(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】基板収納容器
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20250214BHJP
B65D 85/30 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
H01L21/68 V
B65D85/30 500
(21)【出願番号】P 2021150759
(22)【出願日】2021-09-16
【審査請求日】2024-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】山岸 裕樹
【審査官】小山 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-16743(JP,A)
【文献】特開2013-4852(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/163575(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
B65D 85/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収納する容器本体の開口部に嵌め合わされる蓋体と、容器本体の開口部に嵌め合わされた蓋体を施錠する施錠機構とを備えた基板収納容器であって、
施錠機構は、蓋体に支持されて外部からの操作により回転する操作部材と、この操作部材の回転によりスライドするスライド部材と、このスライド部材のスライドにより蓋体の周縁部から突出可能な施錠部材と、この施錠部材を揺動させて容器本体の開口部内周に係止させる複数の溝カムとを含み、
スライド部材の先端部と施錠部材とに樹脂連結ピンを刺し通して施錠部材を蓋体の厚さ方向に揺動可能とし、施錠部材の両側部に、ガイド突起をそれぞれ突出形成し、複数の溝カムをスライド部材と施錠部材の両側に設けるとともに、この複数の溝カムに、樹脂連結ピンの両端部と施錠部材の複数のガイド突起とをそれぞれスライド可能に嵌め入れたことを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
施錠機構は、スライド部材が略板形に形成されてその先端部には複数の筒部が並べて突出形成され、施錠部材に、スライド部材の複数の筒部を貫通する樹脂連結ピンが刺し通される請求項1記載の基板収納容器。
【請求項3】
施錠機構のスライド部材と施錠部材とに、ホルダ部材を嵌め合わせ、このホルダ部材の両側部に、溝カムをそれぞれ形成した請求項1又は2記載の基板収納容器。
【請求項4】
蓋体に、スライド部材と施錠部材を挟む複数のカム板を形成し、この複数のカム板に、溝カムをそれぞれ形成した請求項1又は2記載の基板収納容器。
【請求項5】
施錠機構の施錠部材の先端部を二股に分岐して略溝形とし、この施錠部材の分岐された先端部の間に、容器本体の開口部内周に接触する押さえローラを樹脂支持ピンを介し回転可能に架設した請求項1、2、又は3記載の基板収納容器。
【請求項6】
樹脂連結ピンと樹脂支持ピンの少なくともいずれかを、周面に縮径部を有する段付きピンに形成した請求項5記載の基板収納容器。
【請求項7】
施錠機構の溝カムは、スライド部材寄りに位置する第一溝カムと、この第一溝カムの先端部に接続されて蓋体の表面側から蓋体の裏面方向に傾斜しながら伸びる第二溝カムと、この第二溝カムの先端部に接続されて蓋体の表面側に傾斜する第三溝カムとを含み、
施錠機構による蓋体の施錠前には、第一溝カムに施錠部材のガイド突起が位置し、第二溝カムと第三溝カムの接続部付近に樹脂連結ピンが位置し、
施錠機構による蓋体の施錠時には、第一溝カムと第二溝カムの接続部付近に施錠部材のガイド突起が位置し、第三溝カムに樹脂連結ピンが位置し、
施錠機構による蓋体の施錠後には、第二溝カムに施錠部材のガイド突起が位置するとともに、第三溝カムの先端部に樹脂連結ピンが位置する請求項1ないし6のいずれかに記載の基板収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体工場で半導体ウェーハの搬送や保管等に使用される基板収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体工場ではφ300mmの半導体ウェーハの搬送や保管にFOUP(Front Opening Unified Pod)と呼ばれる基板収納容器が使用されるが、この基板収納容器は、複数枚の半導体ウェーハを収納する容器本体の開口した正面に嵌合される蓋体と、容器本体の正面に嵌合された蓋体を施錠する施錠機構とを備え、蓋体に施錠機構が設置されており、この施錠機構がSEMI規格で規格化されている蓋体開閉機に操作される。
【0003】
蓋体は、容器本体の開口した正面に着脱自在に嵌合される略箱形に形成され、周縁部には、施錠機構用の複数の出没口が穿孔されている。また、施錠機構は、蓋体に支持されて蓋体開閉機の外部からのキー操作で回転する左右一対の操作リールと、各操作リールの回転により上下方向に進退動する複数対の連結バーと、各連結バーの進出に連動し、蓋体周縁部の出没口から突出して容器本体の正面内周の施錠穴に係止可能な複数の施錠爪とを備えて構成されている(特許文献1、2、3参照)。
【0004】
各施錠爪は、湾曲した略L字形に屈曲形成されてその屈曲部付近の裏面が連結バーの先端部に金属ピンを介し揺動可能に軸支され、先端部に、容器本体の正面内周の施錠穴内に摺接する押さえローラが金属ピンを介し回転可能に軸支されており、末端部には、金属ピンが支持されるとともに、この金属ピンが蓋体の出没口付近に支持されている。これら複数の金属ピンは、例えばφ1.0mmのSUSピン等が用いられ、連結バーの先端部の孔、施錠爪の屈曲部の孔、先端部の孔、末端部の孔に強く圧入されたり、あるいは片持ち梁方式で挿通される。
【0005】
上記において、容器本体の開口した正面に蓋体を嵌合して施錠する場合には、容器本体の開口した正面に蓋体を蓋体開閉機が嵌合し、この蓋体開閉機の操作キーが施錠機構の各操作リールを所定の角度で回転操作する。すると、操作リールの回転に伴い、複数対の連結バーが蓋体の周縁部方向に進出し、この連結バーの進出に伴い、施錠爪が蓋体内から出没口を貫通して蓋体外部に突出するとともに、この突出した施錠爪が容器本体の施錠穴に係止し、この施錠爪の係止により、容器本体の正面に嵌合した蓋体が圧入され、かつ施錠される。
【0006】
これに対し、容器本体の正面から蓋体を解錠して取り外す場合には、蓋体開閉機の操作キーが施錠機構の各操作リールを元の基準位置に回転操作する。すると、操作リールの回転復帰に伴い、進出していた複数対の連結バーが蓋体の元の基準位置に後退復帰し、この連結バーの後退復帰に伴い、突出していた施錠爪が容器本体の施錠穴から出没口を貫通して蓋体内部に復帰し、この施錠爪の復帰により、容器本体の正面に嵌合した蓋体が取り外し可能となり、容器本体の正面から蓋体が蓋体開閉機により引き抜いて取り外される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-368074号公報
【文献】特開2005‐306411号公報
【文献】特開2006-303015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来における基板収納容器は、以上のように構成され、複数の金属ピンが圧入されたり、片持ち梁方式で挿通されるが、収納する半導体ウェーハに対する様々な悪影響を払拭する観点からすると、可能な限り、金属ピンの代わりに樹脂製のピンを使用することが望ましい。しかしながら、金属ピンを単に樹脂製のピンに変更するだけでは、樹脂製のピンと孔の内周面とが摩耗したり、樹脂製のピンが偏芯して破損等するおそれがある。
【0009】
また、従来における基板収納容器は、容器本体の施錠穴に施錠機構の施錠爪が係止されることにより、容器本体の正面に嵌合した蓋体が圧入されるが、容器本体の正面に蓋体を嵌合した後、容器本体内の規定の位置まで蓋体を精度良く引き込んで圧入することができれば、容器本体と蓋体間の遮断効果を高め、パーティクルの侵入をより有効に防止することが可能となる。
【0010】
本発明は上記に鑑みなされたもので、樹脂製のピンを使用しても摩耗、偏芯による破損等を防ぐことができ、しかも、容器本体内に蓋体を引き込んで圧入することにより、容器本体と蓋体間の遮断効果を高めることのできる基板収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明においては上記課題を解決するため、基板を収納する容器本体の開口部に嵌め合わされる蓋体と、容器本体の開口部に嵌め合わされた蓋体を施錠する施錠機構とを備えたものであって、
施錠機構は、蓋体に支持されて外部からの操作により回転する操作部材と、この操作部材の回転によりスライドするスライド部材と、このスライド部材のスライドにより蓋体の周縁部から突出可能な施錠部材と、この施錠部材を揺動(揺れ動く)させて容器本体の開口部内周に係止(係り合って止める)させる複数の溝カムとを含み、
スライド部材の先端部と施錠部材とに樹脂連結ピンを刺し通して施錠部材を蓋体の厚さ方向に揺動可能とし、施錠部材の両側部に、ガイド突起をそれぞれ突出形成し、複数の溝カムをスライド部材と施錠部材の両側に設けるとともに、この複数の溝カムに、樹脂連結ピンの両端部と施錠部材の複数のガイド突起とをそれぞれスライド可能に嵌め入れたことを特徴としている。
【0012】
なお、容器本体は、複数枚の半導体ウェーハを整列収納可能なフロントオープンボックスに形成されてその開口した正面の内周部には施錠機構の施錠部材用の施錠穴が設けられ、
蓋体は、容器本体の開口した正面に着脱自在に嵌め合わされる略箱形の蓋本体と、この蓋本体の開口した表面を被覆して外部に露出する表面プレートとを含み、これら蓋本体と表面プレートとの間に、施錠機構が介在され、蓋本体の周縁部には、施錠機構の施錠部材に貫通される出没口が設けられると良い。
【0013】
また、施錠機構は、スライド部材が略板形に形成されてその先端部には複数の筒部が並べて突出形成され、施錠部材に、スライド部材の複数の筒部を貫通する樹脂連結ピンが刺し通されると良い。
また、施錠機構のスライド部材と施錠部材とに、ホルダ部材を嵌め合わせ、このホルダ部材の両側部に、溝カムをそれぞれ形成することができる。
【0014】
また、蓋体に、スライド部材と施錠部材を挟む複数のカム板を形成し、この複数のカム板に、溝カムをそれぞれ形成することができる。
また、施錠機構の施錠部材の先端部を二股に分岐して略溝形とし、この施錠部材の分岐された先端部の間に、容器本体の開口部内周に接触する押さえローラを樹脂支持ピンを介し回転可能に架設することが可能である。
また、樹脂連結ピンと樹脂支持ピンの少なくともいずれかを、周面に縮径部を有する段付きピンに形成することが可能である。
【0015】
また、施錠機構の溝カムは、スライド部材寄りに位置する第一溝カムと、この第一溝カムの先端部に接続されて蓋体の表面側から蓋体の裏面方向に傾斜しながら伸びる第二溝カムと、この第二溝カムの先端部に接続されて蓋体の表面側に傾斜する第三溝カムとを含み、
施錠機構による蓋体の施錠前には、第一溝カムに施錠部材のガイド突起が位置し、第二溝カムと第三溝カムの接続部付近に樹脂連結ピンが位置し、
施錠機構による蓋体の施錠時には、第一溝カムと第二溝カムの接続部付近に施錠部材のガイド突起が位置し、第三溝カムに樹脂連結ピンが位置し、
施錠機構による蓋体の施錠後には、第二溝カムに施錠部材のガイド突起が位置するとともに、第三溝カムの先端部に樹脂連結ピンが位置すると良い。
【0016】
また、第一溝カムと第二溝カムの接続部付近に、施錠機構の施錠時における施錠部材のガイド突起が位置し、第一溝カムに、施錠機構の施錠前における施錠部材のガイド突起が位置し、第二溝カムと第三溝カムの接続部付近に、施錠機構の施錠前における樹脂連結ピンの端部が位置するとともに、第二溝カムに、施錠機構の施錠時又は施錠後における施錠部材のガイド突起が位置し、第三溝カムの中間部付近には、施錠機構の施錠時における樹脂連結ピンの端部が位置し、第三溝カムの先端部には、施錠機構の施錠後における樹脂連結ピンの端部が位置すると良い。
【0017】
ここで、特許請求の範囲における基板には、少なくともφ300mmやφ450mmの半導体ウェーハ、ガラス基板、マスク基板等が含まれる。また、容器本体や蓋体は、透明、不透明、半透明のいずれでも良い。容器本体は、フロントオープンボックスが主ではあるが、トップオープンボックスやボトムオープンボックスでも良い。また、施錠機構の溝カムは、少なくとも長い第二溝カムと短い第三溝カムとが略へ字形を区画形成すると良い。さらに、段付きピンの縮径部は、段付きピンの周面の少なくとも一部に必要数形成することが可能である。
【0018】
本発明によれば、金属ピンではなく、樹脂連結ピンを使用するので、金属イオンの発生源を低減することができる。また、本発明によれば、容器本体の開口部に蓋体を嵌め合わせて施錠機構の操作部材を回転操作すると、スライド部材が蓋体の周縁部方向にスライドし、このスライド部材のスライドにより、施錠部材が溝カムに案内されながら蓋体内部から蓋体外部に突出する。この際、施錠部材は、溝カムの一部に案内されながら蓋体の裏面側に揺動することにより、蓋体裏面側に傾斜して蓋体外部に突出し、その後、溝カムの残部に案内されながら蓋体の裏面側から表面側に揺動し、容器本体の正面内周に係止する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、樹脂製のピンを使用しても摩耗、偏芯による破損等を防ぐことができるという効果がある。また、複数の溝カムに、樹脂連結ピンの両端部と施錠部材の複数のガイド突起とをそれぞれスライド可能に嵌め入れるので、容器本体内に蓋体を引き込んで圧入することができ、容器本体と蓋体間の遮断効果を高めることができるという効果がある。
【0020】
請求項2記載の発明によれば、施錠部材に、スライド部材の複数の筒部を貫通する樹脂連結ピンを刺し通せば、スライド部材の先端部に施錠部材を揺動可能に支持させることができ、しかも、例えスライド部材が繰り返しスライドしても、施錠部材が破損したりするのを有効に防止することができる。
請求項3記載の発明によれば、施錠機構のスライド部材と施錠部材とに、ホルダ部材を嵌め合わせ、このホルダ部材の両側部に、溝カムをそれぞれ形成すれば、新規の蓋体の他、既存の蓋体にも施錠機構を設置することができる。
【0021】
請求項4記載の発明によれば、蓋体に、スライド部材と施錠部材を挟む複数のカム板を形成し、この複数のカム板に、溝カムをそれぞれ形成すれば、施錠機構のスライド部材と施錠部材とに別体のホルダ部材を用意して嵌め合わせる手間を省くことができる。
請求項5記載の発明によれば、施錠部材の分岐された先端部の間に、容器本体の開口部内周に接触する押さえローラを樹脂支持ピンを介し回転可能に架設すれば、容器本体の開口部内周に施錠部材が強く接触して擦れ、発塵するのを防止することが可能となる。
【0022】
請求項6記載の発明によれば、樹脂連結ピンを段付きピンに形成すれば、樹脂連結ピンの周面に凹凸を形成することができるので、スライド部材や施錠部材が位置ずれしたり、分離して脱落するのを防止することが可能になる。同様に、樹脂支持ピンを段付きピンに形成すれば、樹脂支持ピンの周面に凹凸を形成することができるので、施錠部材の先端部から押さえローラが外れて脱落するのを防止することが可能になる。
【0023】
請求項7記載の発明によれば、樹脂連結ピンと施錠部材のガイド突起とが嵌め入れられた溝カムの第一溝カム、第二溝カム、及び第三溝カムにより、施錠部材の先端部を一旦蓋体の裏面側後方に傾斜させてから蓋体の表面側前方に再び傾斜させ、容器本体の正面内周に係止するという可動距離の大きい二段階に亘る揺動を実現することができる。したがって、容器本体内に嵌め合わされた蓋体を規定の位置まで精度良く引き込んで圧入することができ、容器本体と蓋体間の遮断効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る基板収納容器の実施形態を示す全体斜視図である。
【
図2】本発明に係る基板収納容器の実施形態における蓋体と施錠機構を示す斜視図である。
【
図3】本発明に係る基板収納容器の実施形態における連結バー、ホルダ、及び樹脂連結ピンの関係を模式的に示す分解斜視図である。
【
図4】本発明に係る基板収納容器の実施形態における組み立てられた連結バー、施錠爪、及びホルダの関係を模式的に示す要部斜視図である。
【
図5】本発明に係る基板収納容器の実施形態における連結バー、施錠爪、及びホルダの関係を模式的に示す裏面斜視図である。
【
図6】本発明に係る基板収納容器の実施形態における連結バー、施錠爪、及びホルダの関係を模式的に示す正面説明図である。
【
図7】本発明に係る基板収納容器の実施形態における樹脂連結ピンと施錠爪の関係を模式的に示す斜視図である。
【
図8】本発明に係る基板収納容器の実施形態における樹脂支持ピンを示す説明図である。
【
図9】本発明に係る基板収納容器の実施形態における施錠爪を模式的に示す分解斜視図である。
【
図10】本発明に係る基板収納容器の実施形態におけるホルダを模式的に示す斜視図である。
【
図11】本発明に係る基板収納容器の実施形態における施錠機構の施錠前の状態を示す要部断面説明図である。
【
図12】
図11に示す施錠機構の施錠爪が僅かに突出した施錠時の状態を示す要部断面説明図である。
【
図13】
図12に示す施錠機構の突出した施錠爪が揺動して容器本体の施錠穴に嵌合係止した施錠後の状態を示す要部断面説明図である。
【
図14】本発明に係る基板収納容器の第2の実施形態における容器本体正面の一部、蓋体、及び施錠機構を示す全体斜視図である。
【
図15】本発明に係る基板収納容器の第2の実施形態における施錠機構を示す要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、
図1ないし
図13に示すように、複数枚の基板である半導体ウェーハを収納する容器本体1の開口した正面に着脱自在に嵌合される蓋体10と、容器本体1の正面に嵌合された蓋体10を施錠する施錠機構20とを備えたFOUPであり、施錠機構20を、蓋体開閉機の操作で回転する一対の操作リール21と、各操作リール21の回転でスライドする複数対の連結バー24と、各連結バー24のスライドで蓋体10の周縁部から突出する複数の施錠爪29と、各施錠爪29を揺動させて容器本体1の正面内周に係止させる複数のホルダ37とから構成することにより、国連サミットで採択されたSDGs(国連の持続可能な開発のための国際目標であり、17のグローバル目標と169のターゲット(達成基準)からなる持続可能な開発目標)の目標9の達成に貢献する。
【0026】
半導体ウェーハは、図示しないが、例えばφ300mmの薄く脆い高品質のシリコンウェーハからなり、表面に回路パターンが形成されており、容器本体1の内部に収納され、かつ上下方向に25枚が所定の間隔で整列する。
【0027】
容器本体1と蓋体10は、所要の樹脂を含有する成形材料により、複数の部品がそれぞれ射出成形され、この複数の部品の組み合わせで構成される。この成形材料に含有される樹脂としては、例えばポリカーボネート(PC)樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)樹脂、シクロオレフィンコポリマー(COC)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリエーテルケトン(PEK)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、液晶ポリマーといった熱可塑性樹脂やこれらのアロイ等があげられる。
【0028】
これらの樹脂には、カーボン繊維、カーボンパウダー、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー等からなる導電物質やアニオン、カチオン、非イオン系等の各種帯電防止剤が必要に応じて添加される。また、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系、シアノアクリレート系、オキザリックアシッドアニリド系、ヒンダードアミン系の紫外線吸収剤が添加されたり、剛性を向上させるガラス繊維や炭素繊維等も選択的に添加される。
【0029】
容器本体1は、
図1、
図11ないし
図13に示すように、正面の開口したフロントオープンボックスに射出成形され、内部の両側壁に、半導体ウェーハを水平に支持する左右一対の支持片が対設されるとともに、この左右一対の支持片が上下方向に所定の間隔をおいて配列されており、各支持片が前後方向に伸びる細長い板に形成される。この容器本体1の正面は、容器本体1の周壁から段差部を介し幅方向外側に屈曲して張り出し形成され、段差部の平坦な肩面が蓋体10用のシール形成面2を区画する。容器本体1の正面内周の上部両側と下部両側とには、施錠用の施錠穴3がそれぞれ凹み形成され、各施錠穴3が略矩形に形成される。
【0030】
蓋体10は、
図1、
図2、
図11ないし
図13に示すように、容器本体1の開口した正面に着脱自在に嵌合される正面略矩形の蓋本体11と、この横長の蓋本体11の一部凹んだ表面を被覆して外部に露出する表面プレート15とを備えた既存のタイプであり、蓋本体11の表面両側と表面プレート15との間に施錠機構20が介在して設置される。
【0031】
蓋本体11は、例えば底の浅い断面略箱形(断面略トレイ形でもある)に形成され、周壁の上部両側と下部両側とに、容器本体1の施錠穴3に対向する施錠機構20用の出没口12がそれぞれ貫通して穿孔されており、容器本体1の背面壁に対向する裏面の中央部には、半導体ウェーハの周縁前部を弾性片で水平に保持する縦長のフロントリテーナが装着される。蓋本体11の裏面の周縁部には、枠形の嵌合溝13が周設され、この嵌合溝13に、容器本体1のシール形成面2に圧接する弾性のシールガスケット14が嵌入される。
【0032】
表面プレート15は、例えば横長の透明又は不透明の板に形成され、中央部両側付近に施錠機構20用の操作口16が貫通して穿孔されており、この操作口16をSEMI規格で規格化されている蓋体開閉機のT字形の操作キーが貫通し、この操作キーが所定の回転角度で回転することにより、施錠機構20が操作されて施錠動作あるいは解錠動作する。
【0033】
施錠機構20は、
図1ないし
図13に示すように、蓋体10に支持されて蓋体開閉機の外部からのキー操作で回転する左右一対の操作リール21と、各操作リール21の回転により上下方向に進退動する複数対の連結バー24と、各連結バー24の進出に連動し、蓋体10周縁部の出没口12から突出して容器本体1の正面内周の施錠穴3に係止可能な複数の施錠爪29と、各連結バー24と施錠爪29とに嵌合される溝カム41付きの複数のホルダ37とを備えて構成される。
【0034】
施錠機構20の操作リール21、連結バー24、施錠爪29、ホルダ37は、所要の樹脂を含有する成形材料により射出成形される。この成形材料の所定の樹脂としては、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリエーテルサルフォン(PES)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂やこれらのアロイ等があげられる。
【0035】
操作リール21は、
図1や
図2に示すように、円板のリール本体の中心部にリール蓋体が回転軸受を介して装着された略凸字形の円板に形成され、蓋本体11の表面両側の中央部付近にそれぞれ回転可能に支持される。この操作リール21の表面プレート15方向に突出したリール蓋体からなる中心部22は、表面プレート15の操作口16に対向し、この操作口16を貫通した蓋体開閉機の操作キーに嵌挿されて操作リール21が所定の回転角度で自動的に回転操作される。操作リール21の周縁部付近には、一対の湾曲溝23が180°の間隔をおいて穿孔され、各湾曲溝23が半円弧形に形成されており、この湾曲溝23に連結バー24の末端部が連結される。
【0036】
複数対の連結バー24は、
図1ないし
図3、
図5、
図11ないし
図13に示すように、蓋本体11の表面両側にスライド可能に配置され、一対の連結バー24が操作リール21の上下方向に位置する。各連結バー24は、上下方向に指向するガイド長孔付きの細長い略板形に形成され、先端部に一対の筒部25が並べて突出形成されて各筒部25が円筒形に形成されており、一対の筒部25に、施錠爪29を貫通する樹脂連結ピン26が挿通される。
【0037】
樹脂連結ピン26は、
図3ないし
図5、
図7等に示すように、従来の金属ピンとは異なり、例えば施錠機構20と同様の成形材料によりφ3mmあるいはφ4mmの段付きピンに形成され、先端部と中央部間の周面、及び中央部と末端部間の周面に、縮径部27がそれぞれ形成されて位置ずれや脱落を防止するよう機能する。
【0038】
各連結バー24の裏面末端部には、円筒形のラッチボス28が一体形成され、このラッチボス28が操作リール21の湾曲溝23にスライド可能に遊嵌される。このようなラッチボス28の遊嵌により、連結バー24は、操作リール21の回転に伴い、蓋本体11のガイドに案内されつつ上下方向に進退動する。
【0039】
各施錠爪29は、
図4ないし
図9、
図11ないし
図13に示すように、末端部が切り欠かれた略溝形ブロックに形成され、連結バー24の先端部に連結されて蓋体10の厚さ方向(前後方向)に揺動可能とされる。この施錠爪29は、剛性向上の観点から、従来タイプよりも狭い幅に形成され、両側部の中央付近間には、連結バー24の一対の筒部25を貫通する樹脂連結ピン26が軸架されており、この樹脂連結ピン26の両端部がそれぞれ露出する。
【0040】
施錠爪29の両側部の末端には、樹脂連結ピン26の端部と平行のガイドボス30がそれぞれ一体形成され、各ガイドボス30が円柱形に形成される。また、施錠爪29の中央部付近には、一対の筒部25間における樹脂連結ピン26の周面に摺接可能な位置決めガイド31が突出形成される。
【0041】
なお、施錠爪29の樹脂連結ピン26に貫通される孔の内周面には、樹脂連結ピン26の縮径部27に密接する拡径部が形成され、これら縮径部27と拡径部の密接により、樹脂連結ピン26の位置ずれが防止されることが好ましい。
【0042】
施錠爪29の先端部32は二股に分岐して略溝形に凹み形成され、この施錠爪29の分岐された先端部32の間には、容器本体1の施錠穴3内に摺接する円筒形の押さえローラ33が樹脂支持ピン34を介して軸架される。
【0043】
樹脂支持ピン34は、
図4、
図5、
図7ないし
図9に示すように、従来の金属ピンとは異なり、例えば施錠機構20と同様の成形材料により樹脂製の押さえローラ33を貫通するφ3mmあるいはφ4mmの段付きピンに形成され、先端部と中央部間の周面に、縮径部35が形成されており、末端部の周面には、施錠爪29の先端部32側面に接触する拡径のフランジ36が突出形成されて位置ずれや脱落を防止する。この樹脂支持ピン34は、応力分散の観点から、施錠爪29の先端部32に固定されて自由回転可能な押さえローラ33を貫通するが、押さえローラ33に挿着されて施錠爪29の先端部32に回転可能に軸支されても良い。
【0044】
なお、施錠爪29の先端部32の樹脂支持ピン34に貫通される孔の内周面には、樹脂支持ピン34の縮径部35に密接する拡径部が形成され、これら縮径部35と拡径部の密接により、樹脂支持ピン34の位置ずれが防止されることが好ましい。
【0045】
ホルダ37は、
図1ないし
図6、
図10に示すように、連結バー24の表面と施錠爪29の末端部側とに対向する正面矩形の対向被覆板38と、この対向被覆板38の両側部に配設されて連結バー24と施錠爪29の末端部側とを左右から挟持する左右一対の側板39と、この一対の側板39の間に架設されて連結バー24の裏面側に位置する脱落防止バー40とを備え、連結バー24の先端部側と施錠爪29とに嵌合される。
【0046】
ホルダ37の一対の側板39は、対向被覆板38よりも背の高い縦長に形成される。この一対の側板39には、連結バー24と施錠爪29の両側に位置する溝カム41がそれぞれ切り欠かれ、この一対の溝カム41が連結バー24から施錠爪29方向にそれぞれ伸長されており、一対の溝カム41に、樹脂連結ピン26の両端部と施錠爪29の一対のガイドボス30とがそれぞれスライド可能に嵌入される。
【0047】
各溝カム41は、
図3ないし
図5、
図10等に示すように、側板39の長手方向に伸びて連結バー24寄りに位置する第一溝カム42と、この第一溝カム42の先端部に連接されてホルダ37の対向被覆板38側(蓋体10の表面側)から脱落防止バー40方向(蓋体10の裏面方向)に傾斜しながら伸びる長い第二溝カム43と、この第二溝カム43の先端部に連接されてホルダ37の対向被覆板38側に僅かに傾斜する第三溝カム44とを備えて一体形成される。
【0048】
第一溝カム42は、直立あるいはホルダ37の対向被覆板38側に僅かに傾斜して切り欠かれる。この第一溝カム42と第二溝カム43の連接部付近には、施錠機構20の施錠時(施錠途中)における施錠爪29のガイドボス30が位置する(
図12参照)。第一溝カム42には、施錠機構20の施錠前における施錠爪29のガイドボス30が位置する(
図11参照)。
【0049】
第二溝カム43と第三溝カム44の連接部付近には、施錠機構20の施錠前における樹脂連結ピン26の端部が位置する(
図11参照)。第二溝カム43には、施錠機構20の施錠時や施錠後における施錠爪29のガイドボス30が位置する(
図12、
図13参照)。また、第三溝カム44は、第二溝カム43よりも短く形成され、中間部付近には、施錠機構20の施錠時における樹脂連結ピン26の端部が位置する(
図12参照)とともに、先端部には、施錠機構20の施錠後における樹脂連結ピン26の端部が位置する(
図13参照)。
【0050】
すなわち、施錠機構20による蓋体10の施錠前には、第一溝カム42に施錠爪29のガイドボス30が位置し、第二溝カム43と第三溝カム44の連接部付近に樹脂連結ピン26の端部が位置する。また、施錠機構20による蓋体10の施錠時には、第一溝カム42と第二溝カム43の連接部付近に施錠爪29のガイドボス30が位置し、第三溝カム44の中間部付近に樹脂連結ピン26の端部が位置する。施錠機構20による蓋体10の施錠後には、第二溝カム43に施錠爪29のガイドボス30が位置するとともに、第三溝カム44の先端部に樹脂連結ピン26の端部が位置する。
【0051】
このような第一溝カム42、第二溝カム43、及び第三溝カム44に樹脂連結ピン26と施錠爪29のガイドボス30が案内されることにより、施錠爪29の先端部32は、蓋体10の蓋本体11裏面側に揺動してから表面プレート15方向に揺動する。換言すれば、施錠爪29の先端部32は、蓋体10の後方に一旦揺動した後、蓋体10の後方から前方に再度揺動することとなる。
【0052】
上記構成において、容器本体1の開口した正面に蓋体10を嵌合して施錠する場合には、容器本体1の開口した正面に蓋体10を蓋体開閉機が嵌合し、この蓋体開閉機の操作キーが施錠機構20の各操作リール21を90°の角度で一方向に回転操作する。すると、操作リール21の回転により、複数対の連結バー24が基準位置から蓋本体11の周縁部方向に進出し、この連結バー24の進出により、施錠爪29が蓋本体11内から出没口12を貫通して蓋体10外部に揺動しながら突出する。
【0053】
この際、施錠爪29の先端部32は、基準位置(
図11参照)からホルダ37の一対の溝カム41に案内されながら蓋体10外部に突出する。すなわち、施錠爪29の先端部32は、第一溝カム42、第二溝カム43、及び第三溝カム44の一部に案内されつつ蓋体10の蓋本体11裏面側に揺動することにより、蓋本体11裏面側に傾斜しながら蓋体10外部に僅かに突出(
図12参照)し、その後、第二溝カム43、及び第三溝カム44の残部である先端部付近に案内されつつ蓋本体11裏面側から表面プレート15方向に揺動し、容器本体1の施錠穴3に嵌合係止する(
図13参照)。このような施錠爪29の嵌合係止により、容器本体1の正面に嵌合した蓋体10が規定の位置まで精度良く引き込まれて圧入され、かつ施錠される。
【0054】
これに対し、容器本体1の正面から蓋体10を解錠して取り外す場合には、蓋体開閉機の操作キーが施錠機構20の各操作リール21を元の基準位置に90°回転操作する。すると、操作リール21の回転復帰で進出していた複数対の連結バー24が蓋体10の元の基準位置に後退復帰し、この連結バー24の後退復帰で突出していた施錠爪29が容器本体1の施錠穴3から出没口12を貫通して蓋体10内部に復帰し、この施錠爪29の復帰により、容器本体1の正面に嵌合した蓋体10が取り外し可能となり、容器本体1の正面から蓋体10が蓋体開閉機により引き抜いて取り外される。
【0055】
この際、施錠爪29の先端部32は、ホルダ37の一対の溝カム41の第三溝カム44、第二溝カム43、及び第一溝カム42に順次案内されながら基準位置に後退復帰する。すなわち、施錠爪29の先端部32は、容器本体1の施錠穴3から蓋体10の蓋本体11裏面側に揺動し、その後、蓋本体11裏面側から蓋体10内部に揺動しながら後退復帰する。
【0056】
上記構成によれば、金属ピンの代わりに樹脂連結ピン26や樹脂支持ピン34を使用するので、金属イオンの発生することがなく、半導体ウェーハに対する様々な悪影響を払拭することができる。また、樹脂連結ピン26や樹脂支持ピン34を片持ち梁方式で用いるのではなく、施錠爪29の両側部間に樹脂連結ピン26の両端部付近を軸架するとともに、施錠爪29の分岐された先端部32間に樹脂支持ピン34の両端部付近を軸架するので、これら樹脂製のピンと孔の内周面とが摩耗するのを低減することができる。加えて、これら樹脂製のピンが傾斜したり、偏芯して破損等するおそれがない。
【0057】
また、樹脂連結ピン26や樹脂支持ピン34を耐摩耗性等に優れるポリエーテルエーテルケトン樹脂やポリカーボネート樹脂等で成形すれば、摩耗に伴う発塵を大幅に抑制することが可能になる。また、ホルダ37の一対の溝カム41により、施錠爪29の先端部32を一旦蓋体10の後方に揺動させてから蓋体10の前方に再び揺動させ、容器本体1の施錠穴3に嵌合係止するという可動距離の大きい複雑な二段階に亘る揺動が期待できる。したがって、例え容器本体1よりも蓋体10が前方に位置して蓋体開閉機による押し込みが困難な状態であろうと、容器本体1内に嵌合した蓋体10を規定の位置まで精度良く大きく引き込んで圧入することができ、容器本体1と蓋体10間の遮断効果を高め、パーティクルの侵入をより有効に防止することが可能となる。
【0058】
また、ホルダ37の一対の側板39に溝カム41をそれぞれ形成するので、このホルダ37を使用すれば、施錠爪29の二段に亘る複雑な揺動運動が期待できる。したがって、新たな構成の蓋体10を開発したり、製造する必要がなく、既存の蓋体10をそのまま使用することが可能になる。また、施錠爪29が従来の施錠爪よりも幅狭なので、施錠爪29の強度向上が大いに期待できる。
【0059】
また、樹脂支持ピン34の末端部周面に識別機能を発揮するフランジを周設するので、施錠爪29に押さえローラ33を取り付ける作業時に樹脂支持ピン34の取付方向を誤ることがない。さらに、容器本体1の施錠穴3内に摩擦低減に資する押さえローラ33が回転可能に摺接するので、パーティクルの発生を有効に抑制することができる。
【0060】
次に、
図14、
図15は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、蓋本体11の表面両側に、連結バー24と施錠爪29とを挟持する左右一対のカム板50をそれぞれ複数形成し、この複数のカム板50に、溝カム41をそれぞれ形成するようにしている。
【0061】
各カム板50は、蓋本体11の上下方向に伸びる縦長に形成される。また、各溝カム41は、カム板50の長手方向に伸びて連結バー24寄りに位置する第一溝カム42と、この第一溝カム42の先端部に連接されて蓋本体11の表面側(蓋体10の表面側)から蓋本体11の裏面方向(蓋体10の裏面方向)に傾斜しながら伸びる長い第二溝カム43と、この第二溝カム43の先端部に連接されて蓋本体11の表面側に僅かに傾斜する短い第三溝カム44とを備えて一体形成される。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0062】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、蓋本体11の表面両側に複数対のカム板50を形成するので、専用品であるホルダ37の省略を図ることができるのは明らかである。
【0063】
なお、上記実施形態における連結バー24のラッチボス28に、耐摩耗性に優れる円筒形のローラを回転可能に嵌入し、このローラを操作リール21の湾曲溝23にスライド可能に遊嵌して発塵を防止するようにしても良い。また、施錠爪29の両側部中央付近間に樹脂連結ピン26を固定するのではなく、回転可能に軸架しても良い。また、特に支障を来さなければ、樹脂連結ピン26と樹脂支持ピン34の少なくともいずれかをストレートピン等に成形しても良い。また、樹脂連結ピン26の先端部32と中央部間の周面の一部に、縮径部27を部分的に形成しても良い。
【0064】
また、必要に応じ、樹脂連結ピン26の末端部周面に識別機能を有するフランジを周設して作業性を向上させることができる。また、樹脂支持ピン34の先端部と中央部間の周面の一部に、縮径部35を部分的に形成することができる。また、施錠爪29を溝無しのブロック形に形成してその末端部に連結バー24の筒部25に隣接する連結筒部を形成し、これら複数の筒部25と連結筒部に樹脂連結ピン26を挿通することもできる。さらに、上記実施形態では施錠爪29の先端部32を二股に分岐して略溝形に形成したが、特に問題が発生しないのであれば、施錠爪29の先端部32を二股に分岐せずに押さえローラ33を省略しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係る基板収納容器は、電気、電子、液晶、精密機器、半導体等の製造分野で使用される。
【符号の説明】
【0066】
1 容器本体
3 施錠穴
10 蓋体
11 蓋本体
12 出没口
15 表面プレート
16 操作口
20 施錠機構
21 操作リール(操作部材)
24 連結バー(スライド部材)
25 筒部
26 樹脂連結ピン
27 縮径部
29 施錠爪(施錠部材)
30 ガイドボス(ガイド突起)
32 先端部
33 押さえローラ
34 樹脂支持ピン
35 縮径部
36 フランジ
37 ホルダ
38 対向被覆板
39 側板
41 溝カム
42 第一溝カム
43 第二溝カム
44 第三溝カム
50 カム板