(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】管継手および配管システム
(51)【国際特許分類】
F16L 59/18 20060101AFI20250214BHJP
F24F 13/22 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
F16L59/18
F24F1/0007 361B
(21)【出願番号】P 2024121350
(22)【出願日】2024-07-26
【審査請求日】2024-07-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】小林 毅博
(72)【発明者】
【氏名】今久保 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智哉
(72)【発明者】
【氏名】青木 清史
(72)【発明者】
【氏名】原田 潤
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-173968(JP,A)
【文献】特開2021-055760(JP,A)
【文献】特開平11-170447(JP,A)
【文献】特開2016-023667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/18
F24F 13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状に形成された継手本体部と、前記継手本体部の開口部に一体的に形成され、他の管である管部材を挿入して接続できる少なくとも二つの受口部と、を備え、
前記受口部は挿入した前記管部材の端面が当接する管当接面を有し、
前記管当接面および前記管当接面から所定の設定距離だけ前記受口部の端部の側に離間した離間位置に亘る領域に対応する前記継手本体部の外表面に、当該外表面から膨出するように形成した膨出部を備え
、前記膨出部の断面の厚さである膨出部肉厚は、前記受口部の端部の断面の厚さである受口部肉厚より厚くしてある管継手。
【請求項2】
前記膨出部の断面形状は、前記管当接面の外周に対応する位置を中心とし前記膨出部肉厚を半径とした円弧状の表面を有し、かつ、前記離間位置を中心とし前記膨出部肉厚を半径とした円弧状の表面を有する請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
管状に形成された継手本体部と、前記継手本体部の開口部に一体的に形成され、他の管である管部材を挿入して接続できる少なくとも二つの受口部と、を備え、
前記受口部は挿入した前記管部材の端面が当接する管当接面を有し、
前記管当接面および前記管当接面から所定の設定距離だけ前記受口部の端部の側に離間した離間位置に亘る領域に対応する前記継手本体部の外表面に、当該外表面から膨出するように形成した膨出部を備え、
前記膨出部の断面形状は、前記管当接面の外周に対応する位置を中心とし
前記膨出部の断面の厚さである膨出部肉厚を半径とした円弧状の表面を有し、かつ、前記離間位置を中心とし前記膨出部肉厚を半径とした円弧状の表面を有す
る管継手。
【請求項4】
前記継手本体部をポリ塩化ビニルで形成してある請求項1または
3に記載の管継手。
【請求項5】
前記継手本体部が透明性を有した材料で形成してある請求項1または
3に記載の管継手。
【請求項6】
前記継手本体部の外表面にシボ加工を施したシボ加工面を備えてある請求項1または
3に記載の管継手。
【請求項7】
前記継手本体部を構成する主材である樹脂材料に、当該樹脂材料より熱伝導率が低い材料を配合してある請求項1または
3に記載の管継手。
【請求項8】
前記管部材が空調機のドレン排水配管である請求項1または
3に記載の管継手。
【請求項9】
請求項1
または3に記載の管継手を用いた配管システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の管部材を接続する管継手および配管システムに関する。
【背景技術】
【0002】
室内に設置した空調機で発生したドレン水は、結露対策を施した空調設備用のドレン配管構造を用いて室外に排出することが一般的である。ドレン配管は空調機から排出口までドレン管(例えば発泡層を有し断熱性能を向上させた構造の管)と管継手(エルボやチーズ等)を適宜接続することで形成される。例えば、当該ドレン配管構造を施工する際には、空調機のドレン口とフレキシブルホースとを接続するために、空調機のドレン口に接続したドレン管およびフレキシブルホースの上流側(空調機側)をエルボ継手やチーズ継手等の管継手によって接続する。
【0003】
特許文献1,2には、管継手の接続部にドレンが滞留して結露するのを防止するために、当該管継手に断熱層を備えたことが開示してある。
【0004】
即ち、特許文献1には、管状の継手本体部と、継手本体部の開口部に一体的に形成され他の管と接続される接続部とを有し、当該継手本体部が、外表面および内表面の非発泡層と、外表面と内表面との間に形成された発泡層(断熱層)と、で構成され、前記接続部が、発泡層を備えないで構成されたことが開示してある。
【0005】
特許文献2には、筒状に形成された継手本体と、当該継手本体に接続された受口部と、を備えた管継手であって、継手本体に中空層(断熱層)を備えたことが開示してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6953293号
【文献】特許第7389604号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
管継手に他の管である管部材を受口部に挿入する際、管部材の挿入不足や管部材の端面の斜め切りにより、受口部において挿入した管部材の端面が当接する管当接面(ストッパー)と、管部材の端面と、の間に隙間が発生する虞があった。
【0008】
また、管部材は管継手の受口部に挿入して接着剤にて接着接合していた。このとき、例えば接着する際の保持時間が不十分であると、少なくとも成形に必要な抜け勾配の構成を施した当該受口部のテーパ形状により、挿入した管部材が抜け戻り、管当接面と管部材の端面との間に隙間(例えば2mm程度)が発生する虞があった。
【0009】
上述した隙間が発生し易い部位は、管継手の受口部の管当接面の付近であり、断熱層が設けられていない、或いは、継手本体部の肉厚より厚さが薄い部位であるため、継手本体部に比べて断熱性能が劣る。従って、上述した隙間が発生すると、隙間の部分(管継手の接続部)において管継手(ドレン配管)の断熱性能が低下して結露が発生する虞があった。
【0010】
従って、本発明の目的は、簡易な構造で断熱性能が低下し難い管継手および当該管継手を用いた配管システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る管継手の特徴構成は、管状に形成された継手本体部と、前記継手本体部の開口部に一体的に形成され、他の管である管部材を挿入して接続できる少なくとも二つの受口部と、を備え、前記受口部は挿入した前記管部材の端面が当接する管当接面を有し、前記管当接面および前記管当接面から所定の設定距離だけ前記受口部の端部の側に離間した離間位置に亘る領域に対応する前記継手本体部の外表面に、当該外表面から膨出するように形成した膨出部を備え、前記膨出部の断面の厚さである膨出部肉厚は、前記受口部の端部の断面の厚さである受口部肉厚より厚くした点にある。
【0012】
本構成によれば、膨出部は、受口部の管当接面に対応する継手本体部の肉厚を厚くすることができ、かつ、離間位置に対応する受口部の肉厚を厚くすることができる。そのため、管継手において、肉厚を厚くした膨出部が形成された領域における断熱性能を向上させることができる。
【0013】
ここで、前記所定の設定距離として、管当接面と管部材の端面との間に発生する虞のある隙間の距離を設定すれば、管当接面と管部材の端面との間に隙間が発生したとしても、管当接面から所定の設定距離(隙間の距離)だけ受口部の端部の側に離間した離間位置に亘る領域において、断熱性能が向上した膨出部が形成してあるため、管継手の断熱性能が低下し難くなる。よって、本構成によれば、結露が発生し難い管継手を供することができる。
【0014】
また、膨出部を継手本体部の外表面に備えることで、継手本体部の強度を向上させることができる。
【0015】
また、膨出部を継手本体部の外表面に備えることで、管当接面の位置が認識し易くなるため、管部材を挿入する前に、受口部に挿入される管部材の大凡の位置(端面からの位置)の目途をつけることができる。
【0016】
また、膨出部を備えることで、膨出部を備えないその他用途の継手と識別が容易となり、膨出部が手の滑り止めとなってハンドリングが容易となり、施工性が向上する。
【0017】
本構成では膨出部を備えることで断熱性能が低下し難い管継手とすることができるため、簡易な構造で断熱性能が低下し難い管継手を供することができる。また、簡易な構造であるため組み付け他の工程等も不要となり、安価に管継手を供することができる。
また、本構成によれば、膨出部の肉厚を、受口部の端部の肉厚より厚く設定してあるため、膨出部において断熱性能を確実に向上させることができ、例えば仮に管当接面と管部材との間に隙間が発生したとしても管継手の断熱性能がより低下し難くなる。
【0018】
本発明に係る管継手の更なる特徴構成は、前記膨出部の断面形状は、前記管当接面の外周に対応する位置を中心とし前記膨出部肉厚を半径とした円弧状の表面を有し、かつ、前記離間位置を中心とし前記膨出部肉厚を半径とした円弧状の表面を有する点にある。
【0019】
本構成では、膨出部の断面形状は、管当接面の外周に対応する位置を中心とし膨出部肉厚を半径とした円弧状の表面(第一円弧表面)と、離間位置を中心とし膨出部肉厚を半径とした円弧状の表面(第二円弧表面)と、第一円弧表面および第二円弧表面を接続した接続表面と、で形成することができる。このように、本構成では、膨出部の断面形状を好適に規定することができる。
【0020】
本発明に係る管継手の特徴構成は、管状に形成された継手本体部と、前記継手本体部の開口部に一体的に形成され、他の管である管部材を挿入して接続できる少なくとも二つの受口部と、を備え、
前記受口部は挿入した前記管部材の端面が当接する管当接面を有し、
前記管当接面および前記管当接面から所定の設定距離だけ前記受口部の端部の側に離間した離間位置に亘る領域に対応する前記継手本体部の外表面に、当該外表面から膨出するように形成した膨出部を備え、
前記膨出部の断面形状は、前記管当接面の外周に対応する位置を中心とし前記膨出部の断面の厚さである膨出部肉厚を半径とした円弧状の表面を有し、かつ、前記離間位置を中心とし前記膨出部肉厚を半径とした円弧状の表面を有する点にある。
【0021】
本構成によれば、膨出部は、受口部の管当接面に対応する継手本体部の肉厚を厚くすることができ、かつ、離間位置に対応する受口部の肉厚を厚くすることができる。そのため、管継手において、肉厚を厚くした膨出部が形成された領域における断熱性能を向上させることができる。
ここで、前記所定の設定距離として、管当接面と管部材の端面との間に発生する虞のある隙間の距離を設定すれば、管当接面と管部材の端面との間に隙間が発生したとしても、管当接面から所定の設定距離(隙間の距離)だけ受口部の端部の側に離間した離間位置に亘る領域において、断熱性能が向上した膨出部が形成してあるため、管継手の断熱性能が低下し難くなる。よって、本構成によれば、結露が発生し難い管継手を供することができる。
また、膨出部を継手本体部の外表面に備えることで、継手本体部の強度を向上させることができる。
また、膨出部を継手本体部の外表面に備えることで、管当接面の位置が認識し易くなるため、管部材を挿入する前に、受口部に挿入される管部材の大凡の位置(端面からの位置)の目途をつけることができる。
また、膨出部を備えることで、膨出部を備えないその他用途の継手と識別が容易となり、膨出部が手の滑り止めとなってハンドリングが容易となり、施工性が向上する。
本構成では膨出部を備えることで断熱性能が低下し難い管継手とすることができるため、簡易な構造で断熱性能が低下し難い管継手を供することができる。また、簡易な構造であるため組み付け他の工程等も不要となり、安価に管継手を供することができる。
本構成では、膨出部の断面形状は、管当接面の外周に対応する位置を中心とし膨出部肉厚を半径とした円弧状の表面(第一円弧表面)と、離間位置を中心とし膨出部肉厚を半径とした円弧状の表面(第二円弧表面)と、第一円弧表面および第二円弧表面を接続した接続表面と、で形成することができる。このように、本構成では、膨出部の断面形状を好適に規定することができる。
【0022】
本発明に係る管継手の更なる特徴構成は、前記継手本体部をポリ塩化ビニルで形成した点にある。
【0023】
本構成によれば、継手本体部を低コストで製造することができる。
【0024】
本発明に係る管継手の更なる特徴構成は、前記継手本体部が透明性を有した材料で形成した点にある。
【0025】
本構成によれば、受口部における管部材の接続状態(接着状態)を外部から目視確認し易くなる。また、管継手には管当接面周辺の膨出部と受口部との肉厚に差があるため、単一の透明性材料で成形した際にはこれらの部位の透明度が異なるためグラデーションができ、例えば管部材の挿入長さが適切な範囲であるか否か、といった施工確認を容易に行うことができる。
【0026】
本発明に係る管継手の更なる特徴構成は、前記継手本体部の外表面にシボ加工を施したシボ加工面を備えた点にある。
【0027】
本構成のようにシボ加工面を備えることで、仮に継手本体部の外表面に結露が発生したとしても、結露が滴下し難い態様とすることができる。
【0028】
本発明に係る管継手の更なる特徴構成は、前記継手本体部を構成する主材である樹脂材料に、当該樹脂材料より熱伝導率が低い材料を配合した点にある。
【0029】
本構成によれば、継手本体部の熱伝導率を低下させることができるため、管継手の断熱性能を向上させることができる
【0030】
本発明に係る管継手の更なる特徴構成は、前記管部材を空調機のドレン排水配管とした点にある。
【0031】
本構成によれば、管部材として空調機のドレン配管構造を構成するドレン排水配管を使用することができる。従って、本構成の管継手はこのような管部材を接続することで、
断熱性能が低下し難く、結露が発生し難いドレン配管構造を供することができる。
【0032】
本発明に係る配管システムの特徴構成は、上記に記載の管継手を用いた点にある。
【0033】
本構成によれば、断熱性能が低下し難い管継手を用いて結露が発生し難い配管システムを供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】実施形態の管継手(エルボ継手)を示す断面図である。
【
図2】実施形態の管継手(エルボ継手)を示す平面図(正面図、右側面図、左側面図、上面図および下面図)である。
【
図3】別実施例1の管継手(チーズ継手)を示す断面図である。
【
図4】別実施例1の管継手(チーズ継手)を示す平面図(正面図、右側面図、左側面図、上面図および下面図)である。
【
図5】別実施例2の管継手(Y字型継手)を示す断面図である。
【
図6】別実施例2の管継手(Y字型継手)を示す平面図(正面図、右側面図、左側面図、上面図および下面図)である。
【
図7】別実施例3の管継手(ソケット型継手)を示す断面図である。
【
図8】別実施例3の管継手(ソケット型継手)を示す平面図(正面図、右側面図、左側面図、上面図および下面図)である。
【
図9】別実施例4の管継手(ソケット型継手)を示す断面図である。
【
図10】別実施例4の管継手(ソケット型継手)を示す平面図(正面図、右側面図、左側面図、上面図および下面図)である。
【
図11】別実施例5の管継手(エルボ継手)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1~2に示したように、本発明の管継手Xは、管状に形成された継手本体部10と、継手本体部10の開口部10aに一体的に形成され、他の管である管部材20を挿入して接続できる少なくとも二つの受口部11と、を備え、当該受口部11は挿入した管部材20の端面21が当接する管当接面11aを有し、当該管当接面11aおよび管当接面11aから所定の設定距離sだけ受口部11の端部11bの側に離間した離間位置P2に亘る領域に対応する継手本体部10の外表面10bに、当該外表面10bから膨出するように形成した膨出部12を備える。
【0036】
当該膨出部12の断面の厚さである膨出部肉厚t2は、受口部11の端部11bの断面の厚さである受口部肉厚t1より厚くしてある。当該断面は、受口部11の軸芯Oに平行な平面の切断面とする。
【0037】
管継手Xは、他の管である異なる管部材20どうしを接続するための継手である。当該管部材20は、例えば空調機のドレン配管構造を構成するドレン排水配管を使用することができるが、これに限定されるものではない。このような管部材20としては、例えば空調機のドレン口に接続したドレン管やフレキシブルホースを使用することができるが、これらに限定されるものではない。当該ドレン管は流体を流通させる配管であれば特に限定されるものではないが、例えば塩化ビニル系樹脂製の多層管を使用することができる。管部材20どうしを接続する際には、ドレン管およびフレキシブルホースの上流側(空調機側)を管継手Xによって接続する。これら管継手Xは、同径の管部材20どうしを接続してもよいし、異径の管部材20どうしを接続してもよい。
【0038】
管継手Xは異なる管部材20どうしを接続できるものであればどのような態様でもよく、例えばL字形状のエルボ継手,T字形状のチーズ継手,Y字形状のY字型継手,ソケットタイプのソケット型継手等の管継手とすることができるが、これらに限定されるものではない。本実施形態では、管継手Xをエルボ継手の態様とし、他の管である管部材20をドレン排水配管とした場合について説明する。エルボ継手はL字形状を呈しており、流路の向きを略90°変更する管継手である。変更する角度は、受口部11の軸芯Oに対して勾配用の角度(例えば1.17度)をつけてもよい。この場合、当該変更する角度αは91.17°となるが、当該角度はこの値に限定されるものではない。
【0039】
継手本体部10は、その外観が管状に形成してあり、内部に形成した管状の流路15を空調機で発生したドレンが流下するように構成してある。継手本体部10を構成する材料は、特に限定されるものではないが、例えば合成樹脂組成物を使用するとよい。当該合成樹脂組成物としては、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC),ポリプロピレン樹脂(PP),ポリエチレン樹脂(PE),アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)を用いることができるが、これらに限定されるものではなく、断熱性能やコストなどの要求性能に応じて適宜選択可能である。例えば継手本体部10をポリ塩化ビニル樹脂の単一材料で成形することで、リサイクルの際にも分解や分別が不要となり好適である。さらに、ドレン管がポリ塩化ビニル系樹脂であれば、リサイクル時に管継手Xとドレン管とを解体する必要がないため、これらの接合部を除去する必要もない。
【0040】
上記の合成樹脂組成物は、主材である樹脂材料に、当該樹脂材料より熱伝導率が低い材料を配合することができる。
【0041】
熱伝導率が低い材料としては、例えば、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)などのゴム系、公知の発泡剤、ゴム、木炭等を使用することができるが、これらに限定されるものではない。PVCにSBRを配合する場合は、リサイクル性も考慮して、PVC100部に対してSBRを1部以上10部以下とするのが好ましいが、これに限定されるものではない。これらの材料を主材である樹脂材料100部に対して、例えば1~10部程度となるように配合するのがよい。
【0042】
本構成により、継手本体部10の熱伝導率を低下させることができるため、管継手Xの断熱性能を向上させることができる。
【0043】
継手本体部10は、透明性を有した合成樹脂組成物で形成することができる。本明細書における「透明性」とは、継手本体部10の材料である合成樹脂組成物を介して一方の側から他方の側を透視し得る程度の透明性を有していることを意味し、例えば30%以上、より好ましくは70%以上の可視光透過率を有していることを意味する。当該可視光透過率は、公知の分光光度計により常法に測定することができる。
【0044】
本構成のように合成樹脂組成物が透明性を有するものであれば、例えば有色接着剤にて接着接合することにより、受口部11における管部材20の接続状態(接着状態)を外部から目視確認し易くなる。
【0045】
継手本体部10は、発泡層(断熱層)を形成してもよい(図外)。当該発泡層は、管継手全体に形成してもよいし、外表面及び、または、内表面が非発泡層であってもよい。この場合、継手本体部10は、外表面および内表面の非発泡層と、外表面と内表面との間に形成された発泡層と、で構成するとよい。当該発泡層の形成には、例えば公知の発泡材(マイクロカプセル等)を主材に添加してもよく、発泡性樹脂などであってもよい。
【0046】
受口部11は、継手本体部10の開口部10aに一体的に形成してあり、管部材20を挿入して接続できる態様であれば、その構造は特に限定されるものではない。本実施形態では、受口部11は、管部材20を差し込んで挿入できる円筒状の態様とした場合について説明する。受口部11の内径は、管部材20を差し込んで挿入できるように、管部材20の外径より大きく設定する。このとき、受口部11の内径は、挿入した管部材20を保持し、かつガタつかない程度の内径とするのがよい。
【0047】
本実施形態の管継手X(エルボ継手)においては、二つの受口部11を備えた場合について説明する。二つの受口部11の内径は、同じであっても異なっていてもよい。本実施形態では二つの受口部11の内径を同径とした場合について説明する。
【0048】
受口部11は、挿入した管部材20の端面21が当接する管当接面11aを有する。即ち、管当接面11aは、円筒状の受口部11の最奥に、当該端面21の全体あるいはほぼ全体が当接できるように形成してある。管当接面11aの表面形状(開口部10aの側から見た形状)は、当接する管部材20の端面21の表面形状と一致または略一致するように構成すればよい。受口部11の内径d1は、受口部11に管当接面11aを形成した分だけ、流路15の直径d(内径)より大きく設定してある。
【0049】
受口部11の端部11bは、継手本体部10の開口部10aの外周を形成する。受口部11の端部11bの断面の厚さである受口部肉厚t1は、継手本体部10の厚さである継手本体部肉厚tより小さく設定してある。受口部11の外径Dは、受口部11の内径d1および受口部肉厚t1を加算した値となる(D=d1+2t1)。
【0050】
膨出部12は、継手本体部10の外表面10bから膨出するように形成してある。当該膨出部12は、管当接面11aおよび管当接面11aから所定の設定距離sだけ受口部11の端部11bの側に離間した離間位置P2に亘る領域に対応する継手本体部10の外表面10bに形成してある。膨出部12は、少なくとも前記領域に対応する当該外表面10bの位置に形成してあればよい。
【0051】
膨出部12は、継手本体部10の外表面10bから膨出するように形成してあればその形状は特に限定されるものではなく、当該外表面10bから凸状に突出する態様であればよい。また、膨出部12は、受口部11の端部11bの側まで形成してもよい。
【0052】
本実施形態の膨出部12は、継手本体部10の外表面10bから徐々に外方に突き出る部位と、受口部11の端部11bの側に向けて徐々に受口部11の端部11bの肉厚と等しくなる部位と、を有するように構成してある場合について説明する。しかし、膨出部12の形状はこのような態様に限定されるものではない。具体的な形状については後述する。
【0053】
本構成により、膨出部12は、受口部11の管当接面11aに対応する継手本体部10の肉厚を厚くすることができ、かつ、離間位置P2に対応する受口部11の肉厚を厚くすることができる。そのため、管継手Xにおいて、肉厚を厚くした膨出部12が形成された領域における断熱性能を向上させることができる。
【0054】
尚、本明細書における前記の「肉厚」(膨出部肉厚t2)とは、膨出部12の断面形状において、管当接面11aの外周に対応する位置P1(または離間位置P2)から膨出部12の外表面までの距離(厚さ)とする。
【0055】
上述したように、管継手Xに管部材29を受口部11に挿入する際には、管当接面11aと、管部材20の端面21と、の間に隙間が発生する虞があった。そのため、前記所定の設定距離sは、管当接面11aと管部材20の端面21との間に発生する虞のある隙間の距離を設定するとよい。
【0056】
これにより、管当接面11aと管部材20の端面21との間に隙間が発生したとしても、管当接面11aから所定の設定距離s(隙間の距離)だけ受口部11の端部11bの側に離間した離間位置P2に亘る領域において、断熱性能が向上した膨出部12が形成してあるため、管継手Xの断熱性能が低下し難くなる。よって、本構成によれば、結露が発生し難い管継手Xを供することができる。
【0057】
また、膨出部12を継手本体部10の外表面10bに備えることで、継手本体部10の強度を向上させることができる。
【0058】
また、膨出部12を継手本体部10の外表面10bに備えることで、管当接面11aの位置が認識し易くなるため、管部材20を挿入する前に、受口部11に挿入される管部材20の大凡の位置(端面21からの位置)の目途をつけることができる。
【0059】
本実施形態の管継手Xにおいては二つの受口部11を備えているため、それぞれの受口部11(11A,11B)についてそれぞれ膨出部12(12A,12B)を備えるとよい。
【0060】
このように複数(二つ)の膨出部12(12A,12B)を備えることで、手本体部10の強度をさらに向上させることができる。
【0061】
二つの膨出部12の間の膨出部間壁部13は、一様な厚さ(継手本体部肉厚t)を有する。本実施形態の管継手X(エルボ継手)はL字形状を呈しており、L字形状の内角に位置する内周壁部14は二つの膨出部12(12A,12B)が近接する態様となっている。これにより、割れ易いとされる内周壁部14の強度を向上させることができる。
【0062】
当該膨出部12の断面の厚さである膨出部肉厚t2は、受口部11の端部11bの断面の厚さである受口部肉厚t1より厚くするとよい。
【0063】
これにより、膨出部12の肉厚を、受口部11の端部11bの肉厚より厚く設定することができるため、膨出部12において断熱性能を確実に向上させることができ、例えば仮に管当接面11aと管部材20との間に隙間が発生したとしても管継手Xの断熱性能がより低下し難くなる。
【0064】
本実施形態では、上記の各部材のサイズは以下のように設定した場合を例示するが、これらの寸法に限定されるものではない。
流路15の直径d 19~100mm
継手本体部肉厚t 5.5~20mm
受口部肉厚t1 2.5~5.0mm
膨出部肉厚t2 5.5~20mm(t2>t1となるように設定する)
受口部11の内径d1 32~115mm
受口部11の外径D 39~125mm
設定距離s 0.1~3.0mm
受口部11の深さL 15~50mm
管部材20の厚さT 5.5~15mm
【0065】
尚、膨出部肉厚t2は、継手本体部肉厚tと同等の厚さとなるように設定するのがよい。これにより、膨出部12の断熱性能を継手本体部10の断熱性能と同等とすることができる。
【0066】
本実施形態では、膨出部12の断面形状は、管当接面11aの外周に対応する位置P1を中心とし膨出部肉厚t2を半径とした円弧状の表面(第一円弧表面)121を有し、かつ、離間位置P2を中心とし膨出部肉厚t2を半径とした円弧状の表面(第二円弧表面)122を有するように構成した場合について説明する(
図1)。
【0067】
本構成では、膨出部12の断面形状は、第一円弧表面121と、第二円弧表面122と、第一円弧表面121および第二円弧表面122を接続した接続表面123と、で形成することができる。第一円弧表面121は、継手本体部10の外表面10bから徐々に外方に突き出る部位となり、第二円弧表面122は、受口部11の端部11bの側に向けて徐々に受口部11の端部11bの肉厚と等しくなる部位となる。当該接続表面123の断面形状は、直線状あるいは円弧状とすることができるが、これらに限定されるものではない。接続表面123の断面形状を直線状とすることで、この部分の膨出部肉厚t2を一様な厚さとすることができる。
【0068】
本構成により、膨出部12の断面形状を規定することができる。
【0069】
継手本体部10の外表面10bは、シボ加工を施したシボ加工を備えることができる。当該シボ加工面は、公知の処理、例えばエッチングによる化学処理やサンドブラストなどの物理処理によってシボ加工を行うとよい。シボ加工面は外表面10bの全体に備えてもよいし、一部のみに備えてもよい。
【0070】
本構成のようにシボ加工面を備えることで、仮に継手本体部10の外表面10bに結露が発生したとしても、結露が滴下し難い態様とすることができる。
【0071】
上述した管継手X用いて、例えば空調設備用の配管システムの(ドレン)配管システム(図外)を供することができる。当該配管システムは、断熱性能が低下し難い上記の管継手Xを用いて結露が発生し難い配管システムを構築することができる。
【0072】
〔別実施例1〕
上述した実施形態では、管継手Xをエルボ継手の態様とした場合について説明したが、これに限らず、管継手XをT字形状のチーズ継手とすることができる(
図3,4)。
【0073】
チーズ継手は流路を合流または分岐する管継手であり、本実施形態では、三つの受口部11(11A1,11B1,11C1)を備えた場合について説明する。この場合、各受口部11A1,11B1,11C1は、それぞれ膨出部12A1,12B1,12C1を備える。
【0074】
管状の内部の流路15は二つの流路15A1,15B1に分岐している。また、内周壁部14A1において二つの膨出部12(12A1,12C1)が近接し、内周壁部14B1において二つの膨出部12(12B1,12C1)が近接する態様となっている。
【0075】
本実施形態において、流路を合流または分岐する角度は、受口部11の軸芯Oに対して勾配用の角度(例えば1.17度)をつけてもよい。例えば、紙面の上方から下方にドレンが流下するとき、二つの流路15A1,15B1は角度β(91.17°)で交わるように構成することができる。当該角度はこの値に限定されるものではない。
【0076】
〔別実施例2〕
上述した実施形態では、管継手Xをエルボ継手あるいはチーズ継手の態様とした場合について説明したが、これに限らず、管継手XをY字形状のY字型継手とすることができる(
図5,6)。
【0077】
Y字型継手は流路を合流または分岐する管継手であり、本実施形態では、三つの受口部11(11A2,11B2,11C2)を備えた場合について説明する。この場合、各受口部11A2,11B2,11C2は、それぞれ膨出部12A2,12B2,12C2を備える。
【0078】
管状の内部の流路15は二つの流路15A2,15B2に分岐している。本実施形態において、流路を合流または分岐する角度γは、受口部11の軸芯Oに対して45°の角度で流路を合流または分岐する態様について説明するが、当該角度はこれに限定されるものではない。
【0079】
〔別実施例3〕
上述した実施形態では、管継手Xをエルボ継手,チーズ継手あるいはY字型継手の態様とした場合について説明したが、これに限らず、管継手Xをソケットタイプのソケット型継手とすることができる(
図7,8)。
【0080】
ソケット型継手は流路を直線状に接続する管継手であり、本実施形態では、同径の管部材20どうしを接続するために使用する場合について説明する。
【0081】
本実施形態では、二つの受口部11(11A3,11B3)を備えた場合について説明する。この場合、各受口部11A3,11B3は、それぞれ膨出部12A3,12B3を備える。この場合、膨出部12A3,12B3は一体の態様とすることができる。
【0082】
管状の内部の流路15は二つの流路15A3,15B3が接続して直線状の流路となっている。
【0083】
〔別実施例4〕
上述した別実施形態3において、管継手Xを、異径の管部材20どうしを接続するソケット型継手とすることができる(
図9,10)。
【0084】
本実施形態においては、別実施形態3における受口部11A3の内径を受口部11B3の内径より小さくしており、これに伴い、膨出部12A3の外径を膨出部12B3の外径より小さく設定してある。
【0085】
〔別実施例5〕
図11に示したように、膨出部12を備えた継手本体部10の受口部11の側の部位に、樹脂材料より熱伝導率が低い低伝導部16を備えてもよい。
【0086】
低伝導部16は、例えば樹脂材料より熱伝導率が低い材料によって構成するとよい。当該材料は、例えばスポンジ,発泡ゴムなどを使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0087】
図11には、低伝導部16は、膨出部12Aを備えた継手本体部10の受口部11の側の部位に低伝導部16Aを備え、膨出部12Bを備えた継手本体部10の受口部11の側の部位に低伝導部16Bを備えた場合を示している。
【0088】
低伝導部16は、低伝導部16を形成する部位に対応する継手本体部10の領域を除去し、当該除去した領域に上記の材料を配設して構成することができる。
【0089】
尚、当該除去した領域に上記の材料を配設しない場合、管部材20を受口部11に挿入した際に低伝導部16Bを空気層とすることができる。
【0090】
低伝導部16は、継手本体部10の内部(膨出部12の外表面と受口部11の内壁との間)に形成してもよい。
【0091】
低伝導部16を備えることで、管継手Xの断熱性能が低下し難くなり、結露が発生し難い管継手を供することができる。
【0092】
低伝導部16を、例えば発泡ゴムによって構成した場合、管部材20を受口部11に挿入した際に、管部材20の外面と発泡ゴムが接する部位においては両者の摩擦力によって管部材20を受口部11から抜け難くすることができる。この場合、受口部11において接着剤を使用して管部材20を接着する必要がなくなるため、接着剤の使用コストを削減でき、かつ接着剤を使用して接着する工程を省くことができる。
【0093】
上述の実施形態は一例であり、これに限定されるものではなく、本発明の趣旨に則って任意に変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、ドレン配管構造において複数の管部材を接続する管継手および当該管継手を用いた配管システムに利用できる。
【符号の説明】
【0095】
X 管継手
s 設定距離
P2 離間位置
t1 受口部肉厚
t2 膨出部肉厚
10 継手本体部
10a 開口部
10b 外表面
11 受口部
11a 管当接面
11b 端部
12 膨出部
20 管部材
21 端面
【要約】
【課題】断熱性能が低下し難い管継手および当該管継手を用いた配管システムを提供する。
【解決手段】管状に形成された継手本体部10と、継手本体部10の開口部10aに一体的に形成され、他の管である管部材20を挿入して接続できる少なくとも二つの受口部11と、を備え、受口部11は挿入した管部材20の端面21が当接する管当接面11aを有し、管当接面11aおよび管当接面11aから所定の設定距離sだけ受口部11の端部11bの側に離間した離間位置P2に亘る領域に対応する継手本体部10の外表面10bに、外表面10bから膨出するように形成した膨出部12を備えた管継手X、および、当該管継手Xを用いた配管システム。
【選択図】
図1