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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-28
(54)【発明の名称】電池パック及び電力消費装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/48 20100101AFI20250214BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20250214BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20250214BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20250214BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20250214BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20250214BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20250214BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20250214BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20250214BHJP
【FI】
H01M4/48
H01M4/139
H01M4/36 C
H01M4/36 E
H01M4/485
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/58
H01M10/052
H01M50/204
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2024500338
(86)(22)【出願日】2022-06-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-19
(86)【国際出願番号】 CN2022096790
(87)【国際公開番号】W WO2023230978
(87)【国際公開日】2023-12-07
【審査請求日】2024-01-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524304976
【氏名又は名称】香港時代新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CONTEMPORARY AMPEREX TECHNOLOGY (HONG KONG) LIMITED
【住所又は居所原語表記】13/F., LKF29, 29 Wyndham Street, Central, Hong Kong, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朱 暢
(72)【発明者】
【氏名】欧陽 少聡
(72)【発明者】
【氏名】許 宝云
(72)【発明者】
【氏名】謝 庭禎
【審査官】山口 大志
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-080680(JP,A)
【文献】特開2013-008557(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112599891(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M 10/05-10/0587;10/36-10/39
H01M 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池パックの筐体と、
前記電池パックの筐体に収容された電池セルと、を含む電池パックであって、
前記電池パックの筐体の内部空間は、第1の領域と、第2の領域と、第3の領域とを含み、
前記第1の領域に第1の電池セルが配置され、前記第2の領域に第2の電池セルが配置され、前記第3の領域に第3の電池セルが配置され、前記第2の電池セルは前記第1の電池セルの周囲を囲んで配置され、前記第3の電池セルは前記第2の電池セルの周囲を囲んで配置され、ここで、
前記第1の電池セル、前記第2の電池セル及び前記第3の電池セルはそれぞれ第1の放電電圧プラトー及び第2の放電電圧プラトーを有し、前記第1の放電電圧プラトーの平均放電電圧は、前記第2の放電電圧プラトーの平均放電電圧より高く、
前記第1の電池セル、前記第2の電池セル及び前記第3の電池セルのそれぞれの正極活物質は、前記第1の放電電圧プラトーを有する第1の正極活物質と、前記第2の放電電圧プラトーを有する正極機能助剤とを混合してなり、
前記正極機能助剤は、チタン酸化物、ニオブ酸化物又はチタンニオブ酸化物であり、
前記第1の電池セル、前記第2の電池セル及び前記第3の電池セルのそれぞれにおいて、前記第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量と前記第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量との和が100%であるとき、前記第3の電池セルの前記第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合>前記第2の電池セルの前記第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合>前記第1の電池セルの前記第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合である
ことを特徴とする電池パック。
【請求項2】
前記電池パックの筐体の前記内部空間は、前記第1の領域と、前記第2の領域と、前記第3の領域とからなる
ことを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記正極機能助剤は、Ti2Nb2x4+5xで表されるチタンニオブ酸化物であり、ここで、xは1以上の整数である
ことを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項4】
前記チタンニオブ酸化物は、Ti2Nb29、TiNb27、Ti2Nb1029及びTiNb2462から選ばれる1種又は複数種である
ことを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項5】
前記第2の放電電圧プラトーの放電電圧範囲は、1.0-2.0Vである
ことを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項6】
前記第2の放電電圧プラトーの1.2-1.6Vにおける放電容量は、前記第2の放電電圧プラトーの総放電容量の50%以上である
ことを特徴とする請求項5に記載の電池パック。
【請求項7】
前記第2の放電電圧プラトーの1.2-1.6Vにおける放電容量は、前記第2の放電電圧プラトーの総放電容量の70%以上である
ことを特徴とする請求項6に記載の電池パック。
【請求項8】
前記第1の電池セル、第2の電池セル、第3の電池セルにおいて、前記第1の放電電圧プラトーの最低放電電圧と前記第2の放電電圧プラトーの最高放電電圧との差が0.5V以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項9】
前記第1の電池セル、第2の電池セル、第3の電池セルにおいて、前記第1の放電電圧プラトーの最低放電電圧と前記第2の放電電圧プラトーの最高放電電圧との差が1.0V以上である
ことを特徴とする請求項8に記載の電池パック。
【請求項10】
前記第1の電池セルにおいて、前記第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量と前記第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量との和が100%であるとき、前記第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量は90%-100%を占め、前記第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量は0%-10%を占める
ことを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項11】
前記第2の電池セルにおいて、前記第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量と前記第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量との和が100%であるとき、前記第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量は73%-95%を占め、前記第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量は5%-27%を占める
ことを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項12】
前記第3の電池セルにおいて、前記第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量と前記第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量との和が100%であるとき、前記第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量は54%-87%を占め、前記第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量は13%-46%を占める
ことを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項13】
前記第1の電池セルの正極活物質のグラム容量は148-285mAh/gであり、前記第2の電池セルの正極活物質のグラム容量は155-295mAh/gであり、前記第3の電池セルの正極活物質のグラム容量は169-311mAh/gである
ことを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項14】
前記正極機能助剤の理論グラム容量が350-410mAh/gである
ことを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項15】
前記第1の正極活物質は、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム及びリン酸鉄リチウムから選ばれる1種である
ことを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項16】
前記第1の電池セル、前記第2の電池セル及び前記第3の電池セルにおいて、前記第1の正極活物質の種類が同じであり、且つ前記正極機能助剤の種類が同じであるとき、前記第1の正極活物質が正極活物質に占める質量割合は、前記第1の電池セル、前記第2の電池セル、前記第3の電池セルの順に逓減し、前記正極機能助剤が正極活物質に占める質量割合は、前記第1の電池セル、前記第2の電池セル、前記第3の電池セルの順に逓増する
ことを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項17】
前記第1の電池セルにおいて、前記第1の正極活物質と前記正極機能助剤の総質量が100%であるとき、前記第1の正極活物質の質量は96.0%-100%を占め、前記正極機能助剤の質量は0%-4.0%を占める
ことを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項18】
前記第2の電池セルにおいて、前記第1の正極活物質と前記正極機能助剤の総質量が100%であるとき、前記第1の正極活物質の質量は88.5%-96.0%を占め、前記正極機能助剤の質量は4.0%-11.5%を占める
ことを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項19】
前記第3の電池セルにおいて、前記第1の正極活物質と前記正極機能助剤の総質量が100%であるとき、前記第1の正極活物質の質量は76.5%-88.5%を占め、前記正極機能助剤の質量は11.5%-23.5%を占める
ことを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項20】
前記正極機能助剤は、炭素で被覆されたリチウム元素含有チタンニオブ酸化物である
ことを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項21】
前記第1の電池セル、前記第2の電池セル及び前記第3の電池セルのそれぞれの負極がリチウム補充処理された
ことを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項22】
0℃以下の温度で、前記第1の電池セルの放電カットオフ電圧は1.4-1.6Vであり、前記第2の電池セルの放電カットオフ電圧は1.2-1.4Vであり、前記第3の電池セルの放電カットオフ電圧は1.0-1.2Vである
ことを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項23】
前記第1の電池セルの数:前記第2の電池セルの数:前記第3の電池セルの数=(3-8):(8-13):(10-15)である
ことを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項24】
請求項1~請求項23のいずれか1項に記載の電池パックを備えることを特徴とする電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、リチウムイオン電池分野に関する。特に、低温でのエネルギー保持率が高い電池パック及び該電池パックを含む電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池技術の継続的な発展に伴い、リチウムイオン電池は、水力、火力、風力及び太陽光発電所などのエネルギー貯蔵電源システム、並びに電動工具、電動自転車、電動オートバイ、電気自動車、軍事設備、航空宇宙などの多くの分野に広く応用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記分野において、リチウムイオン二次電池セルの容量が使用ニーズを満たすことができない場合がある。この場合、複数のリチウムイオン二次電池セルを直列又は並列に接続して電池パックを構成し、電池パックの全体放電量を向上させる必要がある。
【0004】
しかしながら、リチウムイオン二次電池セルからなる電池パックは、冬場のような低温環境下で使用される場合、エネルギー保持率が大幅に低下する。即ち、低温では航続能力の劣化が進む。そのため、電池パック全体の低温での航続能力を如何に向上させるかが早急に解決すべき重要な問題となっている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、低温でのエネルギー保持率に優れ、低温での航続能力が向上したリチウムイオン二次電池からなる電池パック及びこの電池パックを備えた電力消費装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願の第1の態様は、電池パックを提供するものである。電池パックは、電池パックの筐体と、前記電池パックの筐体に収容された電池セルとを含む。前記電池パックの筐体の内部空間は、第1の領域と、第2の領域と、第3の領域とを含む。前記第1の領域には、第1の電池セルが配置され、前記第2の領域には、第2の電池セルが配置され、前記第3の領域に第3の電池セルが配置される。前記第2の電池セルは前記第1の電池セルの周囲を囲んで配置され、前記第3の電池セルは前記第2の電池セルの周囲を囲んで配置される。前記第1の電池セル、前記第2の電池セル及び前記第3の電池セルはそれぞれ第1の放電電圧プラトー及び第2の放電電圧プラトーを有する。前記第1の放電電圧プラトーの平均放電電圧は、前記第2の放電電圧プラトーの平均放電電圧より高い。前記第1の電池セル、前記第2の電池セル及び前記第3の電池セルのそれぞれの正極活物質は、前記第1の放電電圧プラトーを有する第1の正極活物質と、前記第2の放電電圧プラトーを有する正極機能助剤とを混合してなる。前記正極機能助剤は、チタン酸化物、ニオブ酸化物又はチタンニオブ酸化物である。前記第1の電池セル、前記第2の電池セル及び前記第3の電池セルのそれぞれにおいて、前記第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量と前記第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量との和が100%であるとき、前記第3の電池セルの前記第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合>前記第2の電池セルの前記第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合>前記第1の電池セルの前記第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合である。
【0007】
これにより、本願は、電池パック内の温度分布に応じて、低温での放電能力が異なる電池セルを設置することで、電池パック全体の低温でのエネルギー保持率を改善する。具体的には、電池パックの筐体の内部空間の温度が異なる領域に、二重放電電圧プラトー(放電電圧が高い第1の放電電圧プラトーと放電電圧が低い第2の放電電圧プラトー)を有する低温エネルギー保持率の異なる電池セルをそれぞれ配置するとともに、温度が低い領域ほど低温エネルギー保持率の高い電池セルを配置する。電池パックの筐体の内部空間における温度が相対的に高い領域に、低温性能が相対的に低い(低温エネルギー保持率が相対的に小さい)電池セルを配置し、電池パックの筐体の内部空間における温度が相対的に低い領域に、低温性能が相対的に高い(低温エネルギー保持率が相対的に大きい)電池セルを配置することにより、電池パックの温度が異なる各領域における電池セルのサイクル一貫性をより高くし、電池パック全体の低温エネルギー保持率を向上させ、電池パック全体の低温航続能力を向上させることができる。
【0008】
本願において、二重放電電圧プラトーを有する電池セルの正極活物質は、通常の正極活物質(第1の正極活物質)と正極機能助剤とを混合してなる。通常の正極活物質は、放電電圧が高い第1の放電電圧プラトーを有する。正極機能助剤は、チタン酸化物、ニオブ酸化物又はチタンニオブ酸化物である。これらの正極機能助剤は、放電電圧が低い第2の放電電圧プラトーを有する。電池セルにおける放電電圧が低い第2の放電電圧プラトーの放電容量は、正極活物質における正極機能助剤の含有量を変えることにより調節することができる。二重放電電圧プラトーを有する電池セルを使用することにより、放電電圧が高い第1の放電電圧プラトーを使用して放電した後、放電電圧が低い第2の放電電圧プラトーを使用して放電し続け、電池セルの放電電力、特に低温条件下での放電電力を顕著に向上させ、電池セルにより高い低温エネルギー保持率を持たせることができる。
【0009】
本願に記載の電池パックの形状は任意であり、顧客の要求に応じて設計された任意の形状であってもよい。
【0010】
本願に記載の電池パックにおいて、電池パックの筐体の内部空間は、上記の3つの領域に区画されることに限定されず、上記の第1の領域、第2の領域及び第3の領域を含んでいればよい。具体的には、電池パックの筐体の内部空間は、上述した第1の領域、第2の領域及び第3の領域からなっていてもよいし、電池パックの筐体の内部空間は、上述した第1の領域、第2の領域及び第3の領域に加えて、第3の領域の外側に1又は複数の領域を有していてもよく、外側の領域に配置された電池セルが、その内側の領域に配置された電池セルの周囲を囲んで配置されていればよい。
【0011】
本願に係る電池パックは、電池パックの筐体の内部空間が上記のような3つ以上の領域を含む場合、外側の領域ほど、電池セルの第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合が高くなる(すなわち、電池セルの正極活物質における正極機能助剤の質量割合が高くなる)ことを満たせばよい。
【0012】
いくつかの実施形態において、電池パックの筐体の内部空間が矩形形状である場合、当該矩形形状の四隅を最も外側の領域とする。当該領域において、電池セルの第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量の割合が最も高い(すなわち、電池セルの正極活物質における正極機能助剤の質量割合が最も高い)。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記電池パックの筐体の前記内部空間は、前記第1の領域、前記第2の領域及び前記第3の領域からなる。
【0014】
これにより、電池パックの筐体の内部空間が上述した第1の領域、第2の領域及び第3の領域の3つの領域に区画された電池パックにおいて、上述した優れた効果を得ることができる。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記正極機能助剤は、TiNb2x4+5xで表されるチタンニオブ酸化物であり、xは1以上の整数である。好ましくは、前記チタンニオブ酸化物は、TiNb、TiNb、TiNb1029及びTiNb2462から選ばれる1種又は複数種である。
【0016】
これにより、正極機能助剤として性能に優れたチタンニオブ酸化物を選択することで、好適な第2の放電電圧プラトーを有する電池セルを得ることができ、低温性能に優れた本願電池パックを実現することができる。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記第2の放電電圧プラトーの放電電圧範囲は、1.0-2.0Vであり、好ましくは、前記第2の放電電圧プラトーの1.2-1.6Vにおける放電容量は、前記第2の放電電圧プラトーの総放電容量の50%以上であり、好ましくは、70%以上である。
【0018】
これにより、第2の放電電圧プラトーの放電電圧を上記範囲とすることで、第2の放電電圧プラトーの放電電圧と第1の放電電圧プラトーの放電電圧とに有意差を持たせることができ、二重放電電圧プラトーを有することによる上記効果を顕著に得ることができる。第2の放電電圧プラトーの総放電容量に占める第2の放電電圧プラトーの1.2-1.6Vにおける放電容量の割合を上記範囲内にすることにより、電池セルが低温で十分なエネルギーを放出できることを確保し、電池パック全体の低温エネルギー保持率を確保することができる。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記第1の電池セル、第2の電池セル、第3の電池セルにおいて、前記第1の放電電圧プラトーの最低放電電圧と前記第2の放電電圧プラトーの最高放電電圧との差は0.5V以上であり、好ましくは1.0V以上である。
【0020】
これにより、放電電圧の高い第1の放電電圧プラトーで放電した後、引き続き放電電圧の低い第2の放電電圧プラトーで放電することがでる。その結果、各電池セルが低温で放出可能なエネルギーを著しく高めて、電池パック全体の低温でのエネルギー保持率を向上させることができる。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記第1の電池セルにおいて、前記第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量と前記第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量との和が100%であるとき、前記第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量は90%-100%を占め、前記第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量は0%-10%を占める。
【0022】
これにより、第1の電池セルにおける第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量と第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量のそれぞれの割合を上記範囲内にすることで、第1の電池セルが低温で放出可能なエネルギーを高めて、電池パック全体の低温エネルギー保持率を向上させることができる。
【0023】
いくつかの実施形態において、前記第2の電池セルにおいて、前記第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量と前記第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量との和が100%であるとき、前記第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量は73%-95%を占め、前記第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量は5%-27%を占める。
【0024】
これにより、第2の電池セルにおける第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量と第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量のそれぞれの割合を上記範囲内にすることで、第2の電池セルが低温で放出可能なエネルギーを高めて、電池パック全体の低温エネルギー保持率をさらに向上させることができる。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記第3の電池セルにおいて、前記第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量と前記第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量との和が100%であるとき、前記第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量は54%-87%を占め、前記第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量は13%-46%を占める。
【0026】
これにより、第3の電池セルにおける第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量と第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量のそれぞれの割合を上記範囲内にすることで、第3の電池セルが低温で放出可能なエネルギーを高め、電池パック全体の低温エネルギー保持率をより一層向上させることができる。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記第1の電池セルの正極活物質のグラム容量は148-285mAh/gであり、前記第2の電池セルの正極活物質のグラム容量は155-295mAh/gであり、前記第3の電池セルの正極活物質のグラム容量は169-311mAh/gである。
【0028】
これにより、第1の電池セル、第2の電池セル及び第3の電池セルのそれぞれのグラム容量を上記範囲内とすることで、第1の電池セル、第2の電池セル及び第3の電池セルの低温での放電容量を略揃えて、電池パック全体の低温でのエネルギー保持率を向上させることができる。
【0029】
いくつかの実施形態において、前記正極機能助剤の理論グラム容量は350-410mAh/gである。
【0030】
これにより、理論グラム容量が上記範囲内にある正極機能助剤を用いることで、各電池セルに十分なエネルギー密度を確保し、各電池セル及び電池パック全体の低温放電電力を向上させることができる。
【0031】
いくつかの実施形態において、前記第1の正極活物質は、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム及びリン酸鉄リチウムから選ばれる1種である。
【0032】
これにより、第1の正極活物質による第1の放電電圧プラトーと正極機能助剤による第2の放電電圧プラトーとの放電電圧と放電容量割合とが上記関係を満たす限り、第1の正極活物質は既存の様々な正極活物質から選択することができ、既存の正極活物質を利用して本願の電池パックを容易に実現することができる。
【0033】
いくつかの実施形態において、前記第1の電池セル、前記第2の電池セル及び前記第3の電池セルにおける前記第1の正極活物質の種類が同じであり、且つ前記正極機能助剤の種類が同じであるとき、前記第1の正極活物質が正極活物質に占める質量割合は、前記第1の電池セル、前記第2の電池セル、前記第3の電池セルの順に逓減し、前記正極機能助剤が正極活物質に占める質量割合は、前記第1の電池セル、前記第2の電池セル、前記第3の電池セルの順に逓増する。
【0034】
放電電圧が低い第2の放電電圧プラトーを生成するための正極機能助剤の質量割合が大きいほど、第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合が大きいほど、電池セルの低温エネルギー保持率が高くなる。第3の領域に配置された第3の電池セルの正極機能助剤の質量割合>第2の領域に配置された第2の電池セルの正極機能助剤の質量割合>第1の領域に配置された第1の電池セルの正極機能助剤の質量割合とすることにより、第3の電池セルの低温エネルギー保持率>第2の電池セルの低温エネルギー保持率>第1の電池セルの低温エネルギー保持率とすることができる。その結果、第1の電池セル、第2の電池セル及び第3の電池セルが低温で放出するエネルギーをほぼ揃えることができ、電池パック全体の低温エネルギー保持率をさらに向上させる。
【0035】
いくつかの実施形態において、前記第1の電池セルにおいて、前記第1の正極活物質と前記正極機能助剤の総質量が100%であるとき、前記第1の正極活物質の質量は96.0%-100%を占め、前記正極機能助剤の質量は0%-4.0%を占める。
【0036】
このように、第1の電池セルにおける第1の正極活物質と正極機能助剤の質量割合を上記範囲内とすることにより、第1の電池セルにおける第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量と第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量のそれぞれの割合を上記範囲内とすることができる。その結果、第1の電池セルが低温で放出可能なエネルギーを高めて、電池パック全体の低温エネルギー保持率を向上させることができる。
【0037】
いくつかの実施形態において、前記第2の電池セルにおいて、前記第1の正極活物質と前記正極機能助剤の総質量が100%であるとき、前記第1の正極活物質の質量は88.5%-96.0%を占め、前記正極機能助剤の質量は4.0%-11.5%を占める。
【0038】
このように、第2の電池セルにおける第1の正極活物質と正極機能助剤との質量割合を上記範囲内とすることにより、第2の電池セルにおける第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量と第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量とのそれぞれの割合を上記範囲内とすることができる。その結果、第2の電池セルが低温で放出可能なエネルギーを高めて、電池パック全体の低温エネルギー保持率をより向上させることができる。
【0039】
いくつかの実施形態において、前記第3の電池セルにおいて、前記第1の正極活物質と前記正極機能助剤の総質量が100%であるとき、前記第1の正極活物質の質量は76.5%-88.5%を占め、前記正極機能助剤の質量は11.5%-23.5%を占める。
【0040】
このように、第3の電池セルにおける第1の正極活物質と正極機能助剤との質量割合を上記範囲内とすることにより、第3の電池セルにおける第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量と第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量とのそれぞれの割合を上記範囲内とすることができる。その結果、第3の電池セルが低温で放出可能なエネルギーを高めて、電池パック全体の低温エネルギー保持率をより一層向上させることができる。
【0041】
いくつかの実施形態において、前記正極機能助剤は、炭素で被覆されたリチウム元素含有チタンニオブ酸化物である。
【0042】
これにより、正極機能助剤としてのチタンニオブ酸化物を炭素被覆及びプレリチオ化することで、チタンニオブ酸化物の導電性及び電池単体の有効リチウムイオン数を高め、正極機能助剤としてのチタンニオブ酸化物の構造安定性を高め、電池単体のエネルギー密度及びサイクル安定性を確保することができる。
【0043】
いくつかの実施形態において、前記第1の電池セル、前記第2の電池セル及び前記第3の電池セルのそれぞれの負極は、リチウム補充処理される。
【0044】
これにより、第1の電池セル、第2の電池セル及び第3の電池セルのそれぞれの負極に対してリチウム補充処理を行うことにより、正極活物質にチタンニオブ酸化物を添加することによるリチウムイオンの不足を補うことができる。その結果、電池セルの有効なリチウムイオン総量を低下させず、電池セルのエネルギー密度を保証する。
【0045】
いくつかの実施形態において、0℃以下の温度で、前記第1の電池セルの放電カットオフ電圧は1.4-1.6Vであり、前記第2の電池セルの放電カットオフ電圧は1.2-1.4Vであり、前記第3の電池セルの放電カットオフ電圧は1.0-1.2Vである。
【0046】
これにより、上記のように第1の電池セル、第2の電池セル及び第3の電池セルの放電カットオフ電圧を設けることで、第1の電池セル、第2の電池セル及び第3の電池セルが低温で放出するエネルギーをほぼ揃えることができ、電池パック全体の低温エネルギー保持率を向上させることができる。
【0047】
いくつかの実施形態において、第1の電池セルの数:第2の電池セルの数:第3の電池セルの数=(3-8):(8-13):(10-15)である。言い換えれば、第1の電池セルの数と第2の電池セルの数と第3の電池セルの数との和が100%であるとき、第1の電池セルの数の割合は約10-30%であり、第2の電池セルの数の割合は約25-50%であり、第3の電池セルの数の割合は約30-60%である。
【0048】
これにより、一般的な電池パックの温度分布範囲に応じて、第1の電池セル、第2の電池セル及び第3の電池セルの数を設定すれば、本願の電池パックを容易に実現することができる。
【0049】
本願の第2の態様は、本願の第1の態様の電池パックを含む電力消費装置を提供するものである。
【0050】
これにより、本願の第2の態様に係る電力消費装置は、低温での航続能力が強く、低温でも長時間にわたって正常に使用することができる。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、電池パックの筐体内部の温度の異なる領域に、二重放電電圧ステージを有する低温エネルギー保持率の異なる電池セルを配置することにより、温度の異なる領域の電池セルが低温で放出するエネルギーをほぼ揃えることができ、全体として低温エネルギー保持率が向上した電池パック及びそれを含む電力消費装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1図1は、本発明の一つの実施形態に係る電池パックの概略構成図である。
図2図2は、図1に示す本願の一つの実施形態に係る電池パックの筐体を除いた構成部品の平面図である。
図3図3は、本発明の一つの実施形態に係る電池パックに用いられる二重放電電圧プラトーを有する電池セルの定電流放電曲線の模式図である。ここで、該電池セルの正極活物質は、第1の正極活物質LiNi0.6Co0.2Mn0.2(NCM)と正極機能助剤であるチタンニオブ酸化物(TNO、例えばTiNb)からなる。
図4図4は、本願の一つの実施形態に係る電池パックを電源として用いた電力消費装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、適宜図面を参照しながら、本願の電池パック及び電力消費装置を具体的に開示した実施形態について詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細な説明や実質的に同一の構成に対する重複する説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本願を十分に理解するために提供されるのであって、特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0054】
本願で開示される「範囲」は下限と上限の形で限定され、所定の範囲は1つの下限と1つの上限を選定することによって限定され、選定された下限と上限は特別な範囲の境界を限定する。このように定義される範囲は、エンド値を含んでも含まなくてもよく、任意に組み合わせることができる。すなわち、任意の下限と任意の上限とを組み合わせて1つの範囲を形成してもよい。例えば、特定のパラメータについて60-120及び80-110の範囲が列挙されている場合、60-110及び80-120の範囲も予想される。また、最小範囲値1、最小範囲値2、及び最大範囲値3、最大範囲値4、最大範囲値5を列挙すると、以下の範囲、即ち1-3、1-4、1-5、2-3、2-4、2-5が全部予想される。本願において、他の説明がない限り、数値範囲「a-b」は、aからbの間の任意の実数の組み合わせの省略を示し、ここで、aとbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0-5」は、本文に「0-5」の間の全ての実数を全て列挙したことを示し、「0-5」は、これらの数値の組み合わせの省略表示に過ぎない。また、あるパラメータが2以上の整数であると表現すると、そのパラメータは、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などの整数であることが開示されていることに相当する。
【0055】
特に説明しない限り、本願の全ての実施形態及び選択可能な実施形態は、互いに組み合わせて新しい技術案を形成することができる。
【0056】
特に説明しない限り、本願の全ての技術的特徴及び選択可能な技術的特徴は、互いに組み合わせて新しい技術案を形成することができる。
【0057】
特に説明しない限り、本願の全てのステップは、順番に行われてもよく、ランダムに行われてもよいが、順番に行われることが好ましい。例えば、前記方法は、ステップ(a)及び(b)を含むというのは、前記方法は、順次行われるステップ(a)及び(b)を含んでもよく、順次行われるステップ(b)及び(a)を含んでもよいことを示す。例えば、前記方法は、ステップ(c)をさらに含んでもよいというのは、ステップ(c)が任意の順序で前記方法に追加されてもよいことを示す。例えば、前記方法は、ステップ(a)、(b)及び(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)及び(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)及び(b)などを含んでもよい。
【0058】
特に説明しない限り、本願で言及される「含む」及び「含有」は、オープン式であっても、クローズ式であってもよい。例えば、「含む」及び「含有」とは、列挙されていない他の成分を更に含有又は含んでもよく、列挙された成分のみを含有又は含んでもよいことを意味する。
【0059】
特に説明しない限り、本願において、用語「又は」は包括的である。例えば、「A又はB」という語句は、「A、B、又はA及びBの両方」を意味する。より具体的には、Aが真(または存在)であり、かつ、Bが偽(または存在せず)であるか、Aが偽(または存在せず)であり、かつ、Bが真(または存在)であるか、または、AおよびBの両方が真(または存在)であることは、何れも条件「AまたはB」を満たす。
【0060】
発明者らは、リチウムイオン二次電池セルからなる電池パックが冬場の低温環境下で使用される場合、電池パックにおける異なる位置の電池セルの放熱能力と保温効果が異なるため、異なる位置の電池セルの充放電性能が一致しないことに気付いた。具体的には、低温環境で使用する場合、電池パック内の内側に位置する電池セルの温度が相対的に高く、低温での放電性能が相対的に良く、電池パック内の外側に位置する電池セルの温度が相対的に低く、低温での放電性能が相対的に悪い。電池パックにおける異なる部位の電池セルの低温での放電能力の差異により、電池パック全体の低温でのエネルギー保持率が大幅に低下する。
【0061】
そこで、発明者らは、電池パックにおいて温度が低い領域に低温放電性能により優れた電池セルを配置することにより、電池パックにおいて異なる位置の電池セルが低温環境下で放出するエネルギーをほぼ揃えることができ、電池パック全体としての低温環境下でのエネルギー発揮が向上し、当該電池パックを電源として用いた電力消費装置の低温環境下での航続距離が向上することに想到した。
【0062】
上記目的を達成するために、発明者らが検討を重ねた結果、温度の低い領域に配置された電池セルが2つの放電電圧プラトーを有し、高い放電電圧プラトーでの放電が終了した後、低い放電電圧プラトーでの放電を継続することにより、これらの電池セルの放電量を高めることができ、これらの電池セルの低温での放電性能がより優れることを見出した。
【0063】
低い放電電圧プラトーを提供することができる物質は複数種知られている。発明者らは研究を重ねることにより、一般的に負極活物質として用いられるチタン酸化物、ニオブ酸化物又はチタンニオブ酸化物は低いリチウム対比電位を有し、これらの物質を正極機能助剤として通常の正極活物質に添加すると、これらの物質は低い放電電圧プラトーを提供することができ、電池セルが低温でより多くのエネルギーを放出することができ、電池セルの放電量を向上させ、さらに電池パック全体の低温でのエネルギー保持率を向上させる。
【0064】
そして、電池セルにおける正極機能助剤の質量が正極活物質の総質量(通常の正極活物質と正極機能助剤の質量の和)に占める割合が一定の割合(例えば50%)を超えない場合、低い放電電圧プラトーに対応する放電容量が高低2つの放電電圧プラトーに対応する総放電容量に占める割合が高いほど、電池セルの低温性能が優れている。このように、温度の低い領域ほど低い放電電圧プラトーに対応する放電容量の割合が高い電池セルを用いることにより、温度の異なるそれぞれの領域に配置された電池セルが低温で発揮するエネルギーをほぼ揃えることができる。これにより、電池パック全体の低温でのエネルギー保持率を向上させて、当該電池パックを電源として用いた電気自動車等の電力消費装置の低温での航続能力を向上させることができる。
【0065】
<電池パック>
以下、本願の電池パック1について具体的に説明する。
【0066】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る電池パック1の概略構成図である。図2は、図1に示す電池パック1の筐体を除いた構成部品の平面図である。
【0067】
図1及び図2に示すように、本願の電池パック1は、電池ボックスと、電池ボックス内に設けられた複数の電池セル(61、62、63)とを含む。電池ボックスは、上筐体2と下筐体3とを含み、上筐体2は、下筐体3に覆設され、複数の電池セルを収容するための密閉空間(電池パックキャビティ)を形成することができる。
【0068】
図2に示すように、第1の領域R1は、第1の境界線BL1で囲まれた略矩形の領域であって、電池パックの筐体の内部空間の矩形形状の中心部に位置し(例えば、第1の領域R1の矩形形状の長さと幅は、それぞれ電池パックの筐体の内部空間の矩形形状の長さと幅の略2分の1であってもよい)、第2の領域R2は、第1の境界線BL1と第3の境界線BL3との間の略環状の領域であり、第3の領域R3は、第2の境界線BL2と第3の境界線BL3との間の略環状の領域である。ここで、第1の境界線BL1、第2の境界線BL2と第3の境界線BL3は、第1の領域、第2の領域と第3の領域を明らかに表示するために描かれた仮想線である。
【0069】
さらに、前記第1の領域R1に第1の電池セル61が配置され、前記第2の領域R2に第2の電池セル62が配置され、前記第3の領域R3に第3の電池セル63が配置される。前記第2の電池セル62は前記第1の電池セル61の周囲を囲んで配置され、前記第3の電池セル63は前記第2の電池セル62の周囲を囲んで配置される。前記第1の電池セル61、前記第2の電池セル62及び前記第3の電池セル63は、それぞれ第1の放電電圧プラトー及び第2の放電電圧プラトーを有する。前記第1の放電電圧プラトーの平均放電電圧は、前記第2の放電電圧プラトーの平均放電電圧よりも高い。前記第1の電池セル61、前記第2の電池セル62及び前記第3の電池セル63のそれぞれの正極活物質は、前記第1の放電電圧プラトーを有する第1の正極活物質と、前記第2の放電電圧プラトーを有する正極機能助剤とを混合してなり、前記正極機能助剤は、チタン酸化物、ニオブ酸化物又はチタンニオブ酸化物である。前記第1の電池セル61、前記第2の電池セル62及び前記第3の電池セル63のそれぞれにおいて、前記第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量と前記第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量との和が100%である場合、前記第3の電池セル63の前記第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合>前記第2の電池セル62の前記第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合>前記第1の電池セル61の前記第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合である。同じ温度の外部環境に置かれる場合、電池パック1内において、第3の領域R3の温度は第2の領域R2の温度よりも低く、第2の領域R2の温度は第1の領域R1の温度よりも低い。
【0070】
なお、本願明細書全体において、第1の電池セルを、第1の放電電圧プラトーと第2の放電電圧プラトーとを有するものとして説明するか、又は第1の電池セルの正極活物質を、第1の放電電圧プラトーを有する第1の正極活物質と第2の放電電圧プラトーを有する正極機能助剤とを混合してなるものとして説明するが、第1の放電電圧プラトーのみを含み、第2の電圧放電プラトーを含まない第1の電池セル、すなわち第1の正極活物質のみからなる第1の電池セルも本発明の範囲内である。
【0071】
なお、「放電電圧プラトー」とは、放電曲線において放電電圧が比較的穏やかな部分であり、放電電圧プラトーで放電した場合には、単位時間当たりの放電量が多い。図3は、本発明の一つの実施形態に係る電池パックに用いられる二重放電電圧プラトーを有する電池セルの定電流放電曲線の模式図である。ここで、該電池セルの正極活物質は、第1の正極活物質LiNi0.6Co0.2Mn0.2(NCM)と正極機能助剤チタンニオブ酸化物(TNO、例えばTiNb)からなる。図3に示すように、NCMの放電電圧プラトーの下限は2.5V(図3におけるA点)であり、TNOの放電電圧プラトーの上限は1.8V(図3におけるB点)である。また、図3に示すように、電池セルの放電曲線が2つの放電電圧プラトーを有する場合には、A点を経た後、放電電圧が急激に低下し、B点に低下した後に再度なだらかになり、放電電圧プラトーによる放電が継続される。
【0072】
図3において、第1の電圧低下が終了するB点の前は、第1の放電電圧プラトー(即ち、高電圧放電プラトー、即ち、本願の第1の放電電圧プラトー)であり、データ値において、高電圧正極活物質から放出された全てのエネルギーと電流との比(均衡した値であり、B点の前の平均電圧として大まかに見なすこともできる)に等しい。第1の電圧低下が終了するB点の後は、第2の放電電圧プラトー(即ち、低電圧放電プラトー、即ち、本願の第2の放電電圧プラトー)になり、低電圧正極活物質(例えば、本願の正極機能助剤)から放出された全てのエネルギーと電流との比(均衡した値であり、B点の後の平均電圧として大まかに見なすこともできる)として現れる。
【0073】
本願において、電池パックの筐体の内部空間の温度が異なる領域に、二重放電電圧プラトー(放電電圧が高い第1の放電電圧プラトーと放電電圧が低い第2の放電電圧プラトー)を有する低温エネルギー保持率の異なる電池セル61、62、63をそれぞれ配置するとともに、温度が低い領域ほど低温エネルギー保持率の高い電池セルを配置する。具体的には、通常の電池パック内部の温度分布に従って、第1の領域R1の温度>第2の領域R2の温度>第3の領域R3の温度であり、本願において、第3の電池セル63の第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合>第2の電池セル62の第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合>第1の電池セル61の第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合である。
【0074】
なお、本願の第1/第2/第3の電池セルの第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合の具体的な定義及びテスト方法は、本明細書の「関連テスト」部分を参照する。
【0075】
電池パック内の異なる位置にある電池セルは、放熱能力が異なる。通常、外側の電池セルほど、放熱能力が強くなる。即ち、放熱速度が速くなる。そのため、電池パックの外側から電池パックの内部に向かうにつれて、電池セルの放熱速度が徐々に低下し、逆に、電池パックの内部から電池パックの外側に向かうにつれて、電池セルの保温能力が徐々に低下する。したがって、電池パックの異なる領域の電池セルの温度が異なるため、その充放電性能が揃わなくなる。例えば、低温外部環境では、内側の電池セルの放熱速度が相対的に遅く、温度が相対的に高く、低温外部環境での性能が相対的に良い(ただし、高温性能が悪い)。しかし、外側の電池セルの放熱速度が相対的に速く、温度が相対的に低く、低温外部環境での性能が相対的に悪い(ただし、高温性能が高い)。これにより、このような電池パック内の異なる領域の電池セルの低温環境で現れる相互間の電気性能の差異が大きすぎるという現象は、電池パック全体の低温環境でのエネルギー保持率を低下させる。
【0076】
上記問題を解決するために、本願発明者らは、温度が異なる第1の領域R1、第2の領域R2及び第3の領域R3に二重放電電圧プラトー(即ち、放電電圧が相対的に高い第1の放電電圧プラトー及び放電電圧が相対的に低い第2の放電電圧プラトー)を有する第1の電池セル61、第2の電池セル62及び第3の電池セル63を設置した。これにより、第1の放電電圧プラトーの放電が終了した後、第2の放電電圧プラトーを利用して放電を継続することができ(即ち、同一の電池セルの段階放電を実現する)、これにより、各電池セルが低温環境で放出するエネルギーを向上させ、電池パック全体の低温エネルギー保持率を向上させることができる。
【0077】
本願において、二重放電電圧プラトーを有する第1の電池セル61、第2の電池セル62及び第3の電池セル63のそれぞれの正極活物質は、通常の正極活物質(第1の正極活物質)と正極機能助剤とを混合して製造される。通常の正極活物質は、放電電圧が高い第1の放電電圧プラトーを有し、正極機能助剤は、ReO立体配置の層状構造を有するチタン酸化物、ニオブ酸化物又はチタンニオブ酸化物である。これらの正極機能助剤は、放電電圧が低い第2の放電電圧プラトーを有する。電池セルにおける放電電圧が低い第2の放電電圧プラトーの放電容量は、正極活物質における正極機能助剤の含有量を変えることにより調節することができる。
【0078】
そして、本願発明者らは、第1の電池セル61、第2の電池セル62及び第3の電池セル63の第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合をさらに調整することにより、全体として低温エネルギー保持率がより高い電池パック1を得た。このような構成により、冬場の低温条件での電池パックの低温エネルギー保持率を顕著に改善することを見出した。具体的には、第3の電池セル63の第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合>第2の電池セル62の第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合>第1の電池セル61の第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合とすることにより、第1の電池セル61が継続的に放電できない低温環境で、第2の電池セル62と第3の電池セル63を継続的に放電させ、第1の電池セル61と第2の電池セル62が継続的に放電できない低温環境で、第3の電池セル63を継続的に放電させることができ、電池パック全体の放電容量が高いレベルにあることを確保する。
【0079】
本発明者らは、さらに、温度の異なる各領域R1、R2、R3に設置された二重放電電圧プラトーを有する各電池セル61、61、63における第二放電電圧プラトーに対応する放電容量割合と電池パックの-20℃総エネルギー保持率との関係について鋭意研究した。その結果、第1の電池セル61、第2の電池セル62及び第3の電池セル63のそれぞれにおいて、第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量と第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量との和が100%である場合、第3の電池セル63の第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合>第2の電池セル62の第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合>第1の電池セル61の第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合とすることにより、第3の電池セル63の低温エネルギー保持率>第2の電池セル62の低温エネルギー保持率>第1の電池セル61の低温エネルギー保持率とすることができ、電池パックの温度が異なる各領域R1、R2、R3に配置された各電池セル61、62、63が低温で放出可能なエネルギー(低温での放電容量)をほぼ揃えることができ、電池パック1全体の低温エネルギー保持率(電池パックの-20℃総エネルギー保持率)を向上させ、電池パック全体の低温での航続能力を向上させることができることを見出した。
【0080】
図2に示すように、複数の電池セルのうち、比較的外側に位置する電池セルは、電池パックの筐体(上筐体2、下筐体3)の内面に接触してもよく、電池パックの筐体の内面に設けられた構造部材に接触してもよい。図2に示す平面視において、最も外側の電池セルと電池パックの筐体の内面との間には、任意に隙間g1、g2が形成されており、これらの隙間g1、g2には、電池パックの種々の構造物を設けることができる。異なる電池セル間の空隙には、電池パック全体のエネルギー密度を向上させるように、コンデンサ等を任意に設けることができる。
【0081】
いくつかの実施形態において、第1の電池セル61、第2の電池セル62及び第3の電池セル63における前記正極機能助剤は、TiNb2x4+5xで表されるチタンニオブ酸化物である。ここで、xは1以上の整数であり、好ましくは、前記チタンニオブ酸化物は、TiNb、TiNb、TiNb1029及びTiNb2462から選ばれる1種又は複数種である。
【0082】
チタンニオブ酸化物は、一般的に、異なる比率のチタン酸化物とニオブ酸化物を化合させて製造される。チタンとニオブの原子半径が近いため、チタンニオブ酸化物は、いずれもReO立体配置の層状構造を有し、且つチタンイオンとニオブイオンは類似の電気化学特性を有し、Nb5+/Nb4+、Nb4+/Nb3+及びTi4+/Ti3+の酸化還元電位差が小さく、いずれも1-2Vの範囲内にある。
【0083】
これにより、正極機能助剤として性能に優れたチタンニオブ酸化物を選択することで、適切な第2の放電電圧プラトーを有する第1の電池セル61、第2の電池セル62及び第3の電池セル63を得ることができ、低温性能に優れた本願の電池パックを実現することができる。
【0084】
上記のチタンニオブ酸化物は、市販で入手するか、またはTiNb2x4+5xの各元素の配合比に応じて、TiOとNbの粉末の質量比を調整し、溶媒を加える。溶媒はエタノール、水またはアセトンであってもよい。混合物をボールミル、乾燥、加熱、冷却することにより、対応するチタンニオブ酸化物を得ることができる。
【0085】
いくつかの実施形態において、前記第2の放電電圧プラトーの放電電圧範囲は、1.0-2.0Vである。好ましくは、前記第2の放電電圧プラトーの1.2-1.6Vにある放電容量は、前記第2の放電電圧プラトーの総放電容量の50%以上であり、好ましくは、70%以上である。
【0086】
これにより、第2の放電電圧プラトーの放電電圧を上記範囲とすることで、第2の放電電圧プラトーの放電電圧と第1の放電電圧プラトーの放電電圧とに有意差を持たせることができ、二重放電電圧プラトーを有することによる上記効果を顕著に得ることができる。第2の放電電圧プラトーの総放電容量に占める第2の放電電圧プラトーの1.2-1.6Vにある放電容量の割合を上記範囲内にすることにより、電池セルが低温で十分なエネルギーを放出できることを確保し、電池パック全体の低温エネルギー保持率を確保することができる。
【0087】
いくつかの実施形態において、前記第1の電池セル61、第2の電池セル62、第3の電池セル63において、前記第1の放電電圧プラトーの最低放電電圧と前記第2の放電電圧プラトーの最高放電電圧との差は0.5V以上であり、好ましくは1.0V以上である。
【0088】
図3を参照すると、本願に記載の「第1の放電電圧プラトーの最低放電電圧」とは、A点に対応する放電電圧を指し、前記「第2の放電電圧プラトーの最高放電電圧」とは、B点に対応する放電電圧を指す。
【0089】
2つの放電電圧プラトーが存在する電池セルについて、第1の放電電圧プラトーと第2の放電電圧プラトーの放電電圧の差が大きいほど、第2の放電電圧プラトーによる上記効果は顕著である。第1の放電電圧プラトーの最低放電電圧と第2の放電電圧プラトーの最高放電電圧との差が0.5V未満であるとき、第1の放電電圧プラトーと第2の放電電圧プラトーとの放電電圧の差異が小さく、第2の放電電圧プラトーによる上記効果を顕著に得ることができない。
【0090】
第1の放電電圧プラトーの最低放電電圧と第2の放電電圧プラトーの最高放電電圧との差を上記範囲とすることにより、放電電圧の高い第1の放電電圧プラトーで放電した後、引き続き放電電圧の低い第2の放電電圧プラトーで放電することができ、各電池セルが低温で放出可能なエネルギーを著しく高めることができ、電池パック全体の低温でのエネルギー保持率を向上させることができる。
【0091】
いくつかの実施形態において、前記第1の電池セル61において、前記第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量と前記第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量との和が100%である場合、前記第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量は90%-100%を占め、前記第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量は0%-10%を占める。前記第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量が100%を占め、前記第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量が0%を占めることは、第1の電池セル61が1つの放電電圧プラトーのみを有する場合を指し、それも本発明の範囲内にある。
【0092】
これにより、第1の電池セル61における第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量と第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量のそれぞれの割合を上記範囲内にすることで、第1の電池セル61が低温で放出可能なエネルギーを高めて、電池パック1全体の低温エネルギー保持率を向上させることができる。
【0093】
いくつかの実施形態において、前記第2の電池セル62において、前記第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量と前記第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量との和が100%である場合、前記第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量は73%-95%を占め、前記第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量は5%-27%を占める。
【0094】
これにより、第2の電池セル62における第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量と第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量のそれぞれの割合を上記範囲内とすることで、第2の電池セル62が低温で放出可能なエネルギーを高めて、電池パック1全体の低温エネルギー保持率をより向上させることができる。
【0095】
いくつかの実施形態において、前記第3の電池セル63において、前記第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量と前記第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量との和が100%である場合、前記第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量は54%-87%を占め、前記第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量は13%-46%を占める。
【0096】
これにより、第3の電池セル63における第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量と第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量のそれぞれの割合を上記範囲内とすることで、第3の電池セル63が低温で放出可能なエネルギーを高め、電池パック1全体の低温エネルギー保持率をより一層向上させることができる。
【0097】
いくつかの実施形態において、前記第1の電池セル61の正極活物質のグラム容量は148-285mAh/gであり、前記第2の電池セルの正極活物質のグラム容量は155-295mAh/gであり、前記第3の電池セルの正極活物質のグラム容量は169-311mAh/gである。
【0098】
これにより、第1の電池セル61、第2の電池セル62及び第3の電池セル63のそれぞれのグラム容量を上記範囲内とすることで、第1の電池セル61、第2の電池セル62及び第3の電池セル63の低温での放電容量を略揃えて、電池パック1全体の低温でのエネルギー保持率を向上させることができる。
【0099】
ここで、各電池セルの正極活物質のグラム容量とは、正極活物質の平均グラム容量であり、例えば、正極活物質に含まれる第1の正極活物質と正極機能助剤のそれぞれのグラム容量と質量比から算出することができる。
【0100】
いくつかの実施形態において、前記正極機能助剤の理論グラム容量は350-410mAh/gである。
【0101】
これにより、理論グラム容量が上記範囲内にある正極機能助剤を用いることで、各電池セルに十分なエネルギー密度を確保し、各電池セル及び電池パック全体の低温放電電力を向上させることができる。
【0102】
いくつかの実施形態において、前記第1の正極活物質は、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム及びリン酸鉄リチウムから選ばれる1種である。
【0103】
これにより、第1の正極活物質による第1の放電電圧プラトーと正極機能助剤による第2の放電電圧プラトーとの放電電圧及び放電容量の比が上記関係を満たす限り、第1の正極活物質は既存の様々な正極活物質から選択することができ、既存の正極活物質を利用して本願の電池パックを容易に実現することができる。
【0104】
いくつかの実施形態において、前記第1の電池セル61、前記第2の電池セル62及び前記第3の電池セル63における前記第1の正極活物質の種類が同じであり、且つ前記正極機能助剤の種類が同じである場合、前記第1の正極活物質が正極活物質に占める質量割合は、前記第1の電池セル61、前記第2の電池セル62、前記第3の電池セル63の順に逓減し、前記正極機能助剤が正極活物質に占める質量割合は、前記第1の電池セル61、前記第2の電池セル62、前記第3の電池セル63の順に逓増する。
【0105】
放電電圧が低い第2の放電電圧プラトーを生成するための正極機能助剤の質量割合が大きいほど、第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合が大きいほど、電池セルの低温エネルギー保持率が高くなる。第3の領域R3に配置された第3の電池セル63の正極機能助剤の質量割合>第2の領域R2に配置された第2の電池セル62の正極機能助剤の質量割合>第1の領域R1に配置された第1の電池セル61の正極機能助剤の質量割合とすることで、第3の電池セル63の低温エネルギー保持率>第2の電池セル62の低温エネルギー保持率>第1の電池セル61の低温エネルギー保持率とすることができる。これにより、第1の電池セル61、第2の電池セル62及び第3の電池セル63が低温で放出するエネルギーを略揃えることができ、電池パック1全体の低温でのエネルギー保持率を向上させることができる。
【0106】
いくつかの実施形態では、前記第1の電池セル61において、前記第1の正極活物質と前記正極機能助剤の総質量が100%である場合、前記第1の正極活物質の質量は96.0%-100%を占め、前記正極機能助剤の質量は0%-4.0%を占める。ここで、前記第1の正極活物質の質量が100%を占め、前記正極機能助剤の質量が0%を占めるとは、第1の電池セル61が第1の正極活物質のみからなる場合を指し、本発明の範囲内にある。
【0107】
このように、第1の電池セル61における第1の正極活物質と正極機能助剤との質量比を上記範囲内とすることにより、第1の電池セル61における第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量と第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量とのそれぞれの割合を上記範囲内とすることができる。これにより、第1の電池セル61が低温で放出可能なエネルギーを高めて、電池パック1全体の低温エネルギー保持率を向上させることができる。
【0108】
いくつかの実施形態において、前記第2の電池セル62において、前記第1の正極活物質と前記正極機能助剤の総質量が100%である場合、前記第1の正極活物質の質量は88.5%-96.0%を占め、前記正極機能助剤の質量は4.0%-11.5%を占める。
【0109】
このように、第2の電池セル62における第1の正極活物質と正極機能助剤との質量比を上記範囲内とすることにより、第2の電池セル62における第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量と第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量とのそれぞれの割合を上記範囲内とすることができる。これにより、第2の電池セル62が低温で放出可能なエネルギーを高めて、電池パック1全体の低温エネルギー保持率をより向上させることができる。
【0110】
いくつかの実施形態において、前記第3の電池セル63において、前記第1の正極活物質と前記正極機能助剤の総質量が100%である場合、前記第1の正極活物質の質量は76.5%-88.5%を占め、前記正極機能助剤の質量は11.5%-23.5%を占める。
【0111】
このように、第3の電池セル63における第1の正極活物質と正極機能助剤との質量比を上記範囲内とすることにより、第3の電池セル63における第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量と第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量とのそれぞれの割合を上記範囲内とすることができる。これにより、第3の電池セル63が低温で放出可能なエネルギーを高めて、電池パック1全体の低温エネルギー保持率をより向上させることができる。
【0112】
いくつかの実施形態において、前記正極機能助剤は、炭素で被覆されたリチウム元素含有チタンニオブ酸化物である。
【0113】
これにより、正極機能助剤としてのチタンニオブ酸化物のようなリチウム欠乏物質に対してプレリチオ化処理を行うことで、通常の正極活物質の減少によるリチウムイオン数の減少を補うことができ、電池セルが要求を満たすリチウムイオン数を有するようにし、電池セルのエネルギー密度を保証する。また、プレリチオ化処理されたチタンニオブ酸化物を炭素被覆することにより、チタンニオブ酸化物の導電性を高めることができる。これにより、正極機能助剤としてのチタンニオブ酸化物の構造安定性を向上させ、電池単体のエネルギー密度及びサイクル安定性を確保することができる。
【0114】
チタンニオブ酸化物をプレリチオ化する方法としては、公知のリチウム欠乏物質をプレリチオ化する方法を採用することができる。例えば、調製したチタンニオブ酸化物を炭酸リチウムと混合した後、アルミナセラミック坩堝に押し固めて入れ、高炉に入れて炭酸リチウムの溶融温度まで昇温し、室温まで冷却して取り出してボールミル分散し、プレリチオした生成物を得る方法を採用することができる。チタンニオブ酸化物をプレリチオ化することにより、電池の初回効率を向上させることができる。
【0115】
プレリチオ化したチタンニオブ酸化物を炭素被覆する方法としては、公知の炭素被覆方法を用いることができる。例えば、チタンニオブ酸化物(TiNb2x4+5x)の各元素の配合比と所望の炭素被覆量とに応じてプレリチオ化したチタンニオブ酸化物とグルコースとの質量比を調整し、エタノール、水又はアセトンである溶媒を加え、混合液をボールミル、乾燥造粒、焼成することにより炭素で被覆されたリチウム元素含有チタンニオブ酸化物材料を得る方法を用いることができる。プレリチオ化したチタンニオブ酸化物を炭素被覆することにより、チタンニオブ酸化物の導電率を向上させることができる。
【0116】
いくつかの実施形態において、前記第1の電池セル61、前記第2の電池セル62及び前記第3の電池セル63のそれぞれの負極は、リチウム補充処理される。
【0117】
これにより、第1の電池セル61、第2の電池セル62及び第3の電池セル63のそれぞれの負極に対してリチウム補充処理を行うことにより、正極活物質にチタンニオブ酸化物を添加することによるリチウムイオンの不足を補い、電池セルの有効なリチウムイオンの総量を低下させず、電池セルのエネルギー密度を保証することができる。
【0118】
負極にリチウム補充処理を行う方法としては、公知の様々な方法を採用することができる。例えば、以下の方法を採用することができる。(1)バインダー、リチウム粉末及び有機溶剤を混合してリチウム粉末溶液を得て、(2)物理的な方式で前記リチウム粉末溶液を負極シートに塗布し、(3)負極シートを乾燥、冷間プレスすることにより、プレリチオ化負極シートを得る。負極にリチウムを補充することにより、電池の初回効率を向上させることができる。
【0119】
正極機能助剤のプレリチオ化処理及び負極のリチウム補充処理は、少なくともいずれか一方を行えばよい。
【0120】
いくつかの実施形態において、0℃以下の温度で、前記第1の電池セルの放電カットオフ電圧は1.4-1.6Vであり、前記第2の電池セルの放電カットオフ電圧は1.2-1.4Vであり、前記第3の電池セルの放電カットオフ電圧は1.0-1.2Vである。
【0121】
これにより、上記のように第1の電池セル61、第2の電池セル62及び第3の電池セル63の放電カットオフ電圧を設けることで、第1の電池セル61、第2の電池セル62及び第3の電池セル63が低温で放出するエネルギーを略揃えることができる。その結果、電池パック全体の低温でのエネルギー保持率を向上させることができる。
【0122】
充電カットオフ電圧が高すぎたり、放電カットオフ電圧が低すぎたりすると、電池セルのサイクル性能が損なわれる。充電カットオフ電圧が高すぎる場合、電池セルが過充電になり、電池セルの電気量が満充電になった場合、充電を続けると、正極材料の構造が変化し、容量損失を引き起こし、正極材料が分解して放出した酸素が電解液と激しい化学反応を起こし、最悪の結果として爆発を引き起こす可能性がある。放電カットオフ電圧が低すぎる場合、電池セルが過放電し、過放電により電池セルの内圧が上昇し、正負極活物質の可逆性が損なわれ、充電しても部分的にしか回復できず、容量も著しく減衰する。電池セルが深く充電して放電すると、電池セルの損害が増大し、電池セルの最も理想的な動作状態は浅く充電して放電することであり、このように電池セルの寿命を延ばすことができる。
【0123】
いくつかの実施形態において、第1の電池セル61の数:第2の電池セル62の数:第3の電池セル63の数=(3-8):(8-13):(10-15)である。すなわち、第1電池セル61の数と第2電池セル62の数と第3電池セル63の数との和を100%とすると、第1電池セル61の数の割合は10-30%程度であり、第2電池セル62の数の割合は25-50%程度であり、第3電池セル63の数の割合は30-60%程度である。
【0124】
いくつかの実施形態において、第1の電池セル61の数は1であってもよい。
【0125】
これにより、一般的な電池パックの温度分布範囲に合わせて、第1の電池セル61、第2の電池セル62及び第3の電池セル63の数を設定すれば、本願の電池パックを容易に実現することができる。
【0126】
<電力消費装置>
また、本願は、本願の電池パックを含む電力消費装置をさらに提供する。前記電池パックは、前記電力消費装置の電源として用いられてもよいし、前記電力消費装置のエネルギ貯蔵ユニットとして用いられてもよい。前記電力消費装置は、移動機器(例えば、携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば、純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0127】
前記電力消費装置としては、その使用ニーズに応じて電池セル又は電池パックを選択することができる。
【0128】
図4は、一例としての電力消費装置である。当該電力消費装置は、純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車等である。当該電力消費装置の低温での航続能力に対するニーズを満たすために、本発明の電池パックを採用することができる。
【実施例
【0129】
以下、本願の実施例を説明する。以下に説明する実施例は例示的なものであり、本願を説明するためのものに過ぎず、本願を限定するものとして理解することはできない。実施例において具体的な技術又は条件が明記されていないものは、本分野の文献に記載の技術又は条件に従って、又は製品の明細書に従って行う。使用される試薬又は機器について、メーカーを明記していないものは、いずれも市販から入手可能な通常の製品である。
【0130】
(一)電池セルの作製
【0131】
I.第1の電池セルの作製
【0132】
[作製例I-1]
1)正極シートの作製
正極活物質としての第1の正極活物質LiNi0.6Co0.2Mn0.2(NCM)と、正極機能助剤TiNbと、導電剤としての高導電性カーボンブラックSPと、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、溶媒としてのN-メチルピロリドン(NMP)に分散させて均一に混合し、正極スラリーを得た。正極スラリーを正極集電体アルミニウム箔に均一に塗布し、乾燥、冷間プレス、ストリップ、裁断した後、正極シートを得た。
【0133】
ここで、正極機能助剤は、プレリチオ化及び炭素被覆され、正極活物質、導電性カーボンブラック、バインダーPVDFの質量比は、96:2:2:2であり、正極機能助剤TiNbと第1の正極活物質NCMとの質量比は、2:98である。
【0134】
2)負極シートの作製
負極活物質である黒鉛と、導電剤としての高導電性カーボンブラックSPと、バインダーとしてのSBRと、増粘剤としてのCMC-Naとを、質量比96:1:1:2で溶媒としての脱イオン水に分散させて均一に混合し、負極スラリーを得た。負極スラリーを負極集電体銅箔に均一に塗布し、乾燥、冷間プレス、ストリップ、裁断した後、負極シートを得た。
【0135】
3)セパレータ
セパレータとしてポリエチレンフィルムを用いた。
【0136】
4)電解液の作製
エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を体積比1:1:1で均一に混合して有機溶媒を得た後、十分に乾燥させたリチウム塩LiPFを混合後の有機溶媒に溶解し、濃度1mol/Lの電解液を作製した。
【0137】
5)電池セルの作製
セパレータが正極シートと負極シートとの間に位置して隔離作用を果たすように、上記正極シート、セパレータ、負極シートを順に積層した。次に、巻回してベアセルを得た。ベアセルを外装ケースに置き、乾燥後に電解液を注入し、真空封止、静置、化成、整形などの工程を経て、第1の電池セルI-1を得た。
【0138】
[作製例I-2]
正極活物質に第1の正極活物質LiNi0.6Co0.2Mn0.2(NCM)と正極機能助剤TiOを用いた以外は作製例I-1と同様にして第1の電池セルI-2を得た。
【0139】
[作製例I-3]
正極活物質に第1の正極活物質LiNi0.6Co0.2Mn0.2(NCM)と正極機能助剤Nbを用いた以外は作製例I-1と同様にして第1の電池セルI-3を得た。
【0140】
[作製例I-4]
正極活物質に第1の正極活物質であるリン酸鉄リチウム(LFP)と正極機能助剤TiNbを用いた以外は作製例I-1と同様にして、第1の電池セルI-4を得た。
【0141】
[作製例I-5]
正極活物質に第1の正極活物質であるマンガン酸リチウム(LMO)と正極機能助剤TiNbを用いた以外は、作製例I-1と同様にして、第1の電池セルI-5を得た。
【0142】
[作製例I-6]
正極活物質に第1の正極活物質LiNi0.6Co0.2Mn0.2(NCM)と正極機能助剤Ti2Nb2O9を用いた以外は作製例I-1と同様にして第1の電池セルI-6を得た。
【0143】
[作製例I-7]
正極活物質に第1の正極活物質LiNi0.6Co0.2Mn0.2(NCM)と正極機能助剤TiNb1029を用いた以外は、作製例I-1と同様にして第1の電池セルI-7を得た。
【0144】
[作製例I-8]
正極活物質に第1の正極活物質LiNi0.6Co0.2Mn0.2(NCM)と正極機能助剤TiNb2462を用いた以外は、作製例I-1と同様にして第1の電池セルI-8を得た。
【0145】
[作製例I-9]
正極活物質に第1の正極活物質であるリン酸鉄リチウム(LFP)と正極機能助剤TiNbを用いた以外は、作製例I-1と同様にして第1の電池セルI-9を得た。
【0146】
[作製例I-10]
正極活物質に第1の正極活物質であるマンガン酸リチウム(LMO)と正極機能助剤TiNb1029を用いた以外は、作製例I-1と同様にして第1の電池セルI-10を得た。
【0147】
[作製例I-11]
正極活物質にNCMのみを用いたこと以外は作製例I-1と同様にして、第1の電池セルI-11を得た。
【0148】
[作製例I-12]
正極機能助剤TiNbと第1の正極活物質NCMとの質量比を11.5:88.5とした以外は、作製例I-1と同様にして、第1の電池セルI-12を得た。
【0149】
[作製例I-13]
正極活物質にLFPのみを用いたこと以外は作製例I-1と同様にして、第1の電池セルI-13を得た。
【0150】
[作製例I-14]
正極機能助剤TiNbと第1の正極活物質LFPとの質量比を4:96としたこと以外は、作製例I-4と同様にして、第1の電池セルI-14を得た。
【0151】
II.第2の電池セルの作製
[作製例II-1]
正極機能助剤TiNbと第1の正極活物質NCMとの質量比を6.5:93.5としたこと以外は作製例I-1と同様にして、第2の電池セルII-1を得た。
【0152】
[作製例II-2]
正極機能助剤TiOと第1の正極活物質NCMとの質量比を6.5:93.5としたこと以外は作製例I-2と同様にして、第2の電池セルII-2を得た。
【0153】
[作製例II-3]
正極機能助剤Nbと第1の正極活物質NCMとの質量比を6.5:93.5としたこと以外は作製例I-3と同様にして、第2の電池セルII-3を得た。
【0154】
[作製例II-4]
正極機能助剤TiNbと第1の正極活物質LFPとの質量比を6.5:93.5としたこと以外は、作製例I-4と同様にして、第2の電池セルII-4を得た。
【0155】
[作製例II-5]
正極機能助剤TiNbと第1の正極活物質LMOとの質量比を6.5:93.5としたこと以外は作製例I-5と同様にして、第2の電池セルII-5を得た。
【0156】
[作製例II-6]
正極機能助剤TiNbと第1の正極活物質NCMとの質量比を6.5:93.5としたこと以外は作製例I-6と同様にして第2の電池セルII-6を得た。
【0157】
[作製例II-7]
正極機能助剤TiNb1029と第1の正極活物質NCMとの質量比を6.5:93.5としたこと以外は、作製例I-7と同様にして、第2の電池セルII-7を得た。
【0158】
[作製例II-8]
正極機能助剤TiNb2462と第1の正極活物質NCMとの質量比を6.5:93.5としたこと以外は、作製例I-8と同様にして、第2の電池セルII-8を得た。
【0159】
[作製例II-9]
正極機能助剤TiNbと第1の正極活物質LFPとの質量比を6.5:93.5としたこと以外は作製例I-9と同様にして第2の電池セルII-9を得た。
【0160】
[作製例II-10]
正極機能助剤TiNb1029と第1の正極活物質LMOとの質量比を6.5:93.5としたこと以外は作製例I-10と同様にして、第2の電池セルII-10を得た。
【0161】
[作製例II-11]
作製例II-11と同様にして、第2の電池セルII-11を得た。
【0162】
[作製例II-12]
正極活物質にLFPのみを用いたこと以外は作製例I-1と同様にして第2の電池セルII-12を得た。
【0163】
[作製例II-13]
作製例I-1と同様にして、第2の電池セルII-13を得た。
【0164】
[作製例II-14]
正極機能助剤TiNbと第1の正極活物質NCMとの質量比を4:96としたこと以外は作製例I-1と同様にして、第2の電池セルII-14を得た。
【0165】
[作製例II-15]
正極機能助剤TiNbと第1の正極活物質LFPとの質量比を11.5:88.5としたこと以外は、作製例I-4と同様にして、第2の電池セルII-15を得た。
【0166】
[作製例II-16]
正極活物質に第1の正極活物質であるマンガン酸リチウム(LMO)と正極機能助剤TiNbを用い、正極機能助剤TiNbと第1の正極活物質LMOとの質量比を11.5:88.5とした以外は、作製例I-1と同様にして第2の電池セルII-16を得た。
【0167】
[作製例II-17]
正極機能助剤TiNbと第1の正極活物質NCMとの質量比を20:80とした以外は作製例I-1と同様にして、第2の電池セルII-17を得た。
【0168】
III.第3の電池セルの作製
[作製例III-1]
正極機能助剤TiNbと第1の正極活物質NCMとの質量比を11.5:88.5としたこと以外は、作製例I-1と同様にして、第3の電池セルIII-1を得た。
【0169】
[作製例III-2]
正極機能助剤TiOと第1の正極活物質NCMとの質量比を11.5:88.5としたこと以外は、作製例I-2と同様にして、第3の電池セルIII-2を得た。
【0170】
[作製例III-3]
正極機能助剤Nbと第1の正極活物質NCMとの質量比を11.5:88.5としたこと以外は、作製例I-3と同様にして、第3の電池セルIII-3を得た。
【0171】
[作製例III-4]
正極機能助剤TiNbと第1の正極活物質LFPとの質量比を11.5:88.5としたこと以外は、作製例I-4と同様にして、第3の電池セルIII-4を得た。
【0172】
[作製例III-5]
正極機能助剤TiNbと第1の正極活物質LMOとの質量比を11.5:88.5としたこと以外は、作製例I-5と同様にして、第3の電池セルIII-5を得た。
【0173】
[作製例III-6]
正極機能助剤TiNbと第1の正極活物質NCMとの質量比を11.5:88.5としたこと以外は、作製例I-6と同様にして、第3の電池セルIII-6を得た。
【0174】
[作製例III-7]
正極機能助剤TiNb1029と第1の正極活物質NCMとの質量比を11.5:88.5とした以外は、作製例I-7と同様にして、第3の電池セルIII-7を得た。
【0175】
[作製例III-8]
正極機能助剤TiNb2462と第1の正極活物質NCMとの質量比を11.5:88.5としたこと以外は、作製例I-8と同様にして、第3の電池セルIII-8を得た。
【0176】
[作製例III-9]
正極機能助剤TiNbと第1の正極活物質LFPとの質量比を11.5:88.5としたこと以外は、作製例I-9と同様にして、第3の電池セルIII-9を得た。
【0177】
[作製例III-10]
正極機能助剤TiNb1029と第1の正極活物質LMOとの質量比を11.5:88.5としたこと以外は、作製例I-10と同様にして、第3の電池セルIII-10を得た。
【0178】
[作製例III-11]
作製例I-11と同様にして、第3の電池セルIII-11を得た。
【0179】
[作製例III-12]
正極活物質にLMOのみを用いたこと以外は作製例I-1と同様にして、第3の電池セルIII-12を得た。
【0180】
[作製例III-13]
作製例I-1と同様にして、第3の電池セルIII-13を得た。
【0181】
[作製例III-14]
正極機能助剤TiNbと第1の正極活物質NCMとの質量比を23.5:76.5としたこと以外は、作製例I-1と同様にして、第3の電池セルIII-14を得た。
【0182】
[作製例III-15]
正極機能助剤TiNbと第1の正極活物質LFPとの質量比を23.5:76.5としたこと以外は、作製例I-4と同様にして、第3の電池セルIII-15を得た。
【0183】
[作製例III-16]
正極機能助剤TiNbと第1の正極活物質LMOとの質量比を23.5:76.5としたこと以外は、作製例II-16と同様にして、第3の電池セルIII-16を得た。
【0184】
(二)電池パックの組み立て
[実施例1]
図2に示すように、電池パックの筐体の内部空間は、第1の領域R1と第2の領域R2と第3の領域R3とに区画されている。第1の領域R1には第1の電池セル61として第1の電池セルI-1が配置され、第2の領域R2には第2の電池セル62として第2の電池セルII-1が配置され、第3の領域R3には第3の電池セル63として第3の電池セルIII-1が配置されて、電池パックが組み立てられる。第1の電池セル61の数:第2の電池セル62の数:第3の電池セル63の数=12:32:40である。
【0185】
[実施例2]
第1の電池セルI-1の代わりに第1の電池セルI-2を用い、第2の電池セルII-1の代わりに第2の電池セルII-2を用い、第3の電池セルIII-1の代わりに第3の電池セルIII-2を用いた以外は、実施例1と同様にして電池パックを組み立てた。
【0186】
[実施例3]
第1の電池セルI-1の代わりに第1の電池セルI-3を用い、第2の電池セルII-1の代わりに第2の電池セルII-3を用い、第3の電池セルIII-1の代わりに第3の電池セルIII-3を用いた以外は、実施例1と同様にして電池パックを組み立てた。
【0187】
[実施例4]
第1の電池セルI-1の代わりに第1の電池セルI-4を用い、第2の電池セルII-1の代わりに第2の電池セルII-4を用い、第3の電池セルIII-1の代わりに第3の電池セルIII-4を用いた以外は、実施例1と同様にして電池パックを組み立てた。
【0188】
[実施例5]
第1の電池セルI-1の代わりに第1の電池セルI-5を用い、第2の電池セルII-1の代わりに第2の電池セルII-5を用い、第3の電池セルIII-1の代わりに第3の電池セルIII-5を用いた以外は、実施例1と同様にして電池パックを組み立てた。
【0189】
[実施例6]
第1の電池セルI-1の代わりに第1の電池セルI-6を用い、第2の電池セルII-1の代わりに第2の電池セルII-6を用い、第3の電池セルIII-1の代わりに第3の電池セルIII-6を用いた以外は、実施例1と同様にして電池パックを組み立てた。
【0190】
[実施例7]
第1の電池セルI-1の代わりに第1の電池セルI-7を用い、第2の電池セルII-1の代わりに第2の電池セルII-7を用い、第3の電池セルIII-1の代わりに第3の電池セルIII-7を用いた以外は、実施例1と同様にして電池パックを組み立てた。
【0191】
[実施例8]
第1の電池セルI-1の代わりに第1の電池セルI-8を用い、第2の電池セルII-1の代わりに第2の電池セルII-8を用い、第3の電池セルIII-1の代わりに第3の電池セルIII-8を用いた以外は、実施例1と同様にして電池パックを組み立てた。
【0192】
[実施例9]
第1の電池セルI-1の代わりに第1の電池セルI-9を用い、第2の電池セルII-1の代わりに第2の電池セルII-9を用い、第3の電池セルIII-1の代わりに第3の電池セルIII-9を用いた以外は、実施例1と同様にして電池パックを組み立てた。
【0193】
[実施例10]
第1の電池セルI-1の代わりに第1の電池セルI-10を用い、第2の電池セルII-1の代わりに第2の電池セルII-10を用い、第3の電池セルIII-1の代わりに第3の電池セルIII-10を用いた以外は、実施例1と同様にして電池パックを組み立てた。
【0194】
[実施例11]
第1の電池セルI-1の代わりに第1の電池セルI-11を用い、第2の電池セルII-1の代わりに第2の電池セルII-14を用いた以外は、実施例1と同様にして電池パックを組み立てた。
【0195】
[実施例12]
第1の電池セルI-1の代わりに第1の電池セルI-11を用い、第2の電池セルII-1の代わりに第2の電池セルII-14を用い、第3の電池セルIII-1の代わりに第3の電池セルIII-14を用いた以外は、実施例1と同様にして電池パックを組み立てた。
【0196】
[実施例13]
第1の電池セルI-1の代わりに第1の電池セルI-13を用い、第2の電池セルII-1の代わりに第2の電池セルII-15を用い、第3の電池セルIII-1の代わりに第3の電池セルIII-15を用いた以外は、実施例1と同様にして電池パックを組み立てた。
【0197】
[実施例14]
第1の電池セルI-1の代わりに第1の電池セルI-14を用い、第2の電池セルII-1の代わりに第2の電池セルII-16を用い、第3の電池セルIII-1の代わりに第3の電池セルIII-16を用いた以外は、実施例1と同様にして電池パックを組み立てた。
【0198】
[実施例15]
第1の電池セルI-1の代わりに第1の電池セルI-12を用い、第2の電池セルII-1の代わりに第2の電池セルII-17を用い、第3の電池セルIII-1の代わりに第3の電池セルIII-14を用いた以外は、実施例1と同様にして電池パックを組み立てた。
【0199】
[実施例16]
実施例1と同様にして電池パックを組み立てた。
【0200】
[実施例17]
実施例1と同様にして電池パックを組み立てた。
【0201】
[実施例18]
実施例1と同様にして電池パックを組み立てた。
【0202】
[実施例19]
実施例1と同様にして電池パックを組み立てた。
【0203】
[比較例1]
第1の電池セルI-1の代わりに第1の電池セルI-11を用い、第2の電池セルII-1の代わりに第2の電池セルII-11を用い、第3の電池セルIII-1の代わりに第3の電池セルIII-11を用いた以外は、実施例1と同様にして電池パックを組み立てた。
【0204】
[比較例2]
第1の電池セルI-1の代わりに第1の電池セルI-11を用い、第2の電池セルII-1の代わりに第2の電池セルII-12を用い、第3の電池セルIII-1の代わりに第3の電池セルIII-12を用いた以外は、実施例1と同様にして電池パックを組み立てた。
【0205】
[比較例3]
第2の電池セルII-1の代わりに第2の電池セルII-13を用い、第3の電池セルIII-1の代わりに第3の電池セルIII-13を用いた以外は、実施例1と同様にして電池パックを組み立てた。
【0206】
[比較例4]
第1の電池セルI-1の代わりに第1の電池セルI-12を用い、第3の電池セルIII-1の代わりに第3の電池セルIII-13を用いた以外は、実施例1と同様にして電池パックを組み立てた。
【0207】
なお、本願の実施例では、電池パックの筐体の内部空間は、第1の領域、第2の領域及び第3の領域に区画されているが、本願の電池パックは、電池パックの筐体の内部空間を3つの領域に区画する場合に限定されず、第1の領域、第2の領域及び第3の領域に加えて、第3の領域の外側に1つ又は複数の領域を有してもよく、外側の領域に配置された電池セルは、その内側の領域に配置された電池セルの周囲を囲んで配置されていればよい。
【0208】
電池パックの筐体の内部空間が上記のような3つ以上の領域を含む場合、外側の領域ほど、電池セルの第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合が高い(すなわち、電池セルの正極活物質における正極機能助剤の質量割合が高い)ことを満たせばよい。
【0209】
また、電池パックの筐体の内部空間が矩形状である場合には、当該矩形状の四隅を最も外側の領域として、当該領域において、電池セルの第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合が最も高い(すなわち、電池セルの正極活物質における正極機能助剤の質量割合が最も高い)ようにしてもよい。
【0210】
(三)相関試験
1.電池セルの第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量と第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量の測定
【0211】
実施例1-19及び比較例1-4の各電池パックにおける第1の電池セル、第2の電池セル及び第3の電池セルについて、それぞれNEWAREパワー電池試験機(型番BTS-5V300A-4CH)を用いて25℃における第1の電池セル、第2の電池セル及び第3の電池セルのそれぞれの第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量及び第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量を測定した。さらに第1の電池セル、第2の電池セル及び第3の電池セルのそれぞれの第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量の割合を算出した。
【0212】
電池セルの放電容量の測定方法は、以下の通りである。
(1)電池セルを25℃で2h静置し、電池セルの温度を25℃に確保する。
(2)電池セルを25℃で0.33Cにより、下記の表1に示す充電カットオフ電圧まで充電した後、この充電カットオフ電圧で電流が0.05Cになるまで定電圧充電を継続し、その後、充電カットオフとした(ただし、Cはセル定格容量を示す)。
(3)電池セルを25℃で1h静置した。
(4)電池セルを25℃で0.33Cにより、下記の表1に示す放電カットオフ電圧まで放電し、電池セルが放電した総放電容量C0を記録した。
(5)ステップ(4)における放電曲線を取得し、例えば、本願の図3における放電曲線のようになった。図3の放電曲線において、B点前の放電容量の合計が第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量C1であり、B点から放電カットオフ電圧までの放電容量が第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量C2である。
【0213】
したがって、電池セルの第1の放電電圧プラトーに対応する放電容量の割合=C1/C0であり、電池セルの第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量の割合=C2/C0である。
【0214】
【表1】
【0215】
2.電池パックの-20℃における総エネルギー保持率の測定
実施例1-19及び比較例1-4の各電池パックについて、それぞれNEWAREパワー電池試験機(型番BTS-5V300A-4CH)を用いて電池パックの25℃における総完全放電エネルギー及び電池パックの-20℃における総完全放電エネルギーを測定し、電池パックの-20℃における総完全放電エネルギーを電池パックの25℃における総完全放電エネルギーで除して、電池パックの-20℃における総エネルギー保持率(%)を算出した。
【0216】
電池パックの25℃における総完全放電エネルギーの測定は、「GBT 31467.2-2015電池パック及びシステム高エネルギー応用試験プロトコル」における「7.1.2 室温での容量及びエネルギー試験」に従って行った。
【0217】
電池パックの-20℃における総完全放電エネルギーの測定は、「GBT 31467.2-2015電池パック及びシステム高エネルギー応用試験プロトコル」における「7.1.4 低温での容量及びエネルギー試験」に従って行った。実施例1-19及び比較例1-4の各電池パックの組成及び試験結果を下記の表2-表4に示す。
【0218】
【表2】
【0219】
上記表2の結果から分かるように、実施例1-10において、第1の電池セル、第2の電池セル及び第3の電池セルはいずれも第1の放電電圧プラトー及び第2の放電電圧プラトーを有し、且つ、第3の電池セルの第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合>第2の電池セルの第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合>第1の電池セルの第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合であり、電池パックの-20℃における総エネルギー保持率が65.0%-76.7%に達する。
【0220】
比較例1及び比較例2において、第1の電池セル、第2の電池セル及び第3の電池セルはいずれも1つの放電電圧プラトーのみを有し、電池パックの-20℃における総エネルギー保持率は60.5%及び56.7%のみであった。
【0221】
比較例3において、第1の電池セル、第2の電池セル及び第3の電池セルはいずれも第1の放電電圧プラトー及び第2の放電電圧プラトーを有するが、第1の電池セル、第2の電池セル及び第3の電池セルにおける第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量の割合は同じであり、電池パックの-20℃における総エネルギー保持率は62.9%のみである。
【0222】
比較例4において、第1の電池セル、第2の電池セル及び第3の電池セルはいずれも第1の放電電圧プラトー及び第2の放電電圧プラトーを有するが、第3の電池セルの第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合<第2の電池セルの第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合<第1の電池セルの第2の放電電圧プラトーの放電容量割合であり、電池パックの-20℃における総エネルギー保持率は60.7%のみである。
【0223】
【表3】
【0224】
上記表3の結果から分かるように、実施例1、11-14において、第2の電池セル及び第3の電池セルはいずれも第1の放電電圧プラトー及び第2の放電電圧プラトーを有し、第3の電池セルの第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合>第2の電池セルの第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合>第1の電池セルの第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合であり、且つ、第1の電池セル、第2の電池セル及び第3の電池セルのそれぞれにおける正極機能助剤の質量割合及び第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合が本願に記載の好ましい範囲内にあり、電池パックの-20℃における総エネルギー保持率が64.1%-70.0%に達する。
【0225】
実施例15において、第1の電池セル及び第2の電池セルのそれぞれにおける正極機能助剤の質量割合及び/又は第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合は、本願に記載の好ましい範囲外であり、電池パックの-20℃における総エネルギー保持率は59.3%である。
【0226】
【表4】
【0227】
上記表4の結果から分かるように、実施例1において、第1の電池セル、第2の電池セル及び第3の電池セルはいずれも第1の放電電圧プラトー及び第2の放電電圧プラトーを有し、第3の電池セルの第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合>第2の電池セルの第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合>第1の電池セルの第2の放電電圧プラトーに対応する放電容量割合であり、且つ、-20℃における第1の電池セル、第2の電池セル及び第3の電池セルの放電カットオフ電圧がいずれも本願に記載の好ましい範囲内にあり、電池パックの-20℃における総エネルギー保持率が70%に達する。
【0228】
実施例16において、-20℃での第2の電池セルと第3の電池セルの放電カットオフ電圧が高すぎ、電池パックの-20℃における総エネルギー保持率が55%であり、カットオフ電圧が-20℃における総エネルギー保持率に大きく影響することを示した。
【0229】
実施例17において、第1の電池セルと第2の電池セルの放電カットオフ電圧が低すぎて、電池パックの-20℃における総エネルギー保持率が71%である。カットオフ電圧が低すぎると、-20℃における総エネルギー保持率を向上させることができるが、過放電に相当して、電池セルの性能劣化を引き起こしてガスが発生し、電池セルの寿命に影響を与える。
【0230】
実施例18において、-20℃での第2の電池セルの放電カットオフ電圧が高すぎ、且つ第1の電池セルの放電カットオフ電圧より大きくなり、電池パックの-20℃における総エネルギー保持率が62%である。
【0231】
実施例19において、-20℃での第1の電池セルの放電カットオフ電圧が低すぎ、第3の電池セルの放電カットオフ電圧が高すぎ、且つ第3の電池セルの放電カットオフ電圧>第2の電池セルの放電カットオフ電圧>第1の電池セルの放電カットオフ電圧であり、電池パックの-20℃における総エネルギー保持率は58%である。
【0232】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の技術的範囲において技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、何れも本発明の技術的範囲に含まれる。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者が思いつく各種変形を実施の形態に施したものや、実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0233】
1:電池パック
2:上筐体
3:下筐体
g1,g2:隙間
BL1:第1の境界線
BL2:第2の境界線
BL3:第3の境界線
R1:第1の領域
R2:第2の領域
R3:第3の領域
61:第1の電池セル
62:第2の電池セル
63:第3の電池セル
図1
図2
図3
図4