(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-14
(45)【発行日】2025-02-25
(54)【発明の名称】熱交換装置及び熱交換装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
F17C 9/02 20060101AFI20250217BHJP
F28F 27/00 20060101ALI20250217BHJP
【FI】
F17C9/02
F28F27/00 511Z
(21)【出願番号】P 2021053951
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 駿斗
(72)【発明者】
【氏名】幸前 穂
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-257497(JP,A)
【文献】特表2014-534387(JP,A)
【文献】特開平09-143484(JP,A)
【文献】特開2017-003194(JP,A)
【文献】特開2006-083943(JP,A)
【文献】特開2019-065811(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0218933(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 9/02
F28F 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気と当該蒸気の凝縮液とを収容する熱交換容器と、
前記凝縮液の液位に従って前記蒸気に触れる表面積が変わるように前記熱交換容器内に設けられ、且つ、その内部を伝熱流体が通過する伝熱管と、
前記伝熱管を通過した伝熱流体を需要先に送る第1管路と、
前記需要先を通過した伝熱流体を前記伝熱管に送る第2管路と、
前記需要先の状態に関する情報に基づいて前記伝熱管内の前記伝熱流体に付与すべき目標熱量を算出する熱量算出部と、
前記需要先の状態の変化によって前記第1管路内の温度が変化する前に、前記目標熱量に基づいて前記液位を変更する液面調節部と、
前記第1管路内の温度に基づいて前記熱交換容器内の蒸気圧を変更する蒸気圧調節部と、を備える熱交換装置。
【請求項2】
前記熱量算出部は、前記需要先の状態に対する設定値に基づいて前記目標熱量を算出する、請求項1記載の熱交換装置。
【請求項3】
前記目標熱量と前記液位との関係を表す液位プロファイルを記憶するプロファイル記憶部を更に備え、
前記液面調節部は、前記液位プロファイルに基づいて前記目標熱量に対応する液位目標値を算出し、前記液位を前記液位目標値に近付ける、請求項1又は2記載の熱交換装置。
【請求項4】
前記熱交換容器における外乱を検出する外乱検出部と、
前記蒸気圧調節部に対する前記外乱の影響を抑制するように前記液位プロファイルを変更するプロファイル変更部と、を更に備える、請求項3記載の熱交換装置。
【請求項5】
前記外乱検出部は、前記蒸気圧が所定の制御限界に達した状態の継続期間に基づいて前記外乱を検出する、請求項4記載の熱交換装置。
【請求項6】
前記外乱検出部は、前記蒸気の温度の変化に基づいて前記外乱を検出する、請求項4又は5記載の熱交換装置。
【請求項7】
前記外乱検出部は、前記蒸気から前記伝熱流体への伝熱効率の変化に基づいて前記外乱を検出する、請求項4~6のいずれか一項記載の熱交換装置。
【請求項8】
蒸気と当該蒸気の凝縮液とを収容する熱交換容器と、前記凝縮液の液位に従って前記蒸気に触れる表面積が変わるように前記熱交換容器内に設けられ、且つ、その内部を伝熱流体が通過する伝熱管と、伝熱管を通過した伝熱流体を需要先に送る第1管路と、前記需要先を通過した伝熱流体を前記伝熱管に送る第2管路と、を備える熱交換装置において、前記需要先の状態に関する情報に基づいて前記伝熱管内の伝熱流体に付与すべき目標熱量を算出することと、
前記需要先の状態の変化によって前記第1管路内の温度が変化する前に、前記目標熱量に基づいて凝縮液の液位を変更することと、
前記第1管路内の温度に基づいて前記熱交換容器内の蒸気圧を変更することと、を含む熱交換装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱交換装置及び熱交換装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、蒸気との熱交換により、被加熱流体であるLNGを加温するように構成された熱交換器を開示している。熱交換器は、LNG温度を目標温度に近づけるために、熱交換器内の蒸気圧力と設定値との偏差に基づいて、熱交換器内の凝縮水の液面レベル(液面高さ)を制御するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、凝縮液の液位を利用した伝熱量の調節と、熱の需要先の状態変化への適応性との両立に有効な熱交換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る熱交換装置は、蒸気と当該蒸気の凝縮液とを収容する熱交換容器と、凝縮液の液位に従って蒸気に触れる表面積が変わるように熱交換容器内に設けられ、且つ、その内部を伝熱流体が通過する伝熱管と、伝熱管を通過した伝熱流体を需要先に送る第1管路と、需要先を通過した伝熱流体を伝熱管に送る第2管路と、需要先の状態に関する情報に基づいて伝熱管内の伝熱流体に付与すべき目標熱量を算出する熱量算出部と、目標熱量に基づいて液位を変更する液面調節部と、第1管路内の温度に基づいて熱交換容器内の蒸気圧を変更する蒸気圧調節部と、を備える。
【0006】
蒸気圧の変更に対して、液位の変更には時間がかかる。このため、仮に液位と蒸気圧との両方を第1管路内の温度に基づいて調節すると、当該温度の変化に対する蒸気圧の適応タイミングに比較して、当該温度の変化に対する液位の適応タイミングが遅れる。液位と蒸気圧とにより、伝熱流体の温度を調節する装置においては、液位による温度の調整範囲が蒸気圧による温度の調整範囲よりも大きい傾向がある。このため、液位の適応タイミングが遅れると、その影響を蒸気圧の調節で吸収しきれない可能性がある。これに対し、本熱交換装置によれば、目標熱量の変化によって第1管路内の温度が変化する前に、目標熱量に基づいて液位の変更が開始される。このため、蒸気圧の適応タイミングに対する液位の適応タイミングの遅れが抑制される。従って、この熱交換装置は凝縮液の液位を利用した伝熱量の調節と、熱の需要先の状態変化への適応性との両立に有効である。
【0007】
熱量算出部は、需要先の状態に対する設定値に基づいて目標熱量を算出してもよい。この場合、蒸気圧の適応タイミングに対する液位の適応タイミングの遅れが更に抑制される。
【0008】
熱交換装置は、目標熱量と液位との関係を表す液位プロファイルを記憶するプロファイル記憶部を更に備え、液面調節部は、液位プロファイルに基づいて目標熱量に対応する液位目標値を算出し、液位を液位目標値に近付けてもよい。この場合、目標熱量に基づく液位調節を容易且つ適切に実行可能である。
【0009】
熱交換装置は、熱交換容器における外乱を検出する外乱検出部と、蒸気圧調節部に対する外乱の影響を抑制するように液位プロファイルを変更するプロファイル変更部と、を更に備えていてもよい。この場合、目標熱量に基づく液位調節をより適切に実行可能である。
【0010】
外乱検出部は、蒸気圧が所定の制御限界に達した状態の継続期間に基づいて外乱を検出してもよい。この場合、外乱を簡素な構成で検出可能である。外乱検出部は、蒸気の温度の変化に基づいて外乱を検出してもよい。この場合、外乱を迅速に検出可能である。外乱検出部は、蒸気から伝熱流体への伝熱効率の変化に基づいて外乱を検出してもよい。この場合、経時的な特性変化に起因する外乱も迅速に検出可能である。
【0011】
本開示の他の側面に係る熱交換装置の制御方法は、蒸気と当該蒸気の凝縮液とを収容する熱交換容器と、凝縮液の液位に従って蒸気に触れる表面積が変わるように熱交換容器内に設けられ、且つ、その内部を伝熱流体が通過する伝熱管と、伝熱管を通過した伝熱流体を需要先に送る第1管路と、需要先を通過した伝熱流体を伝熱管に送る第2管路と、を備える熱交換装置において、需要先の状態に関する情報に基づいて伝熱管内の伝熱流体に付与すべき目標熱量を算出することと、目標熱量に基づいて凝縮液の液位を変更することと、第1管路内の温度に基づいて熱交換容器内の蒸気圧を変更することと、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、凝縮液の液位を利用した伝熱量の調節と、熱の需要先の状態変化への適応性との両立に有効な熱交換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】熱交換システムの構成を例示する模式図である。
【
図2】熱交換コントローラのハードウェア構成図である。
【
図3】熱交換装置の制御手順を例示するフローチャートである。
【
図4】液位プロファイルの変更手順を例示するフローチャートである。
【
図5】液位プロファイルの変更手順の変形例を示すフローチャートである。
【
図6】液位プロファイルの変更手順の他の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
〔熱交換システム〕
図1に示す熱交換システム1は、需要先に熱を供給するための伝熱流体を、蒸気との熱交換により加熱するシステムである。需要先の具体例としては、LNG(Liquefied Natural Gas:液化天然ガス)の気化設備が挙げられるがこれに限られない。需要先は、伝熱流体による熱の供給を必要とする限りいかなる設備であってもよい。
【0016】
一例として、熱交換システム1は、熱交換装置2と、ガス冷却装置3とを備える。熱交換装置2は、蒸気との熱交換により伝熱流体を加熱する。伝熱流体の具体例としては水が挙げられるが、これに限られない。伝熱流体は、水の他の液体であってもよいし、気体であってもよい。
【0017】
ガス冷却装置3は、需要先において吸熱された伝熱流体との熱交換によりガスを冷却する装置である。ガス冷却装置3は、ガスとの熱交換により伝熱流体を加熱する装置でもある。例えばガス冷却装置3は、伝熱流体との熱交換によりガスタービンの吸気を冷却するGT吸気冷却装置である。なお、熱交換システム1は必ずしもガス冷却装置3を備えなくてもよいし、伝熱流体との熱交換を利用する他の装置を更に備えていてもよい。
【0018】
例えば熱交換装置2は、熱交換容器10と、蒸気供給管20と、排液管30と、伝熱管40と、第1管路50と、第2管路60と、熱交換コントローラ100とを備える。熱交換容器10は、蒸気と、当該蒸気の凝縮により生成される凝縮液(例えば凝縮水)とを収容する。熱交換容器10には、蒸気圧センサ11と液位センサ12とが設けられている(熱交換装置2は蒸気圧センサ11と液位センサ12とを更に備える)。蒸気圧センサ11は、熱交換容器10内の蒸気圧を検出する。液位センサ12は、熱交換容器10内の凝縮液の液位を検出する。
【0019】
蒸気供給管20は、熱交換容器10内に蒸気を供給する。蒸気供給管20には蒸気バルブ21が設けられている(熱交換装置2は蒸気バルブ21を更に備える)。蒸気バルブ21は、制御信号に従って蒸気供給管20内の流路の開度を変更する。蒸気供給管20内の流路の開度変更によって、熱交換容器10内の蒸気の圧力が変更される。
【0020】
排液管30は、熱交換容器10内から凝縮液を排出する。排液管30には排液バルブ31が設けられている(熱交換装置2は排液バルブ31を更に備える)。排液バルブ31は、制御信号に従って排液管30内の流路の開度を変更する。排液管30内の流路の開度変更によって、熱交換容器10内の凝縮液の液位が変更される。
【0021】
伝熱管40は、熱交換容器10内の凝縮液の液位に従って蒸気に触れる表面積が変わるように熱交換容器10内に設けられている。例えば伝熱管40は、熱交換容器10内の少なくとも一部において上下に延びている。図示のように、伝熱管40は屈曲しながら上下に延びていてもよいし、熱交換容器10を上下に貫通していてもよい。上記伝熱流体は、伝熱管40の内部を通過する。
【0022】
伝熱管40のうち、凝縮液の液面よりも上に位置する部分(以下、「気中部分40a」という。)は蒸気に触れ、凝縮液の液面よりも下に位置する部分(以下、「液中部分40b」という。)は蒸気に触れない。伝熱管40が熱交換容器10内を上下に延びるので、凝縮液の液位に従って気中部分40aの長さが変化する。具体的には、凝縮液の液位が高くなると気中部分40aが短くなり、凝縮液の液位が低くなると気中部分40aが長くなる。このため、蒸気に触れる伝熱管40の表面積は、凝縮液の液位が高くなると小さくなり、凝縮液の液位が低くなると大きくなる。
【0023】
第1管路50は、伝熱管40を通過した伝熱流体を需要先に送る。一例として、需要先はLNG気化システム4である。LNG気化システム4は、LNG気化装置70と、LNGコントローラ200とを有する。LNG気化装置70は、伝熱流体との熱交換によりLNGを気化させる。
【0024】
例えばLNG気化装置70は、LNGが流れるLNG管路71と、伝熱流体が流れる伝熱流体管路72とを有する。第1管路50は、伝熱管40の一端部と、伝熱流体管路72の一端部とに接続されており、伝熱管40を通過した伝熱流体を伝熱流体管路72内に送る。以下、伝熱管40の両端部のうち、第1管路50が接続される端部を「出端部40c」といい、出端部40cの反対の端部を「入端部40d」という。また、伝熱流体管路72の両端部のうち、第1管路50が接続される端部を「入端部72a」といい、入端部72aの反対の端部を「出端部72b」という。LNG気化装置70は、LNG管路71と伝熱流体管路72との間の伝熱により、伝熱流体とLNGとの間の熱交換を生じさせる。
【0025】
LNG管路71にはLNG流量計73が設けられていてもよい。LNG流量計73は、LNG管路71内のLNGの流量を検出する。LNGコントローラ200は、LNG管路71内のLNGの流量を所定の目標流量に追従させるようにLNG気化装置70を制御する。
【0026】
第1管路50には、温度センサ51が設けられている(熱交換装置2は温度センサ51を更に備える)。温度センサ51は、第1管路50内の温度を検出する。温度センサ51が検出する温度は、伝熱管40から伝熱流体管路72に向かう伝熱流体の温度に相当する。なお、第1管路50内の温度を検出することは、第1管路50内からサンプリングした伝熱流体の温度を検出することを含む。
【0027】
第2管路60は、需要先を通過した伝熱流体を伝熱管40に送る。例えば第2管路60は、伝熱流体管路72の出端部72bに接続されており、伝熱流体管路72を通過した伝熱流体を伝熱管40に送る。第2管路60は、ガス冷却装置3を経て、伝熱管40の入端部40dに接続されている。これにより、伝熱管40から出て、第1管路50、伝熱流体管路72、及び第2管路60を経て伝熱管40に戻る伝熱流体の循環流路が形成されている。
【0028】
第2管路60には、ポンプ61と、流量センサ64と、温度センサ62,63とが設けられている(熱交換装置2は、ポンプ61と、温度センサ62,63と、流量センサ64とを更に備える)。ポンプ61は、伝熱流体管路72からガス冷却装置3に向かって伝熱流体を圧送する。流量センサ64は、伝熱流体管路72からガス冷却装置3への伝熱流体の流量を検出する。温度センサ62は、伝熱流体管路72とガス冷却装置3との間における第2管路60内の温度を検出する。温度センサ62が検出する温度は、伝熱流体管路72からガス冷却装置3に向かう伝熱流体の温度に相当する。温度センサ63は、ガス冷却装置3と伝熱管40との間における第2管路60内の温度を検出する。温度センサ63が検出する温度は、ガス冷却装置3を通過して伝熱管40に向かう伝熱流体の温度に相当する。なお、第2管路60内の温度を検出することは、第2管路60内からサンプリングした伝熱流体の温度を検出することを含む。
【0029】
熱交換コントローラ100は、例えばプログラマブルロジックコントローラであり、需要先の状態に関する情報に基づいて伝熱管40内の伝熱流体に付与すべき目標熱量を算出することと、目標熱量に基づいて熱交換容器10内の凝縮液の液位を変更することと、第1管路50内の温度に基づいて熱交換容器10内の蒸気圧を変更することと、を実行するように構成されている。熱交換コントローラ100は、1つの制御用コンピュータにより構成されていてもよいし、複数の制御用コンピュータにより構成されていてもよい。熱交換コントローラ100は、機能上の構成(以下、「機能ブロック」という。)として、ポンプ制御部117と、熱量算出部111と、液面調節部112と、蒸気圧調節部113とを有する。
【0030】
ポンプ制御部117は、伝熱流体管路72からガス冷却装置3への伝熱流体の流量を所定の目標流量に追従させるようにポンプ61を制御する。例えばポンプ制御部117は、流量センサ64により検出される流量を上記目標流量に追従させるようにポンプ61を制御する。
【0031】
熱量算出部111は、需要先の状態に関する情報に基づいて伝熱管40内の伝熱流体に付与すべき目標熱量を算出する。需要先の状態に関する情報は、少なくとも需要先が必要とする熱量を直接的又は間接的に示す限りいかなる情報であってもよい。需要先が上述したLNG気化システム4である場合、需要先の状態に関する情報の具体例としては、LNG管路71におけるLNGの流量が挙げられる。
【0032】
熱量算出部111は、需要先の状態に対する設定値に基づいて目標熱量を算出してもよい。例えば熱量算出部111は、LNG管路71におけるLNGの目標流量(設定値)の情報をLNGコントローラ200から取得し、当該目標流量に基づいて目標熱量を算出してもよい。
【0033】
熱量算出部111は、伝熱流体の流量と温度とに更に基づいて目標熱量を算出してもよい。一例として、熱量算出部111は、次式により目標熱量を算出する。
目標熱量=LNG気化装置での予測熱交換量-ガス冷却装置での熱交換量・・・(1)
LNG気化装置での予測熱交換量
=LNGの目標流量×LNGの気化前後のエンタルピ差・・・(2)
ガス冷却装置での熱交換量
=伝熱流体の流量×ガス冷却装置の前後における第2管路60内の温度差・・・(3)
【0034】
例えば熱量算出部111は、伝熱流体の流量情報を流量センサ64から取得し、ガス冷却装置3の前(上流)における第2管路60内の温度情報を温度センサ62から取得し、ガス冷却装置3の後(下流)における第2管路60内の温度情報を温度センサ63から取得する。
【0035】
なお、熱量算出部111は、需要先の状態の設定値に代えて、需要先の状態の検出値に基づいて目標熱量を算出してもよい。例えば熱量算出部111は、LNG流量計73により検出された流量に基づいて目標熱量を算出してもよい。
【0036】
液面調節部112は、熱量算出部111が算出した目標熱量に基づいて熱交換容器10内における凝縮液の液位(以下、単に「液位」という。)を変更する。例えば液面調節部112は、目標熱量が高くなるのに応じて液位を低くし、目標熱量が低くなるのに応じて液位を高くするように排液バルブ31の開度を調節する。
【0037】
液面調節部112は、上記目標熱量と、第1管路50内の温度との両方に基づいて液位を変更してもよい。例えば液面調節部112は、以下2つの制御を組み合わせて実行してもよい。
制御1)目標熱量が高くなるのに応じて液位を低くし、目標熱量が低くなるのに応じて液位を高くするように排液バルブ31の開度を調節する。
制御2)第1管路50内の温度が高くなるのに応じて液位を高くし、第1管路50内の温度が低くなるのに応じて液位を低くするように排液バルブ31の開度を調節する。
【0038】
蒸気圧調節部113は、第1管路50内の温度に基づいて熱交換容器10内の蒸気圧(以下、単に「蒸気圧」という。)を変更する。例えば蒸気圧調節部113は、第1管路50内の温度が高くなるのに応じて蒸気圧を低くし、第1管路50内の温度が低くなるのに応じて蒸気圧を高くするように蒸気バルブ21の開度を調節する。
【0039】
蒸気圧調節部113は、温度センサ51が検出した温度に基づくフィードバック制御により蒸気バルブ21の開度を変更してもよい。例えば蒸気圧調節部113は、所定の目標温度と、温度センサ51が検出した温度との偏差を縮小するように蒸気圧目標値を算出し、蒸気圧(例えば蒸気圧センサ11が検出する蒸気圧)を蒸気圧目標値に追従させるように蒸気バルブ21の開度を変更する。一例として、蒸気圧調節部113は、上記偏差に比例演算、比例・積分演算、又は比例・積分・微分演算等を施して上記蒸気圧目標値を算出する。
【0040】
熱交換コントローラ100は、目標熱量と液位との関係を表すように予め生成された液位プロファイルと、目標熱量とに基づいて液位を変更するように構成されていてもよい。例えば熱交換コントローラ100は、液位プロファイルを記憶するプロファイル記憶部114を更に有する。液位プロファイルは、例えば事前の実機試験又はシミュレーションにより予め生成されている。液位プロファイルは、目標熱量と液位との関係を表す関数であってもよいし、目標熱量と液位との関係を離散的に表すテーブルであってもよい。液面調節部112は、液位プロファイルに基づいて目標熱量に対応する液位目標値を算出し、液位(例えば液位センサ12が検出する液位)を液位目標値に近付けるように排液バルブ31の開度を調節する。
【0041】
熱交換コントローラ100は、熱交換容器10における外乱を検出し、蒸気圧調節部113に対する外乱の影響を抑制するように液位プロファイルを変更するように構成されていてもよい。例えば熱交換コントローラ100は、外乱検出部115と、プロファイル変更部116とを更に有する。
【0042】
外乱検出部115は、熱交換容器10における外乱を検出する。熱交換容器10における外乱とは、熱交換容器10の状態変化のうち、液位の変化、蒸気圧の変化、及び伝熱流体の温度変化の他の状態変化を意味する。外乱の具体例としては、ポンプ61による伝熱流体の流量(以下、単に「伝熱流体の流量」という。)の変化、蒸気供給管20により供給される蒸気の温度(以下、単に「蒸気の温度」という。)の変化、蒸気から伝熱流体への伝熱効率(以下、単に「伝熱効率」という。)の変化等が挙げられる。
【0043】
外乱検出部115は、蒸気圧が所定の制御限界に達した状態の継続期間に基づいて外乱を検出してもよい。制御限界の具体例としては、蒸気圧に対して予め設定された下限値及び上限値が挙げられる。例えば外乱検出部115は、蒸気圧の情報を蒸気圧調節部113から取得する。
【0044】
液面調節部112により液位が適切に調節されている場合、外乱が生じない限り、蒸気圧は下限値及び上限値の間に保たれ得る。そこで、液面調節部112により液位が適切に調節されているにもかかわらず、蒸気圧が下限値又は上限値に達した状態が継続してしまう場合、外乱が生じていることが予測される。例えば、蒸気圧が下限値に達した状態が継続している場合、伝熱流体の温度を上げる外乱が生じていることが予測される。伝熱流体の温度を上げる外乱としては、伝熱流体の流量増加、蒸気の温度上昇、又は伝熱効率上昇等が挙げられる。蒸気圧が上限値に達した状態が継続している場合、伝熱流体の温度を下げる外乱が生じていることが予測される。伝熱流体の温度を下げる外乱としては、伝熱流体の流量減少、蒸気の温度低下、又は伝熱効率低下等が挙げられる。
【0045】
外乱検出部115は、蒸気の温度の変化に基づいて外乱を検出してもよい。この場合、外乱検出部115は、蒸気の発生源(例えばボイラ)等から蒸気の温度に関する情報を取得する。外乱検出部115は、蒸気から伝熱流体への伝熱効率の変化に基づいて外乱を検出してもよい。この場合、外乱検出部115は、蒸気の温度、蒸気圧、液位、伝熱流体の流量、伝熱管40の通過前後の伝熱流体の温度差等に基づいて伝熱効率を算出する。
【0046】
プロファイル変更部116は、蒸気圧調節部113に対する外乱の影響を抑制するように液位プロファイルを変更する。例えばプロファイル変更部116は、伝熱流体の温度を下げる外乱が生じている場合に、これに応じた蒸気圧の上昇を抑制するように、液位プロファイルにおける液位を低くする。プロファイル変更部116は、伝熱流体の温度を上げる外乱が生じている場合に、これに応じた蒸気圧の下降を抑制するように、液位プロファイルにおける液位を高くする。
【0047】
一例として、蒸気圧が上述の上限値に達した状態の継続を外乱検出部115が検出した場合、プロファイル変更部116は、蒸気圧が上限値に達した状態が解除されるまで、液位プロファイルの液位から所定値を減算することを繰り返す。蒸気圧が上述の下限値に達した状態の継続を外乱検出部115が検出した場合、プロファイル変更部116は、蒸気圧が下限値に達した状態が解除されるまで、液位プロファイルの液位に所定値を加算することを繰り返す。
【0048】
蒸気の温度上昇を外乱検出部115が検出した場合、プロファイル変更部116は、蒸気の温度の上昇量に応じた上昇量にて、液位プロファイルの液位を高くする。蒸気の温度低下を外乱検出部115が検出した場合、プロファイル変更部116は、蒸気の温度の低下量に応じた低下量にて、液位プロファイルの液位を低くする。
【0049】
伝熱効率の上昇を外乱検出部115が検出した場合、プロファイル変更部116は、伝熱効率の上昇量に応じた上昇量にて、液位プロファイルの液位を高くする。伝熱効率の低下を外乱検出部115が検出した場合、プロファイル変更部116は、伝熱効率の低下量に応じた上昇量にて、液位プロファイルの液位を低くする。プロファイル変更部116は、液位プロファイルにおける液位の変更量を、目標熱量によらず一定にしてもよいし、目標熱量に応じて変えてもよい。
【0050】
図2は、熱交換コントローラ100のハードウェア構成を例示するブロック図である。
図2に示すように、熱交換コントローラ100は、一つ又は複数の制御用コンピュータにより構成される。例えば熱交換コントローラ100は、回路190を有する。回路190は、少なくとも1つのプロセッサ191と、少なくとも1つのメモリ192と、ストレージ193と、入出力ポート194と、通信ポート195とを有する。ストレージ193は、例えばハードディスク等、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を有する。記憶媒体は、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク及び光ディスク等の取り出し可能な媒体であってもよい。ストレージ193は、需要先の状態に関する情報に基づいて伝熱管40内の伝熱流体に付与すべき目標熱量を算出することと、目標熱量に基づいて熱交換容器10内の凝縮液の液位を変更することと、第1管路50内の温度に基づいて熱交換容器10内の蒸気圧を変更することと、を熱交換コントローラ100に実行させるためのプログラムを記憶している。例えばストレージ193は、上述した各機能ブロックを熱交換コントローラ100に構成させるためのプログラムを記憶している。
【0051】
メモリ192は、ストレージ193からロードしたプログラム及びプロセッサ191による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ191は、メモリ192と協働して上記プログラムを実行することで、熱交換コントローラ100の各機能ブロックを構成する。入出力ポート194は、プロセッサ191からの指令に従って、蒸気圧センサ11、液位センサ12、蒸気バルブ21、温度センサ51,62,63、流量センサ64及びポンプ61との間で電気信号の入出力を行う。通信ポート195は、プロセッサ191からの指令に従って、LNGコントローラ200との間で情報通信を行う。
【0052】
なお、熱交換コントローラ100は、必ずしもプログラムにより各機能ブロックを構成するものに限られない。例えば熱交換コントローラ100の各機能ブロックは、専用の論理回路又はこれを集積したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により構成されていてもよい。
【0053】
〔熱交換装置の制御手順〕
続いて、熱交換装置の制御方法の一例として、熱交換コントローラ100が実行する制御手順を例示する。この手順は、熱交換装置2の制御手順と、液位プロファイルの変更手順とを含む。以下、それぞれの手順を詳細に例示する。
【0054】
(熱交換装置の制御手順)
この手順は、需要先の状態に関する情報に基づいて伝熱管40内の伝熱流体に付与すべき目標熱量を算出することと、目標熱量に基づいて凝縮液の液位を変更することと、第1管路50内の温度に基づいて熱交換容器10内の蒸気圧を変更することと、を含む。
【0055】
例えば
図3に示すように、熱交換コントローラ100は、ステップS01,S02,S03,S04,S05,S06,S07を実行する。ステップS01では、熱量算出部111が、需要先の状態に関する情報を取得する。例えば熱量算出部111は、LNG管路71におけるLNGの流量に関する情報を取得する。一例として、熱量算出部111は、LNG管路71におけるLNGの目標流量の情報をLNGコントローラ200から取得する。
【0056】
ステップS02では、熱量算出部111が、伝熱流体の流量の情報と、ガス冷却装置3の前後における第2管路60内の温度の情報とを取得する。例えば熱量算出部111は、伝熱流体の流量の検出結果を流量センサ64から取得し、第2管路60内の温度の検出結果を温度センサ62,63から取得する。
【0057】
ステップS03では、熱量算出部111が、LNGの目標流量と、伝熱流体の流量と、ガス冷却装置3の通過前後の伝熱流体の温度とに基づいて、目標熱量を算出する。例えば熱量算出部111は、上述した式(1)、(2)及び(3)に基づいて目標熱量を算出する。
【0058】
ステップS04では、プロファイル記憶部114が記憶する液位プロファイルに基づいて、液面調節部112が、目標熱量に対応する液位目標値を算出する。ステップS05では、液面調節部112が、液位を液位目標値に近付けるように排液バルブ31の開度を調節する。
【0059】
ステップS06では、蒸気圧調節部113が、第1管路50内の温度(伝熱管40から需要先に向かう伝熱流体の温度)の情報を取得する。例えば蒸気圧調節部113は、第1管路50内の温度の検出結果を温度センサ51から取得する。ステップS07では、蒸気圧調節部113が、目標温度と、第1管路50内の温度との偏差を縮小するように開度の変更量を算出し、当該変更量にて蒸気バルブ21の開度を変更する。熱交換コントローラ100は、以上の手順を繰り返す。これにより、LNGの流量が変動しても、第1管路50内の温度が目標温度の近傍に保たれる。
【0060】
(液位プロファイルの変更手順)
この手順は、熱交換容器10内における外乱を検出し、蒸気圧調節部113に対する外乱の影響を抑制するように液位プロファイルを変更することを含む。例えば
図4に示すように、熱交換コントローラ100は、まずステップS11を実行する。ステップS11では、蒸気バルブ21の開度が上限に達しているかを外乱検出部115が確認する。
【0061】
ステップS11において蒸気バルブ21の開度が上限に達していないと判定した場合、熱交換コントローラ100はステップS12を実行する。ステップS12では、蒸気バルブ21の開度が下限に達しているかを外乱検出部115が確認する。ステップS12において蒸気バルブ21の開度が下限に達していないと判定した場合、熱交換コントローラ100は処理をステップS11に戻す。
【0062】
ステップS11において蒸気バルブ21の開度が上限に達していると判定した場合、熱交換コントローラ100はステップS13を実行する。ステップS13では、蒸気バルブ21の開度が上限に達した状態が所定期間継続したかを外乱検出部115が確認する。ステップS13において蒸気バルブ21の開度が上限に達した状態が所定期間継続していないと判定した場合、熱交換コントローラ100は処理をステップS11に戻す。
【0063】
ステップS13において蒸気バルブ21の開度が上限に達した状態が所定期間継続したと判定した場合、熱交換コントローラ100はステップS14を実行する。ステップS14では、プロファイル変更部116が、液位プロファイルの液位から所定値を減算する。
【0064】
ステップS12において蒸気バルブ21の開度が下限に達していると判定した場合、熱交換コントローラ100はステップS15を実行する。ステップS15では、蒸気バルブ21の開度が下限に達した状態が所定期間継続したかを外乱検出部115が確認する。ステップS15において蒸気バルブ21の開度が下限に達した状態が所定期間継続していないと判定した場合、熱交換コントローラ100は処理をステップS11に戻す。
【0065】
ステップS15において蒸気バルブ21の開度が下限に達した状態が所定期間継続したと判定した場合、熱交換コントローラ100はステップS16を実行する。ステップS16では、プロファイル変更部116が、液位プロファイルの液位に所定値を加算する。
【0066】
熱交換コントローラ100は以上の手順を繰り返す。これにより、蒸気圧が上限値に達した状態の継続が検出された場合、蒸気圧が上限値に達した状態が解除されるまで、液位プロファイルの液位から所定値を減算することが繰り返される。蒸気圧が下限値に達した状態の継続が検出された場合、蒸気圧が下限値に達した状態が解除されるまで、液位プロファイルの液位に所定値を加算することが繰り返される。
【0067】
液位プロファイルを変更手順の変形例として、蒸気温度に基づく液位プロファイルの変更手順を示す。
図5に示すように、熱交換コントローラ100は、まずステップS21を実行する。ステップS21では、蒸気の温度が低下したかを外乱検出部115が確認する。
【0068】
ステップS21において蒸気の温度が低下していないと判定した場合、熱交換コントローラ100はステップS22を実行する。ステップS22では、蒸気の温度が上昇したかを外乱検出部115が確認する。ステップS22において蒸気の温度が上昇していないと判定した場合、熱交換コントローラ100は処理をステップS21に戻す。
【0069】
ステップS21において蒸気の温度が低下したと判定した場合、熱交換コントローラ100はステップS23を実行する。ステップS23では、プロファイル変更部116が、蒸気の温度の低下量に応じた低下量にて、液位プロファイルの液位を低くする。
【0070】
ステップS22において蒸気の温度が上昇したと判定した場合、熱交換コントローラ100はステップS24を実行する。ステップS24では、プロファイル変更部116が、蒸気の温度の上昇量に応じた上昇量にて、液位プロファイルの液位を高くする。熱交換コントローラ100は以上の手順を繰り返す。
【0071】
液位プロファイルを変更手順の他の変形例として、伝熱効率に基づく液位プロファイルの変更手順を示す。
図6に示すように、熱交換コントローラ100は、まずステップS31を実行する。ステップS31では、伝熱効率が低下したかを外乱検出部115が確認する。
【0072】
ステップS31において伝熱効率が低下していないと判定した場合、熱交換コントローラ100はステップS32を実行する。ステップS32では、伝熱効率が上昇したかを外乱検出部115が確認する。ステップS32において伝熱効率が上昇していないと判定した場合、熱交換コントローラ100は処理をステップS31に戻す。
【0073】
ステップS31において伝熱効率が低下したと判定した場合、熱交換コントローラ100はステップS33を実行する。ステップS33では、プロファイル変更部116が、伝熱効率の低下量に応じた低下量にて、液位プロファイルの液位を低くする。
【0074】
ステップS32において伝熱効率が上昇したと判定した場合、熱交換コントローラ100はステップS34を実行する。ステップS34では、プロファイル変更部116が、伝熱効率の上昇量に応じた上昇量にて、液位プロファイルの液位を高くする。熱交換コントローラ100は以上の手順を繰り返す。
【0075】
〔本実施形態の効果〕
以上に説明したように、熱交換装置2は、蒸気と当該蒸気の凝縮液とを収容する熱交換容器10と、凝縮液の液位に従って蒸気に触れる表面積が変わるように熱交換容器10内に設けられ、且つ、その内部を伝熱流体が通過する伝熱管40と、伝熱管40を通過した伝熱流体を需要先に送る第1管路50と、需要先を通過した伝熱流体を伝熱管40に送る第2管路60と、需要先の状態に関する情報に基づいて伝熱管40内の伝熱流体に付与すべき目標熱量を算出する熱量算出部111と、目標熱量に基づいて液位を変更する液面調節部112と、第1管路50内の温度に基づいて熱交換容器10内の蒸気圧を変更する蒸気圧調節部113と、を備える。
【0076】
蒸気圧の変更に対して、液位の変更には時間がかかる。このため、仮に液位と蒸気圧との両方を第1管路50内の温度に基づいて調節すると、当該温度の変化に対する蒸気圧の適応タイミングに比較して、当該温度の変化に対する液位の適応タイミングが遅れる。液位と蒸気圧とにより伝熱流体の温度を調節する装置においては、液位による温度の調整範囲が蒸気圧による温度の調整範囲よりも大きい傾向がある。このため、液位の適応タイミングが遅れると、その影響を蒸気圧の調節で吸収しきれない可能性がある。これに対し、熱交換装置2によれば、目標熱量の変化によって第1管路50内の温度が変化する前に、目標熱量に基づいて液位の変更が開始される。このため、蒸気圧の適応タイミングに対する液位の適応タイミングの遅れが抑制される。従って、この熱交換装置2は凝縮液の液位を利用した伝熱量の調節と、熱の需要先の状態変化への適応性との両立に有効である。
【0077】
熱量算出部111は、需要先の状態に対する設定値に基づいて目標熱量を算出してもよい。この場合、蒸気圧の適応タイミングに対する液位の適応タイミングの遅れが更に抑制される。
【0078】
熱交換装置2は、目標熱量と液位との関係を表す液位プロファイルを記憶するプロファイル記憶部114を更に備え、液面調節部112は、液位プロファイルに基づいて目標熱量に対応する液位目標値を算出し、液位を液位目標値に近付けてもよい。この場合、目標熱量に基づく液位調節を容易且つ適切に実行可能である。
【0079】
熱交換装置2は、熱交換容器10における外乱を検出する外乱検出部115と、蒸気圧調節部113に対する外乱の影響を抑制するように液位プロファイルを変更するプロファイル変更部116と、を更に備えていてもよい。この場合、目標熱量に基づく液位調節をより適切に実行可能である。
【0080】
外乱検出部115は、蒸気圧が所定の制御限界に達した状態の継続期間に基づいて外乱を検出してもよい。この場合、外乱を簡素な構成で検出可能である。外乱検出部115は、蒸気の温度の変化に基づいて外乱を検出してもよい。この場合、外乱を迅速に検出可能である。外乱検出部115は、蒸気から伝熱流体への伝熱効率の変化に基づいて外乱を検出してもよい。この場合、経時的な特性変化に起因する外乱も迅速に検出可能である。
【0081】
以上、実施形態について説明したが、本開示は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0082】
2…熱交換装置、10…熱交換容器、40…伝熱管、50…第1管路、60…第2管路、111…熱量算出部、112…液面調節部、113…蒸気圧調節部、114…プロファイル記憶部、115…外乱検出部、116…プロファイル変更部。