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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】配管系統および安全装置
(51)【国際特許分類】
   F17D 5/00 20060101AFI20250214BHJP
   G05B 9/02 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
F17D5/00
G05B9/02 Z
G05B9/02 J
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022204066
(22)【出願日】2022-12-21
(65)【公開番号】P2024088979
(43)【公開日】2024-07-03
【審査請求日】2024-10-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004347
【氏名又は名称】弁理士法人大場国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】油井 杉彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 寛幸
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109519715(CN,A)
【文献】特開2005-194688(JP,A)
【文献】中国実用新案第206555546(CN,U)
【文献】韓国登録特許第10-1667985(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0277007(US,A1)
【文献】米国特許第05678864(US,A)
【文献】韓国登録特許第10-1626418(KR,B1)
【文献】中国実用新案第216046933(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L
F17D
G05B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れてく上流側配管と、前記流体が流れていく下流側配管と、
前記上流側配管と前記下流側配管の途上に設けられ、メンテナンス用の開口が設けられる筐体と、前記筐体の前記開口を開閉可能な蓋と、を有する配管機器と、
前記蓋と前記筐体との機械的な固定を担い、前記固定および前記固定の解除を行う操作部を有する固定体と、
前記操作部への操作を妨げるロック状態と前記操作を許可するロック解除状態とが選択される安全装置と、を備え、
前記安全装置は、
電力の供給を受けないと前記ロック状態を維持し、前記電力の供給を受けると前記ロック解除状態となるスイッチと、
前記ロック状態において、前記スイッチと機械的に接続され、前記操作部を覆い隠し、
かつ、前記ロック解除状態において、前記スイッチとの機械的な接続が解かれる遮蔽体と、を備える配管系統。
【請求項2】
前記安全装置は、
前記上流側配管および前記下流側配管の一方または双方の途上に設けられる前記流体の状態を計測する計測器と、
前記計測器における計測値に基づいて、前記スイッチに対して前記ロック状態から前記ロック解除状態への移行を指示するコントローラと、を備える、請求項1に記載の配管系統。
【請求項3】
前記安全装置は、
前記流体の異なる状態を計測する複数種類の前記計測器を備え、
前記コントローラは、複数種類の前記計測器のそれぞれの前記計測値に基づいて前記ロック状態から前記ロック解除状態への移行を指示する、請求項2に記載の配管系統。
【請求項4】
前記計測器は、少なくとも圧力計を含む、
請求項3に記載の配管系統。
【請求項5】
前記スイッチは、
前記電力の供給を受けて前記ロック状態から前記ロック解除状態へ動作する駆動源と、
前記ロック状態において、前記駆動源と機械的接続がなされ、かつ、前記ロック解除状
態において、前記駆動源との前記機械的接続が解かれるロック体と、を備える請求項1に記載の配管系統。
【請求項6】
前記駆動源は、
前記電力の供給を受けて磁界を発生させるソレノイドを備え、
前記ソレノイドが前記磁界を発生させると、前記ロック体と前記駆動源との前記機械的接続が解かれる、請求項5に記載の配管系統。
【請求項7】
前記固定体は、前記筐体を取り囲んで締結する締結バンドであり、
前記操作部は、前記締結バンドを締め付ける螺子である、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の配管系統。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱水などが流れる配管系統において、メンテナンス(保守点検)が必要な部位を操作できないよう保護する機能を有する配管系統に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、飲料の製造設備に設けられる配管系統には、飲料が流れる他に、製造設備を構成する機器類を洗浄するための洗浄液、薬品液、熱水などの危険性を伴う液体が流れることがある。また、この種の配管系統においては、メンテナンスを行うときに、必要な部位を開く。配管系統には、異物を補足するストレーナがその途上に設けられていることがある。このストレーナは、筐体の内部に網目状のスクリーンを備えており、このスクリーンで補足された異物はメンテナンス時に取り除かれる。そのためにはストレーナの蓋を取り外す必要があるが、ストレーナの前後の配管系統には前述した危険性を伴う液体が流れていたことがあり、当該液体がストレーナの前後に滞留していないか作業者が事前に安全性を確認してからストレーナのメンテナンスが行われる。ここではストレーナを例にして説明したが、ストレーナに限らず、配管系統においてメンテナンスが行われる配管機器の部位において、安全性を事前に確認する。
【0003】
例えば特許文献1は、温度および圧力が所定値を超えているときには、蓋の開放を禁止するロック機構を設けることを開示する。より具体的には、蓋に設けられた金属製の板とこの板に対向するように配置される電磁石とからなる電磁ロックが提案されている。この電場ロック機構において、温度等が所定値を超えているときには、通電される電磁石が磁力を発生させることにより鉄板を磁気的に吸引することで、蓋が開くのを禁止する。温度等が所定値以下のときには、電磁石への通電を止めることで、蓋が開くのを許可する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-238237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引用文献1において、電磁石が磁力を発生させていれば磁気吸引力により蓋が開くのを一応は禁止することはできる。しかし、蓋などの開閉可能部位に人が接触することができれば、磁気吸引力などによるロックがかかっていたとしても、開閉可能部位が開く可能性を否定することはできない。
以上より、本開示は、開閉可能部位が開く可能性をより低減できる安全装置および安全装置を備える配管系統を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る配管系統は、流体が流れる配管と、配管の途上に設けられ、開閉可能部位を有する配管機器と、開閉可能部位と配管機器との機械的な固定を担い、固定および固定の解除を行う操作部を有する固定体と、操作部への操作を妨げるロック状態と操作を許容するロック解除状態とが選択される安全装置と、を備える。
安全装置は、電力の供給を受けないとロック状態を維持し、電力の供給を受けるとロック解除状態となるスイッチと、ロック状態において、スイッチと機械的に接続され、操作部を覆い隠し、かつ、ロック解除状態において、遮蔽体のスイッチとの機械的な接続が解かれる遮蔽体と、を備える。
【0007】
本開示に係る安全装置は、操作部への操作を妨げるロック状態と操作を許容するロック解除状態とが選択される。
安全装置は、電力の供給を受けないロック状態と、電力の供給を受けロック解除状態となるスイッチと、ロック状態において、スイッチと機械的に接続され、操作部を覆い隠し、かつ、ロック解除状態において、スイッチとの機械的な接続が解かれる遮蔽体と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の安全装置によれば、スイッチと機械的に接続される遮蔽体が、操作部を覆い隠すので、開閉可能部位が開く可能性をより低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る配管系統を示す側面図である。
図2図1の配管系統の要部を示す側面図である。
図3図2のA矢視図およびB-B矢視図である。
図4】安全装置におけるロック状態[LOCK]とロック解除状態[FREE]を示す図である。
図5】スイッチにおけるロック状態[LOCK]とロック解除状態[FREE]を示す図である。
図6】複数種類の計測器を備える配管系統におけるストレーナのメンテナンスの好ましい手順を示すフロー図である。
図7】ガスフィルタを備える配管系統の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、実施形態に係る配管系統1について説明する。この配管系統1は、一例として、その途上にストレーナ10を備えるとともに、ストレーナ10の蓋15が開くのを阻止するロック機能を備える安全装置30を備える。安全装置30は、電源が落ちたりしても蓋15がロックされ続ける機能(第1機能)を備えるのに加えて、ロック状態においてストレーナ10の蓋15を開くための蝶螺子17Dを操作することを妨げる機能(第2機能)を備える。安全装置30がこの2つの機能を備える。
【0011】
[配管系統1の構成:図1図2
配管系統1は、図1および図2に示すように、一例として、ストレーナ10を境にして、上流側配管2と下流側配管3を備える。上流側配管2は、液体Lを貯留するタンク4に繋がっており、タンク4に貯留される液体Lは上流側配管2、ストレーナ10および下流側配管3の順に流れる。このように、上流側配管2、下流側配管3における「上流」、「下流」は、液体Lが流れる向きを基準にして特定される。ただし、「上流」、「下流」は、相対的な意味を有しており、例えばストレーナ10は上流側配管2よりも下流に位置されるが、下流側配管3よりもストレーナ10は上流に位置される。下流側配管3は図示されているよりもさらに下流に連なるが、ここでの説明は省略される。
配管系統1は、例えば、薬液、熱水などの人が接すると危険を伴うことがある液体Lが流れることもある。これらの液体Lは圧力が付与された状態で配管系統1に存在していることがあり、圧力がある状態のままで過誤により蓋15が開けられると、液体Lが噴き出す。安全装置30は一例としてこのような事象を阻止するために設けられる。
【0012】
[ストレーナ10:図2図3
ストレーナ10は、上流側配管2から流れる液体Lから異物を取り除いて下流側配管3に向けて流す。
ストレーナ10は、図2および図3に示すように、一例として円筒状の筐体11と、筐体11の内部に仕込まれる円筒状のふるい(篩)13と、筐体11の上流Uの開口を閉じる蓋15と、蓋15と筐体11とを互いに固定する締結体17と、を備える。また、ストレーナ10を構成する上記の各要素は、一例としてステンレス鋼などの耐食性の優れた金属材料により構成される。ストレーナ10は本開示の配管機器の一例であり、また、蓋15は本開示の開閉可能部位の一例である。
【0013】
筐体11は、図2に示すように、筐体本体11Aと、筐体本体11Aの一方の端部の側に設けられ上流側配管2が接続される上流接続端11Bと、筐体本体11Aの他方の端部に設けられ下流側配管3が接続される下流接続端11Cと、を備える。上流接続端11Bは筐体本体11Aの側面に筐体本体11Aの中心軸Cと直交するように受けられており、下流接続端11Cはその中心軸が中心軸Cと一致するように形成される。ストレーナ10はL型ストレーナと称される部材であるが、本開示において他のタイプのストレーナを用いることができる。
【0014】
また、筐体11は、図3に示すように、蓋15が取り付けられる開口11Dを備える。液体Lがストレーナ10を通過し異物を取り除く際には開口11Dは蓋15で封止されるが、メンテナンス時には蓋15が取り外されるとともにふるい13が筐体本体11Aから抜き取られる。こうして、空隙となった筐体本体11Aの内部が清掃され、かつ、ふるい13にかかった異物が取り除かれるとともに清掃される。清掃されたふるい13が筐体本体11Aの内部の所定位置に配置されると、蓋15が締められる。
【0015】
ふるい13には、例えばステンレス鋼線などの金属線を格子状に編んだ金属メッシュ、樹脂製のメッシュクロスなどが適用される。本開示において、ふるい13の目開きは任意であり、捕捉したい異物のサイズに準拠させればよい。
【0016】
蓋15は、開口11Dに嵌合される蓋本体15Aと、蓋本体15Aに接続される、蓋本体15Aを開口11Dから抜き取るときに操作されるT字状のハンドル15Bと、を備える。蓋本体15Aは締結体17による蓋本体15Aと筐体11との機械的な締結(固定)が解かれると、ハンドル15Bを上流(U)に向けて引っ張ることにより、蓋本体15Aを開口11Dから抜き取ることができる。
【0017】
締結体17は、機械的なロック機構であり、サニタリ接手、サニタリ・クランプ・バンドなどと称される。締結体17は、図3に示されるように、一例として三つのバンド要素17A,17B,17Cを備える。三つのバンド要素17A,17B,17Cが筐体本体11Aを取り囲み、かつ、バンド要素17Aとバンド要素17Bとが蝶螺子17Dを締め付けることにより締結される。蝶螺子17Dを緩めると、バンド要素17Aとバンド要素17Bとの締結が解かれることで、蓋15を抜き取ることができる。このように締結体17は蝶螺子17Dの締め付けるまたは緩めることにより、蓋15と筐体11と機械的なロック維持およびロック解除がなされる。ただし、特定の条件を満たさない限り、安全装置30により蝶螺子17Dの操作ができないようにされる。締結体17は本開示の固定体の一例であり、蝶螺子17Dは本開示における操作部の一例である。以下、安全装置30について説明する。なお、蓋本体15Aと筐体11との機械的な固定ができるのであれば、他の固定手段を用いることもできる。
【0018】
[安全装置30:図1図2図3図4
安全装置30は、図2に示されるように、筐体11の所定位置に支持されるスイッチ31と、スイッチ31の状態(ロック状態またはロック解除状態)に応じて蝶螺子17Dへの操作を妨げるロック状態にするかまたは操作を許可するロック解除状態にする遮蔽体32と、を備える。また、安全装置30は、上流側配管2の内部の圧力を計測する圧力計37と、圧力計37からの圧力計測結果を取得し、かつ、この圧力計測結果に基づいてスイッチ31に指示を送るコントローラ50を備える。
【0019】
スイッチ31は、スイッチ本体31Aと、スイッチ本体31Aに対して挿抜されるロック体31Bを備え、ロック状態とロック解除状態の二つの状態が選択的に得られる。スイッチ31は、一例としてソレノイド・ロック型のスイッチが用いられる。ソレノイド・ロック型のスイッチの一例について、基本的な動作について図4を参照して説明する。
【0020】
スイッチ本体31Aは、ソレノイド31A1と、ソレノイド31A1の内側空隙に配置されるロッド31A2と、ソレノイド31A1とロッド31A2との間に設けられる圧縮コイルばね31A3と、ロッド31A2が関わるカム31A4と、を備える。
【0021】
ロック状態においては、ソレノイド31A1には電力が供給されず、ソレノイド31A1から磁力は発生しない。したがって、ロッド31A2は圧縮コイルばね31A3の弾性力によりカム31A4のカム溝に嵌り込むことでカム31A4の回転が拘束される。そうすると、ロック体31Bのスイッチ本体31Aからの引き抜きが不能とされ、スイッチ31はロック状態とされる。このとき、スイッチ31と遮蔽体32は機械的に接続されている。
ロック解除状態においては、ソレノイド31A1に電力が供給される。ソレノイド31A1の励磁により生じる磁力が圧縮コイルばね31A3の弾性力を上回り、圧縮コイルばね31A3が縮み、ロッド31A2がカム31A4から離脱する側に移動することでカム31A4の回転が可能とされる。そうすると、図4に矢印で示されるように、ロック体31Bのスイッチ本体31Aからの引き抜きが可能とされ、スイッチ31はロック解除状態とされる。このとき、スイッチ31と遮蔽体32の機械的な接続が解かれる。
【0022】
スイッチ31の二つの状態に対応する遮蔽体32の動作について図5を参照して説明する。ロック状態は図5の[LOCK]に示され、ロック解除状態は図5の[FREE]に示されている。スイッチ31は、特定の電気的指令を受けない限り、ロック解除状態に移行しないでロック状態に留まる構成とされており、ロック状態において仮に電源が落ちたとしても、そのままロック状態を維持できる。ロック状態からロック解除状態への移行のための電気的指令は、圧力計37の計測結果に基づいてコントローラ50から発せられる。ロック解除状態においては、スイッチ本体31Aからロック体31Bを抜き取ることができるので、取手35を掴んで遮蔽体32を移動させるとロック体31Bはスイッチ本体31Aから離脱される。これで、蝶螺子17Dへの操作が許可される。
【0023】
遮蔽体32は、一例として二つの部材からなる。
遮蔽体32は、図3および図5に示すように、ロック体31Bを介してスイッチ31と機械的に接続される接続体33と、接続体33がロック位置にあるときに締結体17の少なくとも蝶螺子17Dを覆うカバー36と、を備える。接続体33とカバー36は別体として作製されるが、その後に溶接などの手段により一体化してもよいし、別体のままとして用いてもよい。
接続体33は、ロック位置においてカバー36の移動を拘束する拘束片34と、拘束片34に取り付けられる取手35と、を備える。
【0024】
拘束片34は、縦断面がL字状をなす例えば金属製の板材から構成され、一端側がスイッチ31のロック体31Bに着脱可能に支持される支持部34Aと、支持部34Aの他端側から垂れ下がる抑え部34Bと、を備える。支持部34Aはロック体31Bに支持された状態で水平方向Hに沿い、抑え部34Bは鉛直方向Vに沿う。抑え部34Bはカバー36に接しているため、カバー36を当該位置から取り外すことはできない、
【0025】
カバー36は、図2および図3に示すように、半円状の第1壁36Aと、第1壁36Aと対向して設けられる馬蹄形の第2壁36Bと、を備える。第1壁36Aには、ハンドル15Bがカバー36を貫通して外部に露出するための切り込み36A1が形成されている。第1壁36Aと第2壁36Bは、U字状をなす第3壁36Cによりそれぞれの外周縁を接続される。カバー36において、第1壁36A、第2壁36Bおよび第3壁36Cで取り囲まれる空隙に締結体17の特に蝶螺子17Dが収容される。
【0026】
スイッチ31のロック体31Bがロック状態にあることで、遮蔽体32がロック位置にあれば、カバー36によって蝶螺子17Dが覆い隠されている。したがって、配管系統1を担当する作業員であっても蝶螺子17Dを操作することができない。ロック体31Bがロック状態にあるかロック解除状態にあるかは、コントローラ50からの指示による。つまり、コントローラ50からの指示がない限りロック体31Bはロック状態に留まり、コントローラ50からの指示があるとロック体31Bはロック解除状態に移行する。
【0027】
コントローラ50は、図1に示すように、圧力計37で計測される圧力である計測圧力値Pvを取得し、取得した計測圧力値Pvがロック体31Bをそのままロック状態に留めるべきかロック解除状態に移行させるべきかの判定を行う。コントローラ50は、この判定を行うために基準圧力値Psを保持し、圧力計37から取得する計測圧力値Pvを基準圧力値Psと比較する。コントローラ50は、圧力計37からの計測圧力値Pvを時間的に連続して取得することもできるし、時間的に断続的に取得することもできる。基準圧力値Psは、0MPaとしてもよい。
【0028】
コントローラ50は、当該比較の結果、計測圧力値Pvが基準圧力値Psを超えていれば、圧力計37が設けられる上流側配管2を液体Lが流れており、ロック体31Bはそのままロック状態に留めておくべきと判定(ロック状態判定)する。コントローラ50は、取得する計測圧力値Pvが基準圧力値Psと等しいか基準圧力値Psよりも低ければ、圧力計37が設けられる上流側配管2に液体Lが流れていないか流れていても微量であり、ロック体31Bをロック解除状態に移動させてもよいと判定する(ロック解除状態判定)。このロック解除状態判定は、スイッチ31の動作に反映される。つまり、スイッチ31に対してロック体31Bをロック解除状態に移行するように指令する。
【0029】
スイッチ31がロック解除状態への移行指令、つまりソレノイド31A1への電力供給がなされると、図5の[LOCK]から図5の[FREE]に示すように、それまでカバー36を抑えていた遮蔽体32をカバー36から離れるように移動させることができる。これで、カバー36を取り外してから、蝶螺子17Dを緩めることで締結体17による筐体11と蓋15の締結を解くことができる。そうすれば、筐体11の内部のふるい13を抜き取って異物を取り除くなどのメンテナンスを行うことができる。遮蔽体32とカバー36が一体をなしていれば、遮蔽体32とカバー36を一緒に移動させることができる。
【0030】
[配管系統1が奏する効果]
配管系統1は以上説明した安全装置30を備えるので、以下の効果を奏する。
安全装置30によれば、蝶螺子17Dがカバー36で覆われており、作業者がそもそも蝶螺子17Dに触れることができないため、過誤により作業者が蓋15を抜き取ることもできない。そのカバー36は移動させることができないないようにロック位置にある接続体33で押さえつけられているので、相当に意図的でなければ蝶螺子17Dに触れることができない。したがって、安全装置30によれば、開閉可能部位としての蓋15が開く可能性をより低減できる。
【0031】
安全装置30のスイッチ31は、電源が落ちたとしてもスイッチ31がロック状態を維持し、操作部としての蝶螺子17Dは遮蔽体32のカバー36で覆われたままなので、作作業者は、蓋15を取り外すことができない。したがって、安全装置30によれば、電源が落ちたとしてもその機能を維持し続けることができる。
【0032】
安全装置30によれば、コントローラ50が計測圧力値Pvに基づいて配管系統1は安全だと判定してからスイッチ31をロック状態からロック解除状態へ移行させるので、蓋15を取り外したとしても作業者の安全が確保される。
また、コントローラ50によりロック状態またはロック解除状態を確認、判定することによって、蓋15が開いた状態やメンテナンス中に、熱水や薬剤が漏れ出ないようにすることができる。
【0033】
上記以外にも、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
[スイッチの駆動源]
例えば、安全装置30においては、好ましい形態として、スイッチ31のロッド31A2を移動させる駆動源としてソレノイド31A1と圧縮コイルばね31A3を用いる例を示したが、本開示はこれに限られない。他の駆動源、例えばピストン・シリンダ機構を備える流体圧アクチュエータ、直動電動機からなる電動アクチュエータなどを用いることができる。これらの駆動源であっても、接続体33をロック状態とロック解除状態の間を往復移動させることができる。
【0034】
[計測器の種類]
また、好ましい形態として、安全装置30における液体Lの状態を計測する機器として圧力計37を用いる例を説明したが、本開示における計測器は圧力計37に限らない。例えば、濃度計38、温度計39、レベル計41、導電率計などの各種の計測器を用いることができる。各種計測器は、配管系統1において流される液体Lに応じて単数または複数種類が選択される。図1に濃度計38、温度計39、レベル計41の配置例を符号にて示している。
【0035】
濃度計38による計測される上流側配管2または下流側配管3を流れる液体Lの特定成分の濃度が閾値以下であることをコントローラ50が取得すれば、コントローラ50はスイッチ31の状態をロック状態からロック解除状態へと移行するように指令することができる。つまり、濃度計による計測結果によって、作業者にとって液体Lの種類が安全である例えば水であることを判断できる。液体Lの種類は、他に導電率計を用いても判断できる。
【0036】
温度計39により計測される上流側配管2または下流側配管3を流れる液体Lの温度が閾値以下であることをコントローラ50が取得すれば、コントローラ50はスイッチ31の状態をロック状態からロック解除状態へ移行するように指令することができる。つまり、温度計39による計測結果によって、作業者にとって液体Lの温度が安全であるか否かを判断できる。
【0037】
レベル計41により計測される上流側配管2または下流側配管3を流れる液体Lの液面が閾値以下であることをコントローラ50が取得すれば、コントローラ50はスイッチ31の状態をロック状態からロック解除状態へ移行するように指令することができる。つまり、レベル計41による計測結果によって、作業者にとって液体Lの量が安全であるか否かを判断できる。
【0038】
以上のように複数種類の計測器を備える場合において、ストレーナ10のメンテナンスする際の手順の一例について図6を参照して説明する。なお、前提として配管系統1を流れる液体Lを圧送するポンプ(図示省略)が駆動しているものとするが、ストレーナ10のメンテナンスはこのポンプが停止することを前提とする。また、以下に登場する計測器および機器は、コントローラ50と接続され、コントローラ50はそれぞれの計測器からの計測結果に関する情報および機器の状態に関する情報を取得して、対応する機器の動作を制御する。
【0039】
[ポンプの停止要否:S101,S102]
ポンプを停止するか否かは、例えば下流側配管3に設けられる濃度計38による濃度確認によって判定され(図6 S101)、濃度が低ければポンプが停止される(図6 S102)。ストレーナ10に限らず配管系統1のメンテナンスは、ポンプが停止されている状態で行われる。ポンプが停止されたことの情報(ポンプ情報)はコントローラ50に提供される。
【0040】
[バルブ開閉確認:S103]
次に、配管系統1に設けられる例えばドレンバルブなどの各種バルブの開閉状態を、それぞれのバルブに対応して設けられる検知器により確認する。この開閉状態は、メンテナンスを行うのに必要な状態である。例えば、ドレンバルブであれば、配管系統1に残る液体Lを系外に排出させるために開く必要がある。逆に、液体Lの供給元となるタンク4に付随するバルブは閉じる必要がある。以上のように、バルブ開閉確認において開と閉のそれぞれが確認される。各種バルブがメンテナンスを行うのに必要な状態であることの情報(バルブ情報)はコントローラ50に提供される。
【0041】
[温度確認:S104]
コントローラ50は、バルブ情報を取得すると、次に、温度計39で液体Lの温度確認がなされる。
この確認は、温度計39による液体Lの計測温度値Tvが基準温度値Ts以下であるか否かで行われる。計測温度値Tv≦基準温度値Tsであることの情報(温度情報)はコントローラ50に提供される。
【0042】
[圧力確認:S105]
コントローラ50は、温度情報を取得すると、次に、圧力計37で液体Lの圧力確認がなされる。
この確認は、圧力計37による液体Lの計測圧力値Pvが基準圧力値Ps以下であるか否かで行われる。計測圧力値Pv≦基準圧力値Psであることの情報(圧力情報)はコントローラ50に提供される。
【0043】
[残液確認:S106]
コントローラ50は、圧力情報を取得すると、レベル計41で配管系統1における液体Lの液位の確認がなされる。
この確認は、レベル計41による液体Lの計測液面値Svが基準液面値Ss以下であるか否かで行われる。計測液面値Sv≦基準液面値Ssであることの情報(液面情報)はコントローラ50に提供される。
【0044】
[スイッチ ロック解除:S107]
コントローラ50は、バルブ情報、温度情報、圧力情報および液面情報を順に取得すると、それまでロック状態にあるスイッチ31のスイッチ本体31Aのソレノイド31A1に対して電力が供給されるように指示する。これで、スイッチ31はロック解除状態になる。
【0045】
[遮蔽体32 締結体17 取り外し:S108,S109]
スイッチ31がロック解除状態になれば、遮蔽体32を取り外す。これで、締結体17の蝶螺子17Dを操作できるようになるので、蝶螺子17Dを緩めて締結体17を筐体11と蓋15から取り外す。
【0046】
[ストレーナ10の取り外し/メンテナンス:S110]
蓋15が取り外されたなら、筐体11からふるい13を抜き取り、ふるい13および筐体11の内部のメンテナンスを行う。
【0047】
以上ではバルブ情報、温度情報、圧力情報および液面情報の4つの情報をコントローラ50が確認することを条件としているが、本開示はこれに限らない。例えば、4つの情報において、先行する判定に条件を満足しなければ後続の判定が行われないルールにすれば、4つめの液面情報だけを判断したことに基づいて、スイッチ31をロック解除状態にしてもよい。
【0048】
[安全装置30の他の適用対象:図7
配管系統1における開放機器として液体Lから異物を取り除くストレーナ10を例示したが、本開示における安全装置30の適用対象はこれに限らない。配管系統において、機械的なロック機構を備える種々の機械的な要素を適用対象にできる。
図7に示される配管系統5は気体Gが上流Uから下流Dに向けて流れる。図示される範囲において、配管系統5は2つのガスフィルタ20A,20Bを備える。ガスフィルタ20Aには上流側配管2Aおよび下流側配管3Aが接続され、ガスフィルタ20Bには上流側配管2Bおよび下流側配管3Bが接続される。ガスフィルタ20A,20Bのそれぞれは、ストレーナ10と同様に筐体21と、筐体21の内部に収容されるふるい23と、筐体21の開口を塞ぐ蓋25と、備える。また、筐体21と蓋25はバンド要素17A,17Bなどを備える締結体17により締結される。例えば、筐体21の下端部が蓋25の外周面に囲い、かつ、締結体17が筐体21の下端部を締め付けることにより、両者を締結する。この締結には、蝶螺子17Dが関わるのは配管系統1と同じである。図7にはガスフィルタ20Bについて筐体21、ふるい23および蓋25などが示されているが、ガスフィルタ20Aも同様の要素を備えている。また、ここでは気体用のガスフィルタ20A,20Bを例示するが、流体用、スチーム用などのフィルタについて本開示を適用できる。
【0049】
配管系統5は、2つのガスフィルタ20A,20Bのそれぞれに対応して安全装置30A,30Bが設けられている。つまり、締結体17の特に蝶螺子17Dがカバー36で覆われており、かつ、蝶螺子17Dがカバー36で覆われるロック状態はスイッチ31の電源が落ちたとしても維持される。安全装置30A,30Bは、配管系統1における安全装置30と同様の要素を備えるが、配管系統1との重複する記載を避け、必要最小限の符号を付すにとどめている。
【0050】
配管系統5は、ガスフィルタ20Aよりも下流側に圧力計37Aを備え、ガスフィルタ20Bよりも下流側に圧力計37Bを備える。また、配管系統5は、圧力計37Bよりも下流側に温度計39が設けられている。
【0051】
配管系統5においても、圧力計37A,37Bおよび温度計39により気体Gの状態を計測し、この計測値に基づいてスイッチ31をロック状態からロック解除状態に移行することができる。
【0052】
[付記]
以上の開示により、以下に記す構成が把握される。
[1]配管系統(1,2)であって、
流体(L,G)が流れる配管(2,3)と、
配管(2,3)の途上に設けられ、開閉可能部位(15,20A,20B)を有する配管機器(10,25)と、
開閉可能部位(15,20A,20B)と配管機器(10,25)との機械的な固定を担い、固定および固定の解除を行う操作部(17D)を有する固定体(17)と、
操作部(17D)への操作を妨げるロック状態と操作を許可するロック解除状態とが選択される安全装置(30)と、を備え、
安全装置(30)は、
電力の供給を受けないとロック状態を維持し、電力の供給を受けるとロック解除状態となるスイッチ(31)と、
ロック状態において、スイッチ(31)と機械的に接続され、操作部(17D)を覆い隠し、かつ、ロック解除状態において、遮蔽体(32)のスイッチ(31)との機械的な接続が解かれる遮蔽体(32)と、を備える。
【0053】
[2]安全装置(30)は、配管(2,3)の途上に設けられる流体(L,G)の状態を計測する計測器(37,38,39,41)と、計測器(37,38,39,41)における計測値に基づいて、スイッチ(31)に対してロック状態からロック解除状態への移行を指示するコントローラ(50)と、を備える[1]の配管系統。
【0054】
[3]安全装置(30)は、
流体(L,G)の異なる状態を計測する複数種類の計測器(37,38,39,41)を備え、
コントローラ(50)は、複数種類の計測器(37,38,39,41)のそれぞれの計測値に基づいてロック状態からロック解除状態への移行を指示する、[2]の配管系統。
【0055】
[4]計測器は、少なくとも圧力計(37)を含む、[3]の配管系統。
【0056】
[5]スイッチ(31)は、
電力の供給を受けてロック状態からロック解除状態へ移行する駆動源(31A1,31A3など)と、
ロック状態において、駆動源(31A,31A3など)と機械的接続がなされ、かつ、ロック解除状態において、駆動源(31A,31A3など)との機械的接続が解かれるロック体(31B)と、を備える[1]の配管系統。
【0057】
[6]駆動源(31A1,31A3など)は、
電力の供給を受けて磁界を発生させるソレノイド(31A1)を備え、
ソレノイド(31A1)が磁界を発生させると、ロック体(31B)と駆動源(31A,31A3など)との機械的接続が解かれる、[5]の配管系統。
【0058】
操作部(17D)への操作を妨げるロック状態と操作を許容するロック解除状態とが選択される安全装置(30)であって、電力の供給を受けないロック状態と、電力の供給を受けロック解除状態となるスイッチ(31)と、
ロック状態において、スイッチ(31)と機械的に接続され、操作部(17D)を覆い隠し、かつ、ロック解除状態において、遮蔽体(32)のスイッチ(31)との機械的な接続が解かれる遮蔽体(32)と、を備える。
【符号の説明】
【0059】
1 配管系統
2 上流側配管
3 下流側配管
4 タンク
10 ストレーナ
11,21 筐体
11A 筐体本体
11B 上流接続端
11C 下流接続端
11D 開口
13,23 ふるい
15,25 蓋
15A 蓋本体
15B ハンドル
17 締結体
17A,17B,17C バンド要素
17D 蝶螺子
20A,20B ガスフィルタ
30 安全装置
31 スイッチ
31A スイッチ本体
31A1 ソレノイド
31A2 ロッド
31A3 圧縮コイルばね
31A4 カム
32 遮蔽体
33 接続体
34 拘束片
34A 支持部
34B 抑え部
35 取手
36 カバー
36A 第1壁
36B 第2壁
36C 第3壁
37,37A,37B 圧力計
38 濃度計
39 温度計
50 コントローラ
C 中心軸
H 水平方向
V 鉛直方向
L 液体
G 気体
U 上流
D 下流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7