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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】水素濃度推定システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/00 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
G01N33/00 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022033463
(22)【出願日】2022-03-04
(65)【公開番号】P2023128831
(43)【公開日】2023-09-14
【審査請求日】2024-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100110227
【弁理士】
【氏名又は名称】畠山 文夫
(72)【発明者】
【氏名】間 広文
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 忠司
(72)【発明者】
【氏名】藤田 悟
(72)【発明者】
【氏名】牧村 嘉也
(72)【発明者】
【氏名】石田 真之
(72)【発明者】
【氏名】吉川 大輔
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/111776(WO,A1)
【文献】特開2002-243100(JP,A)
【文献】特開2020-190511(JP,A)
【文献】特表平03-501295(JP,A)
【文献】米国特許第04941361(US,A)
【文献】特開2009-203104(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101960127(CN,A)
【文献】特開平06-186182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/00
G01N 1/00-1/44
G01N 31/00-31/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構成(1)~(4)を備えた水素濃度推定システム。
(1)前記水素濃度推定システムは、水素と、モル質量が10g/mol以上である1種又は2種以上の成分ガスからなる主ガスとを含む混合ガスの水素濃度を推定するために用いられる。
(2)前記水素濃度推定システムは、
前記混合ガスの流量を測定するための第1、第2、…第m流量センサー(m≧2)と、
前記第1、第2、…第m流量センサーに前記混合ガスを流した時の前記第1、第2、…第m流量センサーの出力を記憶させる記憶部と、
いずれか2以上の前記出力を用いて、前記混合ガスの水素濃度を推定する推定部と
を備えている。
(3)前記第1、第2、…第m流量センサーは、互いに異なる流量-出力特性を持つ。
ここで、前記「互いに異なる流量-出力特性を持つ」とは、
第i流量センサー(1≦i≦m)及び第j流量センサー(1≦j≦m、j≠i)に、それぞれ、前記水素濃度がゼロである前記主ガスを、流量を変えて流した場合における前記第i流量センサーの出力Yi及び前記第j流量センサーの出力Yjの関係を一次式:Yi=b×Yj+cで近似した場合において、
前記第i流量センサー及び前記第j流量センサーに、前記主ガスの流量を固定して、前記水素濃度だけを変化させた前記混合ガスを流した時の出力の増大分を、それぞれ、ΔYi及びΔYjとすると、ΔYi/ΔYj=bの関係が成り立たないことをいう。
(4)前記推定部は、予め取得された、いずれか2以上の前記出力を説明変数とし、前記水素濃度を目的変数とする関数を用いて、前記水素濃度を推定する手段を含む。
【請求項2】
前記推定部は、次の式(1)を用いて前記水素濃度を算出する手段を含む請求項1に記載の水素濃度推定システム。
n[vol%]=F(Y1、Y2、…、Ym) …(1)
但し、
nは、前記混合ガスの水素濃度、
1、Y2、…Ymは、それぞれ、前記第1、第2、…第m流量センサーに前記混合ガスを流した時の前記第1、第2、…第m流量センサーの出力、
Fは、前記Y1、Y2、…Ymのいずれか2以上を前記説明変数とする多変数非線形関数。
【請求項3】
前記推定部は、前記混合ガスを流した時の前記第1、第2、…第m流量センサーの出力のいずれか2以上と、前記水素濃度との対応関係を予め機械学習させた機械学習モデルを用いて、前記水素濃度を算出する手段を含む請求項1又は2に記載の水素濃度推定システム。
【請求項4】
前記推定部は、次の式(2)及び式(3)を用いて前記水素濃度を算出する手段を含む請求項1から3までのいずれか1項に記載の水素濃度推定システム。
d=|bYj-Yk+c|/√(b2+1) …(2)
n[vol%]=αd+β …(3)
但し、
nは、前記混合ガスの水素濃度、
j(1≦j≦m)は、第j流量センサーに前記混合ガスを流した時の前記第j流量センサーの出力、
k(1≦k≦m、k≠j)は、第k流量センサーに前記混合ガスを流した時の前記第k流量センサーの出力、
b及びcは、それぞれ、前記第j流量センサー及び前記第k流量センサーに流量及び/又は組成の異なる前記主ガスを流した時の、前記第j流量センサーの出力Yj'をx軸とし、前記第k流量センサーの出力Yk'をy軸とし、前記Yj'と前記Yk'との対応関係を一次式(Yk'=bYj'+c)で近似した場合における前記1次式の傾き及びy切片、
α及びβは、それぞれ、定数。
【請求項5】
前記混合ガスの温度を測定するための温度センサーをさらに備え、
前記推定部は、予め取得された、いずれか2以上の前記出力と、前記温度とを説明変数とし、前記水素濃度を目的変数とする関数を用いて、前記水素濃度を推定する手段を含む請求項1から4までのいずれか1項に記載の水素濃度推定システム。
【請求項6】
前記推定部は、次の式(4)を用いて前記水素濃度を算出する手段を含む請求項5に記載の水素濃度推定システム。
n[vol%]=F'(Y1、Y2、…、Ym、T) …(4)
但し、
nは、前記混合ガスの水素濃度、
1、Y2、…Ymは、それぞれ、前記第1、第2、…第m流量センサーに前記混合ガスを流した時の前記第1、第2、…第m流量センサーの出力、
Tは、前記混合ガスの温度、
F'は、前記Y1、Y2、…Ymのいずれか2以上と、前記Tとを前記説明変数とする多変数非線形関数。
【請求項7】
前記推定部は、前記混合ガスを流した時の前記第1、第2、…第m流量センサーの出力のいずれか2以上と、前記温度と、前記水素濃度との対応関係を予め機械学習させた機械学習モデルを用いて、前記水素濃度を算出する手段を含む請求項5又は6に記載の水素濃度推定システム。
【請求項8】
前記第1、第2、…第m流量センサーの少なくとも1つは、質量流量方式の流量センサーである請求項1から7までのいずれか1項に記載の水素濃度推定システム。
【請求項9】
前記第1、第2、…第m流量センサーの少なくとも1つは、熱式質量流量方式の流量センサーである請求項1から8までのいずれか1項に記載の水素濃度推定システム。
【請求項10】
前記混合ガスは、前記水素と前記主ガスの総含有量が99vol%以上である請求項1から9までのいずれか1項に記載の水素濃度推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素濃度推定システムに関し、さらに詳しくは、水素を含む混合ガス中の水素濃度を推定するための水素濃度推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水素は、水の電気分解、炭化水素の水蒸気改質、製鉄所などの工場から排出されるガスからの水素の分離など、様々な方法により製造されている。また、製造された水素は、燃料電池や水素燃料エンジンの燃料、化学物質の製造用原料、還元剤など、様々な用途に用いられている。このような水素の製造過程又は使用過程において、水素を含む混合ガスが生成し、あるいは、水素を含む混合ガスが不可抗力により外部に漏洩する場合がある。さらに、ある種のプラント(例えば、沸騰水型原子力プラント)においては、意図しない副反応により水素が発生する場合もある。
このような場合において、水素の製造過程又は使用過程の効率の向上、安全性の確保等の観点から、混合ガス中の水素濃度を知ることが望まれる場合がある。そのため、混合ガス中の水素濃度の推定方法に関し、従来から種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、
(a)燃料電池スタックに水素を供給するための燃料ガス通路に燃料ガス供給弁及び圧力センサを設け、燃料電池スタックから排出されるオフガスに含まれる水素を回収して燃料ガス通路に戻すための気液分離器に熱流センサ及び温度センサを設け、
(b)燃料ガス供給弁を周期的に開閉した時に生ずる熱流センサ出力の変動幅Va及び圧力センサの出力の変動幅Vbを測定し、
(c)出力変動比(=Va/Vd)を、熱流センサの表面側(水素ガス側)の温度と裏面側の温度との差ΔTで補正し、
(c)補正後の出力変動比を用いて、オフガス中の水素濃度を推定する
水素濃度検出装置が開示されている。
同文献には、このような方法により、負荷や外気温度が変化した場合であっても、水素濃度を良好な検出精度で検出できる点が記載されている。
【0004】
特許文献2には、燃料電池システムにおけるアノードガス循環流路内のアノードガス温度、アノードガス循環流路内に設けられる循環ポンプの入口と出口の差圧、アノードガス流路内のガス密度、及び、燃料電池内の相対湿度を用いて、アノードガス循環流路内の水素濃度を推定する方法が開示されている。
同文件には、
(A)アノードガス循環流路内の水素濃度を推定する場合において、水蒸気の含有率が飽和水蒸気分率であると仮定すると、水素濃度の推定精度が低下する点、及び、
(B)アノードガス循環流路内の水素濃度を推定する場合において、燃料電池内の相対湿度を用いると、水素濃度をより高精度に推定することができる点
が記載されている。
【0005】
特許文献3には、
(a)流通ガスの一部をサンプリングし、サンプリングされたガスに含まれる水素を酸化触媒により酸化させ、酸化処理後のガスに含まれるH2O濃度を計測し、
(b)流通ガスの他の一部をサンプリングし、サンプリングされた未処理のガスに含まれるH2O濃度を計測し、
(c)酸化処理後のガス中のH2O濃度と未処理のガス中のH2O濃度との差から、流通ガスに含まれる水素濃度を算出する
水素濃度計測装置が開示されている。
同文献には、このような方法により、水素の濃度を高い応答性で、簡単、かつ、高精度に計測することが可能となる点が記載されている。
【0006】
特許文献4には、
(a)沸騰水型原子力プラントの再結合器に流入するガスのデータ(再結合器に流入するガスに含まれる水素、酸素、窒素、及び水蒸気の流量データ、再結合器に流入するガスの温度データ、再結合器に流入する触媒被毒物質の流量データ)、及び、
(b)再結合器に充填される触媒のデータ(触媒に含まれる活性成分の量、触媒の活性化エネルギー及び頻度因子のデータ)
を用いて、再結合器から排出されるガス中の水素濃度を予測する水素濃度予測装置が開示されている。
同文献には、このような方法により再結合器から排出されるガス中の水素濃度を予測することができ、原子力発電プラントの安全性をより向上させることができる点が記載されている。
【0007】
さらに、特許文献5には、鋼の表面処理を行う処理炉の雰囲気中の水素濃度又は水素分圧を、プロトン伝導性を示す固体電解質を備えた固体電解質水素センサで検出する方法が開示されている。
同文献には、
(A)熱伝導式水素センサを用いて処理炉内の水素濃度を検出すると、水素濃度の変化に対して数十秒の検出の遅れが生じる点、及び、
(B)固体電解質水素センサを用いると、処理炉内の水素濃度の変化に速やかに応答して水素濃度を検出することができるので、速やかなフィードバック制御が可能となる点
が記載されている。
【0008】
特許文献1には、燃料ガス供給弁を周期的に開閉させることにより、熱流センサの出力及び圧力センサの出力を周期的に変動させ、熱流センサ出力の変動幅Va及び圧力センサの出力の変動幅Vbを用いて、水素濃度を推定する方法が記載されている。しかしながら、同文献に記載の方法は、周期的な圧力変動が生じない環境下においては使用できない。
【0009】
特許文献2~4に記載の方法は、いずれも、特殊な装置を必要とし、あるいは、特殊な用途に対してのみ適用可能な方法であり、汎用性に乏しい。また、これらの方法は、水素を含む混合ガスフロー中における水素濃度を簡易的に推定するのは難しい。
さらに、特許文献5に記載の方法は、400℃以上の高温環境下においてのみ使用可能な方法であり、汎用性に乏しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2019-164918号公報
【文献】特許第6620510号公報
【文献】特許第5709408号公報
【文献】特許第5686539号公報
【文献】特開2020-084219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、水素を含む混合ガス中の水素濃度を推定することが可能な水素濃度推定システムを提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、特殊な装置を用いる必要がなく、かつ、汎用性が高い水素濃度推定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明に係る水素濃度推定システムは、以下の構成を備えている。
(1)前記水素濃度推定システムは、水素と、モル質量が10g/mol以上である1種又は2種以上の成分ガスからなる主ガスとを含む混合ガスの水素濃度を推定するために用いられる。
(2)前記水素濃度推定システムは、
前記混合ガスの流量を測定するための第1、第2、…第m流量センサー(m≧2)と、
前記第1、第2、…第m流量センサーに前記混合ガスを流した時の前記第1、第2、…第m流量センサーの出力を記憶させる記憶部と、
いずれか2以上の前記出力を用いて、前記混合ガスの水素濃度を推定する推定部と
を備えている。
(3)前記第1、第2、…第m流量センサーは、互いに異なる流量-出力特性を持つ。
(4)前記推定部は、予め取得された、いずれか2以上の前記出力を説明変数とし、前記水素濃度を目的変数とする関数を用いて、前記水素濃度を推定する手段を含む。
【0013】
前記水素濃度推定システムは、
前記混合ガスの温度を測定するための温度センサーをさらに備え、
前記推定部は、予め取得された、いずれか2以上の前記出力と、前記温度とを説明変数とし、前記水素濃度を目的変数とする関数を用いて、前記水素濃度を推定する手段を含むものが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
互いに異なる流量-出力特性を持つ複数個の流量センサーを用いて、水素を含まない主ガスの流量-出力特性を測定すると、複数個の流量センサーの出力の間には一定の関数関係(以下、これを「基準関数」ともいう)が成り立つ。一方、このような複数個の流量センサーを用いて、水素を含む混合ガスの流量-出力特性を測定すると、それらの出力の組み合わせからなるデータ点は、基準関数から乖離する。しかも、その基準関数とデータ点との間の距離(d)は、水素濃度と相関がある。
【0015】
そのため、流量及び/又は水素濃度の異なる混合ガスを流した時の複数個の流量センサーの出力のいずれか2以上を説明変数とし、水素濃度を目的変数とする関数を予め取得しておくと、その関数を用いて水素濃度を推定することができる。
混合ガスの温度を考慮して水素濃度を推定する場合も同様であり、複数個の流量センサーの出力のいずれか2以上と、温度とを説明変数とし、水素濃度を目的変数とする関数を予め取得しておくと、その関数を用いて水素濃度を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】流量センサー1の出力値と流量センサー2の出力値との関係を示す図である。
図2図1の拡大図である。
図3】距離dと水素濃度nとの関係を示す図である。
図4】実測水素濃度と予測水素濃度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 水素濃度推定システム]
本発明に係る水素濃度推定システムは、以下の構成を備えている。
(1)前記水素濃度推定システムは、水素と、モル質量が10g/mol以上である1種又は2種以上の成分ガスからなる主ガスとを含む混合ガスの水素濃度を推定するために用いられる。
(2)前記水素濃度推定システムは、
前記混合ガスの流量を測定するための第1、第2、…第m流量センサー(m≧2)と、
前記第1、第2、…第m流量センサーに前記混合ガスを流した時の前記第1、第2、…第m流量センサーの出力を記憶させる記憶部と、
いずれか2以上の前記出力を用いて、前記混合ガスの水素濃度を推定する推定部と
を備えている。
(3)前記第1、第2、…第m流量センサーは、互いに異なる流量-出力特性を持つ。
(4)前記推定部は、予め取得された、いずれか2以上の前記出力を説明変数とし、前記水素濃度を目的変数とする関数を用いて、前記水素濃度を推定する手段を含む。
【0018】
水素濃度推定システムは、前記混合ガスの温度を測定するための温度センサーをさらに備えていても良い。この場合、前記推定部は、予め取得された、いずれか2以上の前記出力と、前記温度とを説明変数とし、前記水素濃度を目的変数とする関数を用いて、前記水素濃度を推定する手段を含むものが好ましい。
【0019】
[1.1. 混合ガス]
「混合ガス」とは、本発明に係る水素濃度推定システムの検査対象であって、水素と、主ガスとを含むガスをいう。
「主ガス」とは、モル質量が10g/mol以上である1種又は2種以上の成分ガスからなるガスをいう。
【0020】
モル質量が10g/mol以上である成分ガスとしては、例えば、メタン(CH4、16g/mol)、プロパン(C38、44g/mol)、エタン(C26、30g/mol)、ブタン(C410、58g/mol)、窒素(N2、28g/mol)、水蒸気(H2O、18g/mol)などがある。主ガスは、これらのいずれか1種類の成分ガスのみを含むものでも良く、あるいは、2種以上の成分ガスの混合物でも良い。
【0021】
但し、混合ガス中にモル質量が10g/mol未満である他のガス(例えば、モル質量が4g/molであるヘリウム(He))が多量に混入していると、水素濃度の検出精度が低下する場合がある。従って、混合ガスは、水素と主ガスの総含有量が99vol%以上であるものが好ましい。
【0022】
[1.2. 第1~第m流量センサー]
[1.2.1. 定義]
「第1、第2、…第m流量センサー(m≧2)」とは、水素を含む混合ガスの流量を測定するための流量センサーをいう。第1、第2、…第m流量センサーは、互いに異なる流量-出力特性を持つものである必要がある。
第i流量センサー(1≦i≦m)及び第j流量センサー(1≦j≦m、j≠i)に、それぞれ、水素濃度nがゼロである主ガスを流した場合、第i流量センサーの出力Yi及び第j流量センサの出力Yjは、主ガスの流量が増大するとともに増大する。そのため、両者の関係は、一次式でYi=b×Yj+cと近似できる。
「互いに異なる流量-出力特性を持つ」とは、主ガスの流量を固定して、水素濃度nだけを変化させた時の出力の増大分を、それぞれ、ΔYi及びΔYjとすると、ΔYi/ΔYj=bの関係が成り立たないことをいう。
【0023】
[1.2.2. 個数]
流量センサーの個数(m)は、2以上であれば良い。但し、流量センサーの個数を必要以上に多くしても、効果に差が無く、実益がない。従って、流量センサーの個数は、混合ガスの組成、検査目的等に応じて、最適な個数を選択するのが好ましい。
【0024】
単一の流量センサーを用いた場合であっても、水素濃度の変化に応じて流量-出力特性が変化する傾向は見えるが、水素濃度の変化に起因する流量-出力特性の変化と、それ以外の要因に起因する流量-出力特性の変化を分離することは難しい。しかし、種類の異なる流量センサーの流量-出力特性の変化を比較すると、水素濃度の変化に起因する流量-出力特性の変化を明確化することができる。そのため、複数の流量センサーの結果を比較することで、水素濃度を従来の方法に比べてより正確に推定することができる。
【0025】
[1.2.3. 種類]
本発明において、流量センサーの種類は、特に限定されない。
流量センサとしては、例えば、
(a)コリオリ式流量センサーなどの質量流量方式の流量センサー、
(b)キャピラリ式流量センサー、熱線式流量センサー、熱電対式流量センサー、半導体式流量センサーなどの熱式質量流量方式の流量センサー、
などがある。
【0026】
これらの中でも、第1、第2、…第m流量センサーの少なくとも1つは、質量流量方式の流量センサーが好ましい。
質量流量方式の流量センサーでは、ガスの質量を感知しており、センサーの出力は、主としてガスのモル質量で決まる。一方、水素(H2)のモル質量は2g/molであり、メタン等のモル質量と比べて一桁程度低い。そのため、混合ガス中の水素濃度が変わると、質量流量方式の流量センサーの流量-出力特性が相対的に大きく変化する。また、流量-出力特性の異なる複数の流量センサーの流量-出力特性の変化を比較すると、水素濃度の変化に起因する流量-出力特性の変化を明確化することができる。その結果、水素濃度を従来の方法に比べてより正確に推定することができる。
【0027】
また、第1、第2、…第m流量センサーの少なくとも1つは、熱式質量流量方式の流量センサーが好ましい。
モル質量の小さい水素の室温での熱伝導度は0.16W/m・Kであり、メタン(熱伝導度=0.03W/m・K)などのモル質量が10g/mol以上のガスに比べて一桁程度高くなる。一方、熱式質量流量方式の流量センサーでは、ガスの熱流に起因する温度差を検知しているが、熱伝導率が一桁も高い水素ガスの流れは、他のガスの流れに比べて、熱源の上流側にあるガスと下流側にあるガスとの間の温度差(例えば、温度差を熱起電力の差として検知している時は、熱起電力の差)を顕著に縮小させる作用を及ぼす。
【0028】
そのため、混合ガス中の水素濃度が変わると、熱式質量流量方式の流量センサーの流量-出力特性が相対的に大きく変化する。また、流量-出力特性の異なる複数の流量センサーの流量-出力特性の変化を比較すると、水素濃度の変化に起因する流量-出力特性の変化を明確化することができる。その結果、水素濃度を従来の方法に比べてより正確に推定することができる。
【0029】
[1.3. 温度センサー]
本発明に係る水素濃度推定システムは、混合ガスの温度を測定するための温度センサーをさらに備えていても良い。本発明において、温度センサーの種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な温度センサーを用いることができる。
【0030】
混合ガス中の水素濃度を測定する場合、混合ガスの温度が一定であると見なしても良い。しかしながら、混合ガスの温度が変わると、混合ガスの流量も変化する。混合ガス中の水素濃度をより正確に測定するためには、混合ガスの温度を測定し、測定された温度を用いて水素濃度を補正するのが好ましい。
【0031】
[1.4. 記憶部]
「記憶部」とは、第1、第2、…第m流量センサーに混合ガスを流した時の、第1、第2、…第m流量センサーの出力を記憶するための装置をいう。
記憶部の構造は、出力を記憶させることが可能なものである限りにおいて、特に限定されない。記憶部に記憶された出力は、推定部に送られ、水素濃度の推定に用いられる。
【0032】
[1.5. 推定部]
「推定部」とは、第1、第2、…第m流量センサーに混合ガスを流した時の、第1、第2、…第m流量センサーのいずれか2以上の出力を用いて、混合ガスに含まれる水素濃度を推定するための装置をいう。
推定部の構造は、第1、第2、…第m流量センサーの出力を用いて、水素濃度を推定することが可能なものである限りにおいて、特に限定されない。
【0033】
推定部は、予め取得された、いずれか2以上の出力を説明変数とし、水素濃度を目的変数とする関数を用いて、水素濃度を推定する手段を含むものでも良い。
また、推定部は、予め取得された、いずれか2以上の出力と、温度とを説明変数とし、水素濃度を目的変数とする関数を用いて、水素濃度を推定する手段を含むものでも良い。
水素濃度の推定手段としては、具体的には、以下のような手段がある。
【0034】
[1.5.1. 推定手段(1):多変数非線形関数]
推定部は、次の式(1)を用いて水素濃度を算出する手段を含むものでも良い。
n[vol%]=F(Y1、Y2、…、Ym) …(1)
但し、
nは、前記混合ガスの水素濃度、
1、Y2、…Ymは、それぞれ、前記第1、第2、…第m流量センサーに前記混合ガスを流した時の前記第1、第2、…第m流量センサーの出力、
Fは、前記Y1、Y2、…Ymのいずれか2以上を前記説明変数とする多変数非線形関数。
【0035】
互いに異なる流量-出力特性を持つ複数個の流量センサーを用いて、水素を含まない主ガスの流量-出力特性を測定すると、複数個の流量センサーの出力の間には一定の関数関係(基準関数)が成り立つ。一方、このような複数個の流量センサーを用いて、水素を含む混合ガスの流量-出力特性を測定すると、それらの出力の組み合わせからなるデータ点は、基準関数から乖離する。しかも、基準関数とデータ点との間の距離(d)は、水素濃度と相関がある。そのため、水素濃度と、第1、第2、…第m流量センサーに前混合ガスを流した時の第1、第2、…第m流量センサーの出力との間には、一定の関数関係が成り立つ。
【0036】
式(1)は、流量及び/又は水素濃度の異なる混合ガスを流した時の、第1、第2、…第m流量センサーの出力Y1、Y2、…Ymのいずれか2以上を説明変数とし、水素濃度nを目的変数とする関数を表す。Fは、Y1、Y2、…Ymのいずれか2以上を説明変数とする多変数非線形関数であれば良く、その関数形は特に限定されない。Fとしては、例えば、多変数多項式、指数関数、対数関数、三角関数、又は、これらの2以上の組み合わせなどがある。
【0037】
[1.5.2. 推定手段(2):機械学習モデル]
推定部は、混合ガスを流した時の第1、第2、…第m流量センサの出力のいずれか2以上と、水素濃度との対応関係を予め機械学習させた機械学習モデルを用いて、水素濃度を算出する手段を含むものでも良い。
【0038】
水素濃度及び/又は流量の異なる様々な混合ガスを第1、第2、…第m流量センサに流し、その時の第1、第2、…第m流量センサの出力と水素濃度との対応関係を機械学習させると、第1、第2、…第m流量センサの出力を説明変数とし、水素濃度を目的変数とする機械学習モデルを得ることができる。予めこのような機械学習モデルを構築しておくと、第1、第2、…第m流量センサの出力を取得したときに、機械学習モデルを用いて水素濃度を推定することができる。
【0039】
[1.5.3. 推定手段(3):線形近似]
推定部は、次の式(2)及び式(3)用いて水素濃度を算出する手段を含むものでも良い。
d=|bYj-Yk+c|/√(b2+1) …(2)
n[vol%]=αd+β …(3)
【0040】
但し、
nは、前記混合ガスの水素濃度、
j(1≦j≦m)は、第j流量センサーに前記混合ガスを流した時の前記第j流量センサーの出力、
k(1≦k≦m、k≠j)は、第k流量センサーに前記混合ガスを流した時の前記第k流量センサーの出力、
b及びcは、それぞれ、前記第j流量センサー及び前記第k流量センサーに流量及び/又は組成の異なる前記主ガスを流した時の、前記第j流量センサーの出力Yj'をx軸とし、前記第k流量センサーの出力Yk'をy軸とし、前記Yj'と前記Yk'との対応関係を一次式(Yk'=bYj'+c)で近似した場合における前記1次式の傾き及びy切片、
α及びβは、それぞれ、定数。
【0041】
2つの流量センサー(第j流量センサー、第k流量センサー)を用いて主ガスの流量-出力特性を測定した場合、第j流量センサーの出力Yj'と第k流量センサーの出力Yk'との間には、本来、非線形関係が成り立つ。しかしながら、両者の流量-出力特性の差が小さい場合、両者の関係を一次式で近似することができる(図1参照)。一方、このような2個の流量センサーを用いて、水素を含む混合ガスの流量-出力特性を測定すると、それらの出力の組み合わせ(Yj、Yk)は、線形近似された直線から乖離する(図2参照)。
【0042】
式(2)及び式(3)中の「d」は、近似直線と、混合ガス測定時の出力の組み合わせ(Yj、Yk)との間の最短距離を表す。さらに、水素濃度nは、式(3)に示すように、dの一次式で近似することができる(図3参照)。そのため、予め係数b、c、α、βを取得しておけば、出力の組み合わせ(Yj、Yk)を取得した時に、式(2)及び式(3)からnを算出することができる。
【0043】
なお、上述した式(1)又は機械学習モデルを用いたnの推定は、いずれも、式(2)及び式(3)を用いたnの推定と同様の原理に基づくものであるが、nとY1~Ymとの関係を非線形関数で記述する点において、式(2)及び式(3)を用いたnの推定とは異なる。式(2)及び式(3)を用いたnの推定は、式(1)又は機械学習モデルを用いたnの推定に比べて推定精度は低いが、式(1)又は機械学習モデルを用いたnの推定に比べて計算コストを削減できるという利点がある。
【0044】
[1.5.4. 推定手段(4):温度を考慮した多変数非線形関数]
水素濃度推定システムが、混合ガスの温度を測定するための温度センサーをさらに備えている場合、推定部は、次の式(4)を用いて水素濃度を算出する手段を含むものでも良い。
n[vol%]=F'(Y1、Y2、…、Ym、T) …(4)
但し、
nは、前記混合ガスの水素濃度、
1、Y2、…Ymは、それぞれ、前記第1、第2、…第m流量センサーに前記混合ガスを流した時の前記第1、第2、…第m流量センサーの出力、
Tは、前記混合ガスの温度、
F'は、前記Y1、Y2、…Ymのいずれか2以上と、前記Tとを前記説明変数とする多変数非線形関数。
【0045】
式(4)は、水素濃度nを推定する際に、第1、第2、…第m流量センサーの出力Y1、Y2、…Ymに加えて、混合ガスの温度Tが考慮される。この点が、式(1)とは異なる。その他の点については式(1)と同様であるので、説明を省略する。
【0046】
[1.5.5. 推定手段(5):温度を考慮した機械学習モデル]
水素濃度推定システムが、混合ガスの温度を測定するための温度センサーをさらに備えている場合、推定部は、混合ガスを流した時の第1、第2、…第m流量センサの出力のいずれか2以上と、温度と、水素濃度との対応関係を予め機械学習させた機械学習モデルを用いて、水素濃度を算出する手段を含むものでも良い。
【0047】
推定手段(5)は、水素濃度nを推定する際に、第1、第2、…第m流量センサーの出力Y1、Y2、…Ymに加えて、混合ガスの温度Tが考慮される。この点が、推定手段(2)とは異なる。その他の点については推定手段(2)と同様であるので、説明を省略する。
【0048】
[2. 作用]
混合ガス中の水素濃度を知りたい状況は多岐にわたる。例えば、
(a)ガス流量を設定して混合ガスにした時に、水素が所望の割合となっているか確認したい場合、
(b)水素ステーションにおいて所望の水素濃度になっているか知りたい場合、
(c)誤って水素ガスが混入した時にこれを検知して、異常を告知したい場合、
などが想定される。
【0049】
通常、流量センサーは、混合ガスの流量を求めるものであり、各ガスの濃度を推定することは難しい。また、各ガスの濃度を知ろうと思った場合、赤外分光装置やガスクロマトグラフィー装置など、それなりの設備が必要となる。
【0050】
これに対し、互いに異なる流量-出力特性を持つ複数個の流量センサーを用いて、水素を含まない主ガスの流量-出力特性を測定すると、複数個の流量センサーの出力の間には一定の関数関係(基準関数)が成り立つ。一方、このような複数個の流量センサーを用いて、水素を含む混合ガスの流量-出力特性を測定すると、それらの出力の組み合わせからなるデータ点は、基準関数から乖離する。しかも、基準関数とデータ点との間の距離(d)は、水素濃度と相関がある。
【0051】
そのため、流量及び/又は水素濃度の異なる混合ガスを流した時の複数個の流量センサーの出力のいずれか2以上を説明変数とし、水素濃度を目的変数とする関数を予め取得しておくと、その関数を用いて水素濃度を推定することができる。
混合ガスの温度を考慮して水素濃度を推定する場合も同様であり、複数個の流量センサーの出力のいずれか2以上と、温度とを説明変数とし、水素濃度を目的変数とする関数を予め取得しておくと、その関数を用いて水素濃度を推定することができる。
【0052】
本発明に係る水素濃度推定システムは、混合ガスに含まれるすべてのガスの濃度を知ることはできない。しかしながら、本発明に係る水素濃度推定システムは、簡便で安価な流量センサーを複数使用するだけで、混合ガス中の水素の濃度を推定することができる。
【実施例
【0053】
(実施例1~4)
[1. 試験方法]
流量-出力特性の異なる3種類の流量センサー1~3に対し、組成及び/又は流量の異なる検出用ガスを流し、その時のセンサー出力を測定した。流量センサー1には、都市ガス用熱式流量センサーを用いた。流量センサー2には、LP用熱式流量センサーを用いた。流量センサー3には、空気用熱式流量センサーを用いた。
検出用ガスには、メタン:66~95vol%、プロパン:0~21vol%、エタン:0~10vol%、ブタン:0~3vol%、水素:0~31vol%の割合で各種のガスを含む様々なガスを用いた。以下、水素を含まない検出用ガスを「主ガス」ともいい、水素と水素以外のガスとを含む検出用ガスを「混合ガス」ともいう。
【0054】
[2. 結果]
[2.1. 実施例1:式(2)及び式(3)を用いた水素濃度の推定]
図1に、流量センサー1の出力値と流量センサー2の出力値との関係を示す。図1より、混合ガス(水素あり)のデータ点は、主ガス(水素なし)のデータ点の右下側に出現することが分かる。これは、2つの流量センサーが微妙に異なる流量-出力特性を持つことに起因する。
【0055】
図2に、図1の拡大図を示す。図2に示すように、主ガス(水素なし)のデータ点を最小二乗法により直線でフィットする。また、混合ガス(水素あり)のデータ点とフィットした直線との間の距離をdとする。主ガス(水素なし)を流した時のY1'を流量センサー1の出力、Y1'を流量センサー2の出力Y2'とすると、フィットした直線は、Y2'≒bY1'+cと表せる。また、混合ガス(水素あり)を流した時の流量センサーの出力(Y1、Y2)が得られた場合、得られたデータ点と直線との距離dは、d=|bY1-Y2+c|/√(b2+1)と表せる。
【0056】
図3に、距離dと水素濃度nとの関係を示す。図3には、最小二乗法によりデータを直線でフィットした結果(n[vol%]=αd+β)も併せて示した。図1図3より、水素濃度を知りたい混合ガスの距離dを求めると、フィットした直線(n=αd+β)から水素濃度nを推定できることが分かる。
【0057】
[2.2. 実施例2~4:機械学習モデルを用いた水素濃度の推定]
式(2)及び式(3)を用いた水素濃度の推定は、簡便な推定方法ではあるが、水素濃度nと距離dとの線形関係から水素濃度nを求める単純な式を用いているため、推定精度は良いとは言えない。そこで、水素濃度の推定精度を向上させるために、流量センサー2と流量センサー1のデータを用いて、機械学習(統計分析ソフトRでニューラルネットワーク)により推定モデルを構築した(実施例2)。
【0058】
ニューラルネットワークでは、水素濃度nを、データベースに含まれる混合ガスの(Y1、Y2)を変数とする非線形関数n=F(Y1、Y2)として水素濃度推定モデルを構築している。従って、この方法を用いると、n[vol%]=F(Y1、Y2、…、Ym、T)のように、混合ガスの温度Tを含めた多変数でも水素濃度推定モデルを構築することができる。
今回は、ニューラルネットワークを行うためのライブラリーにnnet(活性化関数にシグモイド関数を用いたもの)を用い、ハイパーパラメータを、それぞれ、size=10、decay=0.009、maxit=100000、reltol=1.0e-9として推定モデルを構築した。また、機械学習に10分割交差検証を行うことで、汎化性能を評価している。
【0059】
図4に、実測水素濃度と予測水素濃度との関係を示す。なお、図4には、距離dを用いた予測と、機械学習モデルを用いた予測の双方を示した。また、機械学習モデルの構築には、流量センサー1及び流量センサー2の出力を用いた。図4より、機械学習モデルを用いた予測では、非線形の効果を導入して推定しているので、dを用いた推定に比べて推定精度が向上していることが分かる。
なお、図3の縦軸の「水素濃度(%)」は、図4の横軸の「実測水素濃度(%)」に対応する。図4に示すdを用いた予測水素濃度は、図3の直線(実験結果を最小二乗法により近似した直線)にdを代入することにより算出した。
【0060】
機械学習モデルを用いた推定された水素濃度の予測値について、10分割交差検証における水素濃度の実測値と予測値との平均平方二乗誤差(RMSECV)と、決定係数(RCV 2)とを評価した。表1に、その結果を示す。RMSECV及びRCV 2は、10回のテストデータのそれぞれの値の平均値であるため、推定モデルを構築するための学習データとは全く関連せず、汎用的にどのくらい推定できるかを意味している。流量センサー1と流量センサー2を用いて機械学習により水素濃度を推定した場合(実施例2)、RMSECV=1.774%となり、水素濃度の推定誤差が少ないモデルを構築できていることが分かる。
【0061】
また、表1には、流量センサー1と流量センサー3を用いて機械学習により水素濃度を推定した場合の評価結果(実施例3)、及び、流量センサー2と流量センサー3を用いて機械学習により水素濃度を推定した場合の評価結果(実施例4)も併せて示した。表1より、どの流量センサーを用いてもRMSECVは低く、誤差の少ない推定モデルを構築できていることが分かる。このように、流量-出力特性の異なる複数の流量センサーを用いることで、水素濃度を簡便、かつ、高精度に推定できることが分かった。
【0062】
【表1】
【0063】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る水素濃度推定システムは、混合ガス中の水素濃度の推定、水素を含む混合ガスの漏洩検知などに用いることができる。
図1
図2
図3
図4