(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-14
(45)【発行日】2025-02-25
(54)【発明の名称】ゲルマニウム半導体装置の製造方法及びゲルマニウム半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20250217BHJP
C30B 29/08 20060101ALI20250217BHJP
C30B 25/18 20060101ALI20250217BHJP
【FI】
H01L21/205
C30B29/08
C30B25/18
(21)【出願番号】P 2022010845
(22)【出願日】2022-01-27
【審査請求日】2024-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2021017055
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(73)【特許権者】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】石川 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】中井 哲弥
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-177169(JP,A)
【文献】特開2006-196564(JP,A)
【文献】特開2006-019610(JP,A)
【文献】特開平10-290023(JP,A)
【文献】特開平04-188719(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0006399(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0154450(US,A1)
【文献】米国特許第06075253(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0264622(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C30B 29/08
C30B 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
{100}面方位を有するシリコン基板の主面に<010>方向と平行なトレンチを形成する工程と、
化学気相成長により前記トレンチ内にゲルマニウムを埋め込む工程とを備え、
前記トレンチの深さが2μm以上であり、
前記化学気相成長は、原料ガスが分子流として供給される圧力条件下で行うことを特徴とするゲルマニウム半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記トレンチの幅が1μm以下である、請求項1に記載のゲルマニウム半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記トレンチの側壁面は、垂直面に対する傾斜角度が0.3度以上10度以下の傾斜面である、
請求項1又は2に記載のゲルマニウム半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記圧力条件が100Pa以下である、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のゲルマニウム半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記トレンチを形成する工程は、前記シリコン基板の前記主面に複数の前記トレンチを等間隔に形成する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のゲルマニウム半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記トレンチ内に埋め込まれた前記ゲルマニウムの上面を覆うシリコン保護膜を形成する工程をさらに備える、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のゲルマニウム半導体装置の製造方法。
【請求項7】
{100}面方位を有し、主面にトレンチが形成されたシリコン基板と、
前記トレンチ内に埋め込まれたゲルマニウム結晶層とを備え、
前記トレンチの深さが2μm以上であり、
前記トレンチは<010>方向と平行に形成されていることを特徴とするゲルマニウム半導体装置。
【請求項8】
前記トレンチの幅が1μm以下である、
請求項7に記載のゲルマニウム半導体装置。
【請求項9】
前記トレンチの側壁面は、垂直面に対する傾斜角度が0.3度以上10度以下の傾斜面である、
請求項7又は8に記載のゲルマニウム半導体装置。
【請求項10】
複数の前記トレンチが等間隔に設けられている、
請求項7乃至9のいずれか一項に記載のゲルマニウム半導体装置。
【請求項11】
前記ゲルマニウム結晶層の上面を覆うシリコン保護膜をさらに備える、
請求項7乃至10のいずれか一項に記載のゲルマニウム半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲルマニウム半導体装置の製造方法及びゲルマニウム半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、シリコンフォトニクスを用いた光電子集積技術の開発が進んでいる。シリコンフォトニクスの基本光部品は、シリコン(Si)系光導波路とゲルマニウム(Ge)受光器であり、これらを同一基板上にモノリシック集積させた小型光モジュール(特許文献1参照)は、通信システムに応用されるものと期待されている。
【0003】
ゲルマニウム半導体技術に関し、特許文献2には、応力強化MOSトランジスタ及びその製造方法が記載されている。この製造方法は、チャネル領域近くのシリコン基板上にトレンチを形成するステップと、第1のSiGe層をエピタキシャル成長させてトレンチの一部を埋めるステップと、第1のSiGe層よりもゲルマニウム濃度が低い第2のSiGe層をエピタキシャル成長させてトレンチを完全に埋めるステップとを有する。シリコン基板は(100)結晶面方位を有し、チャネル領域は[110]方向に配向し、トレンチの側面は(011)結晶面方位を有する。第1のSiGe層をエピタキシャル成長させるステップでは、(100)結晶面よりも(011)結晶面での成長レートが高くなるように成長条件を調整する。このように、最初はSiGe層のゲルマニウム含有量を増やし、途中から減らすことにより、トランジスタチャネルの長手方向の圧縮応力を確保しながらコンタクト抵抗の低下を抑制することができる。
【0004】
ゲルマニウム半導体技術に関するものではないが、特許文献3には、n型シリコン基板の表面層に形成された複数の第1のトレンチ内にp型エピタキシャル層を形成することが記載されている。n型シリコン基板は(100)面又はこれと等価な面を表面とし、複数の第1のトレンチは、n型シリコン基板の<001>方向に伸びており、第1のトレンチの側面は(010)面及び(0-10)面を構成している。そのため、トレンチ内へのエピタキシャル層の埋め込み成長によるpn接合形成時にボイドが残りにくく、これにより界面準位密度の低い構造とすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5761754号公報
【文献】特開2010-510684号公報
【文献】特開2013-102213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近赤外光を受光するゲルマニウム受光器が、光導波路を伝搬する光ではなく自由空間を伝搬する光を受光するためには、高い受光感度が必要であり、そのためには数ミクロン程度の十分な厚さのゲルマニウム結晶層が必要である。しかし、シリコン基板上に十分な厚さのゲルマニウム結晶層を形成する場合、結晶成長に時間がかかり、製造効率が悪いという問題がある。
【0007】
したがって、本発明の目的は、十分な厚さのゲルマニウム結晶層を短時間で成長させることが可能なゲルマニウム半導体装置の製造方法を提供することにある。また本発明の目的は、十分な厚さのゲルマニウム結晶層を有し、これにより受光器の受光感度を高めることが可能なゲルマニウム半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明によるゲルマニウム半導体装置の製造方法は、{100}面方位を有するシリコン基板の主面に<010>方向と平行なトレンチを形成する工程と、化学気相成長により前記トレンチ内にゲルマニウムを埋め込む工程とを備え、前記化学気相成長は、原料ガスが分子流として供給される圧力条件下で行うことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、トレンチの底面のみならず側壁面からもゲルマニウムの結晶成長を促進させることができる。したがって、十分な厚さを有するゲルマニウム結晶層を短時間で形成することができる。
【0010】
本発明において、前記圧力条件は100Pa以下であることが好ましい。これにより、トレンチの底面のみならず側壁面からもゲルマニウム結晶成長を促進させることができ、トレンチ内へのゲルマニウムの埋め込み時間を短くすることができる。
【0011】
本発明によるゲルマニウム半導体装置の製造方法は、前記トレンチ内に埋め込まれた前記ゲルマニウムの上面を覆うシリコン保護膜を形成する工程をさらに備えることが好ましい。これにより、トレンチ内に埋め込まれたゲルマニウムの信頼性を高めると共に、ゲルマニウムの格子歪みを大きくしてバンドギャップエネルギーを下げることができ、光吸収波長の長波長化を図ることができる。
【0012】
また、本発明によるゲルマニウム半導体装置は、{100}面方位を有し、主面にトレンチが形成されたシリコン基板と、前記トレンチ内に埋め込まれたゲルマニウム結晶層とを備え、前記トレンチは<010>方向と平行に形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、十分な厚さを有するゲルマニウム結晶層により受光感度が高められたゲルマニウム受光器を実現することができる。
【0014】
本発明において、前記トレンチの幅は1μm以下であることが好ましい。トレンチの幅が1.0μm以下であればトレンチの側壁面からの結晶成長によってトレンチ内へのゲルマニウムの埋め込み時間を短くすることができる。
【0015】
本発明において、前記トレンチの深さは2μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがさらに好ましい。トレンチの深さが2μm以上であればゲルマニウム結晶層の厚さを2μm以上にすることができ、これによりゲルマニウム受光器における光吸収率を50%以上にすることができる。さらに、トレンチの深さが3μm以上であればゲルマニウム結晶層の厚さを3μm以上にすることができ、これによりゲルマニウム受光器における光吸収率を70%以上にすることができる。
【0016】
本発明において、前記トレンチの側壁面は、垂直面に対する傾斜角度が1度以上10度以下の傾斜面であることが好ましい。側壁面11aの傾斜角度が0.3度以上10度以下である場合には、ゲルマニウムの埋め込み時に空洞が発生しにくく、ゲルマニウム結晶層の品質を高めることができる。
【0017】
本発明において、前記シリコン基板の前記主面には複数の前記トレンチが等間隔に設けられていることが好ましい。また、前記トレンチを形成する工程は、前記シリコン基板の前記主面に複数の前記トレンチを等間隔に形成することが好ましい。これにより、単位面積当たりの受光感度が高いだけでなく受光面積が広いゲルマニウム受光器を実現することができる。
【0018】
本発明によるゲルマニウム半導体装置は、前記ゲルマニウム結晶層の上面を覆うシリコン保護膜をさらに備えることが好ましい。これにより、トレンチ内のゲルマニウム結晶層の信頼性を高めると共に、ゲルマニウムの格子歪みを大きくしてバンドギャップエネルギーを下げることができ、光吸収波長の長波長化を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、十分な厚さを有するゲルマニウム結晶層により受光感度が高められたゲルマニウム半導体装置を提供することができる。また本発明によれば、十分な厚さのゲルマニウム結晶層を短時間で成長させることが可能なゲルマニウム半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1(a)及び(b)は、本発明の第1の実施の形態によるゲルマニウム半導体装置の構造を示す図であって、
図1(a)は略平面図、
図1(b)は
図1(a)のX-X線に沿った略断面図である。
【
図2】
図2は、トレンチの構成を示す略斜視図である。
【
図3】
図3(a)~(c)は、ゲルマニウム半導体装置の製造方法を説明するための工程図である。
【
図4】
図4(a)及び(b)は、トレンチ内でのゲルマニウムの結晶成長メカニズムを説明するための模式図である。
【
図5】
図5(a)及び(b)は、本発明の第2の実施の形態によるゲルマニウム半導体装置の構成を示す図であって、
図5(a)は略平面図、
図5(b)は
図5(a)のX-X線に沿った略断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第3の実施の形態によるゲルマニウム半導体装置の構成を示す略断面図である。
【
図7】
図7(a)及び(b)は、比較例及び実施例によるトレンチパターンの説明図であって、
図7(a)はシリコンウェーハの平面図、
図7(b)は比較例によるトレンチパターンの平面図、
図7(c)は実施例によるトレンチパターンの平面図である。
【
図8】
図8(a)及び(b)は、トレンチ内へのゲルマニウム結晶層の埋め込み状態を示すTEM画像であって、
図8(a)は比較例によるトレンチ内へのゲルマニウム埋め込み状態、
図8(b)は実施例によるトレンチ内へのゲルマニウム埋め込み状態をそれぞれ示している。
【
図9】
図9は、ゲルマニウム半導体装置の評価モデルを示す略断面図であって、(a)は比較例、(b)は実施例1、(c)は実施例2をそれぞれ示している。
【
図10】
図10は、ゲルマニウム半導体装置の比較例による評価モデルの格子歪み分布を示す図である。
【
図11】
図11は、ゲルマニウム半導体装置の実施例1による評価モデルの格子歪み分布を示す図である。
【
図12】
図12は、ゲルマニウム半導体装置の実施例2による評価モデルの格子歪み分布を示す図である。
【
図13】
図13は、実施例1による評価モデルの格子歪み及び光吸収波長の変化を示すグラフであって、(a)はゲルマニウム結晶層の厚さと格子歪みの大きさとの関係、(b)はゲルマニウム結晶層の厚さとバンドギャップエネルギー並びに光吸収波長との関係を示すグラフである。
【
図14】
図14は、実施例2による評価モデルの格子歪み及び光吸収波長の変化を示すグラフであって、(a)はゲルマニウム結晶層の厚さと格子歪みの大きさとの関係、(b)はゲルマニウム結晶層の厚さとバンドギャップエネルギー並びに光吸収波長との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
図1(a)及び(b)は、本発明の第1の実施の形態によるゲルマニウム半導体装置の構造を示す図であって、
図1(a)は略平面図、
図1(b)は
図1(a)のX-X線に沿った略断面図である。
【0023】
図1(a)及び(b)に示すように、ゲルマニウム半導体装置1は、(001)面又はこれと等価な結晶面を主面10aとするシリコン基板10と、シリコン基板10の主面10aに形成されたトレンチ11と、トレンチ11内に埋め込まれたゲルマニウム結晶層20とを備えている。シリコン基板10の(001)面と等価な結晶面は、一般的に{100}面と表記される。
【0024】
シリコン基板10は例えばn型シリコン基板であり、トレンチ11はシリコン基板10の[010]方向と平行に形成されている。そのため、
図2に示すように、トレンチ11の側壁面11aの面方位は(100)面又は(-100)面であり、主面10aと結晶学的に等価な結晶面を有している。トレンチ11の底面11bの面方位はシリコン基板10の主面10aと同様に(001)面である。トレンチ11はシリコン基板10の[100]方向と平行に形成されてもよい。この場合、トレンチ11の側壁面11aの面方位は(010)面又は(0-10)面となり、主面10aと結晶学的に等価な結晶面となる。すなわち、[100]方向と平行なトレンチ11は、[010]方向と平行なトレンチ11と等価である。
【0025】
トレンチ11の長さLはできるだけ長いことが好ましい。これによりゲルマニウム結晶層20の面積をできるだけ広くしてゲルマニウム受光器の受光面積を稼ぐことができる。
【0026】
トレンチ11の深さDは2μm以上である。これにより、トレンチ11内に十分な厚さのゲルマニウム結晶層20を形成することができ、自由空間を伝搬する光を受光可能な受光感度が高いゲルマニウム受光器を実現することができる。トレンチ11の深さDは3μm以上であることがさらに好ましい。トレンチ11の深さDを2μm以上とすることにより波長約1.55μmの近赤外光の光吸収率を50%以上にすることができる。さらに、ゲルマニウム結晶層20の厚さを3μm以上とすることができ、波長約1.55μmの近赤外光の光吸収率を70%以上にすることができる。
【0027】
トレンチ11の幅Wtは1.0μm以下であることが好ましい。トレンチ11の幅Wtが広すぎるとトレンチ11内へのゲルマニウム結晶層20の埋め込みに長時間を必要とするからである。一方、トレンチ11の幅Wtが狭すぎるとトレンチ11の形成及びトレンチ11内へのゲルマニウム結晶層20の埋め込みが困難となる。そのため、トレンチ11の幅Wtは0.3μm以上であることが好ましい。このように、トレンチ11の幅Wtが0.3μm以上1.0μm以下であればトレンチ11の側壁面11aからの結晶成長によってトレンチ11内へのゲルマニウム結晶層20の埋め込み時間を短くすることができる。
【0028】
トレンチ11の側壁面11aはわずかに傾斜していることが好ましく、垂直面に対する傾斜面の角度は0.3~10度であることが好ましい。側壁面11aが少し傾斜している場合には、ゲルマニウムの埋め込み時に空洞が発生しにくく、ゲルマニウム結晶層20の品質を高めることができる。側壁面11aの傾斜角度が10度よりも大きい場合には、(100)面又は(-100)面に対する側壁面11aの面方位のずれが大きくなり、側壁面11aからのゲルマニウムの結晶成長促進効果が小さくなると共に、ゲルマニウムの埋め込み量が不足して十分な厚さのゲルマニウム結晶層20が得られないからである。また、傾斜角度が0.3度よりも小さい場合には側壁面11aを傾斜させることによる効果が得られないからである。
【0029】
ゲルマニウム結晶層20はシリコン基板10と逆の導電型を有し、シリコン基板10との間でpn接合を構成している。例えば、シリコン基板10がn型半導体である場合、ゲルマニウム結晶層20はp型半導体である。この場合において、ゲルマニウム結晶層20は、p-ゲルマニウム層及びp+ゲルマニウム層を順に積層していることが好ましい。シリコン基板10をp型半導体とし、ゲルマニウム結晶層20をn型半導体とすることも可能である。
【0030】
ゲルマニウム結晶層20がトレンチ11内に埋め込まれている場合、その底面のみならず側面もシリコンに束縛されるので、ゲルマニウムとシリコンとの熱膨張係数の違いからゲルマニウム結晶層20には引張歪みが生じる。ゲルマニウム結晶中の格子歪みが大きくなると、ゲルマニウムのバンドギャップエネルギーが小さくなる。その結果、ゲルマニウムの光吸収波長の長波長化を図ることができ、Lバンドの波長もカバーする広帯域な受光器を実現できる。
【0031】
図3(a)~(c)は、ゲルマニウム半導体装置1の製造方法を説明するための工程図である。
【0032】
図3(a)に示すように、ゲルマニウム半導体装置1の製造では、面方位が{100}面であるシリコン基板10を用意する。シリコン基板10はバルクシリコンウェーハであってもよく、エピタキシャルシリコンウェーハやSOI(Silicon On Insulator)ウェーハであってもよい。
【0033】
次に、
図3(b)に示すように、シリコン基板10の主面10aに2μm以上の深さを有するトレンチ11を形成する。トレンチ11の形成では、シリコン基板10の主面10aにSiO
2膜を形成した後、フォトリソグラフィ及びドライエッチングによりSiO
2膜をパターニングしてSiO
2マスク22を形成する。これにより、シリコン基板10の主面10aのトレンチ形成領域を露出させる。次に、SiO
2マスク22を用いたドライエッチングによりシリコン基板10の主面10aにトレンチ11を形成する。
【0034】
通常、シリコンウェーハからのシリコン基板(シリコンチップ)の切り出し方向やシリコン基板10上の配線方向はシリコン基板10の<110>方向に設定されることが多い。(001)面からなるシリコン基板10の主面10aに<110>方向と平行なトレンチ11を形成した場合、トレンチ11の側壁面11aの面方位は(1-10)面又は(-110)面となり、主面10aと等価な結晶面とはならない。しかし、本実施形態においては<110>方向から45度傾けた<010>方向と平行にトレンチ11を形成するので、トレンチ11の側壁面11aの面方位を(100)面又は(-100)面とすることができ、主面10aと等価な結晶面を形成することができる。
【0035】
次に、
図3(c)に示すように、SiO
2マスク22の開口から露出するトレンチ11の内部にゲルマニウム結晶層20を形成する。ゲルマニウム結晶層20は結晶成長中の炉内圧を100Pa以下の低圧とするUHVCVD法(Ultra-High Vacuum CVD)により形成することが好ましい。このとき、ゲルマニウム結晶層20はトレンチ11内にのみ堆積し、SiO
2マスク22の上面には堆積しないので、ゲルマニウム結晶層20をトレンチ11内で選択成長させることができる。
【0036】
その後、シリコン基板10及びゲルマニウム結晶層20にそれぞれ接続された一対の電極パターン(不図示)を形成することにより、トレンチ埋め込み型のゲルマニウム半導体装置1が完成する。
【0037】
図4(a)及び(b)は、トレンチ11内でのゲルマニウムの結晶成長メカニズムを説明するための模式図である。
【0038】
トレンチ11を例えばシリコン基板10の[110]方向に沿って形成する場合、シリコン基板10の主面10aである(001)面に垂直なトレンチ11の側壁面11aの面方位は(1-10)面又は(-110)面となる。この場合、
図4(a)に示すように、側壁面11aからのゲルマニウム結晶成長が抑制され、主に底面11bからのゲルマニウム結晶成長となる。そのため、トレンチ11内をゲルマニウム結晶層20で埋めるためには長時間を要する。通常、シリコン基板の(001)面上へのゲルマニウム結晶成長速度の典型値は10nm/min程度であり、また成長初期には成長速度が遅い低温バッファ層を形成する必要があるため、3μm以上のゲルマニウム結晶層を形成するには10時間近い成長時間が必要である。
【0039】
一方、トレンチ11をシリコン基板10の[110]方向から45度傾けた[010]方向に沿って形成する場合、シリコン基板10の主面10aである(001)面に垂直なトレンチ11の側壁面11aの面方位は(100)面又は(-100)面となる(
図2参照)。ここで、原料ガス分子がトレンチ11の底部まで行き渡るように、原料ガスが分子流として供給される圧力条件下で化学気相成長を行う。トレンチ11の深さDよりも原料ガスの平均自由工程が大きく、トレンチ内部の底面や側壁面に原料ガスを供給できる。
図4(b)に示すように、トレンチ11の側壁面11aからも底面11bと同様の成長速度で結晶成長が起こる。トレンチ11の幅Wを例えば1μmとすると、トレンチ11の深さDに関係なく、ゲルマニウム結晶層20がトレンチ11の両方の側壁面11aから0.5μm成長することでトレンチ11の内部の埋め込みが完了する。
【0040】
以上説明したように、本実施形態によるゲルマニウム半導体装置1の製造方法は、{100}面からなるシリコン基板10の主面10aに<010>方向と平行なトレンチ11を形成し、トレンチ11内にゲルマニウム結晶層20を化学気相成長法により形成するので、トレンチ11の底面11bのみならず側壁面11aからもゲルマニウムの結晶成長を促進させることができ、2μm以上の厚いゲルマニウム結晶層20を短時間で形成することができる。
【0041】
図5(a)及び(b)は、本発明の第2の実施の形態によるゲルマニウム半導体装置の構成を示す図であって、
図5(a)は略平面図、
図5(b)は
図5(a)のX-X線に沿った略断面図である。
【0042】
図5(a)及び(b)に示すように、このゲルマニウム半導体装置1は、シリコン基板10上に複数のトレンチ11を所定のピッチで等間隔に配列し、各トレンチ11内にゲルマニウム結晶層20を埋め込んだものである。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0043】
ゲルマニウム受光器の受光効率を高めるためにはゲルマニウム結晶層20の面積をできるだけ大きくすることが望ましい。しかし上記のように、シリコン基板10の主面10aの全面にゲルマニウム結晶層20を形成しようとすると、縦方向の結晶成長のみとなるため、2μm以上の十分な厚さのゲルマニウム結晶層の形成に時間がかかるという問題がある。
【0044】
これに対し、本実施形態においては、各トレンチ11の底面11bからの縦方向の結晶成長のみならず側壁面11aからの横方向の結晶成長により、十分な厚さのゲルマニウム結晶層20を短時間で形成することができる。隣接する2本のトレンチ11、11間のシリコン領域はゲルマニウム結晶層20を設けることができないデッドスペースとなるが、シリコン領域に到達した光はシリコンよりも屈折率が高いゲルマニウム結晶層20に吸い寄せられるので、シリコン領域が多少存在しても特に問題はない。ゲルマニウム結晶層20の光吸収率はその面積に比例して増加するが、その厚さに対しては指数関数的に増加する。すなわち、ゲルマニウム結晶層20の面積よりも厚さを厚くした方が光の吸収効率は劇的に大きくなるため、ゲルマニウム結晶層20の厚さの増加はゲルマニウム受光器の受光感度を高める上で非常に有効である。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、ゲルマニウム結晶層20の厚さと面積の両方を確保することができ、ゲルマニウム受光器の受光感度をさらに高めることができる。
【0046】
図6は、本発明の第3の実施の形態によるゲルマニウム半導体装置の構成を示す略断面図である。
【0047】
図6に示すように、このゲルマニウム半導体装置1の特徴は、トレンチ11内に埋め込まれたゲルマニウム結晶層20の上面を含むシリコン基板10の上面全体がシリコン保護膜12(Siキャップ)に覆われている点にある。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。ゲルマニウム結晶層20の上面がシリコン保護膜12に覆われている場合、ゲルマニウム結晶層20の底面及び側面のみならず上面もシリコンに束縛されるので、ゲルマニウム結晶層20中にシリコンとの熱膨張係数差によって生じる引張歪みを大きくすることができる。ゲルマニウム結晶中の引張歪みが大きくなるとゲルマニウムのバンドギャップエネルギーが下がるので、ゲルマニウムの光吸収波長の長波長化を図ることができる。
【0048】
光吸収波長の長波長化を図るためにはゲルマニウム結晶層20の格子歪みをできるだけ大きくしたほうがよく、そのためにはゲルマニウム結晶層20の断面アスペクト比をできるだけ1に近づけることが望ましい。しかし、断面アスペクト比を1に近づけるとゲルマニウム結晶層20の厚さ(≒トレンチ深さD)が薄くなり、受光感度が低下する。そのため、Ge受光器の設計では受光感度を優先しながらも両者のバランスを取ることが必要とされる。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【0050】
例えば、上記実施形態においては、受光感度が高いゲルマニウム受光器の製造に好適なゲルマニウム半導体装置及びその製造方法を例に挙げたが、本発明はこのような用途に限定されるものではなく、ゲルマニウム結晶層を厚く形成する必要がある種々のゲルマニウム半導体装置及びその製造方法に適用することができる。
【実施例】
【0051】
<トレンチ埋め込みGeの結晶成長の評価>
面方位が{100}面、オリエンテーションフラットが<110>方向である4インチのシリコンウェーハ10W(
図7(a)参照)を用意し、その主面に同一パターンを有する25個のシリコンチップ10Cを形成した。各シリコンチップ10Cには、<-110>方向に伸びる比較例によるトレンチパターン(
図7(b)参照)の形成領域E1と、<110>方向から45度傾いた<010>方向に伸びる実施例によるトレンチパターン(
図7(c)参照)の形成領域E2を設けた。すなわち、比較例によるトレンチパターンと実施例によるトレンチパターンの両方を同じシリコンウェーハ10W上に同時に形成した。これらのトレンチパターンはフォトリソグラフィ及びRIE(Reactive Ion Etching)により形成した。
【0052】
比較例によるトレンチパターンは、<-110>方向に伸びる5本のトレンチ11を20μm間隔で配置したものであり、トレンチ11の長さLは10mm、トレンチ11の幅Wtは0.6μm、トレンチ11の深さDは1~2μm、隣接トレンチ11,11間のスペース幅Wsは20μmとした。
【0053】
実施例によるトレンチパターンは、<010>方向に伸びる5本のトレンチ11を20μm間隔で配置した点以外は比較例と同様とした。
【0054】
次に、トレンチ11内へのゲルマニウムの埋め込みを行った。ゲルマニウムはGeH4を原料ガスとする超高真空化学気相成長法(UHVCVD法)により形成し、成長炉内の圧力は10Pa以下の分子流領域を用いた。具体的には、{100}面に厚さが0.5μmのゲルマニウム結晶層が得られる成長条件を設定した。
【0055】
トレンチ11内へのゲルマニウム結晶層の埋め込みが完了した後、シリコンウェーハ10WのFIB(Focused Ion Beam)加工を行った。FIB加工では、ゲルマニウムの埋め込み層が形成されたシリコンウェーハ10Wの主面にPt保護膜を予めスパッタリングにより形成した後、トレンチ11の延在方向と直交する方向(
図6(b)及び(c)における一点鎖線Cの方向)にシリコンウェーハ10Wを切断した。その後、ゲルマニウム結晶層の断面をTEM(Transmission Electron Microscope)により観察した。
【0056】
図8(a)及び(b)は、トレンチ内へのゲルマニウム結晶層の埋め込み状態を示すTEM画像であって、
図8(a)は比較例によるトレンチ内へのゲルマニウム埋め込み状態、
図8(b)は実施例によるトレンチ内へのゲルマニウム埋め込み状態をそれぞれ示している。
【0057】
図8(a)に示すように、<-110>方向に形成された比較例によるトレンチパターンでは、底面から高さTが約0.5μmまでの深さ領域にゲルマニウムを埋め込むことができたが、トレンチ内部をゲルマニウムで十分に満たすことはできなかった。そのため、ゲルマニウムの上方にはPt保護膜に囲まれた空洞が発生した。このゲルマニウムの不完全な埋め込み状態は25個のシリコンチップのすべてのトレンチで同様の結果となった。これは、トレンチの側壁面からのゲルマニウムの結晶成長が抑制されたためと考えられる。トレンチの側壁面が垂直でない場合、成長初期には底面のみならず側壁面からも結晶成長が起こるが、側壁面がほぼ垂直となり、成長速度の遅い{110}面が現れたところで結晶成長が止まるため、トレンチの内部に十分な量のゲルマニウムを埋め込むことはできなかった。
【0058】
一方、
図8(b)に示すように、<010>方向に形成された実施例によるトレンチパターンでは、底面から高さTが約0.9μmまでの深さ領域にゲルマニウムを埋め込むことができた。このゲルマニウムの十分な埋め込み状態は25個のシリコンチップのすべてのトレンチで同様の結果となった。これは、側壁面からのゲルマニウムの結晶成長が底面と同様に起こったためと考えられる。
【0059】
<Ge結晶中の歪みが光吸収波長に与える影響の考察>
Ge結晶中の歪みがGeの光吸収波長に与える影響をシミュレーションにより評価した。
【0060】
<比較例:Ge膜構造>
Si基板の上面全体に形成された厚さ1μmのGe膜(従来構造)の格子歪み及びバンドギャップエネルギーをシミュレーションにより評価した。
図9(a)に示すように、Si基板の厚さは0.625mmとし、幅1mm幅、奥行1mmの領域を仮定した。また、Geの熱膨張係数は5.9×10
-6[1/K]、Siの熱膨張係数は2.6×10
-6[1/K]とした。
【0061】
次に、この比較例の評価モデルの温度を600℃から25℃まで下げたときのGeに生じる歪みのX、Y、Z方向の大きさε
xx、ε
yy、ε
zzを計算により求めた。その結果を
図10に示す。また、計算結果をまとめたものを表1に示す。表1において、ε
totalは3方向の歪みの大きさε
xx、ε
yy、ε
zzを合算した値であって、Geの体積変化率と等価である。
【0062】
【0063】
図10及び表1に示すように、Ge膜の場合、X方向及びY方向の歪みの大きさは同じであり、0.188%の引張歪みが誘起された。一方、Z方向の歪みの大きさは-0.1419%となった。これは、膜厚方向には力が働いていないが、格子自体が面内で横方向に引っ張られることにより、Geの膜厚方向には圧縮歪みが誘起される結果となった。3方向の歪みの総和ε
total=ε
xx+ε
yy+ε
zzは0.2357%となった。
【0064】
得られた格子歪みからGeのエネルギーバンド構造のガンマ点におけるバンドギャップエネルギーEgを以下の一次近似式より求めた。
【数1】
【0065】
その結果、GeのバンドギャップエネルギーEgは0.7809eVとなり、吸収端波長は1588nmとなった。
【0066】
また表1において、Eg
C-HHはGeのガンマ点における伝導帯?重い正孔価電子帯間のバンドギャップエネルギー、Eg
C-LHはGeのガンマ点における伝導帯?軽い正孔価電子帯間のバンドギャップエネルギーの計算結果をそれぞれ示している。Eg
C-HH及びEg
C-LHは、一次近似式で無視された重い正孔と軽い正孔による価電子帯上端の分離を考慮したバンドギャップエネルギーであり、近似精度が高い。以下の式より求めることができる。
【数2】
【0067】
上記計算の結果、EgC-HHは0.7871eVとなり、吸収端波長は1575nmとなった。EgC-LHは0.7746eVとなり、吸収端波長は1601nmとなった。
【0068】
<実施例1:Ge埋め込み細線構造/Siキャップ無し>
実施例1の評価モデルは、厚さ0.625mmのSi基板の上面にトレンチを形成し、トレンチ内にGeを埋め込む構造とした(
図9(b)参照)。また、幅1mm幅、奥行1mmの領域を仮定した。トレンチの幅は1μm、長さ(奥行)は1mmとし、トレンチの深さは1、2、3、4、5μmの5通りとした。この評価モデルでは、Geの側面及び底面はSiに束縛されているが、Geの上面をSiキャップで覆わずに開放状態としている。
【0069】
次に、実施例1の評価モデルの温度を600℃から25℃まで下げたときのGeに生じる歪みのX、Y、Z方向の大きさε
xx、ε
yy、ε
zzを計算により求めた。その結果を
図11及び
図13(a)及び(b)に示す。また、計算結果をまとめたものを表2に示す。
【0070】
【0071】
Ge埋め込み細線構造の場合、Y方向の歪みεyyはGe膜と比較して変化しなかった。X方向の歪みεxxはGe膜と比較して小さくなり、トレンチの深さ(Ge膜厚)が大きくなるほど圧縮歪みが強くなった。一方、Ge膜では圧縮であったZ方向の歪みεzzが増加し、2μm以上のトレンチの深さ(Ge膜厚)では引張歪みとなる。3方向の歪みの総和εtotalは、トレンチ深さ(Ge膜厚)が1μm(つまり断面アスペクト比が1)のときに最小となり、Ge膜厚と共に増加してGe膜の場合と同様の値となることが分かった。
【0072】
Ge膜厚が1μm(最小値)のとき、ガンマ点における伝導帯?重い正孔価電子帯間のバンドギャップエネルギーEgC-HHは0.7903eVとなり、吸収端波長は1569nmとなった。また、Geのガンマ点における伝導帯?軽い正孔価電子帯間のバンドギャップエネルギーEgC-LHは0.7818eVとなり、吸収端波長は1586nmとなった。Ge膜と比較してバンドギャップエネルギーは大きく、吸収端波長は小さくなる。
【0073】
一方、Ge膜厚が5μm(最大値)のとき、ガンマ点における伝導帯?重い正孔価電子帯間のバンドギャップエネルギーEgC-HHは0.7860eVとなり、吸収端波長は1578nmとなった。また、ガンマ点における伝導帯?軽い正孔価電子帯間のバンドギャップエネルギーEgC-LHは0.7762eVとなり、吸収端波長は1597nmとなった。Ge膜と同様なバンドギャップエネルギー及び吸収端波長となる。
【0074】
<実施例2:Ge埋め込み細線構造/Siキャップ有り>
実施例2の評価モデルは、厚さ0.623mmのSi基板の上面にトレンチを形成し、トレンチ内にGeを埋め込み、さらにSi基板の上面全体を厚さ2μmのSi膜で覆った構造とした(
図9(c)参照)。また、幅1mm幅、奥行1mmの領域を仮定した。トレンチの幅は1μm、長さ(奥行)が1mmとし、トレンチの深さは1、2、3、4、5μmの5通りとした。この評価モデルでは、Geの側面及び底面のみならず上面のSiに束縛された状態となっている。
【0075】
次に、実施例2の評価モデルの温度を600℃から25℃まで下げたときのGeに生じる歪みのX、Y、Z方向の大きさε
xx、ε
yy、ε
zzを計算により求めた。その結果を
図12及び
図14(a)及び(b)に示す。また、計算結果をまとめたものを表3に示す。
【0076】
【0077】
Ge埋め込み細線の全周がSiに覆われている場合、Z方向の歪みεxxがさらに大きくなった。3方向の歪みの総和εtotalはトレンチ深さ(Ge膜厚)が1μm(つまり断面アスペクト比が1)のときに最大となる。Ge膜厚の増加により低下するものの、Ge膜の場合よりも大きな値となる。
【0078】
Ge膜厚が1μm(最小値)のとき、Geのガンマ点における伝導帯?重い正孔価電子帯間のバンドギャップエネルギーEgC-HHは0.7789eVとなり、吸収端波長は1592nmとなった。Ge膜の場合の吸収端波長1575nmに比べて約20nm大きくなっている。Geのガンマ点における伝導帯?軽い正孔価電子帯間のバンドギャップエネルギーEgC-LHは0.7736eVとなり、吸収端波長は1603nmとなった。EgC-LHはGe膜の場合と同様であり、吸収端波長もほとんど変わらないが、軽い正孔に比べて重い正孔は状態密度が大きく、光吸収係数に大きく寄与する。EgC-HHが減少したエネルギー(波長)域で光吸収係数が増大するため受光特性が向上する効果がある。
【0079】
一方、Ge膜厚が5μm(最大値)のとき、Geのガンマ点における伝導帯?重い正孔価電子帯間のバンドギャップエネルギーEgC-HHは0.7846eVとなり、吸収端波長は1580nmとなった。また、Geのガンマ点における伝導帯?重い正孔価電子帯間のバンドギャップエネルギーEgC-LHは0.7742eVとなり、吸収端波長は1602nmとなった。Ge膜の場合よりもEgC-HHが減少しており、光吸収係数が増大するため受光特性が向上する効果がある。
【符号の説明】
【0080】
1 ゲルマニウム半導体装置
10 シリコン基板
10C シリコンチップ
10W シリコンウェーハ
10a シリコン基板の主面
11 トレンチ
11a トレンチの側壁面
11b トレンチの底面
12 シリコン保護膜
20 ゲルマニウム結晶層
22 SiO2マスク
D トレンチパターンの深さ
E1,E2 トレンチパターンの形成領域
L トレンチパターンの長さ
Ws トレンチパターンの間隔
Wt トレンチパターンの幅