(基材シート)
基材シート2として、5種のダイシングテープa~e(日東電工製,エレップホルダー)を準備した。ダイシングテープa~eの製品名及び特性を表2に示す。ダイシングテープa~eの形状は、直径270mmの円形とした。
【0092】
【表2】
【0093】
(実施例1)
ダイシングリング(泉メタル製,8インチフラットリング)に、粘着剤層22を上面としてダイシングテープaを貼り合せた。次に、ダイシングテープaの粘着剤層22に、保護カバー部材Aを100個(10列×10行)配置して貼り合せた。配置は、ダイシングテープaにおける保護カバー部材Aの配置面に垂直に見て、各保護カバー部材Aが互いに0.10mm以上かつ0.50mm以下の間隔Wを保持した状態で配列されるように施した。上記貼り合わせの1時間後に、PET基材からなるセパレータを保護カバー部材Aに被せてから、UV照射装置(日東精機製,UM810)を用い、300mJ/cm2の積算光量となるように、ダイシングテープaの基材層21側からUV光を7秒間、照射した。このようにして、実施例1の部材供給用シートを得た。
【0094】
図17は、部材供給用シート1の製造工程の一部を示す模式図である。図17では、説明を容易にするために、保護カバー部材3における保護膜31及び粘着剤層32は省略されている。基材層21に、粘着剤層22を構成するUV硬化型粘着剤を介して担体フィルム33を貼り合わせた後(図17の左図参照)、上記条件にてUV光を照射すると、粘着剤層22を構成する粘着剤が硬化及び収縮し、粘着剤の流動性が抑制される(図17の右図参照)。すなわち、部材供給用シート1は、UV光照射により硬化したUV硬化型粘着剤である粘着剤層22を有する。そのため、担体フィルム33と粘着剤との親和性が高くとも、時間の経過による粘着剤のタック力の増加が抑制される。
【0095】
(実施例2)
基材シート2として、ダイシングテープbを使用した以外は実施例1と同様にして、実施例2の部材供給用シートを得た。
【0096】
(実施例3)
基材シート2として、ダイシングテープcを使用した以外は実施例1と同様にして、実施例2の部材供給用シートを得た。
【0097】
(実施例4)
基材シート2として、ダイシングテープdを使用した以外は実施例1と同様にして、実施例2の部材供給用シートを得た。
【0098】
(実施例5)
保護カバー部材3として、保護カバー部材B1を使用した以外は実施例1と同様にして、実施例5の部材供給用シートを得た。
【0099】
(実施例6)
保護カバー部材3として、保護カバー部材B2を使用した以外は実施例1と同様にして、実施例6の部材供給用シートを得た。
【0100】
(実施例7)
保護カバー部材3として、保護カバー部材B3を使用した以外は実施例1と同様にして、実施例7の部材供給用シートを得た。
【0101】
(比較例1)
上記貼り合わせの後、85℃かつ95%RHの環境下にて24時間保管した後に、上記条件にてUV光を照射した以外は実施例1と同様にして、比較例1の部材供給用シートを得た。
【0102】
(比較例2)
上記貼り合わせの後、85℃かつ95%RHの環境下にて24時間保管した後に、上記条件にてUV光を照射した以外は実施例2と同様にして、比較例2の部材供給用シートを得た。
【0103】
(比較例3)
上記貼り合わせの後、85℃かつ95%RHの環境下にて24時間保管した後に、上記条件にてUV光を照射した以外は実施例3と同様にして、比較例3の部材供給用シートを得た。
【0104】
(比較例4)
上記貼り合わせの後、85℃かつ95%RHの環境下にて24時間保管した後に、上記条件にてUV光を照射した以外は実施例4と同様にして、比較例4の部材供給用シートを得た。
【0105】
(比較例5)
基材シート2として、ダイシングテープeを使用した以外は比較例1と同様にして比較例5の部材供給用シートを得た。
【0106】
(比較例6)
保護カバー部材3として、保護カバー部材Cを使用した以外は実施例1と同様にして、比較例6の部材供給用シートを得た。
【0107】
評価結果を以下の表3A及び表3Bに示す。
【0108】
【表3A】
【0109】
【表3B】
【0110】
表3A及び表3Bに示すように、実施例1~7では、良好なピックアップ性を確保でき、かつ、製品ズレも生じなかった。
【0111】
次に、実施例1~3について、上記貼り合わせの3時間後に、上記条件にてUV光を照射してピックアップ特性を評価した。実施例1のピックアップ率B/Aは10/10であり、優れたピックアップ性を維持した。実施例2及び実施例3のピックアップ率B/Aは、いずれも9/10であった。これらの結果から、UV光を照射する前の(初期)タック力が小さければ小さいほど、ピックアップ性が向上していることが分かる。すなわち、UV光を照射する前の(初期)タック力は、UV光を照射した後のタック力に影響を与えていると考えられる。そのメカニズムは明らかではないが、以下の通りと推察される。UV光を照射する前のタック力が大きいと、UV光を照射してもタック力が十分に低下しないことがある。この場合、UV光を照射した後の粘着力も大きいため、ピックアップ性が低下すると考えられる。また、UV光照射時における粘着剤層22の硬化及び収縮度が大きければ大きいほど、被着体である担体フィルム33と粘着剤層22との接触面積が減少し、粘着力は低下する。したがって、UV光を照射する前のタック力が大きいと、UV光照射時に発生する粘着剤層22の硬化及び収縮が抑制されるので、担体フィルム33と粘着剤層22との接着面積が減少しにくくなる。この場合、UV光照射による粘着力の低下が抑制されるため、ピックアップ性が低下すると考えられる。
【0112】
UV光を照射する前の部材供給用シートにおけるタック力及び粘着力は、UV光を照射した後の部材供給用シートに基づき、粘着剤層22を構成するUV硬化型粘着剤に関する定性及び定量分析(モノマー種類及び各成分量)、基材組成情報を用いて類推することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の部材供給用シートは、例えば、突き上げピックアップ装置に対する保護カバー部材の供給に使用できる。
【符号の説明】
【0114】
1 部材供給用シート
2 基材シート
21 基材層
22 粘着剤層
3 保護カバー部材
31 保護膜
32 粘着剤層
33 担体フィルム
34 積層体
35 カバーシート
71 突き上げ圧子
72 ピックアップ部
73 対象物
74 面
75 開口
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14
図15
図16
図17