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特許7634497エネルギー運用計画作成システムおよびエネルギー運用計画作成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】エネルギー運用計画作成システムおよびエネルギー運用計画作成方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20250214BHJP
【FI】
G06Q50/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022042412
(22)【出願日】2022-03-17
(65)【公開番号】P2023136631
(43)【公開日】2023-09-29
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】平野 秀明
(72)【発明者】
【氏名】北村 聖一
【審査官】原 忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-029389(JP,A)
【文献】特開2022-019095(JP,A)
【文献】特開2019-138602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる種類のエネルギーを供給する複数の対象機器の将来の計画対象期間における供給計画値の時系列データである運用計画データを作成するエネルギー運用計画作成システムであって、
過去の複数の運用実績期間における各前記エネルギーの需要実績値および各前記対象機器による供給実績値の時系列データである複数の運用実績データと、前記計画対象期間における各前記エネルギーの需要予測値の時系列データである需要予測データとに基づき、各前記運用実績データにおける前記需要実績値と前記需要予測値との類似度である需要類似度を計算する需要類似度計算処理部と、
前記需要類似度に基づき選択した1つの前記運用実績データにおける前記供給実績値の時系列データを基準計画データとし、前記基準計画データが前記需要予測値を満たせない場合、その過不足分を調整するために必要なコストを評価値として計算する基準計画選択処理部と、
前記需要類似度に基づき選択した、前記基準計画データを含まない少なくとも1つの前記運用実績データにおける前記供給実績値の時系列データを少なくとも1つの近傍候補データとする近傍抽出処理部と、
前記近傍候補データが前記需要予測値を満たせない場合、その過不足分を調整するために必要なコストを評価値として計算する近傍評価処理部と、
前記基準計画データと前記近傍候補データのうち評価値が最大のデータを前記運用計画データとしてユーザに提供するため前記エネルギー運用計画作成システムの外部に出力する結果情報出力部と、を備える、
エネルギー運用計画作成システム。
【請求項2】
前記基準計画データに対して、前記対象機器の運転時間の伸縮および前記対象機器の出力の増減の少なくともいずれか一方を行うことにより、類似計画案データを作成する類似計画案作成処理部をさらに備え、
前記近傍抽出処理部は、前記類似計画案データも前記近傍候補データとして選択する、
請求項1に記載のエネルギー運用計画作成システム。
【請求項3】
前記対象機器の作業期間の情報および前記作業期間における前記対象機器の出力条件に関する情報を含む機器作業データに基づき、前記計画対象期間と前記運用実績期間との間で前記対象機器の作業の類似度である作業類似度を算出する作業類似度計算処理部をさらに備え、
前記基準計画選択処理部は、前記需要類似度および前記作業類似度に基づき選択した1つの前記運用実績データにおける前記供給実績値の時系列データを前記基準計画データとし、
前記近傍抽出処理部は、前記需要類似度および前記作業類似度に基づき選択した、前記基準計画データを含まない少なくとも1つの前記運用実績データにおける前記供給実績値の時系列データを少なくとも1つの前記近傍候補データとする、
請求項1または請求項2に記載のエネルギー運用計画作成システム。
【請求項4】
前記需要予測値と前記基準計画データにおける前記対象機器の供給量の合計値との差が小さくなるように、前記基準計画データにおける前記対象機器の前記供給計画値を更新する供給量再配分処理部をさらに備え、
前記近傍抽出処理部は、前記近傍候補データにおける前記対象機器の供給量の合計値との差が小さくなるように、前記近傍候補データにおける前記対象機器の前記供給計画値を更新する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエネルギー運用計画作成システム。
【請求項5】
異なる種類のエネルギーを供給する複数の対象機器の将来の計画対象期間における供給計画値の時系列データである運用計画データを作成するエネルギー運用計画作成システムによるエネルギー運用計画作成方法であって、
前記エネルギー運用計画作成システムは、需要類似度計算処理部、基準計画選択処理部、近傍抽出処理部、近傍評価処理部、および結果情報出力部を備え、
前記需要類似度計算処理部が、過去の複数の運用実績期間における各前記エネルギーの需要実績値および各前記対象機器による供給実績値の時系列データである複数の運用実績データと、前記計画対象期間における各前記エネルギーの需要予測値の時系列データである需要予測データとに基づき、各前記運用実績データにおける前記需要実績値と前記需要予測値との類似度である需要類似度を計算し、
前記基準計画選択処理部が、前記需要類似度に基づき選択した1つの前記運用実績データにおける前記供給実績値の時系列データを基準計画データとし、
前記基準計画選択処理部が、前記基準計画データが前記需要予測値を満たせない場合、その過不足分を調整するために必要なコストを評価値として計算し、
前記近傍抽出処理部が、前記需要類似度に基づき選択した、前記基準計画データを含まない少なくとも1つの前記運用実績データにおける前記供給実績値の時系列データを少なくとも1つの近傍候補データとし、
前記近傍評価処理部が、前記近傍候補データが前記需要予測値を満たせない場合、その過不足分を調整するために必要なコストを評価値として計算し、
前記結果情報出力部が、前記基準計画データと前記近傍候補データのうち評価値が最大のデータを前記運用計画データとしてユーザに提供する、
エネルギー運用計画作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エネルギー運用計画の作成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、経済性の向上または温室効果ガスの排出量低減を目的として、効率的なエネルギー運用が求められている。その観点から、異なるエネルギー供給機器の組み合わせ、複数地域間でのエネルギー取引、またはデマンドレスポンス等の技術を活用する仕組みが構築されている。複数エネルギーの運用には、各エネルギー需要の予測値に対して供給機器を組み合わせてコスト最小となる計画を作成する技術が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-169930号公報
【文献】特開2011-130584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係る技術は、過去エネルギー需要実績、およびその変動要因実績を学習し、需要予測モデルを作成し、類似日を抽出し、将来の需要予測を行う。この技術は、過去実績を学習するが、需要予測に特化しており、運用計画に用いることはできない。
【0005】
特許文献2に係る技術は、再エネ発電の予測誤差を考慮した発電計画を作成する。
【0006】
しかし、何れの技術においても、エネルギー運用の過去実績が利用されていないため、エネルギー運用計画を高速に作成することが出来ない。
【0007】
本開示は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、エネルギー運用の過去実績を利用してエネルギー運用計画を高速に作成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のエネルギー運用計画作成システムは、異なる種類のエネルギーを供給する複数の対象機器の将来の計画対象期間における供給計画値の時系列データである運用計画データを作成する。本開示のエネルギー運用計画作成システムは、需要類似度計算処理部、基準計画選択処理部、近傍抽出処理部、近傍評価処理部、および結果情報出力部を備える。需要類似度計算処理部は、過去の複数の運用実績期間における各エネルギーの需要実績値および各対象機器による供給実績値の時系列データである複数の運用実績データと、計画対象期間における各エネルギーの需要予測値の時系列データである需要予測データとに基づき、各運用実績データにおける需要実績値と需要予測値との類似度である需要類似度を計算する。基準計画選択処理部は、需要類似度に基づき選択した1つの運用実績データにおける供給実績値の時系列データを基準計画データとし、基準計画データが需要予測値を満たせない場合、その過不足分を調整するために必要なコストを評価値として計算する。近傍抽出処理部は、需要類似度に基づき選択した、基準計画データを含まない少なくとも1つの運用実績データにおける供給実績値の時系列データを少なくとも1つの近傍候補データとする。近傍評価処理部は、近傍候補データが需要予測値を満たせない場合、その過不足分を調整するために必要なコストを評価値として計算する。結果情報出力部は、基準計画データと近傍候補データのうち評価値が最大のデータを運用計画データとしてユーザに提供するためエネルギー運用計画作成システムの外部に出力する。

【発明の効果】
【0009】
本開示のエネルギー運用計画作成システムによれば、過去の運用実績データにおける供給実績値の時系列データを用いて基準計画データおよび近傍候補データを作成し、これらのデータのうち評価値が最大のデータを運用計画データとするため、運用計画データを高速に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係るエネルギー運用計画作成装置のブロック図である。
図2】実施の形態1に係る運用計画作成処理のフローチャートである。
図3】機器情報データの例を示す図である。
図4】運用実績データの例を示す図である。
図5】需要予測データの例を示す図である。
図6】運用計画データの例を示す図である。
図7】実施の形態2に係るエネルギー運用計画作成装置のブロック図である。
図8】実施の形態2に係る運用計画作成処理のフローチャートである。
図9】基準計画の例を示す図である。
図10】類似計画案の例を示す図である。
図11】実施の形態3に係るエネルギー運用計画作成装置のブロック図である。
図12】実施の形態3に係る運用計画作成処理のフローチャートである。
図13】機器作業データの例を示す図である。
図14】作業類似度の算出イメージの例を示す図である。
図15】実施の形態4に係るエネルギー運用計画作成装置のブロック図である。
図16】実施の形態4に係る運用計画作成処理のフローチャートである。
図17】実施の形態5に係るエネルギー運用計画作成装置のブロック図である。
図18】実施の形態5に係る運用計画作成処理のフローチャートである。
図19】エネルギー運用計画作成装置のハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<A.実施の形態1>
<A-1.構成>
図1は実施の形態1に係るエネルギー運用計画作成システム1001を表すブロック図である。エネルギー運用計画作成システム1001は、エネルギー運用計画作成装置101およびデータ格納部19を備えて構成される。エネルギー運用計画作成装置101は、入力情報取得部1、需要類似度計算処理部2、基準計画選択処理部3、近傍抽出処理部4、近傍評価処理部5、および結果情報出力部6を備える。
【0012】
データ格納部19は、エネルギー運用計画作成装置101がエネルギー運用計画を作成するために必要な設定データ14を格納する。以下、エネルギー運用計画を端に「運用計画」とも称する。設定データ14は、機器情報データ11、運用実績データ12および需要予測データ13を少なくとも含む。
【0013】
入力情報取得部1は、データ格納部19から設定データ14を読み込む。
【0014】
需要類似度計算処理部2は、入力情報取得部1が読み込んだ設定データ14に基づき、運用実績データ12に含まれる需要実績データと需要予測データ13との需要類似度データ15を計算する。
【0015】
基準計画選択処理部3は、需要類似度データ15に基づき、最も需要類似度の高い運用実績データ12を選択し、基準計画データ16を作成する。
【0016】
近傍抽出処理部4は、需要類似度データ15に基づき、基準計画を除いて需要類似度の高い運用実績データを抽出し、近傍候補データ17を作成する。
【0017】
近傍評価処理部5は、基準計画データ16と近傍候補データ17とに基づき、近傍候補データが基準計画データを改善するか否かを評価する。
【0018】
結果情報出力部6は、最も評価の良い基準計画データ16、または近傍候補データ17を、運用計画データ18として出力する。運用計画データ18はデータ格納部19に格納される。
【0019】
<A-2.動作>
図2は、エネルギー運用計画作成装置101によるエネルギー運用計画作成処理のフローチャートである。以下、図2に沿って、エネルギー運用計画作成装置101によるエネルギー運用計画作成処理を説明する。
【0020】
まず、ステップS101において、入力情報取得部1が入力情報取得処理を実行する。本処理において、入力情報取得部1は入力情報として設定データ14を読み込む。ここで入力情報取得部1が読み込む設定データ14は、入力装置21から入力された設定データ14であってもよいし、補助記憶装置25上に保存されている設定データ14(例えばCSV形式で保存された電子ファイル)の中から入力装置21によって指定されたものであってもよいし、外部記憶装置27に保存されている設定データ14(例えばCSV形式で保存された電子ファイル)の中から入力装置21によって指定されたものであってもよい。入力情報取得部1は、外部記憶装置27に保存されている設定データ14をネットワーク26経由で読み込むことが可能である。入力情報取得部1が読み込んだ設定データ14は、主記憶装置24上に展開される。
【0021】
入力情報取得部1が入力情報取得処理で取得する設定データ14は機器情報データ11を含む。機器情報データ11は、エネルギー運用計画作成装置101が運用計画を作成する対象の機器の情報である。図3は機器情報データ11の一例を示している。機器情報データ11は、機器の名称、機器が供給するエネルギー(以下、「供給エネルギー」と称する)の種別、機器が消費するエネルギー(以下、「消費エネルギー」と称する)の種別、機器がエネルギーを供給するために消費するエネルギー量を表す特性(以下、「消費特性」と称する)等の情報を含む。その他、図3の機器情報データ11は、機器のエネルギー供給量の最大値および最小値を含んでいる。
【0022】
消費特性は、固定値で表されても良いし、多項式で表されてもよい。例えば、消費特性は、以下の式(1)のような供給エネルギーと消費エネルギーの関係式で表される。式(1)は、供給エネルギーを消費エネルギーの一次式で表したものである。
【0023】
【数1】
【0024】
なお、式(1)において、iは機器の個別番号、tは時間、xとyはエネルギーの識別番号、EneOutは供給エネルギー、EneInは消費エネルギー、aは計算に用いる係数をそれぞれ表している。xは供給エネルギーが複数の場合にその種別を識別するために用いられ、yは消費するエネルギーが複数の場合にその種別を識別するために用いられる。式(1)では、消費特性が一次式で表されたが、消費特性は二次式で表されてもよいし、多項式で表されてもよいし、複数の消費エネルギーが含まれてもよい。消費エネルギーは燃料でもよく、他の機器が生成する供給エネルギーでもよく、その熱量、品質、状態または温度によって係数が異なってもよい。
【0025】
入力情報取得部1が入力情報取得処理で取得する設定データ14は運用実績データ12を含む。運用実績データ12は、過去のエネルギー需要の値と機器の運転情報とを含む。図4に、運用実績データ12の一例を示す。図4において、運用実績データ12は、電力需要実績値、熱需要実績値、蒸気需要実績値、ガスタービン電力供給実績値、電力購入実績値、およびボイラ蒸気供給実績値を含む。電力需要実績値、熱需要実績値および蒸気需要実績値は、エネルギー種別毎かつ単位時間毎に記録された過去のエネルギー需要の実績値である。ガスタービン電力供給実績およびボイラ蒸気供給実績値は、機器毎かつ単位時間毎に記録された機器の運転情報であり、運転停止状態または運転時のエネルギー供給量の実績値である。機器の運転情報は、運転時のエネルギー消費量の値を含んでもよいし、運転時のCO2排出量の値を含んでいてもよい。
【0026】
入力情報取得部1が入力情報取得処理で取得する設定データ14は需要予測データ13を含む。需要予測データ13は将来のエネルギー需要の値を含む。図5に、需要予測データ13の一例を示す。図5において、需要予測データ13は、電力需要予測値、熱需要予測値、および蒸気需要予測値を含む。これらは、エネルギー種別毎、かつ単位時間毎のエネルギー需要の予測値である。
【0027】
次に、図2のステップS102において、需要類似度計算処理部2が需要類似度計算処理を実行する。需要類似度計算処理部2は、ステップS101により取得された運用実績データ12および需要予測データ13に基づき、運用実績値の需要予測値に対する類似度である需要類似度を計算することにより需要類似度データ15を作成する。需要類似度は、例えば以下の式(2)により求められる。式(2)は、需要類似度を、運用実績データ12に含まれる需要実績値の時系列データと需要予測データ13に含まれる需要予測値の時系列データとの、各時間における差の二乗和の平均の平方根によって表している。
【0028】
【数2】
【0029】
なお、式(2)では、例として1日を対象とする。day1は需要実績データ対象日、day2は需要予測対象日、DemSimは需要類似度、DemRecは需要実績値、DemForeは需要予測値、CNT_T_DAYは1日に含まれる需要の点数を表す。但し、需要類似度の表現は式(2)に限定しない。例えば、式(2)において右辺の分母は各時間における需要実績値の絶対値と需要予測値の絶対値の和でもよい。また、式(2)の右辺において平方根を求めず、単に各時間における差の二乗和の平均としてもよい。また、需要類似度の最大値が1.0となるように正規化した値を用いて需要類似度を計算してもよい。
【0030】
また、需要の点数は1日を対象としたときの1時間単位の24点の他、30分単位の48点でもよいし、2日を対象としたときの1時間単位の48点または30単位の96点でもよいし、1週間を対象としたときの1週間単位の168点または30分単位の336点でもよい。また、時系列データの時間間隔が1時間と4時間など、異なる時間単位を組み合わせた可変である場合は、1時間など最小の時間単位にあわせて時系列データを修正して需要類似度の計算に用いても良い。
【0031】
以下の説明では簡単化のため、運用実績データ12および需要予測データ13は1日24点のデータであるものとする。
【0032】
運用実績データ12が過去365日分のデータである場合、翌日1日の需要予測データ13に対して365個の需要類似度が計算される。なお、例えばユーザが気候の近い直近30日分の運用実績データ12を用いたい場合は、30個の需要類似度が計算されてもよい。また、計画対象の機器が100日前に更新された場合は、直近100日分の運用実績データ12を用いて100個の需要類似度が計算されてもよい。
【0033】
次に、図2のステップS103において、基準計画選択処理部3が基準計画選択処理を実行する。本処理において基準計画選択処理部3は、需要類似度データ15を参照し、最も需要類似度が大きい運用実績データ12における供給実績値の時系列データを、基準計画データ16として選択する。また、基準計画選択処理部3は、機器を運転するため、または需要を満たすために、外部から購入する燃料または電力等のエネルギー購入額を計算する。また、基準計画選択処理部3は、基準計画データ16に示された基準計画の内容で予測需要を満たせない場合、その過不足分について別途調整するために要するコストを計算する。これらの要素を用いて、基準計画選択処理部3は、以下の式(3)によって基準計画の評価値を計算する。
【0034】
【数3】
【0035】
式(3)において、EvalValは評価値、EneBuyは外部からのエネルギー購入量、EneTankaは外部からエネルギー購入時の単価、EneAdjは需要に対する過不足量、EneAdjTankaは過不足量を調整するために必要なエネルギーの単価を表す。基準計画によるエネルギー供給が需要に対して不足する場合、EneAdjは正の値をとり、過剰である場合、EneAdjは負の値をとる。エネルギー供給が過剰の場合、対処するために追加のコストを要する場合もあるが、エネルギーを販売して収入を得る場合もあるため、EneAdjTankaは正負双方の値を取り得る。エネルギー購入時の単価EneTankaは運用実績時の単価ではなく、需要予測が対象とする期間の単価である。
【0036】
次に、図2のステップS104において、近傍抽出処理部4が近傍抽出処理を実行する。本処理において近傍抽出処理部4は、需要類似度データ15を参照し、基準計画データ16と需要類似度が近い運用実績データ12における供給実績値の時系列データを、近傍候補データ17として選択する。例えば、近傍抽出処理部4は運用実績データ12を需要類似度の降順にソートし、基準計画データ16を含まない運用実績データ12を順に選択することによって、需要類似度の大きい順に運用実績データ12を選択し、近傍候補データ17を作成することができる。近傍候補データ17の数は1つでもよいし、ユーザが指定する個数でもよいし、ユーザが指定する比率を運用実績数に掛けた個数でもよい。
【0037】
次に、図2のステップS105において、近傍評価処理部5が近傍評価処理を実行する。本処理において、近傍評価処理部5は近傍候補データ17により示される近傍候補の評価値EvalValを計算し、近傍候補の評価値が基準計画の評価値より高い場合、すなわち近傍候補が基準計画を改善する場合には、近傍候補データ17を、計画対象期間における各対象機器の供給計画値を示す運用計画データ18とする。一方、近傍候補の評価値が基準計画の評価値以下である場合、近傍評価処理部5は基準計画データを運用計画データ18とする。なお、近傍候補が複数ある場合には、近傍評価処理部5はそれぞれの近傍候補に対して評価値を計算し、評価値が最も高い近傍候補を基準計画との比較対象とする。
【0038】
次に、図2のステップS106において、結果情報出力部6が結果情報出力処理を実行する。本処理において、結果情報出力部6は運用計画データ18を出力し、データ格納部19に格納する。また、結果情報出力部6は、基準計画を出力装置28に表示し、ユーザが基準計画を確認できるようにしてもよい。
【0039】
図6は、運用計画データ18の一例を示している。図6の運用計画データ18は、電力需要予測値、熱需要予測値、蒸気需要予測値、ガスタービン電力供給量、電力購入量、ボイラ蒸気供給量、電力過不足量、熱過不足量、および蒸気過不足量を含む。
【0040】
<A-3.効果>
実施の形態1に係るエネルギー運用計画作成システム1001は、複数の運用実績データ12と需要予測データ13とに基づき各運用実績データ12における需要実績値と需要予測値との類似度である需要類似度を計算する需要類似度計算処理部2と、需要類似度に基づき選択した1つの運用実績データ12における供給実績値の時系列データを基準計画データ16とし、基準計画データ16が需要予測値を満たすために必要なコストを評価値として計算する基準計画選択処理部3と、需要類似度に基づき選択した、基準計画データ16を含まない少なくとも1つの運用実績データ12における供給実績値の時系列データを少なくとも1つの近傍候補データ17とする近傍抽出処理部4と、近傍候補データ17が需要予測値を満たすために必要なコストを評価値として計算する近傍評価処理部5と、基準計画データ16と近傍候補データ17のうち評価値が最大のデータを運用計画データ18としてユーザに提供するためエネルギー運用計画作成システムの外部に出力する結果情報出力部6と、を備える。これにより、計画対象となる機器の複雑な特性に影響されず、エネルギー運用計画を高速に求めることが可能である。
【0041】
<B.実施の形態2>
<B-1.構成>
図7は実施の形態2に係るエネルギー運用計画作成システム1002を表すブロック図である。エネルギー運用計画作成システム1002は、エネルギー運用計画作成装置102およびデータ格納部19を備えて構成される。エネルギー運用計画作成装置102は、実施の形態1に係るエネルギー運用計画作成装置102の構成に加えて類似計画案作成処理部41を備えている。エネルギー運用計画作成装置102の大半はエネルギー運用計画作成装置101と同様であるため、以下では実施の形態1と重複する部分の説明は省略する。
【0042】
類似計画案作成処理部41は基準計画データ16を読み込み、基準計画データ16に対して、計画対象機器の運転時間の伸縮および出力の増減の少なくともいずれか一方を行うことによって、類似計画案データ42を作成する。類似計画案データ42は、少なくとも図4に示す運用実績データ12と同様の項目を含む。
【0043】
<B-2.動作>
図8は、エネルギー運用計画作成装置102によるエネルギー運用計画作成方法のフローチャートである。図8のフローチャートは、図2のフローチャートに対し、ステップS103の基準計画選択処理とステップS104の近傍抽出処理との間に、ステップS201の類似計画案作成処理を加えたものである。
【0044】
ステップS201において、類似計画案作成処理部41が類似計画案作成処理を実行する。類似計画案作成処理部41は、基準計画データ16を参照し、基準計画データ16に含まれる機器の運転停止状態の変更、およびエネルギー供給量の変更の少なくともいずれかを行うことにより類似計画案データ42を作成する。
【0045】
図9は基準計画データ16を例示し、図10図9の基準計画データ16を修正して作成された類似計画案データ42を例示している。類似計画案では、例えば機器が停止状態から運転状態になる時間を前倒しまたは後ろ倒しにすることで、機器の起動時間が変更され、運転状態から停止状態になる時間を後ろ倒しまたは前倒しにすることで、機器の停止時間が変更される。
【0046】
例えば、起動時間を前倒しにするか否かは、需要実績値と需要予測値の差から判断してもよい。運転実績において機器が時刻tに起動していた場合、類似計画案作成処理部41は、式(4)に示すように、需要予測増加量=(需要予測値)-(需要実績値)を時刻t-1および時刻tの夫々で算出し、時刻tよりも時刻t-1における需要予測増加量が大きい場合、時刻t-1に起動時間を前倒ししてもよい。
【0047】
【数4】
【0048】
なお、式(4)において、DemForeは需要予測値を表し、DemRecは需要実績値を表している。
【0049】
類似計画案作成処理部41は、需要実績値より需要予測値が大きい場合に、類似計画案においてエネルギー供給量を増加させ、需要実績値より需要予測値が小さい場合に、類似計画案においてエネルギー供給量を減少させることができる。類似計画案作成処理部41は、エネルギー供給量を増加させる場合、需要実績値と需要予測値の差分を増加量とし、当該差分だけエネルギー供給量を増加させると機器の供給上限を超過する場合には、供給上限までエネルギー供給量を増加させればよい。
【0050】
類似計画案の数は1つでも、ユーザが指定する個数でもよい。また、類似計画案作成処理部41は、ユーザが指定する個数を類似計画案の数の上限とし、式(4)に示されるような条件を満たす場合のみ類似計画案を作成してもよい。
【0051】
次に、図8のステップS104において、近傍抽出処理部4が近傍抽出処理を実行する。本処理において、近傍抽出処理部4は、基準計画データ16と需要類似度が近い運用実績データ12に加えて、類似計画案データ42も近傍候補データ17として選択する。
【0052】
次に、図8のステップS105において、近傍評価処理部5が近傍評価処理を実行する。本処理において、近傍評価処理部5は近傍候補の評価値EvalValを計算し、近傍候補の評価値が基準計画の評価値より高い場合、すなわち近傍候補が基準計画を改善する場合には、近傍候補データ17を運用計画データ18とする。類似計画案は、基準計画との間で需要実績値が同じであるが、機器の起動停止状態またはエネルギー供給量の一部が異なる。そのため、類似計画案から作成された近傍候補は、基準計画とは評価値が異なる。
【0053】
<B-3.効果>
実施の形態2に係るエネルギー運用計画作成システム1002は、実施の形態1に係るエネルギー運用計画作成システム1002の構成に加えて、類似計画案作成処理部41を備える。類似計画案作成処理部41は、基準計画データ16に対して、対象機器の運転時間の伸縮および対象機器の出力の増減の少なくともいずれか一方を行うことにより、類似計画案データ42を作成する。また、実施の形態2に係るエネルギー運用計画作成システム1002において、近傍抽出処理部4は、類似計画案データ42も近傍候補データ17として選択する。従って、エネルギー運用計画作成システム1002によれば、運用実績データ12に加えて運用実績データ12を修正した類似計画案データ42を含めた幅広い選択肢の中から評価の高い運用計画を選択することができる。
【0054】
<C.実施の形態3>
<C-1.構成>
図11は実施の形態3に係るエネルギー運用計画作成システム1003を表すブロック図である。エネルギー運用計画作成システム1003は、エネルギー運用計画作成装置103およびデータ格納部19を備える。エネルギー運用計画作成装置103は、実施の形態1に係るエネルギー運用計画作成装置103の構成に加えて作業類似度計算処理部62を備えている。また、実施の形態3において、設定データ14は、機器情報データ11、運用実績データ12および需要予測データ13に加えて機器作業データ61を含む。
【0055】
エネルギー運用計画作成装置103の大半はエネルギー運用計画作成装置101と同様であるため、以下では実施の形態1と重複する部分の説明は省略する。
【0056】
<C-2.動作>
図12は、エネルギー運用計画作成装置103によるエネルギー運用計画作成方法のフローチャートである。図12のフローチャートは、図2のフローチャートに対し、ステップS102の需要類似度計算処理とステップS103の基準計画選択処理との間に、ステップS301の類似計画案作成処理を加えたものである。
【0057】
まず、ステップS101において、実施の形態1と同様に、入力情報取得部1が入力情報取得処理を実行する。ここで、入力情報取得部1は、実施の形態1で説明した機器情報データ11、運用実績データ12および需要予測データ13に加えて、機器作業データ61を読み込む。
【0058】
図13は、機器作業データ61の一例を示している。機器作業データ61は、運用計画の対象となる機器の作業情報を含む。機器作業データ61は、例えば、機器の名称、作業開始日時、作業終了日時、作業期間における機器の出力条件(以下、「計画条件」と称する)、作業内容、作業者などの情報を含む。
【0059】
図12のステップS301において、作業類似度計算処理部62が作業類似度計算処理を実行する。本処理において、作業類似度計算処理部62は、機器作業データ61を参照し、計画対象期間と運用実績データ12の期間(以下、「運用実績期間」と称する)との間で機器作業の類似度(以下、「作業類似度」と称する)を算出し、作業類似度データ63を作成する。
【0060】
図14は、計画対象期間の作業と運用実績期間の作業との作業類似度の算出例を示している。図14の例では作業類似度の上限を1.0とする。また、同一機器の同一時間における作業有無が同一であるか否かが判定され、同一であれば作業類似度は低下しない。
【0061】
次に、図12のステップS103において、基準計画選択処理部3が基準計画選択処理を実行する。本処理において基準計画選択処理部3は、需要類似度データ15に加えて作業類似度データ63を参照し、需要類似度と作業類似度の大きい運用実績データ12における供給実績値の時系列データを基準計画データ16として選択する。本処理は、作業類似度が基準計画の選択条件に加わる点で実施の形態1と異なる。
【0062】
具体的には、基準計画選択処理部3は、需要類似度および作業類似度から総合類似度を算出し、総合類似度が最大となる運用実績データ12における供給実績値の時系列データを基準計画データ16として選択する。例えば、総合類似度は以下の式(5)によって表される。
【0063】
【数5】
【0064】
式(5)において、α,β,γは各項の重みづけ係数であり、0.0でもよい。あるいは、ユーザが需要類似度および作業類似度の基準値をそれぞれ指定し、基準計画選択処理部3は、需要類似度および作業類似度がそれぞれ基準値以上である運用実績データ12に対して、式(5)による総合類似度を算出してもよい。
【0065】
基準計画選択処理部3は基準計画データ16を選択した後、実施の形態1と同様に、基準計画の評価値を計算する。
【0066】
次に、図12のステップS104において、近傍抽出処理部4が近傍抽出処理を実行する。本処理において近傍抽出処理部4は、需要類似度データ15および作業類似度データ63を参照し、基準計画データ16と総合類似度が近い運用実績データ12における供給実績値の時系列データを近傍候補データ17を作成する。例えば、近傍抽出処理部4は運用実績データ12を総合類似度の降順にソートし、基準計画データ16以外の運用実績データ12を順に選択することによって、総合類似度の大きい順に運用実績データ12を近傍候補として選択することができる。
【0067】
図12のステップS105およびステップS106は、実施の形態1と同様である。
【0068】
<C-3.効果>
実施の形態3に係るエネルギー運用計画作成システム1003は、実施の形態1または実施の形態2に係るエネルギー運用計画作成システム1001,1002の構成に加えて作業類似度計算処理部62を備える。作業類似度計算処理部62は、対象機器の作業期間の情報および作業期間における対象機器の出力条件に関する情報を含む機器作業データ61に基づき、計画対象期間と運用実績期間との間で対象機器の作業の類似度である作業類似度を算出する。実施の形態3における基準計画選択処理部3は、需要類似度および作業類似度に基づき選択した1つの運用実績データ12における供給実績値の時系列データを基準計画データ16とする。実施の形態3における近傍抽出処理部4は、需要類似度および作業類似度に基づき選択した、基準計画データ16を含まない少なくとも1つの運用実績データ12における供給実績値の時系列データを少なくとも1つの近傍候補データ17とする。従って、エネルギー運用計画作成システム1003によれば、需要類似度に加えて作業類似度を考慮することにより、評価の高い運用計画を作成することができる。
【0069】
<D.実施の形態4>
<D-1.構成>
図15は実施の形態4に係るエネルギー運用計画作成システム1004を表すブロック図である。エネルギー運用計画作成システム1004は、エネルギー運用計画作成装置104とデータ格納部19とを備えて構成される。エネルギー運用計画作成装置104は、実施の形態1に係るエネルギー運用計画作成装置101の構成に加えて供給量再配分処理部81を備えている。供給量再配分処理部81以外のエネルギー運用計画作成装置104の構成は、基本的にエネルギー運用計画作成装置101と同様である。従って、以下では実施の形態1と重複する説明は省略する。
【0070】
供給量再配分処理部81は、基準計画データ16を参照し、予測需要にあわせて各機器の供給量を再計算する。
【0071】
<D-2.動作>
図16は、実施の形態4に係るエネルギー運用計画作成装置104で処理されるエネルギー運用計画作成方法のフロー図を示す。図16のフローチャートは、図2のフローチャートに対し、ステップS103の基準計画選択処理とステップS104の近傍抽出処理との間にステップS401の供給量再配分処理を加えたものである。
【0072】
ステップS401において、供給量再配分処理部81が供給量再配分処理を実行する。本処理において、供給量再配分処理部81は、需要予測データ13とステップS103で作成された基準計画データ16とを参照し、各機器の供給計画値の合計値と需要予測値との差が小さくなるように、基準計画データ16における各機器の供給計画値を更新する。例えば、供給量再配分処理部81は、予測需要と各機器の供給量の合計値との差異を最小化するように各機器の供給量を再計算する。ここで、再計算の目的関数は、例えば以下の式(6)のように、時刻毎に各エネルギーの予測需要と供給量の合計値との差の二乗を最小化すると表現できる。
【0073】
【数6】
【0074】
なお、δは、予測需要と供給量の合計値との差の、エネルギー毎の重みを表す。式(6)は連続変数の二次式で表されているため、例えば、二次計画法といった数理計画手法を用いて、予測需要と各機器の供給量の合計値との差異を最小化する各機器の供給量を再計算することができる。
【0075】
再配分の目的関数は、式(6)に表したような予測需要と供給量合計の差の最小化だけでなく、予測需要と供給量合計の差に過不足量EneAdjを調整するために必要なエネルギーの単価EneAdjTankaを乗じたコストの最小化でもよい。
【0076】
次に、図16のステップS104において、実施の形態1と同様に近傍抽出処理部4が近傍抽出処理を実行する。本処理において近傍抽出処理部4は、ステップS102で作成された需要類似度データ15を参照し、基準計画データ16の需要類似度に近い需要類似度を示す運用実績データ12を選択する。そして、近傍抽出処理部4は選択した運用実績データ12に対しても、ステップS401と同様の供給量再配分処理を実行した後、近傍候補として保存する。
【0077】
<D-3.効果>
実施の形態4に係るエネルギー運用計画作成システム1004は、実施の形態1から3のいずれかに係るエネルギー運用計画作成システム1001-1003の構成に加えて、供給量再配分処理部81を備える。供給量再配分処理部81は、需要予測値と基準計画データ16における対象機器の供給量の合計値との差が小さくなるように、基準計画データ16における対象機器の供給計画値を更新する。また、実施の形態4において、近傍抽出処理部4は、近傍候補データ17における対象機器の供給量の合計値との差が小さくなるように、近傍候補データ17における対象機器の供給計画値を更新する。これにより、エネルギー運用計画作成システム1004によれば、予測需要に対する誤差の小さいエネルギー運用計画を高速に求めることが可能である。
【0078】
<E.実施の形態5>
<E-1.構成>
図17は実施の形態5に係るエネルギー運用計画作成システム1005を表すブロック図である。エネルギー運用計画作成システム1005は、エネルギー運用計画作成装置105とデータ格納部19とを備えて構成される。エネルギー運用計画作成装置105は、実施の形態1に係るエネルギー運用計画作成装置101と比較すると、需要類似度計算処理部2の代わりに計画モデル作成処理部91を備え、基準計画選択処理部3の代わりに運用計画案作成処理部93を備え、近傍抽出処理部4および近傍評価処理部5を削除したものである。入力情報取得部1および結果情報出力部6について、エネルギー運用計画作成装置105の構成はエネルギー運用計画作成装置101と同様である。従って、以下では実施の形態1と重複する説明は省略する。
【0079】
計画モデル作成処理部91は設定データ14を読み込み、運用実績データ12から各機器の運転実績を学習し、計画モデルデータ92を作成する。計画モデルデータ92は、各エネルギーの需要予測値に対する各対象機器の供給計画値を定めたデータである。
【0080】
運用計画案作成処理部93は需要予測データ13と計画モデルデータ92とを読み込み、需要予測データ13による需要予測値に対応するものとして計画モデルデータ92で定められた各対象機器の供給計画値を運用計画案データ94として作成する。
【0081】
<E-2.動作>
図18は、実施の形態5に係るエネルギー運用計画作成装置105によるエネルギー運用計画作成方法のフローチャートである。図18のフローチャートは、図2のフローチャートに対し、ステップS102の需要類似度計算処理の代わりにステップS501の計画モデル作成処理を設け、ステップS103の基準計画選択処理の代わりにステップS502の運用計画案作成処理を設け、ステップS104の近似抽出処理とステップS105の近傍評価処理をなくしたものである。
【0082】
ステップS501において、計画モデル作成処理部91が計画モデル作成処理を実行する。本処理において、計画モデル作成処理部91は、例えば、機械学習を用いて、運用実績データ12を対象に需要実績と各機器のエネルギー供給量の関係を学習することにより、計画モデルを作成する。具体的には、計画モデル作成処理部91は、例えば運用実績データ12を教師データとして教師あり学習を行うことによって計画モデルを作成することができる。ここで、計画モデルを表すデータを計画モデルデータ92と称する。言い換えれば、計画モデル作成処理部91は、計画モデルデータ92を作成する。
【0083】
ここでは、運用実績データ12に含まれる需要実績とエネルギー供給量との関係を計画モデル作成処理部91が学習する例を挙げた。しかし、これに限らず、他にも実施の形態3で説明した機器作業データ61が設定データ14に含まれる場合には、機器作業データ61が学習対象に含まれてもよい。計画モデル作成処理は、運用計画作成のタイミングに実施する必要はなく、あらかじめ計画モデルを作成しておいてもよい。
【0084】
次に、ステップS502において、運用計画案作成処理部93が運用計画案作成処理を実行する。本処理において、運用計画案作成処理部93は、需要予測データ13と計画モデルデータ92とに基づき、予測需要に適した運用計画案データ94を作成する。本ステップでは、ステップS501において既に作成された計画モデルデータ92を用いることにより、運用計画案データ94の作成に係る時間が軽減される。
【0085】
次に、ステップS106において、結果情報出力部6が結果情報出力処理を実行する。本処理において結果情報出力部6は、運用計画案データ94を出力してデータ格納部19に運用計画データ18として格納する。
【0086】
<E-3.効果>
実施の形態5に係るエネルギー運用計画作成システム1005は、異なる種類のエネルギーを供給する複数の対象機器の将来の計画対象期間における供給計画値の時系列データである運用計画データ18を作成する。エネルギー運用計画作成システム1005は、計画モデル作成処理部91、運用計画案作成処理部93、および結果情報出力部6を備える。計画モデル作成処理部91は、過去の複数の運用実績期間における各エネルギーの需要実績値および各対象機器の供給実績値の時系列データである複数の運用実績データ12から各対象機器の運転実績を学習することにより、各エネルギーの需要予測値に対する各対象機器の供給計画値を定めた計画モデルデータ92を作成する。運用計画案作成処理部93は、計画対象期間における各エネルギーの需要予測値の時系列データである需要予測データ13と計画モデルデータ92とに基づき、運用計画データ18を作成する。結果情報出力部6は、運用計画データ18をユーザに提供するためエネルギー運用計画作成システム1005の外部に出力する。以上の構成により、エネルギー運用計画作成システム1005は、運用実績と異なる需要予測に合わせた機器の運用計画を求めることができる。また、計画モデルデータ92は事前に作成しておくことができるため、運用計画データ18の作成時には運用計画案作成処理のみを実施すればよく、高速な運用計画作成が可能である。
【0087】
<F.ハードウェア構成>
図19は、実施の形態1-5に係るエネルギー運用計画作成システム1001-1005のハードウェア構成の一例を示している。エネルギー運用計画作成システム1001-1005は、入力装置21、コンピュータ22、外部記憶装置27、および出力装置28によって構成される。入力装置21は、例えばキーボードおよびマウスである。コンピュータ22は、CPU23、主記憶装置24および補助記憶装置25から構成されている。出力装置28は、例えば液晶ディスプレイなどの表示装置であり、コンピュータ22からの出力結果を表示する。
【0088】
入力情報取得部1は、ユーザがデータ入力を行うためのものであり、入力装置21により実現される。データ格納部19は、設定データ14および評価結果データを保管するためのものであり、例えば主記憶装置24、補助記憶装置25、ネットワーク26および外部記憶装置27のいずれか、または複数を組み合わせて実現される。
【0089】
需要類似度計算処理部2、基準計画選択処理部3、近傍抽出処理部4、近傍評価処理部5、類似計画案作成処理部41、作業類似度計算処理部62、供給量再配分処理部81、計画モデル作成処理部91、および運用計画案作成処理部93(以下、「処理部等」と称する)は、コンピュータ22の内部演算処理としてCPU23および主記憶装置24により実現される。すなわち、処理部等における各処理は、メモリである主記憶装置24上に展開されたプログラムをプロセッサであるCPU23が実行することによって実現される。CPU23は、主記憶装置24上のデータを読み込み、各処理を行い、その結果を主記憶装置24に格納する。
【0090】
結果情報出力部6は、例えば運用計画データ18をユーザが確認するため、運用計画データ18を出力装置28に表示する機能を有する。また、結果情報出力部6は、運用計画データ18を保管するため、運用計画データ18を補助記憶装置25に格納する機能を有する。また、結果情報出力部6は、ネットワーク26を経由して運用計画データ18を外部記憶装置27に格納してもよい。
【0091】
なお、エネルギー運用計画作成システム1001-1005は、図19のようなハードウェアで実現されていてもよいし、エネルギー運用計画作成システム1001-1005の各機能をコンピュータで具現化するプログラムなどのソフトウェア、もしくは当該ソフトウェアを記録した記録媒体として実現されていてもよい。記録媒体は、例えばハードディスク、光ディスク、光磁気ディスクなど、どのようなものでもよい。
【0092】
なお、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 入力情報取得部、2 需要類似度計算処理部、3 基準計画選択処理部、4 近傍抽出処理部、5 近傍評価処理部、6 結果情報出力部、11 機器情報データ、12 運用実績データ、13 需要予測データ、14 設定データ、18 運用計画データ、19 データ格納部、21 入力装置、22 コンピュータ、23 CPU、24 主記憶装置、25 補助記憶装置、26 ネットワーク、27 外部記憶装置、28 出力装置、101-105 エネルギー運用計画作成装置、1001-1005 エネルギー運用計画作成システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19