(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】粗ニッケル用ニッケル電気めっき組成物
(51)【国際特許分類】
C25D 3/18 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
C25D3/18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023156286
(22)【出願日】2023-09-21
【審査請求日】2023-11-16
(32)【優先日】2022-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】デュポン エレクトロニック マテリアルズ インターナショナル,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】DUPONT ELECTRONIC MATERIALS INTERNATIONAL,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウー ウェイガン
(72)【発明者】
【氏名】ティン フェイ ロン
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/124843(WO,A1)
【文献】特開2021-63291(JP,A)
【文献】特開2011-122236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D3/00-3/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケルイオン及び次式:
【化1】
(式中、R
1は、水素、直鎖状若しくは分枝状(C
1~C
6)アルキル、直鎖状若しくは分枝状ヒドロキシ(C
1~C
6)アルキル又はそれらの塩、直鎖状若しくは分枝状カルボキシ(C
1~C
6)アルキル又はそれらの塩、直鎖状若しくは分枝状スルホ(C
1~C
6)アルキル又はそれらの塩、直鎖状若しくは分枝状アミノ(C
1~C
6)アルキル、フェニル又はベンジルから選択され、且つX
+は、H
+、又はアルカリ金属イオンである)を有するメルカプトテトラゾールを含むニッケル電気めっき組成物。
【請求項2】
R
1が、水素、直鎖状若しくは分枝状の(C
1~C
6)アルキル、直鎖状若しくは分枝状のヒドロキシ(C
1~C
6)アルキル又はその塩、直鎖状若しくは分枝状のカルボキシ(C
1~C
6)アルキル又はその塩、直鎖状若しくは分枝状のスルホ(C
1~C
6)アルキル又はその塩から選択され、X
+が、H
+、又はNa
+及びK
+からなる群から選択されるアルカリ金属イオンである、請求項1に記載のニッケル電気めっき組成物。
【請求項3】
R
1が、水素、直鎖状若しくは分岐状の(C
1~C
3)アルキル、直鎖状若しくは分岐状のヒドロキシ(C
1~C
3)アルキル又はその塩、直鎖状若しくは分岐状のカルボキシ(C
1~C
3)アルキル又はその塩、直鎖状若しくは分岐状のスルホ(C
1~C
3)アルキル又はその塩から選択され、X
+が、H
+、又はNa
+である、請求項1に記載のニッケル電気めっき組成物。
【請求項4】
前記メルカプトテトラゾールが、5-メルカプト-(1H)-テトラゾリル酢酸ナトリウム塩、5-メルカプト-1H-テトラゾール-1-メタンスルホン酸二ナトリウム塩及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のニッケル電気めっき組成物。
【請求項5】
前記メルカプトテトラゾールが5ppm以上の量である、請求項1に記載のニッケル電気めっき組成物。
【請求項6】
前記メルカプトテトラゾールが10ppm~100ppmの量である、請求項5に記載のニッケル電気めっき組成物。
【請求項7】
ニッケルイオンの供給源が、硫酸ニッケル、硫酸ニッケル六水和物、硫酸ニッケル七水和物、スルファミン酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル四水和物、塩化ニッケル、塩化ニッケル六水和物、炭酸ニッケル、メタンスルホン酸ニッケル、臭化ニッケル、フッ化ニッケル、ヨウ化ニッケル、シュウ酸ニッケル、クエン酸ニッケル、テトラフルオロホウ酸ニッケル、次亜リン酸ニッケル、酢酸ニッケル、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のニッケル電気めっき組成物。
【請求項8】
塩化物イオンの供給源をさらに含む、請求項1に記載のニッケル電気めっき組成物。
【請求項9】
塩化物イオンの供給源が、塩化ニッケル、塩化ニッケル六水和物、塩化水素、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、塩酸グアニジン、二塩酸エチレンジアミン、塩化トリメチルアンモニウム、塩酸ピリジン、塩化フェニルアンモニウム、二塩酸ヒドラジン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項8に記載のニッケル電気めっき組成物。
【請求項10】
前記ニッケル電気めっき組成物のpHが2~6である、請求項1に記載のニッケル電気めっき組成物。
【請求項11】
pH調整剤をさらに含む、請求項1に記載のニッケル電気めっき組成物。
【請求項12】
前記pH調整剤が、硫酸、塩酸、スルファミン酸、ホウ酸、酢酸、アミノ酢酸、アスコルビン酸、乳酸、5-スルホサリチル酸及びそれらの塩からなる群から選択される、請求項11に記載のニッケル電気めっき組成物。
【請求項13】
界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載のニッケル電気めっき組成物。
【請求項14】
前記界面活性剤が、ジ(1,3-ジメチルブチル)スルホコハク酸ナトリウム、2-エチルヘキシル硫酸ナトリウム、ジアミルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ペルフッ素化第4級アミン及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項13に記載のニッケル電気めっき組成物。
【請求項15】
前記ニッケル電気めっき組成物がシアン化合物を含まない、請求項1に記載のニッケル電気めっき組成物。
【請求項16】
前記ニッケル電気めっき組成物が合金金属を含まない、請求項1に記載のニッケル電気めっき組成物。
【請求項17】
基板上にニッケル金属を電気めっきする方法であって
a)前記基材を提供することと;
b)前記基材を請求項1のニッケル電気めっき組成物と接触させることと;
c)Sa≧70nm及びSdr≧4%を含むニッケル層を前記基板上に析出させることと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に粗ニッケルを析出させるためのニッケル電気めっき組成物に関する。より具体的には、本発明は、メルカプトテトラゾールを含む、基板上に粗ニッケルを析出させるためのニッケル電気めっき組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
リードフレームは、半導体デバイスの製造において、半導体ダイス又はチップを搭載し、加工するために使用される。リードフレームは、リードフレームのリードを介してチップを外部デバイスに電気的に接続する働きをする。リードフレームの例としては、スポット銀及びはんだコーテッドリードフレーム、並びにパラジウムプリプレーテッドリードフレーム(PPF)が挙げられる。
【0003】
PPFは、0.5~2μmの厚さ範囲を有するニッケル、10~100nmの厚さ範囲を有するパラジウム及び3~9nmの厚さ範囲を有する金を含有する3層リードフレームである。ニッケル層は、リードフレームバルクからパラジウム層への銅の拡散を防止し、はんだと接合する下地層として使用される。パラジウム層は、ニッケル表面の酸化及びニッケル層への金の拡散を防止する機能を有する一方、上部金フラッシュ層は、パラジウムの酸化及びパラジウムによって吸収されるアウトガスを防止するように設計される。
【0004】
半導体チップはリードフレーム上に搭載され、ボンディングワイヤ接続が半導体チップとリードフレームとの間に形成される。各半導体チップは、エポキシ成形コンパウンド(EMC)とも呼ばれるプラスチック成形コンパウンドで封入することによって環境から保護される。リードフレームとEMCとの間の良好な接着は、高信頼性及び相互接続回路(IC)デバイスの適切な機能を確保するために非常に重要である。接着不良は、剥離、クラック及び「ポップコーン」現象の原因となる。これは、特に高温、高湿度及び熱サイクルなどの過酷な条件下でのデバイスの故障をもたらす。
【0005】
リードフレーム又は基板からのエポキシ成形コンパウンドの剥離を回避するために、当技術分野においては様々な方法がある。このような方法としては、特殊なリードフレーム設計、化学結合及び機械的インターロックなどを利用する方法が挙げられる。特殊なリードフレーム設計には、リードフレーム表面に機械的又はレーザー加工によって作成された穴、溝及び半球などが含まれる。このような方法では、EMCとリードフレームとの間の接着に関する業界標準を達成するための高信頼性が不可能となり得るか、又はMSL-1の順守(吸湿耐性レベル-1、85℃及び85%の相対湿度で168時間、IPC/JEDECJ-STD-20)に適合し得ない。
【0006】
化学接着技術としては、ブラウンオキサイド、有機接着促進剤、ポリマープライマー及びカップリング剤が挙げられる。そのメカニズムは、ブラウンオキサイド及び有機接着剤が、EMC及びリードフレームと連結する1つ又は2つの官能基を有することである。したがって、化学結合によって接着が強化される。ブラウンオキサイド法では、基板表面の銅が酸化銅又は亜酸化銅へと酸化される。しかしながら、銅表面が露出しないため、Ni/Pd/Auプリプレーテッドリードフレームにはブラウンオキサイド法は適用不可能である。さらに、ブラウンオキサイド処理におけるマイクロエッチング効果は、リードフレームの強度を弱め、寸法のばらつきをもたらし得る。
【0007】
有機処理には、大量生産での普及を妨げるいくつかの限界がある。例えば、有機接着促進剤と様々な種類のEMCとの相溶性の問題があり得る。ポリマープライマーに関して、方法ステップが複雑になる可能性がある。銅カップリング剤は、通常の包装条件下で加水分解を起こし得る。
【0008】
PPF(Ni/Pd/Au)リードフレームの金及びパラジウム層は実質的に不活性金属であるため、化学結合を変性して金型密着性を高めることは難しい。実現可能な唯一の手段は、銅又はニッケル基板の表面を粗くすることによって機械的なインターロック効果を利用することである。パラジウム及び金層は薄すぎるため、製造プロセスにおいて粗面化することはできない。
【0009】
(特許文献1)及び(特許文献2)は、半導体パッケージのニッケル層と樹脂シーリングとの間の接着を改善するために、粗ニッケル層を析出するためのニッケルめっき浴を開示している。(特許文献1)特許は、粗ニッケル析出物を提供するための、塩化ニッケル、チオシアン酸ナトリウム及び塩化アンモニウムのニッケルめっき浴を開示する。(特許文献2)特許は、粗ニッケル層を析出するための、硫酸ニッケル、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム及びホウ酸を含むニッケルめっき浴を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第7,190,057号明細書
【文献】米国特許第7,285,845号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
粗ニッケルを析出させるニッケルめっき浴は存在するが、粗ニッケルの析出を可能にする改良されたニッケル電気めっき浴の必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ニッケルイオン及び次式:
【化1】
(式中、R
1は、水素、直鎖状若しくは分枝状(C
1~C
6)アルキル、直鎖状若しくは分枝状ヒドロキシ(C
1~C
6)アルキル又はそれらの塩、直鎖状若しくは分枝状カルボキシ(C
1~C
6)アルキル又はそれらの塩、直鎖状若しくは分枝状スルホ(C
1~C
6)アルキル又はそれらの塩、直鎖状若しくは分枝状アミノ(C
1~C
6)アルキル、フェニル又はベンジルから選択され、且つX
+は、H
+、又はアルカリ金属イオンである)を有するメルカプトテトラゾールを含むニッケル電気めっき組成物に関する。
【0013】
本発明はまた、
a)基板を提供すること;
b)ニッケルイオン及び次式:
【化2】
(式中、R
1は、水素、直鎖状若しくは分枝状の(C
1~C
6)アルキル、直鎖状若しくは分枝状のヒドロキシ(C
1~C
6)アルキル又はその塩、直鎖状若しくは分枝状のカルボキシ(C
1~C
6)アルキル又はその塩、直鎖状若しくは分枝状のスルホ(C
1~C
6)アルキル又はその塩、直鎖状若しくは分枝状のアミノ(C
1~C
6)アルキル、フェニル又はベンジルから選択され、X
+は、H
+、又はアルカリ金属イオンである)を有するメルカプトテトラゾールを含むニッケル電気めっき組成物と基板を接触させること;並びに
c)Sa≧70nm及びSdr≧4%を含むニッケル層を基板上に析出させること
を含む、基板上にニッケル金属を電気めっきする方法にも関する。
【0014】
本発明のニッケル電気めっき組成物は、実質的に粒状又はマウンド型の形態を有し、突起を有する粗ニッケル層の析出を可能にする。粗ニッケルは、粗ニッケル層と隣接する金属層との間の接着を改善し、またリードフレームに見られるようなエポキシ成形コンパウンドとの間の金型接着力を改善することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実質的に平滑な表面を有する従来のニッケル層の10,000倍でのSEMである。
【
図2】
図2は、本発明のニッケル浴から電気めっきされた粗ニッケル層の10,000倍でのSEMであり、マウンド型の形態及び突起を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書を通して使用される略語は、文脈上明らかに別に示されない限り、以下の意味を有する:℃=摂氏度;g=グラム;Kg=キログラム;L=リットル;mL=ミリリットル;m=メートル;cm=センチメートル;μm=ミクロン;nm=ナノメートル;DI=脱イオン;A=アンペア;ASD=アンペア/dm2=電流密度又はめっき速度;PPF=パラジウムプリプレーテッドリードフレーム、EMC=エポキシ成形コンパウンド、XRF=蛍光X線、AFM=原子間力顕微鏡、KV=キロボルト、V=ボルト、LPM=リットル/分;min=分;MSL=吸湿耐性レベル;MSL-1=吸湿耐性レベル-1、85℃及び相対湿度85%で168時間;w/o MSL-1=MSL処理なし;w/MSL-1=MSL処理あり;H=水素;H+=水素イオン;N=窒素;O=酸素;S=硫黄;C=炭素;Ni=ニッケル;Pd=パラジウム;Au=金;Na+=ナトリウムカチオン;K+=カリウムカチオン;及びwt%=重量%。
【0017】
「部分」という用語は、分子の一部を構成する1つ又は複数の原子を意味する。「隣接」という用語は、2つの金属層が共通の界面を有するように直接接触していることを意味する。「水性」という用語は、水又は水ベースであることを意味する。「艶のない」という用語は、くすんだ外観を意味する。「組成物」及び「浴」という用語は、本明細書を通じて互換的に使用される。「Ra」という用語は、プロファイル粗さの算術平均偏差を意味する。「Sa」という用語は、評価領域内の算術平均高さを意味し、実質的にRaと同等であるが、このパラメータは傷、汚染及び測定ノイズの影響を大きく受けないため、Saはより安定した結果を提供する。「Sdr」という用語は、Sdr=(表面積比-1)×100%の相関を有する表面積比に対応する現像界面積比を意味する。「電気めっき」、「めっき」及び「析出」という用語は、本明細書を通じて互換的に使用される。「形態」という用語は、表面又は物品の形状、サイズ、テクスチャー又はトポグラフィーを意味する。「イオン」という用語は、本明細書で使用される文脈に応じて、また当業者によって理解されるように、カチオン又はアニオンを意味する。「IPC/JEDECJ-STD-20」という用語は、リードフレームICデバイスの吸湿耐性レベル(MSL)の標準分類に関する、Institute for Interconnecting and Packaging Electronic Circuits(IPC)及び固Solid State Technology Associationを意味する。「1つ(a)」及び「1つ(an)」という用語は、本明細書を通して単数形及び複数形の両方を指すことがある。全ての数値範囲は、包含的であり、且ついかなる順序でも組み合わされ得るが、このような数値範囲を合計したものが100%となるように制約されることが論理的である場合を例外とする。
【0018】
本発明は、以下の化学構造:
【化3】
(式中、R
1は、水素、直鎖状若しくは分枝状(C
1~C
6)アルキル、直鎖状若しくは分枝状ヒドロキシ(C
1~C
6)アルキル又はそれらの塩、直鎖状若しくは分枝状カルボキシ(C
1~C
6)アルキル又はそれらの塩、直鎖状若しくは分枝状スルホ(C
1~C
6)アルキル又はそれらの塩、直鎖状若しくは分枝状アミノ(C
1~C
6)アルキル、フェニル又はベンジルから選択され、且つX
+は、H
+、又はアルカリ金属イオンである)を有するメルカプトテトラゾールを含む水性ニッケル電気めっき組成物に関する。
【0019】
好ましくは、R1は、水素、直鎖状若しくは分枝状の(C1~C6)アルキル、直鎖状若しくは分枝状のヒドロキシ(C1~C6)アルキル又はその塩、直鎖状若しくは分枝状のカルボキシ(C1~C6)アルキル又はその塩、直鎖状若しくは分枝状のスルホ(C1~C6)アルキル又はその塩から選択され、且つX+は、H+、又はNa+及びK+からなる群から選択されるアルカリ金属イオンである。
【0020】
さらに好ましくは、R1は、水素、直鎖状若しくは分枝状の(C1~C3)アルキル、直鎖状若しくは分枝状のヒドロキシ(C1~C3)アルキル又はその塩、直鎖状若しくは分枝状のカルボキシ(C1~C3)アルキル又はその塩、直鎖状若しくは分枝状のスルホ(C1~C3)アルキル又はその塩から選択され、且つX+はH+又はNa+である。
【0021】
より好ましくは、R1は、水素、(C1~C2)アルキル、ヒドロキシ(C1~C2)アルキル又はその塩、カルボキシ(C1~C2)アルキル又はその塩、スルホ(C1~C2)アルキル又はその塩から選択され、且つX+はH+又はNa+である。
【0022】
最も好ましいメルカプトテトラゾールは、次式を有する:
【化4】
5-メルカプト-(1H)-テトラゾリル酢酸、ナトリウム塩及び
【化5】
5-メルカプト-1H-テトラゾール-1-メタンスルホン酸、二ナトリウム塩。
【0023】
ヒドロキシ、カルボキシ及びスルホ部分の塩としては、限定されないが、好ましくは、ナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩などのアルカリ金属塩、より好ましくは、ナトリウム塩及びカリウム塩、さらに好ましくは、ナトリウム塩が挙げられる。
【0024】
好ましくは、メルカプトテトラゾールは、5ppm以上、より好ましくは、10ppm~100ppm、さらに好ましくは、20ppm~80ppm、さらにより好ましくは、30ppm~60ppm、最も好ましくは、45ppm~55ppmの量でニッケル電気めっき組成物中に含まれる。
【0025】
ニッケル電気めっき組成物は、水溶性ニッケル塩の1つ又は複数の供給源からのニッケルイオンを含む。そのようなニッケル塩としては、限定されないが、硫酸ニッケル及びその水和物である硫酸ニッケル六水和物及び硫酸ニッケル七水和物、スルファミン酸ニッケル及びその水和物であるスルファミン酸ニッケル四水和物、塩化ニッケル及びその水和物である塩化ニッケル六水和物、炭酸ニッケル、メタンスルホン酸ニッケル、臭化ニッケル、フッ化ニッケル、ヨウ化ニッケル、シュウ酸ニッケル、クエン酸ニッケル、四フッ化ホウ酸ニッケル、次亜リン酸ニッケル及び酢酸ニッケルが挙げられる。好ましくは、ニッケルイオンの供給源は、スルファミン酸ニッケル、塩化ニッケル又はそれらの混合物である。
【0026】
1つ又は複数のニッケルイオンの供給源は、所望の粗ニッケル析出を達成するために所望のニッケルイオン濃度を提供するのに十分な量で水性ニッケル電気めっき組成物中に含まれる。好ましくは、本発明のニッケル電気めっき組成物中のニッケル塩の濃度は20g/L以上である。より好ましくは、ニッケル塩の濃度は、25g/L~750g/Lであり、さらに好ましくは、ニッケル塩の濃度は、30g/L~500g/Lの範囲であり、最も好ましくは、30g/L~300g/Lである。
【0027】
任意選択的に、塩化物イオンを本発明の水性ニッケル電気めっき組成物に含ませることができる。1つ又は複数の塩化物イオンの供給源は、好ましくは、0g/L~50g/L、より好ましくは、0g/L~30g/L、さらに好ましくは、0g/L~20g/L、最も好ましくは、3g/L~10g/Lの量で含まれる。
【0028】
塩化物イオンの供給源としては、限定されないが、塩化ニッケル、塩化ニッケル六水和物、塩化水素、アルカリ金属塩、例えば、塩化ナトリウム及び塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、有機塩酸塩、例えば、限定されないが、塩酸グアニジン、二塩酸エチレンジアミン、塩化トリメチルアンモニウム、塩酸ピリジン、塩化フェニルアンモニウム及び二塩酸ヒドラジンが挙げられる。好ましくは、塩化物イオンの供給源は塩化ニッケル及び塩化ニッケル六水和物である。
【0029】
本発明のニッケル電気めっき組成物は酸性である。pHは好ましくは2~6、より好ましくは2.5~4.5、さらに好ましくは3~4.2の範囲である。水性ニッケル電気めっき組成物のpHを調整するために、無機酸、有機酸、無機塩基、有機塩基及びそれらの塩を使用することができる。このような酸としては、限定されないが、硫酸、塩酸、スルファミン酸、ホウ酸及びそれらの塩などの無機酸が挙げられる。有機酸としては、限定されないが、酢酸、アミノ酢酸、アスコルビン酸、乳酸、5-スルホサリチル酸及びそれらの塩などの有機酸が挙げられる。水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムなどの無機塩基、並びに各種アミン及び酢酸アンモニウムなどの有機塩基もpHを調整するために使用できる。好ましくは、pH調整剤は、ホウ酸、乳酸、5-スルホサリチル酸及び酢酸アンモニウムから選択される。最も好ましくは、pH調整剤は、ホウ酸、その塩及び酢酸アンモニウムである。pH調整剤は、所望のpH範囲を維持するために必要とされる量で添加することができる。
【0030】
任意選択的に、1種又は複数種の界面活性剤を本発明の水性ニッケル電気めっき組成物に含有させることができる。そのような界面活性剤としては、限定されないが、カチオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤などのイオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、並びに両性界面活性剤が挙げられる。好ましくは、界面活性剤は、0.05g/L~150g/L、より好ましくは、0.05g/L~15g/L、さらに好ましくは、0.05g/L~5g/Lなどの従来の量で使用することができる。
【0031】
界面活性剤の例としては、限定されないが、ジ(1,3-ジメチルブチル)スルホコハク酸ナトリウム、2-エチルヘキシル硫酸ナトリウム、ジアミルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、並びにペルフッ素化第4級アミンなどの第4級アンモニウム塩などのカチオン性界面活性剤が挙げられる。市販のアニオン性界面活性剤の例としては、Solvay Chemicalsから入手可能なAEROSOL-M-80ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム塩が挙げられる。
【0032】
本発明の水性ニッケル電気めっき組成物は、好ましくは、ニッケル金属析出物の光沢を増加させるか、又は改善したりするために金属めっき浴に含ませることができる合金金属又は金属を含まない。
【0033】
さらに、本発明の水性ニッケル電気めっき組成物は、好ましくは、シアン化物及びシアン化物化合物を含まない。
【0034】
好ましくは、本発明の水性ニッケル電気めっき組成物は、1種又は複数種のニッケル塩からのニッケルカチオン及び対応する対アニオン、次式:
【化6】
(式中、R
1は、水素、直鎖状若しくは分枝状(C
1~C
6)アルキル、直鎖状若しくは分枝状ヒドロキシ(C
1~C
6)アルキル又はそれらの塩、直鎖状若しくは分枝状カルボキシ(C
1~C
6)アルキル又はそれらの塩、直鎖状若しくは分枝状スルホ(C
1~C
6)アルキル又はそれらの塩から選択され、且つX
+は、H
+、又はNa
+及びK
+からなる群から選択されるアルカリ金属イオンである)を有するメルカプトテトラゾール、任意選択的に1種又は複数種の塩化物塩からの塩化物アニオン及び対応する対カチオン、任意選択的に1種又は複数種のpH調整剤、任意選択的に1種又は複数種の界面活性剤、並びに水から構成される。
【0035】
より好ましくは、本発明の水性ニッケル電気めっき組成物は、1種又は複数種のニッケル塩からのニッケルカチオン及び対応する対アニオン、
式を有するメルカプトテトラゾール:
【化7】
(式中、R
1は、水素、直鎖状若しくは分枝状(C
1~C
3)アルキル、直鎖状若しくは分枝状ヒドロキシ(C
1~C
3)アルキル又はそれらの塩、直鎖状若しくは分枝状カルボキシ(C
1~C
3)アルキル又はそれらの塩、直鎖状若しくは分枝状スルホ(C
1~C
3)アルキル又はそれらの塩から選択され、且つX
+は、H
+、又はNa
+である)を有するメルカプトテトラゾール、任意選択的に1種又は複数種の塩化物塩からの塩化物アニオン及び対応する対カチオン、1種又は複数種のpH調整剤、任意選択的に1種又は複数種の界面活性剤、並びに水から構成される。
【0036】
さらに好ましくは、本発明の水性ニッケル電気めっき組成物は、塩化ニッケル、スルファミン酸ニッケル、硫酸ニッケル、及びそれらの混合物からなる群から選択されるニッケル塩からのニッケルカチオン及び対応する対アニオン、次式を有するメルカプトテトラゾールから構成される:
【化8】
(式中、R
1は、水素、(C
1~C
2)アルキル、ヒドロキシ(C
1~C
2)アルキル又はそれらの塩、カルボキシ(C
1~C
2)アルキル又はそれらの塩、スルホ(C
1~C
2)アルキル又はそれらの塩から選択され、且つX
+は、H
+、又はNa
+である)を有するメルカプトテトラゾール、任意選択的に塩化ニッケル及び塩化ナトリウムからなる群から選択される1種又は複数種の塩化物塩からの塩化物アニオン及び対応する対カチオン、ホウ酸、乳酸、5-スルホサリチル酸、それらの塩、酢酸アンモニウム、及びそれらの混合物からなる群から選択されるpH調整剤、1種又は複数種の界面活性剤、並びに水から構成される。
【0037】
粗ニッケルを電気めっきする方法は、水性ニッケル電気めっき組成物を提供することと、基板を組成物中に浸漬する又は基板に組成物を噴霧するなどの方法によって、基板を水性ニッケル電気めっき組成物と接触させることとを含む。基板が陰極として機能し、対極又は陽極が存在する従来の整流器を用いて電流を印加する。陽極は、基板の表面に隣接してニッケル金属を電気めっきするために使用される、いずれかの従来の可溶性又は不溶性の陽極であることが可能である。本発明の水性ニッケル電気めっき組成物は、粗面、粒状又はマウンド状の形態を有し、基板上に突起を有するニッケル金属層を析出させる。
【0038】
好ましくは、電流密度は1ASD以上の範囲である。より好ましくは、電流密度は2ASD~20ASDの範囲である。さらに好ましくは、電流密度は5ASD~15ASDの範囲である。
【0039】
粗ニッケルを析出させるためのニッケル電気めっき組成物の温度は、好ましくは、30℃~70℃の範囲であり、より好ましくは、40℃~65℃の範囲であり、さらに好ましくは、45℃~60℃の範囲である。好ましくは、ニッケル電気めっき組成物は、電気めっきの間、連続撹拌下にある。
【0040】
粗ニッケル金属層の厚さは、0.5μm以上の範囲であり得る。好ましくは、粗ニッケル層は、0.5μm~50μm、より好ましくは、0.5μm~10μm、さらに好ましくは、0.5μm~5μmの範囲の厚さを有する。ニッケル金属層の厚さは、XRFなどの当該技術分野において既知の従来の方法で測定することができる。例えば、ニッケル層の厚さは、Bowman,Schaumburg,ILから入手可能なBowman Series P X-Ray Fluorimeter(XRF)を用いて測定することができる。XRFは、Bowmanからの純ニッケル厚さ標準試料を用いて校正することができる。
【0041】
ニッケル層は、好ましくは、粒子が400nm~700nmの高さ、好ましくは200nm~600nmの底面の直径を有し、より好ましくは、粒子が500nm~700nmの高さ、250nm~600nmの底面の直径を有する、粗い粒状の粒子形態を有する。厚みが大きいほど、ニッケル析出物の粗さと粒子径が大きくなる。このようなパラメータは、Olympus 3D Laser Microscope-LEXT OLS5000-LAF(Olympus ScientificSolutionsAmericas社から入手可能)を用いて測定することができる。当業者に周知の他の方法及び装置を使用することもできる。
【0042】
好ましくは、ニッケル層表面は70nm以上のSaを有し、より好ましくは、Raと実質的に等しい70nm~180nmのSaを有する。好ましくは、Sdrは4%以上であり、より好ましくは、Sdrは4%~10%であり、さらに好ましくは、5%~10%である。このようなパラメータは、Olympus 3Dレーザー顕微鏡又はAFMなどによって、当該技術分野において既知の従来の方法を用いて測定することができる。例えば、Olympus 3D Laser Microscope-LEXT OLS5000-LAFを使用して、Sa及びSdrを測定することができる。表面粗さは、例えば256μm×256μmの表面積を50倍の対物倍率でスキャンすることができる。
【0043】
本発明の水性ニッケル電気めっき組成物は、導電性基板及び半導体基板の両方の様々な基板上にニッケル層を析出させるために使用することができる。好ましくは、ニッケル層は、基板の銅、銅合金及びニッケル-鉄合金層に隣接して析出される。銅合金としては、限定されないが、黄銅、白銅を含む青銅、銅-錫合金及び銅-ビスマス合金が挙げられる。
【0044】
粗ニッケル層に隣接して、好ましくは、粗ニッケル層と貴金属とが共通の界面を有するように貴金属を蒸着する。このような貴金属としては、限定されないが、金及びパラジウムが挙げられる。好ましくは、パラジウムは、粗ニッケルと共通の界面を形成して粗ニッケルに隣接し、金は、金及びパラジウムが共通の界面を有するようにパラジウムに隣接して蒸着される。好ましくは、パラジウム層は5nm~20nmの範囲の厚さを有し、好ましくは、金層は0.5nm~5nmの範囲の厚さを有する。このような金属層の配置はPPFと呼ばれ、リードフレームでは一般的である。このようなリードフレームはEMCに封入される。
【0045】
粗ニッケル層は、リードフレームなどの基板とEMCとの間の結合性を向上させる。粗ニッケルは、PPF表面への金ワイヤボンディングも向上させる。粗ニッケル表面は、リードフレームとEMCとの間の接触面積、及びリードフレームとボンディングワイヤとの間の接触面積を増加させる。
【0046】
本発明の粗ニッケル層を含むICパッケージは、エポキシ成形コンパウンドとの良好な接着を可能にし、成形コンパウンドの剥離を防止し、MSL-1の順守(吸湿耐性レベル-1、85℃及び85%の相対湿度で168時間、IPC/JEDECJ-STD-20))を期待することができる。
【0047】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するために含まれるが、その範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0048】
実施例1
ハルセル試験
以下の3種類の水性ニッケル電気めっき浴を調製した。
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
ハルセル試験は以下の作業パラメータを用いて行われた:印加電流5A、3分間、55℃、4LPM空気撹拌。電流密度は、ハルセルパネルの長さ方向に2ASDから20ASDの範囲であった。めっきの間、表1のニッケル浴の浴pHは3.56、表2のニッケル浴のpHは3.36、表3のニッケル浴のpHは1.25であった。ハルセルパネルは青銅(銅-亜鉛合金)製であった。パネルを最初に60g/LのRONACLEAN(商標)GP-300(DuPont de Nemours,Inc.から入手可能)電気クリーニング溶液を用いて、4~6V、60℃で30秒間の電気クリーニングによってクリーニングし、次に、100g/Lのプレディップ溶液ACTRONAL(商標)988溶液(DuPont de Nemours,Inc.から入手可能)を用いて、室温で5秒間活性化した。めっき後、パネルをDI水ですすぎ、室温で風乾した。各パネルの厚さは、Bowman Series PX線蛍光光度計(XRF)により、実際の生産ライン用途で使用される最も一般的な電流密度の1つである10ASDで測定した。XRFは、Bowmanの純ニッケル厚さ標準を用いて校正された。表1(本発明)、表2(本発明)及び表3(比較)のめっき浴からの10ASDにおけるニッケル析出物の厚さは、それぞれ5.66μm、5.11μm及び5.43μmであった。
【0053】
本発明のニッケル浴でめっきしたパネルは、2~20ASDの電流密度で艶のない外観を有していた。対照的に、比較ニッケル浴でめっきしたパネルは、2~20ASDの全ての電流密度でヘイズとわずかな反射を伴う不均一な表面を有していた。
【0054】
各パネルのニッケル層の粗さは、Olympus 3D Laser Microscope-LEXT OLS5000-LAFによって測定した。表面粗さは、ハルセルパネルの10ASDポイントにおいて対物レンズ倍率50倍で256μm×256μmの表面積をスキャンした。表面粗さは、Sa(算術平均高さ)及びSdr(展開界面面積比)を含む面積粗さ指数によって特徴付けられた。Saは、プロファイル粗さのRa(算術平均偏差)に実質的に等しく、Sdrは、工業的に使用される表面比に相当し、Sdr=(表面比-1)×100%の相関を有する。Sa又はSdrが高いほど、ニッケル析出物の粗さは大きくなる。表1の本発明の浴からめっきしたニッケル層の平均Saは0.1μm、平均Sdrは7.41%であり、表2の本発明の浴からめっきしたニッケル層の平均Saは0.12μm、平均Sdrは8.27%であった。対照的に、比較例の浴からめっきされたニッケル層の平均Saは0.068μm、平均Sdrは4.71%であった。本発明のニッケルめっき浴からめっきされたニッケル層は、比較の浴からめっきされたニッケル層よりも表面粗さが著しく増加した。
【0055】
実施例2
ハルセル試験
以下の2種類の水性ニッケル電気めっき浴を調製した。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
ハルセル試験は以下の作業パラメータを用いて行われた:印加電流5A、3分間、55℃、4LPM空気撹拌。電流密度は、ハルセルパネルの長さ方向に2ASDから20ASDの範囲であった。めっきの間、表4のニッケル浴のpHは4.26、表5のニッケル浴のpHは4.18であった。表6のニッケル浴のpHは4.40であった。ハルセルパネルは青銅(銅-亜鉛合金)製であった。上記実施例1と同様に、パネルを最初に電気クリーニングによってクリーニングし、次に、プレディップ溶液を用いて活性化した。めっき後、パネルをDI水ですすぎ、室温で風乾した。各パネルの厚さは、上記実施例1と同様にXRFにより測定した。表4(本発明)、表5(本発明)及び表6(比較例)のニッケル浴から10ASDでめっきしたニッケル析出物の厚さは、それぞれ5.07μm、5.42μm及び5.79μmであった。
【0060】
本発明のニッケル浴でめっきしたパネルは、電流密度2~20ASDで艶のない、くすんだ外観を有していた。対照的に、比較のニッケル浴でめっきしたパネルは、10ASD未満の電流密度ではヘイズを有し、10~20ASDの電流密度では半光沢に見えた。
【0061】
各パネルのニッケル層の粗さは、上記実施例1に記載したように、ハルセルパネルの10ASDポイントにおいてOlympus 3D Laser Microscopeによって測定した。表面粗さは、Sa(算術平均高さ)及びSdr(展開界面面積比)を含む面積粗さ指数によって特徴付けられた。表4の浴からめっきしたニッケル層の平均Saは0.086μm、平均Sdrは5.89%であり、表5の浴からめっきしたニッケル層の平均Saは0.096μm、平均Sdrは6.31%であった。対照的に、比較例の浴からめっきしたニッケル層の平均Saは0.073μm、平均Sdrは2.47%であった。本発明のニッケルめっき浴からめっきされたニッケル層は、比較の浴からめっきされたニッケル層よりも表面粗さが著しく増加した。
【0062】
実施例3
ビーカー試験
複数の銅合金C194クーポンを2.7cm×3cmのめっき面積で使用した。C194クーポンは、リードフレームの形成に使用される半導体材料の一種である。C194クーポンは、銅(≧97%)、鉄(2.1~2.6%)、リン(0.015~0.15%)、及び亜鉛(0.05~0.2%)から構成されていた。各クーポンは、ニッケル電気めっきの前に、上記の実施例1-2と同様に前処理された。
【0063】
以下の3種類の水性ニッケル電気めっき浴を調製した。
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
電解めっき中の温度は60℃、pHは3.5、パドルの移動距離及び移動速度は8cm×30サイクル/分を維持した。印加電流密度は1、5、10、20ASDに設定した。目標ニッケルコーティング厚さは0.75μmであったが、電流密度が10ASDであった場合、一部のクーポンではニッケルコーティングが1.5μm又は3.0μmでもあった。コーティングの厚さはXRFによって試験した。コーティングの粗さは、1、5、10、20ASDのポイントでOlympus 3D Laser Microscopeによって測定した。粒子形態は、Zeiss Sigma 300、20KV、作動距離10cmのSEMによって測定した。
【0068】
5-メルカプト-1H-テトラゾール-1-メタンスルホン酸二ナトリウム塩又は5-メルカプト-(1H)-テトラゾリル酢酸ナトリウム塩を含まない浴からニッケルめっきしたクーポンは、くすんでいるか又は半光沢であり、粗さが低かった。対照的に、5-メルカプト-1H-テトラゾール-1-メタンスルホン酸二ナトリウム塩又は5-メルカプト-(1H)-テトラゾリル酢酸ナトリウム塩を含む浴からニッケルめっきされたクーポンは、粗面が著しく増加した艶のないコーティングであった。厚さ0.75μmのニッケルめっきしたクーポンのSa及びSdrの平均値を表10及び表11に示す。
【0069】
【0070】
【0071】
10ASDでニッケルを1.5μm及び3μmの厚さまでめっきしたクーポンのSa及びSdrの平均値を表12及び表13に示す。
【0072】
【0073】
【0074】
実施例4
ボタンせん断試験及びワイヤボンディング試験
寸法6mm×27mmのC194銅合金のリードフレーム基板を、上記実施例1と同様に電気クリーニング及び予備浸漬により前処理した。このリードフレームを、実施例1の表2の粗ニッケル浴又は表14の比較ニッケル浴で電気めっきした。
【0075】
【0076】
ニッケル電気めっきは、10ASDで30秒間行った。電気めっき中、ニッケルめっき浴のpHを3.5で維持した。各浴の温度は60℃に保持した。リードフレームの銅合金上に0.75μmのニッケル層を析出させた。ニッケル層の厚さはXRFによって測定した。比較ニッケル析出物は
図1に示すような形態を有し、粗ニッケル析出物は
図2に示すような形態を有した。粒子形態は、Zeiss Sigma 300、20KV、作動距離10cm及び10,000倍を用いたSEMによって特徴付けられた。
図2のニッケル析出物は、本発明のニッケルめっき浴からの突起を有する特徴的なマウンド状のニッケル析出物を示す。対照的に、
図1は、多くの従来のニッケル浴に特徴的な実質的により平滑なニッケル析出物を示す。
【0077】
ニッケル析出物の表面粗さは、面積粗さ指数Sa(算術平均高さ)及びSdr(展開界面面積比)によって特徴付けられた。コーティングの粗さはOlympus 3D Laser Microscopeによって測定した。本発明の浴からめっきしたニッケル層の平均Saは0.106μm、平均Sdrは4.35%であった。一方、比較例の浴からめっきしたニッケル層の平均Saは0.095μm、平均Sdrは1.03%であった。
【0078】
次に、PALLADURE(商標)200パラジウム電気めっき浴(DuPont de Nemours,Inc.から入手可能)を用いて、0.75ASDで3秒間、ニッケル層上にパラジウム層をめっきした。浴温は45℃であった。各ニッケル層上のパラジウム層は10nmであった。次に、AURALL(商標)364金ストライク浴(DuPont de Nemours,Inc.から入手可能)を用いて、パラジウム層上に厚さ3nmの金層をめっきした。金めっきは0.1ASD、45℃で15秒間行った。PPF多層構造は、Ni0.75μm/Pd10nm/Au3nmの層を有した。
【0079】
その後、各種のニッケル析出物の接着強度をボタンせん断試験で試験した。その後、全てのクーポンを成形コンパウンドEMC-G700LA(Sumikon bakelite Co.)でコーティングした。予期せぬ硬化を避けるため、EMCを-40℃で貯蔵し、成形プロセスの24時間前に冷凍庫から取り出した。解凍プロセスの間、EMCを真空状態に保持し、吸湿を最小限にした。成形コンパウンドをボタン状に成形し、通常のオーブン中175℃で2分間硬化させた。その後、ボダン状成形コンパウンドを用いたクーポンを175℃で4時間ポストモールド硬化させた。クーポンを室温まで冷却した。ボタン状成形コンパウンドを用いたクーポンの半分は、ESPECの卓上型温湿度チャンバー、モデルSH-221を使用して、吸湿耐性レベル-1、85℃及び85%の相対湿度に168時間暴露した。クーポンをチャンバー内のステンレス鋼製バスケットに入れ、85℃、相対湿度85%に168時間(7日間)設定した。その後、クーポンをチャンバーから取り出し、周囲環境で乾燥した。
【0080】
その後、全てのクーポンでボタンせん断試験を実施した。ボタンせん断試験の条件は以下の通りである:
a)せん断装置:Nordson Dage 4000多目的ボンドテスター
b)カートリッジ:DS 100
c)ボタンの高さ:3mm
d)ボタンの直径:3~3.5mm
e)せん断高さ:ボタンの20%=600μm
f)せん断速度:85μm/秒
g)温度:室温
【0081】
比較ニッケルPPFクーポン及び粗ニッケルPPFクーポンのボタンせん断試験の結果は、以下の表15に示す通りである。
【0082】
【0083】
本発明の粗ニッケルのせん断力の低下は、比較ニッケルのせん断力の低下よりも大幅に低かった。本発明の粗ニッケルは、比較ニッケルよりも接着性が向上していた。
【0084】
上記の比較ニッケル及び粗ニッケルのPPF表面に、直径25μmの金ボンディングワイヤ(Heraeus AW-14)を、K&S 手動式ワイヤボンダー4524型を用いてはんだボンディングした。その後、各種ニッケル析出物の接着強度を、ワイヤ引き強度及びワイヤ引き破壊モード試験によって試験した。
【0085】
ワイヤ引き試験には、Nordson Dage 4000多目的ボンドテスターを使用した(カートリッジWP100、試験速度200μm/秒)。ワイヤ引き及びワイヤ引き破壊モード試験では、亀裂破壊モードはステッチ破断及びネック破断であった。比較ニッケルPPFのネック破断は破壊モードで84.6%、ステッチ破断は破壊モードで15.4%であった。対照的に、粗ニッケルPPFのネック破断及びステッチ部破断は両方とも破壊モードで50%であった。ワイヤ引き及びワイヤ引き破壊モード試験は、IPC-TM-650試験方法マニュアル、番号2.4.42.3、1998年2月(Originating Task Group MCM-L Substance Performance Task Group(D-33e))、The Institute for Interconnecting and Packaging Electronic Circuits 2215 Sanders Road-Northbrook,IL60062-6135から入手可能)に従って行った。結果を表16に示す。
【0086】
【0087】
粗ニッケルのネック破断及びステッチ破断の両方は工業的に容認可能である。粗ニッケルPPFのワイヤ引き強度は有意に低下しなかった。粗表面は引き強度を低下させることが予想され、金ワイヤは粗表面には接着しないと予想されるため、これは予想外であった。ワイヤ引き強度は、ワイヤボンダー及び作業パラメータを調整することにより、さらに最適化することができる。