(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】建物の健全性評価システム
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20250214BHJP
G01V 1/30 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G01V1/30
(21)【出願番号】P 2021206571
(22)【出願日】2021-12-21
【審査請求日】2024-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】廣石 恒二
【審査官】川野 汐音
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-139853(JP,A)
【文献】特開2017-083236(JP,A)
【文献】特開2019-164007(JP,A)
【文献】特開2018-077104(JP,A)
【文献】特開2014-134436(JP,A)
【文献】特開2012-83172(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10028872(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 5/00
G01M 7/02
G01M 99/00
G01V 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の健全性を診断、評価する健全性評価システムであって、
柱及び梁を含んで前記建物に対応するように構成された立体骨組モデルを用いて、事前に静的増分解析を行い、当該解析において荷重を増加させる段階である増分ステップごとに、各層のエネルギー吸収量の解析値、及び前記柱及び前記梁を含む各部材のエネルギー吸収量の解析値を算出し、解析結果記録部に記録する解析部と、
前記建物に設置したセンサから得られる地震情報を記録する地震情報記録部と、
前記地震情報、及び前記建物の各層の重量に基づき、各層の層せん断力と層間変位を算出し、前記層せん断力及び前記層間変位に基づいて各層のエネルギー吸収量の推定値を計算するエネルギー吸収量の推定部と、
前記解析結果記録部に記録された、前記各層のエネルギー吸収量の解析値のなかから、前記各層のエネルギー吸収量の推定値との差分が最小となる各層のエネルギー吸収量の差分最小解析値を選択して、これに対応する前記増分ステップを、差分最小の増分ステップとして同定する増分ステップの同定部と、
前記差分最小の増分ステップに対応する前記各部材のエネルギー吸収量の解析値から、各部材のエネルギー吸収量の推定値を取得し、当該各部材のエネルギー吸収量の推定値と、前記各部材に対して設定された損傷判定閾値とを比較して、損傷程度を算定し、各部材の前記損傷程度に基づき、前記建物の健全性を判定する健全性判定部と、
を備えていることを特徴とする建物の健全性評価システム。
【請求項2】
前記解析部は、前記立体骨組モデルに対して前記建物が層崩壊するようにパラメータが設定された層崩壊型モデルと、前記立体骨組モデルに対して前記建物が全体崩壊するようにパラメータが設定された全体崩壊型モデルの各々に対して、静的増分解析を行って、増分ステップごとに、前記各層のエネルギー吸収量の解析値と、前記各部材のエネルギー吸収量の解析値を算出して前記解析結果記録部に記録し、
前記増分ステップの同定部は、前記解析結果記録部に記録された、前記層崩壊型モデルにおける前記各層のエネルギー吸収量の解析値と前記全体崩壊型モデルにおける前記各層のエネルギー吸収量の解析値の各組み合わせに対して、層ごとに、前記層崩壊型モデルにおける当該各層のエネルギー吸収量の解析値と前記全体崩壊型モデルにおける当該各層のエネルギー吸収量の解析値との和と、前記各層のエネルギー吸収量の推定値との差分を計算して、前記差分の全層における総和が最小となるような組み合わせである差分最小組み合わせを、前記各層のエネルギー吸収量の差分最小解析値として選択し、当該差分最小組み合わせ中の、前記層崩壊型モデルにおける前記各層のエネルギー吸収量の解析値と前記全体崩壊型モデルにおける前記各層のエネルギー吸収量の解析値に対応する、前記層崩壊型モデルにおける前記増分ステップと、前記全体崩壊型モデルにおける前記増分ステップを、それぞれ、第1差分最小の増分ステップと、第2差分最小の増分ステップとして同定し、
前記健全性判定部は、前記第1差分最小の増分ステップと、前記第2差分最小の増分ステップを基に、前記建物の健全性を判定することを特徴とする請求項1に記載の建物の健全性評価システム。
【請求項3】
前記健全性判定部は、部材ごとに、前記第1差分最小の増分ステップに対応する、前記層崩壊型モデルにおける前記各部材のエネルギー吸収量の解析値と、前記第2差分最小の増分ステップに対応する、前記全体崩壊型モデルにおける前記各部材のエネルギー吸収量の解析値の和を計算し、これを前記各部材のエネルギー吸収量の推定値として、前記損傷判定閾値と比較して、前記損傷程度を算定することを特徴とする請求項2に記載の建物の健全性評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の健全性を診断、評価する健全性評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地震発生後に、建物を直接目視しなくとも、建物の被災度合い等の、建物の構造性能すなわち健全性を把握することができる建物の健全性評価システムが、種々提案されている。このような建物の健全性評価システムにおいては、より高い精度で建物の健全性を把握することが望まれている。
例えば特許文献1には、多層構造の建物の観測層に設けられたセンサから得られる加速度データと観測層における損傷拡大の有無を示す損傷拡大情報とに基づいて、観測層における加速度データと観測層における損傷拡大の有無との関係を学習した建物損傷拡大検知モデルと、判定対象である判定層に設けられたセンサで取得された加速度データと、を用い、判定層における損傷拡大の有無を推定する構成の技術が開示されている。
特許文献1に開示されたような構成では、建物の観測層における損傷拡大の有無を推定することができるものの、建物の各層を構成する部材単位までの詳細な健全性の判定を行うことができるものではない。したがって、健全性の判定精度を高めようとしても、限度がある。
【0003】
これに対し、特許文献2には、構造物の構造フレームを形成する複数の構造部材の接合部に振動センサを設置し、接合部と接合部を構成する複数の構造部材を部分構造として分割し、接合部に接合した各構造部材に設置した振動センサの検出情報を入力、接合部の振動センサを出力として、各部分構造の動特性の入出力関係に基づいて、部分構造を構成する構造部材の損傷の有無及び損傷の程度を検出する構成が開示されている。
特許文献2に開示されたような構成では、構造部材単位での詳細な健全性の判定を行うことができるが、構造部材の接合部の各々に振動センサを設置する必要がある。このため、多数の振動センサの設置が必要となり、構成が複雑となるので、実現が容易ではない。
【0004】
また、特許文献3には、建物の複数の位置に設けられた複数のセンサを備え、複数のセンサで測定される、建物に主要動の到達前から到達後までの建物への地震の影響に基づいて、各位置における地震の建物への影響を測定するが開示されている。この構成においては、複数のセンサの測定結果から変位量及び層間変形角を算出し、建物の階層ごと、及記建物の構造要素(部材)ごとに、建物の健全性を評価している。
特許文献3に開示されたような構成においても、部材単位での詳細な健全性の評価を行うことができるが、そのためには部材ごとにセンサを設置する必要がある。このため、多数のセンサの設置が必要となり、システムの構成が複雑となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-8332号公報
【文献】特開2015-4526号公報
【文献】特開2020-143895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、簡易な構成で、健全性を精度よく判定することができる、建物の健全性評価システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の建物の健全性評価システムは、建物の健全性を診断、評価する健全性評価システムであって、柱及び梁を含んで前記建物に対応するように構成された立体骨組モデルを用いて、事前に静的増分解析を行い、当該解析において荷重を増加させる段階である増分ステップごとに、各層のエネルギー吸収量の解析値、及び前記柱及び前記梁を含む各部材のエネルギー吸収量の解析値を算出し、解析結果記録部に記録する解析部と、前記建物に設置したセンサから得られる地震情報を記録する地震情報記録部と、前記地震情報、及び前記建物の各層の重量に基づき、各層の層せん断力と層間変位を算出し、前記層せん断力及び前記層間変位に基づいて各層のエネルギー吸収量の推定値を計算するエネルギー吸収量の推定部と、前記解析結果記録部に記録された、前記各層のエネルギー吸収量の解析値のなかから、前記各層のエネルギー吸収量の推定値との差分が最小となる各層のエネルギー吸収量の差分最小解析値を選択して、これに対応する前記増分ステップを、差分最小の増分ステップとして同定する増分ステップの同定部と、前記差分最小の増分ステップに対応する前記各部材のエネルギー吸収量の解析値から、各部材のエネルギー吸収量の推定値を取得し、当該各部材のエネルギー吸収量の推定値と、前記各部材に対して設定された損傷判定閾値とを比較して、損傷程度を算定し、各部材の前記損傷程度に基づき、前記建物の健全性を判定する健全性判定部と、を備えていることを特徴とする。
このような構成によれば、柱及び梁を含んで建物に対応するように構成された立体骨組モデルを用いて静的増分解析を行い、この静的増分解析において荷重を増加させる段階である増分ステップごとに算出された、各層のエネルギー吸収量の解析値と、柱及び梁を含む各部材のエネルギー吸収量の解析値とが、解析部によって算出されて、解析結果記録部に記録されている。地震が生じた際には、エネルギー吸収量の推定部が、建物に設置したセンサから得られた地震情報、及び建物の各層の重量に基づいて、建物の各層におけるエネルギー吸収量の推定値を計算する。健全性判定部は、各層のエネルギー吸収量の解析値のなかから、各層のエネルギー吸収量の推定値との差分が最小となる各層のエネルギー吸収量の差分最小解析値を選択することによって、選択された各層のエネルギー吸収量の差分最小解析値に対応する、当該差分最小解析値が結果として出力された増分ステップを、差分最小の増分ステップとして同定する。このようにして同定された差分最小の増分ステップにおいては、地震情報が取得された地震が生じた際に各層が吸収したエネルギーと同程度のエネルギーを各層が吸収するように、荷重が増加された状態となっている。したがって、静的増分解析の、この差分最小の増分ステップの段階における各部材のエネルギー吸収量の解析値は、地震情報が取得された地震が生じた際に、各部材が吸収したエネルギーの量に近い値と考えられる。したがって、差分最小の増分ステップに対応する各部材のエネルギー吸収量の解析値から、各部材のエネルギー吸収量の推定値を取得し、当該各部材のエネルギー吸収量の推定値に基づき、損傷判定閾値との比較により損傷程度を算定することによって、建物を構成する各部材の損傷程度を評価し、建物の健全性を判定することができる。
このようにして、建物を構成する部材に生じる損傷の有無、及びその損傷程度を推定することによって、部材ごとに損傷評価を行うことができ、高精度で、信頼性の高い建物の健全性評価を行うことができる。
更に、上記のような構成においては、部材ごとに損傷評価を行うことができるにもかかわらず、部材ごとにセンサを設けなくともよいため、センサの数を多く必要としない。
したがって、簡易な構成で、健全性を精度よく判定することができる、建物の健全性評価システムを提供可能である。
【0008】
本発明の一態様においては、前記解析部は、前記立体骨組モデルに対して前記建物が層崩壊するようにパラメータが設定された層崩壊型モデルと、前記立体骨組モデルに対して前記建物が全体崩壊するようにパラメータが設定された全体崩壊型モデルの各々に対して、静的増分解析を行って、増分ステップごとに、前記各層のエネルギー吸収量の解析値と、前記各部材のエネルギー吸収量の解析値を算出して前記解析結果記録部に記録し、前記増分ステップの同定部は、前記解析結果記録部に記録された、前記層崩壊型モデルにおける前記各層のエネルギー吸収量の解析値と前記全体崩壊型モデルにおける前記各層のエネルギー吸収量の解析値の各組み合わせに対して、層ごとに、前記層崩壊型モデルにおける当該各層のエネルギー吸収量の解析値と前記全体崩壊型モデルにおける当該各層のエネルギー吸収量の解析値との和と、前記各層のエネルギー吸収量の推定値との差分を計算して、前記差分の全層における総和が最小となるような組み合わせである差分最小組み合わせを、前記各層のエネルギー吸収量の差分最小解析値として選択し、当該差分最小組み合わせ中の、前記層崩壊型モデルにおける前記各層のエネルギー吸収量の解析値と前記全体崩壊型モデルにおける前記各層のエネルギー吸収量の解析値に対応する、前記層崩壊型モデルにおける前記増分ステップと、前記全体崩壊型モデルにおける前記増分ステップを、それぞれ、第1差分最小の増分ステップと、第2差分最小の増分ステップとして同定し、前記健全性判定部は、前記第1差分最小の増分ステップと、前記第2差分最小の増分ステップを基に、前記建物の健全性を判定する。
ここで、上記でいう「層崩壊するようにパラメータが設定された層崩壊型モデル」は、具体的には、柱梁接合部において柱が先行して降伏する層崩壊機構が形成されるように、梁、パネルの各耐力を十分大きく設定した立体骨組モデルである。また、上記でいう「全体崩壊するようにパラメータが設定された全体崩壊型モデル」は、具体的には、柱梁接合部において梁あるいは接合部パネルが先行して降伏する全体崩壊機構が形成されるように、1層柱脚部と最上層柱頭部以外の柱耐力を十分大きく設定した立体骨組モデルである。
このような構成によれば、立体骨組モデルに対して建物が層崩壊するようにパラメータが設定された層崩壊型モデルと、立体骨組モデルに対して建物が全体崩壊するようにパラメータが設定された全体崩壊型モデルの各々に対して、静的増分解析を行う。解析結果記録部に記録された、層崩壊型モデルにおける各層のエネルギー吸収量の解析値と全体崩壊型モデルにおける各層のエネルギー吸収量の解析値の、各組み合わせに対して、層ごとに、層崩壊型モデルにおける各層のエネルギー吸収量の解析値と全体崩壊型モデルにおける各層のエネルギー吸収量の解析値との和と、各層のエネルギー吸収量の推定値との差分を計算して、この差分の全層における総和が最小となるような組み合わせである差分最小組み合わせを、各層のエネルギー吸収量の差分最小解析値として選択する。そして、このようにして選択された差分最小組み合わせに対応する、層崩壊型モデルにおける増分ステップと、全体崩壊型モデルにおける増分ステップを、それぞれ、第1差分最小の増分ステップ、及び第2差分最小の増分ステップとして同定する。
ここで、静的増分解析によって、層崩壊と全体崩壊がそれぞれ、上記のようにして同定された第1差分最小の増分ステップ及び第2差分最小の増分ステップまで進行した状態を組み合わせると、各層のエネルギー吸収量が、地震情報が取得された地震が生じた際におけるエネルギー吸収量の推定値と近い値となっている。すなわち、第1差分最小の増分ステップと第2差分最小の増分ステップは、地震情報が取得された地震における、層崩壊と全体崩壊の各々の進行度と見做すことができる。
このようにして同定された、第1差分最小の増分ステップと、第2差分最小の増分ステップとに基づいて、建物の健全性を判定することにより、実際に生じた地震荷重によって建物に生じる被害に、より近い崩壊状態を推定し、建物の健全性の評価を、より高い精度で行うことができる。
【0009】
本発明の一態様においては、前記健全性判定部は、部材ごとに、前記第1差分最小の増分ステップに対応する、前記層崩壊型モデルにおける前記各部材のエネルギー吸収量の解析値と、前記第2差分最小の増分ステップに対応する、前記全体崩壊型モデルにおける前記各部材のエネルギー吸収量の解析値の和を計算し、これを前記各部材のエネルギー吸収量の推定値として、前記損傷判定閾値と比較して、前記損傷程度を算定する。
上記のようにして同定された第1差分最小の増分ステップに対応する、層崩壊型モデルにおける各部材のエネルギー吸収量の解析値と、第2差分最小の増分ステップに対応する、全体崩壊型モデルにおける各部材のエネルギー吸収量の解析値とを、それぞれ求める。既に説明したように、第1差分最小の増分ステップと第2差分最小の増分ステップは、地震情報が取得された地震における、層崩壊と全体崩壊の各々の進行度であるから、上記のようにして求められた、第1差分最小の増分ステップと第2差分最小の増分ステップのそれぞれに対応する、各部材のエネルギー吸収量の解析値の和は、地震情報が取得された地震が生じた際に、各部材が吸収したエネルギーに近い値と考えられる。この和を、各部材のエネルギー吸収量の推定値として、部材ごとに、損傷判定閾値と比較することで、建物の健全性を判定することで、建物の健全性の評価を、より高い精度で行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡易な構成で、健全性を精度よく判定することができることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態における建物の健全性評価システムの概略構成を示す図である。
【
図2】層崩壊型の崩壊機構を模式的に示す図である。
【
図3】全体崩壊型の崩壊機構を模式的に示す図である。
【
図4】実際の地震時の崩壊機構の一例を示す図であって、層崩壊型と全体崩壊型とが組み合わさった崩壊機構を模式的に示す図である。
【
図5】立体骨組モデルを構成する部材について説明するための図である。
【
図6】層崩壊型の立体骨組モデルにおける静的増分解析の例を示す図である。
【
図7】全体崩壊型の立体骨組モデルにおける静的増分解析の例を示す図である。
【
図8】層崩壊型モデルにおけるエネルギー吸収量と、全体崩壊型モデルにおけるエネルギー吸収量とを組み合わせることで、地震発生時おける建物の各層におけるエネルギー吸収量を推定することをイメージで示す図である
【
図9】部材が1サイクル変形した場合における、部材のエネルギー吸収量を示す図である。
【
図10】建物の健全性評価システムにおける、建物の健全性評価方法の流れを示すフローチャートである。
【
図11】本実施形態における建物の健全性評価システムにより、モデル1に対して、建物を構成する各部材のエネルギー吸収量を推定した場合の検証例を示す図である。
【
図12】本実施形態における建物の健全性評価システムにより、モデル2に対して、建物を構成する各部材のエネルギー吸収量を推定した場合の検証例を示す図である。
【
図13】本実施形態における建物の健全性評価システムにより、モデル3に対して、建物を構成する各部材のエネルギー吸収量を推定した場合の検証例を示す図である。
【
図14】本実施形態における建物の健全性評価システムにより、モデル4に対して、建物を構成する各部材のエネルギー吸収量を推定した場合の検証例を示す図である。
【
図15】本実施形態における建物の健全性評価システムにより、モデル5に対して、建物を構成する各部材のエネルギー吸収量を推定した場合の検証例を示す図である。
【
図16】本実施形態における建物の健全性評価システムにより、モデル6に対して、建物を構成する各部材のエネルギー吸収量を推定した場合の検証例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明による建物の健全性評価システム1を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
本実施形態における建物の健全性評価システム1の概略構成を
図1に示す。
本発明は、柱及び梁を含む建物を対象として、柱梁で構成される立体骨組モデルを用いた静的増分解析結果と、建物に設置したセンサから得られる地震情報に基づき、建物の各層、及び各部材でのエネルギー吸収量を推定した後、エネルギー吸収量の推定値と各部材に設定された損傷判定閾値と比較して、各部材の損傷程度を算定し、建物の健全性を診断、評価する建物の健全性モニタリングシステムである。
図1に示されるように、建物の健全性評価システム1は、建物10と、評価装置20と、を備えている。建物の健全性評価システム1は、地震発生後の建物10の健全性を評価する。
建物10は、地盤上に構築され、上下方向に複数の層11を有している。本実施形態においては、建物10は、所謂ラーメン架構として構築されている。建物10は、層数や、構造(鉄筋コンクリート造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造等)について何ら限定するものではない。
建物10には、センサ12が設けられている。センサ12は、本実施形態においては、建物10の各層11に設置されている。各センサ12は、地震発生時に予め設定された閾値を超える揺れを検知すると、建物10の各層11における加速度波形データを検出する。センサ12は、それぞれメモリ(図示無し)と、通信部(図示無し)と、を備えている。センサ12は、それぞれ、検出した加速度波形データを、地震情報としてメモリ(図示無し)に保存する。センサ12は、地震終了後、メモリに保存した加速度波形データを、通信部から外部のネットワーク100を介して評価装置20に転送する。
ここで、外部のネットワーク100とは、例えば、通信部と無線による通信を行うことのできる公衆無線網等である。通信部は、センサ12で検出された地震情報を、
図1に示すように外部のネットワーク100を介して評価装置20に送信する。
【0013】
評価装置20は、無線又は有線により、外部のネットワーク100に接続されている。評価装置20は、センサ12で検出した地震情報を基に、建物10の健全性を評価する。
図2は、層崩壊型の崩壊機構を模式的に示す図である。
図3は、全体崩壊型の崩壊機構を模式的に示す図である。
図4は、実際の地震時の崩壊機構の一例を示す図であって、層崩壊型と全体崩壊型とが組み合わさった崩壊機構を模式的に示す図である。
建物10の躯体を構成するラーメン架構が強震動を受けた場合、部材の塑性化が生じ崩壊機構が形成される。崩壊機構は、
図2に示すように、柱梁接合部において柱が先行して降伏する「層崩壊型」と、
図3に示すように、梁あるいは柱と梁の接合部が先行して降伏する「全体崩壊型」と、に大別される。崩壊機構は、柱、梁、柱と梁の接合部の耐力比に基づき設計時に想定されるが、実際の強震時には入力方向や部材耐力のばらつきの影響を受けるため、想定通りの崩壊機構が形成されるとは限らない。また、部材間耐力比が極端な値でない限りは、
図4に示すように、強震時には、「層崩壊型」と「全体崩壊型」が混合した損傷分布を示す可能性が高い。このため、センサ12によるモニタリングにより、各層の層間変形角がわかったとしても、その時に形成された崩壊機構により、損傷する部材及びその程度は異なると考えられる。
そこで、評価装置20は、センサ12で検出した地震情報に基づいて、建物10に生じた層崩壊型の崩壊機構、及び全体崩壊型の崩壊機構の、それぞれの進行度を推定し、その推定結果に基づいて、建物10の各部材に生じた損傷程度を推定し、各部材の損傷程度に基づき、建物の健全性を判定する。
ここで、上記でいう「層崩壊するようにパラメータが設定された層崩壊型モデル」は、具体的には、柱梁接合部において柱が先行して降伏する層崩壊機構が形成されるように、梁、パネルの各耐力を十分大きく設定した立体骨組モデルである。また、上記でいう「全体崩壊するようにパラメータが設定された全体崩壊型モデル」は、具体的には、柱梁接合部において梁あるいは接合部パネルが先行して降伏する全体崩壊機構が形成されるように、1層柱脚部と最上層柱頭部以外の柱耐力を十分大きく設定した立体骨組モデルである。
【0014】
図1に示されるように、評価装置20は、解析部21と、解析結果記録部27と、地震情報記録部22と、エネルギー吸収量の推定部23と、増分ステップの同定部24と、健全性判定部25と、を主に備えている。
解析部21は、
図2、
図3に示されるような、建物10に対応するように構成された立体骨組モデルMを用いた解析を、事前に行うことによって、建物10の各層11のエネルギー吸収量の解析値と、建物10を構成する各部材のエネルギー吸収量の解析値と、を算出する。解析結果記録部27は、いわゆるデータベースであり、解析部21で算出された、建物10の各層11のエネルギー吸収量の解析値と、建物10を構成する各部材のエネルギー吸収量の解析値と、が記録されている。
図5は、立体骨組モデルを構成する部材について説明するための図である。
解析部21は、
図5に示すように、柱16及び梁17を含んで構成された立体骨組モデルMを、解析に用いる。立体骨組モデルMにおいて、柱16、梁17は、それぞれ、軸、せん断、曲げ、及びねじり方向の変形を考慮できる要素として線材置換する。柱16、梁17は、地震時に両端が塑性化するため、柱16、梁17に関しては、両端部16a、16b、17a、17bのそれぞれでエネルギー吸収量を算出する。柱16と梁17との接合部は、剛梁19aと弾塑性バネ要素による斜め材19bとで構成されるパネル19として取り扱い、エネルギー吸収量が算出される。
【0015】
解析部21は、
図2に示すような、立体骨組モデルMに対して建物10が層崩壊するようにパラメータが設定された層崩壊型モデルM1と、
図3に示すような、立体骨組モデルMに対して建物10が全体崩壊するようにパラメータが設定された全体崩壊型モデルM2と、を用いて静的増分解析を行う。層崩壊型モデルM1は、梁、パネルの耐力を十分大きくし、静的増分解析の際に層崩壊が進行するように、各パラメータが設定されている。全体崩壊型モデルM2は、最下層の柱脚部と最上層の柱頭部以外に関して、柱の端部の曲げ耐力を十分大きくし、静的増分解析の際に全体崩壊が進行するように、各パラメータが設定されている。
図6は、層崩壊型の立体骨組モデルにおける静的増分解析の例を示す図である。
図7は、全体崩壊型の立体骨組モデルにおける静的増分解析の例を示す図である。
静的増分解析は、建物10の立体骨組モデルM1、M2に作用させる荷重、すなわち地震力を、段階的に増加させていき、増加させる段階である増分ステップの各々における、建物の挙動を解析するものである。
図6、7の各々においては、左側に、静的増分解析を開始してから間もなく、各層及び各部材のエネルギー吸収量が小さい状態であるi1番目の増分ステップが示されている。右側には、i1番目の増分ステップから更に荷重の載荷が進み、各層及び各部材のエネルギー吸収量が増大し、層崩壊または全体崩壊が進行した状態であるi2番目の増分ステップが示されている。
静的増分解析においては、建物10の高さ、各層11の重量、及び設計用1次固有周期から、外力分布であるAi分布が決定される。静的増分解析においては、Ai分布を満たしたまま、外力を漸増させていくように、計算がなされる。
【0016】
次に、解析部21は、静的増分解析の結果を基に、静的増分解析における増分ステップごとに、各層のエネルギー吸収量の解析値、及び柱16及び梁17を含む各部材のエネルギー吸収量の解析値を算出する。
このために、まず、解析部21は、層崩壊型モデルM1に対する静的増分解析の結果を基に、水平面内に位置する一方向であるX方向と、水平面内でX方向に直交する方向であるY方向の各々を荷重方向として、静的増分解析において荷重を増加させる段階である増分ステップごとに、各層のエネルギー吸収量と、各部材(柱16、梁17、パネル19)のエネルギー吸収量と、を算出し、これらを各層のエネルギー吸収量の解析値と、各部材のエネルギー吸収量の解析値として、解析結果記録部27に記録する。
実際には、解析部21は、次のような値を算出する。
sE
wcX(i,j):層崩壊型モデルM1の静的増分解析結果における、X方向載荷時の、i段階目の増分ステップにおける、下からj番目の層のエネルギー吸収量の解析値
sE
wcY(i,j):層崩壊型モデルM1の静的増分解析結果における、Y方向載荷時の、i段階目の増分ステップにおける、下からj番目の層のエネルギー吸収量の解析値
eE
wcX(i,k):層崩壊型モデルM1の静的増分解析結果における、X方向載荷時の、i段階目の増分ステップにおける、k番目の部材のエネルギー吸収量の解析値
eE
wcY(i,k):層崩壊型モデルM1の静的増分解析結果における、Y方向載荷時の、i段階目の増分ステップにおける、k番目の部材のエネルギー吸収量の解析値
図6に示すように、層崩壊型モデルM1では、水平面に沿った荷重方向(X方向、Y方向)への載荷荷重を、増分ステップを経るごとに、段階的に増やしていくと、最終的に、最下層で崩壊が生じており、上方の層に比較し、最下層におけるエネルギー吸収量が顕著に大きくなっている。また、最下層での崩壊は、主に柱の損傷によるものであり、最下層の柱におけるエネルギー吸収量は、柱以外の梁、パネル等に比較し、著しく大きくなっている。
【0017】
また、解析部21は、全体崩壊型モデルM2に対する静的増分解析の結果を基に、X方向とY方向のそれぞれについて、増分ステップごとに、各層のエネルギー吸収量と、各部材(柱16、梁17、パネル19)のエネルギー吸収量と、を算出し、これらを各層のエネルギー吸収量の解析値と、各部材のエネルギー吸収量の解析値として、解析結果記録部27に記録する。
実際には、解析部21は、次のような値を算出する。
sE
osX(i,j):全体崩壊型モデルM2の静的増分解析結果における、X方向載荷時の、i段階目の増分ステップにおける、下からj番目の層のエネルギー吸収量の解析値
sE
osY(i,j):全体崩壊型モデルM2の静的増分解析結果における、Y方向載荷時の、i段階目の増分ステップにおける、下からj番目の層のエネルギー吸収量の解析値
eE
osX(i,k):全体崩壊型モデルM2の静的増分解析結果における、X方向載荷時の、i段階目の増分ステップにおける、k番目の部材のエネルギー吸収量の解析値
eE
osY(i,k):全体崩壊型モデルM2の静的増分解析結果における、Y方向載荷時の、i段階目の増分ステップにおける、k番目の部材のエネルギー吸収量の解析値
図7に示すように、全体崩壊型モデルM2では、平面に沿った荷重方向(X方向、Y方向)への載荷荷重を段階的に増やしていくと、建物10の全体の層で、エネルギー吸収量が大きくなっていく。また、部材についても同様に、それぞれのエネルギー吸収量が大きくなっている。各層においては、柱に限らず、梁、パネル等についても、エネルギー吸収量が増大している。
【0018】
地震が発生すると、地震情報記録部22は、外部のネットワーク100を介して建物10のセンサ12の通信部14から送信される地震情報を記録する。地震情報記録部22は、地震発生時に、センサ12で検出された、建物10の各層11における加速度波形データを記録する。
エネルギー吸収量の推定部23は、センサ12で検出される地震情報、及び建物10の各層11の重量に基づき、各層11の層せん断力と層間変位を算出し、層せん断力と層間変位に基づいて各層のエネルギー吸収量の推定値を計算する。
【0019】
まず、エネルギー吸収量の推定部23は、地震時にセンサ12で得られた各層11の加速度波形データと、各層11の重量に基づき、各層11における層せん断力を算出する。
より詳細には、QX(j)、QY(j)、QZ(j)を、それぞれ、j番目の層における、X方向、Y方向、及びX方向とY方向の各々に直交するZ方向の層せん断力、FX(j)、FY(j)、FZ(j)を、それぞれ、j番目の層における、X方向、Y方向、及びZ方向の慣性力とする。このとき、最上階では、QX(j)、QY(j)、QZ(j)は、それぞれ、
QX(j)=FX(j)、
QY(j)=FY(j)、
QZ(j)=FZ(j)、
と表される。また、最上階以外では、下からj番目の層に作用する層せん断力は、より上の層における慣性力の和となるので、層の総数をTとすると、
【数1】
と表される。なお、FX(j)、FY(j)、FZ(j)は、Mass(j)をj番目の層の重量、abACCX(j)、abACCY(j)、abACCZ(j)を、それぞれ、j番目の層におけるX方向、Y方向、Z方向の観測加速度とすると、次のように表される。
FX(j)=-Mass(j)×abACCX(j)
FY(j)=-Mass(j)×abACCY(j)
FZ(j)=-Mass(j)×abACCZ(j)
層間変位は、各層11における加速度波形の2階積分を上下層で差分することにより算出される。
【0020】
次に、エネルギー吸収量の推定部23は、上記のようにして算出された各層11における層せん断力と、層間変位とに基づいて、水平2方向(X方向、Y方向)のそれぞれについて、各層11におけるエネルギー吸収量の推定値を計算する。
実際には、エネルギー吸収量の推定部23は、次のような値を算出する。
sEobsX(j):地震情報を基に計算した、X方向における、下からj番目の層のエネルギー吸収量の推定値
sEobsY(j):地震情報を基に計算した、Y方向における、下からj番目の層のエネルギー吸収量の推定値
である。
具体的には、エネルギー吸収量の推定部23は、地震情報から計算した各層11における層せん断力と、層間変位との関係における履歴面積に基づいて、上記の、各層11におけるエネルギー吸収量の推定値sEobsX(j)、sEobsY(j)を計算する。
【0021】
増分ステップの同定部24は、解析結果記録部27に記録された、各層11のエネルギー吸収量の解析値のなかから、各層のエネルギー吸収量の推定値sEobsX(j)、sEobsY(j)との差分が最小となる各層のエネルギー吸収量の差分最小解析値を選択して、これに対応する増分ステップを、差分最小の増分ステップとして同定する。以下、増分ステップの同定部24について、詳細に説明する。
nwcXを、層崩壊型モデルM1の静的増分解析結果における、X方向載荷時の、荷重を増加させる段階である増分ステップの総数、nwcYを、層崩壊型モデルM1の静的増分解析結果における、Y方向載荷時の、荷重を増加させる段階である増分ステップの総数、nosXを、全体崩壊型モデルM2の静的増分解析結果における、X方向載荷時の、荷重を増加させる段階である増分ステップの総数、nosYを、全体崩壊型モデルM2の静的増分解析結果における、Y方向載荷時の、荷重を増加させる段階である増分ステップの総数とする。
【0022】
層崩壊型モデルM1の静的増分解析結果におけるX方向載荷時の増分ステップは総数がn
wcXであり、全体崩壊型モデルM2の静的増分解析結果におけるX方向載荷時の増分ステップは総数がn
osXであるから、層崩壊型モデルM1の静的増分解析結果におけるX方向載荷時の、各層のエネルギー吸収量の解析値と、全体崩壊型モデルM2の静的増分解析結果におけるX方向載荷時の、各層のエネルギー吸収量の解析値との組み合わせは、n
wcX×n
osX個存在する。
増分ステップの同定部24は、これらn
wcX×n
osX個の全ての組み合わせに対して、次の式(1)によってX方向載荷時層エネルギー差分e
xを計算して、X方向載荷時層エネルギー差分e
xが最も小さくなるような組み合わせである差分最小組み合わせを、各層のエネルギー吸収量の差分最小解析値として選択し、この差分最小組み合わせ中の、層崩壊型モデルM1における各層のエネルギー吸収量の解析値と全体崩壊型モデルM2における各層のエネルギー吸収量の解析値に対応する、層崩壊型モデルM1の静的増分解析結果におけるX方向載荷時の増分ステップi
wcX(1≦i
wcX≦n
wcX)と、全体崩壊型モデルM2の静的増分解析結果におけるX方向載荷時の増分ステップi
osX(1≦i
osX≦n
osX)の組み合わせを同定する。
【数2】
【0023】
同様に、層崩壊型モデルM1の静的増分解析結果におけるY方向載荷時の、各層のエネルギー吸収量の解析値と、全体崩壊型モデルM2の静的増分解析結果におけるY方向載荷時の、各層のエネルギー吸収量の解析値との組み合わせは、n
wcY×n
osY個存在する。
増分ステップの同定部24は、これらn
wcY×n
osY個の全ての組み合わせに対して、次の式(2)によってY方向載荷時層エネルギー差分e
Yを計算して、Y方向載荷時層エネルギー差分e
Yが最も小さくなるような組み合わせである差分最小組み合わせを、各層のエネルギー吸収量の差分最小解析値として選択し、この差分最小組み合わせ中の、層崩壊型モデルM1における各層のエネルギー吸収量の解析値と全体崩壊型モデルM2における各層のエネルギー吸収量の解析値に対応する、層崩壊型モデルM1の静的増分解析結果におけるY方向載荷時の増分ステップi
wcY(1≦i
wcY≦n
wcY)と、全体崩壊型モデルM2の静的増分解析結果におけるY方向載荷時の増分ステップi
osY(1≦i
osY≦n
osY)の組み合わせを同定する。
【数3】
【0024】
増分ステップの同定部24及び後に説明する健全性判定部25の動作は、建物10の損傷がある程度進んだときに地震動を受けたときの、各層(及び各部材)のエネルギー吸収量と、同じ地震動を建物10が新築の状態で受けた場合の、各層(及び各部材)のエネルギー吸収量が、同じという前提に基づいている。
例えば、建物10の全体崩壊が進行し、その後に、層崩壊が進行するような場合を考える。このような場合において、建物10が最終的に吸収するエネルギー量Eaは、建物10が新築のときから全体崩壊が進行し終えた時点までに吸収するエネルギー量E1と、全体崩壊が進行し終えた時点から層崩壊が進行し終えた時点までに吸収するエネルギー量E2の和E1+E2と考えることができる。
ここで、上記のような前提によれば、全体崩壊が進行し終えた時点から層崩壊が進行し終えた時点までに吸収するエネルギー量E2は、建物10が新築のときから(全体崩壊を経ずに)層崩壊が進行し終えた時点までに吸収するエネルギー量E2´と等しいこととなる。すなわち、上記の和E1+E2は、建物10が新築のときから全体崩壊が進行し終えた時点までに吸収するエネルギー量E1と、建物10が新築のときから(全体崩壊を経ずに)層崩壊が進行し終えた時点までに吸収するエネルギー量E2´の和E1+E2´に等しくなる。
したがって、上記のような前提に基づくと、各層及び各部材のエネルギー吸収量という観点からすれば、仮に建物10に層崩壊と全体崩壊が、それぞれ前後して、あるいは同時に、進行したとしても、これは、建物10に層崩壊と全体崩壊が個別に、それぞれある程度の段階だけ進行した状態を、合算したものであると見做すことができる。
【0025】
図8は、層崩壊型モデルにおけるエネルギー吸収量と、全体崩壊型モデルにおけるエネルギー吸収量とを組み合わせることで、地震発生時おける建物の各層におけるエネルギー吸収量を推定することをイメージで示す図である。
上記のような考察に基づき、本実施形態においては、実際に地震が生じた際に、当該地震によって建物10に層崩壊と全体崩壊がそれぞれ作用したと仮定して、地震情報から算出される各層のエネルギー吸収量の推定値sE
obsX(j)、sE
obsY(j)が、解析結果記録部27に記録された、層崩壊型モデルM1を用いた静的増分解析の、いずれかの段階(すなわち増分ステップi
wcX、i
wcY)の各層のエネルギー吸収量の解析値sE
wcX(i
wcX,j)、sE
wcY(i
wcY,j)と、全体崩壊型モデルM2を用いた静的増分解析の、いずれかの段階(すなわち増分ステップi
osX、i
osY)の各層のエネルギー吸収量の解析値sE
osX(i
osX,j)、sE
osY(i
osY,j)と、の和として表すことができないかを検討する。
もし、地震情報から算出される各層のエネルギー吸収量の推定値sE
obsX(j)、sE
obsY(j)が、解析結果記録部27に記録された、層崩壊型モデルM1を用いた静的増分解析の、何らかの増分ステップi
wcX、i
wcYの各層のエネルギー吸収量の解析値sE
wcX(i
wcX,j)、sE
wcY(i
wcY,j)と、全体崩壊型モデルM2を用いた静的増分解析の、何らかの増分ステップi
osX、i
osYの各層のエネルギー吸収量の解析値sE
osX(i
osX,j)、sE
osY(i
osY,j)と、の和に一致し、または近似するようであれば、当該地震においては、層崩壊型モデルM1を用いた静的増分解析で層崩壊が増分ステップi
wcX、i
wcYだけ進んだ状態と、全体崩壊型モデルM2を用いた静的増分解析で全体崩壊が増分ステップi
osX、i
osYだけ進んだ状態とが、組み合わさった状態であると考えることができる。
【0026】
ここで、上記のような、式(1)として表されるX方向載荷時層エネルギー差分exは、層崩壊型モデルM1の静的増分解析結果におけるX方向載荷時の、ある増分ステップiwcXでのエネルギー吸収量の解析値sEwcX(iwcX,j)と、全体崩壊型モデルM2の静的増分解析結果におけるX方向載荷時の、ある増分ステップiosXでのエネルギー吸収量の解析値sEosX(iosX,j)との和の、層ごとの、地震情報から算出された、X方向におけるエネルギー吸収量sEobsX(j)との差分の、総和である。
したがって、式(1)のX方向載荷時層エネルギー差分exが最小となるような、層崩壊型モデルM1の静的増分解析結果におけるX方向載荷時のエネルギー吸収量の解析値sEwcX(iwcX,j)と、全体崩壊型モデルM2の静的増分解析結果におけるX方向載荷時のエネルギー吸収量の解析値sEosX(iosX,j)の組み合わせである差分最小組み合わせを、X方向における、各層のエネルギー吸収量の差分最小解析値として選択することにより、この差分最小組み合わせ中の、層崩壊型モデルM1における各層のエネルギー吸収量の解析値sEwcX(iwcX,j)と全体崩壊型モデルM2における各層のエネルギー吸収量の解析値sEosX(iosX,j)に対応する増分ステップiwcX、増分ステップiosXを、それぞれ第1差分最小の増分ステップiwcX、第2差分最小の増分ステップiosXとして、同定することができる。
同様に、上記のような、式(2)として表されるY方向載荷時層エネルギー差分eYは、層崩壊型モデルM1の静的増分解析結果におけるY方向載荷時の、ある増分ステップiwcYでのエネルギー吸収量の解析値sEwcY(iwcY,j)と、全体崩壊型モデルM2の静的増分解析結果におけるY方向載荷時の、ある増分ステップiosYでのエネルギー吸収量の解析値sEosY(iosY,j)との和の、層ごとの、地震情報から算出された、Y方向におけるエネルギー吸収量sEobsY(j)との差分の、総和である。
したがって、式(2)のY方向載荷時層エネルギー差分eYが最小となるような、層崩壊型モデルM1の静的増分解析結果におけるY方向載荷時のエネルギー吸収量の解析値sEwcY(iwcY,j)と、全体崩壊型モデルM2の静的増分解析結果におけるY方向載荷時のエネルギー吸収量の解析値sEosY(iosY,j)の組み合わせである差分最小組み合わせを、X方向における、各層のエネルギー吸収量の差分最小解析値として選択することにより、この差分最小組み合わせ中の、層崩壊型モデルM1における各層のエネルギー吸収量の解析値sEwcY(iwcY,j)と全体崩壊型モデルM2における各層のエネルギー吸収量の解析値sEosY(iosY,j)に対応する増分ステップiwcY、増分ステップiosYを、それぞれ第1差分最小の増分ステップiwcY、第2差分最小の増分ステップiosYとして、同定することができる。
【0027】
上記のような考察を基に、増分ステップの同定部24は、X方向に対し、層崩壊型モデルM1における各層のエネルギー吸収量の解析値sEwcX(i,j)と全体崩壊型モデルM2における各層のエネルギー吸収量の解析値sEosX(i,j)の、nwcX×nosX個の組み合わせの各々に対して、層11ごとに、層崩壊型モデルM1における各層のエネルギー吸収量の解析値sEwcX(i,j)と全体崩壊型モデルM2における各層のエネルギー吸収量の解析値sEosX(i,j)との和と、各層のエネルギー吸収量の推定値sEobsX(j)との差分を計算して、差分の全層における総和exが最小となるような解析値の組み合わせである差分最小組み合わせを、各層のエネルギー吸収量の差分最小解析値として選択し、当該差分最小組み合わせ中の、層崩壊型モデルM1における各層のエネルギー吸収量の解析値sEwcX(iwcX,j)と全体崩壊型モデルM2における各層のエネルギー吸収量の解析値sEosX(iosX,j)に対応する、層崩壊型モデルM1における増分ステップiwcXと、全体崩壊型モデルM2における増分ステップiosXを、それぞれ、第1差分最小の増分ステップiwcXと、第2差分最小の増分ステップiosXとして同定する。
同様に、増分ステップの同定部24は、Y方向に対し、層崩壊型モデルM1における各層のエネルギー吸収量の解析値sEwcY(i,j)と全体崩壊型モデルM2における各層のエネルギー吸収量の解析値sEosY(i,j)の、nwcY×nosY個の組み合わせの各々に対して、層11ごとに、層崩壊型モデルM1における各層のエネルギー吸収量の解析値sEwcY(i,j)と全体崩壊型モデルM2における各層のエネルギー吸収量の解析値sEosY(i,j)との和と、各層のエネルギー吸収量の推定値sEobsY(j)との差分を計算して、差分の全層における総和eYが最小となるような解析値の組み合わせである差分最小組み合わせを、各層のエネルギー吸収量の差分最小解析値として選択し、当該差分最小組み合わせ中の、層崩壊型モデルM1における各層のエネルギー吸収量の解析値sEwcY(iwcY,j)と全体崩壊型モデルM2における各層のエネルギー吸収量の解析値sEosY(iosY,j)に対応する、層崩壊型モデルM1における増分ステップiwcYと、全体崩壊型モデルM2における増分ステップiosYを、それぞれ、第1差分最小の増分ステップiwcYと、第2差分最小の増分ステップiosYとして同定する。
【0028】
健全性判定部25は、上記のようにして同定された、X方向、Y方向の各々における第1差分最小の増分ステップi
wcX、i
wcY、第2差分最小の増分ステップi
osX、i
osYを基に、建物10の健全性を判定する。
上記のように、増分ステップの同定部24が、X方向、Y方向の各々における第1差分最小の増分ステップi
wcX、i
wcY、第2差分最小の増分ステップi
osX、i
osYを同定することにより、地震情報が取得された地震においては、層崩壊型モデルM1を用いた静的増分解析と、全体崩壊型モデルM2を用いた静的増分解析の各々において、それぞれどの段階すなわち増分ステップまで、層崩壊と全体崩壊が進行した状態であるのかが、特定されている。とすれば、実際の地震においては、各部材は、層崩壊型モデルM1を用いた静的増分解析における増分ステップi
wcX、i
wcYの段階において当該部材が吸収したと考えられるエネルギー吸収量の解析値eE
wcX(i
wcX,k)、eE
wcY(i
wcY,k)と、全体崩壊型モデルM2を用いた静的増分解析における増分ステップi
osX、i
osYの段階において当該部材が吸収したと考えられるエネルギー吸収量の解析値eE
osX(i
osX,k)、eE
osY(i
osY,k)とを、合算した分だけのエネルギーを吸収したと見做すことができる。
したがって、健全性判定部25は、具体的には、次式(3)によって、各部材のエネルギー吸収量の推定値eE
obs(k)を計算する。
【数4】
このようにして、健全性判定部25は、部材ごとに、第1差分最小の増分ステップi
wcX、i
wcYに対応する、層崩壊型モデルM1における各部材のエネルギー吸収量の解析値eE
wcX(i
wcX,k)、eE
wcY(i
wcY,k)と、第2差分最小の増分ステップi
osX、i
osYに対応する、全体崩壊型モデルM2における各部材のエネルギー吸収量の解析値eE
osX(i
osX,k)、eE
osY(i
osY,k)の和を計算することにより、各部材のエネルギー吸収量の推定値eE
obs(k)を導出する。
【0029】
健全性判定部25は、更に、第1差分最小の増分ステップi
wcX、i
wcYと、第2差分最小の増分ステップi
osX、i
osYを基に導出された、各部材のエネルギー吸収量の推定値eE
obs(k)を基に、建物10の健全性を判定する。健全性判定部25は、各部材のエネルギー吸収量の推定値eE
obs(k)と、予め設定された損傷判定閾値とを比較して、損傷程度を算定する。健全性判定部25は、各部材のエネルギー吸収量の推定値eE
obs(k)が、損傷判定閾値よりも大きい場合に、その部材に損傷が生じている可能性がある、と判定する。
ここで、損傷判定閾値として、例えば、部材の持つ塑性変形性能に応じて塑性率の損傷判定閾値μ
crを設定することができる。
図9に示すように、塑性率μで部材が1サイクル変形した場合、部材におけるエネルギー吸収量Eは、下式(4)で表される。
E=4(μ-1)Myθy・・・(4)
したがって、部材のエネルギー吸収量の損傷閾値E
crは、
E
cr=4(μ
cr-1)M
yθ
y
となる。
例えば、端部から中央部までの部材半長が1750mm、降伏強度が295N/mm
2の、断面寸法が300mm×300mmであり、厚さが9mmである角形鋼管(降伏時の曲げモーメントMy=327kNm、降伏時の部材角θy=0.0065rad)について、μ
cr=3.0とすると、E
cr=17.0kNmとなる。
このような損傷判定閾値は、上記に限られず、他の方法によって適切に設定されて構わないし、柱16、梁17等の部材種類ごとに、異なる態様で、設定されてもよい。
健全性判定部25は、算定した損傷程度、部材に損傷が生じているか否か、といった判定結果を示す情報を、モニター装置や、外部のネットワーク100を介してアクセス可能な他の端末等を通して出力する。
上記でいう損傷程度は、損傷程度I~損傷程度IVで評価する。損傷程度Iは、柱や梁、耐力壁にほとんど損傷がない状態と定義した。損傷程度IIは、柱や梁、耐力壁に軽微なひびわれが発生している状態とした。また、損傷程度IIIは、柱や梁、耐力壁に顕著なせん断ひびわれが見られる状態と定義し、損傷程度IVは、柱や梁、耐力壁に大きなせん断ひびわれが見られ、大破している状態と定義した。
【0030】
このようにして、健全性判定部25は、差分最小の増分ステップiwcX、iwcY、iosX、iosYに対応する各部材のエネルギー吸収量の推定値eEobs(k)と、各部材に対して設定された損傷判定閾値とを比較して、損傷程度を算定し、各部材の損傷程度に基づき、建物10の健全性を判定する。
ここでいう建物10の健全性は、安全、要注意、危険で評価する。健全性評価による安全指標は、損傷程度I、IIに対応する。また、健全性評価による要注意指標は損傷程度IIIに対応し、危険指標は損傷程度IVに対応する。
【0031】
(健全性評価方法)
図10は、建物の健全性評価システム1における、建物の健全性評価方法の流れを示すフローチャートである。
評価装置20で建物10の健全性評価を行うには、事前準備として、予め、解析部21において、層崩壊型モデルM1と、全体崩壊型モデルM2と、を用いて静的増分解析を行う。解析部21では、静的増分解析において荷重を増加させる段階である増分ステップごとに、各層のエネルギー吸収量の解析値、及び各部材のエネルギー吸収量の解析値を算出しておく。算出された各層のエネルギー吸収量の解析値、及び各部材のエネルギー吸収量の解析値は、解析結果記録部27に記録しておく。
その後、地震が発生すると、評価装置20が、建物10に設けられたセンサ12で検出された地震情報を、外部のネットワーク100から取得する(ステップS11)。
地震情報を取得すると、評価装置20のエネルギー吸収量の推定部23が、センサ12で検出される地震情報、及び建物10の各層11の重量に基づき、各層11の層せん断力と層間変位を算出し、算出された層せん断力及び層間変位に基づいて、各層のエネルギー吸収量の推定値を計算する(ステップS12)。
【0032】
続いて、増分ステップの同定部24が、解析結果記録部27に記録された、各層のエネルギー吸収量の解析値のなかから、各層のエネルギー吸収量の推定値との差分が最小となる各層のエネルギー吸収量の差分最小解析値を選択して、これに対応する増分ステップを、差分最小の増分ステップとして同定する(ステップS13)。
より詳細には、増分ステップの同定部24は、X方向、Y方向のそれぞれにおいて、析結果記録部27に記録された、層崩壊型モデルM1における各層のエネルギー吸収量の解析値と全体崩壊型モデルM2における各層のエネルギー吸収量の解析値の各組み合わせに対して、層ごとに、層崩壊型モデルM1の静的増分解析結果における各層のエネルギー吸収量の解析値と、全体崩壊型モデルM2の静的増分解析結果における各層のエネルギー吸収量の解析値との和と、各層のエネルギー吸収量の推定値との差分を計算して、差分の全層における総和が最小となるような組み合わせである差分差分最小組み合わせを、各層のエネルギー吸収量の差分最小解析値として選択し、当該差分最小組み合わせ中の、層崩壊型モデルM1における各層のエネルギー吸収量の解析値と全体崩壊型モデルM2における各層のエネルギー吸収量の解析値に対応する、層崩壊型モデルM1における増分ステップと、全体崩壊型モデルM2における増分ステップを、それぞれ、第1差分最小の増分ステップと、第2差分最小の増分ステップとして同定する。
【0033】
健全性判定部25は、部材ごとに、第1差分最小の増分ステップに対応する、層崩壊型モデルM1における各部材のエネルギー吸収量の解析値と、第2差分最小の増分ステップに対応する、全体崩壊型モデルM2における各部材のエネルギー吸収量の解析値の和を計算することにより、各部材のエネルギー吸収量の推定値を導出する(ステップS14)。
その後、健全性判定部25は、第1差分最小の増分ステップと、第2差分最小の増分ステップを基に導出された、各部材のエネルギー吸収量の推定値を基に、建物10の健全性を判定する(ステップS15)。健全性判定部25は、各部材のエネルギー吸収量の推定値と、予め設定された損傷判定閾値とを比較して、損傷程度を算定する。健全性判定部25は、各部材のエネルギー吸収量の推定値が、損傷判定閾値よりも大きい場合に、その部材に損傷が生じている可能性がある、と判定する。
更に、健全性判定部25は、算定した損傷程度、部材に損傷が生じているか否か、といった判定結果を示す情報を、モニター装置や、外部のネットワーク100を介してアクセス可能な他の端末等を通して出力する(ステップS16)。
【0034】
(健全性評価方法による推定精度の検証)
ここでは、本発明の建物の健全性評価システム1での推定精度の検証を行った。
検証対象の建物を実現する架構としては、次のモデル1~モデル6の、6種類のモデルを用意した。
モデル1は、4層で、X方向の柱スパンが2、Y方向の柱スパンが1、柱の、梁やパネルに対する耐力比である柱耐力比γを1.0とした。
モデル2は、4層で、X方向の柱スパンが2、Y方向の柱スパンが1、柱耐力比γを1.5とした。
モデル3は、8層で、X方向の柱スパンが3、Y方向の柱スパンが2、柱耐力比γを1.0とした。
モデル4は、8層で、X方向の柱スパンが3、Y方向の柱スパンが2、柱耐力比γを1.5とした。
モデル5は、12層で、X方向の柱スパンが4、Y方向の柱スパンが3、柱耐力比γを1.0とした。
モデル6は、12層で、X方向の柱スパンが4、Y方向の柱スパンが3、柱耐力比γを1.5とした。
上記のいずれのモデルにおいても、構造特性係数Dsを0.4とした。
これらの各モデルに対し、入力地震波として、八戸波・レベル3を、X方向とY方向の各々に対して45°の角度となる方向から入力した。この場合、センサ12で検出される加速度情報から算定される、X方向、Y方向のそれぞれにおける、各部材のエネルギー吸収量を正解値とし、上記健全性評価システム1で推定を行った各部材のエネルギー吸収量の推定値eEobs(k)を推定値とした。
【0035】
図11~
図16は、本実施形態における建物の健全性評価システム1により、モデル1~6の各々に対して、建物を構成する各部材のエネルギー吸収量を推定した場合の検証例を示す図である。
図11~
図16では、柱や梁の両端、及びパネルにおいては、正解値と推定値の比較結果となる差分が示されている。
各図より、柱耐力比γが1.0と小さく設定されたモデルでは、最下層の層崩壊機構が支配的となることから、層崩壊型モデルM1の静的解析結果がそのまま反映され、正解値に近い推定が出来ていることが確認できる。
柱耐力比γが1.5と設定された、全体崩壊機構が支配的になる架構においても、柱のエネルギー吸収量は概ね精度よく推定できており、梁やパネルもエネルギー吸収が大きくなる箇所は概ね整合している。ここで、1本の梁の両端でエネルギー吸収量が大きく異なる正解値があるが、これは、卓越方向への応答の中で、スラブの合成効果により一端の耐力が上昇し塑性化がほぼ生じずに、他端にエネルギー吸収が集中したことが要因であるため、合成効果を考慮していない静的解析に基づく推定値と差が生じたものと考えられる。
なお、本検証においては、鋼構造のラーメン架構を対象とした事例を示したが、RC造においても、柱や梁の端部及びパネルに塑性化が生じる点は共通であるため、極めて大きな損傷が生じない応答レベルにおいては、妥当性は確保されると考えられる。
【0036】
上述したような建物10の健全性評価システム1は、建物10の健全性を診断、評価する健全性評価システム1であって、柱16及び梁17を含んで建物10に対応するように構成された立体骨組モデルM(M1、M2)を用いて、事前に静的増分解析を行い、当該解析において荷重を増加させる段階である増分ステップごとに、各層のエネルギー吸収量の解析値sEwcX(i,j)、sEwcY(i,j)、sEosX(i,j)、sEosY(i,j)、及び柱16及び梁17を含む各部材のエネルギー吸収量の解析値eEwcX(i,k)、eEwcY(i,k)、eEosX(i,k)、eEosY(i,k)を算出し、解析結果記録部27に記録する解析部21と、建物10に設置したセンサ12から得られる地震情報を記録する地震情報記録部22と、地震情報、及び建物10の各層11の重量に基づき、各層11の層せん断力と層間変位を算出し、層せん断力及び層間変位に基づいて各層のエネルギー吸収量の推定値sEobsX(j)、sEobsY(j)を計算するエネルギー吸収量の推定部23と、解析結果記録部27に記録された、各層のエネルギー吸収量の解析値sEwcX(i,j)、sEwcY(i,j)、sEosX(i,j)、sEosY(i,j)のなかから、各層のエネルギー吸収量の推定値sEobsX(j)、sEobsY(j)との差分が最小となる各層のエネルギー吸収量の差分最小解析値(層崩壊型モデルM1における各層のエネルギー吸収量の解析値sEwcX(i,j)、sEwcY(i,j)と全体崩壊型モデルM2における各層のエネルギー吸収量の解析値sEosX(i,j)、sEosY(i,j)の組み合わせ)を選択して、これに対応する増分ステップを、差分最小の増分ステップiwcX、iwcY、iosX、iosYとして同定する増分ステップの同定部24と、差分最小の増分ステップiwcX、iwcY、iosX、iosYに対応する各部材のエネルギー吸収量の解析値eEwcX(iwcX,k)、eEwcY(iwcY,k)、eEosX(iosX,k)、eEosY(iosY,k)から、各部材のエネルギー吸収量の推定値eEobs(k)を取得し、当該各部材のエネルギー吸収量の推定値eEobs(k)と、各部材に対して設定された損傷判定閾値とを比較して、損傷程度を算定し、各部材の損傷程度に基づき、建物10の健全性を判定する健全性判定部25と、を備えている。
このような構成によれば、柱16及び梁17を含んで建物10に対応するように構成された立体骨組モデルM(M1、M2)を用いて静的増分解析を行い、この静的増分解析において荷重を増加させる段階である増分ステップごとに算出された、各層のエネルギー吸収量の解析値sEwcX(i,j)、sEwcY(i,j)、sEosX(i,j)、sEosY(i,j)と、柱16及び梁17を含む各部材のエネルギー吸収量の解析値eEwcX(i,k)、eEwcY(i,k)、eEosX(i,k)、eEosY(i,k)とが、解析部21によって算出されて、解析結果記録部27に記録されている。地震が生じた際には、エネルギー吸収量の推定部23が、建物10に設置したセンサ12から得られた地震情報、及び建物10の各層11の重量に基づいて、建物10の各層におけるエネルギー吸収量の推定値sEobsX(j)、sEobsY(j)を計算する。健全性判定部25は、各層のエネルギー吸収量の解析値sEwcX(i,j)、sEwcY(i,j)、sEosX(i,j)、sEosY(i,j)のなかから、各層のエネルギー吸収量の推定値sEobsX(j)、sEobsY(j)との差分が最小となる各層のエネルギー吸収量の差分最小解析値を選択することによって、選択された各層のエネルギー吸収量の解析値sEwcX(i,j)、sEwcY(i,j)、sEosX(i,j)、sEosY(i,j)に対応する、当該差分最小解析値が結果として出力された増分ステップを、差分最小の増分ステップiwcX、iwcY、iosX、iosYとして同定する。このようにして同定された差分最小の増分ステップiwcX、iwcY、iosX、iosYにおいては、地震情報が取得された地震が生じた際に各層11が吸収したエネルギーと同程度のエネルギーを各層11が吸収するように、荷重が増加された状態となっている。したがって、静的増分解析の、この差分最小の増分ステップiwcX、iwcY、iosX、iosYの段階における各部材のエネルギー吸収量の解析値eEobs(k)は、地震情報が取得された地震が生じた際に、各部材が吸収したエネルギーの量に近い値と考えられる。したがって、差分最小の増分ステップiwcX、iwcY、iosX、iosYに対応する各部材のエネルギー吸収量の解析値eEwcX(iwcX,k)、eEwcY(iwcY,k)、eEosX(iosX,k)、eEosY(iosY,k)から、各部材のエネルギー吸収量の推定値eEobs(k)を取得し、当該各部材のエネルギー吸収量の推定値eEobs(k)に基づき、損傷判定閾値との比較により損傷程度を算定することによって、建物10を構成する各部材の損傷程度を評価し、建物10の健全性を判定することができる。
このようにして、建物10を構成する部材に生じる損傷の有無、及びその損傷程度を推定することによって、部材ごとに損傷評価を行うことができ、高精度で、信頼性の高い建物10の健全性評価を行うことができる。
更に、上記のような構成においては、部材ごとに損傷評価を行うことができるにもかかわらず、部材ごとにセンサを設けなくともよいため、センサの数を多く必要としない。
したがって、簡易な構成で、健全性を精度よく判定することができる、建物の健全性評価システム1を提供可能である。
【0037】
また、解析部21は、立体骨組モデルM(M1、M2)に対して建物10が層崩壊するようにパラメータが設定された層崩壊型モデルM1と、立体骨組モデルM(M1、M2)に対して建物10が全体崩壊するようにパラメータが設定された全体崩壊型モデルM2の各々に対して、静的増分解析を行って、増分ステップごとに、各層のエネルギー吸収量の解析値sEwcX(i,j)、sEwcY(i,j)、sEosX(i,j)、sEosY(i,j)と、各部材のエネルギー吸収量の解析値eEwcX(i,k)、eEwcY(i,k)、eEosX(i,k)、eEosY(i,k)を算出して解析結果記録部27に記録し、増分ステップの同定部24は、解析結果記録部27に記録された、層崩壊型モデルM1における各層のエネルギー吸収量の解析値sEwcX(i,j)、sEwcY(i,j)と全体崩壊型モデルM2における各層のエネルギー吸収量の解析値sEosX(i,j)、sEosY(i,j)の各組み合わせに対して、層ごとに、層崩壊型モデルM1における各層のエネルギー吸収量の解析値sEwcX(i,j)、sEwcY(i,j)と全体崩壊型モデルM2における各層のエネルギー吸収量の解析値sEosX(i,j)、sEosY(i,j)との和と、各層のエネルギー吸収量の推定値sEobsX(j)、sEobsY(j)との差分を計算して、差分の全層における総和eX、eYが最小となるような組み合わせである差分最小組み合わせを、各層のエネルギー吸収量の差分最小解析値として選択し、当該差分最小組み合わせ中の、層崩壊型モデルM1における各層のエネルギー吸収量の解析値sEwcX(i,j)、sEwcY(iwcY,j)と全体崩壊型モデルM2における各層のエネルギー吸収量の解析値sEosX(i,j)、sEosY(iosY,j)に対応する、層崩壊型モデルM1における増分ステップiwcX、iwcYと、全体崩壊型モデルM2における増分ステップiosX、iosYを、それぞれ、第1差分最小の増分ステップiwcX、iwcYと、第2差分最小の増分ステップiosX、iosYとして同定し、健全性判定部25は、第1差分最小の増分ステップiwcX、iwcYと、第2差分最小の増分ステップiosX、iosYを基に、建物10の健全性を判定する。
このような構成によれば、立体骨組モデルM(M1、M2)に対して建物10が層崩壊するようにパラメータが設定された層崩壊型モデルM1と、立体骨組モデルM(M1、M2)に対して建物10が全体崩壊するようにパラメータが設定された全体崩壊型モデルM2の各々に対して、静的増分解析を行う。解析結果記録部27に記録された、層崩壊型モデルM1における各層のエネルギー吸収量の解析値sEwcX(i,j)、sEwcY(i,j)と全体崩壊型モデルM2における各層のエネルギー吸収量の解析値sEosX(i,j)、sEosY(i,j)の、各組み合わせに対して、層11ごとに、層崩壊型モデルM1における各層のエネルギー吸収量の解析値sEwcX(i,j)、sEwcY(i,j)と全体崩壊型モデルM2における各層のエネルギー吸収量の解析値sEosX(i,j)、sEosY(i,j)との和と、各層のエネルギー吸収量の推定値sEobsX(j)、sEobsY(j)との差分を計算して、この差分の全層11における総和eX、eYが最小となるような組み合わせである差分最小組み合わせを、各層のエネルギー吸収量の差分最小解析値として選択する。そして、このようにして選択された差分最小組み合わせに対応する、層崩壊型モデルM1における増分ステップiwcX、iwcYと、全体崩壊型モデルM2における増分ステップiosX、iosYを、それぞれ、第1差分最小の増分ステップiwcX、iwcY、及び第2差分最小の増分ステップiosX、iosYとして同定する。
ここで、静的増分解析によって、層崩壊と全体崩壊がそれぞれ、上記のようにして同定された第1差分最小の増分ステップiwcX、iwcY及び第2差分最小の増分ステップiosX、iosYまで進行した状態を組み合わせると、各層のエネルギー吸収量が、地震情報が取得された地震が生じた際におけるエネルギー吸収量の推定値sEosX(i,j)、sEosY(i,j)と近い値となっている。すなわち、第1差分最小の増分ステップiwcX、iwcYと第2差分最小の増分ステップiosX、iosYは、地震情報が取得された地震における、層崩壊と全体崩壊の各々の進行度と見做すことができる。
このようにして同定された、第1差分最小の増分ステップiwcX、iwcYと、第2差分最小の増分ステップiosX、iosYとに基づいて、建物10の健全性を判定することにより、実際に生じた地震荷重によって建物10に生じる被害に、より近い崩壊状態を推定し、建物10の健全性の評価を、より高い精度で行うことができる。
【0038】
また、健全性判定部25は、部材ごとに、第1差分最小の増分ステップiwcX、iwcYに対応する、層崩壊型モデルM1における各部材のエネルギー吸収量の解析値eEwcX(iwcX,k)、eEwcY(iwcY,k)と、第2差分最小の増分ステップiosX、iosYに対応する、全体崩壊型モデルM2における各部材のエネルギー吸収量の解析値eEosX(iosX,k)、eEosY(iosY,k)の和eEobs(k)を計算し、これを各部材のエネルギー吸収量の推定値eEobs(k)として、損傷判定閾値と比較して、損傷程度を算定する。
上記のようにして同定された第1差分最小の増分ステップiwcX、iwcYに対応する、層崩壊型モデルM1における各部材のエネルギー吸収量の解析値eEwcX(iwcX,k)、eEwcY(iwcY,k)と、第2差分最小の増分ステップiosX、iosYに対応する、全体崩壊型モデルM2における各部材のエネルギー吸収量の解析値eEosX(iosX,k)、eEosY(iosY,k)とを、それぞれ求める。既に説明したように、第1差分最小の増分ステップiwcX、iwcYと第2差分最小の増分ステップiosX、iosYは、地震情報が取得された地震における、層崩壊と全体崩壊の各々の進行度であるから、上記のようにして求められた、第1差分最小の増分ステップiwcX、iwcYと第2差分最小の増分ステップiosX、iosYのそれぞれに対応する、各部材のエネルギー吸収量の解析値eEwcX(iwcX,k)、eEwcY(iwcY,k)、eEosX(iosX,k)、eEosY(iosY,k)の和eEobs(k)は、地震情報が取得された地震が生じた際に、各部材が吸収したエネルギーに近い値と考えられる。この和を、各部材のエネルギー吸収量の推定値eEobs(k)として、部材ごとに、損傷判定閾値と比較することで、建物10の健全性を判定することで、建物10の健全性の評価を、より高い精度で行うことができる。
【0039】
(実施形態の第1変形例)
なお、本発明の健全性評価システム1は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において他の様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態において、例えば地震力が作用する方向がX方向にほぼ沿うような状態である場合には、増分ステップの同定部24と健全性判定部25においては、Y方向における解析は実行せず、X方向のみにおいて解析するようにしてもよい。
この場合には、増分ステップの同定部は、式(1)のX方向載荷時層エネルギー差分exのみを計算し、式(2)のY方向載荷時層エネルギー差分eYは計算しなくてもよい。また、健全性判定部25は、式(3)において各部材のエネルギー吸収量の推定値eEobs(k)を計算するに際し、X方向における各部材のエネルギー吸収量の解析値eEwcX(i,k)、eEosX(i,k)のみを加算し、Y方向における各部材のエネルギー吸収量の解析値eEwcY(i,k)、eEosY(i,k)は使用しない。
地震力が作用する方向がY方向にほぼ沿うような状態である場合も同様である。
【0040】
(実施形態の第2変形例)
あるいは、建物の構造上、層崩壊が全体崩壊に対し支配的であると予め判明しているような場合においては、層崩壊モデルM1のみを対象として、建物の健全性評価システム1が動作するように構成してもよい。
この場合においては、解析部21は、立体骨組モデルM(M1)に対して建物10が層崩壊するようにパラメータが設定された層崩壊型モデルM1に対して、静的増分解析を行って、増分ステップごとに、各層のエネルギー吸収量の解析値sEwcX(i,j)、sEwcY(i,j)と、各部材のエネルギー吸収量の解析値eEwcX(i,k)、eEwcY(i,k)を算出して解析結果記録部27に記録する。
次に、エネルギー吸収量の推定部23は、上記実施形態と同様に、各層11におけるエネルギー吸収量の推定値sEobsX(j)、sEobsY(j)を計算する。
そして、増分ステップの同定部24は、解析結果記録部27に記録された、層崩壊型モデルM1における各層のエネルギー吸収量の解析値sEwcX(i,j)、sEwcY(i,j)の各々に対して、層ごとに、層崩壊型モデルM1における各層のエネルギー吸収量の解析値sEwcX(i,j)、sEwcY(i,j)と、各層のエネルギー吸収量の推定値sEobsX(j)、sEobsY(j)との差分を計算して、差分の全層における総和eX、eYが最小となるようなエネルギー吸収量の解析値を、各層のエネルギー吸収量の差分最小解析値として選択し、これに対応する、層崩壊型モデルM1における増分ステップiwcX、iwcYを、第1差分最小の増分ステップiwcX、iwcYとして同定する。
更に、健全性判定部25は、部材ごとに、第1差分最小の増分ステップiwcX、iwcYに対応する、層崩壊型モデルM1における各部材のエネルギー吸収量の解析値eEwcX(i,k)、eEwcY(i,k)の和eEobs(k)を計算し、これを各部材のエネルギー吸収量の推定値eEobs(k)として、損傷判定閾値と比較して、損傷程度を算定する。
【0041】
(実施形態の第3変形例)
更には、建物の構造上、全体崩壊が層崩壊に対し支配的であると予め判明しているような場合においては、全体崩壊モデルM2のみを対象として、建物の健全性評価システム1が動作するように構成してもよい。
この場合においては、解析部21は、立体骨組モデルM(M2)に対して建物10が全体崩壊するようにパラメータが設定された全体崩壊型モデルM2に対して、静的増分解析を行って、増分ステップごとに、各層のエネルギー吸収量の解析値sEosX(i,j)、sEosY(i,j)と、各部材のエネルギー吸収量の解析値eEosX(i,k)、eEosY(i,k)を算出して解析結果記録部27に記録する。
次に、エネルギー吸収量の推定部23は、上記実施形態と同様に、各層11におけるエネルギー吸収量の推定値sEobsX(j)、sEobsY(j)を計算する。
そして、増分ステップの同定部24は、解析結果記録部27に記録された、全体崩壊型モデルM2における各層のエネルギー吸収量の解析値sEosX(i,j)、sEosY(i,j)の各々に対して、層ごとに、全体崩壊型モデルM2における各層のエネルギー吸収量の解析値sEosX(i,j)、sEosY(i,j)と、各層のエネルギー吸収量の推定値sEobsX(j)、sEobsY(j)との差分を計算して、差分の全層における総和eX、eYが最小となるようなエネルギー吸収量の解析値を、各層のエネルギー吸収量の差分最小解析値として選択し、これに対応する、全体崩壊型モデルM2における増分ステップiosX、iosYを、第2差分最小の増分ステップiosX、iosYとして同定する。
更に、健全性判定部25は、部材ごとに、第2差分最小の増分ステップiosX、iosYに対応する、全体崩壊型モデルM2における各部材のエネルギー吸収量の解析値eEosX(i,k)、eEosY(i,k)の和eEobs(k)を計算し、これを各部材のエネルギー吸収量の推定値eEobs(k)として、損傷判定閾値と比較して、損傷程度を算定する。
【0042】
このように、上記実施形態においては複数のモデルM1、M2を用い、かつこの複数のモデルの各々に対して複数の方向X、Yにおける解析値を有するように、静的増分解析が実行されたが、上記第1~第3変形例として示したように、2つの解析値を有するように静的増分解析が実行されてもよい。あるいは、例えば上記第1変形例と第2変形例を組み合わせて、例えば静的増分解析が層崩壊モデルの一方向のみに対して、計1個の解析値を有するように実行されてもよいし、第1変形例と第3変形例を組み合わせて、静的増分解析が全体崩壊モデルの一方向のみに対して、計1個の解析値を有するように実行されてもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記各実施形態及び各変形例で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 健全性評価システム 22 地震情報記録部
10 建物 23 エネルギー吸収量の推定部
11 層 24 増分ステップの同定部
12 センサ 25 健全性判定部
16 柱 27 解析結果記録部
17 梁 M 立体骨組モデル
19 パネル M1 層崩壊型モデル
21 解析部 M2 全体崩壊型モデル