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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】環境価値管理支援装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20250214BHJP
【FI】
G06Q50/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021072933
(22)【出願日】2021-04-22
(65)【公開番号】P2022167249
(43)【公開日】2022-11-04
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大島 宏希
(72)【発明者】
【氏名】峯 博史
(72)【発明者】
【氏名】中野 道樹
【審査官】石川 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-339187(JP,A)
【文献】特開2011-83085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサと、メモリと、通信装置と、入出力装置と、記憶装置と、内部信号線とを有し、電力を消費する機器と該機器に電力供給を行う電源に関する情報を管理する、環境価値管理支援装置であって、
前記通信装置を介して、前記機器に関する機器側ログ及び前記電源に関する電源側ログを収集する、機器電源データ取得部と、
前記通信装置を介して、前記機器と前記電源の間で行われた電力供給を識別する機器電源接続情報を取得する、機器電源接続識別部と、
前記機器側ログ、前記電源側ログ、および前記機器電源接続情報に基づいて、前記機器と前記電源の間で行われた電力供給において適用された環境価値を統合し電力供給統合ログを生成して前記記憶装置に記憶する、電力構成取得部と、
前記電力供給統合ログの中の電力供給量が不明な場合に電力供給量を推定する、電力供給量推定部と、
前記電力供給統合ログおよび推定された前記電力供給量に基づく電力構成情報を、電力供給について割り当てられるべき環境価値の情報である環境価値割当目標と比較し、前記電力構成情報において目標に対して不足していた環境価値を割り当てる、環境価値割当部と、
を有することを特徴とする環境価値管理支援装置。
【請求項2】
前記機器側ログは、前記機器によって収集された情報であって、特定の電力供給に係る電力供給の開始時間、電力供給の終了時間、前記機器を特定する機器ID、及び前記機器側ログのデータ管理者の情報を含み、
前記電源側ログは、前記電源によって収集された情報であって、特定の電力供給に係る電力供給の開始時間、電力供給の終了時間、前記電源を特定する電源ID、及び前記電源側ログのデータ管理者の情報を含み、
前記機器電源接続情報は、前記機器および前記電源以外の手段によって収集された情報であって、特定の電力供給に係る電力供給の開始時間、電力供給の終了時間の情報を含み、さらに、
(1)前記特定の電力供給に係る前記機器IDおよび前記電源ID、および、
(2)前記特定の電力供給において前記機器および前記電源の少なくとも一つに環境価値が適用されていることを示す情報、
のいずれかの情報を含み、
前記電力構成取得部は、前記電力供給の開始時間および前記電力供給の終了時間の情報を用いて、前記機器側ログ、前記電源側ログ、および前記機器電源接続情報における特定の電力供給に関する情報を統合することにより、電力供給において適用された環境価値を統合し電力供給統合ログを生成する、
請求項1記載の環境価値管理支援装置。
【請求項3】
前記電力供給統合ログは、特定の電力供給に係る電力供給の開始時間、電力供給の終了時間、前記機器ID、前記電源IDを含み、さらに、特定の電力供給に係る前記機器および前記電源に環境価値が適用されている場合、当該機器および当該電源に適用された環境価値の合計値および環境価値を適用した者ごとの比率を含み、
前記環境価値割当目標は、前記機器IDおよび当該機器IDに対して割り当てられるべき環境価値の値を含み、
前記環境価値割当部は、前記電力構成情報の環境価値の合計値と、前記環境価値割当目標の環境価値の値を比較し、環境価値を割り当てる、
請求項2記載の環境価値管理支援装置。
【請求項4】
前記機器電源接続情報は、前記機器IDおよび前記電源IDの少なくとも一つとして、IDがシステム上割り当てられていないことを意味する「IDなし」の情報を含む、
請求項2記載の環境価値管理支援装置。
【請求項5】
前記電力供給量推定部は、
前記機器が電気自動車であった場合、前記電気自動車の位置情報履歴を取得し、位置情報履歴における走行距離と速度に基づいて電力供給量の上界及び下界を推定する第1の推定処理と、
前記電源の仕様から電力供給量の上界及び下界を推定する第2の推定処理と、
前記機器の仕様から電力供給量の上界及び下界を推定する第3の推定処理と、
前記第1の推定処理、前記第2の推定処理、前記第3の推定処理で推定した複数の上界および下界のうち、上界のうちで最も小さい値を選択し、下界のうちで最も大きい値を選択して推定結果とする、
請求項2記載の環境価値管理支援装置。
【請求項6】
プロセッサと、メモリと、通信装置と、入出力装置と、記憶装置と、内部信号線とを有する情報処理装置を用い、電力を消費する機器と該機器に電力供給を行う電源に関する情報を、通信ネットワークを介して前記記憶装置に収集し管理する、環境価値管理支援方法であって、
前記情報処理装置が、前記通信ネットワークを介して前記機器に関する機器側ログ及び前記電源に関する電源側ログを収集し、両者を統合し電力供給個別ログとして前記記憶装置に記憶する、機器電源データ取得ステップと、
前記情報処理装置が、前記機器と前記電源の間で行われた電力供給を識別する機器電源接続情報を取得して前記記憶装置に記憶する、機器電源接続識別ステップと、
前記情報処理装置が、前記電力供給個別ログおよび前記機器電源接続情報に基づいて、前記機器と前記電源の間で行われた電力供給において適用された環境価値を統合して電力供給統合ログを生成し、前記記憶装置に記憶する、電力構成取得ステップと、
前記情報処理装置が、前記電力供給統合ログの中の電力供給量が不明な場合に電力供給量を推定し、前記電力供給統合ログに記載する、電力供給量推定ステップと、
前記情報処理装置が、前記電力供給統合ログに基づく電力構成情報を、電力供給について割り当てられるべき環境価値の情報である環境価値割当目標と比較し、前記電力構成情報において目標に対して不足していた環境価値を割り当てる、環境価値割当ステップと、
を実行することを特徴とする環境価値管理支援方法。
【請求項7】
前記機器側ログは、前記機器によって収集された情報であって、特定の電力供給に係る電力供給の開始時間、電力供給の終了時間、前記機器を特定する機器ID、及び前記機器側ログのデータ管理者の情報を含み、
前記電源側ログは、前記電源によって収集された情報であって、特定の電力供給に係る電力供給の開始時間、電力供給の終了時間、前記電源を特定する電源ID、及び前記電源側ログのデータ管理者の情報を含み、
前記機器電源接続情報は、前記機器および前記電源以外の手段によって収集された情報であって、特定の電力供給に係る電力供給の開始時間、電力供給の終了時間の情報を含み、さらに、
(1)前記特定の電力供給に係る前記機器IDおよび前記電源ID、および、
(2)前記特定の電力供給において前記機器および前記電源の少なくとも一つに環境価値が適用されていることを示す情報、
のいずれかの情報を含み、
前記電力構成取得ステップは、前記電力供給の開始時間および前記電力供給の終了時間の情報を用いて、前記機器側ログ、前記電源側ログ、および前記機器電源接続情報における特定の電力供給に関する情報を統合することにより、電力供給において適用された環境価値を統合し電力供給統合ログを生成する、
請求項6記載の環境価値管理支援方法。
【請求項8】
前記電力供給統合ログは、特定の電力供給に係る電力供給の開始時間、電力供給の終了時間、前記機器ID、前記電源IDを含み、さらに、特定の電力供給に係る前記機器および前記電源に環境価値が適用されている場合、当該機器および当該電源に適用された環境価値の合計値を含み、
前記環境価値割当目標は、前記機器IDおよび当該機器IDに対して割り当てられるべき環境価値の値を含み、
前記環境価値割当ステップは、前記電力構成情報の環境価値の合計値と、前記環境価値割当目標の環境価値の値を比較し、環境価値を割り当てる、
請求項7記載の環境価値管理支援方法。
【請求項9】
前記機器電源接続情報は、前記機器IDおよび前記電源IDの少なくとも一つとして、IDがシステム上割り当てられていないことを意味する「IDなし」の情報を含む、
請求項7記載の環境価値管理支援方法。
【請求項10】
前記電力供給量推定ステップは、
前記機器が電気自動車であった場合、前記電気自動車の位置情報履歴を取得し、位置情報履歴における走行距離と速度に基づいて電力供給量の上界及び下界を推定する第1の推定処理と、
前記電源の仕様から電力供給量の上界及び下界を推定する第2の推定処理と、
前記機器の仕様から電力供給量の上界及び下界を推定する第3の推定処理と、
前記第1の推定処理、前記第2の推定処理、前記第3の推定処理で推定した複数の上界および下界のうち、上界のうちで最も小さい値を選択し、下界のうちで最も大きい値を選択して推定結果とする、
請求項7記載の環境価値管理支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境価値管理を支援する技術に関するものであって、具体的には、企業が自社の電力使用量に対して再生可能エネルギーを適用する環境施策をより効果的に実施できるようにする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化などの気候変動を受け、昨今では消費者や投資家などの間で企業がいかに環境を意識して活動を行っているかを評価し、その評価により購買や投資の判断を行うケースが増加している。これに合わせ、企業が温室効果ガス排出量の削減や再生可能エネルギーの導入などに取り組む事例は増えており、国際的にもCDP(機関投資家が連携して運営し、ロンドンに事務所を置く非営利団体が、主要国の時価総額の上位企業に対して、環境戦略や温室効果ガスの排出量の開示を求めているプロジェクト)やRE100(使用する電力の100%を再生可能エネルギーにより発電された電力にする事に取り組んでいる企業が加盟している国際的な企業連合)などの取り組みが広がっている。また、近年ではサプライチェーン排出量として、自社だけでなく、自社のサプライチェーン全体における環境負荷を低減しようという試みも進んでいる。
【0003】
企業が自社の使用電力に再生可能エネルギーを導入するにあたっては、契約している電力小売事業者などに太陽光発電や水力発電による電気を供給してもらう手段がある。このほかに、別の事業者が再生可能エネルギーを導入した際の、CO2排出量削減の部分を環境価値として取引し、自社の再生可能エネルギーでない電力使用に対して適用することで再生可能エネルギーを使用したとみなす、という手段もあり、わが国ではJ-クレジット制度等がそれに該当する。いずれの場合でも、自社がどのような手段で発電された電力・環境価値を導入したかを管理することで、再生可能エネルギーを導入するという環境取組を成立させている。
【0004】
このような環境価値管理に関する従来技術として、例えば、再生可能エネルギーが持つ環境価値を正当に評価するシステムについて、特許文献1がある。企業が環境取り組みを行う場合、特許文献1に示されるような形で流通する証書を購入することができる。また特許文献2には、環境価値の管理対象を機器まで細分化した従来技術として電力由来管理装置の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-38342号公報
【文献】特開2020-170484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術においては、企業が自社の活動が与える環境への負荷に対して正しく環境価値を導入・管理するためには、精度・範囲の点で課題がある。従来技術において管理することができるのは極めて限定的な対象に対してのみであり、具体的には、対象が自社の電源設備に対して固定されており、対象に対する電力供給量を自社が容易に取得できる場合に限定されている。
【0007】
しかしながらこれらの条件に当てはまらない電力使用は多岐にわたって存在する。例えば電気自動車(以下、EV)は必ずしも電力を自社電源設備において充電する必要はなく、社外のスタンドやコンセントなどを通じた充電が可能である。また、近年ではサテライトオフィスや自宅などで勤務するテレワークが増加しており、その際のノートパソコンにも社外で電力供給が行われている。上述の事例も、企業活動のために電力が使用されているという点で、本来ではEVやノートパソコンを所有・運用する企業において環境価値管理が実施されるべきであるが、従来技術では管理できない。
【0008】
また、EVの充電の例では、EVの製造者、リース貸出業者、使用者、充電スタンドの運営者、電力小売業者など多数の関係者が存在しており、夫々がEV充電における環境負荷に対して一定の責任を持っている。それらの関係者が環境負荷に関する責任を分担し、例えば夫々が電力使用量の一部に相当する環境証書(以下「証書」ということがある)を適用することで、一社で環境取組を実施するよりも低コストで行うことができる。
【0009】
本発明の目的は機器と電源の間の電力供給について、幅広い機器と電源を対象とした環境価値管理を実現するとともに、多数の関係者間の環境取組を共有可能な環境価値管理支援装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の好ましい一側面は、プロセッサと、メモリと、通信装置と、入出力装置と、記憶装置と、内部信号線とを有し、電力を消費する機器と該機器に電力供給を行う電源に関する情報を管理する、環境価値管理支援装置であって、前記通信装置を介して、前記機器に関する機器側ログ及び前記電源に関する電源側ログを収集する、機器電源データ取得部と、前記通信装置を介して、前記機器と前記電源の間で行われた電力供給を識別する機器電源接続情報を取得する、機器電源接続識別部と、前記機器側ログ、前記電源側ログ、および前記機器電源接続情報に基づいて、前記機器と前記電源の間で行われた電力供給において適用された環境価値を統合し電力供給統合ログを生成して前記記憶装置に記憶する、電力構成取得部と、前記電力供給統合ログの中の電力供給量が不明な場合に電力供給量を推定する、電力供給量推定部と、前記電力供給統合ログおよび推定された前記電力供給量に基づく電力構成情報を、電力供給について割り当てられるべき環境価値の情報である環境価値割当目標と比較し、前記電力構成情報において目標に対して不足していた環境価値を割り当てる、環境価値割当部と、を有することを特徴とする環境価値管理支援装置である。
【0011】
本発明の好ましい他の一側面は、プロセッサと、メモリと、通信装置と、入出力装置と、記憶装置と、内部信号線とを有する情報処理装置を用い、電力を消費する機器と該機器に電力供給を行う電源に関する情報を、通信ネットワークを介して前記記憶装置に収集し管理する、環境価値管理支援方法であって、前記情報処理装置が、前記通信ネットワークを介して前記機器に関する機器側ログ及び前記電源に関する電源側ログを収集し、両者を統合し電力供給個別ログとして前記記憶装置に記憶する、機器電源データ取得ステップと、前記情報処理装置が、前記機器と前記電源の間で行われた電力供給を識別する機器電源接続情報を取得して前記記憶装置に記憶する、機器電源接続識別ステップと、前記情報処理装置が、前記電力供給個別ログおよび前記機器電源接続情報に基づいて、前記機器と前記電源の間で行われた電力供給において適用された環境価値を統合して電力供給統合ログを生成し、前記記憶装置に記憶する、電力構成取得ステップと、前記情報処理装置が、前記電力供給統合ログの中の電力供給量が不明な場合に電力供給量を推定し、前記電力供給統合ログに記載する、電力供給量推定ステップと、前記情報処理装置が、前記電力供給統合ログに基づく電力構成情報を、電力供給について割り当てられるべき環境価値の情報である環境価値割当目標と比較し、前記電力構成情報において目標に対して不足していた環境価値を割り当てる、環境価値割当ステップと、を実行することを特徴とする環境価値管理支援方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、機器と電源の間の電力供給について、幅広い機器と電源を対象とした環境価値管理を実現するとともに、多数の関係者間の環境取組を共有可能な環境価値管理支援装置及び方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】情報処理システムの概略的な構成の一例を表すブロック図である。
図2】情報処理システムの主な機能の一例を表すブロック図である。
図3】機器側サーバのログの一例を示す表図である。
図4】電源側サーバのログの一例を示す表図である。
図5】機器側サーバの機器情報一覧の一例を示す表図である。
図6】電源側サーバの電源情報一覧の一例を示す表図である。
図7】支援装置のハードウェア構成の例を示すブロック図である。
図8】電力供給ログ作成処理を説明するフローチャートの一例を示す図である。
図9】電力供給個別ログの一例を示す表図である。
図10】機器電源接続識別処理を説明するフローチャートの一例を示す図である。
図11】機器電源接続情報の一例を示す表図である。
図12】電力構成取得処理を説明するフローチャートの一例を示す図である。
図13】電力供給統合ログの一例を示す表図である。
図14】電力供給量個別推定処理を説明するフローチャートの一例を示す図である。
図15】機器側の電力量推定用仕様情報の一例を示す表図である。
図16】電源側の電力量推定用仕様情報の一例を示す表図である。
図17】電力供給量差分計測推定処理を説明するフローチャートの一例を示す図である。
図18】差分計測用電気系統構造情報の一例を示す表図である。
図19】差分計測用ログの一例を示す表図である。
図20】差分計測を説明する表図である。
図21】環境価値割当処理を説明するフローチャートの一例を示す図である。
図22】環境価値割当目標の一例を示す表図である。
図23】環境価値割当結果の一例を示す表図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
【0015】
以下に説明する実施例の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、重複する説明は省略することがある。
【0016】
同一あるいは同様な機能を有する要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。ただし、複数の要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0017】
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数、順序、もしくはその内容を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は文脈毎に用いられ、一つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
【0018】
図面等において示す各構成の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0019】
本明細書で引用した刊行物、特許および特許出願は、そのまま本明細書の説明の一部を構成する。
【0020】
本明細書において単数形で表される構成要素は、特段文脈で明らかに示されない限り、複数形を含むものとする。
【0021】
以下で説明される実施例の一例は、企業の電力使用における環境価値導入を支援する環境価値管理支援装置である。この装置は、機器及び電源に関する情報を収集する機器電源データ取得部と、ユーザーが管理したい電力供給に対してそれがどの機器とどの電源の間で行われたかを識別する機器電源接続識別部と、電力供給に関連する様々な主体においてどのような環境価値が適用されたかを統合する電力構成取得部と、電力供給量が不明な場合に推定を実施する電力供給量推定部と、前記電力構成取得部および前記電力供給量推定部によって取得された電力構成情報と環境価値割当目標と比較し、不足していた場合に環境価値を割り当てる環境価値割当部と、を有する。
【0022】
実施例記載の技術によれば、電力量を計測できないものを含む幅広い機器・電源の組み合わせにおける電力供給に対して、その電力供給量が不明である場合はこれを推定可能にするとともに、関係する他者によって既に割り当てられている環境価値と自社で割り当てるべき環境価値の可視化とそれに基づく割り当てを可能にし、企業の効率的な環境取り組みを推進できる。
【0023】
近年提唱される環境価値の概念は次のようなものである。化石燃料や原子力から得られる電力と、太陽光や風力による再生可能エネルギーから得られる電力は「電気」としては同じものであるが、再生可能エネルギーによる電気はグリーン電力と呼ばれ、「電気や熱そのものの価値」の他に、二酸化炭素を排出しないという「環境価値」を持っている。そこで、「環境価値」の部分を取り出して経済価値を有する「証書」として扱うことが可能となる。本実施例では、「環境価値」や「証書」は具体的には、電力に対して割り当て可能な有限な値(データ)である。環境価値の単位としては、例えば前記J-クレジットは、削減したCO2の量に対して単位が設定される。あるいは電気供給量に換算したり、電気供給量における再生エネルギーの比率に換算したりするなど他の単位でもよい。
【0024】
このような証書を購入することで、購入した「環境価値」に相当する使用電力を再生可能エネルギーにより供給されたものとみなすことができる。このようなシステムの前提として、消費者や事業者が利用している電力が、どれだけ再生可能エネルギーから得られているかを知る必要がある。
【実施例1】
【0025】
以下、図面を参照しながら実施の形態を説明するが、実施例で部分変更によって実施できる形態は、各実施例内で変形例として記述する。
【0026】
図1は実施例1の情報処理システム1の概略的な構成を示している。情報処理システム1は環境価値管理支援装置(以下、「支援装置10」)、一つ以上の機器側サーバ2、一つ以上の電源側サーバ3、一つ以上の電力調達管理サーバ4を含む。これらはいずれも情報通信装置(コンピュータ)であって、通信ネットワーク5によって接続されている。
【0027】
支援装置10や各サーバは、単体のコンピュータで構成してもよいし、あるいは、入力装置、出力装置、処理装置、記憶装置の任意の部分が、通信ネットワーク5で接続された他のコンピュータで構成されてもよい。
【0028】
図2に支援装置10、機器側サーバ2、電源側サーバ3、電力調達管理サーバ4が備える主な機能を示している。図2に示すように、支援装置10は機器電源データ取得部111、機器電源接続識別部112、電力構成取得部113、電力供給量推定部114、環境価値割当部115の各機能を備える。
【0029】
後に図7で説明しているように、支援装置10の各機能はプロセッサと、メモリと、通信装置と、入出力装置と、記憶装置と、内部信号線とを有する一般的なサーバで構成することができる。点線で示す機器電源データ取得部111、機器電源接続識別部112、電力構成取得部113、電力供給量推定部114、環境価値割当部115は、メモリに格納されたプログラムをプロセッサが実行することで実現される。機器電源接続情報151、環境価値割当目標152、環境価値割当結果153、電力供給個別ログT600、電力供給統合ログT1000はデータとして記憶装置に格納される。
【0030】
機器側サーバ2は、システムが電力供給量・環境価値を管理する対象となりうる電力供給について、供給を受けた機器に関する情報を管理する。機器側サーバ2は、プロセッサと、メモリと、通信装置と、入出力装置と、記憶装置と、内部信号線とを有する一般的なサーバで構成することができる。機器側サーバ2は、各種の機器側ログ121、機器情報一覧122、機器位置情報履歴123、電力供給量推定用仕様情報124のデータを収集して記憶し、支援装置10に提供する。機器側サーバ2に存在する情報は、機器に関わる関係者(製造者、販売者、利用者等)によって提供されうる。
【0031】
電源側サーバ3は、システムが管理する対象となりうる電力供給について、それを供給した電源に関する情報を管理する。電源側サーバ3は、プロセッサと、メモリと、通信装置と、入出力装置と、記憶装置と、内部信号線とを有する一般的なサーバで構成することができる。電源側サーバ3は、各種の電源側ログ131、電源情報一覧132、電力供給量推定用仕様情報134、差分計測用電気系統構造情報135、差分計測用ログ136のデータを収集して記憶し、支援装置10に提供する。電源側サーバ3に存在する情報は、電源に関わる関係者(製造者、提供者等)によって提供されうる。
【0032】
図3は、機器側ログ121の構成例を示す図である。対象とする機器は、電源を供給される機器として、EV、スマートフォン(スマホ)、ノートPC、草刈り機、工場機器等をユーザーが任意に設定できる。本実施例では、電力の供給は一つの電源と一つの機器の間で、一対一の関係で行われるものとした。電力の供給は、充電に限らず供給された電力を直ちに消費するものであってもよい。
【0033】
機器側ログ121は図3に示すような情報を格納する。図3の例では、充電の開始時間311、充電の終了時間312、充電される機器の機器ID313、電源ID314、データ管理者315、電力供給量316、位置317、充電したエネルギーの再生エネルギー比率(再エネ比率)318の情報を含む。これは一例であり、欠けているデータや追加データがあってもよい。機器側ログ121の情報は、例えば電源を供給される機器によって公知の手法で取得され、通信ネットワーク5を介して機器側サーバ2に収集される。
【0034】
開始時間311、終了時間312、機器ID313、及びデータ管理者315を除く、電源ID314、電力供給量316、位置317、再エネ比率318については、欠損している場合もありうる(図3の#2、#3、#4)。
【0035】
電源ID314、電力供給量316、再エネ比率318については、電源側から情報を得るか、別途入力する必要がある。電力供給量316は、機器が自分で測定してもよい。位置317については、位置が固定位置でない場合、位置を測定する機能(例えばGPS(Global Positioning System))を機器が備える必要がある。情報が得られない場合、図3ではこれをunknownで示している(図3の#3)。
【0036】
なお、データ管理者315は、ログの行ごとのデータを管理しているアクターを示しており、例えばEVに対しては、EVの製造者、リース貸出業者、使用者などがデータ管理者となりえる。同一の電力供給に対して、複数のデータ管理者による異なるログが存在することがありうる。
【0037】
再エネ比率318は、当該電力供給に対して、データ管理者315が再生可能エネルギーを購入したか、あるいは再生可能エネルギーの代替として環境証書の適用等を実施し、再生可能エネルギーで発電されたとみなされている電力の割合を示す。
【0038】
図4は、電源側ログ131の構成例を示す図である。対象とする電源は、EV充電器、グリーンコンセント、蓄電池、コンセント等をユーザーが任意に設定できる。
【0039】
電源側ログ131は図4に示すような情報を格納する。図4の例では、充電の開始時間321、充電の終了時間322、充電される機器の機器ID323、電源ID324、データ管理者325、電力供給量326、位置327、充電したエネルギーの再生エネルギー比率(再エネ比率)328の情報を含む。これは一例であり、欠けているデータや追加データがあってもよい。電源側ログ131の情報は、例えば電源によって公知の手法で取得され、通信ネットワーク5を介して電源側サーバ3に収集される。
【0040】
欠損する可能性がある情報が電源ID324ではなく機器ID323であることを除いて、基本的に機器側サーバの機器側ログ121と同様である(図4の#2、#3、#4)。なお、電源側は充電した電気の電力供給量326と再エネ比率328を測定している場合は、これらをデータに含めることができる。
【0041】
図5は、機器情報一覧122の構成例を示す図である。図5の例では、機器情報一覧122は充電される機器の機器ID、当該機器のデータ管理者412、当該機器の位置413、当該機器の再生エネルギー認証(再エネ認証)414、当該機器の再エネ比率415、当該機器の種別416の情報を含む。機器情報一覧122の情報は、例えば機器側サーバ2の管理者が、データ管理者が提供する情報を収集整理して、機器側サーバ2に格納する。
【0042】
機器情報一覧122は、機器側ログ121とは異なり、時間によって変化しない情報を管理する。機器ID411、データ管理者412を除くデータについては、欠損している場合もありうる。位置413について、時間によらず一定の場合はその値が機器情報一覧122に記載されうるが、時間によって異なる値をとる場合はunknownと記載される。図5に示した情報は最小限であり、例えば機器の型式番号や製造者等の機器に関わる情報を他に保持してもよい。
【0043】
再エネ認証414とは、データ管理者412において、当該機器が使用している電力が100%再生可能エネルギーであることを何等かの方法で保証し、認証を受けているか否かを示す。
【0044】
再エネ比率415については機器側ログ121における再エネ比率318と同様であり、時間によらず一定の比率である場合415に記載される。
【0045】
図6は、電源情報一覧132の構成例を示す図である。図6の例では、機器情報一覧421は充電する電源の電源ID、当該機器のデータ管理者422、当該機器の位置423、当該機器の再エネ認証424、当該機器の再エネ比率425、当該機器の種別426の情報を含む。
【0046】
電源情報一覧132は、機器情報一覧122の機器ID411の代わりに電源ID421になっていることを除くと、基本的には機器情報一覧1221と同様である。電源情報一覧132の情報は、例えば電源側サーバ3の管理者が、データ管理者が提供する情報を収集整理して、電源側サーバ3に格納する。
【0047】
図1及び図2を参照すると、電力調達管理サーバ4はシステムが割当することができる環境価値保有量141を支援装置10に提供する。電力調達管理サーバ4は、プロセッサと、メモリと、通信装置と、入出力装置と、記憶装置と、内部信号線とを有する一般的なサーバで構成することができる。環境価値保有量141は、システムを使用するユーザーが保有し、システムが適用することのできる環境価値の種類および量を管理する。
【0048】
図2において支援装置10の記憶装置は、機器電源接続情報151、環境価値割当目標152、環境価値割当結果153、電力供給個別ログT600、電力供給統合ログT1000を記憶する。
【0049】
機器電源接続情報151には、機器と電源の間で接続、電力供給が行われていたことを示す情報が管理される。機器電源接続情報151は、図11を用いて後述する。
【0050】
環境価値割当目標152は、システムが管理する対象となる電力供給について、環境価値を割り当てるべき対象となる条件(機器、日時、電源等)と割り当てられるべき環境価値の電力供給量に対する割合を示す情報が管理される。環境価値割当目標152は、例えばユーザーからの操作入力によって取得される情報である。環境価値割当目標152は図22を用いて後述する。
【0051】
環境価値割当結果153は、システムが管理する対象となる電力供給量について、日時、機器、電源、及び電力構成に関する情報が管理される。環境価値割当結果153は図23を用いて後述する。
【0052】
電力供給個別ログT600は、機器電源データ取得部111、機器電源接続識別部112の処理の途中で得られる中間生成物である。第一に機器電源データ取得部111の処理の結果として生成され、その後、機器電源接続識別部112の夫々の処理の結果として適宜レコードが編集される。電力供給個別ログT600は図9を用いて後述する。
【0053】
電力供給統合ログT1000は、電力構成取得部113、電力供給量推定部114の処理の結果として得られる中間生成物である。電力構成取得部113によって電力供給個別ログT600から生成され、電力供給量推定部114によって適宜編集される。電力供給統合ログT1000は図13を用いて後述する。
【0054】
図2に示す支援装置10の機能のうち、機器電源データ取得部111は、通信ネットワーク5を介して機器側サーバ2および電源側サーバ3の情報を取得し、またそれに基づいて電力供給個別ログT600を生成する。
【0055】
機器電源接続識別部112は、電力供給個別ログT600において電源IDあるいは機器IDが不明である場合に、機器電源接続情報151と、機器側サーバ2および電源側サーバ3の情報を利用して、これを推定し電力供給個別ログT600を更新する。
【0056】
電力構成取得部113は、電力供給個別ログT600において不明となっている項目の一部をデフォルト値で置換し、また同一の電力供給を扱っている複数のレコードを統合して、各電力供給における再エネ比率・再エネ導入者を算出し、電力供給統合ログT1000を生成する。
【0057】
電力供給量推定部114は、電力供給統合ログT1000において電力供給量が不明である場合に、機器側サーバ2の機器位置情報履歴123、電力供給量推定用仕様情報124、電源側サーバ3の電力供給量推定用仕様情報134、差分計測用電気系統構造情報135を取得・活用して、電力供給量を推定し、電力供給統合ログT1000を更新する。
【0058】
環境価値割当部115は、環境価値割当目標152の指定する、管理すべき対象のそれぞれについて、電力供給統合ログT1000から該当するレコードを取得し、その再エネ比率が目標を充足しているかを判定し、充足しない場合は通信ネットワーク5を介して取得される環境価値保有量141を参照し、環境価値の割当を実施し、環境価値割当結果153を出力する。
【0059】
図7は、図1の支援装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。支援装置10は、プロセッサ21とメモリ22と通信装置23と、入出力装置24と、記憶装置25と、内部信号線26とを有する。入出力装置24は、モニタ27と、キーボード28と、マウス29とに接続される。
【0060】
メモリ22は、DRAM等の揮発性記憶媒体で構成され、機器電源データ取得プログラム711、機器電源接続識別プログラム712、電力構成取得プログラム713、電力供給量推定プログラム714、環境価値割当プログラム715が格納される。メモリ22に格納されたプログラムを処理部であるプロセッサ21が実行することで、図2に記載の機器電源データ取得部111、機器電源接続識別部112、電力構成取得部113、電力供給量推定部114、環境価値割当部115の各機能を実現する。本実施例では、各機能をソフトウェアで実装しているが、ハードウェアで実装してもかまわない。
【0061】
記憶装置25は、ハードディスクドライブ等の不揮発性記憶媒体で構成され、機器電源接続情報151、環境価値割当目標152、環境価値割当結果153、電力供給個別ログT600、電力供給統合ログT1000が格納されている。
【0062】
続いて、支援装置10が行う処理について説明する。尚、支援装置10が行う主な処理は、機器側サーバ2および電源側サーバ3の情報をもとに電力供給統合ログT1000を生成する処理(以下、「電力供給ログ生成処理S500」と称する)と、環境価値割当目標152と電力供給統合ログT1000に基づき環境価値割当結果153を生成する処理(以下、「環境価値割当処理S1700」と称する)に大別される。これらの処理は、システムの利用者が環境価値を管理する単位に応じて一定期間おき、例えば一か月ごとに実施される。
【0063】
図8は、電力供給ログ生成処理S500を説明するフローチャートである。支援装置10は処理S500を実行することにより、電力供給統合ログT1000を生成する。
【0064】
まず、機器電源データ取得部111は、機器側サーバ2および電源側サーバ3から、今回の処理で管理すべき期間の機器側ログ121と電源側ログ131を取得する(S511)。
【0065】
続いて、機器電源データ取得部111は、取得したログのすべてのレコードに対し、これをもとにした電力供給個別ログT600のレコードを生成する(S512)。
【0066】
図9は電力供給個別ログT600の一例である。S512では、unknownであるものを含む夫々の項目について、機器側サーバの機器側ログ121および電源側サーバの電源側ログ131から取得したレコードを転記する。たとえば、図9の#1~4のエントリは図3の機器側サーバの機器側ログ121の転記であり、#5~8のエントリは図4の電源側サーバの電源側ログ131の転記である。
【0067】
また、再エネ認証619については、機器電源データ取得部111は、レコードの機器ID613あるいは電源ID614に基づいて機器情報一覧122または電源情報一覧132を検索し、該当の機器あるいは電源に対して再エネ認証がなされているか否かを取得して記載する。
【0068】
続いて、図8に戻り、機器電源接続識別部112は、電力供給個別ログT600のレコードにおいて、機器ID613と電源ID614のいずれかが不明になっているか判定する(S513)。S513以降S514までの処理は、電力供給個別ログT600のレコード夫々に対して実施される。図9の電力供給個別ログT600では、#2、#6のケースで機器ID613と電源ID614のいずれかが不明である。
【0069】
続いて、S513において機器ID613と電源ID614のいずれかが不明になっている場合、機器電源接続識別部112は、機器電源接続情報151および機器側サーバ2、電源側サーバ3の情報を用いて、不明となっているIDを推定する(S514)。S514の処理の詳細は図10において示す。
【0070】
続いて、電力構成取得部113は、電力供給個別ログT600における、同一の電力供給を表す複数のレコードを統合し、電力供給統合ログT1000を生成する(S515)。S515の処理の詳細は図12に示す。
【0071】
続いて、電力供給量推定部114は、電力供給統合ログT1000のレコードにおいて、電力供給量616が不明であるか否かを判定する(S516)。S516およびS517は電力供給統合ログT1000のレコード夫々に対して実施される。
【0072】
続いて、S516において電力供給量616が不明である場合、電力供給量推定部114は、機器位置情報履歴123、機器側の電力供給量推定用仕様情報124、電源側の電力供給量推定用仕様情報134を用いて、不明となっている電力供給量を推定する(S517)。S517の処理の詳細は図14において示す。
【0073】
続いて、電力供給量推定部114は、電力供給統合ログT1000のレコードにおいて、電力供給量616が不明であるか否かを判定する(S518)。S518およびS519は電力供給統合ログT1000のレコード夫々に対して実施される。
【0074】
続いて、S518において電力供給量616が不明である場合、電力供給量推定部114は、差分計測用電気系統構造情報135、差分計測用ログ136を用いて、不明となっている電力供給量を推定する(S519)。S519の処理の詳細は図17において示す。
【0075】
以上で、電力供給ログ生成処理S500の説明を終了する。
【0076】
図10は機器電源接続識別部112が、不明な機器ID613または電源ID614を推定する処理S514を説明するフローチャートである。機器電源接続識別部112は、機器電源接続情報151および機器側サーバ2、電源側サーバ3の情報を用いて、不明となっている機器ID613あるいは電源ID614を推定する。S514は電力供給個別ログT600のレコード夫々に対して実施される。
【0077】
まず、機器電源接続識別部112は、開始時間611、終了時間612と、機器ID613または電源ID614のうち不明でないものに基づいて、機器電源接続情報151を検索し、該当する情報があるか判定する(S711)。開始時間611と終了時間612については、適当なマージンを許容してもよい。
【0078】
図11は機器電源接続情報151の一例である。機器電源接続情報151は、機器が固定設置されているものであって、特定の電源に常に接続されている場合には、それを登録する(図11の#3のケース)。また、定期的に特定の電源と機器の間で充電が行われる場合など、あらかじめわかっている情報を記録しておいてもよい。機器電源接続情報151は通信ネットワーク5を介して収集することができる。
【0079】
また、機器を電源に接続して充電する際に、代金をスマートフォン等を使用して課金処理する場合、当該スマートフォン等の機器で認証し、その際に電源と機器のIDを読み取って記録してもよい(図11の#1、#2のケース)。読み取りは、QRコード(登録商標)やRFID(Radio Frequency IDentifier)を用いることができる。
【0080】
カテゴリ818はこれら接続情報の入手源のカテゴリを示す。カテゴリの定義は、任意に設定することができる。なお、充電する電源と充電される機器は一対一という前提とする。
【0081】
適用開始時間811および適用終了時間812は、機器と電源の間の接続関係が保たれている期間を表し、接続されたのちそれが解除されていない場合、常に接続されている場合などは、適用終了時間812のデータは空欄(-)となる。これは、例えば工場に固定されている機器などの場合等に起こりうる(例えば#3のケース)。S711の検索においては、開始時間611および終了時間612が適用開始時間811および適用終了時間812の間にある接続情報が対象となる。
【0082】
機器電源接続情報151は、機器側ログ121と電源側ログ131において、機器IDと電源IDのいずれかが識別されていない場合、2つのログを対応付けるために有効である。機器側ログ121と電源側ログ131において、機器IDや電源IDが欠落する理由として2つのパターンが考えられる。第1は、機器や電源にIDを識別する機能が備わっていない場合である。第2は、そもそもシステム上IDが割り当てられていないか、未知である場合である。第2の場合を、本実施例では「IDなし」と呼ぶことがある。
【0083】
上記のように、機器側ログ121と電源側ログ131において機器IDや電源IDが欠落する場合でも、2つのログの関連付けを可能とするため、機器電源接続情報151に情報を記載する場合には二つのパターンがありうる。
【0084】
第1のパターンは、機器ID813および電源ID814がともに判明している場合である(図11の#1、#3のケース)。
【0085】
第2のパターンは、機器あるいは電源のいずれかに対してIDが割り振られていないが、再エネ認証がなされていることのみは判明している場合である(図11の#2のケース)。この場合、再エネ認証815は「True」とされ、再エネ認証対象816には認証されている側(機器または電源)が記載されている必要がある。また、機器ID813あるいは電源ID814のいずれかIDがない方には「IDなし」と記載される。先に述べたように、データ上「IDなし」は「unknown」とは異なる。
【0086】
図10に戻り、続いて、S711において、接続時間に基づいた検索により、該当する情報が機器電源接続情報151に存在する場合、機器電源接続識別部112は、電力供給個別ログT600において不明であった機器IDあるいは電源IDを、機器電源接続情報151の情報に置換する(S712)。ここで、S712では、機器電源接続情報151中の一方のIDが「IDなし」であっても置換を実施する。
【0087】
例えば、図8のS513で、図9の電力供給個別ログT600の#2の電源IDがunknownであることが判明したとする。図10のS711では、図9の#2の接続時間「2020/4/1 14:00~2020/4/1 15:00」で機器電源接続情報151を検索する。すると、図11の機器電源接続情報151では#2のケースが抽出される。図11の#2の電源ID814は「IDなし」なので、図9の#2の電源ID614の「unknown」は「IDなし」に置換される。
【0088】
続いて、機器電源接続識別部112は、S711において取得された情報において機器ID813あるいは電源ID814のいずれかが「IDなし」であるか否かを判定する(S713)。上述の例では、図9の#2の電源ID614が「IDなし」であると判定される。
【0089】
続いて、S713において、いずれかのIDが「IDなし」の場合、機器電源接続識別部112は、電力供給個別ログT600に新たなレコードを生成する(S714)。S714を実施する場合とは、前述の通り、「IDなし」である機器あるいは電源には再エネ認証が付与されている。
【0090】
図9を参照して、S713で生成される電力供給個別ログT600のレコードについて説明する。図9の#9が新たに生成されたレコードとする。開始時間611、終了時間612、機器ID613、電源ID614、電力供給量616、位置情報617についてはS514ひいてはS711の処理対象となっているレコード(この例では#2)のS712終了時点と同じ内容を転記する。S712終了時点では、#2の電源ID614は「IDなし」に置換されている。
【0091】
データ管理者615については、機器電源接続情報151において再エネ認証責任者817が不明でない場合はその値を、不明の場合は「不明(機器)」あるいは「不明(電源)」を、再エネ認証対象816に合わせて記載する。上述の例では、図11の#2の再エネ認証責任者817「〇〇スタンド」を、再エネ認証対象816「電源」と合わせて記載する。再エネ認証619については認証されているため「True」を、再エネ比率618は「100」を夫々記載する。「IDなし」というIDを付与することにより、システム上で定義されていない機器や電源であっても、環境価値が割り当てられているものを考慮することが可能となる。
【0092】
機器あるいは電源がシステム上で定義されていない場合、その責任者(817)が再エネ認証を取得し環境価値を負担している場合であっても、機器側ログ121および電源側ログ131にそのレコードが登録されることはない。したがってそのままでは再エネ認証責任者817による再エネ認証815の情報が欠落してしまうため、S714において新規レコードを生成している。
【0093】
図10に戻り、続いて、S711において該当する情報が機器電源接続情報151に存在しない場合、機器電源接続識別部112は、位置情報617が不明でないか判定する(S715)。
【0094】
続いて、S715において位置情報617が不明でない場合、機器電源接続識別部112は、位置情報617をキーとして、機器側ログ121および機器情報一覧122あるいは電源側ログ131および電源情報一覧132を検索する(S716)。なお、検索するのは機器ID613あるいは電源ID614のうち不明になっている側のみで十分である。
【0095】
続いて、機器電源接続識別部112は、開始時間611と終了時間612の間で位置情報617に十分近い位置の機器あるいは電源が存在したかを判定する(S717)。十分近いかどうかは、位置情報の誤差を加味した上で、一定の距離以内にあるか否か、などによって判定できる。
【0096】
続いて、S717において十分近い位置の機器あるいは電源が存在した場合、機器電源接続識別部112は、そのうちで最も近い機器あるいは電源のID(「IDなし」含む)を取得し、機器ID613あるいは電源ID614を置換する(S718)。
【0097】
続いて、S716において十分近い位置の機器あるいは電源が存在しなかった場合、機器電源接続識別部112は、不明であった機器ID613または電源ID614をunknownとする(S719)。つまり、もともとunknownでと記載され、S711において該当する情報がなく、S717においても十分近い機器あるいは電源が存在しなかった場合、S719ではそのままunknownとされる。以上で処理S514に対する説明を終了する。
【0098】
図12は電力構成取得部113の処理S515を説明するフローチャートである。電力構成取得部113は、電力供給個別ログT600における、同一の電力供給を表す複数のレコードを統合し、電力供給統合ログT1000を生成する。
【0099】
まず、電力構成取得部113は、電力供給個別ログT600のレコードについて、再エネ比率618が不明の場合は「0」、再エネ認証619が不明の場合は「false」で置換する(S911)。
【0100】
続いて、電力構成取得部113は、電力供給個別ログT600からレコードを一つ取得する(S912)。このとき、電力供給個別ログT600上で、機器ID613がunknownでなく、かつ電源ID614がunknownでないデータが存在している場合は、それを取得する。たとえば、図9の電力供給個別ログT600の#3のレコードが取得される。
【0101】
続いて、電力構成取得部113は、S912で取得したレコードと開始時間611、終了時間612が同じあるいは所定のマージン以内で近似しており、かつ機器ID613あるいは電源ID614が同じであるレコードを全て電力供給個別ログT600から取得する(S913)。S913により、S912で取得したレコードと同一の電力供給に関するレコードをすべて取得する。たとえば、図9の電力供給個別ログT600の#7のレコードが取得される。
【0102】
続いて、電力構成取得部113は、S912およびS913で取得したレコードをもとに、電力供給統合ログT1000にレコードを生成する(S914)。
【0103】
図13に電力供給統合ログT1000の一例を示す。
【0104】
図12のS914において、S912およびS913で取得した1または複数のレコードを一つのレコードにまとめる。開始時間1011、終了時間1012、機器ID1013、電源ID1014については、電力供給統合ログT1000にS912にて取得された一つのレコードのデータの同名の項目を夫々転記する。S912で取得されたすべてのレコードは同様の開始時間・終了時間を持ち、また機器IDあるいは電源IDは共通しているため、矛盾は発生しない。上述の例では、図9の電力供給個別ログT600の#3のレコードが転記される。
【0105】
また、電力供給量1016、位置1017、再エネ認証1019については、unknownでない値がいずれかのレコードに存在する場合にはこれを転記し、すべてunknownの場合にはunknownとする。上述の例では、図9の電力供給個別ログT600の#7のレコードの再エネ比率618「30」が転記される。
【0106】
再エネ比率1018はすべてのレコードの再エネ比率の合計とし、それが100[%]を超える場合は「100」とする。例えば、「リース会社がEVの充電量の10%相当の再生エネルギー(証書)を購入して適用」「充電スタンドが給電量の50%を再生エネルギーで供給」というケースでは、あるEVの電力供給に対して、「データ管理者がリース会社で、再エネ比率が10%」というログと、「データ管理者が充電スタンドで、再エネ比率が50%」というログが存在する。よって、これらを統合すると、60%がすでにリース会社と充電スタンドによって負担されているという、電力供給統合ログが作成できることになる。すると、100%が目標値だった場合、残り40%をさらに環境価値を割り当てるなどして補填すればよいことになる。従来は本実施例のように再エネ比率の統合を行うことができなかったため、リース会社は自己が負担する10%しか認識できず、残り90%の環境価値を調達して50%分不要な出費を負担するおそれもある。
【0107】
再エネ責任者1020は、再エネ比率が「0」でないレコードにおけるデータ管理者615と、再エネ比率618の組を電力供給統合ログT1000に記録する。例えば、図13の#3の例では、再エネ比率1018はP社負担の20%とQ社負担の30%の合計で50%になっている。
【0108】
なお、再エネ比率1018は一対一の給電では、電源側と機器側の合計となる場合が多い。この場合の環境価値の負担者は2である。また、負担者としては3者以上になる場合もある。例えば機器側がリースEVの場合、借りた人、貸した人でそれぞれ環境価値を負担しており、機器側の負担者が2者以上になり得る。図13では、再エネ比率の合計値とデータ管理者としての再エネ責任者1020のみ示されるが、実際に環境価値を適用した者ごとの比率を情報に含んでもよい。
【0109】
続いて、電力構成取得部113は、S912およびS913で取得し、S914でログ生成に使用した電力供給個別ログT600のレコードをすべて電力供給個別ログT600から削除する(S915)。
【0110】
続いて、電力構成取得部113は、電力供給個別ログT600にレコードが残っているかを判定する(S916)。レコードが残っている場合、S912に戻り、再度レコードを取得する。レコードが残っていない場合、処理を終了する。
【0111】
以上で処理S515の説明を終了する。
【0112】
図14は電力供給量推定部114の処理S517を説明するフローチャートである。
【0113】
まず、電力供給量推定部114は、対象の電力供給統合ログT1000のレコードにおいて、機器ID1013がunknownでないか判定する(S1111)。
【0114】
続いて、S1111において機器ID1013がunknownでない場合、電力供給量推定部114は、機器情報一覧122を機器ID1013に基づいて検索する(S1112)。
【0115】
続いて、電力供給量推定部114は、S1112で検索された機器情報一覧の種別416に基づいて、機器がEVであるか否かを判定する(S1113)。
【0116】
続いて、S1113においてEVであった場合、電力供給量推定部114は、機器側サーバ2の機器位置情報履歴125を利用して電力供給量の上界および下界を推定する。(S1114)。
【0117】
S1114における推定の方法としては、例えば、次のような推定が可能である。
【0118】
まず、機器位置情報履歴125から、前回EVを充電した後の走行履歴を取得し、履歴における走行距離や速度等に基づいてその時点での充電残量の下界および上界を推定する。ここで、上界とは実際の値としてとりうる範囲より大きい値のことを指し、下界とは実際の値としてとりうる範囲より小さい値のことを指す。これと、機器側サーバ2の電力供給量推定用仕様情報124から最大充電容量を取得することで、最大充電容量-充電残量として、電力供給量の上界及び下界を推定できる。このほか、機器位置情報履歴125を使用したほかの手法によって推定してもよい。
【0119】
続いて、電力供給量推定部114は、機器ID1013および電源ID1014に基づいて、電力供給量推定用仕様情報124および134を検索し、該当する仕様情報を取得する(S1115)。
【0120】
図15は機器側の電力供給量推定用仕様情報124の一例である。機器ID1211に対して、仕様情報名1212、上界/下界1213、数値1214、計算手段1215が記載されている。この情報は、機器の仕様を知っている管理者が事前に登録しておく。
【0121】
図16は電源側の電力供給量推定用仕様情報134の一例である。機器ID1211の代わりに電源ID1221になっていることを除くと、基本的に図15と同様である。この情報は、電源の仕様を知っている管理者が事前に登録しておく。
【0122】
図14に戻り、続いて、電力供給量推定部114は、取得された電力供給量推定用仕様情報124の計算手段1215あるいは仕様情報134の計算手段1225に基づいて電力供給量の上界あるいは下界を推定する(S1116)。S1116はS1115で取得された仕様情報のそれぞれに対して実行される。
【0123】
S1116における推定の方法としては、例えば図15の充電容量の場合、計算手段はなく、それ自体が電力供給量の推定値である。したがって電力供給量の上界として120[kWh]を得る。
【0124】
例えば、図15の定格の場合、計算手段は×(時間)であるので、仕様情報に記載されている10kWに電力供給統合ログT1000における時間、つまり終了時間1012と開始時間1011との差分、をかけたものが電力供給量の上界となる。
【0125】
続いて、図14に戻り、電力供給量推定部114は、S1114およびS1116で推定した電力供給量の上界および下界から夫々1つを選択し、電力供給統合ログT1000の推定供給量上界1021、推定供給量下界1022に夫々記載する(S1117)。
【0126】
ここで、S1114およびS1116で求めた上界は、夫々実際の電力供給量より大きい値となっているため、上界のうちで最も小さい値を選択することで、実体に近い値を推定値とすることができる。下界の場合も同様に最も大きい値を選択すればよい。
【0127】
以上で処理517の説明を終了する。
【0128】
図17は電力供給量推定部114の処理S519を説明するフローチャートである。
【0129】
まず、電力供給量推定部114は、対象の電力供給統合ログのレコードにおいて、電源ID1014がunknownでないか判定する(S1311)。
【0130】
続いて、S1311において電源ID1014がunknownでない場合、電力供給量推定部114は、差分計測用電気系統構造情報135を電源ID1014に基づいて検索する(S1312)。
【0131】
図18は差分計測用電気系統構造情報135の一例である。適用開始時間1411、適用終了時間1412、下位電源リスト1413、上位計測単位1414が記載されている。下位電源リスト1413は、複数の電源IDから構成されるリストであり、S1312ではこのリストに電源ID1014が該当するか否かによって検索を実施する。
【0132】
上位計測単位1414は、複数の電源によって構成される上位の計測単位のIDを示す。
例えば、部屋Aに電源X1と電源X2があり、電源X1と電源X2の電力供給量の合計を部屋Aの電力計で計測できる場合、部屋Aが上位計測単位、電源X1および電源X2が下位電源に相当する。
【0133】
図17に戻り、続いて、電力供給量推定部114は、差分計測用電気系統構造情報135に電源ID1014に該当する情報が存在するか判定する(S1313)。
【0134】
続いて、S1312で該当する情報を取得できた場合、電力供給量推定部114は、開始時間1011、終了時間1012と重複する期間における、取得された上位計測単位1414のログを差分計測用ログ136から検索し、該当するレコードを取得する(S1314)。
【0135】
図19は差分計測用ログ136の一例である。開始時間1511、終了時間1512、計測単位1513、電力供給量1514を記載している。
【0136】
続いて、図13に戻り、電力供給量推定部114は、S1314で取得したレコードから、上位計測単位1414における電力供給量を算出する(S1315)。
【0137】
ここで、S1315における電力供給量の算出について説明する。上位計測単位1414では異なる電源の電力供給も扱っているため、電力供給統合ログT1000のレコードにおける開始時間1011および終了時間1012と、S1314で取得したレコードの開始時間1511および終了時間1512は異なる場合がありうる。
【0138】
S1313で取得したレコードについて、開始時間1511と終了時間1512が電力供給統合ログT1000のレコードにおける開始時間1011と終了時間1012の期間に完全に含まれる場合、電力供給量はS1313で取得したレコードの電力供給量1514そのものとする。
【0139】
また、S1314で取得したレコードについて、開始時間1511と終了時間1512が、電力供給統合ログT1000のレコードにおける開始時間1011と終了時間1012の期間からはみ出ている場合、重複している期間と、開始時間1511及び終了時間1512との間の期間の割合を、電力供給量1514にかけて算出する。
【0140】
またS1314で取得したレコードが複数存在する場合、上述の手順によって計算された夫々のレコードの電力供給量を合算する。S1314で取得できたレコードが存在しなかった場合、その時間帯には電力供給が存在しないため、電力供給量は0として計算される。
【0141】
以上の手順によりS1315における上位計測単位1414における電力供給量を算出する。
【0142】
続いて、電力供給量推定部114は、開始時間1011、終了時間1012と重複する期間における、取得された下位電源リスト1413の各電源IDのログを電力供給統合ログT1000から検索し、該当するレコードを取得する(S1316)。ただし、そもそもの差分計測対象であるS1312で検索に使用した電源ID1014は除く。
【0143】
続いて、電力供給量推定部114は、S1316で取得したレコードから、下位電源リスト1413の各電源IDにおける電力供給量を算出する(S1317)。ここでS1315で取得したレコードにおいて、電力供給量1016が存在しない場合、推定供給量下界1022を代わりに使用して算出する。算出方法はS1315と同様である。
【0144】
続いて、電力供給量推定部114は、S1315において算出した上位計測単位1414における電力供給量と、S1317で求めた下位電源リストのその他の電源の電力供給量(またはその推定下界)から、差分計測による推定供給量の上界を算出する(S1318)。
【0145】
具体的には、S1315において算出した上位計測単位1414における電力供給量から、S1317で求めた下位電源リストのその他の電源の電力供給量(またはその推定下界)の合計値を引いて算出する。
【0146】
図20にて具体例を用いて説明する。図20の例では、機器Y0と電源X0との間の電力供給についてその電力供給量を推定しようとしている。まず、S1313で取得された差分計測情報では、上位計測単位が「部屋A」、下位電源リストに「電源X0、電源X1」が記載されている。次に、S1315では上位計測単位「部屋A」の電力供給量が算出され、ここでは300kWhと求まる。S1317では、下位電源である電源X1と、接続されている機器Y1との間の電力供給量として、その下界100kWhが取得されている。このとき、上位計測単位「部屋A」の電力供給量は、その定義から下位電源リストの電源「X0」と「X1」の電力供給量の合計と等しいため、電源X0における電力供給量C1は電源X1における電力供給量C2を用いて、C1=300-C2と表すことができる。C2の推定量の下界として100kWhが得られていることから、C1≦200が求まり、電源X0における電力供給量の上界として200kWhが得られる。
【0147】
図17に戻り、続いて、電力供給量推定部114は、S1318において算出した電力供給量を、差分計測推定供給量上界1023に記入する(S1319)。
【0148】
続いて、電力供給量推定部114は、推定供給量上界1021と差分計測推定供給量上界1023のうち、より小さい値を最終推定供給量1024に記入する(S1320)。
【0149】
なお、差分計測が実施されなかった場合は推定供給量上界1021の値を記入する。
【0150】
S1320によって、S1114およびS1116において個別に求めた電力供給量の上界の推定値と、S1317で求めた差分計測による推定値の上界を比較し、より小さい、つまり実際の電力供給量に近い推定値を選択できる。
【0151】
以上によりS519の説明を終了する。
【0152】
図21は環境価値割当処理S1700を説明するフローチャートである。支援装置10は処理S1700を実行することにより、環境価値割当結果153を生成する。
【0153】
まず、環境価値割当部115は、環境価値割当目標152から目標を一つ取得する(S1711)。S1711以降は環境価値割当目標152の各目標に夫々実施される。
【0154】
図22は環境価値割当目標152の一例である。適用開始時間1811、適用終了時間1812、機器ID1813、電源ID1814、目標再エネ比率1818が設定される。
【0155】
機器ID1813あるいは電源ID1814のいずれかが空欄(-)である場合、機器IDあるいは電源IDによらず適用されることを示す。
【0156】
なお、図22の例では機器ID1813および電源ID1814によって対象の機器あるいは電源を個別に指定しているが、他の条件設定列を増やし、機器や電源の所有者や使用者によって複数の機器あるいは電源をまとめて指定してもよい。この場合、後述の手順において、目標に該当するレコードか否かの判定およびそのための機器情報一覧122あるいは電源情報一覧132を適宜実施する。
【0157】
図21に戻り、環境価値割当部115は、電力供給統合ログT1000から、S1711で取得した目標に該当するレコードを取得する(S1712)。
【0158】
目標に該当するか否かは、適用開始時間1811、適用終了時間1812、機器ID1813、電源ID1814によって判定される。
【0159】
続いて、環境価値割当部115は、取得した電力供給統合ログT1000のレコードと目標とから、環境価値割当結果153の行を作成する(S1713)。S1713以降は取得した電力供給統合ログT1000のレコードに対して夫々実施される。
【0160】
図23は環境価値割当結果153の一例である。S1713においては、適用開始時間1911、適用終了時間1912、機器ID1913、電源ID1914、再エネ認証1919を夫々電力供給統合ログT1000の同名の項目から転記する。また、目標再エネ比率1925を環境価値割当目標152の同名の項目から転記する。
【0161】
電力供給量1915については、電力供給統合ログT1000に電力供給量1015が記載されている場合はこれを転記し、unknownである場合には最終推定供給量1024を転記する。
【0162】
また、既割当再エネ比率1918および既割当再エネ責任者1920は再エネ比率1018および再エネ責任者1020を夫々転記する。
【0163】
なお、S1713において、S1712で取得したレコードの開始時間1011および終了時間1012が目標の適用開始時間1811および適用終了時間1812の一部のみにかかっている場合、かかっている時間に合わせ、適用開始時間1911および適用終了時間1912を修正するとともに、電力供給量1915はかかっている時間の比率をかけたものとする。
【0164】
図21に戻り、続いて、環境価値割当部115はS1712で取得したレコードがS1711で取得した目標を充足しているか否かを判定する(S1714)。
【0165】
目標を充足しているか否かの判定においては、環境価値割当目標における目標再エネ比率1818と生成した環境価値割当結果153における既割当再エネ比率1918を比較して判定する。
【0166】
続いて、S1714において目標を充足していない場合、環境価値割当部115は、環境価値割当結果153における新規再エネ割当比率1926および新規再エネ割当量1927を算出する(S1715)。
【0167】
ここで、新規再エネ割当比率1926は、S1714において比較した目標における目標再エネ比率1818と既割当再エネ比率1918との差分から算出される。
また、新規再エネ割当量1927は、電力供給量1915と新規再エネ割当比率1926との乗算によって算出される。
【0168】
続いて、環境価値割当部115は、S1715で算出された新規再エネ割当量1927に基づいて、電力調達管理サーバ4に対して、対応する環境価値の償却を指示する(S1716)。電力調達管理サーバ4では、環境価値保有量141に存在する、環境価値の保有量を、新規再エネ割当量1927の分だけ減算する。
【0169】
以上により、環境価値割当部115の処理S1700の説明を終了する。
【0170】
以上の実施例によれば、機器及び電源の間で実施された電力供給について、電力供給ログ生成処理S500により、電力供給量が不明である機器に対しては機器・電源の仕様およびその他の機器・電源の電力供給からこれを推定し、また他関係者による環境価値の割り当ての状況を取得し、環境価値割当処理S1700によって他関係者によって既に割り当てられている環境価値と、環境価値割当目標に基づいて必要十分な量の環境価値割当を行い、企業の環境取組の推進に貢献できる。
【実施例2】
【0171】
本実施例は、実施例1における処理を、複数の主体が機器側サーバ2や電源側サーバ3を共有して実施する場合である。
【0172】
実施例2のような場合においては、実施例1のように単に他の主体による環境価値割当の情報を収集し、自社の割当に使用するだけでなく、自社の環境価値割当の情報を他社に共有する必要がある。
【0173】
実施例2は1点を除いて基本的に実施例1と同様である。それは、S1716における処理の終了後に、S1717として、自社の割当の結果を機器側ログ121あるいは電源側ログ131の形式にて出力することである。
【0174】
以上説明した実施例によれば、給電される機器、給電する電源、その他の機器からの給電に関する情報を集計し、欠落した情報については集計した情報から推定し、供給された電力の構成を判定することができる。また電力計がないなどの場合でも必要な再エネ量を適切に算出できるよう、電力供給量を推定する。これにより、機器と電源の間の電力供給について、幅広い機器と電源を対象とした環境価値管理を実現するとともに、多数の関係者間の環境取組を共有可能な環境価値管理支援装置及び方法を提供することができる。
【0175】
例えば、他社の電源設備から自社EVが電力供給を受けるようなケースにおいて、他社の電源がすでに環境価値を割り当てている場合、自社EVに重複して環境価値を割り当てることを避けることができる。このように、電源、機器、その他の情報を統合して、適用された環境価値を漏れや重複なく可視化し、可視化された環境価値が目標に足りない部分は迅速に証書を割り当てることが可能となる。
【符号の説明】
【0176】
機器電源データ取得部111、機器電源接続識別部112、電力構成取得部113、電力供給量推定部114、環境価値割当部115
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23