(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-14
(45)【発行日】2025-02-25
(54)【発明の名称】泡消火設備
(51)【国際特許分類】
A62C 35/68 20060101AFI20250217BHJP
【FI】
A62C35/68
(21)【出願番号】P 2021036958
(22)【出願日】2021-03-09
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】外村 賢昭
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-327619(JP,A)
【文献】特開2006-255101(JP,A)
【文献】特開2012-095897(JP,A)
【文献】特開2017-086175(JP,A)
【文献】特開平08-071173(JP,A)
【文献】特開2017-223354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 35/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に泡ヘッドが設けられた主配管を開閉する一斉開放弁に分岐接続された感知配管に手動起動装置が設けられ、前記手動起動装置の開放操作で前記感知配管内を減圧させることによって前記一斉開放弁を開放させて前記泡ヘッドから泡消火剤を放出させる泡消火設備であって、
前記手動起動装置は、
防護区画の所定の設置面に配置され、前記感知配管を開閉する起動弁と、
前記起動弁を開閉操作する操作ハンドルと、
を備え、
前記起動弁は、
前記設置面に取付固定するための取付台座
と、
流入口
又は流出口の少なくとも一方に、配管側のねじ部をねじ込み固定するためのねじ穴が形成された配管接続部材を回転自在に軸支する回転接続構造と、
を備え、
前記操作ハンドルは、前記起動弁の弁軸よりも前記設置面から離隔する操作部を有することを特徴とする泡消火設備。
【請求項2】
請求項1記載の泡消火設備に於いて、
前記操作ハンドルは、前記起動弁の側方に取り出された弁軸にハンドル部材の一端が固定され、前記ハンドル部材の他端に扁平な操作ノブが形成されたことを特徴とする泡消火設備。
【請求項3】
請求項1記載の泡消火設備に於いて、
前記回転接続構造は、
前記流入口及び前記流出口の各々に形成された軸穴と、
前記軸穴に回転自在に挿入された前記配管接続部材の軸部と、
前記軸穴に回転自在に挿入された前記軸部を抜け止めする抜け止め構造と、
前記軸穴と前記軸部との間の隙間を封止する封止構造と、
を備えたことを特徴とする泡消火設備。
【請求項4】
請求項3記載の泡消火設備に於いて、
前記軸穴は、第1内径の第1軸穴と前記第1内径より小さい第2内径の第2軸穴を有する段付き軸穴であり、前記第1軸穴の所定位置に環状溝が形成されており、
前記軸部は、前記第1内径に対応した第1外径の第1軸部と前記第2内径に対応した第2外径の第2軸部を有する段付き軸部であり、前記軸穴の前記環状溝に対応して前記第2軸部の所定位置に環状突起が形成されており、
前記抜け止め構造は、前記環状溝と前記環状突起との間に抜け止めリングが配置されたことを特徴とする泡消火設備。
【請求項5】
請求項3記載の泡消火設備に於いて、
前記封止構造は、
前記軸穴の内周又は前記軸部の外周に形成された環状封止溝と、
前記環状封止溝に組み込まれた軟質材の封止リングと、
を備えたことを特徴とする泡消火設備。
【請求項6】
請求項3記載の泡消火設備に於いて、
前記手動起動装置は、更に、前記操作ハンドルを備えた前記起動弁を覆う着脱自在なカバーを備え、
前記カバーは、前記設置面側の面が開口された開口端面であり、配管側の面にU形に切欠された嵌合部が形成され、前記開口端面が前記設置面に密着した状態に装着されることを特徴とする泡消火設備。
【請求項7】
請求項1記載の泡消火設備に於いて、
前記感知配管のうち少なくとも一部が可撓性を有する配管であることを特徴である泡消火設備。
【請求項8】
請求項1記載の泡消火設備に於いて、
前記感知配管は、前記起動弁の流入口に接続される部分が配管の長手方向を軸に回転自在であることを特徴とする泡消火設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災が発生した場合に泡ヘッドから泡消火剤を放出させて消火を行う泡消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、駐車場、工場、ビルなどの建物や施設には、消火設備として、油火災や化学薬 品などによる火災が発生した場合に、水と泡消火原液(泡消火薬剤)を一定比率で混合して生成した泡消火剤を泡ヘッドから放出させる泡消火設備が設置されている(特許文献1,2)。
【0003】
また、泡消火設備は、貯水槽などの水源の水を圧送する送水ポンプ(加圧送水装置)からの主配管に混合器が設けられ、混合器によって源液タンクから供給された泡消火剤原液と水源からの水を一定比率で混合して泡消火剤を生成し、一斉開放弁を介して主配管の先端側に設けられた泡ヘッドからの泡消火剤を放出するようにしている。
【0004】
また、一斉開放弁には感知配管が分岐接続され、感知配管には火災を感知した場合に開放して水を放出する火災感知ヘッド(閉鎖型スプリンクラーヘッド)が設けられており、火災による熱気流を受けて火災感知ヘッドが開放すると、感知配管が減圧されて一斉開放弁が自動的に開放され、主配管の減圧に伴う送水ポンプの起動で供給される泡消火剤が泡ヘッドから放出される。
【0005】
さらに、感知配管の先端側には手動起動装置が設けられており、火災が発生した場合に、火災を発見した人などが手動起動装置を開放操作させることによって感知配管内が減圧され、一斉開放弁が自動的に開放されて泡ヘッドから泡消火剤が放出される。
【0006】
図8は駐車場に設置される従来の手動起動装置の設置例を示した説明図であり、
図8(A)に正面図を示し、
図8(B)に側面図を示している。また、
図9は従来の手動起動装置の平面図を示している。
【0007】
以下の図面の説明では、
図8及び
図9に示すX-Y-Z方向が互いに直交する方向であり、具体的には、Z方向が上下方向であって、X方向が左右方向であり、Y方向が前後方向(奥行方向)となる。Z方向における+Zは上となり、-Zは下となる。また、X方向における+Xは右となり、-Xは左となる。さらに、Y方向における+Yは後となり、-Yは前となる。この点は本発明の実施形態となる
図2~
図7においても同様となる。
【0008】
図8に示すように、従来の手動起動装置100は、操作ハンドル104を備えた起動弁102と着脱自在なカバー105で構成され、駐車場に面した建物の壁面を設置面101として設置されている。手動起動装置100の起動弁102の一端には、一斉開放弁からの感知配管106が接続され、他端には排水管108が接続されている。起動弁102は操作レバー104により開閉される例えばボール弁であり、起動弁102の弁軸が右側(+X側)に取り出され、そこに操作レバー104が連結されている。また、カバー105は設置面101から浮いた状態で起動弁102及び操作ハンドル104を覆って着脱自在に装着されている。
【0009】
図9に示す手動起動装置100の設置面101からカバー105までの間隔Lは、感知配管106を設置面101に沿って固定支持するサドル110により決まるものであり、起動弁102の操作レバー104の下側に指を入れて操作するに十分な間隔となるように離している。
【0010】
また、感知配管106に対する起動弁102の接続は、サドル110及びアンカー112により設置面101に固定支持された感知配管106の先端のねじ部に対し、起動弁102を回転して流入側のねじ穴をねじ込み固定するようにしており、そのため設置面101との間に起動弁102を回転させるに十分な隙間を確保するように離している。このため設置面101からカバー105までの間隔Lは、数センチメートル以上、例えば7センチメートル程度を必要としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2012-095897号公報
【文献】特開2017-086175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、このような従来の泡消火設備にあっては、駐車場に設置した場合に手動起動装置が車両の通行又は出入する駐車場内の空間に突出することとなり、手動起動装置に車両が接触して破損することで、泡消火剤を誤放出するという事故が発生している。
【0013】
本発明は、手動起動装置を駐車場に設置した場合の車両の接触などに起因した破損や誤作動を確実に防止可能とする泡消火設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(泡消火設備)
本発明は、先端側に泡ヘッドが設けられた主配管を開閉する一斉開放弁に分岐接続された感知配管に手動起動装置が設けられ、手動起動装置の開放操作で感知配管内を減圧させることによって一斉開放弁を開放させて泡ヘッドから泡消火剤を放出させる泡消火設備であって、
手動起動装置は、
防護区画の所定の設置面に配置され、感知配管を開閉する起動弁と、
起動弁を開閉操作する操作ハンドルと、
を備え、
起動弁は、
設置面に取付固定するための取付台座と、
流入口又は流出口の少なくとも一方に、配管側のねじ部をねじ込み固定するためのねじ穴が形成された配管接続部材を回転自在に軸支する回転接続構造と、
を備え、
操作ハンドルは、起動弁の弁軸よりも設置面から離隔する操作部を有することを特徴とする泡消火設備。
【0015】
(操作ハンドル)
操作ハンドルは、起動弁の側方に取り出された弁軸にハンドル部材の一端が固定され、ハンドル部材の他端に扁平な操作ノブが形成される。
【0016】
(回転接続構造)
回転接続構造は、
流入口及び流出口の各々に形成された軸穴と、
軸穴に回転自在に挿入された配管接続部材の軸部と、
軸穴に回転自在に挿入された軸部を抜け止めする抜け止め構造と、
軸穴と軸部との間の隙間を封止する封止構造と、
を備える。
【0017】
(回転接続構造の詳細)
軸穴は、第1内径の第1軸穴と第1内径より小さい第2内径の第2軸穴を有する段付き軸穴であり、第1軸穴の所定位置に環状溝が形成されており、
軸部は、第1内径に対応した第1外径の第1軸部と第2内径に対応した第2外径の第2軸部を有する段付き軸部であり、軸穴の環状溝に対応して第2軸部の所定位置に環状突起が形成されており、
抜け止め構造は、環状溝と環状突起との間に抜け止めリングが配置される。
【0018】
(封止構造)
封止構造は、
軸穴の内周又は軸部の外周に形成された環状封止溝と、
環状封止溝に組み込まれた軟質材の封止リングと、
を備える。
【0019】
(カバー)
手動起動装置は、更に、起動弁及び操作ハンドルを覆う着脱自在なカバーを備え、
カバーは、設置面側の面が開放された開放端面であり、配管側の面にU形に切欠された嵌合部が形成され、開放端面が設置面に密着した状態に装着される。
【0020】
(可撓性配管)
感知配管のうち少なくとも一部が可撓性を有する配管である。
【0021】
(配管の流入口が回転自在)
感知配管は、起動弁の流入口に接続される部分が配管の長手方向を軸に回転自在である。
【発明の効果】
【0022】
(泡消火設備の効果)
本発明の泡消火設備によれば、手動起動装置の起動弁には取付台座が一体に形成されており、駐車場の壁面などの設置面に取付台座が密着した状態で固定されることで、手動起動装置の駐車場内の空間に対する突出が低減され、駐車場を利用する車両の接触により破損したり誤作動するリスクを減じることができる。
【0023】
また、手動起動装置の起動弁が壁面に密着状態で固定されることから、従来の配管側を壁面に支持固定していた場合に比べ、起動弁がぐらつくことなく確実に固定され、操作ハンドルを手前に引いて開放する操作が行い易くなる。
【0024】
また、手動起動装置の起動弁が壁面に密着状態で固定されることで、操作ハンドルと壁面との間の隙間が狭くなるが、起動弁の弁軸よりも設置面から離隔する操作部、例えば、扁平な操作ノブが設けられているため、操作者は容易に操作ノブの下に指を入れて操作ハンドルを手前方向に引き出して回す開放操作ができ、手動起動装置の起動弁を壁面に密着させていても操作性が損なわれることはない。
【0025】
また、手動起動装置の起動弁を取付台座により壁面に固定した状態で起動弁の流入口に配管端部のねじ部をねじ込み固定することになるが、起動弁の流入口に、接続用のねじ穴を形成した配管接続部材を回転自在に軸支しているため、壁面に固定した状態で起動弁の配管接続部材を回転させることで、そのねじ穴に配管側のねじ部を簡単且つ確実にねじ込み固定することができ、従来の起動弁を回転して配管側のねじ部に接続する場合に比べ、起動弁を回転させるためのスペースを不要とし、接続作業も簡単且つ容易にできる。
【0026】
更に、手動起動装置の起動弁が壁面に密着状態で固定されることで、手動起動装置に接続する配管の壁面からの突出も低減でき、設置スペースの低減と見栄えの改善を図ることを可能とする。
【0027】
(回転接続構造の効果)
また、回転接続構造は、起動弁の流入口に形成された軸穴と、軸穴に回転自在に挿入された配管接続部材の軸部と、軸穴に回転自在に挿入された軸部を抜け止めする抜け止め構造と、軸穴と軸部との間の隙間を封止する封止構造を備えた構造とすることで、配管と起動弁とのねじ込みによる接続作業を簡単且つ容易に行うことができる。また、回転される配管接続部材の抜け止めを簡単な構造で確実に行い、且つ、封止構造により水漏れを確実に防止可能とする。
【0028】
(カバーの効果)
また、壁面に密着固定された起動弁とその操作ハンドルを覆って着脱自在に装着されるカバーは、カバー底部の開放端面が壁面に密着して当たることから、壁面から浮いた状態で装着されていた従来のカバーに比べ安定した装着状態が得られ、見栄えもよくできる。
【0029】
(可撓性配管の効果)
また、感知配管のうち少なくとも一部が可撓性を有する配管とすることで、感知配管の施工を容易にすることを可能とする。
【0030】
(配管の流入口が回転自在)
感知配管は、起動弁の流入口に接続される部分が配管の長手方向を軸に回転自在である
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の泡消火設備の概略を示した説明図である。
【
図2】手動起動装置の実施形態を正面及び側面から示した説明図である。
【
図3】手動起動装置の実施形態を平面から示した説明図である。
【
図5】起動弁の回転接続構造を取り出して断面図及び組立分解図として示した説明図である。
【
図7】手動起動装置の開放操作を示した説明図である。
【
図8】従来の手動起動装置の設置状態を正面及び側面から示した説明図である。
【
図9】従来の手動起動装置の設置状態を平面から示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明に係る泡消火設備の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、本発明が限定されるものではない。
【0033】
[実施形態の基本的な概念]
まず、実施形態の基本的概念について説明する。実施形態は、概略的に、火災が発生した場合に泡ヘッドから泡消火剤を放出させる泡消火設備に関するものである。
【0034】
泡消火設備は、先端側に泡ヘッドが設けられた主配管を開閉する一斉開放弁に分岐接続された感知配管に手動起動装置が設けられ、手動起動装置の開放操作で感知配管内を減圧させることによって一斉開放弁を開放させて泡ヘッドから泡消火剤を放出させるものであり、本実施形態は、手動起動装置を駐車場に設置した場合の車両の接触などに起因した破損や誤作動を確実に防止可能とするように構成するものである。
【0035】
「手動起動装置」とは、駐車場等の防護区画の壁面などの設置面に配置されるものであり、感知配管を開閉する起動弁、起動弁を開閉操作する操作ハンドル、及び、起動弁及び操作ハンドルを覆って着脱自在なカバーで構成される。
【0036】
「起動弁」とは、感知配管を開閉させるものであり、取付台座と回転接続構造を備えるものである。ここで、「取付台座」とは、起動弁を設置面に取り付け固定するための台座であり、起動弁に取付台座が設けられたことで、駐車場の壁面などの設置面に密着状態で固定され、手動起動装置の設置面からの突出を低減するものである。
【0037】
また、「回転接続構造」とは、少なくとも起動弁の流入口に、配管側のねじ部をねじ込み固定するねじ穴が形成された配管接続部材を回転自在に軸支する構造であり、回転接続構造の機能や構造は任意であるが、例えば、流入口及び流出口の各々に形成された軸穴、配管接続部材の軸部、軸穴に対する軸部の抜け止め構造及び軸穴と軸部の隙間を封止する封止構造から構成されるものである。
【0038】
回転接続構造において、「軸穴」とは、起動弁の流入口及び流出口の各々に形成され、配管接続部材の軸部が回転自在に挿入される穴である。また、「軸部」とは、配管接続部材に形成され、軸穴に回転自在に挿入される軸部である。また、「抜け止め構造」とは、軸穴に回転自在に挿入された軸部を抜け止めする構造であり、例えば、軸穴の内周に形成された環状溝と軸部の外周に形成された環状突起との間に抜け止めリングを配置して抜け止めする構造である。さらに、「封止構造」とは、軸穴と軸部との間の隙間を封止する構造であり、例えば、軸部の外周の環状溝にOリングなどの軟質の封止リングが組み込まれ、水漏れを防ぐものである。
【0039】
「操作ハンドル」とは、起動弁を開閉操作するものであり、構造や種類は任意であるが、例えば、起動弁の弁軸よりも設置面から離隔する操作部が形成されるものであり、より具体的には、起動弁の側方に取り出された弁軸にハンドル部材の一端が固定され、起動弁の側部に沿って延在された他端側の設置面から離れた位置に扁平な操作ノブが形成されるものである。本実施形態の起動弁は、取付台座により設置面に密着状態で固定されることで、設置面と操作ハンドルの間の隙間が狭くなるが、操作ハンドルの他端側の設置面から離れた位置に操作部、例えば、扁平な操作ノブが形成されていることから、操作ノブの下に指を入れて操作ハンドルを手前に引く開放操作を容易に行えるようにするものである。
【0040】
以下、具体的な実施形態を説明する。以下に示す具体的な実施形態では、泡消火設備の防護区画が駐車場であり、手動起動装置が駐車場の壁面を設置面として設置される場合について説明する。
【0041】
[泡消火設備の構成]
本実施形態による泡消火設備の構成について、より詳細に説明する。本実施形態の泡消火設備は、
図1に示すように、建物の地下階などのポンプ室にモータ16により駆動される送水ポンプ17が設置され、水源となる貯水槽15からの水を建物の高さ方向に配置した主配管18に圧送する。モータ16はポンプ制御盤34により始動、停止の運転制御を受ける。
【0042】
送水ポンプ17を起動するため圧力タンク36が設けられる。圧力タンク36は主配管18に接続され、配管内の加圧された消火用水を導入して内部の空気を圧縮している。圧力タンク36には圧力スイッチ38が設けられ、圧力スイッチ38は主配管18の管内圧力が規定圧力以下に低下する減圧を検出してポンプ制御盤34に圧力低下検出信号を出力し、これによりモータ16が駆動されて送水ポンプ17が起動される。
【0043】
主配管18には混合器22が設けられる。混合器22に対しては原液タンク20から泡消火剤原液が供給され、送水ポンプ17により圧送された水に一定の比率で混合されて泡消火剤が生成される。原液タンク20は、タンク内に配置した隔膜の一方に泡消火剤原液を入れ、隔膜の他方に主配管18から加圧された消火用水を導入することにより泡消火剤原液が加圧されて混合器22へ送られる。
【0044】
混合器22の2次側の主配管18からは分岐配管18aが消火対象となる防護区画、例えば建物の駐車場などに引き出されている。分岐配管18aの分岐部分には流水検知装置24が設けられている。流水検知装置24は分岐配管18aに泡ヘッド28からの泡消火剤の放出に伴う流動が生じると、この流動により弁体を開動作し、これに伴う流水検知スイッチ24aのオンによる放出警報信号が監視盤35に出力され、火災警報表示などが行われる。
【0045】
流水検知装置24の2次側の配管18bには一斉開放弁26が設けられる。一斉開放弁26の2次側には配管18cが接続され、配管18cに開放型の泡ヘッド28が接続されている。また、一斉開放弁26には感知配管30が分岐接続されており、感知配管30には火災感知ヘッド(閉鎖型スプリンクラーヘッド)32が接続され、また感知配管30の末端には手動起動装置10が接続されている。
【0046】
通常監視状態で一斉開放弁26は2次側への流路を閉じており、感知配管30には加圧された水が充填されている。火災の発生により感知配管30に設けた火災感知ヘッド32が作動して水が放出されると、感知配管30内の減圧によって一斉開放弁26が開放され、泡ヘッド28から泡消火剤が放出される。
【0047】
また、駐車場の利用者などが火災を発見した場合には、駐車場の壁面などに設置されている手動起動装置10を手動で開放させると、感知配管30内の減圧によって一斉開放弁26が開放され、泡ヘッド28から泡消火剤が放出される。
【0048】
また、感知配管30のうち、火災感知ヘッド32が配置される面から手動起動装置10の設置面へと配管が屈曲する部分、言い換えれば火災感知ヘッド32よりも手動起動装置10側に、可撓性配管(フレキシブル配管)33を用いることが施工を容易にする観点から望ましい。
【0049】
[手動起動装置10]
泡消火設備に設けられた手動起動装置10について、より詳細に説明する。
図2及び
図3は手動起動装置の実施形態を設置状態で示した説明図であり、
図2(A)に正面図を示し、
図2(B)に側面図を示し、更に、
図3に平面図を示している。本実施形態の手動起動装置10は、起動弁12、操作ハンドル48及びカバー14で構成される。
【0050】
起動弁12は、
図1に示したように、一斉開放弁26に分岐接続された感知配管30の火災感知ヘッド32より先端側に接続され、開放操作による感知配管30内の減圧によって一斉開放弁26を開放させて泡ヘッド28から泡消火剤を放出させるための弁であり、その機能、構造、種類は任意であるが、例えば、
図2及び
図3に示すように、弁ボディ44、流入側の配管接続部材54及び流出側の配管接続部材56で構成される。
【0051】
弁ボディ44は設置面25側に取付台座46が一体に形成されており、取付台座46の取付面
46bを設置面25に密着させた状態で、アンカーボルト42によって設置面25に打ち込まれたアンカー43に固定されている。これにより
図3に示すように、設置面25からカバー14の前面(-Y側の面)までの間隔Lは、数センチメートル以下、例えば4センチメートル程度と従来の略半分に抑えられている。
【0052】
弁ボディ44の内部には流入口と流出口を連通させる内部流路を開閉させる弁体、例えばボール弁が組み込まれ、弁体を開閉させる弁軸が弁ボディ44の側方、例えば右側(+X側)に取り出され、そこに操作ハンドル48の一端が固定されている。
【0053】
操作ハンドル48は他端側(操作端側)に向かうにつれて弁ボディ44の側面から離れるように延在され、他端(操作端)に横方向に扁平な操作ノブ50が形成されている。起動弁12は、操作ハンドル48が図示の設置面25と並行に押し込まれた位置で閉鎖されており、操作ハンドル48の操作ノブ50の下に指を入れて手前に引いて上向きに回し、水平となる位置に操作すると開放される。
【0054】
弁ボディ44の流入側と流出側には配管接続部材54,56が回転自在に軸支されている。配管接続部材54には上側から引き込まれた感知配管30が接続され、配管接続部材56には下側から排水管31が接続されている。感知配管30は、水圧が掛かることから金属配管であり、先端(下端)に形成されたねじ部に、配管接続部材54の流入口に設けられたねじ穴を、配管接続部材54の回転でねじ込むことで、接続固定される。
【0055】
ここで、感知配管30はサドル40により設置面25に固定されている。サドル40は、公知のように、台座40aと湾曲した羽根片40bで構成され、羽根片40bの両端が台座40aに係合され、台座40aが設置面25に打ち込まれたアンカー43にアンカーボルト42をねじ込むことで固定される。感知配管30を設置面25に固定するサドル40は、取付台座46により設置面25に固定された起動弁12の中心軸に、感知配管30の中心軸が一致するように、台座40aの高さが決められている。このため起動弁12の設置高さを低くすることで、感知配管30の設置高さも低くすることができる。
【0056】
起動弁12の流出側には排水管31が接続される。排水管31には水圧が掛からないことから例えば塩化ビニルなどの合成樹脂配管が使用される。排水管31の先端(上端)にはねじ部を備えた継手57が接着固定され、継手57のねじ部に配管接続部材56の流出口に設けられたねじ穴を、配管接続部材56の回転でねじ込むことで、接続固定される。
【0057】
[起動弁12の構造]
起動弁12の構造について、より詳細に説明する。
図4は起動弁12の構造の一例を示した説明図であり、
図4(A)は軸中心を通る断面図を示し、
図4(B)は側面図を示し、
図4(C)は平面図を示す。
【0058】
起動弁12は、弁ボディ44と上下の配管接続部材54,56で構成されている。弁ボディ44はボディ部材44a,44bに分割され、ボディ部材44aの取付面側には左右方向に広がりを持った取付台座46が一体に形成され、取付台座46の左右2箇所に取付穴46aが形成されている。ボディ部材44a,44bは同軸に内部流路70が形成され、ボディ部材44aのねじ穴にボディ部材44bのねじ軸部をねじ込むことで連結固定される。
【0059】
弁ボディ44の内部、即ち、ボディ部材44a,44bの合わせ部分には、ボール弁体60がシールにより回動自在に組み込まれている。ボール弁体60には、開放位置で内部流路70を連通させる弁穴60aが貫通され、図示の閉鎖位置で弁穴60aは内部流路70を閉鎖する位置に回動されている。ボール弁体60からは右側(+X側)となる側方に弁軸62が取り出され、弁軸62の先端に操作ハンドル48の一端が固定されている。
【0060】
本実施形態の操作ハンドル48は、例えば、ハンドル部材として金属製の板部材が加工されたものであり、図示の操作ハンドル48の閉鎖位置で、弁ボディ44の側部と平行にハンドル部材の板面が位置し、他端(操作端)に向かうにつれて弁ボディ44から離れるようにハンドル部材は側方(+X方向)へ屈曲され、ハンドル部材の他端(操作端)の板面上端を設置面と平行な横方向(+X方向)へ屈曲させることで、扁平な操作ノブ50が形成されている。また、操作ハンドル48の一端側の板面上端にはストッパ片64がボディ44側へ向けて屈曲形成されており、操作ハンドル48を開放位置(水平位置)に操作した場合に、ストッパ片64が弁ボディ44に当接して開放位置の位置決めを可能としている。
【0061】
配管接続部材54には、流入側からねじ穴66に続いて内部流路70が形成され、弁ボディ44に対し回転自在に軸支されている。また、配管接続部材56には、流出側からねじ穴68に続いて内部流路70が形成され、弁ボディ44に対し回転自在に軸支されている。
【0062】
配管接続部材54,56の回転接続構造は任意であるが、例えば、
図5に流入側の配管接続部材54の回転接続構造を取り出して示しており、
図5(A)は断面図を示し、
図5(B)は組立分解図を示している。
【0063】
ボディ部材44aの流入側には第1穴径D1の第1軸穴72が形成され、続いて、第1穴径D1より小さい第2穴径D2の第2軸穴74が形成されることで、段付き軸穴が形成されている。第1軸穴72の所定位置には環状溝80が形成されている。
【0064】
配管接続部材54はねじ穴66を備えたナット部55に続いて、ボディ部材44aの第1軸穴72の穴径D1に対応した第1外径D11の第1軸部76が形成され、続いて、ボディ部材44aの第2軸穴74の穴径D2に対応した第2外径D21の第2軸部78が形成されることで、段付き軸部が形成されている。
【0065】
第1軸部76の所定位置には、第1軸穴72の環状溝80に対応して環状突起82が形成され、また、第2軸部78には環状封止溝84が形成され、軟質封止リングとして例えばOリング86が嵌め込まれている。
【0066】
ボディ部材44aの段付き軸穴に配管接続部材54の段付軸部を嵌め入れる場合には、切欠のある抜け止めリング88が間に組み込まれ、抜け止めリング88は環状溝80と環状突起82の間に位置することで、弁ボディ44に対し配管接続部材54が抜けないように回転自在に軸支する抜け止め構造が実現されている。
【0067】
また、ボディ部材44aの段付き軸穴と配管接続部材54の段付き軸部との間にOリング86が位置することで封止構造が実現されている。なお、第2軸部78の環状封止溝84の代わりに、第2軸穴74に環状封止溝を形成してOリングが嵌め込まれた封止構造としてもよい。流出側に回転自在に設けられた配管接続部材56も、前述した流入側の配管接続部材54と同様な回転接続構造となる。
【0068】
[カバー14]
手動起動装置10のカバー14について、より詳細に説明する。カバー14は設置面25に設置された起動弁12及び操作ハンドル48を覆い隠して保護する部材であり、その構造や形は任意であるが、例えば、
図6に示す構造や形を備える。ここで、カバー14を示す
図6にあっては、
図6(A)が平面図、
図6(B)が正面図、
図6(C)が側面図、
図6(D)が縦断面図、
図6(E)が横断面図を示している。
【0069】
カバー14は、配置面25側が開口された開口端面90とした合成樹脂製の箱体であり、上端面と下端面に配管に係合するU形に切欠された嵌合部92が形成され、感知配管30及び排水管31に着脱自在に嵌め込まれている。また、カバー14の左右の側面には窪み94が形成され、指によるカバー14の取外しを行い易くしている。更に、カバー14の前面には、火災が発生した場合の操作方法が文字や図形などを用いて表示されている。
【0070】
カバー14は、
図2(B)に示したように、手動起動装置10の起動弁12及び操作ハンドル48を覆って上下に位置する感知配管30と排水管31の各々に対する上端面と下端面の嵌合部92の嵌め込みで着脱自在に装着されている。また、カバー14の底部側の開口端面90は設置面25に密着した状態で装着されており、設置面25への密着によりカバー14の装着状態が安定し、カバー14と設置面25の間に隙間がないことで、見栄えも改善されている。また、カバー14を外した場合に床面などに落ちないように、起動弁12側にループ状に弛みをもたせた紐により結びつけてもよい。
【0071】
[手動起動装置の操作]
火災が発生した場合の手動起動装置10の操作について、より詳細に説明する。
図7は火災が発生した場合の手動起動装置10を操作する様子を示している。手動起動装置10を操作する場合には、まずカバー14を矢印Aのように外して起動弁12を露出させる。続いて、起動弁12の側面に下向きに位置している操作ハンドル48の下端の操作ノブ50の裏側に下から指を入れ、矢印Bのように手前に引いて上向きに回し、ストッパ64が弁ボディに当接して止まる操作ハンドル48a
及び操作ノブ50aとして示す水平位置まで回動させる。これにより起動弁12が開放され、感知配管30内が減圧されることで一斉開放弁が開放され、泡ヘッドから泡消火剤を放出させることができる。
【0072】
[本発明の変形例]
本発明による車載情報表示装置の変形例について、より詳細に説明する。本発明の泡消火設備は、上記の実施形態以外に、以下の変形を含むものである。
【0073】
(起動弁の操作ハンドル)
上記の実施形態は、起動弁の閉鎖位置で操作ハンドルを下向きに位置させているが、これに限定されず、起動弁の閉鎖位置で操作ハンドルを上向きに位置させるようにし、操作ハンドルを手前に引いて下向きに回すことで起動弁を開放させるように構成してもよい。
【0074】
また、操作ハンドルは、起動弁の側方に取り出された弁軸にハンドル部材の一端が固定され、ハンドル部材の他端に扁平な操作ノブが形成されたものとしているが、これに限らない。例えば、起動弁の側方に取り出された弁軸にハンドル部材の一端が固定され、ハンドル部材が設置面から離隔する方向に伸びたうえで、高さ方向、言い換えれば感知配管の長手方向に伸びる棒状の形状とするなど、操作ハンドルは起動弁の弁軸よりも設置面から離隔する操作部を有する任意の構造としてもよい。
【0075】
また、上記の実施形態は、起動弁の流入側に回転自在な配管接続部材56を設けているが、これに限らない。例えば、起動弁の流入側の配管接続部材56を回転自在とせず、記起動弁の流入口に接続される感知配管30側の部分、例えば、可撓性配管33の部分が配管の長手方向を軸に回転自在な接続部材としてもよい。
【0076】
また、上記の実施形態は、起動弁の流出側に回転自在な配管接続部材56を設けているが、これに限らない。排水管31を起動弁に係止させた後で起動弁を感知配管30に接続することも可能であり、この場合において配管接続部56は回転自在でなくてもよい。また、排水管31を設けないようにしてもよい。
【0077】
(その他)
また本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0078】
10:手動起動装置
12:起動弁
14:カバー
15:貯水槽
16:モータ
17:送水ポンプ
18:主配管
18a:分岐配管
18b,18c:配管
20:原液タンク
22:混合器
24:流水検知装置
24a:流水検知スイッチ
25:設置面
26:一斉開放弁
28:泡ヘッド
30:感知配管
31:排水管
32:火災感知ヘッド
33:可撓性配管
34:ポンプ制御盤
35:監視盤
36:圧力タンク
38:圧力スイッチ
40:サドル
42:アンカーボルト
44:弁ボディ
44a,44b:ボディ部材
46:取付台座
46a:取付穴
48:操作ハンドル
50:操作ノブ
54,56:配管接続部材
60:ボール弁体
62:弁軸
64:ストッパ片
66,68:ねじ穴
70:内部流路
72:第1軸穴
74:第2軸穴
76:第1軸部
78:第2軸部
80:環状溝
82:環状突起
84:環状封止溝
86:Oリング
88:抜け止めリング
90:開口端面
92:嵌合部
94:窪み