(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】表示装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 50/115 20230101AFI20250214BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20250214BHJP
H10K 71/13 20230101ALI20250214BHJP
H10K 71/20 20230101ALI20250214BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20250214BHJP
G09F 9/302 20060101ALI20250214BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
H10K50/115
H05B33/14 Z
H10K71/13
H10K71/20
G09F9/30 349Z
G09F9/30 338
G09F9/302 C
G09F9/00 338
(21)【出願番号】P 2024500806
(86)(22)【出願日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2022006360
(87)【国際公開番号】W WO2023157170
(87)【国際公開日】2023-08-24
【審査請求日】2024-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榊原 裕介
(72)【発明者】
【氏名】上田 吉裕
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0043862(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0259110(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0135874(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0335715(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0020858(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0135139(US,A1)
【文献】特開2020-180278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/14
H10K 50/00 - 50/88
H10K 59/00 - 59/95
H10K 71/00 - 71/80
JSTPlus/JST7580 (JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のサブ画素を備え、
上記複数のサブ画素は、それぞれ、第1電極と、第2電極と、上記第1電極と上記第2電極との間に設けられた、少なくとも発光層を含む機能層と、を備え、
上記複数のサブ画素のうち、少なくとも1つのサブ画素の上記発光層は、
量子ドットと、有機リガンドおよび無機リガンドのうち少なくとも上記無機リガンドと、を含む第1領域と、
上記量子ドットと、上記有機リガンドおよび上記無機リガンドのうち少なくとも上記有機リガンドと、を含み、単位体積当たりに含まれる上記無機リガンドの数が、上記第1領域の上記単位体積当たりに含まれる上記無機リガンドの数よりも少ない第2領域と、を含み、
上記第1領域は、上記少なくとも1つのサブ画素の上記発光層の中央部を含み、
上記第2領域は、上記少なくとも1つのサブ画素の上記発光層における、該少なくとも1つのサブ画素にそれぞれ隣り合う他のサブ画素と隣り合う端部のうち少なくとも1つの端部を含むことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
上記複数のサブ画素は、発光色が異なるサブ画素を含み、
上記第2領域は、上記少なくとも1つのサブ画素の上記発光層における、上記他のサブ画素と隣り合う端部のうち、該少なくとも1つのサブ画素とは発光色が異なるサブ画素と隣り合う端部のみを含むことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
上記複数のサブ画素は、発光色が異なるサブ画素を含み、
上記第2領域は、上記少なくとも1つのサブ画素の上記発光層における、上記他のサブ画素と隣り合う端部のうち、該少なくとも1つのサブ画素の発光ピーク波長よりも短波長の発光ピーク波長を有する光を発するサブ画素と隣り合う端部のみを含むことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
上記複数のサブ画素は、発光色が同じサブ画素を複数含み、
上記第2領域は、上記少なくとも1つのサブ画素の上記発光層における、上記他のサブ画素と隣り合う端部のうち、該少なくとも1つのサブ画素と発光色が同じサブ画素と隣り合う端部を含むことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
上記第2領域は、上記少なくとも1つのサブ画素の上記発光層における、上記他のサブ画素と隣り合う全ての端部を含み、上記第1領域を取り囲んで形成されていることを特徴とする請求項1または4に記載の表示装置。
【請求項6】
上記少なくとも1つのサブ画素の上記発光層における上記第2領域に隣り合う上記他のサブ画素の端部から、該少なくとも1つのサブ画素における、上記第1領域の端部までの最短距離が、2.0μm以上、8.5μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
上記少なくとも1つのサブ画素の上記発光層における上記第2領域に隣り合う、上記発光色が異なるサブ画素の端部から、該少なくとも1つのサブ画素における、上記第1領域の端部までの最短距離が、上記少なくとも1つのサブ画素の上記発光層と上記発光色が異なるサブ画素の上記発光層とのバンドギャップの差が大きいほど大きいことを特徴とする請求項2または3に記載の表示装置。
【請求項8】
上記複数のサブ画素は、赤色光を発する赤色サブ画素と、緑色光を発する緑色サブ画素と、青色光を発する青色サブ画素と、を含み、
上記赤色サブ画素の上記発光層における上記第2領域に隣り合う、上記青色サブ画素の端部から、該赤色サブ画素における上記第1領域の端部までの最短距離をD
RBとし、
上記赤色サブ画素の上記発光層における上記第2領域に隣り合う、上記緑色サブ画素の端部から、該赤色サブ画素における上記第1領域の端部までの最短距離をD
RGとし、
上記緑色サブ画素の上記発光層における上記第2領域に隣り合う、上記青色サブ画素の端部から、該緑色サブ画素における上記第1領域の端部までの最短距離をD
GBとすると、
D
RG<D
GB<D
RB、かつ、2.3μm≦D
RG≦7.2μm、2.4μm≦D
GB≦7.7μm、2.7μm≦D
RB≦8.5μmであることを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項9】
上記無機リガンドがハロゲン原子のイオンであることを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項10】
上記無機リガンドがフッ化物イオンであることを特徴とする請求項1~9の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項11】
上記第2領域における、上記有機リガンドと上記無機リガンドとの合計数に占める上記無機リガンドの割合が0%以上、41%以下であることを特徴とする請求項1~10の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項12】
上記第2領域における、上記有機リガンドと上記無機リガンドとの合計数に占める上記無機リガンドの割合が0%以上、8.2%以下であることを特徴とする請求項1~11の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項13】
上記第1領域における、上記有機リガンドと上記無機リガンドとの合計数に占める上記無機リガンドの割合が8.2%以上、100%以下であることを特徴とする請求項1~12の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項14】
上記第1領域は、上記有機リガンドを含み、
上記第1領域における、上記有機リガンドと上記無機リガンドとの合計数に占める上記無機リガンドの割合が8.2%以上、82%以下であることを特徴とする請求項1~13の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項15】
上記第1領域は、上記有機リガンドを含み、
上記第1領域における、上記有機リガンドと上記無機リガンドとの合計数に占める上記無機リガンドの割合が41%以上、82%以下であることを特徴とする請求項1~13の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項16】
上記第1領域が、上記有機リガンドおよび上記無機リガンドのうち上記無機リガンドのみを含むことを特徴とする請求項1~12の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項17】
上記少なくとも1つのサブ画素の上記発光層における上記第2領域以外の領域が、上記第1領域であることを特徴とする請求項1~16の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項18】
上記少なくとも1つのサブ画素の上記発光層は、
上記量子ドットと、上記有機リガンドと、上記無機リガンドと、を含み、単位体積当たりに含まれる上記無機リガンドの数が、上記第1領域の上記単位体積当たりに含まれる上記無機リガンドの数よりも少なく、上記第2領域の上記単位体積当たりに含まれる上記無機リガンドの数よりも多い第3領域をさらに含み、
上記第3領域は、上記第1領域と上記第2領域との間に設けられていることを特徴とする請求項1~16の何れか1項に記載の表示装置。
【請求項19】
上記第3領域における、上記有機リガンドと上記無機リガンドとの合計数に占める上記無機リガンドの割合が41%以上、62%以下であることを特徴とする請求項18に記載の表示装置。
【請求項20】
複数のサブ画素を備え、上記複数のサブ画素が、それぞれ、第1電極と、第2電極と、上記第1電極と上記第2電極との間に設けられた、少なくとも発光層を含む機能層と、を備えた表示装置の製造方法であって、
上記第1電極を形成する第1電極形成工程と、
上記機能層を形成する機能層形成工程と、
上記第2電極を形成する第2電極形成工程と、を含み、
上記機能層形成工程は、上記発光層を形成する発光層形成工程を含み、
上記発光層形成工程では、
上記複数のサブ画素のうち、少なくとも1つのサブ画素に、上記発光層として、
量子ドットと、有機リガンドおよび無機リガンドのうち少なくとも上記無機リガンドと、を含む第1領域と、
上記量子ドットと、上記有機リガンドおよび上記無機リガンドのうち少なくとも上記有機リガンドと、を含み、単位体積当たりに含まれる上記無機リガンドの数が、上記第1領域の上記単位体積当たりに含まれる上記無機リガンドの数よりも少ない第2領域と、を含み、
上記第1領域は、上記少なくとも1つのサブ画素の上記発光層の中央部を含み、
上記第2領域は、上記少なくとも1つのサブ画素の上記発光層における、該少なくとも1つのサブ画素にそれぞれ隣り合う他のサブ画素と隣り合う端部のうち少なくとも1つの端部を少なくとも含む発光層を形成することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項21】
上記発光層形成工程では、上記少なくとも1つのサブ画素の上記発光層における、上記第1領域となる、上記少なくとも1つのサブ画素の上記発光層の中央部を含む領域に、上記無機リガンドを供給することを特徴とする請求項20に記載の表示装置の製造方法。
【請求項22】
上記第2領域となる領域を金属マスクで被覆して上記無機リガンドの供給を行うことを特徴とする請求項21に記載の表示装置の製造方法。
【請求項23】
インクジェット法により上記無機リガンドの供給を行うことを特徴とする請求項21に記載の表示装置の製造方法。
【請求項24】
上記発光層形成工程では、上記複数のサブ画素のうち少なくとも2つのサブ画素の上記発光層における、上記第1領域となる、上記少なくとも2つのサブ画素の上記発光層の中央部を含む領域への上記無機リガンドの供給を並行して行うことを特徴とする請求項21~23の何れか1項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項25】
上記表示装置における上記複数のサブ画素は、上記発光層として第1発光層を有する第1サブ画素と、上記発光層として第2発光層を有する第2サブ画素と、上記発光層として第3発光層を有する第3サブ画素と、を含み、
上記第1発光層は、上記量子ドットとして第1量子ドットを含み、上記有機リガンドとして第1有機リガンドを含み、上記無機リガンドとして第1無機リガンドを含み、
上記第2発光層は、上記量子ドットとして第2量子ドットを含み、上記有機リガンドとして第2有機リガンドを含み、上記無機リガンドとして第2無機リガンドを含み、
上記第3発光層は、上記量子ドットとして第3量子ドットを含み、上記有機リガンドとして第3有機リガンドを含み、上記無機リガンドとして第3無機リガンドを含み、
上記発光層形成工程は、
上記第1サブ画素に上記第1発光層を形成する第1発光層形成工程と、
上記第2サブ画素に上記第2発光層を形成する第2発光層形成工程と、
上記第3サブ画素に上記第3発光層を形成する第3発光層形成工程と、を含み、
上記第1発光層形成工程は、
上記複数のサブ画素全体を覆う第1レジストを塗布して第1レジスト層を形成する第1レジスト層形成工程と、
上記第1レジスト層を露光および現像して、上記第1発光層の形成予定領域の上記第1レジスト層を除去する第1レジスト層パターニング工程と、
上記第1レジスト層パターニング工程後に、上記第1量子ドットと、上記第1有機リガンドおよび上記第1無機リガンドのうち少なくとも上記第1有機リガンドと、を含む第1量子ドット含有層を、上記複数のサブ画素全体を覆って形成する第1量子ドット含有層形成工程と、
上記第1レジスト層上の上記第1量子ドット含有層をリフトオフすることで、上記第1発光層の形成予定領域以外の上記第1量子ドット含有層を除去する第1量子ドット含有層パターニング工程と、
上記第1量子ドット含有層パターニング工程後に、上記複数のサブ画素全体を覆う第2レジストを塗布して第2レジスト層を形成する第2レジスト層形成工程と、
上記第2レジスト層を露光および現像して、上記第1発光層における上記第1領域となる、上記第1量子ドット含有層の中央部を含む領域を露出させる第1開口部を、該第2レジスト層に形成する第2レジスト層第1パターニング工程と、
上記第1量子ドット含有層における、上記第1開口部から露出している領域に、上記第1無機リガンドを供給する第1無機リガンド供給工程と、を含み、
上記第2発光層形成工程は、
上記第1無機リガンド供給工程後に、上記第1開口部内に上記第2レジストを再度塗布して上記第1開口部を上記第2レジストで埋め戻す第2レジスト再塗布工程と、
上記第2レジスト再塗布工程後に、上記第2レジスト層を露光および現像して、上記サブ画素における第2発光層の形成予定領域の上記第2レジスト層を除去する第2レジスト層第2パターニング工程と、
上記第2レジスト層第2パターニング工程後に、上記第2量子ドットと、上記第2有機リガンドおよび上記第2無機リガンドのうち少なくとも上記第2有機リガンドと、を含む第2量子ドット含有層を、上記複数のサブ画素全体を覆って形成する第2量子ドット含有層形成工程と、
上記第2レジスト層上の上記第2量子ドット含有層をリフトオフすることで、上記第2発光層の形成予定領域以外の上記第2量子ドット含有層を除去する第2量子ドット含有層パターニング工程と、を含むことを特徴とする請求項20または21に記載の表示装置の製造方法。
【請求項26】
上記第2発光層形成工程は、
上記第2量子ドット層パターニング工程後に、上記複数のサブ画素全体を覆う第3レジストを塗布して第3レジスト層を形成する第3レジスト層形成工程と、
上記第3レジスト層を露光および現像して、上記第2発光層における上記第1領域となる、上記第2量子ドット含有層の中央部を含む領域を露出させる第2開口部を形成する第3レジスト層第1パターニング工程と、
上記第2量子ドット含有層における、上記第2開口部から露出している領域に、上記第2無機リガンドを供給する第2無機リガンド供給工程と、をさらに含むことを特徴とする請求項25に記載の表示装置の製造方法。
【請求項27】
上記第3発光層形成工程は、
上記第2無機リガンド供給工程後に、上記第2開口部内に上記第3レジストを再度塗布して上記第2開口部を上記第3レジストで埋め戻す第3レジスト再塗布工程と、
上記第3レジスト再塗布工程後に、上記第3レジスト層を露光および現像して、上記サブ画素における第3発光層の形成予定領域の上記第3レジスト層を除去する第3レジスト層第2パターニング工程と、
上記第3レジスト層第2パターニング工程後に、上記第3量子ドットと、上記第3有機リガンドおよび上記第3無機リガンドのうち少なくとも上記第3有機リガンドと、を含む第3量子ドット含有層を、上記複数のサブ画素全体を覆って形成する第3量子ドット含有層形成工程と、
上記第3レジスト層上の上記第3量子ドット含有層をリフトオフすることで、上記第3発光層の形成予定領域以外の上記第3量子ドット含有層を除去する第3量子ドット含有層パターニング工程と、
上記第3量子ドット含有層パターニング工程後に、上記複数のサブ画素全体を覆う第4レジストを塗布して第4レジスト層を形成する第4レジスト層形成工程と、
上記第4レジスト層を露光および現像して、上記第3発光層における上記第1領域となる、上記第3量子ドット含有層の中央部を含む領域を露出させる第3開口部を形成する第4レジスト層第1パターニング工程と、
上記第3量子ドット含有層における、上記第3開口部から露出している領域に、上記第3無機リガンドを供給する第3無機リガンド供給工程と、
上記第4レジスト層を除去する第4レジスト層除去工程と、を含むことを特徴とする請求項26に記載の表示装置の製造方法。
【請求項28】
上記第3発光層形成工程は、
上記第2無機リガンド供給工程後に、上記第2開口部内に上記第3レジストを再度塗布して上記第2開口部を上記第3レジストで埋め戻す第3レジスト再塗布工程と、
上記第3レジスト再塗布工程後に、上記第3レジスト層を露光および現像して、上記サブ画素における第3発光層の形成予定領域の上記第3レジスト層を除去する第3レジスト層第2パターニング工程と、
上記第3レジスト層第2パターニング工程後に、上記第3量子ドットと、上記第3有機リガンドおよび上記第3無機リガンドのうち少なくとも上記第3有機リガンドと、を含む第3量子ドット含有層を、上記複数のサブ画素全体を覆って形成する第3量子ドット含有層形成工程と、
上記第3量子ドット含有層形成工程後に、上記複数のサブ画素全体を覆う第4レジストを塗布して第4レジスト層を形成する第4レジスト層形成工程と、
上記第4レジスト層を露光および現像して、上記第3発光層における上記第1領域となる、上記第3量子ドット含有層の中央部を含む領域を露出させる第3開口部を形成する第4レジスト層パターニング工程と、
上記第3量子ドット含有層における、上記第3開口部から露出している領域に、上記第3無機リガンドを供給する第3無機リガンド供給工程と、
上記第4レジスト層を除去するとともに上記第3レジスト層上の上記第3量子ドット含有層をリフトオフして上記第3発光層形成予定領域以外の上記第3量子ドット含有層を除去する第3量子ドット含有層パターニング工程と、を含むことを特徴とする請求項26に記載の表示装置の製造方法。
【請求項29】
上記発光層形成工程は、
上記量子ドットと、上記有機リガンドと、上記無機リガンドと、溶媒とを含む第1量子ドット分散液を調液する工程と、
上記量子ドットと、上記有機リガンドおよび上記無機リガンドのうち少なくとも上記有機リガンドと、溶媒と、を含み、単位体積当たりに含まれる上記無機リガンドの数が、上記第1量子ドット分散液の上記単位体積当たりに含まれる上記無機リガンドの数よりも少ない第2量子ドット分散液を調液する工程と、
上記第1量子ドット分散液を、上記第1領域となる、上記少なくとも1つのサブ画素の上記発光層の中央部を含む領域に塗布する工程と、
塗布された上記第1量子ドット分散液から、該第1量子ドット分散液に含まれる上記溶媒を除去する工程と、
上記第2量子ドット分散液を、上記第2領域となる、上記少なくとも1つのサブ画素の上記発光層における、該少なくとも1つのサブ画素にそれぞれ隣り合う他のサブ画素と隣り合う端部のうち少なくとも1つの端部を少なくとも含む領域に塗布する工程と、
塗布された上記第2量子ドット分散液から、該第2量子ドット分散液に含まれる上記溶媒を除去する工程と、を含むことを特徴とする請求項20に記載の表示装置の製造方法。
【請求項30】
上記第1量子ドット分散液の塗布および上記第2量子ドット分散液の塗布が、それぞれインクジェット法により行われることを特徴とする請求項29に記載の表示装置の製造方法。
【請求項31】
上記発光層形成工程では、
上記複数のサブ画素のうち、少なくとも1つのサブ画素に、上記発光層として、
上記第1領域と上記第2領域との間に、
上記量子ドットと、上記有機リガンドと、上記無機リガンドと、を含み、単位体積当たりに含まれる上記無機リガンドの数が、上記第1領域の上記単位体積当たりに含まれる上記無機リガンドの数よりも少なく、上記第2領域の上記単位体積当たりに含まれる上記無機リガンドの数よりも多い第3領域をさらに含む発光層を形成することを特徴とする請求項20に記載の表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
量子ドットの表面には、該量子ドットの保護並びに溶媒への分散性の向上等を目的として、一般的に、リガンドが設けられている。上記リガンドとしては、一般的に有機リガンドが用いられている。一方で、近年、有機リガンドに代わるリガンドとして、無機リガンドが注目されている。
【0003】
無機リガンドは、有機リガンドに比べて安定性が高く、また、電流注入性に優れている。例えば、特許文献1には、ナノ構造と、無機リガンドとして、特定のフッ化物含有リガンドまたはフッ化物アニオンと、を含む、安定なナノ構造組成物が開示されている。特許文献1には、上記ナノ構造の一種として量子ドットが例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フッ化物を含むハロゲンリガンド等の無機リガンドを含む量子ドットは、僅かなリーク電流でも発光してしまう。このため、このような量子ドットで形成された発光層を備えた表示装置は、一つのサブ画素が発光しているとき、該サブ画素からのリーク電流によって、該サブ画素に隣り合うサブ画素が発光することで、混色したり、不鮮明な画像が形成されたりする等の、光学的なクロストークが発生する。このようなクロストークは、表示装置の表示品位低下の原因となる。
【0006】
本開示の一態様は、上記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、無機リガンドによる発光効率、安定性および電流注入性の向上と、隣り合うサブ画素からのリーク電流による発光の抑制と、を両立することができる表示装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に依れば、表示装置は、複数のサブ画素を備え、上記複数のサブ画素は、それぞれ、第1電極と、第2電極と、上記第1電極と上記第2電極との間に設けられた、少なくとも発光層を含む機能層と、を備え、上記複数のサブ画素のうち、少なくとも1つのサブ画素の上記発光層は、量子ドットと、有機リガンドおよび無機リガンドのうち少なくとも上記無機リガンドと、を含む第1領域と、上記量子ドットと、上記有機リガンドおよび上記無機リガンドのうち少なくとも上記有機リガンドと、を含み、単位体積当たりに含まれる上記無機リガンドの数が、上記第1領域の上記単位体積当たりに含まれる上記無機リガンドの数よりも少ない第2領域と、を含み、上記第1領域は、上記少なくとも1つのサブ画素の上記発光層の中央部を含み、上記第2領域は、上記少なくとも1つのサブ画素の上記発光層における、該少なくとも1つのサブ画素にそれぞれ隣り合う他のサブ画素と隣り合う端部のうち少なくとも1つの端部を含む。
【0008】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に依れば、表示装置の製造方法は、複数のサブ画素を備え、上記複数のサブ画素が、それぞれ、第1電極と、第2電極と、上記第1電極と上記第2電極との間に設けられた、少なくとも発光層を含む機能層と、を備えた表示装置の製造方法であって、上記第1電極を形成する第1電極形成工程と、上記機能層を形成する機能層形成工程と、上記第2電極を形成する第2電極形成工程と、を含み、上記機能層形成工程は、上記発光層を形成する発光層形成工程を含み、上記発光層形成工程では、上記複数のサブ画素のうち、少なくとも1つのサブ画素に、上記発光層として、量子ドットと、有機リガンドおよび無機リガンドのうち少なくとも上記無機リガンドと、を含む第1領域と、上記量子ドットと、上記有機リガンドおよび上記無機リガンドのうち少なくとも上記有機リガンドと、を含み、単位体積当たりに含まれる上記無機リガンドの数が、上記第1領域の上記単位体積当たりに含まれる上記無機リガンドの数よりも少ない第2領域と、を含み、上記第1領域は、上記少なくとも1つのサブ画素の上記発光層の中央部を含み、上記第2領域は、上記少なくとも1つのサブ画素の上記発光層における、該少なくとも1つのサブ画素にそれぞれ隣り合う他のサブ画素と隣り合う端部のうち少なくとも1つの端部を少なくとも含む発光層を形成する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、無機リガンドによる発光効率の向上と、隣り合うサブ画素からのリーク電流による発光の抑制と、を両立することができる表示装置およびその製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1に係る表示装置の要部の概略構成の一例を示す平面図である。
【
図2】実施形態1に係る表示装置の画素領域におけるサブ画素の概略構成の一例を示す平面図である。
【
図3】実施形態1に係る表示装置の要部の概略構成の一例を示す断面図である。
【
図4】実施形態1に係る表示装置の一例に係る各色の発光層の一部を拡大して模式的に示す断面図である。
【
図5】比較用の表示装置の第1サブ画素と第2サブ画素との間のリーク電流を説明する断面図である。
【
図6】
図5に示す比較用の表示装置の第1サブ画素と第2サブ画素との間のリーク電流を説明する回路図である。
【
図7】実施形態1に係る表示装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図7に示す機能層形成工程の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図8に示す発光層形成工程の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図9に示す第1発光層形成工程の一部の一例を示す断面図である。
【
図11】
図9に示す第1発光層形成工程における
図10の後の工程を、一部拡大して模式的に示す断面図である。
【
図12】
図9に示す第2発光層形成工程の一部の一例を示す断面図である。
【
図13】
図9に示す第2発光層形成工程における
図12の後の工程を、一部拡大して模式的に示す断面図である。
【
図14】
図9に示す第3発光層形成工程の一部の一例を示す断面図である。
【
図15】
図9に示す第3発光層形成工程における
図14の後の工程を、一部拡大して模式的に示す断面図である。
【
図16】実施形態1の変形例に係る第3発光層形成工程の一部の他の一例を示す断面図である。
【
図17】実施形態2に係る発光層形成工程の一部の工程の一例を示す断面図である。
【
図18】実施形態2に係る発光層形成工程における
図17の後の工程を示す断面図である。
【
図19】実施形態2に係る発光層形成工程における
図18の後の工程を、一部拡大して模式的に示す断面図である。
【
図20】実施形態2の変形例2に係る発光層形成工程の一部の工程を、一部拡大して模式的に示す断面図である。
【
図21】実施形態2の変形例3に係る発光層形成工程の一部の工程を、一部拡大して模式的に示す断面図である。
【
図22】実施形態2の変形例4に係る発光層形成工程の一例を示すフローチャートである。
【
図23】実施形態3に係る表示装置の画素領域におけるサブ画素の概略構成の一例を示す平面図である。
【
図24】実施形態4に係る表示装置の画素領域におけるサブ画素の概略構成の一例を示す平面図である。
【
図25】実施形態5に係る表示装置の画素領域におけるサブ画素の概略構成の一例を示す平面図である。
【
図26】実施形態6に係る表示装置の画素領域におけるサブ画素の概略構成の一例を示す平面図である。
【
図27】自サブ画素内における、サブ画素端からの距離と、自サブ画素に隣り合うサブ画素の駆動による自サブ画素の電圧上昇量と、自サブ画素の発光閾値電圧上昇量との関係を示すグラフである。
【
図28】実施形態7に係る表示装置の要部の概略構成の一例を示す断面図である。
【
図29】実施形態8に係る発光層形成工程の一部の工程の一例を示す断面図である。
【
図30】実施形態8に係る発光層形成工程の一部の工程の他の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の各実施形態では、先に説明した部材と同じ機能を有する部材については同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。また、実施形態2以降の実施形態では、先に説明した実施形態との相異点について説明する。なお、特に説明がない場合でも、実施形態2以降の実施形態において、先に説明した実施形態と同様の変形が可能であることは、言うまでもない。また、以下、2つの数AおよびBについての「A~B」という記載は、特に明示されない限り、「A以上かつB以下」を意味するものとする。
【0012】
〔実施形態1〕
図1は、本実施形態に係る表示装置1の要部の概略構成の一例を示す平面図である。
【0013】
図1に示すように、表示装置1は、複数のサブ画素SPを有する画素Pが複数設けられた画素領域DAと、該画素領域DAを取り囲むように該画素領域DAの周囲に設けられた額縁領域NDAと、を備えている。
【0014】
額縁領域NDAには、各サブ画素SPを駆動するための信号が入力される端子部TSが設けられている。なお、端子部TSには、例えば、IC(集積回路)チップ、FPC(フレキシブル印刷回路基板)等の、図示しない電子回路基板が設けられていてよい。
【0015】
画素領域DAには、一例として、複数のゲート配線GH、複数の発光制御線EM、および複数の初期化電位線ILを含む複数の配線が、行方向に伸びるように延設されている。また、表示部DAには、一例として、複数の電源線PLおよび複数のソース配線SHを含む複数の配線が、列方向に伸びるように延設されている。サブ画素SPは、これらゲート配線GHとソース配線SHとの交差部にそれぞれ対応するように、例えばマトリクス状に複数設けられている。
【0016】
図2は、
図1に示す表示装置1の画素領域DAにおけるサブ画素SPの概略構成の一例を示す平面図である。なお、
図2では、図示の便宜上、サブ画素SPの数を省略して示している。
【0017】
図1および
図2に示すように、表示装置1は、サブ画素SPとして、発光色が異なるサブ画素SPを含んでいる。具体的には、表示装置1は、サブ画素SPとして、例えば、赤色のサブ画素RSP(赤色サブ画素)と、緑色のサブ画素GSP(緑色サブ画素)と、青色のサブ画素BSP(青色サブ画素)とを有している。
【0018】
サブ画素RSPは赤色(R)発光し、サブ画素GSPは緑色(G)発光し、サブ画素BSPは青色(B)発光する。本実施形態では、これらサブ画素RSP、サブ画素GSP、サブ画素BSPを特に区別する必要がない場合、これらを総称して単に「サブ画素SP」と称する。
【0019】
また、画素領域DAに設けられた複数のサブ画素SPは、発光色が同じサブ画素SPを複数含んでいてもよい。以下では、
図1および
図2に示すように、表示装置1が、RGBの3つの異なる色を呈する3つの各色のサブ画素SPで構成された画素Pを複数備え、これら複数の画素Pが、画素領域DAにマトリクス状に設けられている場合を例に挙げて説明する。また、以下では、
図1および
図2に示すように、RGBの各色のサブ画素SPが、ゲート配線GHの延伸方向に、この順に繰り返し並べて配列されるとともに、ソース配線SHの延伸方向に沿って、色毎に複数並べて配列されている場合を例に挙げて説明する。但し、上記例示は一例であり、表示装置1は、RGB以外のサブ画素SPを備えていてもよい。また、サブ画素SPの配列も上記配列に限定されない。また、以下では、サブ画素SPが何れも矩形状に形成されている場合を例に挙げて説明する。しかしながら、上記形状は一例であって、サブ画素SPの形状(外形)は、上記形状に限定されるものではない。
【0020】
図3は、本実施形態に係る表示装置1の要部の概略構成の一例を示す断面図である。なお、
図3は、
図2に示すA-A’線断面に相当する。
【0021】
図1に示すように、表示装置1は、基板2と、発光素子層3とを、下層側からこの順に備えている。なお、発光素子層3の上層には、発光素子層3への、水分、酸素、製造工程中に発生するダスト等の余分な有機物、等の異物の侵入を防止するために、発光素子層3を覆う、図示しない封止層が設けられていてもよい。また、封止層の上層には、必要に応じて、例えば、光学補償機能、タッチセンサ機能、および保護機能のうち少なくとも1つの機能を有する機能フィルム、タッチパネル、偏光板等を備えていてもよい。
【0022】
なお、「下層」とは、比較対象の層よりも先のプロセスで形成されていることを意味し、「上層」とは比較対象の層よりも後のプロセスで形成されていることを意味する。
【0023】
基板2は、アレイ基板である。基板2は、支持基板上に、TFT(薄膜トランジスタ)層が設けられた構成を有している。支持基板は、該支持基板上に設けられる各層を支持する支持体である。支持基板には、絶縁性基板が使用される。該支持基板は、例えば、ガラス等の無機材料からなる非可撓性基板であってもよく、樹脂を主成分とする可撓性基板であってもよい。表示装置1がトップエミッション型の表示装置である場合、使用する支持基板は特に限定されない。一方、表示装置1がボトムエミッション型の表示装置である場合、支持基板としては、透明または半透明の透光性基板が用いられる。
【0024】
TFT層には、サブ画素SP毎に設けられたサブ画素回路、および、これらサブ画素回路に接続された、ゲート配線GHおよびソース配線SH等を含む複数の配線が形成されている。サブ画素回路は、後述する発光素子ESを駆動する、複数のTFTを備えている。これらTFTは、ゲート配線GHおよびソース配線SH等の配線を含む複数の配線に電気的に接続されている。これらTFTとしては、公知の各種TFTを採用することができる。これらTFTおよび配線は、これらTFTおよび配線による凹凸を平坦化する平坦化膜で覆われており、該平坦化膜によって、TFT層の表面が平坦化されている。上記平坦化膜には、アクリル樹脂等の有機絶縁膜が用いられる。
【0025】
発光素子層3は、サブ画素SP毎に設けられた複数の発光素子ESを備え、基板2上に、これら発光素子ESの各層が積層された構造を有している。サブ画素RSPには、発光素子ESとして、赤色発光する、赤色の発光素子RES(赤色発光素子)が設けられている。サブ画素GPGには、発光素子ESとして、緑色発光する、緑色の発光素子GES(緑色発光素子)が設けられている。サブ画素BSPには、発光素子ESとして、青色発光する、青色の発光素子BES(青色発光素子)が設けられている。なお、本実施形態では、これら発光素子RES、発光素子GES、発光素子BESを特に区別する必要がない場合、これらを総称して単に「発光素子ES」と称する。
【0026】
発光素子層3は、パターン化された複数の第1電極と、第2電極と、これら第1電極と第2電極との間に設けられた、少なくとも発光層を含む機能層と、各第1電極のエッジを覆う絶縁性のバンクと、を備えている。
【0027】
第1電極は、基板2上に、発光素子ES毎(言い替えれば、サブ画素SP毎)に島状に設けられた下層電極(サブ画素電極)である。第2電極は、上記機能層およびバンクを介して、下層電極よりも上層に、全発光素子ES(言い替えれば全サブ画素SP)に共通に設けられた、上層電極(共通電極)である。
【0028】
本実施形態では、第1電極と第2電極との間の層を総称して機能層と称する。表示装置1は、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層等の、発光層以外の機能層をさらに含んでいてもよい。なお、以下では、発光層を「EML」と称する場合がある。また、正孔注入層を「HIL」と称し、正孔輸送層を「HTL」と称する。また、電子注入層を「EIL」と称し、電子輸送層を「ETL」と称する。
【0029】
第1電極および第2電極は、一方が陽極31であり、他方が陰極34である。第1電極は、それぞれ、基板2のTFTと電気的に接続されている。
【0030】
図3では、一例として、第1電極が陽極31であり、第2電極が陰極34であり、表示装置1が、各サブ画素SPにおいて、陽極31、機能層33、陰極34を、下層側からこの順に備えている場合を例に挙げて図示している。また、
図3では、各サブ画素SPにおいて、機能層33が、HIL41、HTL42、EML43、ETL44を、下層側からこの順に備えている場合を例に挙げて図示している。
【0031】
但し、本実施形態は、これに限定されるものではない。例えば、表示装置1は、各サブ画素SPにおいて、陰極34、機能層33、陽極31を、下層側からこの順に備えていてもよい。このように、第1電極が陰極34であり、第2電極が陽極31である場合、機能層33の積層順が、
図3とは逆順になる。また、機能層33は、HIL41、HTL42、EML43、およびETL44以外の機能層を含んでいてもよい。
【0032】
陽極31は、導電性材料からなり、電圧が印加されることにより、正孔(ホール)をEML43に供給する電極である。陰極34は、導電性材料からなり、電圧が印加されることにより、電子をEML43に供給する電極である。
【0033】
これら陽極31および陰極34のうち、光の取出し面側となる電極は透光性を有している必要がある。このため、陽極31および陰極34の少なくとも一方は、透光性を有している。
【0034】
例えば、表示装置1が、封止層側から光を放射するトップエミッション型の表示装置である場合、上層側の陰極34に透光性電極が使用され、下層側の陽極31に、光反射性を有する、いわゆる反射電極が使用される。一方、表示装置1が、基板2側から光を放射するボトムエミッション型の表示装置である場合、上層側の陰極34に不透明電極または反射電極が使用され、下層側の陽極31に透光性電極が使用される。
【0035】
透光性電極は、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、IZO(酸化インジウム亜鉛)、AgNW(銀ナノワイヤ)、MgAg(マグネシウム-銀)合金の薄膜、Ag(銀)の薄膜等の、導電性の透光性材料で形成される。
【0036】
一方、反射電極は、例えば、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、Cu(銅)等の金属、それら金属を含む合金等の、導電性の光反射性材料で形成される。なお、上記透光性材料と上記光反射性材料とを積層することで反射電極としてもよい。
【0037】
バンク32は、可視光吸収性または遮光性を有する絶縁層である。バンク32は、第1電極のエッジを覆うエッジカバーとして用いられ、第1電極のパターン端部で機能層33が薄くなったり電界集中が起こったりすることで第1電極と第2電極とが短絡することを防止する。また、バンク32は、各サブ画素SPを分離するサブ画素分離膜としても機能する。第1電極と、機能層33のうち少なくともEML43とは、バンク32によって、サブ画素SP毎に島状に分離(パターン形成)されている。これにより、発光素子層3には、陽極31、機能層33、および陰極34を含む発光素子ESが、サブ画素SPに対応してそれぞれ設けられている。
【0038】
バンク32の材料としては、例えば、カーボンブラック等の光吸収剤が添加された感光性樹脂が挙げられる。上記感光性樹脂としては、ポリイミド、アクリル樹脂等の、感光性を有する有機絶縁材料が挙げられる。
【0039】
バンク32は、断面視でテーパ状の断面を有している。言い換えれば、バンク32には、開口サイズ(直径)が下側ほど小さくなる、断面視で逆テーパ状の開口部を有している。バンク32の傾斜面(言い換えれば、傾斜した開口側壁)と、該バンク32の下面(底面)とがなす角度(傾斜角度)をθ(°)とすると、θは、10°≦θ≦90°であることが好ましく、30°≦θ≦80°であることがより好ましい。これにより、バンク32の製造不良を低下しつつ、上層の段切れを防止することができる。
【0040】
HIL41は、正孔輸送性を有し、陽極31からHTL42もしくはEML43への正孔の注入を促進する層である。HIL41には、公知の正孔輸送性材料を用いることができる。HIL41に用いられる正孔輸送性材料としては、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)との複合物(略称「PEDOT:PSS」)、NiO(酸化ニッケル)、CuSCN(チオシアン酸銅)等が挙げられる。なお、これら正孔輸送性材料は、一種類のみを用いてもよく、適宜二種類以上を混合して用いてもよい。
【0041】
HTL42は、正孔輸送性を有し、HIL41から注入された正孔をEML43に輸送する層である。HTL42には、公知の正孔輸送性材料を用いることができる。HTL42に用いられる正孔輸送性材料としては、例えば、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(4,4’-(N-4-sec-ブチルフェニル))ジフェニルアミン)](略称「TFB」)、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)-ベンジジン](略称「p-TPD」)、ポリビニルカルバゾール(略称「PVK」)等が挙げられる。これら正孔輸送性材料も、一種類のみを用いてもよく、適宜二種類以上を混合して用いてもよい。
【0042】
ETL44は、電子輸送性を有し、陰極34からEML43に電子を輸送する層である。ETL44には、公知の電子輸送性材料を用いることができる。ETL44に用いられる電子輸送性材料としては、例えば、ZnO(酸化亜鉛)、MgZnO(酸化亜鉛マグネシウム)等が挙げられる。これら電子輸送性材料は、一種類のみを用いてもよく、適宜二種類以上を混合して用いてもよい。
【0043】
EML43は、陽極31から輸送された正孔と、陰極34から輸送された電子との再結合が発生することにより、光を発する層である。
【0044】
発光素子RESは、EML43として、赤色光を発する島状のEML43R(赤色EML)を備えている。発光素子GESは、EML43として、緑色光を発する島状のEML43G(緑色EML)を備えている。発光素子BESは、EML43として、青色光を発する島状のEML43B(青色EML)を備えている。本実施形態では、これらEML43R、EML43G、EML43Bを特に区別する必要がない場合、これらを総称して単に「EML43」と称する。
【0045】
なお、上記青色光とは、例えば、400nm以上、500nm以下の波長帯域に発光ピーク波長(発光中心波長)を有する光である。また、上記緑色光とは、例えば、500nmを超えて、600nm以下の波長帯域に発光ピーク波長を有する光である。また、上記赤色光とは、600nmを超得て、780nm以下の波長帯域に発光ピーク波長を有する光である。
【0046】
図4は、本実施形態に係る表示装置1の一例に係る各色のEML43の一部を拡大して模式的に示す断面図である。
【0047】
本実施形態に係る発光素子ESは、量子ドット発光ダイオード(QLED)である。したがって、
図4に示すように、EML43は、発光材料として、発光色に応じたナノサイズの量子ドット(以下、「QD」と記す)51を含むQD発光層である。
【0048】
EML43Rは、赤色発光材料として、赤色光を発するQD51R(赤色QD)を備えている。EML43Gは、緑色発光材料として、緑色光を発するQD51G(緑色QD)を備えている。EML43Bは、青色発光材料として、青色光を発するQD51B(青色QD)を備えている。本実施形態では、これらQD51R、QD51G、QD51Bを特に区別する必要がない場合、これらを総称して単に「QD51」と称する。
【0049】
本実施形態で用いられるQD51は、特に限定されるものではなく、公知の各種QDを用いることができる。
【0050】
なお、本開示において、QDとは、最大幅が100nm以下のドットを意味する。QDは、例えば蛍光を発し、そのサイズがナノオーダーのサイズであることから、蛍光ナノ粒子あるいはQD蛍光体粒子と称される場合がある。また、QDは、その組成が半導体材料由来であることから、半導体ナノ粒子と称される場合がある。また、QDは、その構造が特定の結晶構造を有することからナノクリスタルと称される場合がある。
【0051】
QD51の形状は、上記最大幅を満たす範囲であればよく、特に制約されず、球状の立体形状(円状の断面形状)に限定されるものではない。例えば、多角形状の断面形状、棒状の立体形状、枝状の立体形状、表面に凹凸を有す立体形状でもよく、または、それらの組合せでもよい。
【0052】
QD51は、例えば、Cd(カドミウム)、S(硫黄)、Te(テルル)、Se(セレン)、Zn(亜鉛)、In(インジウム)、N(窒素)、P(リン)、As(ヒ素)、Sb(アンチモン)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、Pb(鉛)、Si(ケイ素)、Ge(ゲルマニウム)、Mg(マグネシウム)からなる群より選択される少なくとも一種の元素で構成されている半導体材料を含んでいてもよい。
【0053】
また、一例として、QD51は、コアとシェルとを含むコアシェル構造を有していてもよく、コアシェル型またはコアマルチシェル型であってもよい。QD51がシェルを含む場合、シェルは、コアの表面に設けられていればよい。シェルは、コア全体を覆っていることが望ましいが、シェルがコアを完全に覆っている必要はない。また、QD51は、二成分コア型、三成分コア型、四成分コア型であってもよい。QD51は、粒子の粒径、組成等によって、発光波長を種々変更することができる。
【0054】
図4に示すように、QD51の表面近傍には、配位子として、多数のリガンドが配位している。なお、
図4では、図示の便宜上、QD51およびリガンドの数を省略して示している。
【0055】
QD51の表面にリガンドを配位させることで、QD51同士の凝集を抑制できるので、目的とする光学特性を発現させ易い。「リガンド」とは、配位する機能を有する化合物のことであり、リガンドとQD51とがともに含まれている場合は、リガンドの少なくとも一部がQD51に配位しているとみなす。また、「配位」とは、QD51の表面にリガンドが吸着あるいはQD51の周辺に存在している(言い換えれば、リガンドがQD51の表面を修飾(表面修飾)している)ことを言う。そのため、上述したリガンドの説明のように、リガンドとQD51とがともに含まれている場合は、リガンドの少なくとも一部がQD51に配位しているとみなす。また、「吸着」とは、QD51の表面において、リガンドの濃度が周囲よりも増加していることを示す。上記吸着は、QD51とリガンドとの間に化学結合がある化学吸着であってもよいし、物理吸着あるいは静電吸着であってもよい。リガンドは、吸着によりQD51の表面に化学的な影響を与えていれば、配位結合、共通結合、イオン結合、水素結合等で結合していてもよいし、必ずしも結合していなくてもよい。上述したように、本実施形態では、QD51の表面に配位している分子またはイオンだけでなく、配位可能だが配位していない分子またはイオンも含めて「リガンド」と称する。
【0056】
このようにQD51の表面には、それぞれリガンドが設けられている。このため、EML43は、それぞれリガンドを含んでいる。各EML43は、リガンドとして、有機リガンド52と無機リガンド53とを含んでいる。
【0057】
図2および
図4に示すように、本実施形態に係るEML43Rは、単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Rの数が異なる、第1領域431Rと、第2領域432Rと、を含んでいる。同様に、本実施形態に係るEML43Gは、単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Gの数が異なる、第1領域431Gと、第2領域432Gと、を含んでいる。本実施形態に係るEML43Bは、単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Bの数が異なる、第1領域431Bと、第2領域432Bと、を含んでいる。
【0058】
第1領域431Rは、QD51Rと、有機リガンド52Rおよび無機リガンド53Rのうち少なくとも無機リガンド53Rと、を含み、単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Rの数が、第2領域432Rの上記単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Rの数よりも多い領域である。第2領域432Rは、QD51Rと、有機リガンド52Rおよび無機リガンド53Rのうち少なくとも有機リガンド52Rと、を含み、単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Rの数が、第1領域431Rの上記単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Rの数よりも少ない領域である。
【0059】
第1領域431Gは、QD51Gと、有機リガンド52Gおよび無機リガンド53Gのうち少なくとも無機リガンド53Gと、を含み、単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Gの数が、第2領域432Gの上記単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Gの数よりも多い領域である。第2領域432Gは、QD51Gと、有機リガンド52Gおよび無機リガンド53Gのうち少なくとも有機リガンド52Gと、を含み、単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Gの数が、第1領域431Gの単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Gの数よりも少ない領域である。
【0060】
第1領域431Bは、QD51Bと、有機リガンド52Bおよび無機リガンド53Bのうち少なくとも無機リガンド53Bと、を含み、単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Bの数が、第2領域432Bの単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Bの数よりも多い領域である。第2領域432Bは、QD51Bと、有機リガンド52Bおよび無機リガンド53Bのうち少なくとも有機リガンド52Bと、を含み、単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Bの数が、第1領域431Bの単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Bの数よりも少ない領域である。
【0061】
なお、
図4は、一例として、第2領域432R、第2領域432G、および第2領域432Bが、何れも、無機リガンドを含んでいない場合を例に挙げて図示している。このように、第2領域432Rの単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Rの数とは、第2領域432Rの単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Rの数がゼロである場合を含む。同様に、第2領域432Gの単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Gの数とは、第2領域432Gの単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Gの数がゼロである場合を含む。また、第2領域432Bの単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Bの数とは、第2領域432Bの単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Bの数がゼロである場合を含む。
【0062】
また、
図4は、一例として、第1領域431R、第1領域431G、および第1領域431Bが、何れも、リガンドとして、有機リガンド52および無機リガンド53を含んでいる場合を例に挙げて図示している。以下では、このように、第1領域431R、第1領域431G、および第1領域431Bが、何れも、リガンドとして、有機リガンド52および無機リガンド53の両方を含んでいる場合を例に挙げて説明する。しかしながら、本実施形態は、これに限定されるものではなく、上述したように、第1領域431R、第1領域431G、および第1領域431Bは、QD51と、有機リガンド52および無機リガンド53のうち少なくとも無機リガンド53と、を含んでいればよい。
【0063】
本実施形態では、第1領域431Rと、第1領域431Gと、第1領域431Bと、を特に区別する必要がない場合、これらを総称して単に「第1領域431」と称する。同様に、本実施形態では、第2領域432Rと、第2領域432Gと、第2領域432Bと、を特に区別する必要がない場合、これらを総称して単に「第2領域432」と称する。
【0064】
また、本実施形態では、有機リガンド52Rと、有機リガンド52Gと、有機リガンド52Bと、を特に区別する必要がない場合、これらを総称して、上述したように単に「有機リガンド52」と称する。同様に、本実施形態では、無機リガンド53Rと、無機リガンド53Gと、無機リガンド53Bと、を特に区別する必要がない場合、これらを総称して、上述したように単に「無機リガンド53」と称する。有機リガンド52Rと、有機リガンド52Gと、有機リガンド52Bとは、互いに同じリガンドであってもよく、異なるリガンドであってもよい。また、無機リガンド53Rと、無機リガンド53Gと、無機リガンド53Bとは、互いに同じリガンドであってもよく、異なるリガンドであってもよい。
【0065】
有機リガンド52としては、QD51に配位可能な配位性官能基を少なくとも1つ有していればよく、公知の各種有機リガンドを用いることができる。
【0066】
上記配位性官能基としては、代表的には、例えば、チオール基、アミノ基、カルボキシ基、ホスホン基、およびホスフィン基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基が挙げられる。
【0067】
上記有機リガンド52としては、特に限定されるものではないが、代表的なものとして、例えば、アミン系、脂肪酸系、チオール系、ホスフィン系、ホスフィンオキシド系、アルコール系、等のリガンドが挙げられる。このような有機リガンドの一例としては、例えば、オレイルアミン、オレイン酸、ドデカンチオール、トリオクチルホスフィン、トリオクチルホスフィンオキシド、トリブチルホスフィンオキシド、オレイルアルコール、等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0068】
なお、QDは、商業的に入手が可能であり、市販のQDは、一般的に、有機リガンドを含むQD分散液の状態で提供される。また、QDは、任意の方法で合成することができる。QDの合成には例えば湿式法が用いられ、QDの表面に有機リガンドを配位させることでQDの粒径制御が行われる。なお、有機リガンドは、QD分散液中でのQDの分散性を向上させる分散剤として用いられるとともに、QDの表面安定性の向上および保存安定性の向上にも使用される。
【0069】
このため、上記有機リガンド52は、QD51として合成もしくは商業的に入手したQDに配位している有機リガンドであってもよく、リガンド交換等により交換された、所望の有機リガンドであってもよい。
【0070】
一方、無機リガンドは、有機リガンドと比較して安定性が高く、QDの表面を安定的に保護することができる。また、無機リガンドは、長い炭化水素鎖を有する有機リガンドよりもQDへの電流注入性に優れ、個々のQD間のキャリア輸送が容易になる。
【0071】
本実施形態で用いられる無機リガンド53は、特に限定されるものではなく、公知の各種無機リガンドを用いることができる。無機リガンド53の一例としては、例えば、F-、Cl-、Br-、I-、S2-、Se2-、Te2-、HS-、SnS4
4-、Sn2S6
4-等の無機陰イオンが挙げられる。これら無機陰イオンは、負に帯電していることから、リガンドとして、QD51の正に帯電した表面に引き付けられる。
【0072】
上記無機陰イオンのなかでも、F-、Cl-、Br-、I-、S2-、Se2-、Te2-等の無機の単原子イオンからなる陰イオンの方が、無機の多原子イオンからなる陰イオンよりも安定性が高いことから好ましい。また、そのなかでも、F-、Cl-、Br-、I-等の、ハロゲンリガンドと称される、ハロゲン原子のイオンが、安定性並びに電流注入性が高いことから、より好ましく、そのなかでも、F-で示されるフッ化物イオン(フッ素原子のイオン)が、特に好ましい。F(フッ素)は、電気陰性度が特に大きく、QD51から脱離し難いため、QD51を強く保護することができる。
【0073】
図2に示すように、本実施形態に係るEML43は、何れも、第1領域431と、第2領域432とで構成されている。各サブ画素SPにおいて、EML43における、第2領域432以外の領域が、第1領域431である。
【0074】
本実施形態では、第2領域432が、第1領域431を枠状に取り囲んでいる。このため、各サブ画素SPにおけるそれぞれのEML43の第1領域431は、各サブ画素SPにおけるそれぞれのEML43の中央部を含む。なお、本実施形態において、「各サブ画素SPにおけるそれぞれのEML43の中央部」とは、各サブ画素SPにおけるそれぞれのEML43の重心点を示す。
【0075】
また、各サブ画素SPにおけるそれぞれのEML43の第2領域432は、それぞれのEML43における、他のサブ画素SPと隣り合う全ての端部を含む。したがって、本実施形態では、各サブ画素SPにおけるそれぞれのEML43の第2領域432は、それぞれのEML43における、該EMLが設けられたサブ画素SPと発光色が同じサブ画素SPに隣り合う端部、および、該EMLが設けられたサブ画素SPと発光色が異なるサブ画素SPに隣り合う端部を、それぞれ含む。
【0076】
第1領域431は、各サブ画素SPのEML43における、第2領域432に隣り合う他のサブ画素SPの端部から、該EML43における第1領域431の端部までの最短距離を、
図3に示すようにΔaとすると、該Δaが、2.0μm以上、8.5μm以下の範囲内となるように設定される。
【0077】
つまり、本来発光させたい、発光対象のサブ画素SPに隣り合うサブ画素SPを自サブ画素SPとすると、自サブ画素SPに第1領域431と第2領域432とが設けられていない場合、自サブ画素SPにおける、隣り合うサブ画素SPの端部からΔaの距離の範囲内は、該自サブ画素SPに隣り合う、発光対象のサブ画素SPからのリーク電流によって、不本意に発光してしまう可能性がある。
【0078】
そこで、本実施形態では、自サブ画素SPにおける、隣り合うサブ画素SPの端部からΔaの位置を、自サブ画素SPの第1領域431と第2領域432との境界位置とし、自サブ画素SPにおいて、この境界位置を繋いだ境界線の内側の領域を、自サブ画素SPの第1領域431とする。また、上記境界線の外側の領域を、自サブ画素SPの第2領域432とする。なお、上記境界線の内側の領域とは、自サブ画素SPの中央部を含む、自サブ画素SP内の2つの上記境界位置で挟まれた領域を示す。
【0079】
このように、本実施形態では、無機リガンド53を含んでいても隣り合うサブ画素SPからのリーク電流によってQD51が発光しない領域を、第1領域431とする。上述したように第1領域431では無機リガンド53を含んでいても隣り合うサブ画素SPからのリーク電流によってQD51が発光しないことから、単位体積当たりの無機リガンド53の量を増加させることで、無機リガンド53によるQD51の安定的な保護並びに電流注入性の向上を図ることができる。
【0080】
一方、第1領域431の外側の、他のサブ画素SPに隣り合う端部を含む第2領域432では、単位体積当たりの無機リガンド53の量を第1領域431よりも減らすことで、隣り合うサブ画素SPからのリーク電流によるQD51の発光を抑制することができる。
【0081】
これにより、無機リガンド53による発光効率の向上を図ることができる一方、隣り合うサブ画素SPからのリーク電流による発光を抑制し、混色したり不鮮明な画像が形成されたりする等の光学的なクロストークの発生を抑えることができる。これにより、リーク電流によるサブ画素SPの発光を低減し、高精細な映像を表示することができる。
【0082】
以下に、より詳しく説明する。
図5は、
図2および
図3に示す表示装置1におけるEML43に第1領域431および第2領域432が設けられていない比較用の表示装置の第1サブ画素SP1と第2サブ画素SP2との間のリーク電流を説明する断面図である。
【0083】
なお、
図5では、
図3に示すEML43に第1領域431および第2領域432が設けられていない比較用の表示装置の断面構成を、簡易化して模式的に示している。
図5で示す断面は、
図2に示すA-A’断面に相当する。また、
図6は、
図5に示す比較用の表示装置の第1サブ画素SP1と第2サブ画素SP2との間のリーク電流を説明する回路図である。
図5および
図6に示すように、第1サブ画素SP1には発光素子ES1が設けられており、第2サブ画素SP2には、発光素子ES2が設けられている。
【0084】
以下では、
図5および
図6に示すようにEML43に第1領域431および第2領域432が設けられていない場合の第1サブ画素SP1から第2サブ画素SP2に流れるリーク電流について論じる。
【0085】
以下では、各サブ画素SPのサブ画素幅をaとし、各サブ画素SPの奥行をbとする。aは、
図5中、水平軸の1つであるX軸方向(行方向)におけるサブ画素SPの幅を示し、bは、水平面においてX軸方向に直交するY軸方向(列方向)におけるサブ画素SPの幅を示す。
【0086】
また、
図5に示すように、第1サブ画素SP1からのリーク電流によって、第2サブ画素SP2が発光する位置までの、第1サブ画素SP1の端部からのX軸方向の幅を、Δaとする。つまり、この第1サブ画素SP1の端部からの距離Δaが、前記Δaとなる。
【0087】
そして、
図6に示すように、第1サブ画素SP1の最大駆動電圧をVdとする。また、第2サブ画素SP2の発光閾値電圧をVthとし、リーク電流の電流密度をjとする。また、HIL41の伝導率をσとし、HIL41の膜厚をtとし、HIL41による抵抗をRとすると、Rは、R=Δa/(σ×b×t)であり、第2サブ画素SP2にかかる電圧が発光閾値電圧Vthと等しいとすると、Vd-RjbΔa=Vthとなり、これを変形すると、次式(1)で示すようになる。
【0088】
Δa=√((Vd-Vth)×σ×t/j)‥(1)
ここで、σ=10-6~10-5S/cm、t=40nmとする。そして、第1サブ画素SP1と第2サブ画素SP2とが同色のサブ画素SPであり、同色のサブ画素SP間で、Vd-Vth=1V、j=0.1mA/cm2とすると、同色のサブ画素SP間では、Δa=2.0~6.3μmとなる。また、第1サブ画素SP1および第2サブ画素SP2のうち一方がサブ画素RSPであり、他方がサブ画素BSPであり、これらサブ画素RSP-サブ画素BSP間で、Vd-Vth=1.8V、j=0.1mA/cm2とすると、これらサブ画素RSP-サブ画素BSP間では、Δa=2.7~8.5μmとなる。
【0089】
また、第1サブ画素SP1および第2サブ画素SP2のうち一方がサブ画素GSPであり、他方がサブ画素BSPであり、これらサブ画素GSP-サブ画素BSP間で、Vd-Vth=1.5V、j=0.1mA/cm2とすると、これらサブ画素GSP-サブ画素BSP間では、Δa=2.4~7.7μmとなる。また、第1サブ画素SP1および第2サブ画素SP2のうち一方がサブ画素RSPであり、他方がサブ画素GSPであり、これらサブ画素RSP-サブ画素GSP間で、Vd-Vth=1.3V、j=0.1mA/cm2とすると、これらサブ画素RSP-サブ画素GSP間では、Δa=2.3~7.2μmとなる。
【0090】
このため、自サブ画素SPのEML43における、第2領域432に隣り合う他のサブ画素SPの端部から、自サブ画素SPの第1領域431の端部までの最短距離は、自サブ画素SPの発光色と、自サブ画素SPに隣り合うサブ画素SPの発光色と、に応じて、前記Δaの範囲が上記Δaの範囲となるように設定されることが望ましい。これにより、リーク電流の低減に加え、用いる無機リガンド53の量を必要最低限の量とすることができ、材料費を削減することができる。但し、上記Δaを、自サブ画素SPの発光色と、自サブ画素SPに隣り合うサブ画素SPの発光色と、によらず同一とすることで、設計・製造が容易になる。
【0091】
次に、上記第1領域431における、有機リガンド52と無機リガンド53との合計数に占める無機リガンド53の好ましい割合について説明する。
【0092】
無機リガンド53は、有機リガンド52に比べて安定性が高く、また、電流注入性に優れている。このため、上記第1領域431は、リガンドとして、前述したように、有機リガンド52および無機リガンド53のうち少なくとも無機リガンド53を含んでいればよい。したがって、第1領域431における、有機リガンド52と無機リガンド53との合計数に占める無機リガンド53の割合は、100%であってもよい。言い換えれば、第1領域431は、有機リガンド52および無機リガンド53のうち無機リガンド53のみを含んでいてもよい。なお、第1領域431がリガンドとして無機リガンド53のみを含む場合については、後述する実施形態で説明する。しかしながら、QD51同士の凝集を防ぐためには、第1領域431が、有機リガンド52を含んでいることが望ましい。
【0093】
そこで、QD51同士の凝集を防ぐ上で好ましい無機リガンド53の最大割合を計算する。
【0094】
QD51の粒径が例えば3nmの場合、QDを球体と想定するとQD51の粒径から計算したQD51の表面積は、28nm2となる。無機リガンド53が例えばF-である場合、該無機リガンド53のリガンド径は、F-のイオン半径の2倍で示されることから、0.26nmとなる。また、上記無機リガンド53のリガンド径から、1個の無機リガンド53が占める面積を計算すると、無機リガンド53が例えばF-である場合、0.05nm2となる。
【0095】
QD51の1個当たりの無機リガンド53の個数は、QD51の表面積/1個の無機リガンド53が占める面積で求めることができる。このため、本例の場合、QD51の1個当たりの無機リガンド53の個数は、533個となる。
【0096】
また、QD51の1個当たりの有機リガンド52の個数を考える。EML43にQD51を最密充填した場合、1個のQD51につき、12個のQD51が近接する。一般的に、有機リガンドは、熱や塗布工程等、環境要因で外れ易い。このため、QD51同士の凝集を防ぐためには、近接するQD51の1個当たり、10個程度の有機リガンド52があることが望ましい。この場合、QD51の1個当たりの有機リガンド52の個数は、120個となる。
【0097】
このため、QD51同士の凝集を防ぐ上で好ましい、有機リガンド52と無機リガンド53との合計数に占める無機リガンド53の最大の割合(つまり、無機リガンド53の個数/(無機リガンド53の個数+有機リガンド52の個数)は、82%となる。
【0098】
第1領域431では、無機リガンド53の量が増えることで、QD51に配位している有機リガンド52の量が減り、電流注入し易くなる。一方、サブ画素周辺部に位置する第2領域432における、有機リガンド52と無機リガンド53との合計数に占める無機リガンド53の割合を少なくする(言い換えれば、有機リガンド52の割合を多くする)と、サブ画素周辺部のQD51にキャリアが注入され難くなる。このため、第1領域431となる、サブ画素中央部の発光閾値電圧をVth1とし、第2領域432となる、サブ画素周辺部の発光閾値電圧をVth2とすると、Vth2は、Vth1と比較して上昇する。
【0099】
実験結果によると、無機リガンド53を添加しない場合(つまり、無機リガンド53の割合が0%である場合)、発光閾値電圧Vth2が、無機リガンド53を、上述した、無機リガンド53の割合(82%)まで添加した場合の発光閾値電圧Vth1と比較して、2V程度上昇した。
【0100】
有機リガンド52と無機リガンド53との合計数に占める無機リガンド53の割合がrのときの発光閾値電圧Vth2の上昇量V(r)(発光閾値電圧上昇量)は、QD51への電流注入のし難さ(QD51の表面積に占める有機リガンド52の割合)で決まる。なお、ここで、V(r)=Vth2-Vth1であり、上記V(r)は、上記有機リガンド52の割合に対して線形になる。このため、上記V(r)は、上記rに対して線形となる。このため、V(r)[単位:V]は、次式(2)で与えられる。
【0101】
V(r)=2.44×(0.82-r)‥(2)
自サブ画素SPに隣り合う、発光対象のサブ画素SPの駆動により、自サブ画素SPにおける上記サブ画素周辺部が発光しないためには、V(r)が、1V以上であることが望ましい。ここで、1Vとは、各サブ画素SPの最大駆動電圧をVdmとし、各サブ画素SPの発光閾値電圧をVthとしたときのVdmとVthとの差を示し、具体的には、自サブ画素SPに隣り合う、発光対象のサブ画素SPの最大駆動電圧(Vdm)と、自サブ画素SPの発光閾値電圧(Vth)との差(Vdm-Vth)を示す。
【0102】
なお、本実施形態において、発光閾値電圧とは、発光素子ESにかける電圧を上げていった場合に、該発光素子ESが発光を開始する電圧(例えば、該発光素子が1cd/m2で発光する際の電圧)を示す。HTL42およびETL44等の素子構造が最適化されており、理想的な場合、発光閾値電圧は、QD51のバンドギャップ(Eg)を電圧換算した値となる。
【0103】
例えば、サブ画素RSPにおける発光ピーク波長(λ)が620nmであり、Eg=2.0eVとすると、理想的な場合、サブ画素RSPの発光閾値電圧は、2.0Vとなる。また、サブ画素GSPにおける発光ピーク波長(λ)が530nmであり、Eg=2.3eVとすると、理想的な場合、サブ画素GSPの発光閾値電圧は、2.3Vとなる。また、サブ画素BSPにおける発光ピーク波長(λ)が450nmであり、Eg=2.8eVとすると、理想的な場合、サブ画素BSPの発光閾値電圧は、2.8Vとなる。
【0104】
有機リガンド52の量が多い等、電流注入が阻害される場合には、発光閾値電圧が高くなり、高い電圧をかけないと、QD51に電流注入ができず、発光しなくなる。
【0105】
また、最大駆動電圧とは、発光素子ESを、表示装置仕様の最大輝度(例えば100cd/m2)で発光させる場合の電圧であり、概ね、発光閾値電圧+1Vとなる。このため、Vdm-Vth=1Vとなる。表示装置1における各発光素子ESは、それぞれ、発光閾値電圧(Vth)以上、最大駆動電圧(Vdm)以下の電圧で駆動される。
【0106】
リーク電流による発光は、自サブ画素SPに隣り合う、発光対象のサブ画素SPから漏れ出た最大駆動電圧(Vd)が自サブ画素SPの発光閾値電圧(Vth)を超えてしまう場合、その超えてしまった差分の電圧に対する電流によって発生する。
【0107】
そこで、自サブ画素SPに隣り合う、発光対象のサブ画素SPの最大駆動電圧(Vdm)と、自サブ画素SPの発光閾値電圧(Vth)との差(Vdm-Vth)から、自サブ画素SPに隣り合う、発光対象のサブ画素SPと、自サブ画素SPとの間の電位差を求めて、該電位差とHIL41の伝導率とから、リーク電流を見積もる。この電位差が、自サブ画素SPの発光閾値電圧(Vth)を超える範囲の領域の無機リガンド53の量(割合)を減らし、自サブ画素SPの発光閾値電圧(Vth)を上昇させる。なお、ここで、上記電位差が自サブ画素SPの発光閾値電圧(Vth)を超える範囲の領域とは、リーク電流の電流密度の値が0.1mA/cm2を超える範囲の領域であり、自サブ画素SPに隣り合うサブ画素SPの端部を基点としたΔaの幅の領域を示す。
【0108】
なお、この場合の発光閾値電圧(Vth)は本開示を適用しない場合の値(つまり、自サブ画素SPに均等に無機リガンド53が含まれている場合の値)である。このため、上述した式(2)を用いて、本開示を用いた場合の発光閾値電圧(Vth)が無機リガンド53の量の変化によって、本開示を適用しない場合の発光閾値電圧(Vth)よりいくら上昇するかを規定した。この発光閾値上昇量(V(r))は、前述したように、少なくとも1V以上(すなわち、V(r)≧1)であることが必要である。
【0109】
このためには、r≦0.41であることが望ましく、サブ画素周辺部のEML43の第2領域432における、有機リガンド52と無機リガンド53との合計数に占める無機リガンド53の割合(r)は、0%以上、41%以下であることが望ましい。
【0110】
また、各色のサブ画素SPにより、最大駆動電圧(Vdm)が異なるので、この最大駆動電圧(Vd)の違いを考慮して上記発光閾値上昇量(V(r))を規定することが望ましい。上述したように、隣り合うサブ画素SP間でのQD51のバンドギャップ(Eg)の差およびこれらバンドギャップ(Eg)を電圧換算した発光閾値電圧の差は、サブ画素RSPとサブ画素BSPとの間で最も大きくなる。したがって、上記発光閾値上昇量(V(r))は、前記1Vに、サブ画素RSPとサブ画素BSPとにおける発光閾値電圧差(0.8V)による最大駆動電圧差0.8Vを考慮し、1.8V(つまり、1+0.8V)以上(V(r)≧1.8)であるとなお良い。それで、これらの条件を用いて、有機リガンド52と無機リガンド53との合計数に占める無機リガンド53の割合(r)を規定すると、r≦0.082であることが望ましい。したがって、この場合、サブ画素周辺部のEML43の第2領域432における、有機リガンド52と無機リガンド53との合計数に占める無機リガンド53の割合(r)は、0%以上、8.2%以下であることが望ましい。
【0111】
したがって、サブ画素中央部のEML43の第1領域431における、有機リガンド52と無機リガンド53との合計数に占める無機リガンド53の割合(r)は、8.2%以上、100%以下であることが好ましく、8.2%以上、82%以下であることがより好ましい。また、上記第1領域431における、有機リガンド52と無機リガンド53との合計数に占める無機リガンド53の割合(r)は、41%以上、82%以下であることが、さらに好ましい。
【0112】
なお、上記第1領域431における上記無機リガンド53の割合(r)および上記第2領域432における上記無機リガンド53の割合(r)は、上述した範囲内において適宜設定(選択)することが可能である。但し、上記第1領域431と上記第2領域432とで、上記無機リガンド53の割合(r)が等しくなるか、または、上記第2領域432の方が上記第1領域431よりも上記無機リガンド53の割合(r)が大きくなるような組み合わせは除かれる。
【0113】
EML43に上記第1領域431および上記第2領域432が形成されていることは、断面SEM-EDX(走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法)により、EML43における上記無機リガンド53の分布を調べることで確認することができる。また、上記第1領域431および上記第2領域432における上記無機リガンド53の単位体積当たりの個数は、上記断面SEM-EDXにより求めることができる。なお、ハロゲン等の無機リガンド53は配位力が強いため、これらの無機リガンド53がEML43中に存在すれば、該無機リガンド53がQD51に配位しているとみなすことができる。
【0114】
本実施形態によれば、上述したようにEML43に上記第1領域431と上記第2領域432とを設けることで、無機リガンド53による発光効率の向上と隣り合うサブ画素SPからのリーク電流による発光の抑制とを両立することができるとともに、サブ画素SPの間隔を狭くすることもできる。
【0115】
QLED(ナノLED)である上記発光素子ESを表示装置1に用いる際にサブ画素SPの間隔を狭くすることには大きな意義がある。例えば、サブ画素SPの間隔を狭くすることで、同一面積の画素P内において、サブ画素SPの面積を大きくすることができる。それにより、サブ画素SPや画素Pの発光輝度が上昇し、より明るい表示装置1を実現できる。また、サブ画素SPの面積を一定とし、表示装置1の画素数を一定とすると、サブ画素SPの間隔を狭くすることによって表示装置1の面積を小さくすることができ、製造コストの低減、表示装置1の軽量化等を図ることができる。また、サブ画素SPの面積を一定とし、表示装置1の面積を一定とすると、サブ画素SPの間隔を狭くすることによって、表示装置1の画素数を増やすことが可能になり、映像の分解能の上昇等が見込まれる。
【0116】
しかし、サブ画素SPの間隔を狭くすることにより上記のような利点がある一方で、隣り合うサブ画素SPからのリーク電流による発光が問題となる。サブ画素SPの不本意な発光が起こると、混色したり、不鮮明な画像が形成されたりする、光学的なクロストークが発生する。このようなクロストークは、表示装置の表示品位低下の原因となる。
【0117】
本実施形態によれば、上述したように、EML43に、上述した第1領域431と第2領域432とを設けることで、サブ画素SPの間隔を狭くしても、上述した光学的なクロストークが発生することを抑制することができる。したがって、本実施形態によれば、無機リガンド53による発光効率の向上と、隣り合うサブ画素SPからのリーク電流による発光の抑制と、を両立することができ、サブ画素SPの間隔を、より狭くすることができるとともに、表示品位に優れた表示装置1を提供することができる。
【0118】
なお、上記表示装置1は、例えば、第1サブ画素(例えばサブ画素RSP)と、第1サブ画素と第1方向(例えば横方向、行方向)に隣り合う第2サブ画素(例えばサブ画素GSP)とを備え、第1サブ画素は、アノード(陽極31)およびカソード(陰極34)と、これらの間に位置し、QD51および無機リガンド53(例えば、ハロゲンリガンド)を含む第1発光層(例えばEML43R)を含み、該第1発光層は、上記第1方向に並ぶ、第1端部(例えば第2領域432Rのうち縦方向(列方向)に伸びる右側部)、中央部(例えば第1領域431Rの少なくとも一部)および第2端部(例えば第2領域432Rのうち縦方向に伸びる左側部)を含み、上記第1端部の単位体積当たりの無機リガンド53の数が、上記中央部の単位体積当たりの無機リガンド53の数よりも少ない構成であってもよい。また、上記第2サブ画素(例えばサブ画素GSP)は、上記第1端部に隣接し、上記第1サブ画素(例えばサブ画素RSP)とは異なる色(例えば、赤色発光の第1サブ画素よりも短波長域である緑の波長域)で発光する構成であってもよい。
【0119】
(表示装置1の製造方法)
次に、本実施形態にかかる表示装置1の製造方法について、
図3に示す表示装置1の製造方法を例に挙げて以下に説明する。
【0120】
図7は、本実施形態に係る表示装置1の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【0121】
図7に示すように、本実施形態では、まず、基板2を形成する(ステップS1、基板形成工程)。次いで、第1電極として
図3に示すように例えば陽極31を形成する(ステップS2、第1電極形成工程)。次いで、バンク32を形成する(ステップS3、バンク形成工程)。次いで、機能層33を形成する(ステップS4、機能層形成工程)。次いで、第2電極として
図3に示すように例えば陰極34を形成する(ステップS5、第2電極形成工程)。
【0122】
ステップS1において、基板2の形成は、表示装置1の各サブ画素SPを形成する位置に合わせて、支持基板にTFTを形成することにより実行されてもよい。
【0123】
第1電極は、サブ画素SP毎に島状に形成される。このため、ステップS2において、第1電極は、表示装置1の各サブ画素SPを形成する位置に合わせて島状に形成される。第1電極は、前記導電性材料を、全サブ画素SPにベタ状に成膜した後、該導電性材料からなる膜を、フォトリソグラフィによりサブ画素SP毎に島状にパターニングすることで形成してもよい。また、前記導電性材料からなる膜をサブ画素SP毎に島状にパターン形成することで第1電極を形成してもよい。
【0124】
一方、第2電極は、共通電極であり、ステップS5において、前記導電性材料を、全サブ画素SPに共通してベタ状に成膜することで形成される。
【0125】
なお、ステップS2およびステップS5において、前記導電性材料の成膜には、例えば、スパッタリング法や真空蒸着法等の物理的気相成長法(PVD)、スピンコート法、またはインクジェット法等を用いることができる。
【0126】
ステップS3において、バンク32は、例えば、光吸収剤が添加された前記感光性樹脂を、基板2および第1電極上に塗布した後、フォトリソグラフィによりパターニングすることで、所望の形状に形成することができる。
【0127】
図8は、上記機能層形成工程(ステップS4)の一例を示すフローチャートである。
【0128】
上述したように第1電極が例えば陽極31である場合、機能層形成工程(ステップS4)では、
図8に示すように、まず、第1電流注入層として、HIL41を形成する(ステップS11、正孔注入層形成工程)。次いで、第1キャリア輸送層として、HTL42を形成する(ステップS12、正孔輸送層形成工程)。次いで、各色のEML43を形成する(ステップS13、発光層形成工程)。次いで、第2キャリア輸送層として、ETL44を形成する(ステップS14、電子輸送層形成工程)。
【0129】
ステップS11において、HIL41が有機材料からなる場合、該HIL41の成膜には、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、またはインクジェット法等が好適に用いられる。一方、HIL41が無機材料からなる場合、該HIL41の成膜には、例えば、スパッタリング法や真空蒸着法等のPVD、スピンコート法、またはインクジェット法等が好適に用いられる。
【0130】
ステップS12におけるHTL42の成膜並びにステップS14におけるETL44の成膜には、ステップS11で例示した方法と同様の方法が用いられる。つまり、HTL42の成膜あるいはETL44の成膜に用いられる成膜材料が有機材料である場合、該有機材料の成膜には、例えば、スパッタリング法や真空蒸着法等のPVD、スピンコート法、またはインクジェット法等が好適に用いられる。また、ETL44が有機材料からなる場合、該ETL44の成膜には、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、またはインクジェット法等が好適に用いられる。
【0131】
なお、上記工程順は、上述したように第1電極が例えば陽極31である場合のものであり、前述したように第1電極が陰極34である場合、
図8とは工程順が逆転する。また、ETL44の形成工程と、陰極34の形成工程との間には、電子注入層(EIL)を形成する工程を含んでいてもよい。
【0132】
図9は、上記発光層形成工程(ステップS13)の一例を示すフローチャートである。
【0133】
発光層形成工程(ステップS13)では、
図9に示すように、まず、第1サブ画素としてのサブ画素SPに、第1発光層としてのEML43を形成する(ステップS21、第1発光層形成工程)。次いで、第2サブ画素としてのサブ画素SPに、第2発光層としてのEML43を形成する(ステップS22、第2発光層形成工程)。次いで、第3サブ画素としてのサブ画素SPに、第3発光層としてのEML43を形成する(ステップS23、第3発光層形成工程)。
【0134】
なお、第1発光層は、QD51として第1QDを含み、有機リガンド52として第1有機リガンドを含み、無機リガンド53として第1無機リガンドを含む。第2発光層は、QD51として第2QDを含み、有機リガンド52として第2有機リガンドを含み、無機リガンド53として第2無機リガンドを含む。第3発光層は、QD51として第3QDを含み、有機リガンド52として第3有機リガンドを含み、無機リガンド53として第3無機リガンドを含む。
【0135】
以下に、第1発光層がEML43Rであり、第2発光層がEML43Gであり、第3発光層がEML43Bである場合を例に挙げて、ステップS13の発光層形成工程について、
図10~
図15を参照して、より詳細に説明する。
【0136】
但し、本実施形態は、以下の例示にのみ限定されるものではない。EML43R、EML43GおよびEML43Bの形成順は、特に限定されるものではなく、これらEML43R、EML43GおよびEML43Bの形成順は、互いに入れ替えることができる。したがって、第1発光層は、EML43GまたはEML43Bであってもよい。同様に、第2発光層は、EML43RまたはEML43Bであってもよい。また、第3発光層は、EML43RまたはEML43Gであってもよい。
【0137】
図10は、上記第1発光層形成工程(ステップS21)の一部の一例を示す断面図である。
【0138】
第1発光層形成工程では、まず、各色のEML43を支持する下地層となる例えばHTL42上に、複数のサブ画素SP全体(つまり、画素領域DA全体)を覆う第1レジストを塗布する。これにより、上記HTL42上に、ベタ状の第1レジスト層RL1を形成する(ステップS31、第1レジスト層形成工程)。
【0139】
なお、第1レジスト層RL1の層厚は、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~2μmの厚みとすればよい。
【0140】
次に、第1レジスト層RL1における、赤色EML形成予定領域43PRに対応する部分を露光および現像する。これにより、第1発光層としてのEML43Rの形成予定領域に対応する部分の第1レジスト層RL1を除去して該第1レジスト層RL1をパターニングする(ステップS32、第1レジスト層パターニング工程)。
【0141】
ここで、赤色EML形成予定領域43PRとは、下地層であるHTL42上における、EML43Rの形成予定領域(第1発光層形成予定領域)を示す。
【0142】
上記第1レジスト層パターニング工程(ステップS32)は、上述したように、第1レジスト層RL1における、赤色EML形成予定領域43PRに対応する部分を露光する第1レジスト層露光工程(ステップS41)と、第1レジスト層RL1を現像液で現像する第1レジスト層現像工程(ステップS42)と、を含んでいる。
【0143】
上記第1レジスト層パターニング工程では、まず、マスクM1を用いて、上記第1レジスト層RL1における、赤色EML形成予定領域43PRに対応する部分を露光する(ステップS41、第1レジスト層露光工程)。
【0144】
図10では、第1レジストに、ポジ型のフォトレジストを用いた場合を例に挙げて図示している。ポジ型のフォトレジストは、紫外線(UV)等による露光により、現像液に対する溶解性が増大する。そこで、マスクM1には、第1レジスト層RL1における、赤色EML形成予定領域43PRに対応する部分を露出させるマスクを使用する。言い換えれば、マスクM1には、該マスクM1における、赤色EML形成予定領域43PRに対応する部分が透光性を有し、赤色EML形成予定領域43PRに対応する部分以外の部分が遮光性を有するように開口(光学開口)が設けられたマスクを使用する。
【0145】
なお、上記ステップS41における、UV照射強度等の光照射強度は、第1レジスト層RL1における赤色EML形成予定領域43PRに対応する部分が現像により除去されるように第1レジスト層RL1の層厚等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0146】
次いで、第1レジスト層RL1を、現像液で現像する(ステップS42、第1レジスト層現像工程)。これにより、第1レジスト層RL1における露光部分が除去され、HTL42上における、赤色EML形成予定領域43PR以外の部分にのみ、第1レジスト層RL1からなる第1レジストパターンRP1が形成される。
【0147】
上記現像液としては、例えば、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液等の、アルカリ性の水系の現像液(アルカリ性水溶液)が用いられる。
【0148】
上記現像液の濃度は、第1レジスト層RL1における赤色EML形成予定領域43PRに対応する部分が現像により除去されるように第1レジスト層RL1の層厚、並びに現像液の種類等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0149】
なお、
図10では、上述したように、第1レジスト層RL1に、ポジ型のフォトレジストを用いた場合を例に挙げて図示した。しかしながら、本実施形態は、これに限定されるものではなく、ポジ型のフォトレジストに代えて、ネガ型のフォトレジストを用いてもよい。ネガ型のフォトレジストは、露光により、現像液に対する溶解性が低下する。このため、この場合、第1レジスト層RL1の露光に用いられるマスクM1としては、第1レジスト層RL1における、赤色EML形成予定領域43PR以外の部分を露出させるマスクを用いればよい。
【0150】
このように、第1レジスト層RL1における、第1発光層の形成予定領域に対応する部分を露光および現像することで、第1発光層の形成予定領域に対応する部分の第1レジスト層RL1を除去して該第1レジスト層RL1をパターニングすることができる。
【0151】
上記第1レジスト層パターニング工程後、続いて、第1QD含有層としての赤色QD含有層143Rを、複数のサブ画素SP全体(つまり、画素領域DA全体)を覆ってベタ状に形成する(ステップS33、第1QD含有層形成工程)。赤色QD含有層143Rは、第1QDとしてのQD51Rと、第1有機リガンドとしての有機リガンド52Rおよび第1無機リガンドとしての無機リガンド53Rのうち少なくとも有機リガンド52Rと、を含む。
【0152】
次いで、第1レジスト層RL1からなる第1レジストパターンRP1を、レジスト溶剤で剥離する。これにより、第1レジストパターンRP1上の赤色QD含有層143Rをリフトオフして、赤色EML形成予定領域43PR以外の赤色QD含有層143Rを除去する(ステップS34、第1QD含有層パターニング工程)。
【0153】
上記ステップS31~S34を行うことで、赤色EML形成予定領域43PRに、赤色QD含有層143Rからなる、第1QD含有層パターンとしての赤色QD含有層パターン143PRが形成される。
【0154】
上記レジスト溶剤には、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等の公知のレジスト溶剤を用いることができる。
【0155】
図11は、上記第1発光層形成工程(ステップS21)における
図10の後の工程を、一部拡大して模式的に示す断面図である。なお、
図11では、図示の便宜上、QD51Rおよびリガンドの数を省略して示している。
【0156】
上記第1QD含有層パターニング工程後、本実施形態では、
図11に示すように、まず、下地層としてのHTL42上に、上記赤色QD含有層パターン143PRを覆うように、複数のサブ画素SP全体(つまり、画素領域DA全体)を覆う第2レジストを塗布する。これにより、上記赤色QD含有層パターン143PRが形成されたHTL42上に、ベタ状の第2レジスト層RL2を形成する(ステップS35、第2レジスト層形成工程)。
【0157】
なお、第2レジスト層RL2の層厚は、特に限定されるものではないが、例えば、第1レジスト層RL1の層厚と同様に、例えば、1μm~2μmの厚みとすればよい。
【0158】
次に、第2レジスト層RL2における、第1領域形成予定領域431PRに対応する部分を露光および現像する。これにより、該第2レジスト層RL2に、赤色QD含有層パターン143PR(つまり、パターン化された赤色QD含有層143R)における第1領域形成予定領域431PRを露出させる開口部OP2a(第1開口部)を形成する(ステップS36、第2レジスト層第1パターニング工程)。ここで、第1領域形成予定領域431PRとは、最終的に、第1発光層としてのEML43Rにおける第1領域431Rを形成する領域を示す。
【0159】
上記第2レジスト層第1パターニング工程(ステップS36)は、上述したように、第2レジスト層RL2における、第1領域形成予定領域431PRに対応する部分を露光する第2レジスト層第1露光工程(ステップS51)と、第2レジスト層RL2を現像液で現像する第2レジスト層第1現像工程(ステップS52)と、を含んでいる。
【0160】
上記第2レジスト層第1パターニング工程では、まず、マスクM2を用いて、上記第2レジスト層RL2における、第1領域形成予定領域431PRに対応する部分を露光する(ステップS51、第2レジスト層第1露光工程)。
【0161】
図11では、第2レジストに、ポジ型のフォトレジストを用いた場合を例に挙げて図示している。そこで、マスクM2には、第2レジスト層RL2における、第1領域形成予定領域431PRに対応する部分を露出させるマスクを使用する。言い換えれば、マスクM2には、該マスクM2における、第1領域形成予定領域431PRに対応する部分が透光性を有し、第1領域形成予定領域431PRに対応する部分以外の部分が遮光性を有するように開口(光学開口)が設けられたマスクを使用する。
【0162】
なお、上記ステップS51における、UV照射強度等の光照射強度は、第2レジスト層RL2における、第1領域形成予定領域431PRに対応する部分が現像により除去されるように第2レジスト層RL2の層厚等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0163】
次いで、第2レジスト層RL2を、現像液で現像する(ステップS52、第2レジスト層第1現像工程)。これにより、第2レジスト層RL2における露光部分が除去され、第2レジスト層RL2における、第1領域形成予定領域431PRに対応する部分に、上記開口部OP2aが形成される。
【0164】
上記現像液としては、例えば、前記例示の現像剤を用いることができる。該現像液の濃度もまた、レジスト層(本ステップS52では第2レジスト層RL2)の層厚、並びに現像液の種類等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。
【0165】
なお、
図11では、第1レジスト層RL1と同様に、第2レジスト層RL2に、ポジ型のフォトレジストを用いた場合を例に挙げて図示している。しかしながら、第2レジスト層RL2もまた、ポジ型のフォトレジストに代えて、ネガ型のフォトレジストを用いてもよい。この場合、上記マスクM2としては、第2レジスト層RL2における、第1領域形成予定領域431PRに対応する部分以外の部分を露出させるマスクを用いればよい。
【0166】
なお、以下の工程でも、レジスト層としては、ネガ型のフォトレジストを用いてもよく、これらレジスト層の層厚、露光強度、現像液としては、上述した説明と同様であるため、以下、これらの説明を省略する。
【0167】
このように、第2レジスト層RL2における、第1領域形成予定領域431PRに対応する部分を露光および現像して第2レジスト層RL2をパターニングすることで、赤色QD含有層パターン143PRにおける、上記第1領域形成予定領域431PRのみを露出させることができる。
【0168】
そこで、上記第2レジスト層第1パターニング工程後、続いて、赤色QD含有層パターン143PRにおける、上記開口部OP2aから露出している上記第1領域形成予定領域431PRに、第1無機リガンドとして無機リガンド53Rを含む第1無機リガンド溶液を塗布する。これにより、上記第1領域形成予定領域431PRに、無機リガンド53Rを供給する(ステップS37、第1無機リガンド供給工程)。
【0169】
このように上記第1領域形成予定領域431PRに無機リガンド53Rを供給することで、該第1領域形成予定領域431PRにおける単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Rの数が、上記第1領域形成予定領域431PR以外の領域における単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Rの数よりも多くなる。本実施形態では、上記赤色QD含有層パターン143PRにおける、上記第1領域形成予定領域431PR以外の領域が、EML43Rの第2領域432Rとなる。
【0170】
上記第1領域形成予定領域431PRに供給された第1無機リガンド溶液中に含まれる無機リガンド53Rの少なくとも一部は、上記第1領域形成予定領域431PRにおけるQD51Rに配位する。
【0171】
上記第1無機リガンド溶液は、上記無機リガンド53Rと、該無機リガンド53Rを溶解または分散させる第1溶媒と、を含んでいる。EML43Rは、上記第1領域形成予定領域431PRに塗布された第1無機リガンド溶液に含まれる溶媒を除去して乾燥させることで形成される。
【0172】
上記第1溶媒としては、室温で液体の、水以外の極性溶媒が好適に用いられる。上記第1溶媒としては、例えば、DMSO(ジメチルスルホキシド)等の非水系極性溶媒、または、メタノール、エタノール等の両性溶媒が挙げられる。
【0173】
上記第1無機リガンド溶液における無機リガンド53Rの濃度および上記第1無機リガンド溶液の供給にかける時間は、特に限定されるものではなく、第1領域431Rにおける、有機リガンド52Rと無機リガンド53Rとの合計数に占める無機リガンド53Rの割合が前述した所望の割合になるように適宜設定すればよい。
【0174】
また、上記第1溶媒の除去温度(言い換えれば、乾燥温度)並びに乾燥時間も特に限定されるものではなく、上記第1溶媒が除去されるように適宜設定すればよい。
【0175】
これにより、第1領域431Rと、第2領域432Rと、を有するEML43Rが形成される。
【0176】
図12は、上記第2発光層形成工程(ステップS22)の一部の一例を示す断面図である。
【0177】
本実施形態に係る第2発光層形成工程では、上記EML43Rにおける第1領域431Rの形成に用いた第2レジスト層RL2を、除去することなく、そのまま、第2発光層としてのEML43Gの形成に利用する。
【0178】
このため、第2発光層形成工程では、
図12に示すように、上記第1無機リガンド供給工程(ステップS37)後、まず、上記開口部OP2a内に上記第2レジストを再度塗布して上記開口部OP2aを上記第2レジストで埋め戻す(ステップS61、第2レジスト再塗布工程)。これにより、HTL42上に、EML43Rを覆うベタ状の第2レジスト層RL2が形成される。
【0179】
このように上記開口部OP2aを上記第2レジストで埋め戻すことで、EML43Rにおける第1領域431Rの形成に用いた第2レジスト層RL2を利用することができる。このため、第1領域431Rの形成後に、第1領域431Rの形成に用いた第2レジスト層RL2を剥離したり、該第2レジスト層RL2の剥離後に、EML43Gを形成するために、一からレジスト層を形成したりする必要がない。したがって、そのような場合と比較して、レジストの塗布・剥離回数を低減することができる。
【0180】
上記第2レジスト再塗布工程(ステップS61)後、続いて、上記第2レジスト層RL2における、緑色EML形成予定領域43PGに対応する部分を露光および現像する。これにより、第2発光層としてのEML43Gの形成予定領域に対応する部分の第2レジスト層RL2を除去して該第2レジスト層RL2をパターニングする(ステップS62、第2レジスト層第2パターニング工程)。
【0181】
ここで、緑色EML形成予定領域43PGとは、下地層であるHTL42上における、EML43Gの形成予定領域(第2発光層形成予定領域)を示す。
【0182】
上記第2レジスト層第2パターニング工程(ステップS62)は、上述したように、第2レジスト層RL2における、緑色EML形成予定領域43PGに対応する部分を露光する第2レジスト層第2露光工程(ステップS71)と、第2レジスト層RL2を現像液で現像する第2レジスト層第2現像工程(ステップS72)と、を含んでいる。
【0183】
上記第2レジスト層第2パターニング工程では、まず、第2レジスト層RL2における、緑色EML形成予定領域43PGに対応する部分を露出させるマスクM3を用いて、上記第2レジスト層RL2を露光する(ステップS71、第2レジスト層第2露光工程)。マスクM3には、該マスクM3における、緑色EML形成予定領域43PGに対応する部分が透光性を有し、緑色EML形成予定領域43PGに対応する部分以外の部分が遮光性を有するように開口(光学開口)が設けられたマスクを使用する。
【0184】
次いで、上記第2レジスト層RL2を、現像液で現像する(ステップS72、第2レジスト層第2現像工程)。これにより、第2レジスト層RL2における露光部分が除去され、HTL42上における、緑色EML形成予定領域43PG以外の部分にのみ、第2レジスト層RL2からなる第2レジストパターンRP2が形成される。
【0185】
上記第2レジスト層第2パターニング工程後、続いて、第2QD含有層としての緑色QD含有層143Gを、複数のサブ画素SP全体(つまり、画素領域DA全体)を覆ってベタ状に形成する(ステップS63、第2QD含有層形成工程)。緑色QD含有層143Gは、第2QDとしてのQD51Gと、第2有機リガンドとしての有機リガンド52Gおよび第2無機リガンドとしての無機リガンド53Gのうち少なくとも有機リガンド52Gと、を含む。
【0186】
次いで、第2レジスト層RL2からなる第2レジストパターンRP2を、例えば前述したレジスト溶剤で剥離する。これにより、第2レジストパターンRP2上の緑色QD含有層143Gをリフトオフして、緑色EML形成予定領域43PG以外の緑色QD含有層143Gを除去する(ステップS64、第2QD含有層パターニング工程)。
【0187】
上記ステップS61~S64を行うことで、緑色EML形成予定領域43PGに、緑色QD含有層143Gからなる、第2QD含有層パターンとしての緑色QD含有層パターン143PGが形成される。
【0188】
図13は、上記第2発光層形成工程(ステップS22)における
図12の後の工程を、一部拡大して模式的に示す断面図である。なお、
図13では、図示の便宜上、QD51R、QD51G、およびリガンドの数を省略して示している。
【0189】
上記第2QD含有層パターニング工程後、本実施形態では、
図13に示すように、まず、下地層としてのHTL42上に、EML43Rおよび上記緑色QD含有層パターン143PGを覆うように、複数のサブ画素SP全体(つまり、画素領域DA全体)を覆う第3レジストを塗布する。これにより、上記EML43Rおよび上記緑色QD含有層パターン143PGが形成されたHTL42上に、ベタ状の第3レジスト層RL3を形成する(ステップS65、第3レジスト層形成工程)。
【0190】
次に、第3レジスト層RL3における、第1領域形成予定領域431PGに対応する部分を露光および現像する。これにより、該第3レジスト層RL3に、緑色QD含有層パターン143PG(つまり、パターン化された緑色QD含有層143G)における第1領域形成予定領域431PGを露出させる開口部OP4a(第2開口部)を形成する(ステップS66、第3レジスト層第1パターニング工程)。ここで、第1領域形成予定領域431PGとは、最終的に、第2発光層としてのEML43Gにおける第1領域431Gを形成する領域を示す。
【0191】
上記第3レジスト層第1パターニング工程(ステップS66)は、上述したように、第3レジスト層RL3における、第1領域形成予定領域431PGに対応する部分を露光する第3レジスト層第1露光工程(ステップS81)と、第3レジスト層RL3を現像液で現像する第3レジスト層第1現像工程(ステップS82)と、を含んでいる。
【0192】
上記第3レジスト層第1パターニング工程では、まず、マスクM4を用いて、上記第3レジスト層RL3における、第1領域形成予定領域431PGに対応する部分を露光する(ステップS81、第3レジスト層第1露光工程)。
【0193】
図13では、第3レジストに、ポジ型のフォトレジストを用いた場合を例に挙げて図示している。そこで、マスクM4には、第3レジスト層RL3における、第1領域形成予定領域431PGに対応する部分を露出させるマスクを使用する。言い換えれば、マスクM4には、該マスクM4における、第1領域形成予定領域431PGに対応する部分が透光性を有し、第1領域形成予定領域431PGに対応する部分以外の部分が遮光性を有するように開口(光学開口)が設けられたマスクを使用する。
【0194】
次いで、第3レジスト層RL3を、現像液で現像する(ステップS82、第3レジスト層第1現像工程)。これにより、第3レジスト層RL3における露光部分が除去され、第3レジスト層RL3における、第1領域形成予定領域431PGに対応する部分に、上記開口部OP4aが形成される。
【0195】
このように、第3レジスト層RL3における、第1領域形成予定領域431PGに対応する部分を露光および現像して第3レジスト層RL3をパターニングすることで、緑色QD含有層パターン143PGにおける第1領域形成予定領域431PGのみを露出させることができる。
【0196】
そこで、上記第3レジスト層第1パターニング工程後、続いて、緑色QD含有層パターン143PGにおける、上記開口部OP4aから露出している上記第1領域形成予定領域431PGに、第2無機リガンドとして無機リガンド53Gを含む第2無機リガンド溶液を塗布する。これにより、上記第1領域形成予定領域431PGに、無機リガンド53Gを供給する(ステップS67、第2無機リガンド供給工程)。
【0197】
このように上記第1領域形成予定領域431PGに無機リガンド53Gを供給することで、該第1領域形成予定領域431PGにおける単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Gの数が、上記第1領域形成予定領域431PG以外の領域における単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Gの数よりも多くなる。本実施形態では、上記緑色QD含有層パターン143PGにおける、上記第1領域形成予定領域431PG以外の領域が、EML43Gの第2領域432Gとなる。
【0198】
上記第1領域形成予定領域431PGに供給された第2無機リガンド溶液中に含まれる無機リガンド53Gの少なくとも一部は、上記第1領域形成予定領域431PGにおけるQD51Gに配位する。
【0199】
上記第2無機リガンド溶液は、上記無機リガンド53Gと、該無機リガンド53Gを溶解または分散させる第2溶媒と、を含んでいる。EML43Gは、上記第1領域形成予定領域431PGに塗布された第2無機リガンド溶液に含まれる溶媒を除去して乾燥させることで形成される。
【0200】
上記第2溶媒としては、第1溶媒として例示した溶媒と同様の溶媒が挙げられる。上記第2無機リガンド溶液における無機リガンド53Gの濃度および上記第2無機リガンド溶液の供給にかける時間も、特に限定されるものではなく、第1領域431Gにおける、有機リガンド52Gと無機リガンド53Gとの合計数に占める無機リガンド53Gの割合が前述した所望の割合になるように適宜設定すればよい。
【0201】
また、上記第2溶媒の除去温度(言い換えれば、乾燥温度)並びに乾燥時間も特に限定されるものではなく、上記第2溶媒が除去されるように適宜設定すればよい。
【0202】
これにより、第1領域431Gと、第2領域432Gと、を有するEML43Gが形成される。
【0203】
図14は、上記第3発光層形成工程(ステップS23)の一部の一例を示す断面図である。
【0204】
本実施形態に係る第3発光層形成工程では、上記EML43Gにおける第1領域431Gの形成に用いた第3レジスト層RL3を、除去することなく、そのまま、第3発光層としてのEML43Bの形成に利用する。
【0205】
このため、第3発光層形成工程では、
図14に示すように、上記第2無機リガンド供給工程(ステップS67)後、まず、上記開口部OP4a内に上記第3レジストを再度塗布して上記開口部OP4aを上記第3レジストで埋め戻す(ステップS91、第3レジスト再塗布工程)。これにより、HTL42上に、EML43RおよびEML43Gを覆うベタ状の第3レジスト層RL3が形成される。
【0206】
このように上記開口部OP4aを上記第3レジストで埋め戻すことで、EML43Gにおける第1領域431Gの形成に用いた第3レジスト層RL3を利用することができる。このため、第1領域431Gの形成後に、第1領域431Gの形成に用いた第3レジスト層RLGを剥離したり、該第3レジスト層RL3の剥離後に、EML43Bを形成するために、一からレジスト層を形成したりする必要がない。したがって、そのような場合と比較して、レジストの塗布・剥離回数を低減することができる。
【0207】
上記第3レジスト再塗布工程(ステップS91)後、続いて、上記第3レジスト層RL3における、青色EML形成予定領域43PBに対応する部分を露光および現像する。これにより、第3発光層としてのEML43Bの形成予定領域に対応する部分の第3レジスト層RL3を除去して該第3レジスト層RL3をパターニングする(ステップS92、第3レジスト層第2パターニング工程)。
【0208】
ここで、青色EML形成予定領域43PBとは、下地層であるHTL42上における、EML43Bの形成予定領域(第3発光層形成予定領域)を示す。
【0209】
上記第3レジスト層第2パターニング工程(ステップS92)は、上述したように、第3レジスト層RL3における、青色EML形成予定領域43PBに対応する部分を露光する第3レジスト層第2露光工程(ステップS101)と、第3レジスト層RL3を現像液で現像する第3レジスト層第2現像工程(ステップS102)と、を含んでいる。
【0210】
上記第3レジスト層第2パターニング工程では、まず、第3レジスト層RL3における、青色EML形成予定領域43PBに対応する部分を露出させるマスクM5を用いて、上記第3レジスト層RL3を露光する(ステップS101、第3レジスト層第3露光工程)。マスクM5には、該マスクM5における、青色EML形成予定領域43PBに対応する部分が透光性を有し、青色EML形成予定領域43PBに対応する部分以外の部分が遮光性を有するように開口(光学開口)が設けられたマスクを使用する。
【0211】
次いで、上記第3レジスト層RL3を、現像液で現像する(ステップS102、第3レジスト層第2現像工程)。これにより、第3レジスト層RL3における露光部分が除去され、HTL42上における、青色EML形成予定領域43PB以外の部分にのみ、第3レジスト層RL3からなる第3レジストパターンRP3が形成される。
【0212】
上記第3レジスト層第2パターニング工程後、続いて、第3QD含有層としての青色QD含有層143Bを、複数のサブ画素SP全体(つまり、画素領域DA全体)を覆ってベタ状に形成する(ステップS93、第3QD含有層形成工程)。青色QD含有層143Bは、第3QDとしてのQD51Bと、第3有機リガンドとしての有機リガンド52Bおよび第3無機リガンドとしての無機リガンド53Bのうち少なくとも有機リガンド52Bと、を含む。
【0213】
次いで、第3レジスト層RL3からなる第3レジストパターンRP3を、例えば前述したレジスト溶剤で剥離する。これにより、第3レジストパターンRP3上の青色QD含有層143Bをリフトオフして、青色EML形成予定領域43PB以外の青色QD含有層143Bを除去する(ステップS94、第3QD含有層パターニング工程)。
【0214】
上記ステップS91~S94を行うことで、青色EML形成予定領域43PBに、青色QD含有層143Bからなる、第3QD含有層パターンとしての青色QD含有層パターン143PBが形成される。
【0215】
図15は、上記第3発光層形成工程(ステップS23)における
図14の後の工程を、一部拡大して模式的に示す断面図である。なお、
図15では、図示の便宜上、QD51R、QD51G、QD51B、およびリガンドの数を省略して示している。
【0216】
上記第3QD含有層パターニング工程後、本実施形態では、
図15に示すように、まず、下地層としてのHTL42上に、EML43R、EML43G、および上記青色QD含有層パターン143PBを覆うように、複数のサブ画素SP全体(つまり、画素領域DA全体)を覆う第4レジストを塗布する。これにより、上記EML43R、EML43G、および上記青色QD含有層パターン143PBが形成されたHTL42上に、ベタ状の第4レジスト層RL4を形成する(ステップS95、第4レジスト層形成工程)。
【0217】
次に、第4レジスト層RL4における、第1領域形成予定領域431PBに対応する部分を露光および現像する。これにより、該第4レジスト層RL4に、青色QD含有層パターン143PB(つまり、パターン化された青色QD含有層143B)における第1領域形成予定領域431PBを露出させる開口部OP6a(第3開口部)を形成する(ステップS96、第4レジスト層第1パターニング工程)。ここで、第1領域形成予定領域431PBとは、最終的に、第3発光層としてのEML43Bにおける第1領域431Bを形成する領域を示す。
【0218】
上記第4レジスト層第1パターニング工程(ステップS96)は、上述したように、第4レジスト層RL4における、第1領域形成予定領域431PBに対応する部分を露光する第4レジスト層第1露光工程(ステップS111)と、第4レジスト層RL4を現像液で現像する第4レジスト層第1現像工程(ステップS112)と、を含んでいる。
【0219】
上記第4レジスト層第1パターニング工程では、まず、マスクM5を用いて、上記第4レジスト層RL4における、第1領域形成予定領域431PBに対応する部分を露光する(ステップS111、第4レジスト層第1露光工程)。
【0220】
図15では、第4レジストに、ポジ型のフォトレジストを用いた場合を例に挙げて図示している。そこで、マスクM6には、第4レジスト層RL4における、第1領域形成予定領域431PBに対応する部分を露出させるマスクを使用する。言い換えれば、マスクM6には、該マスクM6における、第1領域形成予定領域431PBに対応する部分が透光性を有し、第1領域形成予定領域431PBに対応する部分以外の部分が遮光性を有するように開口(光学開口)が設けられたマスクを使用する。
【0221】
次いで、第4レジスト層RL4を、現像液で現像する(ステップS112、第4レジスト層第1現像工程)。これにより、第4レジスト層RL4における露光部分が除去され、第4レジスト層RL4における、第1領域形成予定領域431PBに対応する部分に、上記開口部OP6aが形成される。
【0222】
このように、第4レジスト層RL4における、第1領域形成予定領域431PBに対応する部分を露光および現像して第4レジスト層RL4をパターニングすることで、青色QD含有層パターン143PBにおける第1領域形成予定領域431PBのみを露出させることができる。
【0223】
そこで、上記第4レジスト層第1パターニング工程後、続いて、青色QD含有層パターン143PBにおける、上記開口部OP6aから露出している上記第1領域形成予定領域431PBに、第3無機リガンドとして無機リガンド53Bを含む第3無機リガンド溶液を塗布する。これにより、上記第1領域形成予定領域431PBに、無機リガンド53Bを供給する(ステップS97、第3無機リガンド供給工程)。
【0224】
このように上記第1領域形成予定領域431PBに無機リガンド53Bを供給することで、該第1領域形成予定領域431PBにおける単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Bの数が、上記第1領域形成予定領域431PB以外の領域における単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Bの数よりも多くなる。本実施形態では、上記青色QD含有層パターン143PBにおける、上記第1領域形成予定領域431PB以外の領域が、EML43Bの第2領域432Bとなる。
【0225】
上記第1領域形成予定領域431PBに供給された第3無機リガンド溶液中に含まれる無機リガンド53Bの少なくとも一部は、上記第1領域形成予定領域431PBにおけるQD51Bに配位する。
【0226】
上記第3無機リガンド溶液は、上記無機リガンド53Bと、該無機リガンド53Bを溶解または分散させる第3溶媒と、を含んでいる。EML43Bは、上記第1領域形成予定領域431PBに塗布された第3無機リガンド溶液に含まれる溶媒を除去して乾燥させることで形成される。
【0227】
上記第3溶媒としては、第1溶媒として例示した溶媒と同様の溶媒が挙げられる。上記第3無機リガンド溶液における無機リガンド53Bの濃度および上記第3無機リガンド溶液の供給にかける時間も、特に限定されるものではなく、第1領域431Bにおける、有機リガンド52Bと無機リガンド53Bとの合計数に占める無機リガンド53Bの割合が前述した所望の割合になるように適宜設定すればよい。
【0228】
また、上記第3溶媒の除去温度(言い換えれば、乾燥温度)並びに乾燥時間も特に限定されるものではなく、上記第3溶媒が除去されるように適宜設定すればよい。
【0229】
これにより、第1領域431Bと、第2領域432Bと、を有するEML43Bが形成される。
【0230】
次いで、上記第4レジスト層RL4を、例えば前述したレジスト溶剤で溶解することにより、除去する(ステップS98、第4レジスト層除去工程)。これにより、HTL42上に、第1領域431Rと第2領域432Rとを有するEML43Rと、第1領域431Gと第2領域432Gとを有するEML43Gと、第1領域431Bと第2領域432Bとを有するEML43Bと、を含む、島状の複数のEML43を形成することができる。
【0231】
本実施形態によれば、上述したように、第1発光層における第1領域431の形成後、並びに、第2発光層における第1領域431の形成後に、これら第1領域431の形成に用いたレジスト層を剥離することなく、これらレジスト層に設けられた開口部のみに再度レジストを塗布して、これらレジスト層を埋め戻す。このため、上述したようにレジストの塗布・剥離回数を低減し、レジスト層で覆われたままのサブ画素周辺部のQD51を保護することができる。なお、第1領域431となるサブ画素中央部では、レジスト塗布・剥離の回数が増えるが、第1領域431のQD51は、無機リガンド53で保護されるので、劣化し難い。
【0232】
また、本実施形態によれば、上述したように、各色のサブ画素SP毎に第1領域431を形成するため、サブ画素SPの発光色に応じて、異なる無機リガンド53を使用することができる。
【0233】
本実施形態によれば、
図7~
図15に示す各工程を行うことで、本実施形態に係る表示装置1を製造することができる。なお、本実施形態に係る表示装置1の製造方法は、
図7に示す第2電極形成工程(ステップS5)の後に、発光素子層3の上層に、封止層等を形成する工程をさらに備えていてもよい。
【0234】
以上のように、本実施形態に係る表示装置1の製造方法は、第1電極を形成する第1電極形成工程と、機能層33を形成する機能層形成工程と、第2電極を形成する第2電極形成工程と、を含んでいる。また、上記機能層形成工程は、EML43を形成する発光層形成工程を含んでいる。そして、上記発光層形成工程では、各サブ画素SPに、発光層として、以下の構成を有するEML43を形成する。上記発光層形成工程で形成されるEML43は、(1)QD51と、有機リガンド52と、無機リガンド53と、を含む第1領域431と、(2)上記QD51と、上記有機リガンド52および上記無機リガンド53のうち少なくとも上記有機リガンド52と、を含み、単位体積当たりに含まれる上記無機リガンド53の数が、上記第1領域431の上記単位体積当たりに含まれる上記無機リガンド53の数よりも少ない第2領域432と、を含んでいる。そして、上記第1領域431は、それぞれのサブ画素SPにおける上記EML43の中央部を含んでいる。上記第2領域432は、各サブ画素SPのEML43における、他のサブ画素SPと隣り合う端部を少なくとも含んでいる。
【0235】
これにより、本実施形態によれば、無機リガンド53による発光効率の向上と、隣り合うサブ画素SPからのリーク電流による発光の抑制と、を両立することができ、サブ画素SPの間隔を、より狭くすることができるとともに、表示品位に優れた表示装置1を製造する方法を提供することができる。
【0236】
(変形例)
但し、本実施形態に係る表示装置1の製造方法は、上記方法に限定されるものではない。
図16は、本実施形態に係る第3発光層形成工程(ステップS23)の一部の他の一例を示す断面図である。
図16は、
図14に示すステップS93(第3QD含有層形成工程)の後の工程を示す断面図である。
【0237】
本変形例では、
図14に示すステップS93(第3QD含有層形成工程)の後、続いて、ベタ状の青色QD含有層143Bを覆うように、複数のサブ画素のSP全体(つまり、画素領域DA全体)を覆う第4レジストを塗布する。これにより、上記青色QD含有層143B上に、ベタ状の第4レジスト層RL4を形成する(ステップS121、第4レジスト層形成工程)。
【0238】
次に、第4レジスト層RL4における、第1領域形成予定領域431PBに対応する部分を露光および現像する。これにより、該第4レジスト層RL4に、青色QD含有層143Bにおける第1領域形成予定領域431PBを露出させる開口部OP6a(第3開口部)を形成する(ステップS122、第4レジスト層第1パターニング工程)。
【0239】
上記第4レジスト層第1パターニング工程(ステップS122)は、上述したように、第4レジスト層RL4における、第1領域形成予定領域431PBに対応する部分を露光する第4レジスト層第1露光工程(ステップS131)と、第4レジスト層RL4を現像液で現像する第4レジスト層第1現像工程(ステップS132)と、を含んでいる。
【0240】
上記第4レジスト層第1パターニング工程では、まず、マスクM5を用いて、上記第4レジスト層RL4における、第1領域形成予定領域431PBに対応する部分を露光する(ステップS131、第4レジスト層第1露光工程)。
【0241】
次いで、第4レジスト層RL4を、現像液で現像する(ステップS132、第4レジスト層第1現像工程)。これにより、第4レジスト層RL4における露光部分が除去され、第4レジスト層RL4における、第1領域形成予定領域431PBに対応する部分に、上記開口部OP6aが形成される。
【0242】
なお、第4レジスト層RL4の下層が異なるだけで、操作そのものは、ステップS122はステップS96と同じであり、ステップS131はステップS111と同じであり、ステップS132はステップS112と同じである。これにより、青色QD含有層143Bにおける第1領域形成予定領域431PBのみを露出させることができる。
【0243】
そこで、上記第4レジスト層第1パターニング工程後、続いて、上記青色QD含有層143Bにおける、上記開口部OP6aから露出している上記第1領域形成予定領域431PBに、第3無機リガンドとして無機リガンド53Bを含む第3無機リガンド溶液を塗布する。これにより、上記第1領域形成予定領域431PBに、無機リガンド53Bを供給する(ステップS123、第3無機リガンド供給工程)。
【0244】
これにより、上記第1領域形成予定領域431PBにおける単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Bの数が、上記第1領域形成予定領域431PB以外の領域における単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Bの数よりも多くなる。このため、本変形例でも、上記第1領域形成予定領域431PBに、第1領域431Bが形成される。
【0245】
その後、本変形例でも、上記第1領域形成予定領域431PBに塗布された第3無機リガンド溶液に含まれる溶媒を除去して乾燥させた後、レジスト溶剤で、レジスト層を除去する。
【0246】
但し、本変形例ではステップS93の後、ステップS94(第3QD含有層パターニング工程)を行わずに、ステップS95に対応する、第4レジスト層形成工程(ステップS121)を行っている。このため、青色EML形成予定領域43PB以外の領域に、EML43RおよびEML43Gを覆う第3レジスト層RL3および青色QD含有層143Bが残っている。
【0247】
このため、本変形例では、ここで、レジスト溶剤によって第4レジスト層RL4が除去されるとともに、レジスト溶剤による第3レジスト層RL3の剥離により、該第3レジスト層RL3上の青色QD含有層143Bがリフトオフされる。これにより、ここで、青色EML形成予定領域43PB以外の領域の青色QD含有層143Bが除去される(ステップS124、第3QD含有層パターニング工程)。
【0248】
本変形例によれば、以上のように、第3レジスト層RL3の剥離による第3QD含有層パターニング工程と、第4レジスト層除去工程とを、同時(つまり、同じ工程)で行うことができる。このため、タクトタイムを短くすることができ、上述した、本実施形態にかかる表示装置1を、より簡便に製造することができる。
【0249】
〔実施形態2〕
実施形態1では、発光色が異なるQD上にレジストを塗布する工程を利用してレジストの塗布・剥離回数を低減する場合を例に挙げて説明した。つまり、実施形態1では、第2発光層の形成に、第1発光層における第1領域431の形成に用いたレジスト層を利用し、第3発光層の形成に、第2発光層における第1領域431の形成に用いたレジスト層を利用する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、表示装置1の製造方法は、これに限定されるものではなく、赤色QD含有層パターン143PR、緑色QD含有層パターン143PG、および青色QD含有層パターン143PBをそれぞれ形成してから無機リガンド53を供給してもよい。
【0250】
図17および
図18は、それぞれ、本実施形態に係る発光層形成工程(ステップS13)の一部の工程の一例を示す断面図である。
図19は、本実施形態に係る発光層形成工程(ステップS13)の一部の工程の一例に係る各色のEML43の一部を拡大して模式的に示す断面図である。なお、
図18は、
図17の後の工程を示している。
図19は、
図18の後の工程を示している。
【0251】
本実施形態では、まず、
図10に示すステップS31(第1レジスト層形成工程)~ステップS34(第1QD含有層パターニング工程)を行う。これにより、
図10にS34で示すように、赤色EML形成予定領域43PRに、赤色QD含有層143Rからなる赤色QD含有層パターン143PRを形成する。
【0252】
次いで、
図11および
図17にS35で示すように、複数のサブ画素SP全体(つまり、画素領域DA全体)を覆う第2レジストを塗布する。これにより、上記赤色QD含有層パターン143PRが形成されたHTL42上に、ベタ状の第2レジスト層RL2を形成する(ステップS35、第2レジスト層形成工程)。ここまでは、実施形態1と同じである。
【0253】
本実施形態では、上記第2レジスト層形成工程(ステップS34)の後、続いて、
図17に示すように、上記第2レジスト層RL2における、緑色EML形成予定領域43PGに対応する部分を露光および現像する。これにより、緑色EML形成予定領域43PGの第2レジスト層RL2を除去して該第2レジスト層RL2をパターニングする(ステップS141、第2レジスト層パターニング工程)。
【0254】
上記第2レジスト層パターニング工程(ステップS141)は、上述したように、第2レジスト層RL2における、緑色EML形成予定領域43PGに対応する部分を露光する第2レジスト層露光工程(ステップS151)と、第2レジスト層RL2を現像液で現像する第2レジスト層現像工程(ステップS152)と、を含んでいる。
【0255】
なお、EML43Rの代わりに、第1領域431Rおよび第2領域432Rが設けられていない赤色QD含有層パターン143PRが設けられていることを除けば、ステップS141は、
図12に示すステップS62と同じである。このため、操作そのものは、ステップS141はステップS62と同じであり、ステップS151はステップS71と同じであり、ステップS152はステップS72と同じである。
【0256】
このため、上記第2レジスト層露光工程(ステップS151)では、第2レジスト層RL2における、緑色EML形成予定領域43PGに対応する部分を露出させるマスクM3を用いて、上記第2レジスト層RL2を露光する。その後、第2レジスト層現像工程(ステップS152)で、上記第2レジスト層RL2を、現像液で現像する。
【0257】
次いで、緑色QD含有層143Gを、複数のサブ画素SP全体(つまり、画素領域DA全体)を覆ってベタ状に形成する(ステップS142、第2QD含有層形成工程)。
【0258】
次いで、第2レジスト層RL2からなる第2レジストパターンRP2を、レジスト溶剤で剥離する。これにより、第2レジストパターンRP2上の緑色QD含有層143Gをリフトオフして、緑色EML形成予定領域43PG以外の緑色QD含有層143Gを除去する(ステップS143、第2QD含有層パターニング工程)。これにより、緑色EML形成予定領域43PGに、緑色QD含有層143Gからなる緑色QD含有層パターン143PGが形成される。
【0259】
なお、ここでも、EML43Rの代わりに上記赤色QD含有層パターン143PRが設けられていることを除けば、ステップS142はステップS63と同じであり、ステップS143はステップS64と同じである。
【0260】
次いで、
図18に示すように、上記赤色QD含有層パターン143PRおよび緑色QD含有層パターン143PGが形成されたHTL42上に、複数のサブ画素SP全体(つまり、画素領域DA全体)を覆うベタ状の第3レジスト層RL3を形成する(ステップS161、第3レジスト層形成工程)。
【0261】
続いて、上記第3レジスト層RL3における、青色EML形成予定領域43PBに対応する部分を露光および現像する。これにより、青色EML形成予定領域43PBの第3レジスト層RL3を除去して該第3レジスト層RL3をパターニングする(ステップS162、第3レジスト層パターニング工程)。
【0262】
上記第3レジスト層パターニング工程(ステップS162)は、上述したように、第3レジスト層RL3における、青色EML形成予定領域43PBに対応する部分を露光する第3レジスト層露光工程(ステップS171)と、第3レジスト層RL3を現像液で現像する第3レジスト層現像工程(ステップS172)と、を含んでいる。
【0263】
なお、EML43RおよびEML43Gの代わりに、第1領域431および第2領域432が設けられていない、赤色QD含有層パターン143PRおよび緑色QD含有層パターン143PGが設けられていることを除けば、ステップS162は、
図14に示すステップS92と同じである。このため、操作そのものは、ステップS162はステップS92と同じであり、ステップS171はステップS101と同じであり、ステップS172はステップS102と同じである。
【0264】
このため、上記第3レジスト層露光工程(ステップS171)では、第3レジスト層RL3における、青色EML形成予定領域43PBに対応する部分を露出させるマスクM5を用いて、上記第3レジスト層RL3を露光する。その後、第3レジスト層現像工程(ステップS172)で、上記第3レジスト層RL3を、現像液で現像する。
【0265】
次いで、青色QD含有層143Bを、複数のサブ画素SP全体(つまり、画素領域DA全体)を覆ってベタ状に形成する(ステップS163、第3QD含有層形成工程)。
【0266】
次いで、第3レジスト層RL3からなる第3レジストパターンRP3を、レジスト溶剤で剥離する。これにより、第3レジストパターンRP3上の青色QD含有層143Bをリフトオフして、青色EML形成予定領域43PB以外の青色QD含有層143Bを除去する(ステップS164、第3QD含有層パターニング工程)。
【0267】
なお、ここでも、EML43RおよびEML43Gの代わりに上記赤色QD含有層パターン143PRおよび上記緑色QD含有層パターン143PGが設けられていることを除けば、ステップS163はステップS93と同じであり、ステップS164はステップS94と同じである。
【0268】
次いで、
図19に示すように、上記赤色QD含有層パターン143PR、緑色QD含有層パターン143PG、および青色QD含有層パターン143PBが形成されたHTL42上に、複数のサブ画素SP全体(つまり、画素領域DA全体)を覆うベタ状の第4レジスト層RL4を形成する(ステップS181、第3レジスト層形成工程)。
【0269】
続いて、上記第4レジスト層RL4における、第1領域形成予定領域431PR、第1領域形成予定領域431PG、および第1領域形成予定領域431PBに対応する部分を露光および現像する。これにより、上記第4レジスト層RL4に、第1領域形成予定領域431PR、第1領域形成予定領域431PG、および第1領域形成予定領域431PBをそれぞれ露出させる開口部OP7aを形成する(ステップS182、第4レジスト層パターニング工程)。
【0270】
上記第4レジスト層パターニング工程(ステップS182)は、上述したように、第4レジスト層RL4における、第1領域形成予定領域431PR、第1領域形成予定領域431PG、および第1領域形成予定領域431PBに対応する部分を露光する第4レジスト層露光工程(ステップS191)と、第4レジスト層RL4を現像液で現像する第4レジスト層現像工程(ステップS192)と、を含んでいる。
【0271】
上記第4レジスト層露光工程(ステップS191)では、マスクM7を用いて、第4レジスト層RL4における、第1領域形成予定領域431PR、第1領域形成予定領域431PG、および第1領域形成予定領域431PBに対応する部分を露光する。
【0272】
上記第4レジスト層現像工程(ステップS192)では、上記露光部分を、現像剤で現像して除去することで、第4レジスト層RL4上に、上記開口部OP7aを形成する。これにより、赤色QD含有層パターン143PRにおける第1領域形成予定領域431PR、緑色QD含有層パターン143PGにおける第1領域形成予定領域431PG、および青色QD含有層パターン143PBにおける第1領域形成予定領域431PBを露出させる。
【0273】
上記第4レジスト層パターニング工程後、続いて、上記開口部OP7aから露出している、上記第1領域形成予定領域431PR、上記第1領域形成予定領域431PG、および上記第1領域形成予定領域431PBに、無機リガンド53を含む無機リガンド溶液をそれぞれ塗布する。これにより、上記第1領域形成予定領域431PR、上記第1領域形成予定領域431PG、および上記第1領域形成予定領域431PBに、それぞれ無機リガンド53を供給する(ステップS183、無機リガンド供給工程)。
【0274】
これにより、上記第1領域形成予定領域431PR、上記第1領域形成予定領域431PG、および上記第1領域形成予定領域431PBにおける単位体積当たりに含まれる無機リガンド53の数が、上記第1領域形成予定領域431PR、上記第1領域形成予定領域431PG、および上記第1領域形成予定領域431PB以外の領域における単位体積当たりに含まれる無機リガンド53の数よりも多くなる。
【0275】
これにより、上記第1領域形成予定領域431PRに第1領域431Rが形成され、上記第1領域形成予定領域431PGに第1領域431Gが形成され、上記第1領域形成予定領域431PBに第1領域431Bが形成される。そして、赤色QD含有層パターン143PRにおける、上記第1領域形成予定領域431PR以外の領域が、EML43Rの第2領域432Rとなる。また、緑色QD含有層パターン143PGにおける、上記第1領域形成予定領域431PG以外の領域が、EML43Gの第2領域432Gとなる。また、青色QD含有層パターン143PBにおける、上記第1領域形成予定領域431PB以外の領域が、EML43Bの第2領域432Bとなる。
【0276】
上記無機リガンド溶液は、無機リガンド53と、該無機リガンド53を溶解または分散させる溶媒と、を含んでいる。すなわち、
図19に示す例では、無機リガンド53R、無機リガンド53G、および無機リガンド53Bとして、同じ無機リガンド53を使用する。
【0277】
なお、上記無機リガンド溶液に用いられる溶媒としては、第1溶媒として例示した溶媒と同様の溶媒が挙げられる。上記無機リガンド溶液における無機リガンド53の濃度および上記無機リガンド溶液の供給にかける時間も、特に限定されるものではなく、第1領域431における、各有機リガンド52と無機リガンド53との合計数に占める無機リガンド53の割合が前述した所望の割合になるように適宜設定すればよい。
【0278】
その後、上記第1領域形成予定領域431PR、上記第1領域形成予定領域431PG、および上記第1領域形成予定領域431PBに塗布された無機リガンド溶液に含まれる溶媒を除去して乾燥させた後、レジスト溶剤で、上記第4レジスト層RL4を除去する(ステップS184、第4レジスト層除去工程)。
【0279】
これにより、HTL42上に、第1領域431Rと第2領域432Rとを有するEML43Rと、第1領域431Gと第2領域432Gとを有するEML43Gと、第1領域431Bと第2領域432Bとを有するEML43Bと、を含む、島状の複数のEML43を形成することができる。
【0280】
なお、上記溶媒の除去温度(言い換えれば、乾燥温度)並びに乾燥時間も特に限定されるものではなく、上記溶媒が除去されるように適宜設定すればよい。
【0281】
上述したように、無機リガンド53R、無機リガンド53G、および無機リガンド53Bとして同じ無機リガンド53を使用する場合、第1領域形成予定領域431PR、第1領域形成予定領域431PG、および第1領域形成予定領域431PBへの無機リガンド53の供給を並行して行うことができる。これにより、レジストの塗布・剥離回数を低減し、タクトタイムを短くすることができ、本実施形態にかかる表示装置1を、より簡便に製造することができる。
【0282】
(変形例1)
図19では、上述したように第1領域形成予定領域431PR、第1領域形成予定領域431PG、および第1領域形成予定領域431PBへの無機リガンド53の供給を並行して行う場合を例に挙げて説明したが、本実施形態は、これに限定されるものではない。
【0283】
例えば、ステップS182で、第4レジスト層RL4における、第1発光層の第1領域形成予定領域のみに開口部を形成して第1無機リガンドを含む第1無機リガンド溶液を供給した後、該開口部を第4レジストで埋め戻す。その後、第2発光層の第1領域形成予定領域のみに開口部を形成して第2無機リガンドを含む第2無機リガンド溶液を供給し、該開口部を第4レジストで埋め戻す。その後、第3発光層の第1領域形成予定陽域のみに開口部を形成して第3無機リガンドを含む第3無機リガンド溶液を供給する。最後に、第4レジスト層RL4を除去する。これにより、EML43R、EML43G、およびEML43Bを形成してもよい。この場合、第1無機リガンド溶液、第2無機リガンド溶液、および第3無機リガンド溶液に、互いに異なる種類あるいは濃度の無機リガンド溶液を用いることもできる。
【0284】
このように、
図18に示すステップS164の後、
図11に示すステップS35~ステップS37と同様の工程を行い、次いで、
図13に示すステップS65~ステップS67と同様の工程を行い、その後、
図15に示すステップS95~ステップS98と同様の工程を行ってもよい。なお、この場合、HTL42上に、QD含有層パターンとして、予め、赤色QD含有層パターン143PR、緑色QD含有層パターン143PGおよび青色QD含有層パターン143PBが形成されていることを除けば、
図11、
図13、および
図15と同じである。このため、本変形例では、図示を省略する。
【0285】
(変形例2)
図20は、本実施形態に係る発光層形成工程(ステップS13)の一部の工程の他の例に係る各色のEML43の一部を拡大して模式的に示す断面図である。なお、
図20は、
図18の後の工程を示している。
【0286】
本変形例では、
図19に示すステップS181~ステップS184に代えて、
図20に示すステップS201を行う。本変形例では、
図20に示すように、無機リガンド53の供給に、マスクとして、レジスト層に代えて、金属マスクM8を使用する。
【0287】
本変形例では、金属マスクM8を精度良く位置合わせして、各サブ画素SPにおける、サブ画素周辺部の第2領域432となる領域(領域432PR、領域432PG、領域432PB)を金属マスクM8で被覆する。そして、第1領域431となる、第1領域形成予定領域431PR、第1領域形成予定領域431PG、および第1領域形成予定領域431PBにそれぞれ無機リガンド53の供給を行う。これにより、
図3および
図4に示すEML43R、EML43G、EML43Bを形成することができる。
【0288】
なお、本変形例では、赤色EML形成予定領域43PRにおける、第1領域形成予定領域431PR以外の領域が、EML43Rにおける第2領域432Rとなる領域432PRになる。また、緑色EML形成予定領域43PGにおける、第1領域形成予定領域431PG以外の領域が、EML43Gにおける第2領域432Gとなる領域432PGになる。また、青色EML形成予定領域43PBにおける、第1領域形成予定領域431PB以外の領域が、EML43Bにおける第2領域432Bとなる領域432PBになる。
【0289】
上記無機リガンド53の供給は、例えば、無機リガンド53を含む無機リガンド溶液の滴下により行われてもよく、ミスト噴霧装置等を用いたスプレーコーティングにより行われてもよい。
【0290】
なお、
図20では、一例として、第1領域形成予定領域431PR、第1領域形成予定領域431PG、および第1領域形成予定領域431PBへの無機リガンド53の供給を並行して行う場合を例に挙げて図示している。しかしながら、本変形例は、これに限定されるものではなく、例えば、以下のようにしてEML43R、EML43G、EML43Bを形成してもよい。
【0291】
つまり、例えば、
図18に示すステップS164の後、まず、第1発光層の第1領域形成予定領域のみに開口部を有する金属マスクを使用して、該第1発光層の第1領域形成予定領域のみに第1無機リガンド溶液を供給する。その後、第2発光層の第1領域形成予定領域のみに開口部を有する金属マスクを使用して、該第2発光層の第1領域形成予定領域のみに第2無機リガンド溶液を供給する。次いで、第3発光層の第1領域形成予定領域のみに開口部を有する金属マスクを使用して、該第3発光層の第1領域形成予定領域のみに第3無機リガンドを供給する。この場合にも、第1無機リガンド溶液、第2無機リガンド溶液、および第3無機リガンド溶液に、互いに異なる種類あるいは濃度の無機リガンド溶液を用いることもできる。
【0292】
(変形例3)
図21は、本実施形態に係る発光層形成工程(ステップS13)の一部の工程の他の例に係る各色のEML43の一部を拡大して模式的に示す断面図である。なお、
図21は、
図18の後の工程を示している。
【0293】
本変形例では、
図19に示すステップS181~ステップS184に代えて、
図21に示すステップS211を行う。本変形例では、
図21に示すように、無機リガンド53の供給に、インクジェット法を使用する。
【0294】
本変形例では、インクジェット装置におけるインクジェットヘッド210のノズルから、第1領域431となる、第1領域形成予定領域431PR、第1領域形成予定領域431PG、および第1領域形成予定領域431PBにそれぞれ無機リガンド53の供給を行う。
【0295】
本変形例では、上記無機リガンド53を含む無機リガンド溶液の粘度および滴下量を調整することで、無機リガンド溶液が、サブ画素SPにおける、サブ画素周辺部の第2領域432となる領域(つまり、領域432PR、領域432PG、および領域432PB)まで広がらないようにする。これにより、
図3および
図4に示すEML43R、EML43G、EML43Bを形成することができる。
【0296】
なお、
図21でも、一例として、第1領域形成予定領域431PR、第1領域形成予定領域431PG、および第1領域形成予定領域431PBへの無機リガンド53の供給を並行して行う場合を例に挙げて図示している。しかしながら、本変形例は、これに限定されるものではない。無機リガンド溶液として、第1無機リガンド溶液、第2無機リガンド溶液、および第3無機リガンド溶液を愛用し、これら無機リガンド溶液の供給に時間差を持たせるとともに、これら無機リガンド溶液の粘度および滴下量を調整して、これら無機リガンド溶液が、各サブ画素SPにおける第2領域432となる部分まで広がらないようにしてもよい。この場合にも、第1無機リガンド溶液、第2無機リガンド溶液、および第3無機リガンド溶液に、互いに異なる種類あるいは濃度の無機リガンド溶液を用いることもできる。
【0297】
(変形例4)
図22は、本変形例に係る発光層形成工程(ステップS13)の一例を示すフローチャートである。
【0298】
図22に示すように、本変形例では、まず、各色のQD分散液として、第1QD分散液の調液(ステップS221a)を行う一方、第2QD分散液の調液(ステップS221b)と、第3QD分散液の調液(ステップS221c)と、第4QD分散液の調液(ステップS221d)と、第5QD分散液の調液(ステップS221e)と、第6QD分散液の調液(ステップS221f)と、を行う。
【0299】
第1QD分散液は、第1QDと、第1有機リガンドと、第1無機リガンドと、溶媒と、を含んでいる。第2QD分散液は、第1QDと、第1有機リガンドおよび第1無機リガンドのうち少なくとも第1有機リガンドと、溶媒と、を含んでいる。第2QD分散液における、単位体積当たりに含まれる第1無機リガンドの数は、第1QD分散液の上記単位体積当たりに含まれる第1無機リガンドの数よりも少ない。
【0300】
また、第3QD分散液は、第2QDと、第2有機リガンドと、第2無機リガンドと、溶媒と、を含んでいる。第4QD分散液は、第2QDと、第2有機リガンドおよび第2無機リガンドのうち少なくとも第2有機リガンドと、溶媒と、を含んでいる。第4QD分散液における、単位体積当たりに含まれる第2無機リガンドの数は、第3QD分散液の上記単位体積当たりに含まれる第2無機リガンドの数よりも少ない。
【0301】
また、第5QD分散液は、第3QDと、第3有機リガンドと、第3無機リガンドと、溶媒と、を含んでいる。第6QD分散液は、第3QDと、第3有機リガンドおよび第3無機リガンドのうち少なくとも第3有機リガンドと、溶媒と、を含んでいる。第6QD分散液における、単位体積当たりに含まれる第3無機リガンドの数は、第5QD分散液の上記単位体積当たりに含まれる第3無機リガンドの数よりも少ない。
【0302】
次いで、上記第1QD分散液を第1発光層の第1領域形成予定領域に塗布した後(ステップS222a)、塗布された第1QD分散液から溶媒を除去する(ステップS223a)。また、上記ステップS222aおよび上記ステップS223aとそれぞれ前後もしくは並行して、上記第2QD分散液を第1発光層の第2領域形成予定領域に塗布した後(ステップS222b)、塗布された第2QD分散液から溶媒を除去する(ステップS223b)。
【0303】
次いで、上記第3QD分散液を第2発光層の第1領域形成予定領域に塗布した後(ステップS224a)、塗布された第3QD分散液から溶媒を除去する(ステップS225a)。また、上記ステップS224aおよび上記ステップS225aとそれぞれ前後もしくは並行して、上記第4QD分散液を第2発光層の第2領域形成予定領域に塗布した後(ステップS224b)、塗布された第4QD分散液から溶媒を除去する(ステップS225b)。
【0304】
次いで、上記第5QD分散液を第3発光層の第1領域形成予定領域に塗布した後(ステップS226a)、塗布された第5QD分散液から溶媒を除去する(ステップS227a)。また、上記ステップS226aおよび上記ステップS227aとそれぞれ前後もしくは並行して、上記第6QD分散液を第3発光層の第2領域形成予定領域に塗布した後(ステップS226b)、塗布された第6QD分散液から溶媒を除去する(ステップS227b)。
【0305】
なお、上記第1QD分散液~第6QD分散液の上記各領域への塗布には、例えば、それぞれ、インクジェット法による塗り分け塗布を用いることができる。
【0306】
これにより、
図3および
図4に示すEML43R、EML43G、EML43Bを形成することができる。
【0307】
〔実施形態3〕
図23は、本実施形態に係る表示装置1の画素領域DAにおけるサブ画素SPの概略構成の一例を示す平面図であり、
図1に示す表示装置1の画素領域DAにおけるサブ画素SPの概略構成の他の一例を示している。なお、
図23は、図示の便宜上、サブ画素SPの数を省略して示している。
【0308】
図23に示すように、本実施形態に係る表示装置1は、第2領域432が、自サブ画素SPのEML43における、他のサブ画素SPと隣り合う端部のうち、自サブ画素SPとは発光色が異なるサブ画素SPと隣り合う端部のみを含んでいる。
【0309】
同一色のサブ画素SP間の光学的なクロストークについては、混色に比べて問題になり難い。そこで、
図23に示すように、EML43における、発光色が異なるサブ画素SPと隣り合う端部に第2領域432が設けられていれば、混色を抑制することができる。
【0310】
なお、このようにEML43における、発光色が異なるサブ画素SPと隣り合う端部にのみ第2領域432が設けられている場合であっても、自サブ画素SPのEML43における第2領域432に隣り合う他のサブ画素SPの端部から自サブ画素SPの第1領域431の端部までの最短距離(Δa)は、2.0μm以上、8.5μm以下の範囲内であることが望ましい。
【0311】
〔実施形態4〕
図24は、本実施形態に係る表示装置1の画素領域DAにおけるサブ画素SPの概略構成の一例を示す平面図であり、
図1に示す表示装置1の画素領域DAにおけるサブ画素SPの概略構成のさらに他の一例を示している。なお、
図24は、図示の便宜上、サブ画素SPの数を省略して示している。
【0312】
図24に示すように、本実施形態に係る表示装置1は、第2領域432が、自サブ画素SPのEML43における、他のサブ画素SPと隣り合う端部のうち、自サブ画素SPの発光ピーク波長よりも短波長の発光ピーク波長を有する光を発するサブ画素SPと隣り合う端部のみを含んでいる。
【0313】
一般的に、QLED(ナノLED)は、発光ピーク波長が短い発光色ほど最大駆動電圧(Vd)が高い。このため、自サブ画素SPに隣り合う、発光対象のサブ画素SPの方が発光ピーク波長が長波長である場合、該長波長のサブ画素SPの駆動によるリーク電流で、発光ピーク波長が短い自サブ画素SPは発光し難い。
【0314】
実施形態1で説明したように、サブ画素RSPにおける発光ピーク波長(λ)が620nmであり、Eg=2.0eVとすると、サブ画素RSPの発光閾値電圧は、理想的な場合、2.0Vとなる。また、サブ画素GSPにおける発光ピーク波長(λ)が530nmであり、Eg=2.3eVとすると、サブ画素GSPの発光閾値電圧は、理想的な場合、2.3Vとなる。また、サブ画素BSPにおける発光ピーク波長(λ)が450nmであり、Eg=2.8eVとすると、サブ画素BSPの発光閾値電圧は、理想的な場合、2.8Vとなる。
【0315】
したがって、
図24に示す表示装置1では、サブ画素RSPのEML43Rにおける、サブ画素GSPに隣り合う端部およびサブ画素BSPに隣り合う端部に、それぞれ第2領域432Rが設けられている。また、サブ画素GSPのEML43Gには、サブ画素BSPに隣り合う端部にのみ、第2領域432Gが設けられている。しかしながら、サブ画素BSPのEML43Bには、第2領域432Bは設けられていない。
【0316】
なお、
図24に示す例では、EML43Rにおける、第2領域432R以外の領域が第1領域431Rであり、EML43Gにおける、第2領域432G以外の領域が第1領域431Gである。
【0317】
EML43Bは、第2領域432Bを備えていなくとも、上述したようにサブ画素RSPおよびサブ画素GSPからのリーク電流によるサブ画素BSPでの混色は生じ難い。このため、EML43Bでは、実施形態1~3における第1領域431Bと同様に、有機リガンド52Bと無機リガンド53Bとの合計数に占める無機リガンド53Bの割合が、8.2%以上、100%以下であることが好ましく、8.2%以上、82%以下であることがより好ましく、41%以上、82%以下であることがさらに好ましい。このように、EML43Bでは、領域によって単位体積当たりの無機リガンド53Bの数の差がなく、EML43B全体に概ね均一に無機リガンド53Bが含まれていてもよい。
【0318】
(変形例)
実施形態1~3では、各サブ画素SPにおけるEML43に、それぞれ第1領域431と第2領域432とが設けられている場合を例に挙げて説明した。しかしながら、一例として例えば
図24に示すように、本開示に係る表示装置1は、全てのサブ画素SPが第1領域431と第2領域432とを備えている必要は必ずしもない。
【0319】
本開示に係る表示装置1は、複数のサブ画素SPのうち、少なくとも1つのサブ画素SPのEML43が、第1領域431と第2領域432とを含み、第1領域431が、上記少なくとも1つのサブ画素SPのEML43の中央部を含み、第2領域432が、上記少なくとも1つのサブ画素SPのEML43における、該少なくとも1つのサブ画素SPにそれぞれ隣り合う他のサブ画素SPと隣り合う端部のうち少なくとも1つの端部を含んでいればよい。これにより、該少なくとも1つのサブ画素SPにおいて、隣り合う、発光対象のサブ画素SPからのリーク電流による自サブ画素SPのサブ画素周辺部における第2領域432の発光を低減することができる。これにより、上記少なくとも1つのサブ画素SPにおいて、無機リガンド53による発光効率の向上を図ることができるとともに、光学的なクロストークを抑制することができる。
【0320】
したがって、例えば
図23に示す例では、第2領域432が、少なくとも1つのサブ画素SPのEML43における、他のサブ画素SPと隣り合う端部のうち、該少なくとも1つのサブ画素SPとは発光色が異なるサブ画素SPと隣り合う端部のみを含んでいてもよい。これにより、上記少なくとも1つのサブ画素SPにおいて、リーク電流による混色を低減することができる。
【0321】
また、例えば
図24に示す例では、第2領域432が、少なくとも1つのサブ画素SPのEML43における、他のサブ画素SPと隣り合う端部のうち、該少なくとも1つのサブ画素SPの発光ピーク波長よりも短波長の発光ピーク波長を有する光を発するサブ画素SPと隣り合う端部のみを含んでいてもよい。これにより、上記少なくとも1つのサブ画素SPにおいて、無機リガンド53による高発光効率・高信頼性とリーク電流による混色の低減と、を両立することができる。
【0322】
また、第2領域432は、少なくとも1つのサブ画素SPのEML43における、他のサブ画素SPと隣り合う端部のうち、該少なくとも1つのサブ画素SPと発光色が同じサブ画素SPと隣り合う端部を含んでいてもよい。これにより、上記少なくとも1つのサブ画素SPにおいて、隣り合うサブ画素SPからのリーク電流による発光を低減し、高精細な映像を表示することができる。例えば、
図2に示す例において、第2領域432は、少なくとも1つのサブ画素SPのEML43における、他のサブ画素SPと隣り合う全ての端部を含み、第1領域431を取り囲んで形成されていてもよい。
【0323】
したがって、本開示に係る表示装置1の製造方法は、前記発光層形成工程において、複数のサブ画素SPのうち、少なくとも1つのサブ画素SPに、発光層として、下記(i)~(iii)に示す構成を有するEML43を形成してもよい。(i)第1領域431と第2領域432とを含む。(ii)第1領域431は、少なくとも1つのサブ画素SPの発光層の中央部を含む。(iii)第2領域432は、上記少なくとも1つのサブ画素SPの発光層における、該少なくとも1つのサブ画素SPにそれぞれ隣り合う他のサブ画素SPと隣り合う端部のうち少なくとも1つの端部を少なくとも含む。これにより、上記少なくとも1つのサブ画素SPにおいて、無機リガンド53による発光効率の向上を図ることができるとともに、光学的なクロストークを抑制することができる表示装置1を製造することができる。
【0324】
〔実施形態5〕
図25は、本実施形態に係る表示装置1の画素領域DAにおけるサブ画素SPの概略構成の一例を示す平面図であり、
図1に示す表示装置1の画素領域DAにおけるサブ画素SPの概略構成のさらに他の一例を示している。なお、
図25は、図示の便宜上、サブ画素SPの数を省略して示している。
【0325】
図25に示す表示装置1は、以下の点を除けば、
図24に示す表示装置1と同じ構成を有している。
図25に示す表示装置1は、自サブ画素SPのEML43における第2領域432に隣り合う、発光色が異なるサブ画素SPの端部から、自サブ画素SPの第1領域431の端部までの最短距離(Δa)が、自サブ画素SPのEML43と上記発光色が異なるサブ画素SPのEML43とのバンドギャップの差が大きいほど大きい。
【0326】
前記したようにサブ画素RSPにおけるバンドギャップ(Eg)が2.0eVで、サブ画素GSPにおけるバンドギャップ(Eg)が2.3eVで、サブ画素BSPにおけるバンドギャップ(Eg)が2.8eVの場合、サブ画素RSPとサブ画素BSPとのバンドギャップ差をEg(RB)とすると、Eg(RB)=0.8eVとなる。また、サブ画素GSPとサブ画素BSPとのバンドギャップ差をEg(GB)とすると、Eg(GB)=0.5eVとなる。また、サブ画素RSPとサブ画素GSPとのバンドギャップ差をEg(RG)とすると、Eg(RG)=0.3eVとなる。したがって、発光色が異なるサブ画素SP間でのバンドギャップの差は、Eg(RB)>Eg(GB)>Eg(RG)となる。
【0327】
この場合、発光閾値電圧(Vth)が、各色のサブ画素SPの最大駆動電圧(Vdm)(バンドギャップに相当)によって変化する。このため、Vdm-Vthが、各サブ画素SPの発光色によって変わる。そこで、このバンドギャップ差によるVdm-Vthの変化を、自サブ画素SPのEML43における第2領域432に隣り合う、発光色が異なるサブ画素SPの端部から、自サブ画素SPの第1領域431の端部までの最短距離(Δa)に反映させることが望ましい。
【0328】
本実施形態では、実施形態1に示す式(1)において、1VとしていたVdm-Vthを、上記バンドギャップ差を加えた値に変更することで、上記最短距離(Δa)を計算する。つまり、実施形態1では、Vdm-Vthを、自サブ画素SPに隣り合うサブ画素SPの発光色に拘らず、全て1Vとしていたが、本実施形態では、自サブ画素SPに隣り合うサブ画素SPの発光色による最大駆動電圧(Vdm)の違いを反映させる。
【0329】
具体的には、サブ画素RSP-サブ画素BSP間でのVdm-Vthを、Vdm-Vth=1.8Vとする。また、サブ画素GSP-サブ画素BSP間でのVdm-Vthを、Vdm-Vth=1.5Vとする。また、サブ画素RSP-サブ画素GSP間でのVdm-Vthを、Vdm-Vth=1.3Vとする。
【0330】
また、サブ画素RSPのEML43Rにおける第2領域432Rに隣り合う、サブ画素BSPの端部から、該EML43Rの第1領域431Rの端部までの最短距離(Δa)をDRBとする。また、サブ画素RSPのEML43Rにおける第2領域432Rに隣り合う、サブ画素GSPの端部から、該EML43Rの第1領域431Rの端部までの最短距離(Δa)をDRGとする。また、サブ画素GSPのEML43Gにおける第2領域432Gに隣り合う、サブ画素BSPの端部から、該EML43Gの第1領域431Gの端部までの最短距離(Δa)をDGBとする。
【0331】
この場合、DRG<DGB<DRB、かつ、2.3μm≦DRG≦7.2μm、2.4μm≦DGB≦7.7μm、2.7μm≦DRB≦8.5μmであることが好ましい。
【0332】
このように上記最短距離(Δa)を、自サブ画素SPのEML43と上記発光色が異なるサブ画素SPのEML43とのバンドギャップの差が大きいほど大きくすることで、最大駆動電圧の差が大きい部分について、効率的に混色を抑えることができる。
【0333】
(変形例)
なお、
図25では、
図24に示す表示装置1において、自サブ画素SPのEML43と、該サブ画素SPに隣り合う、発光色が異なるサブ画素SPのEML43とのバンドギャップの差が大きいほどΔaが大きい場合を例に挙げて図示した。しかしながら、本実施形態は、これに限定されるものではない。
【0334】
例えば、
図2あるいは
図23に示す表示装置1において、自サブ画素SPのEML43と、該サブ画素SPに隣り合う、発光色が異なるサブ画素SPのEML43とのバンドギャップの差が大きいほどΔaを大きくしてもよい。
【0335】
また、表示装置1は、少なくとも1つのサブ画素SPのEML43における第2領域432に隣り合う、発光色が異なるサブ画素SPの端部から、該少なくとも1つのサブ画素SPのEML43における、第1領域431の端部までの最短距離(Δa)が、上記少なくとも1つのサブ画素SPのEML43と上記発光色が異なるサブ画素SPのEML43とのバンドギャップの差が大きいほど大きい構成であってもよい。
【0336】
〔実施形態6〕
図26は、本実施形態に係る表示装置1の画素領域DAにおけるサブ画素SPの概略構成の一例を示す平面図であり、
図1に示す表示装置1の画素領域DAにおけるサブ画素SPの概略構成のさらに他の一例を示している。なお、
図26は、図示の便宜上、サブ画素SPの数を省略して示している。
【0337】
図26に示す表示装置1は、以下の点を除けば、
図2に示す表示装置1と同じ構成を有している。
図26に示す表示装置1は、
図26に示すように、サブ画素RSPのEML43Rにおける、第1領域431Rと第2領域432Rとの間に、第3領域433Rを備えている。また、サブ画素RSPのEML43Gにおける、第1領域431Gと第2領域432Gとの間に、第3領域433Gを備えている。また、サブ画素RSPのEML43Gにおける、第1領域431Gと第2領域432Gとの間に、第3領域433Gを備えている。
【0338】
第3領域433Rは、QD51Rと、有機リガンド52Rと、無機リガンド53Rと、を含み、単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Rの数が、第1領域431Rの上記単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Rの数よりも少なく、第2領域432Rの上記単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Rの数よりも多い領域である。
【0339】
第3領域433Gは、QD51Gと、有機リガンド52Gと、無機リガンド53Gと、を含み、単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Gの数が、第1領域431Gの上記単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Gの数よりも少なく、第2領域432Gの上記単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Gの数よりも多い領域である。
【0340】
第3領域433Bは、QD51Bと、有機リガンド52Bと、無機リガンド53Bと、を含み、単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Bの数が、第1領域431Bの上記単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Bの数よりも少なく、第2領域432Bの上記単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Bの数よりも多い領域である。
【0341】
なお、以下、第3領域433Rと、第3領域433Gと、第3領域433Bと、を特に区別する必要がない場合、これらを総称して単に「第3領域433」と称する。
【0342】
図26では、
図2に示す表示装置1において、第1領域431と第2領域432との間に第3領域433が設けられている場合を例に挙げて図示している。しかしながら、本実施形態は、これに限定されるものではなく、例えば、
図23、
図24、あるいは
図26に示す表示装置1において、第1領域431と第2領域432との間に第3領域433が設けられていてもよい。
【0343】
また、表示装置1は、少なくとも1つのサブ画素SPのEML43における第1領域431と第2領域432との間に第3領域433が設けられている構成であってもよい。
【0344】
このように第1領域431と第2領域432との間に第3領域433を設けることで、第3領域433を設けない場合(言い換えれば、サブ画素周辺部に第2領域432のみを設ける場合)と比較して、サブ画素周辺部の発光効率を高くすることができる。
【0345】
図27は、自サブ画素SP内における、サブ画素端からの距離xと、自サブ画素SPに隣り合う、発光対象のサブ画素SPの駆動による自サブ画素SPの電圧上昇量v(x)と、有機リガンド52と無機リガンド53との合計数に占める無機リガンド53の割合がrのときの、自サブ画素SPの発光閾値電圧上昇量V(r)との関係を示すグラフである。
【0346】
ここで、自サブ画素SP内における、サブ画素端部からの距離xとは、自サブ画素SPの端部を基点として自サブ画素SPの中央部に向かう方向の距離を示す。第2領域432の幅をa1とし、第3領域433の幅をa2とすると、自サブ画素SPに隣り合うサブ画素SPの駆動による自サブ画素SPの電圧上昇量v(x)は、v(x)=1×(1-x/(a1+a2))[単位:V]で示される。なお、a1+a2は、実施形態1に示すΔaからサブ画素SP間の距離を引いた値に等しい。
【0347】
一方、有機リガンド52と無機リガンド53との合計数に占める無機リガンド53の割合がrのときの、自サブ画素SPの発光閾値電圧上昇量V(r)は、実施形態1で示した式(2)で与えられる。
【0348】
自サブ画素SPに隣り合う、発光対象のサブ画素SPの駆動により第2領域432および第3領域433が発光しないためには、0≦x≦(a1+a2)の範囲において、v(x)≦V(r)であることが望ましい。
【0349】
上記v(x)は、大きいほどリーク電流が大きく、発光輝度も高くなり易い。しかしながら、
図27に示すようにV(r)がv(x)以上であれば、v(x)の電圧では、発光閾値電圧がV(r)の発光素子ESを発光させることができない。このため、v(x)≦V(r)であれば、サブ画素SP間でのクロストークは問題にならなない。
【0350】
本実施形態では、自サブ画素SPに隣り合う、発光対象のサブ画素SPから自サブ画素SPへの間の電圧降下を考えてv(x)を規定している。v(x)は、
図27に示すように、実施形態1におけるΔaからサブ画素間距離を引いた値の逆数に比例して降下する。そのため、自サブ画素SPのサブ画素周辺部において、段階的に無機リガンド53の割合rを変化させることで、隣り合うサブ画素からのリーク電流による発光の抑制を図ることができる一方で、サブ画素周辺部に第2領域432のみを設ける場合)と比較して、サブ画素周辺部の発光効率を高くすることができる。
【0351】
本実施形態において、第2領域432における、有機リガンド52と無機リガンド53との合計数に占める無機リガンド53の割合をr2とし、該第2領域432の発光閾値電圧上昇量をV(r2)とし、x=0のときのv(x)をv(0)とすると、自サブ画素SPに隣り合うサブ画素SPの駆動により第2領域432が発光しないためには、上記r2に対し、上記V(r2)が、v(0)≦V(r2)であることが望ましい。
【0352】
ここで、v(0)は、v(0)=1Vである。このため、自サブ画素SPに隣り合うサブ画素SPの駆動により第2領域432が発光しないためには、V(r2)≧1Vであることが望ましい。したかって、前述した式(2)において、r=r2として計算すると、r2は、r2≦0.41であることが望ましく、第2領域432における、上記無機リガンド53の割合r2は、0%以上、41%以下であることが望ましい。
【0353】
また、上述したように0≦x≦(a1+a2)の範囲において、第2領域432の幅と第3領域433の幅とが等しく、a1=a2とした場合、第3領域433における、有機リガンド52と無機リガンド53との合計数に占める無機リガンド53の割合をr3とし、該第2領域432の発光閾値電圧上昇量をV(r3)とし、第3領域433における、第2領域432との境界位置となるx=0.5のときのv(x)をv(0.5)とすると、自サブ画素SPに隣り合うサブ画素SPの駆動により第3領域433が発光しないためには、上記r3に対し、上記V(r3)が、v(0.5)≦V(r3)であることが望ましい。
【0354】
ここで、v(0.5)は、v(0.5)=0.5Vである。このため、自サブ画素SPに隣り合うサブ画素SPの駆動により第3領域433が発光しないためには、V(r3)≧0.5Vであることが望ましい。したかって、前述した式(2)において、r=r3として計算すると、r3は、r3≦0.62であることが望ましい。このため、第3領域433における、上記無機リガンド53の割合r3は、41%以上、62%以下であることが望ましい。
【0355】
また、実施形態1で説明したように、第1領域431における、有機リガンド52と無機リガンド53との合計数に占める無機リガンド53の割合は、100%であってもよい。しかしながら、QD51同士の凝集を防ぐ上で好ましい、有機リガンド52と無機リガンド53との合計数に占める無機リガンド53の最大の割合は、82%である。
【0356】
したがって、第1領域431における、有機リガンド52と無機リガンド53との合計数に占める無機リガンド53の割合をr1とすると、上述したように、r2<r3<r1であり、r1~r3は、上述した関係を満足していればよい。しかしながら、r1は、62%以上、100%以下の範囲内であることが好ましく、62%以上、82%以下の範囲内であることがより好ましい。また、r3は、41%以上、62%以下の範囲内であることが好ましく、r2は、0%以上、41%以下の範囲内である(但し、r2<r3<r1)ことが好ましい。
【0357】
本実施形態に係る表示装置1の製造方法は、前記発光層形成工程において、複数のサブ画素SPのうち、少なくとも1つのサブ画素SPに、発光層として、第1領域431と第2領域432との間に、第3領域433をさらに含むEML43を形成する点で、前記実施形態1~5に係る表示装置1の製造方法と異なっている。
【0358】
なお、第1領域431と第2領域432との間に、第3領域433を形成するには、EML43における第3領域形成予定領域に、上述したようにr2<r3<r1となるように無機リガンド53を供給すればよい。なお、ここで、第3領域形成予定領域とは、最終的に、EML43における第3領域433を形成する領域を示す。
【0359】
また、EML43における第3領域形成予定領域に、上述したようにr2<r3<r1となるように無機リガンド53を供給する方法としては、実施形態1または実施形態2において、第2領域形成予定領域にr2<r1となるように無機リガンド53を供給する方法と同様の方法を用いることができる。
【0360】
〔実施形態7〕
図28は、本実施形態に係る表示装置1の要部の概略構成の一例を示す断面図である。なお、
図28は、
図2に示すA-A’線断面の他の一例を示す。
【0361】
図28に示す表示装置1は、サブ画素SP間でHIL41、HTL42、およびETL44が、バンク32によって分断されており、これらHIL41、HTL42、およびETL44が、サブ画素SP毎に島状に形成されている点で、
図3に示す表示装置1と異なっている。
【0362】
このように例えサブ画素SP間で、HIL41およびHTL42と、ETL44とのうち少なくとも一方がバンク32等により分断されていたとしても、バンク32上への、各層の材料溶液の飛び散りや、バンク32上の異物等により、サブ画素SP間で思わぬリークパスが生じてしまう可能性がある。しかしながら、そのような場合であっても、EML43に、少なくとも第1領域431と第2領域432とが形成されていることで、確実にサブ画素SP間のクロストークを抑制することができる。
【0363】
なお、
図28では、HIL41、HTL42、およびETL44が、サブ画素SP毎に島状に形成されている場合を例に挙げて図示している。しかしながら、
図28に示すように表示装置1が例えばコンベンショナル構造を有する場合には、ETL44が全サブ画素SPに供給する共通層であり、HIL41およびHTL42が島状に形成されている場合にも、同様の効果が得られる。また、表示装置1が例えばインバーテッド構造を有する場合には、HIL41およびHTL42が全サブ画素SPに供給する共通層であり、ETL44が島状に形成されている場合にも、同様の効果が得られる。
【0364】
〔実施形態8〕
前記実施形態、特に、実施形態1、2では、
図4等に示すように、第1領域431R、第1領域431G、および第1領域431Bが、何れも、リガンドとして、有機リガンド52および無機リガンド53の両方を含んでいる場合を例に挙げて説明した。しかしながら、前述したように、第1領域431R、第1領域431G、および第1領域431Bは、QD51と、有機リガンド52および無機リガンド53のうち少なくとも無機リガンド53と、を含んでいればよい。そこで、本実施形態では、第1領域431R、第1領域431G、および第1領域431Bが、QD51および無機リガンド53を含み、有機リガンド52を含まない場合について説明する。
【0365】
図29は、本実施形態に係る発光層形成工程(ステップS13)の一部の工程の一例を示す断面図である。
図29は、
図19に示す第4レジスト層パターニング工程(ステップS182)における、第4レジスト層現像工程(ステップS192)の後の工程を示している。
【0366】
図29に示す方法では、上記ステップS192の後、ステップS183(無機リガンド供給工程)を行う前に、第4レジスト層RL4に形成された開口部OP7aから露出している、第1領域形成予定領域431PR、第1領域形成予定領域431PG、および第1領域形成予定領域431PBを、洗浄液で洗浄する。これにより、第1領域形成予定領域431PR、第1領域形成予定領域431PG、および第1領域形成予定領域431PBに含まれる有機リガンド52を除去する(ステップS193、有機リガンド除去工程、洗浄工程)。なお、以下、第1領域形成予定領域431PRと、第1領域形成予定領域431PGと、第1領域形成予定領域431PBと、を特に区別する必要がない場合、これらを総称して単に「第1領域形成予定領域431P」と称する。
【0367】
有機リガンド52の除去率は、例えば洗浄時間、洗浄液の供給量等によって調節することができる。本実施形態では、一例として、ステップS193において、有機リガンド52が完全に除去されるまで洗浄を行う。但し、ステップS193では、有機リガンド52の一部のみを除去してもよい。このように有機リガンド52の少なくとも一部を除去することで、第1領域431において単位体積当たりに含まれる有機リガンド52の数を、第2領域432の上記単位体積当たりに含まれる有機リガンド52の数よりも少なくすることができる。これにより、第1領域431において単位体積当たりに含まれる無機リガンド53Gの数を、第2領域432の上記単位体積当たりに含まれる有機リガンド52の数よりも多くすることができる。したがって、このように有機リガンド52の少なくとも一部を除去することで、第1領域形成予定領域431PのQD51に配位している有機リガンド52の量を減らし、ステップS183で該QD51に配位する無機リガンド53Gの数を増やすことができる。
【0368】
上記洗浄液としては、第1領域形成予定領域431Pに含まれる有機リガンド52を除去することができる溶媒であればよい。より具体的には、上記洗浄液としては、QD51に配位した有機リガンド52を溶解するとともに、QD51に配位していない、余剰の有機リガンド52を溶解する溶媒であればよい。上記洗浄液としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコールが挙げられる。
【0369】
なお、洗浄に用いた、有機リガンド52を含む廃洗浄液は、必要に応じて、回収してもよい。上記廃洗浄液には、洗浄液として用いた溶媒および有機リガンド52のみが含まれる。したがって、上記廃洗浄液を回収することで、上記廃洗浄液に含まれる有機リガンド52を、再利用することが可能である。
【0370】
次いで、
図19に示すステップS183と同様にして、上記開口部OP7aから露出している、各第1領域形成予定領域431Pに、無機リガンド53を含む無機リガンド溶液をそれぞれ塗布する。これにより、上記第1領域形成予定領域431PR、上記第1領域形成予定領域431PG、および上記第1領域形成予定領域431PBに、それぞれ無機リガンド53を供給する(ステップS183、無機リガンド供給工程)。
【0371】
これにより、上記第1領域形成予定領域431PRに第1領域431Rが形成され、上記第1領域形成予定領域431PGに第1領域431Gが形成され、上記第1領域形成予定領域431PBに第1領域431Bが形成される。そして、赤色QD含有層パターン143PRにおける、上記第1領域形成予定領域431PR以外の領域が、EML43Rの第2領域432Rとなる。また、緑色QD含有層パターン143PGにおける、上記第1領域形成予定領域431PG以外の領域が、EML43Gの第2領域432Gとなる。また、青色QD含有層パターン143PBにおける、上記第1領域形成予定領域431PB以外の領域が、EML43Bの第2領域432Bとなる。
【0372】
その後、上記第1領域形成予定領域431PR、上記第1領域形成予定領域431PG、および上記第1領域形成予定領域431PBに塗布された無機リガンド溶液に含まれる溶媒を除去して乾燥させた後、レジスト溶剤で、上記第4レジスト層RL4を除去する(ステップS184、第4レジスト層除去工程)。
【0373】
これにより、HTL42上に、第1領域431Rと第2領域432Rとを有するEML43Rと、第1領域431Gと第2領域432Gとを有するEML43Gと、第1領域431Bと第2領域432Bとを有するEML43Bと、を含む、島状の複数のEML43を形成することができる。但し、
図29では、ステップS193において、有機リガンド52を完全に除去している。このため、
図29では、ステップS193の後でステップS183およびステップS184を行うことで、QD51および無機リガンド53を含み、有機リガンド52を含まない、第1領域431R、第1領域431G、第1領域431Bを形成することができる。
【0374】
以上のように、本実施形態によれば、上記有機リガンド除去工程を行うことにより、第1領域431における、有機リガンド52と無機リガンド53との比を、容易に調整することができる。
【0375】
(変形例1)
図30は、本実施形態に係る発光層形成工程(ステップS13)の一部の工程の他の一例を示す断面図である。
図30は、
図19に示す第4レジスト層パターニング工程(ステップS182)における、第4レジスト層現像工程(ステップS192)の後の工程を示している。
【0376】
図30に示す方法では、上記ステップS192の後、続いて、第4レジスト層RL4に形成された開口部OP7aから露出している第1領域形成予定領域431Pに、それぞれ過剰の無機リガンド53を供給する。これにより、該第1領域形成予定領域431Pにおける有機リガンド52を、無機リガンド53に置換(リガンド置換)する(ステップS231、リガンド置換工程、無機リガンド供給工程)。
【0377】
ステップS231は、第1領域形成予定領域431Pに含まれる有機リガンド52が全て無機リガンド53にリガンド置換されるまで、無機リガンド53を含む無機リガンド溶液を第1領域形成予定領域431Pに塗布(供給)することを除けば、
図19に示すステップS183と同じである。
【0378】
有機リガンド52は、無機リガンド53と比較してQD51への配位力が弱く、QD51から外れ易い。したがって、前記無機リガンド供給工程において、過剰の無機リガンド53(具体的には、過剰の無機リガンド溶液)を第1領域形成予定領域431Pに供給することで、該第1領域形成予定領域431PにおけるQD51に配位している有機リガンド52を、無機リガンド53に置換することができる。
【0379】
なお、無機リガンド溶液の供給量、濃度、およびリガンド置換に要する時間等は、第1領域431における、有機リガンド52と無機リガンド53との比が所望の割合になるように適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0380】
その後、本変形例でも、上記第1領域形成予定領域431Pに塗布された無機リガンド溶液に含まれる溶媒を除去して乾燥させた後、レジスト溶剤で、上記第4レジスト層RL4を除去する(ステップS184、第4レジスト層除去工程)。
【0381】
これにより、本変形例でも、例えば、QD51および無機リガンド53を含み、有機リガンド52を含まない、第1領域431R、第1領域431G、第1領域431Bを形成することができる。なお、勿論、本変形例でも、ステップS231で、有機リガンド52の一部のみを無機リガンド53に置換してもよい。
【0382】
また、ステップS231の後、ステップS184の前に、必要に応じて、QD51に配位していない、余剰の無機リガンド53、および、第1領域形成予定領域431Pに含まれる有機リガンド52を、洗浄液で洗浄して除去する洗浄工程を行ってもよい。この場合、上記洗浄工程で用いられる洗浄液としては、QD51に配位した有機リガンド52を溶解するとともに、QD51に配位していない、余剰の有機リガンド52および余剰の無機リガンド53を溶解する溶媒であればよい。上記洗浄液としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコールが挙げられる。
【0383】
以上のように、本変形例によれば、第1領域形成予定領域431Pに、無機リガンド53を含む無機リガンド溶液を供給してリガンド置換を行うことで、第1領域431における、有機リガンド52と無機リガンド53との比を、容易に調整することができる。
【0384】
(変形例3)
図29および
図30では、第1領域形成予定領域431PR、第1領域形成予定領域431PG、および第1領域形成予定領域431PBにおいて、有機リガンド除去工程(洗浄工程)あるいはリガンド置換工程(無機リガンド供給工程)を並行して行う場合を例に挙げて説明した。しかしながら、本実施形態は、これに限定されるものではなく、第1領域形成予定領域431PR、第1領域形成予定領域431PG、および第1領域形成予定領域431PBのそれぞれに、独立して、有機リガンド除去工程(洗浄工程)あるいはリガンド置換工程(無機リガンド供給工程)を行ってもよい。
【0385】
例えば、
図11に示すステップS52の後、ステップS37(第1無機リガンド供給工程)を行う前に、ステップS193と同様にして、第1領域形成予定領域431PRにおける有機リガンド52Rの少なくとも一部を除去してもよい。そして、
図13に示すステップS82の後、ステップS67(第2無機リガンド供給工程)を行う前に、ステップS193と同様にして、第1領域形成予定領域431PGにおける有機リガンド52Gの少なくとも一部を除去してもよい。そして、
図15に示すステップS112の後、ステップS97(第3無機リガンド供給工程)を行う前に、ステップS193と同様にして、第1領域形成予定領域431PBにおける有機リガンド52Bの少なくとも一部を除去してもよい。勿論、
図20に示すようにマスクとして金属マスクM8を使用する場合にも、ステップS201における無機リガンド53の供給前に、ステップS193と同様にして、第1領域形成予定領域431Pにおける有機リガンド52の少なくとも一部を除去してもよい。また、上記方法に代えて、あるいは、上記方法に加えて、例えば、ステップS37、ステップS67、ステップS97、ステップS201等において無機リガンド53を供給する際に、過剰の無機リガンド53による有機リガンド52のリガンド置換を行ってもよい。
【0386】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0387】
1 表示装置
31 陽極(第1電極)
33 機能層
43、43B、43G、43R EML(発光層)
34 陰極(第2電極)
43PR 赤色EML形成予定領域(第1発光層の形成予定領域)
43PG 緑色EML形成予定領域(第2発光層の形成予定領域)
43PB 青色EML形成予定領域(第3発光層の形成予定領域)
51、51R、51G、51B QD(量子ドット)
52、52R、52G、52B 有機リガンド
53、53R、53G、53B 無機リガンド
143R 赤色QD含有層(第1量子ドット含有層)
143G 緑色QD含有層(第2量子ドット含有層)
143B 青色QD含有層(第3量子ドット含有層)
431、431R、431G、431B 第1領域
432、432R、432G、432B 第2領域
433、433R、433G、433B 第3領域
M8 金属マスク
OP2a 開口部(第1開口部)
OP4a 開口部(第2開口部)
OP6a 開口部(第3開口部)
RL1 第1レジスト層
RL2 第2レジスト層
RL3 第3レジスト層
RL4 第4レジスト層
SP サブ画素