IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キャンサー・リサーチ・テクノロジー・リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】乳癌の検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/48 20060101AFI20250214BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20250214BHJP
   C12Q 1/6886 20180101ALI20250214BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20250214BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20250214BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20250214BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250214BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20250214BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20250214BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20250214BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20250214BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20250214BHJP
   C07K 14/82 20060101ALN20250214BHJP
   C07K 14/765 20060101ALN20250214BHJP
   C07K 16/32 20060101ALN20250214BHJP
   C07K 14/79 20060101ALN20250214BHJP
【FI】
G01N33/48 M
G01N33/68
C12Q1/6886 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6869 Z
C12N15/12
A61P35/00
A61K31/337
A61K31/704
C12Q1/6851 Z
C12Q1/04
C07K14/47
C07K14/82
C07K14/765
C07K16/32
C07K14/79
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021572041
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-04
(86)【国際出願番号】 GB2020051352
(87)【国際公開番号】W WO2020245590
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-05-29
(31)【優先権主張番号】1907999.5
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】598176569
【氏名又は名称】キャンサー・リサーチ・テクノロジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CANCER RESEARCH TECHNOLOGY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カレド ワリド ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ペンサ サラ
(72)【発明者】
【氏名】バッハ カルステン
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/073047(WO,A2)
【文献】Pensa, Sara,Bcl11a Marks Mammary Progenitor Cells and Promotes Early Cellular Changes Associated with TNBC by Recruiting Chd8,SSRN Electronic Journal,2018年08月02日,pp.1-44,http://dx.doi.org/10.2139/ssrn.3224558
【文献】Umekita, Yoshihisa,Gene expression profile of terminal end buds in rat mammary glands exposed to diethylstilbestrol in neonatal period,Toxicology Letters,2011年08月10日,205(1),pp.15-25,https://doi.org/10.1016/j.toxlet.2011.04.031.
【文献】Bach, Karsten,Differentiation dynamics of mammary epithelial cells revealed by single-cell RNA sequencing,Nat Commun.,2017年12月11日,8(1):2128,pp.1-11,https://doi.org/10.1038/s41467-017-02001-5
【文献】Sauter, Edward R.,Identification of a β-casein-like peptide in breast nipple aspirate fluid that is associated with breast cancer,Biomarkers Med.,2009年10月08日,3(5),pp.577-588,https://doi.org/10.2217/bmm.09.46
【文献】Lazarus, Kyren,Abstract PR01: Understanding the role of BCL11A in triple-negative breast cancer,Mol Cancer Res,2016年02月29日,14 (2_Supplement): PR01.,pp.1,https://doi.org/10.1158/1557-3125.ADVBC15-PR01
【文献】Khaled, W.,BCL11A is a triple-negative breast cancer gene with critical functions in stem and progenitor cells,Nat Commun.,2015年01月09日,6:5987,pp.1-10,https://doi.org/10.1038/ncomms6987
【文献】Roberts, K.,Proteomic analysis of selected prognostic factors of breast cancer,Proteomics,2004年02月19日,4(3),pp.784-792,https://doi.org/10.1002/pmic.200300633
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/574
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性を評価する方法であって、前記方法が、前記対象の乳房からの材料のサンプルを分析して、異常に分化した細胞に関連する種が該サンプルに存在するかどうかを決定することにより異常に分化した管腔前駆細胞が乳房に存在するかどうかを決定することを含み、前記異常に分化した細胞に関連する種の存在は、前記対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性が高いことを示すものであり、前記異常に分化した細胞に関連する種は、ベータ-カゼイン(CSN2)、ベータ-カゼイン(CSN2)をコードするDNA分子、ベータ-カゼイン(CSN2)をコードするRNA分子、乳清酸性タンパク質(WAP)、乳清酸性タンパク質(WAP)をコードするDNA分子、及び乳清酸性タンパク質(WAP)をコードするRNA分子の一種以上である、
方法。
【請求項2】
前記対象の乳房からの材料のサンプルを分析する工程が、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ウェスタンブロット分析及び質量分析法から選択される1つ又は複数の技術を使用して、前記サンプル中にタンパク質の存在を決定するか、並びに/あるいは、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、RNA配列決定(RNAseq)及びDNA配列決定(DNAseq)から選択される1つ又は複数の技術を使用して、前記サンプル中のDNA分子及び/又はRNA分子の存在を決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象の乳房からの材料のサンプルが、前記対象の乳房の乳首から、あるいは外科手術又は生検から得られている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象の乳房からの材料のサンプルが、乳房ポンプ及び/又は針を介して得られたサンプルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記対象の乳房からの材料のサンプルが、前記対象から採取された血液のサンプルから得られるか、又は、前記対象の前記乳房から発現した流体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、前記対象の乳房を分析して、胞構造が前記対象の乳房に存在するかどうかを決定することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、前記対象の乳房に異常な組織が存在するかどうかを決定するために前記対象の乳房を走査及び/又は画像化することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記対象の乳房が、磁気共鳴画像法(MRI)、マンモグラフィ、コンピュータ断層撮影(CT)走査、及び/又はコントラスト画像化から選択される1つ又は複数の技術を使用して、走査及び/又は画像化される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、前記対象の乳房から得られた材料のサンプルを分析して、異常に分化した細胞に関連する更なる種が該サンプル中に存在するかどうかを決定することを更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記異常に分化した細胞に関連する前記更なる種が、BCL11AからのDNA又はRNA、或いはBCL11Aから発現される任意のタンパク質である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記対象が、トリプルネガティブ乳癌を発症するリスクがあると特定された対象である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記対象が、BRCA1及び/又はBRCA2遺伝子の変異を有するか、あるいは乳癌の家族歴を有するか、あるいは相同組換え修復欠損である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記対象が妊娠していない対象である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
対象において、乳癌又は乳癌に関連する前癌状態の発症をモニタリングするための方法、あるいは乳癌の再発及び/又は成長をモニタリングするための方法であって、前記方法が、所定の時間間隔によって分離された2つ以上の時点で、請求項1~13のいずれか一項に記載された方法を実行することを含む、方法。
【請求項15】
乳癌又は乳癌に関連する前癌状態の治療のための化学療法剤であって、前記治療の対象が、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法によって、乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する高い可能性有すると決定されていることを特徴とし、前記化学療法剤が、タモキシフェン、アリミデックス(登録商標)(アナストロゾール)、アロマシン(登録商標)(エキセメスタン)、フェマーラ(登録商標)(レトロゾール)、フェソロデックス(登録商標)(フルベストラント)、ハーセプチン(登録商標)(トラスツズマブ)、タイケルブ(登録商標)ラパチニブ)、アントラサイクリン、又はタキサンである、化学療法剤。
【請求項16】
前記化学療法剤が、アントラサイクリン又はタキサンを含み、アントラサイクリンがドキソルビシン又はエピルビシンであり、タキサンがドコタキセル又はパクリタキセルである、請求項15に記載の化学療法剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性を評価する方法に関する。本発明はまた、対象において乳癌の治療が必要であるかどうかを決定する方法、及び当該治療を必要とする対象の治療で使用するための化学療法剤に関する。
【背景技術】
【0002】
乳癌は、女性で診断される最も一般的な悪性腫瘍である。英国では、毎年約55,000名の女性が乳癌と診断されており、英国では毎年約11,000名が乳癌で死亡していると報告されている。
【0003】
乳癌は、いくつかのサブタイプで構成される異質性疾患(heterogeneous disease)である。乳癌の分類には、典型的には、免疫組織学的方法を使用して、乳癌の発症に関連するいくつかの重要なホルモン受容体の発現レベルを決定することが含まれる。分析されたホルモン受容体のうち、最も注目すべき3つの受容体は、プロゲステロン受容体(PgR)、エストロゲン受容体(ER)、及びヒト上皮成長因子受容体2(HER2)である。PgR及びERを発現し、またHER2の過剰発現レベルを有する乳癌患者は、例えば、これらの重要なホルモン受容体のうちの1つ又は複数を特異的に標的とする化学療法剤(例えば、タモキシフェン、アリミデックス(商標)(アナストロゾール)、アロマシン(商標)(エキセメスタン)、フェマーラ(商標)(レトロゾール)、フェソロデックス(商標)(フルベストラント)、ハーセプチン(商標)(トラスツズマブ)、タイケルブ(商標)ラパチニブ))の投与等のホルモン療法に良好に応答する可能性がより高いという事実により、典型的には良好な臨床転帰を示す。
【0004】
全ての乳癌の15%~20%を占める、乳癌の最も侵襲性のサブタイプの1つは、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)である。TNBCは、ER、PgRのタンパク質発現の欠如、及びHER2タンパク質の過剰発現の不存在によって分類される乳癌の一種である。PgR、ER、及びHER2が存在しない場合、TNBC腫瘍は標準的なホルモン療法治療レジメンにも反応しないため、したがって、TNBCは通常、予後不良、低生存率、及び腫瘍の高再発率に関連する。しかし、早期に診断された場合、TNBCは、手術、放射線療法、及び一部の化学療法剤による治療に成功する可能性があり、選択的乳房切除術及び/又は予防的化学療法を使用して、更に管理又は予防することができる。
【0005】
乳癌患者、特にTNBC患者の予後は、乳癌が早期に発見されれば大幅に改善される。したがって、乳癌を検出するための、特にTNBCのリスクのある女性の乳癌の初期の発症を検出するための、簡単で費用対効果の高い方法の必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性を評価する方法が提供され、当該方法は、対象の乳房を分析して、乳房に異常に分化した管腔前駆細胞が存在するかどうかを決定することを含み、乳房内の異常に分化した細胞の存在は、対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性が高いことを示すものである。
【0007】
適切には、異常に分化した管腔前駆細胞は、異常に分化して胞構造(例えば、対象の乳房における乳汁形成構造)を形成する細胞である。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有するかどうかを決定する方法が提供され、当該方法は、対象の乳房を分析して、異常に分化した管腔前駆細胞及び/又は胞構造が乳房に存在するかどうかを決定することを含み、乳房における異常に分化した細胞及び/又は胞構造の存在は、対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有することを示すものである。
【0009】
本発明の第3の態様によれば、対象の乳癌を治療する方法が提供され、当該方法は、
a)本明細書に記載の方法により、対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性を評価する工程と、
b)対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性が高いと評価される場合、対象に標準的な乳癌治療レジメンを投与する工程と、とを含む。
【0010】
本発明の第4の態様によれば、対象において、乳癌又は乳癌に関連する前癌状態の発症をモニタリングする方法、あるいは乳癌の再発及び/又は成長をモニタリングする方法が提供され、当該方法は、所定の時間間隔で隔てられた2つ以上の時点で、本明細書で定義される方法を使用して、対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性を評価することを含む。
【0011】
本発明の第5の態様によれば、当該治療を必要とする対象の治療に使用するための化学療法剤が提供され、治療は、
a)本明細書に記載の方法により、対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性を評価する工程と、
b)乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性が高いと評価される場合、対象に化学療法剤を投与する工程と、を含む。
【0012】
本発明の第6の態様によれば、対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性を評価する方法が提供され、当該方法は、対象の乳房から得られた材料のサンプルを分析して、ベータ-カゼイン(CSN2)が存在するかどうかを決定することを含み、対象の乳房から得られた材料のサンプル中のベータ-カゼイン(CSN2)の存在は、対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性が高いことを示すものである。
【0013】
対象が乳癌を有する可能性の評価が高レベルの確実性で行われる場合、本発明の方法は、対象が乳癌を有するかどうかを決定する方法である。
【0014】
したがって、好ましい実施形態では、対象が乳癌を有する可能性を評価する方法は、対象が乳癌を有するかどうかを決定する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1のA)は、FACSによって決定されるように、標識後8週間(8w)及び妊娠14.5日(14.5dG)における、Bcl11a標識マウス(例えば、タモキシフェン(TAM)を投与したマウス)から回収した乳腺の管腔(左)又は基底(右)コンパートメント内の細胞の割合を示し、データは平均±SDとして表され、対応のないt検定が実行された(*はP<0.05を示す)。B)は、乳腺上皮構造のオーバービュー(上2パネル)及び代表的なZ-スライス(下2パネル)として示され、表されるように、EpCAM又はK5で免疫染色されたCUBIC透明化全腺のtdTomatopоs細胞の共焦点3D画像である(スケールバー、100μm)。
図2図2のA)は、Bcl11a標識の誘導後にマウスにおいてTNBC腫瘍を誘導するために使用されるMPA/DMBAプロトコルの概略図であり、B)は、乳腺上皮構造の代表的なZ-スライスとして示され、表されるように、EpCAM又は平滑筋アクチン(SMA)で免疫染色されたCUBIC透明化全腺のtdTomatopоs細胞の共焦点3D画像である(スケールバー、100μm)。
図3図3は、Brca1f/f;p53+/-;Blg-Cre(Bcl11a+/+又はf/+)(n=14)及びBcl11af/f;Brca1f/f;p53+/-;Blg-Cre(n=6)の腫瘍を有さない生存を示すカプラン・マイヤー生存プロットを示す。ログランク(Mantel-cox)検定を実行した(p=0.00017)。
図4図4は、FACSによって分離され、ドロップレットベースのscRNAseqを経た、Brca1f/f;p53+/-;Blg-Cre(左パネル)及びBcl11af/f;Brca1f/f;p53+/-;Blg-Cre(右パネル)のマウスからの乳腺上皮細胞を表すt分布型確率的近傍埋め込み法(t-SNE)を示す。細胞は、推測された細胞型に基づいて色付けされる。
図5図5は、様々な年齢からの、バージン対照、BCL11Aovx;MMTV-Cre、BCL11Aovx;Blg-Cre、Brca1f/f;p53+/-;Blg-Cre及びBcl11a;Brca1f/f;p53+/-;Blg-Creマウスの代表的な乳腺ホールマウントを示す。
図6図6のA)は、IHCによって測定された、BRCA1変異キャリア及び非BRCA1キャリア(正常)におけるCSN2の平均タンパク質発現を表すグラフを示し、B)は、qPCRによって測定された、BRCA1変異キャリア及び非BRCA1キャリア(正常)におけるCSN2の平均RNA発現を表すグラフを示す。
図7図7のA)は、成熟期に低用量のタモキシフェンを単回腹腔内注射することによるBcl11a標識の誘導から7週間後、マウスをMPA/DMBAプロトコルを受けさせて、TNBC腫瘍を誘導し、11週間後にサンプルを採取した概略図を示す。B)は、RFP(tdTomatopos細胞を検出するため)及びDAPIで免疫染色された乳腺切片のタイルスキャンを示す(スケールバー、100μm)。C)は、2つの代表的な乳腺上皮構造の3D再構成のフレームショットとして示されている、EpCAMで免疫染色されたCUBIC透明化全腺のtdTomatopos細胞の共焦点3D画像化(スケールバー、100μm)を示す。D)は、RFP(tdTomatopos細胞を検出するため)、Csn2又はDAPIで免疫染色された乳腺切片を示す(スケールバー、100μm)。E)は、MPA/DMBA処理後の様々な時点でFACS単離された管腔前駆細胞からのRNA抽出を示す概略図であり、グラフは様々なサンプルにおけるCsn2発現を示している。
図8図8は、Brca1/p53マウスの乳腺組織のLC-MS分析からの抽出を示す。図8は、CSN2に一致するペプチドの質量スペクトルを示す。
図9図9は、Brca1/p53マウスの乳腺組織のLC-MS分析からの抽出を示す。図9は、WAPに一致するペプチドの質量スペクトルを示す。
図10図10は、授乳中のWTマウスの血液のLC-MS分析からの抽出を示す。図10は、CSN2に一致するペプチドの質量スペクトルを示す。
図11図11は、授乳中のWTマウスの血液のLC-MS分析からの抽出を示す。図11は、WAPに一致するペプチドの質量スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の方法
対象が乳癌を有する可能性
広範な調査の後、本発明者等は、驚くべきことに、管腔前駆細胞が、乳癌(例えば、TNBC)と診断された動物及びヒトの両方の対象の乳房において、しばしば腫瘍の発症の可視的兆候のいずれかの前に、異常に分化することを発見した。管腔前駆細胞は、女性の乳房に存在する細胞であり、通常、妊娠中に分化して胞構造(例えば、乳汁産生細胞)を形成するだけである。したがって、本発明者等にとって、そのような細胞が(妊娠していない対象において)乳癌の初期段階で異常に分化することが見出されたことは驚くべきことであった。
【0017】
この発見を考慮して、本発明は、対象の乳房における異常に分化した管腔前駆細胞の検出(及び/又は胞構造の検出)を使用する、患者が乳癌を有する可能性を決定するための新規な方法を提供する。更に、管腔前駆細胞の分化、及びその後の胞構造の形成は、典型的には、腫瘍形成の可視的兆候のいずれかの前に観察されたため、本発明はまた、初期形態の乳癌を検出するための方法を有利に提供する。
【0018】
したがって、本発明の一態様では、対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性を評価する方法が提供され、当該方法は、対象の乳房を分析して、異常に分化した管腔前駆細胞が存在するかどうかを決定することを含み、異常に分化した細胞の存在は、対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性が高いことを示すものである。異常に分化した細胞が存在しないことは、対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性が低いことを示すものである。
【0019】
特定の実施形態では、方法は、対象の乳房を分析して、異常に分化した管腔前駆細胞及び/又は胞構造が乳房に存在するかどうかを決定することを含み、異常に分化した細胞の存在及び/又は胞構造の存在は、対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性が高いことを示すものである。
【0020】
適切には、管腔前駆細胞は、例えば、異常に分化して胞構造を形成する胞管腔前駆細胞である。
【0021】
特定の実施形態では、本発明の方法は、対象が乳癌を有する可能性を評価することを含む。最も適切には、本発明の方法は、対象がトリプルネガティブ乳癌(TNBC)を有する可能性を評価することを含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、対象が乳癌に関連する前癌状態を有する可能性を評価することを含む。前癌状態は、特定の細胞の形態が乱れ、それによって対象の乳癌のリスクが増大する状態である。
【0023】
乳房分析
異常に分化した管腔前駆細胞及び/又は胞構造が存在するかどうかを決定するための対象の乳房の分析は、当技術分野で知られている任意の適切な技術を含み得る。特定の実施形態では、対象の乳房の分析は、異常に分化した細胞及び/又は胞構造が存在するかどうかを決定するために乳房を走査及び/又は画像化することを含む。他の実施形態では、本発明の方法は、対象の乳房から材料のサンプルを取得し、材料を分析して、異常に分化した細胞に関連する1つ又は複数の種が存在するかどうかを決定する工程を含み得る。
【0024】
したがって、特定の実施形態では、対象の乳房の分析は、
a)異常に分化した管腔前駆細胞が存在するかどうかを決定するために乳房を走査及び/又は画像化すること、
b)並びに/あるいは対象の乳房から材料のサンプルを取得し、材料を分析して、異常に分化した管腔前駆細胞に関連する種が存在するかどうかを決定すること、から選択される1つ又は複数の技術を含む。
【0025】
乳房の走査及び/又は画像化は、当技術分野で知られている任意の適切な技術を使用して実行することができる。適切には、乳房の走査及び/又は画像化は、磁気共鳴画像法(MRI)、マンモグラフィ、コンピュータ断層撮影(CT)走査、及び/又はコントラスト画像化から選択される1つ又は複数の技術を使用して実施される。
【0026】
異常に分化した管腔前駆細胞に関連する種は、例えば、タンパク質、DNA分子及び/又はRNA分子を含み得る。適切には、異常に分化した管腔前駆細胞に関連する種は、乳タンパク質及び/又は乳タンパク質をコードするDNA若しくはRNA分子からなる群から選択される。
【0027】
特定の実施形態では、異常に分化した管腔前駆細胞に関連する種は、乳タンパク質である。適切には、乳タンパク質は、カゼイン(例えば、ベータ-カゼイン)、アルファ-ラクトアルブミン、ラクトフェリン、免疫グロブリン免疫グロブリンA、リゾチーム、乳清酸性タンパク質(WAP)及び血清アルブミンから選択される。最も適切には、乳タンパク質はカゼイン(例えばベータ-カゼイン)又は乳清酸性タンパク質である。更により適切には、乳タンパク質はベータ-カゼイン又はWAPである。最も適切には、乳タンパク質はベータ-カゼインである。
【0028】
他の実施形態では、異常に分化した管腔前駆細胞に関連する種は、乳タンパク質をコードするDNA又はRNA分子である。適切には、乳タンパク質をコードするDNA又はRNA分子は、アルファS1-カゼイン(CSN1S1)、ベータ-カゼイン(CSN2)、カッパ-カゼイン(CSN3)、乳清酸性タンパク質及びベータ-ラクトグロブリン(LGB)から選択される。より適切には、乳タンパク質をコードするDNA又はRNA分子は、乳清酸性タンパク質(WAP)又はベータ-カゼイン(CSN2)である。最も適切には、乳タンパク質をコードするDNA又はRNA分子はベータ-カゼイン(CSN2)である。
【0029】
異常に分化した管腔前駆細胞に関連する種が存在するかどうかを決定するための対象の乳房から得られた材料の分析は、当技術分野で知られている任意の適切な技術を使用して実行することができる。
【0030】
対象の乳房から得られた材料の分析が、タンパク質が存在するかどうかの決定を含む実施形態では、分析は、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ウェスタンブロット分析及び質量分析法から選択される1つ又は複数の技術を使用して実行され得る。
【0031】
対象の乳房から得られた材料の分析が、DNA又はRNA分子が存在するかどうかの決定を含む実施形態では、分析は、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、RNA配列決定(RNAseq)及びDNA配列決定(DNAseq)から選択される1つ又は複数の技術を使用して実行され得る。
【0032】
対象の乳房からの材料のサンプルは、生検又は外科手術によって乳房から得られたサンプル、あるいは乳房から発現した材料のサンプル(例えば、乳房の乳首から発現した流体)、あるいは対象から採取した血液のサンプルから得られたサンプルであり得る。
【0033】
適切には、対象の乳房からの材料のサンプルは、対象の乳房から発現した流体である。最も適切には、対象の乳房からの材料のサンプルは、対象の乳房の乳首を介して発現した流体である。(発現した)材料のサンプルは、例えば、乳房ポンプによる抽出及び/又は針による抽出等、当技術分野で知られている任意の技術を使用して取得することができる。
【0034】
適切には、対象の乳房からの材料のサンプルは、対象から採取された血液のサンプルから得られたサンプルである。対象の乳房からの材料のサンプルは、乳房から(例えば、乳腺から)対象の血液に入る材料であり得ることが理解されるであろう。したがって、乳房からの材料のサンプルが得られる上記の血液のサンプルは、必ずしも対象の乳房である必要はなく、対象の身体のいずれからでも採取することができる。
【0035】
特定の実施形態では、本発明の方法は、対象の乳房から得られた材料を分析して、乳癌及び/又は異常に分化した管腔前駆細胞に一般に関連する1つ又は複数の更なる種が存在するか、あるいは適切なものとしての正常な(対照の)対象よりも高いレベルで存在するかどうかを決定する工程を含む。1つ又は複数の更なる種は、例えば、一般に乳癌に関連する癌遺伝子であり得る。適切には、1つ又は複数の更なる種は、BCL11A、ELF5、SOX10、FOXC1 Ki-67、HOXD13及びPCDHGB7から選択される遺伝子、並びに/あるいは当該遺伝子から発現されるタンパク質からの、DNA又はRNA分子である。最も適切には、1つ又は複数の更なる種は、BCL11A、ELF5、SOX10、FOXC1及びKi-67から選択される遺伝子、並びに/あるいは当該遺伝子から発現されるタンパク質からの、DNA又はRNA分子から選択される。更により適切には、1つ又は複数の更なる種は、BCL11A、SOX10、及びKi-67から選択される遺伝子、並びに/あるいは当該遺伝子から発現されるタンパク質からの、DNA又はRNA分子から選択される。最も適切には、1つ又は複数の更なる種は、BCL11A及び/又はBcl11aタンパク質からのDNA又はRNA分子である。
【0036】
本発明者等は、乳癌の癌遺伝子であるBCL11Aと管腔前駆細胞の異常な分化との間に強い相関関係が存在することを発見した。例えば、Bcl11aを削除すると、Brca1/p53のTNBCマウスモデルの管腔前駆細胞の異常な分化に対する保護がもたらされ(以下の実施例で説明)、場合によっては、乳房腫瘍の形成に対する保護がもたらされる。
【0037】
本発明者等は更に、異常に分化した管腔前駆細胞において、多くの遺伝子が上方制御されたことを発見した。Csn2、Csn1s1、B2m、Csn1s2a、H2.Q7、Bst2、Tceal9、Plin2、Muc15、Fth1、H2.K1、Mt1、Hspe1、Tmem176b、Mt2、Wfdc18、Sec61b、Vamp8、Tubb5、Ubd、Ogfrl1、Stmn1、Rbp1、H2.Q6、Dbi、Elf5、Psmb8、Chchd2、Serf2、Prdx2、Cair、Atp5h、Mgst1、Fam3c、H2afz、Pdk4、Ndufb9、Ubald2、Cox8a、Marcksl1、Cox6a1、H2.D1、Sod2、H3f3a、Tmem176a、Cox7b、Atp5o、Cox6b1、Psmb3、Pdia6、C3、Cox4i1、Ctsz、Gapdh、Mif、Atp5j2、Psma7、Clta、Sat1、Plscr1、Hspa8、Fkbp11、Scd1、Acot1、Mrps21、Cenpx、Cox5b、Cox6c、Pebp1、Ndufc2、Atp5c1、Ifitm3、Hspd1、Mbd1、Dnaja1、Pomp、Angptl4、Tecr、Ssr2、Cib1、C1qtnf1、Cldn3、Cd74、Cyba、P4hb、Map1lc3b、1700025G04Rik、Calm2、Psmb1、Hsp90ab1、Eef1g、Ndufb6、Atf3、Jpt1、Ndufa4、H2.Q4、Hsp90b1、Pdia3、Cuta、Fkbp2、Ssr4、H2afv、Ndufb11、Tmem258、Selenof、Cox5a、Sox4、Zfand5、mt.Co2、Prdx1、Atpif1、Uqcr10、Serp1、Nop10、Psmb4、Ndufa7、Ndufs6、Atp5j、Ndufa2、Rspo1、Taldo1、Ndufa11、Hspa5、Eci2、Uqcr11、Ndufb3、Eno1、Ehf、H2.T22、Cox7a2、Cks1b、Hist1h2bc、Npc2、Plscr2、Atp5g3、及びSdf2l1を含む本発明者等が発見した遺伝子は、異常に分化した管腔前駆細胞において有意に上方制御された。
【0038】
したがって、特定の実施形態では、本発明の方法は、対象の乳房から得られた材料を分析して、以下の遺伝子、Csn2、Csn1s1、B2m、Csn1s2a、H2.Q7、Bst2、Tceal9、Plin2、Muc15、Fth1、H2.K1、Mt1、Hspe1、Tmem176b、Mt2、Wfdc18、Sec61b、Vamp8、Tubb5、Ubd、Ogfrl1、Stmn1、Rbp1、H2.Q6、Dbi、Elf5、Psmb8、Chchd2、Serf2、Prdx2、Cair、Atp5h、Mgst1、Fam3c、H2afz、Pdk4、Ndufb9、Ubald2、Cox8a、Marcksl1、Cox6a1、H2.D1、Sod2、H3f3a、Tmem176a、Cox7b、Atp5o、Cox6b1、Psmb3、Pdia6、C3、Cox4i1、Ctsz、Gapdh、Mif、Atp5j2、Psma7、Clta、Sat1、Plscr1、Hspa8、Fkbp11、Scd1、Acot1、Mrps21、Cenpx、Cox5b、Cox6c、Pebp1、Ndufc2、Atp5c1、Ifitm3、Hspd1、Mbd1、Dnaja1、Pomp、Angptl4、Tecr、Ssr2、Cib1、C1qtnf1、Cldn3、Cd74、Cyba、P4hb、Map1lc3b、1700025G04Rik、Calm2、Psmb1、Hsp90ab1、Eef1g、Ndufb6、Atf3、Jpt1、Ndufa4、H2.Q4、Hsp90b1、Pdia3、Cuta、Fkbp2、Ssr4、H2afv、Ndufb11、Tmem258、Selenof、Cox5a、Sox4、Zfand5、mt.Co2、Prdx1、Atpif1、Uqcr10、Serp1、Nop10、Psmb4、Ndufa7、Ndufs6、Atp5j、Ndufa2、Rspo1、Taldo1、Ndufa11、Hspa5、Eci2、Uqcr11、Ndufb3、Eno1、Ehf、H2.T22、Cox7a2、Cks1b、Hist1h2bc、Npc2、Plscr2、Atp5g3、及びSdf2l1のうち1つ又は複数が存在するか、あるいは上方制御されるかを決定する工程を含む。
【0039】
適切には、本発明の方法は、対象の乳房から得られた材料を分析して、以下の遺伝子、Csn2、Csn1s1、B2m、Csn1s2a、H2.Q7、Bst2、Tceal9、Plin2、Muc15、Fth1、H2.K1、Mt1、Hspe1、Tmem176b、Mt2、Wfdc18、Sec61b、Vamp8、Tubb5、Ubd、Ogfrl1、Stmn1、Rbp1、H2.Q6、Dbi、Elf5及びPsmb8のうち1つ又は複数が存在するか、あるいは上方制御されるかどうかを決定する工程を含む。
【0040】
より適切には、本発明の方法は、対象の乳房から得られた材料を分析して、以下の遺伝子、Csn2、Csn1s1、B2m、Csn1s2a、H2.Q7、Bst2、Tceal9、Plin2、Muc15、Fth1、H2.K1、Mt1、Hspe1、Tmem176b、Mt2、Wfdc18、Sec61b、Vamp8及びTubb5のうち1つ又は複数が存在するか、あるいは上方制御されるかどうかを決定する工程を含む。
【0041】
更により適切には、本発明の方法は、対象の乳房から得られた材料を分析して、以下の遺伝子、Csn2、Csn1s1、B2m、Csn1s2a、H2.Q7、Bst2及びTceal9のうち1つ又は複数が存在するか、あるいは上方制御されるかどうかを決定する工程を含む。
【0042】
最も適切には、本発明の方法は、対象の乳房から得られた材料を分析して、以下の遺伝子、Csn2、Csn1s1、B2m及びCsn1s2aのうち1つ又は複数が存在するか、あるいは上方制御されるかどうかを決定する工程を含む。
【0043】
本発明はまた、対象の乳房から得られた材料を分析して、上記の遺伝子から発現した1つ又は複数のタンパク質が存在するか(又は過剰発現されるか)どうかを決定する工程を含み得る。
【0044】
一実施形態では、対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性を評価する方法が提供され、当該方法は、対象から採取された血液のサンプルから得られた対象の乳房からの材料のサンプルを分析して、ベータ-カゼイン(CSN2)が存在するかどうかを決定することを含み、対象の乳房から得られた材料のサンプル中のベータ-カゼイン(CSN2)の存在は、対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性が高いことを示すものである。
【0045】
検出技術
上で概説したように、本発明は、対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性を決定するための新規な方法を提供する。したがって、本発明は、対象が乳癌(例えば、TNBC)を有する可能性を評価するために医師が利用できる既存の方法と一緒に有益に使用することができる。したがって、本発明は医師が、対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性を評価するのを助けるために使用できる追加の技術を有利に提供する。
【0046】
対象が乳癌を有する可能性を決定するために医師によって一般的に使用される技術は当業者に周知であり、例えば、対象の病歴及び/又は対象の家族の病歴の評価、患者の検査、乳房の全体又は一部の画像化、乳癌バイオマーカに関する対象の血液の検査、対象のDNA及び/又はRNAの遺伝的検査、並びに対象から採取した生検の評価を含む。このような技術は、乳癌に一般的に関連する危険因子(例えば、乳癌の家族歴、乳癌に一般的に関連する遺伝的欠陥/変異(例えば、BRCA1遺伝子への変異))、及び/又は対象の乳房の非定型の成長/腫瘍)の存在を決定するために日常的に使用される。
【0047】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、対象が乳癌(例えば、TNBC)を有する可能性があるかどうかの指標を導く、対象の乳房における異常に分化した細胞及び/又は胞構造の存在に加えて、前述の技術の1つ又は複数を使用して、1つ又は複数の危険因子の存在が検出されるように、本明細書において上に記載した方法に加えて、前述の技術のうち1つ又は複数を使用することを含み得る。
【0048】
対象
対象は、ヒト又は動物の対象であり得ることが理解されるであろう。好ましくは、対象はヒト対象であり、乳癌又は前癌状態は、ヒト乳癌又はヒト乳癌に関連する前癌状態である。
【0049】
特定の好ましい実施形態では、対象は妊娠していない対象である。したがって、適切には、対象は、妊娠検査を実施した対象であり、最も適切には、対象は、妊娠検査を実施し、陰性の結果を示した対象である。
【0050】
いくつかの実施形態では、対象は、トリプルネガティブ乳癌を発症するリスクがあると特定された対象である。したがって、適切には、対象は、乳癌(例えば、TNBC)に一般的に関連する1つ又は複数の危険因子を有する対象である。危険因子は、例えば、乳癌の家族歴、乳房の痛み又は不快感、乳房上又はその周辺の非定型成長、片方又は両方の乳房の腫れ又は肥大、乳房組織の密集、BRCA1及び/又はBRCA2遺伝子の変異、並びに相同組換え修復欠損を含み得る。適切には、対象は、BRCA1及び/又はBRCA2遺伝子の変異、並びに最も適切には、BRCA1遺伝子の変異を有する対象である。
【0051】
乳癌の治療
本発明の第3の態様によれば、対象の乳癌を治療する方法が提供され、当該方法は、
a)本明細書に記載の方法により、対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性を評価する工程と、
b)対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性が高いと評価される場合、対象に標準的な乳癌治療レジメンを投与する工程と、とを含む。
【0052】
1つ又は複数の標準的な腫瘍治療レジメンは、乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を治療するために一般的に使用される任意の適切な治療レジメンであり得る。適切には、1つ又は複数の標準的な腫瘍治療レジメンは、外科手術、放射線療法、化学療法、免疫療法、及びそれらの組合わせから選択される。最も適切には、標準的な腫瘍治療レジメンは、外科手術、化学療法又は放射線療法、及びそれらの組合わせから選択される。
【0053】
外科手術は、腫瘍(及び/又は乳房)の全体又は一部を切除するための医師による外科的介入であり得る。適切な外科的介入の非限定的な例には、乳房の生検、切開、ドレナージ、及び除去が含まれる。外科手術には、例えば、選択的乳房切除術等の予防的外科的介入も含まれる。
【0054】
放射線療法は、電離放射線を利用する任意の形態の治療であり得る。適切な放射線療法治療の非限定的な例には、例えば、外照射療法(EBRT)、定位放射線照射(STRS)及び遠隔照射治療が含まれる。適切には、放射線療法は外照射療法(EBRT)である。
【0055】
化学療法は、1つ又は複数の抗腫瘍(抗癌)剤の投与による治療であり得る。適切な抗腫瘍剤の非限定的な例には、例えば、タモキシフェン、アリミデックス(商標)(アナストロゾール)、アロマシン(商標)(エキセメスタン)、フェマーラ(商標)(レトロゾール)、フェソロデックス(商標)(フルベストラント)、ハーセプチン(商標)(トラスツズマブ)、タイケルブ(商標)(ラパチニブ)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン又はエピルビシン)、タキサン(例えば、ドコタキセル(docotaxel)又はパクリタキセル)及びそれらの組合わせが含まれる。適切には、抗腫瘍剤は、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン又はエピルビシン)、タキサン(例えば、ドコタキセル又はパクリタキセル)、又はそれらの組合わせである。
【0056】
化学療法はまた、予防的化学療法、並びに例えば、乳癌(例えば、TNBC)の発症を予防及び/又は管理するために一般的に使用されるタモキシフェン及びラロキシフェン等の薬剤の投与を含み得る。
【0057】
免疫療法は、患者の免疫系を利用する任意の形態の治療であり得る。適切な免疫療法治療の非限定的な例には、例えば、モノクローナル抗体(MAB)、予防接種、サイトカイン、及びCAR-T細胞のうちの1つ又は複数を利用する治療が含まれる。
【0058】
アクティブサーベイランス
一部の乳癌及び乳癌に関連する前癌状態は、非常にゆっくりと成長する。したがって、そのような状況では、対象の乳房を経時的にモニタリングして、乳癌(又は乳癌に関連する前癌状態)が形成及び/又は成長するかどうかを確認するために、対象のアクティブサーベイランスが必要となる場合がある。
【0059】
アクティブサーベイランスは、例えば、BRCA1及び/又はBRCA2遺伝子の変異、あるいは乳癌の家族歴を有する対象、あるいは相同組換え修復欠損である対象等の、乳癌(例えば、トリプルネガティブ乳癌)を発症するリスクがあると特定された対象に特に有用である。
【0060】
したがって、本発明の第4の態様によれば、対象において、乳癌又は乳癌に関連する前癌状態の発症をモニタリングする方法、あるいは乳癌の再発及び/又は成長をモニタリングする方法が提供され、当該方法は、所定の時間間隔で隔てられた2つ以上の時点で、本明細書で定義される方法によって、対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性を評価することを含む。
【0061】
所定の時間間隔の数及び期間は、方法の意図される用途に応じて変化し得ることが理解されるであろう。例えば、使用される所定の時間間隔は、検出される乳癌のタイプ、分析に使用される機器のタイプ及び感度、並びに/あるいは分析が実行されている対象に応じて変化し得る。所定の時間間隔に対するそのような変動は、方法論の意図された用途に基づいて当業者によって日常的に決定され得る。
【0062】
本発明の対象において、乳癌又は乳癌に関連する前癌状態をモニタリングするための、あるいは乳癌の再発及び/又は成長をモニタリングするための方法の特定の実施形態では、所定の時間間隔は1~12か月毎(例えば、1~6か月毎、1~3か月毎、1~2か月毎、又は毎月)である。
【0063】
本発明の対象において、乳癌又は乳癌に関連する前癌状態をモニタリングするための、あるいは乳癌の再発及び/又は成長をモニタリングするための方法の他の実施形態では、所定の時間間隔は1~4週間毎(例えば、1~3週間毎、1~2週間毎、又は毎週)である。
【0064】
本発明の対象において、乳癌又は乳癌に関連する前癌状態をモニタリングするための、あるいは乳癌の再発及び/又は成長をモニタリングするための方法の他の実施形態では、所定の時間間隔は1~14日毎(例えば、1~7日毎、1~3日毎、又は毎日)である。
【0065】
化学療法剤
本発明の第5の態様によれば、当該治療を必要とする対象の治療に使用するための化学療法剤が提供され、治療は、
a)本明細書に記載の方法により、対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性を評価する工程と、
b)対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性が高いと評価される場合、対象に化学療法剤を投与する工程と、を含む。
【0066】
特定の実施形態では、化学療法剤は、タモキシフェン、アリミデックス(商標)(アナストロゾール)、アロマシン(商標)(エキセメスタン)、フェマーラ(商標)(レトロゾール)、フェソロデックス(商標)(フルベストラント)、ハーセプチン(商標)(トラスツズマブ)、タイケルブ(商標)(ラパチニブ)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン又はエピルビシン)又はタキサン(例えば、ドコタキセル又はパクリタキセル)から選択される。適切には、化学療法剤は、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン又はエピルビシン)又はタキサン(例えば、ドコタキセル又はパクリタキセル)である。
【0067】
本明細書において上に記載した本発明の第1の態様に関連する好ましい適切な特徴はまた、本発明の更なる全ての態様の好ましい適切な特徴を表す。したがって、本発明の特定の態様、実施形態、又は実施例に関連して説明される特徴、整数、特性、又は手段は、矛盾しない限り、本明細書に記載の全ての態様、実施形態、又は実施例に適用可能であると理解されるべきである。本明細書(付随する特許請求の範囲、要約及び図面を含む)に開示された全ての特徴、及び/又はそのように開示された任意の方法の全ての工程は、そのような特徴及び/又は工程の少なくともいくつかが相互に排他的である組合わせを除いて、任意の組合わせで組み合わせることができる。
【0068】
本明細書において上に記載した本発明の第1の態様に関連する好ましい適切な特徴はまた、本発明の更なる全ての態様の好ましい適切な特徴を表す。したがって、本発明の特定の態様、実施形態、又は実施例に関連して説明される特徴、整数、特性、又は手段は、矛盾しない限り、本明細書に記載の全ての態様、実施形態、又は実施例に適用可能であると理解されるべきである。本明細書(付随する特許請求の範囲、要約及び図面を含む)に開示された全ての特徴、及び/又はそのように開示された任意の方法の全ての工程は、そのような特徴及び/又は工程の少なくともいくつかが相互に排他的である組合わせを除いて、任意の組合わせで組み合わせることができる。
項1
対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性を評価する方法であって、前記方法が、前記対象の乳房を分析して、異常に分化した管腔前駆細胞が前記乳房に存在するかどうかを決定することを含み、前記乳房内の前記異常に分化した細胞の存在は、前記対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性が高いことを示すものである、対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性を評価する方法。
項2
前記異常に分化した細胞が、異常に分化して胞構造を形成する、項1に記載の方法。
項3
前記方法が、前記対象の乳房を分析して、胞構造が前記対象の乳房に存在するかどうかを決定することを含む、項1又は2に記載の方法。
項4
前記対象が、トリプルネガティブ乳癌を発症するリスクがあると特定された対象である、項1~3のいずれか一項に記載の方法。
項5
前記対象が、BRCA1及び/又はBRCA2遺伝子の変異、例えば、前記BRCA1遺伝子の変異を有するか、あるいは乳癌の家族歴を有するか、あるいは相同組換え修復欠損である、項1~4のいずれか一項に記載の方法。
項6
前記対象の乳房の分析が、
a)異常に分化した細胞が存在するかどうかを決定するために前記乳房を走査及び/又は画像化すること、並びに/あるいは
b)前記対象の乳房から材料のサンプルを取得し、前記材料を分析して、異常に分化した細胞に関連する種が存在するかどうかを決定すること、から選択される1つ又は複数の技術を含む、項1~5いずれか一項に記載の方法。
項7
前記異常に分化した細胞に関連する種が、タンパク質、DNA分子及びRNA分子からなる群から選択される、項6に記載の方法。
項8
前記種が、乳タンパク質及び乳タンパク質をコードするDNA若しくはRNA分子からなる群から選択される、項7に記載の方法。
項9
前記乳タンパク質が、カゼイン(例えば、ベータ-カゼイン)、アルファ-ラクトアルブミン、ラクトフェリン、免疫グロブリン免疫グロブリンA、リゾチーム、乳清酸性タンパク質及び血清アルブミンから選択される、項8に記載の方法。
項10
前記乳タンパク質がベータ-カゼイン及び乳清酸性タンパク質から選択される、項9に記載の方法。
項11
前記乳タンパク質がベータ-カゼインである、項10に記載の方法。
項12
前記乳タンパク質が乳清酸性タンパク質である、項10に記載の方法。
項13
前記方法が、前記対象の乳房から得られた材料を分析して、異常に分化した細胞に関連する更なる種が存在するかどうかを決定することを更に含む、項8~12のいずれか一項に記載の方法。
項14
前記異常に分化した細胞に関連する前記更なる種が、BCL11A、ELF5、SOX10、FOXC1 ki-67、HOXD13及びPCDHGB7から選択される遺伝子からのDNA又はRNA、並びにこれらの遺伝子から発現される任意のタンパク質である、項13に記載の方法。
項15
酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ウェスタンブロット分析及び質量分析法から選択される1つ又は複数の技術を使用して、タンパク質が前記サンプル中に存在すると決定されるか、並びに/あるいは定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、RNA配列決定(RNAseq)及びDNA配列決定(DNAseq)から選択される1つ又は複数の技術を使用して、DNA又はRNAが前記サンプル中に存在すると決定される、項7~14のいずれか一項に記載の方法。
項16
前記対象の乳房からの前記材料のサンプルが、前記対象の乳房の前記乳首を介して、あるいは外科手術又は生検から得られる、項6~15のいずれか一項に記載の方法。
項17
前記サンプルが、前記対象の前記乳房から発現した流体から選択される、項6~16のいずれか一項に記載の方法。
項18
前記材料のサンプルが、乳房ポンプ及び/又は針を介して前記対象の乳房から得られる、項6~17のいずれか一項に記載の方法。
項19
前記乳房からの材料のサンプルが、前記対象から採取された血液のサンプルから得られる、項6~15のいずれか一項に記載の方法。
項20
前記血液のサンプルが前記対象の前記乳房から採取されない、項19に記載の方法。
項21
前記対象の前記乳房からの前記材料のサンプルが、前記対象から採取された血液のサンプルから得られ、前記異常に分化した細胞に関連する種がベータ-カゼイン(CSN2)である、項19又は20に記載の方法。
項22
前記対象の前記乳房が、磁気共鳴画像法(MRI)、マンモグラフィ、コンピュータ断層撮影(CT)走査、及び/又はコントラスト画像化から選択される1つ又は複数の技術を使用して、走査及び/又は画像化される、項6に記載の方法。
項23
前記対象が妊娠検査を受けた対象である、項1~22のいずれか一項に記載の方法。
項24
乳癌を治療する方法であって、
a)項1~23のいずれか一項で特許請求されたような方法により、前記対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性を評価する工程と、
b)前記対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性が高いと評価される場合、前記対象に標準的な乳癌治療レジメンを投与する工程と、とを含む、乳癌を治療する方法。
項25
前記標準的な乳癌治療レジメンが、外科手術、化学療法、及び/又は放射線療法から選択される、項24に記載の方法。
項26
前記標準的な乳癌治療レジメンが、選択的乳房切除術及び/又は予防的化学療法から選択される、項24に記載の方法。
項27
対象において、乳癌又は乳癌に関連する前癌状態の発症をモニタリングする方法、あるいは乳癌の再発及び/又は成長をモニタリングする方法であって、前記方法が、所定の時間間隔によって分離された2つ以上の時点で、項1~23のいずれか一項で特許請求されたような方法によって、前記対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性を評価することを含む、方法。
項28
前記治療を必要とする対象の治療に使用するための化学療法剤であって、前記治療が、
a)項1~23のいずれか一項で特許請求されたような方法により、前記対象が乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性を評価する工程と、
b)乳癌又は乳癌に関連する前癌状態を有する可能性が高いと評価される場合、前記対象に化学療法剤を投与する工程と、とを含む、前記治療を必要とする対象の治療に使用するための化学療法剤。
項29
前記化学療法剤が、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン又はエピルビシン)又はタキサン(例えば、ドコタキセル又はパクリタキセル)である、項28に記載の化学療法剤。
【0069】
実施例
材料及び方法
マウス実験
全ての実験動物の作業は、動物(科学的処置)法1986(英国)に従って実施し、Sanger Instituteの倫理委員会によって承認された。Brca1f/f;p53+/-;Blg-Cre(JAX012620)(J Pathol.,211,389-398(2007))を使用して、TNBC腫瘍の形成を研究した。これらのマウスは、Bcl11af/fマウスと交配させて、Bcl11af/f、Brca1f/f;p53+/-;Blg-Creマウスを作製した。管腔前駆細胞におけるBcl11aノックアウトは、Bcl11af/fをBlg-Creマウスと交配させることによって達成した(Transgenic Res.,7,387-396(1998))。Rosa26-LSL-BCL11Aovxマウスは、最近記載された(Nat.Commun.,0,3327,(2018))。簡単に説明すると、ROSA26対立遺伝子は、挿入されたcDNAの下流にある内部リボソーム侵入部位(IRES)の制御下で、loxP隣接STOPカセット及びマークされたeGFPが先行して、ヒトBCL11AのcDNAを含むコンストラクトにより標的化され、導入遺伝子の転写はCAGGプロモータによって制御される。これらのマウスをBrca1f/f;p53+/-;Blg-Creと交配して、TNBC腫瘍形成に対するBCL11Aの過剰発現の影響を研究した。Bcl11aCreERT2対立遺伝子は、IRES-CreERT2-polyA-FRT-PGK-E7-Neo-polyA-FRTカセットをBcl11a遺伝子座の3’UTRに導入することによって生成した。遺伝子標的化はAB2.2細胞(129バックグラウンド)で実施した。正確な標的化はロングレンジ(long-range)PCRによって確認され、標的化されたクローンは胚盤胞注射に使用した。次に、キメラマウスを野生型マウス(C57/B6)と交配させ、生殖細胞系列の伝達を確認した。次に、Bcl11aCreERT2系統をRosa26-LSL-tdTomatoマウス系統(JAX007905)25と交配させて、ダブルトランスジェニックマウスを作製した。各実験に関して、使用した動物はBcl11aCreERT2についてはヘテロ接合であり、Rosa26-LSL-tdTomatoについてはホモ接合であった。系譜追跡は、成熟期(5週齢)又は成体(9週齢)に、コーン油中のタモキシフェン(注射当たり1mg)を3日間連続して1回腹腔内注射又は3回注射することで誘発した。タモキシフェンの投与により、乳腺のBcl11a発現細胞が真に標識されることをqRT-PCRで確認した。注射後の示された時点で組織を回収した。妊娠時点では、タモキシフェン注射の8週間後に雌をスタッドと交配させ、妊娠14.5日に組織を採取した。各時点で、Bcl11aCreERT2野生型対照同腹子を実験動物と同時に注射して、組織を回収してFACS及び全組織IF実験の両方でtdTomato蛍光のバックグラウンドレベルを設定した。scRNAシーケンス実験は、全ての動物を回収し、組織を同時に処理できるように設定され、遺伝子型毎に2匹の個別のマウスを研究に使用した。未経産動物の発情周期の段階は、膣塗抹標本によって決定した。全てのマウスは、12:12時間の明暗サイクルの下で個別に換気されたケージに収容され、水及び餌は自由に摂取でき、最終的に麻酔によって安楽死させた。
【0070】
乳腺の単細胞浮遊液への分離
リンパ節を切除した乳腺(頸部ペアを除く)をマウスから解剖し、DMEM/F12(Gibco)+10mMのHEPES(Gibco)+1mg ml-1コラゲナーゼ(Roche)+100Uml-1ヒアルロニダーゼ(Sigma)(CH)+ゲンタマイシン(Gibco)でO/Nを37℃において消化した。scRNAシーケンス実験では、代わりに、回収後に乳腺を機械的に分離し、細かく刻んだ組織を2倍量のCHを含む消化ミックスに37℃で3時間移し、30分毎にボルテックスした。NHClで赤血球を溶解した後、細胞を温かい0.05%トリプシン-EDTA(Gibco)、5mg ml-1ディスパーゼ(Sigma)及び1mg ml-1DNase(Sigma)で簡単に消化し、セルストレーナ(BD Biosciences)を通して濾過した。
【0071】
細胞標識並びにそれに続くフローサイトメトリー及び選別
単細胞浮遊液をHF培地(ハンクス平衡塩溶液(Gibco)+1%ウシ胎児血清、Gibco)+10%正常ラット血清(Sigma)で氷上で20分間インキュベートして、抗体染色の前にプレブロックした。全ての抗体のインキュベーションは、HF培地中の氷上で10分間行った。マウス乳腺細胞を以下の一次抗体、Cd31-ビオチン(eBioscience、クローン390、1μg ml-1、1:500);Cd45-ビオチン(eBioscience、クローン30F11、1μg ml-1、1:500);Ter119-ビオチン(eBioscience、クローンTer119、1μg ml-1、1:500)、EpCAM-APC/Cy7(Biolegend、クローンG8.8、0.5μg ml-1、1:500)、Cd49f-BV421(Biolegend313623、2μg ml-1、1:100)、Cd49b-AF488(Biolegend、クローンHMa2、1μg ml-1、1:500)及びSca1-AF647(Biolegend、クローンD7、1μg ml-1、1:500)で染色した。次いで、細胞をストレプトアビジン-APC又はストレプトアビジン-PE/Cy7(BD-Biosciences、0.4μg ml-1、1:500)で染色した。7-AAD(Sigma、10μg ml-1、1:100)又はZombie Aqua(Biolegend、1:100)を死細胞を検出するために使用した。ヒト乳腺細胞を次の一次抗体、CD45-APC(Biolegend、クローンH130、1:100)、CD31-APC(Biolegend、クローンWM-59、1:100)、EPCAM-APC/Fire750(Biolegend、クローン9C4、1:50)、CD49f-PE/Cy7(Biolegend、クローンGoH3、1μg ml-1、1:200)で染色した。DAPIは死細胞を検出するために使用した。選別する前に、細胞をセルストレーナ(Partec)で濾過した。細胞の選別は、選別直前に、自動セットアップビーズ(SONY)又はFACS Aria Fusionを使用して選別キャリブレーションを実行した後、SH800Zソータ(SONY)を使用して行った。単一染色された対照細胞を使用して、手動でコンペンセーションを行った。未染色の細胞及び対照動物を使用してゲートを設定した。ダブレットの後、死細胞並びに汚染された造血細胞、内皮細胞、間質細胞をゲートアウトした。SH800ZのSONYソフトウェア又はFlowJoを使用してFACSデータを分析した。マウス細胞を乳腺管腔又は基底コンパートメントにおけるtdTomato発現について分析したか、あるいは管腔細胞を管腔前駆細胞CFCアッセイのために選別した。scRNAseqの場合、EpCAM陽性細胞をHFを含むLoBindマイクロ遠心チューブ(Eppendorf)で選別した。選別後、細胞をスピンダウンし、HFに再懸濁した。改良ノイバウエル(Neubauer)チャンバを使用してサンプルを手動でカウントし、HFの添加により細胞濃度を正規化した。サンプル当たり同数の細胞をscRNAライブラリ調製のために処理した。サンプルは、組織分離から9時間以内のライブラリ調製のために処理した。ヒト管腔前駆細胞は、RNA処理のために選別した。
【0072】
管腔前駆細胞CFCアッセイ
管腔前駆細胞コロニー形成アッセイのために、5%ウシ胎児血清(StemCell)、10ng ml-1上皮成長因子(Sigma)、10ng ml-1塩基性線維芽細胞成長因子(Peprotech)、4μg ml-1ヘパリン、Pen Strep Glutamine(Gibco)及びゲンタマイシン(Sigma)で補充したEpiCult Medium(StemCell)において、照射したフィーダにより、管腔tdTomatopоs又はtdTomatoneg細胞を選別及び播種し、培養物を37℃/5%COで15日間維持し、次いで氷冷アセトン/メタノール(1:1)を使用して固定化し、ギムザ染色(Merck)を使用して可視化し、乳腺CFCの数を数えた。
【0073】
MPA/DMBA腫瘍形成プロトコル
タモキシフェンの投与7週間後、単一のMPA徐放性ペレット(Innovative Research of America)をマウスの皮下に移植した。マウスを10日間回復させた後、1mgのDMBA(Sigma)を経口投与した。これに続いて、毎週1mgのDMBAを更に3用量投与した。次に、マウスの腫瘍発生率を毎週検査し、最後のDMBA投与の11週間後に回収した。対照Bcl11aCreERT2、タモキシフェンを投与されなかったが、同じ腫瘍形成プロトコルを受けたtdTom動物、及び同腹子Bcl11aWT、タモキシフェン及びMPA/DMBAプロトコルの両方に曝露されたtdTomは、検出可能なtdTomatopos細胞を有さず、tdTomato細胞の標識及び増殖がMPA/DMBAプロトコルの人為結果ではないことを確認した。
【0074】
光学的組織の透明化及びホールマウント免疫染色
乳腺組織を解剖し、免疫染色及び透明化のために大きな断片(約15×15×2mm)に切断した。前述のようにCUBICベースの組織透明化27を行い(Breast Cancer Res.18,127(2016)及びNat.Commun.,7,13053(2016))、tdTomato細胞の可視化のためのホールマウント免疫標識と組み合わせた。簡単に説明すると、CUBIC試薬1Aは、蒸留水において、尿素(Sigma、10%(w/w))、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン(Sigma、5%(w/w))、triton-X100(VWR、10%(w/w))及びNaCl(Sigma、25mM)を使用して調製した。CUBIC試薬2は、蒸留水において、スクロース(Fisher Scientific、44%w/w)、尿素(Sigma、22%w/w)、2,2’,2’’-ニトリロトリエタノール(Sigma、9%w/w)、及びTritonX-100(VWR、0.1%w/w)を使用して調製した。組織をCUBIC試薬1Aに37℃で2~3日間浸漬した。免疫染色では、サンプルを洗浄した後、triton-X100(0.5%(w/v))及びヤギ血清(10%(v/v))を含むPBSで4℃で一晩ブロッキングした。一次抗体をブロッキング緩衝液で4℃で4日間、穏やかに揺り動かしながら希釈した。組織を洗浄し(3×1時間)、Alexa Fluorコンジュゲート二次抗体と2日間インキュベートし、PBSで洗浄し、屈折率を一致させるために37℃で少なくとも1日、CUBIC試薬2に移した。サンプルを画像化のためにCUBIC試薬2に浸漬し、2週間以内に画像化した。以下の一次抗体、ラット抗EpCAM-AF647(Biolegend、クローンG8.8、1μg ml-1、1:250)、ウサギ抗K5(Covance、PRB160P、1:100)を免疫染色に使用した。以下のAlexa Fluorコンジュゲート二次抗体、ヤギ抗マウス488(A11001)、ヤギ抗ラット647(A21247)をThermo Fisher Scientificから購入し、1:500で使用した。
【0075】
免疫蛍光法
乳腺の5μm切片をヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色するか、又はCsn2(sc-166530、Santacruz、1:50)及びRFP(600-401-379、Rockland、1:200)に対する抗体で免疫染色した。二次染色には、ヤギ抗ウサギ647、ヤギ抗ラット647、又は抗マウス488、抗ウサギ594(1:200、Invitrogen)が含まれる。核染色は、DAPIを備えたProlong Gold Antifade Mountant(Thermofisher、P36941)を使用して検出した。
【0076】
共焦点顕微鏡法及び画像分析
ホールマウント乳腺の画像は、10×/0.4又は40×/1.3のHC PL APO対物レンズを備えたLeica TCS SP8及びSP5倒立共焦点顕微鏡を使用して取得した。H&E画像は、Zeiss Axioplan2顕微鏡を使用して取得した。レーザ出力、ライン平均化、及び工程増分を手動で調整して、光退色を最小限に抑えながら各フルオロフォアに最適な蛍光強度を得た。画像オーバービュー及び3D再構成は、ImageJソフトウェアを使用して生成した。
【0077】
発現差異
遺伝子発現差異分析は、edgeR(Bioinformatics,26,139-140(2010))を使用して行った。クラスター間のペアワイズ比較では、平均発現レベルが0.1未満の遺伝子を分析から除外した。負の二項一般化対数線形モデルは、共変量(複数可)としてクラスター割当により残りの遺伝子に適合した。「trend=TRUE、robust=TRUE」の「treat」関数を使用して、FDR0.01でIog2(1.5)よりも有意に高い対数倍数変化を有する遺伝子を同定した。細胞型の推論に使用されるマーカ遺伝子は、デフォルト設定のスクランで「findMarkers」関数を使用して同定した。
【0078】
ウェスタンブロット
製造元の指示に従って、RIPA(Cell signalling)及びプロテアーゼ阻害剤(Roche)を使用して細胞を溶解した。組織溶解のために、乳腺組織を液体窒素、乳鉢及び乳棒を使用して粉砕した。粉砕したサンプルをRIPAに溶解した後、サンプルを25Gの針に通した。総タンパク質は、ビシンコニン酸(BCA)法(Pierce Biotechnology)を使用して測定した。合計で、50μgの細胞溶解物を7.5%のSDS-PAGEゲルを使用して分離し、エレクトロブロッティングによってPVDF膜に転写した。膜は、0.1%Tween-20(TBST)を含むトリス緩衝生理食塩水中の5%(w/v)乳汁でブロックした。次に、示されているように、ブロットを一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートし、TBSTで洗浄し、続いて室温で1時間二次抗体でプローブした。次いで、ECL溶液を膜に加えて分析した。使用した抗体は、BCL11A(A300-380A、Bethyl、1:1000)、WAP(sc-398276、Santa Cruz、1:1000)及びβ-アクチン(sc-130656、Santa Cruz、1:1000)であった。
【0079】
液体クロマトグラフィ質量分析(LC-MS)
等量の6MのGuHCIを血清に加え、混合した。次に、有機溶媒(75%ACN)を添加し、サンプルを混合した。サンプルを遠心分離し、上澄みを移し、OFN下で蒸発させた。抽出物を0.1%ギ酸に再構成し、Waters HLB Micro溶出プレートにロードし、SPEで抽出した。溶離液を蒸発させ、還元し、アルキル化した後、消化し、ナノLCシステムを使用したLC-MSで分析した。ペプチドは、PRM及びIDAベースの分析を使用したQ-Exactive Plus orbitrapを使用して分析した。
【0080】
統計的有意性
図のレジェンドに特に示されていない限り、全てのP値はスチューデントのt検定を使用して計算した。
【0081】
結果
胞の形成におけるBcl11Aの役割
Bcl11a発現細胞が胞分化及びTNBC腫瘍開始の部分をなすかどうかを評価するために、IRES-CreERT2カセットをBcl11aの3’UTR領域にノックインすることにより、Bcl11aレポータマウスを作製し、これは本明細書ではBcl11aCreERT2と呼ばれる。これらのマウスは、Rosa26-LSL-tdTomatoレポータマウス(tdTom)と交配した場合に系譜追跡を実行することを可能にした。タモキシフェンを介したCreERT2の活性化は、Bcl11a発現細胞及びそれらの任意の将来の子孫でtdTomatoの発現を誘導した(図1A)。標識の1日後の蛍光活性化細胞選別(FACS)分析により、tdTomatopos細胞の大部分(95%±1.6)が管腔コンパートメント内に存在し、主に管腔前駆細胞であることが明らかになった(図1A)。
【0082】
Bcl11a標識細胞が胞形成プロセスに寄与するかどうかを調べるために、タモキシフェン注射後8週に雌を交配させ、妊娠14.5日でマウスを分析した。tdTomatopos管腔細胞の数が有意に増加して、管腔コンパートメントの約30%を構成し、自然離乳後の分析により、未経産マウスと同様のレベルで標識細胞の持続性が明らかになったことが見出された(図1B)。
【0083】
上記のデータは、胞産生におけるBcl11aの役割を裏付ける。
【0084】
Bcll11aの発現は、TNBCモデルの初期段階の腫瘍発生における検出である
TNBC発症の初期段階で長寿命のtdTomatopоs細胞の役割を調べるために、Bcl11aCreERT2;tdTomマウスは、TNBC腫瘍形成のMPA/DMBAプロトコル(図2A)(Genome Biol.,8,R76(2007)及びNature,468,103-107(2010))を受け、これはBcl11a依存性であることが以前に示されている(Nat.Med.,15,907-913(2009))。DMBA投与後の11週の前癌段階における腺のタイルスキャンは、tdTomatopos細胞の拡大及び胞様構造の出現を明らかにし、場合によっては、この拡大は、成長し管腔に侵入した異常な構造の形成を導いた(図2B)。
【0085】
Bcll11aのK/OマウスはTNBCを発症しない
ドライバー癌遺伝子がTNBCの管腔前駆細胞の運命をどのように調節するかを調査するために、管腔前駆細胞コンパートメントの条件付きBrca1機能喪失を含む、Brca1/p53のTNBCマウスモデル(Brca1f/f;p53+/-;Blg-Cre)を、TNBC癌遺伝子BCL11Aに焦点を当てて、使用した。管腔前駆細胞におけるBcl11aの欠失は、Brca1/p53マウスを乳腺腫瘍の形成から完全に保護することが見出され(図1A)、Bcl11aがBrca1を介したTNBCに不可欠であることを示唆した。
【0086】
乳腺組織のRNASeqは、担癌マウス(Bcl11A K/O)では胞様細胞を同定するが、無病動物(Bcl11A WT)では同定しない。
腫瘍(Bcl11a陽性)の30週目及び非腫瘍(Bcl11a欠失)動物33週目(33週目は腫瘍の物理的証拠の前)の乳腺組織のRNASeq。クラスタリング分析は、腫瘍動物と非腫瘍動物との間の4つの一般的な細胞集団を明らかにする。Lp;管腔前駆細胞、Hsp;ホルモン感知前駆細胞、Hsd;ホルモン感知分化及びBsl;基底。担癌動物には、Lp-Av(胞細胞)の集団が存在した。
【0087】
これは、初期の腫瘍形成(物理的兆候の前)では、無病動物には存在しない胞細胞の集団が存在することを示唆する。
【0088】
乳腺の特異的なBcl11Aの過剰発現は胞形成を促進し、これらの構造は、妊娠していない初期段階の腫瘍を有する動物でも観察することができる。
Brca1/p53モデルのBcl11a欠失のこの保護効果を支える細胞イベントを同定するために、腫瘍が検出される前に、30~33週齢の未経産のBrca1/p53及びBcl11af/f;Brca1/p53マウスからの乳腺上皮細胞に対するscRNAseqを実施した。Brca1/p53乳腺上皮は、妊娠中のマウスの上皮に表現型が似ていることがわかり(図5)、これは、Brca1/p53の異なるモデルにおける早発な乳腺胞形成の以前の報告(Science(80-.)314,1467LP-1470(2006))と一致している。
【0089】
Bcl11af/f、Brca1/p53マウスのscRNAseq及びホールマウント分析は、Bcl11aを削除すると、管腔前駆細胞の異常な分化挙動が完全に消失することを明らかにした(図5)。
【0090】
上記の結果は、TNBCの初期段階で、Bcl11aに依存する胞形成が起こることを示唆する。
【0091】
MPA/DMBA処理動物に対する異常な分化の検出
次に、TNBC発症の初期段階で長寿命のtdTomatopоs細胞の役割を調査した。Bcl11aCreERT2;tdTomマウスは、TNBC腫瘍形成のMPA/DMBAプロトコル(図7A)(Genome Biol.,8,R76(2007)及びNature,468,103-107(2010))を受け、これは、Bcl11aに依存することが以前に示されている(Nat Commun.,6,5987(2015))。DMBA投与後11週の前癌段階における腺のタイルスキャンは、tdTomatopos細胞の拡大及び胞様構造の出現を明らかにした(図7B)。場合によっては、拡大により異常な構造が形成され、それが成長し、管腔に侵入した(図7C)。これらの構造の3D画像化は、in situで異型乳管過形成及び乳管癌に対する類似性を明らかにした(図7C)。これらのマウスのIHC分析により、胞様構造の外観と互換性があり、Brca1/p53モデルで行われた観察と一致する、乳汁産生細胞の外観が明らかになった(図7D)。RNAは、MPA/DMBA処理後の様々な時点でFACS分離された管腔前駆細胞から抽出した。図7Eは、様々なサンプルにおけるCsn2の発現を示す。MPA単独のマウスは、サンプル回収の3週間前にMPAを受けた。定量化は、最初にGapdhレベルに対して、MPA単独のサンプルと比較して正規化することによって実行した。
【0092】
上記の結果は、Csn2の発現が治療後3週の管腔前駆細胞で観察されたのに対し、腫瘍は治療後およそ12~14週まで観察されなかったことを示す。したがって、これらの結果は、本発明、特に対象の乳房における異常に分化した管腔前駆細胞及び/又はCsn2の検出が、乳癌(例えば、TNBC)の初期兆候を検出するための優れた方法であることを実証する。
【0093】
CSN2及び/又はWAPの検出
驚くべきことに、Brca1/p53マウスの乳腺組織のLC-MS分析により、CSN2及びWAPに一致するペプチドを検出できることが見出された(図8及び9)。これは、上記の管腔前駆細胞の異常な分化を示すマウスと相関している。
【0094】
更に、LC-MSを使用して、授乳中のWTマウスの血液で同じペプチドを検出することができ、これは、これらのタンパク質が血液に入る可能性があることを示している(図10及び11)。これらの乳タンパク質ペプチドは、雄マウスの血清では(LC-MSを使用して)検出されない。したがって、これらのペプチドは、より感度の高い方法を使用して、Brca1病原性変異体(PV)を有する女性の異常な管腔分化の早期発見に使用することができる。
【0095】
CSN2をコードするRNAは、qPCRを使用して、Brca1/p53マウスの血液でも検出されている。同じRNAは雄マウスの血液では(qPCRを使用して)検出できなかった。
【0096】
ヒトのデータ
RNAは、i)対照患者、又はii)BRCA1担持患者のいずれかからFACS単離された乳腺管腔前駆細胞から抽出した。次に、これらのヒトサンプルにおけるCSN2発現を決定した。定量化は、最初にGAPDHレベルに対して、対照STG218と比較して正規化することによって実行した。
【0097】
図6は、IHCによって測定された、BRCA1変異キャリア及び非BRCA1キャリア(正常)におけるCSN2の平均タンパク質発現(図6A)、並びにqPCRによって測定された、BRCA1変異キャリア及び非BRCA1キャリア(正常)におけるCSN2の平均RNA発現を(図6B)示す。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7A-B】
図7C-D】
図7E
図8
図9
図10
図11