(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-14
(45)【発行日】2025-02-25
(54)【発明の名称】一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物およびそれを用いた塗料
(51)【国際特許分類】
C08G 18/12 20060101AFI20250217BHJP
C08G 18/30 20060101ALI20250217BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20250217BHJP
C08G 18/44 20060101ALI20250217BHJP
C08G 18/62 20060101ALI20250217BHJP
C08G 18/65 20060101ALI20250217BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20250217BHJP
C09D 175/12 20060101ALI20250217BHJP
【FI】
C08G18/12
C08G18/30 070
C08G18/32 096
C08G18/44
C08G18/62 016
C08G18/65 005
C09D175/04
C09D175/12
(21)【出願番号】P 2023186682
(22)【出願日】2023-10-31
【審査請求日】2023-10-31
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2023/010798
(32)【優先日】2023-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】WO
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502371598
【氏名又は名称】KFケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114351
【氏名又は名称】吉田 和子
(72)【発明者】
【氏名】石野 庄太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠二郎
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-099597(JP,A)
【文献】特開2017-066278(JP,A)
【文献】特開2017-052908(JP,A)
【文献】国際公開第2016/093068(WO,A1)
【文献】特開2007-224202(JP,A)
【文献】特開2002-020425(JP,A)
【文献】特開2021-098774(JP,A)
【文献】特開2021-098775(JP,A)
【文献】特開2020-094085(JP,A)
【文献】特開2016-113551(JP,A)
【文献】特開2016-000785(JP,A)
【文献】特開2013-116993(JP,A)
【文献】特許第7385322(JP,B1)
【文献】国際公開第2024/194971(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
C09D 1/00-201/10
C09J 1/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンプレポリマーおよびオキサゾリジン
化合物からなる湿気硬化性樹脂組成物において、ウレタンプレポリマーが
、ポリカーボネートポリオール(PC)
および水酸基価が60~150mgKOH/gであり、ガラス転移温度Tgが0~60℃であるアクリルポリオール(AC)からなるポリオールとポリイソシアネート
とから合成される
末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーであり、ポリオール中のPCとACの合計が80質量%以上である、一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオールおよび水酸基含有オキサゾリジンからなるウレタンプレポリマーが用いられた請求項1記載の一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
ポリイソシアネートが脂肪族ポリイソシアネートである請求項1記載の一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
ウレタンプレポリマーに、水酸基含有オキサゾリジンをポリイソシアネートと予め反応させたオキサゾリジン化合物を配合した請求項1乃至3のいずれかの請求項に記載の一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
PC/ACの質量比が
、60/40~90/10
である請求項1または2記載の一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
組成物中のイソシアネート基(NCO)とオキサゾリジン基(OX)の当量比がNCO/OX=1.5~3.0である請求項1または2記載の一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1または2記載の一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物および芳香族系溶剤および/またはエーテル系溶剤とを含む塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物およびそれを用いた塗料に関する。さらに詳しくは、耐候性に優れた一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物およびそれを用いた塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
一液型湿気硬化性ウレタン樹脂は、基材との密着性、物性の調整のし易さ、取扱いのし易さなどにより、接着剤、塗料、コーティング材、シーラントなどに利用されている。ここで、特に塗料、コーティング材など日光に直接さらされる場合には、ウレタン樹脂には高いレベルの耐候性が要求される。その一方で、塗料、コーティング材などでは、耐衝撃性などの外的な力に対する耐久性も要求されている。
【0003】
耐候性に優れた一液型湿気硬化性ウレタン樹脂としては、特許文献1にアクリルポリオールおよび水酸基含有オキサゾリジンからなる樹脂とウレタンプレポリマーとを含有するものが提案されている。これは、アクリルポリオール、ポリイソシアネートおよび水酸基含有オキサゾリジンからなる樹脂であり、ある程度の耐候性は発現することは期待できる。しかしながら、塗料、コーティング材などに使用される場合、それに用いられる樹脂には、さらなる高いレベルの耐候性が要求されており、これらの構成からなるウレタン樹脂では耐候性が不十分である。
【0004】
一方で、高耐候性の塗料組成物として、二液硬化型のものであれば、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオールおよびポリイソシアネートからなるウレタン樹脂が広く知られている(特許文献2等)。
【0005】
しかしながら、これらの組成では耐候性と耐衝撃性を両立させることは難しく、また一液型の湿気硬化性ウレタン樹脂の組成物を示唆するものでもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-20425号公報
【文献】特許第7051971号公報
【文献】特開2021-98774号公報
【文献】特開2021-98775号公報
【文献】特開2020-94085号公報
【文献】特開2016-113551号公報
【文献】特開2016-785号公報
【文献】特開2013-116993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、一液としての貯蔵安定性と硬化性に優れ、硬化後においては高い耐候性と耐衝撃性に優れる一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物およびそれを用いた塗料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、ウレタンプレポリマーおよびオキサゾリジン化合物からなる湿気硬化性樹脂組成物において、ウレタンプレポリマーが、ポリカーボネートポリオール(PC)および水酸基価が60~150mgKOH/gであり、ガラス転移温度Tgが0~60℃であるアクリルポリオール(AC)からなるポリオールとポリイソシアネートとから合成される末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーであり、ポリオール中のPCとACの合計が80質量%以上である、一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物、およびこの一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物と芳香族系溶剤および/またはエーテル系溶剤とを含む塗料によって達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るウレタン樹脂組成物は、一液としての貯蔵安定性にすぐれ、湿気硬化性を有することから大気中の湿気により硬化して硬化物を形成するといった特性があり、またこの一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物の硬化物は、耐候性ならびに耐衝撃性が高いといったすぐれた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ウレタンプレポリマーとしては、ポリオールとポリイソシアネートより合成される末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーにおいて、ポリオールとしてポリカーボネートポリオール(PC)およびアクリルポリオール(AC)からなるものが用いられる。
【0011】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えばエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメチロールなどの脂肪族多価アルコールの少なくとも1種と、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのジアルキレンカーボネートまたはジアルキルカーボネートとを反応させて得られるものが挙げられる。ここで、アルキレン基またはジアルキル基の炭素数は2~10である。かかるポリカーボネートポリオールとしては、好ましくは数平均分子量Mnが500~3000ものが用いられ、市販品、例えばUBE製品ETERNACOLL UH-50、UH-100、UH-200、UH-300、PH-50、PH-100、PH-200、PH-300、UC-100、UM-90U、東ソー製品ニッポラン981、980R、982R、965,963、964、968などをそのまま用いることができる。
【0012】
水酸基価が60~150mgKOH/gのアクリルポリオールとしては、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーの単独重合体や共重合体または水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに重合性不飽和結合を有する他のモノマーを共重合させた、所定の水酸基値を有するものなどが例示される。一液型湿気硬化性ウレタン樹脂に用いられるアクリルポリオール中の水酸基としては、1分子中に平均で2~8個あることが好ましい。
【0013】
水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリル酸エステル、グリセリンの(メタ)アクリル酸モノエステル、トリメチロールプロパンの(メタ)アクリル酸モノエステルなどのトリオールの(メタ)アクリル酸モノエステルなどが挙げられる。これらはいずれかを単独で用いてもよく、2種以上併用することもできる。
【0014】
重合性不飽和結合を有する他のモノマーを併用することもでき、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシブチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミドなどの不飽和アミド、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリルなどが挙げられる。これらは1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。これらの中でも、耐候性の点で、好ましくは(メタ)アクリル酸アルキルおよび/または(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルなどの(メタ)アクリル酸エステルが用いられる。
【0015】
ポリイソシアネートとしては、脂肪族、芳香族または脂環式ポリイシソアネートが用いられる。例えば、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、水素添加MDI、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水素添加XDI、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、1,8-ジイソシアナトメチルオクタン、リジンエステルトリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネートおよびこれらの変性体(ビユレット、アロファネート、イソシアヌレート体)、トリメチロールプロパン付加体などの誘導体等が、好ましくは耐候性の観点からイソホロンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイシソアネートおよびその誘導体が挙げられる。
【0016】
ポリオールとしては、硬化物の耐候性を損なわない範囲、具体的には全ポリオール中20質量%未満の割合で、物性調整のために他のポリオール使用することもできる。ここで、他のポリオールを20質量%以上の割合で用いると、耐候性と耐衝撃性の両立が難しくなってしまうことがあり好ましくない。かかるその他のポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,5-ヘキサントリオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、4,4’-ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4’-ジヒドロキシフェニルメタン、ペンタエリスリトールプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオールなど、好ましくはポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
【0017】
ウレタンプレポリマーの合成に際しては、水酸基含有オキサゾリジンを残存するイソシアネート基に対し0.5当量以下の割合で用いることもできる。水酸基含有オキサゾリジンとしては、2-イソプロピル-3-(2-ヒドロキシエチル)オキサゾリジン、2-(1-メチルブチル)-3-(2-ヒドロキシエチル)オキサゾリジン、N-ヒドロキシエチル-2-フェニルオキサゾリジン、2-(p-メトキシフェニル)-3-(2-ヒドロキシエチル)オキサゾリジンなどのヒドロキシアルキルオキサゾリジンなどが、好ましくは貯蔵安定性、硬化性および硬化後の物性の点から、2-イソプロピル-3-(2-ヒドロキシエチル)オキサゾリジンが用いられる。これらのヒドロキシアルキルオキサゾリジンは、相当するアルデヒドまたはケトンとヒドロキシアルキルアミンとから公知の方法により合成される。
【0018】
アクリルポリオールとしては、水酸基価が60~150mgKOH/gであり、ガラス転移温度Tgが0~60℃であるものが用いられる。アクリルポリオールの水酸基価はウレタンプレポリマーの粘度に影響を与え、その結果塗料の作業性にも影響を与えるものであり、水酸基価が60mgKOH/g未満になると塗膜としての強度および耐候性が低下する傾向がみられる。一方、水酸基価が150mgKOH/gを超えると、耐衝撃性が悪化する傾向にある。また、プレポリマーの粘度が高くなってしまい、プレポリマー製造上も問題になる。そしてガラス転移温度Tgが0℃未満になると耐衝撃性は優れるものの、耐候性が低下する場合があり、一方60℃を超えると耐候性は優れるものの、耐衝撃性が低下する場合がある。
【0019】
ウレタンプレポリマーを構成するポリカーボネートポリオール(PC)とアクリルポリオール(AC)の質量比PC/ACは、60/40~90/10でPCの量がACの量を上回る。これらの比が外れると、耐候性と耐衝撃性の両立が難しくなる場合がある。
【0020】
また、ポリオール中のPCおよびACの合計量が80質量%以上であることが、耐候性と耐衝撃性に優れた樹脂を提供することを可能とする。
【0021】
ここで、特許文献3~8には、湿気硬化型のウレタン材料において、NCO基含有プレポリマー合成用のポリオールとして、PCとACを併用することが開示されている。しかしながら、いずれの文献も水酸基価が60~150mgKOH/gのアクリルポリオールを用いることにより、耐候性が向上することを教示乃至示唆する記載はない。
【0022】
ウレタンプレポリマーには、水酸基含有オキサゾリジンをポリイソシアネートと予め反応させたオキサゾリジン化合物、好ましくはイソシアネート基(NCO)に対して、水酸基含有オキサゾリジン(OH)をNCO/OH=1/0.1~1/1の比で反応させた化合物を配合することもできる。ここで、ポリイソシアネートとしては、好ましくは脂肪族ポリイソシアネートが用いられる。
【0023】
ウレタン樹脂組成物中のイソシアネート基(NCO)とオキサゾリジン基(OX)の当量比は、好ましくはNCO/OX=1.0~3.0である。NCO/OX当量比が1.0未満ではオキサゾリジンがイソシアネート基に対し過剰になるため、硬化時に未反応のアミノ基が残ることとなり、耐候性を悪化させる原因になる。一方、NCO/OX当量比が3.0を超えると、硬化剤であるオキサゾリジン基がイソシアネート基に比べ大幅に少なくなるため、硬化性が悪化するようになる。
【0024】
以上の成分よりなる湿気硬化性ウレタン樹脂組成物は、芳香族系溶剤および/またはエーテル系溶剤に、塗膜厚確保、作業性の観点から、固形分濃度が40~80質量%となるように溶解させて塗料を形成させる。
【0025】
溶剤としては、例えばトルエン、キシレン、ソルベントナフサ100、ソルベントナフサ150などの芳香族系炭化水素類、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエーテル類が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0026】
さらにその他の添加剤として、老化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、チクソ剤、たれ止め剤、艶消し材、充填剤などが適宜用いられる。ここで、チクソ剤はとしては、好ましくは微粉シリカ、アマイド系チクソ剤が挙げられる。
【実施例】
【0027】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0028】
実施例1
(1) 攪拌機、温度計、還流冷却装置および窒素導入管を備えた4口フラスコに、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテートを66.7g仕込み、窒素置換しながら92℃に加熱昇温した。次いで、シクロへキシルメタアクリレート59.0g、n-ブチルアクリレート14.5g、2-ヒドロキシエチルメタクリレート14.0g、2-ヒドロキシエチルアクリレート12.5gおよび第3ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート2.9gの混合液を、4時間かけて供給した。供給終了1時間後および2時間後に、第3ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートをそれぞれ0.2g添加し、さらに2時間反応させ、アクリルポリオールAを得た。
(2) 攪拌羽根を有する容量500mlのセパラブルフラスコに、乾燥したポリカーボネートジオール(ETERNACOLL PH-200、水酸基価 56mgKOH/g)35.0g、ポリカーボネートジオール(ニッポランPC-982R、水酸基価 56mgKOH/g)35.0gおよびアクリルポリオールA(数平均分子量Mn1830、水酸基価 120mgKOH/g、Tg 28℃、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート60質量%溶液)50.0g(30.0g相当)を芳香族系溶剤(新日本化学製品R100)89.0gに溶解した後、イソホロンジイソシアネート 36.4gおよびジブチル錫ジラウレート 0.02gを添加し、室温で1時間攪拌した後、2-イソプロピル-3-(2-ヒドロキシエチル)オキサゾリジン 5.0gを添加し、窒素気流下、80℃まで徐々に昇温し、80℃で2時間反応させ、ウレタンプレポリマーA 250.4gを得た。
【0029】
(3) ウレタンプレポリマーA 250.4g
レベリング剤(ビックケミー・ジャパン製品 0.2g
BYK-UV3576)
紫外線吸収剤(チバガイギー社製品UV1164) 5g
光安定剤(チバガイギー社製品HALS292) 5g
硬化剤 13.9g
[2-イソプロピル-3-(2-ヒドロキシエチル)
オキサゾリジン2モルとヘキサメチレン
ジイソシアネート1モルとの付加体;
分子量486.68]
オクチル酸 0.03g
以上の混合物を十分に攪拌し、透明な一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物A(E型粘度計 100rpmにおける25℃での粘度 273mPa・s)を得た。なお、イソシアネート基/オキサゾリジン基(NCO/OX)の当量比は、1.84である。
【0030】
(4) 得られた一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物Aを、アクリルポリオール(東亜合成製品アルフォンUH2041) 200.0g、芳香族系溶剤(新日本化学製品R100)200.0g、イソホロンジイソシアネート 94.1gおよびジブチル錫ジラウレート 0.3gの反応物に3-アミノプロピルトリエトキシシラン3.0gを反応して得られたウレタン系プライマーを0.15mmの厚さで塗布したニチハ製窯業系サイディングボードに、0.3mmの厚さで塗布し、23(±2)℃、50(±10)%RHの環境下で2週間硬化、養生し、サイディングボード上に塗料硬化物を得た。得られた塗料硬化物を用いて、耐候性試験および耐衝撃性試験を行った。
〔耐候性試験〕
試験機:岩崎電気(株)製アイスーパーUVテスター
試験条件:紫外線照度:150±8mW/cm2
温度:63℃
波長:295~450nm
サイクル:63℃±3℃、50%RH、4時間照射⇒4時間結露
試験結果評価:1600時間変化なしをA、1200時間変化なしをB、800時間変化なしを
C、800時間で白化あるいはクラックが発生をDと評価
〔耐衝撃性試験〕
試験方法:JIS K5600-5-3(1999年)塗料一般試験方法、第5部:塗膜の機械的性質、第3節:耐おもり落下性における、デュポン式に準拠
50mm×50mmにカットした厚さ2mmのアクリル樹脂上に、塗料を0.3mmの厚さになるように塗布し、23(±2)℃、50(±10)%RHの環境下で2週間硬化、養生させた。次いで、塗布面が上となるように半径6.35mmの撃ち型と受け台とを取り付け、300gの重りを40cm、30cmまたは20cmの高さより落下させ、塗膜の外観を観察
試験結果評価:高さ40cmで塗膜にクラックが発生しないものをA、同30cmをB、同20cmをC、高さ20cmで塗膜にクラックが発生するものをDと評価
【0031】
実施例2
実施例1において、(2)における2種類のポリカーボネートポリオール量をいずれも30gに、アクリルポリオールA量を66.7g(40g相当)に、芳香族系溶剤量を85.3gに、またイソホロンジイソシアネート量を38.8gに、さらに(3)において硬化剤量を16gにそれぞれ変更して、一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物(NCO/OX当量比 1.78、E型粘度計 100rpmにおける25℃での粘度 310mPa・s)を得た。
【0032】
実施例3
実施例1において、(2)における2種類のポリカーボネートポリオール量をいずれも40gに、アクリルポリオールA量を33.3g(20.0g相当)に、芳香族系溶剤量を92.7gに、またイソホロンジイソシアネート量を33.9gに、さらに(3)における硬化剤量を11.6gにそれぞれ変更して、一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物(NCO/OX当量比 1.92、E型粘度計 100rpmにおける25℃での粘度 248mPa・s)を得た。
【0033】
実施例4
実施例1において、(2)における2種類のポリカーボネートポリオール量をいずれも45gに、アクリルポリオールA量を16.7g(10.0g相当)に、芳香族系溶剤量を87.3gに、またイソホロンジイソシアネート量を31.5gに、さらに(3)における硬化剤量を9.5gにそれぞれ変更して、一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物(NCO/OX当量比 2.01、E型粘度計 100rpmにおける25℃での粘度 218mPa・s)を得た。
【0034】
実施例5
実施例1において、(2)における2種類のポリカーボネートポリオール量をそれぞれ25gに、アクリルポリオールA量を83.3g(50.0g相当)に、芳香族系溶剤量を83.3gに、またイソホロンジイソシアネート量を41.4gに、さらに(3)における硬化剤量を18gにそれぞれ変更して、一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物(NCO/OX当量比 1.76、E型粘度計 100rpmにおける25℃での粘度 417mPa・s)を得た。
【0035】
実施例6
実施例1において、(2)における2種類のポリカーボネートポリオール量をそれぞれ47.5gに、アクリルポリオールA量を8.3g(5.0g相当)に、芳香族系溶剤量を98.7gに、またイソホロンジイソシアネート量を30.0gに、さらに(3)における硬化剤量を8.3gにそれぞれ変更して、一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物(NCO/OX当量比 2.04、E型粘度計 100rpmにおける25℃での粘度 203mPa・s)を得た。
【0036】
実施例7
実施例1(3)における硬化剤量を7.0gに変更して、一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物(NCO/OX当量比 2.71、E型粘度計 100rpmにおける25℃での粘度 268mPa・s)を得た。
【0037】
実施例8
実施例1(3)における硬化剤量を30.0gに変更して、一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物(NCO/OX当量比 1.05、E型粘度計 100rpmにおける25℃での粘度 285mPa・s)を得た。
【0038】
実施例9
実施例1において、(1)におけるシクロへキシルメタアクリレート量を55.0g、n-ブチルアクリレート量を12.0g、2-ヒドロキシエチルメタクリレート量を18.0gおよび2-ヒドロキシエチルアクリレート量を15.0gにそれぞれ変更してアクリルポリオールB(数平均分子量Mn1860、水酸基価150mgKOH/g、Tg 30℃、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート60重量%溶液)を得、(2)におけるアクリルポリオールAを同量のアクリルポリオールBに、芳香族系溶剤量を92.0gに、またイソホロンジイソシアネート量を39.9gに、さらに(3)における硬化剤量を16.8gにそれぞれ変更して、一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物(NCO/OX当量比 1.78、E型粘度計 100rpmにおける25℃での粘度 373mPa・s)を得た。
【0039】
実施例10
実施例1において、(1)におけるシクロへキシルメタアクリレート量を67.0g、n-ブチルアクリレート量を20.0g、2-ヒドロキシエチルメタクリレート量を6.6gおよび2-ヒドロキシエチルアクリレート量を6.4gにそれぞれ変更してアクリルポリオールC(数平均分子量Mn1840、水酸基価60mgKOH/g、Tg 26℃、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート60重量%溶液)を得、(2)におけるアクリルポリオールAを同量のアクリルポリオールCに、芳香族系溶剤量を81.0gに、またイソホロンジイソシアネート量を29.3gに、さらに(3)における硬化剤量を10.1gにそれぞれ変更して、一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物(NCO/OX当量比 1.79、E型粘度計 100rpmにおける25℃での粘度 188mPa・s)を得た。
【0040】
実施例11
実施例1において、(1)におけるシクロへキシルメタアクリレート量を38.5gおよびn-ブチルアクリレート量を35gにそれぞれ変更してアクリルポリオールD(数平均分子量Mn1810、水酸基価120mgKOH/g、Tg 60℃、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート60重量%溶液)を得、(2)におけるアクリルポリオールAを同量のアクリルポリオールDに、イソホロンジイソシアネート量を36.3gにそれぞれ変更して、一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物(NCO/OX当量比 1.83、E型粘度計 100rpmにおける25℃での粘度 348mPa・s)を得た。
【0041】
実施例12
実施例1において、(1)におけるシクロへキシルメタアクリレート量を47.5gおよびn-ブチルアクリレート量を26gにそれぞれ変更してアクリルポリオールE(数平均分子量Mn1820、水酸基価120KOHmg/g、Tg 12℃、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート60重量%溶液)を得、(2)におけるアクリルポリオールAを同量のアクリルポリオールEに、イソホロンジイソシアネート量を36.4gにそれぞれ変更して、一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物(NCO/OX当量比 1.84、E型粘度計 100rpmにおける25℃での粘度 223mPa・s)を得た。
【0042】
比較例1
実施例1において、(2)におけるアクリルポリオールAを同量のアクリルポリオールF(東亜合成製品アルフォンUH2041、水酸基価120mgKOH/g、Tg -55℃、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート60重量%溶液)に、イソホロンジイソシアネート量を36.3gにそれぞれ変更して、一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物(NCO/OX当量比 1.83、E型粘度計 100rpmにおける25℃での粘度 262mPa・s)を得た。
【0043】
比較例2
実施例1において、(2)におけるポリカーボネートポリオールを全量ポリテトラメチレングルコール(三菱ケミカル製品PTMG 2000 水酸基価値56.0mgKOH/g)70gに変更し、2-イソプロピル-3-(2-ヒドロキシエチル)オキサゾリジンを使用せず、イソホロンジイソシアネート量を29.8gに変更し、(3)における硬化剤量を17.8gに変更し、一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物(E型粘度計 100rpmにおける25℃での粘度 288mPa・s)を得た。なお、イソシアネート基/オキサゾリジン基(NCO/OX)の当量比は、1.83である。
【0044】
比較例3
実施例1において、(2)における2種類のポリカーボネートジオールを使用せず、アクリルポリオールAをアクリルポリオールF(アルフォンUH2041)100gに、芳香族系溶剤量を38.4g、イソホロンジイソシアネート量を47.0gにそれぞれ変更し、さらにプロピレングリコールブチルエーテルアセテート66.6gを加え、また(3)における硬化剤量を16.0gに変更し、一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物(NCO/OX当量比 1.83、E型粘度計 100rpmにおける25℃での粘度 248mPa・s)を得た。
【0045】
比較例4
実施例1(2)おいて、アクリルポリオールAを同量のアクリルポリオールG(東亜合成製品アルフォンUH2000、水酸基価20mgKOH/g、Tg -55℃、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート60重量%溶液)50.0g(30g相当)に、またイソホロンジイソシアネート量を24.6gにそれぞれ変更して、湿気硬化性樹脂組成物(NCO/Ox当量比 1.86、E型粘度計 100rpmにおける25℃での粘度 248mPa・S)を得た。
【0046】
以上の各実施例および比較例で得られた結果は、次の表に示される。
表
例 耐候性 耐衝撃性
実施例1 A A
〃 2 A B
〃 3 A A
〃 4 B A
〃 5 A C
〃 6 B A
〃 7 B A
〃 8 A A
〃 9 A B
〃 10 B A
〃 11 A A
〃 12 B A
比較例1 C A
〃 2 C B
〃 3 B C
〃 4 D A
【0047】
本発明に係る一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物は、大気中の湿気により硬化させた硬化物が耐候性および耐衝撃性にすぐれていることから、シーリング剤、接着剤、塗料、トップコート材などとして有効に用いられる。
【要約】
【課題】 一液としての貯蔵安定性と硬化性に優れ、硬化後においては高い耐候性と耐衝撃性に優れる一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物およびそれを用いた塗料を提供する。
【解決手段】 ウレタンプレポリマーおよびオキサゾリジンからなる湿気硬化性樹脂組成物において、ウレタンプレポリマーがポリカーボネートポリオール(PC)と水酸基価が60~150mgKOH/gのアクリルポリオール(AC)からなるポリオールとポリイソシアネートから合成される一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物、およびこの一液型湿気硬化性ウレタン樹脂組成物と芳香族系溶剤および/またはエーテル系溶剤とを含む塗料。
【選択図】 なし