(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G09G 3/36 20060101AFI20250214BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20250214BHJP
G02F 1/133 20060101ALI20250214BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20250214BHJP
G02F 1/1347 20060101ALI20250214BHJP
G09F 9/46 20060101ALI20250214BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20250214BHJP
G09G 3/34 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
G09G3/36
G02F1/13 505
G02F1/133 505
G02F1/1333
G02F1/1347
G09F9/46 A
G09G3/20 641Q
G09G3/20 680H
G09G3/20 691G
G09G3/34 J
(21)【出願番号】P 2021166387
(22)【出願日】2021-10-08
【審査請求日】2024-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 勉
(72)【発明者】
【氏名】石原 朋幸
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-158959(JP,A)
【文献】国際公開第2019/225137(WO,A1)
【文献】特開2007-286413(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0304381(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00-3/38
G02F 1/13-1/141
G09F 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1パネルと、
前記第1パネルの一面側で前記第1パネルと対向するよう配置された第2パネルと、
前記第1パネルの他面側から光を照射する光源と、
前記第2パネルの一面側で前記第2パネル側を向いたユーザの目の位置及び前記ユーザの頭の位置の少なくとも一方を示す情報を含むユーザ情報を取得する取得部と、
を備え、
前記第1パネルは、複数の調光用画素を備え、
前記第2パネルは、複数の画素を備え、
入力される画像信号に応じて光を透過するよう制御される前記画素の周囲に位置する前記調光用画素が光を透過するようになるぼかし処理が適用され、
前記第1パネルにおいて前記ぼかし処理が適用される前記調光用画素を含む範囲であるぼかし範囲は、前記ユーザの目の位置又は前記ユーザの頭の位置に対応
し、
前記ユーザの目の位置及び前記ユーザの頭の位置が取得できない場合、前記ぼかし範囲は、予め定められた所定範囲とされ、
前記所定範囲は、前記ユーザの目の位置又は前記ユーザの頭の位置に対応するぼかし範囲よりも大きい、
表示装置。
【請求項2】
前記ぼかし範囲は、前記ユーザの目の位置及び前記ユーザの顔における所定位置の少なくとも一方と前記光を透過するよう制御される画素とを結ぶ直線と、前記第2パネルの板面に直交する直線と、が形成する角度にさらに対応する、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記ユーザ情報は、前記第2パネルと、前記ユーザの目又は前記ユーザの顔と、の距離を示す情報を含み、
前記ぼかし範囲は、前記距離を示す情報にさらに対応する、
請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記ぼかし範囲は、前記第2パネルと、前記ユーザの目又は前記ユーザの顔と、の距離を固定の距離として導出される、
請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記取得部は、前記第2パネルの一面側を撮像する撮像素子を含む、
請求項1から
4のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記第1パネルの出力に反映される信号は、前記画像信号に対して予め定められたガンマ値に応じたガンマ補正を行った信号である、
請求項1から
5のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記第2パネルの出力に反映される信号は、前記画像信号に対して前記第2パネルのガンマ値に応じたガンマ補正を行った信号である、
請求項1から
6のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記第1パネルはモノクロの液晶パネルである、
請求項1から
7のいずれか一項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルと光源との間に調光パネルを設けて画像のコントラストをより高める構成が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
調光パネルが光を透過させる範囲を液晶表示パネルで光を透過するように制御された画素の範囲よりも広くすることで、斜め視点等、ユーザが画像を視認する位置に関わらず、良好な画質で画像を視認させることができる。一方、単に調光パネルが光を透過させる範囲を広げるだけでは、画像のコントラストをより高める効果を十全に発揮することが困難になる。そこで、ユーザが画像を視認する位置へのより多様な対応と、画像のコントラストをより高める効果と、の両立を実現するための仕組みが求められていた。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたもので、ユーザが画像を視認する位置へのより多様な対応と、画像のコントラストをより高める効果と、を両立できる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による表示装置は、第1パネルと、前記第1パネルの一面側で前記第1パネルと対向するよう配置された第2パネルと、前記第1パネルの他面側から光を照射する光源と、前記第2パネルの一面側で前記第2パネル側を向いたユーザの目の位置及び前記ユーザの頭の位置の少なくとも一方を示す情報を含むユーザ情報を取得する取得部と、を備え、前記第1パネルは、複数の調光用画素を備え、前記第2パネルは、複数の画素を備え、入力される画像信号に応じて光を透過するよう制御される前記画素の周囲に位置する前記調光用画素が光を透過するようになるぼかし処理が適用され、前記第1パネルにおいて前記ぼかし処理が適用される前記調光用画素を含む範囲であるぼかし範囲は、前記ユーザの目の位置又は前記ユーザの頭の位置に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態1の表示装置の主要構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、表示パネル、調光パネル、光源装置の位置関係を示す図である。
【
図3】
図3は、画像表示パネルの画素配列の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、画像表示パネルの概略断面構造の一例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、二重像と画像の欠けの発生原理及び例を示す図である。
【
図6】
図6は、最高階調で光を透過させるよう制御される画素と光軸を共有する調光用画素からの距離と、ぼかし処理によって光を透過するよう制御される度合いと、の関係の一例を示すグラフである。
【
図7】
図7は、表示装置に対する入力信号による表示出力内容の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、
図7に示す表示出力内容に基づいてぼかし処理が適用された調光パネルによる光の透過範囲を示す図である。
【
図9】
図9は、信号処理部の機能構成例を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、表示パネルに対するユーザの目の位置が不明な場合に必要なぼかし範囲を示す模式図である。
【
図11】
図11は、表示パネルに対するユーザの目の位置が明確な場合に必要なぼかし範囲を示す模式図である。
【
図12】
図12は、表示パネルに対するユーザの目の位置が明確な場合に必要なぼかし範囲を示す模式図である。
【
図13】
図13は、X方向に最大移動可能範囲Dmaxの範囲内でユーザの目が移動し得ることを想定した場合にユーザの視線が形成し得る最大角度を示す図である。
【
図14】
図14は、表示領域に対してX方向に斜め方向の位置にユーザの顔がある場合の表示領域に対する基準軸角度の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、
図14に示す位置にユーザの顔がある場合の表示領域のX方向の他端に対する一方の目からの視線とZ軸との角度と当該他端に対する他方の目からの視線とZ軸との角度とを示す図である。
【
図16】
図16は、表示領域に対するユーザの顔及び目のY方向の位置に基づいたぼかし範囲の導出の考え方を示す図である。
【
図17】
図17は、表示パネルと撮像部との配置例を示す模式図である。
【
図18】
図18は、撮像部による画像の撮像範囲で撮像されたユーザの顔の認識処理の仕組みを示す模式図である。
【
図19】
図19は、表示パネルに対するユーザの目の位置に対応して導出されたぼかし範囲の一例を示す模式図である。
【
図20】
図20は、ぼかし範囲を適用して表示出力を行うための処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図21】
図21は、
図1に示す構成に加えて、さらに測距部を設けるようにした表示装置1を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本開示の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本開示の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
(実施形態1)
図1は、実施形態1の表示装置1の主要構成例を示す図である。実施形態1の表示装置1は、信号処理部10、表示部20、光源装置50、光源制御回路60、調光部70及び撮像部90を備える。信号処理部10は、外部の制御装置2から入力される入力信号IPに基づいた各種の出力を行い、表示部20、光源装置50及び調光部70の動作を制御する。入力信号IPは、表示装置1に画像を表示出力させるためのデータとして機能する信号であり、例えばRGB画像信号である。入力信号IPは、表示パネル30の解像度に対応する。すなわち、入力信号IPは、後述する表示パネル30の画素48の数ならびにX方向及びY方向の配置に対応した画素信号を含む。信号処理部10は、入力信号IPに基づいて生成された出力画像信号OPを表示部20に出力する。また、信号処理部10は、入力信号IPに基づいて生成された調光用信号DIを調光部70に出力する。また、信号処理部10は、入力信号IPが入力されると、光源装置50の点灯を制御するための光源駆動信号BLを光源制御回路60に出力する。光源制御回路60は、例えば光源装置50のドライバ回路であり、光源駆動信号BLに応じて光源装置50を動作させる。光源装置50は、発光領域LAから光を発する光源を有する。実施形態1では、光源制御回路60は、フレーム画像の表示タイミングに応じて光源装置50の発光領域LAから一定光量の光が照射されるよう光源装置50を動作させるものとする。
【0010】
表示部20は、表示パネル30及び表示パネル駆動部40を有する。表示パネル30は、複数の画素48が設けられた表示領域OAを有する。複数の画素48は、例えばマトリクス状に配置されている。実施形態1の表示パネル30は、液晶画像表示パネルである。表示パネル駆動部40は、信号出力回路41及び走査回路42を有する。信号出力回路41は、いわゆるソースドライバとして機能する回路であり、出力画像信号OPに応じて複数の画素48を駆動する。走査回路42は、いわゆるゲートドライバとして機能する回路であり、マトリクス状に配置された複数の画素48を所定行(例えば、1行)単位で走査する駆動信号を出力する。画素48は、駆動信号が出力されたタイミングで出力画像信号OPに応じた階調値の出力が行われるよう駆動される。
【0011】
調光部70は、光源装置50から照射されて表示領域OAを経て出力される光量を調節する。調光部70は、調光パネル80及び調光パネル駆動部140を有する。調光パネル80は、光の透過率を変更可能に設けられた調光領域DAを有する。調光領域DAは、平面視点で表示領域OAに重畳する位置に配置されている。調光領域DAは、平面視点で表示領域OA全体をカバーする。発光領域LAは、平面視点で表示領域OA全体及び調光領域DA全体をカバーする。なお、平面視点とは、X-Y平面を正面視する視点である。
【0012】
図2は、表示パネル30、調光パネル80、光源装置50の位置関係を示す図である。実施形態1では、
図2に例示するように、表示パネル30、調光パネル80、光源装置50が積層されている。具体的には、光源装置50から光が出力される照射面側に調光パネル80が積層されている。また、調光パネル80を挟んで光源装置50の反対側に表示パネル30が積層されている。光源装置50から照射された光は、調光パネル80の調光領域DAで光量を調節されて表示パネル30を照明する。表示パネル30は、光源装置50が位置する背面側から照明されて、その反対側(表示面側)に画像を表示出力する。このように、光源装置50は、表示パネル30の表示領域OAを背面から照明するバックライトとして機能する。また、実施形態1では、調光パネル80は、表示パネル30と光源装置50との間に設けられている。以下、表示パネル30、調光パネル80、光源装置50が積層される方向をZ方向とする。また、Z方向に直交する2方向をX方向及びY方向とする。X方向とY方向は直交する。複数の画素48は、X方向とY方向に沿ってマトリクス状に並ぶ。具体的には、X方向に並ぶ画素48の数がhであり、Y方向に並ぶ画素48の数がvである。h及びvは、2以上の自然数である。
【0013】
なお、調光パネル80の背面側には第1偏光板(Polarizer)P1が設けられている。調光パネル80の表示面側には第2偏光板P2が設けられている。また、表示パネル30の背面側には第3偏光板P3が設けられている。表示パネル30の表示面側には第4偏光板P4が設けられている。また、第2偏光板P2と第3偏光板P3との間には、拡散層P5が設けられている。第1偏光板P1、第2偏光板P2、第3偏光板P3、第4偏光板P4はそれぞれ、特定の方向の偏光を通過させ、他の方向の偏光を通過させない。第1偏光板P1が通過させる偏光の偏向方向と、第2偏光板P2が通過させる偏光の偏向方向と、は直交する。第2偏光板P2が通過させる偏光の偏向方向と、第3偏光板P3が通過させる偏光の偏向方向と、は同じである。第3偏光板P3が通過させる偏光の偏向方向と、第4偏光板P4が通過させる偏光の偏向方向と、は直交する。拡散層P5は、入射する光を拡散して出射させる。なお、第2偏光板P2、第3偏光板P3の偏光の偏向方向は同じであるため、どちらかを削除する構成でもよい。透過率の向上が期待できる。第2偏光板P2と第3偏光板P3の両方を設けた場合、片方の場合に比してコントラストの向上を図れる。また、第2偏光板P2と第3偏光板P3のどちらかを省略する場合は、拡散層P5で拡散された光の偏向方向を第3偏光板P3で限定することによるコントラスト向上の効果を見込める観点から、第2偏光板P2の方を省略する方が望ましい。
【0014】
図3は、表示パネル30の画素配列の一例を示す図である。
図3に例示するように、画素48は、例えば、第1副画素49Rと、第2副画素49Gと、第3副画素49Bとを有する。第1副画素49Rは、第1原色(例えば、赤色)を表示する。第2副画素49Gは、第2原色(例えば、緑色)を表示する。第3副画素49Bは、第3原色(例えば、青色)を表示する。このように、表示パネル30に行列状に配列された画素48は、第1の色を表示する第1副画素49R、第2の色を表示する第2副画素49G及び第3の色を表示する第3副画素49Bを含む。第1の色、第2の色及び第3の色は、第1原色、第2原色及び第3原色に限られず、補色など色が異なっていればよい。以下の説明において、第1副画素49R、第2副画素49Gと、第3副画素49Bとをそれぞれ区別する必要がない場合、副画素49という。
【0015】
画素48は、第1副画素49R、第2副画素49Gと、第3副画素49Bに加えて、さらに副画素49を有していてもよい。例えば、画素48は、第4の色を表示する第4副画素を有していてもよい。第4副画素は、第4の色(例えば、白色)を表示する。第4副画素は、同じ光源点灯量で照射された場合、第1の色を表示する第1副画素49R、第2の色を表示する第2副画素49G、第3の色を表示する第3副画素49Bよりも明るいことが好ましい。
【0016】
表示装置1は、より具体的には、透過型のカラー液晶表示装置である。
図3に例示するように、表示パネル30は、カラー液晶表示パネルであり、第1副画素49Rと画像観察者との間に第1原色を通過させる第1カラーフィルタが配置され、第2副画素49Gと画像観察者との間に第2原色を通過させる第2カラーフィルタが配置され、第3副画素49Bと画像観察者との間に第3原色を通過させる第3カラーフィルタが配置されている。第1カラーフィルタ、第2カラーフィルタ及び第3カラーフィルタは、後述するフィルタ膜26に含まれる構成である。
【0017】
なお、第4副画素が設けられる場合、第4副画素と画像観察者との間にカラーフィルタが配置されていない。この場合には、第4副画素に大きな段差が生じることとなる。このため、第4副画素には、カラーフィルタの代わりに透明な樹脂層が備えられていてもよい。これにより、第4副画素に大きな段差が生じることを抑制することができる。
【0018】
信号出力回路41は、信号線DTLによって表示パネル30と電気的に接続されている。表示パネル駆動部40は、走査回路42によって、表示パネル30における副画素49を選択し、副画素49の動作(光透過率)を制御するためのスイッチング素子(例えば、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor))のオン(ON)及びオフ(OFF)を制御する。走査回路42は、走査線SCLによって表示パネル30と電気的に接続されている。
【0019】
実施形態1では、複数の信号線DTLは、X方向に並ぶ。各信号線DTLは、Y方向に延出する。複数の走査線SCLは、Y方向に並ぶ。各走査線SCLは、X方向に延出する。従って、実施形態1では、走査回路42から出力される駆動信号に応じて、走査線SCLを共有するようにX方向に並ぶ複数の画素48を含む画素列(ライン)単位で画素48が駆動される。以下、単にラインと記載した場合、走査線SCLを共有するようにX方向に並ぶ複数の画素48を含む画素列をさす。
【0020】
各走査線SCLの延出方向に沿う方向を水平走査方向とする。また、複数の走査線SCLの並び方向を垂直走査方向と記載する。実施形態1では、X方向が水平走査方向に該当し、Y方向が垂直走査方向に該当する。
【0021】
図4は、表示パネル30の概略断面構造の一例を示す断面図である。アレイ基板30aは、ガラス基板等の画素基板21の上方に設けられたフィルタ膜26と、フィルタ膜26の上方に設けられた対向電極23と、対向電極23の上に接して設けられた絶縁膜24と、絶縁膜24の上の画素電極22と、アレイ基板30aの最上面側に設けられた第1配向膜28とを有する。対向基板30bは、ガラス基板等の対向画素基板31と、対向画素基板31の下面に設けられた第2配向膜38と、上面に設けられた偏光板35とを含む。アレイ基板30aと対向基板30bとはシール部29を介して固定されている。アレイ基板30a、対向基板30b、及びシール部29によって囲まれた空間には、液晶層LC1が封止されている。液晶層LC1は、印加される電界に応じて配向方向が変化する液晶分子を含む。液晶層LC1は、電界の状態に応じて液晶層LC1内部を透過する光を変調するものである。液晶層LC1の液晶分子の方向が、画素電極22と対向電極23との間で印加される電界によって変化し、表示パネル30を透過する光の透過量が変化する。複数の副画素49はそれぞれ、画素電極22を有する。複数の副画素49の動作(光透過率)を個別に制御するための複数のスイッチング素子は、画素電極22と電気的に接続されている。
【0022】
調光部70は、調光パネル80と調光パネル駆動部140とを備える。実施形態1の調光パネル80は、フィルタ膜26が省略されることを除いて、
図4に示す表示パネル30と同様の構成である。従って、調光パネル80は、カラーフィルタの色によって区別された第1副画素49Rと第2副画素49Gと第3副画素49Bとを含む画素48(
図3参照)と異なり、カラーフィルタが設けられていない調光用画素148を備える(
図1参照)。すなわち、調光パネル80は、モノクロの液晶パネルである。
【0023】
調光パネル駆動部140が備える信号出力回路141及び走査回路142は、接続される対象が調光パネル80であることを除いて、表示パネル駆動部40と同様の構成である。
図1に示す調光パネル80と調光パネル駆動部140との間の信号線ADTLは、
図3を参照して説明した信号線DTLと同様の構成である。
図1に示す調光パネル80と調光パネル駆動部140との間の走査線ASCLは、
図3を参照して説明した走査線SCLと同様の構成である。ただし、調光パネル80で1つの調光用画素148として制御される範囲の大きさは、平面視点で複数の画素48を含む。実施形態1の説明では、1つの調光用画素148として制御されるX方向の幅が、X方向に並ぶ3つの画素48の幅に対応する。また、1つの調光用画素148として制御されるY方向の幅が、Y方向に並ぶ3つの画素48の幅に対応する。従って、1つの調光用画素148として制御される範囲には、3×3=9の画素48が配置されている。なお、ここで例示した1つの調光用画素148として制御される範囲における画素48の数はあくまで一例であってこれに限られるものでなく、適宜変更可能である。例えば、1つの調光用画素148として制御される範囲に、2×2=4の画素48が配置されていてもよい。
【0024】
調光パネル80では、1つの調光用画素148として制御される範囲に、1つの画素電極22が設けられていてもよいし、複数の画素電極22が設けられていてもよい。1つの調光用画素148として制御される範囲に複数の画素電極22が設けられている場合、当該複数の画素電極22は同電位となるよう制御される。これによって、当該複数の画素電極22が実質的に1つの画素電極22と同様にふるまうようにすることができる。
【0025】
実施形態1では、表示領域OAにおける複数の画素48の配置と調光領域DAにおける複数の調光用画素148の配置とは同じである。従って、実施形態1では、表示領域OAのX方向に並ぶ画素48の数と、調光領域DAのX方向に並ぶ画素148の数と、は同じである。また、実施形態1では、表示領域OAのY方向に並ぶ画素48の数と、調光領域DAのY方向に並ぶ調光用画素148の数と、は同じである。また、実施形態1では、表示領域OAと調光領域DAとがX-Y平面視点で重なる。また、Z方向は、光源装置50の発光領域LAから照射される光の光軸LLに対応する。従って、複数の画素48のうち1つと、X-Y平面視点で当該画素48と重なる位置にある1つの調光用画素148とは、光軸LLを共有する。ただし、発光領域LAから照射される光は放射状に拡散するインコヒーレント光である。従って、光軸LLに沿わない方向の光線も調光用画素148及び画素48に進入することがある。
【0026】
光源装置50から発せられた光は、第1偏光板P1を経て調光パネル80に進入する。調光パネル80に進入した光のうち調光用画素148を透過した光は、第2偏光板P2、拡散層P5及び第3偏光板P3を経て表示パネル30に進入する。表示パネル30に進入した光のうち画素48を透過した光は、第4偏光板P4を経て出力される。このようにして出力された光に基づいて、表示装置1のユーザは、表示装置1から出力される画像を視認する。
【0027】
仮に、表示装置1の板面(X-Y平面)に対して正面から画像を見る場合に限定して考えるならば、表示パネル30で画像の表示のために光を透過させるよう制御される画素48と光軸LLを共有する調光用画素148が光を透過するよう制御されれば、表示装置1のユーザは、表示装置1が出力する画像を問題なく視認できると考えられる。この場合、表示パネル30で光を透過しないよう制御される画素48と光軸LLを共有する調光用画素148は、光を透過しないよう制御される。一方、表示装置1のユーザは、必ずしも表示装置1の板面(X-Y平面)に対して正面から画像を視認するわけでない。上述の表示装置1の板面(X-Y平面)に対して正面から画像を見る場合と同様の画素48及び調光用画素148の制御が行われた場合、当該板面及びZ方向に交差する角度(斜視的角度)から表示装置1の第4偏光板P4側を視認するユーザは、二重像や画像の欠けを視認することがある。
【0028】
図5は、二重像と画像の欠けの発生原理及び例を示す図である。
図5では「パネル模式図」で表示装置1の概略段目図を示している。当該概略断面図では、光を透過するよう液晶の配向が制御された画素48及び調光用画素148を白抜きの矩形で示している。また、当該概略断面図では、光を透過しないよう液晶の配向が制御された複数の画素48の集合を遮光部48Dとしてドットパターンの矩形で示している。また、当該概略断面図では、光を透過しないよう液晶の配向が制御された複数の調光用画素148の集合を遮光部148Dとしてドットパターンの矩形で示している。
【0029】
調光用画素148を透過して調光用画素148と画素48との間の積層構造物(第2偏光板P2、拡散層P5、第3偏光板P3)を通って画素48を透過した光は、表示パネル30の出射面側から図示しない第4偏光板P4(
図2参照)を通って出射する際に、当該積層構造物と出射面側の空気との屈折率差による屈折を生じる。
図5では、当該屈折を、当該積層構造物の屈折率n
2と当該空気の屈折率n
1と、の差による表示装置1内での光の進行角度θ
2と表示装置1の出射面外での光の出射角度θ
1との差によって示している。
【0030】
より具体的には、以下の式(1)が成立する。また、画素48と調光用画素148とのZ方向のインターバルをdとすると、以下の式(2)が成立する。式(2)におけるpは、画素48のX方向の幅である。mは、表示装置1内での光の進行角度θ2によって生じる調光用画素148側での光の出射点と画素48側での光の入射点とのX方向の位置ずれを画素48の数で換算した場合の画素48の数を示す数値である。なお、空気の屈折率(n1)は1.0であり、積層構造物(第2偏光板P2、拡散層P5、第3偏光板P3)の屈折率(n2)は1.0とは異なる値である。そして、式(1)及び式(2)に基づき、式(3)が成立する。従って、式(3)に基づき、n1,n2,θ1から、光軸LLを中心とし、θ1に対応したぼかし範囲mpを算出できる。ぼかし範囲mpに含まれる調光用画素148は、光を透過するよう制御される。なお、dは、例えば、画素48のZ方向の中間位置と、調光用画素148のZ方向の中間位置と、のインターバルである。画素48のZ方向の中間位置は、表示パネル30のZ方向の中間位置である。調光用画素148のZ方向の中間位置は、調光パネル80のZ方向の中間位置である。また、dは、表示パネル30と調光パネル80との間の液晶層LC1の距離としてとらえることもできる。
n1sinθ1=n2sinθ2…(1)
dtanθ2=mp…(2)
mp=dtan{sin-1(n1sinθ1/n2)}…(3)
【0031】
「二重像」の「パネル模式図」で示すように、上述の屈折により、遮光部48Dによって光を遮られないと仮定すると、調光用画素148を透過した光L1は光V1として出射することになる。実際には、遮光部48Dによって光を遮られるため、光V1は出射しない。また、調光用画素148を透過した光L2は、光V2として出射する。また、遮光部148Dによって光を遮られないと仮定すると、破線で示した光の進行軸L3を透過する光は、光V3として出射する。
【0032】
ここで、「二重像」の「パネル模式図」の状態である表示装置1の出射面を正面視すると、遮光部48Dを挟んでX方向の両側が点灯しているはずである。すなわち、正面視点から見た非発光(黒)領域は1つである。一方、X-Y平面及びX方向に対して出射角度Θ
1を生じる斜視的角度から表示装置1の出射面を視認した場合、光V2を挟んで、実際には生じない光L1,L3の光軸が存在する。すなわち、光V2を挟んでX方向に並ぶ2つの非発光(黒)領域が生じる。このように、正面視点から見た場合に1つの非発光(黒)領域で形成される像が、斜視的角度では2つの非発光(黒)領域で形成される二重像として視認されることがある。
図5では、このような二重像の発生例を、「二重像」の「斜め視点からの視認例」で例示している。
【0033】
また、「画像の欠け」の「パネル模式図」で示すように、遮光部148Dによって光を遮られないと仮定すると、光L4は光V4として出射することになる。実際には、遮光部148Dによって光を遮られるため、光V4は出射しない。また、遮光部148Dによって光を遮られないと仮定すると、光L5は光V5として出射することになる。実際には、遮光部148Dによって光を遮られるため、光V5は出射しない。仮に、遮光部148Dによって光を遮られなかったとしても、遮光部48Dによって光を遮られるため、光V5は出射しない。また、遮光部48Dによって光を遮られないと仮定すると、調光用画素148を透過した光L6は光V6として出射することになる。実際には、遮光部48Dによって光を遮られるため、光V6は出射しない。
【0034】
ここで、「画像の欠け」の「パネル模式図」の状態では、光が透過可能な画素48をX方向に挟むように遮光部48Dが生じていることから、正面視点では、非発光(黒)領域に挟まれた1つの発光領域が視認されるはずである。一方、X-Y平面及びX方向に対して出射角度Θ
1を生じる斜視的角度から表示装置1の出射面を視認した場合、発光領域は視認されない。これは、上述したように、光V4,V5,V6はいずれも出射されないことによる。このように、正面視点から見た場合に1つの発光領域で形成される像が、斜視的角度では視認されないことがある。斜視的角度から表示装置1を視認した場合の画僧の欠けは、このような仕組みで生じる。
図5では、このような画像の欠けの発生例を、「画像の欠け」の「斜め視点からの視認例」で例示している。なお、
図5で模式的に示す調光用画素148は、画素48との位置の対応関係を分かりやすくする目的でX方向の幅を画素48と同じにしているが、実際には上述のように1つの調光用画素148の範囲内に複数の画素48が含まれる。
【0035】
そこで、実施形態1では、調光パネル80が光を透過させる範囲の制御において、ぼかし処理が適用されている。ぼかし処理とは、入力信号IPを忠実に反映した場合に生じる光の透過範囲に比してより広い範囲で調光パネル80が光を透過させるように調光用画素148を制御する処理をさす。従って、ぼかし処理が適用された調光パネル80で光が透過可能な範囲は、表示パネル30で光が透過可能な範囲よりも広い範囲になる。以下、ぼかし処理について、
図6を参照して説明する。
【0036】
図6は、最高階調で光を透過させるよう制御される画素48と光軸LLを共有する調光用画素148からの距離と、ぼかし処理によって光を透過するよう制御される度合いと、の関係の一例を示すグラフである。
図6のグラフでは、横軸が当該距離を示し、縦軸が光を透過する度合いを示す。なお、当該距離は、最高階調で光を透過させるよう制御される画素48と光軸LLを共有する調光用画素148が「0」の距離の位置にあるものとする。また、当該「0」の距離の調光用画素148に隣接する調光用画素148が、当該「0」の距離の調光用画素148に対して「1」の距離にあるものとする。また、当該「0」の距離の調光用画素148を基準として、間に介在する調光用画素148の数+1の距離に、他の調光用画素148がX方向又はY方向に並んでいるものとする。また、
図6では、光を透過する度合いの階調性が8ビット(256階調)である例を示しているが、これはあくまで一例であってこれに限られるものでなく、適宜変更可能である。
【0037】
図6で例示するように、実施形態1では、ぼかし処理によって、光を透過させるよう制御される画素48と光軸LLを共有する「0」の距離の調光用画素148だけでなく、距離が1から6の範囲内である調光用画素148は、光を透過させるよう制御される。また、「1」の距離の調光用画素148は、「0」の距離の調光用画素148と同等の度合いで光を透過させるよう制御される。また、距離が「2」以上の調光用画素148は、距離がより大きくなるほど光を透過させる度合いが低下するよう制御される。
【0038】
なお、ぼかし処理によって「0」の距離の調光用画素148からどの程度離れた範囲まで光を透過させるようにするかの具体的な設定は任意である。より具体的には、表示装置1に対する斜め視点が成立する角度(Θ1)としてどの程度の角度まで許容するか、上述のインターバルdの大きさ等の諸元に基づいてぼかし処理が適用される「0」の距離の調光用画素148からの範囲が設定される。後述するぼかし処理部演算部12による画素48の階調値に基づいた処理における、ある画素48を中心としたぼかし処理の対象になる範囲(所定範囲)についても、同様の考え方で所定範囲が設定される。
【0039】
図7は、表示装置1に対する入力信号IPによる表示出力内容の一例を示す図である。
図8は、
図7に示す表示出力内容に基づいてぼかし処理が適用された調光パネル80による光の透過範囲を示す図である。
図7及び
図8では、光が透過するよう制御される範囲を白抜きで示し、光が透過しないよう制御される範囲をドットパターンで示している。
図7と
図8との対比で示すように、ぼかし処理が適用された調光パネル80は、表示出力内容に比してより広い範囲で光が透過するよう調光用画素148が制御される。具体的には、
図7に示す表示出力内容で光が透過している範囲の縁取り線をより太くして光が透過する範囲をより外側に広げるように、調光用画素148が光を透過する度合いの制御が行われている。
【0040】
図9は、信号処理部10の機能構成例を示すブロック図である。信号処理部10は、第1ガンマ変換部11と、ぼかし処理演算部12と、第2ガンマ変換部13と、を備える。
【0041】
第1ガンマ変換部11は、入力値と出力値との間でガンマ補正が必要な場合にガンマ補正処理を行う。ここでいう入力値は、入力信号IPが示すフレーム画像に含まれる各画素のRGB階調値である。また、出力値は、表示パネル30に含まれる画素48が入力値に応じた電圧で制御された場合に表示領域OAを視認するユーザが認識する画素48の明るさである。実施形態では、各RGB階調値と各画素48との1対1の関係で見た場合に入力値に応じた画素48の制御によって適切な出力値が得られるものとし、特段の補正は行われない。ただし、表示パネル30のガンマ特性によっては、第1ガンマ変換部11によるガンマ補正処理が行われる。
【0042】
実施形態では、上述の第1ガンマ変換部11に関する説明のように、1つのフレーム画像に対応する入力信号IPがある位置の画素48に対して与える画素データが示すRGB階調値(入力値)と、当該入力信号IPに基づいた出力画像信号OPが当該画素48に対して与える画素データが示すRGB階調値(出力値)と、は同一である。従って、入力値をIcとし、出力値をg0(Ic)とすると、Ic=g0(Ic)が成り立つ。また、g0(Ic)は、RGB階調値、すなわち、(R,G,B)=(α,β,γ)の形式で表せる。ここで、α,β,γは、それぞれ階調値を示す情報のビット数に対応した数値である。例えば8ビットの場合、α,β,γは、それぞれ0から255の範囲内の値を取る。
【0043】
図9に示す第2ガンマ変換部13は、調光階調値に対してガンマ補正が必要な場合にガンマ補正処理を行う。実施形態では、第2ガンマ変換部13は、調光パネル80と表示パネル30がいずれも最低階調(0)の場合と、調光パネル80と表示パネル30がいずれも最高階調(8ビットならば255)の場合との間のガンマカーブが所望のガンマカーブ(例えば、ガンマ値=2.2に対応したガンマカーブ)となるようにガンマ補正処理を行う。ガンマ補正処理で用いられる係数をg1とすると、第2ガンマ変換部13によるガンマ補正処理後の調光階調値は、g1(Ic
max+A)と表せる。
【0044】
図9に示す第1ガンマ変換部11は、出力画像信号OPを表示パネル30に出力する。ここで、出力画像信号OPは、複数の画素48の各々に対する上述のg0(Ic)の集合である。表示パネル駆動部40の動作によって、各画素48がg0(Ic)に応じて駆動される。第2ガンマ変換部13は、調光用信号DIを調光パネル80に出力する。ここで、調光用信号DIは、複数の調光用画素148の各々に対する上述のg1(Ic
max+A)の集合である。調光パネル駆動部140の動作によって、各調光用画素148がg1(Ic
max+A)に応じて駆動される。すなわち、複数の調光用画素148の各々による光の透過の度合いが各々の調光階調値に対応するよう、調光パネル80が動作する。なお、実施形態では、1つの調光用画素148が有する複数の副画素49が全て当該1つの調光用画素148の調光階調値に対応した光の透過の度合いとなるよう駆動される。
【0045】
ぼかし処理演算部12は、上述のぼかし処理を行う。また、ぼかし処理演算部12は、ぼかし範囲を導出する。ぼかし範囲とは、ぼかし処理が適用される調光用画素148が含まれる範囲をさす。
【0046】
実施形態では、ぼかし処理演算部12は表示パネル30に対するユーザの目の位置に対応したぼかし範囲となるよう、ぼかし範囲を導出する。ほかし範囲の決定方法の説明に先立ち、表示パネル30に対するユーザの目の位置が不明な場合と、表示パネル30に対するユーザの目の位置が明確な場合との対比について、
図10から
図12を参照して説明する。なお、ユーザとは、表示装置1が出力する画像を視認するヒトをさす。
【0047】
図10は、表示パネル30に対するユーザの目の位置が不明な場合に必要なぼかし範囲を示す模式図である。表示パネル30に対するユーザの目の位置が不明な場合、ユーザがどこから表示パネル30に視線を向けてもぼかし処理が適用されるように予め決定されたぼかし範囲Daが調光パネル80に適用される。
【0048】
具体的には、ぼかし範囲Daは、例えば、表示パネル30の視野角に応じて予め決定される。
図10では、表示パネル30のパネル特性によるX方向の視野角θaが示されている。視野角θaを1/2にした角度が、式(3)におけるθ
1として代入される。また、式(3)におけn
2は、調光用画素148と画素48との間の積層構造物(第2偏光板P2、拡散層P5、第3偏光板P3)に応じた値として、事前の測定等によって予め特定されている。また、上述したように、n
1=1.0である。従って、光を透過するよう制御された画素48とZ方向に重なる調光用画素148を中心としたぼかし範囲のX方向の距離を、式(3)に基づいて算出されたmpとすることで、ぼかし範囲Daが導出される。なお、ぼかし範囲Daは、当該調光用画素148を中心に、X方向の一方にmpまで離れた範囲と、X方向の他方にmpまで離れた範囲とを含む。従って、ぼかし範囲Daは、視野角θaを1/2にした角度を式(3)におけるθ
1として代入して算出されたmpの2倍(=2mp)である。
【0049】
図11及び
図12は、表示パネル30に対するユーザの目の位置が明確な場合に必要なぼかし範囲を示す模式図である。表示パネル30に対するユーザの目の位置が明確な場合、光を透過するよう制御された画素48に対してユーザの両目が形成する角度に基づいて、ぼかし範囲が調光パネル80に適用される。
【0050】
図11では、光を透過するよう制御された画素48の正面にユーザの顔があることを想定している。従って、
図11に示す例では、当該画素48を中心として、ユーザの両目のうち一方の目Eaからの当該画素48への視線Fcと、他方の目Ebからの当該画素48への視線Fdと、が形成するX方向の角度θcを1/2にした角度が、式(3)におけるθ
1として代入される。従って、光を透過するよう制御された画素48とZ方向に重なる調光用画素148を中心としたぼかし範囲のX方向の距離を、式(3)に基づいて算出されたmpとすることで、ぼかし範囲Dcが導出される。なお、ぼかし範囲Dcは、ぼかし範囲Daと同様の考え方で、角度θcを1/2にした角度を式(3)におけるθ
1として代入して算出された算出されたmpの2倍(=2mp)である。
【0051】
ここで、
図10と
図11との対比で示すように、角度θcは、視野角θaに比して小さい。従って、ぼかし範囲Dcは、ぼかし範囲Daに比して小さい。
【0052】
なお、一方の目Eaは、ユーザにとっての右目であり、表示パネル30側から見て相対的に左側に位置する目である。また、他方の目Ebは、ユーザにとっての左であり、表示パネル30側から見て相対的に右側に位置する目である。
【0053】
図12では、光を透過するよう制御された画素48に対して斜め方向の位置にユーザの顔があることを想定している。この場合でも、当該画素48を中心として、ユーザの両目のうち一方の目Eaからの当該画素48への視線Feと、他方の目Ebからの当該画素48への視線Ffと、が形成するX方向の角度θeは、視野角θaに比して小さい。従って、当該視線Fe,Ffに応じて決定されたぼかし範囲Deは、ぼかし範囲Daに比して小さい。なお、光を透過するよう制御された画素48に対して斜め方向の位置にユーザの顔がある場合のぼかし範囲(例えば、
図12に示すぼかし範囲De)の具体的な算出方法については後述する。
【0054】
図10から
図12を参照して説明したように、表示パネル30に対するユーザの目の位置が明確な場合、表示パネル30に対するユーザの目の位置が不明な場合に比して、ぼかし範囲を小さくできる。
【0055】
【0056】
図13は、X方向に最大移動可能範囲Dmaxの範囲内でユーザの目が移動し得ることを想定した場合にユーザの視線が形成し得る最大角度θxmaxを示す図である。最大角度θxmaxは、視線Fjと、視線Fkと、が形成する角度である。視線Fjは、最大移動可能範囲DmaxのX方向の一端に一方の目Eaが位置する場合に当該一方の目Eaから表示領域OAのX方向の他端の画素48に向けられる視線である。視線Fkは、最大移動可能範囲DmaxのX方向の他端に他方の目Ebが位置する場合に当該他方の目Ebから表示領域OAのX方向の一端の画素48に向けられる視線である。
【0057】
最大角度θxmaxは、パネル幅PDと、最大移動可能範囲Dmaxと、距離Disとに基づいて、以下の式(4)で求められる。パネル幅PDは、表示領域OAのX方向の幅である。最大移動可能範囲Dmaxは、ユーザの目が移動し得るX方向の範囲長である。距離Disは、表示領域OAとユーザの目(一方の目Ea、他方の目Eb)とのZ方向の距離である。なお、最大角度θxmaxから上述の式(3)におけるθ1として代入する角度を求める場合、最大角度θxmaxを1/2すればよい。
θxmax=2×atan[{(Dmax/2)+(PD/2)}/Dis]…(4)
【0058】
図10を参照した説明では、表示パネル30の視野角θaをぼかし範囲が最大になる場合としていたが、
図13に示すように、ユーザの移動範囲が最大移動可能範囲Dmaxに限定されている想定であり、かつ、最大角度θxmaxが視野角θaより小さい場合は、最大角度θxmaxを1/2した値を上述の式(3)におけるθ
1として代入してぼかし範囲を算出すればよい。そして、算出されたぼかし範囲を、表示パネル30に対するユーザの目の位置が不明な場合のぼかし範囲として扱えばよい。
【0059】
図14は、表示領域OAに対してX方向に斜め方向の位置にユーザの顔がある場合の表示領域OAに対する基準軸角度θx1,θx2の一例を示す図である。
図14では、表示領域OAに対してX方向の一端側からユーザが表示領域OAを視認する場合を例としている。ここで、一方の目Eaと他方の目EbとのX方向の中間点を中間点CPとする。
図14に示すように、中間点CPと、表示領域OAのX方向の一端と、を結ぶ基準線Waは、Z方向に沿う軸線(Z軸)に対する角度が基準軸角度θx1である。また、中間点CPと、表示領域OAのX方向の他端と、を結ぶ基準線Wbは、Z方向に沿う軸線(Z軸)に対する角度が基準軸角度θx2である。表示領域OAに対してX方向に斜め方向の位置にユーザの顔がある場合、上述した光軸LLは、Z方向に沿わず、基準線Waや基準線Wbのように、視線が向かう画素48の位置に応じて、Z方向に対してそれぞれ異なる傾きを示す。
【0060】
図14で例示するように、このように、表示領域OAに対するユーザの顔の位置が一意に定まっていても、当該ユーザの顔における一点(例えば、中間点CP)と表示領域OAの各位置とを結ぶ直線とZ軸とが形成する角度は、表示領域OAの各位置で異なる。
【0061】
図15は、
図14に示す位置にユーザの顔がある場合の表示領域OAのX方向の他端に対する一方の目Eaからの視線Wb1とZ軸との角度θx21と当該他端に対する他方の目Ebからの視線Wb2とZ軸との角度θx22とを示す図である。
図14及び
図15に示すように、一方の目Eaと他方の目Ebとの間には、中間点CPを挟んでX方向に眼間距離Dhを隔てて位置する。このため、当該他端に対する一方の目Eaからの視線Wb1とZ軸との角度θx21と、当該他端に対する他方の目Ebからの視線Wb2とZ軸との角度θx22と、は異なる角度になる。
【0062】
角度θx21,θx22のような、目と当該目が視線を向ける表示領域OA上の一点とを結ぶ直線がZ軸との間でX方向に形成する角度をθxとすると、θxは、以下の式(5)のように表せる。式(5)におけるQは、目と表示領域OA上の当該一点とのX方向の距離である。
θx=atan[Q/Dis]…(5)
【0063】
一例として、距離Disが50cmであるとする。また、
図15に示す一方の目Eaとパネル幅PDの他端とのX方向の距離Qaが40cmであるとする。この場合、式(5)のQに距離Qaを代入することで、式(5)のθxとして角度θx21を算出できる。この場合の角度θx21は、約38.7°である。
【0064】
また、眼間距離Dhが7.2cmであるとすると、
図15に示す他方の目Ebとパネル幅PDの他端とのX方向の距離Qbが32.8cmである。従って、式(5)のQに距離Qbを代入することで、式(5)のθxとして角度θx22を算出できる。角度θx22は、約33.3°である。従って、角度θx21と角度θx22との角度の差である5.4°が、視線Wb1と視線Wb2との間の角度である。この角度が、上述の
図12における角度θeに該当する角度として導出できる。
【0065】
また、
図15における視線Wb1が
図12における視線Feに該当し、
図15における視線Wb2が
図12における視線Ffに該当するものとして扱える。従って、式(3)のθ
1に角度θx21を代入することで、式(3)におけるmpの値を
図12に示す幅De1を示す値として算出できる。また、式(3)のθ
1に角度θx22を代入することで、式(3)におけるmpの値を
図12に示す幅De2を示す値として算出できる。そして、幅De1から幅De2を差し引くことで、ぼかし範囲Deを算出できる。
【0066】
なお、幅De1は、光路Geの調光用画素148側の端部位置と、
図12に示す基準軸LZとのX方向の距離である。
図12に示す基準軸LZは、光を透過するよう制御された画素48のX方向の中心を通るZ軸である。光路Geは、調光用画素148側から画素48側に向かう光が画素48の外側で視線Feを光路とする光である場合に、当該光が調光用画素148と画素48との間で取る光路である。光路Gfは、調光用画素148側から画素48側に向かう光が画素48の外側で視線Ffを光路とする光である場合に、当該光が調光用画素148と画素48との間で取る光路である。視線Feと光路Geとの基準軸LZに対する角度差及び視線Ffと光路Gfとの基準軸LZに対する角度差は、上述の
図5を参照して説明した出射角度θ
1と進行角度θ
2との角度差に対応する。
【0067】
以上、
図15を参照して、表示領域OAの他端に対してX方向に斜め方向の位置にユーザの顔がある場合の、当該他端に位置する画素48に対応したぼかし範囲(
図5に示すぼかし範囲De)の導出方法について説明したが、表示領域OAの他端に限られず、他の位置の表示領域OAにおけるX方向の位置と一方の目Ea、他方の目Ebの各々とのX方向の距離(例えば、
図15に示す距離Qa,Qbに相当する距離)を上述の式(5)におけるQに代入することで、式(5)におけるQxとして、上述の式(3)におけるθ
1に代入するための角度を算出できる。
【0068】
なお、
図15を参照した説明では、Z軸に対して、表示領域OAの他端側から一端側に向かって開く方向の角度をプラスの角度として扱った説明を行っている。従って、逆の角度、すなわち、Z軸に対して、表示領域OAの一端側から他端側に向かって開く方向の角度をマイナスの角度として扱うようにすればよい。これによって、表示領域OAの一点に対する一方の目Eaからの視線がZ軸と形成する角度がプラスの角度であり、当該一点に対する他方の目Ebからの視線がZ軸と形成する角度がマイナスの角度である場合にも、
図12及び
図15を参照して説明した考え方を同様に適用できる。すなわち、この場合、上述の
図12における角度θeに該当する角度は、当該プラスの角度の絶対値と当該マイナスの角度の絶対値とを足し合わせた角度になる。また、この場合、
図12に示すぼかし範囲Deは、プラスの幅De1の絶対値と、マイナスの幅De2の絶対値と、を足し合わせた大きさになる。このようなプラス、マイナスの考え方をすることで、表示領域OAの一点に対してX方向に斜め方向の位置にユーザの顔があるときに限らず、
図11に示すように当該一点の正面にユーザの顔があるときについても、式(3)と式(5)との組み合わせに基づいたぼかし範囲の導出が可能である。すなわち、
図11に示すように当該一点の正面にユーザの顔があるときについても、視線FcとZ軸との角度をプラスの角度とし、視線FdとZ軸との角度をマイナスの角度とすることで、式(3)と式(5)との組み合わせに基づいたぼかし範囲の導出が可能である。
【0069】
以上、表示領域OAに対するユーザの顔及び目のX方向の位置に基づいたぼかし範囲について説明したが、表示領域OAに対するユーザの顔及び目のY方向の位置についても、基本的に同様の考え方を適用できる。ただし、一般的に、X方向に一方の目Eaと他方の目Ebが並んでいるとすると、一方の目Ea及び他方の目Ebは、Y方向については同じ位置にある。より具体的には、X方向が水平方向であるとすると、Y方向は鉛直方向であり、ヒトが立位又は着座しているとすると、一般的に一方の目Eaと他方の目Ebとは水平方向に並ぶことから、鉛直方向については一方の目Eaと他方の目Ebとは同じ位置にある。実施形態では、このような考え方に基づいて、表示領域OAに対するユーザの顔及び目のY方向の位置に基づいたぼかし範囲の導出が行われる。
【0070】
図16は、表示領域OAに対するユーザの顔及び目のY方向の位置に基づいたぼかし範囲の導出の考え方を示す図である。
図16に示す目Eは、上述の一方の目Ea及び他方の目Ebを包括する。目Eと、当該目Eが視線を向ける表示領域OA上の一点とを結ぶ直線がZ軸との間でY方向に形成する角度をθyとすると、θyは、以下の式(6)のように表せる。式(6)におけるTは、目と表示領域OA上の当該一点とのY方向の距離である。式(6)で算出されたθyを、上述の式(3)のθ
1に代入することで、式(3)におけるmpの値をY方向のぼかし範囲の中心位置として算出できる。
θy=atan[T/Dis]…(6)
【0071】
Y方向のぼかし範囲については、上述のθyの大きさに関わらず固定値としてもよいし、上述のθyの大きさに応じてY方向のぼかし範囲が予め個別に決定されているものとしてもよい。例えば、式(6)と式(3)との組み合わせで算出されたmpの値が示すY方向のぼかし範囲の中心位置に対応するY方向の位置でX方向に並ぶ調光用画素148をぼかし範囲の適用対象とするに留めてもよい。すなわち、Y方向のぼかし範囲の導出については、光を透過するよう制御される画素48に応じて当該画素48のためのぼかし範囲を形成するための調光用画素148のY方向の位置を導出するための情報として利用するに留め、Y方向について複数の調光用画素148を含む光の透過範囲を形成することを目的としないようにしてもよい。
【0072】
以上、表示領域OAの一点に対する目Eの角度が明らかになっていることを前提とした演算によるぼかし範囲の導出について説明した。実施形態は、表示領域OAの一点に対する目Eの角度を取得する手段を備える。具体的には、実施形態では、撮像部90によって表示領域OAに対するユーザの目の位置に関する情報を取得する。以下、撮像部90によって表示パネル30に対するユーザの目の位置に関する情報を取得する仕組みについて、
図17及び
図18を参照して説明する。
【0073】
図17は、表示パネル30と撮像部90との配置例を示す模式図である。撮像部90は、表示パネル30の対面方向に画角を向けて画像を撮像する。具体的には、撮像部90は、いわゆるデジタルカメラである。より具体的には、撮像部90は、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサのような撮像素子、当該撮像装置に光を集めるレンズ等を有する。撮像部90は、当該撮像素子を動作させて画像データを生成する。
図17に示すように、撮像部90は、表示パネル30に対してZ方向に対向する位置にいるユーザの顔を撮像可能となるようにレンズを向ける。
【0074】
なお、
図17で模式的に示すように、撮像部90は、表示パネル30の外側に位置する。すなわち、撮像部90を表示パネル30のX方向及びY方向の中心に位置させることは困難である。
図17では、撮像部90を表示パネル30のX方向中心に位置させることはできているが、Y方向中心に位置させることはできていない。従って、このような撮像部90と表示パネル30の位置のずれに応じた補正が行われることが望ましい。当該補正は、周知の方法によればよく、本開示で特筆するものでないので、詳細な説明を省略する。
【0075】
図18は、撮像部90による画像の撮像範囲91で撮像されたユーザの顔の認識処理の仕組みを示す模式図である。ぼかし処理演算部12は、パターンマッチング等の画像認識技術を利用して、撮像部90による画像の撮像範囲91内に含まれるユーザの顔画像92を識別する。また、ぼかし処理演算部12は、顔画像92内の右目画像93及び左目画像94を認識する。なお、ぼかし処理演算部12は、顔画像92、右目画像93及び左目画像94の各々の形状を縁取るように認識するのでなく、破線で示す顔画像エリア92a、右目エリア93a及び左目エリア94aのように、矩形状のエリア単位でユーザの顔、右目及び左目を認識してもよい。また、顔画像92の中心線上で中間点CPの位置を決め打ちし、当該中間点CPを基準として顔画像92(又は顔画像エリア92a)内で中間点CPを挟んでX方向に対向する位置に右目画像93と左目画像94(又は右目エリア93aと左目エリア94a)があるものとして扱う処理を行ってもよい。また、その場合、中間点CPからの右目画像93の中心と左目画像94の中心(又は右目エリア93aの中心と左目エリア94aの中心)の位置は、固定値(例えば、3.6cm)とされる。
【0076】
ぼかし処理演算部12は、撮像部90による撮像画像内で認識された右目画像93及び左目画像94(又は右目エリア93a及び左目エリア94a)の位置に基づいて、表示領域OA内に配置された表示パネル30の複数の画素48の各々に対する右目画像93及び左目画像94(又は右目エリア93a及び左目エリア94a)からの視線とZ軸とのX方向の角度(例えば、上述の角度θx21,θx22等)及びY方向の角度(例えば、上述のθy)を特定する。
【0077】
なお、上述の距離Qa、距離Qb及び距離Tのような、視線とZ軸とのX方向の角度及びY方向の角度を算出するための情報は、事前に測定された寸法データから導出可能に設けられている。すなわち、撮像範囲91内のどこに右目画像93及び左目画像94(又は右目エリア93a及び左目エリア94a)があるかによって、ぼかし処理演算部12は、複数の画素48の各々の位置と一方の目Ea(右目画像93)の位置、他方の目Eb(左目画像94)の位置とのX方向の距離(例えば、上述の距離Qa、距離Qb)及びY方向の距離(例えば、上述の距離T)を、当該寸法データに基づいて特定できる。当該寸法データは、ぼかし処理演算部12から読み出し可能な記憶領域(例えば、信号処理部10内のフラッシュメモリ等)に予め記憶されている。ぼかし処理演算部12は、撮像部90による撮像画像と、式(5)及び式(6)と当該寸法データとに基づいて、表示領域OA内に配置された表示パネル30の複数の画素48の各々に対する右目画像93及び左目画像94(又は右目エリア93a及び左目エリア94a)からの視線とZ軸とのX方向の角度(例えば、上述の角度θx21,θx22等)及びY方向の角度(例えば、上述のθy)を特定する。
【0078】
なお、実施形態では、距離Disは固定値であるものとする。具体的には、自動車内に設けられた表示装置1と、表示装置1と向き合える位置に設けられてユーザが着座可能な座席(シート)と、がある状態を想定し、当該座席に着座しているユーザと表示装置1との距離Disは固定値として扱って差し支えない場合等において、このような運用が可能である。
【0079】
上述の寸法データに代えて、撮像範囲91内のどこに右目画像93及び左目画像94(又は右目エリア93a及び左目エリア94a)があるかによって、画素48に対する右目画像93及び左目画像94(又は右目エリア93a及び左目エリア94a)からの視線とZ軸とのX方向の角度及びY方向の角度がそれぞれ何度になるのか、事前に測定された角度データに予め記録されていてもよい。当該角度データが採用される場合、当該角度データは、ぼかし処理演算部12から読み出し可能な記憶領域に予め記憶されている。ぼかし処理演算部12は、撮像部90が生成した撮像画像を取得し、右目画像93及び左目画像94(又は右目エリア93a及び左目エリア94a)の位置を識別し、当該角度データを参照して、複数の画素48の各々に対する右目画像93及び左目画像94(又は右目エリア93a及び左目エリア94a)からの視線とZ軸とのX方向の角度及びY方向の角度を特定する。
【0080】
なお、右目画像93及び左目画像94(又は右目エリア93a及び左目エリア94a)に代えて、顔画像92(又は顔画像エリア92a)及び中間点CPの位置が識別される場合、ぼかし処理演算部12は、中間点CPからX方向に固定値離れた2か所の一方を右目画像93の位置とし、他方を左目画像94の位置として扱う。それ以外の、複数の画素48の各々に対する右目画像93及び左目画像94(又は右目エリア93a及び左目エリア94a)視線とZ軸とのX方向の角度及びY方向の角度の特定方法については、上述と同様である。
【0081】
図19は、表示パネル30に対するユーザの目の位置に対応して導出されたぼかし範囲の一例を示す模式図である。複数の画素48の各々に対する右目画像93及び左目画像94(又は右目エリア93a及び左目エリア94a)視線とZ軸とのX方向の角度及びY方向の角度が特定されると、ぼかし処理演算部12は、上述の式(3)に基づいて、ぼかし範囲mpを算出できる。従って、複数の画素48の各々のうち入力信号IPに応じて光を透過するよう制御される画素48に照射される光を透過させる調光用画素148に適用されるぼかし範囲mpを個別に導出できる。
【0082】
図19では、表示パネル30の表示領域OA内におけるX方向の座標Xpと、Y方向の座標Yqと、の組み合わせによる座標(Xp,Yq)で特定される位置の画素48を照明する光を透過させる調光用画素148に適用されるぼかし範囲のX方向の幅XLと、Y方向の幅YLと、を模式的に示している。ぼかし処理演算部12は、複数の画素48の各々のうち入力信号IPに応じて光を透過するよう制御される画素48に照射される光を透過させる調光用画素148に適用されるぼかし範囲mpを個別に導出する。
【0083】
なお、ぼかし処理演算部12は、入力信号IPに基づいて複数の画素48の各々のうち入力信号IPに応じて光を透過するよう制御される画素48を特定し、特定された画素48に対する右目画像93及び左目画像94(又は右目エリア93a及び左目エリア94a)視線とZ軸とのX方向の角度及びY方向の角度を求め、特定された画素48に照射される光を透過させる調光用画素148に適用されるぼかし範囲mpを導出する方式を採用してもよい。以下、
図20を参照して説明する処理の流れでは、この方式が採用されているものとする。
【0084】
図20は、ぼかし範囲を適用して表示出力を行うための処理の流れの一例を示すフローチャートである。入力信号IPが入力されると(ステップS1)、ぼかし処理演算部12は、透過画素の特定を行う(ステップS2)。すなわち、ステップS2の処理において、ぼかし処理演算部12は、入力信号IPに基づいて複数の画素48の各々のうち入力信号IPに応じて光を透過するよう制御される画素48を特定する。以下、透過画素と記載した場合、入力信号IPに応じて光を透過するよう制御される画素48をさす。
【0085】
ぼかし処理演算部12は、視線情報の取得を行う(ステップS3)。具体的には、撮像部90による画像の撮像が行われる。ぼかし処理演算部12は、撮像部90による撮像画像内に含まれるユーザの右目画像93及び左目画像94(もしくは右目エリア93a及び左目エリア94a、又は、顔画像92もしくは顔画像エリア92a及び中間点CP)を識別する。
【0086】
ぼかし処理演算部12は、ステップS3の処理でユーザの右目画像93及び左目画像94(もしくは右目エリア93a及び左目エリア94a)、又は、顔画像92(もしくは顔画像エリア92a)及び中間点CP、が特定されたか判定する(ステップS4)。ここで、ステップS3の処理でユーザの右目画像93及び左目画像94(もしくは右目エリア93a及び左目エリア94a)、又は、顔画像92(もしくは顔画像エリア92a)及び中間点CP、が特定された場合(ステップS4;Yes)、ぼかし処理演算部12は、距離情報を取得する(ステップS5)。実施形態では、当該距離情報は、上述のように、固定値としての距離Disである。
【0087】
ぼかし処理演算部12は、ステップS2の処理で特定された透過画素のうちぼかし範囲mpがまだ導出されていない透過画素を1つ選択する(ステップS6)。ぼかし処理演算部12は、ステップS6の処理で選択された透過画素に対する一方の目Eaの視線角度(例えば、上述の角度θx21)及び左目の視線角度(例えば、上述の角度θx22)を導出する(ステップS7)。なお、ステップS7の処理では、Y方向の視線角度(例えば、上述のθy)も併せて導出される。
【0088】
ぼかし処理演算部12は、ステップS7の処理で導出された視線角度に対応したぼかし範囲の導出を行う(ステップS8)。ステップS7及びステップS8の処理では、上述した式(3)、式(5)及び式(6)ならびにぼかし処理演算部12から参照可能なデータ(寸法データ又は角度データ)等が利用される。
【0089】
ぼかし処理演算部12は、ステップS2の処理で特定された透過画素の全てに対するぼかし範囲の導出が完了したか判定する(ステップS9)。ぼかし範囲がまだ特定されていない透過画素がある場合(ステップS9;No)、ステップS6の処理に移行する。
【0090】
一方、全ての透過画素に対するぼかし範囲の導出が完了した場合(ステップS9;Yes)、ぼかし処理演算部12は、調光データを生成する(ステップS11)。調光データは、各透過画素に対するぼかし範囲を統合したデータである。すなわち、入力信号IPに応じた出力画像信号OPの入力によって表示パネル30が出力するフレーム画像データの描画時に、調光パネル80に対して調光データが適用されることで、当該フレーム画像データに対応したぼかし範囲が適用される。ぼかし処理演算部12は、表示パネル30に対する出力画像信号OPの出力及び調光パネル80に対する調光データの出力を行う(ステップS12)。
【0091】
なお、ステップS4において、ステップS3の処理でユーザの右目画像93及び左目画像94(もしくは右目エリア93a及び左目エリア94a)、又は、顔画像92(もしくは顔画像エリア92a)及び中間点CP、が特定できなかった場合(ステップS4;No)、ぼかし処理演算部12は、最大のぼかし範囲を全ての透過画素に適用する(ステップS10)。ここでいう最大のぼかし範囲とは、例えば上述の
図10を参照して説明したぼかし範囲又は上述の
図13を参照して説明したぼかし範囲である。ステップS10の処理が行わる場合とは、例えば撮像部90による撮像画像に何らかの理由でユーザの顔が映らなかった等、右目画像93及び左目画像94(もしくは右目エリア93a及び左目エリア94a)、又は、顔画像92(もしくは顔画像エリア92a)及び中間点CP、が特定できない理由が生じた場合である。
【0092】
以上、ステップS5における距離情報、すなわち、距離Disが固定値であることを前提とした説明を行ってきたが、距離Disを変更可能としてもよい。
【0093】
図21は、
図1に示す構成に加えて、さらに測距部95を設けるようにした表示装置1を示す図である。測距部95は、距離Disの情報を取得する。具体的には、測距部95は、ユーザの目E又は顔(例えば、ユーザの顔における中間点CPの位置)と表示パネル30との距離を測る距離計としての機能を有する構成である。測距部95が有する距離計としての機能の実現方法は、例えば超音波を照射してその反射波が返ってくるまでの時間を図ることでユーザとの距離を測るいわゆる超音波方式であってもよいし、デジタルカメラで利用されるコントラスト方式(画像のピント合わせ)によってもよいし、他の方式によってもよい。測距部95が設けられる場合、ぼかし処理演算部12は、測距部95からユーザと表示パネル30との距離を示す出力情報を取得する。ぼかし処理演算部12は、当該出力情報に応じて距離Disを更新する。他の処理については、上述と同様である。
【0094】
以上説明したように、実施形態によれば、表示装置1は、第1パネル(調光パネル80)と、当該第1パネルの一面側で当該第1パネルと対向するよう配置された第2パネル(表示パネル30)と、当該第1パネルの他面側から光を照射する光源(光源装置50)と、当該第2パネルの一面側で当該第2パネル側を向いたヒトの目の位置及び当該ヒトの頭の位置の少なくとも一方を示す情報を含むユーザ情報を取得する取得部(例えば、撮像部90)と、を備える。当該第1パネルは、複数の調光用画素(調光用画素148)を備える。当該第2パネルは、複数の画素(画素48)を備える。表示装置1では、入力される画像信号(入力信号IP)に応じて光を透過するよう制御される当該画素の周囲に位置する当該調光用画素が光を透過するようになるぼかし処理が適用され、当該第1パネルにおいて当該ぼかし処理が適用される当該調光用画素を含む範囲であるぼかし範囲は、当該ヒトの目の位置又は当該ヒトの頭の位置に対応する。
【0095】
実施形態によれば、第2パネル(表示パネル30)の一面側で当該第2パネル側を向いたヒトの目の位置又は当該ヒトの頭の位置を示す情報を含むユーザ情報を取得することで、当該ユーザ情報に基づいてユーザが表示装置1によって出力される画像を視認する位置に関する情報を取得できる。従って、ユーザが画像を視認する位置に応じたぼかし範囲でのぼかし処理が適用された画像を出力できる。すなわち、ユーザが画像を視認する位置へのより多様な対応を実現できる。また、当該第2パネルと対向する第1パネル(調光パネル80)に適用されるぼかし処理によって、上述した二重像や画像の欠け等の画質低下の発生を抑制しつつ、画像のコントラストをより高めることができる。このように、実施形態によれば、ユーザが画像を視認する位置へのより多様な対応と、画像のコントラストをより高める効果と、を両立できる。
【0096】
また、ぼかし範囲は、ヒトの目(例えば、一方の目Ea)、及び、当該ヒトの顔における所定位置(例えば、中間点CP)の少なくとも一方と当該光を透過するよう制御される画素とを結ぶ直線(例えば、上述の視線Wb1,Wb2)と、第2パネル(表示パネル30)の板面に直交する直線(Z軸)と、が形成する角度にさらに対応する。これによって、ぼかし範囲をより確実に、当該ヒトが表示装置1によって出力される画像を視認する位置に対応させることができる。
【0097】
また、上述のユーザ情報は、第2パネル(表示パネル30)と、ヒトの目又は当該ヒトの顔と、の距離(距離Dis)を示す情報を含む。当該ユーザ情報が当該距離を示す情報を含む場合、取得部は、上述の測距部95のように、距離を測ることができる構成を含む。また、ぼかし範囲は、当該距離を示す情報にさらに対応する。これによって、ぼかし範囲をより確実に、当該ヒトが表示装置1によって出力される画像を視認する位置に対応させることができる。
【0098】
また、ぼかし範囲が、第2パネル(表示パネル30)と、ヒトの目又は前記ヒトの顔と、の距離(距離Dis)を固定の距離として導出されるようにすることで、上述の測距部95のように、距離を測ることができる構成を省略しても、ぼかし範囲を当該ヒトが表示装置1によって出力される画像を視認する位置に対応させることができる。
【0099】
また、ヒトの目の位置及びヒトの頭の位置の両方が取得できない場合、ぼかし範囲は、予め定められた所定範囲とされる。ここで、当該所定範囲は、ヒトの目の位置又はヒトの頭の位置に対応するぼかし範囲よりも大きい。これによって、ヒトの目の位置又はヒトの頭の位置がどこにあろうとも、第1パネル(調光パネル80)によるぼかし処理が行われることで、画像のコントラストを向上させることができる。
【0100】
また、取得部(撮像部90)は、第2パネル(表示パネル30)の一面側を撮像する撮像素子を含む。これによって、当該撮像素子による撮像画像に基づいて、当該第2パネル側を向いたヒトの目の位置及び当該ヒトの頭の位置の少なくとも一方を示す情報を取得できる。
【0101】
また、第1パネル(調光パネル80)の出力に反映される信号は、画像信号(入力信号IP)に対して予め定められたガンマ値に応じたガンマ補正を行った信号である。これによって、当該ガンマ値に基づいて、調光用画素(調光用画素148)による光の透過の度合いをより適切に制御できる。
【0102】
また、第2パネル(表示パネル30)の出力に反映される信号は、画像信号(入力信号IP)に対して当該第2パネルのガンマ値に応じたガンマ補正を行った信号である。これによって、当該第2パネルのガンマ特性に応じた表示出力をより適切に行える。
【0103】
また、第1パネルはモノクロの液晶パネルである。これによって、当該第2パネルによる光の透過率をより高めやすくなる。
【0104】
さらに、黒のような暗色系を周囲に取り囲まれた高輝度領域を含む画像の出力において、ぼかし範囲が広すぎる場合、ハロ(色収差、光収差)が生じる可能性がある。実施形態では、ぼかし範囲を上述のようにヒトの目の位置及びヒトの頭の位置の少なくとも一方に対応させることができるので、このようなハロの発生を抑制でき、さらなる高画質化を図れる。
【0105】
また、ぼかし範囲を上述のようにヒトの目の位置及びヒトの頭の位置の少なくとも一方に対応させることで得られる高コントラスト化の効果は、画像信号(入力信号IP)の内容に関わらず得られるが、特に、全体的に明るい画像(明背景画像)で顕著な効果を得られる。
【0106】
さらに、上述のようにステップS2の処理の時点で透過画素を特定することで、全ての画素48の位置に対応したぼかし範囲の導出でなく、透過画素に限定してぼかし範囲を導出するようにすることができる。これによって、ぼかし処理演算部12に要求される処理負荷を軽減できる。従って、信号処理部10の回路規模を削減できる。
【0107】
また、ぼかし範囲をヒトの目の位置及びヒトの頭の位置の少なくとも一方に対応させることで小さくできるということは、仮に画素48と調光用画素148とのZ方向のインターバル(d)がより大きかったとしても、当該インターバル(d)の拡大に伴うぼかし範囲の拡大の度合いは、ぼかし範囲がより大きい場合に比して相対的に小さくなる。このため、何らかの理由で当該インターバル(d)の縮小に制限があったとしても、ぼかし範囲が大きくなりすぎることを抑制しやすくなる。従って、表示装置1が有する表示パネル30と調光パネル80との積層構造の薄型化に関する要求レベルが低くなり、設計に関する制限事項を緩和しやすくなる。
【0108】
ここで、ぼかし範囲をヒトの目の位置及びヒトの頭の位置の少なくとも一方に対応させることによる効果の一例を数値的に示す。一例では、パネル幅PDが30cm、距離Disが50cm、最大移動可能範囲Dmaxが80cm、画素48と調光用画素148とのZ方向のインターバル(d)が1.5mm、調光用画素148と画素48との間の積層構造物の屈折率(n2)が1.4、表示パネル30の画素48の密度及び調光パネル80の調光用画素148の密度が200ppi(pixels per inch)であるものとする。この場合、例えば上述のステップS10の処理のように、ヒトの目の位置及びヒトの頭の位置が不明な場合に適用されるぼかし範囲によって、光を透過するよう制御ある1つの画素48に対するぼかし処理のために光を透過するよう制御される調光用画素148がX方向に連続して並ぶ数は、11を超える。これに対し、ヒトの目の位置及びヒトの頭の位置の少なくとも一方が明確な場合に適用されるぼかし範囲によって、光を透過するよう制御ある1つの画素48に対するぼかし処理のために光を透過するよう制御される調光用画素148がX方向の数は、最低1で済む。すなわち、1つの調光用画素148によっても、上述の二重像や画像の欠けを抑制しつつ、調光パネル80による高コントラスト化を実現でき、しかも、上述のハロが発生する可能性も抑制できる。
【0109】
なお、信号処理部10は、1つの回路として設けられてもよいし、複数の回路の組み合わせによって信号処理部10の機能が実現されてもよい。
【0110】
また、Y方向の視線角度(上述のθy)の導出は省略されてもよい。その場合、透過画素に照射される光を透過させる調光用画素148は、当該透過画素と平面視点でY方向の位置が同一である調光用画素148とされる。
【0111】
また、上記の説明では、撮像部90が表示パネル30を向いたヒトの目又は当該ヒトの頭の位置情報を取得する取得部として機能しているが、当該取得部は、撮像部90に限られない。例えば、上述の測距部95が超音波方式又はコントラスト方式である場合、測距部95によって表示パネル30を向いたヒトの目又は当該ヒトの頭の位置情報を取得する機能を兼ねるようにしてもよい。また、取得部として、例えば赤外線カメラのようにヒトの顔及び目を識別可能な他の構成を採用するようにしてもよい。また、取得部が取得するヒトの目又は当該ヒトの頭の位置は、予め定められた位置を示す情報であってもよい。すなわち、表示パネル30を向いたヒトの目又は当該ヒトの頭の位置が移動しないことを前提とした制御が行われてもよい。
【0112】
また、撮像部90や測距部95のような取得部として機能する構成のように、表示装置1の構成の一部は、表示装置1専用に設けられることは必須でない。例えば、取得部として機能する構成が当然設けられている装置や設備に表示装置1が設けられる場合、当該装置や設備に設けられている取得部として機能する構成を利用するようにしてもよい。
【0113】
また、実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について本明細書記載から明らかなもの、又は当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本開示によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0114】
1 表示装置
30 表示パネル
48 画素
50 光源装置
80 調光パネル
90 撮像部
95 測距部
148 調光用画素