(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-14
(45)【発行日】2025-02-25
(54)【発明の名称】吸音材、それを用いる吸音パネル及び吸音材の製造方法
(51)【国際特許分類】
G10K 11/168 20060101AFI20250217BHJP
B32B 5/02 20060101ALI20250217BHJP
D04H 1/435 20120101ALI20250217BHJP
D04H 3/007 20120101ALI20250217BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20250217BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20250217BHJP
【FI】
G10K11/168
B32B5/02 C
D04H1/435
D04H3/007
D04H3/16
G10K11/16 120
(21)【出願番号】P 2022530528
(86)(22)【出願日】2021-06-04
(86)【国際出願番号】 JP2021021294
(87)【国際公開番号】W WO2021251279
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-09-28
【審判番号】
【審判請求日】2024-10-01
(31)【優先権主張番号】P 2020102353
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515113042
【氏名又は名称】株式会社ビーエステクノ
(73)【特許権者】
【識別番号】523419521
【氏名又は名称】エム・エーライフマテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小幡 仁寿
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 智幸
(72)【発明者】
【氏名】市川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】中島 友則
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 真央
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 秀憲
(72)【発明者】
【氏名】竹内 文人
【合議体】
【審判長】千葉 輝久
【審判官】木方 庸輔
【審判官】伊藤 隆夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-214134(JP,A)
【文献】特開2010-43507(JP,A)
【文献】国際公開第2014/042253(WO,A1)
【文献】特開2000-305574(JP,A)
【文献】特開2002-79598(JP,A)
【文献】特開2005-66134(JP,A)
【文献】国際公開第2018/092888(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
D04H 1/00 - 18/04
G10K 11/00 - 13/00
H04R 3/00 - 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリエステル系樹脂からなる繊維を含む中綿と、該中綿を内包する表皮材とからなり、
該中綿が超音波シール法にて融着された該表皮材の端部により該表皮材に内包されている吸音材であって、
該表皮材はポリプロピレン系樹脂からなる繊維を含む不織布からなり、
第1のスパンボンド不織布と、該第1のスパンボンド不織布上に位置するメルトブローン不織布と、該メルトブローン不織布上に位置する第2のスパンボンド不織布と、該第2のスパンボンド不織布上に位置する第3のスパンボンド不織布とを備え、
該第3のスパンボンド不織布は、平均繊維径が30~50μmの範囲にあり、目付が70~150g/m
2の範囲にあることを特徴とする吸音材。
【請求項2】
請求項1記載の吸音材において、前記中綿はポリプロピレン系樹脂からなる繊維を含むことを特徴とする吸音材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の吸音材において、前記表皮材は200~2000mmH
2Oの範囲の耐水圧を備えることを特徴とする吸音材。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項記載の吸音材において、前記第1又は第2のスパンボンド不織布は、25~50μmの範囲の平均繊維径を備える繊維を含むことを特徴とする吸音材。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載の吸音材において、前記メルトブローン不織布は、0.5~5μmの範囲の平均繊維径を備える繊維を含むことを特徴とする吸音材。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項記載の吸音材と、前記吸音材を収納するフレームとを含むことを特徴とする吸音パネル。
【請求項7】
少なくともポリエステル系樹脂からなる繊維を含む中綿を、ポリプロピレン系樹脂からなる繊維を含む不織布である表皮材で包み込み、前記表皮材の端部を
超音波シール法にて融着
し、該中綿を超音波融着された該表皮材の端部により該表皮材に内包する融着工程を含み、
該表皮材は、ポリプロピレン系樹脂からなる繊維を含む不織布からなり、
第1のスパンボンド不織布と、該第1のスパンボンド不織布上に位置するメルトブローン不織布と、該メルトブローン不織布上に位置する第2のスパンボンド不織布と、該第2のスパンボンド不織布上に位置する第3のスパンボンド不織布とを備え、
該第3のスパンボンド不織布は、平均繊維径が30~50μmの範囲にあり、目付が70~150g/m
2の範囲にあることを特徴とする吸音材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音材、それを用いる吸音パネル及び吸音材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエチレンテレフタレート系樹脂の繊維からなり特定の範囲の密度、厚み及び通気度を備える第1の不織布を表皮層(表皮材)とし、ポリエチレンテレフタレート系樹脂の短繊維からなり特定の範囲の目付け及び厚みを備える第2の不織布を基材層(中綿)とする積層不織布からなる吸音材が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1記載の吸音材によれば、前記第1の不織布と前記第2の不織布とが積層されることにより、800~1250Hzの範囲の低周波領域にて優れた吸音率を備えるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の吸音材のようにポリエチレンテレフタレート系樹脂の短繊維からなる吸音材は、水分が多い環境下では吸音率が低下するという不都合がある。
【0006】
そこで、本発明は、水分が多い環境下でも吸音率が低下し難い吸音材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明の吸音材は、少なくともポリエステル系樹脂からなる繊維を含む中綿と、該中綿を内包する表皮材とからなり、該中綿が超音波シール法にて融着された該表皮材の端部により該表皮材に内包されている吸音材であって、該表皮材はポリプロピレン系樹脂からなる繊維を含む不織布からなり、第1のスパンボンド不織布と、該第1のスパンボンド不織布上に位置するメルトブローン不織布と、該メルトブローン不織布上に位置する第2のスパンボンド不織布と、該第2のスパンボンド不織布上に位置する第3のスパンボンド不織布とを備え、該第3のスパンボンド不織布は、平均繊維径が30~50μmの範囲にあり、目付が70~150g/m2の範囲にあることを特徴とする。
【0008】
ポリプロピレン系樹脂からなる繊維は疎水性を備えているので、本発明の吸音材は、前記中綿が前記表皮材に内包されていることにより水と接触することがなく、水分が多い環境下でも吸音率が低下し難い。
【0009】
本発明の吸音材は、前記中綿が、少なくともポリエステル系樹脂からなる繊維を含むことにより、800~1250Hzの範囲の低周波領域にて優れた吸音率を備えることができるが、さらにポリプロピレン系樹脂からなる繊維を含むことが好ましい。
【0010】
また、本発明の吸音材において、前記表皮は、前記中綿が水と接触しないようにするために、200~2000mmH2Oの範囲の耐水圧を備えることが好ましい。前記表皮の耐水圧が200mmH2O未満では、前記中綿と水との接触を妨げることができないことがあり、2000mmH2O超としてもそれ以上の効果を得ることは容易ではない。
【0011】
ところで、本発明の吸音材は屋外で使用された場合には、雹、霰、あるいは小石等の固体の衝突により摩耗して寿命が短くなることがある。そこで、前記表皮材は、前記耐水圧と同時に、前記固体の衝突に対する耐摩耗性(ショットブラスト耐性)を備えることが望まれる。
【0012】
本発明の吸音材において、前記表皮材は、前記範囲の耐水圧と前記ショットブラスト耐性とを兼ね備えるために、第1のスパンボンド不織布と、該第1のスパンボンド不織布上に位置するメルトブローン不織布と、該メルトブローン不織布上に位置する第2のスパンボンド不織布とを含む。一般に、前記メルトブローン不織布に含まれる繊維の平均繊維径は、前記スパンボンド不織布に含まれる繊維の平均繊維径よりも細いので、前記メルトブローン不織布により前記範囲の耐水圧を得る一方、該メルトブローン不織布の外層に位置する前記第1又は第2のスパンボンド不織布により、前記ショットブラスト耐性を得ることができ、前記メルトブローン不織布を保護することができる。この場合、前記メルトブローン不織布は、前記範囲の耐水圧を得るために、0.5~5μmの範囲の平均繊維径を備える繊維を含むことが好ましく、前記第1又は第2のスパンボンド不織布は、前記ショットブラスト耐性を得るために、25~50μmの範囲の平均繊維径を備える繊維を含むことが好ましい。
【0015】
本発明の吸音パネルは、上述のいずれかの吸音材と、前記吸音材を収納するフレームとを含むことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の吸音材の製造方法は、少なくともポリエステル系樹脂からなる繊維を含む中綿を、ポリプロピレン系樹脂からなる繊維を含む不織布である表皮材で包み込み、前記表皮材の端部を超音波シール法にて融着し、該中綿を超音波融着された該表皮材の端部により該表皮材に内包する融着工程を含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の吸音材の第1の実施形態の構成を示す説明的断面図。
【
図2】本発明の吸音材の第2の実施形態の構成を示す説明的断面図。
【
図3】本発明の吸音パネルの一構成例を示す説明的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の吸音材1の第1の実施形態では、例えば、少なくともポリエステル系樹脂からなる繊維を含む中綿2と、中綿2の表裏両面(上層及び下層)に備えられ、中綿2を内包する1枚の表皮材3とからなる。中綿2は、2つに折りたたまれた表皮材3に挟まれており、表皮材3は、周縁部の3方にシール部4を備えている。この結果、中綿2は、表皮材3の折りたたみ部とシール部4により取り囲まれて、表皮材3に内包されている。
【0020】
なお、中綿2は表皮材3により内包されていればよく、中綿2を表皮材3により内包する構成は、
図1に示す構成に限定されるものではない。
【0021】
例えば、
図2に示す本実施形態の吸音材1の第2の実施形態のように、中綿2と、中綿2の表裏両面(上層及び下層)に備えられ、中綿2を内包する2枚の表皮材3,3とからなり、表皮材3,3が周縁部に中綿2を取り囲むシール部4を備える構成であってもよい。
【0022】
吸音材1の目付は、主に100~2000Hzの領域における吸音率をより向上させる観点や吸音材の重量増による作業性の低下を防止する観点、さらには重量増による吸音材を支持する構造体の強度確保が困難になる観点から、500~3000g/m2の範囲であることが好ましく、1000~2500g/m2の範囲であることがさらに好ましく、1300~2200g/m2の範囲であることが最も好ましい。
【0023】
吸音材1の厚みは、低音領域、特に100~1000Hzの領域の吸音率をより向上させる観点や、構造物等に据え付ける際に効率的な空間を確保する観点から10~100mmの範囲であることが好ましく20~70mmの範囲であることがより好ましい。
【0024】
中綿2は、例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のポリエステル系樹脂からなる繊維のみからなるものでもよく、さらにポリプロピレン系樹脂からなる繊維を含んでいてもよい。中綿2は、ポリエチレンテレフタレート系樹脂からなる繊維とポリプロピレン系樹脂からなる繊維とを含むことにより、嵩高性(吸音率の確保)と疎水性の適度なバランスを維持することがより容易になるという効果を得ることができる。
【0025】
中綿2としては、例えば、前記ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)系樹脂の短繊維と、前記ポリプロピレン系樹脂の短繊維とを含む不織布成形体を用いることができる。
【0026】
中綿2の目付は、主に100~2000Hzの領域における吸音率をより向上させる観点や吸音材の重量増による作業性の低下を防止する観点、さらには重量増による吸音材を支持する構造体の強度確保が困難になる観点から、400~2900g/m2の範囲であることが好ましく、900~2400g/m2の範囲であることがさらに好ましく、1200~2100g/m2の範囲であることが最も好ましい。
【0027】
前記ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)系樹脂の短繊維と、前記ポリプロピレン系樹脂の短繊維とは、公知の溶融紡糸法により製造されたものであってもよく、市販のものを購入したものであってもよい。前記ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)系樹脂の短繊維は、例えば、平均繊維長さが10~100mmの範囲、平均繊維径が10~70μmの範囲のものを用いることができ、前記ポリプロピレン系樹脂の短繊維は、例えば、平均繊維長さが10~100mmの範囲、平均繊維径が10~50μmの範囲のものを用いることができる。
【0028】
前記不織布成形体におけるポリエステル系樹脂の短繊維と、ポリプロピレン系樹脂の短繊維との割合は、吸音率をより向上させる観点から、質量基準で、ポリエステル系樹脂の短繊維:ポリプロピレン系樹脂の短繊維が99:1~5:95の範囲であることが好ましく、95:5~10:90の範囲であることがより好ましく、80:20~20:80の範囲であることがさらに好ましい。
【0029】
前記不織布成形体は、例えば、1~95質量%、例えば60質量%の前記ポリプロピレン系樹脂の短繊維を、99~5質量%、例えば40質量%のポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)バインダー短繊維と混合し、開繊機、カード機にてウェブを形成した後、得られたウェブをクロスレイヤー機にて多層積層し、所定のギャップ間距離に設定された熱風エアー処理機で処理し、該ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)系バインダー短繊維と、該ポリプロピレン系樹脂の短繊維とを融着処理することにより得ることができる。
【0030】
前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、エチレングリコール等の多価アルコールと、テレフタル酸等の二塩基酸との共重合体を用いることができる。このようなポリエチレンテレフタレート系樹脂として、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、ポリブチレンイソフタレート(PBI)、ポリヘキサメチレンテレフタレート(PHT)、ポリヘキサメチレンイソフタレート(PHI)、ポリヘキサメチレンナフタレート(PHN)等を挙げることができる。
【0031】
前記ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体であってもよく、プロピレンと共重合可能な他のα-オレフィンとの共重合体であってもよい。前記α-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン等の炭素数2以上、好ましくは2~8のα-オレフィンを挙げることができる。前記ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンとα-オレフィンとの共重合体である場合、前記α-オレフィンから選択される1種又は2種以上のα-オレフィンとの共重合体であってもよい。前記ポリプロピレン系樹脂は、MFR(メルトフローレート)が例えば1~500g/分の範囲のものを用いることができる。
【0032】
前記ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)系バインダー短繊維は、例えば、芯部にポリエチレンテレフタレート、鞘部にバインダー成分を備えるものを用いることができる。前記バインダー成分としては、テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体、イソフタル酸又はそのエステル形成性誘導体、低級アルコール、ポリアルキレングリコール又はそのモノエーテルからなる共重合ポリエステルを挙げることができる。
【0033】
前記不織布成形体におけるポリエステル系樹脂の短繊維と、ポリプロピレン系樹脂の短繊維は、本発明の効果を損なわない範囲で、複合繊維、中空繊維、異型繊維、捲縮繊維、分割繊維等の形態を含んでいてもよい。また、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、難燃剤、撥水剤、油剤、帯電防止剤、着色剤、無機物等を含んでいてもよい。
【0034】
表皮材3は、ポリプロピレン系樹脂からなる繊維を含む不織布からなる。表皮材3は、中綿2と水との接触をより妨げる観点から、200~2000mmH2Oの範囲の耐水圧を備えることが好ましく、200~500mmH2Oの範囲の耐水圧を備えることがより好ましく、250~450mmH2Oの範囲の耐水圧を備えることが更に好ましく、280~400mmH2Oの範囲の耐水圧を備えることが最も好ましい。表皮材3の耐水圧は、例えば、表皮材3を構成する繊維の平均繊維径をより小さくする、密度を上げる、および、目付をあげるなどの手法により、より上昇させることができる。
【0035】
表皮材3の目付は、耐水圧をより向上させて中綿2と水の接触をより防止する観点や、ショットブラスト耐性などの強度を維持する観点や、目付が高すぎて中綿2側に音波が伝わりにくくなることを防止する観点、目付が高すぎて超音波シール等の作業性が低下するのを防止する観点から、50~200g/m2の範囲であることが好ましく、70~150g/m2の範囲であることがより好ましい。
【0036】
表皮材3の通気度は、耐水圧をより向上させて中綿と水の接触をより防止する観点や、中綿側に音波を適度に伝えて吸音率を良好に保つ観点から、5~200cm3/cm2/秒の範囲であることが好ましく、7~150cm3/cm2/秒の範囲であることがより好ましく、10~50cm3/cm2/秒の範囲であることが最も好ましい。
【0037】
表皮材3の厚みは、耐水圧をより向上させて中綿2と水の接触をより防止する観点、ショットブラスト耐性などの強度を維持する観点や、厚すぎて中綿側に音波が伝わりにくくなることを防止する観点、厚すぎて超音波シール等の作業性が低下するのを防止する観点から、0.1~1.5mmの範囲であることが好ましく、0.3~1.0mmの範囲であることがより好ましい。
【0038】
表皮材3の表面付近に位置する繊維の平均繊維径(以下、表面繊維径ということがある)は、ショットブラスト耐性をより向上させる観点や、通気度を適度な範囲に制御する観点から、20~100μmの範囲にあることが好ましく、30~50μmの範囲にあることがより好ましい。
【0039】
表皮材3を構成する前記不織布に用いられる前記ポリプロピレン系樹脂は、中綿2に用いられるポリプロピレン系樹脂と同様に、プロピレンの単独重合体であってもよく、プロピレンと共重合可能な他のα-オレフィンとの共重合体であってもよい。前記α-オレフィンとしては、中綿2に用いられるポリプロピレン系樹脂の場合と同一のα-オレフィンを1種又は2種以上用いることができる。
【0040】
表皮材3を構成する繊維は、本発明の効果を損なわない範囲で、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、難燃剤、撥水剤、油剤、帯電防止剤、着色剤、無機物等を含んでいてもよい。
【0041】
表皮材3を構成する前記不織布に用いられる前記ポリプロピレン系樹脂としては、MFR(メルトフローレート)が例えば10~100g/分の範囲にあるものを用いることができる。本実施形態の吸音材1では、表皮材3が前記範囲の耐水圧を備え、シール部4で内部がシールされていることにより、中綿2が水と接触することがなく、水分が多い環境下でも吸音率が低下し難い。
【0043】
発明者らは、不織布は含有する繊維の平均繊維径が小さい(細い)ほど緻密であり耐水圧に優れているが、その一方で、雹、霰、あるいは小石等の固体の衝突に対する耐摩耗性(耐ショットブラスト性)の見地からは、含有する繊維の平均繊維径が大きい(太い)ことが望ましいことを見出した。また、スパンボンド不織布に含まれる繊維の平均繊維径は、メルトブローン不織布に含まれる繊維の平均繊維径より大きく、メルトブローン不織布に含まれる繊維の平均繊維径は、スパンボンド不織布に含まれる繊維の平均繊維径より小さい。
【0044】
そこで、表皮材3は、25~50μmの範囲の平均繊維径を備えるポリプロピレン系樹脂からなる繊維を含む第1のスパンボンド不織布と、第1のスパンボンド不織布の上に位置する0.5~5μmの範囲の平均繊維径を備えるポリプロピレン系樹脂からなる繊維を含むメルトブローン不織布と、該メルトブローン不織布の上に位置する25~50μmの範囲の平均繊維径を備えるポリプロピレン系樹脂からなる繊維を含む第2のスパンボンド不織布と、第2のスパンボンド不織布の上に位置する30~50μmの範囲の平均繊維径を備え、目付が70~150g/m
2
の範囲にある第3のスパンボンド不織布を備える少なくとも4層の構造(以下、4層の構造をSSMS構造又はSMSS構造ということがある)を備え、前記第3のスパンボンド不織布により、より優れたショットブラスト耐性を得ることができる。
【0045】
表皮材3は、前記構造を備える場合、内層となる前記メルトブローン不織布の平均繊維径が細いため緻密になることにより前記範囲の耐水圧を確保することができる。その一方で、前記メルトブローン不織布は、含有する繊維の平均繊維径が小さいため、毛羽立ちやすく、ショットブラスト耐性に劣る場合があるので、前記第1又は第2のスパンボンド不織布を外層とすることにより該メルトブローン不織布を保護することができ、ショットブラスト耐性がより優れる傾向にある。
【0049】
前記スパンボンド不織布は、公知のスパンボンド不織布成型機を用いて製造することができる。より具体的には、スパンボンド不織布は、例えば、原料となるポリプロピレン系樹脂を、押出機を用い溶融し、溶融した組成物を、複数の紡糸口金から吐出し、繊維状の樹脂を必要に応じて冷却し延伸させた後、捕集面上に堆積させ、エンボスロールで加熱加圧処理することによって製造することができる。
【0050】
また、前記メルトブローン不織布は、公知のメルトブローン不織布成型機を用いて製造することができる。より具体的には、メルトブローン不織布は、例えば、原料となるポリプロピレン系樹脂を溶融し、紡糸ノズルから吐出するとともに、高温高圧ガスにより牽引して細繊維化されたポリプロピレン極細繊維を多孔ベルト又は多孔ドラムなどのコレクターに捕集して、堆積することによって製造することができる。
【0051】
シール部4は、超音波シールにより形成することができる。シール部4は、表皮材3,3の周縁部に中綿2を取り囲むように連続して形成されていてもよく、断続的に形成されていてもよい。シール部4は、断続的に形成される場合、平行な複数のシール部4が1つのシール部4の不連続部を他のシール部4の連続部で補完するように形成されていることが好ましい。
【0052】
シール部4の耐水圧は、本発明の効果を奏する限り特に制限されないが、水の侵入をより抑制する観点から、100mmH2O以上が好ましく、150mmH2O以上がより好ましく、200mmH2O以上がさらに好ましく、250mmH2O以上が特に好ましく、300mmH2O以上が最も好ましい。シール部4の耐水圧の上限値は特に制限されないが、例えば2000mmH2O以下、1000mmH2O以下または500mmH2O以下とすることができる。
【0053】
シール条件は特に限定されないが、超音波シールの場合、シール時の圧力や出力電圧、シール時間、シールパターンなどにより任意に調整が可能である。シールが強すぎる場合上記耐水圧が低下する傾向があるので、前記要因を適度に調整することにより上記耐水圧を良好に保つことが可能である。
【0054】
シール部4の幅は、本発明の効果が発揮できれば特に制限されないが、シール部の耐水圧をより向上させつつ、破れを抑制する観点から、0.1~5.0mmの範囲であることが好ましい。シール部4の幅は、例えば0.3mmとすることができる。
【0055】
次に、
図3を参照して、本実施形態の吸音パネルについて説明する。
【0056】
図3に示すように、本実施形態の吸音パネル11は、吸音材1と、吸音材1を収容するフレーム14とを備える。フレーム14は、底部を形成する矩形状の遮蔽板12と遮蔽板12の四辺から立ち上がる側壁13とからなり上方に開放端部を備える箱状体であり、吸音材1がフレーム14に収容されたときにフレーム14の開放端部に配置される保護パネル15と、フレーム14の裏面に配置され吸音パネル11を建造物等に取り付ける場合に吸音パネル11を支持する支持部16とを備える。
【0057】
フレーム14は、遮蔽板12、側壁13、支持部16が一体として形成されていてもよく、別々の部材を接続して形成されていてもよい。フレーム14の材質は、天候、水分等に対する耐久性を備える材料であれば特に制限されず、金属製や樹脂製とすることができる。金属としては、アルミニウム、ステンレス等の軽量な金属が好ましく用いられる。
【0058】
保護パネル15は、吸音材1を雹、霰、あるいは小石等の固体から保護しつつ、音波の侵入を容易にするものであることが好ましい。そのため、本実施形態において、保護パネル15は表面に多数の貫通孔15aが配置されているパンチングプレートが好ましく用いられるが、吸音材1を保護しつつ、音波の侵入を容易にするものであればよく、パンチングプレートに限定されるものではない。保護パネル15の表面の全面積に対する、貫通孔15aの合計の面積は、特に制限されないが、例えば、20%~80%の範囲である。
【0059】
保護パネル15の材質は、吸音材1の保護と音波の侵入、天候、水分等に対する耐久性を両立できれば特に制限されず、金属製や樹脂製とすることができる。金属としては、アルミ、ステンレスなどの軽量な金属が好ましく用いられる。
【0060】
次に、
図1又は
図2に示す本実施形態の吸音材1の製造方法について説明する。
【0061】
吸音材1は、例えば、少なくともポリエステル系樹脂からなる繊維を含む中綿2を、ポリプロピレン系樹脂からなる繊維を含む不織布である表皮材3で包み込み、前記表皮材3の端部を融着する融着工程を含む製造方法により製造することができる。
【0062】
端部の融着は超音波シール法で行う。
【0064】
前記超音波シール法における超音波シール装置の出力は、表皮材3の樹脂を融着できれば特に制限されないが、耐水圧のさらなる向上と融着部(シール部4)の剥がれを抑制する観点から、1~5Vの範囲であることが好ましい。また、圧着における圧力は、表皮材3の樹脂を融着できれば特に制限されないが、耐水圧のさらなる向上と融着部の剥がれを抑制する観点から、0.1~5MPaの範囲であることが好ましい。また、融着部を形成する速度は、融着部の剥がれを抑制しつつ、作業効率を向上させる観点から、1~30m/分が好ましい。
【0065】
次に、本発明の実施例及び比較例を示す。
【実施例】
【0066】
以下の実施例及び比較例において、吸音材の物性及び性能は次のようにして測定又は評価した。
【0067】
〔目付(g/m2)〕
吸音材から側周面を含まないように10cm角の試料を5点採取した。そして、各試料の重量を測定し、合計の重量を合計の面積で除して目付(g/m2)を算出した。
【0068】
〔厚み(mm)〕
前記目付の算出に用いた5点の試料につき、各試料の四辺の中央部の厚みを、鋼尺で測定し、その平均値を厚み(mm)とした。
【0069】
〔表皮材耐水圧〕
吸音材に使用する表皮材(表皮剤が無い場合は5mm厚以内でスライスされた表面領域から15cm角の試料を5点採取し、JIS L 1096(2010)のA法(低水圧法)により耐水圧を測定し、その平均値を表皮材耐水圧とした。
【0070】
〔シール部耐水圧〕
吸音材から表皮材を採取する際、シール部が15cm角の試料の中央部に含まれるように採取して、表皮材耐水圧と同一にしてシール部耐水圧を求めた。
【0071】
〔通気度(cm3/cm2/秒)〕
吸音材に使用する表皮材から、前記表皮材耐水圧と同一にして、15cm角の試料を5点採取し、JIS L 1096(2010)に準拠し、フラジール通気度測定機によって通気度を測定し、その平均値を通気度(cm3/cm2/秒)とした。
【0072】
〔ショットブラスト耐性〕
25cm角の吸音材を試料とし、該試料の上面中央部に向けて、S30(鋼球)、吹付けノズル径5mm、ノズル先端から試料上面までの距離150mm、吹付けエアー圧力0.1MPaの条件でショットブラスト試験を実施し、4秒間吹付けて表皮材が破れていれば×、破れていなければ〇、破れていないが表皮材の厚み半分以上の範囲で損傷が見られる場合は△とした。
【0073】
〔平均繊維径〕
スパンボンド不織布については、10mm×10mmの試験片を10点採取し、顕微鏡(株式会社ニコン製、商品名:ECLIPSE E400)を用い、倍率50倍で、1試験片毎に任意の20箇所の径をμm単位で小数点第1位まで読み取り、その平均値を平均繊維径とした。メルトブローン不織布については、採取した試料片の構成繊維30本の繊維径(μm)を、走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、型式名:SU3500形)を用いて、倍率500倍又は1000倍で測定し、その平均値を平均繊維径とした。
【0074】
〔表面繊維径〕
スパンボンド不織布から採取した試料片の構成繊維30本の繊維径(μm)を、走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、型式名:SU3500形)を用いて、倍率50倍又は100倍で測定し、その平均値を表面繊維径とした。繊維同士が融着して界面が明確でないため1本の繊維径が特定できない部分は除いた。なお、表皮材の断面を走査型電子顕微鏡にて観察し、非エンボス部分に融着が見られない場合は、平均繊維径をそのまま表面繊維径とした。
【0075】
〔非エンボス部繊維間の融着〕
表皮材の最表面のスパンボンド不織布の表面を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、型式名:SU3500形)を用いて観察し、エンボス形状とは異なる融着形状である場合には、非エンボス部繊維間に融着があると判断した。また、エンボス形状と同等の融着形状である場合には、非エンボス部繊維間に融着がないと判断した。
【0076】
〔吸音率〕
JIS A 1405-2(伝達関数法)に準じて、太管として内径100mmの音響管を用い、細管として内径29mmの音響管を用い、垂直入射吸音率を測定した。なお、1/3オクターブバンド中心周波数50~1250Hzの吸音率は太管での測定結果であり、1600~2000Hzの吸音率は細管での測定結果である。
【0077】
〔浸水試験〕
10cm角の吸音材を試料とし、該試料を2リットルビーカーに収容された1リットルの蒸留水の水面に静かに浮かべ、1時間後の状態を観察し、浮かべた直後と変化が無ければ浸水なし(○)とし、浮かべた直後よりも吸音材の水面下への沈下がみられた場合は浸水あり(×)とした。た。なお、表皮材が吸音材の片面のみに備えられている場合は、表皮材が備えられている面を上面として前記蒸留水の水面に浮かべた。また、浸水試験後に、前記吸音率を測定し、次式(1)により浸水試験後の吸音率の変化率(%)を算出した。
【0078】
浸水試験後の吸音率の変化率(%)=浸水試験後の吸音率/浸水試験前の吸音率 ・・・(1)
〔実施例1〕
本実施例では、次のようにして吸音材を得た。
【0079】
<表皮材の調製>
メルトフローレート(MFR)が60g/10分のプロピレン単重合体を用い、直径0.6mmの紡糸口金を有するスパンボンド不織布成形機で、230℃にて常法のスパンボンド法による溶融紡糸を行い、紡糸により得られた繊維を補集面上に堆積させ、平均繊維径が16μm、目付が10g/m2の第1のスパンボンド不織布A-1を得た。
【0080】
次に、MFRが400g/10分のプロピレン単重合体を、押出機を用いて280℃にて溶融し、得られた溶融物を、紡糸口金から吐出するとともに、280℃の加熱空気を吹付ける常法のメルトブローン法によって平均繊維径3μmの繊維を前記第1のスパンボンド不織布A-1上に堆積させ、目付が5g/m2のメルトブローン不織布B-1を形成した。
【0081】
次に、前記メルトブローン不織布B-1の上に、前記第1のスパンボンド不織布A-1と同一にして繊維を堆積させ、平均繊維径が16μm、目付が10g/m2の第2のスパンボンド不織布A-2を形成した。
【0082】
次に、前記第1のスパンボンド不織布A-1、メルトブローン不織布B-1、第1のスパンボンド不織布A-2の積層体を、温度をエンボスロール145℃、ミラーロール150℃に設定した刻印面積率18%の熱エンボスロールにて一体化し、メルトブローン不織布の表裏両面に第1のスパンボンド不織布と第2のスパンボンド不織布とが積層された3層構造(以下、SMS構造という)不織布を得た。前記SMS構造不織布の目付は25g/m2であった。
【0083】
次に、MFRが60g/10分のプロピレン単独重合体を用い、直径1.3mmの紡糸口金を有するスパンボンド不織布成形機で、230℃にて常法のスパンボンド法による溶融紡糸を行い、紡糸により得られた繊維を前記SMS構造不織布の上に堆積させ、平均繊維径が35μm、目付が100g/m2の第3のスパンボンド不織布Cを形成した。次に、前記SMS構造不織布と第3のスパンボンド不織布Cとの積層体を、温度をエンボスロール155℃、ミラーロール160℃に設定した刻印面積率18%の熱エンボスロール(エンボス柄0.9mm角)にて一体化し、表皮材として、前記SMS構造不織布の上に、前記第3のスパンボンド不織布Cが積層された4層構造(以下、SSMS構造という)不織布からなる表皮材を得た。前記表皮材の構成を、PP-SSMSということがある。
【0084】
<中綿の調製>
ポリプロピレン系短繊維(宇部エクシモ株式会社製、商品名:UCファイバー、平均繊維径21μm、平均繊維長51mm)60質量部と、ポリエチレンテレフタレート(ポリエステル)系バインダー短繊維(ユニチカ株式会社製、商品名:メルティ4080、平均繊維径14μm、平均繊維長51mm)40質量部とを混合し、開繊機、カード機にてウェブを形成したのち、クロスレイヤー機にて多層積層し、約50mmのギャップ間距離に設定された熱風エアー処理機にて処理し、ポリプロピレン系短繊維とポリエチレンテレフタレート系短繊維とを含む約50mm厚のシート状不織布成形体からなる中綿を得た。
【0085】
<吸音材の調製>
次に、前記中綿を250mm(縦)×250mm(横)×49mm(厚み)にカットした。次に、カットした前記中綿の表裏両面に、前記表皮材を前記第3のスパンボンド不織布Cが最表面になるようにして配置し、前記中綿の周囲の該表皮材の周縁部を、超音波シール機(精電舎電子工業株式会社製、商品名:JII430SA)にて出力2.0V、圧力0.3MPa、速度5m/分の条件で融着して0.3mm幅の連続したシール部を形成し、前記中綿が前記表皮材に内包された吸音材を得た。前記シール部の外周の余った部分は裁断して削除した。
【0086】
次に、本実施例で得られた吸音材の物性及び性能を前述のようにして測定又は評価した。物性を表1に、性能のうち吸音率を表2に、浸水試験後の吸音率の変化率を表3に、それぞれ示す。
【0092】
〔実施例2〕
本実施例では、溶融紡糸の際のエアー量を調整することにより、第3のスパンボンド不織布C-1の平均繊維径を40μmとした以外は、実施例1と全く同一にして、吸音材を得た。次に、本実施例で得られた吸音材の物性及び性能を前述のようにして測定又は評価した。物性を表1に、性能のうち吸音率を表2に、浸水試験後の吸音率の変化率を表3に、それぞれ示す。
【0093】
〔実施例3〕
本実施例では、メルトブローン不織布に用いる樹脂として、MFRが900g/10分のプロピレン単重合体を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、吸音材を得た。次に、本実施例で得られた吸音材の物性及び性能を前述のようにして測定又は評価した。結果を表1に示す。
【0094】
〔実施例4〕
本実施例では、中綿を調製する際に、クロスレイヤー機における積層数を調整し、かつ、熱風エアー処理機のギャップ間距離を25mmとして、厚みが25mmの中綿を得た以外は、実施例1と全く同一にして、吸音材を得た。次に、本実施例で得られた吸音材の物性及び性能を前述のようにして測定又は評価した。物性を表1に、性能のうち吸音率を表2に、浸水試験後の吸音率の変化率を表3に、それぞれ示す。
【0095】
〔比較例1〕
本比較例では、ポリエチレンテレフタレート(ポリエステル)系短繊維(帝人フロンティア株式会社製、商品名:テトロン、平均繊維径30μm、平均繊維長51mm)60質量部と、実施例1と同一のポリエチレンテレフタレート(ポリエステル)系バインダー短繊維40質量部とを含むシート状不織布成形体からなる中綿の一方の表面のみに、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)不織布(東洋紡株式会社製、商品名:ハイム、繊維径15μm、目付120g/m2)からなる表皮材を、スプレー糊(3M社製、品番:77)により積層して、片面表皮付きの吸音材を得た。ポリエチレンテレフタレート系繊維からなる単層のスパンボンド不織布からなる前記表皮材の構成を、PET-SBということがある。
【0096】
次に、本比較例で得られた吸音材の物性及び性能を前述のようにして測定又は評価した。物性を表1に、性能のうち吸音率を表2に、浸水試験後の吸音率の変化率を表3に、それぞれ示す。
【0097】
〔比較例2〕
本比較例では、比較例1と同一の中綿の表裏両面に、市販のポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)不織布(ユニチカ株式会社製、商品名:ポリエステルタフタ、撥水加工、繊維径23μm、目付100g/m2)からなる表皮材を積層し、縫製加工によりシール部を形成して吸音材を得た。
【0098】
次に、本比較例で得られた吸音材の物性及び性能を前述のようにして測定又は評価した。物性を表1に、性能のうち吸音率を表2に、浸水試験後の吸音率の変化率を表3に、それぞれ示す。
【0099】
〔比較例3〕
本比較例では、繊維径20μm、目付100g/m2の市販のポリエチレンテレフタレート(ポリエステル)不織布(ユニチカ株式会社製、商品名:ポリエステルタフタ、撥水加工)を表皮材に用いた以外は、比較例2と同一にして吸音材を得た。
【0100】
次に、本比較例で得られた吸音材の物性及び性能を前述のようにして測定又は評価した。物性を表1に、性能のうち吸音率を表2に、浸水試験後の吸音率の変化率を表3に、それぞれ示す。
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
表1~3から、少なくともポリエステル系樹脂からなる繊維を含む中綿が、ポリプロピレン系樹脂からなる繊維を含む不織布からなる表皮材に内包されている実施例1~4の吸音材によれば、水分が多い環境下でも吸音率が低下することがないことが明らかである。これに対し、表皮材がポリエステル系樹脂からなる繊維を含む不織布からなる比較例1~3の吸音材では、水分が多い環境下では吸音率が低下することが明らかである。
【符号の説明】
【0105】
1…吸音材、 2…中綿、 3…表皮材、 4…シール部、 11…吸音パネル、 12…遮蔽板、 13…側壁、 14…フレーム、 15…保護パネル、 16…支持部。