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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】リバーシブルファン
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/54 20060101AFI20250214BHJP
   F04D 29/66 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
F04D29/54 B
F04D29/66 N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021081096
(22)【出願日】2021-05-12
(65)【公開番号】P2022175000
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2024-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000180025
【氏名又は名称】山洋電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 嘉久
【審査官】森 秀太
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第211174698(CN,U)
【文献】特開2006-214419(JP,A)
【文献】登録実用新案第3218705(JP,U)
【文献】特開2003-009470(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0312792(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/54
F04D 29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正方向および逆方向のいずれにも気流を発生させるリバーシブルファンであって、
回転軸線回りに回転可能なインペラと、
前記インペラを回転させるモータと、
前記モータを支持するベース部と、
前記インペラ、前記モータおよび前記ベース部を収容する筒状のフレームと、
前記フレームの内周面から前記回転軸線に向かって延びて前記ベース部を支持するスポークと、を有し、
前記モータへ通電するリード線の少なくとも一部が、前記スポークに沿って設けられ、前記スポークに設けられた止め部により止められており、
前記止め部には、前記逆方向に向かって開口し前記スポークに沿って延びる溝形状の収容空間が設けられており、
前記スポークは、略前記回転軸線に沿った方向に長い偏平な断面形状であり、
前記止め部は、前記スポークの前記正方向の端部から前記回転軸線に交差する方向に突き出しさらに前記逆方向に向かって延びている、リバーシブルファン。
【請求項2】
前記止め部は、前記正方向に向かって凸の形状とされている、請求項1に記載のリバーシブルファン。
【請求項3】
前記スポークには、前記収容空間に収容された前記リード線が前記開口から抜け出すことを抑える抑え部が設けられている、請求項1に記載のリバーシブルファン。
【請求項4】
前記抑え部は、前記スポークの前記逆方向の端部から前記回転軸線に交差する方向に突き出している、請求項に記載のリバーシブルファン。
【請求項5】
前記止め部は、前記スポークの径方向寸法の1/10以上1/3未満である、請求項1に記載のリバーシブルファン。
【請求項6】
前記フレームは、筒状の部位をなす本体部と、前記本体部の外周に設けられるフランジ部とを有し、
前記本体部の前記正方向の端部に位置する底面には、前記ベース部に向かって突出する突出部が設けられており、
前記フレームの前記正方向の端部に位置する底面に、径方向に延びて前記逆方向に開口した、前記リード線を固定する取付け溝が設けられており、
前記取付け溝は前記突出部から前記フランジ部に跨る位置に設けられている、請求項1に記載のリバーシブルファン。
【請求項7】
前記取付け溝は、前記径方向に延びる直線部と、前記径方向に対して屈曲した屈曲部とを有し、
前記屈曲部は前記突出部に設けられている、請求項に記載のリバーシブルファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リバーシブルファンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1などにより、正方向および逆方向に気流を発生させるリバーシブルファンが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6802022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなリバーシブルファンは、例えば、家屋の壁に取り付けられ、外気の方が温かいときは外気を室内に取り入れて室温を高めたり、室内の温度が高いときは室内の空気を外に排出して温度を低くしたり、という用途で用いられることがある。このとき、外気を取り込む際の騒音と室内の空気を排出するときの騒音とが異なると、住人がファンが故障しているのではないかと疑ってしまうことがある。
【0005】
そこで、本発明は、正方向送風時の騒音特性と逆方向送風時の騒音特性とが近いリバーシブルファンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るリバーシブルファンは、
正方向および逆方向のいずれにも気流を発生させるリバーシブルファンであって、
回転軸線回りに回転可能なインペラと、
前記インペラを回転させるモータと、
前記モータを支持するベース部と、
前記インペラ、前記モータおよび前記ベース部を収容する筒状のフレームと、
前記フレームの内周面から前記回転軸線に向かって延びて前記ベース部を支持するスポークと、を有し、
前記モータへ通電するリード線の少なくとも一部が、前記スポークに沿って設けられ、前記スポークに設けられた止め部により止められており、
前記止め部には、前記逆方向に向かって開口し前記スポークに沿って延びる溝形状の収容空間が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、正方向送風時の騒音特性と逆方向送風時の騒音特性とが近いリバーシブルファンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るリバーシブルファンを正面側から見た斜視図である。
図2図1のA-A線における断面図である。
図3】スポークに設けられた止め部と抑え部を示す部分拡大図である。
図4】スポークに設けられた抑え部を示す部分拡大図である。
図5】逆方向に送風したときの風の流れを示す図である。
図6】正方向に送風したときの風の流れを示す図である。
図7】フレームに設けられたリード線固定部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、実施形態の説明において既に説明された部材と同一の参照番号を有する部材については、説明の便宜上、その説明は省略する。また、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係るリバーシブルファン1を正面側から見た斜視図である。なお、以下の説明において、リバーシブルファン1に設けられているモータが反時計方向に回転したときに、風が吐出される側をリバーシブルファン1の正面側といい、モータが時計方向に回転したときに、風が吐出される側をリバーシブルファン1の背面側という。図1に示すリバーシブルファン1では、左側が正面側であり、右側が背面側である。そして、図1に示すリバーシブルファン1において、回転軸線Xの方向に沿って正面側の方向(矢印N方向)を「正方向」といい、回転軸線Xに沿って背面側の方向(矢印R方向)を「逆方向」という。
【0011】
リバーシブルファン1は、正方向および逆方向のいずれにも空気を送風する(気流を発生させる)ことが可能なファンである。リバーシブルファン1は、図1に示すように、回転軸線Xの回りに回転可能なインペラ2と、インペラ2を回転させるモータ3と、モータ3を支持するベース部4と、これらの部材を収容する筒状のフレーム5と、を備える。インペラ2とモータ3とベース部4とは、回転軸線Xの方向に沿って重なるように設けられている。
【0012】
インペラ2は、略カップ状に形成されている。インペラ2の周囲には、複数の羽根2aが放射状に取り付けられている。インペラ2に取り付けられた羽根2aは、リバーシブルファン1の回転軸部の軸方向(回転軸線Xと同一の方向)に対して傾斜した状態で設けられている。インペラ2は、羽根2aの回転により、気流を正方向または逆方向に発生させる。
【0013】
モータ3は、インペラ2の内部に設けられている。モータ3は、例えば、アウターロータ型のブラシレスモータにより構成される。モータ3は、ステータと、当該ステータの外周に配置されるロータと、を有する。インペラ2内のモータ3は、ロータ部がインペラ2に固定されている。モータ3は、インペラ2よりも正面側(正方向側)に配置されるようにインペラ2内に組み付けられている。
【0014】
ベース部4は、例えば、円形カップ状に形成されている。ベース部4は、モータ3の正方向側を覆うように設けられている。ベース部4は、モータ3のステータ部を支持する。ベース部4は、モータ3よりも正面側に配置されるようにフレーム5内に組み付けられている。
【0015】
ベース部4は、複数のスポーク6によって支持されている。スポーク6は、フレーム5の内周面から回転軸線Xに向かって延びるように設けられて、ベース部4の周部に接続されている。換言すると、スポーク6は、ベース部4の周部から径方向へ放射状に延びてフレーム5の内周面に接続されている。スポーク6に支持されたベース部4は、回転軸線Xに沿って延びる筒状のフレーム5の正面側(リバーシブルファン1の正面側)に寄った位置に取り付けられている。
【0016】
ベース部4を支持するスポーク6は、略回転軸線Xに沿った方向、すなわち、気流が発生する方向に長い扁平な断面形状を有するように形成されている。スポーク6は、回転軸線Xの方向から見たときの表面積が小さくなるように形成されている。スポーク6には、モータ3に電力を供給するリード線(図示省略)を抑え止めするための止め部10と抑え部20とが設けられている。止め部10および抑え部20は、リード線が配線される位置の所定のスポーク6に設けられる。本例では、2本のスポーク6に止め部10および抑え部20が設けられている。
【0017】
フレーム5は、筒状の部位をなす本体部51と、本体部51の両端部の外周に設けられるフランジ部52(52a,52b)と、を有する。
【0018】
次に、図2から図4を参照して、スポーク6に設けられる止め部10と抑え部20について説明する。
【0019】
図2は、図1のA-A線における断面図である。図3は、止め部10および抑え部20が設けられているスポーク6を示す部分拡大図である。
図2及び図3に示すように、止め部10は、回転軸線Xの方向に沿って長く扁平するスポーク6の正方向(矢印N方向)の先端部から回転軸線Xに交差する方向へ突き出し、さらに逆方向(矢印R方向)に向かって延びるように設けられている。止め部10は、正方向に向かって凸の形状となるように設けられている。
【0020】
止め部10には、スポーク6に沿って配線される電力供給用のリード線Lを収容するための収容空間11が設けられている。止め部10は、スポーク6の長く扁平する側面との間に収容空間11を形成する。収容空間11は、逆方向に向かって開口する溝形状に形成されている。また、収容空間11は、スポーク6の長さ方向に沿って延びる溝形状、すなわち、スポーク6に沿って配線されるリード線Lの配線方向に幅を有する溝形状に形成されている。止め部10の幅は、リバーシブルファン1の径方向におけるスポーク6の長さの1/10以上1/3未満となるように形成されている。止め部10は、凸形状になっている部位が正方向側、収容空間11の開口になっている部位が逆方向側となるように設けられている。
【0021】
図4は、スポーク6に設けられた抑え部20を示す部分拡大図である。
図3及び図4に示すように、抑え部20は、回転軸線Xの方向へ沿って長く扁平するスポーク6の逆方向(矢印R方向)の端部から回転軸線Xに交差する方向へ突き出すように設けられている。抑え部20は、収容空間11に収容されたリード線Lが収容空間11の開口から抜け出すことを抑える部材である。抑え部20は、止め部10と協働してリード線Lの周りを囲うように設けられている。
【0022】
次に、図5及び図6を参照して、リバーシブルファン1における風の流れについて説明する。図5は、リバーシブルファン1において逆方向に送風したときの風の流れを示す図である。図6は、リバーシブルファン1において正方向に送風したときの風の流れを示す図である。
【0023】
図5に示すように、リバーシブルファン1において逆方向に空気を送風する場合、フレーム5の正方向側の開口から吸われる空気は、止め部10が設けられているスポーク6に対して、止め部10の凸状側にぶつかりながらフレーム5内に吸気される。このため、例えば、矢印B1,B2で示すように、空気は止め部10の外周面に沿って流れを乱されることなくスムーズにフレーム5内に吸気される。これにより、空気の流れが止め部10に妨害されることによる騒音の発生が抑制される。
【0024】
図6に示すように、リバーシブルファン1において正方向に空気を送風する場合、フレーム5の逆方向側の開口から吸われた空気は、正方向側の開口から吐出される際に、止め部10が設けられているスポーク6に対して、止め部10の開口側にぶつかる。このため、例えば、矢印C1,C2で示すように、空気は止め部10の収容空間11の開口に流れを妨害されてスムーズに流れることができない。このとき、空気の流れが止め部10に妨害されることによる騒音が発生する。
【0025】
図7は、リバーシブルファン1のフレーム5に設けられているリード線固定部30を示す斜視図である。リード線固定部30は、スポーク6の止め部10と抑え部20に抑え止めされたリード線Lをさらに固定するための部位である。
【0026】
図7に示すように、リード線固定部30は、突出部31と、取付け溝32と、を有する。
突出部31は、フレーム5の本体部51における正方向側の端部に位置する底面53に設けられている。突出部31は、底面53からベース部4に向かって(リバーシブルファン1の中心部に向かって)突出するように設けられている。
【0027】
取付け溝32は、フレーム5の正方向側のフランジ部52aに設けられている。取付け溝32は、径方向に延びてフランジ部52aを横断するように形成されている。取付け溝32は、フランジ部52aを貫通して、フランジ部52aの逆方向側に開口するように形成されている。
【0028】
取付け溝32は、突出部31からフランジ部52aにまたがるように設けられている。取付け溝32は、突出部31の略中央部に径方向に延びるように設けられ、突出部31を周方向に2つに切り離している。取付け溝32は、径方向に延びる直線部33と、径方向に対して屈曲している屈曲部34と、を有する。直線部33は、フランジ部52aに設けられている。屈曲部34は、突出部31に設けられている。屈曲部34の溝は、突出部31が設けられている底面53および底面53に連続する本体部51の一部にまで食い込むような深さで形成されている。
【0029】
スポーク6の止め部10と抑え部20に抑え止めされたリード線Lは、突出部31に引っ掛けられるようにして取付け溝32の屈曲部34と直線部33を通された後、フランジ部52aの開口部を通過して配線される。
【0030】
なお、本実施形態では、止め部10と取付け溝32の両方を設けてリード線Lを固定する場合を説明したが、この形態に限定されない。例えば、止め部10または取付け溝32の一方のみを設けて、止め部10単独または取付け溝32単独でリード線Lを固定するようにしてもよい。
【0031】
本実施形態に係るリバーシブルファン1によれば、モータ3に通電するリード線Lがスポーク6に沿って配線され、当該リード線Lを止める止め部10がそのスポーク6に設けられている。そして、止め部10には、スポーク6との間にリード線Lを収容する収容空間11が設けられ、当該収容空間11は逆方向に向かって開口するとともに、スポーク6に沿って延びる溝形状である。このため、正方向の気流が止め部10にぶつかると、逆方向に向かって開口している収容空間11によって流れが乱されて騒音が生じる。このように、正方向の気流を発生させたときの騒音が大きくなるので、正方向送風時の騒音特性を逆方向送風時の騒音特性に近づけることができる。
【0032】
また、リバーシブルファン1によれば、止め部10は、回転軸線Xに沿った方向に長い偏平形状のスポーク6の正方向側の端部から回転軸線Xに交差する方向に突き出しさらに逆方向に向かって延び、正方向に向かって凸の形状となるように形成されている。このため、逆方向送風時に止め部10にぶつかる気流を凸形状に沿ってスムーズに流すことができ、騒音特性を増大させないので、正方向送風時の騒音特性と逆方向送風時の騒音特性とを揃えやすい。
【0033】
また、リバーシブルファン1によれば、止め部10は、スポーク6の径方向寸法の1/10以上1/3未満となるように形成されている。このため、リード線Lを確実に止めることができるとともに、正方向送風時の騒音特性を逆方向送風時の騒音特性に近づけることができる。
【0034】
また、リバーシブルファン1によれば、スポーク6には、収容空間11に収容されたリード線Lが開口から抜け出すことを抑える抑え部20が設けられ、当該抑え部20は、スポーク6の逆方向の端部から回転軸線Xに交差する方向に突き出している。このため、止め部10と共にリード線Lの周りを囲い、収容空間11に収容されたリード線Lが抜け出すのをさらに抑制することができる。
【0035】
また、リバーシブルファン1によれば、フレーム5は、本体部51の正方向側の端部に位置する底面53にベース部4に向かって突出する突出部31が設けられ、突出部31からフランジ部52aにまたがるように、リード線Lを固定する取付け溝32が径方向に延びて設けられている。そして、取付け溝32は、フランジ部52aにおいて逆方向に開口し、突出部31において径方向に対し屈曲する屈曲部34となるように形成されている。このため、屈曲部34および突出部31の形状をそのまま維持してフランジ部52aの大きさを異ならせることで大きさの異なるフレーム5を設計することができ、サイズ展開を拡大しやすい。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0037】
1 リバーシブルファン
2 インペラ
2a 羽根
3 モータ
4 ベース部
5 フレーム
6 スポーク
10 止め部
11 収容空間
20 抑え部
30 リード線固定部
31 突出部
32 取付け溝
33 直線部
34 屈曲部
51 本体部
52(52a,52b) フランジ部
L リード線
X 回転軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7