(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-14
(45)【発行日】2025-02-25
(54)【発明の名称】Y字歯間清掃具
(51)【国際特許分類】
A61C 15/04 20060101AFI20250217BHJP
【FI】
A61C15/04 503
(21)【出願番号】P 2021133509
(22)【出願日】2021-08-18
【審査請求日】2024-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【氏名又は名称】大西 裕人
(72)【発明者】
【氏名】香嶋 郁美
(72)【発明者】
【氏名】和田 行紀
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6092536(US,A)
【文献】登録実用新案第3199137(JP,U)
【文献】米国特許第6065479(US,A)
【文献】中国実用新案第203408115(CN,U)
【文献】独国実用新案第29503229(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に長尺の把持部と前記把持部の先端部から前記長尺方向側に間隔を空けて延びる一対のアーム部とを備えたY字歯間清掃具であって、
前記一対のアーム部に掛け渡される清掃糸と、
ユーザの押圧力を受け付ける力受付部と、
前記力受付部によって受け付けられた押圧力を前記一対のアーム部に伝達し、前記押圧力に応じて前記清掃糸の張力を変化させる力伝達部とを備え、
前記把持部は、前記力伝達部を覆うY字歯間清掃具。
【請求項2】
前記一対のアーム部の後端側には、前記一対のアーム部の先端側の間隔を可変に支持するアーム支持部が設けられ、
前記力受付部は、互いに間隔を空けて対向配置された第一受付部と第二受付部とを備え、
前記力伝達部は、互いに間隔を空けて対向配置された第一伝達部と第二伝達部とを備え、
前記第一伝達部は、前記一対のアーム部のうち一方のアーム部の後端と前記第一受付部とを繋ぐように延設され、
前記第二伝達部は、前記一対のアーム部のうち他方のアーム部の後端と前記第二受付部とを繋ぐように、前記第一伝達部との間に間隔を空けて延設され、
前記第一及び第二受付部が、互いの間隔を狭めるように押圧された場合、その押圧力が前記第一及び第二伝達部によって前記一対のアーム部の後端に伝達されることにより、前記アーム支持部を支点に前記一対のアーム部が開き、前記清掃糸の張力が増大する請求項1に記載のY字歯間清掃具。
【請求項3】
前記アーム支持部は、前記一対のアーム部の後端同士を繋ぐ略棒状形状を有し、前記第一及び第二伝達部により伝達された押圧力に応じて撓むことによって、前記一対のアーム部が開く請求項2に記載のY字歯間清掃具。
【請求項4】
前記アーム支持部は、前記一対のアーム部の後端同士が間隙を空けて対向し合うように設けられ、前記第一及び第二伝達部により伝達された押圧力に応じて前記間隙が狭められ、前記一対のアーム部の後端同士が当接し合って撓むことによって、前記一対のアーム部が開く請求項2に記載のY字歯間清掃具。
【請求項5】
前記把持部における前記力伝達部を覆う部分の、前記第一及び第二伝達部の対向方向と直交する方向の第一側壁には、前記第一及び第二伝達部の間の間隔に対応する伝達側スリットが形成されている請求項2~4のいずれか1項に記載のY字歯間清掃具。
【請求項6】
前記第一及び第二受付部は、それぞれ略板状形状を有し、
前記把持部は、前記第一及び第二受付部の、前記第一及び第二受付部の対向方向と直交する方向の側面を覆い、
前記把持部における、前記第一及び第二受付部の前記側面を覆う部分の第二側壁には、前記第一及び第二受付部の間の間隔に対応する把持側スリットが形成されている請求項5に記載のY字歯間清掃具。
【請求項7】
前記把持側スリットは、
前記第一及び第二受付部の対向方向と直交する一方の側の前記第二側壁に形成された第一スリットと、
前記第一及び第二受付部の対向方向と直交する他方の側の前記第二側壁に形成された第二スリットとを含み、
前記把持部は、
前記第一スリットに架設された第一リブと、
前記第二スリットに架設された第二リブとを含み、
前記第一リブと前記第二リブとは、前記力伝達部の延設方向に対して、異なる位置に架設されている請求項6に記載のY字歯間清掃具。
【請求項8】
前記第一受付部の、前記第一伝達部とは反対側へ延びる第一延長部と、
前記第二受付部の、前記第二伝達部とは反対側へ延びる第二延長部とをさらに備え、
前記第一及び第二延長部の、前記第一及び第二受付部とは反対側の端部は、互いに間隔を空けて連結されている請求項2~7のいずれか1項に記載のY字歯間清掃具。
【請求項9】
前記力受付部は、略板状形状を有し、
前記把持部は、前記力受付部の、前記押圧力の方向に対して直交する方向の側面を覆う、請求項1~8のいずれか1項に記載のY字歯間清掃具。
【請求項10】
前記力受付部及び前記力伝達部は、第一の樹脂で構成され、
前記把持部は、第二の樹脂で構成され、
前記第一の樹脂と前記第二の樹脂とは、お互いに密着しにくい性質を有する請求項1~9のいずれか1項に記載のY字歯間清掃具。
【請求項11】
請求項10に記載のY字歯間清掃具の製造方法であって、
(1)前記一対のアーム部、前記力受付部、及び前記力伝達部に対応するキャビティを有する第一の金型内に、前記第一の樹脂を提供することにより前記一対のアーム部、前記力受付部、及び前記力伝達部を成形する工程と、
(2)前記Y字歯間清掃具に対応するキャビティを有する第二の金型内に、前記一対のアーム部、前記力受付部、及び前記力伝達部を配置する工程と、
(3)前記(2)工程の後、前記第二の金型内に、前記第二の樹脂を供給することにより前記把持部を成形する工程とを含むY字歯間清掃具の製造方法。
【請求項12】
請求項5~7のいずれか1項に記載のY字歯間清掃具の製造方法であって、
(1)前記一対のアーム部、前記力受付部、及び前記力伝達部に対応するキャビティを有する第一の金型内に、第一の樹脂を提供することにより前記一対のアーム部、前記力受付部及び前記力伝達部を成形する工程と、
(2)前記Y字歯間清掃具に対応するキャビティを有する第二の金型内に、前記一対のアーム部、前記力受付部、及び前記力伝達部を配置する工程と、
(2a)第二の金型内に、前記第一及び第二伝達部の間の間隔に、前記伝達側スリットに対応する入れ駒を挿入する工程と、
(3a)前記(2a)工程の後、前記第二の金型内に、第二の樹脂を供給することにより前記把持部を成形する工程とを含み、
前記第一の樹脂と前記第二の樹脂とは、お互いに密着しにくい性質を有するY字歯間清掃具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯間清掃具、特に、Y字状に形成された歯間清掃具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在普及しているデンタルフロッサーは、デンタルフロスを樹脂などのホルダに一定の張力で固定し、片手で把持して使用することが可能なため、とても利便性に優れている。
【0003】
その中でも、デンタルフロスの張力を調節することが可能なデンタルフロスホルダが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のデンタルフロスホルダは、
図1(a)(b)に記載されているように、把持する力によってフロスの張力が増減する構成となっていることから、操作中に誤って把持する力が加わると、調整したフロスの張力が意図せず変化してしまうことがある。このため、把持しつつ張力を調整することが困難であった。
【0006】
以上のことを鑑み、本発明は、ユーザが把持しつつ清掃糸の張力を調整することが容易なY字歯間清掃具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るY字歯間清掃具は、所定方向に長尺の把持部と前記把持部の先端部から前記長尺方向側に間隔を空けて延びる一対のアーム部とを備えたY字歯間清掃具であって、前記一対のアーム部に掛け渡される清掃糸と、ユーザの押圧力を受け付ける力受付部と、前記力受付部によって受け付けられた押圧力を前記一対のアーム部に伝達し、前記押圧力に応じて前記清掃糸の張力を変化させる力伝達部とを備え、前記把持部は、前記力伝達部を覆っている。
【0008】
この構成によれば、Y字歯間清掃具は、力受付部によって受け付けられた押圧力が力伝達部によって、長尺方向側に間隔を空けて延びる一対のアーム部に架け渡された清掃糸の張力を変化させることができる。また、押圧力によって清掃糸の張力を変化させる力伝達部を把持部で覆うことで、ユーザの把持力を把持部が受け止め、把持力が力伝達部に加わる恐れを低減することができる。その結果、Y字歯間清掃具の操作のために、ユーザの把持力から、押圧力を独立させて力受付部に加えることができるので、ユーザが把持しつつ清掃糸の張力を調整することが容易になる。
【0009】
また、前記一対のアーム部の後端側には、前記一対のアーム部の先端側の間隔を可変に支持するアーム支持部が設けられ、前記力受付部は、互いに間隔を空けて対向配置された第一受付部と第二受付部とを備え、前記力伝達部は、互いに間隔を空けて対向配置された第一伝達部と第二伝達部とを備え、前記第一伝達部は、前記一対のアーム部のうち一方のアーム部の後端と前記第一受付部とを繋ぐように延設され、前記第二伝達部は、前記一対のアーム部のうち他方のアーム部の後端と前記第二受付部とを繋ぐように、前記第一伝達部との間に間隔を空けて延設され、前記第一及び第二受付部が、互いの間隔を狭めるように押圧された場合、その押圧力が前記第一及び第二伝達部によって前記一対のアーム部の後端に伝達されることにより、前記アーム支持部を支点に前記一対のアーム部が開き、前記清掃糸の張力が増大することが好ましい。
【0010】
この構成によれば、一対のアーム部のそれぞれの後端から、第一伝達部が第一受付部へ、第二伝達部が第二受付部へそれぞれ繋がる。これら間隔が設けられていることによって、第一伝達部及び第二伝達部が押圧力に応じて動くスペースが確保される。一対のアーム部の後端側に設けられたアーム支持部が、第一伝達部及び第二伝達部の動きを一対のアーム部が開く運動方向に変換するための支点となる。
【0011】
また、前記アーム支持部は、前記一対のアーム部の後端同士を繋ぐ略棒状形状を有し、前記第一及び第二伝達部により伝達された押圧力に応じて撓むことによって、前記一対のアーム部が開くことが好ましい。
【0012】
この構成によれば、略棒状形状を有するアーム支持部が前記一対のアーム部の後端同士を繋ぐことで、第一伝達部及び第二伝達部から押圧力が伝達されると、アーム支持部が撓んで押圧力が一対のアーム部が開く運動方向に変換される。
【0013】
また、前記アーム支持部は、前記一対のアーム部の後端同士が間隙を空けて対向し合うように設けられ、前記第一及び第二伝達部により伝達された押圧力に応じて前記間隙が狭められ、前記一対のアーム部の後端同士が当接し合って撓むことによって、前記一対のアーム部が開くことが好ましい。
【0014】
この構成によれば、一対のアーム部の後端同士の間に間隙を有して設けられるアーム支持部は、第一伝達部及び第二伝達部から押圧力が伝達されると、アーム支持部が当接し合い、支点となって撓み、押圧力が開く運動方向に変換される。
【0015】
また、前記把持部における前記力伝達部を覆う部分の、前記第一及び第二伝達部の対向方向と直交する方向の第一側壁には、前記第一及び第二伝達部の間の間隔に対応する伝達側スリットが形成されていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、把持部には、ユーザが把持するためには必要のない伝達側スリットが、第一及び第二伝達部の間の間隔に対応して設けられている。そのため、第一及び第二伝達部を先に成形し、その後に第一及び第二伝達部を覆うように金型内に材料を注入して把持部を一体成形した場合に、第一及び第二伝達部の間の間隔に入れ駒を挿入することで間隔が埋まらないようにしつつ、伝達側スリットからその入れ駒を抜き取ることが可能となる。従って、把持部に伝達側スリットを設けることによって、第一及び第二伝達部と、第一及び第二伝達部を覆う把持部とを、一体成形することが可能となる。
【0017】
また、前記第一及び第二受付部は、それぞれ略板状形状を有し、前記把持部は、前記第一及び第二受付部の、前記第一及び第二受付部の対向方向と直交する方向の側面を覆い、前記把持部における、前記第一及び第二受付部の前記側面を覆う部分の第二側壁には、前記第一及び第二受付部の間の間隔に対応する把持側スリットが形成されていることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、第一受付部及び第二受付部が対向する方向に直交する方向の側面を把持部が覆うことから、把持した際に意図せず第一受付部及び第二受付部を押圧してしまう恐れを低減することができる。
【0019】
また、前記把持側スリットは、前記第一及び第二受付部の対向方向と直交する一方の側の前記第二側壁に形成された第一スリットと、前記第一及び第二受付部の対向方向と直交する他方の側の前記第二側壁に形成された第二スリットとを含み、前記把持部は、前記第一スリットに架設された第一リブと、前記第二スリットに架設された第二リブとを含み、前記第一リブと前記第二リブとは、前記力伝達部の延設方向に対して、異なる位置に架設されていることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、把持部に第一及び第二スリットを設けると、把持部が第一及び第二スリットで分断されて強度が低下する。そこで第一及び第二リブを設けることで、把持部の強度を向上することができる。さらに、第一及び第二リブを、力伝達部の延設方向に対して同一位置に設けると、第一及び第二伝達部の間隔内に、第一及び第二リブによって両側を塞がれた空間が生じ、この部分に上述の入れ駒を配置することができなくなる。そこで、第一リブと第二リブとを、力伝達部の延設方向に対して異なる位置に架設することによって、第一リブ側から挿入する入れ駒と、第二リブ側から挿入する入れ駒との位置をずらすことができる。その結果、両側から入れた入れ駒によって、第一及び第二伝達部の間隔を、ひとつながりの空間として形成することが可能となる。
【0021】
また、前記第一受付部の、前記第一伝達部とは反対側へ延びる第一延長部と、前記第二受付部の、前記第二伝達部とは反対側へ延びる第二延長部とをさらに備え、前記第一及び第二延長部の、前記第一及び第二受付部とは反対側の端部は、互いに間隔を空けて連結されていることが好ましい。
【0022】
この構成によれば、第一延長部及び第二延長部は、第一受付部及び第二受付部がある反対側の端部で連結することで、第一受付部及び第二受付部がそれぞれの両側で支持されることになり、第一受付部及び第二受付部が押圧力を受けたときの反発する弾性が強くなる。
【0023】
また、前記力受付部は、略板状形状を有し、前記把持部は、前記力受付部の、前記押圧力の方向に対して直交する方向の側面を覆うことが好ましい。
【0024】
この構成によれば、受け付けた押圧力の方向に直交する方向の、力受付部の側面を把持部が覆うことから、把持した際に意図せず力受付部を押圧してしまう恐れを低減することができる。
【0025】
また、前記力受付部及び前記力伝達部は、第一の樹脂で構成され、前記把持部は、第二の樹脂で構成され、前記第一の樹脂と前記第二の樹脂とは、お互いに密着しにくい性質を有することが好ましい。
【0026】
この構成によれば、第一の樹脂で構成された力受付部及び力伝達部と、第二の樹脂で構成された把持部とは、金型内で一体的に成形される。第一の樹脂と第二の樹脂とがお互いに密着しにくい性質を有することで、力受付部及び力伝達部と、把持部とを成形する際互いに分離するため、把持部は力受付部及び力伝達部の可動性を保ちながら、力受付部及び力伝達部を覆うことができる。
【0027】
本発明に係るY字歯間清掃具の製造方法は、上述のY字歯間清掃具の製造方法であって、(1)前記一対のアーム部、前記力受付部、及び前記力伝達部に対応するキャビティを有する第一の金型内に、前記第一の樹脂を提供することにより前記一対のアーム部、前記力受付部、及び前記力伝達部を成形する工程と、(2)前記Y字歯間清掃具に対応するキャビティを有する第二の金型内に、前記一対のアーム部、前記力受付部、及び前記力伝達部を配置する工程と、(3)前記(2)工程の後、前記第二の金型内に、前記第二の樹脂を供給することにより前記把持部を成形する工程とを含んでいる。
【0028】
この製造方法によれば、第一の樹脂によって成形された一対のアーム部、力受付部、及び力伝達部は、Y字歯間清掃具に対応するキャビティに配置され、それらが第二の樹脂によって覆われるように把持部が成形される。
【0029】
また、本発明に係るY字歯間清掃具の製造方法は、上述のY字歯間清掃具の製造方法であって、(1)前記一対のアーム部、前記力受付部、及び前記力伝達部に対応するキャビティを有する第一の金型内に、第一の樹脂を提供することにより前記一対のアーム部、前記力受付部及び前記力伝達部を成形する工程と、(2)前記Y字歯間清掃具に対応するキャビティを有する第二の金型内に、前記一対のアーム部、前記力受付部、及び前記力伝達部を配置する工程と、(2a)第二の金型内に、前記第一及び第二伝達部の間の間隔に、前記伝達側スリットに対応する入れ駒を挿入する工程と、(3a)前記(2a)工程の後、前記第二の金型内に、第二の樹脂を供給することにより前記把持部を成形する工程とを含み、前記第一の樹脂と前記第二の樹脂とは、お互いに密着しにくい性質を有することが好ましい。
【0030】
この製造方法によれば、第一の樹脂によって成形された一対のアーム部、力受付部、及び力伝達部を覆うように第二の樹脂の把持部が成形される際、一対のアーム部、力受付部、及び力伝達部が可変的になるために必要な間隔に入れ駒が挿入された状態で把持部が成形される。これにより、成形後入れ駒を抜出することで、第一伝達部及び第二伝達部の間に間隔を空けるとともに、伝達側スリットが形成される。
【発明の効果】
【0031】
このような構成のY字歯間清掃具は、ユーザがY字歯間清掃具を把持しつつ、押圧で清掃糸の張力を容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施形態に係るY字歯間清掃具を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るY字歯間清掃具を示す分解図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るY字歯間清掃具を示す断面図である。
【
図4】Y字歯間清掃具Aの力受付部12が押圧されて清掃糸3の張力が増大することを示す模式図である。
【
図5】本発明のその他の実施形態に係るY字歯間清掃具を示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るY字歯間清掃具の製造方法を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の実施形態に係るY字歯間清掃具の製造方法の前半の工程を示す模式図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るY字歯間清掃具の製造方法の後半の工程を示す模式図である。
【
図9】本発明の実施形態に係るY字歯間清掃具のその他の製造方法を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の実施形態に係るY字歯間清掃具のその他の製造方法の工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。また、各図には、方向関係を明確にするために適宜XYZ直交座標軸を示している。
【0034】
図1は、本発明の実施形態に係るY字歯間清掃具を示す斜視図である。
図2は、本発明の実施形態に係るY字歯間清掃具を示す分解図である。
図3は、本発明の実施形態に係るY字歯間清掃具を示す断面図である。
図1乃至
図3で示すY字歯間清掃具Aは、一対のアーム10、力受付部12、力伝達部14、第一延長部161、及び第二延長部162を含む一次部材1と、二次部材である把持部2と、清掃糸3とで構成されている。
【0035】
一対のアーム部10は、互いに間隔を空けて略中間位置まで+X方向へ延び、略中間位置から先端まで-Z方向へ傾斜して斜めに延びている。一対のアーム部10の、先端側には清掃糸3が掛け渡され、後端側には後端同士を繋ぐ略棒状形状を有して先端側の間隔を可変に支持するアーム支持部101が設けられている。
【0036】
力受付部12は、互いに間隔を空けてY軸方向に対向配置された第一受付部121と第二受付部122とを備え、第一受付部121及び第二受付部122によってユーザの押圧力を受け付けている。
【0037】
また、第一受付部121及び第二受付部122は、略板状形状を有している。なお、ユーザからの押圧力を受け付けることが容易な形状であれば、この限りではない。
【0038】
力伝達部14は、力受付部12と同じように、互いに間隔を空けてY軸方向に対向配置された第一伝達部141と第二伝達部142とを備えている。
【0039】
第一伝達部141は、一対のアーム部10のうちの一方にある後端と第一受付部121とを繋ぐようにX軸方向に延設されている。第二伝達部142は、一対のアーム部10のうちの他方にある後端と第二受付部122とを繋ぐようにX軸方向に延設されている。この時、第一伝達部141及び第二伝達部142は、互いの間隔を空けて、それぞれ延設されている。
【0040】
第一延長部161は、第一受付部121から第一伝達部141側ではない反対側、即ち-X方向へ延びている。第二延長部162は、第二受付部122から第二伝達部142側ではない反対側、即ち-X方向へ延びている。第一延長部161の-X方向側の端部と、第二延長部162の-X方向側の端部とは、互いに間隔を空けて連結部163によって連結される。
【0041】
第一延長部161及び第二延長部162の端部同士が連結されることにより、第一伝達部141及び第二伝達部142側と、第一延長部161及び第二延長部162側との両側から、第一受付部121及び第二受付部122がそれぞれ支持されて押圧に対する反発力が強くなる。
【0042】
力受付部12、力伝達部14、第一延長部161及び第二延長部162は、アーム支持部101から、連結部163までY軸方向に離間する間隔を一次部材1に形成する。
【0043】
図4は、Y字歯間清掃具の力受付部が押圧されて清掃糸の張力が増大することを示す模式図である。
図4(a)のとおり、一次部材1は、第一受付部121及び第二受付部122がユーザからの押圧力を受け付けた場合、それぞれ繋がっている第一伝達部141及び第二伝達部142とともに、互いに空けている間隔が押圧力に応じて狭められる。
【0044】
図4(b)のとおり、間隔が狭められると、一対のアーム部10にあるアーム支持部101は支点となり、第一伝達部141及び第二伝達部142から伝達された押圧力に応じてアーム支持部101が撓み、清掃糸3の張力が増大する方向、即ち一対のアーム部10の先端部が互いに開く方向に動く。
【0045】
なお、アーム支持部101は、架け渡された清掃糸3の張力を増大させるための支点として、一対のアーム部10の後端同士を繋ぐ略棒状形状を有しているが、これに限らない。
【0046】
図5は、本発明のその他の実施形態に係るY字歯間清掃具を示す斜視図である。たとえば、
図5のように、一対のアーム部10の後端同士を繋げずに、間隙Sを空けて対向させ、押圧力が加わると、間隙Sが狭まって一対のアーム部10の後端同士が当接し合い、支点となる、といった一対のアーム部10に架け渡された清掃糸3の張力を押圧力で増大させることが可能な支点構成であればよい。
【0047】
把持部2は、X軸方向に長尺で、第一伝達部141及び第二伝達部142と、第一受付部121及び第二受付部122と、第一延長部161及び第二延長部162とを覆っている。第一受付部121及び第二受付部122は、押圧される面を露出するように把持部2に覆われている。
【0048】
また、把持部2は、第一伝達部141及び第二伝達部142が対向し合うY軸方向と直交するZ軸方向で、且つ力伝達部14を長尺方向(X軸方向)に覆う両面部分を第一側壁201とし、第一受付部121及び第二受付部122が対向し合うY軸方向と直交するZ軸方向で、且つ力受付部12をX軸方向に覆う両面部分を第二側壁202としている。第一側壁201と第二側壁202とは連なって設けられている。
【0049】
第一側壁201には、第一伝達部141及び第二伝達部142の間にある間隔に対応する伝達側スリット24が形成されている。第二側壁202には、第一受付部121及び第二受付部122の間にある間隔に対応する把持側スリット22が形成されている。伝達側スリット24と把持側スリット22とは、第一側壁201及び第二側壁202と同じように、連なって形成される。
【0050】
把持側スリット22は、第一受付部121及び第二受付部122が対向し合うY軸方向と直交するZ軸方向で、且つ力受付部12をX軸方向に覆う両面部分のうち、一面を第一スリット221とし、他面を第二スリット222としている。
【0051】
第一スリット221にはX軸方向に対して異なる位置に第一リブ223が架設され、第二スリット222にはX方向に対して異なる位置で、且つZ軸方向から見て第一リブ223と重ならない位置に第二リブ224が架設されている。第一リブ223及び第二リブ224が重ならないように架設されることで、一次部材1に形成される間隔を成形時に保持するための入れ駒を挿抜することが可能になることから、一体的に成形を行うことができる。
【0052】
なお、本実施形態では、第一受付部121、第二受付部122からそれぞれ延びて連結する第一延長部161及び第二延長部162が一次部材1に設けられ、二次部材にあたる把持部2がそれを覆っているが、例えば、延長部同士を連結させずに把持部で覆う、といった押圧に対する反発力及び安定的な把持が提供できれば、その限りではない。
【0053】
次に、本発明の製造方法について説明する。
図6は、本発明の実施形態に係るY字歯間清掃具の製造方法を示すフローチャートである。
図7及び
図8は、本発明の実施形態に係るY字歯間清掃具の製造方法の工程を示す模式図である。
【0054】
工程S11では、
図7(a)のとおり、一対のアーム部10、力受付部12、力伝達部14、第一延長部161、及び第二延長部162に対応し、アーム支持部101から連結部163まで離間する間隔が設けられるようにかたどったキャビティを有する第一の金型90内に、第一の樹脂を射出充填することで、一次部材1の成形を行う。
【0055】
この時、清掃糸3は、一次部材1の成形が完了した後に一対のアーム部10の先端部で掛け渡されてもよく、一次部材1を成形する前に一対のアーム部10の先端部に対応する位置で掛け渡ように配置して成形を行ってもよい。
【0056】
工程S12では、
図7(b)のとおり、第一の金型90を型開きし、一次部材1を離脱する。
【0057】
工程S13では、
図7(c)のとおり、第一リブ223、第二リブ224を回避するように、上述した間隔に入れ駒91を挿入する。
【0058】
工程S14では、
図8(a)のとおり、入れ駒91が挿入された一次部材1の形状、及び把持部2に対応したキャビティを有する第二の金型92内に、一次部材1を配置した後、第二の樹脂を射出充填することで、把持部2を成形する。
【0059】
なお、本実施形態において、一次部材1は、入れ駒91を先に上述した間隔に挿入した後、第二の金型92内に配置されているものの、入れ駒91を先に第二の金型92内に設置した後、入れ駒91が上述した間隔に挿入されるように一次部材1を配置してもよく、入れ駒91及び第二の金型92の実施順序を限定するものではない。
【0060】
工程S15では、
図8(b)のとおり、第二の金型92を型開きし、入れ駒91が挿入されたままY字歯間清掃具Aを離脱する。
【0061】
工程S16では、
図8(c)のとおり、Y字歯間清掃具Aから入れ駒91を抜出する。
【0062】
また、第二の金型92に入れ駒91を用いた上記製造方法以外の、第二の金型92に入れ駒91に相当する凸部91aを設けたその他の製造方法について説明する。
図9は、本発明の実施形態に係るY字歯間清掃具のその他の製造方法を示すフローチャートである。
図10は、本発明の実施形態に係るY字歯間清掃具のその他の製造方法の工程を示す模式図である。
【0063】
工程S1では、
図10(a)のとおり、一対のアーム部10、力受付部12、力伝達部14、第一延長部161、及び第二延長部162に対応し、アーム支持部101から連結部163まで離間する間隔が設けられるようにかたどったキャビティを有する第一の金型90内に、第一の樹脂を射出充填することで、一次部材1の成形を行う。
【0064】
この時、上述した製造方法と同じように、清掃糸3は、一次部材1の成形が完了した後に一対のアーム部10の先端部で掛け渡されてもよく、一次部材1を成形する前に一対のアーム部10の先端部に対応する位置で掛け渡ように配置して成形を行ってもよい。
【0065】
工程S2では、
図10(b)のとおり、第一リブ223、第二リブ224を回避しつつ、アーム支持部101から連結部163まで離間する間隔が維持される一次部材1の形状、及び把持部2に対応したキャビティを有する第二の金型92内に、一次部材1を配置する。
【0066】
具体的には、入れ駒91に相当する凸部91aが第二の金型92に形成され、この凸部91aが、第一リブ223、第二リブ224を回避しつつ、アーム支持部101から連結部163まで離間する間隔に嵌入するように、一次部材1を第二の金型92内に配置することで、後述する次の射出充填で間隔が埋まらなくなり、一体的に成形を行うことができる。
【0067】
工程S3では、
図10(c)のとおり、第二の金型92内に第二の樹脂を射出充填することで、凸部91aを抜出するための伝達側スリット24と把持側スリット22とが含まれる把持部2を成形する。
【0068】
本発明に係るY字歯間清掃具は、一次部材1が把持部2に覆われながらも可動性を有している。しかし、上述したこれら製造方法でY字歯間清掃具を製造すると、通常、成形時に一次部材1と二次部材である把持部2とが密着し合う恐れがある。
【0069】
一次部材1が把持部2に覆われながらも可動性を有することを実現するために、本発明ではインサート成形、或いは二色成形の技術を転用して、お互いに密着しにくい性質を有する第一の樹脂と第二の樹脂とで一次部材1及び把持部2をそれぞれ形成している。
【0070】
お互いに密着しにくい性質とは、第一の樹脂と第二の樹脂とが混ざり合うことなく、お互い分離し易いという性質を指している。例えば、第一の樹脂がポリアセタール(polyacetal,POM)、ポリアミド(polyamide,PA)、もしくはポリプロピレン(polypropylene,PP)等からなる結晶化樹脂であって、第二の樹脂は、同じ結晶化樹脂、又はアクリロニトリルブタジエンスチレン (Acrylonitrile Butadiene Styrene,ABS)、ポリカーボネート(polycarbonate,PC)もしくはポリメチルメタクリレート(Polymethyl methacrylate,PMMA)等からなる非結晶化樹脂のいずれかである場合、お互いに密着しにくい性質となる。この場合、密着性が低くお互いに分離し易い性質となる。
【0071】
なお、結晶化樹脂の中でもポリプロピレン同士は密着し易いため、第一の樹脂をポリプロピレンとした場合、第二の樹脂は、ポリプロピレン以外の結晶化樹脂又は非結晶化樹脂とすることで密着することを防いでいる。
【0072】
一次部材1と、把持部2とを、お互いに密着しにくい性質を有する硬質樹脂によって形成することにより、本発明に係るY字歯間清掃具を一体的に成形したとしても、一次部材1と、把持部2とは分離した状態で形成される。
【0073】
このため、把持部2は、一次部材1を覆う際分離することから、一次部材にあたる第一伝達部141及び第二伝達部142と、第一受付部121及び第二受付部122と、第一延長部161及び第二延長部162とは、成形時に二次部材にあたる把持部2に密着されず、把持部2内で可動的に設けられる。
【0074】
これにより、一対のアーム部10が開く運動方向に押圧力を変換させるために必要な間隔が保持され、一次部材1及び把持部2が分離した状態で形成されることから、
図4のように、一次部材1の可動性を保ったまま、把持部2が被覆したY字歯間清掃具となる。
【符号の説明】
【0075】
A Y字歯間清掃具
1 一次部材
10 一対のアーム部
101 アーム支持部
12 力受付部
121 第一受付部
122 第二受付部
14 力伝達部
141 第一伝達部
142 第二伝達部
161 第一延長部
162 第二延長部
163 連結部
2 把持部
201 第一側壁
202 第二側壁
22 把持側スリット
221 第一スリット
222 第二スリット
223 第一リブ
224 第二リブ
24 伝達側スリット
3 清掃糸
90 第一の金型
91 入れ駒
91a 凸部
92 第二の金型
S 間隙