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特許7634791フォトニック結晶メーザからの電磁放射の生成
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-13
(45)【発行日】2025-02-21
(54)【発明の名称】フォトニック結晶メーザからの電磁放射の生成
(51)【国際特許分類】
   H01S 1/06 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
H01S1/06
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2024544762
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(86)【国際出願番号】 CA2022050302
(87)【国際公開番号】W WO2023150861
(87)【国際公開日】2023-08-17
【審査請求日】2024-09-19
(31)【優先権主張番号】17/667,296
(32)【優先日】2022-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521266918
【氏名又は名称】クオンタム ヴァリー アイデアズ ラボラトリーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100210239
【弁理士】
【氏名又は名称】富永 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】アマルロー ハーディ
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー ジェームズ ピー
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0285992(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0285993(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0301075(US,A1)
【文献】国際公開第2004/081627(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 1/00 - 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトニック結晶メーザであって、
誘電体であって、
前記誘電体内にフォトニック結晶構造を画定するように周期的に配列されたキャビティのアレイ、
前記フォトニック結晶構造内に欠陥を画定する前記キャビティアレイ内の領域、
前記誘電体の表面のスロット開口から前記誘電体を少なくとも部分的に貫通して延びる、前記領域を貫通する細長スロットであって、前記細長スロットおよび前記キャビティアレイが前記誘電体の導波路を画定する、細長スロット、および
前記細長スロットの端部に整列され、基準無線周波数(RF)電磁放射を前記導波路に結合させるように構成された入力結合器であって、前記基準RF電磁放射が制御された周波数と制御された位相の一方または両方を有する、入力結合器
を備える、誘電体と、
前記細長スロットを覆い、前記スロット開口の周囲にシールを形成するように前記誘電体の前記表面に接着された窓表面を有する光学窓と、
前記細長スロット内の蒸気または前記蒸気の供給源であって、前記蒸気が、
1つまたは複数の入力電子遷移、および
前記1つまたは複数の入力電子遷移に結合され、目標RF電磁放射を放出するように動作可能な出力電子遷移であって、前記出力電子遷移が前記導波路の導波モードで共振する、出力電子遷移
を含む、前記細長スロット内の蒸気または前記蒸気の供給源と
を備える、フォトニック結晶メーザ。
【請求項2】
前記基準RF電磁放射が前記導波路の前記導波モードで共振する、請求項1に記載のフォトニック結晶メーザ。
【請求項3】
前記入力結合器が、前記誘電体の側面から延び、テーパ端部において終端する、請求項1に記載のフォトニック結晶メーザ。
【請求項4】
前記基準RF電磁放射を産出するように構成された基準RF発振器であって、前記基準RF発振器が前記誘電体の前記入力結合器に電磁的に結合される、基準RF発振器を備える、請求項1に記載のフォトニック結晶メーザ。
【請求項5】
前記蒸気の前記1つまたは複数の入力電子遷移を励起することができる光信号を生成するように構成されたレーザを備える、請求項1に記載のフォトニック結晶メーザ。
【請求項6】
前記フォトニック結晶構造が、前記細長スロット内で前記目標RF電磁放射を集中させるように構成される、請求項1に記載のフォトニック結晶メーザ。
【請求項7】
前記キャビティアレイ内の前記領域が軸線に沿って延び、前記細長スロットが前記軸線と平行に整列され、
前記フォトニック結晶構造が、前記軸線に平行な方向に沿って前記目標RF電磁放射の群速度を低下させるように構成される、
請求項1に記載のフォトニック結晶メーザ。
【請求項8】
前記キャビティアレイが、前記アレイ内の理想的周期的位置から空間的にオフセットされた1つまたは複数のオフセットキャビティを備える、請求項1に記載のフォトニック結晶メーザ。
【請求項9】
前記細長スロットの端部に配置された光学ミラーを備える、請求項1に記載のフォトニック結晶メーザ。
【請求項10】
前記誘電体が、前記細長スロットの第2の端部に整列され、前記目標RF電磁放射を前記フォトニック結晶メーザの周囲環境にインピーダンス整合させるように構成された出力結合器を備える、請求項1に記載のフォトニック結晶メーザ。
【請求項11】
前記出力結合器が、前記誘電体の側面から延び、テーパ端部において終端する、請求項10に記載のフォトニック結晶メーザ。
【請求項12】
前記フォトニック結晶構造が、前記導波路内に前記目標RF電磁放射の横磁気(TM)モードに関連するフォトニックバンドギャップを画定する、請求項1に記載のフォトニック結晶メーザ。
【請求項13】
前記フォトニック結晶構造が、前記導波路内に前記目標RF電磁放射の横電気(TE)モードに関連するフォトニックバンドギャップを画定する、請求項1に記載のフォトニック結晶メーザ。
【請求項14】
前記蒸気が、アルカリ金属原子のガスを含む、請求項1に記載のフォトニック結晶メーザ。
【請求項15】
前記領域が前記キャビティアレイ内にループを形成し、前記細長スロットが、輪になったスロットを形成するように前記ループのループ軸線に沿って延び、
前記蒸気または前記蒸気の前記供給源が、前記輪になったスロットの少なくとも一部内に配置される、
請求項1に記載のフォトニック結晶メーザ。
【請求項16】
前記輪になったスロットが前記ループ軸線に沿って第1のループ方向および第2のループ方向に関連しており、前記第1のループ方向が前記第2のループ方向の反対方向であり、
前記輪になったスロットが、第1のRFポートおよび第2のRFポートを備え、
前記フォトニック結晶メーザが、
前記第1のRFポートおよび前記第2のRFポートにそれぞれ結合される第1の方向性結合器および第2の方向性結合器を備え、前記第1の方向性結合器が、前記第1のループ方向に沿って進む前記目標RF電磁放射の第1の部分を受信するように構成され、前記第2の方向性結合器が、前記第2のループ方向に沿って進む前記目標RF電磁放射の第2の部分を受信するように構成される、
請求項15に記載のフォトニック結晶メーザ。
【請求項17】
無線周波数(RF)電磁放射を生成する方法であって、前記方法は、
誘電体の入力結合器で基準RF電磁放射を受信するステップであって、
前記誘電体はフォトニック結晶メーザの一部であり、
前記誘電体内にフォトニック結晶構造を画定するように周期的に配列されたキャビティのアレイ、
前記フォトニック結晶構造内に欠陥を画定する前記キャビティアレイ内の領域、
前記誘電体の表面のスロット開口から前記誘電体を少なくとも部分的に貫通して延びる前記領域を貫通する細長スロットであって、前記細長スロットおよび前記キャビティアレイが前記誘電体の導波路を画定する、細長スロット、および
前記細長スロットの端部に整列され、前記基準RF電磁放射を前記導波路に結合させるように構成された前記入力結合器
を備え、
前記フォトニック結晶メーザが、
前記誘電体の前記細長スロットを覆い、前記スロット開口の周囲にシールを形成するように前記誘電体の表面に接着された窓表面を有する光学窓と、
前記誘電体の前記細長スロット内に密封され、
光信号によって励起された1つまたは複数の入力電子遷移、および
前記1つまたは複数の入力電子遷移に結合され、目標RF電磁放射を放出するように動作可能な出力電子遷移であって、前記出力電子遷移が前記導波路の導波モードで共振する、出力電子遷移
を含む蒸気と
を備える、ステップと、
誘電体の前記細長スロット内への前記光信号を受信するステップと、
前記光信号を受信するのに応答して前記蒸気から前記目標RF電磁放射を放出するステップであって、前記目標RF電磁放射が前記基準RF電磁放射に基づく、ステップと
を含む、方法。
【請求項18】
前記基準RF電磁放射を受信するステップが、前記入力結合器の動作により、前記基準RF電磁放射を前記誘電体の前記導波路に結合することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記目標RF電磁放射が、前記基準RF電磁放射の周波数および位相の一方または両方によってそれぞれ設定された周波数および位相の一方または両方を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記基準RF電磁放射が前記導波路の前記導波モードで共振する、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記基準RF電磁放射を基準RF発振器の動作により生成するステップ
を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記基準RF電磁放射を生成するステップが、前記基準RF電磁放射の周波数および位相の一方または両方を制御することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記出力電子遷移と前記導波モードとの間で前記目標RF電磁放射の少なくとも一部を共振させることにより、前記目標RF電磁放射を増幅するステップ
を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記目標RF電磁放射を増幅するステップが、前記細長スロット内で前記目標RF電磁放射を集中させることを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記キャビティアレイ内の前記領域が軸線に沿って延び、前記細長スロットが前記軸線と平行に整列され、
前記目標RF電磁放射を増幅するステップが、前記軸線に平行な方向に沿って前記目標RF電磁放射の群速度を低下させることを含む、
請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記キャビティアレイが、前記アレイ内の理想的周期的位置から空間的にオフセットされた1つまたは複数のオフセットキャビティを備え、
前記目標RF電磁放射を増幅するステップが、前記目標RF電磁放射を前記オフセットキャビティに反射させることを含む、
請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記細長スロット内への前記光信号を受信するステップが、前記光信号を前記細長スロット内の前記蒸気と相互作用させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
前記細長スロット内への前記光信号を受信するステップが、前記光信号を前記細長スロットの端部に配置されたミラーに反射させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項29】
前記導波路の動作により、前記目標RF電磁放射を前記誘電体の端部の方へ向けるステップ
を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項30】
前記誘電体が、前記細長スロットの第2の端部に整列され、前記目標RF電磁放射を前記フォトニック結晶メーザの周囲環境にインピーダンス整合させるように構成された出力結合器を備え、
前記方法が、
放出または増幅後の前記目標RF電磁放射を前記出力結合器に結合させるステップと、
前記出力結合器の動作により、前記結合された目標RF電磁放射を前記誘電体の周囲環境にインピーダンス整合させるステップと
を含む、
請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2022年2月8日に出願された米国特許出願第17/667,296号の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
以下の記述は、フォトニック結晶メーザから電磁放射を生成することに関する。
【0003】
メーザは、共振器内でビルドアップする原子または分子の誘導放出によりコヒーレントな電磁放射を産出する。誘導放出は、共振器内でビルドアップする原子または分子の放出周波数で電磁放射を産出する。共振器は、共振器内の光子が励起した原子または分子から共振器モードへのより多くの放射を刺激することができるように、原子または分子からの誘導放出の一部を取り込むために使用され得る。そのためには、共振器は、原子または分子の放出周波数に対応する振動のモードを有し、それにより共振器が原子または分子で「共振する」ことが可能になり得る。したがって、共振器は、エネルギーを蓄え、コヒーレントな誘導放出により、メーザからの電磁エネルギーの放出を増幅することができる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】フォトニック結晶メーザがシード源に注入ロッキングされているのを示すシステム例の概略図である。
図2A】2つの光学窓に接着された誘電体を含むフォトニック結晶メーザ例の斜視概略図である。
図2B図2Aのフォトニック結晶受信器例の上面概略図であるが、誘電体はリング共振器構造を含む。
図3A】入力結合器および出力結合器を含むフォトニック結晶メーザ例の上面概略図および斜視概略図である。
図3B図3Aのフォトニック結晶メーザ例の斜視概略図であるが、アンテナが基準RF発振器として機能する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
一般的態様では、フォトニック結晶構造と、基準無線周波数(RF)電磁放射をフォトニック結晶メーザの導波路に結合するための入力結合器と、を含むフォトニック結晶メーザが開示される。例えば、フォトニック結晶メーザは、誘電体内にフォトニック結晶構造を画定するように周期的に配列されたキャビティのアレイを有する誘電体を含むことができる。誘電体は、フォトニック結晶構造内に欠陥を画定するキャビティアレイ内の領域も含むことができる。この領域を貫通する細長スロットが、誘電体の表面のスロット開口から誘電体を少なくとも部分的に貫通して延びる。細長スロットおよびキャビティアレイは誘電体の導波路を画定することができる。誘電体は、細長スロットの端部に整列され、基準RF電磁放射を導波路に結合させるように構成された入力結合器をさらに含むことができる。基準RF電磁放射は、制御された周波数と制御された位相の一方または両方を有することができる。
【0006】
フォトニック結晶メーザは、細長スロット内の蒸気(もしくは蒸気の供給源)、および細長スロットを覆う光学窓も含む。光学窓は、スロット開口の周囲にシールを形成するように誘電体の表面に接着された窓表面を有する。そうする際、光学窓は誘電体で蒸気セルを画定することができる。多くの変形では、蒸気は、1つまたは複数の入力電子遷移と1つまたは複数の入力遷移に結合される出力電子遷移とを含む。出力電子遷移は、目標無線周波数(RF)電磁放射を放出し、導波路の導波モードで共振する。可能な電子遷移の例としては、リュードベリ遷移、原子遷移、分子遷移などがある。いくつかの変形では、光学ミラーが細長スロットの一端または両端に配置される。いくつかの変形では、フォトニック結晶ミラーが細長スロットの一端または両端に配置される。フォトニック結晶メーザの他の構成は下記のように可能である。
【0007】
フォトニック結晶メーザは、高指向性で、低ノイズの、周波数が安定した、コヒーレントな無線周波数源が必要とされる通信および他の用途に使用することができる。信号を送る場合、フォトニック結晶メーザ出力の周波数および位相を制御することが、位相および周波数の一方または両方で情報を符号化するのに有用であり得る。RF放射の効率的発生が必要とされる用途では、周波数および位相は、クロック安定化発振器などの低電力シード発振器を有する高電力フォトニック結晶メーザに注入シーディングすることによって制御され得る。低電力シード発振器の出力は、この発振器の出力をアンテナまたは導波路内に結合することによりフォトニック結晶メーザ内に注入され、それにより、別の結合要素(例えば、入力結合器)からフォトニック結晶メーザ内に供給することができる。このように、少量のシードRF放射が、フォトニック結晶メーザのキャビティ内に効率的に注入される。フォトニック結晶メーザのための閾値は小さいので、フォトニック結晶メーザを低電力シード発振器に注入ロッキングするためにわずかな量のシード放射しか必要ない。
【0008】
多くの変形では、シード放射は、フォトニック結晶メーザをロックするためにメージングモードの自発的プロセスもしくは黒体プロセスおよび零点分布より強い。低電力シード発振器の位相および周波数安定性は、注入シーディングによってフォトニック結晶メーザに移される。これらの変形では、フォトニック結晶メーザは、シード放射から高指向性のコヒーレント出力を産出する極端に低いノイズの増幅器として使用され得る。フォトニック結晶メーザはまた、光学的にポンピングされ得るので、任意の得られるシステムのサイズ、重量、および電力(SWaP)は従来の安定化メーザより小さくすることができる。フォトニック結晶メーザは、室温前後で動作し、フォトニック結晶メーザがリュードベリ遷移付近の任意の周波数で発光するように構成することができる。この場合、フォトニック結晶メーザはリュードベリ原子メーザであり得る。フォトニック結晶メーザからの目標RF電磁放射の周波数範囲は、約1Hz~約100MHzのスペクトルバンド幅で、MHzからTHzに及ぶことができる。低電力シード発振器は、フォトニック結晶メーザをメーザキャビティおよび利得媒質のバンド幅にわたって同調するとともに、外部クロックへの出力位相を固定することができる。周波数は同様に、シード周波数のドリフトを防止することによりクロック出力にロックすることができる。
【0009】
ここで図1を参照すると、フォトニック結晶メーザ102がシード源104に注入ロッキングされているのを示すシステム例100の概略図が提示される。シード源104は、フォトニック結晶メーザ102より低い電力で動作することができる。フォトニック結晶メーザ102は、シード源104から光信号(図示せず)および基準RF電磁放射110(またはシード出力)を受信したのに応答して目標RF電磁放射108を生成するように動作可能である利得媒質106(例えば、蒸気)を含む。利得媒質106は2つのミラー112a、112bの間に配置されてもよく、ミラー112a、112bは、閾値強度に達するまで利得媒質106中でのRF電磁放射のビルドアップを促進する。2つのミラー112a、112bは、フォトニック結晶メーザ102のメーザキャビティ114を画定するのに役立つことができる。
【0010】
フォトニック結晶メーザ102は、基準RF電磁放射110をフォトニック結晶メーザ102の導波路に結合する入力結合器116も含む。入力結合器116は、シード源104とメーザキャビティとの間の結合の損失を低減することができる。動作中、基準RF電磁放射110の強度は、メーザキャビティ114内のノイズ(例えば、自然放出、黒体輻射など)に打ち勝つくらい強い。このような強度により、シード源104はフォトニック結晶メーザ102の出力を制御することが可能になる。シード源104は、それの同調範囲がフォトニック結晶メーザ102の動作範囲をカバーする(または、ほぼカバーする)同調可能な無線周波数源であり得る。図1に示されているようないくつかの例では、シード源104は、温度安定化水晶発振器や他のタイプのクロックなどの位相基準118を基準にされる。基準RF電磁放射110は、部分的に透過している窓112bを通って結合される。入力結合器116は、シード出力モードをフォトニック結晶メーザ102のキャビティモード(または導波モード)に整合させる。
【0011】
いくつかの用途では、フォトニック結晶メーザの周波数および位相を制御する必要性があり得る。周波数および位相を(場合により増幅も)制御することは、信号の符号化を可能にすることができる。フォトニック結晶メーザの出力上への信号の符号化は、通信やレーダなどのユースケースに有利であり得る。これらのケースでは、フォトニック結晶メーザからの無線周波数放出のコヒーレンスおよび指向性も有用であり、フォトニック結晶メーザをそのような用途で最適な装置にすることができる。位相および周波数を制御することは、フォトニック結晶メーザをGPSタイミング信号などのクロックにロックし、次いで局所発振器として使用することができるので、タイミング用途に有利である。次いで、レーダまたは通信のための地上局の集合体が、レーダネットワークまたは通信ネットワーク内での信号検出を改善するために、ヘテロダイニングなどの位相敏感検波を使用することができる。タイミング信号を他の場所に効率的に転送するために、位相および周波数がロックされるフォトニック結晶メーザを使用することもできる。
【0012】
フォトニック結晶メーザの周波数および位相を制御する1つの方法は、注入ロッキングによるものである。この方法では、低強度信号を放出する無線周波数源を周波数および位相ロックするために、クロック、またはクロック信号を用いたタイミングが使用され得る。無線周波数発振器の低強度出力は、低強度信号の放出を低電力発振器の特定の周波数および位相に偏倚させるために、メーザキャビティ内に結合することができる。フォトニック結晶メーザを、周波数および位相が選定される特定の無線周波数波で「シーディング」することにより、メーザ出力を生成する誘導放出は、選定された位相および周波数で起こるように優先的に促進される。これが起こると、誘導放出による促進モードへの反転した分布の指数カスケードは、他の周波数および位相でのメージングを抑える。その場合、フォトニック結晶メーザは、固定位相および周波数の指向性コヒーレント出力をより大きい電力で産出するために、シードの出力を模倣することができる。
【0013】
注入シーディングの利点は、低電力注入シードが高度にコヒーレントな指向性ビームにより大きい強度および総電力で効果的に変換され得ることである。注入シードは、チップスケール原子時計および水晶発振器のようなクロック、ならびに低電力無線周波数機器で構築および構成するために、真っすぐに進む。放出周波数および位相の全制御は、特定の場合に可能であり得るとともに、レーザに比べて比較的長い発光波長のためにフォトニック結晶メーザだけを用いるよりも容易であり得る。フォトニック結晶メーザの位相の不確かさは、フォトニック結晶メーザが自然放出または黒体輻射のようなランダムプロセスによって開始される場合、ΔΦ≧2πλ/lで表わすことができる、ただし、lはキャビティの長さであり、λは波長である。典型的には、λ/l≒0.1であると、ΔΦ≒π/5となり、これは多くの用途にとって大きい。フォトニック結晶メーザのスペクトルバンド幅は、多くのタイミング用途にとって大きい約1~10MHzとすることができる。周波数安定性は、シード源をGPSクロックにロックし、これを使用してフォトニック結晶メーザの出力を制御することにより、1012分の1超に改善することができる。この種の安定性は、時刻転送用途に適しており、GPSクロックにロックされる低品質の発振器でも注入シーディングによって達成することができる。
【0014】
フォトニック結晶メーザは低いメージング閾値を有し得るので、シード電力は小さくすることができる。これらの場合、シード源からの基準RF電磁放射は、発振器のノイズレベルに打ち勝つだけでよい。例えば、メーザキャビティ内への結合損失およびメーザキャビティ内での伝搬損失に打ち勝った後のシード強度は、自然放出、キャビティ内の黒体輻射、および場モードでの零点エネルギーに勝る必要があり得る。自然放出は約1kHz以下であり得るが、値<100Hzがより典型的である。場モードの零点エネルギーは、黒体輻射およびリュードベリ遷移に対する自然放出に比べて小さい。多くの場合、零点エネルギーは効果的に無視することができる。遷移自体において、シードは、場合によってはラビ周波数の約数十Hzであるだけでよい。
【0015】
シードがない場合、フォトニック結晶メーザのための自然シードは、自然放出または黒体輻射によって産出され得る。位相は、メージングが開始されるときにランダムであり、周波数は、位相と組み合わせた放出率が最大であり、メーザキャビティ内の損失が最小であるものであり得る。注入シーディングの電力は、キャビティに効果的に結合されるノイズ源の電力に比べて増大するので、メーザ出力のより大きな部分がシードの性質を反映している。シードがノイズ源に比べて強力であるとき、メーザはシードに周波数ロックする。そのようなロッキング中、シーディングされるフォトニック結晶メーザのモード(例えば、フォトニック結晶メーザの導波モード)は、利得媒質からエネルギーを取り出す。多くの例では、シードは、遷移が反転して共振または近共振する。通常は、自発的に放出された光子が、利得媒質からエネルギーを取り出し、光子の数を特定のモードで増幅し始める。注入ロッキングは、シード信号周波数がメーザキャビティ(または導波路)の共振モードに(ほぼ)整合して、自然放出および黒体輻射が利得媒質から相当量のエネルギーを盗む可能性に打ち勝つのに十分であるときに起こる。
【0016】
次に図2Aを参照すると、2つの光学窓204、206に接着された誘電体202を含むフォトニック結晶メーザ例200の斜視概略図である。フォトニック結晶メーザ200は、図1に関して記述したフォトニック結晶メーザ102と同様であり得る。誘電体202は、誘電体202内にフォトニック結晶構造210を画定するように周期的に配列されたキャビティ208のアレイを含む。例えば、アレイのキャビティ208は、斜格子、正方格子、矩形格子、六方格子、斜方格子などの2次元格子のそれぞれのサイト上に配置され得る。図2Aでは、各キャビティ208が貫通孔によって画定される。しかしながら、形状を組み合わせたものを含む、キャビティ208(例えば、止まり穴、内部ボイドなど)の他の形状が可能である。誘電体202は、フォトニック結晶構造210内に欠陥を画定するキャビティ208のアレイ内の領域212(または欠陥領域)も含む。領域212は、2次元格子の2つ以上の隣接するサイト上にキャビティ208がないことによって画定され得る。図2Aでは、領域212は、キャビティ208の行がない線形領域である。しかしながら、湾曲、円形、楕円形、蛇行、正方形、矩形、六角形などの他の幾何形状も可能である。
【0017】
誘電体202は、RF電磁放射に対して実質的に透明な材料で形成され得る。この材料は、高抵抗率、例えばρ>103Ω・cmを有する絶縁材料とすることができ、単結晶材料、多結晶材料、またはアモルファス(もしくはガラス)材料に対応することもできる。例えば、誘電体202はケイ素で形成され得る。別の例では、誘電体202は、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸塩ガラスなどの、酸化ケイ素(例えば、SiO2、SiOxなど)を含むガラスで形成され得る。いくつかの例では、誘電体202の材料は、酸化マグネシウム(例えば、MgO)、酸化アルミニウム(例えば、Al23)、二酸化ケイ素(例えば、SiO2)、二酸化チタン(TiO2)、二酸化ジルコニウム(例えば、ZrO2)、酸化イットリウム(例えば、Y23)、酸化ランタン(例えば、La23)などの酸化物材料である。酸化物材料は、不定比酸化物(例えば、SiOx)であってもよく、1つまたは複数の二元酸化物(例えば、Y:ZrO2、LaAlO3など)の組合せであってもよい。特定の変形では、上記組合せは、BaLn2Ti412に対応することができる、ただし、Lnは、元素の周期律表のランタニド族からの1つまたは複数の元素を指す。他の例では、誘電体202の材料は、ケイ素(Si)、ダイヤモンド(C)、窒化ガリウム(GaN)、フッ化カルシウム(CaF)などの非酸化物材料である。
【0018】
誘電体202は、誘電体202の表面のスロット開口から誘電体202を少なくとも部分的に貫通して延びる、領域212を貫通する細長スロット214をさらに含む。図2Aでは、細長スロット214は、誘電体202を完全に貫通して第2のスロット開口まで延びる。細長スロット214およびキャビティ208のアレイは、誘電体202の導波路を画定する。動作中、導波路は、RF電磁放射(またはRF電磁放射の波)を領域212の軸線に沿って、例えば誘電体202の端部の方へ向けることができる。誘電体202は、細長スロット214の端部に整列され、(例えば、シード源からの)基準無線周波数(RF)電磁放射を導波路に結合させるように構成された入力結合器216も含む。基準RF電磁放射は、制御された周波数と制御された位相の一方または両方を有する。いくつかの例では、基準RF電磁放射は導波路の導波モードで共振する。図2Aに示されているようないくつかの例では、入力結合器216は、誘電体の側面から延び、テーパ端部において終端する。しかしながら、他の位置または幾何形状も可能である。入力結合器216は、図3Aおよび図3Bに関してさらに記述される。
【0019】
フォトニック結晶メーザ例200は、細長スロット214内の蒸気(または蒸気の供給源)も含む。蒸気は、アルカリ金属原子(例えば、リュードベリ原子)のガス、希ガス、二原子ハロゲン分子のガス、または有機分子のガスなどの成分を含むことができる。例えば、蒸気は、アルカリ金属原子(例えば、K、Rb、Csなど)のガス、希ガス(例えば、He、Ne、Ar、Krなど)、またはその両方を含むことができる。別の例では、蒸気は、二原子ハロゲン分子(例えば、F2、Cl2、Br2など)のガス、希ガス、またはその両方を含むことができる。別の例では、蒸気は、有機分子(例えば、アセチレン)のガス、希ガス、またはその両方を含むことができる。他の成分を含む蒸気のための他の組合せも可能である。蒸気の供給源は、熱、紫外線放射への暴露、レーザ光による照射などのエネルギー刺激に反応して蒸気を生成することができる。例えば、蒸気は、アルカリ金属原子のガスに対応することができ、蒸気の供給源は、細長スロット214内に配置されると固相または液相になるよう十分に冷却されたアルカリ金属塊に対応することができる。
【0020】
多くの実施では、蒸気は、複数対の電子エネルギー準位の間に画成される電子遷移(例えば、リュードベリ遷移、原子遷移、分子遷移など)を有する。特に、蒸気は、1つまたは複数の入力電子遷移と1つまたは複数の入力電子遷移に結合される出力電子遷移とを含む。出力電子遷移は、目標RF電磁放射を放出するように動作可能であり、導波路の1つまたは複数の導波モードで共振する。いくつかの実施では、出力電子遷移および基準RF電磁放射は、導波路の同じ導波モードで共振する。いくつかの実施では、フォトニック結晶構造例210は、蒸気の1つまたは複数の入力電子遷移を励起することができる光信号を生成するように構成されたレーザ(例えば、ポンプレーザ)を含む。しかしながら、他のエネルギー源も可能である(例えば、無線周波数光子の供給源)。いくつかの実施では、出力電子遷移は、100MHz~1THzの範囲内の周波数を有する目標RF電磁放射を放出するように動作可能である。
【0021】
フォトニック結晶構造210は、導波路内に目標RF電磁放射のためのフォトニックバンドギャップを画定することができる。フォトニックバンドギャップは、導波路内での目標RF電磁放射の横磁気(TM)モード、横電気(TE)モード、またはその両方のためであり得る。フォトニックバンドギャップは、フォトニック結晶構造210が目標RF電磁放射の性質に影響を及ぼすことを可能にすることができる。例えば、フォトニック結晶構造210は、細長スロット214内で目標RF電磁放射を集中させるように構成され得る。フォトニック結晶構造210はまた、目標RF電磁放射(または目標RF電磁放射の波)の群速度を細長スロット214の方向に沿って(例えば、細長スロット214の軸線に沿って)低下させるように構成され得る。かかる影響により、フォトニック結晶構造210は蒸気による光子の吸収および放出を制御することが可能になり得る。
【0022】
いくつかの実施では、細長スロット214は誘電体202を部分的に貫通して延び、誘電体202は細長スロット214のスロット開口を画定する表面を含む。これらの実施では、フォトニック結晶受信器例200は、細長スロット214を覆い、スロット開口の周囲にシールを形成するように表面に接着された窓表面を有する光学窓(例えば、光学窓204)を含む。そのようなシーリングは、細長スロット214内に蒸気(または蒸気の供給源)を密封する際に光学窓および誘電体202を支援し、それにより領域212内に蒸気セルを画定することができる。光学窓は、コンタクトボンド、陽極ボンド、ガラスフリットボンドなどを使用して誘電体202に接着され得る。そのようなボンドは、その開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる、「Vapor Cells Having One or More Optical Windows Bonded to a Dielectric Body(誘電体に接着された1つまたは複数の光学窓を有する蒸気セル)」という名称の米国特許第10,859,981号に記述された技術を使用して形成され得る。
【0023】
光学窓は、蒸気を刺激して目標RF電磁放射を放出するために使用される電磁放射(例えば、レーザ光)に対して透明な材料で形成され得る。例えば、光学窓は、電磁放射の赤外線波長域(例えば、700~5000nm)、電磁放射の可視波長域(例えば、400~700nm)、または電磁放射の紫外線波長域(例えば、10~400nm)に対して透明であり得る。さらに、光学窓の材料は、高抵抗率、例えばρ>103Ω・cmを有する絶縁材料とすることができ、単結晶材料、多結晶材料、またはアモルファス(もしくはガラス)材料に対応することもできる。例えば、光学窓の材料は、水晶、石英ガラス、またはホウケイ酸ガラス内に見られるような酸化ケイ素(例えば、SiO2、SiOxなど)を含むことができる。別の例では、光学窓の材料は、サファイアまたはアルミノケイ酸塩ガラス中に見られるような酸化アルミニウム(例えば、Al23、Alxy)を含むことができる。いくつかの例では、光学窓の材料は、酸化マグネシウム(例えば、MgO)、酸化アルミニウム(例えば、Al23)、二酸化ケイ素(例えば、SiO2)、二酸化チタン(例えば、TiO2)、二酸化ジルコニウム(例えば、ZrO2)、酸化イットリウム(例えば、Y23)、酸化ランタン(例えば、La23)などの酸化物材料である。酸化物材料は、不定比酸化物(例えば、SiOx)であってもよく、1つまたは複数の二元酸化物(例えば、Y:ZrO2、LaAlO3、BaLn2Ti412など)の組合せであってもよい。他の例では、光学窓の材料は、ダイヤモンド(C)やフッ化カルシウム(CaF)などの非酸化物材料である。
【0024】
いくつかの実施では、誘電体202の表面は、キャビティ208のアレイのそれぞれのキャビティ開口を画定する。光学窓は、キャビティ開口のそれぞれを覆ってもよく、覆わなくてもよい。光学窓がキャビティ開口を覆わない実施では、光学窓の窓表面は、キャビティ開口のそれぞれの周囲にシールを形成することができる。
【0025】
いくつかの実施では、細長スロット214は、誘電体202を完全に貫通して延びる。例えば、図2Aに示すように、誘電体202は、第2の表面220の反対側に第1の表面218を含むことができ、細長スロット214は、第1の表面218から誘電体202を貫通して第2の表面220まで延びる。第1の表面218は、細長スロット214の第1のスロット開口222を画定することができ、第2の表面220は、細長スロット214の第2のスロット開口(図示せず)を画定することができる。これらの実施では、フォトニック結晶メーザ例200は、細長スロット214の第1のスロット開口および第2のスロット開口をそれぞれ覆う第1の光学窓204および第2の光学窓206を含む。第1の光学窓204および第2の光学窓206はそれぞれ、誘電体202の表面に接着された窓表面を有しており、細長スロット214内の蒸気(または蒸気の供給源)を密封して蒸気セルを画定することができる。そのような場合、第1の光学窓204は、第1のスロット開口222を覆うことができ、第1のスロット開口222の周囲にシールを形成するように誘電体202の第1の表面218に接着された第1の窓表面224を有することができる。同様に、第2の光学窓206は、第2のスロット開口を覆うことができ、第2のスロット開口の周囲にシールを形成するように誘電体202の第2の表面220に接着された第2の窓表面226を有することができる。
【0026】
フォトニック結晶メーザ例200が第1の光学窓204および第2の光学窓206を含む実施では、誘電体202の第1の表面218および第2の表面220はそれぞれ、キャビティ208のアレイのそれぞれの第1のキャビティ開口および第2のキャビティ開口を画定することができる。これらの実施では、第1の光学窓204および第2の光学窓206はそれぞれ、第1のキャビティ開口および第2のキャビティ開口のそれぞれを覆ってもよく、覆わなくてもよい。これらの光学窓がする実施では、第1の窓表面224は第1のキャビティ開口のそれぞれの周囲にシールを形成することができ、第2の窓表面226は第2のキャビティ開口のそれぞれの周囲にシールを形成することができる。
【0027】
いくつかの実施では、フォトニック結晶メーザ例200は、目標RF電磁放射をフォトニック結晶メーザ200の周囲環境にインピーダンス整合させるように構成された出力結合器228を含む。これらの実施では、キャビティ208のアレイ内の領域212は軸線230に沿って延びることができ、細長スロット214は軸線230と平行に整列される(例えば、軸線230と一致する)ことができる。この場合、誘電体202は出力結合器228を含み、出力結合器228は、誘電体202の端部232(または側面)から延び、軸線230に整列され得る。出力結合器228は、誘電体202の一体部分であってもよいが、別個の本体であってもよい。別個の場合、出力結合器228は誘電体材料で形成され得る。しかしながら、出力結合器228は、金属で形成された従来の結合器であってもよい。図2Aは、出力結合器228を、テーパにおいて終端する誘電体202からの突出部として示す。しかしながら、出力結合器228として他の幾何形状も可能である。
【0028】
いくつかの実施では、出力結合器228は、出力ビームを、出力ビームが伝搬するためのものである媒質(例えば、空気)にインピーダンス整合させるために、フォトニック結晶ミラー234などの出力ミラーに電磁的に結合される。フォトニック結晶ミラー234は、アレイ内の理想的周期的位置から空間的にオフセットされた1つまたは複数のオフセットキャビティによって画定され得る。1つまたは複数のオフセットキャビティは、細長スロット214の端部(例えば、端部232)の最寄りに存在し、細長スロット214の端部から離れる向きにそれぞれの空間的オフセットを有することができる。1つまたは複数のオフセットキャビティは、細長スロット214の側面の最寄りにも存在し、細長スロット214の側面から離れる向きにもそれぞれの空間的オフセットを有することができる。他の場所も可能である。出力ビームを平行にするためにレンズが追加されてもよい。いくつかの変形では、細長スロット214は、(例えば、細長スロット214の軸線に沿って幅が)先細りにされ得る。このような先細りは、フォトニック結晶ミラー234の形成の支援となり得る。
【0029】
いくつかの実施では、出力ビームの偏光にフィルタをかけるために、偏光子が出力結合器228に追加され得る。例えば、出力結合器228は、テーパ端部において終端し、テーパ端部に整列された狭小部分を含むことができる。共平面セグメントのアレイが、狭小部分から外方に延び、アレイに沿って周期的空間を有することができる。共平面セグメントのアレイは、目標RF電磁放射の偏光にフィルタをかけるように構成され得る。
【0030】
いくつかの実施では、フォトニック結晶ミラー234は、細長スロット214の一端または両端に配置される。図2Aは、フォトニック結晶ミラー234が細長スロット214の両端に存在する場合を示す。フォトニック結晶ミラー234が存在すると、出力電力を増大させ得る、メーザの利得閾値を下げ得る、またはその両方であり得る。例えば、フォトニック結晶ミラー234は、動作中に領域212を横切る電磁放射(例えば、フォトニック結晶メーザ例200の動作中に蒸気によって放出される目標RF電磁放射)を反射することができる。この能力で、領域212は、メーザキャビティの内部など、メーザキャビティの一部として機能することができる。さらに、フォトニック結晶ミラー234は、蒸気によって放出される電磁放射のためのキャビティ構造(例えば、スロット導波路)を画定する際にキャビティ208のアレイおよび細長スロット214を支援することができる。
【0031】
多くの変形では、フォトニック結晶ミラー234は、細長スロット214の端部付近でのフォトニック結晶構造210の寸法特性の変化に対応する。例えば、細長スロット214の端部で目標RF電磁放射がフォトニック結晶構造210を透過するのは、アレイ内のキャビティ208の間隔、誘電体202の厚さ、アレイ内のキャビティ208の直径などを変えることにより、変えることができる。誘電体202内で、目標RF電磁放射(または共振波)のための完全フォトニック結晶幾何形状が完全反射器として機能することができるが、フォトニック結晶がないと完全送信器として機能することができることを理解されたい。
【0032】
いくつかの実施では、フォトニック結晶ミラー234は、フォトニック結晶構造210のキャビティ(または導波路)の共振周波数ωcまたはその付近での電磁放射の周波数に対して80%超の反射率で構成される。この反射率は、フォトニック結晶構造210(またはその中の領域212)に関連するキャビティの品質係数Qを増大させ、それにより、起こるべきメージングのための閾値条件を下げることができる。いくつかの変形では、反射率は85%超である。いくつかの変形では、反射率は90%超である。いくつかの変形では、反射率は92%超である。いくつかの変形では、反射率は94%超である。いくつかの変形では、反射率は96%超である。
【0033】
いくつかの実施では、光学ミラー(図示せず)が細長スロット214の一端または両端に配置される。光学ミラーは、細長スロット214によって画定された光学経路に対して角度をつけられてもよく、あるいは光学経路と垂直に角度をつけられてもよい。光学ミラーは、軸線230などの、細長スロットの縦軸線に沿って光信号を誘導する働きをすることができる。そのためには、光学ミラーは、そのような光信号を反射するように構成された表面を含むことができる。光信号は、レーザから細長スロット214内へ受信された光を含むことができる。
【0034】
いくつかの実施では、蒸気は、各原子がエミッタとして機能することができる原子の蒸気である。動作中、フォトニック結晶構造210は、細長スロット214を取り囲んでおり、原子の原子遷移周波数で電磁波を減速させかつ集中させ得る。原子は、導波路の共振モード(または導波モード)で共振する原子のu→l遷移に基づいて反転分布が確立されるように、レーザでポンピングされる。導波路の共振モードへの放射線の放出は、電場の方が強いために増進されて、放出を促進することができる。誘導放出が、自由空間伝搬のためにインピーダンス整合され成形され得る導波路に沿ってコヒーレントな有向マスタービームを作り出すのを支配する。フォトニック結晶ミラーは、細長スロット214の端部に実施することができ、したがって、放射は、細長スロット214内を前後に伝搬し、さらに増幅することができる。細長スロット214は、反転分布で蓄えられたエネルギーを受け取り、このエネルギーを導波モードに放出させて、放射線のコヒーレントな有向ビームをもたらす。類似の動作が、その中で蒸気が分子の蒸気であるフォトニック結晶メーザ例200の実施に可能である。
【0035】
フォトニック結晶メーザ例200は、大量生産に適した態様で構築され得る。フォトニック結晶メーザ例200は、RF放射を送受信することができる装置を作り出すために、リュードベリ原子受信器、リュードベリ原子蒸気セルセンサ、またはリュードベリ原子蒸気セルセンサのアレイと組み合わされてもよい。フォトニック結晶メーザ例200によって出力される電力の量は、レーザの強度を変えることにより、並外れて低いレベルに制御され得る。さらに、スイッチング時間はナノ秒であり得る、というのは、キャビティの寿命はこのスケールであり得るからである。ナノ秒の寿命およびレーザをGHzバンド幅で変調する能力のために、レーザを変調することは、同じ周波数スケール(例えば、GHz)での搬送波周波数にベースバンド変調を刷り込むことができる。
【0036】
図2Aは、フォトニック結晶メーザ例200を、線形領域212および線形細長スロット214を有するものとして示しているが、他の幾何形状も可能である。例えば、図2Bは、フォトニック結晶受信器例200の上面概略図を提示するが、誘電体202はリング共振器構造を含む。特に、領域212は、キャビティ208のアレイでループ(例えば、楕円形ループ)を形成する。多くの変形では、ループは、円形、楕円形、長円形などの閉ループである。細長スロット214は、輪になったスロット250(例えば、楕円形スロット)を形成するようにループのループ軸線(例えば、楕円形軸線)に沿って延びる。輪になったスロット250の全部または一部が、蒸気または蒸気の供給源を収容するように(例えば、透明な壁、レンズ、ミラーなどによって)仕切られ得る。図2Bは、輪になったスロット250の一部252が蒸気または蒸気の供給源を収容する場合を示す。図2Bに示されているようないくつかの変形では、キャビティ208のアレイはループを形成する。しかしながら、キャビティ208のアレイとして他の分布も可能である。
【0037】
輪になったスロット250は、ループ軸線に沿って第1のループ方向254および第2のループ方向256に関連することができ、第1のループ方向254は第2のループ方向256の反対方向である。これらの構成では、輪になったスロット250は、第1のRFポート258および第2のRFポート260を含む。第1の方向性結合器262および第2の方向性結合器264がそれぞれ、第1のRFポート258および第2のRFポート260に結合される。第1の方向性結合器262は、第1のループ方向に沿って進む目標RF電磁放射の第1の部分を受信するように構成され、第2の方向性結合器264は、第2のループ方向に沿って進む目標RF電磁放射の第2の部分を受信するように構成される。多くの変形では、第1の方向性結合器262は、輪になったスロット250に第2の方向性結合器264よりも強く結合される。
【0038】
領域212および細長スロット214のための輪になった構成は、特定の場合に線形構成に勝るいくつかの利点をもたらすことができる。例えば、線形構成により、目標RF電磁放射は、放出されると、主に2つの反対方向に沿って、例えば細長スロット214の線形軸線に沿って進むことが可能になる。このように進行する間、目標RF電磁放射は、利得媒質として動作することができる蒸気と相互作用することによって増幅され得る。しかしながら、この双方向進行により、進行する目標RF電磁放射に関連付けられた光子(例えば、細長スロット214内を前後に進行する光子の波)が互いに干渉し合い、細長スロット214内に目標RF電磁放射の定在波を確立することも可能になり得る。この定在波は、細長スロット214の長さに沿って一連の最小場強度および最大場強度に関連する。最小場強度は、蒸気のいくつかの部分でほとんどないか全くない誘導放出をもたらし得るのに対して、最大場強度は、他の部分で誘導放出を飽和状態にし得る。最大場強度は、それらの部分の電磁場のエネルギーがそれらの部分の場所にある蒸気によって吸収され得る場合、特に望ましくないかもしれない。その結果、目標RF電磁放射の定在波は、細長スロット214内の蒸気を効率的に使用することができない。目標RF電磁放射は、蒸気がすべて使用された場合よりも低い大きさの場強度で出力電力を飽和させ得る。
【0039】
これに対して、輪になった構成は、特定の場合、方向性結合器を組み込み、目標RF電磁放射の進行波を確立することにより、蒸気をより効率的に使用することができる。例えば、高効率の方向性結合器(例えば、第1の方向性結合器262)は、輪になったスロット250の第1のRFポート258で一方向性装置として機能することができ、低効率の方向性結合器(例えば、第2の方向性結合器264)は、輪になったスロット250の第2のRFポート260で出力結合器として使用することができる。輪になった構成では、第1のループ方向254(例えば、時計回り方向)に循環する第1の光子が、輪になった導波路から外へ低効率で結合され、第2のループ方向256(例えば、反時計回り方向)に循環する第2の光子が、キャビティから外へ高効率で結合される。第2の光子の損失は、第2の光子が蒸気と相互作用するとメージング閾値に達しないくらいに設計される。これに対して、第1の光子は、蒸気と相互作用すると第1の光子が利得媒質から全エネルギーを取り出すくらいに強い。この状況では、目標RF電磁放射は(特に蒸気の中で)進行波を形成し、したがって、蒸気全体は、メージングにエネルギーを供給するための利得媒質として使用することができる。さらに、進行波は、蒸気が輪になったスロット250の一部分内に選択的に拘束されることを可能にする。輪になったスロット250の全容積が蒸気で充填される必要はない。その部分は、蒸気の参加を誘導放出で最大にするように長さおよび位置が選択され得る。
【0040】
フォトニック結晶メーザが信号を送信する場合、信号の増幅、位相および周波数は、情報が出力信号で符号化され得るように制御され得る。加えて、多数のフォトニック結晶メーザが、これらのフォトニック結晶メーザが相互にコヒーレントであるように位相および周波数をロックされ得る。フォトニック結晶メーザを相互にコヒーレントにすると、ヘテロダイニングなどの技術を信号検出に使用することが可能になり得る。他のコヒーレント技術も可能である。コヒーレントメーザもまた、タイミング信号を送信するようにすることができ、ホログラフィに使用することができる。これらの技術は、例えば、通信、時刻転送、非破壊試験、およびレーダに使用される。フォトニック結晶メーザは、高指向性を有しており、したがって2地点間通信のような用途に有利である。これに対して、アンテナは通常、低指向性を有する。
【0041】
フォトニック結晶メーザは、他の無線周波数源に比べて高いスペクトル純度も有することができる。フォトニック結晶メーザは、構造が単一電子遷移(例えば、リュードベリ遷移)で共振することができる共振装置であるため、他の周波数は放出されない(例えば、スプリアスまたは高調波)。フォトニック結晶メーザは、電子遷移が狭いため高スペクトル純度を呈する。さらに、フォトニック結晶メーザによって放出される波長は、ヒト組織を含む、レーザ発光が通過することができない材料を通過することもできる。結果として、フォトニック結晶メーザは、非破壊試験および医療診断での撮像応用例に使用することができる。例えば、フォトニック結晶メーザは、積荷の中身を撮像したり、壁を通る人々を検出したりするために使用され得る。いくつかの実施では、フォトニック結晶メーザは、リュードベリ原子ベースの電位測定と同じレーザおよび概念を使用する供給源である。いくつかの実施では、フォトニック結晶メーザは全誘電体装置である。フォトニック結晶メーザは、例えば、セットアップに金属を加えずに、リュードベリ原子ベース受信器または蒸気セルセンサ用の供給源または局所発振器として機能することができる。全誘電体技術は、金属構成要素に基づく技術よりも電磁的に透明である。そういうものとして、フォトニック結晶メーザは、全誘電体トランシーバを構築するためにリュードベリ原子受信器およびセンサと効果的に対になることができる。
【0042】
多くの実施では、フォトニック結晶メーザ(例えば、図2Aまたは図2Bのフォトニック結晶メーザ200)は、基準RF電磁放射を産出するように構成された基準RF発振器(またはシード源)を含む。基準RF発振器は、入力結合器(例えば、誘電体202の入力結合器216)に電磁的に結合される。基準RF発振器は、フォトニック結晶メーザが基準RF電磁放射で注入シーディングされることを可能にすることができる。注入シーディングは、高電力RF発振器(例えば、フォトニック結晶メーザ)の出力を低出力電力RF発振器で制御できるようにするプロセス、いわゆるシードである。高出力RF発振器の位相および周波数は、これらの量がシードの量を反映するので制御することができる。例えば、リュードベリ原子メーザの位相および周波数は、低電力無線周波数源から注入シーディングすることにより制御することができる。この無線周波数源は、スプリアスまたは増幅ノイズを有し、リュードベリ原子メーザの位相および周波数を依然として固定することができる。そういうものとして、シードから低品質の安価なシード発振器でも固定された位相および周波数を得ることが可能である。シード発振器は低品質とすることができる、というのは、リュードベリ原子メーザは、シード発振器出力中のスプリアス用のフィルタとして働き、増幅変動は、メージングが始まるようにする競合プロセス、すなわち、自然放出、黒体輻射、および場モードでの零点エネルギーに勝るだけでよい。従来の無線周波数機器は、位相ロックループのような装置を使用してシード発振器の出力の基準をクロックとすることにより、シード発振器の位相および周波数の制御を可能にすることができる。
【0043】
多くの実施では、フォトニック結晶メーザにおけるメージングは、原子遷移または分子遷移における反転分布によって起こる。リュードベリ原子メーザの場合、反転分布は、リュードベリ遷移においてアルカリ原子のガス中で起こる。反転分布が達成されると、メーザ動作を持続させるためにフィードバックが使用され得る。フィードバックは、利得媒質(または蒸気)の周りに構築されるメーザキャビティによって行われてもよい。フォトニック結晶メーザの場合、メーザキャビティは、フォトニック結晶構造によって形成される。反射ミラーが、細長スロットの端部のフォトニック結晶内に設計される(例えば、図1のミラー112a、112b参照)。利得媒質はチャネルを満たしており、光をチャネルの端部に配置された光学ミラーに反射させることにより、レーザを介してポンピングされる。構造の穴は無線周波数波を遅くして、その波の利得媒質との相互作用を増大させることができる。他の幾何形状も可能である。例えば、メーザキャビティは、無線周波数用の導波路を円形(例えば、ループ)にすることによって構築された進行波キャビティとすることができる。構造の様々な部分の曲げ半径の損失が多すぎない限り、導波路を使用してほとんどすべての形状を作り出すことができる。円形メーザキャビティの場合、利得媒質またはスロットは、円形導波路の縁部に沿った扁平部分など、縁部の一方に沿って走ることができる。特定の方向に進む無線周波数光子がメーザキャビティの外へ結合されるように、方向性結合器をループ内に設計することができる。方向性結合器は、メージングが主に(または完全に)一方向に起こるように一方向性装置として働く、というのは、方向性結合器に結合された無線周波数光子は、損失を引き起こすキャビティから放出され得るからである。この一方向性構成の実施は、普通ならメーザの出力電力の低下につながるはずの、順方向に進む波と逆方向に進む波との間の干渉を防止することができる。いくつかの例では、一方向性キャビティは、その中に「ホットスポット」がなく、出力電力の上昇につながる。
【0044】
メージングは、光子が誘導放出によってメーザキャビティ内部にビルドアップしたときに起こることができる。誘導放出は、キャビティ内部の数が指数関数的に成長するコヒーレント光子を生み出す。光子がキャビティの端部ミラー間を往復するときに、光子はメージングモードへのより多くのコヒーレント放出をトリガする。メーザの出力は、部分的に透過しているように設計された、キャビティ端部ミラーの一方(例えば、図1のミラー112a)から漏出する。このミラー透過は、通常、光子がメーザキャビティ内部で行うことができる往復の最大回数を制限する。
【0045】
メージングの初期段階中、メーザ出力の周波数および位相は第1の光子によって決定され得る。通常、第1の光子は、利得媒質中で自然放出によって生成され、したがって位相はランダムであり、周波数は、メーザキャビティの性質(例えば、特定の周波数でのフィードバックがどのくらいか、利得媒質のスペクトルプロファイル、など)によって統計的に決定される。自然放出は全方向に起こることができるので、メーザキャビティ内へ結合することができる光子のみが、メージングを開始するのに「有用」である。有用な光子は、メーザキャビティが定める立体角内に放出されるものであり得る。室温でのフォトニック結晶メーザの場合、構造(例えば、または誘電体)の壁からの黒体輻射が、メージングを開始することができる光子を生成することもできる。一般に、黒体輻射および自然放出によって生成される光子の数は、メーザキャビティの電磁場モードの零点エネルギーよりずっと大きいが、零点エネルギー光子がメージングを開始することもできる。レーザの場合、光の周波数はメーザによって放出される無線周波数よりもずっと大きいので、黒体輻射は無視することができる。言い換えると、レーザ周波数での電磁場のモードは熱的に占有されない。
【0046】
メーザの周波数および位相を制御するには、フォトニック結晶メーザは、所望の特性(例えば、異なる周波数、ランダム位相など)のない光子との競合を抑制しながらメージングを開始する光子の方に偏倚させることができる。フォトニック結晶メーザを偏倚させるために注入シーディングが使用され得る。この手法では、メージングにシーディングする光子を供給するために注入シーディングが使用される。必要とされる光子の数、または電力は、利得媒質の反転遷移放出率またはスペクトル特性により、メーザキャビティの設計および動作周波数に依存することができる。
【0047】
いくつかの実施では、メーザキャビティ内の外部シーディング電磁場の強度は、有用な自然放出され、黒体生成され、かつ零点分布した電磁場と比べて大きい。シード電磁場(または基準RF電磁放射)は、これがフォトニック結晶メーザの外部に生成されるので、メーザキャビティ(または導波路)内に結合されなければならない。メーザキャビティ内へのシード電磁場の結合は、シード電磁場がそれを通って注入される端部ミラーの透過率と、シード電磁場のどのくらいがメーザモード(または導波モード)に効率的に整合されているかを特徴付けるモード整合率と、を特徴とすることができる。電場アプローチは、位相が保持されるので有用であり得る。その場合、メーザキャビティ内部のシード電磁場Escは、式(1)に示すように、従来の電子機器によって送達されるシードEsに関連することができる。
【0048】
【数1】
上式で、Tmは、強度に関する従来の透過率であり、c0は、もし存在すれば、モード整合構造を考慮して、外部モードとキャビティモードとの間のモード重複度である。Escは、メージング周波数および位相を制御するために、発振器内部の各利得係数を含む、自然放出エネルギーEsp、黒体輻射エネルギーEbb、および電場の零点エネルギーE0に起因するノイズレベルEn=Esp+Ebb+E0を超えるものとする。利得係数は重要である、なぜなら、Escが十分に小さい利得を受けるほど大きいが、キャビティ共振周波数から離調されれば、大きい利得をもつ小ノイズ信号が最後に勝ち抜くことができるからである。通常、Escは、ノイズ電磁場に対する利得がシード電磁場に対するものとほぼ同じであるように利得曲線のピーク付近にある周波数を有する。これらの条件下では、所要の注入シーディング強度は、式(2)で表わすことができる。
sc* sc≧En* n 式(2)
式(2)において、ノイズ源は、Escと同じ利得を受けると推定される。
【0049】
少なくとも2つの追加ファクタが注入シーディングを複雑にし得る。1つは、出力のスペクトル純度は、Esc* scがEn* nを超える量と共に変化することができる。ノイズは、反転した分布に蓄えられたエネルギーの一部を盗み、主シードの存在にもかかわらず望ましくない周波数および位相でのメージングを引き起こす可能性がある。この挙動は、注入シーディングが閾値現象でないことに起因し得る。望ましくないメージングの量は、スペクトル純度Pで定量化することができる。スペクトル純度は、式(3)で示すように、所望されるモードでのエネルギーの、所望されないモードでのエネルギーに対する比率である。
【0050】
【数2】
式中、GscおよびGnはそれぞれ、シードおよびノイズに対する時間積分利得である。上式は、ノイズモードに関する積分を含む。式(3)は、所要のシード電磁場強度が特定の用途によって必要とされるスペクトル純度に関連することを示す。結果として、零次近似は、P≧0.5を条件として解釈することができる。利得で重み付けされたシード電力は、利得で重み付けされたノイズ電力に対して増大するので、メーザ出力のスペクトル純度は増大する。第2の改良形態は、振幅変調にとって重要であり得るパルスの発生に対処する。振幅変調は、パルスを生成するために使用されるものであり、ポンプレーザを変調して反転分布に影響を及ぼすことにより実現することができる。パルス搬送波が正しい周波数および位相に中心があることを確実にするために、注入シーディングは、既述のように、ほとんど変えないで使用することができる。しかしながら、多くの状況では、メーザキャビティ内のシード電磁場は、キャビティ内部のノイズシード構成要素が利得媒質から有意なエネルギー量を取り出すことができないうちに、パルスが所望の周波数および位相でそのピークに上昇するように十分な強さであるべきである。有意性の基準は、前の式で定められ、用途に何が必要とされるかである。高純度パルスの場合、利得で重み付けされた電磁場は、利得で重み付けされたノイズ源よりずっと強くなければならない。
【0051】
いくつかの実施では、フォトニック結晶メーザの出力は、シード発振器の特性を変えることにより、位相および周波数変調することができる。無線周波数発振器の位相および周波数変調の標準的な技術が使用され得る。フォトニック結晶メーザが応答しその位相および周波数を変化させるためにかかる時間は、上述した一般的原理に従う。変化は、メーザキャビティの寿命で設定された時間尺度で行うことができる。いくつかの例では、時間尺度は、キャビティの品質係数Q、および媒質中での光の速度で設定されるナノ秒であり、光の速度は、メーザキャビティ内に設計された遅波構造によって下げられ得る。
【0052】
次に図3Aを参照すると、入力結合器302および出力結合器304を含むフォトニック結晶メーザ例300の上面概略図および斜視概略図が提示される。フォトニック結晶メーザ例300は、図2Aおよび図2Bに関して記述したフォトニック結晶メーザ200と同様であり得る。メーザ出力は、出力結合器304を通過する。第2のモード整合構造306および結合器(例えば、入力結合器302)が、フォトニック結晶メーザ300の誘電体の他端に配置される。図示の場合、入力結合器302およびモード整合構造306は、導波路からのシード電磁場(または基準RF電磁放射)中で効率的に結合するように設計される。
【0053】
次に図3Bを参照すると、図3Aのフォトニック結晶メーザ例300の斜視概略図が提示されるが、アンテナ308が基準RF発振器として機能する。図示の場合、入力結合器302およびモード整合構造は、すぐ近くにあるアンテナ308からのシード電磁場(または基準RF電磁放射)中で効率的に結合するように設計される。図3Aに比べて、図3Bに示す構成は、シード源(例えば、アンテナ308)がフォトニック結晶メーザ例300から離れていることを可能にする。フォトニック結晶メーザ例300は、アンテナ308からの平面波または特定のアンテナ利得パターンに結合するように設計される。
【0054】
図3Aおよび図3Bは、フォトニック結晶メーザ例300にシーディングする2つの異なる方法を対比させる。特に、フォトニック結晶メーザ例300は、導波路(図3A)または自由空間アンテナ(図3B)にシード源として供給またはモード整合されることができる。しかしながら、他の種類の基準RF発振器も可能である。例えば、自由空間または導波路を経由してメーザ間で結合することも可能である。従来のRF源をアンテナまたは導波路に結合することもできる。基準RF発振器は、熱的に安定化された水晶発振器、チップスケール原子時計、GPS信号、他の種類のタイミング基準などのクロックを基準にするかまたは含むことができる。基準RF発振器の電力は、シーディングがフォトニック結晶メーザ例300に注入シーディングするのに十分になるまで調整することができる。いくつかの例では、フォトニック結晶メーザ例300は、nW~μWの出力電力を生成する。これらの例では、基準RF発振器からの注入電力は、nW程度、場合によってはそれ以下とすることができる。シード電力量が小さいこと、およびシードRF場がスペクトル的に純粋である必要がないことは、広範な経済的供給源がフォトニック結晶メーザ例300にシーディングするために使用されることを可能にする。タイミング基準は、シードに使用することができるDSP波のための特定の開始点を生成することができる。同様の方法でアナログシードを生成することができる。
【0055】
いくつかの実施では、本明細書に記載のフォトニック結晶メーザは、フォトニック結晶フレーム(または誘電体)を作り、次いでフレームに1つまたは複数の光学窓を接着することによって構築され得る。これらの構成要素は、その開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる、「Vapor Cells Having One or More Optical Windows Bonded to a Dielectric Body(誘電体に接着された1つまたは複数の光学窓を有する蒸気セル)」という名称の米国特許第10,859,981号、および「Photonic Crystal Receivers(フォトニック結晶受信器)」という名称の米国特許第11,137,432号に記載の技術を用いて互いに接着され得る。例えば、フォトニック結晶フレームを一方または両方の光学窓に接着するためにコンタクトボンディング方法が使用され得る。さらに、フォトニック結晶フレームを一方または両方の光学窓に接着するのを容易にするために接着層(例えば、ケイ素または二酸化ケイ素で形成された接着層)が使用され得る。
【0056】
フォトニック結晶フレームおよび光学窓は誘電体材料で形成され得る。例えば、フォトニック結晶フレームはケイ素から形成されてもよく、光学窓はガラス(例えば、ホウケイ酸ガラス、溶融シリカガラスなど)から形成されてもよい。別の例として、フォトニック結晶フレーム、光学窓、またはその両方は、BaLn2Ti412(BLT)で形成され得る、ただし、Lnは、ランタニド元素から選択された1つまたは複数の元素に対応する。多くの変形では、光学窓は、メーザをポンピングするために使用されるレーザ光に対して透明である。この透明性は、光学窓全体にわたって存在していてもよく、あるいは、細長スロットを覆う部分など、光学窓の一部に限定されてもよい。
【0057】
いくつかの実施では、蒸気は、気体原子、気体分子、またはその両方を含む。蒸気、または一般にエミッタは、フォトニック結晶の欠陥(例えば、線状欠陥)の中心に置かれた細長スロット内に位置する。この位置は、蒸気が自由空間中とは異なる電磁モード環境を受けることを可能にする。多くの変形では、電磁場のモード構造は、フォトニック結晶フレームが存在することによって修正される。フォトニック結晶フレームはまた、特定の設計周波数およびその前後での群速度屈折率を増大させることにより電磁波を減速させるように設計され得る。電磁波を減速させると、キャビティ内のエネルギー密度を自由空間に対して増加させることにより、エミッタのそのモードへの誘導放出率を上げることができる。減速した電磁波は、大部分が細長スロットに拘束され得るので、(例えば、共振モードを修正することにより)電磁場をさらに強化することができる。
【0058】
この構成の1つの利点は、電磁場の減速および集中が、共振モードへの放出率を上げることによりメージング閾値を下げることができることである。このように下げることは、利得閾値が下げられるのでより低い利得でのメーザ作動を可能にする。共振周波数での局所場モードは、細長スロット内に存在する蒸気の特定の遷移周波数に対応するように設計され得る。いくつかの例では、色中心または他の材料が細長スロット内に配置され得る。これらのモードへの放出率は、他の電磁場モード、例えば、細長スロットと直交する方向または他の周波数に対応するモードへの放出に対して有意に増大することができる。
【0059】
いくつかの例では、メーザは、高位リュードベリ状態のレーザ励起などにより、細長スロット内部に配置されたエミッタの高位遷移上に反転を作ることによって開始される。例えば、ポンプレーザは、ミラーおよび光ファイバを使用して細長スロット内に結合することができる。スロットフォトニック結晶モードへの自然放出は、このモードへの誘導放出のなだれをトリガして、メーザを作る。メージングプロセスは、設計周波数でコヒーレントな有向電磁波源を産出することができる。細長スロットの端部およびフォトニック結晶フレームは、フォトニック結晶の幾何形状を変えることにより、メーザ用のミラーとして構築することができる。さらに、細長スロットを通る波の複数の通路を、電磁波のより大きな増幅を可能にする構造に設計することができる。いくつかの変形では、出力ミラーに隣接して配置されたテーパは、出力電磁波を自由空間に結合し、出力ビームを成形するために使用することができる。レンズなどの、出力におけるビームを成形するための他の構造も可能である。装置は、ポンピングを変調すること(例えば、レーザ光の強度を変調すること)によって増幅変調され得る。
【0060】
いくつかの実施では、米国特許第10,859,981号および米国特許第11,137,432号に記述されているような低温コンタクトボンディングが、真空密閉に使用される。光学窓の一方(または光学窓の一方の充填穴)は、原子試料が純粋のままであるようにコンタクトボンディングすることができる。ボンディングの他の方法は、蒸気セルに高い温度および/または電圧を加えて、衝突によりメーザの性能を損ない得る有意なガス放出を引き起こすことを必要とし得る。特定の場合、蒸気セルに充填するための小さいステムが使用され得る。これらの場合、光学窓は、フレームにアノード接合することができる。構造は全誘電体材料で作られる。
【0061】
いくつかの実施では、フォトニック結晶メーザは、無線周波数(RF)レジーム(例えば、100MHz~1THz)内のコヒーレント放射を産出することができ、そういうものとして、無線周波数(RF)電磁放射を放出するレーザと同じように機能することができる。いくつかの変形では、レジームは20kHzから1THzに及ぶ。他の変形では、レジームは20kHzから300GHzに及ぶ。フォトニック結晶メーザは、最大で約100nWの電力を産出することができるメーザを構築するために、モノリシックフォトニック結晶フレームとこのフレームに組み込まれた蒸気セルとを含むことができる。電力は低いが、装置は、誘電体材料から製作されてもよく、無線の試験および通信のための有向RF信号を産出するために使用することができる。放射ビームは、指向性がありかつコヒーレントであるので、アンテナによって普通に産出される空間的拡散なしに長距離の伝搬を可能にすることができる。そのような空間的拡散はビーム強度のR-2縮小につながる、ただしRは伝搬距離である。フォトニック結晶メーザの誘電体構造は、フォトニック結晶メーザが無響室内に位置し、環境を有意にかき乱すことなく試験用の変調RF信号を産出することを可能にする。フォトニック結晶メーザは、タイミングおよび周波数基準に、RF分光法に、あるいはリュードベリ原子ベース受信器または他の種類の従来型受信器と組み合わせて局所発振器として使用することもできる。
【0062】
いくつかの例では、フォトニック結晶メーザは、フォトニック結晶構造(またはフレーム)とフォトニック結晶構造の細長スロット内へレーザ光をチャネルポンピングするための光ファイバ回路とを含む。フォトニック結晶メーザはさらに、1つまたは複数のポンプレーザとこれらのレーザを制御する電子機器とを含むことができる。電子機器は、ポンプレーザからの出力ビームを成形し(例えば、コリメートし)、出力ビームを伝搬媒質にインピーダンス整合させるために、出力結合器、または他の構造を制御することもできる。
【0063】
記述されるもののいくつかの態様では、フォトニック結晶メーザが、下記の例によって記述され得る。
例1.フォトニック結晶メーザであって、
誘電体であって、
誘電体内にフォトニック結晶構造を画定するように周期的に配列されたキャビティのアレイ、
フォトニック結晶構造内に欠陥を画定するキャビティアレイ内の領域、
誘電体の表面のスロット開口から誘電体を少なくとも部分的に貫通して延びる、領域を貫通する細長スロットであって、細長スロットおよびキャビティアレイが誘電体の導波路を画定する、細長スロット、および
細長スロットの端部に整列され、基準無線周波数(RF)電磁放射を導波路に結合させるように構成された入力結合器であって、基準RF電磁放射が制御された周波数と制御された位相の一方または両方を有する、入力結合器
を備える、誘電体と、
細長スロットを覆い、スロット開口の周囲にシールを形成するように誘電体の表面に接着された窓表面を有する光学窓と、
細長スロット内の蒸気または蒸気の供給源であって、蒸気が、
1つまたは複数の入力電子遷移、および
1つまたは複数の入力電子遷移に結合され、目標RF電磁放射を放出するように動作可能な出力電子遷移であって、出力電子遷移が導波路の導波モードで共振する、出力電子遷移
を含む、細長スロット内の蒸気または蒸気の供給源と
を備える、フォトニック結晶メーザ。
例2.基準RF電磁放射が導波路の導波モードで共振する、例1に記載のフォトニック結晶メーザ。
例3.入力結合器が、誘電体の側面から延び、テーパ端部において終端する、例1または例2に記載のフォトニック結晶メーザ。
例4.基準RF電磁放射を産出するように構成された基準RF発振器であって、基準RF発振器が誘電体の入力結合器に電磁的に結合される、基準RF発振器を備える、例1または例2~3のいずれか1例に記載のフォトニック結晶メーザ。
例5.蒸気の1つまたは複数の入力電子遷移を励起することができる光信号を生成するように構成されたレーザを備える、例1または例2~4のいずれか1例に記載のフォトニック結晶メーザ。
例6.フォトニック結晶構造が、細長スロット内で目標RF電磁放射を集中させるように構成される、例1または例2~5のいずれか1例に記載のフォトニック結晶メーザ。
例7.キャビティアレイ内の領域が軸線に沿って延び、細長スロットが軸線と平行に整列され、
フォトニック結晶構造が、軸線に平行な方向に沿って目標RF電磁放射の群速度を低下させるように構成される、
例1または例2~6のいずれか1例に記載のフォトニック結晶メーザ。
例8.キャビティアレイが、アレイ内の理想的周期的位置から空間的にオフセットされた1つまたは複数のオフセットキャビティを備える、例1または例2~7のいずれか1例に記載のフォトニック結晶メーザ。
例9.細長スロットの端部に配置された光学ミラーを備える、例1または例2~8のいずれか1例に記載のフォトニック結晶メーザ。
例10.誘電体が、細長スロットの第2の端部に整列され、目標RF電磁放射をフォトニック結晶メーザの周囲環境にインピーダンス整合させるように構成された出力結合器を備える、例1または例2~9のいずれか1例に記載のフォトニック結晶メーザ。
例11.出力結合器が、誘電体の側面から延び、テーパ端部において終端する、例10に記載のフォトニック結晶メーザ。
例12.フォトニック結晶構造が、導波路内に目標RF電磁放射の横磁気(TM)モードに関連するフォトニックバンドギャップを画定する、例1または例2~11のいずれか1例に記載のフォトニック結晶メーザ。
例13.フォトニック結晶構造が、導波路内に目標RF電磁放射の横電気(TE)モードに関連するフォトニックバンドギャップを画定する、例1または例2~12のいずれか1例のフォトニック結晶メーザ。
例14.蒸気が、アルカリ金属原子のガスを含む、例1または例2~13のいずれか1例に記載のフォトニック結晶メーザ。
例15.領域がキャビティアレイ内にループを形成し、細長スロットが、輪になったスロットを形成するようにループのループ軸線に沿って延び、
蒸気または蒸気の供給源が、輪になったスロットの少なくとも一部内に配置される、
例1または例2~14のいずれか1例に記載のフォトニック結晶メーザ。
例16.輪になったスロットがループ軸線に沿って第1のループ方向および第2のループ方向に関連しており、第1のループ方向が第2のループ方向の反対方向であり、
輪になったスロットが、第1のRFポートおよび第2のRFポートを備え、
フォトニック結晶メーザが、
第1のRFポートおよび第2のRFポートにそれぞれ結合される第1の方向性結合器および第2の方向性結合器を備え、第1の方向性結合器が、第1のループ方向に沿って進む目標RF電磁放射の第1の部分を受信するように構成され、第2の方向性結合器が、第2のループ方向に沿って進む目標RF電磁放射の第2の部分を受信するように構成される、
例15に記載のフォトニック結晶メーザ。
【0064】
記述されるもののいくつかの態様では、無線周波数(RF)電磁放射を生成する方法が、下記の例によって記述され得る。
例17.無線周波数(RF)電磁放射を生成する方法であって、本方法は、
誘電体の入力結合器で基準RF電磁放射を受信するステップであって、
誘電体はフォトニック結晶メーザの一部であり、
誘電体内にフォトニック結晶構造を画定するように周期的に配列されたキャビティのアレイ、
フォトニック結晶構造内に欠陥を画定するキャビティアレイ内の領域、
誘電体の表面のスロット開口から誘電体を少なくとも部分的に貫通して延びる領域を貫通する細長スロットであって、細長スロットおよびキャビティアレイが誘電体の導波路を画定する、細長スロット、および
細長スロットの端部に整列され、基準RF電磁放射を導波路に結合させるように構成された入力結合器
を備え、
フォトニック結晶メーザが、
誘電体の細長スロットを覆い、スロット開口の周囲にシールを形成するように誘電体の表面に接着された窓表面を有する光学窓と、
誘電体の細長スロット内に密封され、
光信号によって励起された1つまたは複数の入力電子遷移、および
1つまたは複数の入力電子遷移に結合され、目標RF電磁放射を放出するように動作可能な出力電子遷移であって、出力電子遷移が導波路の導波モードで共振する、出力電子遷移
を含む蒸気と
を備える、ステップと、
誘電体の細長スロット内への光信号を受信するステップと、
光信号を受信するのに応答して蒸気から目標RF電磁放射を放出するステップであって、目標RF電磁放射が基準RF電磁放射に基づく、ステップと
を含む、方法。
例18.基準RF電磁放射を受信するステップが、入力結合器の動作により、基準RF電磁放射を誘電体の導波路に結合することを含む、例17に記載の方法。
例19.目標RF電磁放射が、基準RF電磁放射の周波数および位相の一方または両方によってそれぞれ設定された周波数および位相の一方または両方を有する、例17または例18に記載の方法。
例20.基準RF電磁放射が導波路の導波モードで共振する、例17または例18~19のいずれか1例に記載の方法。
例21.基準RF電磁放射を基準RF発振器の動作により生成するステップ
を含む、例17または例18~20のいずれか1例に記載の方法。
例22.基準RF電磁放射を生成するステップが、基準RF電磁放射の周波数および位相の一方または両方を制御することを含む、例21に記載の方法。
例23.出力電子遷移と導波モードとの間で目標RF電磁放射の少なくとも一部を共振させることにより、目標RF電磁放射を増幅するステップ
を含む、例17または例18~22のいずれか1例に記載の方法。
例24.目標RF電磁放射を増幅するステップが、細長スロット内で目標RF電磁放射を集中させることを含む、例23に記載の方法。
例25.キャビティアレイ内の領域が軸線に沿って延び、細長スロットが軸線と平行に整列され、
目標RF電磁放射を増幅するステップが、軸線に平行な方向に沿って目標RF電磁放射の群速度を低下させることを含む、
例23または例24に記載の方法。
例26.キャビティアレイが、アレイ内の理想的周期的位置から空間的にオフセットされた1つまたは複数のオフセットキャビティを備え、
目標RF電磁放射を増幅するステップが、目標RF電磁放射をオフセットキャビティに反射させることを含む、
例23または例24~25のいずれか1例に記載の方法。
例27.細長スロット内への光信号を受信するステップが、光信号を細長スロット内の蒸気と相互作用させることを含む、例17または例18~26のいずれか1例に記載の方法。
例28.細長スロット内への光信号を受信するステップが、光信号を細長スロットの端部に配置されたミラーに反射させることを含む、例17または例18~27のいずれか1例に記載の方法。
例29.導波路の動作により、目標RF電磁放射を誘電体の端部の方へ向けるステップ
を含む、例17または例18~28のいずれか1例に記載の方法。
例30.誘電体が、細長スロットの第2の端部に整列され、目標RF電磁放射をフォトニック結晶メーザの周囲環境にインピーダンス整合させるように構成された出力結合器を備え、
本方法が、
放出または増幅後の目標RF電磁放射を出力結合器に結合させるステップと、
出力結合器の動作により、結合された目標RF電磁放射を誘電体の周囲環境にインピーダンス整合させるステップと
を含む、
例17または例18~29のいずれか1例に記載の方法。
【0065】
本明細書は多くの詳細を含んでいるが、これらは、特許請求され得るものの範囲への制限と理解されるべきでなく、むしろ特定の例に固有の特徴の記述と理解されるべきである。本明細書に記述されるかまたは別個の実施の状況で図面に示される特定の特徴は、組み合わせることができる。逆に、単一実施の状況で記述または図示される様々な特徴はまた、多くの実施形態で別々に実施するかまたは任意の適切なサブコンビネーションで実施することができる。
【0066】
同様に、動作は図面に特定の順序で示されているが、これは、所望の結果を達成するために、かかる動作が示される特定の順序でまたは順番に実行されること、または、図示されるすべての動作が実行されることを条件とすると理解されるべきではない。特定の状況では、マルチタスクおよび並列処理が有利であり得る。さらに、上述の実施における様々なシステムコンポーネントの分離は、すべての実施においてかかる分離を必要とするものと理解されるべきでなく、記述されるプログラムコンポーネントおよびシステムは一般に、共に単一製品に統合するかまたは複数の製品にパッケージ化することができると理解されるべきである。
【0067】
いくつかの実施形態が記述されている。それにもかかわらず、様々な修正がなされ得ることを理解されたい。したがって、他の実施形態は以下の特許請求の範囲内にある。
【要約】
一般的な態様では、フォトニック結晶メーザが誘電体を含み、誘電体は、誘電体内にフォトニック結晶構造を画定するように周期的に整列されたキャビティのアレイを有する。誘電体は、フォトニック結晶構造内に欠陥を画定するキャビティのアレイ内の領域も含む。この領域を貫通する細長スロットが、誘電体の表面のスロット開口から誘電体を少なくとも部分的に貫通して延びる。細長スロットおよびキャビティアレイは誘電体の導波路を画定する。誘電体は、細長スロットの端部に整列され、基準無線周波数(RF)電磁放射を導波路に結合させるように構成された入力結合器をさらに含む。フォトニック結晶メーザは、細長スロット内の蒸気もしくは蒸気の供給源、および細長スロットを覆う光学窓も含む。
【選択図】図1
図1
図2A
図2B
図3A
図3B