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  • 特許-独立型洗面装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-14
(45)【発行日】2025-02-25
(54)【発明の名称】独立型洗面装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 1/00 20060101AFI20250217BHJP
   A47K 1/02 20060101ALI20250217BHJP
   A61G 12/00 20060101ALI20250217BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20250217BHJP
   C02F 1/04 20230101ALI20250217BHJP
   C02F 1/28 20230101ALI20250217BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20250217BHJP
【FI】
A47K1/00 D
A47K1/00 Z
A47K1/02 A
A47K1/02 Z
A61G12/00 C
B01D53/04 220
C02F1/04 Z
C02F1/28 D
C02F1/44 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021148750
(22)【出願日】2021-09-13
(65)【公開番号】P2023041391
(43)【公開日】2023-03-24
【審査請求日】2024-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】512236010
【氏名又は名称】エヴォーブテクノロジー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518019857
【氏名又は名称】株式会社重政商店
(74)【代理人】
【識別番号】100091719
【弁理士】
【氏名又は名称】忰熊 嗣久
(72)【発明者】
【氏名】石岡 聖悟
(72)【発明者】
【氏名】桑田 誠之
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-122595(JP,A)
【文献】実開昭57-9316(JP,U)
【文献】特開2014-101720(JP,A)
【文献】特開平10-99845(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0077992(US,A1)
【文献】特許第6877065(JP,B1)
【文献】特開2000-126754(JP,A)
【文献】特表2008-504861(JP,A)
【文献】特開2007-236341(JP,A)
【文献】特開2007-125458(JP,A)
【文献】登録実用新案第3234538(JP,U)
【文献】特開2023-19842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 1/00- 1/14
A47B 67/02
A61G 12/00
B01D 53/02-53/12
C02F 1/00- 1/78
C02F 9/00- 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架台に設けられたシンクと、シンクの正面背後に設けられた蛇口とを具備した独立型洗面装置であって、
大気から取り入れられた空気中の水分を吸着する吸着剤と、前記吸着剤を加熱する加温器とにより液体の凝縮水を作り出す造水機能部と、
前記造水機能部により作られた凝縮水に圧力をかけて逆浸透膜フィルタにより濾過して浄化水にする濾過用ポンプと、
前記浄化水を溜める給水タンクと、
前記蛇口の操作に応じて前記給水タンクから前記浄化水を汲み上げて前記蛇口に供給する蛇口用ポンプと、
前記シンクからの排水を濾過する濾過膜と、
下に向かって先細り状になっており、底面に出口開口が設けられ、前記濾過膜により濾過された排水を溜める排水タンクと、
前記排水タンクの出口開口からの排水を、前記排水タンクに溜まった排水の自重による圧力で透過させて気化室の中に落下させる、活性炭を不織布で包んで構成された浄水フィルタと、
前記浄水フィルタから落下した前記排水を加熱して気化させる気化室と
前記気化室内部と大気との間に設けられた銀イオンフィルタとを有することを特徴とする独立型洗面装置。
【請求項2】
請求項1の独立型洗面装置において、
前記排水タンクの入り口と出口に設けられた前記濾過膜と前記浄水フィルタ以外は、前記排水タンク水密状に封鎖されていることを特徴とする独立型洗面装置。
【請求項3】
請求項1の独立型洗面装置において、前記気化室は、前記浄水フィルタから落下する前記排水を受ける蒸発皿と、前記蒸発皿を水の沸点以上の温度に加熱するヒータとを具備することを特徴とする独立型洗面装置。
【請求項4】
請求項1の独立型洗面装置において、前記逆浸透膜フィルタは、クロスフローろ過方式の逆浸透膜フィルタであり、前記排水タンクは円錐台や球、半球であって、前記逆浸透膜フィルタの捨て水となる廃棄水は前記排水タンクに導かれ、前記排水タンクの側面に沿って円周方向に廃棄水を吐出させることを特徴とする独立型洗面装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手洗い、洗顔、洗口、洗髪等に使用できる独立型洗面台に関する。
【背景技術】
【0002】
給水設備の無い場所での水の入手について、空気中の水分を凝縮させて水を生成する技術として、たとえば、特許文献1には、空気中の水分を結露させて凝縮した結露水を生成する技術が示されている。
【0003】
一方、排水設備のない場所での排水の処理について、例えば特許文献2には、排水を気化フィルタに浸透させて熱風を吹き当てて気化させることにより、排水を除去する手間を減らす技術が示されている。また、排水設備を必要としない設備として特許文献3には、糞尿が混ざる汚水を燃焼しフィルタに通して水を凝縮させ、これを回収して糞尿の攪拌等に再利用する技術が示されている。
【0004】
【文献】特許第6271744号公報
【文献】特許第5353226号公報
【文献】特開2001-336195号公報
【文献】特開2021-122595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
介護施設・病院の病室などの移動式の洗面装置では、手洗いや歯みがきがどこでも出来ることを求められている。このような移動式の洗面装置は、洗顔、洗口、洗髪に必要な纏まった量の水を一時保有しておかなければならない。給水は定期的に手動で行う必要があり、給水場所から遠く離れた箇所への移動は困難である。このため、使用したいが使用する場所や使用する人の状態などの環境に左右され、使用できないと判断される場合が多くある。しかも、そもそも原料となる水(液体)が必要となるため、導入可能な場所も限定的である。介護施設・病院などに限らず、近年では災害時の避難所では断水が発生している事が多く衛生管理の基本である手洗いが出来ない事が多々発生している。
【0006】
空気中からの水の取得については、特許文献1に開示される技術の他にも多数の文献が存在している。また空気中から水を取得するウォータサーバが市場にも流通しており、比較的容易に実現できるようになっている。よって、移動式の洗面装置に空中の水分を凝縮して利用する技術を採用することにより、給水に関する問題の解決は図れる。
【0007】
一方、特許文献4に示されるような移動式の洗面装置は、備え付けの洗面台の排水処理のように直接排水管に接続されていないので、洗顔、洗口、洗髪等による使用済みの水を一時保有しておかなければならない。手洗いや口腔ケア(口濯ぎや歯みがき)後の排水であるので、衛生管理の面から考えると雑菌や臭いに気を付ける必要があり、排水タンクと洗面ボールからの排水ホースの取り扱いに注意が必要になる。
【0008】
特許文献2の技術では、排水は、カップ飲料生成に用いる接液部材をオートリンスしたときに生じるものであり人に接するものでは無いため、排水の汚染の程度は移動式の洗面装置に比べて低いものである。これに対して、特許文献3の技術では、汚水は糞尿が混ざる汚水である。汚染の程度および固形物の混入など洗面台の排水よりもはるかに汚染されており、処理設備も大型であって、介護施設・病院や避難施設に臨時に持ち込めるような移動はできない。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、介護施設・病院の病室など給水設備と排水設備の無い場所や、断水時での避難施設でも、比較的長期間にわたって、給水や排水を行うことなく自立して機能できる独立型洗面装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の独立型洗面装置は、架台に設けられたシンクと、シンクの正面背後に設けられた蛇口とを具備した独立型洗面装置であって、
大気から取り入れられた空気中の水分を吸着する吸着剤と、前記吸着剤を加熱する加温器とにより液体の凝縮水を作り出す造水機能部と、
前記造水機能部により作られた凝縮水に圧力をかけて逆浸透膜フィルタにより濾過して浄化水にする濾過用ポンプと、
前記浄化水を溜める給水タンクと、
前記蛇口の操作に応じて前記給水タンクから前記浄化水を汲み上げて前記蛇口に供給する蛇口用ポンプと、
前記シンクからの排水を濾過する濾過膜と、
下に向かって先細り状になっており、底面に出口開口が設けられ、前記濾過膜により濾過された排水を溜める排水タンクと、
前記排水タンクの出口開口からの排水を、前記排水タンクに溜まった排水の自重による圧力で透過させて気化室の中に落下させる、活性炭を不織布で包んで構成された浄水フィルタと、
前記浄水フィルタから落下した前記排水を加熱して気化させる気化室と
前記気化室内部と大気との間に設けられた銀イオンフィルタとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、排水タンクの入り口と出口には、夫々濾過膜と浄水フィルタが配置され、排水タンクの内側の空間は入り口と出口以外は水密状に封鎖されている。よって、入り口と出口以外の箇所から手洗いや口腔ケア(口濯ぎや歯みがき)後の排水の雑菌や臭いが直接的に外気に触れる事は無く、排水タンクの内部で腐敗が起こっても、臭気が外部に漏れにくい。
【0012】
また、活性炭を不織布で包んだ浄水フィルタは、排水を重力により少量ずつ蒸発皿に滴下し、蒸発皿に落下した排水は気化する。蒸発皿は100度以上の温度に設定しているため、菌やウィルスの殆どが死滅し、蒸発皿の熱に触れずに拡散した菌やウィルスは銀イオンフィルタにより捕獲され、衛生が保たれる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施態様の独立型洗面装置を示しており、図1Aは斜め前から見た斜視図であり、図1Bは後方上から見た斜視図、図1Cは一部を切断した側面図である。
図2】独立型洗面装置の内部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に本発明の実施態様の独立型洗面装置を示す。図1Aは斜め前から見た斜視図であり、図1Bは後方上から見た斜視図、図1Cは一部を切断した側面図である。図において、独立型洗面装置1は、ストッパー付きのキャスタ2により自由自在に移動し固定できる架台3と、架台3に設けられたシンク4と、シンク4の正面背後に設けられた蛇口5と、造水機能部6、給水タンク7と、気化機能部8とを有している。正面から見て架台3は、全体として門型であり、下部空間Sが空いている。そこで車椅子に乗った人は膝を下部空間Sの下に入れることが出来る。
【0015】
図2に独立型洗面装置1の内部を示すブロック図を示す。架台3内には造水機能部6と、給水タンク7と、気化機能部8が設けられている。造水機能部6は、大気中の空気から液体の水を作り出す機能部であり、気化機能部8は排水を気化して大気中に放出する機能部である。昇降機構19は、所謂、ガス圧式昇降機構又は油圧式昇降機構であり、レバー19aを操作してシンク4を押し下げることでシンク4が下降する。一方、レバー19aを操作してシンク4を押し上げることによりシンク4は上昇する。独立型洗面装置1の動力は、バッテリや家庭用電灯等を用いることができ、特に制限はない。
【0016】
造水機能部6は、大気中の空気を濾過して取り込む大気取り入れ部9と、液化部10と、凝縮水タンク11を具備する。液化部10は、大気取り入れ部9から取り入れられた空気から液体としての水を取り出す。大気取り入れ部の取り入れ口9aには、ファン9b、銀イオンフィルタ9cがこの順に取り付けられており、ウィルスや雑菌の侵入を阻止する。液化部10は、筒状のハウジングの中に、取り入れた空気中の水分を吸着する多数の板状とされた吸着剤20と、吸着剤の中に設けられる加温器21とを具備している。吸着剤20としては、高分子吸湿材(たとえばN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM))が主材として用いられる。
【0017】
液化部において、水分を含んだ空気は、吸着材に吸着される。加温器21に通電すると、吸着剤20が加熱され、吸着剤20に吸着された水分が脱離する。加温器21により吸着剤20を40℃~60℃の温度に上昇させると、吸着されていた水分が液化する。吸着剤20から脱離した水は凝縮水タンク11に落下する。吸着剤20に再度、水分を吸着させるには、加温器21への通電を停止する。これを繰り返すことにより、凝縮水タンク11には凝縮水Cが蓄えられる。尚、矢印Wは、空気の流れを示しており、吸着剤20を通過した空気は開口11aから大気に戻される。
【0018】
このようにして凝縮水タンク11に溜まった凝縮水Cは、濾過用ポンプ12により汲み上げられ、逆浸透に適当な圧力を加えられて逆浸透膜フィルタ(ROフィルタ)13に送られる。逆浸透膜フィルタ13により、浮遊する無機物や有機物等の不純物や雑菌が除去され給水タンク7に浄化水Mとして溜まる。蛇口用ポンプ18は、蛇口5の操作栓の操作に応じて動作し、給水タンク7中の浄化水Mを蛇口5に供給する。
【0019】
シンク4の排水口には可塑性の配管4aが取付けられている。さらに下流に濾過膜14が配設されている。濾過膜14は、比較的大きなゴミを濾過する。濾過膜14を介した排水Pは、下流に設けられた排水タンク15に溜められる。排水タンク15は、下に向かって先細り状になっており、底面に出口開口が設けられる。濾過膜14は、排水タンク15内の臭いがシンク4に漏れないように機能する。配管4aとして封水トラップを設けて、臭いの漏れ防止をより確実にしても良い。排水タンク15の下に向かって先細り状となる形状として、円錐台、四角錐台、球、半球などが利用出来る。本実施例では円錐台とした。排水タンク15を下に向かって先細り状として底面に出口開口を設けたのは、排水タンク15の排水を全て次段の浄水フィルタ16に落とすためである。濾過膜14と浄水フィルタ16により排水タンク15の入り口と出口以外は水密状に封鎖される。尚、本実施例では、濾過膜14として対象物を表面と内部で捕捉するフィルタ(MF膜、網目10μm)を用いて粗濾過した。
【0020】
気化機能部8は、浄水フィルタ16と、気化室17とを具備する。浄水フィルタ16の上端は、排水タンク15の底面の出口15aに脱着可能に接続されている。また、浄水フィルタ16の下端は、気化室17の天井に設けられた開口部17fから脱着可能に挿入されている。
【0021】
浄水フィルタ16は活性炭を不織布で包んで構成されている。排水タンク15に溜まった排水Pの自重による圧力で、排水Pを浄水フィルタ16の上から下に透過させる。濾過された排水は、浄水フィルタ16を通過して気化室17に落下する。浄水フィルタ16は、その流路抵抗により排水の容易な通過を妨げるため、単位時間当たりの落下量は少量である。そして、排水タンク15の入り口は濾過膜14により封鎖されているため、浄水フィルタ16を通る排水の通過はさらに鈍化されており、液滴となって落下する。
【0022】
気化室17には、浄水フィルタ16から落下する滴を受ける蒸発皿17aと、蒸発皿17aを加熱するヒータ17bと、銀イオンフィルタ17cと、ファン17dとを具備する。排水Pは、浄水フィルタから少量ずつ蒸発皿17aに滴下し、蒸発皿17aの熱により気化する。蒸発皿17aは水の沸点以上の温度に設定されており、熱により菌やウィルスの殆どが死滅する。蒸発皿17aの熱に触れずに拡散した菌やウィルスは銀イオンフィルタ17cにより捕獲され、衛生が保たれる。清浄化された空気は、排気口17eから排気される。
【0023】
独立型洗面装置1によれば、排水タンク15の入り口と出口には、夫々濾過膜14と浄水フィルタ16が配置され、排水タンク15の内側の空間は入り口と出口以外は水密状に封鎖されている。よって、入り口と出口以外の箇所から手洗いや口腔ケア(口濯ぎや歯みがき)後の排水の雑菌や臭いが直接的に外気に触れる事は無く、排水タンク15の内部で腐敗が起こっても、臭気が外部に漏れにくい。
【0024】
また、活性炭を不織布で包んだ浄水フィルタ16は、排水を少量ずつ蒸発皿17aに滴下するため、短時間で100度以上の温度になり菌やウィルスの殆どが死滅する。また、蒸発皿の熱に触れずに拡散した菌やウィルスは銀イオンフィルタ17cにより捕獲され、衛生が保たれる。
【0025】
上記実施例において、逆浸透膜フィルタとして、一般に普及している「クロスフローろ過方式」の逆浸透膜フィルタを用いた場合、捨て水となる廃棄水を排水タンク15に導き、排水タンク15の洗浄に用いても良い。図2において、逆浸透膜フィルタ13からの廃棄水の経路をFLで示した。排水タンク15として、円錐台や球、半球のものを用いた場合、排水タンク15の側面に沿って円周方向に廃棄水を吐出させることにより、廃棄水は濾過用ポンプ12の圧力により螺旋を描きながら排水タンク15の内側面を洗浄する。このため、汚物を浄化フィルタ16の中に落とし込むことができ、排水タンク15を清潔に保つことができる。
【0026】
また、「クロスフローろ過方式」の逆浸透膜フィルタを用いた場合において、タンクRTを別途設けて、切替弁SWによりタンクRTへ廃棄水が流れるようにして、タンクRTに溜まった廃棄水を飲料水以外の用途、例えば洗濯用やトイレの洗浄水等に用いても良い。
【符号の説明】
【0027】
1 独立型洗面装置
2 キャスタ
3 架台
4 シンク
5 蛇口
6 造水機能部
7 給水タンク
8 気化機能部
9 大気取り入れ部
10 液化部
11 凝縮水タンク
12 濾過用ポンプ
13 逆浸透膜フィルタ
14 濾過膜
15 排水タンク
16 浄水フィルタ
17 気化室
18 蛇口用ポンプ
19 昇降機構
20 吸着剤
21 加温器

図1
図2