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特許7634546プラスチック含有材料の分解方法、無機材料の回収方法、再生炭素繊維、及び再生炭素繊維の製造方法、混紡糸、当該混紡糸を含む炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレット、及びそれらの製造方法、炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランド、及びその製造方法、並びに炭素繊維強化熱可塑性ペレット
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  • 特許-プラスチック含有材料の分解方法、無機材料の回収方法、再生炭素繊維、及び再生炭素繊維の製造方法、混紡糸、当該混紡糸を含む炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレット、及びそれらの製造方法、炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランド、及びその製造方法、並びに炭素繊維強化熱可塑性ペレット 図1
  • 特許-プラスチック含有材料の分解方法、無機材料の回収方法、再生炭素繊維、及び再生炭素繊維の製造方法、混紡糸、当該混紡糸を含む炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレット、及びそれらの製造方法、炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランド、及びその製造方法、並びに炭素繊維強化熱可塑性ペレット 図2
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  • 特許-プラスチック含有材料の分解方法、無機材料の回収方法、再生炭素繊維、及び再生炭素繊維の製造方法、混紡糸、当該混紡糸を含む炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレット、及びそれらの製造方法、炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランド、及びその製造方法、並びに炭素繊維強化熱可塑性ペレット 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】プラスチック含有材料の分解方法、無機材料の回収方法、再生炭素繊維、及び再生炭素繊維の製造方法、混紡糸、当該混紡糸を含む炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレット、及びそれらの製造方法、炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランド、及びその製造方法、並びに炭素繊維強化熱可塑性ペレット
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/16 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
C08J11/16 ZAB
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022546929
(86)(22)【出願日】2021-08-31
(86)【国際出願番号】 JP2021032002
(87)【国際公開番号】W WO2022050281
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2022-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2020147123
(32)【優先日】2020-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】乳井 真吾
(72)【発明者】
【氏名】豊貞 輝敬
(72)【発明者】
【氏名】山本 智義
(72)【発明者】
【氏名】野々川 竜司
(72)【発明者】
【氏名】華 国飛
(72)【発明者】
【氏名】村上 拓哉
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-112427(JP,A)
【文献】特開昭63-087228(JP,A)
【文献】特開2005-307007(JP,A)
【文献】特表2020-515658(JP,A)
【文献】特開平06-298993(JP,A)
【文献】特開2008-240170(JP,A)
【文献】特開2011-246621(JP,A)
【文献】特開2019-127040(JP,A)
【文献】特開2012-211223(JP,A)
【文献】特開2013-146649(JP,A)
【文献】特開2014-177523(JP,A)
【文献】特開2018-083314(JP,A)
【文献】国際公開第2018/212016(WO,A1)
【文献】大窪和也 他2名,廃棄プリプレグから抽出した再生炭素繊維のPPとの造粒時の折損-成形複合材料の強度変化に及ぼす影響-,Journal of the Society of Materials Science,Japan,日本,2018年04月,Vol.67,No.4,424-429
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 11/
B29B 17/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック含有材料を、酸素濃度2体積%以上10体積%未満である低酸素濃度ガスが導入された加熱炉内の雰囲気中において、半導体材料の存在下、第1表面温度まで加熱して、前記プラスチック含有材料中のプラスチックを分解すること、
を含み、
前記プラスチック含有材料と前記半導体材料とが、50mm以下の距離で互いに離れて配置されている、
プラスチック含有材料の分解方法。
【請求項2】
前記低酸素濃度ガスを、前記プラスチック含有材料の表面温度が300℃未満である間に前記加熱炉の前記雰囲気中に導入する、請求項1に記載の分解方法。
【請求項3】
前記第1表面温度が、300℃~600℃である、請求項1又は2に記載の分解方法。
【請求項4】
前記低酸素濃度ガスが、空気及び希釈ガスの混合ガスである、請求項1~3のいずれか一項に記載の分解方法。
【請求項5】
前記第1表面温度での加熱処理に供された前記プラスチック含有材料を、半導体材料の存在下、酸素濃度10体積%以上の雰囲気中において加熱することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の分解方法。
【請求項6】
前記プラスチック含有材料が、プラスチック及び無機材料を含有しており、かつ
請求項1~5のいずれか一項に記載の分解方法によって前記プラスチック含有材料中の前記プラスチックを分解して、前記無機材料を回収することを含む、
無機材料の回収方法。
【請求項7】
前記無機材料と共に回収される前記プラスチック由来の残留炭素が、前記無機材料の5重量%以下である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記プラスチック含有材料が、前記無機材料として炭素繊維を含有している炭素繊維強化プラスチックである、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
回収される前記炭素繊維が、3.0GPa以上の単繊維引張強度及び6.0以上のワイブル形状係数を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
プラスチック含有材料を、酸素濃度2体積%以上10体積%未満である低酸素濃度ガスが導入された加熱炉内の雰囲気中において、半導体材料の存在下、第1表面温度まで加熱して、前記プラスチック含有材料中のプラスチックを分解すること、
を含み、
ここで、前記プラスチック含有材料が、炭素繊維を含有している炭素繊維強化プラスチックである、
3.0GPa以上の単繊維引張強度及び6.0以上のワイブル形状係数を有する再生炭素繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(第1の発明)
本開示の第1の発明(第1の本発明)は、プラスチック含有材料の分解方法、この分解方法を含む無機繊維の回収方法、再生炭素繊維、及び再生炭素繊維の製造方法に関する。
【0002】
(第2の発明)
本開示の第2の発明(第2の本発明)は、再生炭素繊維及び熱可塑性樹脂繊維の混紡糸、並びにこの混紡糸から形成される炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットに関する。また、本開示の第2の発明は、それらの製造方法に関する。
【0003】
(第3の発明)
本開示の第3の発明(第3の本発明)は、3次元造形に適した、再生炭素繊維及び熱可塑性樹脂繊維の混紡糸を含む炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドに関する。また、本開示の第3の発明はそれらの製造方法に関する。
【0004】
(第4の発明)
本開示の第4の発明(第4の本発明)は、炭素繊維強化樹脂成型物の廃材等を用いて製造される再生炭素繊維を含有する炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットに関する。
【背景技術】
【0005】
(第1の本発明について)
プラスチックを分解する方法、又は繊維強化プラスチック等から強化繊維等を回収する方法として、半導体の熱活性を利用する方法(TASC法)が知られている。
【0006】
特許文献1は、ポリカーボネート等の被分解物を、二酸化チタンなどの半導体粉末の存在下で、空気中において加熱したことを記載している。
【0007】
特許文献2は、繊維強化プラスチックからのグラスファイバーの回収方法を開示している。この文献は、半導体粉末としてのCr等と繊維強化プラスチックとをオーブン内で加熱して、グラスファイバーを回収したことを記載している。
【0008】
特許文献3は、プラスチック又はプラスチック複合体材料の処理方法を記載している。この方法は、被処理物であるプラスチック又はプラスチック複合体材料の表面にのみ半導体を接触させ、酸素存在下において被処理物を加熱することを含む。この文献は、セラミクス等からなる多孔体(例えばハニカム状支持体)の表面に半導体を担持した基板の上に被処理物を載せて処理することを記載している。
【0009】
特許文献4は、プラスチック複合材の分解方法を開示している。この方法は、反応容器内でバンドギャップが4eV以下である無機酸化物の触媒とプラスチック複合材とを接触させることを含む。この文献は、ハニカム型脱硝触媒(TiO/V/WO又はMoOの三元触媒)等を用いて、乾燥空気下でプラスチック複合材を加熱処理したことを記載している。この文献は、プラスチック複合材の表面温度を480~650℃にすることを記載している。
【0010】
炭素繊維含有プラスチック等から炭素繊維を回収する方法として、下記のような熱分解法も知られている(特許文献5~7)。
【0011】
特許文献5は、炭素繊維強化プラスチックを原料として再生炭素繊維を製造する方法を開示している。この文献に記載の方法は、炭素繊維強化プラスチックを乾留し炭素繊維の表面に固定炭素を付着させる工程、及び、加熱によって固定炭素の一部を除去して再生炭素繊維を得る工程を含む。
【0012】
特許文献6は、炭素繊維強化樹脂から炭素繊維基材を再生炭素繊維束として得る方法を開示している。この方法は、炭素繊維強化樹脂を加熱することによってマトリックス樹脂を熱分解して加熱処理物を得ること、及び、加熱処理物を解砕することを含む。
【0013】
特許文献7は、炭素繊維含有樹脂から炭素繊維を回収する方法を開示している。この方法は、炭素繊維含有樹脂を有する対象物を、特定の範囲の酸素濃度下において複数段の熱分解にさらすことを含む。この方法では、対象物が、所定の温度T(B1)及び所定の酸素含有量G(B1)で実行される第1の熱分解領域B1、及び、それに続く、所定の温度T(B2)及び所定の酸素含有量G(B2)で実行される第2の熱分解領域B2を通過する。酸素含有量G(B2)が、酸素含有量G(B1)よりも高く、かつ、温度T(B2)が、温度T(B1)よりも高い。
【0014】
(第2の本発明について)
炭素繊維は、比強度・比弾性率に優れ、軽量であるため、熱可塑性樹脂の強化繊維などとして用いられている。炭素繊維強化樹脂複合材料(又は、炭素繊維強化プラスチック、CFRP)は、スポーツ・一般産業用途だけでなく、航空・宇宙用途、自動車用途など、幅広い用途に利用される。
【0015】
炭素繊維強化樹脂複合材料の一つの形態として、炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットがある。炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットは、連続炭素繊維を熱可塑性樹脂で被覆処理した樹脂ストランドをカットすることで製造される長繊維強化ペレットと、不連続炭素繊維を熱可塑性樹脂に混錬分散した樹脂ストランドをカットすることで製造される短繊維強化ペレットの2つがある。長繊維強化ペレットは、短繊維強化ペレットと比較して、比較的繊維長の長い炭素繊維を含むことから、射出成形機等に供給されることで、機械物性等が優れる炭素繊維含有製品を製造することができる。
【0016】
近年、使用済みの炭素繊維含有製品などから回収される再生炭素繊維への需要が高まっている。再生炭素繊維の多くは、不連続に切断された炭素繊維であり、炭素繊維強化樹脂複合材料などの炭素繊維含有製品の原料として、未使用の連続炭素繊維と同様に取り扱うために、再生炭素繊維から紡績糸を製造する方法が検討されてきた。
【0017】
特許文献8は、炭素繊維強化樹脂複合材料のスクラップを900℃以上の温度にて熱処理することで得られる再生炭素繊維を含む炭化物を、熱可塑性樹脂繊維と混紡して、紡績糸を製造する方法を記載している。
【0018】
特許文献9は、炭素繊維強化樹脂複合材料の熱処理で回収される再生炭素繊維ではなく、炭化物を含まない再生炭素繊維を模して、切断された未使用の不連続炭素繊維を、合成繊維と混紡した紡績糸の活用方法を記載している。
【0019】
特許文献10は、熱可塑繊維と混紡せずに、炭素繊維又は再生炭素繊維のみで紡績糸を製造する方法を記載している。
【0020】
(第3の本発明について)
従来から、造形対象物を平行な複数の面で切断した断面毎に樹脂を順次積層することによって立体造形を行い、造形対象物の3次元モデルとなる造形物を生成する技術が知られている。このような技術は、3次元造形と呼ばれ、部品試作および製品製造などに利用することができる。3次元造形の方法としては、光硬化性樹脂を用いる光造形法、金属や樹脂の粉末を用いる粉末積層法、樹脂を溶融させて堆積させる溶融堆積法、紙、樹脂シートまたは金属薄板を積層する薄板積層法、液状または粉末状の樹脂や金属を噴射するインクジェット法などが知られている。
【0021】
溶融堆積法の例として、特許文献11に熱可塑性高分子材料を用いる溶融堆積法が開示されている。この技術では、固体状の熱可塑性高分子材料を吐出ヘッドに供給し、上記吐出ヘッドにおいて、上記高分子材料を溶融させ、吐出ヘッドから溶融した高分子材料を吐出し、層状に堆積させることを繰り返す。この技術において使用可能な熱可塑性高分子として、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリフェニルスルホン、ポリフェニレン、ポリカーボネート、高衝撃性ポリスチレン、ポリスルホン、ポリスチレン、アクリル系樹脂、アモルファス・ポリアミド、ポリエステル、ナイロン、PEEKおよびABSが例示されている。この方法は特に、比較的低温で溶融して吐出することが可能であり、環境負荷が小さい優位性から、植物由来の熱可塑性ポリエステルであるポリ乳酸が好適に使用される。
【0022】
また、樹脂に繊維を含有させた繊維強化樹脂組成物(FRP成形品)は、軽量で機械特性に優れるため、航空宇宙用途からスポーツ用途等に至るまで幅広い分野において利用されており、前述の溶融積層法において、溶融した熱可塑性樹脂と繊維とが一体化された繊維樹脂材料を型材に積層し、積層した繊維樹脂材料上にさらに繊維樹脂材料を積層する技術も知られている。(特許文献12)
【0023】
さらに、上述のとおり、近年、使用済みの炭素繊維含有製品などから回収される再生炭素繊維への需要が高まっている。再生炭素繊維の多くは、不連続に切断された炭素繊維であり、炭素繊維強化樹脂複合材料などの炭素繊維含有製品の原料として、未使用の連続炭素繊維と同様に取り扱うために、再生炭素繊維から紡績糸を製造する方法が検討されてきた(上記特許文献8~10参照)。
【0024】
(第4の本発明について)
上述のとおり、炭素繊維は、比強度・比弾性率に優れ、軽量であるため、熱可塑性樹脂の強化繊維などとして用いられている。炭素繊維強化樹脂複合材料(又は、炭素繊維強化プラスチック、CFRP)は、スポーツ・一般産業用途だけでなく、航空・宇宙用途、自動車用途など、幅広い用途に利用される。
【0025】
また、上述のとおり、炭素繊維強化樹脂複合材料の一つの形態として、炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットがある。炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットは、連続炭素繊維を熱可塑性樹脂で被覆処理した樹脂ストランドをカット(切断)することで製造される長繊維強化ペレットと、不連続炭素繊維を熱可塑性樹脂に混錬分散した樹脂ストランドをカットすることで製造される短繊維強化ペレットの2つがある。短繊維強化熱可塑性樹脂ペレットは、長繊維強化熱可塑性樹脂ペレットに対して、機械物性は劣るものの安価に製造できる方法として広く採用されている。
【0026】
特許文献13及び特許文献14は、炭素繊維から溶融混錬によりリサイクル炭素繊維含有複合体を製造する方法を記載している。この方法で用いられる炭素繊維には、炭素繊維強化樹脂複合材料の廃材から熱分解法によって回収され、マトリックス成分が炭化した残留炭素が付着している。
【0027】
特許文献15は、炭素繊維強化複合材料から回収したリサイクル炭素繊維に繊維処理剤を添加し、押出造粒機で円柱状とすることによりフィード性を向上した炭素繊維集合体について記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【文献】特開2005-139440号公報
【文献】特開2012-211223号公報
【文献】特開2013-146649号公報
【文献】特開2020-28850号公報
【文献】特開2013-64219号公報
【文献】国際公開第2018/212016号
【文献】特開2018-109184号公報
【文献】特開2018-35492号公報
【文献】特開2018-123438号公報
【文献】特開2020-90738号公報
【文献】特表2005-531439号公報
【文献】特表2016-520459号公報
【文献】特開2020-49820号公報
【文献】特開2019-155634号公報
【文献】特開2021-55198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
(第1の本発明)
従来のプラスチック分解方法では、比較的高温で加熱処理を行うため、エネルギー消費が過大になる場合があった。
【0030】
また、半導体の熱活性を用いる従来のプラスチック分解方法では、大気下で加熱処理する際に、過剰な酸化発熱が起こるおそれがあった。過剰な酸化発熱が生じると、温度の正確な制御が困難になるため、特に工業的な規模において、処理の安定性などの面で不適当である場合がある。
【0031】
また、酸素濃度を比較的低濃度に制御した場合、従来の半導体を用いない熱分解法では、プラスチックの分解効率が不十分となる場合、又は回収される炭素繊維の物性が低下する場合があった。
【0032】
このような背景において、本開示に係る第1の発明は、プラスチック含有材料を安定的にかつ効率的に分解することができるプラスチック含有材料の分解方法、及び無機材料の回収方法を提供することを目的とする。
【0033】
(第2の本発明)
使用済みの炭素繊維強化樹脂複合材料を分解し、再生炭素繊維を得る方法には、樹脂成分を、熱処理して分解する方法、溶剤を利用して溶解除去する方法、電気分解する方法等があるが、従来広く普及している方法として、熱処理して分解する方法が挙げられる。
【0034】
しかしながら、熱処理して分解する方法で得られる再生炭素繊維を原料として、熱可塑性樹脂繊維との混紡糸を製造できない場合があった。
【0035】
本開示の第2の発明は、熱処理して分解する方法で得られる再生炭素繊維を原料として安定的に製造される、熱可塑性樹脂繊維との混紡糸を提供することも目的とする。また、本開示の第2の発明は、その混紡糸から形成される炭素繊維強化熱可塑性樹脂繊維ペレットを提供することも目的とする。
【0036】
(第3の本発明)
使用済みの炭素繊維強化樹脂複合材料を分解し、再生炭素繊維を得る方法には、樹脂成分を、熱処理して分解する方法、溶剤を利用して溶解除去する方法、電気分解する方法等があるが、従来広く普及している方法として、熱処理して分解する方法が挙げられる。
【0037】
しかしながら、熱処理して分解する方法で得られる再生炭素繊維を原料として、熱可塑性樹脂繊維との混紡糸を製造した場合、炭素繊維強化樹脂複合材料中の樹脂が完全に分解しなかったり、残留炭化物が発生して混紡糸の製造が困難であったり、分解後に得られた繊維の機械物性、特に繊維の強度が分解前の繊維に比べて低下し、この繊維を用いた繊維強化複合材料の成形体の強度も低くなるという課題があった。
【0038】
本開示の第3の発明は、熱処理して分解する方法で得られる再生炭素繊維と熱可塑性樹脂とを原料として安定的に製造することができ、特には優れた機械物性を有する3次元造形物の製造に適している、炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドを提供することも目的とする。
【0039】
(第4の本発明)
使用済みの炭素繊維強化樹脂複合材料を分解し、再生炭素繊維を得る方法には、樹脂成分を熱処理して分解する方法(熱分解法)、溶剤を利用して溶解除去する方法、電気分解する方法等があるが、従来広く普及している方法として、熱処理して分解する方法が挙げられる。
【0040】
熱処理して分解する方法で得られる従来の再生炭素繊維を用いて短繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを製造した場合に、十分な補強性能を発揮することが難しかった。
【0041】
本開示の第4の本発明は、熱処理して分解する方法で得られる再生炭素繊維を原料として、優れた機械的強度を有する成形品の製造に用いることができる再生炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0042】
(第1の本発明)
本件発明者らは、第1の本発明に係る下記の<態様A1>~<態様A15>によって、第1の本発明に係る上記の課題が解決されることを見出した。
<態様A1>
プラスチック含有材料を、酸素濃度10体積%未満である低酸素濃度ガスが導入された加熱炉内の雰囲気中において、半導体材料の存在下、第1表面温度まで加熱して、前記プラスチック含有材料中のプラスチックを分解すること、
を含む、プラスチック含有材料の分解方法。
<態様A2>
前記低酸素濃度ガスを、前記プラスチック含有材料の表面温度が300℃未満である間に前記加熱炉の前記雰囲気中に導入する、態様A1に記載の分解方法。
<態様A3>
前記第1表面温度が、300℃~600℃である、態様A1又はA2に記載の分解方法。
<態様A4>
前記低酸素濃度ガスが、空気及び希釈ガスの混合ガスである、態様A1~A3のいずれか一項に記載の分解方法。
<態様A5>
前記希釈ガスが、過熱水蒸気を含む、態様A4に記載の分解方法。
<態様A6>
前記プラスチック含有材料と前記半導体材料とが、50mm以下の距離で互いに離れて配置されている、態様A1~A5のいずれか一項に記載の分解方法。
<態様A7>
前記プラスチック含有材料と前記半導体材料とが、互いに接触して配置されている、態様A1~A5のいずれか一項に記載の分解方法。
<態様A8>
前記第1表面温度での加熱処理に供された前記プラスチック含有材料を、半導体材料の存在下、酸素濃度10体積%以上の雰囲気中において加熱することを含む、態様A1~A7のいずれか一項に記載の分解方法。
<態様A9>
前記半導体材料が、酸化物半導体材料である、態様A1~A8のいずれか一項に記載の分解方法。
<態様A10>
前記プラスチック含有材料が、プラスチック及び無機材料を含有しており、かつ
態様A1~A9のいずれか一項に記載の分解方法によって前記プラスチック含有材料中の前記プラスチックを分解して、前記無機材料を回収することを含む、
無機材料の回収方法。
<態様A11>
前記無機材料と共に回収される前記プラスチック由来の残留炭素が、前記無機材料の5重量%以下である、態様A10に記載の方法。
<態様A12>
前記プラスチック含有材料が、前記無機材料として炭素繊維を含有している炭素繊維強化プラスチックである、態様A10又はA11に記載の方法。
<態様A13>
回収される前記炭素繊維が、3.0GPa以上の単繊維引張強度及び6.0以上のワイブル形状係数を有する、態様A12に記載の方法。
<態様A14>
3.0GPa以上の単繊維引張強度及び6.0以上のワイブル形状係数を有する、再生炭素繊維。
<態様A15>
プラスチック含有材料を、酸素濃度10体積%未満である低酸素濃度ガスが導入された加熱炉内の雰囲気中において、半導体材料の存在下、第1表面温度まで加熱して、前記プラスチック含有材料中のプラスチックを分解すること、
を含み、
ここで、前記プラスチック含有材料が、炭素繊維を含有している炭素繊維強化プラスチックである、
3.0GPa以上の単繊維引張強度及び6.0以上のワイブル形状係数を有する再生炭素繊維の製造方法。
【0043】
(第2の本発明)
本開示の第2の発明に係る下記の<態様B1>~<態様B10>によれば、第2の本発明に係る上記の課題を解決することができる:
<態様B1>
再生炭素繊維と熱可塑性樹脂繊維とを含む混紡糸であって、
前記再生炭素繊維が、3.0GPa以上の単繊維引張強度及び6.0以上のワイブル形状係数を有すること、並びに
前記再生炭素繊維が、残留炭素成分を含み、前記残留炭素成分の含有量が、前記再生炭素繊維に対して0重量%超5.0重量%以下であること、
を特徴とする、混紡糸。
<態様B2>
前記再生炭素繊維の含有量が、前記混紡糸に対して、50重量%超98重量%以下である、態様B1に記載の混紡糸。
<態様B3>
前記再生炭素繊維及び前記熱可塑性樹脂繊維の平均長さが、それぞれ、20mm以上80mm以下である、態様B1又はB2に記載の混紡糸。
<態様B4>
前記混紡糸に含有される前記熱可塑性樹脂繊維が、ポリオレフィン樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維、ポリアミド樹脂繊維、ポリエーテルケトン樹脂繊維、ポリカーボネート樹脂繊維、フェノキシ樹脂繊維、及びポリフェニレンスルフィド樹脂繊維、並びにこれらの混合物から選択される、態様B1~B3のいずれか一項に記載の混紡糸。
<態様B5>
芯鞘構造を有しており、
態様B1~B4のいずれか一項に記載の前記混紡糸が芯成分であること、及び
熱可塑性樹脂が鞘成分であること、
を特徴とする、炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレット。
<態様B6>
前記鞘成分としての前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノキシ樹脂、及びポリフェニレンスルフィド樹脂、並びにこれらの混合物から選択される、態様B5に記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレット。
<態様B7>
前記鞘成分としての前記熱可塑性樹脂の融点T0(℃)が、前記混紡糸に含有される前記熱可塑性樹脂繊維の融点T1(℃)よりも低く、T1-T0>10を満たすことを特徴とする、態様B5又はB6に記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレット。
<態様B8>
カット長が3mm以上10mm以下である、態様B5~B7のいずれか一項に記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレット。
<態様B9>
炭素繊維含有プラスチック製品に含有されるプラスチック成分を半導体熱活性法によって分解して、再生炭素繊維を製造すること、及び
前記再生炭素繊維と熱可塑性樹脂繊維とを混紡すること、
を含む、混紡糸の製造方法。
<態様B10>
態様B9に記載の方法によって得られた混紡糸を、熱可塑性樹脂で被覆することを含む、芯鞘構造の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットの製造方法。
【0044】
(第3の本発明)
本開示の第3の発明に係る下記の<態様C1>~<態様C8>によれば、第3の本発明に係る上記の課題を解決することができる:
<態様C1>
再生炭素繊維と熱可塑性樹脂繊維とを含む混紡糸を含む炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドであって、
前記再生炭素繊維が、3.0GPa以上の単繊維引張強度及び6.0以上のワイブル形状係数を有すること、並びに
前記再生炭素繊維が、残留炭素成分を含み、前記残留炭素成分の含有量が、前記再生炭素繊維に対して0重量%超5.0重量%以下であること、
を特徴とする、炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランド。
<態様C2>
前記再生炭素繊維の含有量が、前記混紡糸に対して、50重量%超98重量%以下である、態様C1に記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランド。
<態様C3>
前記再生炭素繊維及び前記熱可塑性樹脂繊維の平均長さが、それぞれ、20mm以上80mm以下である、態様C1又はC2に記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランド。
<態様C4>
前記熱可塑性樹脂繊維が、ポリオレフィン樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維、ポリアミド樹脂繊維、ポリエーテルケトン樹脂繊維、ポリカーボネート樹脂繊維、フェノキシ樹脂繊維、及びポリフェニレンスルフィド樹脂繊維、並びにこれらの混合物から選択される、態様C1~C3のいずれか一項に記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランド。
<態様C5>
芯鞘構造を有しており、
前記混紡糸が芯成分であること、及び
熱可塑性樹脂が鞘成分であること、
を特徴とする、態様C1~C4のいずれか一項に記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランド。
<態様C6>
前記鞘成分としての前記熱可塑性樹脂の融点T0(℃)が、前記混紡糸に含有される前記熱可塑性樹脂繊維の融点T1(℃)よりも低く、かつ、T1-T0>10を満たすことを特徴とする、態様C5に記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランド。
<態様C7>
炭素繊維含有プラスチック製品に含有されるプラスチック成分を半導体熱活性法によって分解して、再生炭素繊維を製造すること、及び
前記再生炭素繊維と熱可塑性樹脂繊維とを混紡することによって混紡糸を製造すること
を含む、態様C1~C6のいずれか一項に記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドを製造する方法。
<態様C8>
態様C1~C6のいずれか一項に記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドを用いて、溶融堆積法によって3次元造形物を製造する方法。
【0045】
(第4の本発明)
本開示の第4の発明に係る下記の<態様D1>~<態様D7>によれば、第4の本発明に係る上記の課題を解決することができる:
〈態様D1〉
再生炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットであって、
前記再生炭素繊維が、3.0GPa以上の単繊維引張強度及び6.0以上のワイブル形状係数を有すること、並びに
前記再生炭素繊維が、残留炭素成分を含み、前記残留炭素成分の含有量が、前記再生炭素繊維に対して0重量%超5.0重量%以下であること、
を特徴とする、炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレット。
〈態様D2〉
前記再生炭素繊維の含有量が前記炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットに対して5重量%以上50重量%未満である、態様D1に記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレット。
〈態様D3〉
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノキシ樹脂、及びポリフェニレンスルフィド樹脂、並びにこれらの混合物から選択される、態様D1又はD2に記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレット。
〈態様D4〉
長手方向の長さが3mm以上10mm以下である、態様D1~D3のいずれか一項に記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレット。
〈態様D5〉
前記炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレット中に含まれる前記再生炭素繊維の残存平均繊維長が300μm以上であることを特徴とする態様D1~D4のいずれかに記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレット。
〈態様D6〉
引張強度が90MPa以上、曲げ強度が140MPa以上、曲げ弾性率が7100MPa以上である成形品を製造するために用いられることを特徴とする、態様D1~D5のいずれか一項に記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレット。
〈態様D7〉
前記炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレット中の前記再生炭素繊維に関して、300μm以下の単繊維の出現頻度が、40%以下であることを特徴とする、態様D1~D6のいずれか一項に記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレット。
【発明の効果】
【0046】
(第1の本発明)
本開示に係る第1の発明によれば、プラスチック含有材料を安定的にかつ効率的に分解することができるプラスチック含有材料の分解方法を提供することができる。
【0047】
また、本開示に係る第1の発明によれば、プラスチック及び無機材料を含むプラスチック複合材料から、効率的に無機材料を回収することができる。
【0048】
(第2の本発明)
本開示の第2の発明によれば、熱処理して分解する方法で得られる再生炭素繊維を原料として安定的に製造される、熱可塑性樹脂繊維との混紡糸を提供することができる。また、本開示の第2の発明によれば、その混紡糸から形成される炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを提供することができる。
【0049】
(第3の本発明)
本開示の第3の発明によれば、熱処理して分解する方法で得られる再生炭素繊維と熱可塑性樹脂繊維とを原料として安定的に製造することができ、特には優れた機械物性を有する3次元造形物の製造に適している、炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドを提供することができる。
【0050】
(第4の本発明)
本開示の第4の発明によれば、熱処理して分解する方法で得られる再生炭素繊維を原料として、優れた機械的特性を有する成形品の製造に用いることができる再生炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを提供することができる。
【0051】
特には、本開示の第4の発明に係る炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットによれば、ヴァージン炭素繊維(再生炭素繊維ではない通常の炭素繊維)を原料として製造される炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットから製造される成形品と同等の機械的強度を有する成形品を、製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1図1は、本開示の第1の発明に係る分解方法を説明するための概念的な断面図である。
図2図2は、本開示の第1の発明に係る分解方法の1つの実施態様を模式的に示す断面概略図である。
図3図3は、加熱処理前のCFRP板の写真である。
図4図4は、実施例1-4に係る処理を経た後のCFRP板の写真である。
図5図5は、比較例1-2に係る処理を経た後のCFRP板の写真である。
図6図6は、本開示の第2の発明に係る炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレット、及び本開示の第2の発明に係るペレットを製造する過程で用いられる炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドの模式的な概略図である。
図7図7は、本開示の第3の発明に係る炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドの模式的な概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
(第1の本発明)
≪プラスチック含有材料の分解方法≫
本開示の第1の発明に係るプラスチック含有材料の分解方法は、
プラスチック含有材料を、酸素濃度10体積%未満である低酸素濃度ガスが導入された加熱炉内の雰囲気中において、半導体材料の存在下、第1表面温度まで加熱して、プラスチック含有材料中のプラスチックを分解すること、
を含む。
【0054】
図1は、第1の本発明に係る分解方法を説明するための概念的な断面図である。第1の本発明に係るプラスチック含有材料の分解機構について、以下に説明する。なお、理論によって本発明を制限する意図はない。
【0055】
酸素雰囲気下で半導体材料11を加熱すると、半導体材料11中に正孔h及び電子eが発生し、この電子eが雰囲気中の酸素Oと反応してO ラジカル(活性酸素)が発生すると考えられる。そして、半導体材料11に隣接して配置されているプラスチック含有材料12において、ラジカル伝播が起こり、プラスチック含有材料12が、低分子成分へと分解され、さらに、CO、HO、CH等の分解ガスへと酸化分解される。ラジカルは、プラスチックから水素を引き抜くことによって、プラスチックの酸化分解を促進すると考えられる。
【0056】
半導体材料を用いることによって、半導体材料を用いない場合と比較して、プラスチックの分解のために導入する熱を低減することができ、結果として、エネルギー消費量を低減することができる。
【0057】
従来の半導体の熱活性に基づくプラスチック分解法は、加熱処理の過程で過剰な酸化発熱が起こる場合があった。従来の方法では、酸素濃度が制御されていない大気中で加熱処理を行っていたため、過剰なラジカルが発生し、結果として、過剰な酸化発熱が起こっていたと考えられる。
【0058】
これに対して、本件発明者らは、半導体材料の存在下であっても、酸素濃度を比較的低い値とすることによって、過剰な酸化発熱を抑制しつつ効率的にプラスチックを熱処理することができることを見出した。
【0059】
特に、プラスチックの加熱分解における初期段階では、プラスチックの量が比較的多いことに起因して、過剰な酸化発熱が発生するおそれが高い。これに対して、本開示の第1の発明に係る方法によれば、比較的低い酸素濃度で効率的に加熱処理を行うので、分解の初期段階であっても、過剰な酸化発熱の発生を抑制することができる。
【0060】
したがって、本開示の第1の発明に係る方法によれば、半導体材料の存在下で加熱処理を行うので、比較的低い酸素濃度でも良好な分解効率を得ることができ、かつ、加熱炉における酸素濃度を比較的低い値とすることによって、過剰な酸化発熱を抑制し、安定性が向上した分解処理を達成することが可能となっている。
【0061】
本開示の第1の発明に係る分解法について、例示的な実施態様を描写した図面を参照して説明する。
【0062】
図2は、本開示の第1の発明に係る分解方法の1つの実施態様を模式的に示す断面図である。図2に示されている加熱炉20は、熱源(ヒーター)23、ガス供給部24、排気口25、及び内部空間26を有している。加熱炉20の内部空間26に、多孔性の担体21が配置されており、半導体材料が、担体21の表面に担持されている。図2の実施態様では、プラスチック含有材料22が、この担体21に接触して配置されている。
【0063】
加熱炉20の内部空間26の雰囲気の温度を、加熱炉20の熱源(ヒーター)23を介して制御し、それにより、プラスチック含有材料22の表面温度が特定の温度になるようにすることができる。プラスチック含有材料22の表面から5mm以内に配置された温度センサー27を介して、プラスチック含有材料22の表面温度を計測することができる。
【0064】
酸素濃度10体積%未満の低酸素濃度ガスを、ガス供給部24を通じて、加熱炉20の内部空間26に導入する。炉内容量に応じて低酸素濃度ガスの導入速度を設定することによって、加熱炉20内の雰囲気の酸素濃度を制御することができる。低酸素濃度ガスは、例えば、加熱炉に設けられたガス供給部を介して加熱炉内に押し込むことができ、又は、排気口25に吸引圧を適用することによって、加熱炉内に吸引することができる。
【0065】
低酸素濃度ガスは、例えば、空気と窒素ガスとの混合ガスである。空気と窒素ガスとの割合を選択することによって、加熱炉内の酸素濃度を制御することができる。
【0066】
低酸素濃度ガスの導入によって酸素濃度を10体積%未満に制御した雰囲気中において、プラスチック含有材料を、第1表面温度、例えば、300℃~600℃の第1表面温度まで加熱する。これによって、プラスチック含有材料22に含有されるプラスチックが、水蒸気、二酸化炭素、及びメタンなどの分解ガスへと分解され、分解ガスが、加熱炉20の排気口25から排出される。
【0067】
上記の酸素濃度10体積%未満での加熱処理の後で、酸素濃度を10体積%以上に上昇させた加熱処理を、さらに行うことができる。
【0068】
また、加熱処理後に、プラスチック含有材料に含まれていた無機材料を回収することができる。
【0069】
以下で、本開示の第1の発明に係る分解方法についてより詳細に説明する。
【0070】
<プラスチック含有材料>
プラスチック含有材料は、プラスチックを含有する。プラスチック含有材料は、プラスチック材料又はプラスチック複合材料であってよい。
【0071】
プラスチック含有材料に含有されるプラスチックとしては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0072】
プラスチック含有材料に含有される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリ乳酸(PLA)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、ポリアセタール樹脂、石油樹脂、AS樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリブテン(PB)樹脂、フッ素樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂が挙げられる。
【0073】
プラスチック含有材料に含有される熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、ウレタンフォーム樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ビニルエステル樹脂、シアネート樹脂が挙げられる。
【0074】
プラスチック含有材料は、上記の熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含有することができる。
【0075】
(プラスチック複合材料)
プラスチック含有材料は、特には、プラスチック複合材料である。プラスチック複合材料は、例えば、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Platic)である。繊維強化プラスチックに含有される強化繊維としては、ガラス繊維(グラスファイバー)、アラミドファイバー、及び炭素繊維(カーボンファイバー)が挙げられる。
【0076】
(炭素繊維強化プラスチック)
プラスチック複合材料は、特には、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などの炭素繊維含有プラスチック製品である。炭素繊維強化プラスチックは、プラスチック及び炭素繊維(炭素繊維材料)を含有する。炭素繊維強化プラスチックは、他の部材及び/又は材料(例えば、炭素繊維以外の強化繊維、樹脂成型品、金属、セラミックスなど)を含んでいてもよい。
【0077】
炭素繊維としては、特に限定されないが、PAN系炭素繊維、及びピッチ系炭素繊維が挙げられる。炭素繊維は、1種であってもよく、2種以上から構成されるものであってもよい。
【0078】
炭素繊維強化プラスチックに含有される炭素繊維は、任意の形態であってよく、例えば、炭素繊維束、炭素繊維束から形成される織物、又は炭素繊維の不織布であってよい。
【0079】
<低酸素濃度ガスの導入>
本開示の第1の発明に係る方法では、
酸素濃度10体積%未満である低酸素濃度ガスを、加熱炉の雰囲気中に導入する。
【0080】
好ましくは、加熱炉の雰囲気中に導入される低酸素濃度ガスの酸素濃度が、0体積%超、1体積%以上、2体積%以上、3体積%以上、若しくは4体積%以上、かつ/又は、9体積%以下、8体積%以下、若しくは7体積%以下である。
【0081】
加熱炉に低酸素濃度ガスを導入するタイミングは、プラスチック含有材料に含有されるプラスチックの種類、及び当該プラスチックの分解が開始される表面温度などに応じて決定することができる。また、加熱炉に低酸素濃度ガスを導入するタイミングは、プラスチック含有材料の自己発熱に関して事前に取得したデータに基づいて決定することができる。
【0082】
本開示の第1の発明に係る好ましい1つの実施態様では、加熱炉内に保持されているプラスチック含有材料の表面温度が300℃未満である間に、低酸素濃度ガスを、加熱炉の前記雰囲気中に導入する。
【0083】
さらに好ましくは、加熱炉内に保持されているプラスチック含有材料の表面温度が250℃以下、200℃以下、又は150℃以下である間に、加熱炉の雰囲気中に、酸素濃度10体積%未満である低酸素濃度ガスを、導入する。なお、加熱炉の雰囲気中に酸素濃度10体積%未満である低酸素濃度ガスを導入する際の、加熱炉内に保持されているプラスチック含有材料の表面温度の下限は、特に限定されないが、例えば、0℃以上、10℃以上、20℃以上、又は室温以上であってよい。
【0084】
さらに好ましくは、酸素濃度10体積%未満である低酸素濃度ガスを、加熱炉の雰囲気中に導入し、特には表面温度が300℃未満のプラスチック含有材料を保持している加熱炉の雰囲気中に導入し、それによって、加熱炉内の雰囲気の酸素濃度を10体積%未満にする。
【0085】
さらに好ましくは、酸素濃度10体積%未満である低酸素濃度ガスを、加熱炉の雰囲気中に導入し、特には表面温度が300℃未満のプラスチック含有材料を保持している加熱炉の雰囲気中に導入し、それによって、加熱炉内の雰囲気中の酸素濃度を、0体積%超、1体積%以上、2体積%以上、3体積%以上、若しくは4体積%以上、かつ/又は、9体積%以下、8体積%以下、若しくは7体積%以下に、制御する。
【0086】
加熱炉内の酸素濃度は、酸素濃度計(酸素モニター)によって直接測定することもでき、又は、炉内容積及び炉内へのガス導入量に基づいて決定することもできる。加熱炉内の酸素濃度は、好ましくは、加熱処理の間にわたる平均酸素濃度である。
【0087】
炉内への低酸素濃度ガスの導入は、例えば、加熱炉に設けられたガス供給部を介して低酸素濃度ガスを炉内に押し込むことによって行うことができ、又は、炉に設けられた吸引口(又は排気口)から吸引を行い、それによって、吸引口とは異なる場所に設けられたガス供給部からガスが炉内に流入するようにすることによって、行うことができる。加熱炉のガス供給部は、例えば、開口部を有してよく、かつ/又は、ガス透過性材料を有してよい。
【0088】
炉内へのガスの導入量は、分解される樹脂(例えばエポキシ樹脂)の単位樹脂量に基づき、加熱炉の容量及び所望の酸素濃度などに応じて設定することができる。
【0089】
例えば、単位樹脂量あたりの炉内へのガス導入量は、1~1000(L/min)/kg以下の範囲で、好ましくは2~700(L/min)/kg以下の範囲で決定することができる。また、決定されるガス導入量及び使用する加熱炉の容積に基づいて、導入されたガスによって炉内の雰囲気が置換される時間を、決定することができる。
【0090】
特には、炉内容量に対する低酸素濃度ガスの導入量を設定し、それにより、加熱炉内に保持されているプラスチック含有材料の表面温度が300℃未満である間に、加熱炉内の雰囲気が、導入された低酸素濃度ガスによって置換されるようにすることができる。
【0091】
加熱炉内に導入される低酸素濃度ガスは、希釈ガスを含むことができ、特には、空気と希釈ガスとの混合ガスである。希釈ガスとしては、例えば、窒素ガス、炭酸ガス、水蒸気、及び過熱水蒸気が挙げられる。なお、過熱水蒸気は、沸点以上の温度に加熱された水蒸気である。過熱水蒸気は、被分解対象物への伝熱性が比較的高いという利点を有する。
【0092】
(加熱炉)
加熱炉は、燃焼炉又は電気炉であってよい。加熱炉は、例えば、プラスチック含有材料及び半導体材料を収容するための内部空間、加熱炉内の雰囲気を加熱するための熱源(ヒーター)、加熱炉内に低酸素濃度ガスを導入するためのガス供給部、分解ガスを排出するための排気口、及び、随意に、加熱炉内部に吸引圧を付与するための吸引口を有することができる。なお、1つの構造を、排気口及び吸引口として使用することもできる。排気口及び/又は吸引口として、例えば、加熱炉に設けられた1又は複数の開口部を用いることができる。
【0093】
(表面温度)
プラスチック含有材料の「表面温度」は、加熱処理中のプラスチック含有材料の周囲5mm以内における温度を計測することによって、決定することができる。
【0094】
プラスチック含有材料の表面温度は、例えば、加熱炉の熱源を介して加熱炉内の温度を制御することによって制御することができ、かつ/又は、低温ガスを加熱炉内に導入すること、及び/若しくは、酸素濃度を下げて酸化発熱を抑制することによって、制御することができる。
【0095】
また、プラスチック含有材料の表面から5mm以内に配置された温度センサーを介してプラスチック含有材料の表面温度を計測し、この計測値を加熱炉の熱源にフィードバックすることによって、さらに精度高く、表面温度を制御することもできる。
【0096】
さらには、例えば、加熱炉内の温度及び/又は熱源の出力と、センサーで計測された表面温度との相関に関するデータをあらかじめ取得しておき、このデータに基づいて、加熱処理を行ってもよい。
【0097】
<加熱処理>
本開示の第1の発明に係る方法は、
プラスチック含有材料を、酸素濃度10体積%未満である低酸素濃度ガスが導入された加熱炉内の雰囲気中において、半導体材料の存在下、第1表面温度まで加熱して、プラスチック含有材料中のプラスチックを分解すること、
を含む。
【0098】
好ましくは、この加熱処理は、酸素濃度10体積%未満である低酸素濃度ガスが導入されることによって酸素濃度が10体積%未満となった雰囲気中で行い、特には、0体積%超、1体積%以上、2体積%以上、3体積%以上、若しくは4体積%以上の酸素濃度下で行い、かつ/又は、9体積%以下、8体積%以下、若しくは7体積%以下の酸素濃度下で行う。
【0099】
(第1表面温度)
「第1表面温度」は、プラスチック含有材料の表面温度である。「第1表面温度」は、上記の「表面温度」と同様に、加熱処理中のプラスチック含有材料の周囲5mm以内における温度を計測することによって決定することができる。
【0100】
第1表面温度は、300℃以上、325℃以上、若しくは350℃以上であってよく、かつ/又は、600℃以下、550℃以下、500℃以下、若しくは450℃以下であってよい。第1表面温度は、例えば、300℃~600℃、300℃~550℃、300℃~500℃、又は300℃~450℃である。
【0101】
第1表面温度が上記の範囲未満であると、プラスチックの分解が起こらないことがある。また、第1表面温度が上記の範囲を超えると、プラスチック含有材料が炭素繊維等の有価物を含有する場合に、酸素存在下での加熱に伴う炭素繊維等の有価物の劣化及び/又は焼失が顕著となることがある。第1表面温度を比較的低温とすることによって、過剰な酸化発熱を抑制する効果が、さらに高まる。
【0102】
本開示の第1の発明の好ましい実施態様では、酸素濃度10体積%未満での加熱処理の間に、第1表面温度を、450℃以上の温度にする。加熱温度が比較的低い場合には、プラスチック含有材料の表面に生成した炭化物によってプラスチックのさらなる分解が抑制される場合があるが、表面温度を450℃以上の温度にすることによって、比較的酸素濃度が低くても炭化物を除去することができる。そのため、プラスチックの分解効率をさらに向上することが可能となる。
【0103】
好ましくは、酸素濃度10体積%未満である低酸素濃度ガス導入下での加熱処理を、所定の時間にわたって行う。この所定の時間は、1分~600分であってよく、好ましくは30分~300分、さらに好ましくは60分~180分である。なお、加熱炉の温度が300℃に達した時点、又はプラスチックの分解の開始が確認された時点を、上記「所定の時間」の始点とすることができる。
【0104】
(半導体材料)
半導体材料は、プラスチック含有材料と一緒に加熱炉内に配置してもよく、又は、あらかじめ半導体材料を加熱炉内に配置し、その後に、プラスチック含有材料を、半導体材料に隣接させて若しくは接触させて、配置してもよい。
【0105】
本開示の第1の発明に係る1つの実施態様では、加熱処理を受けるプラスチック含有材料と半導体材料とを、50mm以下の距離で互いに離して配置する。この目的のために、例えば、プラスチック含有材料と半導体材料との間に配置されるスペーサを用いることができる。なお、この場合、当該距離の下限は特に限定されないが、0mm超、1mm超、5mm超、又は10mm超であってよい。
【0106】
プラスチック含有材料と半導体材料との間の距離は、両者が最も近接している場所において計測することができる。
【0107】
また、本開示の第1の発明に係る好ましい別の実施態様では、加熱処理を受けるプラスチック含有材料と半導体材料とを、互いに接触して配置する。
【0108】
プラスチック含有材料と半導体材料との接触の様式は、特に制限されない。例えば、半導体材料の上にプラスチック含有材料を配置することによって、両者を接触させることができる。また、担体の表面に担持された半導体材料の上に、プラスチック含有材料を配置してもよい。さらには、プラスチック含有材料の少なくとも一部又は全体を半導体材料で取り囲むこと又は覆うことによって、両者を接触させることもできる。
【0109】
半導体材料は、本発明の温度及び酸素濃度において安定であれば特に限定されない。半導体材料は、例えば、下記の物質からなる群から選択される少なくとも1つを含有する:
BeO,MgO,CaO,SrO,BaO,CeO,ThO,UO,U,TiO,ZrO,V,Y,YS,Nb,Ta,MoO,WO,MnO,Fe,MgFe,NiFe,ZnFe,ZnCo,ZnO,CdO,Al,MgAl,ZnAl,Tl,In,SiO,SnO,PbO,UO,Cr,MgCr,FeCrO,CoCrO,ZnCr,WO,MnO,Mn,Mn,FeO,NiO,CoO,Co,PdO,CuO,CuO,AgO,CoAl,NiAl,TlO,GeO,PbO,TiO,Ti,VO,MoO,IrO,RuO,CdS、CdSe,CdTe、CuO、Sb、MnO、及びCoCrO
【0110】
好ましくは、半導体材料が、酸化物半導体材料である。好ましい酸化物半導体材料としては、酸化クロム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化鉄、及び酸化銅が挙げられる。
【0111】
半導体材料の形態は特に制限されず、例えば、板状、粒状、又はハニカム形状であってよい。プラスチックの分解を促進させる観点からは、半導体材料が、通気性を有する担体の表面に担持されていることが好ましい。通気性を有する担体は、セラミクス等からなる多孔体、ハニカム状支持体などであってよい。半導体材料は、半導体の焼結体であってもよい。
【0112】
<二段階加熱>
本開示に係る第1の発明の1つの好ましい実施態様に係る熱処理方法は、
第1表面温度での加熱処理に供されたプラスチック含有材料を、半導体材料の存在下、酸素濃度10体積%以上の雰囲気中において加熱すること、
を含む。
【0113】
酸素濃度10体積%以上での加熱処理は、好ましくは、10体積%超、12体積%以上、15体積%以上、若しくは20体積%以上の酸素濃度下で行われ、かつ/又は、30体積%以下、若しくは25体積%以下の酸素濃度で行われる。
【0114】
二段階加熱としても言及されるこの態様では、比較的低い酸素濃度で加熱処理されたプラスチック含有材料に対して、増加した酸素濃度の下で、さらに加熱処理を行う。
【0115】
プラスチックの加熱分解における初期段階では、プラスチックの量が比較的多いことに起因して、過剰な酸化発熱が発生するおそれが高い。これに対して、二段階加熱を伴う上記の実施態様では、比較的低い酸素濃度で行われる加熱処理の後で、酸素濃度を上昇させた加熱処理を行う。すなわち、プラスチックの分解が進んでプラスチック量が低減された段階で酸素濃度を高めた加熱を行うので、過剰な酸化発熱の発生を抑制することができる。
【0116】
また、比較的低い酸素濃度での加熱処理では、プラスチックの一部が気化せずに炭化物として残留する場合がある。これに対して、二段階加熱を伴う上記の実施態様では、酸素濃度を上昇させてさらに加熱処理を行うので、残留した炭化物を効率的に分解・除去することができ、結果として、分解効率をさらに向上させることができる。
【0117】
酸素濃度10体積%未満である低酸素濃度ガス導入下での加熱処理、及び酸素濃度10体積%以上での加熱処理は、同一の加熱炉内において連続的に行うことができる。すなわち、例えば、プラスチック含有材料を第1表面温度まで加熱した後で、同じ加熱炉において、酸素濃度を10体積%以上に上昇させ、さらに加熱処理を行うことができる。従来のプラスチック分解法では、バッチ処理に続いて処理対象物の細断等の処理を行う必要があったが、酸素濃度10体積%未満である低酸素濃度ガス導入下での加熱処理、及び酸素濃度10体積%以上での加熱処理を同一の加熱炉内において連続的に行うことによって、工程数を省くことが可能となる。
【0118】
酸素濃度10体積%以上の雰囲気は、例えば、酸素濃度10体積%以上の高酸素濃度ガスを加熱炉内に導入することによって形成することができ、特には、加熱炉に空気及び/又は酸素ガスを導入することによって、形成することができる。高酸素濃度ガスの酸素濃度は、10体積%超、12体積%以上、15体積%以上、若しくは20体積%以上であってよく、かつ/又は、30体積%以下、若しくは25体積%以下であってよい。
【0119】
酸素濃度10体積%以上での加熱処理では、第1表面温度での加熱処理で用いた半導体材料を、使用することができる。
【0120】
(第2表面温度)
特には、第1表面温度での加熱処理に供されたプラスチック含有材料を、半導体材料の存在下、酸素濃度10体積%以上の雰囲気中において、第2表面温度まで加熱する。
【0121】
「第2表面温度」は、処理対象であるプラスチック含有材料の表面温度である。「第2表面温度」は、上記の「表面温度」及び「第1表面温度」と同様に、加熱処理中のプラスチック含有材料の周囲5mm以内における温度を計測することによって決定することができる。
【0122】
第2表面温度は、400℃~600℃の範囲であってよい。さらに好ましくは、第2表面温度は、425℃~575℃、又は450℃~550℃である。
【0123】
第2表面温度が上記の範囲未満であると、分解効率の向上が見られないことがある。また、第2表面温度が上記の範囲を超えると、プラスチック含有材料が炭素繊維等の有価物を含有する場合に、酸素存在下での加熱に伴う炭素繊維等の有価物の劣化及び/又は焼失が顕著となることがある。
【0124】
第2表面温度は、第1表面温度と実質的に同じ温度であってよい。
【0125】
また、第2表面温度が、第1表面温度以上であってもよく、又は、第1表面温度よりも、少なくとも5℃、少なくとも10℃、少なくとも25℃、少なくとも50℃、若しくは少なくとも75℃高くてよい。第1表面温度と第2表面温度との間の差の上限は、特に限定されないが、例えば、200℃以下、又は100℃以下であってよい。
【0126】
酸素濃度10体積%以上での加熱処理を、所定の時間にわたって行うことができる。この所定の時間は、例えば、1分~600分、60分~360分、又は90分~300分であってよい。
【0127】
<用途>
本開示の第1の発明に係るプラスチック含有材料の分解方法によれば、広範囲な種類のプラスチックを効率的に気化分解することができる。また、本開示の第1の発明に係る分解方法は、揮発性有機化合物(VOC)、排煙、粒子状物質(PM)などにも適用可能であり、排ガス処理にも利用することができる。
【0128】
≪無機材料又は金属材料の回収方法≫
<無機材料の回収方法>
本開示の第1の発明は、プラスチック複合材料に含有される無機材料を回収する方法にも関する。
【0129】
本開示の第1の発明に係る回収方法の1つの実施態様では、プラスチック複合材料であるプラスチック含有材料が、プラスチック及び無機材料を含有しており、この回収方法が、
本開示の第1の発明に係る分解方法によってプラスチック含有材料中のプラスチックを分解して、無機材料を回収すること、
を含む。
なお、本開示の第1の発明に係る回収方法で用いることができる分解方法及びその詳細については、プラスチック含有材料の分解方法に関する上記の記載を参照することができる。
【0130】
既述のとおり、本開示の第1の発明に係る分解方法によれば、効率的にプラスチックを分解することができる。したがって、本開示の第1の発明に係る回収方法によれば、プラスチック複合材料に含有されるプラスチックを効率的にかつ選択的に分解することができるため、良好な物性を有する無機材料を効率的に回収することができる。
【0131】
また、本開示の第1の発明に係る回収方法では、プラスチック複合材料を破砕することなく、無機材料を回収することができる。なお、プラスチック複合材料を破砕することは、特に排除されず、随意に破砕を行うことができる。
【0132】
さらに、プラスチック複合材料から無機材料を回収する場合には、回収される無機材料の品質を維持する観点から、無機材料への加熱処理の影響をできる限り抑制する必要がある。この点、本開示の第1の発明に係る分解方法では、比較的低い酸素濃度によって過剰な酸化発熱が抑制されている。そのため、本開示の第1の発明に係る回収方法によれば、比較的良好な物性を有する無機材料を回収することが可能となる。
【0133】
(二段階加熱)
本開示の第1の発明に係る回収方法の別の実施態様では、プラスチック複合材料としてのプラスチック含有材料を、二段階加熱に供する。すなわち、プラスチック複合材料を、(酸素濃度10%未満である)低酸素濃度ガス導入下での加熱、及び、それに続く、酸素濃度10体積%以上での加熱処理に供することによって、プラスチックを分解して、無機材料を回収する。
【0134】
無機材料を回収する場合には、過剰な酸化発熱による無機材料の物性劣化を抑えることが望ましく、さらに、プラスチックが炭化して無機材料に付着して残留することによる無機材料の物性劣化も抑えることが好ましい。この点、プラスチック複合材料を二段階加熱に供する態様では、過剰な酸化発熱が発生しやすい初期段階で比較的低酸素濃度にしていることで、過剰な酸化発熱に起因する無機材料の物性劣化が抑制されている。さらに、その後に、酸素濃度を上昇させた加熱処理をしているので、無機材料の上に残留した炭化樹脂を効率的に除去することができる。結果として、二段階加熱処理を介した無機材料の回収方法によって、回収される無機材料のさらに良好な物性を確保することができる。
【0135】
(無機材料)
無機材料及びプラスチックを含有するプラスチック複合材料としては、繊維強化プラスチック(FRP)、特には炭素繊維強化プラスチックが挙げられる。
【0136】
無機材料としては、無機繊維、例えば、アルミナ繊維、セラミック繊維、シリカ繊維などが挙げられる。無機繊維は、特には、炭素繊維(炭素繊維材料)である。
【0137】
(炭素繊維)
炭素繊維としては、特に限定されないが、PAN系炭素繊維、及びピッチ系炭素繊維が挙げられる。炭素繊維は、1種であってもよく、2種以上から構成されるものであってもよい。
【0138】
炭素繊維は、任意の形態であってよく、例えば、炭素繊維束、炭素繊維束から形成される織物、又は炭素繊維の不織布であってよい。
【0139】
(回収物)
本開示の第1の発明に係る回収方法の1つの実施態様によれば、無機材料と共に回収されるプラスチック由来の残留炭素が低減されており、特には、当該残留炭素が、回収される無機材料の5重量%以下である。好ましくは、当該残留炭素が、回収される無機材料の、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、0.9重量%以下、0.5重量%以下、又は0.1重量%以下である。なお、残留炭素はできるだけ低減されていることが好ましいが、その下限が0.001重量%以上であってよい。回収される無機材料における当該残留炭素の量は、後述する再生炭素繊維における残留炭素の量と同様にして計測することができる。
【0140】
さらに、本開示の第1の発明に係る回収方法によれば、炭素繊維強化プラスチックを製造する前の炭素繊維よりも優れた物性を有する炭素繊維を回収することができる。
【0141】
特に、本開示の第1の発明に係る回収方法によれば、炭素繊維強化プラスチックから、無機材料として、3.0GPa以上の単繊維引張強度及び6.0以上のワイブル形状係数を有する炭素繊維を得ることができる。
【0142】
(単繊維引張強度)
単繊維引張強度は、好ましくは、3.1GPa以上、3.2GPa以上、3.3GPa以上、又は3.4GPa以上である。なお、単繊維引張強度の上限は特に限定されないが、6.0GPa以下であってよい。
【0143】
単繊維引張強度は、JIS R7606に準拠して、下記のとおりにして計測することができる:
繊維束から少なくとも30本の単繊維を採取し、
デジタルマイクロスコープによって撮影した単繊維の側面画像において単繊維の直径を計測して、断面積を算出し、
サンプリングした単繊維を、穴あき台紙に接着剤を用いて固定し、
単繊維を固定した台紙を、引張試験機に取り付け、試長10mm、歪速度1mm/分で引張試験を行って引張破断応力を測定し、
単繊維の断面積及び引張破断応力から引張強度を算出し、
少なくとも30本の単繊維の引張強度の平均を、単繊維引張強度とする。
【0144】
(ワイブル形状係数)
ワイブル形状係数は、好ましくは、6.5以上、7.0以上、7.5以上、8.0以上、又は8.5以上である。ワイブル形状係数の上限は特に限定されないが、15.0以下であってよい。なお、単繊維引張強度のワイブル形状係数が高いことは、単繊維引張強度のばらつきが小さいことを意味している。
【0145】
ワイブル形状係数は、下記の式に従って算出することができる:
lnln{1/(1-F)}=m×lnσ+C
式中、Fは、対称試料累積分布法により求められる破壊確率、σは、単繊維引張強度(MPa)、mは、ワイブル形状係数、Cは、定数である。
【0146】
lnln{1/(1-F)}とlnσとでワイブルプロットし、1次近似した傾きから、ワイブル形状係数mを求めることができる。
【0147】
<金属材料の回収方法>
本開示の第1の発明に係る回収方法の別の実施態様では、プラスチック及び金属材料を含有するプラスチック含有材料から、金属材料を回収する。
【0148】
すなわち、本開示の第1の発明に係る方法の1つの実施態様によれば、下記を含む、金属材料の回収方法が提供される:
プラスチック含有材料が、プラスチック及び金属材料を含有しており、かつ
本開示の第1の発明に係る分解方法によってプラスチック含有材料中のプラスチックを分解して、金属材料を回収すること。
【0149】
金属材料としては、例えば、金、レアメタルなどが挙げられる。
【0150】
金属材料及びプラスチックを含有するプラスチック複合材料としては、例えば、マトリックス樹脂に内包された金属材料を有する複合材料が挙げられ、特に、太陽電池パネル、電子部品、及び電子回路が挙げられる。
【0151】
<用途>
本開示の第1の発明に係る回収方法によれば、例えば、繊維強化プラスチック(FRP)、太陽電池パネル、電子回路等のマトリックス樹脂のみを効率的に分解し、強化繊維及びレアメタルなどの有価物を効率的に回収することができる。
【0152】
≪再生炭素繊維(再生炭素繊維材料)≫
本開示の第1の発明に係る再生炭素繊維(再生炭素繊維材料)は、炭素繊維強化プラスチックから炭素繊維を回収することによって、製造することができる。本開示に係る第1の発明の1つの実施態様では、この再生炭素繊維は、炭素繊維強化プラスチックを製造する前の炭素繊維よりも優れた物性を有することができる。
【0153】
再生炭素繊維を製造する方法は、特に限定されない。例えば、再生炭素繊維は、本開示の第1の発明に係る回収方法によって炭素繊維強化プラスチックから再生炭素繊維を回収することによって、製造することができる。
【0154】
1つの実施態様では、再生炭素繊維が、3.0GPa以上の単繊維引張強度及び6.0以上のワイブル形状係数を有する。単繊維引張強度及びワイブル形状係数は、既述の方法によって計測及び決定することができる。
【0155】
再生炭素繊維の単繊維引張強度は、好ましくは、3.1GPa以上、3.2GPa以上、3.3GPa以上、又は3.4GPa以上である。なお、単繊維引張強度の上限は特に限定されないが、6.0GPa以下であってよい。
【0156】
再生炭素繊維のワイブル形状係数は、好ましくは、6.5以上、7.0以上、7.5以上、8.0以上、又は8.5以上である。なお、ワイブル形状係数の上限は特に限定されないが、15.0以下であってよい。
【0157】
(再生炭素繊維(再生炭素繊維材料)の製造方法)
特には、3.0GPa以上の単繊維引張強度及び6.0以上のワイブル形状係数を有する再生炭素繊維を製造するための方法が、
プラスチック含有材料を、酸素濃度10体積%未満である低酸素濃度ガスが導入された加熱炉内の雰囲気中において、半導体材料の存在下、第1表面温度まで加熱して、プラスチック含有材料中のプラスチックを分解すること、
を含み、
ここで、プラスチック含有材料が、炭素繊維を含有している炭素繊維強化プラスチックである。
【0158】
また、特には、3.0GPa以上の単繊維引張強度及び6.0以上のワイブル形状係数を有する再生炭素繊維を製造する方法が、
プラスチック含有材料を、酸素濃度10体積%未満である低酸素濃度ガスが導入された加熱炉内の雰囲気中において、半導体材料の存在下、第1表面温度まで加熱し、かつ、当該第1表面温度での加熱処理に供された前記プラスチック含有材料を、半導体材料の存在下、酸素濃度10体積%以上の雰囲気中において加熱することによって、プラスチック含有材料中のプラスチックを分解すること、
を含み、
ここで、プラスチック含有材料が、炭素繊維を含有している炭素繊維強化プラスチックである。
【0159】
本開示の第1の発明に係る再生炭素繊維の製造方法の好ましい1つの実施態様では、酸素濃度10体積%未満である低酸素濃度ガスを、プラスチック含有材料の表面温度が300℃未満である間に、加熱炉の雰囲気中に導入する。
【0160】
(残留炭素)
好ましくは、本開示の第1の発明に係る再生炭素繊維では、残留炭素(残留炭素成分)の量が低減されており、特には、残留炭素が、再生炭素繊維に対して、5重量%以下である。さらに好ましくは、当該残留炭素が、再生炭素繊維に対して、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、0.9重量%以下、0.5重量%以下、又は0.1重量%以下である。残留炭素の量は、できるだけ低減されていることが好ましく、その下限は特に限定されないが、再生炭素繊維に対して、例えば0.01重量%以上であってよい。
【0161】
なお、「残留炭素」は、再生炭素繊維を製造する際の原料である炭素繊維強化プラスチックに含有されていたプラスチックに由来する炭化成分である。
【0162】
再生炭素繊維における残留炭素(残留炭素成分)の量は、熱重量分析法(TGA)によって決定することができる。
【0163】
熱重量分析法による残留炭素量の決定は、下記の手順で行うことができる:
(i)再生炭素繊維を粉砕して得た1~4mgのサンプル片に対して、熱重量分析計において、0.2L/minの空気供給速度、5℃/minの加熱上昇率、及び1/6sの記録速度で、
室温から100℃への昇温、
30分間にわたる100℃での保持、
100℃から400℃への昇温、及び、
400℃での保持
の工程を有し合計300分間にわたる熱重量分析を行い、
(ii)重量減少率を時間に対してプロットしたグラフにおいて、傾きの変曲点を特定し、当該変曲点における重量減少率の値から、100℃での保持期間における重量減少率を差し引くことによって、残留炭素量を算出する。
【0164】
上記の条件で傾きの変曲点を特定できない場合には、合計300分間にわたる熱重量分析の代わりに、480分間にわたる400℃での保持を伴う合計約600分間にわたる熱重量分析を行ってもよく、さらには、400℃で480分間にわたって保持する代わりに、400℃超500℃以下の範囲内の特定の温度で、480分間にわたって保持してもよい。
なお、再生炭素繊維がサイジング剤などに由来する樹脂を有している場合には、当該樹脂を除去した後で、上記の計測を行うことができる。
【0165】
特には、3.0GPa以上の単繊維引張強度及び6.0以上のワイブル形状係数を有し、かつ残留炭素成分の含有量が再生炭素繊維に対して0重量%超5.0重量%以下である再生炭素繊維を製造するための方法が、
プラスチック含有材料を、酸素濃度10体積%未満である低酸素濃度ガスが導入された加熱炉内の雰囲気中において、半導体材料の存在下、第1表面温度まで加熱して、プラスチック含有材料中のプラスチックを分解すること、
を含み、
ここで、プラスチック含有材料が、炭素繊維を含有している炭素繊維強化プラスチックである。
【0166】
また、特には、3.0GPa以上の単繊維引張強度及び6.0以上のワイブル形状係数を有し、かつ残留炭素成分の含有量が再生炭素繊維に対して0重量%超5.0重量%以下である再生炭素繊維を製造する方法が、
プラスチック含有材料を、酸素濃度10体積%未満である低酸素濃度ガスが導入された加熱炉内の雰囲気中において、半導体材料の存在下、第1表面温度まで加熱し、かつ、当該第1表面温度での加熱処理に供された前記プラスチック含有材料を、半導体材料の存在下、酸素濃度10体積%以上の雰囲気中において加熱することによって、プラスチック含有材料中のプラスチックを分解すること、
を含み、
ここで、プラスチック含有材料が、炭素繊維を含有している炭素繊維強化プラスチックである。
【0167】
(第2の本発明)
本開示の第2の発明は、再生炭素繊維及び熱可塑性樹脂繊維の混紡糸、並びにこの混紡糸から形成される炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットに関する。また、本開示の第2の発明は、それらの製造方法に関する。
【0168】
本開示の第2の発明に係る再生炭素繊維及び熱可塑性樹脂繊維の混紡糸は、
再生炭素繊維が、3.0GPa以上の単繊維引張強度及び6.0以上のワイブル形状係数を有すること、並びに
再生炭素繊維が、残留炭素成分を含み、残留炭素成分の含有量が、再生炭素繊維に対して0重量%超5.0重量%以下であること、
を特徴とする。
【0169】
本開示の第2の発明に係る混紡糸は、一般的な紡績方法で製造することができる。この紡績方法は、梳綿、練条、粗紡の各工程を含んでよい。ここで、梳綿工程は、不連続な各繊維の集合体を分けほぐして開繊し、混合した単繊維を一方向に配向させて太いスライバーを製造する工程であってよく、練条工程は、数本のスライバーを合糸して、引き伸ばしながら繊維配向度を更に向上させる工程であってよく、粗紡工程は、このスライバーを更に引き伸ばして撚りを与えることによって混紡糸を巻き取る工程でありえる。
【0170】
スライバーの引張強度は、単繊維同士の接触又は絡み合いによる摩擦力で与えられるため、各繊維が良好に開繊し、単繊維同士の接触面積若しくは絡み合いが増えることで引張強度は向上し、また、単繊維切れを抑制して単繊維同士の繋ぎ目を増やさないことで引張強度の低下を抑制できる。撚りを強めることでも、単繊維同士の接触面積が増えるため、引張強度は向上する。摩擦力を補うため、必要に応じて、各繊維、又はスライバーに油剤を塗付してもよい。
【0171】
一般に、炭素繊維は、捲縮性がなく、表面平滑性も高いため、単繊維同士の絡み合いは弱く、更には、高弾性率低伸度で硬いため、比較的折れて切れ易いという特徴を有する。再生炭素繊維と混紡する熱可塑性樹脂繊維は、単繊維同士の絡み合いを高める効果を担っており、少量の熱可塑性樹脂繊維を混紡することでも、スライバーの引張強度は大きく向上する。
【0172】
理論によって限定する意図はないが、本開示の第2の発明に係る混紡糸は、再生炭素繊維の単繊維引張強度におけるワイブル形状係数が高いことから、引張強度のばらつきは小さく、同等の引張強度を持つ一般的な未使用の炭素繊維と比較しても、引張強度が低い単繊維が比較的少ないため、再生炭素繊維の単繊維切れが比較的に抑制されると考えられる。
【0173】
また、熱処理して分解する方法で得られる再生炭素繊維の一般的な特徴として、再生炭素繊維に酸化欠陥が生成することで引張強度が低下し易いこと、及び樹脂成分の炭化物が残留炭素成分として再生炭素繊維に含まれることがある。残留炭素成分は、再生炭素繊維の単繊維同士を強固に結着することがある。紡績糸の製造において、残留炭素成分は、梳綿工程での開繊、及び単繊維同士の絡み合いを妨げると考えられる。
【0174】
理論によって限定する意図はないが、本開示の第2の発明に係る混紡糸は、残留炭素成分の含有量が比較的低い再生炭素繊維を原料とすることから、単繊維同士の絡み合いが得られ易い。
【0175】
上述の理由から、本開示の第2の発明に係る混紡糸は、単繊維同士の絡み合いによる摩擦力が得られ易いことにより、紡績工程張力に対する糸抜けを起こさずに、安定して製造されるための引張強度が得られ易いと考えられる。
【0176】
本開示の第2の発明は、上述の混紡糸を有する炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットも含む。この炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットは、
芯鞘構造を有していること、
混紡糸が芯成分であること、及び
熱可塑性樹脂が鞘成分であること、
を特徴とする。
【0177】
本開示の第2の発明に係る炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットは、本開示の第2の発明に係る混紡糸を連続炭素繊維の代替物として用いること以外は、一般的な長繊維強化ペレットの製造方法と同様にして、混紡糸を熱可塑性樹脂で被覆処理して得られる樹脂ストランドをカットすることで製造することができることから、不連続炭素繊維を熱可塑性樹脂に混錬分散した樹脂ストランドをカットすることで製造される短繊維強化ペレットと比較して、比較的繊維長の長い再生炭素繊維を含むことができる。すなわち、本開示の第2の発明に係る炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットは、射出成形機等に供給されることで、機械物性等が優れる炭素繊維含有製品を製造することができる。
【0178】
以下、本開示に係る第2の発明について、さらに詳細に説明する。
【0179】
<再生炭素繊維>
再生炭素繊維(リサイクルされた炭素繊維)は、炭素繊維成分、及び炭素繊維成分以外の炭素成分(特には残留炭素成分)を含む。通常、再生炭素繊維中で、炭素繊維成分以外の炭素成分は、炭素繊維成分の表面に付着している。
【0180】
本開示の第2の発明に係る再生炭素繊維は、3.0GPa以上の単繊維引張強度及び6.0以上のワイブル形状係数を有すること、並びに、残留炭素成分を含み、この残留炭素成分の含有量が、再生炭素繊維に対して0重量%超5.0重量%以下であることを、特徴とする。
【0181】
当該特徴を有する再生炭素繊維であれば、再生方法は特に限定されないが、例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などの炭素繊維含有プラスチック製品を熱処理することによって得られた再生炭素繊維であってよい。
【0182】
特に好ましくは、再生炭素繊維は、半導体熱活性法によって得られた再生炭素繊維である。すなわち、本開示の特に好ましい実施態様は、炭素繊維含有プラスチック製品に含有されるプラスチック成分を、半導体熱活性法によって分解して製造された再生炭素繊維を含む。
【0183】
なお、「半導体熱活性法」(TASC法)は、半導体の熱活性(Thermal Activation of Semi-conductors、TASC)を利用してポリマーなどの被分解化合物を分解する方法である。
【0184】
半導体熱活性法を用いて本開示の第2の発明に係る特性を有する再生炭素繊維を得る方法については、第1の本発明に関する上記の記載を参照することができる。すなわち、第1の本発明に係る上記の分解方法を用いて、プラスチック及び炭素繊維を含有するプラスチック含有材料から炭素繊維を回収することによって、本開示の第2の発明(並びに下記の第3及び第4の発明)に係る特性を有する再生炭素繊維を得ることができる。
【0185】
<単繊維引張強度>
単繊維引張強度は、好ましくは、3.1GPa以上、3.2GPa以上、3.3GPa以上、又は3.4GPa以上である。なお、単繊維引張強度の上限は特に限定されないが、6.0GPa以下であってよい。
【0186】
単繊維引張強度は、JIS R7606に準拠して、第1の本発明に関して上述したとおりにして計測することができる:
【0187】
<ワイブル形状係数>
ワイブル形状係数は、好ましくは、6.5以上、7.0以上、7.5以上、8.0以上、又は8.5以上である。ワイブル形状係数の上限は特に限定されないが、15.0以下であってよい。なお、単繊維引張強度のワイブル形状係数が高いことは、単繊維引張強度のばらつきが小さいことを意味している。
【0188】
ワイブル形状係数は、第1の本発明に関して上述したとおりにして算出することができる。
【0189】
<炭素繊維成分>
再生炭素繊維中の炭素繊維成分は、通常、再生炭素繊維の原料となった炭素繊維含有製品等に含有されていた炭素繊維に由来する。再生炭素繊維中の炭素繊維成分は、再生炭素繊維の製造の過程で熱処理等を受けることによって改質されていてもよい。
【0190】
再生炭素繊維中の炭素繊維成分は、例えば、PAN系炭素繊維、又はピッチ系炭素繊維であってよい。
【0191】
再生炭素繊維中の炭素繊維成分の形態は、特に制限されないが、複数の単糸(単繊維、フィラメント)から構成される炭素繊維束の形態であってよい。炭素繊維束を構成するフィラメントの構成本数は、1,000本~80,000本、又は3,000本~50,000本の範囲であってよい。また、再生炭素繊維中の炭素繊維成分を構成するフィラメントの直径は、0.1μm~30μm、1μm~10μm、又は3μm~8μmであってよい。
【0192】
<残留炭素成分>
再生炭素繊維に含有される残留炭素成分は、特には、再生炭素繊維を製造する際に原料として用いた炭素繊維含有プラスチック製品に含まれていた樹脂に由来する残留炭素である。
【0193】
本開示の第2の発明では、残留炭素成分が、再生炭素繊維に対して、0重量%超5.0重量%以下である。この場合には、紡績工程張力に対する糸抜け耐性が向上した混紡糸を得ることができる。
【0194】
また、残留炭素成分が0重量%超5.0重量%以下である場合には、炭素成分(特には炭)が比較的多いことによる汚染を回避することができ、また、混紡糸を材料として炭素繊維含有製品等を製造する際に異物となりうる炭素成分を低減することができる。
【0195】
好ましくは、残留炭素成分は、再生炭素繊維に対して、4.0重量%以下、3.0重量%以下、又は2.0重量%以下である。残留炭素成分は、できるだけ低減されていることが好ましいが、炭素繊維に対して、0.01重量%以上、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.4重量%以上、0.6重量%以上、0.8重量%以上、1.0重量%以上、若しくは1.2重量%以上であってもよい。
【0196】
再生炭素繊維中の残留炭素成分の含有量は、第1の本発明に関して上述したとおりにして、熱重量分析法(TGA法)によって計測することができる。
【0197】
<熱可塑性樹脂繊維>
本開示の第2の発明に係る混紡糸に含有される熱可塑性樹脂繊維としては、ポリオレフィン樹脂繊維(例えば、ポリプロピレン樹脂繊維及びポリエチレン樹脂繊維)、ポリエステル樹脂繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂繊維、ポリブチレンテレフタレート樹脂繊維、及びポリ乳酸樹脂繊維)、ポリアミド樹脂繊維、ポリエーテルケトン樹脂繊維、ポリカーボネート樹脂繊維、フェノキシ樹脂繊維、並びにポリフェニレンスルフィド樹脂繊維が挙げられる。熱可塑性樹脂繊維は、1種のみであってよく、又は、2種以上の熱可塑性樹脂繊維の混合物であってもよい。
【0198】
≪混紡糸≫
第2の本発明に係る混紡糸は、再生炭素繊維と熱可塑性樹脂繊維とを含む紡績糸である。混紡糸は、例えば、再生炭素繊維に付与されるバインダ等を含むこともできる。また、混紡糸は、実質的に再生炭素繊維と熱可塑性樹脂繊維からなる紡績糸であってもよい。
【0199】
<再生炭素繊維の含有量>
第2の本発明に係る混紡糸に含有される再生炭素繊維の含有量は、好ましくは、混紡糸に対して、50重量%超98重量%以下である。特に好ましくは、55重量%超、60重量%超、65重量%超、若しくは70重量%超であってよく、かつ/又は、97重量%以下、96重量%以下、95重量%以下、94重量%以下、93重量%以下、92重量%以下、91重量%以下、若しくは90重量%以下であってよい。
【0200】
再生炭素繊維の含有量が50重量%超であれば、この再生炭素繊維を用いて本開示に係る炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを製造する際に、炭素繊維含有量を高める目的で熱可塑性樹脂での被覆量を少なくする必要がなく、被覆処理の安定性が向上する。再生炭素繊維の含有量が98重量%以下であれば、混紡する熱可塑性樹脂繊維との絡み合いが十分となり、紡績工程張力による糸抜けが起きにくくなる。
【0201】
第2の本発明に係る混紡糸に含有される熱可塑性樹脂繊維の含有量は、混紡糸に対して、50重量%以下、40重量%以下、若しくは30重量%以下であってよく、かつ/又は、3重量%超、4重量%超、5重量%超、6重量%超、7重量%超、8重量%超、9重量%超、若しくは10重量%超であってよい。
【0202】
<繊維の平均長さ>
第2の本発明に係る混紡糸に含有される再生炭素繊維は、20mm以上80mm以下の平均長さを有することができる。この範囲の長さを有する繊維は、例えば、比較的長い寸法を有する繊維を切断処理することによって得ることができる。再生炭素繊維の平均長さは、20mm以上、30mm以上、若しくは40mm以上であってよく、かつ/又は、80mm以下、70mm以下、若しくは60mm以下であってよい。
【0203】
第2の本発明に係る混紡糸に含有される熱可塑性樹脂繊維は、20mm以上80mm以下の平均長さを有することができる。この範囲の長さを有する繊維は、例えば、比較的長い寸法を有する繊維を切断処理することによって得ることができる。熱可塑性樹脂繊維の平均長さは、20mm以上、30mm以上、若しくは40mm以上であってよく、かつ/又は、80mm以下、70mm以下、若しくは60mm以下であってよい。
【0204】
第2の本発明に係る混紡糸の製造において、再生炭素繊維及び熱可塑性樹脂繊維の平均長さが20mm以上の場合は、スライバーの紡績工程張力に対する糸抜け耐性を向上させることができる。再生炭素繊維及び熱可塑性樹脂繊維の平均長さが80mm以下である場合には、製造設備部品への巻き付きを低減することができる。
【0205】
再生炭素繊維及び熱可塑性樹脂繊維の平均長さは、それぞれ、目視でノギス等を用いて、又はデジタルカメラ若しくは光学顕微鏡などで取得された画像において、50本の繊維の長さを計測し、計測値を平均することによって、算出することができる。
【0206】
<混紡糸の製造方法>
上述のとおり、本開示の第2の発明に係る再生炭素繊維及び熱可塑性樹脂繊維の混紡糸は、一般的な紡績方法で製造することができる。すなわち、本開示の第2の発明に係る混紡糸の製造方法は、不連続な各繊維の集合体を分けほぐして開繊し、混合した単繊維を一方向に配向させて太いスライバーを製造する梳綿工程、数本のスライバーを合糸して、引き伸ばしながら繊維配向度を更に向上させる練条工程、このスライバーを更に引き伸ばして撚りを与えることによって混紡糸を巻き取る粗紡工程を含んでよい。
【0207】
第2の本発明に係る混紡糸を製造する際に、バインダを適用することができる。バインダは、特には、熱可塑性樹脂繊維に対する再生炭素繊維の結合を促進する役割を有する。バインダを適用するタイミングは特に限定されないが、再生炭素繊維に対して直接に適用してもよく、又は、再生炭素繊維及び熱可塑性樹脂繊維を含む混紡糸に対して適用してもよい。バインダは、例えば、エポキシ系樹脂であってよい。バインダの適用方法は特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば、バインダの溶液又は分散液中に再生炭素繊維又は混紡糸を浸漬し、乾燥することによって、バインダの適用を行うことができる。なお、バインダの量は、再生炭素繊維に対して、0.1重量%~25重量%、又は1重量%~20重量%であってよい。
【0208】
≪炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレット≫
本開示の第2の発明によれば、本開示の第2の発明に係る混紡糸を芯成分、熱可塑性樹脂を鞘成分とする、芯鞘構造の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットが提供される。本開示の第2の発明に係るペレットは、再生炭素繊維を熱可塑性樹脂に混錬分散してなる短繊維強化ペレットと比較して、繊維長の比較的長い再生炭素繊維を含むことから、射出成形機等に供給されることで、機械物性等が優れる炭素繊維含有製品を製造することができる。
【0209】
<炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットの製造方法>
本開示の第2の発明に係る芯鞘構造の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットは、混紡糸を熱可塑性樹脂で被覆処理することによって炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドを製造すること、及びこのストランドをカットすることを含む方法によって製造することができ、より具体的には、上述のとおり、連続炭素繊維の代わりに本開示の第2の発明に係る混紡糸を用いること以外は、一般的な長繊維強化ペレットの製造方法と同様に、熱可塑性樹脂で被覆処理した樹脂ストランドをカットすることで、製造することができる。すなわち、巻き返しながら連続搬送される混紡糸が、混紡糸とは別の供給口から溶融させた熱可塑性樹脂が連続供給されるダイ中に通糸される被覆工程、ダイから吐出された炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドが冷却された後にカットされる切断工程を含む方法によって、製造することができる。
【0210】
<熱可塑性樹脂>
上記第2の本発明に係るペレットの製造において被覆処理に用いる熱可塑性樹脂(すなわちペレットの鞘成分を構成する熱可塑性樹脂)としては、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂)、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、及びポリ乳酸樹脂)、ポリアミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノキシ樹脂、並びにポリフェニレンスルフィド樹脂が挙げられる。この熱可塑性樹脂は、1種のみであってよく、又は、2種以上の熱可塑性樹脂の混合物であってもよい。
【0211】
また、第2の本発明に係るペレットの鞘成分を構成する熱可塑性樹脂は、本開示の第2の発明に係る混紡糸に含まれる熱可塑性樹脂繊維と同じ種類であってよく、又は、異なる種類であってもよい。特には、ペレットの鞘成分を構成する熱可塑性樹脂の融点(T0(℃))が、本開示に係る混紡糸に含まれる熱可塑性樹脂繊維の融点(T1(℃))よりも、10(℃)超低いことが好ましい。この場合は、本開示に係る炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを製造する際に、混紡糸に含まれる熱可塑性樹脂繊維が溶融することを抑制し、混紡糸を被覆する熱可塑性樹脂のみが溶融する製造条件を設定し易くなるため、混紡糸をダイ中に安定して通糸できることがある。なお、T1とT0との間の差異(T1-T0)の上限は、特に限定されないが、例えば、200(℃)以下、150(℃)以下、100(℃)以下、又は50(℃)以下であってよい。
【0212】
また、被覆処理に用いる上記の熱可塑性樹脂には、流動性、外観光沢、難燃特性、熱安定性、耐候性、耐衝撃性などを向上させる目的で、機械強度を損なわない範囲で、各種ポリマー、充填剤、安定剤、顔料などを配合してもよい。
【0213】
<ペレットの芯鞘構造>
本開示の第2の発明に係る炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットは、本開示の第2の発明に係る混紡糸を熱可塑性樹脂で被覆処理して得られる炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドをカット(輪切り)することで製造されるため、混紡糸が芯成分、熱可塑性樹脂が鞘成分となる。
【0214】
芯鞘構造の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットにおける鞘成分としての熱可塑性樹脂の割合に関して、鞘成分としての熱可塑性樹脂が、混紡糸に含有される再生炭素繊維100重量部に対して、50重量部~1000重量部であることが好ましく、100重量部~750重量部であることがさらに好ましく、250重量部~500重量部であることが最も好ましい。
【0215】
<ペレットのカット長>
第2の本発明に係るペレットのカット長は、好ましくは、3mm以上10mm以下である。特に好ましくは、5mm以下であってよい。なお、ペレットのカット長は、特には、ペレットの芯構造の軸方向における長さに対応する。
【0216】
ペレットのカット長が3mm以上であれば、再生炭素繊維の平均長さが比較的長くなるため、ペレットを成形原料とした炭素繊維含有製品の機械物性等がさらに向上しうる。ペレットのカット長が10mm以下であれば、成形加工時に再生炭素繊維が分散し易くなり、炭素繊維含有製品の機械物性等がさらに向上しうる。
【0217】
なお、該芯鞘型ペレットの直径に特に制限はないが、ペレットのカット長の1/10以上2倍以下であってよく、ペレットのカット長の1/4以上かつ1倍以下であることが好ましい。ペレットの直径が小さすぎると、被覆ができない部分が発生することがある。逆に、ペレットの直径が大きすぎる場合、成形機への噛み込み不良が発生し、成形が難しくなることがある。
【0218】
ペレットのカット長及び直径は、それぞれ、目視でノギス等を用いて、又はデジタルカメラ若しくは光学顕微鏡などで取得された画像において、30以上のペレットのカット長又は直径を計測し、計測値を平均することによって、算出することができる。
【0219】
図6は、本開示の第2の発明に係る芯鞘構造の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレット200を模式的に示す概略図である。図は説明のための概略図であり、縮尺どおりではない。芯鞘構造のペレット200は、芯成分210、及び鞘成分220を有する。また、ペレット200は、カット長L及び直径Rを有する。芯鞘構造のペレット200は、混紡糸からなる芯成分110及び熱可塑性樹脂からなる鞘成分120を有する芯鞘構造の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランド100をカット(切断処理、図6の「C」)することによって製造することができる。
【0220】
(第3の本発明)
本開示の第3の発明は、3次元造形に適した、再生炭素繊維及び熱可塑性樹脂繊維の混紡糸を含む炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドに関する。また、本開示の第3の発明は、それらの製造方法に関する。
【0221】
本開示の第3の発明に係る炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドは、再生炭素繊維と熱可塑性樹脂繊維とを含む混紡糸を有する。この再生炭素繊維及び熱可塑性樹脂繊維の混紡糸は、
再生炭素繊維が、3.0GPa以上の単繊維引張強度及び6.0以上のワイブル形状係数を有すること、並びに
再生炭素繊維が、残留炭素成分を含み、残留炭素成分の含有量が、前記再生炭素繊維に対して0重量%超5.0重量%以下であること、
を特徴とする。
【0222】
本開示の第3の発明に係る1つの実施態様では、炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドが、上記の混紡糸からなる。
【0223】
本開示の第3の発明に係る混紡糸は、一般的な紡績方法で製造され、梳綿工程、練条工程、粗紡工程の各工程を含んでよい。これら各工程については、第2の本発明に関する上記の記載を参照することができる。
【0224】
スライバーの引張強度は、単繊維同士の接触又は絡み合いによる摩擦力で与えられるため、各繊維が良好に開繊し、単繊維同士の接触面積若しくは絡み合いが増えることで引張強度は向上し、また、単繊維切れを抑制して単繊維同士の繋ぎ目を増やさないことで引張強度の低下を抑制できる。撚りを強めることでも、単繊維同士の接触面積が増えるため、引張強度は向上する。摩擦力を補うため、必要に応じて、各繊維、若しくはスライバーに油剤を塗付してもよい。
【0225】
一般に、炭素繊維は、捲縮性がなく、表面平滑性も高いため、単繊維同士の絡み合いは弱く、更には、高弾性率低伸度で硬いため、比較的折れて切れ易いという特徴を有する。再生炭素繊維と混紡する熱可塑性樹脂繊維は、単繊維同士の絡み合いを高める効果を担っており、少量の熱可塑性樹脂繊維を混紡することでも、スライバーの引張強度は大きく向上する。
【0226】
理論によって限定する意図はないが、本開示の第3の発明に係る混紡糸は、再生炭素繊維の単繊維引張強度におけるワイブル形状係数が高いことから、引張強度のばらつきは小さく、同等の引張強度を持つ一般的な未使用の炭素繊維と比較しても、引張強度が低い単繊維は少ないため、再生炭素繊維の単繊維切れは比較的に抑制されると考えられる。
【0227】
また、熱処理して分解する方法で得られる再生炭素繊維の一般的な特徴として、再生炭素繊維に酸化欠陥が生成することで引張強度が低下し易いこと、及び樹脂成分の炭化物が残留炭素成分として再生炭素繊維に含まれることがある。残留炭素成分は、再生炭素繊維の単繊維同士を強固に結着することがある。紡績糸の製造において、残留炭素成分は、梳綿工程での開繊、及び単繊維同士の絡み合いを妨げると考えられる。
【0228】
理論によって限定する意図はないが、本開示の第3の発明に係る混紡糸は、残留炭素成分の含有量が低い再生炭素繊維を原料とすることから、単繊維同士の絡み合いが得られ易い。
【0229】
上述の理由から、本開示の第3の発明に係る混紡糸は、単繊維同士の絡み合いによる摩擦力が得られ易いことにより、紡績工程張力に対する糸抜けを起こさずに、安定して製造されるための引張強度が得られ易いと考えられる。
【0230】
本開示の第3の発明に係る1つの実施態様では、炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドが、芯鞘構造を有しており、
混紡糸が芯成分であること、及び熱可塑性樹脂が鞘成分であること、
を特徴とする。
【0231】
本開示の第3の発明の1つの実施態様に係る芯鞘構造の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドは、本開示の第3の発明に係る混紡糸を連続炭素繊維の代替物として用いること以外は、一般的な長繊維強化ストランドの製造方法と同様にして、混紡糸を熱可塑性樹脂で被覆処理して製造することができることから、不連続炭素繊維を熱可塑性樹脂に混錬分散した短繊維強化熱可塑性樹脂ストランドと比較して、比較的繊維長の長い再生炭素繊維を含むことができる。すなわち、本開示の第3の発明に係る炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドは、射出成形機等、又は3次元造形装置等に供給されることで、機械物性等が優れる炭素繊維含有製品を製造することができる。
【0232】
以下、本開示の第3の発明について、さらに詳細に説明する。
【0233】
<再生炭素繊維等>
再生炭素繊維、単繊維引張強度、ワイブル形状係数、再生炭素繊維中の炭素繊維成分、及び再生炭素繊維に含有される残留炭素成分については、それぞれ、上記の第2の本発明に関する対応する記載を参照することができる。
【0234】
<熱可塑性樹脂繊維>
本開示の第3の発明に係る混紡糸に含有される熱可塑性樹脂繊維については、上記の第2の本発明に係る熱可塑性樹脂繊維に関する記載を参照することができる。
【0235】
<混紡糸>
第3の本発明に係る混紡糸は、再生炭素繊維と熱可塑性樹脂繊維とを含む紡績糸である。混紡糸は、例えば、再生炭素繊維に付与されるバインダ等を含むこともできる。特には、混紡糸は、実質的に再生炭素繊維と熱可塑性樹脂繊維からなる紡績糸である。
【0236】
<再生炭素繊維及び熱可塑性樹脂繊維の含有量>
第3の発明に係る混紡糸に含有される再生炭素繊維及び熱可塑性樹脂繊維の含有量については、それぞれ、上記の第2の本発明に係る対応する記載を参照することができる。
【0237】
<繊維の平均長さ>
本開示の第3の発明に係る混紡糸に含有される再生炭素繊維及び熱可塑性樹脂繊維の平均長さについては、第2の本発明に関する上記の対応する記載を参照することができる。
【0238】
<混紡糸の製造方法>
上述のとおり、本開示の第3の発明に係る再生炭素繊維及び熱可塑性樹脂繊維の混紡糸は、一般的な紡績方法で製造することができる。この製造方法については、第2の本発明に係る混紡糸の製造方法に関する上記の記載を参照することができる。
【0239】
混紡糸を製造する際に、バインダを適用することができる。このバインダについては、第2の本発明に関する上記の対応する記載を参照することができる。
【0240】
<芯鞘構造の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランド>
本開示の第3の発明の1つの実施態様によれば、本開示の第3の発明に係る上記の混紡糸を熱可塑性樹脂で被覆することにより、混紡糸を芯成分、熱可塑性樹脂を鞘成分とする、芯鞘構造の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドが提供される。このストランドは、再生炭素繊維を熱可塑性樹脂に混錬分散してなる短繊維強化ストランドと比較して、比較的繊維長の長い再生炭素繊維を含むことから、3次元造形装置等に供給されることで、機械物性等が特に優れる炭素繊維含有製品を製造することができる。
【0241】
<芯鞘構造の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドの製造方法>
本開示の第3の発明の1つの実施態様に係る芯鞘構造の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドは、混紡糸を熱可塑性樹脂で被覆処理することによって製造することができ、より具体的には、上述のとおり、連続炭素繊維の代わりに本開示の第3の発明に係る混紡糸を用いること以外は、一般的な長繊維強化ストランドの製造方法と同様にして、混紡糸を熱可塑性樹脂で被覆処理することによって、製造することができる。すなわち、巻き返しながら連続搬送される混紡糸が、溶融した熱可塑性樹脂が混紡糸とは別の供給口から連続供給されるダイ中に通糸される被覆工程、及びダイから吐出される吐出工程を含む方法によって、製造することができる。
【0242】
<熱可塑性樹脂>
上記の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドの製造において被覆処理に用いる熱可塑性樹脂(すなわち芯鞘構造の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドの鞘成分となる熱可塑性樹脂)としては、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂)、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、及びポリ乳酸樹脂)、ポリアミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノキシ樹脂、並びにポリフェニレンスルフィド樹脂が挙げられる。この熱可塑性樹脂は、1種のみであってよく、又は、2種以上の熱可塑性樹脂の混合物であってもよい。
【0243】
また、炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドの鞘成分となる熱可塑性樹脂は、本開示の第3の発明に係る混紡糸に含まれる上記の熱可塑性樹脂繊維と同じ種類であってよく、又は、異なる種類であってもよい。特に、炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドの鞘成分となる熱可塑性樹脂の融点T0(℃)が、本開示の第3の発明に係る混紡糸に含まれる熱可塑性樹脂繊維T1(℃)の融点よりも低い場合(特には、T1-T0>10(℃)である場合)は、本開示の第3の発明に係る炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドを製造する際に、混紡糸に含有される熱可塑性樹脂繊維の融点よりも低い温度で溶融した熱可塑性樹脂にて混紡糸を被覆できるため、混紡糸がダイ中に安定して通糸できることがある。なお、T1とT0との間の差異(T1-T0)の上限は、特に限定されないが、例えば、200(℃)以下、150(℃)以下、100(℃)以下、又は50(℃)以下であってよい。
【0244】
また、被覆処理に用いる上記の熱可塑性樹脂には、流動性、外観光沢、難燃特性、熱安定性、耐候性、耐衝撃性などを向上させる目的で、機械強度を損なわない範囲で、各種ポリマー、充填剤、安定剤、顔料などを配合してもよい。
【0245】
<ストランドの芯鞘構造>
本開示の第3の発明の1つの実施態様に係る炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドは、本開示の第3の発明に係る上記の混紡糸を熱可塑性樹脂で被覆処理することで製造されるため、混紡糸が芯成分、熱可塑性樹脂が鞘成分となる。
【0246】
本開示の第3の発明に係る炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドは、特に、3次元造形物の製造に適している。また、3次元造形の安定性の観点から、ストランドの平均直径は、0.7mm以上2.2mm以下が好ましく用いられ、1.0mm以上2.0mm以下がさらに好ましく用いられる。
【0247】
図7は、本開示の第3の発明に係る炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランド100bの模式的な概略図である。図面は説明のための概略図であり、縮尺どおりではない。図7のストランド100bは、芯鞘構造を有しており、混紡糸からなる芯成分110b、及び熱可塑性樹脂からなる鞘成分120bを有する。
【0248】
芯鞘構造の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドにおける鞘成分としての熱可塑性樹脂の割合に関して、鞘成分としての熱可塑性樹脂が、混紡糸に含有される再生炭素繊維100重量部に対して、50重量部~1000重量部であることが好ましく、100重量部~750重量部であることがさらに好ましく、250重量部~500重量部であることが最も好ましい。
【0249】
≪3次元造形物≫
本開示の第3の発明は、本開示の第3の発明に係る上記の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドを用いて、溶融堆積法によって3次元造形物を製造する方法を含む。
【0250】
3次元造形では、造形対象物を平行な複数の面で切断した断面毎に樹脂を順次積層することによって立体造形を行い、造形対象物の3次元モデルとなる造形物を生成する。このような3次元造形物は、例えば、部品試作及び製品製造などに利用することができる。3次元造形の方法として、特に、樹脂を溶融させて堆積させる溶融堆積法を用いることができる。
【0251】
本開示の第3の発明に係る3次元造形物の製造方法は、本開示の第3の発明に係る上記の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドを用いること以外は、公知の溶融堆積法に従って行うことができる。
【0252】
具体的には、例えば、本開示の第3の発明に係る上記の炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドを、溶融堆積3次元造形装置の吐出ヘッドに供給し、上記吐出ヘッドにおいて炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドを溶融させ、溶融した炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドを吐出ヘッドから吐出し、層状に堆積させることを繰り返して、3次元造形物を製造することができる。
【0253】
(第4の発明)
本開示の第4の発明は、炭素繊維強化樹脂成型物の廃材等を用いて製造される再生炭素繊維を含有する炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットに関するものである。
【0254】
本開示の第4の発明に係る炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットは、再生炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含み、
この再生炭素繊維が、
3.0GPa以上の単繊維引張強度及び6.0以上のワイブル形状係数を有すること、並びに
残留炭素成分を含み、残留炭素成分の含有量が、再生炭素繊維に対して0重量%超5.0重量%以下であること、
を特徴とする。
【0255】
一般に、炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットは、2軸押出機等にて熱可塑性樹脂と炭素繊維とを溶融混練して得られるが、高いせん断をかけて混練するために、炭素繊維が押出機内で破砕されることがある。得られるペレット中の炭素繊維の平均繊維長が300μm未満となると機械物性補強効果が低下してしまうことがある。
【0256】
理論によって限定する意図はないが、本開示の第4の発明に係る再生炭素繊維は、単繊維引張強度におけるワイブル形状係数が高いことから、引張強度のばらつきは小さく、同等の引張強度を持つ一般的な未使用の炭素繊維と比較しても、引張強度が低い単繊維は少ないため、再生炭素繊維の単繊維切れは比較的に抑制されると考えられる。
【0257】
さらに、一般に、押出機に投入される炭素繊維の引張強度のばらつきが大きい場合、低強度の繊維がより細かく破砕されるため、ペレット中に残存する300μm以下の炭素繊維の割合が相対的に多く存在することとなる。一方、上述のとおり本発明の再生炭素繊維はワイブル形状係数が高いことから引張強度のばらつきが小さいため、300μm以下まで破砕される繊維の割合が小さくなり、結果として、機械物性補強効果が大きく得られると考えられる。
【0258】
特には、本開示の第4の発明に係るペレットを製造する際の再生炭素繊維の供給源として、炭素繊維集合体を用いることができる。炭素繊維集合体は、再生炭素繊維及びバインダを含む。その製造方法については、例えば、特許第3452363、及び特開2020-180421の記載などを参照することができる。
【0259】
以下、本開示の第4の発明に係る発明について、さらに詳細に説明する。
【0260】
<再生炭素繊維>
再生炭素繊維については、第2の本発明に係る再生炭素繊維に関する上記の記載を参照することができる。
【0261】
<残存平均繊維長>
好ましくは、炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレット中の再生炭素繊維の残存平均繊維長(すなわち、該ペレット中に存在している再生炭素繊維の平均繊維長)が、300μm以上である。再生炭素繊維の残存平均繊維長は、より好ましくは、320μm以上、330μm以上、又は340μm以上である。再生炭素繊維の残存平均繊維長の上限は特に限定されないが、600μm以下、又は500μm以下であってよい。
【0262】
炭素繊維強化熱可塑性ペレット中の再生炭素繊維の残存平均繊維長は、硫酸分解法によりペレット中の母材マトリックス樹脂を除去し、ろ過を行った後、マイクロスコープを用いて300本以上の単繊維の繊維長を測定し、数平均値として算出することができる。
【0263】
<300μm以下の単繊維出現頻度>
炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレット中の再生炭素繊維に関して、300μm以下(特には300μm未満)の単繊維の出現頻度は、好ましくは40%以下である。300μm以下(特には300μm未満)の単繊維の出現頻度は、特に好ましくは、39%以下、38%以下、37%以下、又は36%以下である。300μm以下の単繊維の出現頻度の下限は特に限定されないが、例えば、1%以上、又は10%以上であってよい。
【0264】
300μm以下(又は300μm未満)の単繊維が出現する頻度は、上記の残存平均繊維長の測定と同様にして単繊維の繊維長を測定し、300μm以下(又は300μm未満)の繊維の本数の割合を計算することによって、得ることができる。
【0265】
<単繊維引張強度等>
単繊維引張強度、ワイブル形状係数、及び再生炭素繊維中の炭素繊維成分については、それぞれ、上記の第2の本発明に関する対応する記載を参照することができる。
【0266】
<残留炭素成分>
再生炭素繊維に含有される残留炭素成分は、特には、再生炭素繊維を製造する際に原料として用いた炭素繊維含有プラスチック製品に含まれていた樹脂に由来する残留炭素である。
【0267】
好ましくは、残留炭素成分は、再生炭素繊維に対して、4.0重量%以下、3.0重量%以下、又は2.0重量%以下である。残留炭素成分は、できるだけ低減されていることが好ましいが、炭素繊維に対して、0.01重量%以上、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.4重量%以上、0.6重量%以上、0.8重量%以上、1.0重量%以上、若しくは1.2重量%以上であってもよい。
【0268】
再生炭素繊維中の残留炭素成分の含有量は、第1の本発明に関して上述したとおりにして、熱重量分析法(TGA法)によって計測することができる。
【0269】
<熱可塑性樹脂>
本開示の第4の発明に係る炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットに含有される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂)、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、及びポリ乳酸樹脂)、ポリアミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノキシ樹脂、並びにポリフェニレンスルフィド樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種のみであってよく、又は、2種以上の熱可塑性樹脂の混合物であってもよい。
【0270】
≪ペレット≫
本開示の第4の発明に係る炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットは、再生炭素繊維と熱可塑性樹脂とを含む。
【0271】
本開示の第4の発明に係る炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットの形状は特に限定されないが、ペレットの長手方向の長さは、好ましくは、3mm以上10mm以下である。特に好ましくは、5mm以下であってよい。
【0272】
(再生炭素繊維の含有量)
本開示の第4の発明に係る炭素繊維強化熱可塑性ペレットにおける再生炭素繊維の含有量は、好ましくは、炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットに対して、50重量%未満、40重量%以下、30重量%以下であり、かつ/又は、5重量%以上、7重量%以上、若しくは8重量%以上である。
【0273】
再生炭素繊維の含有量が炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットに対して50重量%未満であれば、ペレット中に炭素繊維を特に均一に分散させることができる。また、再生炭素繊維の含有量が炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットに対して5重量%以上であれば、ペレットの特に良好な機械物性補強効果が得られる。
【0274】
<ペレットの製造方法>
本開示の第4の発明に係る炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットの製造方法は、特に限定されないが、例えば、下記を含む製造方法によって得ることができる:
再生炭素繊維を提供すること、
熱可塑性樹脂を提供すること、及び
再生炭素繊維と、溶融した熱可塑性樹脂とを混錬すること、
ここで、
再生炭素繊維が、3.0GPa以上の単繊維引張強度及び6.0以上のワイブル形状係数を有しており、かつ
再生炭素繊維が、残留炭素成分を含み、残留炭素成分の含有量が、再生炭素繊維に対して0重量%超5.0重量%以下である。
【0275】
なお、本開示の第4の発明に係る炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットの製造に用いられる再生炭素繊維及び熱可塑性樹脂については、本開示の第4の発明に係る炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットに関する上述の記載を参照することができる。また、混錬の方法は特に限定されず、公知の方法で行うことができる。
【0276】
本開示の第4の発明に係る炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを製造するための1つの例示的な実施態様では、二軸混錬押出機のメインフィーダーを介して母材樹脂となる熱可塑性樹脂を供給し、押出機内で混錬溶融した当該樹脂中に、二軸フィーダーより再生炭素繊維を供給し、押し出された混錬物を水冷バスにて冷却した後、カットして炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを得る。
【0277】
≪成形品≫
本開示の第4の発明に係る炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを、押出成形機などを用いて成形することによって、成形品を製造することができる。本開示に係るペレットを用いて成形された成形品は、良好な物性、特には良好な機械的物性を示す。
【0278】
<引張強度>
好ましくは、ISO527に準拠して、下記の方法で製造された成形品が、90MPa以上、特に好ましくは、92MPa~110MPa、又は95MPa~100MPaの引張強度を示す。
【0279】
<曲げ強度>
好ましくは、ISO178に準拠して、下記の方法で製造された成形品が、140MPa以上、特に好ましくは、140MPa~160MPa、140MPa~150MPa、又は140MPa~145MPaの曲げ強度を示す。
【0280】
<曲げ弾性率>
好ましくは、ISO178に準拠して、下記の方法で製造された成形品が、7100MPa以上、特に好ましくは、7100MPa~8000MPa、7100MPa~7500MPa、又は7100MPa~7400MPaの曲げ弾性率を示す。
【0281】
引張強度、曲げ強度、及び曲げ弾性率の評価に用いる成形品は、評価の対象となるペレットから、射出成型機(シリンダー温度300℃、金型温度100℃)を用いて、長さ170mm×幅10mm×厚み4mmのダンベル片を成型することによって、製造することができる。
【実施例
【0282】
以下で、例示としての実施例によって、本開示に係る発明をより詳細に説明する。本発明は、下記の実施例に限定されない。
【0283】
(第1の本発明)
≪第1の本発明に係る実施例1-1~1-3及び比較例1-1≫
第1の本発明に係る実施例1-1~1-3及び比較例1-1では、プラスチック含有材料としての炭素繊維強化プラスチック(CFRP)板を加熱処理し、プラスチック分解効率を評価した。
【0284】
<実施例1-1>
実施例1-1は、下記のとおりにして行った。
【0285】
(材料の提供及び配置)
半導体材料としては、ハニカム構造を有する担体の表面に酸化クロム(Cr、純度99%以上、純正化学社製)を適用したものを用いた。ハニカム構造を有する担体は、13セル/25mmであった。
【0286】
プラスチック含有材料としては、エポキシ樹脂含有比率41重量%のCFRP板を使用した。
【0287】
加熱炉の炉内容積は、9Lであった。加熱炉の内部において、半導体材料としての酸化クロムを担持している担体の上に、CFRP板を配置した。担体とCFRP板とは、互いに接触して配置した。
【0288】
CFRP板の表面温度は、CFRP板の表面から5mm内に配置されたセンサーによって計測した。
【0289】
(加熱処理)
加熱炉のヒーター出力を介して加熱炉の内部温度を制御して、加熱炉の内部温度を上昇させた。
【0290】
CFRP板の表面温度が300℃に到達する前に、酸素濃度6体積%の空気及び窒素ガスの混合ガスを、加熱炉内に導入した。混合ガスの加熱炉内への導入は、加熱炉の上方部に設けられた吸引口からガス導入量70L/minで吸引を行い、加熱炉の下方部に設けられたガス供給口から混合ガスを流入させることによって行った。加熱炉内の酸素濃度を、酸素モニターによって計測した。
【0291】
上記混合ガスの導入によって酸素濃度6体積%に制御された雰囲気下で、30分間にわたって、加熱処理を行った。加熱処理の間に、加熱炉のヒーター出力を調節して、CFRP板の表面温度を376℃の第1表面温度にまで上昇させた。
【0292】
(評価)
実施例1-1に係る方法におけるプラスチック分解効率の評価は、加熱処理前のCFRP板の重量と加熱処理後のCFRP板の重量との差から重量減少率(wt%)を算出することによって行った。結果を表1に示す。
【0293】
<実施例1-2>
加熱炉において、担体とCFRP板とを30mmで互いに離して配置したこと、及び、加熱処理の間にCFRP板の表面温度を377℃まで上昇させたことを除いて、実施例1-1と同様にして、実施例1-2の加熱処理及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0294】
<実施例1-3>
加熱処理の時間を60分間としたこと、及び、加熱処理の間にCFRP板の表面温度を371℃まで上昇させたことを除いて、実施例1-1と同様にして、実施例1-3の加熱処理及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0295】
<比較例1-1>
半導体材料を用いなかったこと、及び、加熱処理の間にCFRP板の表面温度を370℃まで上昇させたことを除いて、実施例1-1と同様にして、比較例1-1の加熱処理及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0296】
【表1】
【0297】
表1で見られるとおり、半導体材料の存在下、酸素濃度6体積%の低酸素濃度ガス導入下において、371℃~377℃の表面温度にまで加熱した実施例1-1~1-3は、半導体材料を用いない比較例1-1と比較して、プラスチック含有材料の分解効率が高かった。
【0298】
なお、実施例1-3では、処理時間を60分間に延長したが、処理時間が30分間であった実施例1-1と比較して、重量減少率の増加は限定的であった。これは、加熱処理の間にサンプル表面が炭化物で覆われ、その結果として、分解効率が減少したものと考えられる。
【0299】
≪第1の本発明に係る実施例1-4及び比較例1-2≫
<実施例1-4>
表面温度500℃で60分間の加熱を行ったこと以外は、実施例1-1と同様にして、実施例1-4に係る処理及び評価を行った。結果を下記の表2に示す。
【0300】
<比較例1-2>
半導体材料を用いなかったこと以外は、実施例1-4と同様にして、比較例1-2に係る処理及び評価を行った。結果を下記の表2に示す。
【0301】
【表2】
【0302】
実施例1-4及び比較例1-2に係る処理を経た後のサンプルの写真を、それぞれ、図4及び図5に示す。また、処理前のサンプルの写真を、図3に示す。
【0303】
表2で見られるように、酸素濃度6体積%の低酸素濃度ガス導入下において半導体材料下で加熱処理を行った実施例1-4は、酸素濃度6体積%の低酸素濃度ガス導入下において半導体材料なしで加熱処理を行った比較例1-2と比較して、高いプラスチック分解効率を示した。
【0304】
また、図5で見られるように、比較例1-2に係る処理後のサンプルの表面には、プラスチック由来の残留炭素が塊状に付着しており、一方で、図4で見られるように、実施例1-4に係る処理後のサンプルでは、そのような残留炭素の付着は確認されず、図3に示す処理前のサンプルの表面と同様に、比較的なめらかで均一性の高い表面を有していた。
【0305】
≪第1の本発明に係る実施例1-5~1-9≫
実施例1-5~1-9では、プラスチック含有材料としてのCFRP板又は圧力容器に対して、二段階加熱処理を行った。そして、分解効率を評価し、かつ、加熱処理によって得られた炭素繊維(炭素繊維材料)の物性を評価した。
【0306】
<実施例1-5>
実施例1-5は、下記のとおりにして行った。
【0307】
(材料の提供及び配置)
半導体材料としては、ハニカム構造を有する担体の表面に酸化クロム(Cr、純度99%以上、純正化学社製)を適用したものを用いた。ハニカム構造を有する担体は、13セル/25mmであった。
【0308】
プラスチック含有材料としては、エポキシ樹脂含有比率41重量%のCFRP板を使用した。処理前のCFRP板に含まれる炭素繊維の物性を、参考例1-1として、表3に示す。
【0309】
加熱炉の炉内容積は、0.0525mであった。加熱炉の内部で、半導体材料としての酸化クロムを担持している担体の上に、CFRP板を配置した。担体とCFRP板とは、互いに接触して配置した。
【0310】
CFRP板の表面温度を、CFRP板の表面から5mm内に配置されたセンサーによって、計測した。
【0311】
(加熱処理)
加熱炉のヒーター出力を介して加熱炉の内部温度を制御して、加熱炉の内部温度を上昇させた。そして、CFRP板の表面温度が300℃に到達する前に、酸素濃度8体積%の空気及び窒素ガスの混合ガスを、加熱炉内に導入した。加熱炉内への混合ガスの導入は、ガス導入量190L/minで吸引を行い、加熱炉に設けられたガス供給部から混合ガスを流入させることによって行った。
【0312】
なお、実施例1-5、並びに下記の実施例1-6及び比較例1-4では、加熱炉内に設置した酸素モニターによって、加熱炉内の酸素濃度を測定した。実施例1-7~1-9に関しては、炉内容積及びガス導入量に基づいて炉内酸素濃度を算出した。
【0313】
CFRP板の表面温度が300℃の時点で、分解ガスの発生を確認した。
【0314】
上記混合ガスの導入によって酸素濃度8体積%に制御された雰囲気中で、120分間にわたって加熱処理を行った。加熱処理の間に、加熱炉のヒーター出力を調節して、CFRP板の表面温度を450℃の第1表面温度にまで上昇させた。
【0315】
(二次加熱処理)
そして、ガス吸引圧は保持したままで窒素ガスの供給を停止して空気のみを供給し、加熱炉内の酸素濃度が10体積%以上になったことを確認し、さらに加熱処理を行った。260分間にわたる加熱処理の間に、CFRP板の表面温度を500℃にまで上昇させた。なお、260分間にわたる平均酸素濃度は14体積%、最大酸素濃度は18体積%であった。
【0316】
実施例1-5では、0.8kgのCFRP板を処理した。炉内容積に対する処理量は、15.2kg/mであった。
【0317】
(残留炭素量)
加熱処理後に回収した炭素繊維(再生炭素繊維)におけるプラスチック由来の残留炭素量を、熱重量分析によって決定した。下記の表3における残留炭素量の値は、炭素繊維に対する残留炭素の量(重量%)を表す。
【0318】
熱重量分析は、下記のとおりにして行った:
(i)回収した炭素繊維を粉砕して得た1~4mgのサンプル片に対して、熱重量分析計において、0.2L/minの空気供給速度、5℃/minの加熱上昇率、及び1/6sの記録速度で、室温から100℃への昇温、30分間にわたる100℃での保持、100℃から400℃への昇温、及び400℃での保持からなる工程を有する熱重量分析を、合計300分間にわたって行い、
(ii)重量減少率を時間に対してプロットしたグラフにおいて、傾きの変曲点を特定し、当該変曲点における重量減少率の値から、100℃での保持期間における重量減少率を差し引くことによって、残留炭素量を算出した。
【0319】
また、加熱処理の後に回収された炭素繊維について、繊維単糸径、及び単繊維引張強度を計測し、かつ、ワイブル形状係数を算出した。
【0320】
(単繊維引張強度)
単繊維引張強度は、JIS R7606に準拠して、下記のとおりにして計測した:
繊維束から少なくとも30本の単繊維を採取し、
デジタルマイクロスコープによって撮影した単繊維の側面画像において単繊維の直径を計測して、断面積を算出し、
サンプリングした単繊維を、穴あき台紙に接着剤を用いて固定し、
単繊維を固定した台紙を、引張試験機に取り付け、試長10mm、歪速度1mm/分で引張試験を行って引張破断応力を測定し、
単繊維の断面積及び引張破断応力から引張強度を算出し、
少なくとも30本の単繊維の引張強度の平均を、単繊維引張強度とした。
【0321】
(ワイブル形状係数)
ワイブル形状係数は、下記の式に従って算出した:
lnln{1/(1-F)}=m×lnσ+C
(式中、Fは、対称試料累積分布法により求められる破壊確率、σは、単繊維引張強度(MPa)、mは、ワイブル形状係数、Cは、定数である。)
【0322】
lnln{1/(1-F)}とlnσとでワイブルプロットし、1次近似した傾きから、ワイブル形状係数mを求めた。
【0323】
実施例1-5に関する評価結果を、表3に示す。なお、繊維単糸径は、上記のとおりにして少なくとも30本の単繊維に関して計測した単繊維の直径の平均である。
【0324】
<実施例1-6>
【0325】
プラスチック含有材料として圧力容器を用いたこと、ガス導入量127L/minで混合ガスを吸引したこと、並びに、酸素濃度、表面温度、及び加熱処理の時間を下記の表3のとおりとしたことを除いて、実施例1-5と同様にして、処理を行った。
【0326】
実施例1-6で処理した圧力容器は、アルミライナー及び44重量%のFRP(繊維強化プラスチック)を有しており、FRPは、31重量%の強化繊維及び13%のエポキシ樹脂を含有していた。強化繊維は、主に炭素繊維から構成され、少量のガラス繊維を含んでいた。圧力容器の容量は、2.0Lであった。
【0327】
実施例1-6で処理したFRP量は、0.47kgであった。炉内容積に対する処理量は、9.0kg/mであった。
【0328】
実施例1-6に関するプラスチック分解効率の評価結果、及び、回収された炭素繊維の物性の評価結果を、表3に示す。なお、二次加熱処理180分間にわたる平均酸素濃度は18体積%、最大酸素濃度は20体積%であった。
【0329】
なお、処理前の上記の圧力容器に含まれる炭素繊維の物性を、参考例1-2として、表3に示す。
【0330】
<実施例1-7>
加熱炉の炉内容積が0.1435mであったこと、過熱水蒸気と空気との混合ガスをガス導入量29L/minで加熱炉に導入したこと、並びに、表面温度及び加熱処理の時間を下記の表3のとおりとしたことを除いて、実施例1-5と同様にして、加熱処理を行った。
【0331】
なお、加熱炉の内部温度及びサンプルの表面温度は、加熱炉のヒーター出力及び過熱水蒸気の温度を介して制御した。
【0332】
実施例1-7では、1.0kgのCFRP板を処理した。炉内容積に対する処理量は、7.0kg/mであった。
【0333】
実施例1-7に関するプラスチック分解効率の評価結果、及び、回収された炭素繊維の物性の評価結果を、表3に示す。なお、二次加熱処理では、空気のみを29L/minで炉内に押し込んだ。
【0334】
<実施例1-8>
プラスチック含有材料として圧力容器を用いたこと、並びに、表面温度及び加熱処理の時間を下記の表3のとおりとしたことを除いて、実施例1-7と同様にして、処理を行った。
【0335】
実施例1-8で用いた圧力容器は、実施例1-6で用いた圧力容器と同様である。
【0336】
実施例1-8で処理されたFRP量は、0.47kgであった。炉内容積に対する処理量は、3.3kg/mであった。
【0337】
実施例1-8に関するプラスチック分解効率の評価結果、及び、回収された炭素繊維の物性の評価結果を、表3に示す。なお、二次加熱処理では、空気のみを29L/minで炉内に押し込んだ。
【0338】
<実施例1-9>
加熱炉の炉内容積が0.049mであったこと、過熱水蒸気と空気との混合ガスをガス導入量25L/minで加熱炉に導入したこと、表面温度及び加熱処理の時間を下記の表3のとおりとしたことを除いて、実施例1-7と同様にして、処理を行った。
【0339】
実施例1-9では、エポキシ樹脂比率38%のCFRP板を処理した。炉内容積に対する処理量は、1.6kg/mであった。
【0340】
実施例1-9に関するプラスチック分解効率の評価結果、及び、回収された炭素繊維の物性の評価結果を、表3に示す。なお、二次加熱処理では、過熱水蒸気の供給を継続しつつ、空気量を増やし、酸素濃度11体積%のガスを38L/minで炉内に押し込んだ。
【0341】
処理前の実施例1-9に係る上記のCFRP板に含まれる炭素繊維の物性を、参考例1-3として、表3に示す。
【0342】
≪第1の本発明に係る比較例1-3≫
比較例1-3では、材料の提供及び配置までは実施例1-5と同様に行い、その後に、加熱炉内の雰囲気の酸素濃度の調節を行わずに、加熱炉の内部温度を上昇させた。
【0343】
その結果、CFRP板の表面温度が300℃に到達した時点でのヒーター出力のままで、過剰な自己発熱が発生し、CFRP板の表面の温度が485℃にまで上昇した。結果を表3に記載する。
【0344】
比較例1-3では、0.8kgのCFRP板を処理した。炉内容積に対する処理量は、15.2kg/mであった。
【0345】
≪第1の本発明に係る比較例1-4≫
【0346】
半導体材料を用いなかったことを除いて、実施例1-6と同様にして、処理を行った。
【0347】
比較例1-4で処理されたFRP量は、0.47kgであった。炉内容積に対する処理量は、9.0kg/mであった。
【0348】
比較例1-4に関して、回収された炭素繊維の物性の評価結果を、表3に示す。二次加熱処理180分間にわたる平均酸素濃度は18体積%、最大酸素濃度は20体積%であった。
【0349】
【表3】
【0350】
表3で見られるとおり、酸素濃度6~8体積%の低酸素濃度ガスを導入し、半導体材料の存在下で1次加熱処理を行い、そして、上昇した酸素濃度の下で2次加熱処理をさらに行った実施例1-5~1-9は、残留炭素量(残留炭素成分量)が低く、非常に優れたプラスチック分解効率を示した。
【0351】
また、酸素濃度の制御を行わなかった比較例1-3では、過剰な自己発熱が生じたのに対して、酸素濃度6~8体積%の低酸素濃度ガスを加熱炉に導入した実施例1-5~1-9では、過剰な自己発熱は観察されなかった。比較例1-3では、酸素濃度をあらかじめ下げずに分解処理を開始したことで、酸素濃度が過剰となり、結果として、半導体材料の存在下での分解温度の制御を適切に行うことができなかったと考えられる。
【0352】
さらに、実施例1-5~1-9で回収された炭素繊維は、処理前の炭素繊維(参考例1-1~参考例1-3)と比較して、繊維単糸径及び単繊維引張強度が同程度に保持されており、かつ、単繊維引張強度のワイブル形状係数が高くなっていた。すなわち、実施例1-5~1-9では、炭素繊維強化プラスチックを製造する前の炭素繊維よりも優れた物性を有する炭素繊維が回収された。
【0353】
さらに、半導体材料下での加熱処理を伴う実施例1-6で回収された炭素繊維は、半導体材料なしで加熱処理を行った比較例1-4で回収された炭素繊維よりも、特に単繊維引張強度及びワイブル形状係数の点で、優れた品質を有していた。
【0354】
≪第2の本発明に係る実施例2-1≫
<材料の調製>
(再生炭素繊維)
実施例2-1では、再生炭素繊維として、本開示の第1の発明に係る方法によって、CFRPを原料として半導体熱活性法によって再生された、平均長さ50mm、平均単繊維直径6.7μm、単繊維引張強度4.7GPa、ワイブル形状係数7.0、残留炭素量0.6重量%の再生炭素繊維を用いた。
【0355】
(単繊維引張強度)
単繊維引張強度は、JIS R7606に準拠して、上記の実施例1-5と同様にして計測した。
【0356】
(ワイブル形状係数)
ワイブル形状係数は、上記の実施例1-5と同様にして算出した。
【0357】
(残留炭素量)
再生炭素繊維における残留炭素成分の量は、熱重量分析(TGA法)によって、下記のとおりにして決定した:
(i)再生炭素繊維を粉砕して得た4mgのサンプル片に対して、熱重量分析計において、0.2L/minの空気供給速度、5℃/minの加熱上昇率、及び1/6sの記録速度で、室温から100℃への昇温、30分間にわたる100℃での保持、100℃から400℃への昇温、及び480分間にわたる400℃での保持からなる工程を有する熱重量分析を、合計約600分間にわたって行い、
(ii)重量減少率を時間に対してプロットしたグラフにおいて、傾きの変曲点を特定し、当該変曲点における重量減少率の値から、100℃での保持期間における重量減少率を差し引くことによって、残留炭素の量を算出した。
【0358】
上記の再生炭素繊維をエポキシ系樹脂の水分散体に浸漬して引き上げた後、乾燥機中で乾燥し、再生炭素繊維に対して、熱可塑性樹脂とのバインダとして、2重量%のエポキシ系樹脂を塗付した。
【0359】
(熱可塑性樹脂繊維)
実施例2-1では、熱可塑性樹脂繊維として、平均長さ38mmのポリアミド66樹脂繊維(PA66樹脂繊維(東レ株式会社製、1401-1.3T-38 E9)、単糸繊度1.3dtex、捲縮数17山/25mm、融点265℃)を用いた。
【0360】
<混紡糸の製造>
バインダを付与した上記再生炭素繊維を80重量%、上記PA66樹脂繊維を20重量%の比率で混合し、梳綿、練条、粗紡の各工程を経て紡績することによって、0.86g/mで連続する混紡糸(実施例2-1に係る混紡糸)を製造することができた。なお、粗紡工程では200回/mの撚りを与えた。
【0361】
<炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットの製造>
次に、上記で得られた混紡糸を、出口径3mmの電線被覆用クロスヘッドダイを用いて、ポリアミド6(DSM製:Akulon(登録商標)F-X9182、融点220℃)で被覆し、これを長さ3mmに切断し、炭素繊維含有率が17質量%(炭素繊維100質量部あたり、ポリアミド6が463質量部)、直径2.6mm、カット長3mmの、射出成形に適した芯鞘型ペレット(実施例2-1に係る炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレット)を得た。
【0362】
<射出成形評価>
得られた炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを原料として、110ton電動射出成形機(日本製鋼所製、J110AD)を用いて、シリンダー温度C1/C2/C3/C4/N=265℃/270℃/280℃/280℃/280℃(C1~C4はキャビティ、Nはノズル)にて成形サイクル40秒で射出成形し、肉厚4mmの引張試験用ダンベル(実施例2-1に係る成形体)を得た。得られた成形体は、分散不良による繊維状物質の塊や気泡は見られず、外観は良好であった。
【0363】
得られたダンベルを試験片として、ISO 527(JIS K7161)に準拠して、引張強度の測定を行った。引張強度は200MPaと優れた機械物性を示した。
【0364】
また、成形体中に含まれる再生炭素繊維の平均繊維長は、0.33mmであった。
【0365】
成形体中の再生炭素繊維の平均繊維長の評価は、下記のとおりにして行った:
得られた成形体から20mm×10mmの試験片を切り出し、550℃にて1.5時間有酸素雰囲気下で加熱し樹脂成分を燃焼除去した。残った炭素繊維を水に投入し、超音波振動により十分に攪拌させた。攪拌させた分散液を計量スプーンによりランダムに採取し評価用サンプルを得て、ニレコ社製画像解析装置Luzex APにて、繊維数3000本の長さを計測し、長さ平均を算出し、成形体中における炭素繊維の平均繊維長を求めた。
【0366】
実施例2-1に係る結果を下記の表4に示す。
【0367】
≪第2の本発明に係る比較例2-1≫
残留炭素量7.1重量%の再生炭素繊維を用いたこと以外は、実施例2-1と同様にして、混紡糸の製造を試みた。なお、再生炭素繊維における単繊維引張強度、ワイブル形状係数は、残留炭素による単繊維同士の結着が強固であり、単繊維を分離採取することができなかったため、評価できなかった。
【0368】
比較例2-1では、梳綿工程で、再生炭素繊維の単繊維同士の結着が十分に開繊されないこと、単繊維同士の絡み合いが少ないことが観察され、糸抜けが発生したため、連続する混紡糸を製造することはできなかった。結果を下記の表4に示す。
【0369】
【表4】
【0370】
≪第3の本発明に係る実施例3-1≫
<材料の調製>
(再生炭素繊維)
再生炭素繊維としては、本開示の第1の発明に係る方法によって、CFRPを原料として半導体熱活性法によって再生された、平均長さ50mm、平均単繊維直径6.7μm、単繊維引張強度4.7GPa、ワイブル形状係数7.0、残留炭素量0.6重量%の再生炭素繊維を用いた。
【0371】
(単繊維引張強度)
単繊維引張強度は、JIS R7606に準拠して、上記の実施例1-5と同様にして計測した。
【0372】
(ワイブル形状係数)
ワイブル形状係数は、上記の実施例1-5と同様にして算出した。
【0373】
(残留炭素量)
再生炭素繊維における残留炭素成分の量は、熱重量分析(TGA法)によって、上記の実施例2-1と同様にして決定した。
【0374】
エポキシ系樹脂の水分散体に上記の再生炭素繊維を浸漬して引き上げた後、乾燥機中で乾燥し、再生炭素繊維に対して、熱可塑性樹脂とのバインダとして、2重量%のエポキシ系樹脂を塗付した。
【0375】
(熱可塑性樹脂繊維)
熱可塑性樹脂繊維として、平均長さ38mmのポリアミド66樹脂繊維(PA66樹脂繊維(東レ株式会社製、1401-1.3T-38 E9)、単糸繊度1.3dtex、捲縮数17山/25mm、融点265℃)を用いた。
【0376】
<混紡糸の製造>
バインダを付与した再生炭素繊維を80重量%、PA66樹脂繊維を20重量%の比率で混合し、梳綿、練条、粗紡工程を経て紡績することによって、0.86g/mで連続する混紡糸を製造することができた。なお、粗紡工程では200回/mの撚りを与えた。
【0377】
<炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランドの製造>
次に、上記で得られた混紡糸を、出口径2.3mmの電線被覆用クロスヘッドダイを用いて、ポリアミド6(DSM製:Akulon(登録商標)F-X9182、融点220℃)で被覆し、これをワインダーで巻き取ることで、炭素繊維含有率が17質量%(炭素繊維100質量部あたり、ポリアミド6が463質量部)、平均直径2.0mmの、芯鞘構造を有するストランド状の繊維強化プラスチック(実施例3-1に係る炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランド)を得た。
【0378】
<3次元造形装置による造形>
直径の平均値2.0mmの上記のストランド状の繊維強化プラスチックを、溶融堆積3次元造形装置(ボンサイラボ株式会社製「BS01」)にセットし、吐出ヘッド温度280℃にて、下記の条件で造形テストを行った。
吐出ヘッド移動速度:30mm/分(樹脂吐出時)、130mm/分(吐出停止時)。 吐出量(倍率):100%
積層ピッチ:0.2mm
積層ベッド温度:25℃
雰囲気温度:25℃
雰囲気相対湿度:40%
造形中、ファンや送風機による造形物の冷却は行わなかった。
【0379】
(1)垂れ評価:
各辺が10mmの立方体2点を橋桁とし、この橋桁の中心間距離が50mmになるように水平面上に平行に配置し、その上に長さ60mm、幅10mm、厚さ0.2mmの板を渡した形状の橋状の3次元モデルを3次元CADで設計し、このモデルを上記条件にて造形して、3次元造形物を製造した。造形された3次元モデルの板状の部分が、積層ベッドにもっとも近づいた部分と積層ベッドとの間の距離Zを測定し、垂れ量を下記式から算出した。
垂れ量(mm)=10-Z
造形を3回繰り返して垂れ量の平均値を算出し、この平均値が0mm以上2mm未満を優秀合格(◎)、2mm以上4mm未満を合格(○)、4mm以上を不合格(×)とした。得られたストランドの垂れ評価を実施したところ、垂れ量の平均値は3.4mmであった。
【0380】
(2)吐出/停止応答性の評価:
断面が1辺2mmの正方形で高さが20mmの角柱25個を、水平面上に10mm間隔で描いた5×5の正方格子点上にそれぞれ立てて配置した3次元モデルを3次元CADで設計し、このモデルを上記条件にて造形して、3次元造形物を製造した。造形された3次元モデルの寸法をノギスで測定し、角柱の断面の2辺のうち3mm以上になる部分がある角柱の数を造形失敗数とした。造形を3回繰り返して造形失敗数の平均値を算出し、この平均値が0個以上2個未満を優秀合格(◎)、2個以上5個未満を合格(○)、5個以上を不合格(×)とした。得られたストランドの吐出/停止応答性評価を実施したところ、造形失敗数の平均値は3.7であった。
【0381】
(3)造形の安定性の評価:
断面が10mmの正方形で高さが100mmの角柱25個を、水平面上に20mm間隔で描いた5×5の正方格子点上にそれぞれ立てて配置した3次元モデルを3次元CADで設計し、このモデルを上記条件にて造形して、3次元造形物を製造した。造形に用いたストランドは重量300g(体積250cm、連続長さ約104m)を充分に超えるものを用いた。造形が異常なく終了した場合は合格(○)とし、途中で吐出量が減少した、あるいは吐出が停止した場合は不合格(×)とした。得られたストランドの造形安定性評価を実施したところ、造形は異常なく終了した。
【0382】
実施例3-1に係る結果を、下記の表5に示す。
【0383】
≪第3の本発明に係る比較例3-1≫
残留炭素量7.1重量%の再生炭素繊維を用いたこと以外は、実施例3-1と同様にして、混紡糸の製造を試みた。なお、再生炭素繊維における単繊維引張強度、ワイブル形状係数は、残留炭素による単繊維同士の結着が強固であり測定は困難であった。
【0384】
比較例3-1では、梳綿工程で、再生炭素繊維の単繊維同士の結着が十分に開繊されないこと、単繊維同士の絡み合いが少ないことが観察され、糸抜けが発生したため、連続する混紡糸を製造することはできなかった。結果を下記の表5に示す。
【0385】
【表5】
【符号の説明】
【0386】
11 半導体材料
12 プラスチック含有材料
20 加熱炉
21 半導体材料を有する担体
22 プラスチック含有材料
23 熱源(ヒーター)
24 ガス供給部
25 排気口
26 加熱炉の内部空間
27 温度センサー
100 炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランド
110 ストランドの芯成分
120 ストランドの鞘成分
200 炭素繊維強化熱可塑性樹脂ペレット
210 ペレットの芯成分
220 ペレットの鞘成分
L ペレットのカット長
R ペレットの直径
C 切断処理
100b 本開示に係る炭素繊維強化熱可塑性樹脂ストランド
110b 芯成分
120b 鞘成分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7