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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】コンデンサモジュールおよび電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20250214BHJP
【FI】
H02M7/48 Z ZHV
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021175350
(22)【出願日】2021-10-27
(65)【公開番号】P2022071857
(43)【公開日】2022-05-16
【審査請求日】2024-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2020180276
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木田 喜啓
(72)【発明者】
【氏名】塩見 和敏
(72)【発明者】
【氏名】杉田 昌行
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-150724(JP,A)
【文献】特開2020-092474(JP,A)
【文献】特開2014-042377(JP,A)
【文献】特開2018-121406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42- 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ(10)と、
上記コンデンサと電源(1)の間に設けられた電源側通電部(20)と、
上記コンデンサとインバータ(102)の間に設けられたインバータ側通電部(30)と、を備え、
上記電源側通電部は、上記コンデンサの正極面(11)に電気的に接続される第1正極導体(21)と、上記コンデンサの負極面(12)に電気的に接続される第1負極導体(22)と、を有し、
上記インバータ側通電部は、上記コンデンサの上記正極面に電気的に接続される第2正極導体(31)と、上記コンデンサの上記負極面に電気的に接続される第2負極導体(32)と、を有し、
上記第1正極導体と上記第2正極導体において通電方向が同一となるように並走する一対の正極側並走部(21b,31b)と、上記第1負極導体と上記第2負極導体において通電方向が同一となるように並走する一対の負極側並走部(22b,32b)と、の少なくとも一方を備え
上記コンデンサは、上記正極面と上記負極面との間に延びる複数の外側面(13,14,15,16)を有し、
上記一対の正極側並走部と上記一対の負極側並走部との少なくとも一方は、上記コンデンサの上記複数の外側面の少なくとも1つに対向して設けられている、コンデンサモジュール(101,201,301,401)。
【請求項2】
上記一対の正極側並走部は、上記コンデンサの上記複数の外側面のうちの1つに対向して設けられ、上記一対の負極側並走部は、上記複数の外側面のうち上記一対の正極側並走部が対向している外側面とは別の1つの外側面に対向しており且つ上記一対の正極側並走部に対する対角位置に設けられている、請求項に記載のコンデンサモジュール。
【請求項3】
上記一対の正極側並走部と上記一対の負極側並走部の少なくとも一方は、上記コンデンサの上記複数の外側面のうちの少なくとも2つの外側面に対向して設けられている、請求項に記載のコンデンサモジュール。
【請求項4】
上記一対の正極側並走部と上記一対の負極側並走部の少なくとも一方は、上記コンデンサの上記正極面から上記負極面に向かう通電方向と直交する方向に並走するように設けられている、請求項1~のいずれか一項に記載のコンデンサモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサモジュールおよび電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車やハイブリッド自動車等には、車両走行用のモータを駆動させるために、バッテリからの直流電力を交流電力に変換する電力変換装置が搭載されている。下記特許文献1には、この種の電力変換装置が開示されている。
【0003】
この電力変換装置は、電源とモータとの間にいずれも設けられたコンデンサモジュール及びインバータを備えている。コンデンサモジュールは、インバータ側に設けられた平滑用のコンデンサと、電源側に設けられたノイズ除去用の2つのコンデンサと、を有する。また、電源の正極側とインバータの正極側が正極側導体によって電気的に接続され、電源の負極側とインバータの負極側が負極側導体によって電気的に接続されている。正極側導体と負極側導体には、互いに積層された積層領域と、互いに積層されていない非積層領域と、が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-207780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記電力変換装置では、2つのコンデンサの間の正極側導体及び負極側導体を長くして非積層領域で形成する寄生インダクタンスを大きくすることによって、電源ライン間の電圧変動を抑制しようとしている。しかしながら、ノイズ除去用のコンデンサの寄生インダクタンスの影響により、電源ライン間の電圧変動の抑制効果が下がるという問題が生じ得る。特に、近年の電力変換装置の小型化及び高密度化が進展するなか、導体を長くするという構造を採用するのが難しいときには、このような問題がより顕著になる。
【0006】
また、上記電力変換装置では、正極側導体と負極側導体に非積層領域を設けて寄生インダクタンスを大きくするとともに、ノイズ除去用のコンデンサを用いてコモンモードノイズを筐体からグランドに逃がすことによって、インバータ側から伝わる伝導ノイズの抑制効果を得ようとしている。しかしながら、伝導ノイズの抑制効果は、ノイズ除去用のコンデンサと筐体を電気的に接続するグランド側導体の配策に影響を受け易く、このグランド側導体の配策状況によっては伝導ノイズの所望の抑制効果を得るのが難しいという問題が生じ得る。また、平滑用のコンデンサとノイズ除去用のコンデンサを近接配置する場合には、相互インダクタンスによる誘導結合の影響でノイズが悪化するという問題が生じ得る。特に、近年の電力変換装置の高速スイッチングによるノイズの広帯域化の影響によって、グランド側導体の配策精度が不十分であると、これらの問題がより顕著になる。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、インバータから導体を通じて伝わる伝導ノイズの影響を抑制するのに有効な技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
コンデンサ(10)と、
上記コンデンサと電源(1)の間に設けられた電源側通電部(20)と、
上記コンデンサとインバータ(102)の間に設けられたインバータ側通電部(30)と、を備え、
上記電源側通電部は、上記コンデンサの正極面(11)に電気的に接続される第1正極導体(21)と、上記コンデンサの負極面(12)に電気的に接続される第1負極導体(22)と、を有し、
上記インバータ側通電部は、上記コンデンサの上記正極面に電気的に接続される第2正極導体(31)と、上記コンデンサの上記負極面に電気的に接続される第2負極導体(32)と、を有し、
上記第1正極導体と上記第2正極導体において通電方向が同一となるように並走する一対の正極側並走部(21b,31b)と、上記第1負極導体と上記第2負極導体において通電方向が同一となるように並走する一対の負極側並走部(22b,32b)と、の少なくとも一方を備え
上記コンデンサは、上記正極面と上記負極面との間に延びる複数の外側面(13,14,15,16)を有し、
上記一対の正極側並走部と上記一対の負極側並走部との少なくとも一方は、上記コンデンサの上記複数の外側面の少なくとも1つに対向して設けられている、コンデンサモジュール(101,201,301,401)、
にある。
【0009】
本発明の別態様は、
コンデンサモジュール(501,601,701,801,901,1001)と、上記コンデンサモジュールに電力変換可能に接続されたインバータ(502)と、上記コンデンサモジュール及び上記インバータを収容する導電性の筐体(3)と、を備え、
上記コンデンサモジュールは、平滑用の第1コンデンサ(10A)と、ノイズ除去用の第2コンデンサ(10P,10N)と、上記第1コンデンサと電源(1)との間の中間接続部(50P,50N)から上記電源に向けて延びる第1導体(51P,51N)と、上記第2コンデンサと上記中間接続部を電気的に接続する第2導体(61P,61N)と、上記第2コンデンサと上記筐体を電気的に接続する接地導体(62)と、を有し、上記第1導体に電源側並走部(51a,51b)が設けられ、上記第2導体及び上記接地導体の少なくとも一方には上記電源側並走部にノイズ電流とは逆向きの誘導電流が生じるように上記電源側並走部と並走するグランド側並走部(61a,61b,62a)が設けられている、電力変換装置(500,600,700,800,900,1000)、
にある。
【0010】
本発明の更なる別態様は、
コンデンサモジュール(501,601,701,801,901,1001)と、上記コンデンサモジュールに電力変換可能に接続されたインバータ(502)と、上記コンデンサモジュール及び上記インバータを収容する導電性の筐体(3)と、を備え、
上記コンデンサモジュールは、平滑用の第1コンデンサ(10A)と、ノイズ除去用の第2コンデンサ(10P,10N)と、上記第1コンデンサと電源(1)との間の中間接続部(50P,50N)から上記電源に向けて延びる第1導体(51P,51N)と、上記第1コンデンサと上記中間接続部を電気的に接続する中間導体(52P,52N)と、上記第2コンデンサと上記中間接続部を電気的に接続する第2導体(61P,61N)と、上記第2コンデンサと上記筐体を電気的に接続する接地導体(62)と、上記第1コンデンサのコンデンサ通電経路(B1)を流れる高周波電流により発生する磁束が上記第2コンデンサと上記第1導体と上記第2導体と上記接地導体と上記筐体とによって形成されるコモンモード通電経路(B2)に対して鎖交して流れるのを抑制する磁気シールド部(51c,53,56)と、を有する、電力変換装置(500,600,700,800,900,1000)、
にある。
【発明の効果】
【0011】
上述の一態様のコンデンサモジュールにおいて、コンデンサと電源の間に設けられた電源側通電部には、このコンデンサの正極面に電気的に接続される第1正極導体と、このコンデンサの負極面に電気的に接続される第1負極導体と、が設けられている。コンデンサとインバータの間に設けられたインバータ側通電部には、コンデンサの正極面に電気的に接続される第2正極導体と、コンデンサの負極面に電気的に接続される第2負極導体と、が設けられている。
【0012】
ここで、コンデンサモジュールには、第1正極導体と第2正極導体による一対の正極側並走部と、第1負極導体と第2負極導体による一対の負極側並走部と、の少なくとも一方が設けられている。一対の正極側並走部を通電方向が同一となるように並走させることによって、或いは一対の負極側並走部を通電方向が同一となるように並走させることによって、これら並走部における磁束を強め合う。並走部の相互インダクタンスがコンデンサの寄生インダクタンスを打ち消すように作用する結果、合成インダクタンスを下げることができる。このとき、インバータ側から導体を通じて伝わる伝導ノイズの影響によりコンデンサで発生する電圧変動は合成インダクタンスに比例する。このため、このコンデンサモジュールによれば、コンデンサで発生する電圧変動を抑制することができる。
【0013】
上述の別態様の電力変換装置において、コンデンサモジュールと、このコンデンサモジュールに電力変換可能に接続されたインバータと、が導電性の筐体に収容されている。コンデンサモジュールにおいて、第1導体は、平滑用の第1コンデンサと電源を電気的に接続する電源側通電部の中間接続部から電源側に延びるように設けられている。第2導体は、ノイズ除去用の第2コンデンサと電源側通電部の中間接続部とを電気的に接続するように設けられている。接地導体は、第2コンデンサと筐体を電気的に接続するように設けられている。
【0014】
ここで、第1導体に設けられた電源側並走部が、第2導体及び接地導体の少なくとも一方に設けられたグランド側並走部と並走する。このとき、グランド側並走部に筐体側から第2コンデンサ側に向けてノイズ電流が流れると、これにより電源側並走部に誘導電圧が発生して誘導電流が流れる。この誘導電流が電源側から電源側並走部に流れるノイズ電流と逆方向に流れることによって、電源側の伝導ノイズを低減させることができる。
【0015】
上述の更なる別態様の電力変換装置において、コンデンサモジュールには磁気シールド部が設けられている。磁気シールド部は、第1コンデンサのコンデンサ通電経路を流れる高周波電流により発生する磁束が第2コンデンサと第1導体と第2導体と接地導体と上記筐体とによって形成されるコモンモード通電経路に対して鎖交して流れるのを抑制する機能を有する。この磁気シールド部によれば、第1コンデンサと第2コンデンサを近接配置する場合に相互インダクタンスによる誘導結合の影響でノイズが悪化するのを防ぐことが可能になる。
【0016】
以上のごとく、上述の各態様によれば、インバータから導体を通じて伝わる伝導ノイズの影響を抑制するのに有効な技術を提供することができる。
【0017】
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態1の電力変換装置の電気回路図。
図2】実施形態1のコンデンサモジュールのコンデンサ周辺の斜視図。
図3】実施形態2のコンデンサモジュールのコンデンサ周辺の斜視図。
図4】実施形態3のコンデンサモジュールのコンデンサ周辺の斜視図。
図5】実施形態4のコンデンサモジュールのコンデンサ周辺の斜視図。
図6】実施形態5の電力変換装置の電気回路図。
図7】実施形態5のコンデンサモジュールの斜視図。
図8図6中のコンデンサモジュールの導体の合成インダクタンスについて説明するための図。
図9図7のコンデンサモジュールを筐体に収容された状態にて示す斜視図。
図10】実施形態6のコンデンサモジュールの斜視図。
図11】実施形態7のコンデンサモジュールの斜視図。
図12】実施形態8の電力変換装置の斜視図。
図13図12の電力変換装置の側面図。
図14図13の電力変換装置の一部を拡大して示す側面図。
図15図14の電力変換装置の変更例を示す側面図。
図16】実施形態9の電力変換装置の斜視図。
図17図16の電力変換装置の側面図。
図18】実施形態10の電力変換装置の斜視図。
図19図18の電力変換装置の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、電力変換装置の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、典型的には、電気自動車やハイブリッド車等の車両に搭載され、直流電力と交流電力との間で電力変換を行う車載用電力変換装置に好適に適用される。
【0020】
なお、本明細書では、特に断わらない限り、コンデンサモジュールを構成する平滑用のコンデンサの正極面及び負極面に沿った互いに直交する二方向を第1方向X及び第2方向Yとし、第1方向X及び第2方向Yの双方に直交する方向を第3方向Zとする。
【0021】
また、コンデンサモジュールは、電力変換装置の搭載位置等に影響に応じて姿勢が変化するため、コンデンサモジュールの上下については特に限定されないが、図2図5図7図9図11では、便宜上、図面の上方をコンデンサモジュールの上方とし、図面の下方をコンデンサモジュールの下方として説明する。
【0022】
(実施形態1)
図1に示されるように、実施形態1の電力変換装置100は、直流電圧と交流電圧との間の電力変換を行うための装置である。この電力変換装置100は、電源1側に設けられたコンデンサモジュール101と、モータ2側に設けられた電力変換部としてのインバータ102と、を含む複数の要素を備え、これら複数の要素をケースとしての筐体(図示省略)に収容している。
【0023】
コンデンサモジュール101は、電源1側の平滑用のコンデンサ10と、インバータ102側の平滑用のコンデンサ10と、コンデンサ10と電源1の間に設けられた電源側通電部20と、コンデンサ10とインバータ102の間に設けられたインバータ側通電部30と、を備えている。2つのコンデンサ10,10が電源1に対して並列接続されている。
【0024】
インバータ102は、電力機器としてのモータ2の3相(U相、V相、W相)のいずれかの電極に接続された複数の半導体素子102aを有する半導体モジュールである。複数の半導体素子102aは、電源1の高電位側端子に電気的に接続された正極側の上アーム半導体素子と、電源1の低電位側端子に電気的に接続された負極側の下アーム半導体素子と、のいずかに分類され、対応する上アーム半導体素子と下アーム半導体素子が互いに直列接続されている。
【0025】
インバータ102は、複数の半導体素子102aがスイッチング動作するように制御される。このため、半導体素子102aは、「スイッチング素子」、「半導体チップ」とも称される。半導体素子102aとして典型的には、IGBT(すなわち、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)、MOSFET(すなわち、MOS型電界効果トランジスタ)等の任意の半導体素子が使用される。なお、半導体素子102aの数や接続形態は特に限定されるものではなく、必要に応じて適宜に設定することが可能である。
【0026】
図2に示されるように、電源1側のコンデンサ10は、略円柱状の外形をなしており、図中の上面が正極面11となり、図中の下面が正極面11に対して概ね平行に延びる負極面12となるように構成されている。以下、電源1側のコンデンサ10を単に「コンデンサ10」として説明する。
【0027】
コンデンサ10は、正極面11と負極面12との間に第3方向Xに延びる複数の外側面を有する。各外側面は、コンデンサ10の外表面であり、平坦面であってもよいし、或いは曲面や段差面であってもよい。コンデンサ10の複数の外側面には4つの外側面13,14,15,16が含まれている。外側面13は、コンデンサ10の外表面のうち第2方向Yの一方側の面である。外側面14は、コンデンサ10の外表面のうち外側面13に平行な第2方向Yの一方側の面である。外側面15は、コンデンサ10の外表面のうち第1方向Xの一方側の面である。外側面16は、コンデンサ10の外表面のうち外側面15に平行な第1方向Xの他方側の面である。
【0028】
図1及び図2に示されるように、電源側通電部20は、一端部21aにおいてコンデンサ10の正極面11に電気的に接続される第1正極導体21と、一端部22aにおいてコンデンサ10の負極面12に電気的に接続される第1負極導体22と、を有する。
【0029】
インバータ側通電部30は、一端部31aにおいてコンデンサ10の正極面11に電気的に接続される第2正極導体31と、一端部32aにおいてコンデンサ10の負極面12に電気的に接続される第2負極導体32と、を有する。
【0030】
4つの導体21,22,31,32はいずれも、断面が矩形をなす平板状の金属部材によって構成されており、「バスバ」とも称される。必要に応じて、バスバに代えて、断面が円形或いは楕円形をなす金属製の配線を採用することもできる。
【0031】
コンデンサモジュール101は、正極側並走構造41と負極側並走構造42の両方を備えることを特徴とする。
【0032】
図2に示されるように、正極側並走構造41は、第1正極導体21と第2正極導体31による一対の正極側並走部21b,31bが隙間23を隔てて通電方向が同一となるように並走する構造である。この構造において、正極側並走部21bの下面と正極側並走部31bの上面が同方向に延びており隙間23を隔てて互いに対向している。一対の正極側並走部21b,31bは、コンデンサ10の正極面11に沿った位置で第3方向Zを板厚方向とし第2方向Yを板幅方向として互いに平行配置されている。
【0033】
同様に、負極側並走構造42は、第1負極導体22と第2負極導体32による一対の負極側並走部22b,32bが隙間24を隔てて通電方向が同一となるように並走する構造である。この構造において、第1負極導体22の上面と第2負極導体32の下面が同方向に延びており隙間24を隔てて互いに対向している。一対の負極側並走部22b,32bは、コンデンサ10の負極面12に沿った位置で3方向Zを板厚方向とし第2方向Yを板幅方向として互いに平行配置されている。
【0034】
なお、正極側並走構造41の隙間23と負極側並走構造42の隙間24はいずれも、1mmを下回る程度の微小隙間であるのが好ましい。隙間23と隙間24は、同一の寸法であってもよいし或いは異なる寸法であってもよい。
【0035】
図1に示される電気回路では、複数の半導体素子102aのスイッチング動作時にインバータ102がノイズ源となってノイズが伝導する。このとき、電源ライン間に生じるノイズ電圧によって高周波のノイズ電流Cが流れる。このノイズ電流Cは、インバータ102からコンデンサモジュール101を経由して電源1側へと流れたノイズ電流Cがインバータ102側へ循環する。このノイズ電流Cは、コンデンサ10において正極側から負極側にバイパスされる。コンデンサモジュール101と電源1との間でのノイズ電流Cの行きと戻りの向きが逆であるため、このときのノイズ電流Cによる伝導ノイズは、「ノーマルモードノイズ(ディファレンシャルモードノイズ)」と称される。
【0036】
図2では、コンデンサ10の周辺におけるノイズ電流Cの流れは矢印が付された実線或いは破線で示されている。
【0037】
第1正極導体21において、ノイズ電流Cは一端部21aから正極側並走部21bを経由して電源1側へと流れる。第2正極導体31において、ノイズ電流Cはインバータ102側から正極側並走部31bを経由して一端部31aへと流れる。コンデンサ10の正極面11では、ノイズ電流Cが第2正極導体31の一端部31a側から第1正極導体21の一端部21a側へと流れる。即ち、正極面11には、正極側並走部21b,31bとは逆向きにノイズ電流Cが流れる。
【0038】
第1負極導体22において、ノイズ電流Cは電源1側から負極側並走部22bを経由して一端部22aへと流れる。第2負極導体32において、ノイズ電流Cは一端部32aから負極側並走部32bを経由してインバータ102側へと流れる。コンデンサ10の負極面12では、ノイズ電流Cが第1負極導体22の一端部22a側から第2負極導体32の一端部32a側へと流れる。即ち、負極面12には、負極側並走部22b,32bとは逆向きにノイズ電流Cが流れる。
【0039】
図1に示されるように、上記構成の正極側並走構造41を電気回路で示す場合、2つの導体21,31による相互インダクタンスをMpとし、コンデンサ10の寄生インダクタンスをESLとしたき、寄生インダクタンスESLにこの相互インダクタンスMpを負の係数で接続するのと等価の回路(T字型の回路)になる。この正極側並走構造41によれば、第1正極導体21の正極側並走部21bと第2正極導体31の正極側並走部31bを上述のように並走させることによって、正極側並走部21b,31bに流れるノイズ電流Cで生じる磁束を強めるように作用する。
【0040】
同様に、上記構成の負極側並走構造42を電気回路で示す場合、2つの導体22,32による相互インダクタンスをMnとしたとき、コンデンサ10の寄生インダクタンスESLにこの相互インダクタンスMnを負の係数で接続するのと等価の路(T字型の回路)になる。この負極側並走構造42によれば、第1負極導体22の負極側並走部22bと第2負極導体32の負極側並走部32bを上述のように並走させることによって、負極側並走部22b,32bに流れるノイズ電流Cで生じる磁束を強めるように作用する。
【0041】
このとき、このコンデンサ10の合成インダクタンスは、寄生インダクタンスESLの値から相互インダクタンスMp,Mnの値を差し引いた値(ESL-Mp-Mn)となる。従って、正極側並走構造41及び負極側並走構造42を備えていない場合に比べて合成インダクタンスを相互インダクタンスMp,Mnに相当する分だけ下げることができる。また、電源ライン間で発生するノイズ電圧Vbat(図1を参照)の電圧変動は合成インダクタンスに比例するため、合成インダクタンスを下げることによってこの電圧変動を低く抑えることができる。
【0042】
図2に示されるように、一対の正極側並走部21b,31bは、第1方向Xに延びており、コンデンサ10において正極面11側から負極面12側へと流れる第3方向Zの通電方向と実質的に直交するように並走している。同様に、一対の負極側並走部22b,32bは、第1方向Xに延びており、第3方向Zの通電方向と実質的に直交するように並走している。これにより、コンデンサ10内にノイズ電流Cが流れるときに生じる磁束によって正極側並走部21b,31bや負極側並走部22b,32bで発生した磁束が弱められるのを抑制できる。
【0043】
なお、ここでいう「実質的に直交」とは、一対の正極側並走部21b,31bと一対の負極側並走部22b,32bの並走方向がコンデンサ10における通電方向と完全に直交する形態のみならず、この直交関係が僅かにずれている略直交の形態をも含む主旨である。
【0044】
上記コンデンサモジュール101において、耐振動などの信頼性確保のために、第1正極導体21と第1負極導体22をコンデンサ10の近傍で電気的に接続し、第2正極導体31と第2負極導体32をコンデンサ10の近傍で電気的に接続する構成を採用することもできる。
【0045】
上述の実施形態1によれば、コンデンサモジュール101のコンデンサ10で発生する電圧変動を抑制することができる。このため、インバータ102から導体を通じて伝わる伝導ノイズ、即ちノーマルモードノイズの影響を抑制することができる。
【0046】
実施形態1に関連する変更例では、一対の正極側並走部21b,31bと一対の負極側並走部22b,32bのいずれか一方のみが、コンデンサ10における通電方向と実質的に直交するように設けられてもよい。
【0047】
次に、上述の実施形態1に関連する他の実施形態2~4について図面を参照しつつ説明する。これらの実施形態2~4において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明を省略する。
【0048】
(実施形態2)
図3に示されるように、実施形態2の電力変換装置200は、コンデンサモジュール201における4つの導体21,22,31,32の配置について、実施形態1のコンデンサモジュール101のものと相違している。
【0049】
コンデンサモジュール201は、実施形態1の場合と同一構造のコンデンサ10を有する。このコンデンサモジュール201において、正極側並走構造41を構成する一対の正極側並走部21b,31bは、コンデンサ10の1つの外側面13に対向し、且つ隙間23を隔てて通電方向が同一となるように並走している。このとき、正極側並走部21bの側面と正極側並走部31bの側面が隙間23を隔てて互いに対向している。一対の正極側並走部21b,31bは、第3方向Zについて正極面11よりも下方位置で第3方向Zを板幅方向とし第2方向Yを板厚方向として互いに平行配置されている。
【0050】
同様に、負極側並走構造42を構成する一対の負極側並走部22b,32bは、コンデンサ10の1つの外側面13に対向し、且つ隙間23を隔てて通電方向が同一となるように並走している。このとき、負極側並走部22bの側面と負極側並走部32bの側面が隙間24を隔てて互いに対向している。一対の負極側並走部22b,32bは、第3方向Zについて負極面12よりも上方位置で第3方向Zを板幅方向とし第2方向Yを板厚方向として互いに平行配置されている。
【0051】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0052】
コンデンサ10の正極面11には、正極側並走部21b,31bとは逆向きにノイズ電流Cが流れるため、正極側並走部21b,31bが正極面11に近づくと正極側並走部21b,31bに流れるノイズ電流Cで生じる磁束を強める効果の妨げになる。同様に、コンデンサ10の負極面12には、負極側並走部22b,32bとは逆向きにノイズ電流Cが流れるため、負極側並走部22b,32bが負極面12に近づくと負極側並走部22b,32bに流れるノイズ電流Cで生じる磁束を強める効果の妨げになる。
【0053】
そこで、実施形態2では、2つの導体21,31による一対の正極側並走部21b,31bをコンデンサ10の外側面13に対向させることで正極面11から遠ざけることができる。また、2つの導体22,32による一対の負極側並走部22b,32bをコンデンサ10の外側面13に対向させることで負極面12から遠ざけることができる。
【0054】
4つの導体21,22,31,32による4つ並走部21b,31b,22b,32bをコンデンサ10の同一の外側面13に対向させることで、同一形状のコンデンサ10を使用する場合には、実施形態1に比べて、上記磁束を強める効果が妨げられるのを抑制できる。また、コンデンサモジュール201が第3方向Zについて大型化するのを抑制することができる。
【0055】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0056】
(実施形態3)
図4に示されるように、実施形態3の電力変換装置300は、コンデンサモジュール301における導体22,32の配置について、実施形態2のコンデンサモジュール201のものと相違している。
【0057】
このコンデンサモジュール301において、負極側並走構造42を構成する一対の負極側並走部22b,32bは、コンデンサ10の1つの外側面14に沿って互いに平行配置されている。即ち、一対の負極側並走部22b,32bは、正極側並走構造41を構成する一対の正極側並走部21b,31bが対向している外側面13とは反対側の別の外側面14に対向して設けられている。また、一対の負極側並走部22b,32bは、一対の正極側並走部21b,31bに対する対角位置に設けられている。
【0058】
その他の構成は、実施形態2と同様である。
【0059】
実施形態3によれば、ノイズ電流Cが流れる方向が互いに逆向きの関係にある、一対の正極側並走部21b,31bと一対の負極側並走部22b,32bを互いに遠ざけることができる。これにより、一対の正極側並走部21b,31bと一対の負極側並走部22b,32bのそれぞれにおいて磁束を強める効果が妨げられるのを抑制できる。
【0060】
その他、実施形態2と同様の作用効果を奏する。
【0061】
(実施形態4)
図5に示されるように、実施形態4の電力変換装置400は、コンデンサモジュール401における4つの導体21,22,31,32の配置について、実施形態1のコンデンサモジュール101のものと相違している。
【0062】
このコンデンサモジュール401において、正極側並走構造41を構成する一対の正極側並走部21b,31bは、コンデンサ10の3つの外側面13,15,16に対向して設けられている。一対の正極側並走部21b,31bは、第3方向Zを板幅方向とし第1方向X或いは第2方向Yを板厚方向として互いに平行配置されている。また、負極側並走構造42を構成する一対の負極側並走部22b,32bは、コンデンサ10の1つの外側面14に対向して設けられている。一対の負極側並走部22b,32bは、第3方向Zを板幅方向とし第2方向Yを板厚方向として互いに平行配置されている。一対の正極側並走部21b,31bはいずれも、第3方向Zから見たときに略コ字形状をなしており、その並走長さが一対の負極側並走部22b,32bの並走長さを上回るように構成されている。
【0063】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0064】
実施形態4によれば、一対の正極側並走部21b,31bが1つ或いは2つの外側面に対向する場合に比べて、一対の正極側並走部21b,31bによる相互インダクタンスが大きくなる。これにより、コンデンサ10の合成インダクタンスを下げる効果を高めることができる。
【0065】
なお、一対の正極側並走部21b,31bとコンデンサ10の3つの外側面13,15,16との間の間隔は極力小さく設定されるのが好ましい。これにより、コンデンサモジュール401が大型化するのを抑制することができる。
【0066】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0067】
上述の実施形態4に特に関連する変更例では、一対の負極側並走部22b,32bを2つ或いは4つの外側面に沿って対向させる構成や、一対の正極側並走部21b,31bに一対の負極側並走部22b,32bと同様の構造を適用した構成などを採用することができる。
【0068】
上述の実施形態1~4では、コンデンサモジュール101,201,301,401が正極側並走構造41と負極側並走構造42の両方を備える場合について例示したが、必要に応じて正極側並走構造41と負極側並走構造42のいずれか一方のみを備えるようにしてもよい。即ち、2つの導体を並走させる構造を正極側と負極側のいずれか一方にのみ適用することができる。
【0069】
(実施形態5)
図6に示されるように、実施形態5の電力変換装置500は、電源1側に設けられたコンデンサモジュール501と、モータ2側に設けられたインバータ502と、を含む複数の要素を備え、これら複数の要素をケースとしての筐体3に収容している。インバータ502は、電力機器としてのモータ2の3相(U相、V相、W相)のいずれかの電極に接続された複数の半導体素子502aを有する半導体モジュールであり、コンデンサモジュール501に電力変換可能に接続されている。筐体3は、典型的には導電性を有する金属材料からなり、グランドGNDに接地されている。
【0070】
図6及び図7に示されるように、コンデンサモジュール501は、インバータ502側において互いに並列接続された平滑用の複数の第1コンデンサ10Aと、ノイズ除去用の2つの第2コンデンサ10P,10Nと、第1導体51P,51Nと、中間導体52P,52Nと、第2導体61P,61Nと、接地導体62と、を有する。第1コンデンサ10Aは、「Xコンデンサ」とも称され、第2コンデンサ10P,10Nは、「Yコンデンサ」とも称される。
【0071】
第1導体51P,51Nは、第1コンデンサ10Aと電源1を電気的に接続する通電部50のうち、第1コンデンサ10Aと電源1との間の中間接続部としての中間端子50P,50Nから電源1側に延びる導体である。第1導体51Pが通電部50の正極側の導体であり、第1導体51Nが通電部50の負極側の導体である。
【0072】
中間導体52P,52Nは、通電部50のうち中間端子50P,50Nと第1コンデンサ10Aを電気的に接続する導体である。中間導体52Pが通電部50の正極側の導体であり、中間導体52Nが通電部50の負極側の導体である。
【0073】
第2導体61P,61Nは、中間端子50P,50Nと筐体3を電気的に接続する通電部60のうち、第2コンデンサ10P,10Nと中間端子50P,50Nを電気的に接続する導体である。第2導体61Pが通電部60の正極側の導体であり、第2導体61Nが通電部60の負極側の導体である。第2導体61P,61Nは、中間端子50P,50Nを起点としたとき、この中間端子50P,50Nから電源1に近づく方向に延出している。
【0074】
接地導体62は、通電部60のうち第2コンデンサ10P,10Nと筐体3を電気的に接続する導体である。接地導体62は、第2導体61P,61Nよりも電源1に近い位置に、第2導体61P,61Nとの間に間隔を隔てて配置されている。
【0075】
図7に示されるように、これらの導体51P,51N,52P,52N,61P,61Nはいずれも、断面が矩形をなす平板状の金属部材によって構成されており、「バスバ」とも称される。必要に応じて、バスバに代えて、断面が円形或いは楕円形をなす金属製の配線を採用することもできる。
【0076】
本実施形態では、第1導体51P,51Nの一部が、第2導体61P,61Nと並走し、且つ接地導体62と並走するように構成されている。このとき、第1導体51P,51Nに電源側並走部51a,51bが設けられている。また、第2導体61P,61Nに電源側並走部51a,51bと並走するグランド側並走部61a,61bが設けられている。さらに、接地導体62に電源側並走部51a,51bと並走するグランド側並走部62aと、グランド側並走部62aと筐体3との間に延びる接続部62bと、が設けられている。即ち、電源側並走部51a,51bは、グランド側並走部61a,61b,62aと同方向に延びている。電源側並走部51a,51bとグランド側並走部61a,61b,62aはいずれも、第1方向Xと第2方向Yで定まる平面に沿って延びている。本実施形態の接地導体62において、グランド側並走部62aは、断面が矩形をなす平板状の金属部材によって構成されており、接続部62bは、断面が円形をなす棒状の金属部材によって構成されている。
【0077】
図6に示される電気回路では、インバータ502がノイズ源となってノイズが伝導する。このとき、モータ2の浮遊静電容量を介して漏れたノイズ電流CがグランドGNDを経由して電源ラインに戻る。ノイズ電流Cの流れは矢印が付された実線で示されている。このノイズ電流Cが電源1の正極側と負極側で流れる向きが同じであるため、このときの伝導ノイズは、「コモンモードノイズ」と称される。
【0078】
第1導体51P,51Nのそれぞれにおいて、ノイズ電流Cは電源1側からインバータ502側に流れる。第2導体61P,61Nのそれぞれにおいて、ノイズ電流Cは電源1側からインバータ502側に流れる。第2導体61P,61Nのそれぞれにおいて、ノイズ電流Cは第2コンデンサ10P,10N側から中間端子50P,50N側に流れる。接地導体62において、ノイズ電流Cは筐体3側から第2コンデンサ10P,10N側に流れる。
【0079】
ここで、伝導ノイズのうち筐体3から接地導体62側に伝導したものの一部が電源1に伝導すると、ノイズ環境悪化の要因に成り得る。そこで、本実施形態では、第2導体61P,61N及び接地導体62におけるグランド側並走部61a,61b,62aが、第1導体51P,51Nの電源側並走部51a,51bにノイズ電流Cとは逆向きの誘導電流Dが生じるように、電源側並走部51a,51bと並走する構造を採用している。本構造によれば、グランド側並走部61a,61b,62aにノイズ電流Cが流れることによって、電源側並走部51a,51bにノイズ電流Cと逆向きの誘導電流を流すことができる。図6では、この誘導電流Dの流れは矢印が付された破線で示されている。
【0080】
図7において、電源側並走部51aの下面とグランド側並走部61aの上面が互いに対向し、電源側並走部51bの下面とグランド側並走部61bの上面が互いに対向している。また、電源側並走部51a,51bの下面とグランド側並走部62aの上面が互いに対向している。さらに、第2コンデンサ10Pは、その通電方向(第1方向X)について電源側並走部51aと並走し、第2コンデンサ10Nは、その通電方向(第1方向X)について電源側並走部51bと並走している。
【0081】
電源側並走部51a,51b及びグランド側並走部61a,61b,62aは、第1コンデンサ10Aの正極面11から負極面12に向かう通電方向(図7中の矢印を参照)と実質的に直交するように並走しているのが好ましい。これにより、第1コンデンサ10Aを流れる比較的大きな高周波電流により発生する磁束が、電源側並走部51a,51b及びグランド側並走部61a,61b,62aで発生する磁束を乱すのを抑制できる。このため、電源側並走部51a,51bとグランド側並走部61a,61b,62aとの相互インダクタンスを確保することが可能になる。
【0082】
なお、ここでいう「実質的に直交」とは、電源側並走部51a,51b及びグランド側並走部61a,61b,62aの並走方向が第1コンデンサ10Aにおける通電方向と完全に直交する形態のみならず、この直交関係が僅かにずれている略直交の形態をも含む主旨である。
【0083】
図7に示されるように、中間導体52Nは、第1コンデンサ10Aのうち第2コンデンサ10P,10N側に位置する対向面17に対向するように配策された対向配策部52bを有する。この対向配策部52bは、第1コンデンサ10Aのコンデンサ通電経路を流れる高周波電流により発生する磁束が第2コンデンサ10P,10Nと第1導体51P,51Nと第2導体61P,61Nと接地導体62と筐体3とによって形成されるコモンモード通電経路に対して鎖交して流れるのを抑制する磁気シールド部として構成されている。本構成によれば、第1コンデンサ10Aと第2コンデンサ10P,10Nを近接配置する場合に相互インダクタンスによる誘導結合の影響でノイズが悪化するのを防ぐことが可能になる。
【0084】
図8に簡易的に示されるように、コンデンサモジュール501において、第1導体51P,51Nの電源側並走部51a,51bの合成インダクタンスをL1とする。また、第2コンデンサ10P,10Nと、第2導体61P,61N及び接地導体62のグランド側並走部61a,61b,62aと、接地導体62の接続部62bと、の合成インダクタンスをL2とする。このとき、合成インダクタンスL1と合成インダクタンスL2の並走によって相互インダクタンスMが形成される。
【0085】
ここで、合成インダクタンスL2を流れる電流をiとしたとき、合成インダクタンスL1には、相互インダクタンスMと電流iの時間変化との積で示される誘導電圧(=M×(di/dt))が発生して誘導電流Dが流れる。この誘導電流Dが流れる方向がノイズ電流Cによる伝導ノイズの伝導方向とは逆方向であるため、電源1の伝導ノイズであるコモンモードノイズが低減される。これにより、インバータ502から導体を通じて伝わる伝導ノイズ(コモンモードノイズ)の影響を抑制することができる。
【0086】
特に、上記コンデンサモジュール501では、グランド側並走部61a,61b,62aが電源側並走部51a,51bと並走する構造に加えて、第2コンデンサ10P,10Nがその通電方向について電源側並走部51a,51bと並走する構造を採用している。これにより、コモンモードノイズの低減効果を高めることができる。
【0087】
一方で、必要に応じて、グランド側並走部61a,61bが電源側並走部51a,51bと並走する並走構造と、グランド側並走部62aが電源側並走部51a,51bと並走する並走構造と、第2コンデンサ10P,10Nがその通電方向について電源側並走部51a,51bと並走する並走構造と、のうちの少なくとも1つの並走構造を採用することもできる。
【0088】
図6に示されるように、実施形態5による伝導ノイズの低減効果は、例えば、電源1の近傍に設定したノイズ評価箇所Eで伝導ノイズを計測することによって評価することができる。
【0089】
上述の実施形態5では、図9に示されるように、第2コンデンサ10P,10Nは、電源側並走部51a,51b及びグランド側並走部61a,61b,62aと筐体3との間に介装されるのが好ましい。第3方向Zについて、電源側並走部51a,51bの下方にグランド側並走部61a,61b,62aが配置されており、グランド側並走部61a,61b,62aの下方に第2コンデンサ10P,10Nが配置されている。第2コンデンサ10P,10Nは、筐体3の底面3aとの間に空間を隔てて対向配置されている。これにより、電源側並走部51a,51b及びグランド側並走部61a,61b,62aの近くに導体である筐体3が配置されるのを防ぐことができ、合成インダクタンスL1と合成インダクタンスL2との相互インダクタンスMの低下を抑制することができる。
【0090】
なお、電源側並走部51a,51b及びグランド側並走部61a,61b,62aと筐体3との間の空間が、相互インダクタンスMの低下を抑制できる程度のものであれば、第2コンデンサ10P,10Nの配置は図7のものに限定されるものではなく、適宜に変更可能である。
【0091】
次に、上述の実施形態5に関連する他の実施形態6~10について図面を参照しつつ説明する。これらの実施形態6~10において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明を省略する。
【0092】
(実施形態6)
図10に示されるように、実施形態6の電力変換装置600は、コンデンサモジュール601が磁気シールド部品53を有する点で、実施形態5のものと相違している。磁気シールド部品53は、第1方向Xについて第1コンデンサ10Aと第2コンデンサ10P,10Nとの間に介装されている。磁気シールド部品53として典型的には、放電抵抗などの金属含有部品を用いることができる。
【0093】
その他の構成は、実施形態5と同様である。
【0094】
実施形態6によれば、第1コンデンサ10Aを第3方向Zに流れる高周波電流(図10中の矢印を参照)により発生する磁束を磁気シールド部品53によって第2コンデンサ10P,10Nに対してシールドすることができる。このため、第1コンデンサ10A側で発生した磁束が、電源側並走部51a,51b及びグランド側並走部61a,61b,62aを流れる電流により発生する磁束に干渉するのを抑制することができる。その結果、相互インダクタンスMを確保することが可能になる。
【0095】
その他、実施形態5と同様の作用効果を奏する。
【0096】
なお、磁気シールド部品53による磁気シールド機能を別の要素によって達成できる場合や、第1コンデンサ10A側で発生した磁束の影響が小さい場合などには、必要に応じて磁気シールド部品53を省略してもよい。
【0097】
(実施形態7)
図11に示されるように、実施形態7の電力変換装置700は、第2コンデンサ10P,10Nの配置について実施形態5のものと相違している。電力変換装置700のコンデンサモジュール701では、実施形態1の場合に比べて、第2コンデンサ10P,10Nのそれぞれが90°回転した状態で配置されている。
【0098】
その他の構成は、実施形態5と同様である。
【0099】
実施形態7によれば、第2コンデンサ10P,10Nの配置を必要に応じて変更することが可能になる。
【0100】
その他、実施形態5と同様の作用効果を奏する。
【0101】
(実施形態8)
図12に示されるように、実施形態8の電力変換装置800は、実施形態5の電力変換装置500に設けられている磁気シールド部としての対向配策部52bに関連する構造をより具現化したものである。電力変換装置800は、コンデンサモジュール801と、コンデンサモジュール801に電力変換可能に接続されたインバータ502と、コンデンサモジュール801及びインバータ502を収容する導電性の筐体3と、を備えている。
【0102】
コンデンサモジュール801は、実施形態5のコンデンサモジュール501と同様に、複数の第1コンデンサ10Aと、第2コンデンサ10P,10Nと、第1導体51P,51Nと、中間導体52P,52Nと、第2導体61P,61Nと、接地導体62と、対向配策部52bと、を備えている。
【0103】
接地導体62は、第3方向Zを板厚方向とする平板状のグランド側並走部62aと、第3方向Zに延びる接続部62bと、を有する。コンデンサモジュール801は、第2コンデンサ10P,10Nと、第1導体51P,51Nと、中間導体52P,52Nと、第2導体61P,61Nと、接地導体62と、筐体3と、によって囲まれた開口Aを有する。
【0104】
対向配策部52bは、中間導体52Nの一部によって構成されており、第1方向Xを板厚方向とする板状部である。この対向配策部52bは、各第1コンデンサ10Aのうち第2コンデンサ10P,10N側に位置する対向面17に第1方向Xについて対向するように配策されている。すなわち、各第1コンデンサ10Aを第2コンデンサ10P,10N側から見たとき、各第1コンデンサ10Aの対向面17が対向配策部52bによって遮蔽されている。対向配策部52bは、その第2方向Yの板幅が第1導体51Pの外縁と第1導体51Nの外縁との間隔を上回るように構成されている。これに対して、第2方向Yの外側に配置されている2つの第1コンデンサ10Aのそれぞれの側面である、対向面17とは別の外表面18は露出している。
【0105】
インバータ502は、中間導体52Pに電気的に接続されるコレクタ端子54Pと、中間導体52Nに電気的に接続されるエミッタ端子54Nと、出力端子54Oと、を備えている。コレクタ端子54P及びエミッタ端子54Nを介してインバータ502に直流電圧が印加され、出力端子54Oを通じて該インバータ502から交流電力が出力される。インバータ502は、第2方向Yについて開口Aに対向する対向面502bを有する。
【0106】
図13に示されるように、開口Aの第3方向Zの高さHは、第1導体51P,51Nと筐体3との間の第3方向Zの高さとして定義される。各第1コンデンサ10Aの対向面17は、この高さHの範囲内に配置されており、その全面が対向配策部52bによって第2コンデンサ10P,10N側から遮蔽されている。コンデンサモジュール801は、後述のコモンモード通電経路B2により区画形成される第1開口面S1を有する。
【0107】
その他の構成は、実施形態5と同様である。
【0108】
図14に示されるように、コンデンサ通電経路B1は、各第1コンデンサ10Aの内部を高周波電流が第3方向Zの下向きに流れる通電経路である。コモンモード通電経路B2は、第2コンデンサ10P,10Nと、第1導体51P,51Nと、第2導体61P,61Nと、接地導体62と、筐体3と、によって形成される通電経路である。
【0109】
ここで、コンデンサ通電経路B1を流れる高周波電流によりそのまわりに磁束(図14中の二点鎖線矢印を参照)が発生する。このとき、中間導体52Nの対向配策部52bが各第1コンデンサ10Aの対向面17と対向している。そして、対向配策部52bは、磁気シールド性能を有する金属部材によって構成されている。このため、コンデンサ通電経路B1を流れる高周波電流により発生する磁束がコモンモード通電経路B2に対して鎖交して流れるのを抑制することができる。
【0110】
なお、ここでいう「鎖交して流れる」とは、磁束が第1開口面S1を横切るように交差しつつ流れる態様であり、典型的には、磁束の少なくとも一部が第1開口面S1に対する法線方向に流れるような態様をいう。
【0111】
特に、本実施形態のように、中間導体52Nの対向配策部52bに、コンデンサ通電経路B1を流れる高周波電流とは逆向きに高周波電流が流れるように構成されているのが好ましい。これにより、コンデンサ通電経路B1を図14中の下向きに流れる高周波電流によって生じる磁束と、対向配策部52bを図14中の上向きに流れる高周波電流によって生じる磁束と、が互いに打ち消し合うように作用する。したがって、コンデンサ通電経路B1を流れる高周波電流の影響によりコモンモード通電経路B2に対して鎖交して流れる磁束をより少なく抑えるのに効果がある。
【0112】
これに対して、中間導体52Nの対向配策部52bが各第1コンデンサ10Aの対向面17と対向していない構造の場合、各第1コンデンサ10Aの対向面17から漏れ出した磁束がコモンモード通電経路B2により区画形成される第1開口面S1を横切るように流れる。したがって、電磁誘導によってコモンモード通電経路B2にノイズ電流Cが発生する要因に成り得る。そこで、本実施形態のように対向配策部52bを対向面17に対向させて配置する構造を採用すれば、コンデンサ通電経路B1を流れる高周波電流の影響で第1開口面S1を横切るように鎖交して流れる磁束の量を減らすことができ、コモンモード通電経路B2におけるコモンモードノイズ(実施形態5で説明の「コモンモードノイズ」を参照)の発生を抑えることができる。
【0113】
その他、実施形態5と同様の作用効果を奏する。
【0114】
図15に示されるように、実施形態8の電力変換装置800に特に関連する変更例では、中間導体52Nに対向配策部52bを設けることに加えて、中間導体52Pに対向配策部52aを設けるようにしている。そして、各第1コンデンサ10Aの対向面17のうち第3方向Zの上側領域に中間導体52Pの対向配策部52aを対向させ、且つ、各第1コンデンサ10Aの対向面17のうち第3方向Zの残りの下側領域に中間導体52Nの対向配策部52bを対向させている。すなわち、2つの中間導体52P,52Nによって、各第1コンデンサ10Aの対向面17に対する対向配策部52a,52bが構成されている。対向配策部52aと対向配策部52bではいずれも高周波電流が図15中の上向きに流れるため、コンデンサ通電経路B1を流れる高周波電流の向きと逆向きの関係になっている。
【0115】
本構成の場合も、中間導体52Nの対向配策部52bのみを各第1コンデンサ10Aの対向面17の全面に対向するように配置する構造の場合と同様の作用効果が得られる。なお、別の変更例では、中間導体52Pの対向配策部52aのみが、各第1コンデンサ10Aの対向面17の全面に対向するようにしてもよい。
【0116】
(実施形態9)
図16及び図17に示されるように、実施形態9の電力変換装置900は、コンデンサモジュール901と、コンデンサモジュール901に電力変換可能に接続されたインバータ502と、コンデンサモジュール901及びインバータ502を収容する導電性の筐体3と、を備えている。この電力変換装置900は、被覆部材55とインバータ磁気シールド部56を備える点についてのみ、実施形態8の電力変換装置800の構造と相違している。
【0117】
電力変換装置900において、被覆部材55は、複数の第1コンデンサ10Aのうち第2方向Yの両側の第1コンデンサ10Aの外表面18を被覆するように設けられている。この被覆部材55は、第1コンデンサ10Aの外表面18から漏れ出す漏れ磁束を抑制する機能を有する。この機能を達成するために、被覆部材55は、磁気シールド性能を有する材料からなる。典型的には、磁束を吸収する強磁性体によって被覆部材55が構成されるのが好ましい。この被覆部材55によれば、第1コンデンサ10Aの外表面18から漏れ出した漏れ磁束がコンデンサモジュール901のコモンモード通電経路B2(図17を参照)に対して鎖交して流れるのを抑制することができる。なお、被覆部材55は、中間導体52Pまたは中間導体52Nと電気的に接続されても良い。
【0118】
電力変換装置900において、インバータ磁気シールド部56は、インバータ502のうちコモンモード通電経路B2に対向する対向面502bに設けられている。このインバータ磁気シールド部56は、2つの機能を果たす。第1の機能は、インバータ502を流れる高周波電流により発生する磁束がコンデンサモジュール901のコモンモード通電経路B2に対して鎖交して流れるのを抑制する磁気シールド機能である。第2の機能は、インバータ502を冷却する冷却機能である。すなわち、インバータ磁気シールド部56は、インバータ502を冷却する冷却器として兼用されている。これら2つの機能を達成するために、インバータ磁気シールド部56は、磁気シールド性能を有し且つ熱伝導性の高い材料からなる。
【0119】
その他の構成は、実施形態8と同様である。
【0120】
インバータ502の内部には、高周波電流がエミッタ端子54Nから出力端子54Oを経由してコレクタ端子54Pへと流れるインバータ通電経路B3が形成される。インバータ通電経路B3に高周波電流が流れることによって磁束(図17中の二点鎖線矢印を参照)が発生する。このとき、インバータ502の対向面502bにインバータ磁気シールド部56を設けているため、インバータ通電経路B3を流れる高周波電流の影響で第1開口面S1を横切るように鎖交して流れる磁束の量を減らすことができ、コモンモード通電経路B2におけるコモンモードノイズの発生を抑えることができる。また、インバータ502で発生した熱は熱伝導によってインバータ磁気シールド部56側に移動して、インバータ磁気シールド部56から放熱される。これにより、インバータ502をインバータ磁気シールド部56によって冷却することが可能になる。なお、インバータ磁気シールド部56は筐体3と電気的に接続されていても良い。
【0121】
実施形態9の電力変換装置900によれば、インバータ磁気シールド部56がインバータ502の冷却を兼務しているため、装置の体格を小さく抑えるとともに装置コストを低く抑えることが可能になる。
【0122】
その他、実施形態8と同様の作用効果を奏する。
【0123】
実施形態9の電力変換装置900に特に関連する変更例では、被覆部材55とインバータ磁気シールド部56のいずれか一方を省略した構造を採用することができる。また、その他の変更例では、インバータ磁気シールド部56に冷却媒体が流れる冷媒流路を設けた冷却構造を採用することができる。これより、インバータ502を冷却する冷却効果を高めることが可能になる。
【0124】
(実施形態10)
図18及び図19に示されるように、実施形態10の電力変換装置1000は、コンデンサモジュール1001と、コンデンサモジュール1001に電力変換可能に接続されたインバータ502と、コンデンサモジュール1001及びインバータ502を収容する導電性の筐体3と、を備えている。この電力変換装置1000は、コンデンサモジュール1001のコモンモード通電経路B2(図19を参照)とインバータ502との相対位置についてのみ、実施形態8の電力変換装置800のものと相違している。
【0125】
図19に示されるように、電力変換装置1000において、インバータ502は、高周波電流が流れるインバータ通電経路B3により区画形成される第2開口面S2を有する。第2開口面S2は、コモンモード通電経路B2により区画形成される第1開口面S1に沿って延びている。ここで、コンデンサモジュール1001とインバータ502は、第1開口面S1と第2開口面S2がコモンモード通電経路B2に対する鎖交方向である第2方向Yについて互いに重ならないように配置されている。すなわち、電力変換装置1000を第2方向Yについてみたとき、第1開口面S1と第2開口面S2は第1方向Xに離間しては配置されており互いに重ならないように構成されている。
【0126】
その他の構成は、実施形態8と同様である。
【0127】
実施形態10の電力変換装置1000によれば、インバータ502のインバータ通電経路B3を高周波電流が流れることによって磁束(図19の実線矢印を参照)が発生したとき、この磁束が第1開口面S1を横切るように鎖交して流れるのを防ぐことが可能になる。その結果、コモンモード通電経路B2におけるコモンモードノイズの発生を抑えることができる。
【0128】
その他、実施形態8と同様の作用効果を奏する。
【0129】
実施形態10の電力変換装置1000に特に関連する変更例では、実施形態9の電力変換装置900の被覆部材55とインバータ磁気シールド部56の少なくとも一方を追加した構造を採用することもできる。これにより、コモンモード通電経路B2におけるコモンモードノイズの発生を抑える効果を強化することが可能になる。
【0130】
本発明は、上述の典型的な実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変形が考えられる。例えば、上述の実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0131】
上述の実施形態1~4のいずれか1つと、上述の実施形態5~10のいずれか1つを組み合わせることができる。これにより、ノーマルモードノイズの抑制とコモンモードノイズの抑制を両立することが可能になる。
【0132】
上述の実施形態では、車両用の電力変換装置について例示したが、この電力変換装置半の用途は車両用のみに限定されるものではなく、車両以外の機器に搭載される電力変換装置にも適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0133】
1…電源、3…筐体、10…コンデンサ、10A…第1コンデンサ、10P,10N…第2コンデンサ、11…正極面、12…負極面、13,14,15,16…外側面、17…対向面、18…側面(対向面とは別の外表面)、20…電源側通電部、21…第1正極導体、21b,31b…一対の正極側並走部、22…第1負極導体、22b,32b…一対の負極側並走部、30…インバータ側通電部、31…第2正極導体、32…第2負極導体、50…電源側通電部、50P,50N…中間端子(中間接続部)、51a,51b…電源側並走部、51P,51N…第1導体、52P,52N…中間導体、52a,52b…対向配策部(磁気シールド部)、53…磁気シールド部品(磁気シールド部)、55…被覆部材(磁気シールド部)、56…インバータ磁気シールド部(磁気シールド部)、61a,61b…グランド側並走部、61P,61N…第2導体、62…接地導体、62a…グランド側並走部、100,200,300,400,500,600,700,800,900,1000…電力変換装置、101,201,301,401,501,601,701,801,901,1001…コンデンサモジュール、102,502…インバータ、502b…対向面、B1…コンデンサ通電経路、B2…コモンモード通電経路、B3…インバータ通電経路、S1…第1通電経路面、S2…第2通電経路面、Y…第2方向(鎖交方向)
図1
図2
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