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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】セメント組成物製造システム
(51)【国際特許分類】
   B28C 7/04 20060101AFI20250214BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
B28C7/04
C04B28/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021126053
(22)【出願日】2021-07-30
(65)【公開番号】P2023020598
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2024-04-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100162145
【弁理士】
【氏名又は名称】村地 俊弥
(72)【発明者】
【氏名】阿武 稔也
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 幸一
(72)【発明者】
【氏名】野崎 隆人
(72)【発明者】
【氏名】早川 隆之
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0077045(US,A1)
【文献】特開2020-037493(JP,A)
【文献】特開2014-117636(JP,A)
【文献】特開昭54-097624(JP,A)
【文献】特開2020-152631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C 1/00-9/04
C04B 2/00-32/02
C04B 40/00-40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント及び水を含むセメント組成物を製造するためのセメント組成物製造システムを用いた、セメント組成物の製造方法であって、
上記セメント組成物製造システムが、
上記セメントの一部と上記水との撹拌による混合、及び、炭酸ガスの供給を行い、上記炭酸ガスを吸収し固定化した炭酸化セメントスラリーを得るためのセメントスラリー調製装置と、
上記セメントの残部と、上記セメントスラリー調製装置で得た上記炭酸化セメントスラリーとの撹拌による混練を行い、上記セメント組成物を得るためのセメント組成物調製装置を含み、
上記セメントスラリー調製装置が、
(a)上記セメントの一部と上記水を撹拌し混合して、混合物を得るための撹拌槽と、上記撹拌槽の中の混合物収容用空間内に配設された、上記炭酸ガスを供給するための散気手段を備えた装置、または、
(b)上記セメントの一部と上記水を撹拌し混合して、混合物を得るための撹拌槽と、上記撹拌槽から供給された上記混合物に、上記炭酸ガスを供給するための炭酸ガス供給手段を備えた装置、であり、
上記セメント組成物に含まれる上記セメントの全量中の上記セメントの一部の量の割合が、1~50質量%であることを特徴とするセメント組成物の製造方法
【請求項2】
上記セメントスラリー調製装置が、上記(b)の装置であり、
上記(b)の装置中の上記炭酸ガス供給手段が、上記混合物を収容しかつ撹拌するための混合物収容槽と、上記混合物収容槽の中の混合物収容用空間内に配設された、上記炭酸ガスを供給するための散気手段を備えたものであり、
上記(b)の装置が、上記撹拌槽の中の上記混合物を上記炭酸ガス供給手段に供給するための第一の流通路と、上記炭酸ガス供給手段の中の上記混合物を上記撹拌槽に供給するための第二の流通路と、上記混合物を流通させるためのポンプを備えたものである、請求項1に記載のセメント組成物の製造方法
【請求項3】
上記セメントスラリー調製装置が、上記(b)の装置であり、
上記(b)の装置中の上記炭酸ガス供給手段が、上記撹拌槽から供給された上記混合物を流通させるための管路であって、上記管路内を流通している上記混合物に上記炭酸ガスを供給するための炭酸ガス供給口を有し、かつ、上記混合物と上記炭酸ガスを撹拌して混合することのできる形態を有する管路である、請求項1に記載のセメント組成物の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント組成物製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の抑制のため、二酸化炭素の排出量の低減が重要な課題になっている。
これに関連して、セメント製造工場で発生する排ガス等から回収された二酸化炭素を、コンクリート等に固定化する技術が検討されている。
二酸化炭素が効率よく固定化されたコンクリートを提供することができる方法として、特許文献1には、コンクリートを製造する方法であり、セメントと水を含む第1の混合物を形成すること、前記第1の混合物に二酸化炭素を添加して第2の混合物を形成すること、および前記第2の混合物を硬化することを含み、前記水の重量は、前記コンクリートに残存する未水和セメントが0%以上50%以下になるように調整される方法が記載されている。
また、二酸化炭素を含む気体が注入された水系媒体を用いて、強度が高く、かつ安定性の高いコンクリート構造体を得ることができる生コンクリートの製造方法として、特許文献2には、コンクリート回収水を撹拌しながら、二酸化炭素を含む気体を注入することによって、水系媒体を得る撹拌注入工程と、セメント、石炭灰、スラグ粉末、及び前記水系媒体を混合する混合工程とを含み、前記撹拌注入工程が、溶解されたカルシウムイオンの濃度が700~1,000ppmとなるように、前記撹拌及び前記気体の注入を行うことを特徴とする生コンクリートの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-37493号公報
【文献】特許第6371127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、コンクリート等のセメント組成物の製造において、上記セメント組成物に二酸化炭素を固定化することができるセメント組成物製造システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、セメントの一部と水との撹拌による混合、及び、炭酸ガスの供給を行い、炭酸ガスを吸収し固定化した炭酸化セメントスラリーを得るためのセメントスラリー調製装置と、セメントの残部と、炭酸化セメントスラリーとの撹拌による混練を行い、セメント組成物を得るためのセメント組成物調製装置を含み、該装置が、(a)セメントの一部と水を撹拌し混合して、混合物を得るための撹拌槽と、撹拌槽の中の混合物収容用空間内に配設された、炭酸ガスを供給するための散気手段を備えた装置、または、(b)セメントの一部と水を撹拌し混合して、混合物を得るための撹拌槽と、撹拌槽から供給された混合物に、炭酸ガスを供給するための炭酸ガス供給手段を備えた装置であるセメント組成物製造システムによれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[3]を提供するものである。
【0006】
[1] セメント及び水を含むセメント組成物を製造するためのセメント組成物製造システムであって、上記セメント組成物製造システムが、上記セメントの一部と上記水との撹拌による混合、及び、炭酸ガスの供給を行い、上記炭酸ガスを吸収し固定化した炭酸化セメントスラリーを得るためのセメントスラリー調製装置と、上記セメントの残部と、上記セメントスラリー調製装置で得た上記炭酸化セメントスラリーとの撹拌による混練を行い、上記セメント組成物を得るためのセメント組成物調製装置を含み、上記セメントスラリー調製装置が、(a)上記セメントの一部と上記水を撹拌し混合して、混合物を得るための撹拌槽と、上記撹拌槽の中の混合物収容用空間内に配設された、上記炭酸ガスを供給するための散気手段を備えた装置、または、(b)上記セメントの一部と上記水を撹拌し混合して、混合物を得るための撹拌槽と、上記撹拌槽から供給された上記混合物に、上記炭酸ガスを供給するための炭酸ガス供給手段を備えた装置、であることを特徴とするセメント組成物製造システム。
[2] 上記セメントスラリー調製装置が、上記(b)の装置であり、上記(b)の装置中の上記炭酸ガス供給手段が、上記混合物を収容しかつ撹拌するための混合物収容槽と、上記混合物収容槽の中の混合物収容用空間内に配設された、上記炭酸ガスを供給するための散気手段を備えたものであり、上記(b)の装置が、上記撹拌槽の中の上記混合物を上記炭酸ガス供給手段に供給するための第一の流通路と、上記炭酸ガス供給手段の中の上記混合物を上記撹拌槽に供給するための第二の流通路と、上記混合物を流通させるためのポンプを備えたものである、前記[1]に記載のセメント組成物製造システム。
[3] 上記セメントスラリー調製装置が、上記(b)の装置であり、上記(b)の装置中の上記炭酸ガス供給手段が、上記撹拌槽から供給された上記混合物を流通させるための管路であって、上記管路内を流通している上記混合物に上記炭酸ガスを供給するための炭酸ガス供給口を有し、かつ、上記混合物と上記炭酸ガスを撹拌して混合することのできる形態を有する管路である、前記[1]に記載のセメント組成物製造システム。
【発明の効果】
【0007】
本発明のセメント組成物製造システムによれば、コンクリート等のセメント組成物の製造において、上記セメント組成物に二酸化炭素を固定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】セメントスラリー調製装置(a)を含む、本発明のセメント組成物製造システムの一例を模式的に示す図である。
図2】セメントスラリー調製装置(b-1)を含む、本発明のセメント組成物製造システムの一例を模式的に示す図である。
図3】セメントスラリー調製装置(b-2)を含む、本発明のセメント組成物製造システムの一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のセメント組成物製造システムは、セメント及び水を含むセメント組成物を製造するためのセメント組成物製造システムであって、セメント組成物製造システムが、セメントの一部と水との撹拌による混合、及び、炭酸ガスの供給を行い、炭酸ガスを吸収し固定化した炭酸化セメントスラリーを得るためのセメントスラリー調製装置と、セメントの残部と、セメントスラリー調製装置で得た炭酸化セメントスラリーとの撹拌による混練を行い、セメント組成物を得るためのセメント組成物調製装置を含み、セメントスラリー調製装置が、(a)セメントの一部と水を撹拌し混合して、混合物を得るための撹拌槽と、撹拌槽の中の混合物収容用空間内に配設された、炭酸ガスを供給するための散気手段を備えた装置、または、(b)セメントの一部と水を撹拌し混合して、混合物を得るための撹拌槽と、撹拌槽から供給された混合物に、炭酸ガスを供給するための炭酸ガス供給手段を備えた装置、であるものである。
以下、詳しく説明する。
【0010】
セメントスラリー調製装置は、セメントの一部と水との撹拌による混合、及び、炭酸ガスの供給を行い、炭酸ガス(気体の形態を有する二酸化炭素)を吸収し固定化した炭酸化セメントスラリーを得るためのものである。
セメントとしては、特に限定されるものではなく、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント等の混合セメントや、エコセメント等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0011】
セメントの全量(セメント組成物に含まれるセメントの全量)中の、セメントの一部(セメントスラリー調製装置において混合されるセメント)の量の割合は、好ましくは1~50質量%、より好ましくは5~40質量%、さらに好ましくは8~35質量%、さらに好ましくは15~30質量%、特に好ましくは20~28質量%である。上記割合が1質量%以上であると、セメント組成物に固定化される二酸化炭素の量がより多くなる。上記割合が50質量%以下であると、セメント組成物の強度発現性がより向上する。
【0012】
水としては、特に限定されず、例えば、上水道水や、コンクリート製造工場で発生する上澄水やスラッジ水等の回収水等が挙げられる。
水の配合量は、特に限定されず、コンクリート等における一般的な配合量であればよい。例えば、水と、セメントの全量(セメント組成物に含まれるセメントの全量)の質量比〔水/(セメントの全量)〕の値として、好ましくは0.2~0.6となる量である。
【0013】
炭酸ガスは、炭酸ガスのみからなる気体として、混合物(セメントスラリー)に供給されてもよいが、入手の容易性等の観点から、炭酸ガスを含む気体として、混合物に供給されてもよい。
炭酸ガスを含む気体中の炭酸ガスの割合は、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは20体積%以上、さらに好ましくは50体積%以上、さらに好ましくは80体積%以上、特に好ましくは90体積%以上である。該割合が5体積%以上であれば、セメント組成物に固定化される二酸化炭素の量をより増やすことができる。また、炭酸ガスの供給に要する時間を短くすることができる。
炭酸ガスを含む気体の例としては、セメント製造工程において発生した排ガス(炭酸ガス濃度:約20体積%)、製鉄工程において発生した排ガス(炭酸ガス濃度:約20体積%)、火力発電工程において発生した排ガス(炭酸ガス濃度:約10体積%)、または、これらの排ガスからの分離回収ガス(炭酸ガス濃度:約100体積%)等が挙げられる。
【0014】
以下、セメント組成物製造システムについて、図1~3を参照しながら詳しく説明する。
セメント組成物製造システム1、11、31は、セメントスラリー調製装置2、12、32及びセメント組成物調製装置9、24、40を含むものである。
セメントスラリー調製装置は、以下の(a)または(b)である。
[セメントスラリー調製装置(a)]
セメントスラリー調製装置(a:図1中の2)は、セメントの一部と水を撹拌し混合して、混合物を得るための撹拌槽3と、撹拌槽3の中の混合物収容用空間内に配設された、炭酸ガスを供給するための散気手段4を備えたものである。
セメントの一部と水を撹拌し混合するための撹拌、混合手段の例としては、撹拌槽3の中の混合物収容用空間内に配設された撹拌翼や、ハンドミキサ等が挙げられる。
炭酸ガスを供給するための散気手段4の例としては、プレート型又は円筒型のメンブレン式散気装置等が挙げられる。
セメントスラリー調製装置2で得られた炭酸化セメントスラリーは、例えば、ポンプ8を用いて、炭酸化セメントスラリー供給路7を通って、セメント組成物調製装置9に供給される。
【0015】
[セメントスラリー調製装置(b)]
セメントスラリー調製装置(b:図2中の12又は図3中の32)は、セメントの一部と水を撹拌し混合して、混合物を得るための撹拌槽13、33と、撹拌槽13、33から供給された混合物に、炭酸ガスを供給するための炭酸ガス供給手段14、37を備えたものである。
セメントスラリー調製装置12、32の例としては、例えば、以下の(b-1)及び(b-2)等が挙げられる。
【0016】
(b-1) セメントスラリー調製装置(b-1:図2中の12)は、撹拌槽13と、炭酸ガス供給手段14と、撹拌槽13の中の混合物(セメントの一部を水を混合してなるもの)を炭酸ガス供給手段14に供給するための第一の流通路17と、炭酸ガス供給手段14の中の上記混合物を撹拌槽13に供給するための第二の流通路18と、上記混合物を流通させるためのポンプ19を備えたものである。
炭酸ガス供給手段14は、上記混合物を収容しかつ撹拌するための混合物収容槽15と、混合物収容槽15の中の混合物収容用空間内に配設された、炭酸ガスを供給するための散気手段16を備えたものである。
撹拌槽13において、セメントの一部と水を撹拌し混合するための撹拌・混合手段の例としては、セメントスラリー調製装置(a)と同様のものを用いることができる。
撹拌槽13内の上記混合物は、第一の流通路17を通って、混合物収容槽15に移送される。混合物収容槽15内において、上記混合物を撹拌しながら、上記混合物に炭酸ガスが散気手段16から供給される。炭酸ガス供給後の上記混合物は、第二の流通路18を通って、撹拌槽13に移送される。
散気手段16としては、セメントスラリー調製装置(a)の散気手段と同様のものを用いることができる。
【0017】
混合物収容槽15内において炭酸ガスが供給された上記混合物を、そのまま、セメント組成物調製装置24に供給される炭酸化セメントスラリーとしてもよいが、図2に示すように第二の流通路18を設けて、上記混合物を、十分な量の炭酸ガスが吸収され固定化された炭酸化セメントスラリーとなるまで、撹拌槽13、第一の流通路17、混合物収容槽15、及び、第二の流通路18の順に、ポンプ19等を用いて繰り返し循環させた後、撹拌槽13に収容された循環後の上記混合物を、セメント組成物調製装置24に供給される炭酸化セメントスラリーとしてもよい。
セメントスラリー調製装置12で得られた炭酸化セメントスラリーは、例えば、ポンプ23を用いて、炭酸化セメントスラリー供給路22を通って、セメント組成物調製装置24に供給される。
【0018】
(b-2) セメントスラリー調製装置(b-2:図3中の32)は、セメントスラリー調製装置32中の炭酸ガス供給手段37が、セメントの一部と水を撹拌し混合して、混合物を得るための撹拌槽33から供給された上記混合物を流通させるための管路であるものである。管路は、管路内を流通している混合物に炭酸ガスを供給するための炭酸ガス供給口を有し、かつ、混合物と炭酸ガスを撹拌して混合することのできる形態を有する。上記混合物は、撹拌槽33からポンプ34等を用いて管路に供給される。
管路の具体例としては、管路内に、炭酸ガスを供給するための散気手段(例えば、散気板:図示せず。)、及び、撹拌手段(例えば、ラインミキサーやスタティックミキサー:図示せず。)を配設したものが挙げられる。
管路内において炭酸ガスが供給された混合物を、そのまま、セメント組成物調製装置40に供給される炭酸化セメントスラリーとしてもよいが、上記混合物を、十分な量の炭酸ガスが吸収され固定化された炭酸化セメントスラリーとなるまで、撹拌槽33、及び、管路内の順に、ポンプ34等を用いて繰り返し循環させた後、上記混合物を、セメント組成物調製装置40に供給される炭酸化セメントスラリーとしてもよい。
セメントスラリー調製装置32で得られた炭酸化セメントスラリーは、例えば、ポンプ39を用いて、炭酸化セメントスラリー供給路38を通って、セメント組成物調製装置40に供給される。
【0019】
なお、セメントスラリー調製装置(a)または(b)で得られた炭酸化セメントスラリーは、セメント組成物調製装置(a)及び(b)とは異なる、炭酸化セメントスラリーを貯蔵するための貯蔵槽(図示せず。)に一旦貯蔵して、該貯蔵槽から、炭酸化セメントスラリーを、適宜、セメント組成物調製装置9、24、40に供給してもよい。
【0020】
セメントスラリー調製装置(a)及び(b)において、炭酸ガスは、炭酸ガス貯蔵装置5、20、35から供給されてもよい。炭酸ガスは、炭酸ガス貯蔵装置5、20、35から炭酸ガス供給路6、21、36を通り、散気手段4、16等から供給される。
炭酸ガス貯蔵装置5、20、35としては、加圧によって液化した炭酸ガスが収容された、サイフォン管付き容器、極低温容器(LGC)、貯蔵タンク等が挙げられる。液化炭酸ガスは、通常、気化器を通して気体の状態にされた後、供給される。
また、コンクリート製造工場の排水処理設備である、二酸化炭素(炭酸ガス)を用いたpH処理装置用に設置されている炭酸ガス貯蔵設備を、炭酸ガス貯蔵装置5、20、35として利用してもよい。
【0021】
セメントスラリー調製装置(a)及び(b)において、セメントの一部、水、及び任意に配合される骨材(後述)は、例えば、各材料を計量して、計量後の材料を撹拌槽に投入するための材料投入手段(図示せず。)から、撹拌槽3、13、33に投入される。上記材料投入手段としては、既存のコンクリート製造工場において用いられている装置を使用することができる。
また、撹拌槽3、13、33は、セメントスラリーの性状を改善することを目的とする補助剤を撹拌槽に投入するための補助剤投入手段(図示せず。)を備えていてもよい。
ここで、上記補助剤としては、セメント混和剤、pH調整剤等が挙げられる。また、セメント混和剤としては、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤及び高性能AE減水剤等のセメント分散剤、並びに、AE剤等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
また、セメントスラリー調製装置(a)及び(b)は、加圧できる構造を有する密閉容器であることが好ましい。加圧下(例えば、セメントスラリー調製装置の内部圧力を、大気圧を超える1,200hPa以上に高めるなど)において、炭酸ガスを供給することで、炭酸化セメントスラリーに固定化される二酸化炭素の量を増加させて、より多くの二酸化炭素が固定化されたセメント組成物を得ることができる。
なお、上述したセメントスラリー調製装置(b-1)は、撹拌槽13と炭酸ガス供給手段14の両方が上記密閉容器であることが好ましい。
【0023】
セメント組成物調製装置(図1中の9、図2中の24、図3中の40)は、セメントの残部と、セメントスラリー調製装置2、12、32で得た炭酸化セメントスラリーとの撹拌による混練を行い、セメント組成物を得るためのものである。
セメントの残部と、炭酸化セメントスラリーを撹拌し混合するための撹拌、混合手段の例としては、セメント組成物調製装置9、24、40の中の炭酸化セメントスラリー収容用空間内に配設された撹拌翼等の撹拌手段10、25、41、ハンドミキサ等が挙げられる。撹拌手段10、25、41は、1つであってもよく、複数であってもよい。
セメント組成物調製装置9、24、40としては、各材料を撹拌し混合することができるものであればよく、既存のコンクリート製造工場において用いられているミキサ等を使用することができる。
【0024】
本発明において、セメント組成物は、骨材を含まないペーストでもよいが、骨材を含むもの(モルタル又はコンクリート)でもよい。
セメント組成物が骨材を含む場合、骨材は、セメントスラリー調製装置及びセメント組成物調製装置の少なくともいずれか一方で、投入すればよい。
例えば、セメントスラリー調製装置2、12、32において、骨材を投入する場合、骨材は、通常、セメントの一部及び水と共に、撹拌槽3、13、33に投入される。
また、セメント組成物調製装置9、24、40において、骨材を投入する場合、骨材は、通常、セメントの残部と共に、セメント組成物調製装置9、24、40に投入される。
【0025】
骨材としては、細骨材のみ、または、細骨材と粗骨材の組み合わせが挙げられる。また、天然骨材、人工骨材、再生骨材のいずれも用いることができる。
細骨材としては、特に限定されず、例えば、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、スラグ細骨材、及び軽量細骨材、又は、これらの中から選ばれる2種以上からなる混合物等が挙げられる。
粗骨材としては、特に限定されず、例えば、川砂利、山砂利、陸砂利、海砂利、砕石、スラグ粗骨材、及び軽量粗骨材、又は、これらの中から選ばれる2種以上からなる混合物等が挙げられる。
骨材の配合量(細骨材と粗骨材を併用する場合は、各々の配合量)は特に限定されず、モルタル又はコンクリートにおける一般的な配合量であればよい。
【0026】
セメントの残部と、炭酸化セメントスラリーを撹拌し混合する際に、必要に応じて他の材料を投入してもよい。必要に応じて投入される他の材料としては、水や、AE剤、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、及び高性能AE減水剤等の各種混和剤や、フライアッシュ、シリカフューム、高炉スラグ微粉末等の各種混和材等が挙げられる。
なお、セメント組成物調製装置9、24、40において、セメントの残部と、炭酸化セメントスラリーを混練する際に、追加で投入される水は、水の全量(セメント組成物に含まれる水の全量)中の割合として、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
【0027】
セメント組成物調製装置9、24、40において、セメントの残部、及び必要に応じて投入される他の材料(例えば、骨材、混和剤等)、は、例えば、各材料を計量して、計量後の材料をセメント組成物調製装置12に投入するための材料投入手段(図示せず。)から、セメント組成物調製装置9、24、40に投入されてもよい。上記材料投入手段としては、既存のコンクリート製造工場において用いられている装置を使用することができる。
【0028】
セメントスラリー調製装置(a)及び(b)、炭酸化セメントスラリー供給路7、22、28、ポンプ(ただし、セメントスラリー調製装置(b)に含まれるポンプ19、34は除く。)8、23、39、炭酸ガス貯蔵装置5、20,35、炭酸ガス供給路6、21、並びに炭酸化セメントスラリーを貯蔵するための貯蔵槽(図示せず。)、セメント組成物調製装置9、24、40等のセメント組成物製造システム1、11、31を構成する各部材は、冷却、加温手段を有し、温度管理できるものが好ましい。
さらに、上述したセメント組成物製造システム1、11、31を構成する各部材は、炭酸化セメントスラリーの調製、及びセメント組成物の調製を管理する目的で、混合物の温度を測定するための温度計、セメントスラリー調製装置の気相部分の温度を測定するための温度計、pH測定装置、炭酸イオン濃度測定装置、酸素濃度測定装置、二酸化炭素濃度測定装置、及び圧力計等の各種測定手段を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1、11、31 セメント組成物製造システム
2、12、32 セメントスラリー調製装置
3、13、33 撹拌槽
4、14、37 炭酸ガス供給手段
5、20、35 炭酸ガス貯蔵装置
6、21炭酸ガス供給路
7、22、38 炭酸化セメントスラリー供給路
8、19、23、34、39 ポンプ
9、24、40 セメント組成物調製装置
10、25、41 撹拌手段
15 混合物収容槽
16 散気手段
17 第一の流通路
18 第二の流通路
図1
図2
図3