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特許7634478大量投与量の使い捨て可能な吸入器および試料の充填方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】大量投与量の使い捨て可能な吸入器および試料の充填方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/00 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021529395
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2019081993
(87)【国際公開番号】W WO2020114783
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】115189
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PT
(73)【特許権者】
【識別番号】519038884
【氏名又は名称】ホビオン テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HOVIONE TECHNOLOGY LTD.
【住所又は居所原語表記】Loughbeg Ringaskiddy, County Cork, P43 DY23, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】100091502
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 正威
(72)【発明者】
【氏名】ベントゥラ,ジョアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィラックス,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】カルヴァーリョ,アゴスチーニョ
(72)【発明者】
【氏名】カラメロ,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ホセ,ソニア
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-537199(JP,A)
【文献】特表2000-503565(JP,A)
【文献】米国特許第09498002(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺または鼻への供給に適する乾燥粉末吸入器であって、前記乾燥粉末吸入器が、吸入器ボディ(201;301;401;501;601;701)およびカートリッジ(203;303;503;603;703)を備え、
a.前記吸入器ボディ(201;301;401;501;601;701)が、マウスピース(202;302;702);前記マウスピース(202;302;702)と係合した場合に患者の口と流体連通を実現するための吸入チャンネル(208;608;708);前記吸入チャンネル(208;608;708)の底部入口;大気から前記吸入チャンネル(208;608;708)の中へ空気を直接に入れるのを可能にするための側方入口(223;623;723);前記吸入器ボディ(201;301;401;501;601;701)の中に吸入器ボディ開口部(204)を形成するボディ頂部壁(210、710)、前記ボディ頂部壁(210、710)と対向するボディ底部壁(211、711)及びボディ側壁(226、426、626)を備え、前記吸入器ボディ開口部(204)が前記カートリッジ(203;303;503;603;703)を前記吸入器ボディ開口部(204)の中に設置できるようにした少なくとも1つの開端部を有し;前記ボディ底部壁(211、711)がボディ底部壁開口部(224;724)、及び前記カートリッジ(203;303;503;603;703)と前記吸入器ボディ開口部(204)の中に設置された後に係合して固定するための1つまたは複数のプラスチック・ボディ突出部(219;619)を備え;前記カートリッジ(203;303;503;603;703)を受けるような形状を有する前記吸入器ボディ開口部(204)の中にある1つまたは複数のボディ・レール(212)、ならびに前記ボディ(201;301;401;501;601;701)に対して前記カートリッジ(203;303;503;603;703)を移動させるように適合された1つまたは複数のボディ凹部(215;415)および戻り止め(218;418)、を備え;
b.前記カートリッジ(203;303;503;603;703)が、粉末ベースの薬剤を運ぶための、前記カートリッジ(203;303;503;603;703)の中に形成されるテーパ状の円筒形状またはほぼ円筒形状の複数の粉末コンパートメント(205;505;605;705);前記カートリッジ(203;303;503;603;703)と前記吸入器ボディ開口部(204)の中に設置された後に係合して固定するために前記プラスチック・ボディ突出部(219;619)に係合されるカートリッジ底部壁(221;521;621);前記ボディ・レール(212)に係合されるカートリッジ頂部壁(220;520);および前記カートリッジ(203;303;503;603;703)を受けるような形状を有する前記吸入器ボディ開口部(204)の中に前記カートリッジ(203;303;503;603;703)が設置されるときに保管位置から吸入位置まで前記ボディ(201;301;401;501;601;701)に対して前記カートリッジ(203;303;503;603;703)を移動させるのを可能にするために、前記ボディ(201;301;401;501;601;701)の中に設けられる前記1つまたは複数のプラスチック・ボディ凹部(215;415)および前記戻り止め(218;418)に係合される1つまたは複数のカートリッジ突出部(217;517)、を備え、
c.前記カートリッジ(203;303;503;603;703)が、複数の粉末コンパートメント(205;505;605;705)を備え、前記複数の粉末コンパートメント(205;505;605;705)が、コンパートメント空気入口(206;506;606;706)及びコンパートメント空気出口(207;507;607;707)を備え、前記複数の粉末コンパートメント(205;505;605;705)が、前記複数の粉末コンパートメント(205;505;605;705)の中への空気の流体連通が確立されない前記カートリッジ(203;303;503;603;703)の保管位置から、前記複数の粉末コンパートメント(205;505;605;705)の一つと前記吸入チャンネル(208;608;708)が位置合わせされて、前記ボディ底部壁開口部(224;724)と前記複数の粉末コンパートメント(205;505;605;705)の前記位置合わせされた一つの前記コンパートメント空気入口(206;506;606;706)との間及び前記複数の粉末コンパートメント(205;505;605;705)の前記位置合わせされた一つの前記コンパートメント空気出口(207;507;607;707)と前記吸入チャンネル(208;608;708)の底部入口との間での空気の流体連通が生じる吸入位置まで、前記ボディ(201;301;401;501;601;701)内で順に旋回および前進するものにおいて、
前記吸入器ボディ(201;301;401;501;601;701)および前記カートリッジ(203;303;503;603;703)が、個別の粉末コンパートメント(205;505;605;705)の中への粉末の充填の前に組み立てられており、前記組み立てられた吸入器が、吸入粉末を前記カートリッジ(203;303;503;603;703)の中に充填するためのボディ充填開口部(214;314;414;714)を備える
ことを特徴とする乾燥粉末吸入器。
【請求項2】
前記吸入器ボディ(201;301;401;501;601;701)が、さらに、少なくとも一つのボディ側方空気入口(625)を備え、前記複数の粉末コンパートメント(205;505;605;705)のそれぞれが、粉末コンパートメント側方空気入口(609)を備え、前記少なくとも一つのボディ側方空気入口(625)と前記粉末コンパートメント側方空気入口(609)とが、前記複数の粉末コンパートメント(205;505;605;705)の対応する一つと前記吸入チャンネル(208;608;708)とが位置合わせされた時に連通する、請求項1に記載の乾燥粉末吸入器。
【請求項3】
前記組み立てられた吸入器が、前記吸入器の組み立て構成において前記ボディ充填開口部(214;314;414;714)を通して前記吸入粉末の充填を可能にする、前記吸入器ボディ(201;301;401;501;601;701)の中にあるヒンジ式のまたは折り畳み可能な蓋(213;313;413;613;713)を備える、ことを特徴とする、請求項1または2に記載の乾燥粉末吸入器。
【請求項4】
前記粉末の充填中、前記複数の粉末コンパートメント(205;505;605;705)の各々の中への前記吸入粉末の単位投与量の充填を行うために、前記カートリッジ(203;303;503;603;703)が、前記組み立てられた吸入器の構成において、前記ボディ(201;301;401;501;601;701)に対して制限されずに自由に前進および旋回することができる、ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の乾燥粉末吸入器。
【請求項5】
粉末の充填中、前記複数の粉末コンパートメント(205;505;605;705)の各々が、前記カートリッジ(203;303;503;603;703)を受けるような形状を有する前記吸入器ボディ開口部(204)の中にある前記ボディ底部壁(211、711)との緊密な接触によって密閉される、ことを特徴とする、前記請求項1~4のいずれか1項に記載の乾燥粉末吸入器。
【請求項6】
最後の単位投与量の粉末が前記複数の粉末コンパートメント(205;505;605;705)の中に充填された後、前記ヒンジ式のまたは折り畳み可能なボディ蓋(213;313;413;613;713)が前記ボディ(201;301;401;501;601;701)の中まで移動してスナップ嵌合され、前記コンパートメント空気出口(207;507;607;707)との機械的干渉を確立し、このような前記機械的干渉により前記ボディ充填開口部(214;314;414;714)を閉じ、前記充填済みのカートリッジ(203;303;503;603;703)を密閉する、ことを特徴とする、前記請求項3及び前記請求項3を引用する場合における前記請求項4~5のいずれか1項に記載の乾燥粉末吸入器。
【請求項7】
前記ヒンジ式のまたは折り畳み可能なボディ蓋(213;313;413;613;713)が、前記ボディ(201;301;401;501;601;701)の中まで移動するか折り畳まれてスナップ嵌合された後で、前記複数の粉末コンパートメント(205;505;605;705)の各々の中に含まれる少なくとも1つのコンパートメント突出部(217)に係合される少なくとも1つのプラスチック・ボディ凹部(215)および戻り止め(218)を備え、それにより、前記複数の粉末コンパートメント(205;505;605;705)の各々を密閉する複数の初期位置から、最終位置までの間における、前記ボディ(201;301;401;501;601;701)に対する前記カートリッジ(203;303;503;603;703)の連続的な前進および旋回移動を制限および制御し、前記最終位置では、前記複数の粉末コンパートメント(205;505;605;705)の各々が前記吸入チャンネル(208;608;708)に位置合わせされ、前記粉末コンパートメント(205;505;605;705)の中に含まれる前記コンパートメント空気入口(206;506;606;706)、前記粉末コンパートメント側方空気入口(609)および前記コンパートメント空気出口(207;507;607;707)が空気を入れるのに利用可能となり、前記吸入チャンネル(208;608;708)に連通される、ことを特徴とする、前記請求項2を引用する場合における前記請求項3及び前記請求項2を引用する場合における前記請求項3を引用する場合における前記請求項4~6のいずれか1項に記載の乾燥粉末吸入器。
【請求項8】
前記ヒンジ式のまたは折り畳み可能なボディ蓋(213;313;413;613;713)が、前記ボディ(213;313;413;613;713)の中まで移動してスナップ嵌合されると、各カートリッジ(203;303;503;603;703)の移動の完了時、前記カートリッジ(203;303;503;603;703)と前記ボディ(213;313;413;613;713)との間に戻り止め(218)が配置する、ことを特徴とする、前記請求項3及び前記請求項3を引用する場合における前記請求項4~7のいずれか1項に記載の乾燥粉末吸入器。
【請求項9】
前記カートリッジ(203;303;503;603;703)が、前記ボディに対して前記カートリッジを旋回または前進させるように適合される少なくとも1つのカートリッジ・ハンド・グリップまたはホルダ(222;522)を備える、ことを特徴とする、前記請求項1~8のいずれか1項に記載の乾燥粉末吸入器。
【請求項10】
前記請求項1~9のいずれか1項に記載の乾燥粉末吸入器を充填する方法であって、
前記組み立てられた吸入器において、吸入器ボディ(201;301;401;501;601;701)構成要素の中にあるボディ充填開口部(214;314;414;714)を介して、各々の個別の粉末コンパートメント(205;505;605;705)の中に複数のドラッグ投与量が充填され(S1)、
前記粉末コンパートメント(205;505;605;705)の次のドラッグ・コンパートメント充填位置までの前進(S2)が、すべての粉末コンパートメント(205;505;605;705)が充填されて(S3)ヒンジ式のまたは折り畳み可能なボディ蓋(213;313;413;613;713)が閉じられて(S4)前記吸入器ボディ(201;301;401;501;601;701)の中にスナップ嵌合(S5)されるまで行われる、
ことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場での充填が容易であり、大量投与量の薬物化合物を供給するのに適する低コストである、単純な構成および動作の新規の使い捨て可能な肺吸入器または鼻吸入器を説明する。
【背景技術】
【0002】
薬物化合物の供給のために使用される吸入器が広く普及しており、特には、喘息または慢性閉塞性肺疾患などの主として慢性的呼吸器疾患の治療を目的とする、加えて、抗感染症薬および緊急事態の呼吸環境におけるレスキュー・ドラッグを供給することならびに抗生物質およびキャンサー(cancer)を局部的に罹患肺に供給することなどの急性疾患の治療を目的とする、ドラッグ供給のためのエネルギー源として患者の吸気努力を利用する粉末ベースの吸入器が広く普及している。加えて、全身薬の供給のために、粉末吸入器による肺へのドラッグ供給により、ドラッグの開始を早期化し、全投与量を低下させる可能性も研究されている。この全身薬の供給の例として、広く知られる科学的および商業的な飛躍的進歩となっているインシュリン吸入がある。
【0003】
現在のドラッグの開発パイプラインを展望すると、非限定的な例として100mgから400mgなどである大量投与量のドラッグを粉末吸入器により供給することに対しての関心が増している。その理由は、喘息、慢性閉塞性肺疾患、および他の呼吸状態の治療のために使用されるドラッグの分子タイプが、主として、強力な小分子から、タンパク質、ぺプチド、抗体類、オリゴヌクレオタイド、およびさらには遺伝子/細胞/RNAベースの生体化合物などの(すべて、大量投与量で患者に供給されることを必要とする)、生物学的薬物の大分子へと移行していることが見込まれるからである。
【0004】
さらに、これらの化合物(大分子の生物学的薬物)は、洗練された粒子工学テクノロジーにより無担体の高薬物負荷製剤で製剤されることを必要とし、さらに、(このような微粒子の生物学的薬物(biopharmaceutical molecule)が非常に高価であるからであることを理由として)、吸入器の中に充填されてこの吸入器により使用可能となる、大量の粉末からの複数の連続する吸入を患者が実施することにより、ドラッグ損失を最小にするように非常に効率的に供給されることを必要とする(このように効率的に供給されることにより、「口が粉っぽくなる(powdery mouth)」作用、喉の炎症、および上気道での広範なドラッグ損失も最小になることもその理由である)。
【0005】
したがって、上記から、患者にとって好都合な形で、複数回の連続する吸入の形で、100mgから400mgの間の範囲内のドラッグ投与量の無担体製剤を効率的に供給することができる大量投与量の粉末吸入器が必要とされる。このような1回使用の大量投与量の吸入器はまだ存在しないことから、開発者の直面する大きな課題は、商品の単位原価を下げて大量に製造され得る、現在の伝統的な粉末充填テクノロジーを用いて工場で充填することが容易であるような、使用および構成が単純である吸入器を設計することである。
【0006】
1回使用の使い捨て可能な吸入器の分野には非常に多くの従来技術が存在するが、上記の要求を解決する大量投与量の使い捨て可能な吸入器はまだ提供されていない。本出願は特に、Hovioneに両方とも譲渡されたポルトガル特許出願PT103481およびPT108426で説明される吸入器の発明性のある改善を対象とする。
【0007】
既に、PT103481により、マウスピース102と、ボディ101内に設けられる開口部104の中に設置されるカートリッジ103とを備え、さらに少なくとも1つの粉末コンパートメント105を有するボディ101を備える使い捨て可能な吸入器が知られている。粉末コンパートメント105が、空気を入れるのを可能にする入口孔106と、ボディ101の中に設けられるボディ吸入チャンネル108に連通される出口孔107とを有する。さらに、カートリッジ103が、患者により、図1aに描かれる第1の位置と図1bおよび1cに描かれる第2の位置との間でボディ101を基準として摺動させられ得るように作られ、第1の位置では、コンパートメントの入口孔106および出口孔107が隔離されて密閉され、第2の位置では、コンパートメントの入口孔106および出口孔107がボディの吸入チャンネル108に位置合わせされる、それにより、空気の流れを分散させることおよび空気の流れによりマウスピース102を通して患者の口または鼻腔の中へおよびひいては所望の作用部位の中へ粉末を取り込むことが可能となる。PT103481で開示されるこの構成は、患者にとって好都合となるように、安全性および衛生のために使い捨てであり、経済的な理由のために単純であり、また患者により容易に使用されるように直感性のある、単位投与量の粉末が予め充填されたデバイスを可能にする。この使い捨ての吸入器は成功裏に市販されているが、供給可能な最大投与量が粉末で10~20mgの範囲である。
【0008】
既に、PT108426により、PT103481に開示される使い捨て可能な吸入器に対しての発明性のある改善が知られており、これが図1dに描かれており、ここでは、50mgから100mgの範囲の高い供給可能投与量でのオペレーションにつながる新規の高い効果の分散・エアロゾル化の動力学を作り出した発明性のある配置で、追加の空気入口109がカートリッジ・コンパートメント105の中に配置されていた。
【0009】
しかし、PT103481およびPT108426で説明される両方の使い捨て可能な吸入器の構成が、分解構成の吸入器における使い捨て可能な吸入器に対しての産業スケールの充填を設定することを必要とする。その理由は、使い捨て可能な吸入器のボディからカートリッジを分解した状態においてこの粉末量がカートリッジの中に充填される必要があり、このようなカートリッジが特別に設計された産業スケール可能な自動機械装置の中に配置され、この自動機械装置が、充填中にカートリッジ・コンパートメント入口を密閉することおよびひいては充填されたカートリッジおよび機械的組立体をボディの中の定位置まで直接に変位させることを実現し、この定位置では、コンパートメント孔が隔離および密閉されるからである。これらの充填要求は、粉末損失ならびに製造の複雑さおよび製造コストの増大につながることが分かっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、吸入器を単純なものとしてその使用を直感的なものとすることおよび吸入器を非常に低コストで製造するのを可能にすることを維持しながら、最大400mgの吸入粉末の供給のために、従来技術の特許出願PT103481およびPT108426で開示される使い捨て可能な吸入器の構成を改善する、2つの構成要素のみを備える1回使用の新規の大量投与量の吸入器を発明した。さらに、従来の粉末充填機械を用いて工場での充填の容易さ最大にして、粉末充填損失と、製造の複雑さおよび製造コストとの両方を最小にするような、組立てられた吸入器構成において充填を行うのに適する、その使用および構成が単純であり、低コストである大量投与量の1回使用の(使い捨て可能な)吸入器を発明した。これは、吸入器の分解構成において充填を行うのを必要とするPT103481(Hovione)およびPT108426(Hovione)で開示される構成に対しての有利な大幅な改善である。これは新規性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、吸入器ボディおよび粉末カートリッジである、従来技術の特許出願PT103481およびPT108426により既知である2つの射出プラスチック部品を備える。ボディおよびカートリッジが組み立てられた後に一体に固定され、それにより一体化された機能的な使い捨て可能な吸入器を形成する。
【0012】
従来技術のポルトガル特許出願PT103481およびPT108426で開示される使い捨て可能な吸入器と同様に、吸入器ボディが、マウスピースまたはノーズピースと、カートリッジを定位置で受けて保持するような形状を有する開口部と、マウスピースまたはノーズピースとの係合状態において患者の口または鼻と組み立てられたカートリッジとの間の流体連通を実現するための吸入チャンネルと、を装備する。大気から吸入チャンネルに空気を直接に入れるのを可能にするための1つまたは複数のボディ側方入口が提供される。加えて、カートリッジを受けるような形状を有するボディ開口部の底部壁の中に含まれる少なくとも1つのボディ底部開口部が存在し、それにより、カートリッジを吸入位置まで移動させた場合に大気からカートリッジ粉末コンパートメントに空気が入るのを可能にする。
【0013】
従来技術のポルトガル特許出願PT103481およびPT108426と同様に、カートリッジが、カートリッジに組み込まれるかまたはカートリッジと一体に成形される少なくとも1つの粉末コンパートメントを有し、少なくとも1つの粉末コンパートメントが、球形および卵形などの鋭角を有さない円形端部を有するテーパ状の円筒形状またはほぼ円筒形状であり、それにより、吸入中および吸入後の粉末残留を最小にする。カートリッジが、ボディ開口部の中に設置されているときに移動可能である少なくとも1つの粉末コンパートメントを備える。加えて、一態様で1mm以下の幅である、0.1mmから2mmの間の幅を有する非常に小さいサイズを有する、空気を入れるのを可能にするための少なくとも1つのコンパートメント底部入口が存在する。カートリッジの形状が粉末コンパートメントの方向においてテーパ状であり、それにより重力によりまたは他の力により粉末が流れるのを防ぐ「ファンネル」が作られる。さらに、PT103481およびPT108426により知られているように、粉末コンパートメントが、通常はコンパートメント自体と同じであるかまたはそれと同等である直径を有する出口をさらに備え、それにより粉末の通常の充填および自動高速充填を可能にし、さらに、カートリッジを吸入位置まで移動させたときにボディ底部吸入チャンネルを通してボディ吸入チャンネルとの流体連通を可能にする。
【0014】
しかし、本出願の吸入器が、ポルトガル特許出願PT105065またはPT108426あるいは従来技術で説明される吸入器で見ることができない新しい構造部を有する。次にこれらの新しい特徴を説明する。
【0015】
本文献の吸入器では、吸入器ボディが、ボディ開口部の中に頂部壁および底部壁をさらに備える。頂部壁および底部壁がカートリッジを受けるための形状を有し、円筒形状またはほぼ円筒形状であり、鋭利な縁部を有さない丸みのある端部を有し、さらには少なくとも1つのレールを備え、少なくとも1つのレールが好適にはボディ頂部壁のところに位置し、それにより、ボディを基準として円筒形状またはほぼ円筒形状のカートリッジをカートリッジの複数の初期位置から最終位置まで枢動または旋回させるのを可能にし、初期位置ではカートリッジ・コンパートメントが密閉され、最終位置ではカートリッジ・コンパートメントがボディ吸入チャンネルに位置合わせされ、コンパートメントに含まれる空気入口および空気出口が空気を入れるのに利用可能となり、ボディ吸入チャンネルに連通される。
【0016】
さらに、本文献の吸入器ボディが、ボディ自体と同じ材料および同じ成形ステップで射出成形される、カートリッジを受けるための形状を有するボディ開口部の円筒形状の頂部壁の中に含まれるスナップ・タイプのヒンジ式であるかまたは折り畳み可能である蓋を備える。上記ヒンジ式のボディ頂部壁蓋が第1の開位置から第2の閉位置まで移動可能であるかまたは折り畳み可能であり、第1の開位置ではカートリッジがボディに組み付けられてカートリッジ・コンパートメント底部入口が円筒形状のボディ底部壁によって密閉され、第1の開位置が、密閉されたカートリッジ・コンパートメントの中に産業スケールで粉末を効果的に容易に充填するのを可能にするのに適し、第2の閉位置ではボディに組み付けられたカートリッジが、ボディ底部、円筒形状の壁、およびスナップ・タイプの閉じているヒンジ式の上記頂部壁蓋によって密閉される。
【0017】
カートリッジを受けるための形状を有するボディ開口部の円筒形状の頂部壁の中に含まれる上述のスナップ・タイプのヒンジ式のまたは折り畳み可能な蓋が、カートリッジの中に含まれる1つまたは複数のプラスチック突出部に係合可能となるような形状を有する少なくとも1つのプラスチック凹部をさらに備え、それにより、ボディを基準としたカートリッジの枢動モーションまたは旋回モーションを推進および制御するためのならびに複数の初期位置から最終位置までの間でのその旋回移動を制限するためのデバイスが提供され、複数の初期位置の各々において、複数のカートリッジ・コンパートメントの各々が密閉され、最終位置において複数のカートリッジ・コンパートメントの各々がボディ吸入チャンネルに位置合わせされ、コンパートメントの中に含まれる空気入口および空気出口が空気を入れるために利用可能となり、ボティ吸入チャンネルに連通される。上記カートリッジの前進が完了した後、カートリッジとボディとの間の戻り止めの干渉を実現するための戻り止めデバイスを有することになる。
【0018】
さらに、この吸入器では、カートリッジを受けるための形状を有するボディ開口部の円筒形状の底部壁が、カートリッジの対応する円筒形状の底部壁に係合可能である少なくとも1つのプラスチック突出部を備え、それによりボディとカートリッジとの間にスナップ・タイプの組立体を提供し、組み立て後にボディとカートリッジとの間の完全な機械的な固定を実現する。
【0019】
この吸入器では、吸入器カートリッジが、最大400mgの吸入粉末の充填、保管、および供給に適する、好適には、4個、8個、または10個である複数の粉末コンパートメントを受け入れるための空間を提供する円筒形状またはほぼ円筒形状をさらに有する。
【0020】
吸入器カートリッジが、鋭利な縁部を有さない丸みのある端部を有する円筒形状またはほぼ円筒形状の頂部壁および底部壁をさらに備え、好適にはカートリッジ頂部壁のところに位置する、中の複数の粉末コンパートメントの各々のための少なくとも1つのプラスチック突出部を備え、少なくとも1つのプラスチック突出部が円筒形のボディ・レールおよびヒンジ式の頂部壁プラスチック凹部に係合可能であり、それにより、ボディを基準としたカートリッジの枢動モーションまたは旋回モーションを推進および制御するためのならびに複数の初期位置から最終位置までの間でのその旋回移動を制限するためのデバイスが提供され、複数の初期位置の各々において、複数のカートリッジ・コンパートメントの各々が密閉され、最終位置において複数のカートリッジ・コンパートメントの各々がボディ吸入チャンネルに位置合わせされ、コンパートメントの中に含まれる空気入口および空気出口が空気を入れるために利用可能となり、ボティ吸入チャンネルに連通される。上記カートリッジの前進が完了した後、カートリッジとボディとの間の戻り止めの干渉を実現するための戻り止めデバイスを有することになる。
【0021】
加えて、吸入器カートリッジが、カートリッジを受けるための形状を有するボディ開口部に対向するカートリッジ前方壁の中に含まれる好適には円筒形状の少なくとも1つのカートリッジ・ハンド・グリップまたはカートリッジ・ホルダあるいはカートリッジ上で間隔をあけて配置される複数のハンド・グリップを有し、少なくとも1つのカートリッジ・ハンド・グリップまたはカートリッジ・ホルダあるいは複数のハンド・グリップが患者の指に係合可能であり、複数の位置の間でボディを基準としてカートリッジを無理なく容易に低摩擦で旋回させるためのデバイスを提供する。
【0022】
本発明の吸入器の別の態様で、上述の発明性のある吸入器構成要素が、互いに枢動または旋回することの代わりに、直線の線形モーションで動作させられるように構成され得、ここでは、カートリッジがマウスピースの軸に対して垂直に摺動する。
【0023】
吸入器ボディおよびカートリッジが、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスルホン(PSU)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン・オキシド(PPO)、ポリブチレン・テレフタレート(PBT)、ポリエチレン・テレフタレート(PET)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)などの、製薬学的用途に適する任意の材料の射出成形によって作られ得る。材料選択が、収容および供給されることになる粉末に対しての適合性を最大にするように、吸入中の残留を最小にするように、保管中の劣化を最小にするように、および可能である場合に透明性を許容するように、行われなければならない。
【0024】
製造後、カートリッジが、カートリッジを受けるような形状を有する開口部を通して吸入器のボディの中に挿入され、ボディ底部壁の突出部とカートリッジ底部壁との間でのスナップ・タイプの係合がボディとカートリッジとの間での完全な組み立ておよび機械的な固定を実現し、同時に充填プロセスのためのカートリッジとボディとの間での低摩擦の自由旋回運動を可能にする。
【0025】
組み立て後、複数の吸入器カートリッジ粉末コンパートメントが、ボディ開口部の円筒形状の頂部壁の中に含まれる上述のスナップ・タイプのボディ蓋を介して従来の粉末充填器具により充填されるのに利用可能となり、またその準備が整っており、ボディ蓋がボディの射出成形後に開位置にあり、したがって、カートリッジの中に含まれる複数の粉末コンパーメントの各々の中へ単位投与量の吸入粉末を分配するのを可能にし、同時にこのカートリッジが充填プロセス中に機械的制約なしで連続的に旋回させられる。
【0026】
カートリッジの充填後、ボディ開口部の円筒形状の頂部壁の中に含まれるボディ蓋が開位置から閉位置まで移動させられるかまたは折り畳まれ、ボディ開口部の上記頂部壁の中にスナップ嵌合されて接触状態となり、それにより複数のカートリッジ粉末コンパートメントの中に含まれる各々のコンパートメント出口との緊密な機械的接触および密閉のための干渉を実現し、それにより、すべてのカートリッジ・コンパートメント保管位置においてボディ底部壁と併せて、上記蓋の閉位置において単位投与量にするようにコンパートメントを完全に密閉するのを実現する。
【0027】
吸入器が、その保管位置において、望ましくはホイルまたはアルミニウムのポーチあるいは任意適切な他の材料のポーチまたはパッケージの中にあり、低湿条件下または恒湿条件下にあり、複数のカートリッジ粉末コンパートメントが円筒形状またはほぼ円筒形状のボディ頂部壁とボディ底部壁との間においてこれらのボディ頂部壁およびボディ底部壁によって密閉される。
【0028】
本発明の吸入器の使用中、患者がそのパッケージから吸入器を取り出して、保管位置にあるカートリッジを有する吸入器にアクセスする。次いで、患者がカートリッジ・ハンド・グリップに接触して複数のカートリッジ粉末コンパートメントのうちの第1のカートリッジ粉末コンパートメントを吸入位置まで旋回および前進させ、この位置において、粉末コンパートメント底部空気口および/または側方空気口が、ボディ開口の底部壁/側壁中に設けられる底部開口部および/または側方開口部に位置合わせされ、それにより空気を入れるのを可能にする。さらに、この位置では、複数のカートリッジ粉末コンパートメント出口のうちの第1の出口が、ボディ開口部の頂部壁の中に含まれる吸入チャンネルの底部入口に位置合わせされる。
【0029】
カートリッジが吸入位置まで移動すると、患者が使用指示に従って第1の投与量を吸入し、デバイスに跨る空気流れが作られる。空気が最初にボディ底部空気入口および/またはボディ側部空気入口を通って移動してコンパートメント底部入口スリットおよび/またはコンパートメント側部入口スリットを通って粉末コンパートメントの中に入ることができ、それによりそこに収容される粒子状物質を分散させる。
【0030】
次いで、粒子状物質を取り込んだ空気流れがボディ吸入チャンネルに入り、ボディ側部入口を通るように提供される補助空気流れが追加のチャンネル乱流を誘発し、それにより用途に応じて肺または鼻腔などの意図される部位に取り込んで最終的に堆積させるように粒子状物質のさらなる分散および解凝集を引き起こす。
【0031】
吸入操作後、複数の粉末コンパートメントのうちの各々の第1の粉末コンパートメントの中にあるプラスチック突出部とボディ頂部壁の中にあるプラスチック凹部との間の干渉が吸入後の第1のカートリッジ粉末コンパートメントの機械的な復帰を防止する。
【0032】
次いで、患者が複数のカートリッジ粉末コンパートメントのうちの第2のカートリッジ粉末コンパートメントを吸入位置まで移動させて2回目の吸入を行い、存在するコンパートメントの数だけこの操作を繰り返す。
【0033】
この新規の構成が大量投与量の吸入粉末の分散および解凝集を可能にし、同時に、部品の数を1回の単純な組み立てステップで組み立てられる2つの構成要素に留める単純で直感的である吸入器を維持しながら、ドラッグ損失、工業的な複雑さ、および製造コストを最小にする、粉末充填プロセスに適する発明性のある組み立てられた吸入器構成を提供し、上記のすべての特徴が低コストで製造され経済的利益をもたらす大投与量の吸入器を達成するのに累積的に寄与する。
【0034】
これらの利点に基づいて、本出願の1つの発明性のある特徴は、個別のカートリッジ・コンパートメントの中への粉末の充填の前に吸入器ボディおよびカートリッジが組み立てられ、上記の組み立てられた吸入器が吸入粉末をカートリッジの中に充填するための開口部を備える、ことである。
【0035】
本出願の別の発明性のある特徴は、組み立てられた吸入器が、吸入器ボディと同じ材料で作られて同じステップで製造されるヒンジ式のまたは折り畳み可能である蓋を備え、この蓋が、吸入器の組み立て構成において上記開口部を通して吸入粉末を充填するのを可能にし、カートリッジが、上記吸入器の組み立て構成においてボディを基準として自由に前進および旋回することができる、ことである。
【0036】
本出願の別の発明性のある特徴は、組み立てられた吸入器が、吸入器ボディと同じ材料で作られて同じステップで製造されるヒンジ式のまたは折り畳み可能である蓋を備え、この蓋が、粉末の充填に適する開位置から閉位置まで移動させられるかまたは折り畳まれると、吸入器ボディの中にスナップ嵌合されて吸入器ボディと接触状態となり、それによりカートリッジに緊密に接触してカートリッジと干渉関係になり、このような上記干渉により充填状態のカートリッジが密閉される。
【0037】
本発明の別の発明性のある特徴は、組み立てられた吸入器が、吸入器ボディと同じ材料で作られて同じステップで製造されるヒンジ式のまたは折り畳み可能である蓋を備え、この蓋が、移動させられるかまたは折り畳まれて吸入器ボディの中にスナップ嵌合されると、複数の初期位置から最終位置までの間でのボディを基準としたカートリッジの前進および旋回移動を制限および制御するためにカートリッジに係合される機構を備え、複数の初期位置では複数のカートリッジ・コンパートメントの各々が密閉され、最終位置では複数のカートリッジ・コンパートメントの各々がボディ吸入チャンネルに位置合わせされ、コンパートメントの中に含まれる空気入口および空気出口が空気を入れるために利用可能となり、ボディ吸入チャンネルに連通される。上記カートリッジの前進が完了してカートリッジが固定されてさらなる移動が不可能になった後、カートリッジとボディとの間の戻り止めの干渉を実現するための戻り止めデバイスを有することになる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1a】従来技術の吸入器を示す図である。
図1b】従来技術の吸入器を示す図である。
図1c】従来技術の吸入器を示す図である。
図1d】従来技術の吸入器を示す図である。
【0039】
図2a】本発明による吸入器ボディを示す斜視図である。
図2b】本発明による吸入器ボディを示す長手方向断面図である。
【0040】
図3a】本発明による吸入器カートリッジを示す斜視図である。
図3b】本発明による吸入器カートリッジを示す長手方向断面図である。
【0041】
図4a】本発明による吸入器ボディの追加の態様を示す斜視図である。
図4b】本発明による吸入器ボディの追加の態様を示す正面図である。
【0042】
図5a】本発明による吸入器カートリッジの追加の態様を示す斜視図である。
図5b】本発明による吸入器カートリッジの追加の態様を示す斜視図である。
【0043】
図6a】分解構成の、図2による吸入器ボディおよび図3による吸入器カートリッジを示す斜視図である。
【0044】
図6b】ヒンジ式の蓋が開位置にあってデバイスを粉末の充填のために利用可能にした状態の、組み立て構成である組み立てステップ後の図2による吸入器ボディおよび図3による吸入器カートリッジを示す斜視図である。
【0045】
図7a】それぞれ分解構成および組み立て構成にある本発明による吸入器ボディおよび吸入器カートリッジの別の態様を示す斜視図である。
図7b】それぞれ分解構成および組み立て構成にある本発明による吸入器ボディおよび吸入器カートリッジの別の態様を示す斜視図である。
【0046】
図8a】複数の粉末コンパートメントの中への粉末の充填中の本発明による吸入器を示す長手方向断面図である。
図8b】複数の粉末コンパートメントの中への粉末の充填中の本発明による吸入器を示す長手方向断面図である。
図8c】複数の粉末コンパートメントの中への粉末の充填中の本発明による吸入器を示す長手方向断面図である。
【0047】
図8d】ヒンジ式の蓋が閉位置まで移動させられたときの、複数の粉末コンパートメントの中への粉末の充填後の本発明による吸入器を示す長手方向断面図である。
図8e】ヒンジ式の蓋が閉位置まで移動させられたときの、複数の粉末コンパートメントの中への粉末の充填後の本発明による吸入器を示す長手方向断面図である。
図8f】ヒンジ式の蓋が閉位置まで移動させられたときの、複数の粉末コンパートメントの中への粉末の充填後の本発明による吸入器を示す長手方向断面図である。
【0048】
図9】吸入器カートリッジが保管位置にあるときの、粉末を充填してヒンジ式の蓋を閉じた後の図8による吸入器を示す長手方向断面図である。
【0049】
図10】吸入器カートリッジが保管位置から吸入位置まで移動させられたときの、粉末を充填してヒンジ式の蓋を閉じた後の図8による吸入器を示す長手方向断面図である。
【0050】
図11】充填方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
次に、図面に基づいて本発明を説明する。本明細書で説明される本発明の実施形態および態様が単に例であり、特許請求の範囲の保護範囲を限定しないことを理解されたい。本発明は特許請求の範囲およびその均等物によって定義される。本発明の1つの態様または実施形態が本発明の別の態様および/または実施形態の特徴と組み合わされ得ることを理解されたい。
【0052】
「図」という単語の後に連続的に番号を付される図面を参照すると、同様の符号が同様の部品を示し、各々の実施形態または態様が一連の番号によって特定され、ここでは、百の位の数が実施形態または態様の番号であり(1xxから7xx)、各々の実施形態または態様における等価の特徴が等しい数のxxを有する。
【0053】
図2aおよび2bの図面を参照すると、患者の口または鼻にそれぞれ係合されるためのマウスピースまたはノーズピース202と、吸入器カートリッジ203を受けるための開口部204とを備える吸入器ボディ201が示されており、この開口部204が、鋭利な縁部を一切有さない円筒形状またはほぼ円筒形状である頂部壁210および底部壁211と、側壁226と、ボディ201を基準としたカートリッジ203の旋回運動または枢動運動を可能にするための少なくとも1つのボディ・レール212とを有する。
【0054】
図2aが、吸入器ボディ201を示し、これはボディ201自体と同じ材料および同じ成形ステップで射出成形され、ボディ開口部204の頂部壁210に包含される、粉末充填開口部214およびヒンジ式のまたは折り畳み可能な蓋213を備える。図2aが、ヒンジ式のまたは折り畳み可能な蓋213が、カートリッジ203の中の対応するカートリッジ突出部217に係合可能となるような形状を有する少なくとも1つのプラスチック・ボディ凹部215をさらに有し、それにより、ボディ201を基準としたカートリッジ203の枢動モーションまたは旋回モーションを推進および制御するデバイスが提供され、このデバイスが、上記推進の完了後にカートリッジ203とボディ201との間での戻り止めを実現するための戻り止め218を有することをさらに示す。
【0055】
図2aが、ボディ開口部204の底部壁211が、カートリッジ203の対応する底部壁221に係合可能である少なくとも1つのプラスチック・ボディ突出部219を有し、それにより上記組み立て後にボディ201とカートリッジ203との間のスナップ・タイプの組み立ておよび機械的な固定を実現することを追加的に示す。
【0056】
図2bが、ボディ頂部壁210及びヒンジ式のまたは折り畳み可能な蓋213はスナップ・タイプの組立体216を構成し、ボディ頂部壁210の中へヒンジ式のまたは折り畳み可能な蓋213が前述の組み立て後にスナップ・タイプで組み立てられ、機械的な固定を実現することをさらに示す。加えて、カートリッジ203を受けるような形状を有する開口部204の底部壁211の中への開口部224がさらに示され、それにより、マウスピース・チャンネル208に位置合わせされた状態において上記開口部204の中に空気を入れるのを可能にする。
【0057】
図3aおよび3bの図面を参照すると、鋭利な縁部を有さない円筒形またはほぼ円筒形のカートリッジ頂部220および底部壁221と、複数の粉末コンパートメント205とを有する吸入器カートリッジ203が示されており、粉末コンパートメント205の各々が、吸入する粉末製剤を充填、保管、および供給するのに適する入口206および出口207を備える。
【0058】
図3aが、吸入器カートリッジ203をさらに示し、吸入器カートリッジ203は、複数の粉末コンパートメント205の各々に、カートリッジ頂部壁220のところにある少なくとも1つのプラスチック・カートリッジ突出部217を備え、プラスチック・カートリッジ突出部217が対応するヒンジ式のボディ蓋プラスチック・ボディ凹部215および戻り止め218に係合可能であり、それにより、複数の位置の間で、吸入器ボディ201を基準としたボディ・レール212内でのカートリッジ203の枢動モーションまたは旋回モーションを推進および制御するための、上記前進の完了後に戻り止めを実現するための戻り止めデバイスを含むデバイスを提供する。
【0059】
図3bがさらに、吸入器カートリッジ203が、患者の指に係合可能である少なくとも1つのハンド・グリップ222を有し、それにより、複数の位置の間でボディ201を基準としてカートリッジ203を旋回させるための旋回デバイスが提供される。
【0060】
図4aを参照すると、吸入器ボディ301の第2の態様が示されており、ここでは、プラスチック・ボディ凹部315および戻り止め318を備えるヒンジ式のまたは折り畳み可能な蓋313が吸入器カートリッジ203の前進を制御するためのデバイスを形成し、マウスピースまたはノーズピース302に一体化されている。
【0061】
図4bが吸入器ボディ401の第3の態様を示しており、ここでは、プラスチック・ボディ凹部415および戻り止め418がカートリッジの前進を制御するためのデバイスを形成し、吸入器ボディ側壁426に組み込まれている。
【0062】
図5aおよび5bが吸入器カートリッジ503の第2の態様を示しており、ここでは、カートリッジ突出部517が各々の粉末コンパートメント505の前方壁の中に位置し、図4bに示される吸入器ボディ401の第3の態様の対応するボディ突出部(つまり、プラスチック・ボディ凹部415および戻り止め418)に係合可能であり、それにより、患者の指によるハンド・グリップ522の作動により複数の位置の間でのボディ401を基準としたカートリッジ503の枢動モーションまたは旋回モーションを推進および制御するためのデバイスが提供される。
【0063】
次に図6を参照すると、吸入器ボディ201および吸入器カートリッジ203によって構成される吸入器の組立体が示されている。図6aが、製造後に吸入器カートリッジ203が開口部204を通して吸入器ボディ201の中に挿入されることを示す。図6bが、プラスチック・ボディ突出部219とカートリッジ底部壁221との間のスナップ・タイプの係合が組み立てステップ後に吸入器ボディ201と吸入器カートリッジ203との間での完全な機械的な固定を実現し、同時にボディ・レール212に対してのカートリッジ頂部壁220の係合が吸入器カートリッジ203と吸入器ボディ201との間での自由な旋回運動を可能にする、ことを示す。
【0064】
図6bが、組み立て後に、粉末コンパートメント205の各々がボディ粉末充填開口部214を通して単位投与量の粉末を充填するのに利用可能となり、その理由が、ボディのヒンジ式のまたは折り畳み可能な蓋213が吸入器ボディ201の射出成形プロセスから開位置にあり、吸入器カートリッジ203が機械的制約なしで吸入器ボディ201を基準として連続的に自由に旋回することができるからである、ことをさらに示す。
【0065】
図7aがさらに、吸入器ボディ601および吸入器カートリッジ603によって構成される第2の吸入器の態様の組立体を示しており、ここでは、側方空気入口609が各々の粉末コンパートメント605の中に含まれ、これが、粉末コンパートメント605の中へ接線方向に追加的に空気を入れるためのものであり、これが、上で言及したポルトガル特許出願PT103481で開示される効果的な分散・エアロゾル化の動力学を作り出すことにつながる。図7bが、組み立て後に、吸入器ボディ側壁626の中に含まれる側方空気入口625が、コンパートメント側方空気入口609を通して各々の粉末コンパートメント605の中に空気を入れるのを可能にし、これが、マウスピース・チャンネル608に位置合わせされた吸入位置まで上記粉末コンパートメント605が到達したときに行われる、ことを示す。
【0066】
次に図8を参照すると、吸入器の充填が示されている。図8aが、ボディ蓋713が開位置にある状態における、従来の器具による、ボディ粉末充填開口部714を通しての第1のカートリッジ粉末コンパートメント705の中への単位投与量の粉末の充填を示す。図8bが、第2の粉末コンパートメント705がボディ粉末充填開口部714に位置合わせされて充填されるのに利用可能となりまたその準備が整うようになるまでの、吸入器カートリッジ703の旋回を示す。さらに、図8cが、ボディのヒンジ式の蓋713が開位置にある状態における、従来の器具による、粉末充填開口部714を通しての第2のカートリッジ粉末コンパートメント705の中への第2の単位投与量の粉末の充填を示す。
【0067】
図8dから8fが、最後に利用可能となるカートリッジ粉末コンパートメント705の中への単位投与量の充填後に、ボディ蓋713が開位置から閉位置まで移動させられるかまたは折り畳まれて吸入器ボディ701のボディ頂部壁710の中にスナップ嵌合されてボディ頂部壁710と接触状態となり、それにより、各々のカートリッジ粉末コンパートメント705の出口707との緊密な機械的接触および密閉による干渉を実現し、同時に、カートリッジ粉末コンパートメント底部入口706に対してのボディ底部壁711の緊密な接触および密閉による干渉も実現し、それにより、すべてのカートリッジ・コンパートメント保管位置において、粉末の単位投与量にするように粉末コンパートメント705を完全に密閉するのを実現する。
【0068】
図9が、吸入器カートリッジ705が保管位置にある状態において患者がパッケージから吸入器を取り出して吸入器にアクセスする場合の、吸入器を示しており、ここでは、複数の粉末コンパートメント705の各々が、ボディ底部壁711、ボディ頂部壁710、および閉じたボディ蓋713によって密閉されている、ことを示す。
【0069】
次に図10を参照すると、患者がカートリッジ・ハンド・グリップ522に接触して粉末コンパートメント705のうちの第1の粉末コンパートメントを吸入位置まで前進させるために旋回させたときの、吸入器が示されている。この位置で、カートリッジ粉末コンパートメント底部入口706が底部壁開口部724に位置合わせされており、それにより粉末コンパートメント705の中に空気を入れるのを可能にしており、カートリッジ粉末コンパートメント出口707がマウスピース・チャンネル708に位置合わせされており、それにより、患者の気道との流体連通、および患者の吸気努力を介しての上記粉末コンパートメント705の中で含まれる単位投与量の粉末の分散を可能にする。
【0070】
図11が乾燥粉末吸入器を充填するための方法のアウトラインを示す。第1のステップS1で、組み立てられた吸入器において、ドラッグ投与量のうちの第1のドラッグ投与量が、ボディ213;313;413;613;713の中にある充填開口部214;314;414;71を介して、個別のカートリッジ・コンパートメント205;505;605;705のうちの第1のカートリッジ・コンパートメントの中に充填される。ステップS2で、カートリッジ・コンパートメント205;505;605;705が次のドラッグ・コンパートメント充填位置まで前進させられ、最終的にS3において、すべてのカートリッジ・コンパートメント205;505;605;705が充填される。ステップS4で、ヒンジ式のまたは折り畳み可能なボディ蓋213;313;413;613;713が閉じられてステップS5で吸入器ボディ213;313;413;613;713の中にスナップ嵌合されて接触状態となる。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b
図8c
図8d
図8e
図8f
図9
図10
図11