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特許7634523利得等化フィルタ及び利得等化フィルタの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】利得等化フィルタ及び利得等化フィルタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/02 20060101AFI20250214BHJP
   G02B 6/255 20060101ALI20250214BHJP
   G02B 6/036 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
G02B6/02 416
G02B6/02 431
G02B6/255
G02B6/036
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022516934
(86)(22)【出願日】2021-04-05
(86)【国際出願番号】 JP2021014504
(87)【国際公開番号】W WO2021215232
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】P 2020074768
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000110309
【氏名又は名称】住友電工オプティフロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100190470
【弁理士】
【氏名又は名称】谷澤 恵美
(72)【発明者】
【氏名】長能 重博
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 健美
(72)【発明者】
【氏名】衣笠 淳
(72)【発明者】
【氏名】増井 一晃
【審査官】林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第03/093887(WO,A1)
【文献】特開平09-113729(JP,A)
【文献】特表2018-537385(JP,A)
【文献】特開平08-220361(JP,A)
【文献】特開平06-051147(JP,A)
【文献】特開平10-227938(JP,A)
【文献】特開2003-075647(JP,A)
【文献】特開2003-302547(JP,A)
【文献】特開2019-095466(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0196104(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101604048(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02-6/036
G02B 6/10
G02B 6/255
JSTPlus/JST7580 (JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、前記コアを径方向外側から取り囲む第1クラッドと、前記第1クラッドを径方向外側から取り囲む第2クラッドと、を有すると共に、長さ方向で一様な組成を有する第1光ファイバと、
前記第1光ファイバの両端それぞれに融着された一対の第2光ファイバと、を備え、
前記第1光ファイバは、傾斜屈折率グレーティングが形成された第1区間と、前記第1区間の両端と前記一対の第2光ファイバとをそれぞれ接続する一対の第2区間と、を有し、
前記第1クラッドは、特定波長の光の照射により屈折率が上昇する感光性材料を含み、
前記コアには、前記第1区間において引張応力が残留しており、
前記第2区間の平均モードフィールド径は、前記第2光ファイバの平均モードフィールド径よりも大きく、かつ、前記第1区間の平均モードフィールド径よりも小さく、
前記第2区間において、前記コアに残留している応力は、前記第1区間において前記コアに残留している引張応力よりも低い引張応力、又は、圧縮応力である
利得等化フィルタ。
【請求項2】
前記第2区間の平均モードフィールド径と前記第2光ファイバの平均モードフィールド径との差は、1.3μm以下である、
請求項1に記載の利得等化フィルタ。
【請求項3】
前記コアは、シリカ系ガラスで構成され、純シリカに対して0.01%を超える比屈折率差を与える量のドーパントを含まず、
前記第1クラッドはフッ素を含み、
前記第1クラッドのフッ素濃度は、純シリカに対する比屈折率の変化に換算して0.40%より大きく0.75%以下である、
請求項1または請求項2に記載の利得等化フィルタ。
【請求項4】
前記第1区間において、前記コアに残留している引張応力の最小値は、1MPa以上200MPa以下である、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の利得等化フィルタ。
【請求項5】
前記第1区間の平均モードフィールド径は、11.0μm以上15.0μm以下であり、
前記第2光ファイバの平均モードフィールド径は、9.0μm以上10.9μm以下である、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の利得等化フィルタ。
【請求項6】
前記第1区間において、
前記コアの直径は、8.0μm以上10.5μm以下であり、
前記第1クラッドに対する前記コアの比屈折率差は、0.16%以上0.36%以下である、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の利得等化フィルタ。
【請求項7】
前記第1クラッドは、前記コアと接する内周領域を有し、
前記感光性材料は、前記内周領域に含まれる、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の利得等化フィルタ。
【請求項8】
前記一対の第2光ファイバのモードフィールド径は、前記第1光ファイバの両端側に近づくにつれて増大している、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の利得等化フィルタ。
【請求項9】
コアと、前記コアを径方向外側から取り囲み、特定波長の光の照射により屈折率が上昇する感光性材料を含む第1クラッドと、前記第1クラッドを径方向外側から取り囲む第2クラッドと、を備えると共に、傾斜屈折率グレーティングが形成された第1光ファイバの両端それぞれに、前記第1光ファイバのモードフィールド径よりも小さいモードフィールド径を有する一対の第2光ファイバを融着する工程を含み、
前記融着する工程では、前記一対の第2光ファイバの温度が前記第1光ファイバの両端における温度よりもそれぞれ高くなるように、前記第1光ファイバ及び前記一対の第2光ファイバを加熱し、前記第1光ファイバの両端部において、前記コアに残留している引張応力が解放されることにより、前記第1光ファイバの両端部における平均モードフィールド径が縮小される、
利得等化フィルタの製造方法。
【請求項10】
前記融着する工程における融着温度は、4000℃以上6500℃以下であり、融着時間は、0.1秒以上100秒以下である、
請求項に記載の利得等化フィルタの製造方法。
【請求項11】
前記融着する工程の前に、前記第1光ファイバの両端と融着される前記一対の第2光ファイバの、前記第1光ファイバと融着される側の一端部を加熱し、前記一端部のMFDを増大させる工程を更に含む、
請求項に記載の利得等化フィルタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、利得等化フィルタ(Gain Flattening Filter;GFF)及びGFFの製造方法に関する。本出願は、2020年4月20日出願の日本出願第2020-074768号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
スラント型ファイバグレーティング(Slanted Fiber Grating;SFG)を含むGFFが知られている。特許文献1には、Fiber Bragg Grating(FBG)によるGFFの製造例が記載されている。特許文献2には、SFGの製造例が記載されている。特許文献3には、グレーティングを形成する領域のモードフィールド径(Mode Field Diameter;MFD)を15μm以上に拡大することが記載されている。なお、本明細書におけるMFDは、特記した箇所を除き波長1550nmにおけるMFDである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-004926号公報
【文献】国際公開第2003/093887号
【文献】特開2003-75647号公報
【文献】特開平11-84151号公報
【文献】特開平11-38238号公報
【文献】特願2014-211378号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の一実施形態に係るGFFは、コアと、コアを径方向外側から取り囲む第1クラッドと、第1クラッドを径方向外側から取り囲む第2クラッドと、を有すると共に、長さ方向で一様な組成を有する第1光ファイバと、第1光ファイバの両端それぞれに融着された一対の第2光ファイバと、を備え、第1光ファイバは、傾斜屈折率グレーティングが形成された第1区間と、第1区間の両端と一対の第2光ファイバとをそれぞれ接続する一対の第2区間と、を有し、第1クラッドは、特定波長の光の照射により屈折率が上昇する感光性材料を含み、コアには、第1区間において引張応力が残留しており、第2区間の平均MFDは、第2光ファイバの平均MFDよりも大きく、かつ、第1区間の平均MFDよりも小さい。
【0005】
本開示の一実施形態に係るGFFの製造方法は、コアと、コアを径方向外側から取り囲み、特定波長の光の照射により屈折率が上昇する感光性材料を含む第1クラッドと、第1クラッドを径方向外側から取り囲む第2クラッドと、を備えると共に、傾斜屈折率グレーティングが形成された第1光ファイバの両端それぞれに、第1光ファイバのMFDよりも小さいMFDを有する一対の第2光ファイバを融着する工程を含み、融着する工程では、一対の第2光ファイバの温度が第1光ファイバの両端における温度よりもそれぞれ高くなるように、第1光ファイバ及び一対の第2光ファイバを加熱し、第1光ファイバの両端部において、コアに残留している引張応力が解放されることにより、第1光ファイバの両端部における平均MFDが縮小される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態に係るGFFの構成を示す図である。
図2図2は、感光性ファイバの屈折率プロファイルを光ファイバの直径に沿って示す図である。
図3図3は、第1実施例に係るGFFの融着点からの距離とMFDとの関係を示すグラフである。
図4図4は、第2実施例に係るGFFの融着点からの距離とMFDとの関係を示すグラフである。
図5図5は、第1実施例に係る感光性ファイバの残留応力プロファイル及び屈折率プロファイルを光ファイバの直径に沿って示すグラフである。
図6図6は、第1実施例に係るSMFの残留応力プロファイル及び屈折率プロファイルを光ファイバの直径に沿って示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
【0008】
上記特許文献3に記載の発明のように、SFGを形成するための感光性ファイバのMFDを拡大すると、例えば、ピッグテールとするMFDが10.5μm程度であるシングルモードファイバ(SMF)を融着する際に、接続ロスが増大するという問題があった。
【0009】
そこで、接続ロスを抑制可能な利得等化フィルタ及び利得等化フィルタの製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
[本開示の効果]
本開示によれば、接続ロスを抑制することができる。
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。一実施形態に係るGFFは、コアと、コアを径方向外側から取り囲む第1クラッドと、第1クラッドを径方向外側から取り囲む第2クラッドと、を有すると共に、長さ方向で一様な組成を有する第1光ファイバと、第1光ファイバの両端それぞれに融着された一対の第2光ファイバと、を備え、第1光ファイバは、傾斜屈折率グレーティングが形成された第1区間と、第1区間の両端と一対の第2光ファイバとをそれぞれ接続する一対の第2区間と、を有し、第1クラッドは、特定波長の光の照射により屈折率が上昇する感光性材料を含み、コアには、第1区間において引張応力が残留しており、第2区間の平均MFDは、第2光ファイバの平均MFDよりも大きく、かつ、第1区間の平均MFDよりも小さい。
【0012】
上記実施態様に係るGFFでは、第2区間の平均MFDは、第2光ファイバの平均MFDよりも大きく、かつ、第1区間と第2区間とが一様な組成を有するにも拘わらず、第1区間の平均MFDよりも小さい。このため、第2区間を介さず第1区間と第2光ファイバとを接続する場合に比べて、MFD差異が小さくなる。よって、接続ロスを抑制することができる。
【0013】
第2区間の平均MFDと第2光ファイバの平均MFDとの差は、1.3μm以下であってもよい。この場合、接続ロスを更に抑制することができる。
【0014】
コアは、シリカ系ガラスで構成され、純シリカに対して0.01%を超える比屈折率差を与える量のドーパントを含まず、第1クラッドはフッ素を含み、第1クラッドのフッ素濃度は、純シリカに対する比屈折率の変化に換算して0.40%より大きく0.75%以下であってもよい。この場合、コアがドーパントを実質的に含まないので、コアをクラッドよりも硬くすることができる。よって、コアに引張応力を付与することができる。その結果、MFDを増大することができる。
【0015】
第1区間において、コアに残留している引張応力の最小値は、1MPa以上200MPa以下であってもよい。この場合、MFDが増大している。
【0016】
第2区間において、コアに残留している応力は、第1区間においてコアに残留している引張応力よりも低い引張応力、又は、圧縮応力であってもよい。この場合、第2区間におけるMFDを第1区間におけるMFDよりも縮小させことができる。
【0017】
第1区間の平均MFDは、11μm以上15μm以下、もしくは、12μm以上15μm以下であり、第2光ファイバの平均MFDは、9.0μm以上10.9μm以下であってもよい。この場合、GFFの高性能化を図ることができる。第2光ファイバは、光部品及び伝送路で広く用いられているITU-T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector) G.652のシングルモード光ファイバの規格を満たすことができる。
【0018】
第1区間において、コアの直径は、8μm以上10.5μm以下であり、第1クラッドに対するコアの比屈折率差は、0.16%以上0.36%以下であってもよい。この場合、波長1.55μmにおいてシングルモードで光を伝送することができる。
【0019】
第1クラッドは、コアと接する内周領域を有し、感光性材料は、内周領域に含まれてもよい。この場合、所望の減衰波長特性を有するグレーティングが容易に形成される。
【0020】
一対の第2光ファイバのMFDは、第1光ファイバの両端側に近づくにつれて増大していてもよい。この場合、第1光ファイバと第2光ファイバとの間のMFD差異が更に小さくなるので、接続ロスが更に抑制される。
【0021】
一実施形態に係るGFFの製造方法は、コアと、コアを径方向外側から取り囲み、特定波長の光の照射により屈折率が上昇する感光性材料を含む第1クラッドと、第1クラッドを径方向外側から取り囲む第2クラッドと、を備えると共に、傾斜屈折率グレーティングが形成された第1光ファイバの両端それぞれに、第1光ファイバのMFDよりも小さいMFDを有する一対の第2光ファイバを融着する工程を含み、融着する工程では、一対の第2光ファイバの温度が第1光ファイバの両端における温度よりもそれぞれ高くなるように、第1光ファイバ及び一対の第2光ファイバを加熱し、第1光ファイバの両端部において、コアに残留している引張応力が解放されることにより、第1光ファイバの両端部における平均MFDが縮小される。
【0022】
上記実施態様に係るGFFの製造方法では、第1光ファイバの両端部において、コアに残留している引張応力が、融着する工程により解放される。その結果、第1光ファイバの両端部における平均MFDが縮小され、一対の第2光ファイバのMFDに近づく。これにより、接続ロスを抑制することができる。また、第1光ファイバの融着温度が高くなり過ぎることが抑制される。
【0023】
融着する工程における融着温度は、4000℃以上6500℃以下であり、融着時間は、0.1秒以上100秒以下であってもよい。この場合、融着部における第1光ファイバのコアに残留している引張応力を解放してMFDを縮小させつつ、添加物の拡散によるMFDの増大を抑制することができる。
【0024】
融着する工程の前に、第1光ファイバの両端と融着される一対の第2光ファイバの、第1光ファイバと融着される側の一端部を加熱し、一端部のMFDを増大させる工程を更に含んでもよい。この場合、第1光ファイバと第2光ファイバとの間のMFD差異が更に小さくなるので、接続ロスが更に抑制される。
【0025】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の光ファイバの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0026】
CバンドまたはLバンドの信号光を用いた長距離光ファイバ通信システムでは、信号光を増幅する光増幅器として、エルビウム(Er)が添加された増幅用光ファイバを含む光ファイバ増幅器が使用されている。エルビウム添加光ファイバ増幅器(Erbium Doped Fiber Amplifier;EDFA)の利得は、波長依存性を有しており、波長1.53μm付近にピークを有する。この利得スペクトルの波長依存性の非平坦性により、ビット誤り率が増加する。その結果、伝送システム系の性能が劣化する。この問題を解決する部品として、SFGを含むGFFが開発されている。
【0027】
コア及びクラッドの双方または何れか一方が感光性材料(例えば、GeO、B)を含むシリカ系ガラスからなる光ファイバに対し、屈折率を上昇させ得る特定波長の紫外光(例えば、アルゴンイオンレーザ光の2倍波(波長244nm)等)を照射することにより、感光性材料を含むシリカ系ガラスの屈折率を大きくすることができる。所定周期の屈折率変調グレーティングを光ファイバ内に書き込む方法には、チャープ型グレーティング位相マスクを用いた±1次回折光による露光、UVレーザ光直接露光、及び、2光束干渉露光がある。その中でも、位相マスクを用いた方法は、同一特性のものを再現性よく作製することができ、他の手法に比べアライメントが比較的容易であるという利点を有している。
【0028】
SFGによるロスは、前方へ伝搬するLP01モードの光が後方へ伝搬する高次モードの光と結合することにより生じる。SFGのロス波形である基本波形は、あるビーム幅の特定波長の光で書き込まれたグレーティングにより得られる。基本波形は、ある波長においてピークを有すると共に、ある半値全幅を有する。基本波形では、そのピーク波長から短波長側にロスが裾をひいている。SFGの所望のロス波形は、複数の基本波形を重ね合わせることで実現される。このように複数の基本波形を重ね合わせたロスにより、EDFAの利得を等化する。
【0029】
近年、IoT及びビックデータの利用の発展に伴い、伝送容量の大容量化と共に、ビット誤り率の更なる低下が求められている。よって、GFFの高性能化が求められている。GFFの高性能化のためには、SFGの最大損失量が大きく、かつ、目標波形に合わせ込める能力を維持しつつ、基本波形の半値全幅を小さくすること(基本波形の狭帯域化)が望まれている。そのためには、グレーティングを書き込む光ファイバを、MFDが11.5μm程度以上に大口径化された大口径光ファイバにする必要がある。一方、光ファイバ増幅器の低消費電力化には、感光性ファイバとMFDが10.5μm程度であるSMFとの接続ロスの抑制が求められている。高性能化GFFを目的とした感光性ファイバのMFDの大口径化と、接続ロスの低減とは、トレードオフの関係にある。
【0030】
図1は、実施形態に係るGFFの構成を示す図である。図1に示されるように、実施形態に係るGFF1は、感光性ファイバ10(第1光ファイバ)と、一対のSMF20(第2光ファイバ)とを備えている。一対のSMF20は、感光性ファイバ10の長さ方向(軸方向)の両端それぞれに融着されている。感光性ファイバ10と一対のSMF20とは、例えば、アーク放電により融着されている。
【0031】
感光性ファイバ10は、第1区間R1と、一対の第2区間R2とを有している。第1区間R1には、傾斜屈折率グレーティングが形成されている。第1区間R1は、融着(放電)による影響を受けていない定常部である。第1区間R1は、傾斜屈折率グレーティングが形成された第3区間R3と、一対の第4区間R4と、を有している。第3区間R3は、第1区間R1における軸方向の一部区間であり、軸方向の全体に傾斜屈折率グレーティングが形成されている。一対の第4区間R4は、第3区間R3の両側に配置されている。一対の第4区間R4は、第3区間R3の両端と一対の第2区間R2とを互いに接続している。なお、傾斜屈折率グレーティングの傾斜は、特許文献3に記載された定義と同義であり、傾斜範囲は、0.2°以上4°以下である。
【0032】
一対の第2区間R2は、感光性ファイバ10の両端部をなし、融着(放電)の影響を受けている部分である。一対の第2区間R2は、第1区間R1の両端と、一対のSMF20とを接続している。一対の第2区間R2は、感光性ファイバ10の両端を含んでいる。
【0033】
GFF1では、第2区間R2の平均MFDは、SMF20の平均MFDよりも大きく、かつ、第1区間R1の平均MFDよりも小さい。第1区間R1の平均MFDは、11.0μm以上15.0μm以下であり、より好適には12.0μm以上15.0μm以下である。第2区間R2の平均MFDは、11.0μm以上13.0μm以下であり、より好適には11.5μm以上12.0μm以下である。SMF20の平均MFDは、ITU-T G.652の規格を満たすように設定されている。すなわち、SMF20の平均MFDは、9.9μm以上10.9μm以下である。第1区間R1と第2区間R2との境界は、第1区間R1と第2区間R2との間で、第1区間R1の平均MFDが0.1μm減少した位置で定義される。
【0034】
図2は、感光性ファイバの屈折率プロファイルを光ファイバの直径に沿って示す図である。図2に示されるように、感光性ファイバ10は、コア11と、コア11を径方向外側から取り囲む第1クラッド12(光学クラッド)と、第1クラッド12を径方向外側から取り囲む第2クラッド13(ジャケット)と、を有している。第1クラッド12の屈折率は、コア11の屈折率よりも低い。第2クラッド13の屈折率は、コア11の屈折率よりも低く、かつ、第1クラッド12の平均屈折率よりも低い。
【0035】
第1区間R1では、第1クラッド12に対するコア11の比屈折率差は、0.16%以上0.36%以下である。融着の影響を受けた第2区間R2では、第1区間R1と比較して、第1クラッド12に対するコア11の比屈折率差が高い。
【0036】
コア11は、シリカ系ガラスで構成される。コア11は、例えば、純石英ガラス、または、非感光性のガラスである。コア11は、コア11の純シリカ(SiO)に対する比屈折率差を0.01%以上変化させる量のドーパントを含まない。すなわち、コア11の純シリカ(SiO)に対する比屈折率差は、0.01%未満である。第1区間R1及び第2区間R2のそれぞれにおいて、コア11の直径(コア径)は、8.0μm以上10.5μm以下である。
【0037】
第1クラッド12は、シリカ系ガラスで構成される。第1クラッド12は、コア11と接する内周領域を有する。少なくとも内周領域は、特定波長の光の照射により屈折率が上昇する感光性材料を含む。第1クラッド12は、径方向の全領域に感光性材料を含んでもよい。第1クラッド12は、フッ素を更に含んでいてもよい。この場合、第1クラッド12におけるフッ素濃度は、純シリカに対する比屈折率の変化に換算して0.40%より大きく0.75%以下である。
【0038】
第1クラッド12は、感光性材料として、例えばGeO又はBを含む。GeOの添加量は、例えば、純シリカに対する比屈折率差換算で0.35%以上0.50%以下である。Bの添加量は、例えば、純シリカに対する比屈折率差換算で0.05%以上0.55%以下である。感光性材料は、コア11及び第2クラッド13には実質的に含まれない。コア11及び第2クラッド13のそれぞれにおけるGeOの添加量及びBの添加量は、いずれも0である。
【0039】
第1クラッド12における感光性材料を含む領域には、周期的な屈折率変調によりファイバグレーティングを形成することができる。ファイバグレーティングが形成されている領域のファイバ配置は真直である。すなわち、本実施形態では、第3区間R3は、真直に配置される真直領域であり、一対の第4区間R4、一対の第2区間R2、及び一対のSMF20は、取り回し領域である。
【0040】
第3区間R3のMFDは、感光性材料への特定波長の光照射により上昇した第1クラッド12の比屈折率差Δnclad1+uvに依存する。第4区間R4のMFDは、非UV照射下での第1クラッド12の比屈折率差Δnclad1に依存し、11.0μm以上15.0μm以下より好適には12.0μm以上15.0μm以下である。第4区間R4における第3区間R3との境界部は、第3区間R3に近づくにつれて比屈折率差がΔnclad1からΔnclad1+uvまで増大したMFD変換構造を有する。
【0041】
ここで、Δnclad1は、第1クラッド12内の屈折率プロファイルの近似直線が、コア11と第1クラッド12との境界においてとる値である。第1クラッド12内の屈折率プロファイルの近似直線は、コア11と第1クラッド12との境界からコア中心を基準に外側に1.0μm離れた位置における屈折率と、第2クラッド13と第1クラッド12との境界からコア中心に向かって1.0μm離れた位置における屈折率の2点を直線で結んだラインとする。
【0042】
第1クラッド12におけるGe濃度は、径方向において傾斜している。径方向におけるコア11側から第2クラッド13側までのGe濃度の傾斜(すなわち、Ge濃度プロファイルの傾き又は勾配(比屈折率差の変動/コア11と第1クラッド12との境界から第1クラッド12と第2クラッド13との境界までの距離)は、-0.013[%/μm]である。コア11と第1クラッド12との境界は、コア11から第1クラッド12へ向かう方向の屈折率の勾配が負の最大になる位置で定義される。第1クラッド12と第2クラッド13との境界は、コア11と第1クラッド12の境界から外周へ向かう方向で、屈折率の勾配がゼロとなるコア中心に最も近い位置で定義される。
【0043】
第1クラッド12は、屈折率を下げるダウンドーパントとしてフッ素(F)を含む。第1区間R1及び第2区間R2のそれぞれにおいて、第1クラッド12の直径(第1クラッド径)は、27.0μm以上40.0μm以下である。
【0044】
第2クラッド13は、シリカ系ガラスで構成されている。第2クラッド13は、屈折率を下げるダウンドーパントとしてフッ素(F)を含む。第2クラッド13の直径(第2クラッド径)は、124.0μm以上126.0μm以下である。
【0045】
感光性ファイバ10では、後述するように、放電の影響により元素が長手軸(軸方向)に垂直な断面内で径方向に拡散している場合がある。このように軸方向に垂直な断面内での元素の分布が変化していても、軸方向に垂直な断面毎の元素の総量が変化していない場合、本明細書においては、感光性ファイバ10が長さ方向で一様な組成を有すると言う。
【0046】
第1区間R1において、コア11及び第1クラッド12には、線引き時に付与された引張応力が残留している。コア11に残留している引張応力の最小値は、1MPa以上200MPa以下、より好ましくは5MPa以上100MPa以下である。第1クラッド12に残留している引張応力は、0.5MPa以上100MPa以下、より好ましくは3MPa以上60MPa以下である。
【0047】
これに対し、第2区間R2では、放電融着による熱が印加されることにより、引張応力が熱緩和されている。このため、第2区間R2において、コア11及び第1クラッド12に残留している引張応力は、第1区間R1と比較して、それぞれ低くなっているか、もしくは、圧縮応力に転じている。第2区間R2では、コア11の引張応力が緩和されたことにより、コア11の屈折率が増大している。コア11の屈折率の増大量は、純シリカに対する比屈折率差換算で0.005%以上0.100%以下の範囲である。第2区間R2では、コア11の屈折率差が増大することにより、MFDが12.0μm程度から11.0μm程度に低下している。
【0048】
引張応力は、上記ファイバ構造となる母材の線引条件により調整される。例えば、線引張力を9.8×10-2N以上29.4×10-2N以下とすることにより、線引き後の光ファイバのコアには、1MPa以上200MPa以下、より好ましくは5MPa以上100MPa以下の引張応力が付与される。また、光ファイバの第1クラッドには、0.5MPa以上100MPa以下、より好ましくは3MPa以上60MPa以下の引張応力が付与される。
【0049】
線引張力は、線引き炉の温度、及び、線速によってファイバに付与される。線引き炉の温度は、1800℃以上、より好ましくは1900℃以上である。線速は、10m/min以上1000m/min以下、より好ましくは20m/min以上500m/min以下である。
【0050】
SMF20は、コアと、コアを径方向外側から取り囲むクラッドとを有している。クラッドの屈折率は、コアの屈折率よりも低い。SMF20は、感光性ファイバ10と融着され、放電の影響を受ける区間を一方の端部に有している。コアは、シリカ系ガラスで構成されている。コアは、屈折率を上げるアップドーパントとしてGeOを含む。クラッドは、シリカ系ガラスで構成されている。クラッドは、純シリカ(純石英)であってもよいし、フッ素を含んでいてもよい。
【0051】
感光性ファイバ10と融着されたSMF20の一端部がTEC(Thermally Expanded Core)処理されていてもよい。すなわち、SMF20のMFDは、感光性ファイバ10の両端側に近づくにつれて増大していてもよい。この場合、感光性ファイバ10とSMF20との間のMFD差異が更に小さくなるので、接続ロスが更に抑制される。
【0052】
次に、GFF1の製造方法について説明する。GFF1の製造方法は、感光性ファイバ10となる感光性ファイバの両端それぞれに、一対のSMF20となる一対のSMFを融着する工程を含む。融着する工程は、感光性ファイバ及びSMFの中心軸を一致させると共に、端面同士を接触させた状態で行われる。融着する工程では、感光性ファイバの一対の両端部に、感光性ファイバの軟化点温度近傍の熱が印加される。このため、感光性ファイバの一対の両端部において、コアに残留している引張応力が解放されることにより、感光性ファイバの一対の両端部におけるMFDが縮小される。
【0053】
この結果、感光性ファイバ10及び一対のSMF20を備えるGFF1が得られる。感光性ファイバの一対の両端部は、感光性ファイバ10の一対の第2区間R2となる。一対の第2区間R2におけるMFDは、例えば、11.5μmよりも小さいMFDに変換される。この結果、感光性ファイバ10とSMF20とのMFD差異が小さくなるので、接続ロスが低減される。
【0054】
融着温度(アークプラズマの温度)は、例えば、4000℃以上6500℃以下である。融着時間にも依存するが、融着温度が上記範囲であれば、感光性ファイバ10の第2区間R2におけるMFDを低減することができる。
【0055】
融着時間は、例えば、0.1秒以上100秒以下である。つまり、感光性ファイバの端面とSMFの端面とが接触する接触部は、4000℃以上6500℃以下の温度のアークプラズマで、0.1秒以上100秒以下の時間にわたって加熱される。融着温度が3500℃以下である場合、融着時間が100秒以上必要になるので、フッ素の拡散係数を考慮すると、適切ではない。融着温度が4000℃以上であることにより、融着時間を短縮することができる。
【0056】
融着する工程は、例えば、感光性ファイバの端面とSMFの端面とが接触する接触部を挟んで一対の放電針を配置して実施される。感光性ファイバ及びSMFにおいて、一対の放電針に挟まれた部分には、最も大きな熱が印加されるので、この部分の温度が最高温度となる。例えば、接触部を挟んで一対の放電針を配置した場合、接触部には、最も大きな熱が印加されるので、感光性ファイバ及びSMFにおいて、接触部の温度が最高温度となる。
【0057】
融着する工程は、放電針を接触部からSMF側にずらし、接触部からSMF側にずれた位置の温度が、接触部における温度よりも高くなるように実施されてもよい。つまり、接触部からSMF側にずれた位置の温度が最高温度となる。放電針の位置をシフトさせる手法は、例えば、接触部を挟んで一対の放電針を配置すると、接触部における感光性ファイバが上記温度範囲(4000℃以上6500℃以下)の上限を超えたアークプラズマにさらされる場合に用いられる。放電針の位置は、感光性ファイバ及びSMFの各位置に適切な熱を印加するように配置される。これにより、適切な融着条件にて融着を行うことができる。
【0058】
光ファイバの残留引張応力を周期的に解放させることで、周期的な屈折率変調を付与したファイバグレーティングが報告されている(特許文献5)。しかしながら、光ファイバの残留引張応力を解放することにより、同一光ファイバの一部のMFDを縮小させて、SMFとの接続ロスを低減するという点に着眼した本実施形態と、特許文献5で報告されたファイバグレーティングが異なることは明確である。
【0059】
GFF1の製造方法は、融着する工程の前に、感光性ファイバの両端と融着される一対のSMFの一端部に対し、TEC処理を実施する工程を更に含んでいてもよい。TEC処理によれば、感光性ファイバの両端と融着される一対のSMFの一端部を加熱し、当該一端部のMFDを増大させることができる。この場合、感光性ファイバ10とSMF20との間のMFD差異が更に小さくなるので、接続ロスが更に抑制される。
【0060】
図3は、第1実施例に係るGFFの融着点からの距離とMFDとの関係を示すグラフである。横軸は、融着点からの距離(μm)である。原点0μmは、感光性ファイバとSMFとが接触する位置を指す。マイナス側は感光性ファイバにおける位置であり、プラス側はSMFにおける位置である。縦軸は、MFDである。なお、説明を分かりやすくするため、図3には、上記実施形態の符号と同一の符号を用いるが、上記実施形態は第1実施例に限定されない。
【0061】
第1実施例に係るGFFは、上記製造方法に基づき、感光性ファイバと一対のSMFとをアーク放電により融着して製造された。一対の放電針の中央の位置は、接触部を挟んだ位置からプラス側(SMF側)に100μmシフトさせた位置とした。つまり、感光性ファイバの両端から一対のSMF側に100μmずれた位置の温度が、感光性ファイバの両端における温度よりもそれぞれ高くなるように、融着する工程を実施した。放電条件として、融着温度が4000℃以上6500℃以下に設定され、融着時間が0.1秒以上100秒以下に設定された。融着時間は、0.5秒以上10秒以下が好適であった。
【0062】
図3に示されるように、感光性ファイバにおいて、融着点からの距離が-500μmの位置におけるMFDは、放電の影響を受けていない第1区間(定常部)と同じ12.3μmである。つまり、第1実施例に係る感光性ファイバでは、融着点からの距離が-500μm以下の範囲が、第1区間に対応し、当該範囲のMFD(平均MFD)は、12.3μmである。感光性ファイバでは、融着点からの距離が-500μmから0μmの範囲は、第2区間に対応し、放電の影響を受け、MFDが変化している。当該範囲(第2区間)の平均MFDは11.6μmである。
【0063】
融着点からの距離が-500μmから-200μmにかけてMFDが11.5μm程度にまで低減されている。その理由は、図5及び図6で説明する。融着点からの距離が-20μmの位置では、MFDが微増し、11.7μmである。
【0064】
SMFでは、融着点からの距離が1000μm近傍から500μm近傍にかけて、MFDが徐々に増大し、500μm近傍で10.5μm程度にまで微増している。融着点からの距離が500μm近傍から20μmまでは、MFDがほぼ同程度で推移している。SMFの平均MFDは、10.5μmである。第1実施例に係るGFFでは、融着点からの距離が-20μm以上20μm以下の範囲でMFDが1.2μm変化している。第1実施例1に係るGFFでは、感光性ファイバの第2区間の平均MFDとSMFの平均MFDとの差は、1.3μm以下である。接続ロスは、0.03dBであり、0.10dBよりも低い低ロス化に成功した。
【0065】
図4は、第2実施例に係るGFFの融着点からの距離とMFDとの関係を示すグラフである。横軸及び縦軸は、図3と同様である。
【0066】
第2実施例に係るGFFは、上記製造方法に基づき、感光性ファイバと一対のSMFとをアーク放電により融着して製造された。一対の放電針の位置は、接触部を挟んだ位置とし、アーク放電により融着して製造された。
【0067】
図4に示されるように、感光性ファイバにおける融着点からの距離が-1000μm以下の範囲は、放電の影響を受けていない第1区間(定常部)に対応し、当該範囲のMFDは12.3μmである。SMFにおける融着点からの距離が1000μm以上の範囲は、放電の影響を受けていない区間(定常部)に対応し、当該範囲(第1区間)のMFD(平均MFD)は10.2μmである。
【0068】
感光性ファイバでは、融着点からの距離が-1000μmから0μmの範囲は、第2区間に対応し、当該範囲のMFDは、放電の影響を受けて変化している。当該範囲(第2区間)の平均MFDは11.9μmである。融着点からの距離が-1000μmから-500μmにかけてMFDが11.5μm程度にまで縮小されている。融着点からの距離が-200μmから0μmにかけてMFDは急激に増大している。融着点からの距離が-20μmにおけるMFDは、第1区間よりも大きく、12.7μm程度である。
【0069】
SMFでは、融着点からの距離が1000μmから500μmにかけてMFDが10.2μmから10.5μmにまで微増している。融着点からの距離が500μmから20μmまでは、MFDがほぼ同程度で推移している。SMFの融着点0μmから放電の影響を受けている範囲での平均MFDは、10.3μmである。なお、放電の影響を受けている範囲とは、1000μmから5000μmまでの平均MFD1000-5000に対して0.2μm以上大きいMFDを有する範囲である。第2実施例では、0μm以上700μm以下の範囲である。第2実施例に係るGFFでは、融着点からの距離が-20μm以上20μm以下の範囲でMFDが2.5μm変化している。接続ロスは、0.21dBであり、第1実施例の接続ロスに比べて1桁増大した。
【0070】
図5は、第1実施例に係る感光性ファイバの残留応力プロファイル及び屈折率プロファイルを光ファイバの直径に沿って示すグラフである。横軸は、直径上の位置(径方向位置)である。左縦軸は、残留応力である。プラス側が引張応力であり、マイナス側が圧縮応力である。右縦軸は、第1クラッドに対するコアの比屈折率差である。径方向の残留応力プロファイル及び屈折率プロファイルは、融着点からの距離が-1500μm、-500μm、及び60μmの位置においてそれぞれ測定された。
【0071】
図5に示されるように、コアの残留応力は引張応力である。融着点からの距離が-1500μmから-500μmにかけて残留引張応力が放電による熱印加により解放され、解放前と解放後の第2クラッドに対するコアの比屈折率差の差分は、0.038%に増大している。その結果、感光性ファイバのMFDは、定常部(第1区間)の1500μmでの12.3μmから、-500μmでの11.5μmに縮小していることが判明した。
【0072】
このようなMFDの低減について、図5を用いて説明する。測定位置-1500μmの屈折率プロファイルと対比して、測定位置-60μmの屈折率プロファイルは、コアと第1クラッドとの界面から第1クラッドにわたって揺らいでいることが分かる。
【0073】
測定位置-500μmの屈折率プロファイルと対比して、測定位置-60μmの屈折率プロファイルでは、純シリカに対するコアの比屈折率差は、径方向位置が-5μm以上5μm以下である中心領域では減少し、径方向位置が-5μm未満又は5μmを超える外周領域では増加している。この振る舞いは、第1クラッドに添加されたフッ素がコア及び第2クラッドに拡散した結果であることが分かった。フッ素の拡散により、第1クラッドの屈折率が増大すると共に、コア径が細径化し、その結果、MFDが増大したことが分かった。なお、第1実施例における融着条件では、Geの拡散量は、フッ素の拡散量に比べてわずかであり、MFD変化の寄与度としては無視できるレベルであった。
【0074】
図6は、第1実施例に係るSMFの残留応力プロファイル及び屈折率プロファイルを光ファイバの直径に沿って示すグラフである。横軸及び縦軸は、図5と同様である。径方向の残留応力プロファイル及び屈折率プロファイルは、融着点からの距離が1500μm及び80μmの位置においてそれぞれ測定された。SMFにおいて、融着点からの距離が1500μmの位置は、融着による熱の影響を受けていない定常部である。
【0075】
図6に示されるように、融着点からの距離が1500μmの位置では、コア及びクラッドには圧縮応力が残留しており、コアに残留している圧縮応力はクラッドに残留している圧縮応力よりも大きいことが分かる。一方、融着点からの距離が80μmの位置では、コア及びクラッドの残留応力は、放電の熱により解放され、その結果、純シリカに対するコアの比屈折率差が低減され、MFDが増大したことが分かる。
【0076】
第1,2実施例の放電融着によるファイバ長さ方向に対するMFD変化の振る舞いの結果から、以下のことが説明できる。すなわち、感光性ファイバでは、残留引張応力が付与されたコアに熱を印加することで、応力が解放される。これにより、コアと第1クラッドとの屈折率差が増大するので、MFDを縮小させることができる。ただし、更に熱を印加すると、第1クラッドに添加されたFがコア及び第2クラッドに拡散する。これにより、第1クラッドの屈折率が増大すると共に、コアの細径化が発生するので、MFDが増大する。したがって、感光性ファイバのMFDを縮小するには、残留引張応力は解放されるものの、フッ素が十分に拡散されない温度範囲で融着を実施すればよい。すなわち、第1実施例に係るGFFでは、放電針を感光性ファイバの両端からSMF側にずらすことで、感光性ファイバに対する放電の熱印加を低減し、フッ素拡散を引き起こす温度よりも低温で融着したことが奏功した。
【符号の説明】
【0077】
1…利得等化フィルタ
10…感光性ファイバ(第1光ファイバ)
11…コア
12…第1クラッド
13…第2クラッド
20…シングルモードファイバ(第2光ファイバ)
R1…第1区間
R2…第2区間
R3…第3区間
R4…第4区間
図1
図2
図3
図4
図5
図6