(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20250214BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20250214BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20250214BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2022535757
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(86)【国際出願番号】 GB2020053121
(87)【国際公開番号】W WO2021116663
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-06-23
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】500024469
【氏名又は名称】ダイソン・テクノロジー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100170597
【氏名又は名称】松村 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ダニエル ハワード
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-523618(JP,A)
【文献】特表2016-501439(JP,A)
【文献】特開2000-195482(JP,A)
【文献】特表2011-501388(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0010717(US,A1)
【文献】特表2017-526143(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/139001(US,A1)
【文献】特許第6182618(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-0587
H01M 6/02-18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、蓄電装置に対する第1の積層体と、溝を間に挟んで前記蓄電装置に対する第2の積層体と、を提供するステップであって、
前記第1の積層体及び前記第2の積層体の各々が、それぞれ、
前記基板上の第1の電極層と、
前記第1の電極層上の電解質層と、
前記電解質層上の第2の電極層と、を備え、
前記基板上の第1の表面と、前記第1の表面とは反対側の第2の表面と、を含む、ステップと、
前記溝内で前記第1の積層体及び前記第2の積層体の前記第2の表面と同じ高さ以下まで第1の材料を堆積させるステップと、
前記第1の積層体、前記第1の材料及び前記第2の積層体の上に第2の材料を堆積させるステップであって、前記第2の材料を介して、前記第1の積層体の前記第2の電極層を前記第2の積層体の前記第2の電極層に電気的に接続する、ステップと、を含む方法であって、
前記第1の材料は、前記第2の材料が、前記第1の積層体及び前記第2の積層体の前記第1の電極層と、前記第1の積層体及び前記第2の積層体の前記電解質層と、に接触するのを防止して、前記第1の積層体及び前記第2の積層体の前記第1の電極層と、前記第1の積層体及び前記第2の積層体の前記電解質層と、を前記第2の材料から電気的に絶縁し、
前記溝は、第1の溝であり、
前記方法は、前記第1の材料を貫通する第2の溝を形成するステップと、
前記第2の溝に前記第2の材料を堆積させるステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記第2の材料を堆積させるステップは、非インクジェット印刷法を用いて前記第2の材料を堆積させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の材料を堆積させるステップは、非真空環境で前記第1の材料を堆積させるステップを含み、
前記第2の材料を堆積させるステップは、真空で前記第2の材料を堆積させるステップを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記非真空環境は、不活性環境又は乾燥室環境の少なくとも一方である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の積層体及び前記第2の積層体の上に前記第2の材料の第1の層を堆積させるステップの後、前記溝内に前記第1の材料を堆積させるステップと、
その後、前記第2の材料の第2の層として、前記第1の積層体、前記第1の材料及び前記第2の積層体の上に前記第2の材料を堆積させるステップと、を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の材料の前記第1の層を堆積させるステップは、真空中で前記第2の材料の前記第1の層を堆積させるステップを含み、
前記第1の材料を堆積させるステップは、非真空環境中で前記第1の材料を堆積させるステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の積層体は、前記基板の第1の部分上にあり、
前記第2の積層体は、前記基板の第2の部分上にあり、
前記第2の材料を堆積させるステップは、前記基板の第1の部分と前記第2の部分との間の、前記基板の第3の部分上に前記第2の材料の一部を堆積させるステップを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の積層体、前記第1の材料及び前記第2の積層体の上に前記第2の材料を堆積させるステップは、前記第1の積層体又は前記第2の積層体の少なくとも一方の前記第2の表面の全てを覆うように、前記第2の材料を堆積させるステップを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の積層体と前記第2の積層体とを備える複合積層体を堆積させるステップと、
前記複合積層体を貫通する前記溝を形成して、前記溝を挟んで前記第1の積層体及び前記第2の積層体を形成するステップと、を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記溝の幅は、前記複合積層体を通して一定である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の材料を堆積させるステップの後に、前記第1の積層体が配置される前記基板の第1の部分を、前記第2の積層体が配置される前記基板の第2の部分から分離するステップを含み、
前記分離するステップは、前記溝内で前記第2の材料を切断するステップを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の材料を堆積させるステップの後に、前記第1の積層体を貫通するさらなる溝を形成して、前記
さらなる溝内に前記第1の積層体の前記第1の電極層を露出させるステップを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記さらなる溝を形成するステップは、前記第1の積層体を貫通し、かつ前記基板を貫通する前記さらなる溝を形成するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
基板と、
前記基板上の蓄電装置に対する第1の積層体と、
前記基板上の前記蓄電装置に対する第2の積層体と、
前記第1の積層体と前記第2の積層体との間にある第1の材料と、
第2の材料と、を備える前記蓄電装置に対する中間構造体であって、
前記第1の積層体及び前記第2の積層体の各々は、それぞれ、
前記基板上の第1の電極層と、
前記第1の電極層上の電解質層と、
前記電解質層上の第2の電極層と、を備え、
前記第1の材料は、該第1の材料を貫通する溝を有し、
前記基板上の第1の表面と、前記第1の表面とは反対側の第2の表面と、を含み、
前記第2の材料は、前記第1の積層体、前記第1の材料及び前記第2の積層体の上にあり、前記第2の材料を介して、前記第1の積層体の前記第2の電極層と前記第2の積層体の前記第2の電極層とを電気的に接続し、
前記第1の材料は、前記第1の積層体及び前記第2の積層体の前記第2の表面と同じ高さ以下まで堆積しており、前記第2の材料が、前記第1の積層体及び前記第2の積層体の前記第1の電極層と、前記第1の積層体及び前記第2の積層体の前記電解質層と、に接触するのを防止して、前記第1の積層体及び前記第2の積層体の前記第1の電極層と、前記第1の積層体及び前記第2の積層体の前記電解質層と、を前記第2の材料から電気的に絶縁する、中間構造体。
【請求項15】
前記第1の積層体は、前記基板の第1の部分上にあり、
前記第2の積層体は、前記基板の第2の部分上にあり、
前記第2の材料の一部は、前記基板の前記第1の部分と前記基板の前記第2の部分との間の、前記基板の第3の部分上にある、請求項14に記載の中間構造体。
【請求項16】
前記第2の材料は、前記第1の積層体又は前記第2の積層体の少なくとも一方の前記第2の表面の全てに重なる、請求項14又は15に記載の中間構造体。
【請求項17】
前記第2の電極層は、リチウムを含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の中間構造体。
【請求項18】
前記第2の材料は、銅を含む、請求項14~17のいずれか一項に記載の中間構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置に関し、より具体的には、限定するものではないが、蓄電装置の製造方法及び機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電極、電解質及び集電体の層を備える固体薄膜セル等の蓄電装置の既知の製造方法は、基板上に積層体を形成することである。積層体は、第1の電極層と、電解質層と、第2の電極層と、を備える。次いで、積層体を分割して、個々のセルを形成する。セル同士を接続するために、多数のセルを積み重ねた電極層を互いに電気的に接続する。
【0003】
蓄電装置の既知の製造方法は、複雑であり、かつ/又は制御が困難な場合がある。したがって、既知の製造方法よりも簡単な蓄電装置の製造方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様によれば、以下を含む方法が提供される。本方法は、
基板上に、蓄電装置に対する第1の積層体と、溝を間に挟んで蓄電装置に対する第2の積層体と、を提供するステップであって、
第1の積層体及び第2の積層体の各々が、それぞれ、
基板上の第1の電極層と、
第1の電極層上の電解質層と、
電解質層上の第2の電極層と、を備える、ステップと、
溝内に第1の材料を堆積させるステップと、
第1の積層体、第1の材料及び第2の積層体の上に第2の材料を堆積させるステップであって、第2の材料を介して、第1の積層体の第2の電極層を第2の積層体の第2の電極層に電気的に接続する、ステップと、を含み、
第1の材料は、第2の材料が、第1の積層体及び第2の積層体の第1の電極層と、第1の積層体及び第2の積層体の電解質層と、に接触するのを防止して、第1の積層体及び第2の積層体の第1の電極層と、第1の積層体及び第2の積層体の電解質層と、を第2の材料から電気的に絶縁する、方法。
【0005】
第1の積層体、第1の材料及び第2の積層体の上に第2の材料を堆積させるステップにより、第2の材料と第1の積層体及び第2の積層体の第1の電極層との間の接触面積を増加させることができる。これにより、一般的には、接触抵抗を低減し、製造される蓄電装置の性能を向上させる。例えば接触抵抗を低減することで、蓄電装置が故障するリスクを低減し、及び/又は蓄電装置の望ましくない加熱を低減することができる。これにより、ひいては、蓄電装置の安全性を向上させることができる。
【0006】
第1の態様の方法を使用することにより、非常に特定量の材料の正確な堆積を伴う他の手法と比較して、製造公差を低減することができる。例えば少量の導電性材料を狭いチャネルに堆積させて集電体層への接続を形成する代替手法と比較して、第1の態様の方法は、第2の材料と第1の積層体及び第2の積層体の第1の電極層との間を適切に接続するためのそれほど正確な制御は必要ない。これにより、他の場合よりも簡単に及び/又は効率的に蓄電装置を製造することができる。
【0007】
実施例では、溝は第1の溝であり、本方法は、第1の材料を貫通する第2の溝を形成するステップと、第2の溝に第2の材料を堆積させるステップと、を含む。第2の溝に堆積する第2の材料は、複数のセルを並列に接続するための電気コネクタ等のさらなる電気部品に第2の材料を接続するための接触面積をより大きくすることができる。例えば電気コネクタは、第2の溝に堆積する第2の材料の長さに接触するように形成することができ、これは、一般的には、電気コネクタが単に第2の材料の層の縁部に接触する場合よりも、電気コネクタと第2の材料との間の接触面積をより大きくする。これにより、接触抵抗をさらに低減し、製造される蓄電装置の性能を向上させることができる。
【0008】
実施例では、第2の材料を堆積させるステップは、非インクジェット印刷法を用いて第2の材料を堆積させるステップを含む。これにより、第2の材料を、インクジェット印刷よりも簡単な方法、例えばフラッド堆積又は物理蒸着(PVD)等の蒸着プロセスを用いて堆積させることができる。PVDでは、凝縮相の第2の材料を蒸発させて蒸気を生成し、次いでこの蒸気を第1の積層体、第1の材料及び第2の積層体の上に凝縮させるのに対し、フラッド堆積では、第1の積層体、第1の材料及び第2の積層体の表面に液体の第2の材料を浸し、その後に例えば硬化によって硬化させる。このような方法は、特定のパターンに従って又は特定の場所で第2の材料の堆積を制御する必要なしに行い得る。これにより、簡単かつ効率的に第2の材料を堆積させることができる。
【0009】
実施例では、第1の材料を堆積させるステップは、非真空環境で第1の材料を堆積させるステップを含み、第2の材料を堆積させるステップは、真空で第2の材料を堆積させるステップを含む。例えば第1の材料は、室温及び/又は室内圧力等の非真空条件で溝に第1の材料をインクジェット印刷することによって堆積させてもよい。非真空環境は、不活性環境又は乾燥室環境の少なくとも一方であってもよく、周囲環境における反応性成分及び/又は水との間の望ましくない相互作用を低減する。ある場合には、第1の積層体及び第2の積層体の第1の電極層と、電解質層と、第2の電極層と、を真空中で堆積させ、その後第1の材料を非真空条件で堆積させてから、第2の材料を堆積させるために真空条件に戻す。堆積工程中に環境圧力が変化しても、これらの実施例に従って製造される蓄電装置の様々な構成要素間の電気的接続は、それでもなお蓄電装置を効果的に動作させるのに十分である。実際、この方法により、第2の材料と第1の積層体及び第2の積層体の第1の電極層及び第2の電極層との間の接触面積を増加させることができ、これは、一般的には蓄電装置の性能を高める。
【0010】
製造工程中に温度又は圧力等の環境条件をどの時点で変化させるかを選択することは、極めて非自明であることに留意されたい。例えば、第1の積層体又は第2の積層体の様々な層が堆積する間に真空条件から非真空条件に移行すると、これらの層と周囲環境との間で望ましくない反応が生じ、これらの層の少なくとも1つが望ましくない酸化を起こす可能性がある。にもかかわらず、本発明者らは驚くべきことに、第1の材料を堆積させるために、第2の電極層を堆積させた後に真空条件から非真空条件に移行しても、とりわけ第2の電極層とその後に堆積する第2の材料との間の接触面積が増加することによって、製造される蓄電装置の性能に不当に影響を及ぼさないことを確認した。
【0011】
実施例では、本方法は、第1の積層体及び第2の積層体の上に第2の材料の第1の層を堆積させるステップの後、溝内に第1の材料を堆積させるステップと、その後、第2の材料の第2の層として、第1の積層体、第1の材料及び第2の積層体の上に第2の材料を堆積させるステップと、を含む。第2の材料の第1の層は、例えば第1の材料が堆積する間に下にある第2の電極層を保護し、第2の電極層の潜在的な汚染又は第2の電極層との望ましくない反応のリスクを低減する。これにより、第2の電極層と第2の材料との間の(第2の材料の第1の層を介した)電気的接続を改善し、製造される蓄電装置の機能性を向上させ得る。これらの実施例では、第2の材料の第1の層を堆積させるステップは、真空中で第2の材料の第1の層を堆積させるステップを含んでもよく、第1の材料を堆積させるステップは、非真空環境中で第1の材料を堆積させるステップを含んでもよい。環境条件を真空条件から非真空条件に変化させると、非真空条件に曝される第1の積層体及び/又は第2の積層体の表面が劣化することがある。しかし、第2の材料の第1の層は、下にある第2の電極層よりも、(第1の材料が堆積する間に)非真空環境への露出に対して感度が低い場合がある。例えば第2の電極層は、反応性が高いゆえに非真空環境において分子と反応しやすいリチウムイオンを含む場合があるのに対し、第2の材料は、反応性の低い銅を含む場合がある。他の場合には、第2の材料は、第2の電極層よりも反応性の低い別の導電性材料を含んでもよい。このようにして、第2の材料の第1の層と第2の層との間の電気的接続は、第2の電極層が非真空条件に曝される場合における第2の電極層と第2の材料との間の電気的接続と比較して、改善され得る(例えば、劣化及び/又は接触抵抗が低減する)。
【0012】
実施例では、第1の積層体は、基板の第1の部分上にあり、第2の積層体は、基板の第2の部分上にあり、第2の材料を堆積させるステップは、基板の第1の部分と第2の部分との間の、基板の第3の部分上に第2の材料の一部を堆積させるステップを含む。基板の第3の部分上の第2の材料の部分は、例えば、電気コネクタ等のさらなる電気部品にその後接続するための第2の材料の表面積をより大きくする。これにより、接触抵抗を低減し、したがって、製造される蓄電装置の性能を向上させることができる。
【0013】
実施例では、第1の積層体及び第2の積層体の各々は、それぞれ、基板上の第1の表面と、第1の表面とは反対側の第2の表面と、を備える。このような実施例では、第1の積層体、第1の材料及び第2の積層体の上に第2の材料を堆積させるステップは、第1の積層体又は第2の積層体の少なくとも一方の第2の表面の実質的に全てを覆うように、第2の材料を堆積させるステップを含んでもよい。これにより、第2の材料と第1の積層体及び第2の積層体の第2の電極層との間の接触面積をより大きくし、接触抵抗をさらに低減し、製造される蓄電装置の性能を向上させる。
【0014】
実施例では、本方法は、第1の積層体及び第2の積層体を備える複合積層体を堆積させるステップと、複合積層体を貫通する溝を形成して、溝を間に挟んで第1の積層体及び第2の積層体を形成するステップと、を含む。これにより、第1の電極層を貫通する溝を形成し、次いで電解質層を堆積させ、電解質層を通して溝を延長し、次いで第2の電極層を堆積させ、第2の電極層を通して溝を延長する場合と比較して、溝を簡単に形成できる。これらの実施例では、溝の幅は、複合積層体を通して実質的に一定であってもよい。これにより、溝が階段状のプロファイルを有する、複合積層体を通して幅が変化する他の場合(例えば、第1の電極層を貫通する溝の一部の幅が電解質層を貫通する溝の一部の幅よりも小さく、ひいては第2の電極層を貫通する溝の一部の幅よりも小さくなるような)と比較して、溝をさらに簡単に形成できる。
【0015】
実施例では、第2の電極層は、リチウムを含む。第2の材料は、銅を含んでもよい。これらの材料は、効果的な蓄電装置の形成に適している。
【0016】
実施例では、本方法は、第2の材料を堆積させるステップの後に、第1の積層体が配置される基板の第1の部分を、第2の積層体が配置される基板の第2の部分から分離するステップを含み、分離するステップは、溝内で第2の材料を切断するステップを含む。このようにして、第1のセルと第2のセルと(それぞれ第1の積層体と第2の積層体とを備える)を互いに単離させることができ、第1のセルと第2のセルとを互いに積み重ね、一緒に及び/又は電気コネクタ等のさらなる電気部品に接続することができる。セルを単離する前に第2の材料を堆積させることによって、各個々のセルの積層体上に第2の材料を個別に堆積させるのではなく、第2の材料を単一の処理ステップで複数のセルに対して堆積させることができるので、本方法は他の方法よりも効率的である。
【0017】
実施例では、本方法は、第2の材料を堆積させるステップの後に、第1の積層体を貫通するさらなる溝を形成して、さらなる溝内に第1の積層体の第1の電極層を露出させるステップを含む。露出した第1の電極層は、別の積層体の露出した第1の電極層等の別の電気部品に接続され、セルを並列に接続することができる。第2の材料を堆積させた後に第1の電極層を露出させることによって、第1の電極層は、前の処理ステップの間、電解質層と第2の電極層とによって保護されたままである。これにより、処理方法の早い段階で第1の電極層が露出する場合に第1の電極層と他の成分との間で望ましくない反応が発生するのを低減することができる。これにより、ひいては、第1の電極層の劣化を低減することによって、製造される蓄電装置の性能を向上させることができる。これらの実施例のいくつかでは、本方法は、第1の積層体を貫通し、かつ基板を貫通するさらなる溝を形成するステップを含む。この手法では、第1の積層体を備えるセルを隣接するセルから単離させる間に、第1の電極層を露出させることができる。これにより、第1の電極層を露出させるステップとセルを単離するステップを別々に行う方法と比較して、効率を向上させる。
【0018】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様による方法によって形成される蓄電装置が提供される。このような蓄電装置は、第1の態様を参照して説明したように、第2の電極層と第2の材料との間の接触抵抗が低減することにより、性能が向上し得る。加えて、又は代替的に、このような蓄電装置は、効率的かつ簡単な方法で製造され得る。
【0019】
本発明の第3の態様によれば、蓄電装置に対する中間構造体が提供される。中間構造体は、
基板と、
基板上の蓄電装置に対する第1の積層体と、
基板上の蓄電装置に対する第2の積層体と、
第1の積層体と第2の積層体との間にある第1の材料と、
第2の材料と、を備え、
第1の積層体及び第2の積層体の各々は、それぞれ、
基板上の第1の電極層と、
第1の電極層上の電解質層と、
電解質層上の第2の電極層と、を備え、
第2の材料は、第1の積層体、第1の材料及び第2の積層体の上にあり、第2の材料を介して、第1の積層体の第2の電極層を第2の積層体の第2の電極層に電気的に接続し、
第1の材料は、第2の材料が、第1の積層体及び第2の積層体の第1の電極層と、第1の積層体及び第2の積層体の電解質層と、に接触するのを防止して、第1の積層体及び第2の積層体の第1の電極層と、第1の積層体及び第2の積層体の電解質層と、を第2の材料から電気的に絶縁する。
【0020】
第3の態様は、蓄電装置に対する中間構造体に関し、中間構造体は、より簡単に又はより効率的に製造され得る。例えば中間構造体は、本発明の第1の態様による方法を用いて製造され得る。第3の態様の中間構造体を使用して製造される蓄電装置は、異なる方法で製造される蓄電装置と比較して、改善された性能を示す可能性がある。
【0021】
実施例では、第1の積層体は基板の第1の部分上にあり、第2の積層体は基板の第2の部分上にあり、第2の材料の一部は、基板の第1の部分と基板の第2の部分との間の、基板の第3の部分上にある。基板の第3の部分上の第2の材料の部分は、第2の材料をさらなる電気部品に接続するための表面積をより大きくする。これにより、接触抵抗を低減し、製造される蓄電装置の性能を向上させることができる。
【0022】
実施例では、第1の積層体及び第2の積層体の各々は、それぞれ、基板上の第1の表面と、第1の表面とは反対側の第2の表面と、を備え、第2の材料は、第1の積層体又は第2の積層体の少なくとも一方の第2の表面の実質的に全てに重なる。これらの実施例における第2の材料と第1の積層体及び第2の積層体の第2の電極層との間の接触面積は、第2の材料が第1の積層体及び/又は第2の積層体の第2の表面により少なく重なる場合よりも大きい。これにより、接触抵抗が低減し、中間構造体を使用して製造される蓄電装置の性能を向上させる。
【0023】
さらなる構成は、添付の図面を参照して、単なる例として与えられる以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、実施例による蓄電装置に対する積層体を示す概略図である。
【
図2】
図2A~
図2Gは、実施例による蓄電装置の製造方法の構成を示す概略図である。
【
図3】
図3は、さらなる実施例による蓄電装置を製造するための中間構造体を示す概略図である。
【
図4】
図4A~
図4Eは、さらなる実施例による蓄電装置の製造方法の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施例による方法、構造及び装置の詳細は、図面を参照して以下の説明から明らかになる。本明細書では、説明のために、特定の実施例の多数の具体的な詳細が記載される。本明細書における「実施例」又は同様の用語への言及は、実施例に関連して記載される特定の構成、構造又は特徴が、少なくともその1つの実施例に含まれるが、必ずしも他の実施例に含まれるとは限らないことを意味する。さらに、特定の実施例は、その実施例の基礎となる概念を容易に説明及び理解するために、特定の構成が省略され及び/又は必然的に簡略化されて概略的に記載されていることに留意されたい。
【0026】
図1は、蓄電装置に対する層の積層体100を示す。
図1の積層体100は、例えば固体電解質を有する薄膜蓄電装置の一部として使用され得る。
【0027】
積層体100は、基板102と、正極(cathode)集電体(CC)層104と、正極層106と、電解質層108と、負極層110と、を備える。
図1の実施例では、負極層110は、正極層106よりも基板102から離れた位置にあり、電解質層108は、正極層106と負極層110との間にある。基板102は、正極CC層104に接触し、積層体100を支持する。この実施例では、基板102は正極CC層104に直接接触するが、他の実施例では、基板102と正極CC層104との間に追加の層(図示せず)があってもよく、あるいは正極CC層を省略して正極層106が基板102に接触していてもよい。別段の指示がない限り、本明細書において、ある要素が別の要素の「上にある」という言及は、直接的又は間接的な接触を含むものとして理解されるべきである。言い換えれば、別の要素上の一要素は、他の要素に接触しているか、又は他の要素と接触していない代わりに(1つ以上の)介在要素によって一般的に支持されているが、それでもなお他の要素の上に位置しているか、若しくは他の要素と重なり合っていてもよい。
【0028】
図1の基板102は、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリマーである。他の実施例では、基板102は、シリコン若しくはガラス等の異なる材料であってもよく、又は異なる材料を含んでもよい。
図1の基板102は、平面状で可撓性である(この場合、基板102は、リール・ツー・リール法と呼ばれることもあるロール・ツー・ロール製法の一部としてローラに巻き付けることができるほど十分に柔軟である)。しかし他の実施例では、基板は非平面及び/又は剛性であってもよい。
【0029】
正極CC層104は正の集電体層として作用し、この場合ニッケル箔を含むが、代わりに、アルミニウム、銅若しくは鋼鉄、又はポリエチレンテレフタレート(PET)上のアルミニウム等の金属化プラスチックを含む金属化材料等の任意の適切な金属を使用できることが理解されよう。
【0030】
図1の正極層106は、正の電極層(すなわち、積層体100を含む蓄電装置のセルの放電時のカソードに対応する)を形成する。
図1の実施例における正極層106は、コバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウム又は多硫化アルカリ金属塩等の、安定した化学反応によってリチウムイオンを貯蔵するのに適した材料を含む。
【0031】
図1の負極層110は、負の電極層(すなわち、積層体100を含む蓄電装置のセルの放電時のアノードに対応する)を形成する。この場合、負極層110はリチウムを含む。しかし他の実施例では、負極層は、リチウム、グラファイト、シリコン及び/又はインジウムスズ酸化物を含んでもよい。
【0032】
電解質層108は、リチウムリン酸窒化物(LiPON)等のイオン伝導性であるが電気絶縁体でもある任意の適切な材料を含み得る。
図1の電解質層108は、固体層であり、高速イオン伝導体と称され得る。固体電解質層は、例えば規則的な構造を欠き自由に移動し得るイオンを含む液体電解質の構造と、結晶性固体の構造との中間の構造を有し得る。結晶性物質は、例えば原子が規則的に配列された正規構造を有し、これは2次元又は3次元格子として配列され得る。結晶性物質のイオンは、一般的には不動であり、したがって物質全体を自由に移動できない場合がある。
【0033】
図1の積層体100は、基板102上に正極CC層104を堆積させることによって製造される。その後、正極CC層104上に正極層106を堆積させ、次いで、正極層106上に電解質層108を堆積させ、次いで、電解質層108上に負極層110を堆積させる。積層体100の各層は、均質性の高い層を生成する単純かつ効果的な方法を提供する、フラッド堆積(スロットダイコーティング又はスリットコーティングと呼ばれることもある)によって堆積させてもよいが、他の堆積方法、例えば物理蒸着(PVD)又は化学蒸着(CVD)等の蒸着プロセスも可能である。
【0034】
本明細書の実施例では、
図1の積層体100と同様の又は同じ積層体が、蓄電装置を製造するための工程を経る。
図2A~
図2Gは、実施例による蓄電装置の製造方法の構成を示す概略図である。
図2A~
図2Gの構成のうち
図1の対応する構成に類似するものには同じ符号が付されているが、100だけ増分されている。対応する記述が適用されるものとする。
【0035】
図2Aに先立ち、複数の層が基板200上に堆積されている。この場合の複数の層は、
図1の積層体100の層と同じ層を含み、同じ方法で製造されていてもよい。
【0036】
図2Aは、基板202上に第1の積層体200aを提供し、基板202上に第2の積層体200bを提供するように、複数の層を貫通する溝212を形成する様子を図示する。溝は、例えば連続的でも非連続的でもよいチャネル、スロット又はトレンチである。
図2Aの実施例のようないくつかの実施例では、溝は細長い。
図2Aでは、溝は、(
図2Aに示すように)ページの内外に向かう方向に細長く、複数の層にわたって細長いトレンチを形成している。
【0037】
溝212が形成される複数の層は、第1の積層体200aと第2の積層体200bとを備える複合積層体であると考えてよい。第1の積層体200aは、基板202上の第1の電極層206aと、第1の電極層206a上の電解質層208aと、電解質層208a上の第2の電極層210aと、を備える。第2の積層体200bも同様に、基板202上の第1の電極層206bと、第1の電極層206b上の電解質層208bと、電解質層208b上の第2の電極層210bと、を備える。この場合の第1の電極層206a、206bは、
図1の正極層106のような正極層であり、リチウムイオンを貯蔵するのに適した材料を含む。第2の電極層210a、210bは、
図1の負極層110のような負極層であり、リチウムを含む。ただし、これは一例に過ぎない。
図2Aの実施例における第1の積層体200a及び第2の積層体200bは、
図1の正極CC層104のような正極CC層である集電体(CC)層204a、204bをさらに含む。ただし、CC層204a、204bは、
図2A及び2gを参照して説明した方法から省略されてもよい。このような場合、基板202は金属化されてもよく、又は導電性表面層を備えてもよく、又は第1の電極層206a、206bが電極及び集電の両方の機能を果たしてもよい。
【0038】
図2Aの複数の層は、真空条件下で堆積されてもよい。本明細書で言及する真空とは、必ずしも完全な真空ではなく、代わりに、圧力が大気圧よりも十分に低く、堆積層と環境分子との間の望ましくない相互作用を低減する環境を指すことを理解されたい。
図2Aの層を真空条件下で堆積させることにより、層を劣化させ得る環境と層との相互作用を制限又は回避し得る。例えば、上述のように、
図2Aの第2の電極層210a、210bは反応性の高いリチウムイオンを含む。したがって、第2の電極層210a、210bを真空中で堆積させることにより、第2の電極層210a、210bと周辺環境内の分子との間の望ましくない反応を低減する。
【0039】
図2Aの実施例は、第1の積層体200a及び第2の積層体200bを提供するように、
図2Aの溝212を形成するための層のレーザーアブレーションを含む。レーザーアブレーションは、層にレーザービームを照射し、層の一部を蒸発させ、昇華させ、又はプラズマに変換させて除去することを含む。レーザーアブレーションによって除去される層の量は、レーザービームの波長又はパルスレーザービームのパルス長等のレーザービームの特性を制御することによって制御され得る。レーザーアブレーションは、一般的には溝212の形成を簡単かつ迅速に制御することができる。しかし他の実施例では、フォトリソグラフィ技術等の代替的な方法を用いて溝212を形成してもよい。
【0040】
図2Aでは、溝212の幅wは、複合積層体を通して実質的に一定である(この場合、複合積層体をレーザーアブレーションして、第1の積層体200aと第2の積層体200bとに分離する)。幅は、製造公差若しくは測定不確実性の範囲内で一定又は一定である場合、実質的に一定であると考えてよい。溝212の幅wは、
図2Aの実施例では、基板202の平面に平行な方向に取られている。溝212の幅wが実質的に一定であるため、基板202の平面に垂直な平面における溝212の断面は、長方形状である。このような形状の溝212を形成することは、一般的には、断面が階段状のようなより複雑な形状の溝212を形成するよりも簡単である。より複雑な形状の溝を形成するのと比較して、レーザーアブレーションは、幅wが実質的に一定である溝212を形成するためにそれほど正確に制御する必要はない。これにより、蓄電装置をより容易に及び/又はより効率的に形成することができる。ただし、これは単なる例示的な溝の形状であることを理解されたい。他の場合には、溝212は、階段形状又はV字形状の断面など、異なる形状を有していてもよい。
【0041】
図2Bでは、溝212に第1の材料214が堆積されている。第1の材料214は、電気絶縁性である。電気絶縁材料は、電気的に非導電性であると考えられ、したがって、電界に曝されたときに伝導する電流が比較的少量であり得る。一般的には、電気絶縁材料(絶縁体と呼ばれることもある)は、半導体材料又は導電性材料よりも伝導する電流が少ない。しかし、絶縁体であっても電流を運ぶための少量の電荷キャリアを含むことがあるので、それでもなお電界の影響を受けて少量の電流が電気絶縁材料中を流れることがある。本明細書の例では、材料が絶縁体の機能を果たすのに十分な電気絶縁性を有する場合、電気絶縁性であると考えてよい。この機能は、例えば、短絡が回避されるように材料が1つの要素を別の要素から十分に絶縁する場合に果たされ得る。
【0042】
図2Bの実施例における第1の材料214は、インクジェット印刷を用いて堆積され、これにより、電気絶縁材料130aを的確かつ正確に堆積させることができる。例えばインクジェット印刷によって第1の材料214を堆積させると、一般的には第1の材料214を柔軟で効率的に及び/又は信頼性のあるように堆積させることができる。例えばインクジェット印刷は、例えば溶射コーティングと比較して比較的低い(例えば周囲)温度及び/又は圧力で行われてもよく、したがって、経済的及び/又は効率的に堆積させ、ひいてはセルを生産することができる。
図2Bの実施例における第1の材料214のインクジェット印刷は、液体インクの形態で第1の材料214をインクジェット印刷し、堆積したインクを硬化させて第1の材料214の固体層を形成することを含む。第1の材料214として使用するのに適したインクは、Dycotec Materials Ltd.、Unit 12 Star West、Westmead Industrial Estate、Westlea、Swindon、SN5 7SW、United Kingdomから入手可能なDM-INI-7003である。このインクは誘電体インクであり、これは例えば電界を印加すると分極され得る電気絶縁体である。また、誘電体材料は、一般的には低い電気伝導率を有し、溝212内の第1の積層体200a及び第2の積層体200bの縁部を絶縁する。しかし他の場合には、インクジェット印刷とは異なる堆積方法を用いて第1の材料を堆積させてもよい。このような場合、第1の材料は、誘電体インクとは異なる材料であってもよく、又は異なる材料を含んでいてもよい。
【0043】
図2Bの実施例では、第1の材料214は、非真空環境で堆積される。非真空環境は、一般に真空下に保持されない環境であり、これは例えば真空環境内の圧力よりも大きい圧力を有すると考えられる。例えば、非真空環境は大気圧であってもよい。第1の材料214を堆積するために非真空環境を用いることで、環境制約が緩和されることにより、堆積工程を単純化する。非真空環境であるにもかかわらず、第1の材料214(並びに/又は第1の積層体200a及び第2の積層体200bの露出した表面)は、周辺環境における分子との相互作用による悪影響を受けない場合がある。これにより、製造される蓄電装置の性能に不当に影響を及ぼすことなく、第1の材料214を簡単に堆積させることができる。
【0044】
図2では、非真空環境は不活性環境であり、したがってアルゴン等の少なくとも1つの不活性ガスを含む。不活性環境は、一般に非反応性であると考えられ、一般的には反応性材料を欠いているか、又は十分に低濃度の反応性材料(例えば不活性物質と比較して)を含み、環境と第1の積層体200a及び第2の積層体200b並びに/又は第1の材料214との間の反応は、十分に低い。製造される蓄電装置の性能は、このような反応による影響を受けないか、又は有意に影響を受けない。これにより、製造される蓄電装置の品質をさらに向上させる。
【0045】
非真空環境は、不活性環境であることに加えて、又は不活性環境の代わりに、乾燥室環境であってもよい。乾燥室環境とは、一般的には大気の湿度と比較して湿度が比較的に低い環境を指す。一例として、乾燥室環境は、20℃~40℃の温度及び1%未満の湿度を有し得る。これにより、第1の積層体200a、第2の積層体200b及び/又は第1の材料214と周辺環境との間の望ましくない相互作用をさらに低減することができる。
【0046】
図2Bでは、基板202の第1の部分202a上に第1の積層体200aが配置され、基板202の第2の部分202b上に第2の積層体200bが配置されている。第1の部分202aと第2の部分20bとの間に、基板202の第3の部分202cがある。第1の材料214は、基板202の第3の部分202c上に堆積され、先に形成された溝212を埋めるプラグを形成する。第1の材料214は、第1の積層体200a及び第2の積層体200bのCC層204a、204bと、第1の電極層206a、206bと、電解質層208a、208bと、第2の電極層210a、210bと、の露出した縁部を覆う。このようにして、積層体200a、200bの各々の第1の電極層206a、206bと第2の電極層210a、210bとは、互いに電気的に絶縁される。ただし他の実施例では、第1の材料214は溝212を完全に埋める必要はないが、それでもなお積層体200a、200bの各々の第1の電極層206a、206bと第2の電極層210a、210bとを互いに電気的に絶縁する。
【0047】
図2Cでは、第1の材料214を貫通する溝216が形成されている。これにより、第1の材料214を、第1の積層体200aの露出した縁部を覆うように配置される第1の部分214aと、第2の積層体200bの露出した縁部を覆うように配置される第2の部分214bと、に分離する。参照を容易にするために、
図2Aに形成された複合積層体を貫通する溝212を第1の溝212と呼び、
図2Cに形成された溝216を第2の溝216と呼んでもよい。第2の溝216は、第1の溝212よりも幅が小さいため、第1の材料の第1の部分214aと第2の部分214bとが第1の積層体200aと第2の積層体200bとの間に残り、第1の積層体200aと第2の積層体200bとの露出した縁部を電気的に絶縁する。第2の溝216は、
図2Cの実施例における第1の溝212と同じ方法で形成される(すなわちレーザーアブレーションを使用する)。しかし他の実施例では、第2の溝216は異なるプロセスを用いて形成されてもよく、これは第1の溝212の形成に使用されるプロセスと同じであっても異なっていてもよい。
【0048】
図2Cの実施例では、第2の溝216が第1の材料214の深さを通して延び、第1の材料214によって以前に覆われていた基板202の一部が露出している。したがってこの場合、第2の溝216は、第1の材料214を貫通する貫通孔を形成する。ただし、これは、第2の溝が第1の材料214の深さの途中までしか延びないように深さを浅くしたもの、又は第2の溝の形成を省略しているものなど、他の実施例についてはこの限りではない。
【0049】
図2Dでは、第1の積層体200aと、第1の材料214と、第2の積層体200bと、の上に第2の材料218が堆積される。この実施例における第2の材料218は、導電性である。したがって、第2の材料218を通るイオン又は電子の流れにより、第2の材料218を通る電流が流れることができる。第2の材料218は、第2の材料218を介して、第1の積層体200aの第2の電極層210aを第2の積層体200bの第2の電極層210bに電気的に接続する。第1の積層体200a及び第2の積層体200bは、第2の材料218を介してさらなる電気部品に電気的に接続することができる。
【0050】
第2の材料218は、
図2Dの実施例では負のCC層(負極CC層と呼ばれることもある)として作用する。第2の材料218は、第1の積層体200a及び第2の積層体200bの第2の電極層210a、210bに接触し、この場合、第1の積層体200a及び第2の積層体200bからそれぞれ形成されるセルの放電時のアノードに対応する。この実施例における第2の材料218は、銅を含む。しかし、アルミニウム、ニッケル箔若しくは鋼板、又はポリエチレンテレフタレート(PET)上のアルミニウム等の金属化プラスチックを含む金属化材料等の任意の適切な金属を使用できることが理解されよう。
【0051】
第1の積層体200a及び第2の積層体200b上に第2の材料218を堆積させることは、負極又は負極CCが負極又は負極CCの露出した側縁部に沿って電気コネクタ等のさらなる電気部品に接続される他の場合と比較して、第2の材料218と第2の電極層210a、210bとの間の接触面積を増加させる。例えば、電気コネクタに接続するためのこのような負極又は負極CCの側縁部の面積は、一般的には
図2Dにおいて第2の材料218が堆積されている第1の積層体200a及び第2の積層体200bの表面の面積よりもはるかに小さい。
図2Eのような実施例では、第2の材料218と第1の積層体200a又は第2の積層体200bの少なくとも一方の第2の電極層210a、210bとの間の接触面積は、第2の溝216内の第2の電極層210a、210bの端面の面積よりも大きい。接触面積を増加させることは、一般的には第2の材料218と第2の電極層210a、210bとの間の界面における接触抵抗を低減し、製造される蓄電装置の性能を向上させる。
【0052】
図2Dのような実施例における第2の材料218は、インクジェット印刷技術を含まない堆積方法である非インクジェット印刷法を用いて堆積される。このような方法は、インクジェット印刷よりも簡単かつ経済的であり得る。適切な方法には、PVD又若しくはCVD等の蒸着方法、又はフラッド堆積が含まれる。これらの方法では、
図2Cに示す構造体の表面上に第2の材料218を堆積させて、
図2Dに示すように、この構造体の表面の上に第2の材料218の層を形成することができる。これにより、第2の材料218を堆積させる場所を正確に制御する必要なく、構造体の露出した表面の上に第2の材料218を堆積させることができる。これにより、特定のパターンに従って第2の材料218を堆積させること(例えば第2の材料が表面のいくつかの領域に堆積されるが、他の領域には堆積されないなど)と比較して、第2の材料218の堆積を単純化することができる。さらに、少なくともいくつかの非インクジェット印刷法は、インクジェット印刷技術よりも経済的かつ/又はより簡単である。
【0053】
図2Dでは、第1の積層体200a及び第2の積層体200bの各々は、基板202上の第1の表面220a、220bと、第1の表面220a、220bと反対側の第2の表面222a、222bと、を備える。第2の材料218は、第1の積層体200a及び第2の積層体200bの両方の第2の表面222a、222bの実質的に全て(この場合、全て)を覆うように堆積される。これにより、第2の材料218の堆積をさらに単純化し、第2の材料218と第2の電極層210a、210bとの間の接触面積をさらに増加させる。このように第2の材料218を堆積させることは、例えば第2の材料218を使用して第1の積層体200a及び第2の積層体200bの第2の表面222a、222bを封入することを含む。これは、例えば第2の材料218が第2の表面222a、222bと環境との間の障壁として構成されることにより、第2の表面222a、222bと周辺環境との間の接触を低減することによって、第2の表面222a、222bを保護する。したがって、第2の材料218は、第2の表面222a、222bを潜在的な損傷又は周囲環境との相互作用から保護する。
【0054】
例えば、所与の表面の実質的に全てを覆うように第2の材料218を堆積させることは、所与の表面の全て、製造公差若しくは測定公差内の所与の表面の全て、又は所与の表面の80%を超える等の所与の表面の実質的な部分を覆うように第2の材料218を堆積させることを指すことを理解されたい。このようにして、堆積後、第2の材料218は、
図2Dにおける第1の積層体200a及び第2の積層体200bの第2の表面222a、22bの実質的に全てと重なる。第2の材料218は、
図2Dの実施例では、第1の積層体200a及び第2の積層体200bの第2の表面222a、222b上に堆積され、第2の表面222a、222bに接触している。しかし他の実施例では、第2の材料218と第1の積層体200a及び第2の積層体200bの第2の表面222a、222bとの間に少なくとも1つの介在層があるが、それにもかかわらず第2の材料218が第2の表面222a、222bと重なるように、第2の材料218を堆積させてもよい。このような場合、少なくとも1つの介在層は一般に導電性であり、第2の材料218は少なくとも1つの介在層を介して第2の電極層210a、210bに電気的に接続される。
【0055】
図2Dでは、第2の材料218は、第1の材料214を貫通して形成される第2の溝216に堆積される。この場合、第2の溝216が第1の材料214を貫通して基板202の第3の部分202cの露出した部分まで延びるので、第2の材料218は、基板202の第3の部分202cのこの部分上にも堆積される。しかし他の実施例では、第2の材料218は、基板202の異なる部分に接触してもよく、又は基板202に接触しなくてもよい(例えば、第2の溝216が第1の材料214の途中までしか延びておらず、第2の溝216が形成されても基板202が露出しない場合、又は第2の溝の形成が省略される場合)。基板202の第3の部分202cは、第1の積層体200aと第2の積層体200bとが配置される基板202の第1の部分202aと第2の部分202bとの間にある。第1の部分202aと、第2の部分202bと、第3の部分202cとは、
図2Bではラベル付けされているが、明確にするために、
図2Dからは省略されている。第1の積層体200aと、第1の材料214と、基板202の第3の部分202cの一部と、第2の積層体200bと、の上に第2の材料218を堆積させることによって、第2の材料218を、
図2Cの構造体を覆う層、例えば連続層として堆積させることができる。この場合も、第2の材料を構造体の一部の領域に堆積させて他の領域には堆積させない場合と比較して、第2の材料218の堆積を単純化することができる。
【0056】
第2の材料218を第2の溝216内に堆積させることにより、第2の材料218が第2の溝216内に延びない他の場合と比較して、電気コネクタ等のさらなる電気部品にその後接続するための第2の材料218の面積が増加する。例えば、その後、第2の溝216内にある第2の材料218の長さ(
図2Aに示す第1の溝212の幅wに垂直に取られる長さ)に沿って、電気コネクタを堆積させることができる。実施例では、第2の溝216内の第2の材料218の長さは、第2の材料218の層の幅よりも大きい。したがって、電気コネクタを第2の材料218の長さに接触させることによって、電気コネクタ負極、負極CC又は負極若しくは負極CCに接続される導電性材料の側縁部(これは一般的には第2の材料218の長さの表面積よりもはるかに小さい表面積を有する)に接触させる他の場合と比較して、接触面積を増大させ得る。
【0057】
図2Dの実施例では、第2の材料218は、真空中で堆積される。したがって、この場合、第1の積層体200a及び第2の積層体200bは真空中で形成され、第1の材料214は非真空環境で堆積され、第2の材料218は真空中で堆積される。それにもかかわらず、環境条件が変化しても、第2の材料218と第2の電極層210a、210bとの間の接触面積が増加することは、製造される蓄電装置の性能を全体的に向上させることが見出されている。
【0058】
第2の材料218が堆積した後、第1の材料214は、第2の材料218が第1の積層体200a及び第2の積層体200bの第1の電極層206a、206bと、第1の積層体200a及び第2の積層体200bの電解質層208a、208bと、に接触するのを防止して、第1の積層体200a及び第2の積層体200bの第1の電極層210a、210bと、第1の積層体200a及び第2の積層体200bの電解質層208a、208bと、を第2の材料218から電気的に絶縁する。したがって、第1の材料214は絶縁層として作用し、第1の積層体200aの第1の電極層206aと第2の電極層210aとの間、及び第2の積層体200bの第1の電極層206bと第2の電極層210bとの間の短絡を防止又は低減する。
【0059】
図2Dの構造体は、蓄電装置に対する中間構造体224であると考えてよい。蓄電装置は、中間構造体224のさらなる処理によって中間構造体224から製造され得る。中間構造体224に適用され得るさらなる処理の例が
図2Eに示されており、ここでは、第1の積層体200aが配置されている基板202の第1の部分202aが、第2の積層体200bが配置されている基板202の第2の部分202bから分離されている。分離は、レーザー切断等の任意の適切な切断方法を用いて行い得る。
図2Eでは、基板202の第1の部分202aと第2の部分202bとの分離は、第1の積層体200aと第2の積層体200bとの間の溝内で第2の材料218を切断することを含む。それによって、第2の材料218は、第1の積層体200a及び第1の材料214の第1の部分214aを覆う第1の部分218aと、第2の積層体200b及び第1の材料214の第2の部分214bを覆う第2の部分218bと、に分離される。このようにして、第1の積層体200aと第2の積層体200bとは互いに分離され、これは単離又はセル単離と称され得る。
【0060】
図2Fでは、さらなる溝226が第1の積層体200aを貫通して形成されて、さらなる溝226内に第1の電極層206aが露出している。この実施例では、さらなる溝226は、CC層204aに延びることなく、第2の材料218の第1の部分218aと、第2の電極層210aと、電解質層208aと、第1の電極層206aと、を完全に貫通して延びている。これにより、第2の材料218の第1の部分218aと、第2の電極層210aと、電解質層208aと、第1の電極層206aと、の縁部、及びCC層204aの上面(基板200上のCC層204aの表面とは反対側)が露出する。これにより、第1の電極層206a及び/又はCC層204aを、セルを直列又は並列に接続するための電気コネクタ等のさらなる電気部品にその後接続することができる。第2の材料218を堆積させた後に第1の電極層206aを露出させることによって、第1の電極層206aは、前の処理の間中、積層体200aの他の層によって保護されたままである。これにより、第1の電極層206a間の望ましくない相互作用のリスクを低減する。
【0061】
図2Gは、(図示のような)いくつかの実施例において、第1の積層体200aを貫通するさらなる溝226を形成することが、第1の積層体200aを貫通し、かつ基板202を貫通するさらなる溝226を形成することを含むことを示している。言い換えれば、
図2Fは、さらなる溝226を形成する途中のスナップショットを示し、この時点で、さらなる溝226は、第1の積層体200aの途中まで延びている。さらなる溝226の形成を続けて、
図2Gに示す構造体を得る。
図2Gでは、さらなる溝226は、第1の積層体200aの全体と、第1の積層体200aが配置される基板202の第1の部分202aと、を貫通して形成されて、基板202を第1の副部分202a′と第2の副部分202a″とに分離している。したがって、これにより、基板202の第1の副部分202a′上の第1の積層体200aの部分を、層の残りの部分から単離し、蓄電装置に対する第1のセルを形成する。さらなる溝226を形成して、第1の電極層206aとCC層204aとを露出させ、第1のセルを単離することによって、これらの工程を別々に行う場合よりも蓄電装置を効率的に製造することができる。
【0062】
場合によっては、
図2E及び
図2Gの工程は、同時に又は同じプロセスステップの一部として(例えば同じ装置を使用して)行ってもよい。例えば、中間構造体224の表面を横切るようにレーザーカッターを方向づけて基板202を切断して、第1の部分202aと第2の部分202bとを互いに分離し、第1の副部分202a′と第2の副部分202a″とを互いに分離してもよい(並びに、第1の積層体200aの第1の電極層206aとCC層204aとを露出させてもよい)。これにより、蓄電装置の製造効率をさらに向上させる。
【0063】
例えば
図2E~
図2Gに示すように、それぞれのセルを単離した後、露出した第1の電極層を適切に絶縁し、単離したセルを上下に積み重ねてもよい。次いで、電気コネクタをセルの両側に沿って設けて、セルの片側にある第1の電気コネクタがCC層204に接触するが、電気絶縁材料によって他の層に接触することを防止し得る。同様に、セルの反対側にある第2の電気コネクタは、第2の材料218と接触するように配置することができるが、第1の材料214によって他の層に接触することは防止される。上述のように、第2の電気コネクタは、
図2Gに示す第1の積層体200aの側面(すなわち基板202の平面に垂直な平面)に沿って、第2の材料218を覆うように堆積されてもよい。例えば、第2の電気コネクタは、第1の積層体200aの側面に沿って配置される第2の材料218の部分の全て、実質的に全て、又は大部分に接触し得る。これにより、第2の電気コネクタと第2の材料218との間の接触面積を増加させ、接触抵抗をさらに低減する。第1の電気コネクタ及び第2の電気コネクタは、例えばスパッタリングによってセル積層体の縁部に塗布される金属材料であってもよい。したがって、セル積層体のセルを単純かつ容易に並列に接合することができる。
【0064】
場合によっては、両面加工を施し、複数の層が同じ基板の両側に堆積される、すなわち基板の両側の上に複数の層を含むようにしてもよい。両面加工によって形成される中間構造体324の一実施例を
図3に概略的に示す。
図3の中間構造体324の構成のうち
図2Bの中間構造体224に類似するものには同じ符号が付されているが、100だけ増分されている。対応する記述が適用されるものとする。
【0065】
図3の中間構造体324の基板302の第1の側面328a上に配置される層は、
図2Dの中間構造体224の基板202上に配置される層と同じであり、第1の積層体300aと、第2の積層体300bと、第1の材料314と、第1の積層体300a及び第2の積層体300b及び第1の材料314を覆う第2の材料318と、を含む。この実施例では、これらの層は、
図2A~
図2Dを参照して説明した中間構造体224の層の堆積と同じ方法で堆積される。
【0066】
図3の中間構造体324の基板302の第2の側面328bの上にも、第1の側面328a上に配置されるものと同じ層を同じ順序で含む。基板302の第2の側面328b上の層も、
図2A~
図2Dを参照して説明した中間構造体224の層の堆積と同じ方法で堆積されるが、基板302の第1の側面328a上の層に対して基板302の反対側に堆積される。中間構造体324の第2の側面328b上の各層は、中間構造体324の第1の側面328a上の対応する層と同じであり、同じ符号が付されているが、プライムが付けられている。
【0067】
基板302の両側に層を堆積させることによって、製造プロセスの効率をさらに向上させる可能性がある。例えば、レーザーが切断毎により多くの層を通過し得るため、レーザー切断工程の数を減らす可能性がある。
【0068】
図4A~
図4Eは、さらなる実施例による蓄電装置の製造方法の構成を示す概略図である。
図4A~
図4Eの方法は、第1の積層体と第2の積層体との間の溝内に第1の材料を堆積させる前に、第1の積層体及び第2の積層体の上に第2の材料の第1の層が堆積されることを除いて、
図2A~
図2Gと同じ方法である。
図4A~
図4Eの構成のうち
図2A~
図2Gの対応する構成と同じものには同じ符号が付されているが、200だけ増分されている。対応する説明が適用されるものとする。
【0069】
図4Aは、複合積層体400を第1の積層体400aと第2の積層体400bとに分離する前の複合積層体400を示す。
図4Aの積層体400は、
図1の積層体100と同様である。ただし、第2の材料の第1の層430が積層体400の上に堆積されている。第2の材料の第1の層430は、この実施例では積層体400の第2の電極層410上に堆積され、
図2A~
図2Gを参照して説明した第2の材料218と同じである。例えば第2の材料の第1の層430は、銅を含んでもよく、真空中で堆積させてもよい。複合積層体400は第1の積層体及び第2の積層体が形成される層を備えるので、
図4Aに示すように複合積層体400の上に第2の材料の第1の層430を堆積させることによって、第2の材料の第1の層430は第1の積層体及び第2の積層体の上に堆積されることを理解されたい。
【0070】
この場合、第2の材料の第1の層430は、CC層(この場合は負極CC層)の一部を形成する。第1の層430は、積層体400の下にある層を、周囲環境への露出による損傷又は他の劣化から保護する。例えばこの実施例における第2の電極層410は、反応性の高いリチウムイオンを含むので、第1の層430は反応性の高い第2の電極層410と周辺環境との間の障壁として作用する。したがって、第1の層430は、第2の電極層410と環境との間の相互作用を低減し、製造される蓄電装置の性能を向上させ、製造工程の安全性を向上させることができる。この場合、積層体400の層と第2の材料の第1の層430とを真空中で堆積させることにより、第2の電極層410と環境との間の相互作用をさらに低減する。第2の材料自体は第2の電極層410よりも環境条件に対して感度が低いので、積層体400の上に第2の材料の第1の層430を堆積させた後、例えばさらなる処理のために、製造される蓄電装置の性能には不当に影響を与えずに、積層体400を非真空環境に曝し得る。
【0071】
図4Aでは、第2の材料の第1の層430は、複合積層体400の実質的に全て(この場合は全て)の上に堆積される(ただしこれは単なる例である)。これにより、複合積層体400の下にある層を、環境との望ましくない相互作用から保護する。また、これにより、特定のパターンに従って堆積させるのと比較して、第1の層430の堆積を単純化する。
【0072】
図4Bは、
図4Aに示す複合積層体400を貫通する溝412を設けることによる、第1の積層体400a及び第2の積層体400bの形成を示す。
図4Bは、第1の積層体400a及び第2の積層体400b上(第2の電極層410a、410b上)に第2の材料の第1の層430の第1の部分430a及び第2の部分430bが配置されていることを除いて、
図2Aと同じ工程を示す。他の実施例では、複合積層体400を貫通する溝412を形成して、第1の積層体400a及び第2の積層体400bを作成してから、その後、第1の積層体400a及び第2の積層体400b上に第2の材料の第1の層430を堆積させてもよいことを理解されたい。
【0073】
図4Cは、溝412に第1の材料414を堆積させ、第1の積層体400a及び第2の積層体400bの露出した縁部を絶縁する様子を示す。この実施例では、第1の材料414は、第2の材料の第1の層の第1の部分430a及び第2の部分430bの露出した縁部も覆うが、これは他の実施例では必要ない。
【0074】
図4Dは、第1の積層体400a及び第2の積層体400bから形成される第1のセル及び第2のセルの電気的接続のために、第2の材料層をその後堆積するために第1の材料414を貫通する第2の溝416を形成する様子を示す。
【0075】
この実施例における
図4B~4dの工程は、非真空条件下で行われる。しかし、第2の材料の第1の層430は、第1の積層体400a及び第2の積層体400bの下にある層を保護し、これらの層と非真空環境との間の望ましくない反応を低減する。
【0076】
図4Eは、第2の材料の第2の層432として、第1の積層体400aと、第1の材料414と、第2の積層体400bと、の上に第2の材料を堆積させる様子を示す。
図4Eは、第2の材料が、第1の積層体400a及び第2の積層体400bの第2の電極層410a、410b上ではなく、第2の材料の第1の層430上に堆積されることを除いて、
図2Dを参照して上述したものと同じ工程を示す。言い換えれば、第2の材料の第1の層430は、堆積された第2の材料の第2の層432と第2の電極層410a、410bとの間にある。第1の積層体400aと、第1の材料414と、第2の積層体400bと、の上に第2の材料の第2の層432を堆積させることによって、第2の材料の第2の層432を介して、第2の電極層410a、410bと第2の材料との間、及び第2の材料とさらなる電気部品との間の接触面積がより大きくなり、第2の電極層410a、410bをさらなる電気部品に簡単に接続することができる。
【0077】
図4Eに示す中間構造体424は、第1の電極層を露出させ(正極露出と称され得る)、積層体をセルに単離するために、
図4E~4Gに示すようなさらなる工程を経てもよい。単離したセルは、積み重ねられ、直列又は並列に互いに接続されてもよい。
【0078】
図4A~
図4Eの実施例は片面処理を含むが、
図4A~
図4Eの方法は、例えば
図3を参照して説明したように、両面方式でも等しく行い得ることを理解されたい。
【0079】
上記の実施形態は、例示的な実施例として理解されるべきである。さらなる実施例が想定される。
【0080】
例えば上述した図は、第1の電極層と、第1の電極層と基板との間にCC層と、を有する第1の積層体及び第2の積層体を示す。他の実施例では、上述した実施例と同じであるが、CC層を省略してもよく、又は第1の電極層がCC層を備えてもよい。第1の電極層がCC層を備える実施例では、第1の積層体を貫通するさらなる溝を形成して第1の電極層を露出させることは、さらなる溝を形成して溝内に第1の電極層のCC層を露出させることを含んでもよい。例えば第1の電極層のCC層を使用して、第1の電極層を電気コネクタ等のさらなる電気部品に電気的に接続してもよい。
【0081】
図2A~
図2Gは、第2の材料218を堆積させる前に、第1の材料214を貫通する第2の溝216を形成する実施例を示す。しかし他の実施例では、第2の溝を形成することなく、第2の材料を、第1の積層体と、第1の材料と、第2の積層体と、の上に堆積させてもよい。
【0082】
上記の実施例では、正極は負極よりも基板に近い。他の実施例では、上述した実施例と同じであるが、負極が正極よりも基材に近くてもよい。例えば、第1の電極層を負極層とし、第2の電極層を正極層としてもよい。このような場合、集電層として作用する層(存在する場合)も、上述の実施例と比較して逆に、例えば第2の材料が正極CCとして機能し、第1の電極層と基板との間のCC層が負極CCとして機能してもよい。
【0083】
任意の1つの実施例に関連して記載された任意の構成は、単独で又は記載された他の構成と組み合わせて使用されてもよく、また、任意の他の実施例の1つ以上の構成又は任意の他の実施例の任意の組み合わせと組み合わせて使用されてもよいことが理解されるべきである。さらに、上記に記載されていない均等物及び変形も、添付の特許請求の範囲内で採用され得る。